迷宮都市エドゥノーグへようこそ!
アルパカコネクト運営
コメント 150
シナリオID:72
オープニング
ロスガリア大陸において、ダンジョンと呼ばれる秘境は数多く存在しているが、『迷宮都市』と呼ばれるような土地はただ一つしか存在していない。
エドゥノーグ。
神の手で作られたという巨大な地下迷宮を礎として栄えてきた都市である。
古き神代の色を今も色濃く残すという点で、辺境都市らしい土地とも言えよう。
大陸北東部、イェルノー荒野に特有の乾いた大地の中でも一際不安定なエーテル環境を有しているにも関わらず――この都市は、迷宮から生み出される様々な利得を血肉として栄えてきた。
故に、と言うべきか。迷宮都市は、迷宮に挑む者たちを厚く支援してきた歴史がある。
一攫千金を夢見て身一つで訪れた者たちが、驚きに目を見開くほどの歓待ぶりは、同都市のカエル料理とならんで風物詩となっている。
――流れた血と朽ちゆく屍には目もくれず。
命知らずのための都市は今日もまた、生者を求めて、その顎を開いている。
●
「冒険者ギルドとあの都市は、昔から関係が深くてね」
柔らかく耳に響く低音に、苦笑の色が滲んでいる。蒼狼のハーフビースト、アナンディーンの視線の先の掲示板には、神殿の宗教画もかくやと言わんばかりに大きく張り出されている依頼書があった。
苦笑の対象は、長身のアナンディーンですら見上げるほどのそれを見ようと集まる冒険者たちに――ではない。
その、内容であった。
『迷宮都市体験キャンペーン! 冒険者になったばかりの皆さまへ!』
『ただいま迷宮はナギ節で初めての人にも安心安全! カジュアルに迷宮を楽しもう!』
『上位入賞パーティーにはささやかながら景品も!』
と、派手な書体で書き出された下には、迷宮都市の地図や名所がずらずらと書き連ねられている。
エドゥノーグは、迷宮から算出される素材や資源をもとに発展してきた一方で、迷宮に挑む者たちへの支援を兼ねてか、質の高い歓楽街や観光名所を多く有しており、辺境都市を巡る旅行者の評価も高い。
けれど、それもまあ。
『【あのW氏も推薦!】
迷宮はジメジメしてるし危なそうだから嫌い? 僕もだよ! せっかくだしジビエでもどうだい? 商人ギルドの奢りらしいよ!』
――ここまでくると、露骨なもので。さて、どうしたものかという空気が滲む中、アナンディーンは吐息を一つ。
「つまりは、営業だ。君たちのように大量の授恵者が現れた――ということは、かの土地にとっては無視できない事態だろうからな。依頼という建前を立ててでも、一度は足を運んでほしい……というところだろう。……冒険者ギルドとしても、授恵者になりたての君たちにとっては、そう悪くない話だと思うのも確かだ」
危険がないとは言わないが、と言って、アナンディーンは腕を組みながら、冒険者たちと同じように依頼書を眺める。
「君たちが冒険者を続ける限り、この先何かと縁ができる土地でもある。悪い経験にはならないことは保証するとも」
●
陽光が、『夢の塔』に長い影を落としている。
探索者支援ギルドの本部でもある、この都市唯一の塔の前には、黒山の人だかりができていた。
「それではーーー! ルールを説明しまーーーす!」
都市内に数多くある迷宮の入口のなかでも、最大のものの一つを要する建物の前で、探索支援ギルドのハーフリングの女性が、声を張る。
「今日はー! みなさんにはー! 実際にー! 迷宮探索をしてもらいまーす!」
冒険者が多く集まる中、視線を集められないハーフリングの矮躯を思いっきり伸ばす。
「パーティを組んでもよし! 組まなくてもよし! 倒して得た敵の素材とー! どこまで進めたかによって評価が変わりますー!」
そう。今回の『催し』の説明をしているのであった。
「今回皆さんに挑んでもらうのはー! 『武の主幹路』の浅いところにできた新しい枝場ですー! 武闘派系の場所ですけど、ナギ節なんで《《駆け出しの皆さんでも安心》! 中では変なことも起こるかもしれないですがー! そこは自己責任でお願いしますー!」
若干無礼な物言いも、混沌とした場の雰囲気に飲まれて、流れていく。
紛雑極まる環境の中でも、
「ではではー! 細かい案内をしていきますねー!!」
●
エドゥノーグの歓楽街や公園といった名所は、都市内に散在する迷宮への入口を中心に随所に存在している。
迷宮から『出てきた』者たちを、酒と熱い料理で迎えるために自然とそうなったらしい。彼らが塒へと向かう道中そこかしこには屋台が立ち並び、酒場があり、湯場があり――と、探索を終えて冷めやらぬ心裡を、どうしようもなく掻き立てる造りだった。なお、最も大きいものは北部にある『花の歓楽街』と、ドリームロードという、エドゥノーグ南門から伸びる大通りの露店たちであろう。
探索者を慰撫する街の造りは、観光や羽根を伸ばすにも都合がいい、というわけだ。
迷宮に興味がない冒険者たちは、それぞれに、あるいは、連れ合って出かけるのも良いだろう。
なにせ、依頼を受けた冒険者はエドゥノーグ商人ギルドから渡された証文を見せることで、無料でこの都市を味わうことができる。
思う様羽根を伸ばすにはいい機会であることは間違いない。
●
薄暮に差し掛かろうというころ、レイウェスト・バルダスは疲弊しきっていた。宿場の食堂の硬い椅子に腰掛けながら、目頭を揉みつつ、長かった一日を振り返る。
迷宮都市の重要な組織は三つ。商人ギルドと、職人組合、それから、探索支援ギルドだ。商人ギルドの古狸との交渉は中途半端なところで中断し、職人組合では売り物を並べての商談になってしまい、ようやく切り上げたところで『次は我らの番ですね殿下!』と宿場に押し寄せてきた探索支援ギルドの重役との世間話。
成果は無い、と言って良い。もともと、利権の絡み合った都市であることに加え、それらを争う形でにらみ合っている三者との対応は、一筋縄ではいかなかった。
「まあ、話ができただけでもまずは上々、か……」
今もなお茫漠な難民を生み出し続けている帝国への援助のために奔走していたレイウェストは、つい先日、主戦場としていたリブラネスタを離れたばかりだ。
フィルエス大森林からリブラネスタへと赴いていたルイン族の長グレイオンス、そしてドワーフ王国のドワーフ王シグルランは、お互いに反目する形で帝国への支援を確約してくれたが、辺境都市群は都市国家としてバラバラな性質から、個別に行脚する必要があったのだ。
その中でも、エドゥノーグは特に重要な都市の一つでもあった。
迷宮から産出される素材は、その生まれ故にか授恵者に良く『馴染む』ことで知られる。
彼の師であり、護衛騎士でもあるリザードマンのエフレム曰く――エーテルを扱う授恵者にとって重要なのは、武器そのものの形質や出来栄えでは、ない。
エーテルを通わせ、己が欲するところを成せるか否か――その点で、授恵者に対する支援として、エドゥノーグ産の素材は、先々の帝国奪還のためには欠かせないものでもあった。
「とはいえ、思っていた以上に固かったな……」
「拙が、潜りましょうか」
「……それは、あの者たちは喜ぶだろうが……駄目だな。我々もずっとここにいるわけにもいかないだろうから」
迷宮都市の発展は、『その都市で迷宮に挑む者』に依存している。
同盟や王国、その他各国の面々と異なり、彼らの求めるところが明確かつ絞られているため、レイウェストにとっては立ち位置を定めることが難しい、というのが実感だった。
彼らの要求は、すなわち。
「――帝国の難民を、この都市に送ること。それは……駄目だろう。身も心も磨り潰されているような彼らに対して、新たな死地に飛び込めなどと、言えるわけもない」
「……」
レイウェストの葛藤に、エフレムは応えなかった。
――どちらでもいい、と。そういうことなのだろう。
レイウェスト自身、それを決める権利すらもたないことは百も承知だ。けれど……と、思考が迷宮入りしかけた、そこに。
「おーい! 少年! 飲んでるかな! お兄さんがやってきたぞ!」
余計な人物が、やってきた。
「……またですか、ウィリアム王子」
「言うじゃないか。折角の機会だから、冒険者らしく楽しまないと損だよ。何せ、費用はあっち持ちなんだから」
ジト目で睨むレイウェストの反感など気にも留めず、豪奢な装いに身を包んだ人物――ウィリアム・リーンエスは悪びれもせずに、言い放った。
「くさくさしていてもしょうがないとも! ここは一つ、冒険者同士、ぱーっと飲みに行こうじゃないか、少年!」
解説
マスターより
リプレイ
迷宮への入口が開放されるや否や飛び込んだ者もいれば、外に残っている冒険者たちに声を掛けて同行者を探す者もいる。あらかじめ準備を進めていた者たちは固まって迷宮へと足を踏み入れていった。中にいる案内人が今回の会場となる『枝場』への誘導を行っているため、その経路にあたる浅層の敵はきれいさっぱり掃除されていく。
――迷宮都市らしい一日が、こうして幕をあげたのであった。
●
迷宮の中では、即席のパーティが組まれることもある。特に共通点がある訳でなくとも、ただそこにいただけで。
「なのに、なぜ。ゴブリンのおじ様はいないのでしょうか? いえ、おじ様じゃなくてもゴブリンの方が一人くらいいてくださっても良いですよね?」
エルフにしてゴブリン好きを拗らせているシェリー・コートは、天を呪っていた。どうせ即席パーティなら、今からイケゴブオジを探してもいいのではないか?
「ごんすっ! おらだけで手が回らね。あんだのおがげで助がるべさ」
がっしりしたドワーフ娘のカンナ 三木と、この即席パーティを二人で支えている。彼女にそう言われてしまえば、抜けるに抜けられない。
「大丈夫です! 近づいてくるカエルはボクが倒します」
きりりという、フォルシウス・ヒメギ・ランヒルドも残念ながらヒューマンだった。かわいい、でも欲しいのはそれじゃない。ついついため息も出てしまう。
「え、あ。お疲れですか。少し休まれますか?」
若い子に心配されてしまうと、さすがに少しいたたまれないシェリーであった。さて、前衛では。
「この場においては私は鬼神。この斧、見せかけではございません」
数匹のカエルに集られかけたミスティは却って発奮し、一気に斧を薙ぎ払った。普段は自らに課している守るべき人の盾としての枷を取り払い、修練の為にも前へ、前へ。
「カエルちゃんの首は、ここでしょうか? ここですよね?」
「首も何も、潰してしまえば同じじゃろう? このようにだな」
さっきから、首切りの角度研究に余念のないザンカ・クジンと、ギルバルド・ガイアグラン・アルスレイドが何やら競うようにカエルを倒していく。
「飛び散らない方がありがたいよね? 休憩中にあの黒くて素早い奴とか寄って来たら嫌だよ」
ギルバルドとは同僚の間柄なのだが、ハーフリング女子のシルフィード・フェルナールは彼の肩を持たなかった。汚いし、害虫を呼びそうで嫌なのだ。
間違っても巻き込まれないように、少し離れたところから援護する。
気まぐれに止まっては、またぴょんこぴょんこと跳ね出すカエルはほどほどにシューター泣かせでもあった。
「あたしを馬鹿にしてんのか? そうなんだろう? あ?」
短気なアルト=ミルドレッド=バ・ロッサはぷりぷりと怒りながらも、一匹、二匹と射止めていく。狙っている時に動くのが腹立たしいようだ。
「まあまあ、のんびりいこうぜ。後の食事を楽しみにしてだな」
キャスターのパヴェル・A・サムルガチェフはすっかり戦闘モードからのんびりモードに変わっていた。なにせ、前衛が張り切っている。
●
カエルの生息地は湿地に似ている、そのせいかは分からないが、リザードマンが多かった。
「邪魔だ、貴様は去ねぃ!」
ぴょんこ、と跳ねてきたカエルをシネミス・カネダが乱暴に蹴り飛ばす。亀ならば躊躇したかもしれないが、両生類相手には慈悲もなければ普段の礼儀正しさもない。
「カネダさん、まだ疲れませんの?」
少し変わったイントネーションでそう尋ねるのはメ・スシリンダー。キャスターとして支援を続けているのだが、そろそろ疲れてきたようだ。
「……俺は、まだ。大丈夫だ」
少し考えてから、ヨトカ・ドラーゲンは胸を張った。虚勢である。若い彼は勇敢で寡黙な戦士を演じていた。例えば、すぐそこにいるような。
「うむ、吾輩もまだ問題はないぞ。獲物を待つ外の者の為にもう一働きしてもよかろう」
豪快に敵を薙ぎ払いながら、ウェレクス・テンペスタスが言う。自信満々である。
「貴公の言うとおりであるな。我らはまだ余裕であろう?」
巨漢のヒーラー、ガ・バタンクまでがそういえば、メ・スシリンダーにも否は無く。リザードマンの即席パーティはもう少しここで粘っていくようだ。
●
順番に迷宮に入っていった一団に続く形で、ドロテア=フォン=グレッシェルは迷宮に足を踏み入れた。
「実戦経験が浅い私にとってはちょうどいいですけど、物足りないですね……」
―・―
と、思っていたのも束の間のことだった。
ゆったりと浅層をめぐったのち、枝場に入って最初に出くわしたのはドロテアの腰ほどまでの高さのイソギンチャクのような生物だった。
――いま、壁から湧きました?
先行する冒険者たちで掃除されていると思いきや、こういう遭遇の仕方もあるらしい。
「――っ!」
驚きながらもエーテルを手繰り、光爆を打ち込むと、蒸発するように消えていく。
あまりに弱いが、入口付近だからだろうか?
「……いえ、でも、気をつけないと……あむ」
持参したチョコレートを食みながら、次の目標を探し出す。
「さあ! 突撃です!」
●
「おお、こいつは……あんた、解ってるな!」
と、ギルドの職員からお褒めの言葉を頂き、エレオノーラ=ヴェロニカ=パホライネンは嬉しげに目を細めた。
「お店のなかでその場でしめるお店があると聞いたので、そうしたんですが……良かったです」
「ああ。中々浅層で沢山集めてくれる探索者も少ないから、助かるよ」
「そうなんですね……じゃあ、もう少し集めてきますね!」
といって、エレオノーラは再び浅層に戻っていった。今日はカエルを見つけ次第連れて行くと決めていたのだ。
余談だが、この日彼女が最もエドゥノーグの食に貢献した冒険者となった。
●
無理はせず、急がず、のんびりと。そう自らに言い聞かせながら、マリナ・蔭山は迷宮を進んでいく。時々、異常に暗い通路などがあるが、危うきには近寄らないこととして、安全マージンを取ったうえでの調査だ。
枝場に入ってすぐのころは敵はどんどん処理されていたが、時間が立ってくると広間にまとまって存在するような場面もしばしば見かけた。何もしなければこちらに襲い掛かってこないものもいるようだが――何匹かを単独で屠って具合を確かめてから、範囲魔法で焼き払う。
「……っと!」
ただ、火力が及ばなかったためか、接近までに2発目を打ち込む必要があった。思ったよりも硬い。
――これは、キャスターのソロは大変そうですね。
安全第一で、と。肝に銘じながら進む。
●
同様に、堅実を旨としてハーフビーストのルル・リ・シュタカは進む。こちらは目についた敵をとりあえず順番に倒していくかたちだ。
「堅実でかつ、慎重に進んでいく。なのです」
ぼ、と。大上段から振るったハンマーで黄色い鱗が特徴的な蜥蜴を叩き潰す。念の為もう一度振り下ろしておいて、牙を回収しておく。
「……あれはやめとく。なのです」
その後、突然眼前に現れた、4体程度でまとまっているスライムたちからゆっくりと距離を取りながら、広間から広間につながる通路を確認する。敵影、なし。
ルルはこの日、深く潜ることなく、できる限り1体ずつ相手にすることと決めていた。結果として、地力での対応が多くなり、枝場の浅い位置には無数の圧殺死体が転がることとなった。
●
少し深いところへ、と四層目へと脚を踏み入れたところで、思わぬ奇襲を受けた。
アストライト=アクチュアルは念の為に、と準備していたヒールで傷を癒やしながら、襲ってきた敵の遺体を検分している。
「……蓑虫、みたいな感じでしょうか」
壁に擬態していたか、壁から現れたのかは分からない。通路に入ったところで、突然攻撃を受けたのだった。強さは大したことはなかったが、強力な敵だったとしたら命の危険もあった、と。薄ら寒いものを感じていた。
「これが迷宮……あなどれませんね……力試しにはいいかもしれませんが単身だとなかなか大変ですね」
と、気を引き締めて臨んでいたが、その後何度か同じような奇襲をうけた。
――後に、キャスターやシューターのように、軽装で単身の人間を襲うことで知られる蟲だと聞いた。
その体は一部の薬剤に使われることがあるらしく、それなりに高価で取引されているらしい。
●
「数年前に来たときに、迷宮のことも見ておけばよかったですね……」
素材を集めるぞ、と。決めたリコリス・アデュラリアであったが、いざ採集に臨もうとすると中々敵が邪魔くさい。階層ごとに異なるが、積極的に襲ってこない敵と、そうでない敵の見極めができてからは採集もスムーズになったが、少しばかり面倒が勝った。
浅い層ではそうでもなかったのだが、素材を求めて深層に行けば行くほど突然湧いて襲いかかってくる敵もいて、採集にかまけてばかりでもいられない、というのもある。
――そろそろ、魔法の余力も無くなりそう、ですか。
上手く戦闘ができていたため、ヒールには余力があった、のだが。
「……今回は様子見、ということで」
道中、困っている冒険者がいれば使用しておこうと、帰路についた。
――アルト・マクスウェルもまた、同様の状況となっていた。
「……思っていたよりも、戦闘の準備が必要でしたね」
駆け出しの後衛ということも影響していたかもしれないが、思った以上に戦闘での疲弊が大きかった。
それでも、荷には多量の薬草や香草、食用野菜などが詰まっている。知識を頼りにダンジョン内の細かな地質の変化を追った甲斐があったが、興が乗っていたのに、十分な時間を割けなかったのは悔やまれるところであった。
次の機会があれば、と。後ろ髪を引かれながらも後退を選んだ。
●
「……隙ありであります!」
油断させた、というのが正しかろうが、それはそれとして、浅めの枝場で狩りに勤しんでいるミウミの気勢――ドヤ声であった。
弱そうな敵を狙い、隙を見せて、狩る。武者修行のために迷宮に踏み込んだが、無茶はしないのがミウミの流儀だ。残ったトカゲの皮革を剥ぎ取り、爪や牙をへし折りながら鼻歌まじりである。
「このあたり、雑魚ばかりでありますが……いやいや本当に都合が良いであります」
鎧の存在感から、歩くたびに敵が寄ってくるのは確かだが、浅い所だから雑魚ばかりだ。そのうち素材を集めるのも面倒くさくなって、ミウミはただただ雑魚狩りに精を出すようになった。
「良い修行になったのであります」
と、(兜のしたで表情は伺えなかったのだが)ホクホク顔で語ったそうな。
●
シャーディーの視線の先で、アーシェル・G・クラインが通路を往く。
弓手が独りでいると見て、アーシェルから声をかけてくれた。生来の流れ者ゆえの無精で機を逃したと思っていたが、これ幸いとばかりに応じた形だ。
以降、アーシェルは先頭と前衛を買って出てくれている。その間に、地図を作るのはシャーディーの役目となった。
「……来やがったな」
複数の昆虫が押し寄せてきた瞬間、そう言ったアーシェルの気配が変わった気がした。顔は見えなかったから、直感のようなものだった。
そのまま、駆けていく。先程までの好漢ぶりとは打って変わって、自らが傷つくことを厭わない、暴力的な立ち振舞であった。
――その表情は変わらず、伺えないままだ。
シャーディーは続けて、矢を放ち続ける。アーシェルが身体を張っている分、シャーディーに危険が及ぶことは終ぞなかった。
「終わったな」
戦闘が終わると、アーシェルは言葉少なにそう言った。少しだけ、感情が滲み出た声だった。
「……まだ行けるか?」
金の瞳がこちらを伺っている。シャーディーはどう応えものか少しだけ悩んだが、他人の事情に踏み込むつもりも特に無く。
「行けるとこまで行きたい」
とだけ、短く応じた。そんな相方の乾いた態度に、アーシェルはなぜか――少しだけ、嬉しそうに応じたのだった。
●
ハーフビーストの少女、Luminaは単身で迷宮に挑んでいる。幸い、浅い枝場ではシーフの身軽さと二刀の威力は有効で、効率良く敵を屠ることができた。
気になったのは迷宮の「壁」に傷をつけたときのことだった。目印代わりに、としたものが、しばらくして戻ってくると消えていた。不便極まるが、神の手からなる迷宮、という真実味を感じたのだが――それは、さておき。
「結構手応えがあるね……!」
五層目へと至ったころに、たまに強力な敵と当たる機会が増えてきた。速度でLuminaに及び、あるいは二刀の威力に耐える敵だ。こうなると、被弾も増えてくる。
帰り道を思い、さてどうしたものか、と思っていると。
「――おや、怪我をしているではないか!」
声とともに、身体から痛みが取れていく。
「これは……ヒール……?」
「いかにも!」
驚くLuminaの声に、大仰な声が応じた。壁を反響していやに大きく響く。
「なに、気にするでない! 我の名はウォン・ジンユゥ。ゆきあったのも何かの縁よ!」
リザードマン風の面を被っているが――わずかに覗く肌はヒューマンか、エルフらしいそれ。おそらくヒューマンか。ともあれ、善意のヒトではあるのだろう。Luminaは思わぬ支援に目を細めた。
「……ありがとう、これでももう少し行けると思う!」
「なに! 我が名はウォン・ジンユゥ! この名を覚えてくれればそれでよい!」
「……? そ、そうなの? わかったよ!」
異様に圧の高いジンユゥの声に、それでも素直に頷いた。
一方、ジンユゥはその様子に深く満足していたのだった。
――うむ! これはいいな! 確りと恩と名を広められているではないか!
風体や目的はともかくとして、ソロで挑むものが多いこのあたりの階層で、ジンユゥの存在が有難がられたのは間違いなかった。
●
ヴャチェスラフ・スタリギンは獅子の頭を持つハーフビーストで、物言いも尊大だが、決して居丈高な人物ではないようだ、というのは、ブルーテ・ビシアの評するところである。
浅い層から順に、隘路や狭い道を選んでは進んでいくブルーテが敵の種類や分布を記録していることに興味を覚えたヴャチェスラフから声をかけたのが出会いとなった。
シーフらしく駆け抜けるでもなく、採集に精を出すでもなく、調査に勤しむ。そんな中「励むではないか」と言われたときはどうしたものかと思ったものだが、以降、避けがたい戦闘の矢面を請け負ってくれるのだから、悪感情は特に無かった。
だが。
「ヴャチェスラフ」
「何だ」
「前衛をしてくれないのか?」
「……ふむ」
隘路、暗路を選んでいき、暗く湿気っぽい部屋にたどり着いた時のことだった。通路から覗き込むと、僅かな光源を受けて照りを返す黒いナニカが見えた。臭いし。素早そうだし。犇めいている様は悪夢的だ。耳を震わせる硬質な音がまたいやらしい。
「ブルーテよ。捜波で見つからなかったのか?」
「分かってたら来なかったさ」
「……」
ヴャチェスラフは沈思した。どうだろう。ここで武勇を振るうことは、スタリギン家の悲願に適うことだろうか?
「……うむ。よし。俺は他の所を調べるとしよう。短い間だったが世話になったぞ」
「気が合うな。俺も、お前が飛び込むようなら止めようと思ってたところさ」
「うむ」
「おう」
そのまま後ずさり、その小部屋を後にした。二人の情報は、この枝場に最重要事項として語り継がれることとなる。
●
ハーフリングのファルマ・アラーティは、独りで迷宮に挑んでいた。
知識も、スキルもあるのだが、いかんせん戦闘は苦手である。
――けど、素材は欲しいのよね。
出来ることならよそでは手に入らないようなものがでるのか、というあたりはつけたい。
なんなら多少の危険を、冒しても――と自問して首を振った。
「なんのために冒険者になったと思ってるの?」
素材のためだ。最初から、ブレーキなどありはしなかったのだ。
―・―
そして。
「きゃあ!?」
罠を踏んでしまった。
―・―
悲鳴に気付き、真っ先に駆けていったのはリリリリス。桃色の長い髪をなびかせ、広場に飛び込む。
「助けに来ましたわ! 私の剣技にお任せなさ……って数がおおいですわね!」
視界の中には、大量のスライム。岩を含んだタイプのものだ。それが、ハーフリングの女性を取り囲んでいる。
「おおっと、これは……なかなか面倒だね」
ルース=マクスウェルの言葉に、ルーウィン・ビナーが「まあ……なんとかしてみようか」と言いながら、颶風を生み出し、スライムたちを一息に巻き上げる。新人ゆえの威力不足を差し引いても、数を潰すことにかけて、キャスターは随一の適正を誇る。
そこに、リリリリスが踏み込んでいく。大きく、優雅に。
「行きますわ……!」
リリリリスが被弾を恐れずに踏み込むと、ファルマに向けられていた岩石や粘体がわさわさとリリリリスへと向かってくる。ガンガンと、乙女には似つかわしくない騒音が響き渡るが、リリリリスは意にも介さない。
――騒がしさに気づいたのだろうか。通路からもうひとり、冒険者が顔をだした。リザードマンの――老婆、である。
「おっと……大変なご様子。お手伝いをしてもよろしゅうございますか?」
オルドリン・カートライトだ。彼女の魔矢と合わせ、こうして集った十全な火力により、スライムたちはまもなく駆逐されることとなる。
―・―
「怪しいところには浅層で取っておいたカエルを投げつけたりして反応をみるといいぜ」
「ううん……できるかしら」
と、ルースは手持ちのカエルを見せながら言うが、ファルマは小首をかしげている。
「よかったら、一緒に行かないかい? キミは採集が得意なようだし」
「あら、それでしたら、わたしもご一緒してもよいかしら?」
オルドリンも言うと、ファルマも「じゃあ……お言葉に甘えて」と応じた。
ファルマとしては、採集ができれば否やはないのだった。
●
「――そろそろ収穫祭ってことだしにゃ」
スウィナ・ホールド・ティールウィンはそう言って、野草や鉱石、肉などで膨らんできた荷を見て自重する。深く潜りたい、という思いはあった。狩人として、冒険者として、迷宮に足を運んだのだから。
けれど、エドゥノーグ自体が、迷宮の素材を当てにしているのも聞いていたので、無視もできなかった。
「……にゃ?」
言ってから初めて、自分が困憊していることに気づいた。奇襲を警戒しつづけることも、弓を射っても至近まで寄られてしまう精神的負担は大きかった。ホークアイが広間を探るのにはちょうど良かったが、通路となると今ひとつ効果を発揮しなかったのも大きい。アストライト同様、奇襲を仕掛けてくる敵の被弾も多かった。
辻ヒーラーとたまたま合流できれば、もう少しいてもいいが……。
しばし、逡巡して。
「んー……今日はここまで!」
敢えてそういって、踏ん切りをつける。そうなればもう足取りは軽やかに、もと来た道を帰っていくのであった。
●
「随分傷だらけになったな……」
ふと、自身の装備を見下ろしてファイサルは呟いた。浅層を中心にしていたとはいえ、受けて耐えて、見極めてから戦う立ち回り故に、戦闘あたりの被弾はどうしても増えた結果だ。
まあ、先々、迷宮に自由に行けるようになった時の練習も兼ねているので、不満があるわけではない。
もう少し装備が整い、ヒールなどのスキルを抑えていけば、単身での探索であってもこのぐらいの階層での滞在時間は増えそうだ、という実感は得られただけでも価値はある。
「……無事に戻ったらたまには1杯やるか」
―・―
ファイサルが度胸の人物だとすれば、Svart・Nattは慎重である、といえた。
探波と捜波を駆使して、敵の所在や位置関係を調査してから狩りに行く。
無論時間は掛かるのだが、こなした戦闘数、入手した素材の量を思うと、Svartの継戦性は高かった。スラム生まれということもあってか、基本的に油断が無い。
行ける、という判断ができる限りは進むことにしていた。
己の実力を知るための挑戦は、Svartにとっては満足の行く結果と言えた。
●
ハーフリングの灰の紅茶は、ぞぶり、と差し込んだ短剣をゆっくりと引き抜いた。ホブゴブリンとコボルドを足して割ったような、2メートル程の体躯の敵が痙攣したまま倒れ込む。
「ひゃー、これでスキルも殆ど打ち切りだー!」
エドゥノーグのため! と張り切って、素材を集めるために積極的に、単体・群れ・強敵を問わずに挑みかかった結果だった。足元で横たわる敵の急所をもう一度刺し、安全を確認してから息を吐く。
攻撃・回避ともに手は尽きて、残るはヒールのみ、となったが――。
「ま、いけるうちは頑張るよー!」
と、意気揚々と進み出す。帰りしなに素材を回収する腹積もりである。
――後に迷宮においては放置された遺体は時間とともに消えてしまうことを知って、ミスティーは悲鳴をあげることになったが、有事に備えて迷宮に待機していた探索者が回収していたと聞いて、安堵したという。
●
迷宮には希少な魔物がいる。これは、よく口の端に上ることである。
チーム【天魔王】は、そこに目を付けた。
「見つけるぞ、ツチノコ級の大物をな」
「しかしムラムラ。アテはあるのか?」
ジャイアントパンダのハーフビースト、ハッタ・ムラムラの言に応じたのは、リザードマンのニワニである。ハッタは重い頷きを返した。
「無い」
―・―
この日、【天魔王】の名の下に集ったのは、ニワニの他に、シーフのショコラ、キャスターのミツキ・アインホルン、シューターのセロンガード・シュタインドルフである。
「残念ながらレアな生物については緘口令が敷かれているのか分からなかったですが、特殊な素材についてはアドバイスをもらえましたよ。特定の方法で倒したりすると、エーテルが作用するのか、特殊な素材が手に入ることがあるんだそうです」
「あら、初耳だわ」
セロンガードの調査結果に、ミツキは興味を覚えた。
「属性や……付与あたりかしら。いつか試してみたいわね」
一同は隘路を選んで進んでいる。先頭に立つニワニに、探波・捜波の双方を使用しているショコラが方向を指示しては移動する、の繰り返し。他の冒険者たちとくらべて進みは遅いが、徹底的に細い道や脇の道を埋めていく。ショコラが隠された道や小部屋をいくつか発見し、細々した素材を入手することは出来た。
だが、目的も獲物もまだ、無い。
「分かれ道だな」
と、先頭のニワニが言えば、自然と暗く、狭い方向へと進む程度には、統制が取れていた。
―・―
セロンガードの感波が働いたのが、きっかけとなった。
一同は刺激しないように悠然と――偶然を装って進んでいく。
(ん……この部屋、地面の具合が少し変かもです。何か埋まってるかもです?)
そこ、と。ショコラが声を潜めて言うと、ニワニが無言で前へ。セロンガードとミツキは入り口側に立ち、ハッタは神に祈った。この幸運に見合うだけの苦行を背負う覚悟を示すように。
ニワニが斧を地面へと打ち付ける、と。
「――――!」
ぴゅん、と。何かが飛び出してきた。凄まじい速度でニワニの傍らを迂回しようとするが、隠密していたショコラが間に入る形でカバー。更に迂回しようとしたところに、セロンガードが矢を放つが、これは回避された。だが、足は止まった。
「……逃さない……っ!」
ミツキがスタティックフィールドを放つと同時、ハッタがショコラとニワニとともに包囲に回る。
三方を塞がれ、足を封じられたそいつは――土で汚れてはいたが、金色の、トカゲのような姿をしていた。体長15cm程度で、足が六本あることが特徴といえる。間違いなく、希少種の風格。
ともあれ。
「確保ーーーー!!!!」
腹の底から響いたハッタの声に合わせて、ニワニ・ショコラ・ハッタは3方から同時に襲いかかった。
―・―
ハッタのロープでぐるぐる巻きにされた金色のトカゲの処遇は、素材として扱うべきなのか、はたまた好事家を含めて飼育を検討するべきなのか、そもそも名前はどうするのか、というところで、多いに揉めた。
発見者の一団のリーダーであったハッタはとにかくジャイアントパンダの名を冠そうとするので、発見の功は称賛されるも、命名に関しては棚上げとなったという。
●
この日、レアな獲物を探していたパーティーは【天魔王】だけではなかった。
【白翼騎士団】の面々もまた、調査に勤しんでいたのだ。
リーズ・クラヴィエによる先輩冒険者たちへの事前の調査は残念ながら「教えちゃだめってことになってるのさ」と云われ空振りに終わってしまったが、武の主幹路は「罠やギミック」などは少ないものの、強力な敵、レアな敵が出てくることで知られている。
この日、【白翼騎士団】が目をつけたのは――。
「昆虫だ」
「……こんちゅう」
アルベルト=V=シュタールシュヴェーアトの言葉に、カエルムは少しだけ、苦いものを噛みしめるように言った。(殆どそうは見えないとはいえ)ゴブリンの身の上ではあるが、かといって虫にいい思い出があるわけではない。いや、むしろ嫌な予感がひしひしとしている。
「魚拓を取りたいですわ!」
と、同じゴブリンではあるが、こちらは意気揚々とバンビ。
「迷宮は魔物を生むけれど、群れや、それに類する環境があれば怪しそうだよね」
「そうですね……そういう情報が、迷宮の中でも手に入ればいいのですが」
ルース・ラルビカイトの言葉に、アクセル・ランパードが頷いた。
――それの存在を聞きつけたのは、このしばらくあとのことだった。
―・―
「いや、コイツは割りにあわないだろ」
「どうした! むしろ願ったり叶ったりだぜ!」
カエルムの慨嘆を聞きつけたアルベルトは、嬉々として得物を奮っていた。飛び散る嫌な汁。断片化して上がる謎の粉。前衛に立つのはアルベルト以外に、アクセル、ルースら。いずれも、覚悟は完了していたとばかりに、特に動揺を零すことなく戦闘に従事している。
「……ジャイアントダブルヘッドセンチピード……」
眼前の酸鼻な光景に、バンビは悲しげに目を細めた。仮にこれが、当初望んでいた結果につながったとして。
出てくるとしたら――。
「おっ」
ずらずらずらりと並んだGの遺骸が積み上がってきたころ。アルベルトは嬉しげに声を上げた。どうかしてるぜ。
「お出ましだな」
視線の先に現れたのは――SGであった。
―・―
【白翼騎士団】の人数で挑んだにも関わらず、驚くべきことに、戦闘は10数分にも及んだFHG。ウォーリアによるダメージコントロール、リーズによるヒール管理、加えて、ルースの弱体化がなければ、倒し切ることすら出来なかったかもしれない。
「……魚拓、とるの忘れてましたわ」
逃げ出そうとしたSGをスタティックフィールドで留めた功労者のバンビの視線の先では、レアモンスターを討伐したことを大いに祝いあう、ヒューマンやエルフたちの姿があった。
●
「……天然の鉱石はでねぇみてぇだが……」
壁肌の変化を感じてスタルツ・エンスレイヴドが突いてみたところ、石を多分に含んだ粘性の生物がいた。スライムを斧で潰したところ、いくらかの石が残った。黄色がかった輝石が多い。たしか、迷宮由来の鉱石として出回っていたものだ。
狙いは、これである。鉱石を食する奴がいることを確認すること。それから――そこから得られたものを餌に、次の獲物を引き寄せること。
広場の中央に鉱石を置きなおして、待つことしばし。ゆっくりと集まってくるスライムたちを眺め見て、スタルツは不敵な笑みを浮かべた。
「テメェは……メタルか?」
そう言って切りかかる様は悪鬼の如く。
言葉の意味は、余人には理解しかねるものであろうが、宗教みたいなものなので、気にしないでほしい。
●
より深い層にいける道が見つかったらしい、という声を聞いても、ハーリド=ハーリスとスー・ルーのペアは迎合することはなかった。
――と、いうのも正確ではない。
戦闘に高揚したハーフビーストのスーは目を輝かせて、「旦那! あっちのほうに強い敵が居るんんじゃないか!」と駆け出していったからだ。それを見たハーリドは口の端を大きく釣り上げた。ハーリドが見る限り、スーは魔導の徒として信がおけるひととなりであった。
つまり。
「御身には未だワタシに見えぬ世界が見えているのであろうな……遅れは取らぬ! いざ!」
まあ。彼も根っからの武人なのであった。
ハーリドの武徳か、はたまたスーの智徳かは定かではないが、彼らは浅い枝場ながらも複数の特異個体と相対し、これを撃破することで大いに満足したのである。
●
紫色の艶やかな髪に、赤色の瞳。豊満な肢体は、迷宮にあっても色香を振りまいている。
道行く同業者や、探索者たちの視線を無視して、バンシーは捜波で敵を探しては、彼女にとって都合のいい、程よく小型で、柔らかそうな相手を見定めて狩りにいそしんでいた。
奇襲し、二刀でもって切り裂いて。
――時折、ヒトの視線はある、けれど。
ここに出る敵の視線にはそういう色は無く、心地良さすら感じられた。
少女は自らの色気を武器とすることが常だった。けれど、他人の目を意識しないでいい、というのは――ああ、なんて。気楽なもの。
だから、バンシーは暗がりに伏せ、哀れな獲物に二刀を振るう。
迷宮の心地よさを、存分に味わうように。
●
エイル・アーティライトは、入手した素材を探索者支援ギルドの職員に渡す際、すこし交渉をすることにした。
「こちらの毒腺、少しだけでもお譲りいただくことはできないでしょうか? 個人的な研究のために、使いたいのですが……」
「組織を傷つけないように狩ってくれたのでしょうが、すみません。本日はお渡しできない決まりになっているのです」
「……そうですか」
聞けば、これらの毒は薬品の素材として使い出があるものらしい。未発見のものがあれば、学術都市に配送して研究者に回す取り決めもあるようだ。
「普段であれば、この毒腺のようにある程度研究が済んでいるものなら、探索者が持ち帰ることもできるようになっていますので、今しばらくお待ちください」
「普通の探索者の方が使うことがあるんですか?」
「ええ、枝場によっては、加工した品が便利に使えることもあるんですよ」
すでに用途が確立していることに驚きもあったが、ともあれ決まりであれば仕方ない、とエイルは了承のうえ、引き下がることとした。
●
「くっ、ここの土は……やっぱり駄目そうか……?」
枝場に入ってから、植生に関係なく生えている野草や薬草を見て、嫌な予感はしていたのだ。
ダート・ロウは地面にひれ伏すように、土壌の具合を見ている。
「耕してもじわじわもとに戻っていくのヤバすぎるぜ……農家殺しかよ?」
ダートは広範に土壌の調査をしたかったので、その歩みはとても慎重だった。
モヒカンセンサーに引っかかる敵は倒す。ヤバそうな敵からは離れる。
気合の入った見た目とは裏腹に農耕の民だから、当たり前だ。
「畑……くっそー、農地問題が解決すると思ったんだけどよぉ……」
と、地面にひれ伏しながら、思う。
「そういや、浅層は……迷宮鼠がいるって聞いたな、そこなら田んぼならいけるんじゃねえか……?」
そうして、意気揚々と浅層へと駆け戻っていった。
結果から言うと、田んぼは作れるが、次から次へと現れるカエルほか水生生物の害が大きく、砦でも作らねば難しそう、ということであった。
――砦、作るか……?
と、ダートが思ったかどうかは定かではない。
●
「……ねえ坊ちゃん」
「う、うん?」
「あまり肩肘張らず参りましょうなの」
「……そうだね。そうするよ」
ヴィオレッタ・コールリッヂの言葉に、ルーファス・W・ワーズワースは小さく、息を吐いた。ワーズワース家の11子。冒険者として身を立てるため、と緊張していたのは事実だった。
―・―
ルーファスの指針は、初めて迷宮に訪れる冒険者としては至極適切なものだった。一階層ごとに、一匹は必ず戦う。そうやって感触が掴めて、対応が困難であればそれ以上深く潜るのはやめる。安全マージンを徹底している。
「う……もしかしてヴィオ、僕より強くない?」
「ヴィオは坊っちゃんの従者だもの、強くないとなのね」
それ故に、より踏み込むことが出来たのはヴィオレッタのおかげ、というのもよく見えようもので。貴族としてはなんとなく、上手にサポートされているようで気恥ずかしさはあった。
「――あ」
ふと、ルーファスの視線が彼方に向かう。視線の先には、複数の敵に囲まれる冒険者の姿があった。瞬間、「助けはいりますか!」といって、駆け出していく。
人民の盾、という生き方を示すような、直向きなルーファスの背中を眺めて、ヴィオは優しげに目を細めて、後を追った。向こう見ずだが、周囲を思いやる主の姿は、従者として――家族として、誇らしかった。
●
「敵から宝箱がでるのか……」
50cmほどの蜘蛛を倒した直後のことだった。床に亡骸が吸い込まれていき、何事かと瞠目していたアレク・フィーンドの前に、床から宝箱が生えてきたのだ。後に聞いたことだが、道中に宝箱が出る場合もこのように生えて出てくるらしい。
ともあれ、アレクはシーフズツールを取り出し、解錠に臨もうとした。
「……くっ、中々手強い、な」
技能の問題もあるが、短い時間ではなかなかうまく行かない。
その焦りをあざ笑うようにアレクの背に巨大な蟻が迫り――。
「宝箱?」
声とともに、ハーフリングの少女が現れた。編み込まれた赤毛をまとめ上げた姿が、迷宮に映える。
直後に、ノーチェ=チェッポの刃が蟻の関節を切り裂く。切断には至らなかったが、毒を染み込ませる。
「手伝うわ」
「っ、すまない!」
言葉少ななノーチェにアレクは礼を言いつつ抜剣し、応戦した。
―・―
その後、無事に倒し終え、宝箱を無事解錠し、アレクが素材を手に入れるのを見届けると。
「……蟻がいるから……」
と、ノーチェはその場をあとにした。
餌を撒いて、彼らの巣がないかを探すつもりであったのだが――結果的に、今回の枝場に現れる蟻たちは得に巣らしい巣を有していないことが明らかになったのだった。
●
浅層の一角に、良い香りが満ちていた。
中心にいるのは、アルフィンレーヌ。周囲には丁寧に小分けされた植物の束や肉塊が並べられ、眼前には火にかけられた鍋が置かれている。
アルフィンレーヌは一枚ずつ採集した植物を取り出しては、叩いたり、食んだり、あるいはさっと湯に通したり――と、それぞれの食材を賞味しながら、線引きをしていく。
「はぁ~、見るからに毒がありそうだと思っていたけど、やっぱりね~」
と、茸を吐き出しては、しばし具合を診る。あまりにも酷いようであればと魔法の備えもしていたが、いらなそうだ。そうして、まとめられた茸はそのまま火にくべられる。
彼女が好む饅頭の具になるか、素材として良いかの線引きを、迷宮で実施しているのであった。身体を張った検分ではあるが、彼女自身は気にもとめることなく、素材を整理しては、荷をまとめ直し――まだまだ余力があると見て、また枝場へと戻っていった。
帰る頃には、食用素材の立派な目録が出来上がっていたそうな――。
●
む、む、む、と。ネモは退治した全長80cm程のトカゲの皮をはぎ終えて、一息をつく。不慣れ故にところどころ傷んではいるのだが、これもまた経験だ。荷物は嵩張らないにこしたことはない。
作業の間応援してくれていた栗鼠のゲナが肩に飛び乗ってくる。
ネモが次に目をやったのは……たまたま見つけた、罠である。それと気づくまではただの床にしか見えなかったが、トラバサミのようなそれ。ゲナと共有している視界で、たまたま見つけたのだった。大事なくてよかったが、このまま置いておいて誰かが掛かると寝覚めが悪い。
『これも余輩の経験になる!』
と罠の解除に臨み、はや15分が経過した。最後のバネの仕組みが解除できて、トラバサミはついにただの鉄の塊となった――と、思いきや。
「むむっ……?」
目の前で、迷宮の床へと溶けるように消えていくではないか!
代わりに、床から吐き出されるように、赤色の輝石が出てきた。
「……?」
後に、枝場によっては罠の解除は何らかの報酬が得られることがあるらしい、と聞いた。今回の輝石もまた、それなりに高い評価を受けることになる。
●
前髪で目元は隠れているが、コッペリアの表情には、疲労の色が滲んでいた。彼女の身には傷は無いが、エーテルリンクを結んでいる狼の負傷が重たかった。
今も、戦闘を終えた狼は獲物である虫を咥えてコッペリアの元に戻ってきた。迷宮の生物はコッペリアも見たことがない器官や組織があるものが多く、彼女の嗜好を擽る。しかし。
「……そろそろ、限界でしょうか」
身を寄せてきた狼の背を撫でながら、帰り道を思い、呟いた……その時のことだった。狼が唸り声を上げながら、コッペリアから離れていく。接敵に気付き、前衛をつとめようとしているのだ。
狼の視界に、複数のスライムの姿が見える。危険域かと判断した瞬後、
「『ソーン・イス・ユル』!
来たれ氷嵐、生と死の涯。とこしえの鎖と成りて!」
女性の声が響いたと同時、氷の嵐が隘路に吹き荒ぶ。挟み撃ちの形となったところで、スライムたちの動きが乱れた。
スライムたちが右往左往する間に畳み掛ける形で、戦闘自体はすぐに終わった。
援護に入ったロゼ・シュタッヘルは、内心で脈打つ心の臓を鎮めるのに苦心していた。
——嘘、うそ、まったくのうそ! お師さまったら……浅い層ならば大きな怪我はしないだろうなんて!
眼前、ロゼの目には窮地に見えた少女と狼の姿を見て、恨み言がつらつらと浮かぶ。
だが、それ以上に気になることがあった。
「……大丈夫?」
狼の傷を指してのことだ。ロゼは返事を待つことなく、精一杯の勇気を振り絞って言って——そこが、ロゼの精一杯だった。畳み掛けるように、狼へと近寄り、
「いえ、大丈夫じゃなさそうね。ヒールができるから、治療するわ」
「……ありがとうございます」
コッペリアのほのかな笑みに、ロゼは視線をあわせることが出来なかった。
●
「ハハッ……!」
リオネル・パストラルは気勢と共に疾走。眼前、岩塊――ゴーレム、というべきか。岩と岩が連なった人型の敵と相対している。スライムの一種か、とも思うが、リオネルにとって相性が良い敵ではないのは間違いない。
それでも、往く。手数で削る切る。
縛系刃で動きを縛るが、長期戦となると、分の悪さは際立った。有効打の少なさ故に追い詰められて行き、
「くっそ! 強えなあ!」
それでも、剛毅に笑って引かなかったリオネルは……。
――敗北した。
「……大丈夫なの?」
「……おう、女神が見えるぜ……」
「大丈夫そうね」
青髪のエルフ、レシュノルティア・ピオジェレラは、仰向けに倒れているハーフビーストの様に苦笑を零した。
戦士の流儀を汲み取って手こそださなかったが、倒れたとなれば話は別だ。
足を止めながら、魔法で痛打を重ねて討ち取った。
おかげで、めぼしい魔法を使い切ることにはなってしまったのだが。
「私は帰るところだけど、あなたはどうする?」
「……」
返事がない。気絶したようだった。旅の情けみたいなものかと、レシュノルティアはリオネルを背に担ぐ。
「……重たいわね」
文句は言いながらも、ちゃんと地上まで連れ帰るあたり、情のあるエルフであった。
●
初めての迷宮であっても、グレイシア・ハーシーに、怯えはなかった。
理由の最たるは、痛みを感じないからだろう。授恵者の権能により、現状を客観視することは容易だった。
「浅い枝場なら、そこまで痛打はない……なら、もう少しヒールを用意したら、もう少し長く潜れるかもしれないな」
振り返れば、地力のみで戦う機会のほうが圧倒的に多かった。グレイシアの立ち回りならそう、というだけで、パーティーでこれば勝手は違うかもしれない。
――尤も、彼女には彼女なりの事情があるのだが。
「次に挑むときはもっと強くなって、誰も見たことのないモノをみつけてみたいな……」
ともあれ、課題は見つかった、と。グレイシアは探索を終えた。
●
カトリーヌ・レーンは流石に様子がおかしいことに気がついた。
そう! 枝場には! カエルが! いないのである!
「……いやそんな気はしていましたけどね! トカゲっぽのならいますが……」
壁歩きで天井に張り付いてポニーテールを垂らしながら、零す。床にはたまに罠があるようなので、壁を歩くほうが都合がいいのだった。
ベルトポーチには二刀でざっくざくに切り捨てた敵の素材が詰まっているが、肝心要の晩ごはんがまだなのだ。
カトリーヌはむむむ、としばらく唸っていたが。
「……大きいカエルを探したいですし! 此処までにしますかね!」
そうなれば善は急げ、とばかりに駆けて戻るのだった。
――尤も、選びに選んで狩ったカエルは、職員に回収されることとなるのだが。
●
それは、不器用ではあったけれども。
たしかに、師弟だった。
―・―
「力試しにゃ丁度いい。焦ることねぇよ」
「は、はい!」
迷宮に入ってすぐ、師匠であるアーゼル・F・シュトレーの言葉に、弟子のアミィ・ブランウォーカーは緊張も顕にしていた。杖を握る手には力は籠もりっぱなしだし、こちらの言葉に振り返りもしない。
アミィに気づかれないように胸中で息をつく。それでも、張り切っているのだ。やる気は尊重したい。
「オレもお前も、冒険者としちゃぺーぺーだ。生きて帰れりゃそれでいい……それじゃ、行くか」
「はい……っ!」
―・―
アーゼルは、自分たちが歩んだ道のりをきっちり地図にしていた。
アミィは、行き止まりにゆきあたって初めて、そのことに気づいた。
アーゼルは、強力そうな敵には決まって、魔霞を施していた。
アミィは、「もう魔霞は打ち止めだから気をつけろよ」と言われて初めて、そのことに気づいた。
――アーゼルは、自分が負傷していても、決まってアミィを優先していた。
戦闘が終わった時、同じだけ攻撃されたはずなのに師匠だけが傷を負っていたときに初めて、そのことに気づいた。
まだ、浅い枝場だったけれど、アミィは魔法の腕を証明することに夢中で、そのことに気づいていなかったのだ。
けれど、師匠は彼なりに満足げに、アミィの魔法の腕を褒めてくれた。
まとまった敵をきっちり処理できたときも。接近されないように移動阻害の付与をしたときも。
一度だけ、エーテルバリアが近寄られすぎた時に無効だったときはものすごく怒られたけれども。
「そろそろ打ち止めか?」
「あ、はい……」
「この辺じゃまだ危険ってほどじゃなさそうだが……十分、見るものは見れたしな。そろそろ帰るか」
「はい……」
魔法の腕は、示せたと思う。
けれど少しだけ、胸の奥が苦しいのは――何故だろう。
●
お偉方の都合やゴタゴタの気配を感じながらも、舞音・カグヤとしてはこの機会を満喫するつもりだった。思う存分暴れ倒して帰ろう、と。
だが。
「……未探索地域ぃ?」
「短絡路とか、秘密の小部屋、とも言われてるがねえ」
壁や行き止まりの度に、捜波や探波を使用していたところ、カグヤが偶然見つけたのが、『新しい枝場』への道であった。
道や周囲の気配ががらりと切り替わったので、このまま此処で暴れて良いものかと念の為エドゥノーグの探索者に確認をした所、思いの外時間を取られることとなった。
「いやあ、お手柄だよ!」
とはしゃぐ中年探索者とは裏腹に、カグヤはいよいよ我慢ができなくなった。
「……もう、行ってもいいよな? じゃ! 後はよろしくな!」
ぴゅーん、と。駆け出していった。成果はともかく、暴れたりなかった。この後カグヤはお預けを食らった鬱憤を大いに晴らすことが出来たそうな。
●
リザードマンのガエサラウリ=モルダナヴァ=オルクレリウスは、どんどん襲ってくる敵に相対している。
――いや、し続けている、というべきか。
先に進もうとすればするだけ、敵のほうから寄ってくる。魂の研鑽としては絶好の機会だが、こうも連戦続きだと、素材を拾うことも、休むこともできない。
時間がかかる。
が。
「おや、精がでますね」
と、通りがかりにヒールを施してくれる人物がいた。鵜鬱鷹 浩之である。
二人はたまたま同じ階層で戦闘していた。ガエサラウリは連戦の中で自然と、浩之は出来る限り迷宮にいたいため、という違いはあるが、ともあれ浩之は共闘するでもないガエサラウリを行きがけに慰労しているのだった。
「おお、これはかたじけない」
「いやいや、こういうときは助け合いですよ……労働の醍醐味ってものです」
浩之の労働者仕草は若干気にならないこともないが、ガエサラウリとしてはもちろん否やはない。
そうこうしているうちに、次の敵が近寄ってきているのだ。
形は違えど求道的な二人は、幾度目かの挨拶をする。
「それでは縁あらばまた!」
「ええ、良き労働となりますよう」
●
「うーん……様式はリーンエスの遺跡に似てる……?」
と、褐色肌も露わなサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブは浅層の壁材を眺めながら、思う。独力で出来る限りの内部の調査を終えたサフィラは、安全な浅層で思索にふける。
今回訪れた枝場に限って言えば、洞窟のような岩肌が多いのは確かだが、ところどころに柱や住居の名残のような、レンガのような壁材があったりもする。それらは何か別のものとまぜこぜにされているような形だったが、そういうものが自然と生み出される、というのはどういうことだろう?
「……また潜りたいなあっ……♪」
手元の紙に描いては、湧き上がる好奇心が言葉となって落ちていく。神代の産物、ということをまざまざと見せつけられ、サフィラの知識欲、探検欲は刺激されっぱなしだった。
●
シャンテ・フーケは、ソロ参加者の中で、随一の準備の良さ、といってよかった。装備の選択も、スキルの選択もバランスが良い。敵に露見しにくく、それでも出来る限りの防御を固めた形。
それだけ準備をしたシャンテだからこそ。
「やれやれ、一人だとやっぱり苦労するな……」
と、実感のこもった一言を零す。戦闘主体で臨んだが、独力での撃破に時間がかかる場面が多く、ストレスはあった。
これが簡単な枝場だという事前情報を踏まえるとなおのこと、そう思う。
「どこか入れそうなコミュニティを探してみようか」
一人だけで戦場に投げ出されたとき、シャンテは相応に戦えるだろう。今回のように。
それでも、と。思わずにはいられない。腕の良い後衛が一人いれば。それだけでも踏破距離は伸ばせたはずだ。
「……そうしよう」
帝国崩壊の知らせと共に届いた、噂。それにわずかでも足掻くためには――必要なことなのだ、と。痛いほどによく分かったから。
●
蒋・璃龍は迷宮探索の真理を掴みかけていた。
一つ。独力で挑める階層であれば硬い鎧とヒールは有効であること。
二つ。ただし火力は必要であること。
三つ。強敵用のスキルは早々に尽きてしまうこと。
「――いない、ですね」
手鏡で通路の気配を確認してぽつ、と。区切り、零すように言って、璃龍は広間の壁に背中をつけて少しの間、休憩を取る。ヒールを使い傷を癒やして、呼吸を整える。
何が出来て、何ができないのか。足りていないものは何か。
適切な準備。探索の手順は上々だったと思う。単身のウォーリアとしては、それなりに深く潜ることが出来た方だと。
けれど、同時にはっきりと自覚もしていた。戦闘に掛かる時間。複数体を相手取るリスク。それらが、分水嶺を告げている。
足りていないものは、何か。
「……」
――武威だ。
槍を振っていた手を見つめる。はっきりしていた。6層目。そこが、璃龍の今の実力の限界なのだった。
「……また来ましょう、か」
今度はもっと、力をつけて。
●
アルウィン・ディクラスもまた、璃龍と同様に、ソロの壁にぶつかっていた。
シーフらしい偵察能力で強敵と戦闘を避けながらではあったが、避けがたい戦闘のたびにスキルを消耗していく。
そういう意味でもっとも役立ったのは二刀か、と。苦笑を零しながら、
「――腕試しに、と思っていたが、このぐらいが限界か」
呟いて、さっと地図に走り書きで、先程戦闘となった大型のコウモリについての記述する。
出来る限り深く潜ることで発見機会の増えた宝箱の解錠を行えたことで、仕事としては十分だろう。
「帰りにも宝箱が見つかればいいがな」
●
アルウィンよりも徹底して戦闘を避けていたエリシェール・ミノン・リュキアは、8層目に足を踏み入れた。いや、駆け込んだ、と言っていい。【超聴覚】には、追走してくる敵の足音が届いている。
「――どこまでも追ってくるんだな」
硬質な足音が示すように、エリシェールにとって相手をしにくいタイプの相手だったから、一度振り切ったはずの彷徨う鎧。
何らかの手段でエリシェールの所在を把握しているらしい。
これ以上深い層まで進んだところで挟撃されては敵わない。
――なら、前へ。
黒い頭巾を目深にし、両の手に短剣を構えて待機する。
―・―
「ああ、追跡者型か」
「……いやな名前だな」
「しつこかっただろう? たまにいるのさ。嬢ちゃんのような別嬪は追われやすいらしいぞ」
「……」
スキルを吐き出して漸く倒した所で撤退を余儀なくされたエリシェールとしては冗談を含めて全くおもしろくなかった。
●
ベルク・オスマットは大層小柄なハーフビーストであった。ハーフリングもかくやというほど。
おおよその面々が迷宮に足を踏み入れたところで、足を踏み入れる。
可能な限り戦闘を避けて深く潜ることを考えたとき、冒険者が十分迷宮入りしたタイミングを選ぶのは自明の理であったのだ。
「――さて。どこまでいけるかな」
――とはいえ、彼女はヒトが良すぎた。
可能な限り戦闘を避ける指針は、かといって他の面々に戦闘を押し付けることを良しとしなかったのだ。
7階層は、【雷槌】たちの働きぶりもあり、無事に抜けることができた。
8階層まで足を踏み入れたところで、彼女は戦闘を避け得ないことと敵が強力な存在であることを察知し、撤退することとした。
●
男は暗がりを選び、ヒトがいない方を選んでいった。
にもかかわらず、ここまで、一切の戦闘をしないままたどり着いた。
捜波と探索、壁歩きを駆使して、闇に伏せ、敵を通過させてから抜ける徹底ぶりだ。敵由来の素材こそ少ないが、薬草や鉱石の類は収集している。
「――果たして何処まで潜れるか」
徹底した隠密・探索は肉体よりも精神を疲弊させているが、その一念が――彼自身が思っている以上に――彼を掻き立てる。持参した干し肉を噛みちぎりながら、更に深く潜らんと歩を進めた。
――この日、ナハティガル=ラーは単独挑戦者の中で最も深く、11層目まで踏破した。
採集素材の回収量も多く、最も評価された冒険者の一人となる。
●
「折角迷宮に挑む機会が訪れたんだ、楽しんでいこうじゃないか。ねえ、アン」
「……レイ様あまりはしゃぎ過ぎないようお気を付けください。油断は時に英雄であっても容易くその命を奪いますから」
迷宮に足を踏み入れて以降、声が弾んでいるレイ・ロバーツに、アンナ・イフェイオン・ニグリはしっかりと釘を刺す。とはいえ、迷宮に同道すること自体に否やはない、のだが。
ちら、と、見やる先。金髪を靡かせてあるく、一人の少女がいた。エーリカ・アムブロシア。
『ちょっとずるいわよ、あんた達だけでダンジョンを楽しむなんて! 私も混ぜなさいよ!』
そういって参戦した彼女は今、丁寧にマッピングを行っている。そっとレイを見やるが、彼自身は前衛として、中衛に立つ彼女をかばうことができる位置についている。
―・―
レイ、エーリカ、アンナの構成はバランスがよく、戦闘を避けるつもりもない面々は無難に戦闘をこなすことができた。得た素材はレイのマジカルポケットに保存しながら、進むことしばし。レイの提案で休憩をとる段になると、エーリカはいそいそとチョコレートを取り出した。
「……なによその目は? 欲しいなら、どうかお恵みくださいエリカ様ってお願いすれば考えてあげなくもないわ!」
「いや、準備がいいなと思っただけだよ」
乾パンを食べているレイが苦笑していると、エーリカはぷいとそっぽを向いた。そのまま、手元のチョコレートを差し出してくる。
「……半分あげるからあんたの夕食、後で私に献上しなさいよ!」
――素直じゃないですね、と。アンナはそんな様子を微笑ましく見つめた。
●
「深く潜り過ぎたかもな……!」
大鼬を肩に載せたクリア・バイライトの声には、遭遇戦に疲弊の色が濃い。
冒険者PTを追走する形で、深い階層まで潜ったものの、長弓に切り替えて戦闘に臨んだところで、思っていた以上の消耗に直面してしまった。スキルの損耗もさることながら単純に敵の地力が高い。
深いほうがいい素材が多かろう、と思ってのことだったが――。
「…………よし」
元々、深い層の素材のほうが高価だろう、と見据えてのことだった。ならば。
「素材集めに切り替えるか!」
これまで同様、極力、見に徹しつつ、切り替える。戦闘用の残弾が心もとないのだ。仕方ない。
という思考を、どのように理解したものか。大鼬のヴィクトリアが鼻で笑ったような気配を感じ、クリアは不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「んだよ、このクソ猫。文句あんのか」
苛立ちを覚えたクリアはその尾を掴んで振り回そうとしたが、ヴィクトリアはさっと身体を降りて駆けていってしまった。踏んだり蹴ったりだ。
「腹立つなあ、おい!」
●
クリアと同じようにパーティーのあとを付いて進んでいたルーズリーフだが、敵の強さに「こりゃ無理だな」とさっと見切りをつけた――つもりだったのだが。つい、目に留まってしまったものがあった。
―・―
「最高じゃのう!!」
フーグ・オグ・フーグは呵呵と笑い、自身の身の丈を超える人型の石像のような相手へと踏み込んでいく。機敏とは言えない。それでも、破壊力は絶大だった。両の手の剣は小柄さもシーフであることも無視しているかのように胴体を撃ち抜いて、叩き割る。
反撃の一打を大味に避け、「避けれたか!」と自ら驚いては、再び両の剣を振るった。快音。しかし、そこで足を止めてしまった。
「どあ……っ!?」
弾き飛ばされる。痛打に、しかし、フーグは大笑して。
「――そうこなくてはなあ……!」
―・―
その戦闘法はルーズリーフの参考になどなるわけもないのだが――なんとも、楽しそうで。
そのまま押し切れ――と、ルーズリーフが応援しかけたそこで。
「ずっはあ!」
フーグは吹き飛ばされて、ルーズリーフの近くの壁に打ち付けられて、それきり動かなくなった。
「……くっはあ、しびれるのう……」
「いやいやいや」
動かぬ身体で笑うフーグにルーズリーフは困惑しながらも、二刀を抜く。このまま放っておくのも寝覚めが悪い。相対するゴーレムは損傷しているとはいえ、はて、行けるか、と思っていたが。
「……助太刀いたします!」
盾を手にした白い少女が、駆け込んできた。
―・―
一人が倒れ、一人が相対している。イヴェール・イリュジオンは、状況を見て取って、真っ直ぐに駆け込んでいった。
前衛らしく、前へ。敵の状況と、周囲の状況をすかさず検分する。
「――その方を連れて、離れてくださってもいいですよ」
「そういう訳にもな……!」
「では……私が受けますので、あなたの良きように!」
細かな連携の打ち合わせが出来ないのは苦々しいが、そういってイヴェールは前へ。重たい攻撃を盾で受け止めて、耐える。
返す刀で破鎧砕を打ち込むが、単純な手応えとしてはかなり薄い。
――この硬さで、これだけの深手を与えたんですか。
半ば驚嘆を得ながら、イヴェールは前衛となって耐える。逆に言えば、「こういう敵が現れるのだ」と、体感しながら。
結局そのまま、ルーズリーフと二人で削りきって事なきを得た。
フーグを背後にしていたイヴェールの負傷も多かったため、安全のために二人でフーグを抱えて帰路についた。
●
別所で、フーグと同じゴーレムと交戦していたレイスは、極力回避主体の立ち回りで挑んでいたのだが、やはり負担は大きかった。鋭旋牙で袈裟斬りにしたものの、まだまだ余力を感じられる。
「――ちっ」
消耗を抑えるつもりだが、長期戦を避けられない気配に舌打ちを零したとき、その体を治療の光が覆う。
「援護いたします……!」
大剣を抱えたフロマーシュ・ダイヤドロップの、ヒールであった。彼女はそのままレイスの傍らへと移動し、ゴーレムに向き合う。
「私はレイス。あんたは?」
「フロマーシュとお呼びください」
たおやかな外見とは裏腹に、大盾と甲冑に身を包んだ少女は、ゴーレムの一撃を真っ向から受け止める。軽装のレイスではご遠慮願いたい光景だったが、おかげで攻撃に専念出来る。
そのおかげで、レイスは殆ど負傷することなく、難局を乗り切ることができたのだった。
―・―
「レイス様はもう少し潜られますか?」
というフロマーシュの言葉に、レイスは首を振った。掲げられた手に、ヒールをしようという意図を感じてのことだった。
「――いや、いずれにしてもこのあたりが私の程だろう」
「ああ、よかった」
レイスの応答にフロマーシュは仄かに笑みを浮かべた。
「私も余力が尽きたところなのです。帰り道もありますし、よろしければ同道しませんか?」
「――そうか」
そんな言葉にも、配慮が感じられ。表情を緩めることはせずに、頷いた。
「借りもあるしな。付き合おう」
●
ただひたすらに戦闘に打ち込むという方向性で、出色の働きぶりであったのが、【雷槌】である。
「神代の神が作った迷宮……」
枝場に入ってすぐに、岩肌が続く内部を見渡し、これが古から続く存在であることに畏敬の念を覚え、ロゼットは短く祈りを捧げた。
「――迷宮都市、か。参加することになろうとは」
「せっかくだし、報酬に色つけてもらえるような活躍をしたいよな」
フィニエス・クーガの独白に、シスル・ノーティラスがけだるげに応じた。
「最深部には何が眠っているのでしょうか……?」
「……さて、な。だが、どうせ碌なものではないんじゃないか」
多いフリーダ=ブロムヴィストの素朴な疑問を、セリオス・オーガストばさりと断った。見えざるものを追うことは彼にとっては危険と同義だった。今気にするべきことではない、とばかりに。
―・―
彼らの方針はシンプルだった。フィニエスとセリオスが捜波で敵を探る。見つけた敵が十分安全マージン内であればシスルが奇襲を仕掛け、フルアタックで狩る。そうでなければ、河岸を変える。それだけだ。
取れる素材にグレードがあるようなので、ある程度深くまで進み、ほどほどの手応えがあるところ――7階層あたりを狩場とした。8階層にいるゴーレムが、物理攻撃が主体の彼らにとってはやや負担が大きかったためだ。
「結構調べ回ってるつもりですけど……中々、隠し扉とか見つからないですね」
「そうだな……もう少し深い階層でないの無いのか、何か条件があるのかもしれないな」
「武の主幹路は、もともとそういうものは少ないとは聞きましたが……」
戦闘にもだいぶ余裕が出てきたころ、フィニエスとフリーダは壁や通路、行き止まりなどを熱心に調べ始めたのだが、なかなか成果はなかった。たまに見つかった罠を解除したりもしてみたのだが。
――パーティ戦なんて、柄じゃないと思ってたけど。
雑談している面々を見やりながら、短剣をくるりと回してシスルは呟く。フリーダが前衛となっている間に、シスルが奇襲・横撃をして、その間にフィニエスとセリオスが矢弓を放つ。この階層で、単体の敵であれば、シューター二人と、シスル自身の火力もあってこのルーチーンで片がつく。負傷の程度も軽く、ロゼットのヒールの頻度も非常に少なく済んでいる。
「悪くねーな。……効率的だし」
「あら、それならよかったわ」
にこやかに微笑むロゼットに聞きつけられて、シスルはバツの悪そうな顔でそっぽを向いた。
「でも、そうね……効率的すぎるのも、考えものかもしれないわ」
「ん?」
「バックパックが、一杯になってしまって……一度戻って、またこちらに戻ってこない?」
頃合いか、というわけでもなく。この女性にも――殴るのをやめるつもりは、全く無いようであった。
この辺りの階層は多くの探索者が駆け抜けていくことが多かったため、【雷槌】の面々の働きにより、かなり長期に渡ってこの階層の素材の値段が爆発的に下落したという。
●
「みんなでお宝見つけましょうね!! あるか分からないけど、きっとあるはず!! 迷宮と言えばお宝! 諦めなければ夢は叶います!!」
テンション全開のマリイ・パルティスは宣言した通り、全力をあげて怪しい場所を調査していた。
シュロは周囲を見張りながら、壁が怪しい、隘路が気になる、というマリイの危険排除に努めている。
「へへ……ダチとダンジョン、か。ワクワクすんな」
聴覚を頼りに調査を行うシニング・W・テュパラの喜色が滲んだ声に、シュロは「そうだなっ」と声を弾ませる。遊びではないことも理解しているが、気心の知れた友人たちとの活動機会は得難いものだったのだ。
―・―
「――む」
この部屋に、隠れている敵がいますね、と。囁くように言ったマリイの声に、一同は脚を止める。
「……逃げるかもしれないので、テュパラさん、カバーに入れますか?」
「もちろんだ」
逃がす気はないマリイに、悪戯な笑みで答えるテュパラ。
「それじゃあ、行くぞ……」
前衛のシュロが、ゆっくりと歩んでいく。壁に何かが擬態しているらしいと聞いて、刺激しすぎないように何気なく近づいていく、と。
――ここか。
近づくと、かすかなゆらぎのようなものが見えた。ノーモーションで大剣を叩きつける。手応えはある、が――硬い。
「ジッ……!」
「ちっ! テュパラ!」
それは、白い毛に包まれていた。一見するとほぼ毛玉のようなそれの顔はシュロの位置からは伺えないが、角が伸びているように見える。
「――ッ」
疾風速で駆けたテュパラがその逃げ道を塞ぎつつ、刃を振るう。
「か、った……!」
シュロの一撃に耐えるほどの相手だった。反撃の角の一撃を回避した、瞬後。
「――お宝ですね!」
マリイの魔矢が、敵を穿つ。魔法は有効だったようで、毛玉は全身を膨らませて怒気を示す。それを至近で浴びることとなったシュロとテュパラであったが、二人はなんとも言えない顔で顔を見合わせていた。
「……イマイチ迫力がないな」
「そうだな……」
―・―
その他、罠解除による素材取得などはあったが、探索者支援ギルドの職員によると、毛玉の角と、毛に埋もれていた輝石のような器官はなかなか高額で取引されている。
「お宝お宝って言い続けてましたけど」
三人で、打ち上げだ! と繰り出したエドゥノーグの夜の街。店を探しての道中で、マリイはふと、呟いた。
「……二人と居れる時間が一番の宝物ですね。今日は一緒に来れてよかった」
その言葉に、テュパラとシュロは大きく頷いて、笑みを交わしたのだった。
●
ルチ・コクジョウは、誰よりも早く爆走していたが故に、珍しい事態に遭遇していた。
「壁のほうが安全だろ!」
という決め打ちは結局のところ正解であった。武の主幹路に連なる枝場はそういう傾向が強い。結果として、彼女は誰よりも早く迷宮を爆走して、誰よりも早く深い枝場へと到達していたのだが、9階層へと踏み込んだ時のこと。
「何か、追ってきてんのか?」
後方から、足音がする。
面白え、と。振り切ろうとするのだがきっちり20メートル程後方を追走してくる。ルチとの距離を維持している事実に、ルチの負けん気の強さが鎌首をもたげる。
「――ってやんぜ……!」
どこの冒険者が追って来てるのかは知らないが、と。疾風足を重ねて加速する。空中を駆け抜ける。敵という敵を無視して、駆け抜けながら視界に入った10階層に飛び込んだところで。
「どあっ……!?」
背中を、小突かれた。
ルチはたまらず体勢を崩して、階下へと向かう階段を転がるように、落ちていった。
―・―
「脚が速い奴に挑んでくるレアな敵がいるんだよ。武の主幹路にでることは珍しいけどな……こういうのを置いてくんだよ」
「……ああ、これか……」
青色がかった原石を見下ろしながら、不快げに鼻を鳴らす。
名誉なことらしいのだが――冒険者ならば、いっそドツキ回しにいけたのに、と思ってしまうのも事実だった。
●
正しく単独で、戦闘を行いながら最も深くまで潜った冒険者が、サマエラ=フォリウムである。
8階層のゴーレムでは苦戦こそしたものの祭刀の魔法攻撃が有効とわかってからは地力のバランスの良さが、彼女を10階層まで進めさせた。
「……ふぅ」
ピュアウォーターで生成した水で喉を潤わせ、干し肉を少量齧る。
これまでと比べて静かな階層だった。この階層に至ると、パーティーを組んでの面々はもっと先に進んでいるし、独力のものは殆どいない。
サマエラの胸中には緊張はあるが、手応えも感じている。何より、孤独にも慣れていた。
「――さて。もう少し、進むか」
腹ごなしもすんだところで、得物を構える。
騎士としての感覚が、このあたりが限界だと告げている。それでも、余力があるならばと、歩を進める。
●
ギ・ガガとイヴァンの二人連れは、ガガの誘導も相まってそれなりに進行速度は早かった。とはいえ、探波だけでは完璧に敵を察知することは出来ず、細かな戦闘は発生する。浅い枝場であれば、戦闘時間は短く済んだためイヴァンもかろうじて同道できたが、深く潜ると中々上手くはいかなくなるだろうな、というのがイヴァンの見込みであった。
ガガが黙々と地図を作成する間、イヴァンは周囲の確認をしている。探波で確認したものを細かく記録するには時間がかかる。
『デキルカギリ、ゲンカイマデ、イキタイノデゴザイマス』
そう言ったガガのサポートをしようと決めたのは、イヴァン自身だ。やれることはしてやりたいな、とは思っている。
「イクデゴザイマス」
「おう」
―・―
とはいえ、そう遠くない頃に限界は訪れた。第9階層。広場に居る敵を回避することは全力疾走しようが迂回しようがイヴァンにはできそうもない。
戦闘力のあるパーティーはすでに先行し、人の数も少ない。戦力として他のパーティーを当てにすることができない、となると、取れる手は限られた。
つまり。
「ギギ……ヤクソクデゴザイマス。マカセタデゴザイマス」
「任されたぜ。ま、無理しすぎるなよ」
「……?」
ガガの何を言っているのだ? という表情にイヴァンは苦笑して背を押した。
決して軽い気持ちでうけたつもりはないが、単身で、キャスターの身で深い層に残ることになったイヴァンはこのあと半死半生の憂き目にあった。
帰るまでが探索なのだ――と、肝に銘じたという。
なお、ガガは11階層で戦闘を余儀なくされ、こちらも撤退となった。
●
さて。ソロ冒険者にとっては厳しい道中であったことは間違いないのだが、共闘前提となると、少しばかり勝手が異なった。
13階層。
「おおい、少し待ってくれよ!」
「えー、早く行こうよー!」
一族の子たちに土産話を持ち帰るために周りの風景や他人の戦闘の様子に目を奪われがちなラコット・クロシェットと、好奇心の塊のキキはいまいち噛み合わせは悪いのだが、進む足が鈍らないという意味ではちょうど良い。
ドワーフのエイダ・バサルトはそんな二人の様子を眺めながら、とことこと歩んでいく。
―・―
ウォーリア、ヒーラー、キャスター。
――このパーティ、結構バランスがいいですかしら……?
と、当初のエイダは思っていた。
いざ戦闘になると、エイダが前衛、ラコットは中衛につく形となる。キキはキャスターとして後衛――の、はずなのだが。
「とー!!」
あろうことか、キキは真っ向から踏み込み、至近距離から魔法攻撃を打ち込んでいく。
「――いやいや」
エルフのラコットは苦笑しているが、エイダがさらに前に出るように動いているので止めることもしない。話のタネになる程度に思っているのだろう。
「……っ!」
眼前。エイダの身長程度の高さのトカゲ――全長は遥かに長い――と相対しながら、その噛みつきを盾でいなしたエイダは、その頭頂へと斧を打ち込む。
「やーっ!!」
つづいて、キキは側面に回り込み、そこから魔法を打つ。ダメージは通っているようだが、危なっかしいことこの上ない。
――現に。
「くっ……キキ様! あぶないですわよ!」
「おわわわわっ!?」
眼前のトカゲが、その太い尾をキキにぶつけようとしたところに、カバリングで割って入ったエイダの盾に、衝撃。ラコットの支援込みでもなお重い手応えは、エイダの実力では独力での探索が困難であることをまざまざと感じさせるほど。
階層相応の難敵だ。状況が良い訳ではないが、支援の軽重・要否を定めながらのラコットの対応は前衛のエイダとしては心地よい。立ち位置はともあれ、火力があるのも、即席の仲間と思えば、よく回っている、と言えなくもない。
「あー! 帰りに美味しいオレンジティーを飲みに行きたいなあ……!」
言いながら杖を振るうキキに、エイダは盾を構え、斧を振り下ろしながら「いいですわね!」と応じる。
そんな珍妙さに、ラコットは笑いを堪えきれずに、「真面目にやれよな!」と言う。
なんとも楽しい珍道中が繰り広げられたのであった。
●
――逃げ足には、自信があったんだがな。
キルシッカ・ニクライネンは、眼前の敵――黒い毛並みで、目に煌々たる赤色を宿した狼のような獣と相対しながら、胸中で愚痴る。壁は走る。足の速さもキルシッカ同等程度。サイズも高さで2m程度。加えてこいつは――
「……っ、と!」
炎を吹く。凶悪すぎないか、とキルシッカは思うが、これまでの道中でも階層に合わない強い敵と戦っている冒険者を見かけていた。賽子の目が悪かったか。
けれど、まあ。身の程は、痛いくらいに知っている。
躊躇いはなかった。大きく息を吸い込み――、
―・―
「助けて!」
声がした。アウル・アンサラーは素早く見当をつけ、先に捜波を打ち込む。一人はヒト。もう一つは――巨大な獣の気配。
「敵だな。かなり大型だ」
呟いたのは、その場にもうひとり居たからだ。ハーゼル・ライアード。浅い枝場でアウルと共闘し、以来同道している。
「行くのかな?」
「……あァ、大物なら、追加報酬も期待できるかもしれねぇしなァ。アンタは別に来なくてもいいぜ?」
そう言われ、ハーゼルは少しばかり逡巡したが。
「ま、ついていこう。此処まで来れたことには恩もある」
―・―
先手はアウルが取った。通路を挟んだ反対側から遠方から強射で一射。その一撃で、狼の注意を引く。あまりに簡単に注意を引けたことは怪訝に思ったが、とりあえずは無視する。想定以上に、足が速い。
ウォーリアのハーゼルは特に慌てることなく、死角となる通路の出口に待機する。それなりに共闘してきたから、アウルの身の軽さは知っていた。
加速して迫る狼の一撃を、アウルは軽い動きで回避。合わせるように、横合いからハーゼルが往く。大袈裟の一撃を入れる。厚い毛皮に阻まれるが、手応えはあった。
その攻撃でハーゼルの方に敵が向く事となるが、それはそれだ。危険を共闘者に押し付けるのも、少しばかり気に触るのだった。
―・―
これまでの戦闘より長くかかったが、戦闘自体を無事に終えた。大型だけあって、爪や牙だけでも相当な量になる。毛皮は――結構痛めつけてしまったので、品質としてはいまいちかもしれない。
それぞれに素材の回収が終わったところで、ハーゼルがふと、呟いた。
「……あれ、悲鳴の主はどうしたんだ?」
「あいつなら逃げていったぞ。……先に行ったのかもしれねェが、いい度胸してやがるぜ」
利用された、と知って、アウルの声がやや不機嫌になるのを感じたが、ハーゼルは肩をすくめるに留めた。まあ、そういうこともあるだろう。
「――俺はそろそろ帰ろうと思うが、アウル君はどうする?」
「あァ? 俺は……」
―・―
――この後、キルシッカはこの階層でアウルに捜索されることとなったのだが、結果的には無事に逃げ切れたことを、書き添えておく。
●
「ライバルは多そうだけど、折角だから迷宮に一番深く潜った冒険者を目指ーす!」
「そうですね! がんばりますよ!」
ドン! と迷宮に足を踏み入れるやいなや声を張ったキルとヘレム・カースワーズに、同行者であるイクスは片頬を釣り上げるようにして苦笑した。イクスは、もっと大人数で徒党を組んで挑んでいった冒険者がいることにも気づいている。けれども、水を差すほど野暮ではない。
―・―
実質的にこのパーティーの【目】となっているイクスは、このパーティーの弱点が範囲火力にあることをよく理解していた。だから、敵を避けえない場合は、数が少なくとも強い敵の方を選んで、進んでいく。
――いやあ立派なもんだ。
キルの身の丈を超えるゴーレムとの戦闘の様子をみて、イクスは胸中で呟いた。戦闘経験はさほど豊富ではない、農夫のようなものだと思っていたから、堂々たる前衛としての立ち回りに感嘆していた。
「おらァ……!」
豪胆に斧を振り下ろす様もさることながら、気勢を発し、前にでて、反撃も厭わずに攻撃に臨む姿勢は良い。
おかげで、イクスもヘレムも自由に動けている。
「させませんよ!」
ヘレムは付与を得手とするキャスターであった。威力や視界を阻害してキルの負担を軽減したあとで、攻撃を重ねていく。単体を相手取る限りにおいて、実力以上の強さを発揮できているという意味で、良いパーティーと言えた。
―・―
「くっ……!」
キルのヒールが尽き、負傷がかさんだところでキルは悔しげに舌打ちを零す。とうの昔に、ヘレムの魔法も打ち止めとなっていた。
「――最深とは行かなかったのは残念ですが、頃合いでしょうね」
「十分やれたほうさ。帰ってメシでも食おうぜ」
悔しげなキルに、ヘレムとイクスが言うと、はあ、と深い息を零す。全力を出し切ったのはキルにとっても同じで、後悔すべき点もない。ここが、実力からみた到達点なのだった。
●
【クライブス探索隊】と名付けられたチームは、レギン・アンドヴァリ、ライル・クライブス、フィーネ・ファルアリアの3名から成るチームである。
「何か珍しいものや発見があるといいんですけどね」
「できれば外でゆっくりしていたかったです……」
狐耳の青年、ライルの言葉に、フィーネ・ファルアリアは、はあ、と深い息をこぼした。
「なんだ、嫌なのか?」
「……無料で、食べ歩き……いえ、なんでもないです……」
ドワーフのレギンの声に、フィーネは声を詰まらせながら、諦めたようだった。
―・―
――嫌がっていたようにみえたが、やるじゃないか。
階層が進むにつれて、レギンはフィーネの働きぶりに瞠目していた。
ライルの定めた指針は、積極的な調査が主体だ。だが、避けられない戦闘を厭うつもりもなかった。
すれ違っていたパーティーが様々な理由で撤退していくなか、【クライブス探索隊】が撤退せずに探索を継続できているのは、フィーネのリソース管理が秀逸だったからだ。
尤も、フィーネ自体はそんな気はなさそうだし、レギンやライルの備えも十全に機能しているが故の安定、ではあるのだが。
「この階層は概ね調べ終わったかな。それじゃあ、次に行きましょうか」
ライルもまた、フィーネの状況を判断材料としているように見えた。
おそらく、戦闘を避ける指針であれば、【赤翼】と同程度以上には潜れたかもしれないが、【クライブス探索隊】は人数あたりの素材収集量では上位を勝ち取ったのである。
●
「……だいぶ慣れてきたかな」
チーム【Mix】の道程の順調さに、アスティン・ヴェルラインが言うと、Есөнхумсが口を大きく開けて笑う。
「そりゃお前、ほとんどアンタのおかげだぜ、アスティン!」
「そうかなあ……?」
実のところ、この日迷宮に挑んだシューターの中で、随一の斥候ぶりであった。それは、パーティーメンバーであればよくわかるところだ。大鼬を活かした調査と、捜波でのクリアリングはパーティーの安全性に大きく寄与している。
「上手くやれているんなら、アリオンが守ってくれるおかげ、かな。そっちに集中できるのは大きいよ」
「――まあ、僕の役目だしね。このくらいは」
と、アリオンは謙遜するでもなく、周囲を警戒しながら応じた。本当に、役目を果たしている程度の感覚なのだった。
「ボクはサクサク進めてて嬉しいけど、んー」
一方で、アルマ・ヴァレンタインとしては順風満帆行き過ぎていて、物足りないのもまた、事実で。
――何か良いこと、起こらないかな。
―・―
極力戦闘を避ける、という指針は、より深部を目指すPTに共通していた部分ではあった。
残念ながらウォーリアの装備が敵の注意を引いてしまうことがあったものの、大きな戦闘は避けられたまま、13階層まで進むことができた。しいて言えば、魔法火力に難があるパーティーではあったが、そこはアルマが魔法攻撃を行うことで補うことができていたのだ。
それは、14階層に足を踏み入れたときに訪れた。
「これ、8階層にいたやつだよな?」
Есөнхумсの見上げながらの一言に、
「そうだけど、でっか……」
呆然とつぶやいたアスティンの眼前。身の丈3.5メートルほどに及ぶ、巨大な動く石像がいた。
「っし、やるか! 後ろを攻撃したいってんなら、オレを倒してからにするんだな!」
と意気揚々と告げるЕсөнхумсを尻目に、アルマは、
――食べられなそうだなあー。
なんてことを、思っていたそうな。
幸か不幸か、希少個体と遭遇した【Mix】の面々であったが、アリオンの鋭旋牙を含め、リソースを吐き出すことでなんとか退治することが出来た。特に、ゴーレム自体から入手できた素材はかなり希少性の高い、武器用の素材であったとかで、【Mix】一同はエドゥノーグから非常に感謝されたのであった。
●
迷宮に足を踏み入れてすぐのことである。
「戦うかどうかは俺が判断するから、言うことを聞けよ」
エイル・ビュセファスの言葉に、同行するシャルロット・エクレールとフリューリングスルフト=ティエラは特に反論をすることなく頷いた。二人ともに、この友人の判断力に疑いを持つことはない。ちなみに、チーム名は【赤翼】である。
シャルロットはそのまま、周囲を見渡して声を弾ませた。薄暗い迷宮は、そこに立っているのだという実感もあいまって、彼女の好奇心をいたく刺激する。
「これが、自然にできるなんて……すごい処……英雄譚にだってこんなのなかったー!」
――できれば静かにしてほしいが……。
と、エイルは少し表情を曇らせたが、今ぐらいは――とそっとしておくこととした。
―・―
深度を稼ぐ、強敵は狙わない。限られたリソースを有効利用する。このパーティーの指針は効率的だった。細かな戦闘が発生することは織り込み済みのため時間は掛かるが、安全マージンを確保している。
その核となったのが、エイルの【モヒカンセンサー】であった。
「はぁー……緊張したね!」
フリューリングスルフトは8階層で遭遇したゴーレムの脅威を回避前衛として耐えきった。負担は大きかったようだが、シャルロットとエイルの存在は(エイルの見当通りに)有利に働いた。とはいえ、もはやこの階層だとモヒカンセンサーの結果はあてにならなくなってきている。
「シャルとエイルのおかげだね! 私独りだったら無理だったなあ」
「ふふ、それは私のセリフだよ」
「……」
ちらと、エイルは同行者二人を見やると、二人の少女は楽しげに、お互いを褒め称え合っている。危険な敵が出てくるようになったのは事実だが、もう少し行けるか、と判断したのだった。
―・―
均衡が崩れたのは、15階層でのこと。フリューリングスルフトの被弾がかさむようになり、シャルロットやエイルが前衛負担を引き受けるようになると、いよいよ戦闘は厳しさを増してきた。付近で戦闘をしているものも少ないためか、敵の数も少なくない。
「シャル」
「うん!」
その空気は、お互いに共有出来ていたものだった。だから、連携はスムーズで。眼前、大顎を開いたワニのような敵にフリーズボルトを打ち込んだことを確認したエイルは、声を張る。
「撤退するぞ」
「ひゃあー! 逃げよっ!」
「あははっ、てったーい!」
連携の取れた撤退は、それは見事なものだった。実力以上に深く潜れたことはそれだけでも評価されるが――それ以上に、シャルロットとフリューリングスルフトにとって、忘れられない大冒険になったことは間違いない。
エイルの心象は彼のみが知るところであるので、ここでは割愛する。
●
「アンネさん! とっっってもいい怪我ですね! 休憩しましょう! 私が優しく癒やしてあげますから! さあ!」
という、ギーゼラの熱烈な言葉で、治療のための休息をとることになった。
13階層でのことであった。
―・―
「――え、いいの?」
小首をかしげたアンネエルカに、空冬・シラユキはふふり、と胸を張った。
「一番アンネさんが身体を張ってるし、腹が減ってはなんとやらっていうしね。さ、どうぞ」
と、干し肉を差し出したのだった。『お腹の虫さん』を鎮めるために食事を取ろうとしたところだったので、アンネエルカは嬉しげにはにかんで、干し肉を受け取った。代わりに、と乾パンを差し出したところで、なぜかセヴラン・クアルトが膝をつく。
「いまのは中々ポイントが高かったよ、アンネさん……」
「……セヴランさん?」
「……いや、お兄さんも頑張るからね! チーズかなにか持ってきてたら良かったなあ!」
調子のいいセヴランだが、そうしている間もエーテルリンクを結んでいる栗鼠のララに周囲を見張らせているので、決して遊んでいるわけではないのだ。
多分。
―・―
シーフであるクレア・エクレールが斥候として皆を誘導して、強そうな個体や希少な相手を探す、という指針で進む彼らは、ほのぼのした空気の割にとても攻撃的であった。
浅い階層から順番に、他のパーティーが避けて通りがちな強力そうな個体と接敵してはこれを打破していく。
荷物持ちを積極的に――半ば過剰に――買って出る唯一のヒーラーであるギーゼラのバックパックはそろそろ満杯が近いが、それだけの戦闘を熟しているアンネエルカは、空冬の言葉通り前衛として強力な敵と相対することが相対的に増えている。
それでも、嫌がる素振りもなく、「好きなことのためにはどんなに大変だって頑張れるのよ」と、健気なものであった。
そういう仲間のために、クレアとしてはなんとしても大物を見つけ出したいところなのだが――。
―・―
「――希少個体?」
「うん。ボクが思うに、8階層の石像の超強い版、だよ。上位種、とか呼ばれてるけど、この階層では他に見かけないから――」
戻ってきたクレアの報告に、セヴランは(硬い敵は苦手なんだよなあ)と顔に出ていたが、他の面々に否定的な反応はなかった。ちら、と見たギーゼラの眼の色は真剣すぎて怖いくらいだったが、言わないことにした。
―・―
【綺譚】の面々は、端からこの大物殺しを意識した攻勢だった。
ギーゼラは嗜好ゆえのヒール偏重のきらいはあったが、それはそれとして、アンネエルカにダメージを集中させる攻勢ではうまく回るものだった。
魔法攻撃の無い面々では戦闘は長期化したことは確かなのだが、空冬の毒撃を始めとしたBSを中心としてこれを下すことは成功した。
アンネエルカの装具はボロボロになったが、【Mix】たちと同様、手に入れた素材はエドゥノーグの厚い歓迎を受けたことで、一同は歓声を上げてこの冒険の喜びを分かち合ったのである。
●
カメリアたちのパーティーとは他に、もう一つ、異質なパーティーがあった。
イカしたメンバーを紹介したい。
マリアンヌ・ブラン・ド・リンドヴルム!
ライナ・フレイヴァルツ!
ドーマ・アザーリ!
フィーリア=ルゥ=カミシロ!
トマス・グレイ・ディズール!
そう。チーム【アララギ】は、魔法職編成に特化した構成だったのだ。
その目的はすなわち――、魔法職の可能性の追求をし、現時点の限界に挑む、であった。
―・―
「……なるほど。勢いこんで魔法はつかわねェほうがよさそうだな」
ふむ、とつぶやいたドーマの言である。索敵に劣る【アララギ】にとって、戦闘は避けえないものであった。その都度スキルを使用していると、瞬く間に手札が尽きてしまう。
「私が音で判断しているとはいえ、戦闘を回避するには至らないからな……」
「……いえ。フレイヴァルツ様のおかげで奇襲を受けてないだけでも十全です。気を張っておつかれでしょうから、少しお休みしてもよいかと」
生真面目なライナの言葉に、フィーリアは生活魔法で生成した飲水を差し出すと、
「お。食事もあるけど、要るかい?」
リザードマンのトマスが気さくな言葉とともにチーズを差し出してくれた。
「……ありがとう」
事実、聴覚に集中し続けるのは疲弊もあった。甘んじて、気配りを受け容れる。
そんな光景を眺めながら、マリアンヌはトマスのベルトポーチや手元の素材を見つめている。
「戦闘は多いけど素材は結構、あつまっているのよね……」
目に見えて成果が出てくると、マリアンヌの中の自負が鎌首をもたげてくる。どやっ、と自信を表情いっぱいににじませて、言った。
「これは最深層もいけるんじゃないかしら」
「いいねぇ、帰ったらカエル料理でぱーっと行きたいな!」
―・―
全体的に壁となることが多かった8階層はむしろ餌場と言ってよかった。あっさりとそこを抜け、敵の数やバラエティが増えてくる段になると、偏った編成の負の側面が響きだした。10層を超えてトマスが前衛として活動するようになることが必要になってくると、加速度的に負担が増してくる。
「……ちっ、これァ盲点だったな」
特に、戦闘中の横撃・奇襲への警戒が緩んだ点が、被弾がかさむ最も大きな要因となった。
フィーリアやトマスの厚いヒールで吸収できる点でも、あるのだが。そちらだって有限だ。
ドーマは自慢のリーゼントを整えながら、よし、と、決める。
「ココからは、出し惜しみせずに気合いれて行くぞ!」
到達距離を伸ばすためにスキルを温存していたが、それもやめ、ということだ。16階層を最後にひと花咲かせる場所と決め、手当り次第に狩り尽くすこととする。
溜まっていた鬱憤を晴らすように、魔法職たちの炎が、氷嵐、光爆が踊る。
【アララギ】は到達深度こそ水を開けられる形となったが、その素材量や収集の質については、引けを取らない結果を叩き出したのだった。
●
カメリア・ローレンス、エルナ・クルプファルツ、コハクの3名は、この日迷宮に挑んだ冒険者たちの中で最も特異なパーティーの一つであった。シーフ2名、シューター1名。しかし、その活動ぶりには徹底した合理性が滲んでいた。
―・―
「……これもまた冒険、って感じでワクワクするわね」
「そうですね! この三人、というのもとても心地が良いです」
怜悧な表情で、けれど微かに嬉しげにいうカメリアに、エルナはにこやかに応じた。
「ん。そう思う」
コハクも、静かな口調にも安堵が滲んでいた。コハクにとっても、この同行者は特別なのだった。
―・―
カメリアが探波・捜波を駆使して道行きや敵の存在を特定し、エルナは同時にエーテルリンクで結ばれた栗鼠を壁歩きさせて様々な視野を得ながら後方警戒をあわせて行う。彼女の得物が杖なことも、このパーティーのダメージディールのバランスに貢献していた。
探索・奇襲において特に秀でた面々は、クラスゆえの軽装もあり、集団での挑戦ということを踏まえると多くの戦闘を避けながら、必要時は奇襲を仕掛けることで戦闘を有利にすすめることができたのだった。
―・―
17階層まで、余力を残してたどり着いた三名であったが、ここで、カメリアが足を止めた。
「……あまり倒されていないのか、もともとそういう層なのかは分からないけれど、かなりの敵が纏まってるわね」
「そうですか……」
つ、と。手元に引き寄せた栗鼠を撫でながら、エルナはカメリアに物問うように視線を送った。
押すか、どうかだ。ヒールの余裕はあるが、戦闘の負担が集中しやすいコハクの負担は、無視できない。
「……? いかないの」
一方で、コハクは、無言のやり取りに頓着していなかった。エルナもカメリアも、コハクが自身の負傷にも殆ど気をかけていないことはこれまでの道程でよくわかっていた。
だから。カメリアはほう、と息を吐いて、告げる。
「それなりに宝箱も回収できたし。今日はこのくらいにしておきましょう。ここから戻らないといけないし、ね」
「はい! そうしましょう!」
「……? 了解。異論ない」
●
【攻略組】は、この規模の大人数パーティの中ではウォーリア勢を主体としたパーティであった。ウォーリア3名、シューター2名、キャスター2名、シーフ1名、ヒーラー1名と、攻撃面での層が厚い。
彼らの方針はシンプルだった。見敵必殺、である。
ー・ー
「――このくらいならいけるか?」
リヒャルトは、探索時に使っていた棒を放り捨て、もと来た道を戻っていく。後で回収するために場所は記憶しておきながら、短刀を抜いた。敵は複数となってしまったが、このパーティーだと遅いか早いかの違いしかない。
向かう先、誘引の気配を察知したプリム=ホワイトリバーとハヤールが駆け込んでくる。
「わはは! これまた珍妙な!」
ハヤールは大笑しながらリヒャルトと交錯。前腕だけ異常に発達した狼のような獣に、ハヤールの好奇心が疼く。
「ここからはボクたちの出番だね! いっくよー!」
と、プリムが突撃。その背を追うように、矢が走る。尾を膨らませたシャトン・アルジェントの一射だ。
快音を響かせて狼の額に打ち込まれた矢に、プリムの追撃。さらに、後方から届く魔法が次々と敵を薙ぎ払っていく。
「急所があるのは普通の生き物みたいね」
「うむ。興味深いな!」
冷静なシャトンの言葉に、機嫌良く応じたハヤールは次の敵へと向かっている。
「――こちらも来ているようですね」
後方を警戒していたクラーク・エアハルト。ウォーリアで、後衛の護衛をするべく残っていた彼は、これまでに幾度となく横撃や奇襲を未然に防いでいる。
「……その、ありがとうございます」
「いえ。自分も助かっていますよ」
リディリディ・トゥラ・イェレミースの礼に、クラークは軽く応じた。
クラークは、後衛の動向を見て対応を決めてくれているようだと感じていた。そのおかげで、リディリディとしてもやりやすい――のだが、そこまでをきっちりと伝えられるほど、リディリディも器用ではなかった。
戦闘はじきに終了したが、ノックス・マグナは緊張をほぐすように、小さく吐息をこぼした。
「――このあたりになると、私の知識もあてになりませんね。流石に一人では此処まで来たことはありませんでしたから」
「おかげで此処まで特に困らなかったですし、楽しいですよ!」
戦闘後の小休止に生活魔法で生み出した水を配りながらのレイヤ・ダライ=カホールの朗らかな言葉に、【攻略組】の面々の中に笑みが溢れた。
―・―
彼らの侵攻は、19階層で打ち止めとなった。その理由は、希少個体との遭遇にある。ベヒモーほどの大きさを誇る、巨大な黒牛である。黒炎を纏う姿は、あきらかに尋常ならざる。
「おや、これは珍しい……武の主幹枝で稀に見つかるという黒牛ですね。運が良くないと現れないらしいですが――」
ノックスの言葉に、一同は湧いた。
特に。それまで眠たげにうつらうつらとしていたソフィア・セントレア・ムーンティアの目が輝く。
牛 → 皮 → 寝具!
「……あんみんのために、よろしくね」
ふぁ、とあくびを噛み殺しながらの言葉を背に、ウォーリアたちが突撃していく。
強敵であろうと、否やはない。
彼らの構成は、大物殺しに特化していた。
スキルを温存していたプリムを中心に、ハヤールら前衛が奮戦している間に、魔法やスキルを使い切ってはいるが、威力は確かなリディリディらが攻撃を重ねる。
――残念ながら、激しすぎる戦闘の影響により、牛皮はあらゆる場所に傷がついて少量単位での採集となってしまったのだが、その牛角や骨材はとくに好評を受けることとなった。
●
「♪~」
「機嫌がよさそうね、ベル」
テュリン・ヴィングが言葉をかけたのは、上機嫌に鼻歌を歌っているララベル・サン・ディーベル。女性的な風貌だが、男性である。ララベルは問いかけに目を細めて、
「みんなで初めての迷宮に行けることも、一番を目指してるのも楽しくて!」
【ふしぎ亭】のメンバーは7名にも及ぶ、大所帯である。その中で、ララベルの太陽のような笑顔に、一同の空気がほころぶ。
「シーフに偏っているけど、だからこそできることがあるわね」
「うん! 任せて!」
アルラ・ニグラスの言葉に、同じくシーフのヒロ・テスタロッサが言う。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」
「そうだね……どんなものが待ち受けているか楽しみだ」
エーデルワイス・エンゲルの呟きにルーシカが応じた、その時のことだった。
「ひゃっ?!」
と、ララベルの声が響いたと思った、直後のことである。続いて、「おわわっ……!?」と、ララベルの悲鳴があがった。
上機嫌に歩いて、足元が疎かになっていたララベルは転倒し、そして、
「もー、危ないよー?」
ヒロを、下敷きにしてしまっていた。柔らかく残る手応えを前に、「ご、ごめん……!」といったきり言葉を無くしていたララベルであったが、一部の理解者たちは気にすることもなく、先に進むのであった。
「……ま、無理はしないようにね」
と、ルーシカの言葉が、なんとも虚しく響く中、最前列にいたゴルバルティアが、ララベルが遅れていることに気づいたようで、視線を送る。
「大丈夫か? 怪我はしてないか?」
「う、うん、大丈夫……!」
ララベルの頬はこのあとしばらく、紅潮しっぱなしであった。
―・―
シーフ――とくに、アルラの索敵が冴え、特に目立つゴルバルティアがいても戦闘を最小限に抑えることが出来た。同規模のパーティの中では随一の進行速度で、進む。
戦闘直後、飛び込んだ勢いを留めることが出来なかったララベルが、アルラに飛び込んでしまっててんやわんやになることはありはしたのだが、それを笑って過ごせる程には順調で――和やかで。
「こうやって、皆で迷宮探索行くのは楽しいわね」
面々で唯一のキャスター、テュリン・ヴィングの軽快な言葉は、戦闘の調子の良さを受けてのことだ。偏った構成の中でも、戦闘時間が短く済んでいる。
だが、これはテュリンの魔法が奏功していたが故であったことが、後にわかることとなる。
テュリンの魔法が尽きてきたところで、進行速度は覿面に鈍くなった。
―・―
21層目。ヒールを最低限に絞り、攻撃面でも物理攻撃と魔法攻撃を切り替えながら奮戦していたエーデルワイスが、
「これで打ち切りさね」
とゴルバルティアの傷を癒やしたところで、一同は判断を余儀なくされた。
――私としては、この辺りの敵はマジで強えから遠慮してえ……なんて言えねえしなーー!
前衛として体を張ってきたゴルバルティアは、内心そんなことを思っていたのだが、言い出せるはずもない。
とはいえ、それを許容する空気はあるのだ。あとは、決断をするだけ。残念ながら、【ふしぎ亭】より先に進んでいるメンバーがいることは、解っていた。ただ。
視線が、集まる。その一つ一つを見返して、
「……戻ろう。皆が怪我したら、嫌だから」
ララベルは、そう決断した。
●
6名以上の大所帯となったパーティーの中で、【狂桜会】だけは、際立った特徴を有していた。
ヒールを含めた治療手段がない、というものだ。
それでも、シューターであるソル・ランドグリーズと、方針決定も担う咲羅の探索・偵察が功を奏した形で、バッファーが無くとも、十分に進行できたパーティーという点は特筆すべきだろう。
―・―
「ご主人ご主人! 獲物がいっぱいだよ! さぁさぁコマンドちょーだい!」
「うむ! ゆけ、ライラ! 我らの敵を打ち砕くのじゃ!」
咲羅の声をうけて、Bow! と吼えながらライラ=スコットは疾走。
「咲羅様の道に立ち塞がるならば……殄戮です!」
大剣を振り上げて、気勢とともに突貫するリリアーヌ・ウォルトグレイヴが続く。このメンバーの中心人物である、咲羅の忠実な部下とも言える冒険者たちが、すでに敵を留めるべく応戦しているギルバート・フォーチュンの横合いを抜けていく。
前衛、盾として負担を一手に担うギルバートの負担を減らすことは咲羅としては必須事項だった。
故に、戦力の出し惜しみはしない。
「アステル! そなたも行けるか」
「おう! ……みんな熱くなってるしな。オレも負けてられないなー!」
並走するアステルも、人好きのする笑みを浮かべ、往く。猟犬が喉元を食いちぎるように、敵を屠る姿を満足げに見やりながら、咲羅は周囲の警戒を継続する。
「――この分なら、範囲攻撃は温存できそうね」
「そうだな」
戦況を見据えてのウォルナ・パイパースの言葉に彼女と同じく後衛に位置取ったソル。また、優位と見て敢えて前衛には行かず、アイリーン=N=フェルクスは咲羅やウォルナたちの護衛として周囲警戒を続けている。
ファミリーを中心とした、超攻撃的な構成であった。
―・―
15層に至った所で、前衛のギルバートの負傷により陣形が変更され、ライラが前衛を担うようになる。ギルバートと同程度にライラが堅牢であることとから、大きな問題は生じなかった。
「いや、情けないね……」
「十分頑張ったってことだよ! まっかせてー!」
―・―
「――なんかおんなじ空間ばっかりで飽きてきたなー」
「この状況で言えるのは豪胆だな……」
両手を頭の後ろで組んだアステルに対して、ソルは呆れたように言うが――状況は、良くなかった。
いや、あるいはそれはアステルなりの気遣いだったのかもしれないが。
21階層に到達したところで、ライラに限界が来た。そして、ギルバートが無理を押して、独断で咲羅のカバリングに入り、重症を負った。敵を打ち払うことは、アイリーンたちシーフや、ウォルナが切り札を切ることで出来たのだが。
「そなた、何を勝手な真似を……」
という、咲羅の怒りの声を、しかし、意識を失ったギルバートは聞くことはなかった。
――この後、探索者支援ギルドから派遣されていた探索者のパーティが治療を施し、ギルバートは歩けるようになったのだが、忠節の代償は大きく、咲羅にこってり絞られることとなった。
●
シャーリー・ブラウンとナハシュ、ラグアルーン・イェルダ、セドラ・メルディアによる、シーフとシューター達による厚い探索は、【兵】の様々な指針を叶える重要な礎となった。
狼を先行させるシャーリーは、その情報をもとにセドラと分担して捜波を使用していた。時間は掛かるが状況をクリアにした上で、必要があれば戦闘を行う、という方針だった。ラグアルーンはサーマルアイで暗所や広場の警戒を厳に行い、ナハシュはあえて戦闘中には手を出さず、周囲の警戒を行う、という徹底ぶり。
最も『目』の良いパーティであったといっていい。
15層程度。他のパーティーの姿がほとんど見られなくなったところで、そこまで一切のスキルを温存していたバーネット・フォーサイスは、
「さて、そろそろ狩っていくか」
と、宣言した。敵の手応えが増してきており、魔法を使わざるを得ない機会が増えてきたのもあるが――こうして、【兵】の面々は浅い枝場では戦闘を回避していたが、ここから積極的な戦闘に乗り出した。
―・―
――20階層。まとまった敵を相手にする機会が増えてくると、俄然慌ただしくなる。
「――っ!」
盾と大剣を構えたケン・Z・ブラッドリーが複数で居並ぶ大蜥蜴に相対していた。後衛への直線経路を塞いだケンの側面から、ラグアルーンとナハシュが応戦している。なるべく敵を一所に集めておくためだ。
「……っ、こちらを探ってる敵がいます!」
「そっちは俺が回るぜ。ここは任せたわ」
階層が進んですっかり緊張が解けたセドラは重撃射を打ちながら、【感波】に反応があったことを報告。それを受け、ナハシュは前衛から退いて、後衛の位置につき、周囲を警戒し――見つけた。とはいえ、こちらに向かってくる様子もない。
「……変なやつだな」
とはいえ、警戒は解かない。視線があっているからこそ動かない、という習性である可能性もあった。
「なら、こっちを優先だ! モリエール、悪いが首は諦めてくれ」
「……いえ、私も別に首に執着しているわけではないので」
バーネットの冗句にシャロン・ラ・モリエールが苦笑して応じた直後、バーネットが放ったメテオライトが広場に爆ぜる。リサ・ベイカーの輝刃もあり、敵がまとまったときの殲滅効率は高い。大ダメージを追った大蜥蜴の止めを、ケンとラグアルーン、そしてシャーリーの矢と狼が刺していくが、
「すみません、今ので打ち止めです……!」
できるだけ温存しながら進んでいたがリサの支援が尽きたのだった。
―・―
「♪〜」
小休止の間、オオトカゲの皮革の中で使えそうな部分を丁寧に剥ぎ終えたセドラは、自身のマントに包んでおいた。先程のやり取りにあったように、【兵】は、極力素材の質にもこだわるようにしていたのだ。道中に集められた皮は、首や急所を狙う方向に腐心したため、質が高い。
「――面白えモンと鉢合わせしたと思ったんだがな」
「とはいえ、逃げていったものはしかたないですしね……」
ナハシュの舌打ちに、シャーリーは苦笑。まさか敵が逃げていくとはシャーリー自身も思っていなかったのだ。
「警戒に留めたナハシュ殿の判断は妥当であろうよ。もう、潮時じゃろう?」
だれともなく、頷きを返す。到達階層こそ一歩譲るところではあったが、集めた素材の量と質は、同規模のパーティーと比べても勝るところだろう、という自信があった。
「どういう敵が出てくるかわかっていますし、もうちょっと素材は集められそうですね」
「首を刈るなら任せておけ!」
という、リサの言葉に応じたケンの冗句に、一同は暫くのあいだ笑いに包まれた。
●
【兵】たち同様、戦果による評価が特に高かったのが、【息吹】である。
スフィカとルル・リ・ララが探索の要となった。とはいえ、彼らの本領は先行偵察による戦闘回避ではなく、先手を取るためのもの。ルルの捜波に引っかかった存在は、ディアンかスフィカが先行することで確認し、見敵必殺――という運びである。
9名という集団で挑んだこともあるが、索敵から交戦の流れの速さと、戦闘時間の短さは特筆すべきものがあった。【天眼】と【戦術眼】を駆使して指揮するアルフレッド・ラ・ギが、ファム=ゴートとロベリアの魔法温存を支持した状況でも、二人の火力が十分機能したこともある、が。
「ソォラ!!」
という独特の咆哮とともに飛び込んでいくリィズ・クラリエと、エーテルブレードを駆使するディアンの攻勢ぶりが光ったのも大きかった。
―・―
「流石に迷宮とはいえ酒はでないのね……」
最後列で周囲の警戒をしているヒルダ・ル・ハーツィが落胆しながら見やる先、スフィカの腰元に吊るされたワインと、ルルが持ち込んだ蜂蜜酒がある。匂いが敵を引き寄せてくれるのでは? という見込みのもと、蓋が空いているのだが、ヒルダにとっては目と鼻に毒だった。
「せめてお宝でも一目見れるといいのだけど……」
「ふふ、それでしたら分かれ道でもあったら私にお任せください」
切なげなヒルダに、アンジェリッタ クラリンドは自信をのぞかせてそう言った。
「こう見えて、運は良い方でございますので」
運頼み――という言葉に一同の間に若干微妙な間が流れたものだったが――。
―・―
運への自信のほどはさておき、アンジェリッタのダメージコントロールは適切で、ファムとロベリアも極力魔法を温存したまま20階層という深くまで潜ることができた。
「このまま最奥を目指すのも勿論だが、希少で未知な光景も見てみたくはないか? 秘密の財宝部屋とかあるかな?」
という、ロベリアが艷やかに言った冗句に熱烈に反応してしまった一部のメンバーの強い要望もあり、下層へ向かう階段が見つからない場合に、スフィカの探波で行き止まりとわかっていても探索に挑むようになった。
結果から言えば、この寄り道が分かれ道となった。
―・―
「ん、おおきい」
リィズはそれを見上げて、無表情のまま身体をウズウズさせるという形で喜色を顕にした。
「戦いがいありそう」
「そうだな! ……まあ、ちっとぶった切るのは骨が折れそうだが」
戦闘狂二人はそう言って二人でうなずいた。その視線の先、20メートルほどの部屋に、幅5メートルほどの不定形生物が居た。特筆すべきはその巨大さだけでなく、この巨体でルルの捜波をくぐり抜けたことと――。
「「「金色!!」」」
レア物を希求していた者たちの心を奪う、黄金色の輝きであった。
期待の眼差しがアルフレッドに突き刺さる。それを受けたアルフレッドは、いっそ清々しい笑みを浮かべて、こう言った。
「さあ皆の衆、有終の美を飾ろうではないか! 天高く声を上げよ! 我々こそ真の冒険者であると!」
その声を受けて真っ先にディアンとリィズが気勢をあげて走り出す。矢が、魔法が飛び、巨大な敵へと突き立ち、爆ぜる。
――激戦の後に響いた幸運の神の息吹を背負った戦士たちの歓声は、彼らの冒険譚を締めくくるに足るものとなったことだろう。
●
【開墾の団】は、ハリス・アル・ターミルの呼びかけに応じてあつまった面々である。探波・捜波を駆使するサララ ココノカを先行するパーティーの目として、そしてリトゥルが前方、ロウトフェダーが隊列後方で周囲を警戒する形。
「いやあ、サララ殿の探索の腕は素晴らしいですね!」
「シノビとしてお役に立つのが……我が使命! お褒めいただき有難う存じます!」
ハリスの上機嫌な声に、小柄なサララの心が震える。務めを十全に果たせることは、シノビとしてこの上ない喜びだった。
「うむ。おかげで採集が捗るというものだ」
薬草の知識を有するフェイサル・セイフとしては、20層というかなり深部まで進んだところで素材を収集できることはかなりありがたい。戦闘においてもヒーラーとして働いているが、今回の迷宮探索では素材の収集度合いも評価されるのだ。手を抜く理由もない。
「早々に魔法が尽きてしまったことが心苦しいね……」
そういうローレ=リースフェルトが背負うバックパックは、これまでに集めた素材ではち切れんばかりとなっていた。ウォーリアの身でも運ぶのは辛そうな大きさとなっているが、こればっかりは動き回る前衛に持たせるわけにはいかない、と頑なだ。
その様子を後方から見上げていたオリーキュは、
「そろそろ、休憩にしませんか?」
といって、自ら頭に被っていた鍋をひょい、と掲げたのだった。
―・―
「素材、地上にもどったら返さないと行けないですけど、ここで食べていけないわけではないですしね」
オリーキュの提案に、もともと空きっ腹を覚えていたトゥーリの両の瞳がきらきらと輝きだして、
「あったまいい!! 美味しそうな素材、いっぱいありましたよね!」
とローレのバックパックを漁りだした。ハリスを含めて、羽根を伸ばすことに決めたのだからと留めることはしない。
オリーキュは鍋に火をかけ、トゥーリの厳選した肉とハリスやフェイサルが差し出してくれた『推しの野菜』を炒めたのち、水をいれた。何分出先でのことだから、調味料は塩をさっと混ぜる程度に留める。
「こりゃ……うまいですな」
差し出されたスープをさっとかき込んだリトゥルはひと心地ついたとばかりに、ほっと息を零す。ローレもまた、リラックスできているようだ。
―・―
【開墾の団】は、罠の調査、ダンジョンでの探索、感波などのダンジョンへの備えができていた。
特に、ハリスやオリーキュのような盾だけでなく、彼らが苦手とするような相手に対して、トゥーリのように回避力を主体とした前衛を運用できた点も大きかった。
しかし、それでも23層目が限界となった。ハリス個人としては、味方を庇うウォーリアとしての立ち回りが、長期戦の中で響いてくることは反省点ではあったのだが、出来得る限り最大の備えをしたのだ。
「皆様とのご縁こそ、何よりの宝です!」
そういって、締めの宴会で胸を張って言えた程度には、満足の行く結果であった。
●
場馴れしている、と後に評されたパーティーは決して多くないが、イズレンディル・パラリム、ヨル・スレイマン、マーヴィン、ヴェールヴァルデ、ネロ・ブラン、ロイ・ロビンソンの6名のパーティーは規模・方針を踏まえてもかなり高いレベルにあったとされる。
その由来は、【亀】と自ら称したように、慎重かつ、堅実な進行方針にあった。
―・―
探索という観点でいうと、エーテルリンクと捜波を併用するマーヴィン単独での調査効率は最も高いとは言い難いが、このメンバーでの最高効率であった。彼らはマーヴィンと、彼の狼が得た情報を中心に、ヨルのモヒンカンセンサーで戦闘の要否を決定する。
だがそれも、浅い層では殆ど気にする必要はなかった。
「――このぐらいならば、魔法は使わなくても良さそうですね」
「む、貴公がそういうのであれば、俺もそうしようか」
イズレンディルは、共有も兼ねてそう言ったこともあり、ロイは途中で――といっても、もともと範囲攻撃を使う機会はマーヴィンの調査のおかげで殆どなかったのだが――魔法の使用頻度を抑え、通常の攻撃にシフトした。
時間がかかろうとも温存・迂回を主とする形となった。後衛火力に優れた一同にとって、浅い枝場はなんの問題にもならなかった。
―・―
順風満帆であった彼らのパーティのなかで、最初にネロ・ブランに罅が入った。24層目。豪腕を振るう、巨大な犀のハーフビーストのような敵の攻撃を受け続けたネロへの負担が大きすぎた。ヴェールヴァルデの支援が尽きたところで、限界に達したのだ。
「これは、なかなか響くね……!」
チョコを食べながら、呻くように言うネロの額には、大粒の汗が浮かんでいる。
単純な一撃の重さを、防御を固めたネロが受け止めきれないということは――。
「進もうと思えば、敵を抑えてもう少しだけなら進めるけど、どうする?」
光縛封を残しているヨルの言葉に、イズレンディルは沈思せざるを得なかった。
「――おそらく、このあたりが今の僕たちの限界点なのかもしれないですね」
装備の質もそう。能力も、そう。完璧とは言えないかもしれないが、力を尽くした過程に、曇りはなかったと言える。
だからこそ、イズレンディルは撤退を選んだ。残った余力は、素材の回収に注力することとして。
―・―
この階層が、冒険者達にとって大きな壁となった。
●
この日、最も多い13名という大集団を率いて迷宮に挑んだ者がいた。ハヤト=ガラン=ヴォルファングという、ゴブリンの男である。駆け出しであることを差し引いても、13名の【授恵者】といえば相当な戦力であるが、彼らはパーティーのなかで役割を振り分け、陣を組んだ。
「……大丈夫、ですか?」
カノン・エルグが、そっと隣を伺う。ランタンの灯火に照らされながら、爽やかな風貌のエルフ、アルマン・アルスターが緊張に顔を歪ませていた。
「ききききき緊張してるけど大丈夫」
「本当ギャ……?」
幼さの目立つシファー・アルムグニーの言葉と視線に、アルマンはバツの悪そうな顔になった。とはいえ、その耳は常に周囲を警戒しているから、役目を果たしていないわけではないのだ。ひょっとしたら、そのことも彼の緊張を増長させているのかもしれないが。
「……ほ、ほんとうさ!」
「へっ、足だけは引っ張んなよ!」
強気に言い放ちながら周囲の匂いを警戒しているギャメルであったが、彼は彼で内心の高揚を隠せていないようで、周りを見る目は楽しげだった。エステル・ヴィタは、そんな周囲の様子をぼんやりと見つめながらも、不快そうではなかった。
中衛として、3列目の位置につける彼らは、このパーティーの火力という意味では中核的な位置づけだった。
このパーティー、数が多いためか、何らかの形で敵に見つかる事が多く、とにかく戦闘回数が多い。
それでも、前衛であるバクル・バスリーとハヤト、ティラミス・ノーレッジの勇猛さに加えて、バルー・キップリング、パトリツィア=レイネス=ナハティガルがその間に備えている。バックアタックを警戒する面々もいるので、彼らの存在が中核となって、多くのパーティーにとっての障害は瞬く間に散らされていくのだった。
―・―
とはいえ、これだけのメンバーであっても敵の処理に時間がかかるようになってきた22階層程度から、苦しくなってきた。
このパーティーで治療役のメインを担うシルク・メイプルリーフは、敵の攻撃を受けるバクル、そして、有事に防御に入るパトリツィアの治療機会が増えてきていることには気づいていた。
「大丈夫ですか?」
「結構攻撃は重たいね。……でも、この装備でこの階層まで踏み込んでいるから織り込み済みだよ」
エドゥノーグに明るいバクルはサバサバとした物言いだが、もうひとり、パトリツィアは、というと。
「ええ、もちろんいけますわ!」
傷だらけでこんなことをいうものだから、当てにならない。
バクルやパトリツィアほどではないが、ハヤトとティラミスの被弾も見られる様になってきた。一撃あたりの重さも馬鹿にできない。そちらは、ギャメルとカノンがヒールを施しているが、治療をうけながら、ハヤトはシファーと相談をしていた。
――撤退の判断について、だろう。
ハヤトはシファーの背を叩いて感謝を告げると、大きく声を張った。
「うっし! 治療は済んだか? ……いけてあと2層、ってとこだ。どうせなら怪我人を出さず、全部出しきってから帰ろうぜ!」
―・―
「はー、楽しかったですぅ、ねっ、ギャメル!」
「お、? おう! そうだな!」
支援に攻撃にと、最後まで【勇牙】の戦力を底上げしきったネフリティス=N=クリスタロスが朗らかに言う。シファーが確認していた、「使用可能スキル2割」に抵触したため撤退となった一同だが、昏い陰はない。思う様、存分にやりきったのだ。
「やっぱ敵が増えると面倒くさいな……こう、無理ってことはないんだが」
「オイラは、そのほうが纏めて叩けて楽だったですけどねえ」
と、二刀をくるくると回すティラミスにバルーが言えば、「そりゃ、アンタはな……」と苦笑が返った。バルーが戦士の一断と闘気槌で纏めて敵を屠り、窮地を脱したことは記憶に新しい。
「もう少しだけ、頑張ってくれよ」
朗らかな帰路のなか、カイン・ステラは大鼬のファとエーテルリンクで情報のやり取りをしながら、小さく零した。
帰るまでが迷宮探索。道中もフル稼働していたパーティの目は、当然、帰路の負担も大きかった。
一同もそのことはよくわかっていたのだが、邪魔になると機嫌が悪くなるであることも道中でよくわかっていたので、そっとしておかれた。
その労は後ほど、宴会の中で大いに労われることとなる。
【勇牙】の到達深度は24層。収集した素材価値は、量でこそ【雷槌】に劣るが、質としては随一のものとなった。
―・―
「おつかれさまでーす」
赤ずきんを被ったユネスコ・ビスコは、和気藹々と離れていく【勇牙】の面々をにこやかに手を振って見送った。
そうして、ギシシ、と嗤う。
道中、たまたま方向が一緒になってしまっただけだ。その証拠に、ユネスコは一切に素材を回収していないし、なんなら時にはには邪魔をにならない程度に援護射撃もした。
今。ユネスコの前にはその成果が結実しようとしていた。
「ふっふっふー♪」
目指せ! 到達深度ナンバーワン!
危険は百も承知だが、それを侵す勇気は無駄にあるのが、この少女である。
最終的にトレインさせながらも逃げ切り、探索者支援ギルドに保護されることとなったが、目論見は達成できたので、ユネスコは大層ご満悦だったという。
●
回復手段を持っていなかったクローリカであったが、ウォン・ジンユゥや浩之といった、辻ヒールを行う者の支援もあったことから、当初想定していたよりも長く迷宮に潜ることが出来た。帰還時に集めた素材をギルドに提供したところ、その量の多さを大いに褒められた。
――これで、依頼は終わり。
彼女の中で一区切りが付いたところで、迷宮都市の夜の街をあてもなく歩き始めた。雑踏を歩く人々の気配、食事の匂いを茫と眺めていると。
不意に。記憶を擽る少女の姿が、通り抜けた気がして。
「――お嬢様っ!?」
振り返るが、往来の中に探し人の姿は見つからなかった。
残ったのはただ、道中で突然立ち止まったクローリカへの不快気な視線と、彼女の胸中を掻き乱す、強迫めいた想いであった。
●
最後に一人、この日最も長く迷宮に潜った男の紹介をしたい。
ルドウィン・フォルラン。ドワーフである。ルドウィンはある程度潜ったところで、踵を返した。
そのまま、枝場の第一層に戻ったところで、
「お、このあたりは野宿によさそうじゃの」
と、突き当りにあたる小部屋の一角にやおら布を敷き、チーズを食んで腹ごしらえをした後にごろりと横になった。
そう。野宿をしたのである。
高いびきに引き寄せられたスライムや虫に時折眠りを邪魔されながらも、ルドウィンはその日、迷宮で一夜を過ごしたのだった。
ルドウィンが提出した地図には、大きな◎が描かれ、『休憩場所』と記されたとか。
●
歩けば歩くだけ、景色と香りが変わっていく。この雑多さがカッシアにとっては心地が良い。
カッシアの手の中、分厚く固い葉に包まれたポテトパンケーキがもうもうと湯気をあげている。香草、仕上げに塩が効いたそれは、カッシアの舌によく馴染んだ。同行者であるヴィナスを眺め見れば、その味に向き何やら合っている様子。
「ふふ、俺は普段どちらかというと提供する側だから、お客様側はあまり経験が無いんだ。特にこういうお祭りめいたものはね」
そう言って、吟遊詩人は、ふわりと笑った。
「誰かと一緒に何かをするって、すごく久しぶりだ」
「そっか、カッシアには新鮮な体験なんだね」
記憶に残る味と比べていたヴィナスは、カッシアの朗らかな声にそう応じた。内心では、吟遊詩人らしからぬ反応に思うところはあるけれども、まあ、それこそ野暮だろう。
目の前のカッシアが、楽しんでいる。それだけで十分だ。
「久しぶりの相手が俺で光栄の至り」
「ヴィナは楽しめているかい?」
「もちろん」
「……よし。じゃあ、ヴィナの好きな料理の露店が探してみよう。何が好き?」
「パイ料理かな」
む、という反応に、ヴィナスは苦笑した。
「……カッシアは、甘いものが苦手なんだっけ」
そういう会話一つ一つが、二人には心地よく。会話も、興味も尽きることはなかった。
「――同じシェアハウスの仲間として、今後も仲良くしようじゃないか」
「こちらこそ」
●
手入れされた庭園の見事さもさることながら、生気溢れる眩しさにリーザヴェールは目を奪われた。美しさよりも、陽の光の中で堂々と咲く花々の有り様が、リーザヴェールには得難く感じられて。
日傘を手放して花を愛でたいという欲求に、あの人の声を思い出して抗いながら、通りがかった庭師に言葉を掛けた。
「ねぇね、そこのあなた。このお花はどこで売っているの? 売っていないなら、一本でいいの、枝を分けて下さらない?」
――この日、女はこのひと枝だけを持ち帰った。
――時を切り抜いて、永きに渡り愛でるために。
―・―
そんな美女のたおやかな様を眺めながら、ドローミはがぶり、と串焼きに食いついた。
「このカエルも、淡水魚も自分で獲ってみたかったですねぇ……」
口いっぱいに含んだ食べ物を嚥下し、零すドローミ。武威を振るうことへの心残りはありながらも、開き直って食欲を満たすことにする。熱で粘度を増したとろとろのソースは、適度な甘みと酸味を備えている。辛過ぎず、甘すぎず。良い塩梅であった。
「おっ。そこの冒険者さんも一人?」
「む」
そこに、声をかけてきた男性がいた。Shaadeeと名乗った男は、幾人かを連れている。そのまま断りを待たずに座る。
「いやぁ、この街は活気があっていいね。迷宮もいいけど、俺まだぼっちだからさ! 迷宮探索よりも交流を広げようと思ってね!」
弁舌は留まるところを知らない。傍らにいた、にこやかな少年が会釈をする。
「リオン・G・カートナーといいます。よろしくお願いいたしますね」
純朴そうな少年は「そこで声を掛けられたのです。お嫌ではないですか?」と苦笑する配慮を見せた。
「気にしていないですよ」
とドローミがいうと、良かった、と安堵するように言う。好男子であった。
芝生に腰を下ろしたリオンはいそいそと大きめの葉に包まれた蒸し料理を取り出しながら、背筋を伸ばして香りを味わうと。
「買い食いというのは少し、行儀が悪い気がしますが」
そう言って、取り出したカエル脚の揚げものをはふり、と口に含んだ。
「何事も経験ですし、郷にならえ、といいますしね」
「ほらぁ、俺ってばめっちゃ美形じゃん? イケメンじゃん? きっと大陸の美女が放っておかないと思うんだよなー」
「……そうなの?」
通りがかりのリリアナ=ティア=アインザームカイトを呼び止めたShaadeeが酒を片手に言う。
思いのほか深みにハマった少女の困惑を示すように、アホ毛がぴよりとハテナ字を描いている――ような気がして、問われたララノアは驚きに目を丸くした。
「……ど、どうなんでしょう……?」
エルフのララノアは、瓶底眼鏡とフードでその表情を隠しながら、混乱している。
――どどどどどどうしたらいいのでしょう……!!
森を飛び出して、都市の中でこれだけの人と交流するのは初めてのことだった。コミュ障にはつらい。身の振り方がわからない。
「わ、私、そういうの、わからないので……」
「あはー、そうなんだー。リリもだよ!」
リリアナの何気ない同意を正解と受け取って、思わず握りこぶしをしてしまうララノア。
だが、緊張に青ざめた顔はなかなか元には戻らない。
――はあああ、私には難度が高すぎますぅぅぅ……もっと田舎から慣れればよかったですかぁあ……!
「……あら、これ美味しい……」
心の中で悲鳴をあげるララノアをよそに、赤々としたカエル肉入りスープを味わっていたルアンナ・ミュラーはぽつりと零す。
「凄くスパイスが染み込んでいて……どうしているのか、気になりますね」
「あっ、カエル料理だー」
「ええ。私のパン屋でも何かつかえないかと思ったんですけど……」
「パンに……?」
めちゃくちゃに辛そうなカエル肉を見て小首をかしげるリリアナに、ルアンナは思案げに言う。
「私は合うと思うんですけど、うーん……カエルって言わなければ、大丈夫ですかね……?」
「どうだろー……」
―・―
灰づくめ、という表現が似合う少女であった。
グレイ・ルノワールは公園のあちこちを歩き回りながら、芝生スペースやベンチで楽しげに歓談する人々の様子を見やりながら、「思っていたよりも若い人が多いですね」と呟いた。これだけの規模の街であれば、老人の比率が多くてもいい、と思っていたのだが。迷宮都市は不慮の事故死も多いらしいから、その影響だろうか?
「もう少し場所を変えたらすこし違うかもしれませんねー」
ふわ、と温かい日差しにあくびを一つ零しながら、検証のために歩き始めた。
●
「これが迷宮産の素材……?」
ナンチ・ヤジナイは歓楽街や食事処から離れ、職人通りを歩いていた。綺羅びやかな宝石の原石のようなものがガラクタのような値段で売られていると思いきや、一見するとただの皮革や爪・牙などが凄く高額だったりする。迷宮の素材は授恵者に馴染むとは聞いたが、何らかの基準があるのだろうか。不思議な光景だ。
鍛冶屋の次男坊で、冒険者のナンチにとって、感慨深い光景だった。
いつか、これらの素材と向き合う機会がくるのだろうか。その時は――どういう立場で、臨むことになるのだろうか、などと。
益体の無いことを思いながら、通りを冷やかすのであった。
―・―
「ははあ。確かに種類は中々だの。質は――まあ、ぼちぼちか」
タタラ=ナーヴィンの隻眼に、興味の色が色濃く灯る。高額なものはともかく、職人としての目で言うと素材の質のばらつきや傷み具合は気になるところであった。「ナギ節」と言っていたのも影響しているかもしれない。
飾らないタタラの言葉に、素材商は太鼓腹を揺らして大笑した。
「この街の探索者は……とくに授恵者は、モノがいいヤツは手元に置きがちなのさ。ある程度腕が立ってくると素材を職人に持ち込んで装備を作ってもらう――ってのが主なんだよ。出物があれば他の都市にすぐ流れてくしな……別に言い訳ってわけじゃないぞ?」
ふむ、と。タタラは沈思する。
そのうち素材の取得が認められるようになるならば、さらなる鍛冶の高みを目指すために迷宮に潜ることになるのは、想像に難くなかった。
●
右の幼女を見た。食べている。
左の老婆をみた。食べている。美味しそうに。
アリア・ティーダは周囲の暴力的な光景に畏怖の念を抱いていた。
「……あのカエルだよね?」
「おう」
カウンター越し、ヒューマンの店主がにっこりと言う。
「ふろっぐ」
「そうだな」
「げこげこ……」
「……」
先程の少女などは楽しげに丸焼きにされたカエルの顔を持ち上げてこちらに向けて「がんばえー」などと言っている。アリアにとっては狂気的な光景だった。
「冷めるぞ」
「……っ」
店員の圧に押されて、はむり、と片足を放り込む。
「……美味しい」
大層、滋味にあふれていた。風物詩、であったのだろう。アリアの様子に、周囲の面々は一様に笑みを浮かべた。
●
とぼとぼ、と歩くJenna。くすんだ茶髪が、一層影を落としている用に見える。
なにか甘味をください、と突撃してフラれること三度。心が折れそうだ。せっかくの機会だしカエル料理でもいいかな、と思いだしたころ。
「ねえ」
「……?」
届いた声に、振り返る。そこには、菓子を頬張っている銀髪の少年がいた。
「甘味処、さがしてるの?」
恩人の名は、シオン・霧江と言った。
―・―
「昼寝してたら見つけたんだよねー。なんと蜂蜜たっぷり。迷宮にある巨大蜂の巣から獲ってこれるんだって」
「……甘くておいしいです」
シオンよりもはるかに長身の女性が丁寧にそういうものだから、先程までの落胆ぶりとの差も相まって良い気分になった。お休みと美味しいものの存在もあり、少年の尾が揺れる。
「せっかくだし、ここの名物も食べに行くのはどう、かな?」
と水を向ければ、Jennaはすぐに頷いた。
「甘いカエルは、ありますか?」
「……どう、かな……」
●
「やはり冒険者といえばダンジョン探索! アトリエに役立つものもきっとありますよ!」
と、エレノア・D・グリフィスに引っ張られてきた河霧の貴婦人――という名のエルフである――は、とはいえ迷宮にすぐ向かうでもなく、街中の散策をしていた。エレノア曰く情報収集と前衛のスカウト活動は、戦闘経験がほぼ無い河霧の貴婦人にとっては望むところであった。できればこのまま、スカウトを失敗させて、迷宮探索自体を有耶無耶にしたい。
「ええっと……壁にお尻を……そ、それは人類に可能なのですか?」
「なんじゃ、知らんのか。壁にお尻をつけてしゃがんでジャンプじゃ。これで床をすり抜けてぴゅーんと進むことができるのじゃよ」
「ほぇぇ……」
胸を張る河霧の貴婦人の言葉に感嘆するエレノアであったが、通りがかった武威あふれるヒューマンに気づいて、魔女様に耳打ちする。
「魔女様、あの方などいかがでしょうか?」
「ベテランのオーラじゃのう、たしかにかっこいいのじゃ……しかし大家殿」
「は、はい?」
にんまり、と河霧の貴婦人は笑った。
「もしかしてメンクイなのじゃ?」
「はっ!? いや!? そ、そんなこと無いもん!!」
「そういうことなら酒場でもゆかぬか? きっとイケメンがおるぞ」
「もう! 魔女様〜!」
●
「天気も良いし、偶にはこうしてのんびりすんのも悪くねーなー」
ハーフリングの少女、Re:Leeと、リザードマンのザインの二人は、公園の芝生に座り、Re:Leeが作ってきたというサンドイッチを食べていた。
「んー! 美味いなこりゃ! いくらでも食えるぜ!」
「……ふふ、ありがと!」
大きな口でガツガツ食べる大好きなヒトの姿に、Re:Leeは微笑んだ。
食事前、陽気に誘われて昼寝していたザインの頭には、こっそりと載せた花の冠が揺れている。その姿がなんとも愛くるしくて。
「ねね! 食べ終わったらどこいこっか?」
と、声も弾んでいた。
―・―
夜になり、Re:Leeとザインが大通りを歩いていたときのこと。
「あ。リリーちゃん、ちょーっと、目ぇ閉じて貰っていい?」
「え?」
「いーからいーから!」
言われるがままに、Re:Leeが目を閉じていると、首周りに、ザインの鱗の感触。
「……ぇ?」
「ほい、オッケー!」
目を開いたRe:Leeは、震える手でそれを確かめる。首元にある、小さな――青色の原石がはめ込まれたネックレス。ザインの色だ、と。思わず、言葉をなくしていた。
「おれっちからのプレゼントだぜ!」
「……ホントに、貰っちゃっていーの?」
「おう!」
にっかりと笑うザインの姿に引き出されるように。
「あたし、来てよかった……」
そう、呟いていた。
●
「マリアはデートぉ!?」
黒髪がお湯に浸からぬように結い上げたガーネットの声が、浴場に響く。
「ふふ、声が大きいわよ」
「……」
イル・シャーリィの声に息を吐いた。
「はあ……抜け目ないわね……」
「先を越されたと思ってる?」
「え? あ、あたしは別に……!」
「別に?」
「……もう!」
くすくすと笑うイルの視線から逃れるように、ガーネットは鼻先まで湯に浸かった。そのとなりで、エルフのリノアは大きく伸びを一つ。
「んー……なんだかほわほわするわー♪」
「リノア? こういう時は『あなたまた胸大きくなったわね―!』とかやらないと」
「胸大きくなったとか何よそれ! オヤジ? ていうかなんであんたの話のネタにされなきゃなんないのよ!!」
イルの提案に、反論するガーネットを、リノアは軽やかに無視をした。むず、とガーネットのそれを下から持ち上げ。
「……やだ、ホントに大きくなってない?」
「リノアも乗っかるな!!」
がばっ、と浴室内で飛び退ったガーネットを、リノアとイルはにんまりと眺めた。わなわなと震えるガーネットは、反論しようとして――、
「だいたい! あんたの方が大きいでしょうが!」
「声が大きいわよ、ガーネット」
「ええ」
「……もう!」
結局、返り討ちにされたのだった。
●
「ふふっ、初めての仕事が親睦を深めるものとは……楽しみですねエリック」
「せやなあ……こんなこともあるんやな」
ルーカ・ルンガルディエールの笑みに、傍らのエリック・ハルトマンは苦笑して応じた。手に職を、と思っていたところに、こんなことが来るのだから、人生はわからない。
―・―
「ルーカの髪、めっちゃきれいやなあ!」
「そ、そうですか……?」
男湯である。ひたすらに褒められ、身体を洗われることにルーカは頬を赤らめながら、身を縮めている。
「うし! 身ぃも清めたし、行こか」
「……え、ええ!」
そうして、エリックに引きずられるようにして、湯に浸かる。
互いに持ち込んだ酒を回し飲みしながらの会話は、大いに心躍るものだった。
―・―
長い時間をかけて浴場と交歓のひとときを味わった二人は、夕食の魚料理に舌鼓を打った。
エリックがお願いを切り出したのは、そんな時のことであった。
「え、私の家に行きたい……?」
「うん。うち、住む場所がないねんな……せやから」
ルーカにとっては、断る理由などありはしなかった。もともと、好感を持っていた相手である。交誼も深まった今、否やはない。その旨を伝えると、エリックは心の底から破顔した。
●
「レヴ見て見てみてみてー!!! あっちのアレ!!!」
「分かったから待てって!」
通りに響き渡る少女の声を追って、一人の青年が駆けていく。少し乱暴な口調は、親しい間柄ゆえ。
少女はジヴリール。追う青年の名はレヴァーレ・クアルムという。
「急いで! ネイトゥーラ商会の明日のためだよー!」
―・―
居並ぶ露店料理の数々は多くが迷宮から採れた食材を使っているらしい。観光客だけでなく、冒険者志向の強いメニュー内容は、彼らにとっても参考になるものばかりだ。
それ以上に、浮足立ってしまう。レヴァーレも、見識を深める以上に楽しんでいるように見えた。だから、ジヴリールはつい、張り切ってしまったのだ。
「……楽しみなのは否定しないさ、何せ初めての事だらけだからな。けど」
「ぐえ」
追いついたレヴァーレに首根っこを掴まれて、蛙が潰れたような声が出てしまう。
「ったく……もう少し落ち着きを持って行動しろよなぁ。商材を見つけるのが目的って言ったのはルーだぞ?」
「……ってのは半分建前で、美味しい物食べたいなーって……せっかく来たんだしぃ……」
「……」
レヴァーレは息をつき、あたりを見渡した。
「どれだ?」
「え?」
「……食べたいものだよ。折角の機会だし、楽しんでいこうぜ」
などと、可愛げのあることをいうものだから。
「行く!」
こうなったらもう、少女が止まる理由もなかった。
レヴァーレは――自身がそれを望んだことも事実ではあるのだが――くたくたになるまで、食べ歩きに付き合うこととなったという。
●
「これすっごい美味しいね! 何を焼いたものなのかな? はー! カエルの脚!」
「生きた状態で浅層からとってきたものを、調理前にしめているそうですよ。そうすると、内臓が傷まないので肉質がいいそうです」
「産地直送かあ……!」
マーハ・アセトシソンの感嘆に、情報収集をしてきたローレシア・ルエインが応えた。
「ありがとうローちゃん!」
「どういたしまして」
屈託ないマーハの感謝に、ローレシアはほんのかすかに、笑みを浮かべる。
海神・江流は二人の様子を眺め見ながら、露店で買い付けたエールを呷る。売り文句の通りの冷えた酒に、好奇心が疼いた。
「よく冷えた飲み物だね、紋具使ってるの?」
「ああ。ま、その分は値段が上がっちまうが、客ウケは良くてねえ」
――コストは嵩む、か。なるほどなあ。
けれど、此処での客受けは、リブラネスタの冒険者受けにも通じるところがありそうだ、とも思う。
と、そこまで考えたところで、江流はマーハに言葉を投げた。
「そういや、マーハはなんで串焼き屋台なんてはじめようなんて思ったんだ? 火の魔法の平和的利用、とか?」
「んー……」
手元に残った骨をしゃぶりながら、マーハは黙考した。やがて、
「昔から調理場に立つのも好きだっていうのもあるけど……それを美味しいって言ってくれる人の顔が大好きで、それがいっぱいにればいいなって」
そういった後、にへら、と笑った。
「あとは冒険者同士の情報交換の場っていうのも格好いいじゃない?」
「マー君、ちゃんと考えていらっしゃったんですね」
「ローちゃんに言われると、ちょっと刺さるなぁ……」
ぼんやりとしているように見えるが、根は真面目なローレシアの言葉に呻くマーハ。
それを眺めた江流は声をあげて笑うと、
「今は俺も二人と仕事やれてるのは案外楽しめててな。先がどうなるかわからんけど、これが続いてくれると嬉しいかねぇ」
「……」
何気ない江流の言葉に、マーハはなにやら感じ入った様子だったが、はっとなにかに気づいたようで。
「ローちゃん! これ、よかったら……いつも頑張ってくれてるから」
「まあ……」
差し出されたネックレスに、ローレシアはかすかに、目を見開いた。
それはまだ、確固たるものとは呼べないかもしれないけれど。
――確かに、絆というにふさわしい光景だった。
●
エクレア・グリモワールは食の探求者である。
カエル料理の経験はこの日が初めてであった。
「……むむっ」
食べ歩きつつの四店目の露店。通りから外れた奥まった位置に気配を感じ、立ち寄った。
トマトに煮込まれたカエルの肉に、色気が滴る。聞けば、水通しの後に湯通しをすることでこの照りがでるらしい。内臓を抜き、身を洗った後、骨ごと炊く。自然と身が解れたらそれを落とすが、骨はスープにも使う。
バターを米にしっとりとなじませて、スープをさっとかける。米がふくふくと膨らんできたら、トマト煮と合わせてひと煮立ち。香草の類は無い。大きく砕いた塩と、胡椒を一振り。
「……うっまあ……」
思わず、拝んだ。
●
「ウェズン殿! お任せください!」
「…………」
当初、ウェズンは警戒していた。ウッド・B・ウードは、悪い男ではない。だが、ウェズンの勘は危険だと告げている。
「なにとぞ! 私にあの日の芋の恩を!」
その勢いに負けてしまったのが、運の尽きだった。
―・―
探索者の食欲を満たすためか、迷宮都市に香草・香辛料の類は非常に豊富だった。
「オラ働け。これを持て。次に行くぞボンクラ」
「お任せあれ!」
身体のいたる所にポーチと小袋を吊ったウッドの仕事ぶりは、ウェズンの目からみてもなかなか要領がいい。
そのうちに見つけたのが、エドゥノーグの地酒である。辺境都市は、シャルガネ居住区とドワーフ王国の存在もあって酒への造詣が深い。そういえば、出店で見かけた麦味噌もその一環かもしれない。
――五本……いや十はいける。
暗算し、後ろに待機するウッドに言いつける。
「おいボンクラ、出番だぜ。コイツを持ちな。次に行くぜ」
「おお! これは芳醇な香り……!」
移動を考慮し容器には樽ではなく、陶器が選ばれた。ウッドは検分しながら背負子に詰めていく。
「割りやがったら承知しねえぞ。フリじゃねえからな」
「ははっ! ウェズン殿は冗談がお上手だ! 我が頑強たる身体を持ってすれば……!」
よいせ、と。背負子を背に立ち上がる。ぐぐ、と重量感を表すようにウッドの身が揺れたが、なんとか踏ん張る。
「ほらこの通り!」
バーン! と、武威を示すように両手を広げた瞬間のことだった。
「あっ」
「おい」
そういうことになった。
●
「はー……」
サニー・フォン・オルライトの声が、浴室に響き渡るのを聞きながら、ゼラルム・エルホワイトは少しばかり目を伏せる。
――年頃の乙女、貴族の子女がこれでいいのか。
他人事のようで、他人事ではないのがまた、憎らしい。
「ねえ、はいらないのー? 気持ちいいよ!」
「はいはいはいはいただいま!」
ゼラルムが時間がかかっているのは、サニーの髪を洗ったり背中を流したりしていたからであって、その分自分の準備が済んでいないだけなのだが、サニーは気にしていない様子。
いや、分かっているのかもしれない。ニコニコと機嫌がいいのは、湯の快適さだけではないのだろう。
――一人でゆっくりしたいのに、わざわざなんでこんな面倒を背負い込まなくちゃならないんだくたばれ!
と内心で吐き捨てつつも、急いで流したのち、湯に浸かる。お姫様はそれで満足したようで、さらに頬を緩めた。
「ありがとう、ゼーくん」
「はいはい」
付き合いの深さ故に、恥じらいはなく、気楽さが立つ。
心地よいひとときを、ゆるりと満喫していた。
●
「店に入る毎にどんどん服が綺麗に……?」
エーファ・メイベル・マジェリトは、自らの姿を見て不意に我に返った。
「これが……酒のちから……」
「ええいこの酒臭娘……! お洒落の真髄を酒で片付けるな!」
普段であれば水源の娘と呼んでいたテサロニケ・アンバーであったが、この浮かれっぷりには激昂やむなしであった。
「エーファ姉様……せっかくの新しいお洋服が汚れてしまいますわ」
しんみりした顔でフローラリア・ネムス・ラミナが言うが、エーファは特に気にしない。
「酒臭……? 服が汚れる? まさか! まだ数本ですよ。さあさあそこの露店の人! そのお酒ください!」
「うぬぬぬ……っ! 待て! 店を出るまえに着替えい!」
テサロニケは手を引き食い止めようとするが、エーファは新しい酒を手にするまで言うことを聞かない。酒がある間は、服選びに文句も言わず付き合うのだが……。
お洒落の道を習得させるには、さしものテサロニケをしても時間がかかりそうであった。
―・―
「この街、気前がいいと思っておったが、酒臭娘のせいで散々であったな……」
「私は満足していますわ! テサロニケ様のおかげで、たくさんのお洋服をみれましたし……かわいい花飾りや、森で見たことのない植物のタネも手に入りましたし」
「草花狂いめ……まあよいわ」
ぐで、と潰れたエーファに酔い覚めのための飲み物を渡しているフローラリアが、これまで特に嫌な顔ひとつ見せなかったのは確かだ。年長者としての面目は立ったともいえようか。
無一文ゆえに甲斐性は示せなかったのは、見ないふりをしておく。
「テサロニケ様」
「む?」
「本当に、こういう機会は無かったのです。思い切り羽根を伸ばせたのも、テサロニケ様のおかげですわ」
「……ふむ」
素直な言葉に、テサロニケの頬がにんまりと緩んだ。
「にゅふふふ、ならば良い!」
●
――よく考えるとこれってデートってことになるんじゃないか……?
ジル=クィネルはふとそう思い、傍らの"ヤコ"――御邑 都を横目に見やる。若干小柄なジルから見ても、頭一つ分は小さい都は、視線に気づくことなく、迷宮都市の光景を楽しんでいるようだ。
デートらしい浮足立った気配は感じられず、ジルはかすかに嘆息し、何時ものことかと苦笑した。きっと『月ちゃんとかとも一緒に来たいなぁー』とか考えているのだろう。
仕方がない話ではあるが、離れ離れになるのも面白くない。
「よそ見してると迷子になるぞ」
「あ~、そうだねぇー」
言いながら差し出されたジルの手に、都はふやふやと笑みを浮かべたのだった。
―・―
デートのような甘い空気への期待は捨て去っていたはず、なのだが。
「あ~ん♪」
「……!」
突如発生した状況に理解が追いつかず、ジルは硬直していた。
眼前。都がカエル肉の香草炒めを載せたスプーンをジルに差し出している。
本懐である。もちろん、往った。
「……」
「そんなに噛まなくても、飲み込めるよぉ~?」
少食な都らしく、載せられた量は少なかったが――ジルは長い時間をかけて味わっていたのだった。
●
大浴場の一角。
「う、んっ……」
ネーナはつい、甘い声を零してしまった。
探索者を相手にしているマッサージ師の手練手管に、凝った体はたちまち解されていく。筋の凝りや張りを診る手付きが既に心地よく、気持ちは昂り……ネーナは堪えきれなくなり、。
――っ。
「……あ、あれぇ?」
気付けばひとり、柔らかな寝台に寝そべっていた。
●
黒髪のハーフリング、イポクリジー・ベルクルは、今日の幸運に感謝していた。
店の前で恥じらいながら立ち止まっていたヒューマンの少女、マリヤ・バヤリッツァの隣でメニューと店の規模を眺めていたら、店内にいたゴブリンのウィルフリード・オリスが声をかけてくれたのだ。
「あんたら、冒険者か? この店はアタリだぞ」
―・―
「わあぁ……」
「……すごい食べっぷりだな、あんた」
驚嘆に長い間手を止めているマリヤに、呆れたようなウィルフリードの声に、イポクリジーはかすかに頰を朱に染めた。
「ジビエ、カエル料理…とても興味があったの」
「いや、興味ってレベルじゃないぞ……まあ、自分たちの分は残してくれてるし、いいんだが」
ウィルフリードは眼前に積み上げられた皿の数を眺めている。次から次へとメニューをさらっていくイポクリジーのご相伴を預かるのは、酒の肴として少量ずつ摂るにはちょうど良いのも事実だった。
「バヤリッツァ。あんたも食べたらどうだ?」
「はっ」
指摘されて初めて、マリヤは自身の空腹を意識した。あまりの食べっぷりにすっかり忘れていた。
「――実はわたくし、恥ずかしながらカエル料理って食べたことがないんですの……どんな味なのかしら?」
「いや、恥ずかしがることでもないが……」
「食べてからのお楽しみ」
いいとこのお嬢さん、という佇まいにウィルフリードは苦笑をしていたが、イポクリジーの発言には苦笑を深めるしかなかった。
「爪、そのまま付いているのですね……少し勇気がいりますが……」
手にとったのは、カエルの皮を剥いた足をそのまま蒸し焼きにしたものだった。薄く香りつけされたローリエが鼻腔を擽る。はふ、と。そのまま口に含むと、軽い力でほぐれていく。肉を噛むと、驚くほど柔らかく断ち切れた。
「――うまいか?」
「……意外といけますわね……」
「そりゃよかった」
思っていたよりも俗っぽい言い方に、ウィルフリードはつい破顔してしまった。
生まれも種族も違う3人は、同席の縁で会話を弾ませた後に店を出たのだが、これから露店を巡るというイポクリジーの言葉には、ウィルフリードもマリヤも閉口してしまったのだった。
●
「はーー。もっふもふ……」
リーフェは、相棒の狼、ヴェルトの背から尾を撫でながら、陽気に温められた暖かさと柔らかさを堪能していた。
露店で買い付けた食事と、食後のデザートをヴェルトとともに堪能して、長閑な休日――一応依頼の体裁ではあるのだが――を満喫していた。しばし落ち着いていると、意気が高まってきたので跳ねるようにして立ち上がる。
「よっし!」
ヴェルトがどこにくのか? というように見上げてきたので、リーフェはにっこりと笑った。
「何か、本とかないかお店を探してみようかなって。ついでに、さっきの露店のお菓子を買っていこう! いーっぱい楽しんで、しっかり日記に書き留めたいしね!」
―・―
同じ頃。
「た、食べ歩きサイコー!」
露店が立ち並ぶ大公園を歩いているハーフリングの男性が、高らかに喜びの声を上げている。
右手には多数の串焼き、左手には蜂蜜酒の入った木製のジョッキ。ほどよい塩辛さと甘い酒の組み合わせが堪らない。
はふ、もぐ、ごく。小さな口なのに、驚くほど早い。空いた串をぺっと出店の串入れに放り込み、「美味しかったよ!」と言う。ついでに蜂蜜酒のお代わりも買っておく。そうして、足を止めるでもなく歩き出す。
次の店。次の場所。行き先は未定だけれども、歩くことを留めないのは。
――これだけ人が多いんだから、もしかしたら昔の僕を知っている人がいるかなあ。
と、記憶がない身の上を憂うが故か。
「あっ」
不意に、ハガネは駆け出した。その先には――ぽつりと立つ露店と、そこから出てきたリーフェの姿があった。
「それ美味しそう! 僕にも一つ頂戴!」
――この時の朗らかなハガネの様子は、少女の日記に添えられる事となる。
●
「没食子……」
シャリアーヌ=ウルス=ロンディニオンの「水に強いインクを探している」という言葉を聞いて、店主が出してきたのは没食子のインクである。とにかく落ちない。羊皮紙に書こうものなら削り落とすしか消す方法はない。独特の書き味の悪さや、長い使用、羊皮紙以外での使用に適しているとは言い難いのは事実だが、それで有用性が損なわれるものでもない。
「勉強になりました。ありがとうございます。もう少し回ってみて、手持ちに余裕があれば、また」
「売れ残っているかは保証しませんぜ」
そんなに高いものでもないからか、店主の軽口も軽妙さがあった。シャリアーヌは頬を緩ませながら、露店や店舗めぐりに足を向けることとした。
「――世の中は大きく動き出していますが」
今は、この休息を糧にしよう、と。
●
千草色の髪を揺らしながら、アルセ・シュッツはエドゥノーグを散策していた。露店にいくとやたら酒を勧められること以外は、気楽に楽しめている。探索者やヒトの往来が多い割に、平和な街だな、というのが感想だった。
露店で買い付けた野菜スティックを食みつつ歩くこと、少し。
「く、苦しい……どこか休めるところ……」
と、明らかに街慣れしていない冒険者が、目についた。
「大丈夫ですか……?」
「わあ! これは善なるお人!」
挨拶をすると、ジェラルドと名乗った少年は、ぱちぱちに張った腹を抑えながら苦しそうだった。
「いやあ、まともなご飯を食べれたのが久しぶりでして……つい食べすぎてしまいました! あてのない身は辛いですね」
思っていたよりも重たい身の上に、アルセは若干戸惑いはしたが、思っていたよりも元気そうで安心した。
「どこか、休める場所までお手伝いしましょうか?」
「……そう、ですね。せっかくですし、甘えさせていただいて」
「その代わりと言ってはなんですが……」
「ええ! もちろん、なんでも言ってください!」
「そんなになる程に美味しかったお店の場所、教えてもらってもいいですか?」
―・―
このあと、薬草サウナに行くのだというジェラルドと別れたアルセは、すぐにその店に向かった。
人の縁と食の縁。両方を繋いだ一日に、深い満足を得た。
●
ロイ・アウレアは、恋人であるテス・クラルスとエドゥノーグの商店を眺め歩いていた。
二人ともにエルフであり、同郷である。付き合いは四十年を超えるがまだまだ恋人同士、という空気が残る。
「なんかこう、ふわふわでふかふかの寝心地の良さそうなのは売ってないかな?」
「……寝具しか興味ないのか」
調度品を見るつもりだったが、テスはクッションやラグに夢中だった。
「荷物番をしているから、見ておいで」
「任せておくれ」
ふふり、と進み出すテスの後ろ姿が見えなくなるまで、ロイは見送った。
そこで。
あるものを、見つけた。
―・―
夜も更けてきた。最高の寝具選びも終え、さすがに二人共に疲労の色が見える。
「凄く買ったなあ……」
ロイが感嘆していると、ねえ、と呼びかけられた。
「手を出して?」
ロイは特にためらうことなく、手を差し出した。ひんやりとしたテスの手の感触を感じ――気づけば、青の貴石をたたえた指輪がはめられていた。
「うん、やっぱり似合うね」
「……ありがとう。一人で仕事の時はこれを見て頑張るよ」
柔和に微笑むテスに、ロイは堪え切れずに、
「本当は、こちらから、と思っていたのだけれど……」
と、組紐の髪飾りを取り出すロイに、テスのかんばせがみるみるうちに紅潮していく。
「……ありがとう」
何ものにもかえがたい幸せな一時であった。
●
「俺の故郷はもっと西側、帝国との国境付近になるんだけど、まあ、このあたりのことも分かるよ」
というイズル・M・ヴォルゴールの先導のもと、下宿人であるエフィルミアとヘレン・ワーグナーは迷宮都市を味わいに来たのである、が。
―・―
「エフィルミアもイズルも……よくそんなに食べれるねー……」
呻くヘレンの前には、ずらりと並べられたモモ肉の揚げものたち。細かく挽いた小麦粉をまぶして特別な窯で蒸し焼きにし、特製のスパイスソースが絡められたそれは、「味は良いが見た目がエグい」というイズルの案内通りの見た目だった。
この店が提供するモモ肉は足関節を落としていない爪付きだった。よく言えば野性的。
「私はこっちのお魚が好きですね! 見たことがないですけど……」
「それも迷宮産だな。うちの店で出すのは難しそうだ……あ。ついでにワニ肉というのもあってな……と。どうしたヘレン。食べないのか?」
「……どうぞ」
エフィルミア、イズルの両名が見た目を気にせずに食しているように見え、ヘレンはジト目になる。
「イズルさんはともかく、私は酒場の店員としての仕事の一貫ですからね!?」
「……いや、俺も別に好きというわけではないが」
イズルの反論は、とくに聞き入れられなかった。
―・―
酒が進んで来た頃、エフィルミアが、
「あの!」
と、声を張った。イズルは静かに、ヘレンは眠り眼を眩しげに細めて、少女を見る。
「これまでタイミングが合わずにさん付けで敬語のままきちゃいましたけど! 本当は私、エレンちゃんとイズルくんって呼びたいんです……」
「エフィがそう呼びたければそう呼べばいいよー……」
「ああ、俺も構わない」
二人の返事に、やった! と、喝采が上がる。
「これからもよろしくね! ヘレンちゃん、イズルくん!」
●
大浴場を前にしてアンゼリカ・ミケーレ・ラディーチェは、その豊かな胸をときめかせていた。
だから、つい。
「ここで美しさに磨きをかけてイケメンを爆釣りなのだわ! さっ、アヴェラ! しっかりアンゼリカを磨いてちょうだい! タオルは絹がいいのだわ!」
と、アヴェラ・ウッチェロの名を呼んでしまった。
「ええ」
アンゼリカの声に思わず身体が反応したのは、アヴェラも同様で。アンゼリカのきれいな背中を眺めながら、思う。
二人はもう、主従ではない。
それでも、アンゼリカにはアヴェラしかいない。
そのことは、アヴェラ自身もよく分かっているのだ。
――……アンゼリカを依存させて、私も依存してしまうのは、ダメね……。
だから。
「洗ってほしい? 私、メイドとして優秀なので高いわよ」
「はっ……アヴェラのばかっ!」
「ふふ、やり方と注意点は教えてあげるわ」
何故か手もとの手入れだけは特に念入りに指導を受けたアンゼリカは、身体を洗いながらも後悔に囚われていた。
アンゼリカはもう、独りで頑張らなくてはならないのに、頼ること依存をやめられない。
今も、そうだ。
「上がったら、マッサージでも一緒に受けましょう?」
「……そうね!」
――せめてもの強がりとともに、アヴェラの助け舟を受け容れた。
―・―
この日のマッサージはとても心地よかったが、イケメンは釣れなかった。
●
エルフの女性、レナ・フォルトゥスとネズミのハーフビーストのパティ・ポップは、共に同じ騎士団に所属する仲間でもある。
二人はたまたま、大浴場で鉢合わせしたのだった。
ならば一緒に、と共に女湯に足を向けたところで、"それ"を見つけた。
―・―
ミルカ=ルシカはハーフビーストの少女である。華奢な身体に、桃色の猫耳が映える。
宿屋で昼寝をしていたら掃除のために追い出され、それならば温泉でゆっくりしようと思い、足を向けた。
「ふあ〜あぁ……寝たりないぞ……」
眠たげな目をこすりながら、全裸で浴場をぺたぺたと歩く。作法は身についているのか、きっちりと身体を清め、特に汚れやすい尾と耳、それから髪を洗い終えると、これまたぺたぺたと湯船へと向かい、身を沈めた。
ふわぁ、と。吐息ともあくびともつかぬ息がこぼれた。
「……体が蕩けそうだぞ……」
―・―
「……ねえ、パティ。あの方は、どうなっているのかしら……?」
「溺れ死んでるんじゃないでちゅか?」
二人が見やった浴槽に、仰向けでぷかりと浮かんだ少女がいた。よく見れば鼻先だけが辛うじて浮かんでいるのだが、ぱっと見ではそうとは思えない。
二人が駆け寄り、声を掛けた際にはじめて溺れ、騒ぎとなるのだが、それはまた別のお話である。
●
「なんじゃ、騒がしいのぅ」
「ほんとだねぇ」
湯を堪能していたハーフリングのエリクシア・クロイツが不意に騒がしくなった方角を眺めながら言うと、返事があった。ちら、と見ると、好奇心に満ちた眼差し。
「私、アリエッタ。よろしくね! 見てのとおりの猫のハーフビーストよ。あなたは?」
「うむ。わしはエクリシア・クロイツじゃ。おぬしは……ここは初めてか?」
「えっ!? どうして分かるの?」
「ふふん、簡単な推理じゃよ。秘密じゃがな」
――なんのことはない、大浴場が初めてのエリクシアが付いていったのが、アリエッタというだけの話である。おっかなびっくりあれこれに接するアリエッタを参考にして作法を見聞していたのだ。
後医は名医というが、エリクシアの泰然とした振る舞いはそれに近い。
「へええ……クロイツさんはすごいのね……」
タオルを頭に乗せた少女の姿で、思いもよらぬ洞察を見せたことに、アリエッタは目を丸くしている。大人びて見られたいエリクシアとしては、大層気分がいいことであった。
すると。
「ねえ、クロイツさん」
「うん?」
「……よかったら、お友達にならない?」
そんな直球な友情の表れに、エリクシアは思わず頬を赤らめてしまった。
返事は――、さて。
●
ギド・フェルミは艷やかな髪を結い上げて、身体を洗っている。通りがかりの男性がぎょっと目を剥いているのは、ギドの容姿ゆえであろう。
「やっぱりもう少し、対策をすべきだったな……」
とはいえ、気にしているのは過日の依頼で汚れた身を嘆いてのことだった。放置しすぎたせいかなかなか落ちず、湯に浸かることができない。ぐぬぬ、と呻いていると、「はふぁ〜〜〜」という声とともに、隣に一人のハーフビーストが駆け込んできた。アルテ・ルナフィニスだ。
ギドが言えた義理ではないが、めちゃめちゃに少女的な風貌である。しれっと天眼で確認したが、男性であった。確か、一度だけ依頼で同行したことがある。あの時もタダ飯だったなあ。などと思っていると、声をかけられた。
「ずっと洗ってるんだね?」
「……そうだな。おかげで湯にも浸かれなくてな」
「それなら……」
つ、と指差した先には、木製の扉。
「サウナとか、どうー?」
「……お!」
このまま黙々と洗い続けるのにも飽いていたところだ。温めたら落ちやすくなるかもしれない。
尤も。
「ふぉぉぉぉぉお……」
「むむむ……っ」
好戦的なアルテの視線につい応じてしまった結果、サウナで我慢大会が発生してしまった。しばらく身体を洗うどころではなくなったのだが……それはそれ、である。
●
「お、お姉ちゃん、か、カエルなんて食べるの……?」
「ええ? だってお勧めらしいよ! 食べなきゃ損じゃない?」
食事処の入り口、メニューを眺めていた少女たちのやり取りである。
鏡に写したようにそっくりな少女、ラミ・トゥルーとミラ・トゥルー。
「……わ、わたしは普通にお魚と貝料理にするね……」
「うん! 行こう! どんな味がするのかなー……分けてあげよっか?」
「いらない……」
―・―
「いらないっていったのに……」
「食べきれなかったんだもん……」
「それは、お姉ちゃんが美味しそうっていってわたしのも食べたからでしょ……?」
「それはそれー、えへへ」
はあ。と。ラミのため息が空間に響いていく。食事処から浴場へと足を運んだ二人。ラミの監視のもとしっかりと身体を清めた後、仲良く肩を並べて湯船につかっている。小柄な二人、距離の近さも相まって二人並んでようやく一人分。
「たまにはこうやってゆっくりするのもいいねー……」
とミラが言えば、
「そうだね……」
と、ラミが言う。
「今度はミラと迷宮に行きたいなー」
「……いいけどカエル料理はもういやかな……」
「美味しかったのにー?」
「……それはそれ……」
――双子はこうして、ゆったりした時間を過ごしたのであった。
●
「なんだ、シグモル火山の絵じゃねえのか」
アランチャ・ジラソーレは周囲を見渡して、望みの絵が無いことに少しばかりの落胆を滲ませた。
シグモル火山帯出身のレスラーの母親を持つ彼にとって、温泉とは即ち火山帯なのだった。
―・―
アランチャは男湯でじっと熱い湯に耐える。数ある湯のなかでも最も熱い浴槽である。
隣では、先に入っていた褐色肌のエルフがいた。長い髪の毛を結い上げているし、大層美しい顔立ちなのだが、男性であった。
確認済みである。アズラクと名乗った。
「人はすごいね……人工物との共存方法や、考え方がユニークだ」
「そんなもんかあ?」
「ああ、俺にとってはね」
と、感慨深げに言うエルフに、アランチャはそういう楽しみ方もあるのか、と唸る。
「基本的に、俺が住んでいた集落は水浴びが中心だったからね……いやあ、これは、良いな」
「それは同感だな」
湯の温度が馴染んでくると、浮遊感に似た心地よさを感じてくる。
ほどよく味わったところで、ざばりと上がり、ついでとばかりにアズラクへと声をかけた。
「俺のオススメは湯上がりに飲む牛乳でな。よかったら一緒にどうだ?」
「おお。是非もないな……っと、……っ?」
上がろうとして、たまらず転びかけたアズラクの身体を支える。
身体から噎せ返るほどの、熱。
「ううう……これは、……何かの呪い……か……」
「のぼせてんだよ! 担ぐぞ!」
アランチャはアズラクの腰元にしっかりタオルを巻きつけたのち、肩に担ぎ上げて脱衣場へと急いだのだった。
●
ずああ、と。中年じみた声をあげて、ディレイン・オールドケイジは湯船の縁に後頭部を乗せ、全身を弛緩させていく。ああ、ともう一つ、感嘆を零す。これだ。こういう時間がいい。
混浴であった。案外そちらのほうが空いているのではという思いつきであったが、存外あたったらしい。
まあ。先客はいたし、なんならうら若き男女たちのような気もするのだが、ディレイン自身には他意はない。ただ、温泉を心のままに楽しみたいだけだ。
「ふぁ……」
ディレインはのんびりと、湯の心地よさにひたっていた。
―・―
少し、遡ろう。
もうもうたる湯けむりの中、百鬼 朱羅は湯の心地よさを味わいながら馴染みの姉弟たちの様子を眺めて、微かな笑みを零す。
――こうして眺めていると、弟御達の性根の良さが分かりますわね。
眼前。朱羅の傍らで同じように温泉を堪能している桃武・侑芽は、ハーフビーストの特徴である大きな耳と尾を弛緩させている。
直前まで、足湯にフットケア、全身のマッサージにスキンケアと、弟たちの手によってこの場で出来るあらゆるケアを受けた侑芽の肌はかつて無いほどに艶めいている。
「お疲れだったのですね」
「……そうね。引っ越しだったり色々忙しかったし。とはいえ、二人だって忙しかったはずなんだけどなぁ」
「姉思い、ということでしょうね」
「うん……」
侑芽の弟である桃武・侑飛と桃武・侑輝は、姉のケアに従事した結果、彼ら自身の準備が出来ておらず入浴に至っていない。侑芽が次は私が世話をする番だ! と息巻いたところで、
『すっかり忘れてたなあ! まあ姉ちゃんは先に休んでてよ! 姐ちゃん大浴場が一番楽でしょ?』
と、タオルで隠された姉の胸を指しながら悪びれなく言う侑飛に、姉よりも侑輝が真っ先に顔を赤らめている。
『じゃ! ユウキ、背中流してくれない?』
『……ひー兄は本当……わかったよ』
『というわけで!』
と二人から押し切られてしまった。
「あの子達も年頃、なんだけどなあ……」
「家族の情、の範疇だとは思いますわ。私にも弟が居れば、こんな感じなのでしょうか?」
「どうだろう。百鬼さんは私みたいに流されたりはしないから、もっとしっかり、節度ある感じになりそうだけど……」
正直なところ、弟二人の情操教育には全く自信が持てない侑芽であった。
―・―
――……姉とはいえ刺激が……兄貴、よく平気だよな……。
と、上機嫌な侑飛の背を流し、兄の長い髪を洗いながら、侑輝は赤らむ顔を抑えることができなかった。たっぷりとしたケアは、姉を労う一心でなんとかなったけれども。
――こ、これが終わったら、一緒の……湯……。
「ユウキ……?」
いつしか手が止まっていた侑輝の様子に気づいた侑飛が振り返ると、
「どわわわっ!? ちょっとユウキ!」
「湯……」
姉と同湯の刺激に耐えきれなかった侑輝の両鼻から、だくだくと鼻血が落ちていた。
結局、侑輝は夕飯どころの確保に注力することとして、混浴からリタイアした。
その日の夕餉、桃武家では話のタネになったとか、ならなかったとか――。
●
大公園、というだけあって、細部まで行き届いた手入れにコルネリウス・アーラは感嘆していた。歩いているうちに、この公園の管理者が意図しているであろう順路を見出したレオナルド・ピーフォウルは、コルネリウスが管理している花鳥園の縁で同道してくれた。
「いやあ、見事な差配、配置だなあ!」
ともすればコルネリウス以上に楽しげなレオナルドの様子に、コルネリウスのかんばせには自然と笑みが浮かぶ。もっとも、彼女自身も植えられた草花そのものや、その管理のための工夫の跡のほうに目がいっているのだから、同穴である。
―・―
二人で気づいたこと、心に留まったことを意見交換しよう、という段になると、
「私は……草花の名前の特徴が案内されていることが面白かったですね。調べても見つからないことが多いですし」
「たしかにそうだね。僕は建物と植生の見目の調和はとても気にいったなあ……」
それから、それから、と。言葉を交わす度に、新しい発見や共感が深まっていく。そうこうしているうちに、コルネリウスの紙はメモ書きでいっぱいになってしまった。
「……どうしましょう、書ききれませんね」
コルネリウスの言葉に、レオナルドは大きく頷き、
「何度でも来たらいいさ。きっとその度に、新しい発見があるはずだ」
その言葉をじっくりと味わうように、少女は目を伏せる。
「……ええ、そうですね。また、来ましょう」
と、大事そうにメモ書きを鞄に仕舞った。
●
セレネ・ヴァーミリオンにとって、エドゥノーグの露店は小粒の商売ではあるのだが、冒険者の目線で見ると、その目を楽しませるには足るものであった。
素材は思っていたよりも売りに出されておらず、掘り出し物といえるものは無かった。探索者が市場に流した素材はこういった露店で売りに出される機会は殆ど無く、よその都市へと巡っていくものだと聞いて腑に落ちた。
というわけで、楽しめたのは――食という観点での話となる。
「はぐ、はふ……」
出歩きながら、多様なカエル料理が有ることに気づいたセレネは、露店をめぐりながら、それらを制覇することにした。
次のチャンスがある――というのは確かだが、無料の機会はそう訪れるものではあるまい。
「……あ、おじさん。それも一つもらえるかな?」
●
迷宮探索などに興味はなかったシャルロット・ド・オーシュ。
料理屋のあてもあるのだが、一人で、というのも物足りない。
ゲルダ・クラインを見つけたのは、そんな時のことだった。
―・―
――シャルロット様のことは、存じ上げてはいましたが。
商家の生まれであるゲルダからすれば、高き生まれの才媛は、パンクリアース学園の同門であること踏まえても縁遠い人物だ。
シャルロットもこの街は初めてとのことだが、世間ずれしていないゲルダに対し、丁寧に説明してくれる。
――なんて素敵で、優秀な方なんでしょう。
直向きな憧憬が、少女の裡に芽生えていた。
―・―
「カ、カエルさん……?」
――良い子すぎて、あの学園だと苦労しそうね。
目当ての店にたどり着き、メニューの内容に硬直するゲルダを眺め見ての感想は、とりあえず胸の内に秘めておく。
「知らなかったのね」
「え、ええ」
「味見するのに一皿全部食べる必要も無いし、分けて食べましょ」
目を瞬かせるゲルダにそう言ったが。
「いえ……頂きます」
強い決意を湛えた返事であった。
―・―
「おい、しい……」
ほろり、と溶ける肉質は、シャルロットにとってもそれなりと言っていい。つまりは上出来、ということである。
「……話の種にはなりそうね」
「ええ! ありがとうございます、シャルロット様」
真っ直ぐな視線がどこか、くすぐったくて。
「……いいのよ、ついでだから」
と、視線をそらしてしまった。
●
「今日くらいはアタシのわがままを聞いてもらうからね!」
と言い放ったエリザ・A・ミシャールに、夫であるガルレイド・S・グリディッカーは実に素直なものだった。
「何でも付き合うさ」
わがまま、と自ら言い放つ妻に愛らしさを抱く程度には情はある。まあ、数年単位で放っておいたという負い目も――ないではないのだが。
ガルレイドの腕に組み付くようにして離れないエリザは、目についた露店や商店に立ち寄り続ける。露店を制覇しかねないぐらいの矢継ぎ早に、さしものガルレイドも苦笑した。
「そう急かさんでもな」
「……おや、前言撤回かい?」
と、勇ましい見目の割に、こういうことをする。数年来の寂しさが彼女をこうも素直にさせているのだと思うと、留めるのも薄情か。
「……いや。付き合うとも。たとえ腹がはち切れようともな」
「そうこなくちゃね!」
二人ともに、長く顔を合わせていないこともあり、話すネタはそれこそ山ほどある。
――けれど、それを話すのは今日この時でなくてもいいだろう。
慌ただしいが、新しい思い出をつくる、というものの得難さを思い出した心地だった。
「お。あの出店はよさそうだな」
とガルレイドが言えば、「どれだい?」とエリザが言う。円熟の夫婦というよりは、恋人らしい仕草であった。
――夜が深まっても、なお。
二人は、この街でのわずかな一時を味わい尽くしたのである。
●
「……ふぅ」
湯に浸かるにいたり、思わず、声が溢れた。Sidurgu・Yul。壮年に差し掛かりつつある肉体は正直なもので、滋養を前に為すすべもなく弛緩していく。
ヒトが混む時間を避けたためか、湯船は独占状態である。一部のハーフビーストのさがであるが、尾の毛、毛髪ともに毛量の多いYulはこういう場で自ずと周囲に配慮するようになっていた。
「……はぁ……」
尾が潰れぬよう、うつ伏せになり、満喫することしばし。遠くから聞こえてきた声に、Yulは頬を緩ませ、くつくつと笑う。
「……若いのは元気だなあ」
―・―
「たかーーーーーい! きれい〜〜だな〜〜〜〜♪」
探索者ギルドが入った塔を前に、堪えきれなかった。ツェウェル・トヤー。山羊のハーフビーストの少女はいま、ご機嫌に歌っている。
外壁を登る少女の姿と歌声に、尖塔の下には多数の人だかりが出来ている。お昼時でもあり、手には露店で供される野菜料理や串焼きを手にしている者もいる。
「ひとが~たくさん〜! わ〜〜あれおいしそう~!」
歌いながら、不安定な外壁をずずい、と登っていく。窓枠に脚を掛けて小休止し、その度にあがる歓声を浴びながら、トヤーは陽気に登攀に勤しむのであった。
●
「うおおおおおおお!!」
広々とした公園に、気勢が上がる。妹――ハイティー・ソルマーニのはしゃぎっぷりに、スコール・ソルマーニは瞑目していた。ピクニックの提案により、迷宮行きをようやく思いとどまった妹だ。その体力が有り余っているのだから、予想できたことでもある。
「さぁ来いサラダ! 今日こそ決着をつける! スコルちゃんのお膝は! 私のもの!!」
と、スコールの飼い猫であるサラダを猛追し始めた。サラダは鳴き声をあげながら逃げ出したが、スコールは一度離された距離を的確に詰めていく。
――仕方ないわね。
と、見送りながら、シートと荷物の整理をしはじめたスコールであったが……。
転瞬。その右手が霞んだ。そうして、音もなく放たれた石礫が、ハイティーの足元を貫く――!
「うわ……っ!」
瞬前。
奇襲の気配を明敏に察知したハイティーは跳躍を選び、姉からの奇襲を避けつつサラダを捕まえるという軽業を見せた。「やったー!」と喜びの声をあげている妹に、姉は微苦笑を零すほかなかった。
―・―
勝利の栄光を手にした妹は、「スコルちゃんー!」と黄色い声をあげながら、すり寄ってきた。すんすんと匂いをかぎながら、
「おちつくのー……」
あっという間に、眠りに落ちた。
ただただ静かな時間、というのは、姉妹にとっては久しくなかったかもしれない。
落ち着く間も、無かったということかしら、などと。
スコールは、ハイティーの寝顔をくすぐりながら、そんなことを思っていた。
●
「ここが噂の迷宮都市なのね」
大公園に注ぐ日差しを浴びながら、ルスト・ブレイズリーは青色の瞳を柔らかく細めた。雑多で開放的な空気は、彼女の肌に馴染んでいる。
手には串焼きと木製のジョッキ。前者はカエル肉と一口大に切った色とりどりの野菜を麦味噌にソースと香草からなる味噌ダレで焼き絡めたもので、後者はシャルガネ居住区から仕入れたという米酒である。物珍しさで、つい手が伸びてしまった。
「さて。このあとは大浴場でもいくとして……あら?」
「われの食べとるもんも美味そうじゃのぉ。それどこに売っておった?」
眼前、熊のような大男がいた。黒々とした体毛が豊かな男の名は、ジョン・ベアーという。
――カエルを食うのか、これは、……いや、まぁ食えるか!
と、通りすがりの出店の前で声をあげていたから、その風体も相まってルストの記憶にも残っている。
手には大量のカエルの揚げ肉と骨を携えている。きれいにしゃぶりあげた骨は身一つ残っていない。
「一つ前の通りを右に曲がった先ね。店の前に米酒って書いているからすぐ分かるわよ」
「!! ほうほう!! 感謝!!」
礼を言うなり駆け出していったジョンの後ろ姿を見送って、これも観光の醍醐味ね、と笑みを深めた。
「行きましたか……?」
生け垣に身を隠していた諸星・ユウは身を乗り出した。
「飯ィ〜〜〜!」と走ってくる熊っぽいハーフビーストの顔と身体と勢いの圧が凄まじく、思わず隠れてしまったのだ。
何事もなく通り過ぎたのを確認して、近くのベンチに腰を下ろす。昼食時、日が高くても日陰になるように配置されているようだった。見れば、きれいに敷き詰められた芝生では、銀髪のエルフ――キャル・イルセインという名の少女である――が読書をしている。生け垣を抜ける風通しが良いのか、涼しげな光景だった。
――迷宮に挑む人々にとっての憩いの場所として整備されているのでしょうか?
となると不意に、興味を覚えた。公園に込められた配慮を探すのもいいかもしれない。
「……もう少し、見て回りましょうか」
●
「刺し身!」
「ヘイ」
アーノルドが探し求めた末にたどり着いたのは、カエルの刺し身、であった。シャルガネ風料理屋のこの店のカエルは、『虫』がでないのが謳い文句。
期待に胸をふくらませて、まずはそのままでいただく。肉質は小ぶりな鳥に近いが、肉臭さは少ない。塩や味噌、シャルガネ製の醤油が皿に盛り付けられているものを順番に味わっていく。味の変化は留まるところを知らず、アーノルドの表情もコロコロと変わっていく。
はふ、と、甘美な吐息がこぼれた。
「ゴチソウ食べてのーんびり出来るなんて、幸せダー……」
ほう、と。吐息をこぼす少女が一人。
「まこと悲しいですの……ぼっち……ぼっち旅……」
スパラヴェドノストゥは、カエルの刺し身をつつきながら零す。たしかに美味しい。美味しいのだけど、物足りないのは――決して、味だけではなくて。
「迷宮に"悪"でもいたら違ったはずですの……」
と、いじけているが、実際のところは食欲が勝っただけのことであり。
「へい、お待ち!」
「!」
目の前に置かれた土鍋からあがる、もうもうたる湯気を前にして――やはりと言うべきか、感傷は吹き飛んでいた。
「こ、これもカエルですの……!?」
「シャルガネ風炊き込みご飯……身が固くなりすぎないよう、別々に仕上げるのがミソでさあ」
「……正義……」
●
ドリームロードの一角。ニール・ロブラリアは、
「がぶ」
カエルの丸焼き、その頭部に小さな口で挑んでいた。店主が「そこは食えんぞ!」と言われた頃には時すでに遅し。
「あば……」
硬さもさることながら小骨のような棘があって痛い。おとなしく身を食べると、ほろほろとほぐれた身は滋味がある。
「これくらいの味付けならあげられるかな……?」
物欲しげな狼に、少量の肉をあげると、嬉しげに尾を振っている。
「次は迷宮でも見に行こう」
と狼に告げて、外へ出たのだが。
――露店を回っている間に夕暮れになってしまった。
「こういう冒険も、いいよね。もぐもぐ」
●
路地裏でゴミ箱を漁っていたリザードマンのニャミニャミは、行きがかりにそれを見かねたジェラール・デュランに声をかけられた。生まれもあり最初は警戒していたニャミニャミであったが、ジェラールは無表情なだけの面倒見のいい人物だと分かってからはご機嫌である。
「せっかくの厚意を無駄にするのも悪いしな」
「……タダで食べられるのか!」
店内で落ち着くにはニャミニャミの『香り』がそぐわないと判断し、持ち帰りが可能な店をジェラールが地元の人間に聞いては、それらを巡っている。
「……姿が見えるのは抵抗がある、な」
新鮮さを売りにする店では客の目の前で捌き、火にかけたり湯通しすることが多い。皮剥ぎ・包丁さばきは見応えがあるが、断末魔や風貌がジェラールにはどうにも落ち着かない。ただ、味はいい。香草を使っていないものでも、思っていたよりも臭みがない。
「ニャミはダイジョブだぞ! ホロホロのスープも美味い! ケドカリカリにヤケたのも美味い!!」
「へへ、ありがとよ」
長い毛髪を有するニャミニャミの表情は伺えないが、とても楽しげだ。その光景を眺めながら、ジェラールは次の店のあてを探すことにする。通りすがりではあるが、これだけ喜んでくれるのであれば、やりがいも深かった。
●
桃色の体毛が目にも鮮やかな兎のハーフビーストの女性、イーヤ・レプリスは、夜のエドゥノーグを散策していた。探索者らしい男性の右腕にしなだれかかるようにして、たおやかに微笑む様は、恋人同士のよう。
行きずりの関係であるが。まあ、それはさておき。
「それじゃあ、この催しはめったに無いことなのね」
「ああ。アンタみたいにいい女と知り合えるなら毎日でもやってほしいね」
「ふふ。お上手ね」
短い逢瀬の中でイーヤは探索者の心を掴んだらしい。
道中に奢ってもらった品々を思い返すこと、しばし。
「ねえ、私、歩き疲れちゃった」
と、探索者の耳元で甘く囁き――エドゥノーグの夜の闇へと消えていった。
●
夜のエドゥノーグ。店舗の照明に備え付けの紋具照明が街の輪郭を描き出す。人通りがそこに複雑な影と光の紋様を生む。
「っわぁぁ……! 人も、街も。夜がこんなに明るいですよ……!」
ドリームロードの中央に立ち、真っ向から通りを見やったハーフビーストの少年、ラセリ=リエ―ブルの感嘆の声と後ろ姿に、マリア・C・クロードはつい、微笑みを浮かべてしまう。知らない街の、夜。少女としては思うところもあるけれど、それ以上に幼馴染の喜ぶ姿は、彼女の心を落ち着かせてくれる。
「そうですね。本当に凄い人……」
応じながら、マリアは通りを眺め、向かう先を確認する。今日は、街に不慣れなラセリの案内役も兼ねているのだ。閑静な場所を求めて、夜の大公園を歩こうか、と考えている。
「それじゃあ、あっちに行ってみましょう」
「あっ」
行き先を示しながらかけた言葉に、焦るような声が返った。
すぐに、マリアの右手が熱に包まれる。少しだけ、マリアのそれより大きな手。
「……は、離れると、危ないですし!」
「…………ええ」
マリアはすこしの間だけ、その暖かさを確かめて。
そうして、微笑んだ。
「しっかり守って。騎士様」
●
「いやー! 無料でこの都市を味わう! いい言葉ですね!」
リコッタ・プルリアータの爽やかな声が公園に響く。眼前には屋台と、ずらりと積み上がった肉塊と調味料たちと串。
「場所代タダ! まあ売上もタダなんですけど……それはエドゥノーグの商人ギルドから十分なお賃金が出るらしいのでヨシ!」
立ち並ぶ屋台の中にしれっと屋台を組み上げたのは『パッカード牧場』の関係者たちである。リコッタの眼前ではティール・クラリオンが野菜や肉を切っては串に刺して小麦粉を軽くまぶして壺に入ったタレに漬け込み、十分漬け込んだ串を順に熱した鉄板に載せていく。そうして、手が空いたら引き伸ばした生地をフライパンに置く。
「こ、こうですか……!」
「上手上手! どんどんお願いします!」
迷宮探索に誘われたかと思いきや出店担当と聞いたときは愕然としていたティール少年だが、根の素直さ故か、前向きに取り組んでいる。肉と野菜を切りナン生地の下拵えをしては焼いて味付け――と目まぐるしいことこの上ない。
「ケバブー、ケバブだよー。いろんな人に食べてもらえると嬉しいなぁーん♪」
と、客寄せをしているアルパカのハーフビーストのアルル・パッカードの暢気な声色とは裏腹に、ティールの仕事ぶりは鬼気迫るものがある。
――くっ、つまみ食いをする暇もない! けど、これも騎士修行の一環だと思って……!!
などと思っていた頃。
「あら、美味しそうね!」
立ち寄ったエルフの女性――メイジー・ブラウンが、興味深そうに言う。おっとりした口調だが、食べ物だけでなく、活気ある三人の若者にも楽しげな視線を向けている。
「これは? ケバブって言うの? ……素敵! おひとつ頂戴な」
「お買い上げありがとー! 隠し味にりっこが作った、羊のミルク製チーズが入れてあってとっても美味しいんだよー」
「あらあら、そうなのね。……うふふ、これって食べる時にお作法とかはあるかしら?」
「がぶーっていっていいんだよー」
「そうなのね! はふ……美味しい!」
ころころとよく笑うエルフの姿に、アルルの顔もほころんでいく。
「ところで、あなた達も冒険者なの? 私はメイジー。あなた達のお名前を聞いてもいいかしら?」
―・―
そんな光景を視界におさめながら、ユゥラ=フォンははふとあくびをひとつ零し、目を細める。
「……いいてんき……そら、きれい」
ベンチに座ったまま、パッカード牧場の面々や、そこに立ち寄るご同業たちの姿を眺めては、手元の紙にさらさらとスケッチしていく。
知らない誰かとの交歓は苦手だが、こうして眺めるのは、嫌いじゃない。
「……しあわせは、いいこと」
いつかは、とは思うけれど。今はそれを眺めるだけでも、十分だった。
が。
「……はっ?!」
「っ!」
ふと、後方から声がしたことに驚いてしまい、手元のペンが乱れてしまったのだった。
―・―
「……はっ?!」
アルム=ラントは犬のハーフビーストである。背丈も190cmを超える。芝生と日差しの心地よさに、身を横たえた記憶はあるが、そのまま寝てしまっていたらしい。
「いや〜……寝すぎたな……」
普段は丁寧な口調を心がけているが、一人となれば気楽なものだった。ふぁ、と大口をあけてあくびをしながら、背中や頭を掻いて草を落とす。誰かが駆け出した気配があるが、まあ、さっきまで寝ていた自分には関係ないだろう。
「んー……いい匂いだなー。もうそんな時間か」
匂いの元を辿ると、どうやら繁盛している店があるらしい。羊肉が焼けるどこか甘さを含んだ香りに、空腹を自覚した。今日一日、食っちゃ寝しかしていないな、と苦笑しながら、と思いつつも、立ち上がる。
「よし……いくか!」
●
「ねぇ、アステル。知ってた? 彩溢れるモノは、心の栄養になるんだよ」
「心の栄養……はいっ! 色んな輝き、いっぱい心にしまいますの!」
夜のエドゥノーグ。遠くまで連なる街頭や人々が織りなす風景を視界に収めながらのキオルティス――最愛の兄の言葉に、アステルは声を弾ませた。
「夜の街は少しばかり昼間と顔つきが違うと思わないかい? 華やかで、きらきらとしていて……まるでアステルの瞳のようだね」
「太陽が見える見えないかでとっても違うと思いますです……ふふ、キラキラの瞳は、にーさまと一緒の私の大の自慢ですの♪」
離れていた時間を埋めるように、キオルティスは大いに妹を慈しんだ。妹もまた、共に在る一時と兄の言葉、そこに込められた親愛を受け止めていた。
「……ほら。妹姫にお兄ちゃんから贈り物、だよ」
「……わっ! 嬉しいな~……」
兄から差し出されたのは、ガラスビーズの首飾り。夜の街を包む柔らかな光の中、それは満天の空のように煌めきを放っているように見え――アステルは、しばし、言葉を失っていた。
けれど。
「……あ、にーさま、あっちに美味しそうなお店がありますの。行ってみましょうですの!」
「おお、そうだね。行こうか……おいおい、そんなに急がないでくれよ!」
色気より食い気かな、と苦笑する兄を置き去りに、アステルは人混みの中を走りながら、「はやくー!」と声を張る少女の頬には、朱色が注がれているようだった。
●
面白そうな子を見つけた、というのが理由だった。
「あら、迷宮都市は初めて? 良いお店、案内しましょうか?」
キャロル・エタームは、彼方此方を眺めては――特に店選びで――懊悩しているハーフビーストの女性を見かけて、そう声をかけた。ジゼル・ベルティエは両の目をぱちくりとさせていたが、
「えっ! いいんですか!」
と、前のめりになってそれに応じた。
―・―
「……優勝!」
ごくごく微量垂らされた魚醤の旨味と、濃厚な香りと、スキレットで熱された迷宮由来の巻き貝のコンビネーションに、ジゼルは知らず拳を掲げていた。残る生臭さも合わせて飲み下す。
キャロルもまた、それらの綯い交ぜになった香りと味を楽しんでいる。年の頃は同じぐらいだが、キャロルは食に対する姿勢からか、年齢差以上に年上に見える。
「もうちょっと食いでがあるほうがいいかしら?」
「……実は、エターム君に声を掛けられるまでにあれこれ食べてたんですよね。美味しいのをちょっと、も大歓迎!」
「ふふ……それじゃあ、これなんかもオススメよ」
と、葉物野菜の浅漬と、肝の煮付けがそれぞれ盛られた皿を差し出すキャロル。
「……はぁ〜、これがタダって申し訳ない気もしますね……」
と、少しだけ上目遣いに店主を見上げたジゼルであったが。
まぁ、と言いつつ、皿を手元に引き寄せ、にっこりと頬を緩ませた。
「出世払いということで! いただきまーす!」
●
「おや」
往来を歩いていたライラ・ペトラルカは、ふと耳に触れた調べに引き寄せられるように、とある店にたどり着いた。
やけに情の籠った演奏をするじゃないか、と。
―・―
探索者が多くを占める店内の喧噪に、奏楽の調べが満ちている。
奏者はハーフビーストの青年であった。
その曲は、探索者の肌に馴染んでいるであろう昏さから始まった。粘る湿気。緊張――それらを突き抜けていく栄華への願いと、血を支払わんとする蛮勇。エオリアンの旋律が儚さと力強さを拾い上げ、描き出す。
探索者はじきに、街に帰るのだろう。余韻を残すアルペジオの段になると、客はその終わりを待ちかねるように息を飲み――堪えきれぬように、喝采が弾けた。
―・―
「俺はみてたぞ! こいつ、店主に『実力で黙らせるよ』なんて言いやがったんだぜ!」
という客の絡みを気にも留めずにエールで喉を潤すキュリアス=バルドゥのもとに、一人のエルフが立ち寄った。ライラである。使い込まれた竪琴を見て、キュリアスは目を細めた。
「やあ、素晴らしい演奏だったね!」
「どうも。君も、楽士なのかい?」
「ああ。かなり、やるよ」
ライラは探るような目線と言葉に怖じることなく言い切り、ジョッキを掲げる。応答に、キュリアスは頬を吊り上げるように笑った。ライラはそんなキュリアスの瞳を覗くようにして、こう言った。
「君のような演奏家と話してみたかったんだ。良かったら、どうだい?」
「確かに。楽しそうだね」
―・―
そんな、才気ある二人の様を遠く眺めながら、同じ店内の隅で一人座るヒューマンの男、キーゼはつまみとして頼んだ迷宮野菜の油通しを頬張る。麦味噌をつけるのも美味いが、キーゼは塩を少量つけて酒を流し込むのを気に入っていた。
そう、酒である。キーゼは朝から、この夕食時に至るまで、各店を渡り歩き、浴びるように酒を飲んでいる。
「そう、なんといいますか」
独語する様が示すように、だいぶ酩酊している。尻に根が張ったように動かないキーゼを店員や客は気には留めつつも、酒に溺れるのにも理由があるのだろうとそっとしているようだった。
「酒、と言うものは、一人で飲んでこそ価値があるものです。一人で……静かに……ひっ、……そりと……」
キーゼはもはや、落ちていく頭を止められなかった。
―・―
ヨナ・シャハムは褐色の肌に少しばかり汗を浮かべながら、おにぎりを食べていた。店の婆さんのお手製で、ヨナともうひとりへの賄いである。
「ありがとう、婆さん」
米食は嫌いじゃないヨナは、それをぺろりと平らげる。馴染みの店で紋具の修理があると聞き、その手伝いを買って出たため、思いの外時間がとられてしまった。
「そういえば、修理に使っていた触媒、俺も見たことがなかったな。あれは……?」
「今回つかった触媒はこいつだな。迷宮から取れることがある石材なんだが、この都市ではよく使ってるよ。専用の供給道具を拵える流儀もあるらしいが、そこに手を割くくらいならってウチじゃこうしてる。楽だしな」
ヨナの疑問に答えるように技師が差し出したのは黄色半透明の――というよりは、琥珀の類いだろうか。どこかくすんでいて、お世辞にも高級感があるとは言えない。また、迷宮内でエーテルを蓄える性質がある石材の中でもっとも出回りやすいらしく、エーテルが枯渇すると完全に灰色になるらしい。尤も、エーテル量がそこまで多くないことと、そのせいで交換頻度が増えるのは玉に瑕なのだが、比較的安価で上がるのは大きい。
――道具の質という点で、ヨナとしては思う所もないでもない、のだが。
流儀と言われれば、それ以上踏み込むのも筋違いかと、議論を交わすことについては思い留まったのだった。
●
「これがエドゥノーグの『夜』の顔……」
リチャード・ツァオは、エドゥノーグの大通りから少し離れ、『大人向け』の店舗を冷やかしていた。
彼もよく知るゴールディのそれ――の中でも、上等な部類のものであるが――と比べれば、作りも規模も安っぽいが、風情はある。探索者たちにだって、そういう楽しみは必要なのだろう。
「……まあ。目新しいものはないですね」
とはいえ、大人しいものだ。
秩序がある。商人ギルドか、探索者支援ギルドか、どちらの管轄かは解らないが管理が行き届いている。探索者のための街であり、場所である――という気風もあるだろうが、リチャードにとってはとても興味深い。
――何か参考になるものもあるかもしれませんね。
そうして、黒衣の男はさらに暗がりへと歩を進めていった。
●
「へえ……いま迷宮都市じゃあ、ああいうのが人気なのか……」
露店を眺めながら、リンタロウ・イナバはううむと唸る。探索者向けの商品の多さは、都市同盟では類を見ない。エドゥノーグが特殊な素材の産地であり、同時に加工場でもあることにも由来していそうであるが……。
――結局客層ってことだよなあ。
「ううむ」
唸りながら、買い付けたカエルの干物を齧る。探索者向けの保存食らしいが、スパイスが効いていてなかなか良い。
「カエルっていう物珍しさはアリかもしれないなあ……」
と、そこまで考えた所で、首を振った。また商売のことを考えてしまった。
「……今日くらいは純粋に楽しまないとな! おっちゃん! カエルの串焼き五本とエール追加をくれ!」
―・―
ツァガーンは、知らず、暗がりを歩いていた。人の多さや、往来を厭うように。
けれど、その表情は柔らかかった。ツァガーンを冒険者と見て取った露店の店主たちは優しかったし、初めての買い食いも、満喫できた。
これが、自由なのか、と。溺れそうになりながらも、彼女なりに満喫していたのだ。そんな中、指先ほどの小さな装具を扱う露店を見かけた。兎や子猫をあしらったものがずらりと並ぶ。夜の照明を受けて、目の位置に据えられた輝石がきらきらとまばゆい。
「わ……これ、かわいい……」
と、零したとき。
「まぁ、素敵な細工をされていますね。こちらの輝石は珍しい色。どちらのお品ですか?」
声が、した。恐る恐る見上げると、美しく、身ぎれいな女性が店主に話しかけていた。
その露店に並ぶ装飾品は、銀細工や装飾品を手掛けるラウラ・N・ヴィークの目から見ても、美しい仕事ぶりだった。細く伸ばした鉄線を巻きつけることで造形を取ることも、輝石の処理も見事だ。
「迷宮産の素材ですね。探索者用の装具につかわれたあとの端材で作っているんです。研磨するには、少し硬くて苦労するんですけど」
「まぁ……」
端材という頭でいくつか眺めていると、たしかにそれぞれに意匠が異なる。輝石に合わせて装飾を作っているのかもしれない、とラウラは思った。
つと、何ごとか戸惑っている少女と目があった。少女の手には、眠たげな猫の装飾。輝石の色は、青。
「お似合いですよ」
と、伝えると、少女は焦った様子で「こっ、これ買います!」とお金を置いて、走り去って言った。ラウラは店員に向き直る。
「……お邪魔だったでしょうか?」
「いえいえ、ありがとうございます」
●
授恵者が5人集まったらどうなるか?
知らんのか。
―・―
「宴の始まりだぜ!」
ユヅキ・ユヅハラの意気揚々たる声で、幕を開けた。
夜の大公園。大通りは店舗や紋具の街灯が立ち並び、明るいことこの上ないのだが、こちらの光源は距離をおいて設置されている街灯と露店程度のものだ。ユヅキたちは公園の深くに位置取っている。
探索者支援ギルドからたくさんの敷布を調達し、荷物や買い込んだ沢山の食材、酒をずらりと並べている。
「皆はカエル料理、もう食べたか?」
「Talara、まだ、食べた、無い」
ふるふる、と首を振ったゴブリナのTalaraは、並べられた彩り豊かな食材に目を奪われている。
「私は物心付いたときからたまに食べていますが……此処のものはまだだったので、色々買ってきました。皆さんもどうぞ」
問いながらカエルの丸焼きに手を伸ばすユヅキに苦笑しながら、ライラが言う。偶然ユヅキたちを見かけ、同席することになったが、知り合いの多さに心が安らぐ。
「といっても、食べ方に拘ったことはないので、本場がどういう調理をしていたのかは気になりますね」
「聞いた話だが、小さいカエルなら殺さずに浅層から持って帰ってきて食べる直前にしめるらしいぜ。そうすりゃ内臓も傷まないし臭みもないって話だ」
よく焼けたカエル肉の脚をもぎ取るようにして、口に放り込む。骨まで味わうようにしゃぶりながら検分すると、肉質の具合が何となく分かる。
「こっち、具? 詰めた、揚げ物。かりかり、あつあつ、美味しい」
「お! そうなのか! 見た目はウケなそうだけど、これは――」
カエルの姿のまま揚げ物になったものをTalaraが指し示すとユヅキが我先にと飛び込んだ。しばらくして、「ぐああ」と悲鳴があがる。
「ただ、舌、火傷する」
Talaraの言葉に、一同の間に笑みが生まれたのだった。
―・―
アンジェラ・ブラックウッドは、通りがかりに宴会の気配を感じ、同席を願い出た形での参加だった。喧騒から少しだけ離れ、けれど夜闇に沈むことはない和気藹々とした空気は、好む所だ。
「シャルガネ料理の露店も結構多かったから、つい手が伸びてしまったの」
と、米酒を掲げると、我も我もと舐め始める。アテには困らなかったから、酒も進もうというものである。アンジェラは米酒の甘みと、口の中に残っていたカエル肉の炙り焼きの風味が混ざる様を感じながら、
「この、麦味噌のタレを使った料理は米酒と合うのね」
「タレの料理、鳥肉とかともあいそうだね! カエルの卵料理とかないのかなー」
「……それは、どうかしら……」
青い肌のゴブリナのネーアが無邪気に言う様に、アンジェラは思案げに表情を曇らせた。カエルは食べる経験があるくらいには生活のそばにいたものなので、想像するのも躊躇われる。
「よし! それではそろそろ!」
ネーアは、というと、宴もたけなわになってきた頃合いを見計らってのことか、竪琴を取り出した。
「おっ! 楽器か! 聞かせてくれよ!」
「任せて!」
竪琴の調律を確認してから、ネーアは爪弾き始める。柔らかく弾かれ響くアップテンポのアルペジオと、トップノートで紡がれる旋律が、夜の公園に満ちていく。誰ともなく手拍子が始まると、Talaraは最初こそきょとんとしながらも、たどたどしく――じきに大きく、手を叩き、リズムを合わせていく。
ゴールディの厄除けの風習でもある、食べながら演奏をするネーアはとても楽しげに、そんな光景を眺めていた。
―・―
ノエル=アンダーウッドは、柔らかな芝生に寝返りを打ったところで、眠りから覚めた。
「……ふぁ、暗くなっちゃった」
日向ぼっこと決め込んで、大公園に足を踏み入れたところまではよかったが、ノエルにとって具合のいい寝床を見つけてしまった結果、熟眠してしまったようだ。羽根を伸ばしに来たつもりだったので、損をしたつもりもとくにない。日が照っていたら陽気に誘われてまた眠りにつく自信がある。
「宿で寝なおそうかな……」
そのまえに、あそこで楽しそうにご飯を食べている人たちに何か分けてもらおうかな、とか、寝ぼけ眼でそんなことを思った。
●
昼食時のこと。
「少し、気を緩められてはいかがですか?」
少女の声に、エフレムはページをめくる手を止めた。混み合った店内の中、ぽかりと空いていたエフレムに同席を希望したハーフリングの少女だった。
「拙に、であろうか」
「ええ」
プラムと名乗った少女は、薄く微笑んだ。
「迷惑であったか?」
そうではない、と今度こそ少女らしく破顔したプラムは、す、と手鏡を示す。
「ほら。周りの方々が、何事かと気にしていらっしゃいますよ」
「む……?」
プラムの笑みが苦笑に変わる。そういう御仁かと思うと同時、そういう人物だからこそ、彼女が安心して食事が摂れたのも確かで。二、三言を交わしたのち、プラムはその場を立った。
「張り詰めすぎては失敗しますよ?」
あとには、彼女の計らいでエフレムに供された、果物菓子が残された。
●
その菓子を食べ尽くそうかという頃に、もうひとり訪ねてきた。
リザードマンの女性である。学者然とした物腰に眼鏡がよく馴染む彼女は、レイウェストの命を救ったことに礼を言い、ウルード・ハキーマ・シファーという名と、帝国臣民であることを告げた。
「差し出口ではありますが……殿下の御身だけでなく、殿下の御心にも気をかけて差し上げてください」
『語らず』の名の由来は、ウルードも知るところだったから、真剣そのものである。帝国の苦難を支える能吏は殆どいないのだ。臣民としてあまりにも苦い現実を前に、出来ることはしておきたい。
「幸い、私はパンクリアース学園で学生をしておりますから――いくつか、おすすめの書物がございます。よろしければ、手隙の折にこちらを御覧ください」
「……うむ」
流されるまま、差し出された小さな羊皮紙の断片を受け取る。エフレムとて、気にしていないわけではなく、断る理由もなかった。
ウルードが立ち去るのを待って、エフレムは先程の羊皮紙を眺め見る。
『思春期育児の要点 著:――』と書かれていた。
「なに? それ」
「……」
無言で羊皮紙を裏返しつつ、エフレムは声のほうへ向き直る。
年のころ、10を超えた程度のヒューマンであろうか。黒髪黒瞳にシャルガネの血だとするならば、もう少し年上かもしれない。
「拙に、なにか?」
「……取材、というか。情報を集めにきた。私は飯塚・麦穂」
―・―
結論から言えば、空振りだった。エフレムは問いに応えてはくれたが麦穂自身も知っている情報ばかり。
『何かが起こった』ことは明らかなだけに、手がかりがないことが口惜しい。
「予想でも。なんでもいい。あなたの見解があれば、それを教えて」
「……ふむ」
これまでの応答の淡々たる様と違い、沈思の気配。すぐに、答えは出た。
「……拙が、殿下をお救いしたとき。城は崩れ落ちようとしていた」
「うん」
「だが、落下していたわけではない。あの大樹が現れたのはその直後だ」
「……城が、その大樹に持ち上げられた可能性がある?」
「すでに崩壊したあとのものだ。望みは、無かろうが」
●
通りがかりに、憧れの人の姿を見かけて、スィーリーンはつい足をとめた。長身で、リザードマンだ。往来の只中だから目立つが、少女は気にしない。
――理知的なお姿。
遠目から見ているだけでも、赤紫色の鱗が、なお火照るような心地がした。それに、あの杖の意匠の見事さときたら!
「……せっかくですし、素材になりそうなものでも探しましょうか」
手細工には心得がある。迷宮都市の素材は無料ではないらしいが、いつかに備えて細工方法の見当をつけるのは悪くないかもしれない。
となると長丁場になるだろうが、職人通りは露店が少ないと聞くし――とスィーリーンは考え、そして。
「先にお菓子屋さんを探しましょうか」
と、果物入りのお菓子を求めて、再び歩き出した。その足取りは、先程よりも確かに弾んでいた。
●
――騒がしい街だな。
夜の帳が空に掛かるころになっても、エドゥノーグの往来の騒がしさは留まるところを知らない。
ウィリアムを中心とした乱痴気ぶりから逃れてきたレイウェストは、雑音と夜風に包まれながら、ベンチに身を任せている。
「具合悪いなら、お水持って来ましょうか?」
そんな声に、振り向くと。
「ッ!?」
何故か、相手の方が驚嘆していた。そして、返事も待たずに、ぎこちない動きで歩き出す。
ハーフリングの少女であった。
―・―
どうしてこうなったのか、レイウェストにもよく解っていない。
少女は水を汲んだ。そして躓き、レイウェストのズボンが濡れた。少女はそれをハンカチで拭き取ろうとしてレイウェストの顔をみて突然固まり、
「ゴ、ゴメンナサイ……!」
と、わなないて、
「ハンカチ捨てて構わないですから……!!」
言い捨て、走り去った。
早業と称していいドタバタぶりであった。
あとには、濡れたレイウェストだけが取り残されていた。
―・―
「ぎょああ」
その晩、寝室にたどり着いた少女――トーラは、眠れぬ夜を過ごしたという。
●
「ムスビ……!」
レイウェストの体を駆け上がり、右手に留まった栗鼠を眺めていたときのことだった。
少女の声と同時に、栗鼠は飛び降りて、少女のもとへと走っていく。
少女は「ムスビがごめんね」と歩み寄り、
「うわ」
と声を零した。
「……なにか、ついているだろうか?」
「いや、すごい疲れてる顔だなあって」
「……」
そうだろうか? そうかもしれないが、驚かれるほどだろうか――と自問していると、
「……時には立ち止まることも必要なんだよ」
少女はふふりと笑った。
「それで美味しいもの食べて、ゆっくり眠って。そしたら、次の日からまた頑張れるんだから! これ、キリお手製の紅茶! 元気になるよ!」
「あ、ありがとう……?」
そうして、少女――キリ・オトノエは手を振った。その右肩で、同じように栗鼠が立ち上がっている。
「じゃ、キリはもう行くね! またねー!」
嵐のような少女は、そうして去っていった。
●
「ふーむ、少年。なんとも疲れた顔をしているね」
「……っ」
老成した口調とは裏腹におさなげな声色。だらしなく身を投げだしていたレイウェストが慌てて身を起こすと、桃色の髪が夜暗にも映える、ハーフリングの女がいた。
「……そんなに私は、疲れて見えるか?」
「うん。とりあえず、水でも飲むかい」
―・―
「うん、うん」
差し出された水を飲み一息ついた少年に対し、ベゴニアは笑みを向けた。
「キミには何となく凄く頑張ってる者の雰囲気があるが……。息抜きは大切だよ? 疲れは致命的な判断ミスを呼ぶからね」
返事を待たず、ベゴニアはフラフラと歩き出した。片手を掲げ、露店が立ち並ぶ通りを眺めてにへりと笑う。
「一息ついたら。後は甘い物でも食べてぐっすり眠るだけでも違うさ。
――じゃあね、キミが冒険者であるならまた会おう」
決まった……と会心の中進み出すベゴニアの背に。
「あ」
声が、届く。すぐに、少年に追いつかれた。
「水袋を忘れているよ。ありがとう……貴女も冒険者ならば、この借りは、いずれ」
「う、うむ!」
―・―
「……あれは」
Alexandra・Hexe・Claudiaの囁くような声。
深い紅色と黒。絶世の美女と誉れ高い母譲りの美貌。
――皇族の、生き残り。
目に留め、そうと理解したAlexandraの胸中に仄暗く、炎が灯った。
Alexandraの理性は、その焔を悪しきものとして吹き消そうとする。けれど、消えない。ばかりか、その勢いはさらに増すばかりだ。
――実力主義。その呪いと悲劇を生み出した皇族が、目の前にいる。
その、胸中を。
「サンドラ」
下方から届いた声が、断ち切った。
にわかに我に返ったAlexandoraは、傍ら――ハーフリングのOctavia・Aureusを見下ろす。
「……すみません、あの、」
「よそ見すんなよー」
絡むOctaviaの視線には、理解の色があった。少なくともAlexandraはそう感じていたが、少女は何も、言わなかった。Octaviaはひひ、と笑う。Alexandraの胸中も――少女自身の胸中にも触れないように。
今はそのほうが良いだろう、と示すように。
「喉乾いたし、なんか飲み物出てる場所探して休むかぁ。サンドラも疲れてんだろ?」
「――そうですね」
視線の先では、誰かに話しかけられているレイウェストの姿が見えた。
少なくとも恐怖は、ない。今はそれだけでも良いのかもしれない。
「ありがとう、オク」
「んー?」
「いえ、なんでもありません」
先を行く友人の小さな背を眺めながら、Alexandraは静かにそう言った。
尤も。
「お! 見つけた! 行こうぜ!」
突然走り出したOctaviaを追いかける羽目になり、すぐに閉口する羽目になったのだけれど。
●
「若い女の子がこんな夜更けに公園で無防備にしてちゃ駄目だよ!」
ベゴニアと別れた後、レイウェストのもとに一人のヒューマンが寄ってきた。
エルゼリオ・レイノーラと名乗った人物は、レイウェストを終始女性だと勘違いしていた。実際のところ、レイウェスト自身も勘違いをしていたのだが、さておき。
レイウェストの様子に、エルゼリオは感じ入るものがあったらしく、歓談のどこかで姿勢や雰囲気が変わった。レイウェストは皇族であることも――自身の苦労についても、特に触れなかったのだが。
「……なんだか、大変そうだね」
率直なエルゼリオの言葉に、レイウェストは苦笑する。そんなに分かりやすいものか、と。
「そうかもしれないな」
「どんなに辛い事があっても食べないと駄目だよ。心身共に駄目になっちゃう。そうだ! これでも食べて!」
と、出店で買ったらしい芋料理を渡された。料理自体は塩とバターの風味が濃く、疲れた身体によく染みた。
それから、レイウェストのもとに押し寄せてくる人が増えてきた。どうやら、皇族がこのあたりで寝ているらしい、という噂が立っているようだ。情けない話ではあるが、ウィリアムさえ現れなければいいか、と肚を括る。
冒険者たちの雰囲気が、思っていたよりも心地よかったことも大きい。
ユークリア・フィナンシェと名乗った小柄な少女は、自らを帝国の兵士見習いだと明かした。今は冒険者をしている、とも。表情を曇らせたレイウェストに、ユークリアはこう切り出した。
「殿下。エドゥノーグはシルトラースの民を受け入れるというお話を聞きました」
「……もう噂になっているのか」
この街の人間は強かなものだと閉口するレイウェストであったが、ユークリアは、快活な笑みを浮かべている。
「どんな決定でも生きる希望と成り得るのなら私達帝国の民は止まる事を知りません。私もそうですから!」
ユークリアの言葉に、応じる声があった。グレイブ・ヤードという、全身白ずくめ。さらに仮面までかぶって表情を隠している――おそらく――男性、である。
「帝国難民の受入れ、都市という区画で命を繋げる可能性があると分かれば飛びつくでしょう。どんな絶望的な環境でも、誰かに明日を残せるという希望はどんな対価を支払ってでもしがみつかせるものですから」
「……しかし、彼らの多くは授恵者ではない」
内容よりも、授恵者という言葉に、グレイブは微かな反応を見せた、が。
「もちろん……それでも、出来ることはありましょう」
と、自身の信条には触れぬまま、そう添えるに留めた。
事実、彼自身は日中に協力を求めるための行脚を行っていた。風体はともかく、その心は、レイウェスト同様、民に向いているのは確かだった。
難民に、居場所を提供できることがこの上ない魅力なのは間違いないのだが。
――それで、よいのだろうか。
決定というユークリアの言葉そのものに引っかかりを覚えていることに、レイウェストは気づかぬまま、思考に耽る。
「……えっと、レイウェスト……さん……? 殿下?」
懊悩するレイウェストを前に、レオネベル――この場ではレオと名乗った――は好感を覚えていた。人種や身分に分け隔てない態度も、悩みを見せる姿にも。
「オレたちには分からない苦労もあると思うんだけど。オレは……自分のためにも、育った国のためにも力を貸したいと思ってるよ」
彼女にとって、かつて任官を望んでいた国だった。今もなお、その思いが消えたわけではない。
「ひとりで、できることは、かぎられておりますもの。わたくしも、びりょくながら、おてつだいいたしますわ」
マレーネ・シェーンベルグと名乗った女性も、柔らかな口調で続く。
「そうか……」
レイウェストはまだ、是非の判断を未だつけることができていない。
けれど。
「……そなたらの気持ちは、ありがたいな」
こうして、思いを向けられたのは、初めてのことだったから。
自然と浮かんだ笑みとともに、レイウェストは。
「ありがとう」
と、そう言ったのだった。
――へえ。
その光景に、フィーレン・ステオラーズは瞠目していた。
君主として、気持ちがいい人物だと感じた。そうでなくとも、レイウェストが置かれている状況はそれだけでもフィーレンの情を動かすには事足りる。
だから。
「良いお人じゃないか」
「そうだな」
耳朶に触れた呟きに、フィーレンは共感を持って応じていた。見れば、巨大な頭蓋骨をかぶった人物がそこにいた。どう見ても怪しいのだが、白ずくめで仮面をつけた男もいることだし、害意は感じない。先ほどは酔い覚めの薬だよ、と薬湯をレイウェストに差し出してもいた。
――それをそのまま飲む殿下も変わってはいるが。
ともあれ、フィーレンが見る限り、女――ルチル・プルメリア・グレイハーツはとても満足げであった。
「そういう君は、良いことでもあったのかい?」
「いやぁ、結構な値打ちが付きそうな情報が手に入ったからねえ」
くつくつと笑うルチルは、フィーレンの応答も、眼前の状況も含めて足を運んだ甲斐があったと頷く。普段触れられない人物の人となりを知ることができれば――程度に考えていたが、もう少しだけ此処にいようかね、と思う程度には、満足していた。
―・―
「アンタの中で、騎士ってどういう在り方だと思うッスか?」
「……ふむ」
ハーフリングのスフェーンの問いである。
――こんなナリ、と自らを卑下しつつも、騎士への憧憬を明かしての問いだった。
軽い問いではない。レイウェストは多いに悩んだ。
護衛騎士であるエフレム以外の騎士との縁は薄い。けれど、帝城に住まうものとして見てきたものはある。彼らは剣を捧げ、ひたむきに武威を練り上げていた。巨大な集合としての、帝国のために。
「……彼らは興国の輩であり、礎、だと思う。彼らの忠孝なくして、帝国は成り立ち得なかったのだから」
「ははー……」
騎士と皇族。視点の違いに、スフェーンはその言葉を噛み締めていた。
―・―
――目の前にいる皇族の生き残りは、アンジェラよりも小柄な人物だった。肌は白く、似た所など何一つない。
「不躾で悪いがお前は家族を失ったと聞いている……それをお前は悲しいと思うか?」
唐突な問いに、レイウェストは少しの間、アンジェラの瞳を見つめていた。血の色に似た瞳に、じわりと過るものがある。
「悲しくて、辛いな。怒りもあったよ。災禍によって蹂躙され、理不尽に奪われたことは悲しさだけではなかった。けれど」
「……」
「そんなものは……家をなくし、苦しんでいる民たちの姿を見たときに、塗りつぶされてしまった。……そなたも、家族を失ったのか?」
「……ああ。奪ってきたんだ。奪われて当然だが……少し、『もやもや』している。これが何なのか、私には分からない。お前の気持ちを知れば、この正体がわかるのかも知れないと思った」
「……」
彼女は自らの戸惑いを、そのまま言葉にした。そんな胸中を汲んだのかは、定かではないが。レイウェストは自らの手元に落ちる髪に視線を落とすと、こう言った。
「……実を言うと少しだけ、寂しいかもしれないな」
―・―
その言の葉は、アンジェリカ・ミュクーサ・リーズデルトの心に淀みを生んだ。
同じだった。崩壊によって生まれた孤独も、正しくあらねばという緊張も、足掻きも。
――その、寂しさも。
けれど、違う。レイウェストは、皇族は死んだものとして、受け容れていた。
独りでもやらねばならないと、前を向いている。
「……」
言葉が出てこない。うそぶくことも、できない。
兄弟の喪失――その可能性を、直視することもできないまま。
「あら、あら……だいじょうぶですか?」
「……っ」
気付けば金色の瞳が、覗き込んでいた。小柄なアンジェリカよりも頭一つ大きい女性。
「まれーね、ともうします」
「……し、知ってるッス。さっき殿下に挨拶してたッスよね」
「あら」
『きっと、ながくなる、たたかい、ですもの。……そういったじかんも、ひつようですわ。でないと、たおれてしまいます』
この一時を、そう表して微笑んだ彼女の言葉とともに、覚えている。思い出した。
だから、だろうか。
「大丈夫ッス。心配させたッスね!」
虚勢を張ることくらいはできるくらいに、気持ちは軽くなっていた。
そこに。
「授恵者になったいまのレイウェスト様なら、その大樹が視えるのか? 私、とーっても気になるんですよね!」
快活な少女の声が、宵闇に響き渡った。
―・―
「どうです? 確かめに行ってみたいと思いませんか? 私でよければ付き合いますよ? もちろん護衛料はいただきますけど!」
ニーラ・メッコという、エルフの少女だった。エルフらしからぬ朗らかな性格が、容姿にも滲んでいる。レイウェストは、というと、その勢いに押されているのか、少しばかり後ずさっている。
「……も、もちろん興味はある、が……」
「じゃあ決まり! ですね!」
「すぐには、無理ではないかな……と、私は思うのだが」
「うーん、強情……ねね、名物のカエル料理はもうお食べになりました?」
「いや、まだだな……」
未体験の勢いと圧に、レイウェストは正直に答えてしまった。ガードは下がった、とばかりに、その腕を取るニーラ。
「では行きましょう!」
「あら。いいですね。ついでにお酒を飲んで、色々吐き出して、はっちゃけて、明日への活力と致しましょう?」
ドワーフのヴィルヘルミナが応じれば、
「おお! それでは私もいこう!」
クリエーナ・バーリフェルト、帝国出身である、と名乗った女性が応じる。あれよあれよという間に参加の声が集まるのを――ちゃっかりと――レイウェストの傍らで眺め見ながら、
「いやあ、殿下。御覧ください。すでにこれだけの人望がお有りではないですか。……もちろん私も、祖国の困難を前にして、協力は惜しみませんとも。今は一介の冒険者でしかありませんが、微力ながらお力になりましょう。さあ、今夜はひとつ、親睦を深めようではありませんか」
と、力強く言う。言葉こそ丁寧だが、内心では、
――やっぱり領地を横どるにしても有力者の後ろ盾とかあると良いものなぁ! この媚び売りチャンスを逃がす俺じゃねえ!
意気揚々である。
兎にも角にも。
「……そう、だな。良ければ、私も同道させてもらおう」
レイウェストは提案を受け容れたのだった。
―・―
さて。
その日、酔いつぶれたレイウェストは、人生で初めての体験を2つした。
朝帰りをしてエフレムに絞られたこと。
もう一つが、ヴィルヘルミナの膝枕での介護を受けたことであった。
●
「飲み比べ?? もちろん負けないが???」
―・―
並べられたたくさんのエールをぐいぐいと飲みすすめるウィリアムと、同じく凄まじい勢いで呷るように飲むレイナ・ハーヴェル。
周囲のギャラリーの熱も凄まじい。なにせ、
「もし負けるようなことがありゃー、上着だってなんだって脱いでやんよ」
とのレイナの言があったのだ。レイナがこの店にたどり着いた時点で、ウィリアムは相当な酒量を腹に収めている。負ける道理がない。
―・―
ない、と。思っていたのだが。
「……アンタ、どんな身体してんだい」
「王族の嗜みと、授恵者としての地力の差かなぁ。いやあ、おかげで盛り上がったよ。ありがとう!」
宿場も兼ねていた酒場であったことが幸いしレイナは寝台にぐったりと身を横たえて、苦しげに呻く。
「おい」
「ん?」
「何もしねえのか?」
「存分に遊んださ。今度は勝負抜き、シラフで会いたいね」
●
ロサード・シュナイダーは緊張しながら酔いつぶれたレイナを運ぶウィリアムを見送ったのだが、ウィリアムはすぐに戻ってきた。
――ロサードの隣に。
「いやあ、騒がしくしてごめんね」
「は?」
思わず素の声が溢れた。
「何だか、話したそうにしていたから……なんだけど、僕の勘違いかな?」
「……ごめん。私のせいで。そんな、つもりは」
「いや、そんなに畏まらなくても……」
少女の真面目さに、ウィリアムは苦笑した。そこに。
「おおおおお王子!?」
どどどん、と。テーブルに駆け寄ってくる姿があった。桃色の髪が目立つ、ハーフリングの少女。アルカンジュ・クリアハート。
「同席、いいでしょうか……!」
―・―
「ウィリアムさん!」
「うんうん」
「冒険者が酒場で語ることと言えば! 夢や野望だと思うんです!」
――そうなの?
世間ずれしていないロサードは、冒険者にも酒場にも馴染みがない。
「私は物語に出てくるような勇者様や英雄になるのが夢なんです! お嫁さんもいいですが、折角冒険者となったなら……と! ウィリアムさんは冒険者としてやりたい事ってあったりするでしょうか!」
勢いのままの問い。
けれどそれは、ロサードにとっても重要な質問だった。名家に生まれてもなお未来がないことに閉塞を抱いているロサードにとって、新しい生き方を見つけることは最上級の課題だ。失わざるをえなかった彼女にとって、気になる問いだった。
――それだけに。
「……そうだなあ。冒険者としてやりたいことは、皆と厚誼を深めること、かな」
応答は、ロサードの胸中を凍えさせた。
「……帰る」
ロサードはそのまま立ち上げり、店を後にする。
新しい生き方を見つけねばならない自分との乖離に、反駁が先に立った。
ウィリアムの答えの意味を、今はまだ、受け止めることができなかったのだ。
●
――会話がしにくいな……。
サイラスは眼前に座るエフレムをそう評した。あまりコミュニケーションを負担に感じる性質ではない自分の、率直な感想だ。ストレガ・L・リベルガストラ――ストレガと名乗ったゴブリンを見やる。いざ気まずさを感じ始めたころに「何の本をよんでいるのだ?」「邪魔はしないのだ」と言いながら席してきたストレガは、矢継ぎ早に質問しつづけている。
「契約クリーパーって自然発生するクリーパーと何が違うのだ?」
「……拙と契約を結んでいるクリーパーの間には、エーテルのやり取りを行う小径がある。違いがあるとすれば、その小径であろうな。マテリアル界に来てもなお、エーテルを求めて彷徨う必要がない」
「ふうむ。じゃあ、こっちに現れたクリーパーを還すことはできないのだ?」
「出来ぬな。『境界』は脆く、しかし閉じやすい。出口がなければ、クリーパーとて還れぬし……尤も、いざ還れるとしてクリーパーが還ることを選ぶかは拙にもわからぬ」
「なるほどなのだー……いや! すごく勉強になったのだ!」
ストレガはどこか興奮をにじませながら、すっくと立ち上がる。
「ありがとうなのだ! 良い研鑽を……なのだ!」
そのまま、歩み去ってしまった。
残されたサイラスも頃合いか、と。自らも席を立つ。
「俺もタメになったよ。ところで」
去り際ではあるが、サイラス自身がもっとも聞きたかったことを、尋ねることとした。
「アンタほどの腕があるんなら、竜への道の手がかりも、何かしら掴んでないのか?」
「……」
エフレムの沈思に、サイラスは待つことを選んだ。
「……拙にもまだ、解らぬな」
絞り出すような声に、サイラスははじめて感情の色が見えた気がした。ごくごく僅かな――ゆらぎ、のようなものだが。
「そうか」
道を深め続けた者がそういうのであれば――更にその先を目指すだけ。ただ、それだけのことだから、残念に思うこともなかった。サイラスは一つ礼を言い、その場を後にした。
●
場末の酒場というものは、独特の騒がしさがある。
そのこともレティシア・レインフィールにとっては馴染みのないものであったが、不快か、といわれるとそうでもない。むしろ、家の者の目がないことをこれ幸いに満喫する所存でもあった。とはいえ、いよいよ夜も更けてきた。我が国の殿下が遊び呆けている様を横目に挨拶の機会をはかっていたが、淑女としての感覚が頃合いだと告げていた。
「殿下」
と、声を掛ける。
女性だけでなく男性にも囲まれているウィリアムは、レティシアの姿を見て片眉を釣り上げた。美しいカーテシー。軽やかだが、王族への深い一礼は、教養と教育の高さを示すには十分過ぎるほどであり。
――そして、この酒場にはあまりにも似つかわしくなかった。
「……やあ、どうも……?」
「お初にお目にかかります、殿下。私はレティシア・レインフィールと申します。お会い出来まして、嬉しく存じます」
ウィリアムの微かな動揺はさておき、このとき、レティシア自身も動転していたのは間違いない。
王族としての気品を感じさせないウィリアム王子にいよいよ声をかける段となり、令嬢としての対応が先に出た。
「やあ、これはどうも。私はウィリアム・リーンエス。会えて嬉しいよ。……さて」
すぐさま立ち上がり、顎を引く仕草で応じたウィリアム。王族としての返礼の後、何かを言おうと口を開いたところで、
「また別嬪さんかよ……どっかのお姫さんかなにかか?」
すると、同席していた男――アレン・ボールドウィンが半目になってウィリアムとレティシアを見比べていた。
「お前、随分モテんのな」
「まあね」
「……あら、ボールドウィン様の言いようですと、わたくしのことも含んでいらっしゃるのかしら?」
同じく、ウィリアムに挨拶しにきたという美しい金髪の女が言う。レティシアからみても、性的魅力に溢れた女性だった。禊萩、と名乗っていたと記憶しているが、実際のところ、レティシアから見てウィリアムの女遊びぶりが目に余った理由の多くがこの女性にある。
「いや、お前、そりゃそうだろうがよ! 田舎から出てきたばっかだぞ俺は!」
艷やかに微笑む禊萩に対して、アレンは真っ向から肯定する。物怖じしない性格のせいか、酒気のせいか、照れた表情一つ見せない様に、禊萩は微笑をこぼした。
すると、ウィリアムの隣に座っていた男性が、こう言った。
「これもなにかの縁だ。貴方もよかったら同席しないかい?」
「ええ、と」
にこやかに空いた席を促す、金髪に紫の目の男がレイ=レーベンス=レックフォード、という名であることもレティシアは知っていた。ずっと様子を伺っていたからだ。この席では最もまともに見える男性、という評価も添えたい。
ともあれ。
「……そう、ですね」
夜も更け、門限という意識があったのは確か、ではあるのだが。
「よろしければ、そうさせていただきます」
思い切って声をかけようと思ったのは、何も王子ばかりが理由ではなかったのもまた、確かなのだった。
「私は、レイ。レイ=レーベンス=レックフォード。貴方はもう迷宮には行かれたのかな?」
さり気なく自己紹介と話題を添えたレイの配慮のもと、自然に場に馴染むこととなった。
―・―
――えらいことになったな。
あれよあれよという間に増えてきた人の群れに、エンデ・エトル・シャリオンはひとり、吐息をつく。
王族に、貴族。普通に過ごしていれば、縁のない人種との邂逅である。
とはいえ、せっかくの機会でもあった。エンデは怖じることなく、問う。
「この街の景気は随分と良さそうだが、王国のほうはどうなんだ?」
問いに、ウィリアムは「真面目な話?」と薄く苦笑した。そうだなあ、と少しばかり思索をし。
「農民たちの暮らしには大きな変化は無さそうだね。輸入品を扱う商人は、大変そうだ。実際商人からは陳情も少なくない……ああ、強いて言えば、王国の畜産は今後、ちょっと変わるかもしれないな」
「そうなのか?」
「帝国は畜産が強かったからね。王国では規模を大きくすることには抵抗もあったから」
「……そうかもな。水や土地への影響は無視できないしな」
とはいえ、商機になるのならば、と計算が働く。家畜は殖やそうと思っても簡単にはいかない。元となるタネと場所、両面で工夫と労力が要る。
「いや、いい話を聞けたな。ありがとう」
―・―
ともあれ、身分も立場も違う者たちは、この場で出会ったのが初めてとは思えないほど大いに盛り上がった。
なかでも。
「ところで、『殿下』ってどういうことだ?」
と言ったアレンの一幕は、店中が笑いに包まれたことは、添えておきたい。
●
「隣、よろしいですか?」
「……」
そう、声をかけてきた男がいた。理知的な立ち居振る舞いに、黒い髪がよく馴染む。
「殿下は、母方様に似ましたか。先程、遠目に見つけてすぐに判りましたよ。最後に見たのは十年は前のことですが、まさに生き写しだ」
「……」
軽い雑談に、エフレムは応じることはなかった。そのことを特に気にも留めずに、男は続ける。
「崩壊の日……私も帝都に居たのですがね。出てきた時にはすでに壊れていましたからね。良ければあの日、何が起こったのか、お聞かせ願えませんか?」
「……ふむ」
エフレムは識っていた。随分と前から、こちらを伺っていた蛇のような――血の匂いがこびりついた視線を。
だが。
問われたのであれば、応えよう。
―・―
「いやあ、なるほど。ひょっとすればエフレム殿は私の命の恩人であったのかもしれないのですね……と、随分遅くなってしまいました。私は御暇するといたしましょう。
それでは、レイウェスト"陛下"によろしくお伝えください」
男――イオ・ラヴバロックは、闇夜に溶けるようにその場を去っていった。
●
こうして。
迷宮都市の長い――長い一日は、幕を下ろした。
マスターコメント
イベントシナリオ(無制限・運営)普通 報酬:標準353 / 1〜9999人
2020年11月04日 18時54分18秒 公開
参加者
トゥーリ
ニワニ
ハッタ・ムラムラ
蒋・璃龍
バクル・バスリー
イヴェール・アーチボルト
ショコラ
- クラリエ リィズ
- ザンカ・クジン
- メイプルリーフ シルク
ヨル・スレイマン
飯塚・麦穂
エリザ・A・ミシャール
ゲルダ・クライン
- ノーチェ=チェッポ
コルネリウス・アーラ
ベゴニア
ミツキ・アインホルン
アンネエルカ
エイル・アーティライト
- ビスコ ユネスコ
リヒャルト
レシュノルティア・ピオジェレラ
ティラミス・ノーレッジ
ケン・Z・ブラッドリー
リーズ・クラヴィエ
ゼラルム・エルホワイト
タタラ=ナーヴィン
エリクシア・クロイツ
サニー・フォン・オルライト
- サイラス
エルゼリオ・レイノーラ
ルアンナ・ミュラー
カノン・エルグ
灰の紅茶
エルナ・クルプファルツ
ユヅキ・ユヅハラ
ユークリア・フィナンシェ
ナハシュ
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト
グレイ・ルノワール
咲羅
マーヴィン
ハイティー・ソルマーニ
ドーマ・アザーリ
- アルスター アルマン
シファー・アルムグニー
ウォン・ジンユゥ
アリア・ティーダ
シャルロット・エクレール
- シュナイダー ロサード
スィーリーン
アクセル・ランパード
Svart・Natt
リサ・ベイカー
イポクリジー・ベルクル
エーデルワイス・エンゲル
テサロニケ・アンバー
ギルバート・フォーチュン
テス・アウレア
ハヤール
ウェズン
アイリーン=N=フェルクス
キリ・オトノエ
フリーダ=ブロムヴィスト
リリリリス
パヴェル・A・サムルガチェフ
ライル・クライブス
ディアン
- シャーディー
ルース・ラルビカイト
ベルク・オスマット
ジョン・ベアー
エイダ・バサルト
ヴィルヘルミナ
ハリス・アル・ターミル
セドラ・メルディア
ミラ・トゥルー
ルチル・プルメリア・グレイハーツ
ラミ・トゥルー
- ネモ
- レオネベル
- 桃武・侑飛
クリエーナ・バーリフェルト
アーゼル・F・シュトレー
レオナルド・ピーフォウル
レティシア・R・クラティアス
ルル・リ・シュタカ
バルー・キップリング
イル・シャーリィ
レイ・ロバーツ
エーファ・メイベル・マジェリト
スコール・ソルマーニ
キュリアス=バルドゥ
イヴァン
カメリア・ローレンス
シニング・W・テュパラ
ヘレム・カースワーズ
シャトン・アルジェント
リンタロウ・イナバ
- イェレミース トゥラ リディリディ
マリアンヌ・ブラン・ド・リンドヴルム
ストレガ・L・リベルガストラ
グレイブ・ヤード
- ジヴリール
ギド・フェルミ
ヒルダ・ル・ハーツィ
ダート・ロウ
フォルシウス・ヒメギ・ランヒルド
イズレンディル・パラリム
ノックス・マグナ
クラーク・エアハルト
シェリー・コート
ファム=ゴート
ウォルナ・パイパース
ガーネット
ギャメル
マリイ・パルティス
クリア・バイライト
アーノルド
コッペリア
ルチ・コクジョウ
エフィルミア
ローレシア・ルエイン
- ルース=マクスウェル
フローラリア・ネムス・ラミナ
アランチャ・ジラソーレ
サフィラ・アズラク・ヴォルファング
ロイ・アウレア
トマス・グレイ・ディズールー
キャル・イルセイン
- シュタッヘル ロゼ
ヴャチェスラフ・スタリギン
セヴラン・クアルト
- スフェーン
ヘレン・ワーグナー
プラム
ヨトカ・ドラーゲン
リコリス・アデュラリア
ギーゼラ
Talara
ヴィナス
イーヤ・レプリス
シュロ
ルーズリーフ
フィニエス・クーガ
ヒロ・テスタロッサ
セリオス・オーガスト
シャロン・ラ・モリエール
- ルー スー
ハーリド=ハーリス
シオン・霧江
イズル・M・ヴォルゴール
ハーゼル・ライアード
ハヤト=ガラン=ヴォルファング
ユゥラ=フォン
- ガエサラウリ=モルダナヴァ=オルクレリウス
キル
ツァガーン
オルドリン・カートライト
アズラク
ルル・リ・ララ
アルマ・ヴァレンタイン
河霧の貴婦人
レイ=レーベンス=レックフォード
諸星・ユウ
アストライト=アクチュアル
シャーリー・ブラウン
レイス
アミィ・ブランウォーカー
ティール・クラリオン
アルラ・ニグラス
ドローミ
シスル・ノーティラス
ララベル・サン・ディーベル
アリオン・リュー
リーフェ
Lumina
ゴルバルティア
フェイサル・セイフ
ハガネ
カイン・ステラ
ミルカ=ルシカ
舞音・カグヤ
アルフィンレーヌ
オリーキュ
空冬・シラユキ
エンデ・エトル・シャリオン
ジゼル・ベルティエ
リチャード・ツァオ
- ウィルフリード・オリス
フリューリングスルフト=ティエラ
カトリーヌ・レーン
アルル・パッカード
ヨナ・シャハム
ディレイン・オールドケイジ
アスティン・ヴェルライン
Есөнхумс
ルーウィン・ビナー
Sidurgu・Yul
マーハ・アセトシソン
レイヤ・ダライ=カホール
レヴァーレ・クアルム
ロベリア
フィーレン・ステオラーズ
リリアナ=ティア=アインザームカイト
- リュキア ミノン エリシェール
バンビ
フィーリア=ルゥ=カミシロ
アルウィン・ディクラス
クローリカ
ライラ
ルーシカ
ニーラ・メッコ
イクス
キキ
アンゼリカ・ミケーレ・ラディーチェ
ウルード・ハキーマ・シファー
海神 江流
リリアーヌ・ウォルトグレイヴ
アヴェラ・ウッチェロ
ラグアルーン・イェルダ
アンジェリッタ クラリンド
アウル・アンサラー
エイル・ビュセファス
- 桃武・侑輝
- ツェウェル・トヤー
アレン・ボールドウィン
スフィカ
サマエラ=フォリウム
ラセリ=リエ―ブル
アンジェラ・ブラックウッド
ギ・ガガ
百鬼 朱羅
ウッド・B・ウード
エステル・ヴィタ
アステル
ニール・ロブラリア
ブルーテ・ビシア
ガルレイド・S・グリディッカー
スタルツ・エンスレイヴド
カッシア
アンナ・イフェイオン・ニグリ
フィーネ・ファルアリア
テュリン・ヴィング
リコッタ・プルリアータ
アンジェラ
ロゼット
- キーゼ
- アンジェリカ・ミュクーサ・リーズデルト
トーラ
マリア・C・クロード
ザイン
ネロ・ブラン
エリック・ルンガルディエール
ネフリティス=N=クリスタロス
シャルロット・ド・オーシュ
- ミスティ
- 桃武・侑芽
- エレノア・D・グリフィス
ルーカ・ルンガルディエール
カンナ 三木
ライナ・フレイヴァルツ
ライラ・ペトラルカ
ノエル=アンダーウッド
イオ・ラヴバロック
バーネット・フォーサイス
- アステル
クレア・エクレール
キオルティス
- クロシェット ラコット
ソル・ランドグリーズ
ラウラ・N・ヴィーク
プリム=ホワイトリバー
アルフレッド・ラ・ギ
マリナ・蔭山
マリヤ・バヤリッツァ
- ファイサル
Alexandra・Hexe・Claudia
鵜鬱鷹 浩之
Octavia・Aureus
カエルム
ライラ=スコット
セロンガード・シュタインドルフ
ジェラール・デュラン
- ヴェールヴァルデ
- ジェラルド
リーザヴェール
コハク
アルト=ミルドレッド=バ・ロッサ
ウェレクス・テンペスタス
Re:Lee
- スパラヴェドノストゥ
ニャミニャミ
エレオノーラ=ヴェロニカ=パホライネン
ナハティガル=ラー
ロイ・ロビンソン
アルテ・ルナフィニス
レナ・フォルトゥス
- ギルバルド・ガイアグラン・アルスレイド
- Shaadee
パトリツィア=レイネス=ナハティガル
- ハーシー グレイシア
エクレア・グリモワール
アーシェル・G・クライン
シャリアーヌ=ウルス=ロンディニオン
- Jenna
レイナ・ハーヴェル
シャンテ・フーケ
ナンチ・ヤジナイ
御邑 都
アルカンジュ・クリアハート
キャロル・エターム
禊萩
- パストラル リオネル
パティ・ポップ
ミウミ
アリエッタ
メイジー・ブラウン
キルシッカ・ニクライネン
- ローレ=リースフェルト
ララノア・グラヌローザ
バンシー
レギン・アンドヴァリ
アルム=ラント
ソフィア・セントレア・ムーンティア
- ガ・バタンク
ルスト・ブレイズリー
- ルドウィン・フォルラン
- メ・スシリンダー
リノア
ネーナ
ルーファス・W・ワーズワース
ネーア
- スウィナ・ホールド・ティールウィン
ドロテア=フォン=グレッシェル
- リオン・G・カートナー
シルフィード・フェルナール
フロマーシュ・ダイヤドロップ
- アレク・フィーンド
- リトゥル
ロウトフェダー
- ジル=クィネル
- シネミス・カネダ
フーグ・オグ・フーグ
サララ ココノカ
マレーネ・シェーンベルグ
ヴィオレッタ・コールリッヂ
セレネ・ヴァーミリオン
アルセ・シュッツ
- アルト・マクスウェル
エーリカ・アムブロシア
ファルマ・アラーティ
相談掲示板
点呼、1番!権能少女プリムです!……一応エルフです! 今回はダンジョンアタックに挑む予定です。 皆さん、宜しくお願いしますね!
点呼二番 ケンだ とりあえずダンジョンアタック予定だ 単独ではなく集団で行動しようと思っている 仮グループタグは【兵】かな
キーゼと名乗っております。 当日までには行先決めるつもりですね。
てんこ、よんばん、コハク。
てん? てんてててーん! 5ばん ツェウェルトヤー! 【2】で高いところをさがすの たーのしみ~~~
No.6
…それに一体何の意味があるんだ? (点呼している面々を見ては首を傾げ) 余輩は1と2で迷っているが、今の所はどちらであれソロで行動するつもりだ。 ソロとはいえ、遭遇する事もあるだろう。その時はよろしく頼む。
…既に60人以上が参加してますからね。 ともあれ、私はハーフビーストのシューター、シャーリーです。こちらは狼のグレイ。 戦闘・探索の経験を積むため、ダンジョンアタックに参加する予定です。よろしくお願いします。
八番、クラーク・エアハルトと申します。 ウォーリアのヒューマンですね。 【1】でダンジョンに挑みます。
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしく。 ソロかPTかは未定だけど【1】でダンジョンに潜るよていだよ。
やあ、諸君! ウッド・B・ウードだ。よろしくな! ひとまず探索に赴く予定だよ!
ノックスです。 私も迷宮で探索する予定です。 パーティでの挑戦を考えているのでご縁があればどうぞ良しなに。
オリーキュです。人がたくさんですね……町の見学と思っていますけど、ダンジョンアタックをすることが、収穫祭準備のお役に立つということなので、ちょっとそちらも、迷っています……
カ、カエルさんのお肉……??カエルさんって、あの、ぴょんぴょんって跳ねる、あのカエルさん……? 気になるような、怖いような、でもでも、とっても気になるような…… はっ、申し遅れました。ゲルダ、と申します。 迷宮都市、お話には聞いたことありましたが、実際に訪れるのははじめてなので、観光、できたらいいな、と。 ご縁がありましたら、よろしくお願いします。
くぅ~、迷宮! 心が踊るねぇ。 ってことで【1】に行く予定のスフィカ、シーフだよ、よろしくー。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ! みんなよろしくな!! グループタグ【勇牙】 ウチの傭兵団ではパーティー組んで探索に潜る予定だが、一緒に行きたいって奴がいれば遠慮なく声掛けてくれよな! この機会にお試しで入団してみてうちの雰囲気も感じてみてぇってのも歓迎すんぜ! 良かったらうちのコミュニティにも遊びに来てくれ! 知り合いもいなくて1人じゃ心細ぇ…ってのでも勇気を出して一声かけてくれればうちの団員も温かく迎えてくれるはずだぜ!!
初めまして、白翼騎士団『ヴァイスフリューゲル』代表のアクセル・ランパードと申します。 皆様、宜しくお願いい致します。 グループタグは【白翼騎士団】。 今の所、予定としてはウチの騎士団でパーティを組んで行動する気でおります。 多分行動は『探索』になるかと思いますが、これを機会に一緒に行動してみたい、コミュに参加してみたいって方々を募集しています。 相談場所は上記のコミュになるかと思いますが、興味のある方は是非遊びに来て下さい。 皆様が来るのを、お待ちしております。
点呼16……必要ないですか? 私はなんとなく好きですよ。 グループタグ【兵】で参加いたします。
初めまして、コッペリアと言います…よろしくお願いします。 【1】か【2】に行こうと思います。
ティラミス・ノーレッジだ、宜しく頼むぜ。 >【勇牙】 よう団長!カチコミに行くんだって? 派手にやろうじゃねぇか!
74……でしょうか?まあ何番でも宜しいか、好きな番号でも叫んでみてはどうでしょう。 私はエフレム氏へご挨拶にでも行きましょう。 レイウェスト殿下でも良かったのですが、彼は人気があるでしょうから、もっと落ち着いた時にでも。 折角なので、帝国のお話でも聞ければ良いのですが。 どなたへ向かうにせよ、礼節と良識はお忘れなきよう。
はじめまして。わたしはアルフィンレーヌ。どうぞ、よしなに。 なにか、おまんじゅうに合いそうな食材がないか、探してみることにするわ。【1】・・ということになるかしらね? 無用な殺生はしたくはないけど、襲い来るならお仕置きするしかないわね(懺悔はあの世で) もし、怪我をしてしまったら、言ってね。できる限りの対応はするわ。え?お布施?お気遣いは無用よ(いらないとは言っていない)
ヒーラーのイーヤ・レプリスよ。 よろしくね。 どこに行くかはまだ迷ってるから、とりあえず挨拶だけね。
フィーリア=ルゥ=カミシロ、ヒーラーです。 細かい部分はまだ決めていませんが、【1】での参加予定です。 皆様よろしくお願い致します。
シファファファーン シファーだギャ! 何するか決めてないけどよろしくギャ~!
ハヤールである、此度は宜しく頼もうぞ。 細かい事はまだ詰めてはおらんが、我輩は【1】の探索へ向かおうと思っている。
ニャミもジコショーカイするぞっ。 メーキュウトシタイケンキャンペーン?ってよく分からないけど……ごはんがタダで食べれるって聞いたから参加したぞ! ニャミはカエルやサカナをいっぱい食べたいから【2】で行く予定だぞ。みんな、よろしくなー。
ベルクだ、よろしく頼む
No.29
ユネスコです。 ダンジョンには夢が詰まってるね!
よォ!賑やかでイイじゃねェのよ!! 俺ァキャスターのドーマ・アザーリってもんで。 俺も【1】で迷宮に挑むぜ!当然目指すはなるだけ最深部だァ!!
放浪騎士のシュロだ! 何だか楽しそうな場所だな。色々回ってみたいぞ!
リンタロウ。【2】で露店巡りの予定だ。商売人の端くれとして敵情視察はしとかねぇとな。
ヒューマンのヒーラーのユークリアと申します。 差し出がましいですが、私はレイウェスト殿下が気になるので少しでも元気付けて差上げられたらなと思っています。
スィーリーンと申します。よろしくお願いします。
やぁ諸君、私はアルフレッド 知己友人の方々と初見の方々においてもよろしく頼む
リザードマンのバクルだよ。よろしくね! 【1】で迷宮に挑むよ! ふふ、久しぶりだなぁ。 皆、がんばろうね!
キャスターのミツキよ。 私も迷宮に挑戦ね。よろしく。
シスル。シーフだ。よろしく。 せっかく迷宮都市なんだし、ま、一攫千金狙って挑むのも悪かねーだろ。 ってことで【1】の予定だぜ。
イズレンディル・パラリムと申します。 迷宮に挑戦する予定でおります。お会い出来ましたらよろしくお願いしますね。
トーラです。 迷宮に入ろうかと思って来たんですけど、ちょっと考えてることがあって変わると思います。 ご一緒することがあればよろしくお願いします!
セヴラン・クアルト シューターだよ どうぞよろしく。 んーー ぶらぶら見て回ろうと思っていたけど 収穫祭に僅かでも寄与できるなら【1】かな 今の所。 ご一緒する縁があったら宜しく。
ヨトカだ。えーとなんだ、よろしく。
バーネット・フォーサイス、キャスターだ 【1】に行こうかとも思ってるが…… さて、どうしたものか
ヴィルヘルミナです。宜しくお願いします。 行き場所はゆっくり考える事にします。
ヒーラーのエレオノーラと申します。 迷宮…いい響きですねぇ…。
ヒーラーの桃武侑芽よ。 迷宮の側に食事、更にお風呂まで完備なのは、 今後挑むかもしれない身にはありがたいわね。
シューターのアルトよ …ぶっちゃけ、交友を広めたいから来たんだけど、逆に人が多くてどうしようかなと()
イズル・ヴォルゴールだ。よろしく。
はじめまして! 私、キャスターのキキです。どうぞよろしくね! 行き先はまだ決めてないし、なんならココでお友達見つけられたらなぁって……へへっ どなたかご一緒しませんか!(周りキョロキョロ、手をぶんぶん)
キャスターのニーラ・メッコです。 よろしくね!
シーフのサフィラだよっ!よろしくねっ! 迷宮で冒険…ワクワクするねっ!
ハリスと申します。どうぞ宜しく。 できることが多いようで。迷いますね…。
私(ワタクシ)ですわ!! 【1】に華麗に参戦させて頂きますの 勝手が分からずとも、私の優雅さと品格を持ってすれば容易いお仕事にして見せますわ!
鵜鬱鷹 浩之と申します。 まだ何処に行こうか迷っておりますが、よろしくおねがいいたします。
アランチャだぜ、よろしく。 行き場所は考え中。
キャスターのレヴァーレ・クアルムです。 行動はまだ決めかねてますが、しかしせっかくの大規模な集まりですから楽しんでいきたいです。 よろしくお願いしますね。
バンビですわ。よろしくお願いしますわね。
ジェンナです。 よろしく。 1か2かで迷っていますが、 1が多そうなので2で甘味巡りかな などと考えています。
おらぁ、ヒーラーのカンナ ミツキっでいうだぁ よろしくおねげぇすっだ おらも今一人だぁ、どご行こうかなやんでるべ
キャル・イルセイン、よろしくね。 行き先は……どこに行っ……(人混みに消える)
すまぬ、挨拶が遅れたな。咲羅じゃ。 【狂桜会】として【1】に参加する予定じゃ。よしなにの。
新人のアリア。折角のイベントみたいだし、お邪魔するねっ。 行先は…これから考えますっ!(くわっ
お邪魔します!リリです!楽しそうなので参加したいなって思って飛び込んじゃった!依頼初めてだけどダイジョブかなかな? 行く場所もまだ決まってないからこれから考える!
ヒーラーのヨルだ。 迷宮に挑むつもりでいるよ。どうぞ宜しく。
キャスターのウォルナです。 【狂桜会】で【1】に参加予定! 見かけることあればよろしくお願いします。
シーフのナハシュだ。 面白そうだし迷宮に遊び行こうと思ってる。よろしくな。
キャスターのユヅキ・ユヅハラだぜ! 今回は【2】で宴をやる予定だな。 相談所に色々書いてっから、興味があったらよろしくなァ!
おーおー、賑わってるねぇ。 アウル、シューターだ。 報酬が出るんだろ?なら迷宮に行くのも悪くねぇ。 ソロで行くつもりだが、中で会ったら…まぁ、テキトーによろしくなァ。
ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 【白翼騎士団】で参加するぜ。 シルトラース帝国出身者は是非【白翼騎士団】に参加してくれ。
レイヤ・ダライ=カホールです。 まだどこに行くか迷ってるところですけど、よろしくお願いしますね。
情報屋のルチルだ。 アタイはせっかくの機会だしお偉いさんとこの人にインタビューをしに行くつもりだ。
そふぃあ……。ヒーラーです。 たぶん、ダンジョンにいく…おやすみなさぃ…。
ウォーリアのフリーダです。皆さんよろしくお願いします。 【1.迷宮に挑む!】に行くつもりです。 もしよろしければ一緒に行動して下さる方がいましたら、よろしくお願いします。
ヘレン・ワーグナー。よろしくー。
シーフの桃武・侑飛だよ、よろしく! 姉弟でかたまって動くつもり。 多分【2】で、のんびりお風呂でふにゃってるかなー
キャスターのマーハ・アセトシソン。参加するみんな よろしくね!
ウォリアーのヴャチェスラフ・スタリギン。 此度の得難い機会、俺は無論【1】にて迷宮に挑むとも。 ともあれ、よろしく頼む。
桃武・侑輝、ウォーリアだ 姉貴や兄貴と一緒にのんびりさせてもらうよ。 よろしく頼むわ!
ロイ・アウレラです。 迷宮都市で観光させて貰います。 よろしく。
テス・クラルスです。 ロイと観光メインで動くよ。 すれ違った時はよろしくね。
オレはアーノルドだ!よろしくな! ウマイ肉が喰えるって聞いたんで遊びにきたぜ! くんくん……カエルの肉はナマで喰えるかな……サカナはナマの方がウマイよな!
イヴェール・イリュジオンです。 どうぞよろしくお願いいたします(ぺこり) 特に行き先は定めていませんが、1か2になると思います。
Talara。食べ物、沢山、2行く。 よろしく。
ヒーラーのロゼット、参加したわ。 行き先はもう少し依頼を読みながら考えるわ。 皆よろしくね!
やあ! こんばんは。ウィリアム・リーンエス――ただの飲んだくれさ! 冗談はさておき、今回の内容について質問がある場合、解説にある「相談所」コミュニティに質問をしてくれるかな? 答えられる範囲なら回答させてもらうよ! まあ……答えられないものは、さっくりそういうものかと諦めて欲しい。それじゃ、よろしくね!
アンジェラ・ブラックウッド、キャスターよ。 何をしようかしら。
ごきげんよう。ヒーラーの、ヴェールヴァルデと申します。 迷宮都市だなんて…とても、胸のおどる響き。 叶うなら、ゆけるところまで。根をわけて、くだってみたいの。 ふふ。お祭りのようで、なんだか素敵ね。 少し、どきどきしてしまうわ。どうぞ、よろしくね。
キャロル・エターム 私は故郷からそこそこ近いし、何度か遊びに行った事はあるわね。 美味しいお店は知っているつもりだし、2-1でご飯を食べに行くわね
ナンチ・ヤジナイです。250人ですね。 迷宮から産出される素材というのを見てまわるつもりです。
イヴァンだ。ここ以外でもどっかであったらよろしくな。 ダンジョンアタックも魅力だけど、酒かぁ……でもなぁ、ゴールドが……
やっほー、エクレアちゃんやで! 飯食いに行く予定やけど、気分で変わるかもしれん。 現地であったらよろしゅうなー
No.93
スフェーンッス!オイラどうすっかな、皇族と話す機会なんてないッスし……ちょっと行ってみるか!
ヘレム・カースワーズです! チーム【ホワイトカース】でダンジョンに挑戦します。メンバー募集中らしいですよ!
ぇっとー… ララノア、です… 何をするかは…迷っています… よろしくおねがいします(ぺこ
シーフのジェラール・デュラン。よろしく。 何をするかは、まだ決めてないんだけど…。ちょっとだけ、カエル料理は気になってる、かな。
はじめまして、こんにちは。 ラウラ・N・ヴィークと申します。 まだ特に何をすると決めているわけではありませんが、折角ですから楽しく何かできればと思っております。 どうぞよろしくお願いします。
ウォーリアにして圧倒的盾! パトリツィア=レイネス=ナハティガルですわ! ブレイブファング傭兵団の盾として、【勇牙】にて参戦させて頂きますてよ!
ネーアはネーアだよ、よろしくね! 美味しいもの食べたいなー!
No.100
サイラスだ、よろしくなー とりあえずNPCにちょっかい出そうかなと思ってる
ルチ・コクジョウ。大体の奴は初めてだと思うがよろしく頼むぜ。 私は全力でダンジョンを翔けてみるつもりだ。チーム行動するかは…正直まだ決めてねぇな。 まぁ一緒に行動する時は仲良くするつもりだぜ。
>【勇牙】 お世話になるよ。 がんばろうね!
ローレシアと申します。 どうぞ、宜しくお願い致します(お辞儀)
エンデ。よろしく。 王族を見る機会なんてそうそうない、ちょっと覗きにいってみるつもりだ。
ニール・ロブラリア。どこかで逢ったら、よろしくね。 たぶん、観光してると思う。
やあ、ボクはエルフのロベリア、見ての通り悪い魔女だ、よろしく頼むよ。 気になる御人達と交流も出来るようだが…迷宮に挑めると聞いてボクの好奇心はそっちに負けてしまった! という訳で、「レストラン【竜の息吹】」という冒険者が集うレストランの面々(じゃない人もいるよ!)で、ダンジョンアタックに向かおうと思うよ。 目指せ表彰!
お、おお…お…王子様が…王子様が…あわわ…(リーンエス王子を見て目をキラキラ、足をガクガクさせている!) この機会にお話をさせてもらいたいと思います…!(選択肢3でウィリアムさんへ)
No.108
アルマン・アルスターだ。 俺は傭兵団の仲間と一緒に探索に潜る予定。 さて、俺がどこまで出来るか… 俺がへにょへにょでも、仲間達がちゃんとしてるから!大丈夫だ!(溢れ出る自信
No.109
ロサード・シュナイダー。 よろしく。 …。あれは…殿下。 …私が爵位を継ぐ事はないけれど、一応ご挨拶はした方が、いい? …いや、冒険者同士としてのほうがいい? (【3】でウィリアム王子にご挨拶に参ります)
アスティン・ヴェルライン。よろしく。 とりあえず…。迷宮に潜ってみるつもりかなー。
ユスだ!よろしくな! やっぱ冒険には迷宮が付き物だよな、もちろん【1】に行くつもりだ! 前衛は任せとけ!
わたしはイポクリジー。どこに行くかはこれから決めるの。まあ、縁があればよろしくなの。
No.113
あ、その・・・。 フィルエス大森林出身のリディリディです。 今回は迷宮に挑むチームに加わらせて頂きました。 なるべく多くのものを持ち帰られるように・・・がっ、頑張ります。
アンジェリッタ・クラリンドといいます。 【1】で仲間(活性化しているフレンドの面々)で迷宮に潜らせていただく次第でございます。 目指せ、表彰でございますね。おー(仏頂面のまま
どうも! ティール・クラリオンと言います! 【3】で知人の方々のお手伝いのようなことをする予定です。迷宮に向かわれる方はご武運お祈りしています! それではどうぞよろしくお願いします!
え、と……自分、ユゥラ。ユゥラ=フォン。 特に、なに、決めてない、けど……。 よろし、く……?
シーフの海神江流と言う。 【2】で同僚と露店巡りの予定かな。 縁があれば宜しく頼むよ。
シーフのルーズリーフだ。 とりあえず冒険しに来た! 初心者ソロでどのくらい行けるもんなのか試してみるつもりだ。 道中会ったらよろしくなー!
グレイブ・ヤード 行動は3で、『都市の有力者回り』を予定している。 そもそも出来るかわからんが、多少の挨拶回り程度なので門前払いでも特に問題ない。 ただ出来た場合は多少は筋を通したという自己満足が得られるだけの行動予定だ。
ライラです。 何をしようかは考え中です。 よろしくお願いします。
傭兵のファイサルだ。 今のところは単独で迷宮に挑むつもりだ。 よろしく頼む。
No.123
シーフのエリシェールだ。 ソロで迷宮に潜るつもりでいる。
キリも参加するよー。 よろしくね!
ウォーリアのディアンだ! せっかくのでけぇ祭り、ダンジョン攻略も飯巡りも全員全力で楽しんでいこうぜ!
ブルーテ・ビシアだ。 迷宮に潜る予定でいる。向こうで会ったらよろしくな。
シャルロット・エクレールです。どうぞよろしくお願いします。友達と一緒に迷宮に行く予定です。頑張りましょう!
灰の紅茶(ミスティー)だよー。 とりあえずソロで迷宮に挑むつもり。よろしくね!
ん、ストレガなのだ。【2】で遊ぶか【3】にするか考え中なのだ
僕は、ララベル・サン・デイーベル。 宿の仲間達と一緒に、【ふしぎ亭】と言うパーティ組んで【1】の迷宮に挑むよ。
賑わってるなぁ。 俺はカッシア。知り合いと【2】で露店巡りするつもりだから、すれ違うことがあればよろしく。
ヒーラーのウォン・ジンユゥである。よろしく頼む。 我は【1】のあたりを適当に動き回りながら、必要とあればうぬらにヒール等を恵んでくれよう。 そしてさらなる力が欲しいならば、なるべく大きな声で我を呼ぶがよい、はっはっは!
シーフのアルウィン。単独で【1】に行く予定だ。よろしく。
はじめまして、シューターのネーナです。よろしくお願います(ぺこり) 【2】-2.大浴場。一緒にマッサージしませんか?
つ、ツァガーン……。 【2】……夜の露天……少し、彷徨いてみる……動物の小物とか、あるかな……。 ……ひとりだけど、もし会った時は、よろしく……。
挨拶が遅れちまった! 名はロウトフェダー、【1】の予定だ。よろしくな!
フェイサル・セイフだ、挨拶が遅れてすまないな。 知人と【1】へ向かう、縁があれば宜しくお願いする。
すっかり顔出すの遅れちゃったな。ハガネだよ。 飲んだり食べたり楽しみだ! もし会ったらよろしくね!
わー!ギリッギリの挨拶失礼します! 初めまして、ジェラルドです!【2】でご飯食べに来ました! カエル好きなんですカエル。もしご一緒になれば宜しくお願い致します!
む、挨拶という文化を忘れていた。 アンジェラだ。何をするかこれから考える。ギリギリ、というやつだ。 よろしく頼む。うむ。
すんげぇ遅くなったけど、一応挨拶しとくな。 アレン・ボールドウィン。【3】で適当に、って感じだ。 よろしく頼むわ。
アルルだよー。 お友達と一緒に【2】でケバブの屋台をやってるんで、よろしくなぁん♪
ウォーリアのガエサラウリだ。 我は迷宮にて自らを鍛えるつもりだ
ボクはミルカだぞ。【2】でお風呂に入ってゆっくりお昼寝するつもりだぞ。
あら、人がたくさん。 リーザよ、リーザヴェールと言うの。 のんびりお散歩でもしようかと思っているわ。 お顔合わせることがあればよろしくお願いするわね。
滑り込みでごめんなさいね。 はじめまして、メイジーっていうの。 【2】の3、露店あたりをぶらぶらするつもり。 もしも会えたなら、どうぞよろしくね。
はっはっは、ギリギリだな! レオナルドだ! 【2】の大公園で友達と遊……調査! どのような造りか調査に行くつもりだ! すれ違うこともあるかもしれないね、よろしく頼むよ!
私も滑り込みー!猫みたいにずざーっと! 狩人兼冒険者のスウィナよ、よろしく! 【1】で個人探索して、採取や狩猟とかやってみる予定よ。 (※名前間違えた為投稿削除→再投稿。すみません…!)
まれーね、と、もうします。 まれーね・しぇーんべるぐ、ですわ。 ええと、【3】にて、れいうぇすとさまと、おはなしをしにいきたいな、と。 おなじ、もくてきのかたがたは、きっと、おあいするかも、しれませんわね。 そのさいは、ぜひ、ぜひ、よろしくおねがいいたしますわ。
ギリギリ間に合ったみたいだね。 僕はキュリアス、吟遊詩人さ。 【2】で良さげな酒場に取り入って、客寄せに演奏させてもらうつもりだよ。 打ち上げのお供にどうだい?
もの凄く遅くなってしまいましたが、私も参加しますっ。 私はフロマーシュ・ダイヤドロップと申します。 皆様よろしくお願いいたします。 私は【1】で、迷宮で探索、戦闘している方々の救援に向かわせていただきます…!
ギリギリ350に間に合いましたね リチャード・ツァオと申します 折角なので歓楽街に繰り出すと致しましょう
ギリギリになってしまいました。 コルネリウスです。 友人と一緒に、大公園に遊び…調査にいきます! 見掛けましたら宜しくお願いしますね。