【DA】リーンエスの耳

コルネリウス・アーラ
『ノベルタイトル:壁新聞・愛蔵版を作ろう』おおくまねこ
●
「そろそろ、本にまとめていいかもしれませんね」
学年末のテストも終わり、春休みを前にした学園生達が一年を過ごした教室や友達との別れを惜しんでいる頃。新聞部員達と一緒に書き溜めた学内誌の整理をしていたコルネリウス・アーラはぽつりと呟いた。新聞部が設立されてからはや一年。コルネリウスは冒険者稼業の傍ら、学内誌発行という選挙公約に沿った目標を果たすため、数名の部員達と共にこつこつと学園の内外を取材し、『壁新聞』を発行し続けていた。
初めの頃こそ掲示の際のコルネリウスや他の授恵者部員達のパフォーマンスで注目を集めていた『壁新聞』だったが、一年間部員達が研鑽を積んできたおかげか、壁新聞は学内イベントの告知、部活の宣伝、学内のおすすめスポットの記事、学園で活躍している生徒の取材記事、連載小説、図書館のおススメの本、学園生が興味を持ちそうな学外情勢、食堂や王都内のお食事処の食レポ、etc……学園生に有益な様々な情報が載った情報媒体として、学内でそこそこ有名になりつつあった。
そして、パンクリアース学園の1223年度はもうじき終わる。瞬きのように短く、けれど濃密な一年間だった。来年度にはコルネリウスを含む新聞部員達も進級し、また新たな生徒達が入学してくるだろう。その前に、コルネリウスは新聞部の活動に一区切りをつけることにしたのだ。
「お、壁新聞の愛蔵版を作るんですね!」
「手作業の写し書きだと、けっこう大変ですよね。バックナンバー、いっぱいあるし。友達に声かけましょうか? 『火を噴き、幽界樹を枯らし、王国騎士を斬る学園最強の壁エルフ』の名前を出せば、きっとたくさん集まりますよ!」
(私は怪獣か何かでしょうか?)
一年生の仲良しコンビ、ルサルカとジリアンは元気よく言った。彼女達はコルネリウスの半分程度の年齢とまだまだ幼いが、真面目に取材をしてくれるいい子達だ。残念ながら宿題は提出日前日にやる派だったので、試験前は勉強会でのフォローが必須だが。
「確かに……こうしてみると、結構な数ですね」
コルネリウスがちらりと見た新聞部の壁には、これまで新聞が掲示してきた壁新聞のバックナンバーが全て貼られていた。部屋の隅にある棚には、新聞部がウィリアム黄金像完成の号外記事を出した時に部員からプレゼントされた小さなウィリアム像や、部員が獲ってきた大食い大会の優勝トロフィー、新聞部が『優良な部活』に認定されたお祝いに顧問が買ってきてくれたティーセットなどが飾られている。これらは全て、新聞部の活動の足跡だ。
「とりあえず、部員だけで一冊作ってみましょうか」
「「はい!」」
元気よく答える部員達。こうしてコルネリウス達は自分達の一年間の足跡を一冊の本にまとめる作業に着手したのだった。
●
コルネリウスは部員達と手分けし、バックナンバーの新聞を一枚一枚丁寧に書き写し、一冊の本にまとめていった。挿絵が部員の画力の向上や担当者の違いにより、明らかに別のものに変わっているのはご愛敬だ。印刷技術の未熟なロスガリア大陸では、新聞もハンドメイドがまだまだ主流なのだ。
「ところで、このイラストは何です? 私が描かれてるみたいなんですけど」
コルネリウスは一束の挿絵原稿を手に持ちながら笑顔で部員達に尋ねた。一番上の表紙には二頭身にデフォルメされた耳の長い女性が、笑顔でピースサインをしている姿が描かれていた。それだけならまあいいが、奇妙なことにそのエルフはなぜか上半身だけが描かれており、穴の空いた壁から体が突き出ているような構図だったのだ。そして絵の下には、
『壁エルフ、王国騎士を破る。ついでに体育倉庫の壁も破る』
という愉快なタイトルが書かれていた。
「こないだの防災訓練の時の部長の雄姿です! ……あ、もしかして、イラスト、顔じゃなくてお尻側の方がよかったですか?」
きょとんとした顔で聞き返してきたのは二年生のアルテだった。「絵がうまい」という理由で挿絵担当としてスカウトされてきた部員だが、視点が少々エキセントリックで、コルネリウスは手を焼いていた。
「そういう問題じゃありません! こんな恥ずかしい挿絵は没です!」
「そんな、せっかく部長の武勇伝を全校生徒にアピールできると思ったのに!」
「私の硬度はアピールしなくて結構です!」
……中には部長権限で闇に葬られたイラストなどもあったものの、概ね新聞部の執筆活動は順調だった。
●
「「できたー!」」
新聞部員達はようやく出来上がった『壁新聞、一年分』(保存用と見本用に二冊)を前に、ハイタッチして喜び合った。きゃっきゃっとはしゃぐ若き部員達を見て、コルネリウスは微笑ましく思う。
(これなら、来年度もきっと大丈夫ですね。見本用は大図書館に置かせてもらえるでしょうか?)
こうして、新聞部の活動に無事に一区切りをつけたコルネリウスは、少女のように微笑んだのであった。
「そろそろ、本にまとめていいかもしれませんね」
学年末のテストも終わり、春休みを前にした学園生達が一年を過ごした教室や友達との別れを惜しんでいる頃。新聞部員達と一緒に書き溜めた学内誌の整理をしていたコルネリウス・アーラはぽつりと呟いた。新聞部が設立されてからはや一年。コルネリウスは冒険者稼業の傍ら、学内誌発行という選挙公約に沿った目標を果たすため、数名の部員達と共にこつこつと学園の内外を取材し、『壁新聞』を発行し続けていた。
初めの頃こそ掲示の際のコルネリウスや他の授恵者部員達のパフォーマンスで注目を集めていた『壁新聞』だったが、一年間部員達が研鑽を積んできたおかげか、壁新聞は学内イベントの告知、部活の宣伝、学内のおすすめスポットの記事、学園で活躍している生徒の取材記事、連載小説、図書館のおススメの本、学園生が興味を持ちそうな学外情勢、食堂や王都内のお食事処の食レポ、etc……学園生に有益な様々な情報が載った情報媒体として、学内でそこそこ有名になりつつあった。
そして、パンクリアース学園の1223年度はもうじき終わる。瞬きのように短く、けれど濃密な一年間だった。来年度にはコルネリウスを含む新聞部員達も進級し、また新たな生徒達が入学してくるだろう。その前に、コルネリウスは新聞部の活動に一区切りをつけることにしたのだ。
「お、壁新聞の愛蔵版を作るんですね!」
「手作業の写し書きだと、けっこう大変ですよね。バックナンバー、いっぱいあるし。友達に声かけましょうか? 『火を噴き、幽界樹を枯らし、王国騎士を斬る学園最強の壁エルフ』の名前を出せば、きっとたくさん集まりますよ!」
(私は怪獣か何かでしょうか?)
一年生の仲良しコンビ、ルサルカとジリアンは元気よく言った。彼女達はコルネリウスの半分程度の年齢とまだまだ幼いが、真面目に取材をしてくれるいい子達だ。残念ながら宿題は提出日前日にやる派だったので、試験前は勉強会でのフォローが必須だが。
「確かに……こうしてみると、結構な数ですね」
コルネリウスがちらりと見た新聞部の壁には、これまで新聞が掲示してきた壁新聞のバックナンバーが全て貼られていた。部屋の隅にある棚には、新聞部がウィリアム黄金像完成の号外記事を出した時に部員からプレゼントされた小さなウィリアム像や、部員が獲ってきた大食い大会の優勝トロフィー、新聞部が『優良な部活』に認定されたお祝いに顧問が買ってきてくれたティーセットなどが飾られている。これらは全て、新聞部の活動の足跡だ。
「とりあえず、部員だけで一冊作ってみましょうか」
「「はい!」」
元気よく答える部員達。こうしてコルネリウス達は自分達の一年間の足跡を一冊の本にまとめる作業に着手したのだった。
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コルネリウスは部員達と手分けし、バックナンバーの新聞を一枚一枚丁寧に書き写し、一冊の本にまとめていった。挿絵が部員の画力の向上や担当者の違いにより、明らかに別のものに変わっているのはご愛敬だ。印刷技術の未熟なロスガリア大陸では、新聞もハンドメイドがまだまだ主流なのだ。
「ところで、このイラストは何です? 私が描かれてるみたいなんですけど」
コルネリウスは一束の挿絵原稿を手に持ちながら笑顔で部員達に尋ねた。一番上の表紙には二頭身にデフォルメされた耳の長い女性が、笑顔でピースサインをしている姿が描かれていた。それだけならまあいいが、奇妙なことにそのエルフはなぜか上半身だけが描かれており、穴の空いた壁から体が突き出ているような構図だったのだ。そして絵の下には、
『壁エルフ、王国騎士を破る。ついでに体育倉庫の壁も破る』
という愉快なタイトルが書かれていた。
「こないだの防災訓練の時の部長の雄姿です! ……あ、もしかして、イラスト、顔じゃなくてお尻側の方がよかったですか?」
きょとんとした顔で聞き返してきたのは二年生のアルテだった。「絵がうまい」という理由で挿絵担当としてスカウトされてきた部員だが、視点が少々エキセントリックで、コルネリウスは手を焼いていた。
「そういう問題じゃありません! こんな恥ずかしい挿絵は没です!」
「そんな、せっかく部長の武勇伝を全校生徒にアピールできると思ったのに!」
「私の硬度はアピールしなくて結構です!」
……中には部長権限で闇に葬られたイラストなどもあったものの、概ね新聞部の執筆活動は順調だった。
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「「できたー!」」
新聞部員達はようやく出来上がった『壁新聞、一年分』(保存用と見本用に二冊)を前に、ハイタッチして喜び合った。きゃっきゃっとはしゃぐ若き部員達を見て、コルネリウスは微笑ましく思う。
(これなら、来年度もきっと大丈夫ですね。見本用は大図書館に置かせてもらえるでしょうか?)
こうして、新聞部の活動に無事に一区切りをつけたコルネリウスは、少女のように微笑んだのであった。
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メアリー王女が冒険者達の協力を得て稼働させた「王家の耳」。メアリーは無作為に集まってくる情報を、余人に及びもつかぬ閃きを持って分析しながら、今日も世界の動きへ耳を傾けている。
集まった情報の中には、世界の情勢に影響はないかもしれないが興味深い個人の記録があるかもしれない。