【DA】リーンエスの耳

アラン・スミシー
『ノベルタイトル:202年目の一大決心?』コースケ
●冒険者の食事処
迷宮都市エドゥノーグ。神が人を鍛えるための試練として作った迷宮と、そこから得られる富を求め人々が造った街。神代から続くその街を、雨が濡らしていた。
「恵みの雨だねぇ……」
雑踏を歩くエルフの冒険者、アラン・スミシーは立ち止まり、赤と金の目で曇天を見上げる。それから少し遠い目をして、再び歩き出した。
やがて一軒の店の前に立つと、アランは帽子と外套に付いた水滴を落として扉を開ける。
その店の看板には【Adventurer's Diner】と刻まれていた。
「こんばんはー。おや、皆もうお揃いかい?」
アランが店内を見回すと、見覚えのある顔が見える。このダイナー兼宿屋は冒険者向けに安く料理を提供したり、持ち込んだ食材の調理もしてくれる。その事を気に入ったアランはここを根城にしており、店に通う冒険者達とも親しくなっていたのだ。
マスターに夕食を頼み、いつもの席に着いて談笑を始める。これがアランのお気に入りの日々だった。
「ごちそうさまでした。最初は吃驚したけど、蛙料理も慣れると中々だよね」
指の付いた足がそのまま出てきた時は目を剥いたが、食べてみると淡白でアランの好物の鳥肉に近く、様々な味付けに合う。何より安いのが魅力である。
食事を済ませたアランは、そのまま友人達と談笑を続けていた。やがて外の雨が強くなり、アランの長い耳がピクピクと揺れる。そうやって雨音に気を取られ会話の返事が疎かになっていることを指摘され、アランは苦笑いしながら頭を下げる。
「ごめんごめん。雨音でちょっと昔のこと思い出しちゃって」
何を思い出したのかと問われ、アランは葡萄酒で口を湿らせると口を開いた。
「それじゃあ、おじさん自分語りさせて貰おっかなー?」
●想い出語り
おじさんの暮らしていたのは、フィルエス大森林の小さな里なんだ。
こう言っても信じて貰えないかもしれないけど、里の者は外から来た人に対する警戒心が強くてね、言ってしまえば閉鎖的な所なんだよ。
――いや、君たち疑わしいって目をしているけど、ホントだからね?
どちらかと言うと、里の中ではおじさんの方がひょうきんな変わり者だったのさ。
でも、そんな里に不満があった訳じゃない。日々の仕事をしながら、空いた時間があれば本を読んで空想を巡らせたり、魔法の修行をしたりとそれなりに充実していたんだよ。
たまに訪れる旅の人のお世話をして、外の世界の話を聞くこともできたしね?
――そんな暮らしをしていたら、一年くらい前のこんな雨の強い夜に、あの子と出会ったんだ。
今日はもう寝てるけど、皆も知ってるあの子だよ。あの子は、こんな雨の強い夜に森でひとり震えていたんだ。
十歳くらいの子供が、人気の無い夜の森で濡れてたら皆はどうする? ――だよね! それは助けるでしょ?
里に連れてきて身体を温めてあげて、温かいスープとパンをあげたら僕の分まで食べちゃってね。これなら安心と名前や何処から来たかを聞いたら、何も覚えてないって言うし、不便だからと名前を付けてあげたんだ。
だけど、里の皆は勿論良い顔をしなくてね。
特に、あの子が人造授恵者 と分かってからの視線は冷たくて。――出自はあの子の責任じゃ無いのにね?――そんな目にあの子を曝して置くわけにいかないと思ったのと、おじさんも外の世界には憧れはあったからさ。
ぼくなりに一大決心をして、一緒に外に出ることにしたのさ。
それで旅の資金を得るために冒険者になった訳だけど、外の世界は刺激的でね!? 感動することや楽しいこと、苦しかったこと、色々なことがあったんだ。
ビッグオウムに乗って空を飛ぶ経験なんて冒険者でもないと出来ないし、初めて乗った時に上から眺めた森や湖の景色、ビッグオウムの匂い、頬にあたる風は本には体験できないものだったよ!
細剣は扱えたけど、命懸けの戦いなんて里では経験しなかったから、剥き出しの殺意をぶつけられることが、あんなに恐ろしいことだなんて知らなかったし。あの子にも随分助けられたよ。
魔法も実戦で使うとなれば、必要なタイミングやエーテルの配分も難しくてね。一緒に依頼を受けた人が使うのを見様見真似で覚えて、何とか使えるようになるのに随分かかったりもしたし。
そうしている内に二人でここに居着いて、こうして皆と楽しくご飯を食べたり、たまに緊張感のある依頼を受けたりしてる訳さ。
ユニコーン? さあ? ナンノ事カナー?
●語り終えて
「――とまあ、あれから何年も経ったような気で居たけど、あの雨の夜からまだ一年しか経って無いんだと思っちゃってね。ちょっとぼんやりしてたのさ?」
そう言ってアランはワインを飲み干してひと息つくと、友人へ話を振る。
「ってわけで、おじさんの話はおしまいっ! 君はどうだい?」
迷宮都市エドゥノーグ。神が人を鍛えるための試練として作った迷宮と、そこから得られる富を求め人々が造った街。神代から続くその街を、雨が濡らしていた。
「恵みの雨だねぇ……」
雑踏を歩くエルフの冒険者、アラン・スミシーは立ち止まり、赤と金の目で曇天を見上げる。それから少し遠い目をして、再び歩き出した。
やがて一軒の店の前に立つと、アランは帽子と外套に付いた水滴を落として扉を開ける。
その店の看板には【Adventurer's Diner】と刻まれていた。
「こんばんはー。おや、皆もうお揃いかい?」
アランが店内を見回すと、見覚えのある顔が見える。このダイナー兼宿屋は冒険者向けに安く料理を提供したり、持ち込んだ食材の調理もしてくれる。その事を気に入ったアランはここを根城にしており、店に通う冒険者達とも親しくなっていたのだ。
マスターに夕食を頼み、いつもの席に着いて談笑を始める。これがアランのお気に入りの日々だった。
「ごちそうさまでした。最初は吃驚したけど、蛙料理も慣れると中々だよね」
指の付いた足がそのまま出てきた時は目を剥いたが、食べてみると淡白でアランの好物の鳥肉に近く、様々な味付けに合う。何より安いのが魅力である。
食事を済ませたアランは、そのまま友人達と談笑を続けていた。やがて外の雨が強くなり、アランの長い耳がピクピクと揺れる。そうやって雨音に気を取られ会話の返事が疎かになっていることを指摘され、アランは苦笑いしながら頭を下げる。
「ごめんごめん。雨音でちょっと昔のこと思い出しちゃって」
何を思い出したのかと問われ、アランは葡萄酒で口を湿らせると口を開いた。
「それじゃあ、おじさん自分語りさせて貰おっかなー?」
●想い出語り
おじさんの暮らしていたのは、フィルエス大森林の小さな里なんだ。
こう言っても信じて貰えないかもしれないけど、里の者は外から来た人に対する警戒心が強くてね、言ってしまえば閉鎖的な所なんだよ。
――いや、君たち疑わしいって目をしているけど、ホントだからね?
どちらかと言うと、里の中ではおじさんの方がひょうきんな変わり者だったのさ。
でも、そんな里に不満があった訳じゃない。日々の仕事をしながら、空いた時間があれば本を読んで空想を巡らせたり、魔法の修行をしたりとそれなりに充実していたんだよ。
たまに訪れる旅の人のお世話をして、外の世界の話を聞くこともできたしね?
――そんな暮らしをしていたら、一年くらい前のこんな雨の強い夜に、あの子と出会ったんだ。
今日はもう寝てるけど、皆も知ってるあの子だよ。あの子は、こんな雨の強い夜に森でひとり震えていたんだ。
十歳くらいの子供が、人気の無い夜の森で濡れてたら皆はどうする? ――だよね! それは助けるでしょ?
里に連れてきて身体を温めてあげて、温かいスープとパンをあげたら僕の分まで食べちゃってね。これなら安心と名前や何処から来たかを聞いたら、何も覚えてないって言うし、不便だからと名前を付けてあげたんだ。
だけど、里の皆は勿論良い顔をしなくてね。
特に、あの子が人造授恵者 と分かってからの視線は冷たくて。――出自はあの子の責任じゃ無いのにね?――そんな目にあの子を曝して置くわけにいかないと思ったのと、おじさんも外の世界には憧れはあったからさ。
ぼくなりに一大決心をして、一緒に外に出ることにしたのさ。
それで旅の資金を得るために冒険者になった訳だけど、外の世界は刺激的でね!? 感動することや楽しいこと、苦しかったこと、色々なことがあったんだ。
ビッグオウムに乗って空を飛ぶ経験なんて冒険者でもないと出来ないし、初めて乗った時に上から眺めた森や湖の景色、ビッグオウムの匂い、頬にあたる風は本には体験できないものだったよ!
細剣は扱えたけど、命懸けの戦いなんて里では経験しなかったから、剥き出しの殺意をぶつけられることが、あんなに恐ろしいことだなんて知らなかったし。あの子にも随分助けられたよ。
魔法も実戦で使うとなれば、必要なタイミングやエーテルの配分も難しくてね。一緒に依頼を受けた人が使うのを見様見真似で覚えて、何とか使えるようになるのに随分かかったりもしたし。
そうしている内に二人でここに居着いて、こうして皆と楽しくご飯を食べたり、たまに緊張感のある依頼を受けたりしてる訳さ。
ユニコーン? さあ? ナンノ事カナー?
●語り終えて
「――とまあ、あれから何年も経ったような気で居たけど、あの雨の夜からまだ一年しか経って無いんだと思っちゃってね。ちょっとぼんやりしてたのさ?」
そう言ってアランはワインを飲み干してひと息つくと、友人へ話を振る。
「ってわけで、おじさんの話はおしまいっ! 君はどうだい?」
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メアリー王女が冒険者達の協力を得て稼働させた「王家の耳」。メアリーは無作為に集まってくる情報を、余人に及びもつかぬ閃きを持って分析しながら、今日も世界の動きへ耳を傾けている。
集まった情報の中には、世界の情勢に影響はないかもしれないが興味深い個人の記録があるかもしれない。