【DA】リーンエスの耳

海神 江流
『ノベルタイトル:今は届かぬ声を、拾う為に』おおくまねこ
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「おっと、そろそろ約束の時間だな。戸締りをして、先生の所に行こう」
パンクリアース学園二年生にして1222年度生徒会書記の海神 江流 は立ち上がると、生徒会室の戸締りを始めた。学園は今夏季休暇中だが、部活などで出入りする学園生の為に校舎は開放されている。江流はちょっとした用事があったので、自分の仕事机がある生徒会室に籠っていたのだ。
「もうじき8月も終わりか。月日が経つのは早いもんだな……」
江流は窓から、中庭にそびえ立つ巨大な黄金像 を眺めていた。別にアレが見たくて窓を開けたわけではないが、生徒会室から外を眺めようとすると、嫌でも目に入るのだ。ちなみに江流が生徒会入りした時には、あんなものはまだ土台すら無かった。そういう意味では、あれも時の流れの象徴かもしれない。
「俺もそろそろ、公約実現の為の具体的な段取りを考えないとな……」
生徒会の役員はみな、選挙公約を掲げた上で選挙に出馬する。中庭の巨像も現生徒会長の公約によって誕生したものだ。もちろん、江流も選挙公約 を掲げた上で、生徒会役員に選ばれた。
「この学園に、冒険者ギルドの窓口を設立したい」
それが江流の掲げた公約である。パンクリアース学園が存在する王都 は大陸有数の大都市であり、冒険者ギルド支部が存在する。にも関わらず、江流がこの選挙公約を掲げたのは、学園に関わる冒険者ギルドへの依頼の多さを目の当たりにしたからだ。学園生が依頼を出す際に敷地の外まで出て依頼を出しに行くのは煩わしいだろう、などという単純な理由ではない。
「現状の体制ではギルドに依頼が出せるのは経済的、時間的に余裕のある学園生か学園側の人間ばかりだ。いずれ、冒険者ではない平民や異種族の生徒も広く受け入れるのなら、本当に支援が必要な立場の声を拾い上げられる体制が必要だ」
リーンエス王家とフォルトゥナ学園長の推進する「貴族の為の学園」から「開かれた学園」への体制変換は、学園に急激な変化をもたらした。そのため、王党派と貴族派学園生・教師の対立や、貴族と平民の学園生の諍いを原因とする多くの争いを生んだ。その結果、冒険者ギルドには多くの学園生からの依頼が出されることとなり、江流自身も学園生同士の決闘騒ぎなど、様々な事件の解決に身を投じた。そしてその時、感じたことがある。
「学園生同士が揉める時ってさ。たいてい被害者は平民や異種族なんだよね……」
江流はため息を吐く。学園に限ったことではないが、権力者の横暴に泣かされるのはいつだって弱者だ。その構造を変えることはたとえ江流の目指す神仙になれたところで不可能だろう。
「だけど、せめてこの学園の中だけなら。この学園が、『学びたいもの全てに学べる環境』を目指すって言うなら。立場の弱い人の声をちゃんと拾い上げられる道筋を作ってあげたいんだよね」
それが、江流が学園に冒険者ギルド窓口を作りたい理由であった。
●
江流は学園におけるギルド窓口設立への動きの周知、ギルドの実務を自身で体験し、事務手続きとして必要な事項の確認をし、誘致に向けてできることはしてきた。だが、まだギルド窓口設立の為に足りないものが三つある。
一つは場所。一時的に借りるだけならともかく、継続的に学園の施設の一部を占有し続けるとなると、それなりに大変であることが判明した。
二つ目は人員。学園には食堂や購買部があるから、一般的な「冒険者の店」のように飲食店や宿屋のような機能は必要ないが、事務処理に長けた人員が必要だ。
そして三つ目にして最大の課題は、学園からの資金援助である。江流の理想を叶え、平民や異種族が気兼ねなく依頼を出せるようにする為には、決して安くはないギルドへの依頼料を学園に肩代わりしてもらえる仕組みが必要不可欠だ。
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「学園内にギルド支部を作るのはかなり難しいみたいなんで、『嘱託』の形式で行こうと思うんですが……モルガーナ先生はどう思います?」
江流は学園教師の意見を聞くべく、学園における自分の『後援者』であるモルガーナ・シャトレーゼ子爵の研究室を訪れていた。彼女は江流が学園に入学する際に江流との「取引」に応じて推薦書を書いてくれた王党派の家系の教師で、冒険者そのものに対して好意的な貴族でもある。
「嘱託って支部とは違うの?」
「はい。学園内にギルド支部を置こうとすると、学園内に学園とは別組織が存在することになるので、学園長や校長だけではなく、法衣貴族の承認とかもいるみたいなんですけど、嘱託だと、ギルドからの業務委託契約になるので、かなりハードルが下がるんです」
それが、江流の見つけたギルド窓口設立の為の最短ルートだった。学園内にギルド支部を置くのは江流の「政治力」では困難と言わざるを得なかったが、ギルドの嘱託職員を置くだけなら「個人事業として学園の敷地の一部を借り受けるための契約」に落とし込めるので、契約の規模はかなり小さくなる。そのうえ、冒険者ギルドからリーミルのような正規の職員を派遣してもらう必要もない(無論、実務能力に関してはギルド職員相応のものが求められるが)。
「なるほど、学園に他の組織を入れるのは手続きがかなり面倒だものね。クラブ以外の組織を作ろうとするだけでも大変だし」
「ええ、それはもう身に染みてます」
ここ数か月の苦労を思い出し、江流は苦笑した。
「でしょうね。二年間学園に通ってればもう承知でしょうけど、貴族社会は伝統を重んじるから。女の私が爵位を継承する時にどれだけ揉めたかの話、聞きたい?」
「大変興味深いお話なんですが……また別の機会にお願いします。もうじき下校時刻になっちゃうので」
江流は苦笑し、女教師の長そうな愚痴を華麗にスルーした。さも興味深そうに見せつつ断るのは、江流の年の功の賜物である。
「そう。それは残念。……で、嘱託で行くなら分かったけど、ここに来たからには何か私に相談があるんでしょ?」
「ええ。嘱託契約なら学園にギルド窓口を誘致することはできそうなんですが、嘱託職員は学園の人間である必要があるので。もし、興味がありそうな方がいれば紹介してもらえたらと」
「ああ、なるほどね」
モルガーナは合点がいった。冒険者ギルドの職員ならば、常に一人は学園に常駐していることが望ましい。留守がちな冒険者学園生だけでは不安があるのだろう。あとは、貴族や豪商が多い学園教職員に「ギルド職員として働きませんか」と声をかけても、反応が芳しくなかった、という所か。
「君は私が副業しなければいけないほど、お金に困ってるように見えるのかね?」と怒られかねないし。
「うーん……心当たりはないかも。学園関係者でわざわざ副業するほど経済的に困ってる人は少ないと思うし。いても隠すでしょ。学園で人を集めたいなら、クラブ扱いの方がいいかもね」
「え、クラブですか?」
「ええ。嘱託ギルドは学園関係者と嘱託職員の個人契約になるのでしょう? ならいっそ、クラブの枠組みに当てはめてしまった方が人は集めやすいと思う。クラブ活動なら学園生にも馴染みがあるものだし、『冒険者ギルドで副業してます』だと学園教職員のメンツの問題もあって首を縦には振りにくい。けど、顧問ならありふれてるからね」
「ああ、なるほど!」
確かにモルガーナの言う通りだ。学園生にせよ、教職員にせよ、(冒険者枠で入学した者以外は)みんなそれなりの家柄の者が多いので、「副業」や「アルバイト」に抵抗のある者は多いだろう。その辺りのマイナスイメージを緩和するためには、クラブ活動という枠組みを借りた嘱託ギルド、という形態の方がやりやすいかもしれない。
「なかなかの妙手ですね。先生、ご助言ありがとうございます」
江流はぺこりと頭を下げ、感謝の意を示した。
「ちなみにクラブの認可条件は知ってる?」
「ちょっと曖昧なんで、教えてください」
「よろしい。まず、部長は学園に正式に籍を持つ学園生であること。クラブ認定の最低人数は三名。これは聴講生でも可よ。あと、部費がたくさん欲しいなら『優良部活』である必要もあるでしょうね。優良部活の条件は『部員全員が成績上位4分の1であること』よ」
「部費……それも重要ですね」
江流は頷いた。平民や異種族などの経済的に弱い立場の者でも依頼を出せるようにしたいなら、学園からの資金援助は必ず必要になる。
「部費って、どういう仕組みで決まってるんですか?」
「学園から支給されるのは活動実績ベースね。あとは顧問や出資者 からの寄付も重要よ」
江流は勧誘できそうな学園生を頭の中で思い浮かべてみた。自分を含めて三人なら問題なさそうだが、実際の活動や江流の卒業後のことも考えると、後輩も勧誘しておくべきかもしれない。それに、部費のことも考慮するとたくさんの人数が必要だ。それも学業と事務能力に優れた、優秀な人材が。
「どう、うまくいきそう?」
「はい、なんとか。部長は俺がやってもいいですし。生徒会役員の任期が終わってからじゃないとさすがに厳しそうですが……あとは、学園には商家出身の子もいますから、そっちの方面にも声をかけてみようかと思ってます。卒業後の冒険者ギルドへの就職の斡旋もおまけすれば、実家の跡取りの目がない子も乗ってくれるかもしれません」
「オーケー。最初に直感した通り、あなたは優秀ね」
江流が照れ笑いした時、下校時刻を知らせる鐘が鳴った。
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「なんとか目途は立ったかな。夏季休暇が明けたら、まずは立ち上げのメンバー集めから始めてみるか……」
こうして江流は公約を実現するための、最後の準備に取りかかり始めた。救われるべき者の、声を拾い上げるために。
「だって。依頼がなくちゃ、冒険者は動けないからね」
「おっと、そろそろ約束の時間だな。戸締りをして、先生の所に行こう」
パンクリアース学園二年生にして1222年度生徒会書記の海神 江流 は立ち上がると、生徒会室の戸締りを始めた。学園は今夏季休暇中だが、部活などで出入りする学園生の為に校舎は開放されている。江流はちょっとした用事があったので、自分の仕事机がある生徒会室に籠っていたのだ。
「もうじき8月も終わりか。月日が経つのは早いもんだな……」
江流は窓から、中庭にそびえ立つ巨大な黄金像 を眺めていた。別にアレが見たくて窓を開けたわけではないが、生徒会室から外を眺めようとすると、嫌でも目に入るのだ。ちなみに江流が生徒会入りした時には、あんなものはまだ土台すら無かった。そういう意味では、あれも時の流れの象徴かもしれない。
「俺もそろそろ、公約実現の為の具体的な段取りを考えないとな……」
生徒会の役員はみな、選挙公約を掲げた上で選挙に出馬する。中庭の巨像も現生徒会長の公約によって誕生したものだ。もちろん、江流も選挙公約 を掲げた上で、生徒会役員に選ばれた。
「この学園に、冒険者ギルドの窓口を設立したい」
それが江流の掲げた公約である。パンクリアース学園が存在する王都 は大陸有数の大都市であり、冒険者ギルド支部が存在する。にも関わらず、江流がこの選挙公約を掲げたのは、学園に関わる冒険者ギルドへの依頼の多さを目の当たりにしたからだ。学園生が依頼を出す際に敷地の外まで出て依頼を出しに行くのは煩わしいだろう、などという単純な理由ではない。
「現状の体制ではギルドに依頼が出せるのは経済的、時間的に余裕のある学園生か学園側の人間ばかりだ。いずれ、冒険者ではない平民や異種族の生徒も広く受け入れるのなら、本当に支援が必要な立場の声を拾い上げられる体制が必要だ」
リーンエス王家とフォルトゥナ学園長の推進する「貴族の為の学園」から「開かれた学園」への体制変換は、学園に急激な変化をもたらした。そのため、王党派と貴族派学園生・教師の対立や、貴族と平民の学園生の諍いを原因とする多くの争いを生んだ。その結果、冒険者ギルドには多くの学園生からの依頼が出されることとなり、江流自身も学園生同士の決闘騒ぎなど、様々な事件の解決に身を投じた。そしてその時、感じたことがある。
「学園生同士が揉める時ってさ。たいてい被害者は平民や異種族なんだよね……」
江流はため息を吐く。学園に限ったことではないが、権力者の横暴に泣かされるのはいつだって弱者だ。その構造を変えることはたとえ江流の目指す神仙になれたところで不可能だろう。
「だけど、せめてこの学園の中だけなら。この学園が、『学びたいもの全てに学べる環境』を目指すって言うなら。立場の弱い人の声をちゃんと拾い上げられる道筋を作ってあげたいんだよね」
それが、江流が学園に冒険者ギルド窓口を作りたい理由であった。
●
江流は学園におけるギルド窓口設立への動きの周知、ギルドの実務を自身で体験し、事務手続きとして必要な事項の確認をし、誘致に向けてできることはしてきた。だが、まだギルド窓口設立の為に足りないものが三つある。
一つは場所。一時的に借りるだけならともかく、継続的に学園の施設の一部を占有し続けるとなると、それなりに大変であることが判明した。
二つ目は人員。学園には食堂や購買部があるから、一般的な「冒険者の店」のように飲食店や宿屋のような機能は必要ないが、事務処理に長けた人員が必要だ。
そして三つ目にして最大の課題は、学園からの資金援助である。江流の理想を叶え、平民や異種族が気兼ねなく依頼を出せるようにする為には、決して安くはないギルドへの依頼料を学園に肩代わりしてもらえる仕組みが必要不可欠だ。
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「学園内にギルド支部を作るのはかなり難しいみたいなんで、『嘱託』の形式で行こうと思うんですが……モルガーナ先生はどう思います?」
江流は学園教師の意見を聞くべく、学園における自分の『後援者』であるモルガーナ・シャトレーゼ子爵の研究室を訪れていた。彼女は江流が学園に入学する際に江流との「取引」に応じて推薦書を書いてくれた王党派の家系の教師で、冒険者そのものに対して好意的な貴族でもある。
「嘱託って支部とは違うの?」
「はい。学園内にギルド支部を置こうとすると、学園内に学園とは別組織が存在することになるので、学園長や校長だけではなく、法衣貴族の承認とかもいるみたいなんですけど、嘱託だと、ギルドからの業務委託契約になるので、かなりハードルが下がるんです」
それが、江流の見つけたギルド窓口設立の為の最短ルートだった。学園内にギルド支部を置くのは江流の「政治力」では困難と言わざるを得なかったが、ギルドの嘱託職員を置くだけなら「個人事業として学園の敷地の一部を借り受けるための契約」に落とし込めるので、契約の規模はかなり小さくなる。そのうえ、冒険者ギルドからリーミルのような正規の職員を派遣してもらう必要もない(無論、実務能力に関してはギルド職員相応のものが求められるが)。
「なるほど、学園に他の組織を入れるのは手続きがかなり面倒だものね。クラブ以外の組織を作ろうとするだけでも大変だし」
「ええ、それはもう身に染みてます」
ここ数か月の苦労を思い出し、江流は苦笑した。
「でしょうね。二年間学園に通ってればもう承知でしょうけど、貴族社会は伝統を重んじるから。女の私が爵位を継承する時にどれだけ揉めたかの話、聞きたい?」
「大変興味深いお話なんですが……また別の機会にお願いします。もうじき下校時刻になっちゃうので」
江流は苦笑し、女教師の長そうな愚痴を華麗にスルーした。さも興味深そうに見せつつ断るのは、江流の年の功の賜物である。
「そう。それは残念。……で、嘱託で行くなら分かったけど、ここに来たからには何か私に相談があるんでしょ?」
「ええ。嘱託契約なら学園にギルド窓口を誘致することはできそうなんですが、嘱託職員は学園の人間である必要があるので。もし、興味がありそうな方がいれば紹介してもらえたらと」
「ああ、なるほどね」
モルガーナは合点がいった。冒険者ギルドの職員ならば、常に一人は学園に常駐していることが望ましい。留守がちな冒険者学園生だけでは不安があるのだろう。あとは、貴族や豪商が多い学園教職員に「ギルド職員として働きませんか」と声をかけても、反応が芳しくなかった、という所か。
「君は私が副業しなければいけないほど、お金に困ってるように見えるのかね?」と怒られかねないし。
「うーん……心当たりはないかも。学園関係者でわざわざ副業するほど経済的に困ってる人は少ないと思うし。いても隠すでしょ。学園で人を集めたいなら、クラブ扱いの方がいいかもね」
「え、クラブですか?」
「ええ。嘱託ギルドは学園関係者と嘱託職員の個人契約になるのでしょう? ならいっそ、クラブの枠組みに当てはめてしまった方が人は集めやすいと思う。クラブ活動なら学園生にも馴染みがあるものだし、『冒険者ギルドで副業してます』だと学園教職員のメンツの問題もあって首を縦には振りにくい。けど、顧問ならありふれてるからね」
「ああ、なるほど!」
確かにモルガーナの言う通りだ。学園生にせよ、教職員にせよ、(冒険者枠で入学した者以外は)みんなそれなりの家柄の者が多いので、「副業」や「アルバイト」に抵抗のある者は多いだろう。その辺りのマイナスイメージを緩和するためには、クラブ活動という枠組みを借りた嘱託ギルド、という形態の方がやりやすいかもしれない。
「なかなかの妙手ですね。先生、ご助言ありがとうございます」
江流はぺこりと頭を下げ、感謝の意を示した。
「ちなみにクラブの認可条件は知ってる?」
「ちょっと曖昧なんで、教えてください」
「よろしい。まず、部長は学園に正式に籍を持つ学園生であること。クラブ認定の最低人数は三名。これは聴講生でも可よ。あと、部費がたくさん欲しいなら『優良部活』である必要もあるでしょうね。優良部活の条件は『部員全員が成績上位4分の1であること』よ」
「部費……それも重要ですね」
江流は頷いた。平民や異種族などの経済的に弱い立場の者でも依頼を出せるようにしたいなら、学園からの資金援助は必ず必要になる。
「部費って、どういう仕組みで決まってるんですか?」
「学園から支給されるのは活動実績ベースね。あとは顧問や出資者 からの寄付も重要よ」
江流は勧誘できそうな学園生を頭の中で思い浮かべてみた。自分を含めて三人なら問題なさそうだが、実際の活動や江流の卒業後のことも考えると、後輩も勧誘しておくべきかもしれない。それに、部費のことも考慮するとたくさんの人数が必要だ。それも学業と事務能力に優れた、優秀な人材が。
「どう、うまくいきそう?」
「はい、なんとか。部長は俺がやってもいいですし。生徒会役員の任期が終わってからじゃないとさすがに厳しそうですが……あとは、学園には商家出身の子もいますから、そっちの方面にも声をかけてみようかと思ってます。卒業後の冒険者ギルドへの就職の斡旋もおまけすれば、実家の跡取りの目がない子も乗ってくれるかもしれません」
「オーケー。最初に直感した通り、あなたは優秀ね」
江流が照れ笑いした時、下校時刻を知らせる鐘が鳴った。
●
「なんとか目途は立ったかな。夏季休暇が明けたら、まずは立ち上げのメンバー集めから始めてみるか……」
こうして江流は公約を実現するための、最後の準備に取りかかり始めた。救われるべき者の、声を拾い上げるために。
「だって。依頼がなくちゃ、冒険者は動けないからね」
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メアリー王女が冒険者達の協力を得て稼働させた「王家の耳」。メアリーは無作為に集まってくる情報を、余人に及びもつかぬ閃きを持って分析しながら、今日も世界の動きへ耳を傾けている。
集まった情報の中には、世界の情勢に影響はないかもしれないが興味深い個人の記録があるかもしれない。