The after of Any epic.
弓月 蒼
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シナリオID:3511
オープニング
●After that
――――これは、とある英雄譚の“その後”の物語だ。
●Adventurers
「叙事詩?」
「そう、叙事詩の執筆協力依頼。お礼は寸志らしいけれど」
「しょっぱいなあ……受ける奴居るかなあ」
「どうかな。でもほら、危険も少ないし……依頼人も出張して来てくれるみたいだし」
「……でもその間待機でしょ? 返す返すしょっぱい……まあ良いか。最近は平和なもんだしね」
「そうねー、大きな事件も起きないし。暇なのは良い事よねー」
『港湾都市』リブラネスタ、冒険者ギルド本部。
ギルドの受付嬢が新たに送られてきた依頼票を眺め、嘆息しつつ掲示板に張り出した。
何でも『学術都市』ヴェルクリエの好事家が、冒険者たちの物語を収集しているのだと言う。
それは既に済んだ話でも良いし、間もなく実現することでも。何であれば将来起きるであろう事であっても。
分野は問わず、内容も問わない。あくまで私的な目的で記され、書物として纏められる。
好事家が生きている限りは秘蔵され、死した場合その息子へ引き継がれる。
それ以上は何の保証もされていない為、或いは五十年。百年、百五十年した頃には流出するやもしれないが。
少なくとも流通を目的とした物ではない。ただ、今を生きる冒険者たちの“今”を克明に記録したいのだと。
変わり者、芸術家肌の多いヴェルクリエであればそういった趣味嗜好の人物も居るのだろう。
それは少々変わり種の依頼として、冒険者ギルド本部の数ある依頼掲載ボードの一角を暫く賑わした。
■
「お次の方、どうぞ」
「はい、新規の御依頼ですね……新規の……えっ、これまだ残ってたんですか!?」
「いえ、失礼致しました。ただ、こちら依頼人の到着待ちが発生しますが構いませんか」
「そうですか。承りました。それでは、冒険の達成報告お待ちしております」
「この依頼、何か度々回ってきますけど……何なんでしょう」
「冒険。うーん……こういうのもある意味では、一応冒険なんですか、ねえ」
『王都』グランスパーダ。冒険者ギルド支部。
かっちりとした制服を着こんだ受付員が受け取った依頼票を確かめ、その年季の入った紙質に目を細める。
その依頼は度々提出されている。受領した冒険者も何人か居た筈だが、気付けばまた掲載される。
ヴェルクリエの好事家とやらは余程熱心なのか。それとも金と時間を持て余しているのか。
どちらであってもおかしくはないし、どちらもであってもおかしくはない。
王都勤務の人間からすると一線を越えた芸術家と言う奴は貴族と同じかそれ以上に理解不能の人種だ。
まあ、しかしとは言え。一時期に比べれば這者やメドゥの指先の暴走も減少しつつある昨今。
こういった戦う力を必要としない依頼が増えて行けば、冒険者の立場もまた変わっていくのかもしれない。
募集人員数が満員になるまではこの依頼票もまた暫く、掲載ボードと受付カウンターを行き来するのだろう。
受付員は椅子から腰を上げると。今受け取ったばかりの依頼票を掲載する為に壁際へと向かう。
■
「『南部鎮守都市』ヴィント冒険者ギルドへようこそ!」
「いやあ、前から一度言ってみたかったんですよねこれ。念願叶ったと言うか」
「あ、まだそんなに沢山の依頼は有りませんけど、比較的緊急の物なら幾つか――――」
「今は何処も厳しいですからね。先立つ物が無いと依頼を出すのも簡単じゃなくって」
「え、楽な奴? あー……そう言えば何かありましたね。でも見返りも小さいですよこれ?」
かつて『帝国』の南の門と呼ばれた都市の復興は今も続いている。
先ず生活の必需施設が突貫工事で造られ、其処に商魂逞しい行商人達が雪崩れ込んだ。
労働力として働くゴブリン達の姿を都市内で見掛けない日は無く、日々着々と建物は増えて行く。
それでも、復興が成ったと言うには到底まだまだだ。『死軍』と『幽界樹』の爪痕は深い。
内政機能が何割まともに稼働しているかは外からは全く計り知れず。
帝国民、と言う括りでの人材的にも、執政機関としての能力的にも、今の『帝国』は盤石に程遠い。
そんな中に在って冒険者ギルドの窓口の設置は比較的速やかに進み、既に優先して運営されている。
かつて帝都崩壊直後の混迷期に在って帝国難民の為に冒険者が如何程骨を折ったか。
その感謝と敬意を帝国の人々は忘れなかった。安心と安定を求めて、と言う直接的世情も事を後押しした。
そんな王国帰りの受付員だ。幾多の緊急性の高い依頼に紛れた一枚の綿紙を見つめる目には呆れが混じる。
今こんな依頼出している場合じゃないだろうと思う気持ちが半分。いや、七割。
とは言えどんな物でも依頼は依頼。とギルド職員の誇りを順守する気持ちが三割と言った所だろうか。
■
「長老様、今日も外からギルドの使いであると名乗る集団が迷子になったようで」
「森はただでさえ入り組んでおるからのう……止むを得まい。使いを出すが良い」
「はい、それと、此方が本日の依頼票になります!」
「一部既に期限がギリギリではないか……まあ良い、分かった。処理しておこう」
「はい、宜しくお願いします! さあ悪餓鬼共、迷子の救出に向かうぞー!」
駆けていく若者を見送り、老人は新設されたギルドの支部に掲載する依頼票に判子を押す。
フィルエス大森林は奥になるほど交通の便が悪く、辿り着くにも一苦労では済まない。
異種族との交流を進めるにも、森人の里で冒険者ギルドの運営は容易とは言い難く。
それでも熱意有る若者と、知見に長けた老人達の協力でどうにか形だけ整えたのが実情だ。
その甲斐あってか、最近は時折旅の冒険者を名乗る一団が里に訪れる様にもなってくれたが。
一方で、森を知らず彷徨い込んで迷子になる事例が後を絶たない。
「ふむ……これも時代か」
そんな状況下、大森林の森人から冒険譚を聞きたい等と言うのは酔狂と言う他無いが。
同じ物がドワーフ王国にも張り出されているらしいと聞けば座して黙する訳にもいかない。
あの武骨で偏狭な山人共が叙事詩など解するとも思えないが、それはそれとして。
賢く気高い森人だけがヒトの歴史から外れていくなど看過する訳にはいかない。
世界樹の一件より彼らにも変化すべき時が訪れている。その変遷を誰より深く理解する者として。
老賢人はその依頼票に、万感の想いを込めて承認印を押した。
●And you
それは一枚の綿紙から始まった。一つの時代。一つの区切り。一つの始まり。
その先を生きる人々の。冒険者たちの。叙事詩の英雄の“その後”を記す事を目的とした依頼票。
ヴェルクリエよりやって来たと言う、室内でも帽子を脱がない、黒尽くめのひょろ長い男は。
至って無個性そのものと言った体で笑顔を象ると。依頼を受けた冒険者に問い掛けた。
これは、とある英雄譚の“その後”の物語だ。
そうしてこれは、今冒険者であるあなたの。あなただけの物語だ。
それは真実全てではないかもしれず。それは何一つ史実としての保証がある訳ではない。
けれどいつの世も。叙事詩とはそういった物だろう。英雄譚とは、尾鰭背鰭の付く物だろう。
しかしそれはそういう物として。語られた歴史は詩と記され今この時より連綿と奏でられていく。
「それでは――――あなたの話を、聞かせて下さい」
これはいずれ語り継がれる叙事詩。その、始まりの終わりの記録である。
――――これは、とある英雄譚の“その後”の物語だ。
●Adventurers
「叙事詩?」
「そう、叙事詩の執筆協力依頼。お礼は寸志らしいけれど」
「しょっぱいなあ……受ける奴居るかなあ」
「どうかな。でもほら、危険も少ないし……依頼人も出張して来てくれるみたいだし」
「……でもその間待機でしょ? 返す返すしょっぱい……まあ良いか。最近は平和なもんだしね」
「そうねー、大きな事件も起きないし。暇なのは良い事よねー」
『港湾都市』リブラネスタ、冒険者ギルド本部。
ギルドの受付嬢が新たに送られてきた依頼票を眺め、嘆息しつつ掲示板に張り出した。
何でも『学術都市』ヴェルクリエの好事家が、冒険者たちの物語を収集しているのだと言う。
それは既に済んだ話でも良いし、間もなく実現することでも。何であれば将来起きるであろう事であっても。
分野は問わず、内容も問わない。あくまで私的な目的で記され、書物として纏められる。
好事家が生きている限りは秘蔵され、死した場合その息子へ引き継がれる。
それ以上は何の保証もされていない為、或いは五十年。百年、百五十年した頃には流出するやもしれないが。
少なくとも流通を目的とした物ではない。ただ、今を生きる冒険者たちの“今”を克明に記録したいのだと。
変わり者、芸術家肌の多いヴェルクリエであればそういった趣味嗜好の人物も居るのだろう。
それは少々変わり種の依頼として、冒険者ギルド本部の数ある依頼掲載ボードの一角を暫く賑わした。
■
「お次の方、どうぞ」
「はい、新規の御依頼ですね……新規の……えっ、これまだ残ってたんですか!?」
「いえ、失礼致しました。ただ、こちら依頼人の到着待ちが発生しますが構いませんか」
「そうですか。承りました。それでは、冒険の達成報告お待ちしております」
「この依頼、何か度々回ってきますけど……何なんでしょう」
「冒険。うーん……こういうのもある意味では、一応冒険なんですか、ねえ」
『王都』グランスパーダ。冒険者ギルド支部。
かっちりとした制服を着こんだ受付員が受け取った依頼票を確かめ、その年季の入った紙質に目を細める。
その依頼は度々提出されている。受領した冒険者も何人か居た筈だが、気付けばまた掲載される。
ヴェルクリエの好事家とやらは余程熱心なのか。それとも金と時間を持て余しているのか。
どちらであってもおかしくはないし、どちらもであってもおかしくはない。
王都勤務の人間からすると一線を越えた芸術家と言う奴は貴族と同じかそれ以上に理解不能の人種だ。
まあ、しかしとは言え。一時期に比べれば這者やメドゥの指先の暴走も減少しつつある昨今。
こういった戦う力を必要としない依頼が増えて行けば、冒険者の立場もまた変わっていくのかもしれない。
募集人員数が満員になるまではこの依頼票もまた暫く、掲載ボードと受付カウンターを行き来するのだろう。
受付員は椅子から腰を上げると。今受け取ったばかりの依頼票を掲載する為に壁際へと向かう。
■
「『南部鎮守都市』ヴィント冒険者ギルドへようこそ!」
「いやあ、前から一度言ってみたかったんですよねこれ。念願叶ったと言うか」
「あ、まだそんなに沢山の依頼は有りませんけど、比較的緊急の物なら幾つか――――」
「今は何処も厳しいですからね。先立つ物が無いと依頼を出すのも簡単じゃなくって」
「え、楽な奴? あー……そう言えば何かありましたね。でも見返りも小さいですよこれ?」
かつて『帝国』の南の門と呼ばれた都市の復興は今も続いている。
先ず生活の必需施設が突貫工事で造られ、其処に商魂逞しい行商人達が雪崩れ込んだ。
労働力として働くゴブリン達の姿を都市内で見掛けない日は無く、日々着々と建物は増えて行く。
それでも、復興が成ったと言うには到底まだまだだ。『死軍』と『幽界樹』の爪痕は深い。
内政機能が何割まともに稼働しているかは外からは全く計り知れず。
帝国民、と言う括りでの人材的にも、執政機関としての能力的にも、今の『帝国』は盤石に程遠い。
そんな中に在って冒険者ギルドの窓口の設置は比較的速やかに進み、既に優先して運営されている。
かつて帝都崩壊直後の混迷期に在って帝国難民の為に冒険者が如何程骨を折ったか。
その感謝と敬意を帝国の人々は忘れなかった。安心と安定を求めて、と言う直接的世情も事を後押しした。
そんな王国帰りの受付員だ。幾多の緊急性の高い依頼に紛れた一枚の綿紙を見つめる目には呆れが混じる。
今こんな依頼出している場合じゃないだろうと思う気持ちが半分。いや、七割。
とは言えどんな物でも依頼は依頼。とギルド職員の誇りを順守する気持ちが三割と言った所だろうか。
■
「長老様、今日も外からギルドの使いであると名乗る集団が迷子になったようで」
「森はただでさえ入り組んでおるからのう……止むを得まい。使いを出すが良い」
「はい、それと、此方が本日の依頼票になります!」
「一部既に期限がギリギリではないか……まあ良い、分かった。処理しておこう」
「はい、宜しくお願いします! さあ悪餓鬼共、迷子の救出に向かうぞー!」
駆けていく若者を見送り、老人は新設されたギルドの支部に掲載する依頼票に判子を押す。
フィルエス大森林は奥になるほど交通の便が悪く、辿り着くにも一苦労では済まない。
異種族との交流を進めるにも、森人の里で冒険者ギルドの運営は容易とは言い難く。
それでも熱意有る若者と、知見に長けた老人達の協力でどうにか形だけ整えたのが実情だ。
その甲斐あってか、最近は時折旅の冒険者を名乗る一団が里に訪れる様にもなってくれたが。
一方で、森を知らず彷徨い込んで迷子になる事例が後を絶たない。
「ふむ……これも時代か」
そんな状況下、大森林の森人から冒険譚を聞きたい等と言うのは酔狂と言う他無いが。
同じ物がドワーフ王国にも張り出されているらしいと聞けば座して黙する訳にもいかない。
あの武骨で偏狭な山人共が叙事詩など解するとも思えないが、それはそれとして。
賢く気高い森人だけがヒトの歴史から外れていくなど看過する訳にはいかない。
世界樹の一件より彼らにも変化すべき時が訪れている。その変遷を誰より深く理解する者として。
老賢人はその依頼票に、万感の想いを込めて承認印を押した。
●And you
それは一枚の綿紙から始まった。一つの時代。一つの区切り。一つの始まり。
その先を生きる人々の。冒険者たちの。叙事詩の英雄の“その後”を記す事を目的とした依頼票。
ヴェルクリエよりやって来たと言う、室内でも帽子を脱がない、黒尽くめのひょろ長い男は。
至って無個性そのものと言った体で笑顔を象ると。依頼を受けた冒険者に問い掛けた。
これは、とある英雄譚の“その後”の物語だ。
そうしてこれは、今冒険者であるあなたの。あなただけの物語だ。
それは真実全てではないかもしれず。それは何一つ史実としての保証がある訳ではない。
けれどいつの世も。叙事詩とはそういった物だろう。英雄譚とは、尾鰭背鰭の付く物だろう。
しかしそれはそういう物として。語られた歴史は詩と記され今この時より連綿と奏でられていく。
「それでは――――あなたの話を、聞かせて下さい」
これはいずれ語り継がれる叙事詩。その、始まりの終わりの記録である。
解説
この箱庭に、終わらない詩を奏でよう。
●成功条件
あなたの語りが叙事詩として残される。
●失敗条件
物理的に依頼が達成出来ない。
※注意事項
・共同参加場合、行動案冒頭に【】括りでのタグ付けを推奨します。
尚、この場合タグ付き参加者全員が居る前で話をさせられます。聞かれています。聞かれます。
・語られた内容が事実であるか、ないかは問われません。
とんでもない妄想を全力で語って頂いても一向に構いません。覚悟は出来ている。
・尚、ロスガリア大陸に生きる人が常識的に理解できない未来像は想像しにくい為、
語った内容がト書きで記されるか、過剰に抒情詩的な装飾が為される可能性が有ります。
・MS名義『弓月 蒼』担当NPCの”語り”への参加は有名無名問わず全面的に対応致します。
もしも御用命があればお気軽にどうぞ。
・相談期間を平常より少し長めに取っております。出発日にご注意下さい。
マスターより
お世話になっております。これがこの世界で、語り部として届ける最後の物語となりました。
弓月蒼と申します。粛々と真摯に参ります。
皆様の想いを。これまでと、今と、これからとを、目一杯の希望で装飾し、語って頂けたら幸いです。
この世界を歩み、生きて、此処まで辿り着いた。あなたの話を聞かせて下さい。
リプレイ
●語り継がれる叙事詩
『王国』北方辺境、『城塞都市』ノストガルデン――――施療院内の一室。
「皆――――そこに、居ますか」
「ああ。皆揃っている」
これはただの記録だ。一人の英雄が病床でその終わりを告げるだろう未来について語った、その時の。
長くは無い生だった。短か過ぎたと言う者も居る。けれど精一杯に自分の。自分で決めた人生を生きた。
3人の子を授かり、その長男は間もなく貴族として社交界に入る。孫の顔が見られないのが残念だと。
彼女は晩年往年の友人たちに良くそう語ったと言う。彼女の亡骸は火に焼べられる事なく澱へと還る。
それもまた、往年の友人の一人との約束なのだと言う。世界は、いつでも巡るのだから――――と。
「……私は、貴女を幸せに出来ただろうか」
「何言っているんですか。当たり前でしょう?」
例え掠れていても、最期まで声が出ることに感謝した。神の恩寵、と言うのは本当なのかもしれないと。
そんな事すら心の片隅で想えるほどに。剣を振るってばかりの腕でパンを捏ね、子供達を抱き上げる。
思いも寄らない奇跡だった。想像を大きく超える偶然だったと。
没落貴族から辺境伯夫人へ至った娘はそう笑った。まるでそう――――良く出来た物語でもあったかの様な。
「私は、ちゃんと幸せでした」
赤い、赤い、赤い光が空へと棚引いて。その死を悼むように虹の光彩を帯びて消えて行く。
老いた黒猫と灰猫は、2匹揃って哀し気に哭いたと言う。
けれど本当に――――そんな英雄は存在し得るのだろうか。
これは時代の終わり。歴史の終わり。神話の終わりを辿る物語。終わりの始まりを始めよう。
連綿と語り継がれるのはいつだって、“幾多の叙事詩と、その後”の話だ。
それがいつ。誰によって語られたか。その事実性は然程問題ではない。
一年前かもしれないし、百年前かもしれない。或いはそれは今と異なる世界の話かもしれない。
ただ、彼らは生き、刻み、そして成した。その軌跡を遺したいと願った誰かが居た。
これは歴史書ではなく、叙事詩だ。今、綴られつつあるこの瞬間より描かれた、未来と言う偶像。
つまり僕が何者か、君が誰かも些末な話に違いない。既にして、もはや誰もが聴衆でしかないのだから。
神代に勝るとも劣らない、荒々しくも活力に満ちた輝かしき時代。これよりその一端を詳らかに語るとしよう。
■
巨大なるもの。守護者にして裁定者。神話の残滓。
いずれは“お伽話”と呼ばれるのだろうその存在の名を『征竜』――――と言う。
“あんなに強大で強い存在と戦ったのは生まれて初めてで、未だヒトが勝てたのが信じられないくらい。
でも今思うと『終わりの象徴としてヒトに討たれる事』が、征竜様の最期の使命だったのかもしれない”
いずれ再び『帝都』と呼ばれる地で、その戦いに参戦したと言う『王国騎士』エルゼリオ・レイノーラ。
新進気鋭の騎士として忙しない日々を送る彼にとっても。彼の存在は人生最大の脅威として刻まれている。
「もし新たな時代を託すに足る存在だと認めて下さったのなら、ボクはその期待に応えたい。
例えこの世界が“箱庭”だったとしても。より良き世界を目指すのは、残されたボク達の使命だと思うから」
かつて、世界は神々が敷いた法則の下で運営されていた。であるならこれはその最後の時代の記録となる。
あらゆる歴史の是非を決める裁定者は既に無い。これからは――――真にヒトの時代がやって来る。
例えばそれはかつて、“不可能”の代名詞と呼ばれていた。
“私はただ、この『王国』と、そこに生きる人々を愛していただけだよ。
それはとても単純で、とても簡単なこと。愛する者を護りたいと願えば、きっと誰にだって”
花の領地カペルの領主にして、“蒼い薔薇”の開発に成功した『蒼玉侯』シルヴィア・A・カペル。
王家の剣として、王国騎士を下賜されるまで至った彼女の功績を讃える声は多い。
「主は、こうと決めると諦めると言う事を知らない方なのです。
学術都市から講師を呼びたいと陛下に直接陳情しようと為された時は、本当に肝を冷やしました」
そう語る、『王国騎士』ローライトの言にはけれど。仕える者への確かな敬意が込められていた。
その熱意こそが、『王国』初の芸術専門学校を領都に創設するにまで至ったのだとするなら。
彼女の非凡な所は文字通り。その行動力と祖国への類い稀な“愛”そのものだったと言えた。
それは蒼い薔薇に込められた想いと共に。いずれ王国の『奇跡』と称される事だろう。
「それは黙っておいて欲しかったな、あの頃は私もまだまだ若かったんだよ。
今はもう少し……え、エディとセイディはシルヴァンの味方をするのかい? 全く、ご覧の通りさ」
2児の母、侯爵領領主、そして愛する者の妻でもあったシルヴィアは。
『王国』に多くの貢献を果たしながらもかつて“麗人”と呼ばれた時代と変わらず。そう涼やかに微笑んだ。
“卒業しリブラネスタに戻った後、郊外に一軒の家を買ったんだ。
ここからが本当の夢の始まり。かつて自分の様な孤児達の為の……新たな『家』”
彼は、厳密にはヒトではないのだと言う。『語り部』レピド・クロサイトは淡々とそう告げた。
同じ時代を生きた冒険者の幾人かが引退を表明する頃合いになろうとも。彼は変わらない。
ヒトより生まれ、ヒトで無くなった彼ら。造人の事を知る者はこれからどんどん少なくなる。
すっかり老いた猫を掌で撫でながら。けれどだからこそ、レピドはかくの如く語った。
「俺達は生き返って、生まれ直した様な物だ。きっと、それには意味が有るのだと思う。
例えばそれは、この世界に俺達がいた事を残す事なのかもしれないと。最近はそう考えるんだ」
きっと、彼が愛情を以て育んだ孤児らは例え彼がその命を散らそうとも長く語り継いで行く事だろう。
ヒトとは違う。ヒトの我欲で造られた。けれど誰よりもヒトらしく、生きて死んだ彼の事を。
■
“ブレイブファング傭兵団の活躍を聞きてぇって?
よっしゃ! そんじゃ、俺達が大陸最強の傭兵団と謳われるまでの活躍聞かせてやろうじゃねぇか!”
ハヤト=ガラン=ヴォルファングを名乗るその赤狼じみた亜人は酒杯を掲げながらかく語った。
帝都崩壊より前皇帝ヨゼフを討ち果たし。その後も拡大を続ける傭兵団ブレイブファング。
彼の戦いの歴史、その最中に敢然と輝く一幕を。それは彼がその背を追い続けた、白の星との決着である。
「漸く見つけたぜ――――『雷刃』よ」
「……我を追い続けていた、勇牙の小僧とはうぬであったか」
『雷刃』グランバルドとは神話である。傭兵として長く語り継がれた不敗と言う偶像。
その素性を深く知る者は居ないが、その結末だけははっきりとしている。その行方を知る者は居ないと。
まさしく雷そのものの一閃は、彼のガランの名を継ぐ亜人の英雄たるハヤトの神速をも捉えんとした。
だが、十合、二十合、三十合にも至る斬り合いは、究極互いの身命の如何に尽きるが遅いかを競う泥仕合へと至り。
最後に拳を突き上げた男こそは、大陸最強を謳う勇牙の傭兵団。その団長たる亜人であった。
「お前の超えられなかった壁を超えて見せたぜ――――! 悔しがりながら待ってろよ……!!」
――――その咆哮は、『帝国』の寒空の下高らかに響いたと言う。
"医療とは、ヒトがその手で可能性を引き上げていくもの。
である以上、例えどれほど理不尽でも。ヒトのまま階段を登っていかねばな"
当時主流とは言い難かった医療の最先端を走る男。フェイサル・セイフはそう前於いてから語りだした。
時代の節目。ヒトとそれ以外との戦いが終わろうと、ヒトは決して戦いからは逃れられない。
それは病や怪我が齎す理不尽な死や苦しみとの戦いであり。それを顧みない為政者や支配者との戦いである。
フェイサルはその手段に人を癒す事を選び、ただ地道に“魔法”ならざる医療の可能性を追求し続けた。
「ですが先生。医療ではどうしようが救えない者。手遅れになる者が居ます。これを追求する道は正しいのでしょうか」
「世界の多くは白黒で分けられぬ濃淡のある灰色で出来ている。故に、正しさとは一つでなくて良い」
悩むこともまた戦いであり、結果治癒魔法の方が医療より優れている、と言う物の見方も決して間違いではない。
それでも。医療でなければ救えない病理があるからこそ、この道を追求する事にもやはり意味があるのだと。
彼の教導は多くの施療院に圧されがちな医学関係者達にとっての支えとなり、後に『地方医療の父』と呼ばれる。
けれど彼はその最期を惜しまれ逝く間際ですら断じて、自らを“医師”と呼ぶことだけは赦さなかったという。
“私には記憶が御座いませんでした。私が今ここにいるのは、大切な人たちの優しさのお陰です。
私が彼らに救われた分。彼らの様に私もまた、人に優しく強く在りたいと。そう思い願っております”
『最後の巫女』と呼ばれた森人が居る。過去を喪い、故郷を失い、方々を彷徨った彼女。
ネーヴェ・グラヌローザを名乗るその森人は『王国』に在りながら、今はなき世界樹へ祈りを捧げ続けた。
「何もかも失い、ですが心細くはありませんでした。縁があればいつかきっと記憶の糸が繋がると信じておりました」
けれど運命は残酷だった。彼女の手元に残された物は失われた物よりもずっと少なく。
悲しみに暮れる彼女を支えたのは、失くしてから得た。その新たな縁であり、絆だった。
「私の周りには大切な友人と仲間がいて、何度その優しさに救われたか分かりません」
……ね、と。共にやって来た黒猫に微笑み掛ける彼女の姿は慈愛に満ちて。
それが失った事で育まれたが故の強さだなのだろうと分かった。ネーヴェは日々絶えぬ祈りを捧げながら。
一途に信じ続けたと言う。誰かを救うのは人と人とを繋ぐ糸、其処に込められた優しさと強さである事を。
■
“俺かあ? 別に。あれから特に何かが大きく変わったわけじゃない。
ゴールディで面白おかしく暮らしながら、たまに面白そうなギルドの依頼を受けてるぜ”
“剣を持てなければ生きていけないと思っていたんだ。
持てなくなった時点で終わりだと。だけどきっと――――いつかはそうじゃない世界になる”
『知の伝道者』として知られるヨル・スレイマンと『何でも請負屋』と名高いナハシュ。
この両名に交流が有った事は、ゴールディでは広く知られる事実である。彼らに育てられた孤児らは語る。
「ナハシュは商売は上手いけどすぐふらふら何処かへ行っちゃう、ってヨルおじちゃんは良ーくぼやいてた」
「ヨルはなんか色々忙しくしてるけど、世界は最初から面白えんだってナハシュ兄ちゃんは笑ってたよ」
終わったと思った生の最後に、空から星が落ちて来てしまったから。
退屈を感じる暇すら無くしてしまったよ。いや、楽しい冒険だった――――ヨルは伝道の旅中そう語った。
「そのうち遊び飽きたらアッチ側に行こうと思ってんだけどな」
「それは困るな。せめて今の内にナハシュが退屈しない世界にはしたいとは思っているのに」
「まあだいぶ先の話だ、何より――――お前が生きてる間は退屈しねえよ。テールスープも美味いしな―」
2人の付き合いは、いずれヨルが没するその時まで続くことだろう。
“私も我々の記録しているが、記録は多くある方がいいのだ。例えそれが荒唐無稽であれ――――”
『探求者』“ストレガ”の著書と言えば、近年の歴史学者にとっては非常に価値ある一冊として知られている。
無数の写本が作られたその原本はゴールディに根を張る古い組織の重鎮らが秘匿していると言うが。
『ストレガの写本』そのものは大陸の好事家が必ず一度は手にすると言われ、多く決まりの文句より始まる。
ストレガ・L・リベルガストラが記す。知識を深め、研鑽し、諸国へ赴き見聞を広め、その叡智を記録せよ。
「そうそう、これを記述してほしい。ストレガ主導で新しいゴブリン史を記録しているのだ。
かの者が神になり、その後様々な出来事がありかの者の娘と冒険者達が『始まりの地』を発見すると言う史実を」
『帰還』と題されたその書は今代の“ストレガ”が愛蔵し、そして今日も何処かで語り継がれている事だろう。
“ある女の子がいた。見放され。見落とされ。見捨てられ。都度手を伸ばした子が。私は間に合わなかった。
けれど生者は死したとき、澱へと還り世界に満ちるという。誰もが澱より生まれ、世界に痕跡を刻む様に”
Alexandra・Hexe・Claudia。その名はとある貴族家の騎士の一人として残されている。
彼女は時に忙しい職務の合間を縫い、様々な街を旅して見分を広めた。『結鎖の騎士』と人は呼ぶ。
「巡る星の下、私はその潮流に触れて……漸く女の子と出会えた。以来、彼女は傍にいる」
彼女は戦いによって爪弾きにされた多くの孤児達の為に尽力し、その幾らかを救った。
そうすると、星の海が喜ぶ夢を見るのだと。かつての彼女を知る物が驚くほど、精力的に諸国を巡った。
不器用な彼女の背から学んだ子供達は、後に『王国』内の様々な家の文官や学者として活躍する事となる。
その成果は後に高く評価されているが、恐らく。彼女が求めていた物は評価とは異なる何かだったのだろう。
■
シャルガネ出身の庶民が、病弱な妹の為に冒険者になり、武勲を上げ、知識を求め『学園』に入り。
恋をして、伯爵家に養子に入り、侯爵家の姫君と結ばれる。“紫水恋歌”と呼ばれる戯曲である。
『王都』音楽会の奇才。シセラ・ユーディンが発表したこの舞台は貴族令嬢らの熱烈な支持を受け。
王都劇場で七次公演まで開かれる局地流行を引き起こした。これが事実であればどうか。
“戯曲の方が有名になり過ぎてこうして語るのも何なんだけど……
皆が大切なものを手放さずに生きられるよう、その標を残せたら。と思い直す事にしたんだ”
そう告げた彼、海神 江流の傍らには、『紫水晶』の至宝と謳われる姫君。クリスタリアの姿が在った。
領主として領内外を問わず“王国文官教育の大改革”を掲げる様々な施策を打ちながら。
けれど、2人は近隣領にまで貴族にしては珍しいと言う程に、仲睦まじい夫婦としても知られている。
『紫水の双晶』と言えば、王国において決して離れる事の無い運命の2人、を指す慣用句として知られる程に。
「まだまだ伝え足りないこと、知って行きたいことが沢山有るんだ。勿論、彼女と一緒に」
「“待たせてしまったね。クリスタリア。俺が出来る準備は全部やりきったつもりだ”――――と言って。
江流様が迎えに来てくれた時の気持ちを、忘れたことは一度たりとも有りません」
そう言い伴侶の腕を抱く『紫水侯』夫妻は戯曲の後押しなど無くとも、世界一幸せであるかの様に見えた。
“私思うの。人を好きになるのに、その人がその人である以上の理由が必要かしら? って”
“ずっと傍に居ますよ。これから先もオルファと共に……と、誓いましたから”
歴代の半分と言う、その在位の短さで知られる匠王『神匠』ヴィルヘルミナ。
彼女の打った武具はその高い実用性で知られるが、その最も多く打った物が装飾品だと知る者は少ない。
白銀を流し込んだ薔薇の意匠はある一人の姫君に贈る為に造られた、その試作品であるとされ。
彼女が一途に想った相手もまた、その手腕で以て『ドワーフ王国』、『王国』間の国交強化に務めたと言う。
「余り言葉は上手く無いのですが、彼女を愛していると言う啖呵くらいは切れますよ?」
「ヴィルが私を守ろうとしてくれる分、私はヴィルを守るの。愛ってきっとそういう物よね」
2人が成し遂げた結果を指し、天賦の才が齎した偉業だと評する者も居るだろうがそれは正しくない。
彼女らは互いの愛情を誰恥じる所無く表するため力を尽くした。ただ、それだけの事だったのだろう。
若き『神徒長』ロゼットは、歴代最年少でシグモルを支える守護者、神徒の長を拝命した女傑である。
そんな彼女が優れた冒険者としても名が知られているのは、その経歴に依る物だろう。
“象徴であった火神様が眠りにつかれたことで、神殿間の派閥争いや辺獄の魔獣の被害も少なく無いんですよ”
忙しくなる一方だと、肩を落とす彼女にもささやかながら休みはある。
例えばこの日が正にその一つであり、『王都』グランスパーダの冒険者ギルドで待つロゼットの元に。
やって来たのは“如何にも”な古木の杖に背負い鞄。白い魔術師装に身を包んだ妙齢の令嬢。
慣れない店内で一瞬視線を泳がせた彼女は。その親友の姿を認めると駆け寄り、条件反射の様に抱き着いた。
「ロゼット、元気にしてた!? 私今日のことすごく楽しみにしてたんだから! 昨日は眠れなかったくらい……!」
「はいはい、オーロラの話は旅先で幾らでも聞くから。早速出ましょ、久しぶりの『冒険』なんだし」
手を合わせ喜び合う2人は、もう長い親友同士。なんと王都から片道一週間。揃って極北に向かうのだとか。
何故そんな観光に向かない土地にと問うと。彼女らは互いに目配せしあい、声を揃えてこう応じたと言う。
“ご存知ですか? 極北峠の潸涙紗――――を”、と。
■
『王国』北方には英雄の物語が数多く眠る。彼の歴史に名高い“北の英雄”も去る事ながら。
例えばそう、精強と知られた『北方辺境騎士団』。その団史に名を刻んだ者たちなどは典型と言えよう。
“勇敢なる白き戦乙女――――アストリッドさんの英雄譚をお話しても宜しいかしら?”
『蒼騎士』ザザ=ステルヴィナ、或いは『蒼賢』のステルヴィナ、『北境の守護者』と知られる賢人である。
同時代に於ける他2人の北方辺境騎士と並び、多くの森人が北境を訪れる理由とされているが。
その名は彼女が語り続けたもう一人の英雄。『白騎士』アストリッドの名と共に謳われる事も少なく無い。
彼の蒼賢の生命を救い、使命を繋ぎ、そして世界を救ったと言う白の女双剣士をザザはかく語る。
「最期の時、私が果たそうとした役割と責任を彼女は全部抱えて、攫って行った」
「それが正しかったのか、間違っていたのか、私には分からない。けれど――――」
英雄は英雄を知ると言う。自らの後を託した賢人は後の北の大商都の発展に大きく寄与したに違いない。
そしてその主が没した後も、後継者の育成と愛する英雄の墓標を護る為、彼は尽力し続けるのだろう。
“難しい事はしていません。任された仕事を任された以上に成す。それが信頼に応えると言う事でしょう”
『氷吏』リコリス・アデュラリア。北方辺境の外交官として知られる森人の魔法使いだが。
彼女の経歴は冒険者より遥かに長い『王国』と『帝国』の外交面での貢献で知られる部分が多い。
帝都復興当初から国境を挟んだ国外商法の調整に携わり、外交知識と法知識を積み上げた結果文官長を継承。
その冷徹とも言える合理的判断で以て、『北境』で以後も度々発生した外交問題の収拾に広く貢献した。
「当面はあの痴れ者を追い落とすのが目標です。
このまま放置しておいても、どうせ碌な事にならないのは目に見えていますので」
後に功績と悪名が拮抗する事になる『隠者』の危険性を、早くから公言していた事からもその慧眼が見て取れるが。
一方で北方辺境伯の子供達を大層可愛がっていた、と言う子供好きな側面が語られる事はあまりない。
“ワタシはね、ワタシがしたい。すべきだと思ったことをやり通しただけ”
ザザやリコリスが旅する森人の憧れだとすれば、『双星』トゥーリは半獣人の救世主だと言える。
『王国』に深く根付く同族差別に敢然と立ち向かい、私財を投じての私塾開校や人権推進に寄与。
その活動は北境辺境を中心に一定の成果を上げ、半獣人移民の就業環境の向上へと繋がって行く。
また、私人としては伴侶である『双星』ハリス・アル・ターミルの開墾団と共に各地の農地環境改革を手伝った。
“征竜様より託された世界に、国境は有りません。大地は続いているのですから”
作物が育ち難いとされる『帝国』北方や極北でも根付く“ターミル流農作物”は各国の食糧供給改善を助け。
特に収穫量が多く汎用性の高い“ターミル芋”は多くの飢餓を救う程の生産高を生みだした。
「冒険者になって思い知ったけれど、知る事は大切だよ。学ばないと何も変えられない」
「そうですね。品種改良も同じ、作物から学び大地を知る。先ずはそれからです」
武勇を誇らず、人を生かす事をこそ誇った2人の姿は各国で見られ、感謝と共に語られる。
例え野盗に襲われようと更生を願い、いずれ収穫祭で肩を組んで歌うのだと、ハリスは笑ってそう言った。
■
“これほど多くの授恵者が溢れ、人々が世界を変える力を有したことは他にない。
私はこう思ったの。これはきっと、名高き英雄の時代の最後の輝きだ――――と”
かつて「大平原に門番あり」と謳われた帝国貴族の名門ネーベルベルクの末。
『焔の建国姫』と呼ばれたアウレーリア・フォン・ネーベルベルクは、戦後家門の再興を成し遂げた。
しかし、彼女の功罪の多くは戦前の悪戦苦闘では無くその後の活動によって語られる。
彼女はただ日々を営む領民を愛し、名も無き人々を愛し、彼らが鳥籠から飛び立って行ける未来を愛した。
王国北境、中央、南方、同盟と、機を合わせ着手に及んだ教育革命は文字通り放たれた火種に等しく。
或いはそれが後に彼ら、彼女らの命脈である『貴族制』へ燃え広がる事をすら理解していた様にも思える。
「だから翼を織っただけ。美しい故郷がもう二度と焼かれぬよう。
或いはこの"神の恩寵”が失せても――――大切な領民達が自らを選び歩めるように」
後に『王国』と『同盟』の支援を受け独立したその都市国家は、小国ながら永久中立を掲げ今も山並に響く。
嗚呼、森と霧と高原の国、ネーベルベルクよ――――と。
帝国貴族がそうである様に、王国貴族社会は『集権派』の台頭によって大きな転換を余儀なくされる。
『貴族』とされて来た伝統ある家が少しずつ。けれど確かに減り行き消えて行く時代の転換期。
其処に在って、自家の生き残りを掛けて戦った例の一つに『迷迭香の比翼』が挙げられる。
両名は王国の内憂と外憂。それぞれに異なる場所を戦場としながら同国の発展に強くその痕跡を残した。
“成り上がり者の成功譚、恋愛譚としては面白い――――くらいにしか思っていなかったのだけれど”
“そうだな、僕が語られるなら彼の隣がいい。そしてジュストは、もう少し自分の評価を見直した方が良い”
『翡翠の天秤』ジュスト・V・ケレスと『オーブの赤薔薇』ローザリカ・L・ディオール。
王室の財務管理に携わると共に、汚職貴族の抽出とその排除に全力を尽くし悪法と戦った法務貴族。
一度は本邸に火を点けられるほど多くの貴族から恨みを買った物の、妻の商才と莫大な資産。
『王党派』、『貴族派』にそれぞれ擁する強力な支援者の力も有り、その後叙勲され財務官長に任じられる。
裏では財界に顔の利くディオール伯爵家の根回しも有ったと伝えられるが。
その事実を証明する様な証拠は見つかっておらず。真実は藪の中であると言う他は無い。
「そうだね。守る者は増える一方だけれど、最愛の薔薇が望むならもう少し高みを目指しても良い」
「僕は最愛の小鳥を労わり癒せれば満足だけれど……うん。宰相補佐くらいでないと役不足じゃないかな?」
そう言って胸を張った赤薔薇が意匠を手掛けた既成礼服は、今日も尚若い官僚達に広く人気を博し。
近年少しずつ増え始めた庶民出身の高位文官らが国家内政へと進出するのを長く、大きく助けている。
そんな中、“至貴く穢れ無き”とされた歴史ある名家『白銀』。
同家へ嫁いだ『銀月妃』レティシア・レインフィールの名は主に“他の英雄の記録”に垣間見える。
城塞都市の危機を救ったという『北剣妃』イヴェール・アーチボルト。
或いは王都内乱鎮圧に貢献したという『銀薔薇姫』オルファレナ・クラティアス・バデーニ。
けれど彼女は英雄としてではなく、あくまで唯一人の妻であり女性としての幸せを望んだと言う。
“母と過ごした時が短い私が母親らしく出来るか不安ですが……二人で幸福な家族の形を作りたいです”
『王国』の転換期は『白銀』にとっても激動の時代だった。病弱が故、夭折した義弟の後。
未だ幼い先代の子が成人するまでとして『白銀侯』を継いだ夫を支え、男児2人、女児1人を育てる。
「妻には苦労ばかり掛けている自覚が有ります。その分を愛情で返していられれば良いのですが」
「諦めなければ幸せにはなれます。彼が傍に居てくれるのなら……私は何処でも生きていけます」
決して穏やかで平和な日々とは言い難かったろう。卓越した治療師である彼女の戦場は幾らも有った。
しかしそんな中であっても彼女は最愛の家族を護り抜き、『白銀』の名を正しく返す形で次代へと遺した。
■
そうして――――同じ『王国』でも彼らの名は一つの同一の記号。『竜』の一言と共に語られる。
“以前のわたしは、なんの変哲もない普通の女の子でした”
『王国』南方の『湖都』には2人の騎士の物語がある。1つは『金色の騎士』1つは『悪の銀髪鬼』。
子供達の憧れであり、英雄の名を欲しいままにした少女に対し、銀髪の鬼は畏れと共に謳われる。
“その鬼は、生きる為に悪い事も沢山してきた。救われては道理が合わない”
悪い事をすると、銀髪鬼がやって来て酷い目に合う。弱き者を虐げる者は、いずれ金色の騎士に裁かれる。
悪戯っ子は銀色髪の鬼を心の何処かで恐れ、勇敢な少女らは世界に正義の騎士が在る事を願い、焦がれた。
“こんじきのきしとぎんいろのおに”
それは寓話であり、寝物語の一節であり、王国の一部でのみ通じる定番絵本でしかないが。
彼女ら、彼らは確かに存在し。互いの生の果てまでも、抱いた理想と築くべき未来へ殉じたのだと言う。
「ただわたしにできることを――そう思って、いろいろなものをこぼしながら前に進んできました。
そんな積み重ねの上に『今』がある。この先の未来も、それは同じです」
「騎士は鬼よりもずっと強く、勇敢だった。けれど彼女はそんな悪い鬼と一緒に未来を選びたいと。
そう言ってくれたのだ。改心する理由に、これ以上の物も無いだろう」
ゲルダ・クライン、そしてナハティガル=ラー。功績の多様さに反して2人の名が語られる事は多くない。
彼女らは自らを寓話として残す事を選んだ。それが誰かにとって、歩くための道標となる事を願って。
“息抜きに、と連れて来られただけだ。此処で語るべき事は何も無い”
“そんな事言わないで下さい。もう、アルベイルさんだって未来を良くしたいと思っているんですから”
『白竜妃』コルネリウス・アーラは『王国』史に於いて高位貴族に嫁いだ数少ない森人の一人である。
当初、彼女の結婚には方々から根強い抵抗が有った。当然だろう、『王国』は唯人の国なのだから。
けれど『竜』が尽力し、文官育成機関として知られた『紫政館』の高弟らがこれに猛反発を示した。
誰もが幸福を、未来を掴もうとして良い。その行使は種族を問わず人が生きながら有する権利であると。
「歩みを止めずに同じ場所を目指した。その支えになれたのなら、私は世界の誰よりも幸せです」
「……人を大切に想うことに種族など何の垣根で有るものか。他人の価値は己が眼で見極めよ」
彼の一件は歴史的事件として、王家に叛意を抱く貴族家蜂起の切っ掛けの一つとされる。
一方人権論者はかく評する。その婚姻はより良い世界を願った者達の願い。その結実であったと。
――――一つの時代が有った。一つの戦いが有った。一つの生と死があった。
それらの全てが記録される物ではなく。事実は決して真実ではなく。逆もまた然りだと言えたろう。
語られることが史実になるとは限らず、信の於ける物など何一つ無い。けれど全てが出鱈目になるとも限らない。
その真偽を見極められる者たちもいずれ去り、次の未来。次の歴史が折り重なって続いていくのだろう。
神代の彼方より。英雄の刻んだ軌跡は隠され、時に変遷し、思いも寄らない脚色を遂げ、そうして続いた先がある。
語り継いで行けたら良い、本当の形など知れずとも。誰かが願い、想いを託した場所で今を生きる者として。
それはむかしむかしより始められ、めでたしめでたしで終わる様な、ありふれた。
けれどどれ一つとっても他で代わりは効かない、誰かが刻んだたった一つの叙事詩。
編纂された一冊の本はぺらぺらと捲れ――――そうしてぱたん、と表紙を閉じる。
次の読み手が訪れる、ただその時を待ちながら。
『王国』北方辺境、『城塞都市』ノストガルデン――――施療院内の一室。
「皆――――そこに、居ますか」
「ああ。皆揃っている」
これはただの記録だ。一人の英雄が病床でその終わりを告げるだろう未来について語った、その時の。
長くは無い生だった。短か過ぎたと言う者も居る。けれど精一杯に自分の。自分で決めた人生を生きた。
3人の子を授かり、その長男は間もなく貴族として社交界に入る。孫の顔が見られないのが残念だと。
彼女は晩年往年の友人たちに良くそう語ったと言う。彼女の亡骸は火に焼べられる事なく澱へと還る。
それもまた、往年の友人の一人との約束なのだと言う。世界は、いつでも巡るのだから――――と。
「……私は、貴女を幸せに出来ただろうか」
「何言っているんですか。当たり前でしょう?」
例え掠れていても、最期まで声が出ることに感謝した。神の恩寵、と言うのは本当なのかもしれないと。
そんな事すら心の片隅で想えるほどに。剣を振るってばかりの腕でパンを捏ね、子供達を抱き上げる。
思いも寄らない奇跡だった。想像を大きく超える偶然だったと。
没落貴族から辺境伯夫人へ至った娘はそう笑った。まるでそう――――良く出来た物語でもあったかの様な。
「私は、ちゃんと幸せでした」
赤い、赤い、赤い光が空へと棚引いて。その死を悼むように虹の光彩を帯びて消えて行く。
老いた黒猫と灰猫は、2匹揃って哀し気に哭いたと言う。
けれど本当に――――そんな英雄は存在し得るのだろうか。
これは時代の終わり。歴史の終わり。神話の終わりを辿る物語。終わりの始まりを始めよう。
連綿と語り継がれるのはいつだって、“幾多の叙事詩と、その後”の話だ。
それがいつ。誰によって語られたか。その事実性は然程問題ではない。
一年前かもしれないし、百年前かもしれない。或いはそれは今と異なる世界の話かもしれない。
ただ、彼らは生き、刻み、そして成した。その軌跡を遺したいと願った誰かが居た。
これは歴史書ではなく、叙事詩だ。今、綴られつつあるこの瞬間より描かれた、未来と言う偶像。
つまり僕が何者か、君が誰かも些末な話に違いない。既にして、もはや誰もが聴衆でしかないのだから。
神代に勝るとも劣らない、荒々しくも活力に満ちた輝かしき時代。これよりその一端を詳らかに語るとしよう。
■
巨大なるもの。守護者にして裁定者。神話の残滓。
いずれは“お伽話”と呼ばれるのだろうその存在の名を『征竜』――――と言う。
“あんなに強大で強い存在と戦ったのは生まれて初めてで、未だヒトが勝てたのが信じられないくらい。
でも今思うと『終わりの象徴としてヒトに討たれる事』が、征竜様の最期の使命だったのかもしれない”
いずれ再び『帝都』と呼ばれる地で、その戦いに参戦したと言う『王国騎士』エルゼリオ・レイノーラ。
新進気鋭の騎士として忙しない日々を送る彼にとっても。彼の存在は人生最大の脅威として刻まれている。
「もし新たな時代を託すに足る存在だと認めて下さったのなら、ボクはその期待に応えたい。
例えこの世界が“箱庭”だったとしても。より良き世界を目指すのは、残されたボク達の使命だと思うから」
かつて、世界は神々が敷いた法則の下で運営されていた。であるならこれはその最後の時代の記録となる。
あらゆる歴史の是非を決める裁定者は既に無い。これからは――――真にヒトの時代がやって来る。
例えばそれはかつて、“不可能”の代名詞と呼ばれていた。
“私はただ、この『王国』と、そこに生きる人々を愛していただけだよ。
それはとても単純で、とても簡単なこと。愛する者を護りたいと願えば、きっと誰にだって”
花の領地カペルの領主にして、“蒼い薔薇”の開発に成功した『蒼玉侯』シルヴィア・A・カペル。
王家の剣として、王国騎士を下賜されるまで至った彼女の功績を讃える声は多い。
「主は、こうと決めると諦めると言う事を知らない方なのです。
学術都市から講師を呼びたいと陛下に直接陳情しようと為された時は、本当に肝を冷やしました」
そう語る、『王国騎士』ローライトの言にはけれど。仕える者への確かな敬意が込められていた。
その熱意こそが、『王国』初の芸術専門学校を領都に創設するにまで至ったのだとするなら。
彼女の非凡な所は文字通り。その行動力と祖国への類い稀な“愛”そのものだったと言えた。
それは蒼い薔薇に込められた想いと共に。いずれ王国の『奇跡』と称される事だろう。
「それは黙っておいて欲しかったな、あの頃は私もまだまだ若かったんだよ。
今はもう少し……え、エディとセイディはシルヴァンの味方をするのかい? 全く、ご覧の通りさ」
2児の母、侯爵領領主、そして愛する者の妻でもあったシルヴィアは。
『王国』に多くの貢献を果たしながらもかつて“麗人”と呼ばれた時代と変わらず。そう涼やかに微笑んだ。
“卒業しリブラネスタに戻った後、郊外に一軒の家を買ったんだ。
ここからが本当の夢の始まり。かつて自分の様な孤児達の為の……新たな『家』”
彼は、厳密にはヒトではないのだと言う。『語り部』レピド・クロサイトは淡々とそう告げた。
同じ時代を生きた冒険者の幾人かが引退を表明する頃合いになろうとも。彼は変わらない。
ヒトより生まれ、ヒトで無くなった彼ら。造人の事を知る者はこれからどんどん少なくなる。
すっかり老いた猫を掌で撫でながら。けれどだからこそ、レピドはかくの如く語った。
「俺達は生き返って、生まれ直した様な物だ。きっと、それには意味が有るのだと思う。
例えばそれは、この世界に俺達がいた事を残す事なのかもしれないと。最近はそう考えるんだ」
きっと、彼が愛情を以て育んだ孤児らは例え彼がその命を散らそうとも長く語り継いで行く事だろう。
ヒトとは違う。ヒトの我欲で造られた。けれど誰よりもヒトらしく、生きて死んだ彼の事を。
■
“ブレイブファング傭兵団の活躍を聞きてぇって?
よっしゃ! そんじゃ、俺達が大陸最強の傭兵団と謳われるまでの活躍聞かせてやろうじゃねぇか!”
ハヤト=ガラン=ヴォルファングを名乗るその赤狼じみた亜人は酒杯を掲げながらかく語った。
帝都崩壊より前皇帝ヨゼフを討ち果たし。その後も拡大を続ける傭兵団ブレイブファング。
彼の戦いの歴史、その最中に敢然と輝く一幕を。それは彼がその背を追い続けた、白の星との決着である。
「漸く見つけたぜ――――『雷刃』よ」
「……我を追い続けていた、勇牙の小僧とはうぬであったか」
『雷刃』グランバルドとは神話である。傭兵として長く語り継がれた不敗と言う偶像。
その素性を深く知る者は居ないが、その結末だけははっきりとしている。その行方を知る者は居ないと。
まさしく雷そのものの一閃は、彼のガランの名を継ぐ亜人の英雄たるハヤトの神速をも捉えんとした。
だが、十合、二十合、三十合にも至る斬り合いは、究極互いの身命の如何に尽きるが遅いかを競う泥仕合へと至り。
最後に拳を突き上げた男こそは、大陸最強を謳う勇牙の傭兵団。その団長たる亜人であった。
「お前の超えられなかった壁を超えて見せたぜ――――! 悔しがりながら待ってろよ……!!」
――――その咆哮は、『帝国』の寒空の下高らかに響いたと言う。
"医療とは、ヒトがその手で可能性を引き上げていくもの。
である以上、例えどれほど理不尽でも。ヒトのまま階段を登っていかねばな"
当時主流とは言い難かった医療の最先端を走る男。フェイサル・セイフはそう前於いてから語りだした。
時代の節目。ヒトとそれ以外との戦いが終わろうと、ヒトは決して戦いからは逃れられない。
それは病や怪我が齎す理不尽な死や苦しみとの戦いであり。それを顧みない為政者や支配者との戦いである。
フェイサルはその手段に人を癒す事を選び、ただ地道に“魔法”ならざる医療の可能性を追求し続けた。
「ですが先生。医療ではどうしようが救えない者。手遅れになる者が居ます。これを追求する道は正しいのでしょうか」
「世界の多くは白黒で分けられぬ濃淡のある灰色で出来ている。故に、正しさとは一つでなくて良い」
悩むこともまた戦いであり、結果治癒魔法の方が医療より優れている、と言う物の見方も決して間違いではない。
それでも。医療でなければ救えない病理があるからこそ、この道を追求する事にもやはり意味があるのだと。
彼の教導は多くの施療院に圧されがちな医学関係者達にとっての支えとなり、後に『地方医療の父』と呼ばれる。
けれど彼はその最期を惜しまれ逝く間際ですら断じて、自らを“医師”と呼ぶことだけは赦さなかったという。
“私には記憶が御座いませんでした。私が今ここにいるのは、大切な人たちの優しさのお陰です。
私が彼らに救われた分。彼らの様に私もまた、人に優しく強く在りたいと。そう思い願っております”
『最後の巫女』と呼ばれた森人が居る。過去を喪い、故郷を失い、方々を彷徨った彼女。
ネーヴェ・グラヌローザを名乗るその森人は『王国』に在りながら、今はなき世界樹へ祈りを捧げ続けた。
「何もかも失い、ですが心細くはありませんでした。縁があればいつかきっと記憶の糸が繋がると信じておりました」
けれど運命は残酷だった。彼女の手元に残された物は失われた物よりもずっと少なく。
悲しみに暮れる彼女を支えたのは、失くしてから得た。その新たな縁であり、絆だった。
「私の周りには大切な友人と仲間がいて、何度その優しさに救われたか分かりません」
……ね、と。共にやって来た黒猫に微笑み掛ける彼女の姿は慈愛に満ちて。
それが失った事で育まれたが故の強さだなのだろうと分かった。ネーヴェは日々絶えぬ祈りを捧げながら。
一途に信じ続けたと言う。誰かを救うのは人と人とを繋ぐ糸、其処に込められた優しさと強さである事を。
■
“俺かあ? 別に。あれから特に何かが大きく変わったわけじゃない。
ゴールディで面白おかしく暮らしながら、たまに面白そうなギルドの依頼を受けてるぜ”
“剣を持てなければ生きていけないと思っていたんだ。
持てなくなった時点で終わりだと。だけどきっと――――いつかはそうじゃない世界になる”
『知の伝道者』として知られるヨル・スレイマンと『何でも請負屋』と名高いナハシュ。
この両名に交流が有った事は、ゴールディでは広く知られる事実である。彼らに育てられた孤児らは語る。
「ナハシュは商売は上手いけどすぐふらふら何処かへ行っちゃう、ってヨルおじちゃんは良ーくぼやいてた」
「ヨルはなんか色々忙しくしてるけど、世界は最初から面白えんだってナハシュ兄ちゃんは笑ってたよ」
終わったと思った生の最後に、空から星が落ちて来てしまったから。
退屈を感じる暇すら無くしてしまったよ。いや、楽しい冒険だった――――ヨルは伝道の旅中そう語った。
「そのうち遊び飽きたらアッチ側に行こうと思ってんだけどな」
「それは困るな。せめて今の内にナハシュが退屈しない世界にはしたいとは思っているのに」
「まあだいぶ先の話だ、何より――――お前が生きてる間は退屈しねえよ。テールスープも美味いしな―」
2人の付き合いは、いずれヨルが没するその時まで続くことだろう。
“私も我々の記録しているが、記録は多くある方がいいのだ。例えそれが荒唐無稽であれ――――”
『探求者』“ストレガ”の著書と言えば、近年の歴史学者にとっては非常に価値ある一冊として知られている。
無数の写本が作られたその原本はゴールディに根を張る古い組織の重鎮らが秘匿していると言うが。
『ストレガの写本』そのものは大陸の好事家が必ず一度は手にすると言われ、多く決まりの文句より始まる。
ストレガ・L・リベルガストラが記す。知識を深め、研鑽し、諸国へ赴き見聞を広め、その叡智を記録せよ。
「そうそう、これを記述してほしい。ストレガ主導で新しいゴブリン史を記録しているのだ。
かの者が神になり、その後様々な出来事がありかの者の娘と冒険者達が『始まりの地』を発見すると言う史実を」
『帰還』と題されたその書は今代の“ストレガ”が愛蔵し、そして今日も何処かで語り継がれている事だろう。
“ある女の子がいた。見放され。見落とされ。見捨てられ。都度手を伸ばした子が。私は間に合わなかった。
けれど生者は死したとき、澱へと還り世界に満ちるという。誰もが澱より生まれ、世界に痕跡を刻む様に”
Alexandra・Hexe・Claudia。その名はとある貴族家の騎士の一人として残されている。
彼女は時に忙しい職務の合間を縫い、様々な街を旅して見分を広めた。『結鎖の騎士』と人は呼ぶ。
「巡る星の下、私はその潮流に触れて……漸く女の子と出会えた。以来、彼女は傍にいる」
彼女は戦いによって爪弾きにされた多くの孤児達の為に尽力し、その幾らかを救った。
そうすると、星の海が喜ぶ夢を見るのだと。かつての彼女を知る物が驚くほど、精力的に諸国を巡った。
不器用な彼女の背から学んだ子供達は、後に『王国』内の様々な家の文官や学者として活躍する事となる。
その成果は後に高く評価されているが、恐らく。彼女が求めていた物は評価とは異なる何かだったのだろう。
■
シャルガネ出身の庶民が、病弱な妹の為に冒険者になり、武勲を上げ、知識を求め『学園』に入り。
恋をして、伯爵家に養子に入り、侯爵家の姫君と結ばれる。“紫水恋歌”と呼ばれる戯曲である。
『王都』音楽会の奇才。シセラ・ユーディンが発表したこの舞台は貴族令嬢らの熱烈な支持を受け。
王都劇場で七次公演まで開かれる局地流行を引き起こした。これが事実であればどうか。
“戯曲の方が有名になり過ぎてこうして語るのも何なんだけど……
皆が大切なものを手放さずに生きられるよう、その標を残せたら。と思い直す事にしたんだ”
そう告げた彼、海神 江流の傍らには、『紫水晶』の至宝と謳われる姫君。クリスタリアの姿が在った。
領主として領内外を問わず“王国文官教育の大改革”を掲げる様々な施策を打ちながら。
けれど、2人は近隣領にまで貴族にしては珍しいと言う程に、仲睦まじい夫婦としても知られている。
『紫水の双晶』と言えば、王国において決して離れる事の無い運命の2人、を指す慣用句として知られる程に。
「まだまだ伝え足りないこと、知って行きたいことが沢山有るんだ。勿論、彼女と一緒に」
「“待たせてしまったね。クリスタリア。俺が出来る準備は全部やりきったつもりだ”――――と言って。
江流様が迎えに来てくれた時の気持ちを、忘れたことは一度たりとも有りません」
そう言い伴侶の腕を抱く『紫水侯』夫妻は戯曲の後押しなど無くとも、世界一幸せであるかの様に見えた。
“私思うの。人を好きになるのに、その人がその人である以上の理由が必要かしら? って”
“ずっと傍に居ますよ。これから先もオルファと共に……と、誓いましたから”
歴代の半分と言う、その在位の短さで知られる匠王『神匠』ヴィルヘルミナ。
彼女の打った武具はその高い実用性で知られるが、その最も多く打った物が装飾品だと知る者は少ない。
白銀を流し込んだ薔薇の意匠はある一人の姫君に贈る為に造られた、その試作品であるとされ。
彼女が一途に想った相手もまた、その手腕で以て『ドワーフ王国』、『王国』間の国交強化に務めたと言う。
「余り言葉は上手く無いのですが、彼女を愛していると言う啖呵くらいは切れますよ?」
「ヴィルが私を守ろうとしてくれる分、私はヴィルを守るの。愛ってきっとそういう物よね」
2人が成し遂げた結果を指し、天賦の才が齎した偉業だと評する者も居るだろうがそれは正しくない。
彼女らは互いの愛情を誰恥じる所無く表するため力を尽くした。ただ、それだけの事だったのだろう。
若き『神徒長』ロゼットは、歴代最年少でシグモルを支える守護者、神徒の長を拝命した女傑である。
そんな彼女が優れた冒険者としても名が知られているのは、その経歴に依る物だろう。
“象徴であった火神様が眠りにつかれたことで、神殿間の派閥争いや辺獄の魔獣の被害も少なく無いんですよ”
忙しくなる一方だと、肩を落とす彼女にもささやかながら休みはある。
例えばこの日が正にその一つであり、『王都』グランスパーダの冒険者ギルドで待つロゼットの元に。
やって来たのは“如何にも”な古木の杖に背負い鞄。白い魔術師装に身を包んだ妙齢の令嬢。
慣れない店内で一瞬視線を泳がせた彼女は。その親友の姿を認めると駆け寄り、条件反射の様に抱き着いた。
「ロゼット、元気にしてた!? 私今日のことすごく楽しみにしてたんだから! 昨日は眠れなかったくらい……!」
「はいはい、オーロラの話は旅先で幾らでも聞くから。早速出ましょ、久しぶりの『冒険』なんだし」
手を合わせ喜び合う2人は、もう長い親友同士。なんと王都から片道一週間。揃って極北に向かうのだとか。
何故そんな観光に向かない土地にと問うと。彼女らは互いに目配せしあい、声を揃えてこう応じたと言う。
“ご存知ですか? 極北峠の潸涙紗――――を”、と。
■
『王国』北方には英雄の物語が数多く眠る。彼の歴史に名高い“北の英雄”も去る事ながら。
例えばそう、精強と知られた『北方辺境騎士団』。その団史に名を刻んだ者たちなどは典型と言えよう。
“勇敢なる白き戦乙女――――アストリッドさんの英雄譚をお話しても宜しいかしら?”
『蒼騎士』ザザ=ステルヴィナ、或いは『蒼賢』のステルヴィナ、『北境の守護者』と知られる賢人である。
同時代に於ける他2人の北方辺境騎士と並び、多くの森人が北境を訪れる理由とされているが。
その名は彼女が語り続けたもう一人の英雄。『白騎士』アストリッドの名と共に謳われる事も少なく無い。
彼の蒼賢の生命を救い、使命を繋ぎ、そして世界を救ったと言う白の女双剣士をザザはかく語る。
「最期の時、私が果たそうとした役割と責任を彼女は全部抱えて、攫って行った」
「それが正しかったのか、間違っていたのか、私には分からない。けれど――――」
英雄は英雄を知ると言う。自らの後を託した賢人は後の北の大商都の発展に大きく寄与したに違いない。
そしてその主が没した後も、後継者の育成と愛する英雄の墓標を護る為、彼は尽力し続けるのだろう。
“難しい事はしていません。任された仕事を任された以上に成す。それが信頼に応えると言う事でしょう”
『氷吏』リコリス・アデュラリア。北方辺境の外交官として知られる森人の魔法使いだが。
彼女の経歴は冒険者より遥かに長い『王国』と『帝国』の外交面での貢献で知られる部分が多い。
帝都復興当初から国境を挟んだ国外商法の調整に携わり、外交知識と法知識を積み上げた結果文官長を継承。
その冷徹とも言える合理的判断で以て、『北境』で以後も度々発生した外交問題の収拾に広く貢献した。
「当面はあの痴れ者を追い落とすのが目標です。
このまま放置しておいても、どうせ碌な事にならないのは目に見えていますので」
後に功績と悪名が拮抗する事になる『隠者』の危険性を、早くから公言していた事からもその慧眼が見て取れるが。
一方で北方辺境伯の子供達を大層可愛がっていた、と言う子供好きな側面が語られる事はあまりない。
“ワタシはね、ワタシがしたい。すべきだと思ったことをやり通しただけ”
ザザやリコリスが旅する森人の憧れだとすれば、『双星』トゥーリは半獣人の救世主だと言える。
『王国』に深く根付く同族差別に敢然と立ち向かい、私財を投じての私塾開校や人権推進に寄与。
その活動は北境辺境を中心に一定の成果を上げ、半獣人移民の就業環境の向上へと繋がって行く。
また、私人としては伴侶である『双星』ハリス・アル・ターミルの開墾団と共に各地の農地環境改革を手伝った。
“征竜様より託された世界に、国境は有りません。大地は続いているのですから”
作物が育ち難いとされる『帝国』北方や極北でも根付く“ターミル流農作物”は各国の食糧供給改善を助け。
特に収穫量が多く汎用性の高い“ターミル芋”は多くの飢餓を救う程の生産高を生みだした。
「冒険者になって思い知ったけれど、知る事は大切だよ。学ばないと何も変えられない」
「そうですね。品種改良も同じ、作物から学び大地を知る。先ずはそれからです」
武勇を誇らず、人を生かす事をこそ誇った2人の姿は各国で見られ、感謝と共に語られる。
例え野盗に襲われようと更生を願い、いずれ収穫祭で肩を組んで歌うのだと、ハリスは笑ってそう言った。
■
“これほど多くの授恵者が溢れ、人々が世界を変える力を有したことは他にない。
私はこう思ったの。これはきっと、名高き英雄の時代の最後の輝きだ――――と”
かつて「大平原に門番あり」と謳われた帝国貴族の名門ネーベルベルクの末。
『焔の建国姫』と呼ばれたアウレーリア・フォン・ネーベルベルクは、戦後家門の再興を成し遂げた。
しかし、彼女の功罪の多くは戦前の悪戦苦闘では無くその後の活動によって語られる。
彼女はただ日々を営む領民を愛し、名も無き人々を愛し、彼らが鳥籠から飛び立って行ける未来を愛した。
王国北境、中央、南方、同盟と、機を合わせ着手に及んだ教育革命は文字通り放たれた火種に等しく。
或いはそれが後に彼ら、彼女らの命脈である『貴族制』へ燃え広がる事をすら理解していた様にも思える。
「だから翼を織っただけ。美しい故郷がもう二度と焼かれぬよう。
或いはこの"神の恩寵”が失せても――――大切な領民達が自らを選び歩めるように」
後に『王国』と『同盟』の支援を受け独立したその都市国家は、小国ながら永久中立を掲げ今も山並に響く。
嗚呼、森と霧と高原の国、ネーベルベルクよ――――と。
帝国貴族がそうである様に、王国貴族社会は『集権派』の台頭によって大きな転換を余儀なくされる。
『貴族』とされて来た伝統ある家が少しずつ。けれど確かに減り行き消えて行く時代の転換期。
其処に在って、自家の生き残りを掛けて戦った例の一つに『迷迭香の比翼』が挙げられる。
両名は王国の内憂と外憂。それぞれに異なる場所を戦場としながら同国の発展に強くその痕跡を残した。
“成り上がり者の成功譚、恋愛譚としては面白い――――くらいにしか思っていなかったのだけれど”
“そうだな、僕が語られるなら彼の隣がいい。そしてジュストは、もう少し自分の評価を見直した方が良い”
『翡翠の天秤』ジュスト・V・ケレスと『オーブの赤薔薇』ローザリカ・L・ディオール。
王室の財務管理に携わると共に、汚職貴族の抽出とその排除に全力を尽くし悪法と戦った法務貴族。
一度は本邸に火を点けられるほど多くの貴族から恨みを買った物の、妻の商才と莫大な資産。
『王党派』、『貴族派』にそれぞれ擁する強力な支援者の力も有り、その後叙勲され財務官長に任じられる。
裏では財界に顔の利くディオール伯爵家の根回しも有ったと伝えられるが。
その事実を証明する様な証拠は見つかっておらず。真実は藪の中であると言う他は無い。
「そうだね。守る者は増える一方だけれど、最愛の薔薇が望むならもう少し高みを目指しても良い」
「僕は最愛の小鳥を労わり癒せれば満足だけれど……うん。宰相補佐くらいでないと役不足じゃないかな?」
そう言って胸を張った赤薔薇が意匠を手掛けた既成礼服は、今日も尚若い官僚達に広く人気を博し。
近年少しずつ増え始めた庶民出身の高位文官らが国家内政へと進出するのを長く、大きく助けている。
そんな中、“至貴く穢れ無き”とされた歴史ある名家『白銀』。
同家へ嫁いだ『銀月妃』レティシア・レインフィールの名は主に“他の英雄の記録”に垣間見える。
城塞都市の危機を救ったという『北剣妃』イヴェール・アーチボルト。
或いは王都内乱鎮圧に貢献したという『銀薔薇姫』オルファレナ・クラティアス・バデーニ。
けれど彼女は英雄としてではなく、あくまで唯一人の妻であり女性としての幸せを望んだと言う。
“母と過ごした時が短い私が母親らしく出来るか不安ですが……二人で幸福な家族の形を作りたいです”
『王国』の転換期は『白銀』にとっても激動の時代だった。病弱が故、夭折した義弟の後。
未だ幼い先代の子が成人するまでとして『白銀侯』を継いだ夫を支え、男児2人、女児1人を育てる。
「妻には苦労ばかり掛けている自覚が有ります。その分を愛情で返していられれば良いのですが」
「諦めなければ幸せにはなれます。彼が傍に居てくれるのなら……私は何処でも生きていけます」
決して穏やかで平和な日々とは言い難かったろう。卓越した治療師である彼女の戦場は幾らも有った。
しかしそんな中であっても彼女は最愛の家族を護り抜き、『白銀』の名を正しく返す形で次代へと遺した。
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そうして――――同じ『王国』でも彼らの名は一つの同一の記号。『竜』の一言と共に語られる。
“以前のわたしは、なんの変哲もない普通の女の子でした”
『王国』南方の『湖都』には2人の騎士の物語がある。1つは『金色の騎士』1つは『悪の銀髪鬼』。
子供達の憧れであり、英雄の名を欲しいままにした少女に対し、銀髪の鬼は畏れと共に謳われる。
“その鬼は、生きる為に悪い事も沢山してきた。救われては道理が合わない”
悪い事をすると、銀髪鬼がやって来て酷い目に合う。弱き者を虐げる者は、いずれ金色の騎士に裁かれる。
悪戯っ子は銀色髪の鬼を心の何処かで恐れ、勇敢な少女らは世界に正義の騎士が在る事を願い、焦がれた。
“こんじきのきしとぎんいろのおに”
それは寓話であり、寝物語の一節であり、王国の一部でのみ通じる定番絵本でしかないが。
彼女ら、彼らは確かに存在し。互いの生の果てまでも、抱いた理想と築くべき未来へ殉じたのだと言う。
「ただわたしにできることを――そう思って、いろいろなものをこぼしながら前に進んできました。
そんな積み重ねの上に『今』がある。この先の未来も、それは同じです」
「騎士は鬼よりもずっと強く、勇敢だった。けれど彼女はそんな悪い鬼と一緒に未来を選びたいと。
そう言ってくれたのだ。改心する理由に、これ以上の物も無いだろう」
ゲルダ・クライン、そしてナハティガル=ラー。功績の多様さに反して2人の名が語られる事は多くない。
彼女らは自らを寓話として残す事を選んだ。それが誰かにとって、歩くための道標となる事を願って。
“息抜きに、と連れて来られただけだ。此処で語るべき事は何も無い”
“そんな事言わないで下さい。もう、アルベイルさんだって未来を良くしたいと思っているんですから”
『白竜妃』コルネリウス・アーラは『王国』史に於いて高位貴族に嫁いだ数少ない森人の一人である。
当初、彼女の結婚には方々から根強い抵抗が有った。当然だろう、『王国』は唯人の国なのだから。
けれど『竜』が尽力し、文官育成機関として知られた『紫政館』の高弟らがこれに猛反発を示した。
誰もが幸福を、未来を掴もうとして良い。その行使は種族を問わず人が生きながら有する権利であると。
「歩みを止めずに同じ場所を目指した。その支えになれたのなら、私は世界の誰よりも幸せです」
「……人を大切に想うことに種族など何の垣根で有るものか。他人の価値は己が眼で見極めよ」
彼の一件は歴史的事件として、王家に叛意を抱く貴族家蜂起の切っ掛けの一つとされる。
一方人権論者はかく評する。その婚姻はより良い世界を願った者達の願い。その結実であったと。
――――一つの時代が有った。一つの戦いが有った。一つの生と死があった。
それらの全てが記録される物ではなく。事実は決して真実ではなく。逆もまた然りだと言えたろう。
語られることが史実になるとは限らず、信の於ける物など何一つ無い。けれど全てが出鱈目になるとも限らない。
その真偽を見極められる者たちもいずれ去り、次の未来。次の歴史が折り重なって続いていくのだろう。
神代の彼方より。英雄の刻んだ軌跡は隠され、時に変遷し、思いも寄らない脚色を遂げ、そうして続いた先がある。
語り継いで行けたら良い、本当の形など知れずとも。誰かが願い、想いを託した場所で今を生きる者として。
それはむかしむかしより始められ、めでたしめでたしで終わる様な、ありふれた。
けれどどれ一つとっても他で代わりは効かない、誰かが刻んだたった一つの叙事詩。
編纂された一冊の本はぺらぺらと捲れ――――そうしてぱたん、と表紙を閉じる。
次の読み手が訪れる、ただその時を待ちながら。
マスターコメント
皆様お疲れさまでした。弓月 蒼と申します。
この度はご参加ありがとうございました。この様な結末に至りましたが如何でしたでしょうか。
結果は『大成功』となります。これが『大成功』でないなら何を『大成功』と呼べましょう。
本作で綴られた情報はその全てが“信用出来ない語り部“より語られたもの。
あくまで冒険者の語りを元に、脚色込みで執筆されたばかりの物語であり、過去のことは真偽不明。
未来事象についても各人がこの後本当にその通りの人生を歩んだか、実現できる内容かは一切不問。
これら叙事詩が真実この先語り継がれていくかは不透明、と言った”現在の著作物”扱いとなります。
以上前提の上で。今回は”偶像としての英雄”達へ、それに相応しい称号をお贈りさせて頂きました。
最後までお付き合い頂けた感謝を込めての物として、どうぞお受け取り下さい。
これにて、当方が運営する幻想の箱庭に於けるエピソードは全て結末を迎えた形となりました。
名残惜しい気持ちは勿論絶えませんが、今は万感の想いを込めこの一言で締め括らせて下さい。
これまでありがとうございました。もしもご縁がありましたら、またお会い致しましょう。
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2024年04月24日 10時02分32秒 公開
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