【怨都】怨讐の都に闇と舞え

ウィリアム・リーンエス
王都を追われて逃げ込んだ先が、よりによって帝国とはね。とは言え「王家の耳」でゴルティエ侯爵の行方を絞り込めたのだから、また冒険者のお手柄だな。
メアリー・リーンエス
わたくしの分析では、ゴルティエ侯爵が潜伏しているのは帝国西部。すぐにでも詳細な所在を特定したいところですわね。
ウィリアム・リーンエス
しかし、現地では妙な事件も起きているようだね。ゴルティエ侯爵との関連性も合わせて、調査が必要そうだ。
『【DA】リーンエスの耳、募集中』の進展により、王都から逃走したニコラ・ゴルティエ侯爵の潜伏先の手掛かりが掴めたようです。
(10月19日より 【怨都】連動シナリオリリース開始!)
assignment【怨都】怨讐の都に闇と舞え 概要
「怨讐の都に闇と舞え」連動とは、悪事が露呈しリーンエス王国グランスパーダから逃走した悪徳法衣貴族二コラ・ゴルティエ元侯爵の行方を追う中で発生する一連の事件の記録である。ゴルティエ侯爵の潜伏先とみられるシルトラース帝国西部および不審な事件が多発している南部を調査し、同人物の捜索と情報収集を行う。
assignmentここまでの流れ
メアリー王女が冒険者達の協力を得て稼働させた「王家の耳」。無作為に集まってくる情報を分析したメアリーは、先日王都からの逃走を許した二コラ・ゴルティエ元侯爵が密かに国境を越え、帝国西部に潜伏していることを突き止めた。帝国西部といえば、皇帝ヨゼフ・バルダスと帝国過激派の本拠地があるとも言われている未奪還地域だ。さらにゴルティエ侯爵が帝国入りした頃を境に、ヴィントより西に点在する元難民たちの村々で行方不明事件や吸血鬼による襲撃事件が相次いで起きるようになり、ヴィント周辺では「メドゥの左腕」に似た女の目撃情報もあるという。メアリーとウィリアムはヴィントのレイウェスト・バルダスへ書状を送り、冒険者による現地調査を行う了承を得た。
person_pin関連NPC
ウィリアム・リーンエス王子の妹にあたるリーンエス王国第一王女。長い金髪と大きな青い目のお人形のような少女だが、宮廷のドロドロ人間関係の中で生きているだけあって気が強い。第一王女かつ唯一の王女、しかも遅くに生まれた末っ子ということで国王や王太子、ウィリアム王子の寵愛を一身に受ける影の女王。
《本連動での動き》
調査の指示と依頼など全般の指揮を執っている。「王家の耳」の最初の戦果として炙り出したゴルティエ侯爵の逃走を許したことで、責任を感じている。
リーンエス王国第二王子。放蕩者の授恵者としての顔で各国を飛び回りながら、諜報面での活動も行っており、優秀な部下を子飼いの配下としていたがメドゥの指先グリゼルダとの交戦でその多くを失った。
《本連動での動き》
昨年のグリゼルダに続き、ゴルティエ侯爵の逃走という手痛い敗北を喫してしまった。メアリーと協調し、調査の指示と依頼など全般の指揮を執っている。
始まりの百家以来の格式を持つ王都の法衣貴族だった壮年の男性。商業面の長官を務めていた。優秀な人物だったが、裏の顔はメドゥの指先と通じる人身売買の元締めであった。1222年9月に王家が捕縛に動くも、メドゥの指先幹部ジルベルの手引きにより邸宅から姿をくらませた。かなりの愛妻家であったらしい。
《本連動での動き》
密かに国境を越え、シルトラース帝国西部に潜伏中とみられている。
ニコラ・ゴルティエ元侯爵の妻。王都におけるファッションリーダーの1人として、夫の名の元に様々な夜会を取り仕切ってきた。仮面舞踏会にてパンクリアース学園生徒会役員の一人を誘拐するも、悪趣味な狩猟遊びに興じていた処を踏み込まれ、捕縛された。
《本連動での動き》
処刑が決定し、王城の地下牢に幽閉されている。
menu_book関連用語・情報
新生「王家の耳」
メドゥの指先グリゼルダにより実行部隊の多くを失った王家の密偵が再建されるまでの間、王女メアリーの提案によって動き出した新たな諜報機関。通称「リーンエスの耳」。冒険者に依頼し無作為に集められた各国の噂話などを、分析整理する事で真実を拾い上げる。この分析整理はメアリー王女個人の才覚に頼る面が大きい。
帝国南部鎮守都市「ヴィント」
帝国滅亡に際してクリーパーに蹂躙された都市。1221年初夏の奪還作戦において【天霧りに消ゆる幽界樹】の分樹の打倒に成功し、解放された。現在は廃墟の整理も進み、避難していた帝国民も少しずつ戻り、周辺地域も含めて復興の途にある。太守はバルディオン。
帝国西部
帝国の他の地域と同様、帝国崩壊時に壊滅的な被害を受けている。未だ多数のクリーパーが跋扈する魔境であり、西部鎮守都市ヨラヒムを含め都市や街はすべて滅んだとみられているが、偵察は進んでいない。この地域には、帝国皇帝ヨゼフ・バルダスと帝国過激派の本拠地があるとも言われている。
帝国過激派
シルトラース帝国が崩壊する以前から存在していた派閥。当時は「実力派」と呼ばれていた。帝国こそがロスガリアの統治者として相応しく、王国も都市同盟も、その他の小国も全てを滅ぼすか吸収し永久に支配すべし、その為には手段など選んではおれぬ、という思想。帝国崩壊後はヨゼフを匿い、様々な事件の裏で暗躍するメドゥの指先とも蜜月の関係にあるらしい。シグモル火山帯の【魂禍】連動、フィルエス大森林の【樹謂】連動では、それぞれ幹部が大事件を起こし討伐されている。
そこへ辿り着くまで、何日を要したのか定かではない。幾度もの夜を山野で越えた二コラ・ゴルティエ元侯爵を出迎えたのは、高級官僚と思しき老紳士だった。
王国の追手と跋扈するクリーパーの脅威から二コラを守り、ここまで導いたメドゥの指先共は、都市の城門に老紳士が現れるなり、お役御免とばかりに何処かへ消えた。
破壊の色の濃い廃墟の街を行き、通されたとある邸宅。
老紳士に促されて広間に通された二コラは今、絨毯に膝をついて頭を垂れていた。
「面を上げよ」
「――って言われて本当に顔上げたらダメなんだっけ? 罠だよね」
「……構わぬ。面を上げよ、ゴルティエ卿。余が許す」
「はっ……!」
形式張った拝謁の挨拶を一通り終え、わずかに顔を上げた二コラが目にしたのは、この街の惨状にそぐわぬ豪奢な椅子に身を預けた帝国皇帝ヨゼフ・バルダスの姿。そのすぐ隣で茶化すような笑みを浮かべている顔色の悪い年若い男が何者であるか、二コラは計りかねた。先ほどの老紳士を含め、彼らの両脇に控えている数名の男女が恐らく『帝国過激派』であろうことは、易く理解できたのだが。
「隣国王都での騒動、聞き及んでおる。だが其方を呼び寄せたのは余ではない、この者だ」
「皇帝陛下、恐れながら……そちらの御仁は」
ヨゼフが目線だけで示した男は、相も変わらず飄々とした笑みを浮かべて二コラを見下ろしている。
夜を照らす灯りの下で揺れる黒髪に、麗糸をあしらった黒の襯衣。まるで血のような赤眼を除けば、これといった特徴もない平凡な青年だ。
「メドゥの右腕だ。名は知らぬ」
「――メドゥの……!」
思わず、息を呑んだ。
手指や足指を表す『色』ではない。腕だ。
この凡庸な気配しか発さぬ男が大幹部であるなど俄かには信じがたいが、仮にそうであったとして、二コラのような末端に一体何の用があるのか。
王都での失態について断ずるつもりか。否。彼らは斯様な組織ではない。
「二コラくん、君の奥さんの処刑が決まったそうだよ。君は愛妻家らしいから、助け出したいんじゃないかなと思うんだけど」
メドゥの右腕が笑んだまま告げたのは、王家に捕らわれた愛妻クローディア・ゴルティエの哀れな運命だった。やはり――と、二コラは奥歯を食いしばる。
二十年は連れ添った妻だ。奔放に過ぎるところはあったが、小言を言う度に悪戯な少女のような顔で言い訳をしていたクローディアの姿が忘れられない。
「それはどういう意味だ、右腕殿。王城の地下牢に囚われた妻を救い出す手立てがあるとでも言うのか」
「無くはないよ。ちょっと、リーンエス王家に痛い目をみてもらおうかなって計画があってヨゼフくんと話してたんだけど。君も同じ気持ちなら、それを実行するのに十分な力を与えてあげられるし、計画ついでに君が奥さんを救出するのも別に止めない」
まるで子どもの遊戯の誘いかのように、右腕は楽しげな表情を崩さぬまま。
二コラが僅かに視線を動かした先で、皇帝ヨゼフが鷹揚に頷くのが見えた。
「――余に臣従せよ、ゴルティエ。其の者と共にリーンエス王家の根幹を打つ気概が其方にあるならば、余の配下も使うが良い」
メドゥの指先は力を。皇帝ヨゼフは配下たる帝国過激派を。この場でリーンエス王家への復讐を誓うのであれば、二コラにそれらを与えると言う。これも、俄かには信じがたい。
王都を逃れ爵位を失った身とは言え、今日までの二コラに帝国皇帝の臣下となる計画は無かった。しかし、これを断ったとて他の選択肢が降ってくるわけではない。
ヨゼフに忠誠を誓い、憎きリーンエス王家への復讐と愛妻の奪還を成すか。
彼らの庇護を失い、妻の死を見届けることすら叶わず山野を彷徨うか。
「――断る理由もございません。この二コラ、今日より陛下の忠実な臣下となり、陰に陽に尽くして参りましょう」
利用すれば良いのだと、二コラは胸の内で呟く。
彼らが二コラを利用しリーンエス王家へ害為そうとするならば、二コラもまた彼らを利用すれば良い。
臣下の礼など幾らでもとれる。忠誠が嘘か真か――そのようなことは、この場の誰にとっても重要ではないのだから。
「うんうん。王家が憎いんだよね。奥さんを愛してるんだよね。僕、感動しちゃったなぁ」
決して歯を見せぬ笑顔を二コラに向けて、メドゥの右腕がわざとらしく目許を拭った。
●王都グランスパーダ
「……その分析は確かなのかい、メアリー?」
「ええ、お兄様。二コラ・ゴルティエ侯爵は密かに国境を越え、帝国西部に逃げ込んだようですわ。メドゥの指先の手引きがあったのでしょうね」
新生「王家の耳」初の戦果として炙り出した、悪徳法衣貴族二コラ・ゴルティエ侯爵。メドゥの指先幹部ジルベルの介入を受け、王家が彼の捕縛に失敗したことは記憶に新しい。
幸いなことにゴルティエ元侯爵は商業系の官僚であり軍事を司る者ではなかったが、王都で長年務め、王国の国家機密すら扱う立場だった。ゆえに王女メアリー・リーンエスはこの一ヶ月、彼の行方を追うべく冒険者達からもたらされる国内外の情報を殊更に細かく分析し続けていた。
その結果ようやく導き出された答えが、帝国西部だ。第二王子ウィリアム・リーンエスは、整った眉をわずかに寄せる。
「帝国西部か……それは厄介だね。帝国の西側は未だ偵察も進んでいない。今でも大量のクリーパーが残されているだろうし、それに」
「ヨゼフ帝と帝国過激派の本拠地がある……とも言われているそうですわね」
メドゥの指先の手で逃がされた侯爵と、メドゥの指先と蜜月の関係にあるらしい帝国過激派。両者が接点を持ってしまったとすれば、どう転んでもリーンエス王国には悪い結果しかもたらさないだろう。
「急ぎ、レイウェスト皇子に使者を送りましょう。ゴルティエ侯爵の潜伏先を突き止め、拘束しなくては。帝国領内での調査許可が必要ですわ」
「ああ、そうしよう。しかし……その他にも気になる情報があったようだね、メアリー」
ウィリアムが見つめる机の上には、二コラ・ゴルティエ元侯爵の行方を分析した文書のほか、何枚かの文書が重ねられている。それらは主に、帝国南部鎮守都市ヴィントや、その西側に点在する元難民達の村々で最近起きた事件の情報を記したものだった。
「ゴルティエ侯爵が帝国へ逃げ込んだと思われる時期を境に、ヴィント近郊……特に西側の村々で行方不明者や吸血鬼による襲撃事件が異様に増加しているそうですわ。それに、メドゥの左腕らしき女を見掛けたという話もいくつか。……ゴルティエ侯爵との繋がりは不明ですけれど、何かあるのではと」
「成程……。それはまた、厄介な話だね」
執筆:桃谷かな