【死軍】ヴァイセントラフ砦防衛

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シナリオID:245

オープニング



「数日後、この砦は包囲されることとなる」

 訓練場に居並ぶ冒険者たちに向かって、ヴィント砦の指揮官であるハーフビーストのバルディオンはそう言った。
 軍装に武威を滲ませた肢体には気負いの色はなく、口調も淡々たるものであった。
 冒険者たちは、ヤコブ・ヴィリアンの手口ーー手紙による揺さぶりについての情報も共有されていた。バルディオンが太守となっていたヴィントの街に住んでいたという子息の名で、その手紙が届いたのだということも、彼のみならず、ヴィントに詰める多くの兵士たちに届けられたものとほぼ同一の文面であったことも。
 バルディオンは手紙(これ)を、揺さぶり(ブラフ)と捉え、兵士たちに無視するよう徹底している、ということも。

「ヴィントの方角から押し寄せるアンデッドの数は三万を超え、四万に届き得る。アンデッドを追っているのか、はたまた別の要因かは判断できないが、クリーパーの姿も確認されている。これらはすべて、このヴァイセントラフ砦の方角へ――そして、国境を超えて王国へと進軍中だ。アンデッドを操っているのは、この砦へと届けられた大量の手紙から、吸血鬼にして死霊術師のヤコブ・ヴィリアンだと推察される。……ヤコブについては、ウィリアム王子から伝えて頂こう」
「ああ」
 言葉と視線を受けて、ウィリアム・リーンエスが笑みを浮かべた。

「酔狂な戦場へようこそ。ウィリアムだ。まずは――既に察している者も多いだろうけれど、帝国の要衝に僕やアーチボルト辺境伯、それから王国兵が詰めているのは、『共闘関係を構築した』からだ。今回は急な事態だったから、王国(僕たち)も総力を挙げての支援とは言えない。加えて、帝国難民のキャンプへの輸送を狙った野盗が多発していて、この砦への物資輸送の護衛、兵站の維持にも手が取られているから……正直なところ君たちの助力は死中に活、ともいえるほどに有り難い。頼りにしているよ」
 そうして、冒険者たちを見渡して、続ける。

「さて。ヤコブについて、だね。彼は、王国出身の『吸血鬼』で、血統柄特殊な異能は持たないが、身体能力の強化に特化した日光では死なない吸血鬼(デイウォーカー)だ。王国――正確には、王国の貴族に恨みがあるのか、貴族を狙った連続殺人を犯した重罪人でね。彼は貴族を自らの眷属に加えることなく、そのままその腹に収めたことから【貴族喰】としても知られている」
 ウィリアムは、横目にバルディオンを眺めた。
「ヤコブは酷く直情的で、独善的な人となりというのが、これまでの情報を踏まえての僕らの意見だ。彼は真実、王国貴族を呪っているし、機会があれば貴族を誅殺しようとするが、同時に彼は『自分は公平で清らかな大人物である』という強烈な自負がある。……バルディオン将軍は、今回の一連の行動をヤコブの奸計と見ておられるが、ヤコブにとってあの手紙は正真正銘、混ざりっけ無しの誠意の証で、だからこそ、これを断られたと判断したヤコブは激昂し、ヴァイセントラフ砦を全力で破壊しつくそうとするだろう、というのが、彼をそれなりに知る王国(僕たち)の結論だ」
 そうして一つ、苦笑した。
「……ここでヤコブを殺せるのならばそれがいいけれど、ヤコブ自身は前線に出てこない可能性が高い。手紙を書いたり、死者からこの砦の関係者を正確に探すような雑用をヤコブがしたとは考えがたいから、十中八九、配下の吸血鬼がいることは間違いないからね。この砦が包囲されたとして、その指揮を担うのはこの配下たちではないか、と想定しているよ」

●
「――以上を踏まえた上で、今回の防衛にあたっての作戦について説明する。今回、我々が行うのは籠城戦だ」
 ヤコブについての説明を終えたとみて、バルディオンが継いだ。そうして、掲示板に大きく広げられた地図――砦の模式図を指し示す。
「ビッグオウムでこちらに輸送される際に確認した者もいるかもしれないが、このヴァイセントラフ砦は、円形の砦だ。直径は2km。最外層は深さ10m、幅20mの空堀となっており、東西南北それぞれに跳ね橋がある。その内側には5mの間隔を置いて二重の城壁があり、それぞれの高さが5m。城壁の内部と屋上には、それぞれ狙撃用の中窓が存在している……利用してもらって構わないが、くれぐれも逃げ遅れないように留意して欲しい。城壁内部の出入り口は限られているため、アンデッドに浸透された場合、戦闘箇所によっては脱出ができなくなる可能性がある」
 そのまま、砦の内側を指していき、
「そこから更に内側は、生活用設備や武具用の鍛冶設備など、城塞・都市としての機能を維持するための施設が立ち並び、前線兵の救護施設や補給施設として運用されることとなる。市街戦も想定されたものではあるが、冒険者ギルドとの約定により、ここに浸透された時点で君たち冒険者の空輸脱出が開始される。……つまり、今回の作戦では、空堀、外周にあたる第一城壁、そしてこれらを破られたときの第二城壁が実質的な戦場だ」
 問題は、敵はどうでるか、だが。
「攻城兵器の姿はないし――おそらく、あったとしてもろくに使えまい。故に奴らは四万の兵をもって空堀を埋め、そのうえ城壁まで死体を積み上げて足場となし、跳ね橋の破壊、もしくは城壁の登攀を果たして浸透を目指すだろう。この浸透をどう食い止め、あるいは崩すか、が要となる。我々帝国兵、ならびに王国兵の計四千の兵はこの対応にあたる形となるが、冒険者の諸君らは、その適性にあわせて方針を決めてくれて構わない」
 と、バルディオンは一同を見渡す。
「そして、この籠城戦の間、君たちに運用の一部を任せたいものがいくつかある。一つは、冒険者ギルドから貸与されたビッグオウム。これは、敵が砦に至るまでの間、もしくは籠城戦の間に、外部の案件対応や、一団への背後強襲に利用してもらって構わない。だが、君たち自身が重包囲された場合、救出のためにビッグオウムがそれ以上使えなくなる可能性があるので留意してほしい。次が、ドワーフ王国から貸与された設置式の弩砲だ。第一、第二城壁にそれぞれ30門ずつ設置されている梃子式の弩だが、十分な威力を発揮しようと思うと硬すぎて授恵者でなければ使えん。どのみち、城壁上はすぐに乱戦となる。であるならば、その運用を含めて諸君らに預けたい。最後に、『強行輸送』だ」
 そうして、再び砦の模式図に目をやったバルディオンの目が、微かに細められる。
「この戦闘は、おそらく最低でも数日間に渡るだろう。難民の受け入れをしていたこの砦の備蓄は少なく、最低限の糧食は確保できているとはいえ、十分な休息のためには不足している。そのため、輜重隊の手配がアーチボルト領で進められている。ビッグオウムでは非効率故に運べない重量物や危険物……ここには、矢玉や武具、ドワ―フ王国からの支援である『燃える水』も含まれており、可能な限り成功させたい任務だ。しかし、この砦が包囲される形となる以上、強行突破が必須で、輜重隊の受け入れに際しては跳ね橋をおろす形となる。この任務も、諸君らに預けたい。……以上だ。健闘を祈る」


●
 ヴァイセントラフ砦から遠く。亡者たちの声を貫いて、奇声があがった。
「な、な、ななななな……っ!!!!」
 金髪をぐしゃぐしゃと搔き乱し、口角から泡を飛ばすヤコブ・ヴィリアンは、その報告をしてきた吸血鬼を激情のままに蹴り飛ばした。地面に伏せる吸血鬼には目もくれず、ヤコブは絶叫する。
「受け容れられないィィ? ありえなァい!! 何故! 何故! 何故何故何故何故ナゼなのです!!? 奇々怪々にして暴力的な悲劇に呑まれた帝国臣民が!! 美しく立ち上がった今!! 帝国臣民同士手を取り合ってあの汚泥まみれの王国を打破するために残された唯一で!! 絶好の!! 機会でしょうがァ!!! バルディオン!! アナタはそれでも将ですか!!! ああああああ無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能無能ゥ……!!!」
 無能、と叫ぶたびに動きまわって地団駄を踏み続けるヤコブに、声を掛けるものなどいない。報告のためにやってきた吸血鬼以外は四万のアンデッドの管理のために忙しく走り回っているし、周囲にはアンデッドばかりしかいない。
 ――ああ、確かに声はかからなかった。
 激高するヤコブの身体に、触れるものがいた。小さな、ハーフビーストのアンデッド。バルディオンの縁者であるということでヤコブの側におかれていた少年が、動き回るヤコブにぶつかり、尻もちをつく。その不届き者が何者であるかに気づいたヤコブは、さらに顔を真っ赤に染め、牙を剥き出しにして吼える。
「座ってる場合じゃ!! ない!! ですよ!!! 父も父ならアナタもアナタですねえ!!! バルディオンジュニア!!!」
 ヤコブは座り込んだ少年の下半身を思い切り蹴り上げる。吸血鬼の怪力故か、もともと損壊していた足がねじ曲がった。受け身も取れずに倒れこんだ少年のアンデッドに、ヤコブはこう命じた。
「さっさとお父上を誅殺してきなさい!!」

解説

■相談場所について このシナリオの相談スレッドのみの運用ですと、閲覧に際し非常に重くなる可能性があることや、戦域が多岐にわたるため、別個相談用のコミュニティを用意いたしました。 【死軍】決戦シナリオ相談場 https://alpaca-connect.com/world/world0/community/Ft0YNQ0jtnGRKmq5oQw7 ・戦域単位での募集や挨拶 ・パーティの募集・案内 ・【タグ】説明スレッド また、パーティ内での個別の相談については、上記コミュニティ以外を使用してくださってもかまいません。 ■【重要】プレイングの書き方 ・今回参加する戦域を右記の形式で【一行目に】記載ください。:【1】【2】【3】【4】 ・パーティや協調行動を示すタグは【二行目】で指定してください。タグでの指定は必ず【一つまで】となります:【玉子】【決死隊】  例   【1】   【決死隊】   (プレイング本文) ・【タグ】とは、「パーティの集まり」がどういった行動指針をとるのか、ということを示す表記です。お友達同士の参加や、特定の目的の行動をする場合、同じ【タグ】を表記していることで判定に用いられます。 ・同じ【タグ】で選択肢が分かれることは問題ありません。 ・【タグ】内容の説明(何を目的とするか、運用方針など)については、「相談用コミュニティ」の専用スレッドに【200文字以内】で記載ください。200字を越えた場合はタグそのものを無効といたします。 ■状況 ▼場所 平原に存在する直径2km程度の円形の砦。二重の城壁で覆われ、最外部は深さ10メートル、幅20メートル程の空掘が四方を覆う。 東西南北それぞれに跳ね橋と木製の門扉あり。 ▼味方戦力 王国兵1000名、帝国兵3000名の混成軍。 賢猪将軍バルディオン。砦内部にて全体の指揮を執る。 ウィリアム・リーンエス第二王子。北東部を中心に指揮を執る。 メルヴィン・トマス・アーチボルド辺境伯。北西部を中心に指揮を執る。 ▼敵戦力 ・アンデッド おおよそ4万ほど。防御力は乏しいが、高い生命値を誇る。直接的な物理攻撃が主体。 数からみても、旧ヴィント市民と、駐留していた帝国軍人たちの変わり果てた姿なのだろうと想定される。 ・クリーパー ゾンビたちの行軍に惹かれてかやってきているクリーパー。形状は様々だが、中型が主。 多くはエーテルの気配が濃厚な砦に向かう。アンデッドたちの中に現れる強兵的存在として猛威を振るう可能性があり。 ・吸血鬼 ヤコブ・ヴィリアンの手下の吸血鬼たち。散逸しがちなアンデッドたちに死霊術を通じた指示を行ったり、邪魔そうな防衛戦力を強襲してくることが想定される。 ・ヤコブ・ヴィリアン 吸血鬼。後方で待機しているためか、全く姿が確認出来ていない。今回の戦闘ではまったく出現しないか、もしも現れるとしても相当後になると推測される。 ▼選択肢 【1】外部遊撃:危険 あらかじめ、ヴァイセントラフ砦から離れた位置に配備された状態で遊撃を行う選択肢です。 一羽辺り10名以下であればビッグオウムによる輸送も可能ですが、敵地の中への強行突撃はビッグオウムではできません。また、空中から地上での乗降には最低でも3分の安全確保が必要です。ロープなどを垂らしての低空からの乗降も可能ですが、行為の難易度は上がります。ビッグオウムの貸与数は大陸各地からかき集めたこともあり十分に確保されていますが、強襲で喪失が重なるようであれば今後の作戦での運用が禁止されることもあり得ます。 展開の速さが求められる、冒険者のみの編成となります。 期待されている役割としては、防衛線で危険な場所ができた場合に、背後から強襲して圧を減じること、また、可能であれば、敵の前線指揮官の発見・交戦となります。野戦が主体となるため、移動速度がアンデッドよりも遅い場合、包囲された結果死亡します。 この対策として、【1】を選択したPCのうち、ビッグオウムを利用しないPCに対しては騎乗用の軍用馬が貸与されます。しかし、大群への無策の騎兵突撃は馬を喪うのみとなり得ますので、基本的には撤退用の足としての運用を心がけてください。 また、場合によっては数日間にわたり平原内で孤立する形となるため、独自の備えも必要です。 【2】ヴァイセントラフ砦防衛 帝国・王国混成軍とともに協力して防衛戦闘を行う選択肢です。 砦に張り付き、乗り越えてこようとするアンデッドたちや、それを指揮する吸血鬼、散発的に襲来するクリーパーたちに対して、『いかにして長期戦を達成するか』、どのように『敵方の圧を減ずる』か、『軍人たちを含めた被害を低減するか』などが重要です。 【3】ヴァイセントラフ砦支援 直接アンデッドと相対する以外の選択肢となります。 砦内の防衛隊を補助し、特にドワーフ製のバリスタなど防衛兵器の運用や、同バリスタが狙われた場合の防衛が期待されています。 また、【1】外部遊撃の面々に対しての連絡や物資配送の手続きなどを行う場合や、砦内部での後方支援などもこの選択肢に含まれる。交代で休息する兵士・冒険者たちへの慰労や休息のための工夫、炊き出しなどもこの選択肢に含まれます。 【4】強行輸送 ビッグオウムでは賄いきれないリーンエス王国、ドワーフ王国からの支援物資の強硬輸送を行う隊です。敵の移動速度などから予測した砦への到達時刻は最速で包囲開始の2日後です。 南方の跳ね橋を一時的に下ろしている間に、死者の兵団を後方から撃破しつつそのまま駆け抜けて砦内に走りこむことになります。 輜重隊の馬車や重要な積み荷が壊されないように、どのように行動するかが重要です。輸送の際の砦内部からの協調行動などもこの選択肢に含まれます。 この作戦の達成度により、強力な火計が使用可能となったり、兵器運用による撃破数の向上、十分な糧食による休息効率の向上などが得られます。 ▼特別ルール 四万体のアンデッドとの戦闘は数日間にわたることが予想されています。 スキル使用回数やステータスについては以下のルールを確認ください。 1.十分な休養・睡眠が得られれば、一日に一回だけスキル回数を回復することができます。そのために必要な時間は、所持スキルや【3】の達成度に依存します。 2.戦闘不能状態になった場合でも、砦に戻り治療をうけることができれば戦線復帰は可能です。ただし、戦闘不能状態からの復帰には相応の砦のリソースを消費することになります。 ■決戦シナリオについて ・参加者にはこのシナリオでの働きに応じた褒章が付与されます。将来的にPCの皆さんの功績を表す重要なアイテムになりますので、大切に保管してくださいね!

マスターより

こんにちは! WDのムジカ・トラスです。空気の読めない吸血鬼の滋味が沢山詰まった戦場へようこそ! 今回の決戦シナリオ、執筆は複数のマスターが担当いたしますが、基本的な判定は運営サイドで行います。 パーティーを組んで挑むもよし、ソロで活躍を目指すもよし。 戦闘に限らなくても、キャラクターそれぞれに、得意なことや不得意なことがあると思います。 血塗れ腐臭塗れの、決してきれいとは言えない籠城戦ですが、だからこそ戦闘が得意な方も、そうでない方それぞれにキャラクターの力を発揮できることもあるでしょう。 皆さまの、「らしさ」の詰まったプレイング、運営および担当マスター一同、お待ちしておりますね! ※※参加人数によっては特別ボーナスがあるかも……?

リプレイ

1日目 午前~ 【2】ヴァイセントラフ砦防衛 (執筆担当:ウケッキMS)
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 押し寄せる死者の軍勢を眺めるのは、アンゼリカ・ミケーレ・ラディーチェである。妖艶な衣装に身を包み、その露出は余すことなく高い。
 今まで見た事ない不吉な光景に若干の嫌悪感を出しながらも、彼女は腕を振るう様に薙ぐと指先からいくつもの光弾を放つ。光弾は死者の群れに命中し眩い光を炸裂させた。
 炸裂した光と共に発動した氷嵐が群れをある程度薙ぎ払うが、押し寄せる軍勢は僅かな隙間を生まれさせることも許さない。冒険者が事前に作成していた防護柵に引っかかる個体もいたが、何しろ数が多い。
 彼女の隣に立つフィニエス・クーガは装備した鉄の弓を引き搾り、あらかじめ狙いを付けた地点へとエーテルを纏わせた矢を放った。
 真直ぐに放たれた矢は耐久力の高そうな個体へと命中し、一撃で膝を折らせ行動の阻害に成功する。動けなくなった個体は押し寄せる他の死者に踏み潰された。
「これじゃキリがない……倒しても倒しても次から次へと! 火力を集中させないと数で押し切られるぞッ!」
 城壁に立つフィニエスの背後に上ってきたのは兵士達へ丸太や手頃な岩など城壁への張り付きを阻止する為の罠を運び終えたスフィカだった。
「助太刀するよっ! あなた達の背後はうちに任せて!」
 エーテルを体内に巡らせたスフィカは城壁へ昇り始めたアンデッドを狙い壁を垂直に走ると頭上から急襲する。
 すぐさまアンデッドも彼女を掴もうと狙うがひらりと身を翻したスフィカを捉えることはできない。
「これより先は行かせません、降り注げ光よ!」
 戦場を走り、後衛への攻撃を防ぐスフィカを援護するのは弓を強く引いて光り輝く矢を放つアルム=ラントだった。
 彼の放った矢は地面近くで炸裂し無数の光の粒を撒き散らす。それらはアンデッドの身体を容赦なく焼いた。ゴロゴロ落ちる岩や木が追い打ちをかける。
 続々とやってくるアンデッド達へ行動阻害として彼は攪乱射撃を混ぜる事も忘れない。実に抜け目ないモフモフである。
 その時、屋上からニール・ロブラリアが放った矢が、別の場所のゾンビを同様に吹き飛ばす。兵にとっては顔見知りがいるかもしれ無いと思えば、なるべく見えない場所で倒してやりたかった。開戦当初は、アルムやニールだけではなく多くの弓手が、序盤では空堀の向こう側への一斉射撃を行っていた。死体で壁を築き上げる策は午前の半ばほどまで時間を稼げた。しかし昼前にその死体の壁を丸ごと堀に押し込まれてしまい、堀の半ばまで埋められてしまってからは各個撃破に転じざるを得なかった。

 だが今回の作戦では埋まりかけた堀の対処もしっかりとされている。古木の長杖を振りかざしその先端から水の奔流を噴出させ空堀に溜まった死体を流すのは飯塚・麦穂だ。
 彼女が水を流すだけでは敵の多さを考えると大した効果はないだろう。魔法の水が存在している時間も長くはない。が、死体も共に流す事でそれらは土石流の如く群がるアンデッド達を撹拌しながら押し流していく。
 汚い運河の如く流れる肉塊の川は見た目はとてもいい物ではないが、戦況への影響としては押し寄せる敵を巻き込んで無慈悲に押し流す実に素晴らしい物であった。
 肉の川の異臭に鼻をつまむヴィノニスは嫌悪した表情で流れていく方角を見る。
「ここまで死臭が漂ってきそう。ずいぶんな大所帯ね。あの中に取り込まれるのはごめん被りたいわ」
 雑木の杖を振るい、ヴィノニスは球状の光るエーテルをアンデッドの群れの中で炸裂させる。川を避けこちらに向かってくるアンデッドの進行妨害のみに限定しての使用だった。
 ただ放つよりも、場所とタイミングを限定した進行妨害は的確に作用する。
 現にアンデッドの群れはヴィノニスと麦穂が次々に水の奔流を繰り出して作り出す肉の川の進行妨害で思う様に進めないでいるようであった。

●
 戦域には彼らだけでなく一般兵達も参加している。彼らは大して強くはないが数に対抗する上で重要なファクターだ。
 そんな彼らに持ってきた分の水や食料を配り終えたファルマ・アラーティは傷ついた味方達を回復支援していた。
 勿論、彼女の持てる分だけの食料や水では大勢に影響はない。だが兵や仲間を気にかけたという行為は確かな支援にはなるのだ。人の力は想いによるのだから。
 誰一人見ている前では死なせないと奮闘する彼女の傍にいるのは青みがかった銀の長髪の魔女ロベリアだった。
 彼女はアンデッドを倒しながらある事を考えてしまう。見知った顔が中にいたら……それは誰しもが考えるであろう恐怖であった。
 それでも心を鬼としてそれは考えず、的確に彼女は城壁へ積み上がりかけている死者の身体でできつつある足場を根元から爆砕する。紅蓮の炎が巻き上がり、群がるアンデッドを焼いていく。
「ぐあぁっ! ぐ、こんな事じゃ負けない……ここはボクらが守るんだッ!」
 アンデッドに圧し負けそうになっているのはハルハン・ツァガーンナルである。彼女は突破されそうな位置へと急行しアンデッド相手に奮戦しているが……数が数だけに多勢に無勢。
 押し負ける事はなくとも苦戦している。
 だが彼女の心は劣勢の状況下でも折れる事はない。なぜなら彼女には追いかけている背中があり、その背中の持ち主ならばこの状況下でも諦めたりはしないのだから。
 ハルハンの後方で持ってきていたチョコをかじり、僅かな時間でもできた休憩時間を活用し鋭気を養っているのはドロテア=フォン=グレッシェルである。
 先程まで爆炎を駆使し敵の攻勢を押し止めていたのだが休憩する暇がなく、徐々に疲労気味だったのである。
 彼女はハルハンが持ちこたえている間、なんとか疲労を回復させ周囲の味方を火力支援する為、戦線へと復帰した。ハルハンが一息つく。しかし、敵の攻勢は激しい。見れば、指揮官がいた。
「ぐぅうああッ!?」
 注意を引こうとした宝丞・レジーナは吹き飛びながら地面へと叩きつけられ、数度転がる。痛む体をなんとか立ち上がらせると続け様に放たれる吸血鬼の攻撃を辛くも避けた。
 吸血鬼はアンデッドに指示を飛ばしており彼女への攻撃は片手間だった。歯牙にもかけていないといった様相である。
 悔しさに歯を噛み締めながら彼女は吸血鬼ではなく、味方を狙うクリーパーへの対処へと移行する。
 徹底したリスク管理を心掛ける彼女だからこそ、自身では対応できない相手への対処よりも対応できる相手への対処を優先したのである。
 アンデッドの大群はやむ事なく押し寄せ続け、城壁に組み付く数は時間と共に増している。
 だがなんとか登りきられずに対処できているのは多くの者達が張り付き防止用の落石や木材、罠などを事前に用意していたからに他ならなかった。
 そんな罠を用意した内の一人、アスカ・タチカゼは最前線でアンデッドと殴り合っていた。鉄の大剣を振るい、アンデッドの腕や足を狙って両断していく。
 主に考えるのは後衛の支援であり殲滅ではないのだ。支援という形で考えるならば止めを刺す必要性は薄い。その場で蠢くだけのアンデッドなど後衛の格好の的なのだから。
 異形の腕を振り上げ殴る様に振るうクリーパーの攻撃を紙一重で避け、柄での素早い一撃を加えたタチバナはそのまま燃え上がった様に輝く大剣を振り上げてクリーパーを真っ二つにする。

●
 砦を防衛する各隊の奮戦と働きにより、戦況はいまだ防衛側の優勢という状況である。
 だが戦況は刻一刻と変化し続ける。それが戦場というものだ。
 時間は過ぎ、夜陰にまぎれて、敵は戦力配置を見直そうとしていた。
 軍団規模の戦力が東西と南の背後から引き抜かれ、北へ向かう。その動きを悟られまいというように、各所に残る死者は前線に押し寄せ続けており、圧力はいや増していた。
 夜となったがアンデッドに疲れはない。彼らは夜間でもお構いなしに攻撃を仕掛けてきていた。それらはアンデッドの強みともいえるのかもしれない。
 夜の城壁を走るシャルロット・ド・オーシュは暗視の効果により、夜の暗闇の中でも敵を容易に視認する事が出来た。
 戦域の各所では爆発や炸裂、火の手が上がり全くの暗闇というわけではないがそれでも対処方法を持っていない者は行動しづらいのだ。
 彼女は手を重ね合わせると空中に振り上げ、いくつもの稲妻をアンデッドの群れへと降り注がせた。焼かれたアンデッド達が崩れ、死体の足場は崩れていく。
 だが数が多く、崩し損ねた足場があった。それを狙って城壁を駆けおりる影が一つ。サニー・フォン・オルライトである。
「こっちは任せて! いっくよぉおーーッ!」
 彼女は暗視に加え、音に敏感であるが故にアンデッド達が死体で作る足場の中で脆い崩れやすい位置がある程度予測可能であった。
 絶対ではない感覚に頼る方法ではあるがこの様な混戦の状況下ではそれだけでも心強い。
 続々と詰みあがる足場を狙っているのは彼女だけではない。
 アンデッドの群れを氷の礫を撒き散らし、薙ぎ倒していくのはゼラルム・エルホワイトであった。
 彼は土台となる地面近くのアンデッドを優先的に狙い、範囲攻撃系の魔法でそれらを的確に崩していく。
 足場を失ったアンデッド達は憐れ崩れ去り、高所から落下したアンデッド達は各々の自重でぐしゃぐしゃと潰れていった。

 暗闇の中でも攻撃をずらす事なく打ち込んでくる異形の存在、クリーパーの攻撃を大剣で防ぎながら弾く様に御邑 都は弾き飛ばす。
 たたらを踏んで体勢を崩したクリーパーに鋭い斬撃を加えるが倒れそうという所でクリーパーは踏み止まり、その腕をもう一度振り上げた。
「まだ浅いっ! 伏せろォ、都ッ!」
 ジル=クィネルの放った矢がクリーパーの頭部に命中し、ずしゃりとクリーパーはその場に倒れ込む。
 肩で息する都を気遣う様に傍にジルは寄った。
「はぁはぁ、そろそろ交代かなぁ……」
「だろうな。攻撃しながら下がって二人に交代するぞ」
 アンデッドが下がる隙に押し寄せない様、攻撃を加えながらジルと都は後退する。
 その二人と交代して戦場に出たのは御邑 奈月、シモン=プレーディであった。二人は前線の兵士達から少し後方に位置し、彼らを支援する。
 魔法を扱う奈月が魔法に集中できるようにシモンは巧みなシーフ特有の身のこなしで彼女へと敵を近づかせない。
「うう、こ、これでいなくなってくださいぃーッ!」
 奈月は氷の嵐を吹き荒れさせると塊の群れとなって接近していたアンデッドの一団を物言わぬ肉塊へと変えた。
 その支援に鼓舞された兵士達が押し返す様にアンデッド達にぶつかり、彼らの剣戟の音が夜の闇に響き渡る。
「この砦は絶対に奴らに渡すわけにはいかねぇ……いくぞ、ラコット」
「ベル、無理だけはだめだからね! あ、他の人達もだよ!」
 そう会話しながら砦の内部から戦場へと向かうのはレオネベルとラコット・クロシェットであった。
 二人はあえて出陣時間を他の者達とずらし、休憩するタイミングを与えていたのである。間を支えるという事はこの様な拮抗した戦況下では大事なことだ。相手が疲れを知らない死者の兵団であるならばなおさらである。
 ラコットは負傷し身動きが取り難い者を優先的にヒールで回復していく。接近しつつあるアンデッドを鉄の棍で殴り飛ばすのも忘れない。
 鉄の槍でアンデッドを薙ぎ払いながら進むレオネベルも疲労した味方に交代する様に伝え、彼らの抜けた穴を自身が埋めていく。

●
 夜中になった。戦況は拮抗しており、少しの油断も許さない状況ではあったが各々の奮戦もあり押し込まれる事はあってもそれを再び押し返し、劣勢という状況にはいまだなっていない。
 城壁の上から的確にアンデッドを狙い撃つのは兎のハーフビーストのリーフェであった。
 彼女はペットに索敵を頼み、その情報を元に暗闇の中でも的確にそれらを撃ち抜く事が可能であった。
 木の短弓を引き搾り、死体を足場に城壁を上ってくるアンデッドを撃っては地面へと落としていく。
「まずい、上ってくる数が多いよ! ごめん、そっち頼んだよ!」
「うん、任せて! あそこだって、お願い……ウッホッ!」
 城壁でアンデッドを狙い撃つリーフェから頼まれたララヴェル・ララフェルはペットのウッホに指示を出し、岩を投擲してもらう。
 豪快にそして力任せに投げられた岩はアンデッドの一団に命中し上がってくる奴らだけでなく、その下にあった死体の足場も崩していく。
 ウッホの攻撃の合間にララヴェルは己も槍を投擲し一番城壁の頂上に近いアンデッドを狙う事も忘れない。
 壁を走る獣が一つと見送る一人の人影。それは大鼬を操るクリア・バイライトである。
 彼は大鼬に城壁の壁を走らせながら偵察させ、最も城壁の頂上に近いアンデッドやクリーパーを狙い撃つ。更に透視や超感覚を持つ彼はいち早く敵を察知する事が出来たのだ。

●
 徐々に夜明けが近づく中、各々の疲労はピークに達しつつあった。それでもなんとか持ち堪えているのは、それぞれの奮闘があるからに他ならない。
「光達よ……いって! 悪しき者を打ち砕けッ!」
 体の周囲に球状の光をいくつも顕現させたシャルロット・エクレールはそれらを城壁の上から眼下のアンデッド達の群れへと降り注がせる。
 無慈悲な光雨の様に降り注いだ光はアンデッド達に衝突して炸裂し、弾ける光の粒子がアンデッドの身体を大きく吹き飛ばしていき足場ごと彼らを地面へと叩き落していった。
 額から流れる汗を感じながらも彼女はメテオライトの詠唱をやめない。例えその魔力が尽きようとも撃ち続ける……彼女の決心はそれほどに揺るがない物であった。今回の一件、彼女なりに想う所があるのだろう。
 そんなシャルロットの肩を叩き移動を促すのは共に戦うエイル・ビュセファスである。
「そこはもういい、次に行くぞ」
「……うん」
 彼女の内心を察する彼ではあるが今は深く追求する事はない。今は砦の防衛が先決、他の事に意識を割いていては命取りとなってしまうからだ。
 自分を大事にし他者は二の次と公言する彼なりの仲間への配慮である。心配だからこそ、今はやるべき事を優先するのである。
 城壁に手をかけ上がってきたクリーパーを杖で殴り飛ばし、付近にいるフリューリングスルフト=ティエラへと攻撃を指示する。
 上がる最中に殴られ隙を見せたクリーパーへ彼の言葉に従う様に狙いをつけ、即座に距離を詰めたティエラは鉄の短剣を横薙ぎに素早く振るう。
 体を斬り裂かれ、もがく様に苦しむクリーパーの胸部目掛けて続け様にティエラは鉄の細剣で鋭い突きを放った。
 胸部を貫かれ絶命したクリーパーはぐらりと城壁の上から落下していく。
 彼女達と同じく城壁の守りにつくシャーリー・ブラウンは連れている狼のグレイに食料や水を背負わせ、砦内を走らせている。補給人員の節約になればと考えた策であった。
 自身は城壁に位置し弓を引き搾ってアンデッドの下腹部や足を狙って撃ち抜いている。これは行動を阻害し落下させれば少ない手数で倒せると踏んだからである。
「いったいどれほどの数がいるのでしょうか……」
 倒しても倒しても沸いてくるのかと言いたくなるほどに現れ続けるアンデッドに辟易しながらも彼女は淡々と城壁からの射撃を続ける。
「サンドラ! 走って!」
 少女の声が響く。Octavia・Aureusは城壁上を駆け回りながら、手をかけ身を乗り出すゾンビたちと切り結んでいる。言葉を受けたAlexandra・Hexe・Claudiaはただでさえ青白い顔に、少しばかりの苦悶が滲んでいるが、Octaviaは特に気にした様子はない。
「――っ」
 待って、というのも憚れたAlexandraは、杖から魔術を放ちながら友人の背を追うのだった。リーリエ=V=ノイエエールデは、そんな彼女の側面を支えるように、身を乗り出してきたゾンビと相対。盾で押しのけながら、その喉元を突きあげるようにして押し止める。フォルシウス・ヒメギ・ランヒルドがそこに続いた。女性的な顔立ちのフォルシウスであるが、張った声は勇敢そのものであった。
「大丈夫! ここはボクたちにまかせてください!」

「うわあぁぁあ!?」
 城壁まで上ってきたアンデッドに組み付かれ一般兵の弓使いが地面へと倒れる。彼はもがくがアンデッドの力は強く振り払う事ができない。
 あわや噛まれる……といった所でアンデッドは斬り裂かれ地面へと倒れた。彼を助けたのは灰の紅茶である。
 彼女は城壁の上や壁を走り回り、窮地に陥っている兵士を見つけては救援する役目を担っていた。
「ほらっ立って! 大丈夫だよ、何かあってもまた助けてあげるからねっ!」
 兵を元気づけると灰の紅茶は走り出す。走りながら側面から死体を足場に這い上がってきたアンデッドを的確に蹴り飛ばして眼下へと落とすのも忘れない。
 周囲の兵士を助ける事は戦域全体の戦力の底上げにも繋がるだろう。一人一人は大した戦力はなくとも集まった時の人の力は絶大なのだから。


●
 前線の兵士たちに交じって戦っているホブゴブリンの男がいた。彼はオゴス。作戦に参加した者の一人である。
 彼は自身の体格を生かし、兵士達では対処が難しそうな少し大柄のクリーパーを見つけるとそれに対処していた。
 剣に赤い光を纏わせるとオゴスはクリーパーに鋭い斬撃を浴びせる。その直後、剣が纏う赤い光は糸へと変化しその糸はクリーパーに絡み付いてその動きを止めた。
 身動きができなくなったクリーパーに一般兵数人分の威力の槍が突き刺さり、クリーパーは雄叫びあげて絶命する。
 その付近で敵の攻撃から仲間を守りながらシュロは戦っていた。彼女の目的は敵の殲滅ではない。仲間を守る事だ。
 攻撃された味方がいればその間に割って入りその攻撃を肩代わりする。現に今もアンデッドの攻撃を受け止めていた。
「お前の相手は私だっ! さあ、来てみろッ!」
 鉄の大剣を振るい、鎧と盾で武装した彼女の力は華奢な体躯に似合わず実に力強い物であった。
 そのころ城壁の上では次第に頂上に到達するアンデッドやクリーパーが続出していた。階段は作ろうとする端から崩されたが、材料だった死体が無作為に積みあがっているだけでも、この数であれば足場となりうるのだ。そのせいで負傷者が後を絶たない。
「あともう少しだからねぇ……ほらぁがんばってぇー」
 負傷者を背負い、砦の中へと急ぐのはルスト・ブレイズリーであった。彼女は本来、降りて戦うつもりではあったが、門が閉ざされては戻る術を持たない事と負傷者が増え始めた状況を考えて負傷者の運搬に専念する事にしたのである。
 砦内の医療班へ負傷者を託すと再び彼女は城壁の上へと出る。そしてまた負傷者を助け、医療班のいる場所へと運ぶのであった。
「メテオライトの効果も氷嵐の効果も上々……ふむ、次はこちらでどうです?」
 マリナ・蔭山は塊となって城壁に張り付いているアンデッド目掛けて爆炎を放った。赤い炎走り、アンデッドの群れを爆砕する。粉々に散った肉片が辺りを舞う。
 ここまでマリナが魔法を連発できるのにも理由があった。彼女は昼間に休みを取り、夜から朝にかけてのこの時間に専念する事にしたのである。
 それ故に魔力は温存され、今、彼女の魔法は猛威を振るっている。アンデッドに感情があるのならば恐れおののいたことだろう。
「これ以上は上がらせません。お帰り願いましょう!」
 上ってくるアンデッドの頭を足場にバランス感覚を生かして自身の鋼の大剣をエーテルで延長しながら振るうのはヴィルヘルミナだ。
 城門が閉ざされた今、彼女は下に降りる事が敵わないと判断した為、上がってくるアンデッドを足場として駆使しながら城壁の際で戦う事を思いついたのだった。
 長く伸びた大剣で上がってくるアンデッドをなます斬りにし一人たりとも通さない気迫で彼女は城壁の上を守っている。
 同じく城壁を守るロイ・ロビンソンは杖を振りかざし、爆炎を何度も放つ。それらはアンデッドとクリーパーで構成された群れに命中し彼らを汚い花火よろしく吹き飛ばす。
 高い所から降り注ぐ爆炎は城壁に張り付くアンデッド達には効果抜群であり、彼らを一掃とまではいかないがその多くを一時的とはいえ減らす事に成功している。
「本当にキリがないな……押し切られる感じはしないが。くそ、オウムが借りられたら良かったんだがここじゃ無理か」
 彼は借りられなかったオウムでやりたかった戦術に思いを馳せながら爆炎を続けざまに放つのであった。
 城壁の上で奮戦する者が多い中、アーシェル・G・クラインは城門付近にいた。もともと開く部分だけあって、城壁よりもある意味構造的に弱い。
 ここは押し寄せてくるアンデッドの真っ只中であり一番の激戦区と言える。
 体中をアンデッドの返り血ならぬ返り臓物で汚しながらアーシェルは周囲で共に戦う兵士に向かって叫ぶ。
「お前ら、絶対に死ぬんじゃねえぞ! 俺より先に死んだら許さねぇ、お前らは俺が絶対に守ってやるッ!」
 その言葉通り、彼の周りで兵士の死傷者はでていないのであった。
 戦場では攻勢に出る戦士や魔法使いばかりが目立つが実にはなくてはならない存在がいる。それは補助の使い手である。
 サマエラ=フォリウムは戦う兵士や仲間達に回復魔法を投げ、必要とあれば輝刃での補助も忘れていない。
 彼女のおかげで周囲の兵士や仲間達は最大限以上に戦力を発揮する事が出来るのだ。
 そう、サマエラは理解している。持久戦という難しい戦いに何が大事で、何を優先するべきなのかを。
 休息を取り終えたセリオス・オーガストは城壁の上に出て、最も頂上に近いクリーパーから狙って撃ち抜いていく。
 彼らクリーパーはアンデッドよりも強力であり砦の兵士達にとっては一体でも脅威になりかねない存在だった。
 それらを駆逐していく事で彼は圧を減らそうとしたのである。
 実際、それは功を奏し城壁はアンデッド達を押し止め、未だ突破されていない。
 戦況は一進一退の攻防が続き、各々の奮戦もあって現状大きく劣勢に陥っているわけではない。
 だが指示役の吸血鬼の位置がいまいち不明であり、それ故に敵の指揮系統を断つことができず激しい攻防が続いているのが現状であった。
 砦には剣戟と怒号、アンデッドの叫び声が響き渡り、この世の地獄かという様相はいまだ続いている。


1日目 夜間 【1】外部遊撃 (執筆担当:藤原ゆうMS)

●南側外周での奇襲
 ――少し、遡る。
 闇の中に蠢(うごめ)く無数の影。
 それは地を這うような死の行軍だった。
 どこにいるとも知れない吸血鬼指揮官の指示を受け、亡者たちはヴァイセントラフ砦の北側へと向かっている。その動きが注視される一方、手薄となりつつある南側の外周で奇襲を仕掛け、敵軍の数減らしに尽力する冒険者たちがいた。

「そろそろ交代ね。ゆっくり……とまではいかないかもしれないけど、休んできてね」
「ありがとうございます!」
 ビッグオウムに騎乗した【勇牙】のハオルチア・プラシオライトは、上空の監視兵と交代し、暗視で地上の様子を偵察する。
 何か動きがあれば振ることになる、赤旗と白旗もしっかり持参していた。
 空から見下ろせばよくわかる。北側に数を集める敵軍。反して、南側は薄い。遊撃の冒険者たちによって、その薄い部分を狙った奇襲が開始されたようだ。

 砦から離れた亡者の群れの上には、二羽のビッグオウム。その足には一本の丸太を掴んでいる。
「リトゥル、やるよ」
「はい、リヒャルト様。思いのままに」
【爆撃】の2人は、亡者たちの頭の上に丸太を落とす。上空の高い所から落ちてきた丸太に、ぐしゃりと潰されるアンデッドたち。
「見てよ、リトゥル! 奴ら、ゴミのようだ!」
「左様ですね、リヒャルト様」
 しかし、丸太の下からもぞもぞ這い出すものもいる。もし地上にいれば、あのアンデッドとの戦いは避けられないが、ここは空の上。その心配はなく、空爆に専念できる。
「よし、次行くぞ、次!」
「はい、リヒャルト様。このリトゥル、がんばって伐採しますよ」
 リヒャルトとリトゥルの丸太を使った爆撃は、眼下で繰り広げられる仲間たちの戦闘の様子を見ながら、その後も続けられた。

「気合入れていくよ、アンタ!」
「頼りにしてるぞ、エリザ」
 互いに声を掛け合いながら馬を駆る、【精灵】のガルレイド・S・グリディッカーとエリザ・A・ミシャールの夫婦。
 彼らは騎乗から死軍の背後に向けて、遠距離での攻撃をしかけるつもりだ。
 エリザがホークアイで索敵を行い、見つけたアンデッドの背にガルレイドが魔法攻撃。
 すぐにその場を離れ、亡者たちとの距離を保つ。
 打っては離れる攻撃に、混乱したアンデッドたちの動きが鈍った。
 
 グレイシア・ハーシーはチャージングで加速して、アンデッドをエーテルブレードで伸長した刃で薙ぎ払う。
(指揮官はどこにいるんだ?)
 敵軍の中を探すが、容易には見つけられない。
 グレイシアの危機にすかさずヒールをくれるのは、ウォン・ジンユゥ。
 彼は味方の死角から襲撃してくる敵を、ディバインストライクで打ちのめした。
「おぬし、突っ込み過ぎぬよう気を付けるのである」
「はいはい、助かってるよ!」
 これにはジンユウも思わず仮面の下でにっこりしたとか、なんとか。

 ルオは捜波で敵の位置を確認すると、レイピアとダガーの二刀流で亡者たちの中に突っ込んでいく。
 しかし急襲が功を奏したものの、離脱が遅れ、すぐに亡者に囲まれる形になり――。
「突っ込み過ぎたか……」
 悔しそうに歯噛みした時。
「ブオン、ブオン!」
 双剣を振り回しながらルオの前に突っ込んできたのは、フーグ・オグ・フーグ。
「わしの目の前にいる敵は、ぜーんぶ破壊しつくすのじゃ! さあ、さあ、ルオ殿もご一緒に!」
 連続攻撃で亡者を翻弄する。
「戦いは勢いじゃ! 空気も障害も破壊し尽くしてしまえ!」
 フーグの元気に背中を押され、ルオはまた双剣を手に立ち上がった。

 ナキルは一人平原を移動し、死の行軍に付かず離れずついていく。
 狙うは、行軍の攪乱。
「テメェもオレの武勇伝にしてやるぜっ!!」
 チャージングで素早く接敵するも、アンデッドは思った以上に強い。
 跳ね返されて草の上に転がった。
 そこへイヴァンが軍馬で駆けつけた。
「無茶するんじゃないぞ。ぼうず」
「オレは、ぼうずじゃないぞ!」
「正面から突っ込むばかりが戦闘じゃない。ほら立つんだ。こんなとこで死ぬんじゃないぞ」
「お、おう。じゃあ、アンタ、一緒に戦ってくれよ」
「もちろん、そのつもりだぞ」
 イヴァンが後方から魔矢を放つ。
 被弾したアンデッドを、ナキルが大剣で薙ぎ払う。
 即席の凸凹パーティは、なんとなくしっくりきたようだ。

 軍馬を駆る、アセット・アセトシソン。
 固まって動くアンデッドの群れに向け、衝撃刃を放つ。
「深追いは禁物だよ」
 あくまで、アンデッドを散らすことを目標に。
 アセットは大剣を振るい続ける。
 
「クリーパーや吸血鬼の少ない戦域を目指そう」
 【ツインズ】のエリック・ハルトマンとルーカ・ルンガルディエールは、借り受けた馬を駆って、アンデッドの多い戦域を目指した。
 夜の闇はこちらの姿も隠してくれるが、同時に敵の姿も見えにくくする。
「接敵はするが、こちらが危なくなれば、即離脱しよう」
 エリックはもちろん、ルーカの身に危険が及べば、身を挺して守るつもりだ。
「了解です」
 ルーカが頷いた時、目の前に亡者の群れが現れた。
「行くぞ!」
「はい!」
 エリックは闘気槌で巨大な光塊を纏わせた大剣を、亡者の群れに振り下ろす。
 周囲の亡者たちは衝撃に圧し潰され、土の上に折り重なるように倒れた。
 しかししばらくすると、のろのろと起き上がる。
「しつこいですね!」
 ルーカは起き上がった所を狙って魔矢で打ち抜く。
 しかし時間が経つにつれ、二人の体には疲労が蓄積していく。
「一旦、引き上げよう」
「そうですね」
 エリックとルーカは態勢を整えるために戦線を一旦離脱する。

 捜波で得た情報を、ギド・フェルミが飄々とした口ぶりで伝える。
「アンデッドの最後尾には多少手薄な部分があるようだ」
 それは、リヒャルトとリトゥルの空爆や、ソロで動く遊撃隊が活躍した痕跡だろうか。
「了解。その辺りを狙って、亡者たちを蹴散らしてやろう」
 大剣をかまえ、チャージングで加速したハーゼル・ライアードが亡者に気付かれる前に接敵。周囲の亡者たちを薙ぎ払っていく。
 だが、やたら強靭なアンデッドだ。なかなか地に倒れない。
 それどころか、斬られた体の部位をブラブラさせながら、ハーゼルに向かってくる。それをフェイントでかわし、再度大剣を薙ぎ払う。
 聞くもおぞましい断末魔を上げて亡者は倒れた。
「この気味の悪い光景はさっさと終わらせます!」
 ハーゼルの横をカトリーヌ・レーンが駆け抜けて行く。
 闇の中から突然現れた存在に抵抗する間もない亡者たちを、カトリーヌは連続した素早い双剣の攻撃で切り刻んだ。
「私たちで、少しでも数を減らしましょう!」
 双剣を振るいながら、カトリーヌは仲間たちに声をかける。
 
 カトリーヌが弱らせた敵にギドが近づく。
 亡者の身を縛る縛糸刃。手負いの亡者を仕留めた。
「でも、削って削っても、まだいるなあ」
 ギドはややうんざりしたように呟いた。
「みなさんを癒せる者はあたししかいないの……!」
 リノ・キャロルは亡者の反撃で軽微な傷を負った仲間たちを癒す。
 
 後方からの攻撃は捗り、さらなる継戦に寄与していた。

●南側戦域、指揮官発見
 砦の南側で、【密偵】の一団は情報収集に専念していた。

「戦闘に体力を費やすだけがやり方じゃない」 
 シオン・霧江は暗視を使い、アンデッドの動きを観察しながら、友軍への情報伝達を行っている。
「指揮官て、王子さまとか、辺境伯とか狙ってくんスかね?」
 カルミーもまた、捜波で敵軍を探る。
「さあ、どうなんだろう」
 ツンツンとした赤髪が闇夜においても目を引くルーズリーフは、暗視と天眼で敵軍の動きを監視中。

 その時、見つけた。
 砦の南側。敵の数が比較的少ない戦域に。
 アンデッドの中に紛れ、亡者たちに指示を出す吸血鬼の存在を。
「あれ、指揮官スかね?」
「うお、やったな!」
 カルミーが指し示した方を見れば、ルーズリーフの目にも吸血鬼らしき敵の姿が映る。
 カルミーはすかさず、エンライトで光の目印をその方向に置いた。

 それは上空でビッグオウムに跨る、【勇牙】のアウル・アンサラーによって素早く、的確に、全隊に伝達される。
 赤旗を思い切りよく振るアウル。
 さらにアウルはエンライトの光でも敵指揮官の位置を指し示す。
「この光の下だぜ!」
 
 その合図を受け、シファー・アルムグニーはアンデッドの群れに紛れた敵指揮官を探すべく、看破を試す。
 エンライトの光の下、シファーの目が腐った亡者たちの中を行く一人の女を発見。それによって、この戦域の吸血鬼指揮官が特定された。
「見つけたギャ~!」

「薙ぎ払って道を開けるよ!」
 闘気槌で亡者を地に沈めるのは、バクル・バスリー。
 向かってくるアンデッドをフェイントで巧みに避けると、複数をまとめて倒していく。
 バルー・キップリングは騎乗していた馬から降りるとすぐに、集中し衝撃波を放つ。
 目の前のアンデッドが吹き飛んだのを確認して振り返ると。
「団長、行くッスよ!」
「さあ、早く」
 スィーリーンがアーケインテンペストで生み出した稲妻の光でアンデッドの動きを鈍らせる。
 そしてタイダルストリーム。一直線に打ち放ったエーテルで亡者たちを一掃した。


 団員たちが作った道を、ハヤト=ガラン=ヴォルファングが駆ける。
 突然のエンライトの明かりに驚いたように空を見上げている吸血鬼がそこにいた。
「これ以上好きにはさせねえよ!」
「クッ……!」
 突然目の前に現れ繰り出される双剣の連撃に、吸血鬼は防戦一方。
 そこに、身を潜め近づいていたエンデ・エトル・シャリオンが、エアーライドで横から飛び込んできて斬りかかった。
 二対一となり、たまらず逃げ出す吸血鬼。
「逃がさねぇよ!」
「深追いはするな!」
 エンデの心配をよそに、ハヤトが疾風足で駆け吸血鬼の背後を取った。
 ネフリティス=N=クリスタロスは馬から降りると、その前に立ちはだかる。
「ここから先は通せんぼですぅ」
 ネフリティスのディバインストライクの一撃と、ハヤトの二連撃が同時に吸血鬼を襲う。
 しかし吸血鬼も最後の力を振り絞って反撃。
 接敵していたハヤトとネフリティスは傷を負い膝をついた。
 そこに猫のハーフビースト、シャンテ・フーケが軍馬で駆けつける。
「今、ヒールを」
 シャンテに癒され、ある程度傷の治ったハヤトとネフリティスは馬に騎乗し退路を探す。
「ここは僕に任せて」
 指揮官を失い、混乱をきたした亡者たちを足止めするべく、シャンテは祈りを捧げ、中で雷が荒れ狂う霧を出現させた。
 チャージングで駆けつけ、パトリツィア=レイネス=ナハティガルも撤退の盾となる。
「わたくしが王国を守って見せますわ!」
 殺界で刀身を伸ばした槍と、広く張り巡らせたエーテルの結界で仲間の退路を守った。
 
 上空でハオルチアが赤旗を振る。
「撤退!!」

 Talaraは、指揮官と対峙した団員たちの退路を確保するために、露払いで散った敵が再び戻ってくるのを足止めしていた。
 エーテルブレードで刀身が伸びた槍を巧みに使い、アンデッドたちを薙ぎ払う。さらに弱った敵は強打で次々と切り伏せていく。
 その戦いぶりは、まさに獅子奮迅の活躍という言葉が相応しい。電撃的な【勇牙】の強襲を、がっちりと支えている。
「お前たち。Talaraの敵じゃない!」
 ティラミス・ノーレッジは疾風足と二連撃を使って、アンデッドに急襲をしかける。
 不意打ちをくらうも反撃してくる亡者には反応を強化して応戦。
「これが終われば、夕食は団長のおごりだ!」
 帽子の羽を揺らして、双剣を振るい続けた。
 
●指揮官討滅
 敵軍に奇襲を仕掛けているもう一団は【一発屋】の面々。
 
 ロサード・シュナイダーが天眼で敵の位置を把握し、仲間に伝えている。
「敵軍は北に移動を開始している」
 この辺りのアンデッドの数はまだ多い。
 厳しい戦域。 
 指揮官を見つけたとしても、仕留められるかはわからない。
 だが――。
「やるか」
 ディアンはレオナルド・ピーフォウルを振り返る。
「もとより、そのつもりだよ」
 失敗すれば、一団が殲滅される危険もある。
 だが、成功すれば――。
 ディアンとレオナルドはジャマーで亡者たちの中にある歪な魂――それを操る吸血鬼の能力に干渉することを試みた。

 そして、それは見事、周囲のアンデッドの動きを乱すことに成功する。

 一心に砦へと向かっていたアンデッドの群れが向きをくるりと変える。さらに、あるアンデッドは近くにいる冒険者に向かってくる。
【一発屋】が入り込んだ戦域の指示系統が、みるみるうちに混乱していった。

「敵が乱れたぞ! 今だ!」
 ディアンが団員たちに声をかける。
 その指示を受け、【一発屋】の団員たちは強襲を開始した。

 レオナルドはエンライトで周囲を照らし、団員たちの強襲を補佐する。
 さらに、
「この流れ、実にクジャクポイント高めだぞ」
 などと呟きながら、近くのアンデッドにディバインストライクを打ち込む。
 ロサードは矢をつがえ、ハーツベイショットで後方から攻撃。
 アンデッドの体が蝕まれていく。 
 アルマン・アルスターは、範囲魔法で攻撃。
 フレイムゲイズの炎が周辺のクリーパーの身をまとめて焼き尽くした。
 休む間もなく視線を巡らせ、味方に向かう敵を見つける。
「させないよ」
 そんな奴は、魔錆で身を弱らせる。
「先には行かせないわ」
 レシュノルティア・ピオジェレラは亡者の群れに範囲魔法・氷嵐を放つ。輝くエーテルが高速で収束していったかと思うと、ある瞬間に氷の嵐となってアンデッドたちを襲った。
 次々起きる氷嵐に、周辺の亡者は満身創痍。

 そこに、ジャマーを使用したあとのアルテ・ルナフィニスは馬を降り、突撃を敢行した。鉄の斧でアンデッドを薙ぎ払い、胴を分断した。
「うわあ。気持ち悪いー」
 可愛らしい顔を嫌そうにしかめるが、アルテは次の敵に向かう。アルテ自身の能力で乱れた隊列を、さらに引きちぎっていく。
「どんどん行くよー!」
 鉄の斧を頭上に掲げ戦場を駆る。

 ディアンは亡者を打ち倒しながら、的確に戦術を読み取り判断を下す。
 指揮官がいるのは、この亡者たちを蹴散らした先だ。

 そして――。
 護り役のアンデッドが指示を聞かなくなり、身を隠すための亡者の壁が薄くなってワタワタしている吸血鬼を見つけた!

「むきー。なあんで、アタシの命令を聞かないんですかー!?」
 言うことを聞かなくなった亡者たちに、怒りをぶつける吸血鬼指揮官。
 その前に現れたのは、斧を上段に構えたディアン。
「わりー。見つけたわ」
「や、やめ……っ」
 油断していたところに脳天からの一撃を受け、思わず膝をつく吸血鬼。そこへ、レシュノルティアのフレイムゲイズが容赦なく炸裂する。
 炎が消え、地に横たわる吸血鬼を一瞥して、即座にディアンは声を張り上げた。
「【一発屋】、全員撤退だ!」
 

 ジャマーの使用から始まる【一発屋】の見事な連携。
 それは、この戦域に大きな戦果をもたらした。

●一日目野営
 簡易的に設けられた野営地で、シルク・メイプルリーフは怪我を負った者の治療に当たっていた。
「怪我をした人は、私が治しますよ!」
 癒しの光が傷ついた兵士の体を包み込む。
 彼女のおかげで、この日失われるはずだった命が随分助けられたようだ。

 まだ小規模な戦闘は続けられているのか。
 遠くに剣戟の音が聞こえる野営地で、【オカネカセギ隊】の一行も腹ごなし。
「私のエンライトで夜も怖くないですよ」
 リノが明かりを生み出すと、夜の闇に皆の顔が浮かび上がる。土や汗で汚れた顔には充足感。
「お水をどうぞ」
 カトリーヌがピュアウォーターで出した水を団員たちに配る。
「ありがとう」
 水を受け取り、ハーゼルは手にした干し肉を噛み千切る。
「みんなも少し眠ろうね。戦いはまだこれからだよ」
 ギドは草地に寝転びまどろんでいる。
 冒険者たちは束の間の休息を得ていた――。


1日目 夜間 【3】ヴァイセントラフ砦支援 (執筆担当:川並ももMS)
●
「引き続き敵の移動を妨害し、北の守りを厚くせよ。やはり一点突破で侵入を試みようとしているとみて間違いないだろう」
 砦の中央、司令部にて。定時報告を受け取ったバルディオンは簡潔に告げた。敵の動きを大きく遅らせることができてはいるが、北で激戦が起こるのは時間の問題だ。下された指示を内外に伝える兵士たちの動作で、外がまた慌ただしくなる。

 護衛としてバルディオンの傍らに立つヨナ・シャハムの表情は硬い。心が揺れ動いていた。
「皆すごいですね……俺なら女子供すら受け入れられない王国を、怨んでしまいそうです」  国や立場を越えた共闘に、俺は本当に心身を懸けることができているだろうか? とかつて会った人々の記憶と自問自答が脳裏を巡る。結論としては今できることは守ることだけだと、バルディオンの横顔を見る。集中を切らす気配はなさそうだが、それでも疲れが少し見える。ヨナの呟きに対して、この場で何かを返すつもりもないようだ。
 ――それも、そうか。
 答えを求めたわけではないし、そういう態度を取らざるをえない理由もわかるから、ヨナもそれ以上は求めなかった。
「次の報告まで、少しお休みになってはいかがでしょう」
 察するかのように、プラムが薬湯を差し出した。ほどよく冷まされて薄い湯気をたなびかせるそれを受け取り、淡い色の水面に映る己を見てバルディオンはゆるくうなずく。
「……そうだな。敵の集まる速度にもよるが、今眠らねばならないだろう」
 そう言って、バルディオンは司令部内に設えられた仮眠用の設備に向かった。それを機に、何人かが起き、何人かが眠る。交代で睡眠を取り、24時間戦えるようにしておくのも重要な仕事だ。
 司令部の外で戸口を固めていたレギン・アンドヴァリが呼ばれる。
「ああ、交代か」
 その表情は真剣であり、忸怩たる思いもかすかに窺えた。“賢猪将軍”と呼ばれるにふさわしく、今このときもバルディオンの意識は冷静であり冴えている。自分たちが本来の側近たちに代わり護衛を務めているものの、彼や兵士たちの覚悟に対して、いまさら言えることは何もない。
「私らがいるからバルディオン殿の部下たちが前へ行けたんだ……役に立ってるさ」
 誰に聞かせるでもない呟きは、響き続けている戦いの音の中に消えた。

●
 その戦いの音に負けまいと第一防壁から声を張り上げるのは、アンジェリッタ クラリンド。
「亡骸に宿るのはかつての隣人にあらず、躊躇せず攻撃を! 今一度彼らに安らかな眠りを与え、魂を導くのです!」
 《サウンドボマー》を用いて戦意高揚の口上を述べながら、手傷を負った者たちに《ヒール》をかけて絶えず移動していく。その檄(げき)を背にして、【喫茶弩砲】の一員であるカメリア・ローレンスが、仲間の操る弩のそばに張り付いて暗闇を見据えていた。
「……移動を優先してるみたい、ね」
 アンデッドたちが近づいてくるのを暗視能力で捉え、《ダブルエッジ》で散らしていく頻度が先ほどに比べて明確に減っている。回ってきた情報だと吸血鬼たちが作戦を切り替えたとのことだったが、ここまでとは。
 他方で同じく弩を守るために行動していたキリクも、敵の分布に偏りが出てきたことを実感していた。
「……いきなり増えてきたな!」
 ゼロ距離で放たれる矢がアンデッドの頭を粉砕する。より北に近い方角の弩に陣取っていたため、登ってくるアンデッドの増加速度に対応することに苦心する。屍の指揮を執るヤコブの部下をあぶりだすために光を用いてもみたが、吸血鬼にそういうものは意味をなさないようだった。

●
 各地で起きる状況の変化。それを【兵棋】はつぶさに観察し、周知し、対応を急ぐ。
「……ふむ、彼方(あなた)がちと忙しいか」
 ビッグオウムで砦の上空に陣取っているポコ・アルデバラッドは今一度周囲を見渡したあと、エーテルリンクでつながっている〈うー君〉——今は砦の中央付近に居るゴリラ——の視覚を借りつつ指示を送る。敵影の量を傍らにある地図と駒を動かして表させ、いくつかの文言があらかじめ書かれた色つきの紙の中から、指示された通りの色のものを看板に貼り付け、ドラミングで周知させた。
「ウホウホゥホ、ホホホォ! (準備と対応を急げ)」
 それを見て、バーネット・フォーサイスは砦の見取り図に新たな色で印をつけて情報を更新し、これから必要になるだろう支援について考えを巡らせる。
「まだ前の方にはそこまで来てない……集まりきってから一気に押してくるか?」
 ならば、こちらも押し返すためにさらに人員を厚くせねばならない。
「すまんが、休憩前に一筆頼めるか? グレイハーツに引き継いでほしい」
「合点承知だニャ!」
 日中の報告をまとめていたアーノルドがぴっ、と肉球もあらわに手をあげ、所定の位置に立ってペットの大鼬を呼ぶ。
「急ぎの用件、急いでいくんだニャー!」
 メモを括り付けられた大鼬は、的確に砦の外周へと走っていった。それは過たず、ルチル・プルメリア・グレイハーツの元へ届けられる。
「北へ人を増やせ、怪我人は急ぎ治療し前線へ。なかなか忙しいねぇ」
 外の闇をにらみつつ、ルチルは狼の〈アル〉に手紙をくくりつけ、ノノアのもとへと送った。移動を続ける少女に追いつき、ささやくように鳴く。
「——わかったわ、途中で怪我人も拾っていくね」
 手紙を受け取り、そううなずくノノア。第一防壁を巡りながらやってくる屍を切り飛ばし、負傷者を見つければ移動式階段を手繰り寄せたり移動中の者に協力を頼みつつ、情報を伝えるべく、チーム内で伝令のまとめ役であるアムの元へ向かう。情報を受け取ったアムはひとつうなずき、もうひとつの伝達部隊、【整戦】のもとへ向かう。
「伝令です! 北への戦力集中と、軽傷者の前線への復帰を急いでください!」
「了解、っと、起きろ起きろー」
 アムの一報を受け、これまで集めた情報を整理していたカイン・ステラが顔を上げる。間を置かず立ち上がると、傍らで仮眠を取っているヴィナスの肩を叩いた。
「すまんが仕事だ。状況の変化が早い」
「……大丈夫。もう十分休めたよ」
 わずかな時間しか眠れていないにも関わらず、すっかり回復した様子で起き上がるヴィナス。彼は方々の報告を聞き取り、紙にペンを走らせた。情報を遅滞なく受け取って整理し、絶えず動き回る冒険者へ役割を端的に割り振るのが二人の仕事だ。近場に見回りを行っている者がいないかと見回して、カインがユーダリルを、ヴィナスがコーデリア・コンクエストを呼び止めた。
「北はこれからもっとキツくなる。こいつを持っていくついでに方々に伝えてくれ」
「ええ、わかりました」
 ユーダリルには石と糧食の荷車。これは、戦いが始まる前から石や木材などの確保を重視して動いていた彼女に任せるのが良いだろう。
「日が昇る頃にはもう激戦真っ只中の可能性大。一人でも多く出てこられるように頑張って、って伝えてね」
「かしこまりまし、……合点承知です」
 コーデリアにはリネン類と薬品の荷車。ぎい、と荷台が同時に重い音を上げて動いた。

●
 今まさに激戦の前哨としての奮戦が行われている第一防壁、その根元にユーダリルはたどり着いた。
「物資、上がりますよ!」
 荷車から荷を下ろし、ほどいて簡易リフトに乗せていく。まずは食料、次に石。空になった荷車に乗るのは、負傷者たちの幾人か。人員の損害を減らすためにも、こうした往復が各所で繰り返されている。

 そして第二防壁の内側、生活設備内。コーデリアは医務室前に荷車を止めた。ここでは休憩所では追いつかないほどの深手を負った者を【治療】するのだが、今は比較的傷の浅い者を戦列に復帰させることを優先していた。前線に行ける人数を、一人でも増やさなければならないのだ。
「海賊がいるのである!」
 荷車の音に気がついたのだろう、そう言いながらぴょこりとテサロニケ・アンバーが顔を出す。その第一声通り、荷物を下ろしている間も仕事をしているのかいないのか、コーデリアの海賊風の服装に興味を抱いたり、負傷者に構うついでに《ヒール》をしたりと、といった調子だ。それをたしなめにきたエーファ・メイベル・マジェリトが、コーデリアと荷を見て一礼する。
「物資の補給、感謝いたします」
「いえ、私はお届けしただけですから」
「重要な仕事ですよ。医務室(ここ)のことも周知されているとわかってほっとしています」
 こちらはペンと紙を片手に精力的に動いているのが見て取れる。そこへ、重傷者の容体を安定させるための処置をひとまず終えたフローラリア・ネムス・ラミナがやってきた。
「お手伝いいたしますわ」
 フローラリアは荷をほどいてさらに奥へと物資を運び込む。そのタイミングで運び込まれてきた新たな負傷者たちを見て、コーデリアはエーファと共に対応を急ぐことにした。

●
 同時刻、厨房に【パッカード牧場】が持ち込んだチーズの芳醇な香りが漂っていた。ナイフを巧みに操って料理をしているのはティール・クラリオンだ。
「食堂もまた、戦場ですね!」
 軽口を叩きながらも、休憩所に詰めているアルフィンレーヌが出した案に沿い、パンの中に肉やチーズ、そして根菜を炒め煮にした具を詰めた軽食が次々に作られていく。
「あったかい食事で戦いを乗り切るのだなぁん」
 それを順序よく包み、バスケットに詰めていくアルル・パッカード。羊ごと持ってくることはできなかったものの、チーズや干し肉などはいくばくかを持ち込めた。シチューとパンのいいところを併せ持ったこの形式と提案者に感謝しつつ、仕上げとしてバスケットに保温用の布をかける。
「でも、この分が終わったら二人もしっかり休みましょう。特にティールさんはね」
 リコッタ・プルリアータは仕上がったバスケットを休憩所に運ぶべく手に提げ持ちつつ、二人を気遣った。特にティールは武名の代わりにここで働きを上げようと無理をしているきらいがある。
「だ、大丈夫です!」
「いざってときはボクがちゃんと寝かせるんだよー」
 その返事にうなずいて、リコッタは駆け出した。

 そう遠くないところにある休憩所には今、ベッドとベッドの間に簡易ではあるが間仕切りが作られている。眠りとともに水や食事、そして軽傷の治癒を提供するここには、寝息の中で気力に満ちたさざめきがときおり現れていた。その中を静かに、しかしすみやかに動くのは【休息】を受け持つ面々だ。
「何時間眠りますか? ……はい、それではあちらのベッドへ。時間が来たらお呼びしますね」
 リサ・ベイカーがやってきた者に利用時間と名を確かめ、名簿に記していく。利用者の明確化とベッド位置の分類はうまくいっており、眠りすぎる者が出てしまうのを防ぎ、現在ベッドがどのぐらい埋まっているかを可視化して効率を押し上げていた。
「お腹が空いているみなさん、ほかほかのまんじゅう風パンが入荷したわよー」
 アルフィンレーヌのささやくような呼び声に、色めき立つ小さなざわめきとともに手が上がる。眠りの質をよくする茶とともに手際よくパンを配る彼女は、まさしく母のごときやわらかな微笑みを浮かべていた。それが戦う者たちの心を癒やし、英気を養わせる。
「ここが痛むのかい? ならこれで良くなるはずだよ」
 リネンを換える合間に苦痛のうめきを漏らす者を診て《ヒール》をかけつつ、やってくるのはクラルスだ。交代時間を過ぎているぞとリサやアルフィンレーヌに釘を刺し、名簿を手にする。ここから6時間は彼が起きているシフトだ。リコッタにバスケットを返すと同時に、女性対応のために手伝いを頼むことも忘れない。24時間休みなく休憩所を動かすため、クラルスは肚(はら)に気合いを入れた。

 時を問わず場所を問わず、戦いが続く。この先に待つさらなる戦いのために。
 ——夜が明ける。


2日目 午前 【2】ヴァイセントラフ砦防衛 (執筆担当:陵かなめMS)
●
「やはり、北側に集中してきたようですわ!」
 そろそろ夜が明ける頃。
 手元の明かりで周囲を照らしていたマリヤ・バヤリッツァが声を上げた。何度か確認したが間違いない。
 マリヤは周囲の仲間たちに注意喚起を行い、自らも武器を手にとった。

 敵の戦力移動に合わせ、バルディオンは冒険者達へ北側に集中するよう要請した。攻防戦は二日を迎えますます激しさを増している。

 ユネスコ・ビスコは襲い来るゾンビを鉄の弓矢で狙い撃った。
 周囲には初日の戦いで消耗した兵士たちの姿。
「ボクのような小娘ががんばっているんですよ?」
 と、兵士たちに一生懸命戦う姿を見せる。
 更に次の矢を番えた。
 負けてはいられないと周囲の兵士たちが顔を上げる。
 そんな兵士たちの間をすり抜けるようにしてファイサル・アル=ファルドが走る。鉄の短剣とノービスソードを構え、兵士を襲おうとしていたゾンビを二連続で斬りつけた。
「危ないところは俺が加勢します」
 力の抜けたゾンビを足で蹴って捨て、次の敵へ斬りかかる。
 兵士たちはファイサルの背後で態勢を整え、武器を構えた。
「助かった。俺たちもまだ戦えるぞ!」
「ならここは任せますね」
 ファイサルは兵士だけで戦えることを確認し、劣勢の箇所へと再び走る。
 ゾンビに苦戦する兵士を見つけリリリリスはその間に割り込んだ。
「私が来たからには軍人の方々には指一本触れさせませんわっ!!」
 兵士をかばい、ゾンビを押し返す。
「さぁ、私を跪けさせるものなら跪けさせてみなさいなっ!!」
 決して攻撃されているのが快感だというわけではないのだ。
「ドレスが汚れてしまいそうですわ!!」
 と、向かってくるゾンビを鉄の盾で捌きながらリリリリスは頬を膨らませた。
 そして、クー=ウィッシュもまた鉄の盾でゾンビを抑え込んでいた。
「クーが抑えているうちに、長槍で突いて!」
「一斉に突けー!」
 小部隊の隊長が大きく手を上げ合図をした。その腕にはナスタチウムの絵が描かれた布切れが巻かれている。
 兵士たちは息を合わせて一斉に長槍を突き出した。
 まずは敵の足を止め、安全なところから兵士たちが長槍で突く。クーの提案した作戦が上手く嵌った。
 兵士たちの後押しを受けクーがゾンビの群れを押し返す。

●
 各所で戦いの音が響いていた。
「次はゾンビの大群ですね」
 リコリス・アデュラリアは感じることのできるすべての情報から敵の状況を読み取った。
「了解、一気になぎ倒すで」
 エクレア・グリモワールがエーテルを高速で収束させる。攻撃の目標を教えてもらえるおかげで、攻撃にすべての力を注ぎ込むことができる。
「ここからあそこまで、全部まとめて氷漬けや」
 激しい氷嵐を巻き起こした。
「はい。敵の数が多いところから対処しましょう」
 重ねてリコリスも氷嵐を放つ。
 後方から戦況を見渡し確実に敵の数を減らしていくこと。それが前線で戦う仲間たちの助けになると信じて。
 氷の刃が多くのゾンビたちを切り裂き砕いていった。

●
「敵が多いなら、キャスターやヒーラーは多いに越したこたねェ!」
 自分たち魔導技術研究所【アララギ】も手を貸すとドーマ・アザーリが言う。早速自慢のモヒカンが敵の集団に反応していた。
 それを補佐するのはトマス・グレイ・ディズールーだ。
「大変だけど大丈夫、きっとなんとかなるさぁ」
 言いながらドーマの腕を淡い光で包み込んだ。これで技の精度が向上するはず。
 ドーマは頷いて光り輝く球を発生させた。
「俺ァスピードと精密性を売りにしててなァ!」
 その言葉通り、スタティックフィールドの光が敵の動きを阻害した。
「足止めはバッチリだねえ」
 動きの鈍ったゾンビをトマスが眺める。
 二人はすぐに次の集団の足止めに向かった。

「出来ることは多くない、多くない、は、ゼロじゃない」
 ファム=ゴートは足止めされたゾンビたちを狙って豪風を巻き起こした。ゾンビが数体堀に沈んだが、残ったゾンビたちは構わず進んでくる。
 思ったよりもゾンビの動きが単調だ。初日はまだ段を組もうとしていたが、まさか直接死体を踏み台にして直進してこようとは。
 だがファムのすることに変わりはない。次に光の矢を放ち、ファムはまた一体のゾンビを沈めた。

●
 キャスターたちの妨害を受けつつも、ゾンビたちは倒れた死者を踏み台にして進軍を続けている。
「死者を利用して、こんな、こんなに……!」
 フィーレン・ステオラーズはその光景を見て怒りに肩を震わせた。あの下衆野郎の思い通りにしてたまるかという思いが内から溢れてくる。
 そして傷を追った仲間へヒーリングオーラを放った。
「大丈夫、俺がついているさ!」
 できる限り支えてみせる。

「アンデッドによる包囲戦だなんて、まったくもって気が滅入りますわね」
 エイダ・バサルトはそう言いながらゾンビが群がる中へ身を投じた。
「さあ私はここですわよ」
 大きく武器を振り回し敵を引きつける。ゾンビたちがエイダを追いかけてきた。
「おっと、背後は任せな」
 その背をマシロ・ロスコが守りに走る。手当り次第盾でゾンビを弾いて飛ばした。
「へっ……! 疲れないってのは羨ましいもんだな!」
「お互い死なない程度に頑張りましょう」
「ああ、命くらいは守ってみせるさー」
 二人頷き合った。
 リーザヴェールは敵の動きを見据え、光を無数に召喚した。
「死者への冒涜ね……これ以上死者の手を汚さないでちょうだい」
 稲妻のような光が戦場に走る。アーケインテンペストがゾンビの群れを捉えた。ゾンビたちの動きが鈍る。動きの鈍ったゾンビたちを、ロスシーが見据えている。
「かなりの数だな」
 その口元に笑みが浮かぶ。
 矢を番え、たっぷりとエーテルを纏わせた。狙うのは弱っている敵だ。
「まずは一体、仕留めてみせよう」
 放った矢はゾンビの胸元へ。エーテルが内側から敵を侵食し、蝕んでいった。

●
 積みあがったゾンビの死体が城壁の半ばを超え、小型のクリーパーが一般兵に向かって突進する。
 状況に気づいたイヴェール・イリュジオンがその間に割って入った。
「死者の眠りを妨げただけでも許し難いのに戦わせるなど……!」
 と、大きく剣を振り上げクリーパーを殴りつけた。ひとまずは自分に惹きつけて兵士たちから引き離す。
「何だ!?」
 ようやく危険に気づいた兵士が悲鳴を上げた。
 そんな彼らの前にリオネル・パストラルが躍り出る。
「助けに来たぜ! こっちの敵は俺に任せな」
 左右の手に持った短剣を構え、兵士たちをこの場から逃がすよう位置を取った。
「助かった」
 兵士たちはほっと肩をなでおろす。
 だがまだ周辺には多くのゾンビたちの姿がある。クリーパーの相手は授恵者が引き受けた以上、このまま彼らをここに止めておくことは得策ではない。
「ならば余輩が道を拓こう」
 と、ネモが炸光矢を構えた。エーテルを込めた光の矢弾を狙って打ち出す。無数の光破片が飛び散り、ゾンビを蹴散らした。
「余輩は力が弱いからな。通るならさっさとするのだ!」
「ありがとう」
 兵士たちがネモの作り出した道を駆け抜けていく。
 転進する兵士たちを見送り、リオネルは続けて二撃クリーパーを斬りつけた。
 仲間たちも続けて攻撃を叩き込み、クリーパーを追い込んでいく。
「貴族はともかく、普通の人達にまで手出しはさせない」
 アリオン・リューが研ぎ澄まされた一撃を繰り出した。
 まだまだ戦いは続くのだ。この相手には短期戦で挑むのが良いだろうと考え、惜しまず力を使う。
 大剣が敵の腹を斬り裂いた。
 敵が大きく仰け反り頭から倒れ込んだ。
 仲間たちもそれに続き、クリーパーを沈める。
「さあ次だよ」
 ここで止まるわけにはいかない。アリオンの言葉に同意するように、皆が次の敵へ走った。

●
 簡易補給所では鵜鬱鷹 浩之が仲間の治療にあたっていた。
「遅滞はできても押し留めることは難しそうですか」
「だがまだ戦えるさ。次はどこに行こうか……」
「人手が薄い箇所はどうでしょうか?」
 浩之はいくつか手薄な箇所を伝え仲間を送り出した。
 まだまだできることはあるはずだ。
「さぁ、労働の時間です」
 確認した見取図を頭に浮かべながら、仲間を癒すため砦の中を駆けた。

 積みあがる死体の数だけ敵の勢いは増し、砦の防衛はますます激しさを増す。
 Svart・Nattは疾風足を使い砦の中を駆け抜けた。
「撃たれたゾンビを踏み台にしているようだね」
 そうはさせないとSvartはゾンビに斬りかかった。おそらく一般兵が撃ち漏らした個体だろう。素早く数体のゾンビを打倒し、次の場所へと走った。
 クローリカは鉄の大剣を振り下ろし目の前のゾンビを殴打した。
「とにかく一体でも多く減らします」
 続けて隣のゾンビも斬り捨てる。
 斬っても斬ってもゾンビの波はおさまらない。だからこそ、とにかく敵を倒し続けるしか無い。
「死体を足場にして進んできますね」
 まるで死体をそのまま使って斜路を作ろうとしているようだ。初日の階段と違って足場を崩そうにもやりようがない。
「防衛軍を魔術でサポートしていきますよ! この砦は私たちが守ります……!」
 ヘレム・カースワーズはありったけのエーテルを敵の群れに撒き散らした。筋力を衰えさせ、守りの力を削ぎ落とし、敵の動きを妨害する。これで一般兵の戦いも少しは楽になるはずだ。

 やはり、敵は死体を使って広い通路を作ろうとしているようだ。レティシア・レインフィールは天眼を利用して戦況を見ていた。
「これは殿下にご報告をさせて頂いたほうが良いかもしれませんね」
 皆は持てる力で懸命に戦い敵の行動を遅滞させている。
 しかし長期戦になれば……。
 そこまで考えてレティシアは癒しの力を秘めた光球を放った。回復の手はどの戦場も貴重だった。

●
「階段は諦めたようだよ」
「その代わり死体を使って通路を作ろうとしているようだぜ」
 桃武・侑飛と桃武・侑輝は砦周辺の状況を確認していた。
 砦に取り付こうとするゾンビは、死体を足場にしていることなどおかまいなしだ。
 さらには斜路を駆けあがった勢いで城壁を越えたクリーパーが好きなように暴れまわっており、授恵者の手がそちらに割かれているとのこと。
「次に敵が溢れそうな場所はどこですかしら?」
 百鬼 朱羅が二人に問う。できる限り敵の移動を阻害したい。
「砦の第一防壁に取り付こうとしている群れが居るようだな」
 侑輝の情報を皆で共有し【黄陽花】の仲間たちが走り出した。
「こちらの通路から回り込めるわね」
 小さな光の玉を傍らに浮かべ桃武・侑芽が先導する。
 四人はゾンビとそれらを率いる吸血鬼の側面に出た。ゾンビの群れが今にも防壁に取り付こうとしているようだ。
「思い切り行きますわよ」
 朱羅が光り輝く球を出現させる。エーテルの光がゾンビたちにまとわりつき、動きを鈍らせた。
 前線に送り届けただけで用は果たしたという事か、吸血鬼が構わず下がっていく。途端にゾンビたちの秩序が失われた。吸血鬼も気になるが、今は防壁に取り付いたゾンビを押し返さなければならない。
「援護するわ」
 魔法を打ち出し、侑芽が道を作る。侑輝と侑飛が敵の群れに飛び込んだ。
 広範囲の敵は朱羅が巨大な炎弾で薙ぎ払う。侑芽は敵と少し距離を取りつつ仲間の回復を担当した。
 四人は力を尽くしゾンビたちを一掃する。死骸がさらに積みあがった。

●
「さあ、皆さんもうひと頑張りなのだわ」
 アヴェラ・ウッチェロが皆の食器を下げた。こんな時こそ休息は大切だ。
「矢の補充も完了したッスよ」
 スフェーンは敵味方の配置を確認していたイズレンディルを見る。
「せめてあの壁の敵は押し戻したいですね」
 イズレンディル・パラリムが皆に説明をした。敵の勢いは留めようがなく、じきに第一防壁を放棄することになる。そのため退路を確保しつつ、敵軍をできる限り足止めする必要があると。
 それを聞いた【護軍】の皆が立ち上がる。

「前はお任せください!」
 コルネリウス・アーラが敵の群れを薙ぎ払った。壁に群がっていたゾンビが吹き飛ぶ。
「アーラさん、こちらからもカバーします」
 追い打ちをかけるように、リディリディ・トゥラ・イェレミースの光弾が大量に降り注いだ。吹き飛んだゾンビたちの身体が砕けていく。
 続いてユゥラ=フォンはまだ立っているゾンビに腱撃を繰り出した。敵の体が砕けて崩れる。
「撃ち漏らしは、仕留めていくよ」
 その言葉通り、ユゥラがもう一体ゾンビを仕留めた。
 その時、スフェーンが気づいた。
「クリーパーッス!」
 言いながらシーザーロアを発動させ注意を引きつける。
「そのまま真っすぐ走ってください」
 イズレンディルが炎球を放った。炎が敵に燃え移り焼いていく。
「皆を生かすために刃を振るうわ」
 追ってアヴェラが鉄の短剣をクリーパーに突き立てた。クリーパーも抵抗する。だが小型のクリーパーに遅れを取ることはない。
 数度攻撃を重ね三人は確実にとどめを刺した。
「次はあちらですね。行きましょう、ここは護り切ります」
「はい。兵士の皆さんへの被害が多くならないようにしないと」
 コルネリウスとリディリディが次の群れへ走る。コルネリウスの衝撃波が敵を打ち、リディリディの放った爆炎は光の礫を作り出して敵を一掃する。
 ふと、ユゥラが戦場を見渡した。
「ここは大丈夫だけど……」
 徐々に敵の勢いが増している。
 抑えきれない敵勢力が、壁に押し寄せる様子が見えた。

●
 授恵者達は精一杯の戦いを続けていた。だが敵は圧倒的な数で攻め込んでくる。その勢いは止まらない。迫る敵を倒せば、斜路のかさ上げをすることになり、ついにゾンビが城壁の上に手を掛けた。
 仲間からの情報伝達を受け、クーニャ・レモンハートは砦の中を軽やかに走った。
「じょーほーでんたつだよ〜! ここから逃げるよ!」
 第一防壁の放棄と撤退が告げられた。

「動けない方はどちらでしょうか?」
 傷を負った仲間にヒールの光を放ちながらファーシル・クリスティアは治療エリアを回る。
「あ、足が……」
「今行きます」
 足を引きずる兵士のもとへ駆けつけ、できる限りの治療をする。兵士は何度もファーシルに頭を下げてた。相当な持久戦だったのだろう。それを物語る、大きな傷跡だった。

 前線では兵士を逃がすための戦いが続いていた。
「貴殿の相手は私が務めましょう」
 ウッド・B・ウードはゾンビを率いている監督官にエーテルを叩きつける。
「この期に及んで、まだそのような戯言を!」
 吸血鬼が小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。その周辺には彼を守るようにゾンビがいる。
 ウッドはできる限り吸血鬼を惹きつけた後、光塊を武器にまとわせて振り下ろした。ゾンビが数体砕ける音がする。
「おらがここをひきうけるだべさ」
 ありったけのエーテルを身にまといカンナ 三木は一般兵の殿を務めていた。
 守りを固めることだけに注力しゾンビたちの攻撃に耐える。
「ええい、さっさと沈め!!」
 しびれを切らした吸血鬼がウッドとカンナに向かって攻撃を仕掛けてきた。
「ここは通さねぇべさ」
 カンナが守護の力を秘めた光を展開する。
「っなんだ、この気迫は……?」
 吸血鬼が二の足を踏んだ。
 次の瞬間、空から痛烈な一撃が飛んできた。テテリカの流星射だ。
「な——」
 吸血鬼が怯む。
 その間に。
「そろそろ逃げ遅れるぞ」
 そう言い残し、テテリカは縄を垂らして反対側へ飛び降りた。
 ウッドとカンナもすぐに縄を利用して逃げていく。
 最後に途中で縄を切れば完璧だ。
 授恵者たちは第一防壁に群がる敵を見ながら、第二の、そして最後の防壁へと撤退した。


2日目 午後 【4】強行輸送 (執筆担当:おおくまねこMS)

●
 輜重隊の先頭を行くのは、【花月楼】【雷槌】のメンバーが護衛を務める馬車だった。四万もの亡者の軍勢に包囲されたヴァイセントラフ砦に支援物資を届けるのは死と隣り合わせの作戦だが、補給なくして戦い続けることなどできない。兵糧の質と量は士気に密接に関わるし、支援物資の中には防衛戦の切り札たり得る「燃える水」も含まれている。この「強行輸送」の作戦の成否はこの戦争の成否を占う重要な局面なのだ。

(あと数秒で接敵するぞ)
 先行偵察に出ていたシスル・ノーティラスはテレパスで馬車の仲間達に警告した。

「このまま砦に突入します! 皆さん、準備はいいですね?」
 先頭の馬車の馭者を務めていたレヴァーレ・クアルムは仲間達に声をかけ、タイダルストリームで亡者達の隊列に風穴を開けた。いよいよ強行輸送作戦の開始だ。
「もちろん! 跳ね橋に向かって一直線よ!」
 馬車の前方を併走していたロゼットは、光球を作り出し、辺りを眩しく照らした。輜重隊の突入開始を砦へと知らせる合図だ。
 近くに戻ってきたシスルは馬車の側面につき、馬車に取り付こうとする亡者達の排除を開始する。横一文字に振るわれた双剣が亡者を薙ぎ払い、両脚を切り落されて文字通り「足止め」を喰らった亡者はごろりと大地に転がった。
「死人が偉そうに歩き回ってんじゃねーよ」

「せーのっ!」
 疾走する馬車から勢いよくミーミル・ロッポラが飛び出した。ぶおんと鉄の斧を豪快に振りかぶり、正面から亡者を薙ぎ倒しながら着地する。ミーミルはそのまま、雪崩を打って襲い掛かってきた亡者たちと交戦を開始した。腰にはしっかり命綱を結んであるので、多少馬車から離れても問題はない。
 ルーファス・W・ワーズワースもまた、天眼と鋭い視覚を駆使しながら、押し寄せるゾンビの群れと対峙していた。命綱を馬車に繋ぎ、近づく敵をまとめて薙ぎ払っていく。


「塾生諸君、ここが正念場だとも!」
 先頭を行く馬に跨り、レヴァーレとタンデムしていた【花月楼】の塾長ベゴニアの杖から強力な水流が連続して放たれ、前方の亡者の群れを次々と薙ぎ倒した。
 彼女の馬には革製の馬鎧を取り付けられている。特に首など、亡者に取り憑かれて負担がかかりそうな場所が強化されている。塾生のアルマ・ヴァレンタインがおやつとブラッシングで馬の機嫌を取り、取り付けてくれたのだ。ちなみに馬の持ち主との交渉はベゴニアが行った。
「みんな、怪我したらすぐ治すから!」
 アルマ本人は言うと、堅甲やサークルプロテクションなどを駆使し、仲間の支援に奔走している。ヒールも使えるので、もし誰かが負傷すれば彼女に頼ることになるだろう。
 同じく塾生のライラ・ペトラルカは同門のミーミルやルーファス、ベゴニアが作り出してくれた道を維持するべく、エーテルを燃やして魔法を連発している。
 ライラは乱戦の最中も天眼でしっかり味方の位置を把握し、敵だけが密集している地帯に正確に氷嵐を打ち込み、一網打尽にしていった。ガタゴトと激しく揺れる馬車の上からでは狙いは付けにくかったが、そこは鍛え抜いたバランス感覚でカバーしていた。敵が蠢く城壁周囲を切り開く矢としての役目を、【花月楼】の面々は十二分に果たしていく。

●
【花月楼】がこじ開けた空間目掛け、【ふしぎ亭】のメンバーに守られた馬車が素早く突っ込んでいった。
「いい? 穴が開いた戦列の薄い箇所を一気に駆け抜けるわよっ」
 天眼で戦場を俯瞰で捕えていたテュリン・ヴィングは一早く戦況を察知し、敵の追撃を防ぐ為に後方にフレイムゲイズを打ち込んだ。爆風と火柱が上がり、亡者の行進を阻む。
「さぁ! 一つでも多く届けるよー!」
 ヒロ・テスタロッサは、仲間へと声をかけながら、馬を引きずり倒そうとする亡者たちに向けて赤いエーテルの刃を放った。エーテルは命中した瞬間に光の糸となって絡みつき、亡者たちの動きを鈍らせる。その瞬間、馬車の近くにいたルルが放った衝撃波が亡者を次々と吹き飛ばした。
「ルルも一生懸命やるんだよ!」
 ルルが短剣を振るうたび、放たれた衝撃波が亡者を穿つ。衝撃波をかいくぐり、馬車まで接近してきた亡者には直接斧による薙ぎ払いで対処している。

(今、使うべきか……?)
 一瞬、ゴルバルティアは思案した。『殺界』は強力だが、攻撃範囲が広すぎて味方まで巻き込んでしまう恐れがあるのだ。
「……みんな、先に行け!」
 だが、ゴルバルティアは馬車を先に行かせる方が有益と判断し、仲間達を見送った後、殺界を発動した。直後、ゴルバルティアの武器から伸びた長大なエーテルの刃が亡者の群れをまとめて薙ぎ払った。

「ベル! 頑張るわよ!」
「みんな、物資を届けにより深く速く……ふしぎ亭印の超特急便だ!」
 突っ込んだ馬車に疾風足で追いついたララベル・サン・ディーベルとアルラ・ニグラスは馬車と併走しながら亡者たちを斬り払い、突破口を護る。アルラは馬車の右側。ララベルは左側だ。
 羽根が生えているかのように素早く動く二人の双剣は亡者たちを斬り飛ばし、馬車に近づく亡者たちを次々と蹴散らしていった。

 アリエッタはエーテルの放射による空中疾走で敵の隙間を駆け抜け、味方と交戦している亡者を横合いから斬り付け、走り抜けて行く。亡者がのろのろとアリエッタに振り向く頃には、すでにアリエッタは間合いの遥か外だ。
「あたしの動きは疾風! 捉えられたりしないよ!」

「出し惜しみは無しです……征きますよ!」
 レイヤ・ダライ=カホールの杖からタイダルストリーム、爆炎、ストーンブラストが炸裂し、馬車の前に群がっていた亡者たちが消し飛んだ。すかさず空いた空間にアーケインを召喚し、亡者たちの再接近を阻む。エーテルを燃やしている為負担は大きいが、この荷馬車の中身は一つたりとも亡者たちにくれてやるわけにはいかないのだ。
「もう、しつこいなあ! これでも食らえ!」
 馬車の屋根の上に立っていたエーデルワイス・エンゲルは執拗に追いかけて来る亡者たちに向けて祈雷を発動した。霧の中で荒れ狂う応雷は亡者たちの進撃を拒み、馬車に追いすがる亡者たちをまとめて焼き払った。

 冒険者達は死者の行列を掻き分け、支援物資が詰まった馬車を砦へと導いていく。南門の跳橋はもう目の前だ。

●
 先頭の馬車が砦の入口に到達した頃、輜重隊の中列では冒険者達が後続の馬車を守るべく奮戦していた。
「でかいの、いくぜ!」
 パヴェル・A・サムルガチェフは行く手を塞ぐ亡者達に向けてタイダルストリームを打ち込み、進路を確保した。その隙に馬車は加速し、一気に距離を稼ぐ。
「前と左は任せるッス。後ろと右はボクが!」
 馬車に随伴していたアンジェリカ・ミュクーサ・リーズデルトは後方に稲妻を召喚し、亡者たちの追撃を拒んだ。さらに、進行ルート上にいた敵や馬車にまとまりついてきた亡者たちには水流や爆炎をお見舞いし、馬車への接触を防いだ。
「よし、行くぞ!」
 荷台の屋根から飛び降りたエリシェール・ミノン・リュキアは、馬車の進路を塞いでいる亡者たちに双剣の二閃をお見舞いした。
 亡者の殲滅ではなく馬車を行かせる為の時間稼ぎが目的なので、馬車を見送った後はさっさとその場を離れ、後続の馬車に駆け寄り、また荷台へと飛び乗ることを繰り返す。身軽さを活かしたヒット&アウェイだ。

「えいっ!」
 可愛らしい声と共に、馬車に乗り込もうとしてきた亡者が勢いよく吹き飛んだ。荷台にいたヘイムダルがエーテルブローをお見舞いしたのだ。彼女(彼? どっちだろう)は本来ヒーラーなのだが、殴る方が得意なのである。とはいえ、負傷している戦士や馬を見かけるたび、ちゃんと治療もしたり、多めに用意していた水を分けてあげたりもしている。
「ふふふ、さすが俺様。正に戦場の天使だな……」
 そんな独り言が荷台から聞こえたとか聞こえなかったとか。

●
「来たぞ、跳ね橋を降ろせ!」
 上空で待機していたビッグオウムの上から、【風雅】の海神・江流が叫んだ。閃光や爆炎、それに吹き飛ばされている亡者。あれだけ派手な合図があれば見落とすはずもない。
 ゴゴゴと、音を立てて砦の跳ね橋が降り始める。それに気付いた吸血鬼が亡者に妨害を命じ、砦の壁にとりついていた亡者たちが一斉に跳橋に向かってなだれ込んできた。
「ここが勝負どころよ! あの馬車一つ一つに千人の命がかかっていると思いなさい!」
 天眼で戦況を把握していたマリアンヌ・ブラン・ド・リンドヴルムは兵達に向けて叫んだ。杖を振り上げ、城壁の上から跳ね橋に向かって殺到してくる亡者に向かって魔法を連発し、亡者たちをひたすら薙ぎ払う。
「ここは通さんぞ! アーケインテンペスト!」
 跳橋の降下に合わせ、ライナ・フレイヴァルツは跳橋の手前にアーケインを召喚した。完璧なタイミングだった。稲妻の壁に阻まれ、馬車に追いすがる亡者たちの動きが目に見えて鈍くなる!

「亡者たちを橋に近づかせるな!」
 ライナが空けた空間を埋めるように、ギリギリまで降下したビッグオウムから飛び降りてきた江流が着地した。跳橋が無事に稼働するよう、双剣で橋に纏わりつく亡者たちを切り伏せていく。
 江流が着地した直後、城壁でバリスタ部隊の援護をしていたフロマーシュ・ダイヤドロップとアルカンジュ・クリアハートも簡易階段を駆け下り、迎撃に加わった。
「皆の命を守る物資……触らせないよ……!」
 全速力で突っ込んでくる馬車を右に避けたアルカンジュは斧にエーテルを注ぎ込んだ。思い切り斧を振りかぶり、近づくもの全てを巨大なエーテルの刃で薙ぎ払う!
「キーキー!」
 その時、荷馬車を狙って高速型小型クリーパーが急接近してきた。
「シーザーロア!」
 フロマーシュはクリーパーにエーテルを叩きつけた。ぐりんとクリーパーは向きを変えてこちらへと突っ込んで来る。フロマーシュは盾を構え、クリーパーとの衝突に備える。
「光縛封!」
 その時、馬車を先導していたロゼットの光縛封がクリーパーを抑え込んだ。さらに前方を塞ぐ亡者たちにエーテルブローをぶちかまし、道をこじ開ける。

「こっちだ、急げ」
 砦側から馬車を迎えに来たブルーテ・ビシアは後方のカバーに入り、荷馬車へと突進してきた亡者たちを十字の斬撃で薙ぎ払った。護衛をすり抜け、馬車にしがみついてきた亡者にはすかさず蹴りを入れ、堀へと突き落とす。
「積荷の管理なんかは頼む!」
 馬車ごと叩きつけるように砦の兵士に積み荷を預け、レヴァーレはベゴニアと共に大急ぎで跳ね橋へと戻っていった。全て物資の搬入が終わるまでの間、橋を死守しなければ。
「この身は守護の剣。此処は、断じて通さない!」
 そこには、跳ね橋へと迫る亡者たちにエーテルの光を浴びせ、一息に斬り払うルーファスの姿があった。
「この橋は通さないよ!」
 ベゴニアもまた堀と跳橋の接続部にアーケインを召喚し、跳ね橋に近づく敵を妨害する。彼女とレヴァーレの二人は魔力の続く限り、橋に近づく敵に魔法を撃ち続けた。

 ――道は拓いた。あとは、押し寄せる馬車と不死者を裁くのみ。


同刻 【4】強行輸送 (執筆担当:霧柄頼道MS)

●
 死者ひしめく大平原へ、後続の輜重隊は決死の突入を敢行した。
 並み居るゾンビ、手強いクリーパー、そして吸血鬼と恐るべき陣容を前に、砦の跳ね橋を目指して一丸となり突き進んでいく――。

 グレイ・ルノワールは通り道に立ちはだかる敵軍めがけ、エーテルを解放。全力の範囲殲滅魔法を連発する。
「タイダルストリーム!」
 長杖より噴き出した荒れ狂う水の奔流が、居並ぶゾンビ達を一挙に押し流した。
「氷嵐!」
 その奥から接近を試みるゾンビ集団を、激しい冷気と氷塊が呑み込み、まとめて薙ぎ払う。
「豪風!」
 それでも懲りずに襲ってくるなら、爆発さながらの烈風を食らわせて消し飛ばす。
「うおおお! 私の勇気が馬車を救うと信じて!」
 きりがなかろうと、こちらは全魔力を使い切る勢いだ。シャウトとともに気合を入れ、グレイはゾンビ達が現れる先から、思う存分蹴散らしていくのだった――。

 適当に目を付けた幌馬車の屋根へ乗せてもらったサロは、その優れたバランス感覚を総動員し、走行時の激しい揺れにも安定した位置取りを保つ。
 死角には栗鼠を立たせてなるべく全方位を監視しつつ、敵をより多く巻き込める地点へ炸光矢をぶち込む。
 接近されて来たら即座に煙幕をまき散らし、視界を奪う。
 その隙に車輪近くの敵から撃ち抜き、手早く仕留める。馬車の駆け抜けた轍の後に、矢の突き立ったゾンビの死骸が続々と連なっていった。


 ベアトリーチェ・カロッサはパンパンになったバックパックを抱え、ゾンビであふれる平原を疾風の如く駆けた。
 中身は香辛料やチョコなど、小さいがどれも高価な嗜好品が詰め込まれている。斬った張ったの極限状況下では、とりわけ重宝される品ばかりだ。
 多くはアーチボルト領からの心付けと、政治的意図も含まれているが――今はこれらを無事に砦へ届けられるかどうかが、この腕にかかっている。
「さあ行くよ! 気張れアタシ!」
 掴みかかって来るゾンビをかいくぐり、時には思い切って跳躍し、エアーライドでやり過ごす。スキルを駆使して上下左右に敵の狙いを揺さぶって、その隙間をすり抜けていく。
 嵐のような敵軍の猛攻を紙一重でしのぎつつ、四肢も体力も疲れ果てさせながらも、何とか砦内へ駆け込む事ができたのだった――。

 Shaadeeは輜重隊の馬車に同乗し、前方で進路を妨害してくるゾンビや、後ろから追いかけてくる敵へ魔法を浴びせて勢いを削いでいた。
 一息ついたところで一旦腰を下ろし、持ち込んだ鍋と干し肉、調味料に問題がないことを確認した。
「みんないっぱい汗をかくし、塩は多めに入れてあげた方がいいかな……」
 補給物資を届けることができたら先にも、Shaadeeの仕事はある。それを実行できるまで、あと少しだ。

「帝国の崩壊でレシーバーになって、今回の依頼が初めて! みんなの足を引っ張らないように頑張るわよ!」
 馬車の上に乗り、気合を入れるセリーヌ。すると同乗するティトが、荷台を指し示し。
「この燃える水、無事に砦まで運び込まないとね」
「そうね! 敵は一人も近づけさせないわ!」
 セリーヌは中腰になって弓を構え、こちらへ接近して来るゾンビを優先して矢を叩き込む。休む事なく矢継ぎ早に射撃を見舞い、寄り来る敵を撃ち抜いた。
 だがそこへ、馬型のクリーパーが走り寄ってくる。セリーヌは目の前の敵の対処に手一杯で、そちらへの反応が一手遅れた――。
 刹那、飛び出したティトが剣を振り抜き、クリーパーを切り裂く。
 ティトはゾンビを相手にする傍ら、セリーヌへも気を払い、いつでも守れるよう心構えておいたのである。
「助かったわ、ティト!」
「うん……」
 こうして二人が守る馬車は、無事に砦へ到着した。
 集まる兵士達へ、屋根の上からティトが顔を覗かせ、告げる。
「――燃える水は、こちらです」

 門が開いているのはごくわずかな時間だ。亡者達は我先にと入り込もうと押し合いへし合いし、跳ね橋の上はどっと敵の密度と圧が高くなる。
 メア・ステルツァは中列に位置する馬車の護衛についていた。ゾンビの群れがとりつかないよう駆け出し、担いだ大斧を思うさまにぶん回す。
「うぉぉぉぉぉっ! どけどけぇ! 道を開けろぉ!」
 うじゃうじゃと群れ寄るゾンビをあたるを幸い縦横に薙ぎ払い、力任せに叩き割り、どこまでも猛烈に暴れ回る。
(ある意味でこいつらは山賊団のみんなの仇かもしれねぇ……絶対にこの物資を渡して、砦側には勝ってもらうぞ!)
 メアは血潮と闘志がたぎるままにゾンビの波をブチ倒し、馬車のスムーズな進行を助けるのだった――。

 ナハシュとヨル・スレイマンは手配した囮の馬車に乗り、敵軍の攪乱をしながら突破を試みていた。
「後方から三体、側面からは四体だ! やれやれ、忙しいったらありゃしないぜ!」
 御者台の左右や幌の小窓からの視界と天眼を使いし、ナハシュが屋根に陣取るヨルへ情報を伝達する。
「了解。――御者さん、ちょっとスピードを落としてくれるかい?」
 ヨルもまた砦側からの投光器の点滅から、前方に敵が密集している事を察知。
 サウンドボマーを用いた叫びで敵を挑発する隙に、御者には速度を落としてもらう。
 ナハシュは援護するべく馬車から飛び出し、車体側面を足場に、車輪へ近づくゾンビの手や腕を素早く切り落として時間を稼ぐ。
 加えてヨルから輝足をかけてもらい、反応を増した状態で一気に下車。後方から迫る敵を端からぶった斬って馬車を守る。
 ヨルもその背中を守る形で魔矢を放ち、周辺の敵を速やかに排除。ナハシュがダメージを受けていると見ればすぐさまヒールへ切り替え、縦横無尽の立ち回りを支援した。
「そろそろ戻って来た方がいいよ」
 ヨルがナハシュへ声をかける。危険な地点を迂回した馬車が、再加速を始めたのだ。
 ナハシュが疾風足で駆け戻ってくる。それを押し留めようと掴みかかるゾンビの群れ。
 刹那、ヨルが光の柱を展開し、追撃する敵の多くを一息に閉じ込めた。直後にナハシュも敵を振り切り、馬車へ飛び乗ってくる。
 こうして二人の奮戦により、無事に危険な密集地点を突破できたのだった――。

 馬車へ向けて肉薄するゾンビ達。ヘレン・ワーグナーは絶え間なく剣撃を送り込んで斬り倒し、豪快に得物を振り回して対処する。
 取りつかれようものなら剣を輝かせ、真っ向から強烈な一発を食らわせて叩き落とす。それでも間に合わなければさらに前へ出て、自身を盾にしながら迎撃した。
 一方エフィルミアは要所要所で捜波を繰り返し使い、敵味方の位置関係を把握。
 その上でテレパスを用い、付近の味方へ情報を伝達する事で連携していた。
 ゾンビはどうにかヘレンが捌いてくれているが、それでも後から足の速いクリーパーが追走してくる。
 エフィルミアはそいつの脚部めがけて魔矢を撃ち込み、転倒させて遠ざけていく。
「数が多い……きりがないですね……!」
 だがついにヘレンの守りを抜けて、ゾンビがよじ登ってきた。エフィルミアはすかさず短剣へ持ち換えて縛糸刃で切り裂き、相手の動きが鈍っている内に返す刀の毒撃で倒す。
 イズル・M・ヴォルゴールは走り去っていくナハシュたちの囮馬車を見送りながら、御者を護衛して戦槌を振るっていた。
 敵が一時的に囮馬車の方を追っていったため、少しばかり余裕ができている――かと思えば今度は荷台後方で騒ぎが激しくなり、振り返ればヘレンやエフィルミアが複数のゾンビに取り囲まれつつあった。
「助太刀する!」
 イズルはそちらへ移動し、すぐに二人を回復する。
 何とか戦線を持ち直してから再び御者席の方へ戻り、こちらにも顔を出していたゾンビへエーテルブローによる猛打をぶちかます。
 その後は馬車前方に祈雷を設置し、立ち込める霧の中に突っ込んでもらう。
 雷が荒れ狂い、馬車に汚泥の如くへばりつくゾンビ達を打ち据え、一気に払い落とした。
 跳ね橋へ差し掛かる馬車。仲間達が橋上のゾンビを倒してくれているおかげで、砦までもう少しだ。
「もっと飛ばせる?」
 ヘレンは他馬車との距離感を確認しつつ、とりついた残りのゾンビを斬り飛ばし、御者へ呼びかける。
 御者は最後の力を振り絞って手綱を握り、そうして馬車はからくも砦内へ駆け込む事ができたのだった――。


「ゾンビが六、七体後ろから来てる! 迎え撃つぞ!」
 シニング・W・テュパラは馬車の屋根から周囲を見渡し、敵の接近と位置情報を矢継ぎ早に仲間へ叫ぶ。
 自身はあらかじめ準備しておいた棘や油を敵の進行方向へどんどんまき散らし、踏ませてダメージを与えたり、バランスを崩して転倒させたりと進軍を阻害する。
「みなさんの背は、私が守ります」
 マリイ・パルティスは荷台上に立ち、その優れた視覚でもって周辺を見回して、視界に入った敵の位置を伝えながら長弓を構える。
 弓弦を鳴らして放った矢が、切迫するゾンビの頭部を貫く。
 連れている狼コルデラも、荷台へよじ登ろうとする不届きなゾンビに体当たりして吹き飛ばし、後ろに溜まっているゾンビらをも巻き込ませて将棋倒しにしてのける。
 セレネ・ヴァーミリオンはテュパラの合図とともに飛び出し、テュパラと同様にゾンビらの動きを鈍らせるべく動き出した。
 ゾンビに水をぶっかけて転倒させたり、油を撒いて移動を阻害したりと小刻みに足止めをかけつつ、馬車と引き離され過ぎないようゾンビを斬り倒しながら駆け戻る。
 サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブも馬車と並走し、仲間の示した場所を目指しながら捜波を使用。
 発見次第短剣を構えて斬りかかり、すり抜けざまにゾンビの足を刈って転がしてのけた。
 そのまま足を止めずに再び捜波を展開。仲間の教えてくれる位置情報を頼りに駆け回る。
「とっておきを使っちゃうっ!」
 複数のゾンビを確認した場合には、事前にテュパラから受け取っていた鉄片付ロープを足めがけて投げつけ、まとめて絡ませて団子状態にした。
 とはいえ遅延攻撃は通用しているものの、やはり敵の数が多く、思うようには倒しきれない。
 その時、探知用のエーテルを何度目かに走らせたサフィラは、今までとは違う気配に気づき、大声を発した。
「……吸血鬼が来たよっ!」
 ほぼ同時刻、ライル・クライブスはサフィラとは逆サイドの位置で、激しい交戦を繰り広げていた。
 身軽さを活かして動き回り、急所をえぐる一撃を刻み込んで確実に敵を仕留める。
「いつどこに吸血鬼が現れるか分かりません……目の前の敵に夢中になりすぎないように」
 攻めすぎず離れすぎず、自分の現在位置を頭に入れ、仲間の立ち回りや指示にも注意を払いながら、最適な位置取りを心掛けて応戦していた。
 すると、ゾンビの群れから小型クリーパーが顔を出す。手ごわい部類に位置する敵だが、相手も傷つき、動作は鈍く隙が大きい。
 ライルは素早くクリーパーの背後を取り、短剣をひらめかせて突き刺し、絶命せしめる。 それから少し後退しつつ、自分に積み重なったダメージをヒールで回復した。
 直後。ライルの鼓膜が、吸血鬼襲来を告げるサフィラの声を拾う。
 回復中も耳をそばだてていたため、彼女がどの方向にいるかも――すなわち吸血鬼がどちらから来ているのかも正確に捉える事ができ、同時に仲間へ向けて警告を飛ばす。
「――吸血鬼が馬車の後ろへ迫っています!」
「みんな前に出過ぎるな! 吸血鬼を優先するぞ!」
 テュパラはすぐに吸血鬼の元へ駆け出して、全員に指示を出す。
「これは急いだ方が良さそうね」
 セレネも目の前のゾンビを手早く片付けて身を翻し、一陣の風となって疾駆する。
 一方でサフィラ、ライルらの警告を聞いていたベルク・オスマットは、吸血鬼襲来の報に手を止める事なく、目の前のゾンビを倒し続けていた。
「ならば、そちらの対処は任せたぞ」
 仲間の何人かはゾンビやクリーパーと戦う事を止め、吸血鬼迎撃へ動いている。
 であれば、自分の役目はあくまで持ち場に踏みとどまり、手薄になりがちな防衛線を維持する事だ。
 ベルクは馬車と並んで疾駆しながら、よたよたと近寄って来るゾンビへ縛糸刃を見舞う。
 光糸に巻かれて地面へ突っ伏し、置き去りにされていくゾンビを一顧だにする事なく、こまめに周囲へ目を配り、新手の接近を警戒する。
 敵が吸血鬼一体とは限らない。本命が密かに接近している事すら有りうる。
 けれど、どうやらそれは杞憂なようだった。仲間が吸血鬼と戦いだしてしばらくしても、追加でやってくる吸血鬼はいない。
「吸血鬼はあれ一匹だ。奴さえ倒せば、増援はない」
 淡々としたベルクの言葉は仲間達を強く勇気づけた。敵戦力をどれだけ把握できているかによって、心持ちはいくらでも変化するものだから――。
 その頃マリイは荷台の上から、こちらへ向けてひたすら殺すと叫びながら向かってくる、身ぎれいな男を注視していた。
 顔色は悪いもののゾンビとは明らかに違う。羽などは特に持たず、飛行もしていない。
 密集していたゾンビが道を開けるみたいに左右へ分かれていくし、仲間達が吸血鬼だ、としきりに連呼している事から、やはり吸血鬼で間違いないのだろう。
「私、マリイと申します。吸血鬼の方とお見受けしましたが、生ける屍達に隠れ、高貴な種族たる誇りはないのでしょうか?」
「黙れ! 下等な人間ごときが我らの誇りを語るなど……! ヤコブ様の崇高なる野望のために、貴様らには消えてもらう!!!」」
 マリイの丁寧な口調が癇に障ったか、それとも挑発の内容が逆鱗に触れたか――吸血鬼は激高してわめき散らし、ものすごい勢いで突貫してきた。
 スピードこそ目を見張るが、代わりに完全に隙だらけとなってしまっている。マリイは真正面から突っ掛けてくる吸血鬼を冷静に見据え、矢を撃ち放った。躱されたと見るや、休むことなく次矢を番えて狙いを定める。
 エーテルを纏うその一射は空間を一直線に切り裂き、するりと入り込むみたいにして吸血鬼の胸を射抜いた。
「ぎょぼびぃやッ!?」
 血走った目を剥いて吐血する吸血鬼。矢じりは確かに心臓を傷つけていたが、奴は大きなダメージを受けつつもなおも追い迫り、マリイめがけて拳を振り上げる――。
「おっと、そうはさせないよ」
 瞬間、エアーライドで駆けつけて来たセレネが、吸血鬼の背中へ目にも留まらぬ十字の斬撃を打ち込む。
 全身を揺るがす衝撃にたたらを踏む吸血鬼。彼が振り返った先では、ゾンビの攻撃をするりと避けて距離を取るセレネと入れ替わりに、テュパラが突進して来ており。
「――これで、どうだ!」
 テュパラの突き入れた短剣が、吸血鬼の喉首を引き裂いた。
 吸血鬼はがくりと脱力してうなだれ、ずるりと荷台から滑り落ち――地面へ叩きつけられる頃には落命していた。
 なけなしの統率を失ったゾンビの群れ。明らかに緩んだ攻勢をしのぐ事はさして難しくなく、一同の守る馬車は、無事に砦へ入る事ができたのだった――。

 間近に迫る砦へ向け、力を振り絞り突入する輜重隊。
 マリア・C・クロードとラセリ=リエ―ブルは隊列後方に位置する馬車に乗って、みるみる近づくゾンビの群れを前に、それぞれの行動を開始した。
「大丈夫ですか? 傷を癒します!」
 馬車を追い越し駆け抜けていくベアトリーチェや、行ったり来たり忙しいセレネをヒールで治療し、彼らが無事に砦まで到達できるよう回復支援に徹するマリア。
「みなさん、これから薄煙炸弾を放ちます!」
 ラセリは周囲の味方へ注意を促してから、敵めがけて薄煙炸弾を撃ち込む。
 続けてあらかじめ集めておいた砂や岩石、鉄くずなどを外へと押しやる。
 縄でつながれたそれらが一気に吐き出されるや激しく転がり、薄煙によってふらふらしながら追いすがるゾンビ達へ真っ向から激突。
 衝突の際に弾けた残骸がさらに敵を吹っ飛ばしたり押し倒したりと、もはや舞い上がる土煙とともに惨たる有様だ。
「効果抜群ね、ラセリ! よーし、それなら私も……!」
 間髪入れず、マリアが祈りを捧げて光縛封を行使した。落下物に叩きのめされていたゾンビ達を光の柱が容赦なく覆い込み、しっかりと閉じ込める。
 こうして二人の奮闘により、最後尾の馬車は首尾よく砦へ到着できたのだった――!

「ここがうまく行かないと、いざという時踏ん張れなくなると思うんだよね……大事なお仕事だ、頑張らなくっちゃ!」
 ハガネは戦闘の合間を縫って食事や治療ができるよう、生活魔法を用い砦を回って料理を手伝ったり、負傷者の手当てをしたりと人々の手助けをする。
「へばっちゃわないように頑張ろうね!」
 跳ね橋が降りるタイミングになると、ニーラ・メッコは馬車が入るための経路を安全にするべく走り出す。
「補給線の確保こそ戦の生命線……そんな事、エルフの私でも知ってる常識よ!」
 そこへハガネが合流し、助力を申し出てきたため、快く応じて共に門まで駆けつけた!
「さあ、血路を開くわ! 私の魔法攻撃でね!」
 わんさと押し寄せてくるゾンビ達の先頭へ、スタティックフィールドを発生させて足止めする。
 ハガネもニーラへ輝刃をかけてその杖を輝かせ、威力がより高まるよう支援した。
 その後にはアーケインも建てる事でさらに敵を妨害し、次の魔法を命中させるための布石とする。
「タイダルストリーム!」
 締めとばかり、強化済みの攻撃魔法による強烈な水流を浴びせかけ、動きを阻害されてもたつく敵勢を、橋上から綺麗に一掃して見せた!
「サポートは任せてね!」
 そしてハガネもその後ろから、必要に応じて強化&回復魔法を繰り出し、続くニーラの戦いを補助していくのだった――!

「足の速いクリーパーは今のトコなしだ! 撃ちまくれるぜリリィちゃん」
 ザインは砦の狭間胸壁にポジションを取り、跳ね橋付近をよくよく観察して、得られた情報を隣のRe:Leeにも伝える。
「あれだけ周囲にいたゾンビの群れも押しのけられてるし、攻撃に集中できそうね」
 跳ね橋上では馬車を迎え入れるため、砦内から打って出た冒険者達が殺到する敵を撃滅している。
 それを支援すべく、ザインが炸光矢をぶっ放す。
 弓なりの軌道を描いた光の矢が中空で炸裂し、無数の光破片を降り注がせた。
 Re:Leeもメテオライトを放ち、ゾンビ達を片っ端から殲滅していく。
「っと、来やがったな高速型!」
「残念だけどあたし達がいる限り、ここは通さないから」
 弾丸のように疾駆する小型クリーパーをザインが矢で牽制し、その間にRe:Leeが魔霞を食らわせ、こちらへ狙いを定めさせない。
 続けざまにザインがハーツベインショットをぶち込むと、クリーパーはたまらずがくっとよろめく。
 直後にRe:Leeが繰り出した魔矢が畳みかけるように着弾。見事に撃ち落としてのけた。
 ナイスコンビネーション! と二人は目を見交わして頷き合い、橋上に残る敵軍との交戦へ戻ったのだった――。

 アティ・メイ・マシアは馬車が来るまで、箒や雑巾を手に、砦内の掃除を行っていた。
 こうした籠城戦は何かと散らかりやすく、汚れやすい。結果として感染症などが蔓延しては内部から瓦解しかねないだろう。こうした衛生環境の維持も必須と言って良かった。
 やがて跳ね橋が降り、門が開き、輜重隊が駆け入って来る。
 そこを見計らうように殺到して来るゾンビ群へは、メテオライトをガンガンお見舞いしてこれまたお掃除。続々と馬車を迎え入れていく。
「ふう、初陣にしてはハードじゃないか? ……や、でもこういうのを外に求めてたんだ自分は。多分」
 馬車から降りて来た面々が、思わぬ砦内の綺麗さに目を瞬いたり、感嘆の声を漏らしている。
 これはあんたが、という問いにアティは頷きつつ、なおも攻め寄せるゾンビ達への対処へ向かう。
「うん、悪くないなこういうの……」

 こうして補給物資を満載した輜重隊は欠ける事なく、砦へ到着する事ができた。
 燃える水をはじめ、食材や嗜好品など、戦略的な意味以外でも、砦の士気向上に役立つ事だろう――。


同刻 【2】ヴァイセントラフ砦防衛 (執筆担当:馬車猪MS)
●壁
「ゾンビ壁……!」
 ゾンビはまともな隊列も組めず、しかし数は膨大で密集している。
 肉が潰れ骨が折れ、控えめに言ってあまりにも惨い光景だ。
「エグイ~カワユクない~怖い~!」
 梅・雨陽は矢を放つ。
 荷馬車に追い付きかけたゾンビを狙い、確実に潰していく。
 砦の兵士も真似をするが、雨陽と比べると威力も低いし狙いも甘い。
「数おおすぎ~!」
 彼女の矢筒が空になる寸前、荷ほどきされた矢が到着した。
 ロイ・アウレアが鉄の長弓を引き絞る。
 気力も体力も凄まじい速度で消耗するが気にする余裕はない。
(残りの補給部隊は1つ。だが)
 ゾンビの数が多すぎる。
 密集し過ぎて低速しか出せないのに、どんな地形も数で踏み潰し一直線で進むことで徐々に荷馬車に近づいて来る。
 矢にエーテルを込めて解き放つ。
 幅5メートル奥行き10メートルの破壊がゾンビの壁を抉りとり、荷馬車に貴重な時間を与えた。
「よし通せ!」
 最後の荷馬車が砦に入る。
 授恵者達がゾンビの前に立ち塞がる。
 彼等が稼いだ時間で兵士達が門扉を閉ざし、第二防壁の機能を回復させた。あとは、受け入れに乗じて踏み込んできたゾンビを排除するだけだ。
「テス・クラルス殿ですな。ご指示を!」
 兵士の1隊がテス・クラルスに駆け寄る。
 予めバルディオンに話を通していたので、手が空いた隊を送って貰えたようだ。
「弓使いを守って射撃に専念させてあげてください」
 盾を持った兵士達が【睡狼】の護衛についた。
「遠くに見えるだけで怖い」
 エヴァン・ピオネロは緊張している。
「でも友達が襲われたらと思うともっと怖い」
 負ければどうなるかゾンビを見れば分かる。
「……だから逃げないよ」
 対象の足を引っ張るエーテル光を出現させる。
 直径15メートルの範囲にあるゾンビの群れが、ほぼ身動き取れなくなった。
 エルシー・サリバンの表情は静かだが朱色の尻尾と耳が怒りを露わにしている。
 ゾンビの中に見知った顔はいないが、それで怒りが収まるわけがない。
 放つ。
 矢を撃ち出したのは鉄製とはいえ弓だが、矢に込められたエネルギーは特大だ。
 移動を封じられたゾンビと前進し続けるゾンビが折り重なった場所に直撃し、50平方メートルの範囲を文字通り吹き飛ばした。
「いくよ! 2時の方向。3、2、1、撃て!」」
 ハル・チフが兵士達に合図を出し、エルシーがこじ開けた穴に矢弾を集中させる。
 動かなくなったゾンビが盾にならないので攻撃の効率が素晴らしい。【睡狼】の仲間の矢や魔法も降り注ぐ。
 冒険者と兵士達の連携でゾンビの数は急速に減った。
 しかし彼我の距離も、急速に縮まりつつあった。

●激突
 第一防壁をクリーパーが乗り越える。
 あれだけ倒したのに第二防壁との間に滞留するゾンビは多く、戦況は混沌としたままだ。
「大量、だね。目を閉じてても当てられそう、だよ」
 エヴァ・パルリエは新たに届いた矢筒から矢を2本取り出してつがえ、ゾンビが邪魔で前に出られない獣型クリーパーを狙撃する。
 重量武器による一撃と比べれば威力は弱いが射程は凄まじい。
 砦の中から敵勢後方まで届くのだ。
 イオ・ラヴバロックは手早く食事を終わらせる。
「私は今回はやる気が出ません。火葬など葬儀屋でも出来ることでしょう? 死体にいちいち気遣っていては終戦まで持ちませんよ」
 防壁へ続く階段を登りながら、ゾンビ相手の戦闘で疲弊した兵士達へ言い捨てる。
「戦えないなら輸送の手伝いでもしていなさい」
 数秒後に発生した爆発が、再び押し寄せてきたゾンビ達を多数薙ぎ倒した。
「ここは通さない」
 シルワ・カルブクルスを含む少数がクリーパーの迎撃に向かう。一度に多数のゾンビが壁にとりつくのを防ぐためだ。
 シーザーロアにより引きつけられた獣型はシルワの防御と重装甲により食い止められ、その数が2体、3体と増えていき敵勢の衝撃力が消滅した。
 ゴブリアが続く。
 得物を巨大な光塊で包んで、シルワに足止めされたクリーパー群に対して薙ぎ払いを行う。
 とても効果的だ。
 傷ついた獣型がゴブリア達を警戒して足を止め、前進するゾンビに巻きこまれて渋滞状態が発生した。
「先に行く」
 ゴブリアが砦へ駆け戻る。
 1対1では勝てる相手でも囲まれたら危ないからだ。
 包囲網が完成する前にシルワも180度反転して全力で駆け、いくつか傷を負いはしたが深手を受けずに第二防壁へ戻った。
「敵の狙いはここのようだ」
 防壁の上でクラーク・エアハルトが剣を振るう。
 4つ足で加速し、防壁に直撃すれば数メートルの穴が開く勢いを持っていたクリーパーへ衝撃波が直撃。
 絶命して転倒し、複数の同類を巻き込みゾンビへの障害物となった。
「敵がここにたどり着かないようにすれば良いの?」
 エステル・ヴィタが銀の髪を揺らしながら階段を駆け上がり杖を構える。
 エステルが放ったフリーズボルトが次々命中し、敵同士がぶつかり渋滞が悪化する。さらに発生させた氷嵐が直撃。大量のゾンビと傷ついたクリーパーが纏めて戦闘能力を奪われた。
 十数メートル横で悲鳴が発生する。
 ゾンビが数による暴力で防壁の上に辿り着き、そこにいた授恵者ではない兵士に重傷を負わせたのだ。
「神よ、傷ついたこの者の身体を癒し給え……」
 安全な場所でヒールに専念していても誰も文句は言わないのに、ウォーリアと比べると軽装甲のシャルロッテ・レッフラーが前に出て治療を行う。
 兵士は無事になった。生命力と力に満ち満ちたシャルロッテは当然のように狙われる。
「退け!」
 御堂・秀哉がシャルロッテを優しく押し退け自らを盾にする。
 臭気と暴力に晒されながら鉄の盾で防いで斧で討ち取って時間を稼ぐが、押し退けたときの柔らかな感触がずっと残っている気がした。
 赤色の薄い煙幕が増援を誘導する。
 秀哉に足止めされたゾンビが防壁の上から駆逐され、防壁の下にいたゾンビも数を減らされる。
 【姐会】の、ラティア・ミゼリアの仕事だ。
「ラティアちゃん、今度は左後ろ40歩!」
 同じく【姐会】のエミリア・シバは目と耳が良い。
「左側、敵いますよー! 増援お願いしますー!」
 二人の観測した動静を、アリア・ティーダが大音声で届けた。戦場の音が大きすぎて遠くまで声は届かないが、ラティアが薄煙炸弾を使ってくれるので後方まで情報が届く。
 普段は控えめなラティアだが矢を放つときは別だ。
 姿勢も本人の形も美しく、放たれる前から命中が確定しているようにすら見える。
「敵が多いわね」
 援軍呼び寄せに再度成功したのにエミリアの表情は硬い。アリアが先ほど光縛封を使ったが、焼け石に水だ。
 スキルも、薄煙炸弾も使用可能回数は限られている。夜までは、絶対にもたない。

●気配
 ゾンビ壁の密度が減り、壁から隊列へと変わった。ようやく、数が尽きてきたのだろう。
 その代わりに、敵の質が少し変わった。兵士はまだ気付かない。
 エーテルリンクを活かして水や糧食の少量輸送を担当していた狼のナッツが立ち止まり、鋭く警告の吠え声を発した。敵がこのまま済ませるはずはない
「無理はするな。すぐに敵の攻撃が激しくなるぞ」
 Есөнхумсは敵との白兵戦を避けて衝撃波で迎撃する。
 ゾンビの動きは、いつの間にかモンスターの群れから軍隊のそれに変わっていた。
 クレア・エクレールがゾンビじみた衣装を脱ぎ捨て顔の汚れを拭う。
 これまで彼女を無視していたゾンビも、調査に専念して攻撃を仕掛けなかったクレアを狙う。
(ゾンビの行動が変化。指揮官が前に出て来たよ!)
 テレパスによって情報が即座に伝わり、【埋伏の花】のメンバーが最も敵の攻勢が激しい場所へ集まってきた。 リスが必死に逃げる。
 小さな体がこっそり偵察するのに適してはいるが、一度見つかれば凄まじく危険だ。
 足は速く身も軽いが、何度もゾンビの手足がかすめてその度に主人であるセヴラン・クアルトにダメージを肩代わりしてもらう。
「ようやく顔を出したか」
 エーテルリンク経由の情報をテレパスで伝え終え、リスを回収するため防壁の外へ向かった。

「ヨコプ・ドリアンはニセ貴族ー!!」
 小柄なトーラが大声で挑発する。
 元気で、素直で、悪意の薄いトーラがすると凄まじい侮辱かつ挑発になる。
 吸血鬼を恐れていないし名前を間違うほど軽視している、と解釈可能だからだ。
(すごい。ヨコプより頭いいんだ!)
 上司より忍耐力がある吸血鬼がいるという結構重要な情報も、テレパスとその使い手の口を通じて砦に広がった。
 矢が重々しい音を伴い飛んだ。
 括り付けた香水の瓶は小さいが矢の安定を損なう。しかしナハト・シュライバーの会心の一矢はテレパスで伝えられた場所へ見事命中する。
「効かないのですか?」
 目には見えないが手応えはあった。
 が、ゾンビ部隊に変化はない。
「まあいいです」
 吸血鬼に臭いの目印はつけた。後は仕留めるだけだ。
 光の檻がゾンビ部隊の中心を囲む。
 囲まれたのは割合としては少数なのに、指揮を失ったゾンビ部隊がゾンビの群れへと戻る。
「みつけましたわ」
 檻を出現させたマレーネ・シェーンベルグの言葉はゆったりだが術の行使は高速だ。
 突撃するアンネエルカ達を正確に援護する。
「ここまでされて逃げるような腰抜けの親の顔……ぜひ見たいわね」
 アンネエルカはゾンビを蹂躙しながら挑発する。
「吸血鬼なんかに乙女の血は一滴たりともあげませんよ! 全部私のもの!」
 テンションが上がったギーゼラが妖しいことを口走ってはいるが癒やしの業は絶好調だ。
「下賤な人間共がっ!」
 思うように指揮が出来なくなった吸血鬼が怒りを露わにする。
 訓練を受けた剣が吸血鬼の身体能力で振り下ろされる。
 アンネエルカは対抗は出来てはいるが、明らかに不利だった。

●吸血鬼
「伏兵なし。近くにいる吸血鬼はこいつだけなのです!!」
 シーフとしての身の軽さとエーテルを駆使して調べ回ったショコラが断言した。
 実際、近くにいる吸血鬼は1体だけだ。ゾンビの中にいても目立たぬ、汚れきった吸血鬼剣士は内心舌打ちする。
 エンライトの光が真正面から吸血鬼を照らす。
 光、音、目線、そして実際の攻撃術を織り交ぜ牽制を行い、ミツキ・アインホルンが剣士の能力を測る。
(おそらく、各国の精鋭未満、冒険者以上)
 吸血鬼としての頑丈さを考慮すれば、かなりの戦力だ。
 セロンガード・シュタインドルフが荷物にロープを括り付けて振り回す。
 特にショコラから預かった大蒜と韮の臭いが強烈で、潰れた赤い野菜の汁が毒々しい。
 吸血鬼の反応は皆無。耐えている気配もない。
「物語の吸血鬼のような弱点はほとんどないようですね。ヤコブの系列は人間に近いのが特性ですか」
 単なる事実の指摘が煽りになる。
 恐るべき速度と乱れた技で剣先が突き込まれ、割り込んだニワニが盾で受け流したが、痛みで表情を歪めた。
「ハッタ!」
 長くはもたない、なんとかしろ。
 それを一言で伝え、吸血鬼の猛攻を一人で引き受ける。
「いいか良く聞け、重要なのはバランスだ」
 ジャイアントパンダなハーフビーストが雄々しく立つ。
「死体を作りすぎた吸血鬼に、この世の居場所などない。去れ!!」
 ニワニを盾にしてハッタ・ムラムラが祈りの言葉とともに戦槌で殴りかかる。
 みっしり塗り込まれた香草に効果は全くないが威力に変化は無い。
 剣で受け損ねた吸血鬼の頬に、戦槌の先端部がめり込んだ。
「これが熊猫神十字陣」
「†聖†インペリアルグランドクロスフォーメーションでは?」
 【天魔王】は全員真剣だが吸血鬼にはふざけているようにしか見えない。
 目が赤く染まり、牙を剥き出しになった。
 夕日が吸血鬼を照らす。
 陽光に焼かれはしないが目がよく見えなくなるのは避けられない。
「押すのじゃ!」
 河霧の貴婦人の指示で兵士達が攻勢を開始する。
 彼女が術で足止めしたゾンビの群が崩れて転倒が拡大。
 押し出されたゾンビに吸血鬼が巻き込まれる。
「矢の雨を降らせるのじゃ!」
 【天魔王】が一旦後退したタイミングで弓兵が集中攻撃。一部の矢はゾンビに刺さったが、吸血鬼が甚大なダメージを受けた。
「頂くわ」
 弓兵と【天魔王】の猛攻を受ける剣士にエレノア・D・グリフィスが狙いをつける。
 鉄の弓は強力。
 それ以上に、意識されない状態で十分に狙って放つ一矢は、英雄でも怪物でもない鬼に耐えられるほど甘くない。
 頭蓋を矢が貫通し、脳を不可逆に破壊した。

●息切れ
「ミウミが倒れた時がこの砦の終焉なのであります」
 最も高い場所での大漁旗を振るミウミは目立ち過ぎている。
 増援として急行してきた新手の吸血鬼が、憤怒で顔を歪めゾンビと共に殺到した。
「な、なんなのでありますかっ」
 滅茶苦茶な戦力の集中で防壁が1箇所乗り越えられる。
 他の場所のゾンビは戦力不足で大負けだ。
 が、唯一勝った場所で吸血鬼が先頭に立って突撃を継続する。
「防衛のお手伝いですね!」
 ミルル・マルル・ピスタチオは、ミウミを狙う吸血鬼を横から攻撃する。
 本来なら戦いが成り立たないほど強い相手だが、ここまで激昂し防御を捨てていると十分に通じた。
「近い……」
 リリー・ケーヤスが緊張で冷や汗を流す。
 この吸血鬼にとっては術の間合程度一足で踏破可能な距離だ。
 そんな鬼の背中にエーテルの霧を浴びせ氷の矢をあてて動きを乱す。
 そして、ミウミが逃げ失せミルルも飛び退いた。
 左右から兵士により槍が突き出され吸血鬼の体を削る。
「人間共がぁ!!」
 鬼が横薙ぎにした槍が兵士を1隊薙ぎ倒す。
「大丈夫だ。いけるよ。私の所に集まりな」
 Sidurgu・Yulが駆け寄る。意識を失った者は戦友によって彼女のもとまで運ばれ、ヒーリングオーラにより治療を施される。
 すぐ戦闘可能になるほどの回復速度はないが、部隊まとめて回復可能な範囲の効果は絶大だ。
 鬼の腹から鉄の穂先が生える。
 死角からの突撃を成功させたアレン・ボールドウィンが、鬼からの反撃に耐え槍を地面に縫い付ける。
「あばよ吸血鬼!!」
「やめっ」
 兵士達が一斉に突き出す。
 全身に槍を生やした鬼が、最期に一度痙攣した。
 砦の兵士達はは吸血鬼に戦力を集中せざるを得ず、10近く侵入したゾンビへの対応が遅れる。バルディオンの指揮所からも、その光景が見えた。近い。
「将軍いい? おっけー、それじゃいくよ」
 それまで情報伝達に当たっていた【華竜】が迎撃に向かう。
 エルゼリオ・レイノーラが展開した光の檻がゾンビの半数を閉じ込める。
 時間稼ぎではあるが、敵戦力が一時的に消えるのはとてつもなく影響が大きく大戦果だ。
「片付けは俺達に任せろ」
 ナハティガル=ラーの2剣による攻撃は1剣だけでも攻撃力が高く、ゾンビを瞬く間に討ち取っていく。
 ザザ=ステルヴィナは報告中の書類を持ったまま雷を呼び出す。
 光の檻から解放されたゾンビがまとめて足止めされ、【華竜】により瞬く間に殲滅された。
「ここはこの者達に任せて行け。お前達は増援として向かえ」
 バルディオンが直下の部下達へ命じる。授恵者3名と20名ほどの部下たち。護衛としては3名でも十分だ。一方、相手がゾンビの防衛戦であれば兵士20名は少数の授恵者以上に活躍しうる。
 護衛達は反論したかったが口には出せない。
 【華竜】は情報の受信と送信だけでなく護衛もそつなくこなし実力を証明した。「了解。我々は迎撃にまわります」
 元気よく出発する兵を見送り、バルディオンは安堵に似た息を吐く。
 これで疲れた隊を後退させることが出来る。
 夜間の戦いに備えて、疲れた兵にわずかではあるが休息の時間を与えることが出来る。
 二日目の夜は、すぐそこまで迫っていた。


2日目 夜~3日目午前 【3】ヴァイセントラフ砦支援 (執筆担当:工藤狂MS)
●
 ——砦に響き渡る、鉄を叩く音。それは砦内部の慌ただしさを証明する、何よりの証拠なのである。
 ここは砦内部、そして戦士たちの、たった一時安息所。
 サイラスの振り落とす腕と汗が、消耗した武器を叩き直す。そして戦士を、再度、最高の状態へと戻すためのリズムを刻んでいく。
 サイラスの思惑通り、ここでの武器の損耗は激しい。
 で、あるからこそ。彼の溢れる自信は賜物であった。時に、足りない素材は戦場から集めてくる無茶もあれど、武器を直す手に迷いはない。
 其の頃には、昨日の月は身を潜め、太陽はすっかり空高くまで昇っていた。
 強行輸送の面々の尽力により山のように積まれた補給物資をあるべき場所へと整理しながら、一刻の休息に臨む者が多い。未だ激戦は止まず、さらに6千という追加の敵が迫りくる中であっても、こちらの士気が冷めることはない。

 一方で。顎下から汗を流すように働く者も多くいるのであった。
 グレイブ・ヤードは負傷した一般兵へ、点と線を辿るように廻りながら治療を進めていた。
 特に優先するのは一般人だ。白い布で覆われた指先は、今や治療の数を物語るように、赤黒く滲む。
 しかし、それを厭わぬように、適格な作業は進んでいた。一人でも多く。ただの生命を守るために。
 また、休息とは言え戦闘は水面下で続いている。
「レッツ砲撃! 終わったらミルクティーで乾杯しましょう!」
 エルナ・クルプファルツの花のような笑顔の裏で、遠くで爆発、そして炎上していく轟音が響いていた。
 【喫茶弩砲】は連携し、手際よく弩の回転を進めていく。特にキーゼは、チームの司令塔だ。負傷している兵が多いこの場所だからこそ、味方の戦力を見誤る真似はできない。
 そして隣にはユークリア・フィナンシェがいる。
「私達のロイヤル連携を見せ付けちゃいましょう!」
 ユークリアの勇敢な声が響き、エルナも大きく頷いた。互いに笑顔で視線を交わし、息の合った連携で、装填と発射の作業が効率よく行われていくのであった。
 また、ユークリアは命中力を高めた大矢を放つことができる。クリーパーの群れを、この場所に近づけてなるものかと、一矢一撃で多殺を狙う。
 黒い外套の奥深くで光るキーゼの瞳から、逃れられる敵は少ないであろう。衣服の影の中で瞳を細め、キーゼは次の指示を促した。燃える水は有限だ、故に閉所は密集地など、少ないリソースで多くの成果を得られる場へ攻撃することを。
 キーゼが首を後ろに向ければ、そこに静かにコハクが立っていた。
 同じように目深に被ったフードだが、本来金色である髪の毛が揺れた。恐らく敵が接近してきたのであろう、懲りぬ相手たちだ。コハクはその身体を戦地へと投じる。その手に、先手必勝の得物をかかげて。
 ならばとエルナの次弾が、空中を駆け抜ける。その次弾には、ラミ・トゥルーの松明も一緒に括り付けられていた。
 着弾し、轟音がさらに炎の渦を起こし、適格な手応えを感じたところではあるものの――ラミは、ぶるりと体を震わせる。
 少し離れた場所で、ラミの瓜二つの双子の片割れであるミラ・トゥルーは年相応の子供のように、キャッキャと天を仰いだ。その視線の先にいるのは――。
「――わあ、アンデッドの群れだー! ラミ、大丈夫かな?」
「あ、ああああ、アンデッド……大丈夫です、大丈夫」
 対照的な双子ではあるものの、要領は抜群。二人とも弩に次弾を給する手を止めることはない。正に二人でひとつ。そういう言葉が似合うように。 

 また、別の場所では怪我人が絨毯のように敷いていった血を、拭き上げていくギャメルがいる。他にも、ごみ処理や洗濯などを手際良く行っていく優しいゴブリンは希少価値が高い。
 唸り、痛みに汗を流す戦士をのぞき込めば一瞬だけギョッとした視線を向けられることもあったが、しかしギャメルは気にしない。
「血臭を忘れて休んでくれ。おしぼりもある」
 と怪我人の傷口を気遣うように接すれば、思わず兵士の瞳から雫が輝いた。
 傷が深い者を優先してヒールをかけ続けてきたゲルトは、続けて比較的軽傷の者たちの治療にあたる。医療や薬学の心得がある彼に救われた者は多く、動けるほどに回復した者から戦線に復帰していった。
 また、ライラック・I・フローレスは持前の裁縫の腕で修繕作業を行っている。本来なら目の前のものに没頭することが多いのだが、今回は作業に没頭するよりは、むしろ周囲の状況に逐一耳を寄せていた。
 女性が困っていればいち早く反応し、女性用スペースへと案内。また、休憩所の雰囲気を和らげるために、笑顔を絶やさずにいるのである。
 そんなライラックの隣を、ゲルダ・クラインが急ぎ足で通り過ぎていく。持っているのは毛布や湯たんぽだ。ここは帝国。この時期ともなれば、特に夜は寒く、傷口には沁みる。これは非常に行き届いた配慮であると言えた。
 少しでも暖があれば、それだけでも戦う者たちの心が休まることだろう。
「そのまま抱えて暖をとったり、毛布を温めたりするときに使ってくださいね」
 与えた言葉に対して、感謝の言葉は多くゲルダに返ってきていた。身体を休めるのは戦の基本だと、曰く、ゲルダは言う。その言葉の通り、ここには僅かな静寂と安寧が満ち満ちていた。
 また、ディレイン・オールドケイジもゲルダと共に治療へと励む。手伝いの数人と、役割を部屋ごとに分けたのはディレインの思った通りに、効率的だ。
 治療し、包帯を巻いていく間に言葉を交わした。戦場は今どうなっているのか、情報を少しでも受け取るために。痛みに震える手に寄り添うディレインは、治療の力こそは、そうした重篤なものにこそ使うのだ。
 一命を取り留めた戦士をあとにし、指示をする。治療の学がなくともできることを、できるものに。

●
 ――景色が矢のように飛んでいく。
 ロウトフェダーは巨大なオウムの背に乗り、眼下に広がる戦況を監視していた。耳につんざく風の音より、視界で見えるものを真実として。
「24時間体制で見極めるぜ!」
 とロウトフェダーは意気込んでいたが、その役割こそ素晴らしいものがある。彼女の役割は非常に評価されるべきものだ。回収した情報は惜しみなく仲間へ与えるものだ。だって、情報は何よりの武器だと、自負するのであるから。
 その下では、ジョン・ベアーが砦外壁付近に並ぶ防衛柵を防壁の上から見下ろしていた。そこで動きを鈍らせる敵の数が、ジョンの頑張りを何よりも示している。
「やれる事からこつこつと、じゃ!」
 いつか子どの頃読んだ知識をもとに、ジョンは丁寧かつ、頑丈な柵を建てたつもりだ。そうする事によって、敵の進行妨害や、バリスタ護衛の精度が増す。広域なため、ジョン一人では難しかったが、手伝いを名乗り出たものたちの御蔭もあり、作業は無事に完了していた。
 一方、ストレガ・L・リベルガストラは、その場にある食材とにらめっこをしていた。
 休息所として集まっているこの場では、どれだけの人数が飯を食うのかを考えると、その圧倒的量を一人で倒すことはできない。
 下ごしらえに、食器洗い。手伝いを名乗り出てくれる人たちがいたのは幸いで、ストレガは感謝を紡ぎながら、丁寧に料理を作り、捌いていく。
 そして、ルーシカも同じく、料理場を担当していた。
 ストレガと分担して、食欲がないものでも食べやすいように、ガーリックをふんだんに使ったメニューを展開していく。
 また、フルーツなども疲労回復にはもってこいだ。顎を使うのが面倒な肉料理に対して、フルーツならば飲み込み易い。出来た料理をペットのイノシシが運んでいくのはちょっとした話題でもあった。
 ルアンナ・ミュラーとすれ違い、くすりと、ルアンナの口元が笑った。
 腕にかけているバケットのなかに、無発酵パンの生地に、持参したチーズと干し肉をスライスし乗せて焼いたものを持ち、もう片手にはトレーの上に温かい紅茶を乗せていた。何人くらい食事をしにきているのだろう、ルアンナの瞳がルーシカへと向く。
 ルーシカは常に人数を把握し、適量の料理を作っていく。そんな彼女に感心しつつ、ストレガの目線は備蓄倉庫へと向いていた。いざ、泥棒が出たときに対応ができるように。
「ごはんは元気のみなもとだもんねっ」
 鈴なる声、ネーアの明るい声が食堂で響いた。食材は限られてはいるけれど、それでも与えられる分は需要を満たすがために。
 無邪気で天真爛漫なネーアの姿は、見ているだけで心が晴れるかのようだ。もともと安息できる場として、ここは機能していたが、ネーアの働きは更にそれを促進させるようなもので。
 ふ、と。ネーアは神託でも聞いたかのように、両手を叩いて新しい案を展開する。
「明るい曲を聞けばみんな元気出たりゆっくり出来たりするかなって思うんだー!」
 更に響くはハープの奏。思わず、サララ ココノカの頬が緩んだが、次はキリリと凛としたものに変えた。
「足場固めは大事でございます……。拙も、微力ながらお手伝いいたしましょう」
 まるで家政婦か、メイドのように。サララの本来の在り方とは少し離れた作業ではあるものの、サララは滞り無く作業を済ませていく。掃除、食材の管理、摘み食い防止、その他雑用。
 時には勢いで壁を走り、壁にモップをかけていく。更にふるまう伝統料理には、どこか懐かしい味を添えた心温まるものであった。
 炊き出しの香りが、場を包み込むようだ。マーハ・アセトシソンは小麦粉を少量の水で練り円状に薄広げ、鉄板焼きバンズを作る。そこに薄焼きにした肉や、野菜を挟んで、ジャンキーな飯が完成した。
 バランスがあり、そしてボリュームもある。何より、手持ちで食べられるので何かをしながらでも食べられる。そんなハンバー……のような飯は特に人気であった。
 ローレシア・ルエインは休息者へ水を渡して回っていた。感謝された笑顔に対し、同じように笑顔を向けつつ。また、対アンデッド用の対抗策である松明なども、可能な限り集めていく。計り知れぬ敵であっても、対抗ができるように。
 ローレシアは小さいことであるが、されど必ず必要になると、多くのアイテムを回収しながら進んでいくのだ。物事を有利に進めていくために。

 エルケ・シャルフは食糧庫内の整理及び管理・警備担当だ。
 物資には限りがあるため、もし持ち出すのであれば使うもののみと。節約を促しながら指示を出していく。
 また難民や兵士の無断侵入にも警戒、どんな相手・事情であろうと無関係な人間による物資持ち出しを断固阻止。並行し、不審者など怪しい人物がいれば見逃すことはできない。
 エルケの瞳がぎらりと光っているころ、フェイサル・セイフは、現場についてから即行動を起こした。集めた人数と共に、砦の水源へと足を運び可能なだけの水を確保。
 また、砦内の物資を他の仲間と共に確認していく。必要なものは必要な人のために。徹底して管理体制を作り、故に砦の物資は程よく回る。
 しかしフェイサルの仕事はそれだけでは終わらない。
 特に体調不良や重篤なものは真っ先に診察をし、対応していく。一人では到底手に負えない数ではあるが、徹底した分担指示能力があるフェイサルにこそ回すことが可能であっただろう。
 休息所であれ、詰まり切った状況である。血臭のにおいが、拭えきれない場であるがトゥーリは屈しない。腰下まで長いツインテールを持つ彼女は、この場の天使のようにふるまっている。
 トゥーリは、
「休憩所を開設するよ! みんな頑張って!」
 と明るく両手を振りながら、ここに癒しがあり、と。全身を使って傷ついた戦士たちの心に色どりを、と、呼び掛けていた。
 なんだなんだと集まってきた人たちに、ひとつずつ説明しよう。もふもふセラピーとは、
「恥ずかしいけど尻尾のふわふわを触らせてあげる。きちんと手入れしてるから気持ちいいよ!」
 つまり己のしっぽである。
 飲み物はアルコールからソフトドリンクまで飲み放題で、もし傷があればヒールさえ行うサービスが充実。まるでトゥーリカフェといっても過言ではない。
 必要な水は確保されているが、足りるかは別の話だ。オリーキュの力により、水の需要と供給は守られている。
 とは言え、オリーキュの脳裏には「まさか」が起こった時に対応できるよう、水は必要なものとして、可能ならば再利用したいものだ。
 不衛生であれば、さらに怪我人の寿命を短くするものだ。それだけはあってはならぬとオリーキュのいつもの冷静な瞳もあせる。助けるべき命は、必ずしも助ける。そんな彼女の行動は、徹底して不衛生を滅していく。
 また、ジヴリールは外から入ってくる情報を伝達するために、四方八方へと疾く駆け抜けていた。同時に、対応への意見を素早く感知し意見を取りまとめていく。
 これだけの運動をしているからか、喉が渇くが、休む暇なくジヴリールは動き続けていた。今や、手に人様の食事の配送までもやってのけている。
「何か困ってることとか、足りないものはない?」
 気遣いを武器に、ジヴリールは奔走するのだ。そんな献身的な彼女とすれ違ったのはローレ=リースフェルトだ。
 目の保養になればと、性別は男としても格好こそ女性そのもの。後ろ姿や、歩く姿は女性さえ見習う程だ。
 格好だけのお遊びではなく、ローレは水を魔法で作り出す。繰り返し繰り返し、ここではどんな物資も貴重なものなのだ。清潔な水こそ、戦士のため。そして、本当に渡すべき手負いの戦士にのみ、甘いものを隠れて渡すのだ。そのこころがどうか、落ち着くようにと。
 ネーナは温かいスープとパンを持ち、男性を品定めしていく。上手く男を見つけることができたなら、女性ならではのスキルを駆使して癒してみせると、自信があった。

 アストライト=アクチュアルは砦内部を巡回し、休む人々のために行動していた。
 時には傷つき、倒れかけた戦士に肩を貸し、その傷を癒さんとする。しかし警戒を解くことは出来ない。少しでも不審な物音があれば、アストライトはそちらへと向かって奔走した。普段はもっと柔らかいのであるが、此度の戦は大きいものだ。アストライトの行動にも緊張感が走っているように、物事ひとつひとつに容赦なく徹底して対敵への行動を行っていく。
 また、ジェラール・デュランはアストライトと目的は同じであれ、砦内の防衛線同士の連絡を断たせないように行動していく。美少年と名高い表情も、今日ばかりは漢の雰囲気だ。
 怪我人を運び終えた彼は仲間にそれを託し、再び戦地へと向かうのだ。恐らくバリスタ付近では仲間が護衛や警備に当たっているはずだ。きちんと情報を汲み取り、それを円滑に運ぶ。報・連・相は大事であることを示し、彼の休む暇は無い。
 ここまでも多くのものが物資の管理を行っているが、ハリス・アル・ターミルの管理によって、体制は完成されたものとなる。
 他のチームと上手く連携をとっているというのもあるが、多彩に、かつ臨機応変に行動を取れているという事もある。リザードマンとしての貫禄に、飛び交う言葉には力があった。故にこの場を統括するコンダクターとして、十分な存在感であるのだ。彼を頼りにする戦士も少なくはない。
 そこで補給物資を両手いっぱいに持ってきたアルト・マクスウェル。ハリスと視線を合わせ、互いの進行方向が交差する。次の指示や行動を示し合わせるが如く。
 傍では、フィーネ・ファルアリアが物資の検品と記録のために走り書きのメモを整理している。
 細かいところではあるが、適当にしてしまえば困るのは自分たちであると認識しており、忙しくも一つのミスも無く整理を続ける。誰が見てもわかるように、細かく整頓していくのはフィーネの優しさでもあるのだろう。されど、目の前には膨大な量。これを一人でやるのなら、戦など終わるまでかかる。集めてきた手伝いたちへ、フィーネは咳払いしてから、行動説明を行う。
「さあ、みんなキリキリ動いて!」
 忙しく動く人員。かわされる言葉。
 事務的な雰囲気のそこで、カッシアは軽くため息をついた。考えるまでもなく理解できる血臭に、思わず眉を顰めた。前線よりは、この場こそが適任であろうと自己を評し、
「とはいえ俺に出来ることはあまり無いんだけど……肉体の疲労だけでなく、精神の疲労も長引くとしんどいよね。休息する皆がゆっくり休めるように、リラックスできる歌でも歌ってみようか」
 言葉は紡がれ、音となり。響く音色は夜毎続く。

●
 忙しいのは内側だけではなく、牽制を続けるように放たれるバリスタ付近もそうである。
 リオン・G・カートナーは、いつも笑っている表情であるが、真剣の色そのものであり。厳しい瞳で周囲の防衛へと勤しんでいた。強硬のバリスタにより数は抑えているものの、敵の進軍は今もなお地道に行われている。
 同じようにレイ=レーベンス=レックフォードもバリスタ付近をぐるぐる廻りながら、得物を抱えていた。折角ドワーフたちが作ったものを、壊されるわけには行かぬと。
 また、リオンはレイが付近を見てくれるならばと手伝いを申し出ており、空いた時間で防衛隊の仕事を受け持った。緊迫した時間だが、何もしないよりは何かしていた方が為になる。敵の襲撃に常に気をつけながら、リオンは手伝いに勤しんだ。
 運搬などは、アルセ・シュッツが手際良く教えてくれた。
 負傷者を運んできていた彼は、その衣服こそ血に濡らしていたが、アルセはそんなことさえ気にせずに、次の負傷者の所へ行くべく準備を始めた。
 これから日が落ち、人の視界は脆弱なものになるであろう。星を探すことさえ手間である今は、頼れる明かりを身につけることこそ得策。そして夜は冷える、ブランケットを片手に、彼は数分の後ここから旅立つであろう。
 艶かしい唇を舌でなぞったのは、イーヤ・レプリスだ。
 傍に緊張した男の兵士が、耳まで赤くした状態で固まっている。そのよく鍛えられた体を指でなぞり、赤く腫らした耳に吐息をかければ、男の口から情けない声が飛び出す。
 詰まる所、これがイーヤなりのやり方なのだ。ここから先は見せられないよ。されどきちんとヒールで全回復していく男たちが多く目撃されたという。
 ノエル=アンダーウッドは、戦いが得意ではないと自負していた。故にこの支援の現場に立つ。
 運び込まれてきた負傷者たちに、ヒールを施す事が仕事だ。思えば、片手の指の数を超えたあたりから、何人を治したか数えていない。それ程までに没頭していたようだ。
 ふと気がつけば、自分の腹から音がなる。そう言えば今宵は冷えるだろう。すぐにノエルは調理場へと進み、鍋を振る舞おうと大鍋に水を入れるのであった。

 ――そして。
 月が顔を出す。帝国の夜は冷たく、肌を突き刺すようだ。楓月・千弦は、闇のなかさえ鮮明に映る瞳を用い敵の姿を捉え続けている。
 クールな瞳で星を数える暇はない。腐臭の香と共にやってきた者たちを、見逃すことはなかった。隣に息を切らしながらやってきたリノア。今一度武器の確認をしながら、やって来る怒涛な足音に目を細めた。
 千弦は指示を出す。せめて休息所である内部に敵の侵入を防ぐが為に。そのために、己こそ此処に在りと示すがために。
 シャトン・アルジェントがバリスタを打ち、数秒置いた頃に、着弾した矢の音が広範囲に響き渡った。確かな手応えを感じ、シャトンは思わず口笛を短く鳴らす。
「バリスタか、授恵者用クロスボウも作って欲しいわね」
 シューターとしては、武器のラインナップが増えることは大歓迎だ。次弾を装填しつつ、されど近距離からの物音にシャトンはすぐに反応する。長距離手とはいえ、近接ができない訳はない。迫ったアンデッドの一撃を軽々かわし、カウンターの鉄剣を振るう。
 同時にダリア・レプシウスも動いた。ゾンビの攻撃を蹴りで軌道を逸らし、シャトンが一撃をお見舞いする。背中あわせになったダリアとシャトン。しかしすぐに相反する方向へ二人は走る。
 ダリアは得物を振り回し、まるで台風がごとく戦闘を開始した。勿論、味方への被害は起きない立ち位置で、である。
「皆様はこの私がお守り致します! 心置きなく戦ってくださいませ!」
 頼もしい彼女に、敵を任せ、バリスタは次から次へと敵へ雨のように降り注いだ。
 悠人・ラドルファスはフィリスティア・リュナ・ブルーメルティスと同行。戦いの音がするこの場へ疾く駆け付け、砦の壁を登って来る亡者へ容赦なく悠人は燃える水をかけていく。
 またフィリスティアの炎が、敵の群れを跡形も無く燃やしていく。灰燼に帰す敵よりも、フィリスティアは味方へと笑顔を向けた。この戦いが終わったら、大切な人のもとへと帰ろうと鼓舞しつつ。
 そんな彼女をさながら騎士のように守るのは悠人の役目だ。悠人よりもフィリスティアのほうが厄介であると認識したアンデッドは彼女を狙うが、ことごとくの攻撃を悠人が抑え込んでいく。
「悠人くん、無茶はダメよ」
「ああ」
 しかし騎士は乙女を守ることが仕事である。そして乙女もなお、騎士に応える事が常だ。

 ――外では戦闘の音が響く。
 アンジェラは、バルディオンと同室で彼の警護に当たっていた。備えは十全であり、アンジェラに隙はない。
 しかしアンジェラの顔は浮かないものであった。彼女の表情を歪めていたのはヤコブの人柄を聞いたからだ。
(奴はバルディオンを許さない。最も苦しむ手を使って来る気がする。それは息子を刺客として使う事、父が息子を手に掛ける事)
 故に斬る相手はひとり。息子はこの手で葬る誓いを、握ったままの拳にたてた。
 そして、バルディオンが直属の部下を前線に送れたのは彼女の準備の良さがなにより大きい。
 ともあれこの時間まで砦を落とされることは無く、戦士たちは十分に休むことができた。冷たい夜は終え、勝利を迎えるために、さあ、もうひと押しと行こうではないか。


3日目 正午 【1】外部遊撃 (執筆担当:空色みなもMS)
●
 ヴァイセントラフ砦を包み込む平原に、日が昇る。
 冒険者達と行軍する死体との衝突も、三日目に差し掛かっていた。
 趨勢が定まりつつあるヴァイセントラフ砦から離れ、ヴィント方面へと赴いて平原内で敵指揮官の位置を探っていた【密偵】達に、新たな動きがあった。

「おい、あっちから何か聞こえるぞ」
 長い兎耳をぴくりと動かし、キルシッカ・ニクライネンが仲間を呼び集める。
 キルシッカの鋭い聴覚が捉えたのは、甲高く、品の無い中年男の声——。
 もしかすると、この声が話に聞くヤコブのものであるかもしれない。
 気配を殺しながら、キルシッカが声の聞こえた方角へと仲間を案内すると、果たしてそこには趣味の悪い金髪の吸血鬼——ヤコブの姿があった。
「あァ、アナタのお父上! バルディオンが! 腐りきった頭をしていなければ! ワタシ達は手を取り合って! 憎き王国を討っていたことでしょうにィ!」
 ヤコブは大声でがなり立てながら、足下に居る猪頭の少年を蹴りつけていた。
 バルディオンの頭はともかくとして、その少年は——身体の隅々まで腐りきった、アンデッドであった。
(これだけ大声でわめくなら、読唇術を使うまでもなく、こっちに筒抜けだったね)
 潜伏しながらヤコブの様子を遠目に観察し、唇の動きを読もうとしていたキオルティスが苦笑を漏らしていると。
 ヤコブがふと、何かを察知したかのように頭を動かす。そのままキオルティスが隠れている方へと視線を向け、直後に動きを固めた。
(あ、もしかしてまずい?)
 そうだ。これは確実に目が合っているパターンだ。
「その装い、冒険者……! アナタたちも加担していたのですか! ハァ! 嘆かわしい! このひとでなし! そこへ直りなさい! ワタシ自ら罰を下して差し上げましょう!」
 カッと目を見開いたヤコブは、冒険者達の潜む場所へ、猛然と駆け寄って来た。
「ミツカッタデゴザイマスネ。ヒキカエスデゴザイマス」
 高位の吸血鬼を相手に、この距離まで近づけただけでも上々の結果だろう。この事態を受けて、ギ・ガガは仲間達へ撤退を指示し、先に逃げるようにと促していく。
 ガガ自らは、殿として仲間達の後方を守りつつ、宙を滑るように駆けてその場を離脱。待機させておいた馬に飛び乗り、全速力で走らせた。

「オオモノガツレテシマッタデゴザイマス」
 ガガ達はそのままヤコブを引き連れ、向かう。
 平原の中で、冒険者達が待ち受ける地点へと——。

●
 その一方で、平原にて遊撃を担う冒険者達は、砦に対し新たに迫りつつある六千の敵に対応しようとしていた。

「遅れて到着した敵が、砦を真っすぐ目指して押し寄せてるみたいだ」
 【兵・偵】のアスティン・ヴェルラインは、感覚共有した大鼬からの視覚情報など、様々な手段により情報収集に努めていた。
「真正面から当たると厳しい戦いになるかもしれない分、側面や背後を突けば敵の混乱を狙えるかもしれない」
 戦場を俯瞰するような視点により、敵の攻めどころを分析するアスティン。
「分かった、そのように伝えよう」
 同じく【兵・偵】に所属する月により、その情報は思念による意思疎通が可能な仲間に対し送り届けられる。
「この情報は砦にも持ち帰らないとな」
 情報を伝えた仲間はそのまま敵の対応に当たるということで、月は思念による通信の復帰目途を仲間と打ち合わせ、自身は砦へ情報を伝達するべく、警戒を担わせるため連れていた狼を伴い、移動を始めた。

 【兵・偵】によってもたらされた情報を元に、連携を組んだ【兵・戦】が動き出す。

「月様より連絡がありました。手薄なのは敵軍側面、または背面と見られるとのことです」
 月の思念を受け取ったシャロン・ラ・モリエールは、隊の仲間に手早く通信内容を伝えていく。
 思念による通信を届けることができない仲間に対しては、持ち込んであった手鏡によって太陽光を反射させ、信号を送ることによって伝達を図る。

「わしが魔術で道を敷いてやろう。おぬしらもそれに続けぃ!」
 ビッグオウムに乗り、上空からの戦況観察を担っていたグレイ・ナックラーが、術式を編み上げていく。
 グレイによって紡がれたエーテルの束は、太く、しかしそれ以上に長い水流と化すと、アンデッドの群れに向かって射出される。
 水流によりアンデッド達が押し流された後には、グレイの宣言通り、道が拓かれていた。
「今回、私が受けた啓示には、ムソーではない、地道に、などの言葉が並んでいました。雑兵でも一方的に倒せる相手ではないかもしれませんが、頑張りましょう!」
 そこへフリーダ=ブロムヴィストが食い込み、自らの大剣を光の塊で包み込む。
 フリーダが大剣をアンデッドの群れに向かって叩きつけると、フリーダの闘志を体現したかのような光が炸裂し、アンデッド達がまとめて吹き飛んだ。
「こういった戦いも嫌いじゃねぇ。狩れるだけ狩ってやるぜ!」
 それを見たケン・Z・ブラッドリーもアンデッドの群れに向かって飛び込む。
 ケンは手にした大剣を大きくスイングすることで、わらわらと近づいてくるアンデッド達を薙ぎ払う。
 高い位置で横に薙がれたケンの大剣によって、また一体、また一体とアンデッドの首が飛んでいく。

 彼らの他にも、平原内で遊撃を担う冒険者達が、次々と敵軍に挑んでいく。

 【賊狩り】の二人を乗せたビッグオウムが、二人を戦場に送り込むため、低空へと降りてくる。
 ビッグオウムを地上まで降ろすことなく、レイスはバンシーを抱えて飛び降りた。
「バンシー、相手は賊じゃないぞ? 殺れるか?」
 レイスは難なく着地時のバランスを取ると、バンシーを降ろし、問いかける。
「賊より能無しでトロいのならどうとでもできるわ」
 バンシーはそれに頼もしい返事を返すと、素早くアンデッド達へと駆けて行った。
 レイスもバンシーに続いてアンデッド達に向かい、手にした細剣を振るうことで、アンデッド達をまとめて倒していく。
 バンシーは長期戦を見越し、アンデッド達を引きつけながら回避主体で立ち回り、レイスがアンデッド達を攻撃するための時間を稼いでいた。
 
 そして撤退時にはバンシーはレイスの手を引き、ビッグオウムへと戻っていくのだった。

「見つけた、指揮官の吸血鬼だ!」
 【銀剣】のレイ・ロバーツは、一体の吸血鬼の姿を認めると、移動の足として用いていた軍馬からひらりと飛び降り、吸血鬼に向かって疾駆する。
「無理したらダメなんだからね! べ、別にあんたのためを思って言ってるわけじゃないけど!」
 レイの操る軍馬に同乗していたエーリカ・アムブロシアは、レイのまとう鎧を淡い光で包み込み、守りの力を与える。
「私が突破口を開きましょう」
 同様に軍馬を駆り、レイに付き従っていたアンナ・イフェイオン・ニグリが、レイと吸血鬼の間を埋め尽くすように存在するアンデッドの群れへと魔法を放つ。
 アンナの魔法により呼び出された重々しい巨岩は、アンデッド達の頭上に落とされるや否や炸裂し、アンデッド達の身体を無数の礫が貫いた。
「そらっ!」
 アンナがアンデッドの群れに開けた穴を潜り抜け、レイが吸血鬼に一太刀を浴びせる。
 しかし吸血鬼もレイが単身で挑んで倒せるほど甘い相手ではない。
 吸血鬼に一定の被害を与えたのを確認した段階で、再びアンナが魔法で切り開いた脱出口を通り、レイは動けるうちに吸血鬼の下から離脱した。
「作戦はいのちだいじに、よね!」
 脱出を果たしたレイが吸血鬼による反撃で受けた傷には、エーリカが治療を施したのだった。

 ここで上空のビッグオウムから白い旗による合図が送られたのを確認した【白翼騎士団】が指揮官の吸血鬼討伐に向け、動き出す。

「あたしがビッグオウムに残してきた栗鼠の視界からすると、あっちが手薄だな」
 アルト=ミルドレッド=バ・ロッサは、感覚共有した栗鼠を、上空に待機するビッグオウムに残してくることで、上空から眺める視覚を得ていた。
 これは余談であるが、アルトが地上で活動する間、栗鼠のご飯係はビッグオウムを操るゴブリンの役目となっている。
「ふふ……みなさんが生き長らえることができるよう、私もお手伝いさせて頂きますよ?」
 リーズ・クラヴィエは敵陣に突入しようとする仲間を呼び集めると、浴びた者に守護の力を与える光を放つ。
「ご武運を祈ってます」
 さらにリーズは前線を担う仲間の腕に加護の光を与え、守りばかりでなく攻めにも万全の備えを施した。
「まずはオレが露払いといきますわ」
 バンビが素早く短い呪文を詠唱すると、アンデッドや小型クリーパーから成る敵の軍団を魔法の吹雪が包み込む。
「またアンデッドが雪崩れ込んで来ないように、穴を維持しますわ」
 敵の群れに穿たれた穴を維持するため、バンビは続け様に敵対する者の移動を妨げる雷光を呼び出し、敵の補充により穴が塞がれるのを阻む。
「その穴は、俺が楔となって広げましょう」
 そこへエーテル光により成した刃で間合を伸ばした大剣を手にアクセル・ランパードが突入した。
 アクセルは大剣を掲げると、自らの周囲に、立ち入った者をその場に押し留める領域を展開する。
「ここは俺のテリトリーです」
 アクセルが領域内に巻き込んだ敵を刃の乱舞が襲い、薙ぎ倒した。
「帝国国民を冒涜されて黙ってられるかよ!」
 アクセルの大剣が荒れ狂ったことによりぽっかりと開いた空間に、アルベルト=V=シュタールシュヴェーアトが飛び込む。
「安らかに眠るんだな!」
 周囲から押し寄せる雑魚を光の塊をまとわせた大剣を叩きつけることで蹴散らし、アルベルトは吸血鬼に向かいぶつからんばかりの勢いで突き進むと、燃え上がるように眩く輝く大剣による鋭い一撃を吸血鬼に届かせた。
「ヤコブの性格からして他に有能な指揮官が居るとは思っていたが」
 仲間が切り開いた吸血鬼までの射線を利用し、カエルムは命中した相手の動きを鈍らせるエーテルを矢にまとわせ、放つ。
「力こそ強いが、今のところ有能という雰囲気ではないな」
 カエルムの矢によりまとわりついたエーテルを鬱陶しそうに払おうとしている吸血鬼の様子を眺めつつ、カエルムは次に相手の攻撃精度を鈍らせるための矢を長弓につがえ、吸血鬼に射かけるのだった。

 【白翼騎士団】と吸血鬼の戦いが続く一方でまた、他に敵指揮官の吸血鬼へ当たろうとする者達が居た。
 それが【狂桜会】である。

「ひでぇ匂いですこと……」
 アンデッドの放つ腐臭に辟易としながら、イルシオ・リスティヒは前に立つ仲間達の防具に、強化を施していく。
「傷はわたくしが回復してやりますから、怪我は恐れず死ぬ気で戦って、この臭気の元凶を早くなんとかしてくださいまし」
 イルシオの言葉からはいまいちありがたみを実感しにくいが、実際、命を賭した戦場では癒し手が存在することで思い切った戦いができるのもまた事実であった。
「この戦……咲羅様の為なら一騎当千の修羅となりて万軍を薙ぎ払いましょう」
 実際、イルシオから強化の支援を受けたリリアーヌ・ウォルトグレイヴは、単身で数多くの敵を引き受ける厳しい戦いに挑もうとしていた。
 リリアーヌは立ち入った者を留める領域を自らの周囲に展開すると、エーテル光で間合を伸ばした大剣により群がるアンデッド達を一掃した。
「やあ、大戦果だね。私も負けじと働かないと」
 大剣から衝撃を飛ばし、近づかれる前にアンデッド達を一体一体倒していたギルバート・フォーチュンは、倒しきれなかったアンデッド達が周囲に固まってきたのを見て、ぐっと大剣を深く構える。
 そこから勢いよく振り回されたギルバートの大剣は、アンデッド達をまとめて吹き飛ばした。
「範囲攻撃なら、あたしだって負けてられないわ」
 持ち込んだ薬品に口をつけながら、ウォルナ・パイパースは自らが魔術を行使するイメージを固めていく。
 すると、ふわり、とウォルナの周辺から無数の光の球が浮かび上がり、アンデッドの群れに弾丸となって降り注ぐ。
 光の球は前に立つ仲間を器用に避け、アンデッド達だけを綺麗に撃ち抜いたのだった。
「ようやく見つけたぜ。おい、あそこに吸血鬼が居るぞ。あいつが指揮官だろ」
 戦場を埋め尽くすアンデッドの群れを前に、それまで吸血鬼を見つけられずにいたソル・ランドグリーズ。仲間が敵軍に穴を開けたことにより、彼らを排除すべく動き始めた吸血鬼の姿を発見することができた。
「これでも食らいな」
 ソルが長弓から放った矢は、吸血鬼へと真っすぐに吸い込まれ、矢に仕込まれたエーテルが吸血鬼にまとわりついて、その動きを鈍らせる。
「見ぃつけた!」
 ソルの矢を目印として、ライラ=スコットが吸血鬼の下まで辿り着く。
「逃がさないんだから!」
 狙った獲物を確実に狩るべく、ライラはエーテルをまとわせた大剣で、吸血鬼の脚を薙ぐ。
 それに対し吸血鬼は回避行動を取ろうとするも、ソルの矢によってまとわりついたエーテルに妨げられる。
 見事、吸血鬼の脚に命中した大剣は、まとったエーテルにより吸血鬼の脚を蝕み、その行動の自由を大きく奪った。
「その程度の攻撃で俺を挫くことができると思うな」
 吸血鬼の目前に立ったガンシャルアは、吸血鬼による拳の一撃を、輝くエーテルを身にまとうことで衝撃を和らげ、受け止めた。
「俺が手本を見せてやる」
 反撃として、ガンシャルアは魔力を込めた一撃を吸血鬼に見舞う。
 それを受けた吸血鬼は、大きく後ずさりすることを余儀なくされた。
「ったく、ヤコブっていう変なおっさんのせいで酷いことになってるな……!」
 アステルは手にした短剣にエーテルの猛毒をまとわせ、吸血鬼を切りつける。
「おっと、お前の攻撃は食らってやらないよ」
 自らの短剣が吸血鬼に傷を与えたことを確認したアステルは、吸血鬼から反撃を受けないよう、すぐさま後方へと跳躍して距離を取った。
「アタシだって居るんだからね」
 吸血鬼がすでにアステルにより受けた毒に苦しんでいるのを見て取ったアイリーン=N=フェルクスは、自分は吸血鬼の腕を狙うことにした。
 アイリーンの持つ剣が燃え上がるような輝きに包まれ、その剣による攻撃をより一層、鋭いものにする。
 勢いよく振り抜かれたアイリーンの剣は、吸血鬼を的確に捉え、まとったエーテルによりその腕を蝕んだ。
「皆、その調子じゃ。これなら吸血鬼を討ち取ることも叶うじゃろう」
 仲間達の中で指揮を担う咲羅も、自ら前に立ち吸血鬼に対処する。
 吸血鬼の拳をひらりとかわし、攻撃の姿勢により隙を生じた吸血鬼に、咲羅は眩い輝きを放つ剣で切りつけた。
 咲羅の剣は敵を縛り付ける光糸と化す赤光もまとっており、これまで受けた数々の妨害と合わせ、吸血鬼は雁字搦めとなっていった。

 こうして平原の各地で、死者の軍団との戦いは続けられていくのだった。

●
「待ちなさい! ワタシをこけにするような真似は断じて許されませんよォ!」
 撤退する【密偵】の面々に対し、ヤコブは全速力の軍馬に勝るとも劣らない速度で迫っていた。

 そこでヤコブに打って出たのが、ヤコブが現れるまで機を窺い、力を蓄えていた【埋伏】の一団だ。
 この時のために、【埋伏】の者達は戦場の中で目立つことのないよう潜伏してきたのだ。この戦場において、ヤコブの釣り出しに成功した【密偵】の現状を素早く察知できたのは、彼らのみであった。
「敵の総大将の首を討つ……いやぁ戦場の華よなぁ!」
 いざ、ヤコブを討ち取らんと先陣を切ったのはクリエーナ・バーリフェルトだ。
「隙だらけだっ!」
 がら空きのヤコブの腹に向け、クリエーナは踏み込みながら槍を突き入れる。
「なっ……!?」
 しかし、その槍はヤコブの腹部に浅く突き立つに留まった。
 どうやって間に合わせたのか、ヤコブは突き入れられた槍を、素手で掴んでいたのだ。
「自ら首を差し出しに来られるとは、殊勝な心掛けですねぇ! 褒美を取らせようじゃないですか!」
 掴んだ槍を力尽くで払いのけたヤコブは、それにより体勢を崩したクリエーナの懐に飛び込み、顔面を水平に殴り飛ばした。

 ヤコブが振るう拳は、はっきり言って雑だった。
 しかし、その身体能力の高さ故に、威力も速さも全くもって馬鹿にならないのだ。

「かはっ……!」
「クリエーナ殿!」
 殴り飛ばされた勢いで吹き飛ぶクリエーナを見て、焦りの声を上げたのはアルフレッド・ラ・ギ。
 アルフレッドはパーティーの作戦担当として、戦場を俯瞰する視点を得ながら、仲間達に指示を行っていたのだ。
「個々の力で敵う相手ではなさそうだ! 私の指示で連携して当たって欲しい!」
 アルフレッドが忙しく仲間達に配置を指示すると、それに従い陣形が組み直されていく。
「キミ達は来ないのですか? 先程の方を少しは見習ってはいかがです!」
 冒険者の一人を殴ることができたことで気を良くしたとでもいうのか、ヤコブは冒険者達が組んだ陣形に、一見して無策にも思える突っ込み方をしてくる。
「たいした余裕ですね。その余裕もいつまで持つでしょうか」
 仲間達の後方で、ノックス・マグナは長弓につがえた矢に、突き立った相手の攻撃精度を鈍らせるエーテルをまとわせ、ヤコブへと射る。
「……流石に、簡単には効いてくれませんか」
 強敵を相手にする際、まずはその能力を削ぐ。ノックスの考え方そのものは大いに有用だ。
 しかし相手が強敵ということは、それだけ抵抗される可能性も高まるということであり、ヤコブもまたノックスの矢による攪乱に抗っていた。
「どうやらそのようであるな」
 イグニス=J=ファトゥスも、まずはヤコブの強大な膂力を衰えさせるべく、呪いを練り上げ、ヤコブへと放っていたのだが、これも一度試した限りでは、効果を現していないようだった。
「諦めずに続ければ、通る目もあるかもしれないであるが。確実なのは火力支援であるか」
 イグニスは魔法の矢による攻撃も織り交ぜながら、仲間を後方から支援することにした。
「ここ、通さない」
 ヤコブと他の冒険者達の間にリィズ・クラリエが滑り込む。
 突進する勢いのまま、リィズは自らの重量級の得物により、ヤコブへ研ぎ澄まされた一撃を叩き込んだ。

「んんゥ〜、今のは少し痛かったですねぇ!」
「……私、痛くない」
 返礼とばかりに振るわれた、重量としては軽いはずのヤコブの拳は、それこそ巨大な鉄槌でも叩きつけたかのような衝撃をリィズに与えてくる。
 リィズはその一撃による痛みを遮断することで、どうにか立っていることはできた。
 しかし、負傷そのものを無いことにはできないため、最終的にはリィズもヤコブの猛攻の前に沈むことになった。

「大将狙いとは華があっていいねぇ! さぁ、血を流し合う楽しい戦闘をしようぜ!」
 戦場を風のように吹き抜け、ルチ・コクジョウがヤコブへとエーテルの猛毒をまとわせた攻撃を繰り出す。
 毒がヤコブの体を蝕む様を確認したルチは、二刀による攻撃に切り替えながら、さらにヤコブを引っ掻き回す。
「うろちょろとォ! 止まりなさい!」
 一撃の後、面と向かったまま後方へと距離を取ったルチに、ヤコブは追いつくと、その足を思いきり踏んづけた。
「つうっ!?」
「ワタシは寛大なので、お望み通り血を見せて差し上げますよ!」
 思わず怯んだルチを、ヤコブは例によって拳で殴り飛ばし、戦線離脱へと追いやったのだった。

「さって、シーフらしくこそこそやらせて貰うわ」
 ヒルダ・ル・ハーツィはヤコブの死角に潜み、攻撃の機を窺っていた。
 他の仲間がヤコブを引き付けている間がチャンスと見て、ヒルダは切りつけた相手を縛る赤光のエーテルを短剣にまとわせ、ヤコブを強襲する。

「もっと堂々としてもいいのですよ? ワタシの前では、逃げ隠れしても無駄なのですから!」
「いけない、見つかっ……」
 ヒルダは強襲後、気配を消してその場を離れようとするも、あえなく発見されてしまう。エーテルの光糸に絡みつかれ、それでもなお動きを止めないヤコブにより拳の洗礼を受けることになった。

「ふぅ〜。これでもまだ、ワタシに盾突こうというお馬鹿さんは居ます——んぅ?」
 埃を払うように手をはたくヤコブは、視界の端に妙な影を捉えた。
 それは呪文を詠唱するように唇を動かしながら、巨大な火球を今にもヤコブに差し向けんとしている少女の姿だった。
 しかし、その少女は実際に声を発することもなく、なにより——生者に特有の生気とでも言うべきものが感じられない。
「そのような小細工ゥ! ワタシに通用すると思われたのは心外ですねェ!」
 そう叫んだヤコブが、ぐりんっと首を回し、顔を向けたその先には。
「ヤベ。見つかったみたいだから、もう降ろしちまうぞ?」
 一人の少女を担いで戦場を駆けまわるイクスが居た。
「幻影もばれたようだし、動いても関係ねぇ。この際だ、やっちまえ」
「は、はい! 全力で……行きます!」
 幻を生み出すため身動きが取れず、イクスに担がれていたのはアミィ・ブランウォーカー。
 アミィはイクスの肩から降ろされると、迫るヤコブに対し、自らの持てる手段を尽くし、強力な魔法の爆発を巻き起こす。
「これで倒れてくれりゃいいんだがなぁ」
 アミィの前に立ったイクスが、ぼやきながらも油断なく視線を向けるその先で。
 爆風を突っ切って、ヤコブが未だ健在な姿を見せたとき。

「こりゃダメかもしれんな」
 もはやイクスも覚悟を決めざるを得なかった。

●
「ああ、実に素晴らしぃ……ワタシに歯向かった者達が地べたに転がる様は、なんと心地の良い眺めでしょう」
 地に倒れ伏した冒険者達を前に、ヤコブは恍惚の表情を浮かべ、自らの戦果に酔いしれていた。
 ここでヤコブが局所的な勝利を収めたとして、大局的に見た陣営の勝敗が覆らないことなど、もはや忘れているかのように。
 むしろ忘れたいからこそ、冒険者達に八つ当たり気味に拳を振るったのかもしれないが。
 そこへ、ようやく他の冒険者達が救援に駆けつけて来たのを、ヤコブも遠目に発見する。
「ふぅむ。相手をして差し上げてもいいのですが、流石に面倒にもなってきましたねぇ」
 口ではこのようなことを言っているが、次から次へと現れる冒険者達を全て単身で相手にするような事態は、ヤコブにとっても避けたいところであった。
 しかし、ここで踵を返したことによって、敗走したかのように思われるのは癪と言う他ない。
 ——実際のところ、ヤコブはヴァイセントラフ砦の攻略に成功していないわけだが。

 何か良い手立てはないものか——。

 顎に手を当て、思案するヤコブの身体に。
 触れる者が居た——。


(監修:アルパカコネクト運営)

マスターコメント

決戦シナリオ、お疲れさまでした! どの戦域においても、きらりと光るプレイングや丁寧なスキルのセッティングが多数見受けられ、 判定していてとても楽しゅうございました。ご参加いただきました皆様に感謝申し上げます。 本シナリオから配布されるようになりました「褒賞」についての情報と、エピローグノベルも更新しておりますので、関連ページからご確認くださいませ!
決戦シナリオ

決戦シナリオ非常に難しい 報酬:多い325 / 1〜9999人

2020年12月03日 19時43分17秒 公開

大成功

参加者

相談掲示板

  1. 咲羅

    【狂桜会】の咲羅じゃ。 此度の戦は皆、よろしく頼む。 取り急ぎではあるが、今回の戦は各戦域のバランスも少なからず重要と考えておる。 良ければ皆がどの戦域に馳せ参じる予定が教えてほしいと思う。 それを参考にしながら戦域を決定しやすくなる者も居るかもしれん。 下記テンプレの例 ~~~~~~~~~~~ 【1】 人数規模 ソロor未定or⚫人 ~~~~~~~~~~~ かく言うウチらはまた未定じゃが 決定次第ここに投下しようと思う。 どうか、協力してくれると嬉しい。

  2. ウォン・ジンユゥ

    ヒーラーのウォン・ジンユゥである。 まずは咲羅殿の支度に感謝を、我も後々使わせてもらうかもしれぬ。 ついでだが、我は特に所属がない故、力(バフ)や癒しを必要とする者がいれば同行させてもらうと思う。 必要とあれば、一言寄越すがよい。何もなければ野戦ヒーラーとして動くことになろうな。

  3. 桃武・侑飛

    シーフの桃武・侑飛、助太刀に来たよ。 徒党の名前は【黄陽花】、現在は友人と姉弟だけ の小規模徒党だね。 よろしくお願いするよ。

  4. 桃武・侑輝

    ウォーリア、桃武・侑輝だ! 兄貴の侑飛共々、【黄陽花】として動かせてもらうぜ。 皆よろしく頼む!

  5. 桃武・侑芽

    同じく【黄陽花】のヒーラー、桃武・侑芽です。 弟や友人とともに動くことになるわね。 よろしく頼みますね、皆さん。

  6. アルフィンレーヌ

    【3】 砦内で怪我人の治療と糧食の提供をするつもりよ

  7. ハヤト=ガラン=ヴォルファング

    ブレイブファング傭兵団だ、みんなよろしくな! 【勇牙】のタグで動くぜ。 メイン【1】&【3】こちらは未定(支援部隊も派生の可能性あり) 人数規模:10人前後~増加の可能性あり 基本的に軍馬借りて高機動確保し前線指揮官撃破優先で戦場を暴れ回る予定だ! 派手に暴れてぇって腕自慢がいれば一緒に来てくれんのは大歓迎だぜ!!

  8. 咲羅

    改めて表明する。 ウチら【狂桜会】は 【1】 人数規模:10人予定 大まかな動きについてはまだ相談中ではあるが、主に指揮官相手と……ヤコブ・ヴィリアンが出はってきたきた際は、最優先でぶつかりにいく予定じゃ。 縦横無尽に駆け回ると言うよりは、1点集中型になるやもしれん。 ~~~~~~~~~ 皆、表明に感謝する。よろしく頼むぞ。 以降も他の者達も是非発言してほしい。 知っての通り、各部隊の募集や各戦域毎の相談は ギルドが用意したコミュニティ「【死軍】決戦シナリオ相談場」で行っておるようじゃ。 ここで各戦域のバランスを確認した上で、そちらのコミュニティに顔を出すのも良いかもしれんな。

  9. アルフレッド・ラ・ギ

    やぁ、みんなの参謀アルフレッドだ 各地の情報を洗って公開情報を収集したところ以下のようなデータが取れたので速報をこちらに置いておくよ。なお個人情報が漏れないようチーム名や個人名等は書かないことを留意しておきたまえ 確定87名 【1】チーム数:5 総勢:36 【2】チーム数:4 総勢:11 【3】チーム数:4 総勢:18 【4】チーム数:4 総勢:11 【未定】チーム数:3 総勢:11 【未定】はどこの戦域を選ぶか未定状態を差す。確報は前夜になるだろうね、それと確認が取れていない100余名はソロ又は未確定、あるいは秘匿状態で相談しているチーム等であろうと推測される 特に【2】と【4】のチームは1~2名程度の状態で募集が来ていないようなので募集を見てみるといい、決戦シナリオ相談所でパーティ募集スレッドを参照しよう

  10. ストレガ・L・リベルガストラ

    【3】 炊き出しに回るのだーよろしくなのだー

  11. 咲羅

    ほほう。これは助かるぞ、アルフレッドやら。 方針選びの参考にしやすいな。礼を言うぞ。

  12. ヨナ・シャハム

    【3】 ソロ 砦内で防衛隊の補助をするつもり。

  13. ギャメル

    【3】 オレは休息場所が不衛生にならねぇように細々した雑用してるぜ。 血や腐臭を落としてから休めるようにもしてみた。血塗れ腐臭塗れの戦いって話だしな。

  14. ヨナ・シャハム

    うーん。杞憂だとは思うんだけど 【3】に行くソロの人で文字数の余裕があればって感じで、もし将軍に何かあったら駆けつけて戦う。っぽい事を書けそうな人がいたらお願いしたいかも。既に書いてる人もいるかもだけどね。 考え過ぎだったら、単なる文字数の無駄になっちゃうから良いよって人だけで。

  15. シャトン・アルジェント

    あたしは【3】で砦設置のバリスタを使おうと思ってるわ。 特にチームで動く必要はないから、ソロ参加になるわね。

  16. ユークリア・フィナンシェ

    コミュニティぐるみで5~9人が【3】に向かう予定です! バリスタ自体は2~3個しか使わないかもです。

  17. エンデ・エトル・シャリオン

    エンデ。シーフだ。よろしく。 行き先はまだ決まっていないので、これから検討する。

  18. No.20

    余輩は【2】に行き、敵を状態異常にさせ戦況が少しでも変わるよう尽力しよう。 行動としては一人だがよろしく頼む。

  19. ヘレン・ワーグナー

    ヘレンだよー。【4】で馬車護衛に回るよー。ともだちとパーティー組んで行くよー。

  20. グレイブ・ヤード

    グレイブ・ヤード 【3】にて行動する。

  21. ロゼット

    【4】に【雷槌】というタグ内容の目的で参加するわ。 決戦シナリオ相談場のタグ説明に上げたから、目的が合えばよろしくね。

  22. リサ・ベイカー

    【3】で、【休息】というタグで、仮眠所設営をします。 もし同じような行動される方がいらっしゃれば、協力して動けると嬉しいです!よろしくお願いします!

  23. No.25

    サイラスだ、よろしくなー とりま【3】で動くわ

  24. イズレンディル・パラリム

    咲羅さんは呼び掛けありがとうございます。 アルフレッドさんは情報のまとめに感謝を。 【2】 タグ【護軍】 6名でとなります。 宜しくお願い致します。

  25. サフィラ・アズラク・ヴォルファング

    にゃ!AHL広報のサフィラだよっ! あたし達6名は【4】の強行輸送で馬車の護衛をするよっ! チームの方針と作戦は相談中だから、決まったら改めてタグ説明板にしょーさいをのせるね!

  26. Sidurgu・Yul

    全体の人数が分かるのは助かるな、ありがとうさんだ 【2】の人数が少ない様だしそちらに向かわせて貰おう ソロだからサポートに回らせてもらうな よろしくさん

  27. テス・アウレア

    まとめありがとう! 助かるよ 【2】6名 【睡狼】で行動を共にするよ まだメンバーは募集中なので更新あればご報告するね

  28. ハリス・アル・ターミル

    【3】にて食糧事情の改善タグ【兵糧】を作成しております。 ご参加いただける場合は、ぜひ下記までおいでください。 リブラネスタ・リザードマン居住区358番 トップスレッド:【死軍】決戦シナリオ用行動相談卓【兵糧】 https://alpaca-connect.com/world/world0/community/l6KHpEX5DZyT5i699Bff

  29. ウィリアム・リーンエス

    や! 僕だよ! 今回の決戦に関係ありそうな内容で質問をもらった分について、 共有しておくね! ①騎乗しながらの攻撃(物理&魔法)は可能なのか? 可能だよ! ②騎乗攻撃可能な場合は何か補正が入るか? ないね! ③騎乗は2人乗りなど可能か?(人数制限があるか) どうだろうな……個人的には軍用馬であってもあまりおすすめはしないかなあ。 ④騎乗時、馬での移動は数値的には具体的に決まっているか? だいたい「5-6」ぐらい。すごく身軽な授恵者ぐらいかな。 乗る人物の重さにもよるだろうから、ちょっと下がることもあるかもしれないな。 あくまでも移動速度に難がある人物への撤退時の運用のためのものだから気をつけてね!

  30. アルフィンレーヌ

    【3】で家事にかかわることは全部こなすつもりだけど、掛け持ちはできないみたいだから、【休息】に参加させてもらうわね。お台所ちょっと借りさせてもらうけど

  31. リサ・ベイカー

    〉アルフィンレーヌさん わ、参加ありがとうございます! よろしくお願いします! 【兵糧】さんとは連携するので、【休息】を上手く活用して頂けると嬉しいです!

  32. ナキル

    「オレが来たぜっ! ナキルだ!初めましてのヤツはよろしくなっ! オレはソロで【1】にでも行くぜ!」

  33. フィリスティア・リュナ・ブルーメルティス

    キャスターのフィリスティアと申しますわ。 【2】で戦わせて頂きますわね。 同じ戦域の方はよろしくお願い致しますわ。

  34. ロスシー

    私はシューターのロスシーだ! ギリギリだが、ソロ参加で【2】へ行かせてもらおうと思う。 ふふ、沢山の敵とあいまみえるのが、今から楽しみだ。同じ戦域の者はよろしく頼む。

  35. ディアン

    さぁて、俺もそろそろ戦場を決めるとすっかな! つって1人で突っ込むのもあれだし、まだ手すきの傭兵仲間集めてから突っ込むか。

  36. ニーラ・メッコ

    私はソロで【4】強行輸送に参加するよ! 物資の輸送は任せておいて!

  37. エイル・ビュセファス

    【赤翼】、【2】に3人だ。 連絡が前後したが、【兵棋】【整戦】【黄陽花】の情報と【兵糧】【休息】の支援には頼らせて貰うわ。よろしくな。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0