【謀都】グランスパーダに潜む闇

メアリー・リーンエス
まさか、「リーンエスの耳」が最初に聞き付けるのがお膝元の王都グランスパーダになるとは思いもしなかったですわ。
ウィリアム・リーンエス
お前の分析だと、王都の法衣貴族の上層部にメドゥの指先が入り込んでいるんだろう? よくもまあ今まで隠し通せたものだ。
メアリー・リーンエス
動きが激しくなったのは最近ですわね。尻尾を見せたのが運の尽きです。
ウィリアム・リーンエス
詰める時はともかく、調査には顔の知られている王国騎士を使う訳にはいかないのが面倒だな……。僕は、何か変装でもするか?
メアリー・リーンエス
冒険者の皆様、それにウィリアムお兄様も。頼りにしていますわよ。
『【DA】リーンエスの耳、募集中』の進展により、リーンエス王国王都「グランスパーダ」に不穏な兆候が見つかったようです。
(8月8日より 【謀都】グランスパーダに潜む闇 連動シナリオリリース開始!)
assignment【謀都】グランスパーダに潜む闇 特設ページ
「グランスパーダに潜む闇」はリーンエス王国グランスパーダの行方不明事件を捜査し、王都に跳梁するメドゥの指先と法衣貴族を追い詰める連動となります。王国騎士団、王家の密偵などと場合によっては共闘する事もありえます。王都外のスラム、市内から学園街、貴族街にまで根を張る悪党を摘発し、王都の治安を回復しましょう。
assignmentここまでの流れ
メアリー王女が冒険者達の協力を得て稼働させた「王家の耳」。無作為に集まってくる情報に耳を傾け、余人に及びもつかぬ閃きを持って分析したメアリーは、驚くべき結論に達した。王都グランスパーダの行方不明者は過去十数年は若干、近年は激しく増加しており、そこに人為的な理由が考えられる。おそらくは、王都の政治に関わる法衣貴族の中枢にメドゥの指先が入り込んでいると予測された。その報告を得たリーンエス王家は、王都に巣食うメドゥの指先や悪党を一網打尽にすべく動き出す。
person_pin関連NPC
ウィリアム・リーンエス王子の妹にあたるリーンエス王国第一王女。長い金髪と大きな青い目のお人形のような少女だが、宮廷のドロドロ人間関係の中で生きているだけあって気が強い。第一王女かつ唯一の王女、しかも遅くに生まれた末っ子ということで国王や王太子、ウィリアム王子の寵愛を一身に受ける影の女王。
《本連動での動き》
調査の指示と依頼など全般の指揮を執っている。自らの提案で成立した「リーンエスの耳」の最初の戦果とあってやる気は十分なようだ。
リーンエス王国第二王子。放蕩者の授恵者としての顔で各国を飛び回りながら、諜報面での活動も行っており、優秀な部下を子飼いの配下としていたがメドゥの指先グリゼルダとの交戦でその多くを失った。
《本連動での動き》
メアリーの指示のもと、依頼を出したり時には実際の調査に同行する。
menu_book関連用語・情報
新生「王家の耳」
メドゥの指先グリゼルダにより実行部隊の多くを失った王家の密偵が再建されるまでの間、王女メアリーの提案によって動き出した新たな諜報機関。通称「リーンエスの耳」。冒険者に依頼し無作為に集められた各国の噂話などを、分析整理する事で真実を拾い上げる。この分析整理はメアリー王女個人の才覚に頼る面が大きい。
王都グランスパーダ
王都グランスパーダはリーンエス王国建国以来の首都であるが、王国の発展と共に拡大を続けた結果、歪さを孕む都市でもある。華やかな貴族、裕福な王国民、地方から出て来た貧しい民が区画を隔てて共に住まう都市だ。時に拙速となった過去の都市計画と、住人の日々の暮らしの格差は老練なテロ組織が入り込む隙となっていた。
王都グランスパーダのスラム街
グランスパーダの城壁、堀に守られた市街地の外に或る居住区。王都へ出稼ぎにきたが収入が不十分だっただけの一般人が住む場所もあれば、奥へ行けば裏社会の住人まで潜んでいる。各城門の外の街道筋から少し離れた場所に自然発生的にできた掘っ立て小屋などからなるもう一つの街。なお、余り街道に近過ぎる建物は、軍の行軍の邪魔になるという軍事上の理由で破壊される。
正式にはグランスパーダの住民ではないが、下働きなどで市内へ働きに出ている住人も多い。街道に面した場所は清潔で普通の街と大差ないが、奥へ進むにつれて澱んだ街並みへ代わっていく。
王都グランスパーダの出入り
王都内外を隔てる城壁は作りも防衛体制も、帝国の帝都や鎮守都市ほど堅固な物ではない。一般人では難しいだろうが、授恵者ならば隙を見て乗り越えることは可能だろう。門は大きなものが8方向にあり、方角が名前となっている他、地域住民や利用者達が独自の愛称をつけている場合もあるようだ。 グランスパーダは王国を南北に流れるシエナ河に水源を委ねているが、防衛上の理由から、シエナ河は直接王都に流れ込む事は無く、水門を設けて取水する形となっている。王都への荷を水門外で小型船へ積み替える役夫はスラムの住人の大きな働き口となっている。
法衣貴族
リーンエス王国においては、領地を持たず王に代々直接仕える貴族を言う。専門化が進んでおり、法務や商務、政務や外交など得意分野が別れている。
「王都グランスパーダ……。まさか、足元にこんな厄ネタが転がっているなんて思いもしませんでしたわ」
王女にあるまじき語彙を披露しつつ、メアリーは頭の中に浮かんでいる事態を資料に起こしていく。ロスガリアにおいてはまだ未発達な分野である統計分析を、メアリーは本能で使いこなしていた。精査してわかった事は、この十数年の王都での行方不明事件が、人口や治安状況から予想されるよりも僅かながら多かった事。ここしばらくは明らかに多くなっていた。つまり、何らかの悪意が最低でも十数年ひっそりと潜んでおり、最近になって度を越えたのだ。
「具体的な場所は……。郊外のスラムは当然として、学園関係者。平民の居住区、貴族の居住区……、王城以外満遍なく多いわ。つまり、王都内から人が消える仕組みがあるという事。警戒を担う王国騎士団か、許可を出す官僚のどちらかに問題があるのね」
ハイライトの消えた目で淡々と分析を続けるメアリー。王家に忠誠を誓う両輪のいずれかを疑わざるを得ないのは心苦しいが、しかし王国騎士団は貴族の次男三男が就く事も多い職業だ。親戚から持ち掛けられて汚職に手を出すケースがないとはいえない。法衣貴族は権限を持つがゆえに腐敗の誘惑に常にさらされており、意志の弱い者が転ぶこともありえよう。
「でも、個人でどうにかなる数ではないし、騎士団なら中隊単位。法衣貴族ならかなり上ね。他の事件とのつながりも考慮すれば、おそらくはメドゥの指先も関与しているわ。……これはお父様に報告しないと」
推測と事実、可能性と必然を切り分け、メアリーは「王家の耳」の最初の大仕事に取り掛かった。
●
結論から言えば、王国騎士団に問題は無かった。というより、ここ数年は王国騎士団が動員される事態が激増しており、国内外へ派遣されるケースが多々ある。王国騎士団の各隊は、近衛以外は一度は王都を離れたことがあるのだが、その期間において行方不明事件の発生数の大きな変動は無かった。つまり、消去法で高位の法衣貴族が関わっていると目される。
「近衛や密偵が組織的に腐敗している事は、ありえないものね……」
彼らの王家への忠誠心は高く、個人レベルならいざしらず、隊の単位で離反するような事は考えられない。また、もしもそのような事があれば別の隊にバレない筈も無かった。近衛や密偵の全てが腐敗していたとしたら、王家はとうの昔に滅んでいるだろう。結束が固い現在の王家メンバーは、非公式な家族会議でこのメアリーの報告を検討する。
「……なるほどな。どう思う、ウィリアム」
「うーん。王家の騎士団が信用できるっていうのは僕も同意するけど、捜査には使えないだろうな。相手が官僚貴族なら、名前も顔も割れている」
「王家の密偵はどうだ?」
「まだまだ、潜入工作に使える戦力は育ってない。下手に投入しても失われるだけじゃないかな」
「ふむ。証拠をつかんだ後、実際に踏み込む段階ならば騎士団を動かしても問題なかろう」
国王ジョージ四世とウィリアム第二王子のやり取りを聞いていたルイーズ王妃が「冒険者ギルドはどうかしら?」と問い、「彼らは信用できるが、依頼を出した時点でこちらの掴んでいる情報が公開されるのが問題だね」とウィリアム。「依頼主を密偵にさせればどうか。戦闘の実力は不十分でも、変装などの技に優れた者は残っていよう」と国王が言い、メアリーは「それならば、依頼の出し方をコントロールしましょう」と引き取る。エドワード王太子は慎重に話の流れを考え、無言で頷いて同意を示す。家族会議では積極的に発言するよりも、脱線すれば止める苦労人ポジションだった。
「追われている者に知られても良い、末端を調べる依頼から出していきます。気が付いた時には、逃げ道を失っているようにいたしますわ」
「……裏切り者の目星はついておるのか?」
「可能性の段階であれば。でも、まだ口にはできません」
メアリーは慎重だ。実際、内外の行き来に関する権限などから数家にまではしぼれる物の確証はない段階だった。
「メアリーの提言を受け入れて最初に判るのが足元の暗さとはな……」
「領地貴族のレギンレイヴ侯爵、ファブランド侯爵が揺らいでいた位だ。王都の法衣貴族だけ変わらぬ忠節を保っている筈はない、ということだね」
困り顔の父王に、あえて明るく笑い飛ばすウィリアム。
「では、この件はメアリーに任せますか? ウィリアムもサポートにつけるべきと思いますが」
「そうだね。1人でやるにはちょっとばかり話が大きい」
口を開いたエドワードが懸念を口にすると、ウィリアムも可愛い妹の為ならばと首肯する。かくて、王都に巣食う闇の排除の作戦は、メアリー王女とウィリアム王子の共同指揮の下、王家の密偵、王国騎士団に冒険者ギルドが動くという、近年にない大規模な捕り物になった。
執筆:紀藤トキ