【DA】リーンエスの耳

ローザリカ・L・ディオール/ クロード・マリナス

『ノベルタイトル:オーブ商会の挑戦』紀藤トキ
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 南方辺境伯都にあるオーブ商会の支店。多忙の合間に訪れたローザリカ・L・ディオールは、主要なメンバーと共に新規事業について様々な事柄を検討していた。以前より衣料品を扱うという構想は伝えてあり、商会では珍しい物や特産に化けそうな物へアンテナを高く保っている。ラザフォード辺境伯領は王国南方の玄関口の一つであり、自前の商船で現地へ出向かずとも日々様々なものが玉石混淆で持ち込まれていた。まずはその見聞からだ。

「これは駄目。そっちは質のばらつきが多く見えるから、もう一揃い確保するように。この小物は珍しい色だね。色むらが気になるが……、染め方の問題かな?」
「これはゴールディの商人が持ち込んできた布地です。農閑期にやってるそうで、染料が日持ちしないんで現地で細々と作るしかないらしいです」

 ローザリカが目を留めた商品を仕入れたという店員が背筋を伸ばす。クロード・マリナスの同級生ということは兄の同級でもあるはずで、気安い関係を築けてはいるが商会長と部下。こういう時には緊張感が出る。

「纏めて買い付けるとしたら、専門の職人の仕事にできそうかな?」
「仲介の連中と職人の生活費を考えると、これくらいあれば」

 クロードが指を三本立てると、ローザリカは首をかしげた。脳内で算盤を弾いてから、確認を取る。

「単色の布をそれだけ仕入れて、使い切れそうかい? 僕の計算では無理そうなんだが」
「初年度はどう考えても無理です。次年度以降は初動次第ですが、可能性としては四年目くらいですかね」
「やっぱり無理か。産地の記録はしておいて。好調だったらその時に考えよう。ああ、目利きは良かったから、またよろしく」
「はい。やっぱり、他が見つけてない良い物ってのは、なかなか見つからないですね」

 ローザリカに声を掛けられた店員に腐った様子はない。少々のことでへこたれる人材ではないのだろう。商品開発のために多少の失敗をしても大丈夫な程度に、魚介部門が安定しているのも気持ち的に大きい。既得権益との衝突も考えれば現状以上の拡大は厳しいだろうが、雇っている面々の給与を払っておつりが来る程度には稼いでいる。

「既存の産地の布は出来は良いが、余所の商会を仕入れに介さないと安定しないか。まあ、そうなるだろうね」

 今度は幾つか手に入れた同じ産地の布地を見比べつつ、ローザリカは納得したような声を漏らした。教科書で習った事を、実際にそうであると確認できると二重の意味で頷かざるを得ない。

「こちらの仕入れが太くなれば直接買い付けもできるようになるでしょうが……、今は難しいでしょうね」

 同盟や辺境の目立った都市の産品は、やはり古参商会が優先取引の権利を持っている。生き馬の目を抜く世界だけに、裏切られる可能性も考えねばならず、信頼できるという意味でも価格の意味でも、やはり実家のリベラ商会を頼るのが手堅い。

「独り立ちできていないようで、複雑ではあるんだがな……」
「まあ、繋がりを保ちたい親心やら兄心も分かってあげてくださいよ、お嬢。ただでさえ、手紙で嫌み言われてるんで」
「あ、俺の所にも来た」
「妹と仕事できるの羨ましい、って回りくどくネチネチ書いてある奴な……」

 結婚して外に出るのが決まってからは顕著に、兄も父もややこしい回り道をしなくなった。ローザリカにしてみれば昔からそうしてくれれば良かったのに、という心境である。いまだに顔を合わせると胡散臭い笑顔と含んだ言い回しにどぎまぎするのだが、あれはもう習性のようなものだろう。

「辺境都市群からは、言われていたシャルガネの織物をいくつか取り寄せました。確かに良い物ですが、工程的に値が張るようです」
「厳しいんじゃないか?」
「ですが、これを出せるとしたら、差別化できます」

 なかには社員間で判断の分かれる情報もあり、やはりローザリカの判断を仰ぐことになる。

「上流階級向けの『黎明の宝珠(ジョワヨ・ド・ローブ)』で表の生地にだけ使うとか、何かしら活かす方法を考えたいな」
「ああ、その名前にしたんですね。いえ、お嬢とウチの商会らしさが出ていて良いと思いますが」

 布地の大量生産が出来ないロスガリアにおいては、新品の衣服というのはそれだけで貴重品である。貴族令嬢としてのローザリカは仕立屋を呼び、注文を介して自分に合った衣服を作らせて購入していたが、冒険者としてのローザリカは、街で新品の衣服を扱っている商店に立ち寄ったこともある。都市部の平民は晴れ着としてなら手が届かないほどではなく、授恵者の冒険者にとっては普段着にできないこともない程度の価格帯だ。オーブ商会が進出を考えているのは、貴族向けの一品物を手がける仕立てではなく、冒険者としてのローザリカが知っている既製服である。ターゲットを絞った商品展開をすれば、商機があると踏んだのだ。

「売れますかね、お嬢?」
「売れるか、と言えばまあ……。良い物で値段が見合えば売れるだろうね。商売とはそういう物だろう? 代行殿」

 庶民向けの夜明けの花束(ブーケ・ド・ローブ)と、上流階級向けの『黎明の宝珠(ジョワヨ・ド・ローブ)』は共に名前へ夜明けや宝珠、薔薇の花の品種といったオーブ商会のイメージを盛り込んだ、商会の基幹となる商品として考えている。構想段階から、ローザリカの思い入れも深い。

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 ここでローザリカが持ち出した『既製服』と言う考え方は、実はロスガリアにも既に存在している。王国では庶民向けの晴れ着や、貴族家のメイドなど職種に応じた揃いの衣装が必要な場合などに利用される物だ。受注生産のドレスなどに比べれば安価だが、ヴェルクリエの評価の高い工房であれば高価な輸出品としても成立するほどらしい。そもそも手縫いでしか作れぬ貴重品であり、針子の中にも工業製品というよりは芸術品の意識が残る。

「上流向けの『黎明の宝珠(ジョワヨ・ド・ローブ)』ならばそれでも良いのだが、『夜明けの花束(ブーケ・ド・ローブ)』に関しては意識を切り替えて欲しい。……と言っても難しいだろうか?」

 もちろん品質は重要だが、拘り過ぎてコストが嵩んでは良くない。中古の布を扱うことも必要となってくるだろう。針子のプライドが邪魔をするようでは困る。型紙の画一化を進めれば、用いることが出来なくなる伝統的なデザインもあった。コストダウンの為に製造工程の簡略化と効率化を突き詰めていくに当たり、庶民路線の方はそのやり方に適応できる頭の柔らかいデザイナーが必要になりそうだ。

「ベテランは反発するかもしれませんね。工房ごと買い取って方針を決める権利もこちらで持つか、最悪、若手を引き抜いて、工房を新設するくらいの覚悟は必要かと」
「やはりそうか。いっそ、夜明けの花束(ブーケ・ド・ローブ)のデザイナーは外から招く方が良いかもしれないな」

 身分の垣根が王国よりは少ない同盟の既製服デザイナーは、その意味では進んでいる可能性もある。いずれにせよ、庶民向けのデザインの方はできあがるまでに少し時間が必要になりそうだ。最初のうちは無駄が出るかもしれないが、やりながら洗練させていけば、工程の手間、つまり価格を抑えつつ見栄えはそれ程落ちないデザインに辿り着けるはずだ。

「……資金は足りそうかな」
「厳しいですが、まあ出資を募るしか無いかと。お嬢の伝手も当たって貰うことになりますね」

 ローザリカの手持ち資金に、家族など信頼できる筋からの借金。共同経営者のクロードも出資していたが、それでも限りがある。本来なら、高級路線の黎明の宝珠(ジョワヨ・ド・ローブ)を展開してブランドイメージをつけてから、庶民向けの夜明けの花束(ブーケ・ド・ローブ)を打ち出すのが安定するだろうが、ローザリカには拘りがあった。学園の平民学生へ、貴族と対面した際にも恥じること無いような衣服を安価に提供したいのだ。この春に入学する学生が、社交などを身につけて実践の場に顔を出す機会があるとしたら、最短で秋の学園祭であろうか。そこまでに、というのは難しい。卒業までであれば、おおむね6年。それならば間に合うかもしれない。中間の3年が努力目標と言ったところか。難しいと言えば、もう一点。

「春までにオーブ商会の王都への出店はできそうだろうか?」
「リベラ商会にだいぶ強めにごり押して貰えば何とかなるかもしれませんが……。それでは意味が無いんでしょう?」
「そう、だな。それでは周囲からリベラ商会の傘下と見られるだろう。紹介状を書いて貰うくらいまでに留めたい」
「お嬢が結婚した後に、ケレス侯爵家のお抱え商会として申請を出すのはどうですかね。結婚前の今だと厳しいですが」

 そもそも王都に店を構えるというのは普通の商人にとって一生の夢のようなものだ。許可を出す側も、それなりの手順が必要になる。オーブ商会にしろローザリカにしろ、何の後押しも無く王都に店を構えられる程の実績はまだない。さりとて新規事業を行うにはラザフォード辺境伯領の現店舗では明らかに手狭。状況次第で工房まで構える可能性を考慮すれば、そもそも王都内の土地で全て確保するのは厳しい。

「どうせあそこにも支店は必要になるだろうし、ひとまずはディオール領内に構えるか……」
「新しいことを始めるとなれば、嫌がらせなどもありえます。お嬢の実家ならその辺は安心できるでしょう」

 悪くない選択だとクロードは言い、ローザリカも納得はした。ただ、本店を出す前に支店を実家に置かざるを得ない状況、どうにも誰かの手のひらで動かされている気もする。

「まあ、10年、20年後になれば話は変わるさ。それまでは多少輸送費を掛けるのも織り込もう」
「南方と同じく、王都までリベラ商会の輸送隊に便乗させて貰えば安く上がるでしょうしね」

 使えるものは何でも使おうというクロードに、それも仕方が無いとローザリカは頷いた。拠点の次の問題は、型紙だ。万人が着れるような衣服のパターンを作るためには、個人の寸法を見てぴったり合わせた衣服を作るのとは多少違った技術が要るらしい。その意味で行けば、既存の工房を買い取りたいとクロードは言う。店舗に蓄積された過去の型紙の数々は、夜明けの花束(ブーケ・ド・ローブ)のデザインを考える上での立派な資産なのだ。

「廃業を考えている工房が無いか調べてみます。王都の工房を抑えられるなら最高ですが、知財を買うだけなら王都でなく他の地方の工房でもまあ構わないですしね」
「他国の人間も珍しい物を考えてくれそうだと思う。ヒューマン社会であってもシャルガネの衣装は面白かった」
「なるほど。王国で商売する以上、王国の基本デザインを抑える必要はありますが、複数デザイナーを確保するなら国外っていうのも選択肢ですかね」
「いずれは異種族も……、とは思うが、そこまで考えるのは先走りすぎかな?」
「できるかどうかとは別に、色々と考えておくのは良いと思いますよ。始めてしまえば、何がどう転ぶか分かりませんしね」

 ひとまずそういう事になった。獣寄りのハーフビーストやリザードマンまで考えると話は変わってきそうだが、とりあえずは多数に通じるものを生み出すのが先決である。受け入れられてしまいさえすれば、横へ広げることはそれほど難しいことでは無い筈だ。ローザリカが異種族まで視野に入れている理由には、これもパンクリアース学園の存在があった。改革によって門戸を開いている今の方針が続けば、必ずそこに需要があると踏んだのだ。

「俺も、庶民向けの既製品で学園っていうのは将来に向けて良い着想だと思いますよ。あそこの生徒は平民でも、金があるか、金が出るバックがある」
「ゆくゆくはそういう裏付けがない者にも、手が届くような金額で売りたいのだけれどね」

 手縫いで作る以上、時間も人手もある程度以上は削りようが無い。デザイナーと針子への報酬を考えれば、そこまで安くはできないだろう。ただ、コストダウンのための努力は必要だ。先も話題に挙げた古着の解体と再利用といった原価のダウン、統一した型紙の利用による分業、若手針子の積極的な登用など、打てる手は打っておきたい。

「何なら学園を間に挟んで、苦学生の購入時に補助を出して貰う制度とか提案してみたらどうですかね」
「最後の手段としては、それも考えておく。けれども、まずいろいろ試してみたい」

 品質とコストと、どこで妥協しどこで拘るかというのはファッション業界の永遠の課題なのかもしれない。

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 買い取りなり新設なりで工房を手に入れることと、王都出店への根回しという二点は長期計画である。が、ブランドの売り込みは可能であれば早い内に始めてしまいたい。特に、黎明の宝珠(ジョワヨ・ド・ローブ)の方は技術的には既存の既製品に独自性をつければ良いだけだから、価格帯とターゲット、コンセプトを伝えればすぐにでもサンプルを作って貰うことは可能だろう。

「そのモデルには僕がなっても良い」
「確かに、適役じゃないですか? お嬢は顔とスタイルは間違いなく良い」
「そうだろう?」

 ふんす、と鼻息も荒いローザリカに、クロードも珍しく素直に頷いた。誰もの目を引くローザリカの容姿は、天性の美貌に若さに加え、一言では語れない努力の賜物である。自信もあれば自負もあった。

「王都出店の話とは逆になりますが、お嬢がモデルで売り出すなら今すぐの方が良いでしょう。ケレス侯爵夫人となれば上級貴族で、付き合うのは既製服を着るような層から外れますしね」
「最終的には、そこまで狙いたい気もするんだが」
「お嬢は上級貴族の社交界では新参の小物です。ファッションリーダーって奴は見た目だけじゃなく、誰もが見上げるポジションである必要があります」

 これがディオール伯爵令嬢として下級貴族主体の茶会に出るとしたら、立ち位置が逆転する。家の財布の紐の固さ次第では既製服を着る機会もある男爵や子爵といった令嬢からは、上級貴族の侯爵家へ正妻として嫁入りが決まっている伯爵令嬢というのは間違いなく憧れられるポジションである。それに、普段から既製服を見慣れているだけに、『他の既製服と比べて』素敵なデザインとして目が向くかもしれない。

「間違いなく素体は良いので、見た目で話題を取るにはお嬢は最適かと」
「……さっきから微妙にひっかかるんだが、褒められている、のか?」
「もちろんです。茶会はともかく、夜会であれば次期ケレス侯爵にも勉強の合間の良い息抜きになるでしょうし、適度に誘えば良いんじゃ無いですかね」

 などとニヤニヤしているクロードであるが、この男も顔は良い。そして、パンクリアース学園を卒業し、貴族のお抱え商会で代行の地位にあるというのは平民の中では成功者の部類であろう。つまり、庶民の上澄みの中でも憧れられるポジションだった。

「代行殿。見本ができ次第、商談なり、会合なりで出て行くときは、代行殿も広告塔になって貰うのでそのつもりで」
「なるほど。大人向けのデザインも必要になるでしょうし、その辺はしょうがないですね」

 クロードの受け答えは余裕そうであった。まあ、いま身に着けているのも上等な部類の既製品であろうし、見た目にも気を遣っているだろうから、看板であるという意味では普段と意識の変化はないのかもしれない。

「何なら、商会全員そのつもりでやればいいんじゃないですかね? 女性がいないのが難ですが、年齢層は上から下まで揃ってますし」
「ああ、その問題もあったか。販売もオーブ商会でやるつもりだから、接客にあたる女性を今のうちから教育する必要もあるだろうな。人選と人数は任せるよ、代行殿」

 最初に連れてきた人員は文句のない働きぶりを見せており、ローザリカはクロードの能力を信頼している。もちろん、最終的な判断はまだ顔を合わせて行うつもりだが、いずれ事業規模が大きくなってくれば任せきりになることもあるだろう。

「仰せのままに。教育方針に御注文は?」
「平民や異種族へ差別感の出ないよう。何も思わないというのは王国民である時点で難しいかもしれないから、とりあえずは態度に出ないのを最低ラインにして欲しい」

 黎明の宝珠(ジョワヨ・ド・ローブ)の方は、商品と人が揃えば動き出すこと自体は可能なはずだ。いまのうちに広告塔が興味を引いておき、オーブ商会の名前とローザリカの顔を覚えて貰えば良い。もちろん、こちらに興味を向けた令嬢や令息の顔と名前を控えるのも当然だ。

「正式な販売開始の時点で、開店を待ち望んでいる人が一定数いる、と言う状態にしたいな。売り切れないように加減はしないといけないが」
「こちらから売りにいく数で加減したらどうですかね? 爵位がどこであれ貴族であれば店に並んで買いには来ないでしょうし」

 ローザリカの知り合いには並んで買い物に行く令嬢令息も結構いる気がするが、冒険者などしている時点で変わり者の部類だろう。既製品だろうと自宅に売りに来させたものから選ぶことに慣れているはずだ。そこをコントロールすれば、品切れせずに回せるとクロードは考えているらしい。ということは広告塔役のローザリカもそのつもりで接した方が良いと言うことであろう。

「黎明の宝珠(ジョワヨ・ド・ローブ)は、すぐに手に入らないかもしれないという希少感も含めて伝えておくのが良さそうだな」
「ええ。実際にそうなるのが望ましいですしね。万が一売れ残りが出た場合も在庫にはせず、一度素材に戻しましょう」
「ああ。需給バランスを考えれば、サイズによっては売れ残る物は出て当然というところもある。そこは織り込んで値段に反映するしかないな」

 頭の中で計算してから、ローザリカは考え込む。需要がないサイズの価格だけあげるのか、それとも全体の価格に織り込むのか。高級路線である以上、既製品と言ってもその人に合わせた手直しなどが掛かるのでその費用として個々に考えるのが良いだろうか。同様の問題は、夜明けの花束(ブーケ・ド・ローブ)にもついて回るかもしれない。

「では、当面は黎明の宝珠(ジョワヨ・ド・ローブ)の生産に協力してくれる工房の確保と、サンプルを用いた売り込み。並行して夜明けの花束(ブーケ・ド・ローブ)の為のデザインの作成や人材育成と、あとは生産面の基盤確保、ですかね」

 クロードの確認に、ローザリカが頷き。正式に企画が動き出すこととなった。クロードと同級生組はそちらにかかりきりになるだろうから、魚の輸送は誰か雇って任せる必要もあるかも知れない。

「黎明の宝珠(ジョワヨ・ド・ローブ)は春の売り込み次第で秋には売り出したい所ですね。できるかどうかは代行とお嬢に掛かってますが」
「ふざけるな。お前も服着て見本やれよ」
「というか、協力工房の目処を立ててから威勢の良い事を言うんだな」

 目先の事でわいわいやり始めた連中に、ローザリカが長期計画についても見通しを問う。クロードは状況を簡単に整理し直し、現時点での予想としては4年程度を見た方が良い、と回答してきた。ただし、それはあくまでも仮定である。

「正直に言えば、今の時点では未定が多すぎて見通しが立ちません。王都への出店と、工房の確保状況、あとは人の採用の進展についてちょくちょく中間報告と見直しをしたいところです」
「わかった。僕も忙しくなると思うが、時間を作るようにする」
「最悪、文書でも構いませんが、大事な事は顔を合わせて話した方が良いですしね。少なくとも、本店の場所を決めるときにお嬢がいないんじゃ話にならない。ま、それ以外もできる限りはそうしましょうか」

 いずれ全員が揃うのは難しくなるかもしれないが、そうなるまでは。そう言うクロードに、その日が待ち遠しいような、そうなったら寂しいような。そうなる未来が訪れることには疑いを持たず、ローザリカは頷くのであった。

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アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0