【鬼哭】かくて小鬼は神理に挑む

ガルシア

クーネ・ルウ様のご協力で、刻印の影響を脱する方法も一つは分かりました。他にも色々な方が実験されているようですし、時間の問題で刻印の件は解決しそうでしたのに。

ストレガ・L・リベルガストラ

……まさか、サチコ殿がドンを裏切るとは、思いもしなかったのだ。これもイダの刻印の影響なのだ?

ガルシア

私が刻印に精神を委ねた時は、暴力的にはなりましたが理性を失いはしませんでした。敵と味方も、判断がついていたと思います……。

ストレガ・L・リベルガストラ

先祖返りにも、原始に帰ってしまう者から、話は出来る程度の者までいるようなのだ。サチコ殿はきっと理性を残したままの側で、それでもドンに敵対した、のだ……? 情報が、まだ足りていないのだ。

ガルシア

アダムが捕まっていると聞きます。彼ならば、何か知っている事があるでしょうか。

ドン・ゴーフルが目覚めたと共に、サチコがイダと手を組み離反した。果たして、ゴブリン種族の未来は何処へ向かうのか。
(1月9日より 【鬼哭】かくて小鬼は神理に挑む 連動シナリオリリース予定!)

assignment【鬼哭】かくて小鬼は神理に挑む 概要

「かくて小鬼は神理に挑む」は帝国のゴブリンがドン・ゴーフルの支配から物理的にも精神的にも離反しつつある現状から、やがてゴブリン全体の命運に関わっていく連動となります。ロスガリア大陸の人類種族の中では最も新しく不安定なゴブリンがどのような未来を掴むのか、この連動の行く先で示される事でしょう。

assignmentここまでの流れ

メアリー王女が冒険者達の協力を得て稼働させた「王家の耳」。無作為に集まってくる情報に耳を傾けたメアリーは、シルトラース帝国南部にてゴールディから移住したゴブリンに関わる騒動が多発している事に気が付く。ドン・ゴーフルやレイウェスト・バルダスも勿論その事態は把握しており、頭を抱えていた。
(2022/12/9追加)
冒険者や帝国民の協力により、暴走ゴブリンの多くは不殺で対応された。しかし、いまだ事態の収まらぬ現状で、ドン・ゴーフルはレイウェスト皇子や帝国復興を支える関連諸国へ会合を呼び掛ける。場所は、騒動から遠い辺境都市群アキュアリスタ。その席でゴーフルは事態の真相を語り、対応を約束するも――。護衛のアダムに突如刺され昏倒する。 ゴーフルの代理となったサチコは、暴走ゴブリンへの苛烈な対応を宣言した。  
(2023/1/8追加)
昏睡から覚めたドン・ゴーフルはサチコの行動を叱責する。イダの刻印の解除方法も判明し、ゴブリンに纏わる騒動は沈静化するかと思われた。しかし、サチコはドン・ゴーフルを『解放』する為、自らがゴブリンを導く神となる事を宣言。イダと手を組む事を告げ、手勢を引き連れてヴィントから消えた。レイウェストはドン・ゴーフルとの友誼を重んじ、父に続いて母とも道を分かつ。一方、病床のドン・ゴーフルも姿をくらまし、故郷たるサウゼル大樹海を目指していた。

person_pin関連NPC

ゴールディのマフィア最大の「ブラックデス」首領であり、実質的なゴールディの首長。大脱出を指揮した本人であり、ゴブリンロードとしてもかなりの長命。メドゥの指先に狙われているという噂も。

《本連動での動き》

帝国に移住したゴブリン達の『動揺』を知り、頭を抱えているようだ。
今後の相談と対策の為に呼び掛けた国際会議の席で、自らの護衛であったはずのアダムに刺され意識を失う。リブラネスタに搬送後、意識を取り戻し姿をくらました。

ドン・ゴーフルが擁するマフィア「ブラックデス」の幹部にして実働部隊。ドン・ゴーフルの実子でもある。あくまでも現場思考のため、戦略的な思考は不得手。攻撃魔法としての「消えない炎」を操る授恵者。

《本連動での動き》

ドン・ゴーフルの身体を案じつつ、厄介な動きを見せる同胞たちに苛立ちの念を感じている。
ドン・ゴーフルが倒れた事を受けブラックデス首領代理、ゴールディ代表代理となり、ドンの意志に沿わないゴブリンへの苛烈な対処を宣言した。目覚めたドン・ゴーフルから叱責を受けるも、自らがゴブリンの神となるべく手勢を率いて蜂起する。

亡国となった帝国の皇族の、唯一と思われていた生き残り。皇位継承順位こそ八位と低いが、皇帝ヨゼフとその子女である第三皇女イダとの間に生まれた生粋の皇族と言われている。帝都から脱出して以降、各国の支援や冒険者達の助力を受けて帝国南部を奪還し、その後も帝国民の安住の地を確保しようと努めている。

《本連動での動き》

ゴブリンに起きた異変に不自然さを感じており、できるならば不殺で対応したいと考えている。
ドン・ゴーフルが倒れた後も、サチコの怒りを止める立場ではないが内々の希望としては不殺を続けたいようだ。ドン・ゴーフルとサチコの訣別に際し、母イダが背後にいる事は把握しつつもサチコではなくドン・ゴーフル側に着く事を宣言した。

シルトラース帝国現皇帝ヨゼフ・バルダスの第三皇女であり、皇妃(側室)でもある女性。第八皇子レイウェスト・バルダスの実母として知られている。『大陸一の美姫』と謳われた美貌の姫だが、ヨゼフ帝と婚姻し成人とされた後の彼女の姿を見た者は極端に少ない。1220年の夏、エフレムに命じて『天霧りに消ゆる幽界樹』を召喚させ、帝国を崩壊させた人物とされている。人を超えた『超越者』となり、神の領域にも近づいているイダは帝都の幽界樹と多数のクリーパーを支配下に置いている。

《本連動での動き》

イダの刻印を通じてゴブリンへの支配力を発揮し、ドン・ゴーフルの影響から『解放』しようとしているようだ。サチコを篭絡し、彼女に『新たなゴブリンの神』となる事を提案する。

元メドゥの指先幹部「緑の親指」。ゴブリンとリザードマンのハーフで、己の容姿にねじくれたコンプレックスを持つ。ドン・ゴーフル、そしてヒトとの混血を意味するであろう『知恵あるゴブリン』に憎悪を向けていた。ドンゴーフルを殺して、自分も死にたいと願っていたが、冒険者により捕縛される。帝国南部都市ヴィント奪還直後に再び姿を現した時には、無口かつ無表情、ドン・ゴーフルに従順な手下となっていたが……。

《本連動での動き》

イダとの遭遇後もドン・ゴーフルの強力な直接支配の下にあると思われていたが、イダにより強引に操られてドンを刺した。アキュアリスタ遺跡に逃げ込み、遺跡の謎の装置を操って逃走しようとした所を捕縛された。

帝国東部鎮守都市エスタルの生き残りの一人。シルトラース帝国近衛連隊出身の元軍人で帝国魔導院エスタル支部長。黒づくめの外見がトレードマークの授恵者であり、今は冒険者ギルドに所属している。最愛の妻と娘を帝国崩壊時に失って以後しばらくは攻撃性の塊のような時期もあったが、現在は生来の子供好きの性格が復活し、他人の子供の世話を焼いていることが多い。

《本連動での動き》

ゴブリンの異変について、独自の視点で研究を進めようとしている。刻印の影響を遮断する方法を研究し、神に近い人物か、神の被造物による遮断方法を知る。ヴィントのダンジョンではない、別の神代の遺跡として王国西部砂漠の遺跡の利用を考えているようだ。

長い銀髪を後に纏めた紅眼の女性。シルトラース帝国遊牧民族の衣装をまとい、長大な骨剣を有する。帝国北部鎮守都市オルセンを帝国滅亡時の幽界樹の出現とその後の混乱から救い、絶大な感謝と敬意を向けられている。また、人知れず帝国都市ダルトートの幽界樹へ単身で挑み、瀕死の状態に追い込んだが最後の止めを欠き、後の暴走を招くなどうっかりした面もある。

《本連動での動き》

ゴブリンの異変に対応できるかどうか、試してみようとしている。どうやら少人数であれば、彼女に直接指示を受けて配下に入っている状況と認識した場合、イダの刻印を振り払えたようだ。

エーテルを用いて自分の表面から毒を齎す能力を持つ。かつては倫理観が稀薄であり、メドゥの指先の構成員として子供だけのチーム『デゼスポワル』を率いていた。ささいな迷惑行為から場合によっては命に係わる妨害までを分け隔てなく行っていたが、レイウェスト皇子の暗殺事件に連座し捕縛、皇子により恩赦される。その後の冒険者や帝国兵の対応もあり人生観を一変させた。現在は帝国所属の薬師(駒)として過去の贖罪の為、日々勉強と仕事にあたっている。

《本連動での動き》

メドゥの指先構成員時代に帝国、ゴールディ双方に様々な被害を出していた。レイウェストのように相手を殺しかけたようなケースもあり、中には今では相手に忘れられているような些細な事もあるのだが、当人はその全ての贖罪の為と考え、この騒動を解決するべく行動している。

menu_book関連用語・情報

帝国復興とゴブリンの移住

レイウェストらの支配地域であるヴィント付近には、幾つかの移住ゴブリン達の村がある。種族的な問題に配慮し、ゴブリンのみで構成されている村が多いが、人とゴブリンの混在する村もある。住民はブラックデスの構成員か関係者であり、ドン・ゴーフルの指示のもと帝国民とは決して諍いにならぬよう、慎ましく生きていた、はずであった。
(2022/12/9追記)
冒険者の介入により、人とゴブリンの争いの幾つかは防がれている。

過去の経緯

1221年初頭、帝国南部鎮守都市ヴィントを奪還したレイウェストらが直面したのは、今後も帝国の領域を奪還していくには、各国へ避難した難民達の帰還も織り込んだとしてもなお、帝国民の生き残りがあまりに少ないという現実だった。一方、ロスガリア内で、実際にはゴールディ一か所でしか人間扱いされないゴブリンの現状に思う所のあったドン・ゴーフルはレイウェストへゴブリン達の復興援助と引き換えに労働力としての移住の権利を要請する。帝国の生き残り以外に今の帝国へ移り住みたい者などそう多くはいない現状、ゴーフルの申し出はありがたいものであった。

暴走するゴブリン達

帝国領土へ移住したゴブリンの一部が先祖がえりを起こしたように狂暴化し、人類への攻撃衝動や仲間内での闘争に向かっている。一時的に思考を失いゴブゴブ言って暴れる(そして後で元に戻って反省する)暴走もあれば、理性を残したまま反抗的になるケースもあるようだ。
(2022/12/9追記)
単なる状態異常ではなく、薬物(ゴブリナ草)による鎮静や解呪などのスキルによる解消は出来ない模様。

グリーンナイフ

帝国南部にて、暴走したゴブリン達の一部が結成しようとしている新興マフィアの名称。かつてブラックデスに反抗し、ドン・ゴーフルに恭順していた元レッドブーツ、ホワイトライフの幹部なども含まれており、短い間に名前だけが随分広まっているようだ。
(2022/12/9追記)
決起直後に声をあげた多くのゴブリンが捕縛されたものの、暴徒ゴブリンの間で反体制組織として草の根のように広まっているらしい

ドン・ゴーフルとゴブリンの文明化(2022/12/9追加)

大脱出とそれ以後のゴブリン種族の文明化は、特異個体ドン・ゴーフルの影響によるものであり、彼が失われれば幾つか世代を経て元の亜人に帰っていくと推測される。【大変動】でかつての同志の子孫が野生に帰りつつある姿を見た事で、ゴーフル自身はこの事に確信を持った。

イダの刻印(2022/12/9追加)

一部のゴブリンに刻まれた、帝国皇女イダ・バルダスからの精神支配を示す魂への刻印。痣など何らかの形で外見上に出てくる場合もあり、出てこない場合もある。ドン。ゴーフルの影響力と拮抗しており、帝国のゴブリン族動揺の原因の一つとみなされている。
イダの刻印を受けたゴブリンに接触したゴブリンにも伝染していくらしい。伝染力は、イダから受けた精神支配が深い個体程強いと思われる。

イダの刻印の対処法(2023/1/8更新)

ドン・ゴーフル自身の言葉によれば、イダに比肩する様な神に近い存在の影響下に置くことで刻印を排除できると推定される。帝国と言う場所にはそれ以外の方法もあるような事を匂わせていたが、アダムにより刺されその後の言葉は不明となった。
(1月8日追加)
その後、実際に強力な人物による解除が試行され、半日ほど掛ければ少人数に効果があることが判明した。また、神代の遺物の中に隔離する方法が調査により発見されているが、そちらはまだ実験されていない。

水上都市アキュアリスタ(2023/1/8更新)

ロスガリア大陸北東、辺境都市郡の遺跡都市の一つ。
ヴィントで集まるのは微妙な時期と判断したサチコの進言で今回の国際会議の舞台となった。ドン・ゴーフルを刺傷したアダムが遺跡に逃げ込んでいる。
紀元前より存在するとされる広大な湖内部に沈んだ遺跡部と、遺跡の中でも大きい建造物の最上部を利用して作られた行政区などの中心部、遺跡上に建築したり浅瀬を埋め立てることで建造された外縁部からなる。
都市内は徒歩での移動も可能だが、ボートでの移動もよく利用されている。同都市では冬季に行われる『水神祭』が最も知られている。原因は不明であるが、湖は一年に一度、冬季に大きく水位が下がり、遺跡の外観の一部が明らかになると同時に遺跡への進入が可能となる。
この時期は冒険者、研究者、加えて、その景観を見ようと観光客が押し寄せる時期であり、『水神祭』は彼らをターゲットとした、大陸全土で見ても最も大きな祭りの一つである。なお、遺跡自体は強固な素材で建築されており、破壊による遺跡調査や資材採集が困難であることから、長年に渡り探索・研究の対象となっている。現状確認されている遺跡内部への入り口は都市中心部の深層に一つのみであることも手伝い、調査用・探索用に遺跡を開放する際の利用料は同都市の貴重な収入源となっている。
遺跡は巨大な石材を組み合わせて作られており、巨大な基部と、そこから様々な方向に伸びる直方体様の構造物が組み合わさったような形をしている。
水位が下がった際に見ることができる威容はこの世のものとは思えない景観であること、夜間はその外壁の紋様が明るく発光することから、観光客の人気も根強い。
(1月8日追加)
ドン・ゴーフルを刺したアダムが逃げ込み、別空間へと通じる何らかの装置を作動させていた。アダムは逃亡を阻止され、捕縛されているがその装置の正体、通じている先、利用法共に不明である。

 リブラネスタへ移送されたドン・ゴーフルは、彼に期待する多くの声を聞きながら、こんこんと眠り続けていた。彼の未来を夢に見ることを期待された預言の魔女オペラは、幾度も首をひねっている。
「これまで、望んだ夢を見る事ができなかったことはあるのじゃがのう。ドン・ゴーフルの夢は、見る事は出来たのに先が見通せなんだ。こんな事は初めてなのじゃ」

 彼が意識を失っている間に起きた事は多い。彼の力を削いだ要因と思われる『イダの刻印』には、様々な者達が様々な手段で対策を試行していた。ゴーフルが気絶前に口にした、イダやゴーフルに匹敵するような実力ある存在による影響力の上書きは、クーネ・ルウの協力により実証された。しかし、半日近い時間をかけて、少人数が解放されたに過ぎず、ペースとしては緩やかなものだ。他方、クライス・アクバーは調査の結果、神代の活きている遺跡を利用して隔離する方法を発見したが、まだ検証段階だ。クーネ・ルウの実験はヴィントのダンジョンで行われたとはいえ、その解放は遺跡による物か彼女自身の影響による物か不分明だった。

「だというのに、俺ァなんで目覚めた? 俺の予想してねェ何があった」

 ドン・ゴーフルの負担は、単純に言えばイダの刻印持ちの人数と比例している。年が明けてすぐに意識を取り戻したドン・ゴーフルは、まずイダの刻印の大量処理方法が確立したのかを尋ねて、先の回答を得た。つまり、目処こそつきつつあったが、実際の刻印解放は進んでいない。もちろん、気絶していた自分がゴブリンの刻印を解除しに回れたはずもない。ブラックデスの無口な構成員から詳しい経過資料を渡され、読み進んだゴーフルは眉間に皺を寄せた。

「サチコ、テメェ……。俺の命令に背きやがったなァ?」

 サチコらの『先祖返りゴブリン』の粛清は幾つかの集落で冒険者達に阻止されたが、それ以外の場所で人知れず処分されたゴブリンも皆無ではない。つまりは、物理的に人の数を減らしたと、ドン・ゴーフルは理解した。

「あいつ、何を考えてやがんだァ? そんな手を取らねェでも、半月もすりゃあ俺ァ目ェ覚ましただろうによ」

 征竜の巫女ヒルルクによる襲撃未遂については、冒険者の尽力により彼に至る事すら無く終わった為、ゴーフルは物理的な意味での脅威が迫っていた事は知らない。自分が残した情報からでも、イダの刻印への対処方法は誰かが思い至って処理が行われると彼は踏んでいた。実際にそうなってもいる。サチコは確かにドン・ゴーフルを盲目的に敬愛しているが、ここまで暴走する程であったか?

「……チッ、そう言う事かよ。アダムだけじゃなく、サチコもか……。だとすると、ヴィントの実行部隊は、アイツを止めはしねェな」

 彼の想像が正しければ、サチコが連れて行ったブラックデス実行部隊には、きっとイダの刻印が深く刻まれているだろう。イダから支配権を取り戻すにも、一朝一夕ではいくまい。リブラネスタに滞在している今のドン・ゴーフルには動かせる手駒が少ない。ゴールディに戻って戦力をかき集めてサチコにぶつける事が、ゴブリンの数そのものを減らし、ゴーフルを無理やりにでも救いたいサチコの狙いなのだろうか。

「……いや、違ェな。アイツがそんな浅ェ考えで動く訳はねェ。俺がどう動くか、それに合わせて何をしでかすか? イダの野郎……まさか、そこまでするか?」

 病室にいる護衛のゴブリンには感情が薄い。サチコがここにいたなら、『女性ですから野郎というのは不適切な表現では』などと煩く指摘してきただろうに。ドン・ゴーフルは菓子を貪り喰い、知恵熱が出そうなほどに頭を回転させ、試行を巡らせ、流れを予測し――、置手紙一つを残して病室から姿を消した。

 ●
「ドン・ゴーフルが失踪した? 意識を取り戻してすぐに、か」
「身体は快癒していたそうですが、そもそも彼の状態は良くない、と聞いています」
「セルッティ殿が知らせてくれた『置手紙』には、サウゼル大樹海を目指すとあったのだな? 知らせが届くまでの時間を考えれば、ゴールディ入りしている頃だろうか」

 バルディオン将軍から、至急の知らせを聞いたレイウェスト・バルダスは考え込んだ。征竜の巫女ヒルルクが一度は彼を殺そうとした事は、把握している。事態は、かの『世界の守護者』が注目する状況だ。そう、注目である。

「『神座に至らんとし 世に害を成すものを 殺せ』、か。征竜よ、私は彼が世に害を為すとは思ってはいない。今しばらく、静観を許されよ」

 きっと、この独白もあの竜は聞いているだろう。巫女の自由判断を許しているのは、おそらくはまだ征竜が行動すべきと考える段階に至っていないからだ。果たして、ドン・ゴーフルは、本当に『神に至らんとしているのか否か』と、『世に害を為すのか否か』。神に届かないのならば世に害を為しても竜は動くまい。神に届いても、世に害を為さずば動くまい。いずれにせよ、彼が目覚めて何かを始めたのであれば、それを見守る必要がある。いや、同盟者としては、支援も考えるべきだろう。レイウェストは、彼とゴールディのゴブリン達へそれだけの恩義を感じている。

「騒がしいな。何ごとか。……至急の知らせだと? これ以上何があったのだ」

 執務室の外で護衛と、何者かが言葉を交わしているのに気付き、バルディオンが入室を許可する。息を荒げた帝国軍人は、呼吸を整える間も惜しんで声を挙げた。

「伝令ッ。ブラックデスのサチコ殿が、ドン・ゴーフルから離反。イダ・バルダス皇妃と手を組み、自らがゴブリンの神となると宣言したとの事」
「……母上。あなたは、斯様に大陸に乱を生みたいのか」

 事態は、静観を許さないようだ。ゴブリン同士の戦争に、帝国が巻き込まれる事は望ましくは無い。しかし、場所が国内であれば態度を表明せざるを得ないだろう。レイウェストは、サチコとその一派へ国外退去を指示する事を決めた。それはドン・ゴーフルを同盟者として継続して選んだという意思表示であり、母との決別を意味している。

「ドン・ゴーフルの安否は心配だ。その確保と、何がやりたいのか分かれば援護を冒険者に依頼したい」
「国外の事ですからな。それが良いでしょう。それと、アダムは捕縛されています」

 アダムは何かを知っているかもしれない。しかし、彼は非協力的で、尋問がうまく行くかは怪しい所だ。ドン・ゴーフルが姿をくらませたいま、レイウェストは同盟国の主として、事態の中心近くに立たざるを得なくなっていた。

 ●
「そうですか。ドンが御目覚めに」

 その知らせを、サチコはヴィント郊外で耳にした。背後から棚引く煙は、敬愛する首領に背いた彼女の罪を示している。それでも、刻印を刻まれたゴブリンの数を減らすことがドン・ゴーフルの負担を減らす事だと、少し前から彼女は確信していた。――誰に、聞いたのか。

 『大好きなお父様の為に、憎まれ役を買って出ても構わないなんて、とても素敵で美しい父と娘の愛情だわ。私には縁がないけれど、家族の愛を見守るのは素敵ね』
「……イダ。お前はドンを救う方法があると言いましたね。私は覚悟を見せました。約束を果たして頂きましょう」
 『ええ。ええ。約束ですものね。教えてあげる。貴女が新しいゴブリンの神になる方法を――。でも、貴女は彼ほどの力は無い。命を懸ける必要があるわ』
「わかっています。問題はありません」
 『そう。ならば始めましょうか。ああ、今年も素敵な年になりそうね!』

 執筆:紀藤トキ
アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0