【幻征】冒険者の祭典【闇刄】
崎田航輝
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シナリオID:597
オープニング
「市長にも、困ったものだな……」
同盟の都市クウェルツ。
その商館の一室で、商人ヨーゼフは軽く息をついて便箋を見直す。
ヨーゼフを呼び出す旨の書かれたその手紙には――「今こそ街に冒険者を招聘する時!」という熱い文章が書かれていた。
幻郷への調査が終わって暫く。
クウェルツの冒険物語熱、とでも言うものは未だ収まっていない。
冒険者達が経験した幻郷での冒険は日々弁士によって語られ、冒険物語やその二次創作までもが作られ、盛り上がりは収まる気配がない。
実際、最近までクウェルツは同盟都市としては目立たず、近隣に比べても特色があるとは言えなかった。
そこに冒険譚という現実を舞台にしたドラマが生まれてしまったので、人々の興味が一気に集中しているのだ。
そこに目をつけた市長が、この機を逃すまいとして……冒険者を呼んでさらなる盛り上がりを期待しよう、というのは無理からぬ事かもしれなかった。
実際、市長に呼ばれて行ってみると、ヨーゼフにその陣頭指揮を任すという用件であった。
冒険譚流行の発起人のような立場になってしまったとも言えるので、それは自然な事だったが……ヨーゼフは一介の商人だ。
「どうしたものか……」
冒険者には深く感謝していて、何かしらの形でまた会いたい気持ちはある。
ただ、街を盛り上げつつ……と言われても中々に考えがつかなかった。
「……そう言えば」
と、思いついて自宅へ。
大事な書類などをしまってある中から――とある書簡を見つける。
そこに書かれているのは『祭事、イベントなどを開催予定なら是非ご相談を』という内容。前々から、幻郷の冒険に支援の名乗りを上げていた都市からのものだった。
その時には都市として断りを入れる形となったが……この手紙はつい最近来た、ヨーゼフ個人宛てのもの。
よく読むと、自分達も冒険者の力で街の平和に大きな恩恵を受けたと書いてある。こちらが冒険物語で盛り上がっている事を知って、その一助となりたいという文言だ。
勿論、都市としての思惑はあろう。けれどそれは主導権争いの策略というよりは――冒険者を介して繋がる同志に宛てた言葉に思えた。
元々、ヨーゼフはその都市に悪い印象は抱いていない。
「……都市ランツォール。その市長ベルナール氏、か」
頼ってみてもいいかもしれないと、ヨーゼフは決心した。
●祭りの街にて
「ベルナール殿。本日も異常なし、で御座る!」
天上の板を外して市長の私室に下りてきたシノビ――龍尾・左衛門は、都市周りの安全を確認してきた事を伝えた。
市長ベルナールは手紙を読みながら、視線を向ける。
「ああ、ありがとう」
「その手紙は、如何様なもので御座るか?」
さてはどこかの刺客から、と訝しむ左衛門だが……ベルナールは首を振る。
「クウェルツからだ。最近、目覚ましい成果をあげているらしい商人がいると、噂になっていただろう。彼に手紙を宛てていたのだが――」
「返信があったので御座るか。確かヨーゼフ氏で御座ったか」
「うむ。私達に協力を仰いでくれるらしい」
ベルナールは上機嫌だ。
ランツォールの力を借りるという事は、行う事は決まっているからだ。
「イベントで御座るな!」
「ああ。クウェルツは祭事の経験が乏しい。だが街の人々の熱望に応える為冒険者を呼んで何かをしたい……そこで我々だ」
既にクウェルツの市長にも話は通っているらしい。
「向こうのお祭りを手伝うで御座るか?」
「勿論、こちらもタダ働きはしない。向こうも借りは作りたくないだろう。ならば――共に盛り上がればいいのだ」
その上で、冒険者にとっても憩いとなるようなものを提供できれば、皆で楽しめるだろう、と。
●祭典
楽しげな音楽が響き、人々が笑顔で行き交う。
道々には屋台が軒を連ね、良い香りの湯気が漂っている。
隣り合う都市であるクウェルツとランツォール。今、その境目はなくなり――二つの街にまたがった祭りが開かれようとしていた。
主にランツォール側には、多種の食事の店、そして音楽を楽しめる舞台が並んでいる。
そしてクウェルツ側には、冒険者に出てもらうイベントの準備がされており――こちらは街の人々が心待ちにしている状態。
それらがグラデーションを描くように配置されていた。
「これで冒険者の方々にも、盛り上げて貰うばかりでなく……寛いで貰う事も出来る筈です」
「本当に、ありがとうございました」
街を見回すベルナールに、ヨーゼフは言って頭を下げる。
ベルナールはいいえと首を振った。
「今回は、冒険者の方々がいなければ始まらない。私はただ、その準備の手助けをしただけですよ」
冒険者には既に招聘の知らせを送ってある。
「後は主役を待つばかり……我々は、見回りに向かうとしましょうか」
「ええ」
二人は歩み出す。
冒険者の祭典――それを期待する人々の熱は高まるばかりだった。
解説
マスターより
リプレイ
賑わいの中で笑顔が行き交う。
始まったばかりの祭り――その一角にヨル・スレイマンもふらりとやってきた。
「へえ、いろんなものがあるんだな」
露店には匂いも彩りも様々な品が売られている。
その一軒に立ち寄ると――店主はおっと気づいた。
「冒険者さんかい?」
「まあね。何か食べていこうと思っているんだけど、名物とかある? それとも何か変わったものとか」
「それならウチのを食っていってくれよ!」
店主が出したのは“陸海空串”。牛、魚、鶏を一本の串揚げしたものだ。
ならばとヨルは購入。骨を被ったまま慣れたように食べると……中々に美味。
更にその店主に話を聞いて、別の店で米菓も入手。米を蒸して焙煎したもので……さくさくした歯応えと甘みが快かった。
「美味しいね。さて――」
お腹も膨れると展示場へ。
広いスペースに飾られた多様な植物を眺める。
「幻郷か、俺も行ってみたいな」
地図も見ていると、冒険の空気を味わえるようだ。発見物はどれも色鮮やかで、見るだけでも興味を惹かれる。
文字は読めないので、解説が気になればその場にいたヨーゼフに積極的に聞きながら――ヨルは暫し非日常を味わうように見て回るのだった。
お祭り模様の街を、サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブは見回していた。
「にゃ! 久々のランツォール!」
「素敵な催しですね……!」
コルネリウス・アーラも声に花咲かせ、視線を巡らす。
と、サフィラのお腹がぐるきゅーと鳴った。
「うにゃ……お腹空いた……」
「何か食べていきましょうか?」
「にゃ!」
ぱっと笑んだサフィラは勿論賛成。店々の並ぶ通りへ。
「何があるんだろー?」
きょろきょろすると――むむっと、漂う匂いに反応。
「何かいい匂い……にゃ! 串焼きの屋台だっ!」
視線の先のそこへ、コルネリウスを連れてダッシュした。早速二人で牛肉の串に、卵や野菜の串も頼み……はむはむ、しゃくしゃくと味わう。
「にゃ! おいしー!」
「ええ、本当に」
コルネリウスも頷いていると……サフィラがはっとする。
「およ? あっちにさえもんがいる! おーい!」
「おや、これはサフィラ殿。お久しぶりでござる」
ニン、と印を組む左衛門。
サフィラが紹介すると、コルネリウスも挨拶して……暫し会話を楽しんだ。
それから二人は展示場へ。
「わ……すごいですね」
不思議な植物園のような景色に、コルネリウスは感嘆を零す。
サフィラも目を奪われていた。
「はわ、キレイな鉱物がいっぱい……宙に浮かぶ花も不思議できれい…」
「ええ――」
燦めく色彩は美しく。花は浮かぶもの、水底で咲くもの、水上のものと多彩だ。
「魔法みたいです……」
「はにゃ、試食もできるのっ?」
と、サフィラは緑玉のような果物を一つ実食。硬い皮の内から溢れる果汁を楽しんだ。
「初めて食べるものはドキドキしますね」
コルネリウスもそれを食べて、意外な美味に驚きつつ。綿の花の可食部の、瑞々しい野菜のような味も楽しんだ。
聞けば栽培も多くが成功しているという。
「幻郷の植物はどれも生命力と適応力が強いのですね――」
「コルネは何がお気に入りかなっ?」
「どれも素敵ですけれど。動物はやはり、好きです」
コルネリウスは飼育場で飼われている、ひよこのような鳥を眺めた。
(花鳥園の鳥さん達とはまた、違った魅力があって――)
ふわふわの生物が動く様子は、飽きずにずうっと眺めていられる。
「いつか、自分の足でも幻郷を訪れてみたいですね――」
この所は慌ただしく過ごしていた。だから今日は不思議な世界の中で、ゆっくりとした気分に浸っていた。
「少し懐かしい気持ちね」
カメリア・ローレンスは展示場で植物を眺めていく。
調査の際に直接見て、触れた物は多いけれど……あの時は仕事で余裕もなかったから。
「こうしてゆっくり見るとまた楽しいわ」
「そうですね! 特にふわふわ生物さん達!」
と、飼育場へ向かうのがエルナ・クルプファルツだ。
抱っこ可能なので早速鳥と狐をもふもふ。鳥達もエルナへ鳴いて、喜びを表していた。
「ふふ、変わらずのもふもふ具合! 元気元気ですね!」
「……」
するとカメリアもまた興味を惹かれて。
「私も堪能させてもらおうかしら。もふもふ、……もふもふもふもふ――」
「わぁぁ、カメリアさんがもふ化してます!?」
そんな時間も過ごしつつ、色彩樹林の発見物へ。
「この植物! 冒険の時に食べましたよね! あれ? でも味を思い出せないような……」
茸、毒々しい茎、カラフル炒めもの……カメリアの方はちょっと脳裏に過ぎらせた。
(あの時のアレは私は手を付けていなかったけれども……)
どうやら予想以上に強烈なものだったようだ。
「余り思い出さない方が良さそうね……。あ、ヨーゼフさんよ」
ヨーゼフはすぐに気づいて頭を下げた。
「お久しぶりです」
二人も挨拶を交わし……彼の父の墓へ。
静かな霊園にあるそこへ、エルナは改めて挨拶。祈りを捧げ、最果ての景色と幻獣の巣について話して聞かせてあげた。
「父は喜んでいると思います」
ヨーゼフはそう深い感謝を述べていた。
カメリアも祈っていると、ヨーゼフは会館で冒険について語ってくれませんか、と請うた。
「きっと、皆聞きたがっているので」
二人は勿論、と快諾する。
すると会館には、多くの人々が集まっていた。探索者である二人に、割れんばかりの歓迎の声が注がれる。
エルナは食べ物で生死の境を彷徨った話を織り交ぜ、皆を盛り上げる。
「一部記憶が抜けていますが、あれは大変でした!」
「そうね。その先では――」
カメリアも自身が体験したもの、見てきたものをありのまま語った。
人々は熱心に聴いた。
大変な事もあった、けれどそれに勝る喜びがあった――カメリアの伝えたいその思いが、多くの人に伝わったに違いないから。
「冒険者の祭典かぁ……また大ごとだな」
アスティン・ヴェルラインは少し面白そうに苦笑しながら街を歩む。
実際、大賑わいで展示場も盛況。アスティンもそこで、自身が参加しなかった際の発見物を眺めた。
「記録も詳細だな――」
長い間未知だったと思えばやはり興味深い。
それから自身の参加時の発見物も、鼬のディディと共に見てみる。
「こうしてみるといろいろ持ち帰ったもんだな……俺の行った時もそれ以前でも」
鮮やかな植物、美味な植物。冒険の記憶が蘇る。
と、そこに子供達の声。
アスティンが探索者と知って、英雄を見つけたような盛り上がりだ。
「鼬のディディも! 本物!?」
「勿論」
応えたアスティンは過酷な環境や景色、色々な事を語ってあげる。
「……まぁ、俺、料理担当がメインだったけどね」
言いつつ、味見出来る植物を食べさせてあげたりして。
それから外に出ると、軽く伸びをして。
「食べ歩き、しようかな」
ふらりと露店へと歩んでいった。
「へェ、こいつは」
ドーマ・アザーリは展示場を見て回る。
「冒険者たちが大層頑張ってたとは聞いたが――」
予想以上じゃねェか、と。
ドーマ自身は今回の諸々には噛んでいないと言っていい。けれど冒険者達の努力と成果には、飾り気のない敬意を抱いていた。
そしてその中でも自身の糧になるものがないか、と。
「エーテルを通わせたり、魔法の媒体に――なんて部分はどうなってる?」
「その辺りの実験は、あまりしていませんでしたね」
応えたヨーゼフは、良い機会とドーマを奥へ案内。実験場となっている所で鉱石や植物を一部試供した。
ドーマは鉱石に魔力を巡らせ、植物も材料にしてみる。
「エーテルで光る鉱石があるのは新発見でした。それに杖などに使える植物もありそうです」
「こっちも良い経験になったぜ」
それぞれに違う魔法の効き方、その感覚を確かめられただけでもまた一つの収穫、と。ドーマは満足の心持ちで、その感触を記憶に刻んでいた。
「――随分と賑やかだ」
Svart・Nattは展示場を訪れていた。
並べられているのは鮮やかで、時に毒々しい色合いの植物。Svartはその一つ一つを眺める。
特に目に留まるのは薬草や毒草だ。
自身が加工する訳ではないけれど、“生存権を得る為”――自身に根付くその心から、自然と足が止まっていた。
「これはどんなものだい?」
「気付けの薬になりそうです。ごく少量で滋養にも」
鮮やかな草を示してヨーゼフが言うと、Svartは別のものにも目をやる。
「こちらは?」
「この茸は毒ですね。食べ過ぎると体を壊しますよ」
なるほど、と頷きつつSvartは一周巡った。
知りすぎは時に思考を凝り固めるが、無知程毒になるものはない。故にこそ、今まで得た知識もまた学び直さねばならないと思った。
最後に見たのはふわふわの鳥。
「……」
動物は飼育用のものはあまり興味はない。ただ、ひよこのような見た目に、初めての依頼で遭遇した鳥を思い浮かべているのだった。
「がはは! 流石祭じゃ、賑やかなこと賑やかなこと!」
騒々しさの中をジョン・ベアーは歩みゆく。
同道するネモも、楽しげな空気に頷いていた。
「今までに参加した中でも一際賑わっているな!」
「うむ――はぐれたら見つけるの大変そうじゃのぅ、わしの頭にでものっておくか? ネモ」
「む、余輩も踏まれるのは困るし、そうするか」
応えたネモは、もっふりとその頭へ。
そのまま二人で露店へ向かうと――ジョンは感心の面持ちだ。
「陸海空の美味いもの制覇……素晴らしい目標だな……」
そうして早速牛や魚の串焼きを買ってもぐもぐがつがつ。
「んむ、これは美味い!」
「肉を食べていくのか?」
「ぬ? いや、とりあえずは端から全部食べていくつもりじゃ」
言ったジョンは更に鶏肉と野菜を焼いた物も実食。
「やはり空の物は余り食べる機会が無い分もの珍しいのぅ――ちとこってり感は少ないが。ネモはどれが好きじゃ」
「余輩はこれだ……はむ」
と、ネモが買ったのは果実を飴に浸けたもの。とはいえ一口食べれば満足するので、後はジョンに流れていった。
そうやってネモも目についたものを頬に溜めるようにちょむちょむと食べ……一周すると、幻郷の展示場へ。
頭から下りたネモは、初めての植物を見たり触ったり、目を輝かせて見て回りつつ……動物エリアでも積極的に触れ合いに向かった。
鳥の綿毛はふわふわで……ジョンも触れてみる。
「お、おお……圧倒的もふもふ……」
と、いつの間にかネモがもふもふの景色に紛れ込んで見えない。
「む? ネモ?」
「……ぴよ」
「何処じゃ?」
「……ぴよぴよ」
何となく声は聞こえる。なのでジョンはもふもふに手を突っ込みつつ呼びかけていた。
「……おーいネモやーぃ」
「――ばーっ! 余輩は此処だぞジョン!」
「むぅ!?」
わっと飛びかかったネモに、ジョンは一瞬びくり。またネモが頭に乗ってくると――
「全くしてやられたわい」
笑みつつ、また二人で祭り巡りに戻っていくのだった。
レオネベルとアステルは展示場へ。
探検参加者でもあるレオネベルは、その成果を眺めるのも楽しみだけれど――それ以上に気になるのが。
「アステル! ひよこっぽい生き物がいるんだってよ!」
ハイテンションに瞳を輝かせ、アステルを引っ張っていた。
「そーいえばレオってかわいいもの好きだもんな! ……あっ、あれか!」
アステルが見つけたのはひよこのような鳥と、ふわふわの狐。
キューキュー鳴くそれに、レオネベルは目を奪われていた。
「すごい……ふわふわで可愛い……可愛い……」
「かわいいなー!」
アステルもそのつぶらな瞳を覗き込む。
「なんならペットに出来たら良いんだけどな」
「そうだなー、触りたい……」
と、手を伸ばそうとした所で――他の見物客から『触れたら駄目なんじゃ?』と待ったがかかった。
「え? だめ? 見る……だけ?」
レオネベルが温度が消えたような絶望顔になる。
「飼うこともできず、触れず……見るだけ……」
耳と尻尾がへちょっと下がり、顔は苦悶のしわくちゃ顔。アステルが冷や汗を掻きながら横目でそれを覗き見ていた。
「ほ、本当に触っちゃいけないのか……?」
と、そこで責任者のヨーゼフが現れ、「戯れてもいいですよ」とお言葉が下る。
「本当に!?」
ぱっと笑みを浮かべたレオネベルは……もふもふなでなで。思う存分可愛がったのだった。
「良かった……」
ほっと一息ついたアステルも適度に戯れ――その後二人で広場へ。
盛り上がる人々の前で披露するのは演舞。レオネベルが身の丈を超える大太刀を鮮やかに振るって見せると――アステルは短剣で打ち合い、剣戟。
「流石だな!」
「そっちこそ!」
熱狂の中で、アステルがエーテルの光を靡かせれば……レオネベルもにぃっと笑い、合わせて自身も力を行使。
眩くも美しい剣閃の絡み合いに――終われば拍手喝采。
大きな歓声が二人を包むのだった。
「変わったものばかりだな――」
フィーレン・ステオラーズは展示場を眺めている。
色彩も形も、芳香も……初めてのものばかり。
と、樹皮の味見コーナーを発見して驚く。
「え? これ、食べられるのか?」
「中々好評なんですよ」
主催者ヨーゼフが話しかけると、フィーレンはそうなのか……と手に取る。
「じゃあちょっとだけ。冒険者たるもの、経験は大事だからね」
そうして内側の果肉のような部分を一口。
「ん、甘い」
これが意外にぷるりとしていて、スイーツのような美味であった。
それからいくつか巡っていると――
「……ん? んんん? あのふわふわしたものは……」
綿毛の鳥と狐を見つける。
思い立って撫でてみると……キューキューと鳴いてくれる。
「可愛いでしょう?」
「ああ……はっ」
と、ヨーゼフの声にフィーレンは顔の緩みを自覚して……いやいやまさかと首を振る。
「ま、まあ、動物は嫌いじゃないからね」
照れ隠しに言いつつ……それでも暫し、もふもふと触れているのだった。
鏃のない、先端を丸くした矢を用意して――ハオルチア・プラシオライトは子供達に弓の使い方を教えていた。
「弓を持つ腕は伸ばしてね。それが支えになるから」
戸惑う者には手を添えて実践させつつ――弓の手入れの方法も伝えてゆく。
「磨いて滑らないようにしてね。弦もよく張り替えて、状態を保っておくの」
「大変なんですね……!」
「ええ。でも一流の冒険者なら武器の手入れを怠ってはいけないし――自分の武器なら大事に扱わなくちゃ」
貴方の命や大切なものを護る為の相棒なのだもの、と笑みかけて。
「さ、射ってみましょ」
そうして的当てに参加した子には、結果によらず飴をプレゼント。
「君達の中から未来の勇者様が生まれるかも。その時は……いつか一緒に冒険したいわね」
そんな言葉を伝え――広場を辞したハオルチアは、幻郷の展示場へ。
色彩、形。
長寿の自分でも見た事のないものが沢山あって。
「時間はいくらあっても足りないわね」
世界には未知と驚きと発見に満ちている。そんな実感を改めて得ていた。
「これから剣術の初歩を教えよう」
広場にて、アルベルト=V=シュタールシュヴェーアトは少年達を前にしていた。
はい、と応える中には青年も交じっている。皆が冒険者を志す、希望に溢れた者達だ。
故にこそ、率先して見本を示しながら。
「当然ながら、剣を思い通りに振るう事が目的の一つだ。その為に単純な体の動かし方が重要になるんだ」
剣技の前段から丁寧に伝え……体重の移動法や、適切な武器の選定方法も教えていった。
それから斬り方も実践。
「縦、横、斜め、突き。柔軟であればあるほど、意図しない場面でも揺らがない。組手をしてみよう」
『はい!』
そうして少年達の打ち合いを指導しながら……青年達には実戦で使う技も教えていく。
「後は自分の戦い方に合わせて応用すればいい」
「ありがとうございます!」
応える皆は筋がよく、一人前になれるだろう。子供達も、自分の身を護れる程度にはなれるはずだ。
だからアルベルトは熱を込め、更に指導を続けていった。
「二つの街が合同でお祭りとは、珍しいですね」
フリーダ=ブロムヴィストは賑やかな通りを行く。
「啓示では『実質休憩パートとなります』と出ていますが……ともあれ楽しむとしましょう」
自身の神を感じつつも――向かうのは広場。冒険者に憧れる子供達へと、剣の稽古をしてあげる事にした。
教えるのは、構えだ。
「構えって大事なんですか?」
子供の言葉にフリーダは頷く。
「こうした構えは、被弾時に危険な部位を守りつつ――隙なく攻撃を出せるのが魅力です」
実演すると、子供達はわぁ凄い! と感嘆した。
「啓示でも『構えてる相手に大振りを外したらカウンターで死ゾ』とありますし」
「けーじ?」
「いえ、こちらの話です」
ともあれ、と。
「剣の経験自体は私も短いのですが――今までなんとかやれてきたのは、型をきちんと取ってるからと言って過言ではないです」
だから心に留めておきましょう、と教えると、子供達ははーい! と元気に稽古を続けるのだった。
「冒険者祭りか。面白いじゃねーか!」
ハヤト=ガラン=ヴォルファングは賑わう通りを歩んでいた。
自身もまた露店で串焼きを食べ――米菓や果実の飴も味わってゆく。
と、そこでベルナールと左衛門を見つけた。
「よぉ! 元気にしてっか?」
「ハヤト殿! お久しぶりで御座る」
「来て頂いて有難うございます」
頭を下げるベルナールに、ハヤトは周囲を見回す。
「さすがランツォールがバックアップしてるだけあって、盛り上がってんな♪」
「これもハヤトさん達のおかげです。良ければ広場で冒険譚を披露して頂けませんか?」
「良いぜ!」
快諾したハヤトは“死軍”――あの戦いを想起し人々の前に立った。
「敵も大層なもんだったが。傭兵団がビッグオウムを繰り出してな」
上空からの指示により、騎馬隊で吸血鬼を多数屠った事。
それは厳しくも勇ましい武勇伝だった。
拍手する人々へハヤトは腕を掲げる。
「俺達ブレイブファング傭兵団は、いつか大陸最強と謳われる様になっから。楽しみにしててくれよな!」
それは確かな誓い。人々は大きな声援でそれを称えていた。
「ふむ、冒険者を目指しているか」
ガエサラウリ=モルダナヴァ=オルクレリウスは真摯な瞳の若者達を前にする。
彼らはまだ、ただの青年に過ぎない。だが理由を問わず、その為の研鑽は称賛すべき事だった。
誰より、ガエサラウリ自身が研鑽の日々を送っているから。
「ならば、我も未だその道中ではあるが――できることを教えよう」
はい、と返事をした若者達に、まずは各々が使う武器の素振りをさせる。剣、斧、槍。そこへ種別に応じた動かし方の助言を与えた。
自身の戦術眼を始めとした感覚も活かし、武器の相性、体の負担も考えて。
「もっと大きな武器を使っても良いだろう」
「はい!」
頷く若者へ、体力や武器の理解も深めさせていく。
ここから彼らは羽ばたくだろう。
「共に鍛錬した者たちと復習するようにせよ。新たな気づきもあるやも知れぬし、この場にいる者同士で将来パーティを組むやもしれぬしな」
未来を見据えた言葉。
それに若者達は、心から返事をしていた。
店々の並ぶ通りに、スヴァン=ウォルフ=ユーウェンも歩んできていた。
「露店、ね……」
じゅうじゅうという音や、種々の芳香。
魅力的な物は多いけれど……スヴァンはきょろきょろ。
「せっかくの祭りなんだ。何か、こう……珍しい甘味などはないだろうか――」
チョコレートとか……と、甘い美味を脳裏に想像させつつ。ふと視線の先に見つけたのはスイーツ店だった。
自然と足が動いて入ると、メニューを見て耳をぴこりと立てる。
「チョコレートケーキ……」
最近の時勢故だろう、お値段も抑えめだった。
期待通りの展開にそわそわしつつ、注文。するとチョコ生地にたっぷりのチョコクリーム、そして粉砂糖の白が映える一品が登場。
はむりと食べると優しい生地に、香り高い甘みが口の中に広がった。
「……おかわりしよう」
更にタルトやムースと、幾つか楽しみつつ……満足の心持ちで広場へ。
暫し、冒険者同士の組手を眺める事にした。
広場は組手開始を前に熱気に包まれていた。
場に出るのはゼラルム・エルホワイト。
相手は勿論決まっている。対面に現れる――サニー・フォン・オルライト。
「後衛職相手だからって容赦はしないよ?」
「勿論、お好きに」
ゼラルムは応えてダガーを握る。
互いの武器は木製だし、大事にはならないだろう。故にこそゼラルムはしかと構えて――エーテルを収束。
眩い輝きを矢へと形作り、真っ直ぐに放っていた。
燦めく粒子に観衆がおおっとどよめく。が、標的であるサニーも甘んじて受けず――
「よいしょっ!」
二刀を振るって光の矢を空へ受け流した。
それにも人々が驚く中、サニーは疾駆。一息にゼラルムへ肉迫する。
そのまま放つ剣撃は高速にして流麗。一撃、二撃、ゼラルムに勝る手数で確実にダメージを与えていた。
「……」
ゼラルムは刃と柄で受けながら、それでも衝撃に後退する。
斃れずに踏みとどまり、即座に反撃に移ろうとするが――サニーはそれより疾く飛び退いていた。
「……まだまだ」
が、ゼラルムも諦めず深く踏み込んで至近へ。刺突を繰り出していく。
サニーもそれを予期していた為、紙一重で回避をしてみせるが――それもゼラルムには予想済みでもあった。
次のサニーの連撃を耐え抜くと、零距離を保ったまま光弾を顕現。自身ごと巻き込むように――眩い衝撃を降らせた。
「……っと、危なかった!」
サニーは一瞬驚く。
が、それでも身を躱していた。直後に二刀を縦横に振るうと、ダガーを払い落とし勝利をもぎ取った。
ゼラルムはダガーを拾いつつ……結果には予想通りという心持ち。
「盛り上がって頂けたようで、何よりですね――」
見回せば広場は熱狂に満ちている。
その為の組手でもある。故に派手な力も使った甲斐もあった、と。
サニーも軽く周りに手を振りつつ……ゼラルムへヒール。
「さて、と。終わったし――露店でも見に行こ、ホラホラ!」
「はいはい、ただ今!」
そのまま走り出すと、ゼラルムもまたそれについていった。
オゴスとギャメルは展示場を訪れていた。
「どれも不思議な美しさがありますね」
「すげー! 大樹海の奥にこんな場所があったなんてなー!」
ギャメルははしゃいで草花を見て回る。
味見が出来ると知れば、水を溜める花から一口。
「……うん、真水だ。蜂蜜みたいには甘くねぇな」
更に肉のような葉も、焼いた物を食べて……見た目と味の肉らしさに驚いて。食用樹皮も、自分の歯とどっちが丈夫か勝負。見事に噛み千切ってみせた。
「どれも面白いな!」
「良かったですね、坊ちゃん」
応えるオゴスを、ギャメルはふと見やる。
その表情に、元気がないのを感じ取ったのだ。
実際、オゴスは自己嫌悪に似た物を抱いていた。
探索者の銘を見て、彼らを称える気持ちがある。反面、自分の仕事は後ろ暗いものが多く、胸を張れない気がしていた。
(……)
そんなオゴスを見たギャメルは……首から提げた財布を握り締め、露店へ。
「牛肉の串焼きを二つください!」
購入したその一本を、差し出した。
「いやー、さっきはオレばっかり樹海の珍味を堪能しちまったなー。せっかくのお祭りだしオゴスもおいしいもの食べようぜ」
「……くださるんですか? ありがとうございます……」
オゴスは受け取りながら、ギャメルに気遣われているのを察して一層情けない。
依頼で誰かを騙す事には抵抗はないのに、日常だと上手く演技も出来なかった。
と、そこでふと左衛門を見つける。
向こうが気づくと、オゴスは感謝と信頼を込めて――さりげなく目礼だけをした。話しかけて万が一、シノビの身分がバレては迷惑だから、と。
すると左衛門も理解して丁寧な目礼をする。
そこには労いと感謝、真摯な心が籠もっていた。
「……」
オゴスはそれに、はっとする。
この場は左衛門を助けた者……自分達がいたから実現出来たものだ。
それを知る人は多くはないけれど。
(表舞台に立つことはありませんが、俺も冒険者として誰かの役に立っていましたね)
すると、去来するのは晴れやかな気持ちだった。
「坊ちゃん、ありがとうございます」
だから今は楽しもう、と。オゴスは串を受け取り歩み出す。
「行きましょうか」
するとギャメルもその様子に……嬉しそうに頷きを返していた。
展示場へ、エルゼリオ・レイノーラはやってきていた。
今まで観た事のない不思議な動植物達。それと間近で接する機会なんてそうそうないから……絶対に来たかったのだ。
故にまずは銘と地図をじっくり眺めて。
「ボクも行ってみたかったなぁ……」
雄大な自然と景色に想いを馳せて――植物の味見へ。緑玉の果実の爽やかな美味や、肉の葉の文字通りの食感に舌鼓。
綿毛の鳥を見つけると、まん丸なシルエットに和んだ。
「ひよこみたいで可愛いなぁ。この子達って鳥なのかな?」
と、説明を見て綿の花を食べて進化してきた鳥らしいと理解する。
ふわふわ狐を見つければ――抱っこOKという事でそっと触れて。
「わ~、ふわもこだぁ~」
すりすりと懐いてくるそれを抱っこして、柔らかな感触に心癒されたのだった。
と……その狐耳を眺めていると、ふと頭に過る顔がある。
「そういえば、ノノアさんも祭りに参加してるんだよね? 今、何してるのかなー?」
ノノアはコハクと共に露店巡りを始めていた。
「色々な料理があるわね」
「ん……」
見回すノノアは興味深げ。対する隣のコハクもまた、心は同じだったけれど……同時に緊張と喜びの気分。
というのも、憧れの先輩にお出かけを持ちかけて、OKを貰った事が嬉しくて……本当は今も狂喜乱舞したい心持ちなのだった。
そんなコハクを、ノノアはふと見やって。
「そういえば……コハクさんの尻尾が増えてますわね」
これはもふもふしないと、と。
大きな尻尾を早速もふっと触ると――
「……!」
コハクはどきどきと興奮。無表情のまま小さくぷるぷるする。ノノアがあっ、と美味しそうな匂いに釣られて歩むのにも暫し気づかぬ程だった。
それからはっとしてノノアを追うと、そこは焼鳥の店。
早速二人でお勧めの二種類を買って――まずはノノアが一口。
「美味しいわ」
芳ばしい焼け具合と、ジューシーな肉汁に舌鼓。コハクもまた自分の物を食べると……肉と共にネギがいいアクセントだった。
その美味に、コハクが次々買っては頬張っていると……ノノアが微笑み。
「コハクさん、こっちも食べてみる?」
「いいの?」
「ええ。あーん」
ノノアが差し出すと、コハクは震えながらあーんして、ぱくり。食べながら感涙を零していた。
「美味しい?」
「ん、何よりも美味しかった……」
感嘆の声で応えつつ、コハクは次は自分がお返しを、と――砂糖漬けにした葡萄を冷やし、氷菓にしたものを発見。
一口サイズで丁度良いと購入し、今度は自分がノノアへ。
「お返し。あーん」
「それじゃあ頂くわね」
ノノアはあーんして、はむり。ひんやりとした甘味と、しゃくしゃくした噛みごたえが何とも快かった。
その眺めにじーんとしたコハクは、そっとノノアと手を繋ぐ。
するとノノアもそれをやわく握り返して――二人で散歩。
(こんなデートが出来るなんて……)
コハクは深い感動を胸に抱きつつ……ノノアと共に暫しゆるりとした休暇を楽しんだ。
「いろんなモノがあるわねぇ――」
展示場にて、エミリア・シバは草花を見回す。不思議で美しい、そんな未知のものに惹かれつつ。
「幻郷って一体どんなところなのか興味が出てくるわね。あら? 動物もいるのねぇ……って」
と、そこで目に飛び込んできたのが、ひよこのような綿毛の鳥。
「ちょ、ちょっとまって、なにこのかわいい子たちは!」
エミリアは――瞳を煌めかせ、すぐさまその間近まで顔を近づけていた。
するとそれはキューキュー鳴く。
「こ、これは……ぎゅーって抱っこしたいわ!?」
どうやら抱っこはOKらしい。
なので、エミリアは早速声帯模写でキューキュー。それに惹かれてきたひよこ鳥をもっふりと抱きしめ、思う存分堪能した。
「狐っぽい子も――!」
こんこんと鳴き真似すると、その一匹も寄ってくる。
「何て可愛いの……!」
エミリアはそれもまた抱きしめて……ふわふわの綿毛にぽふっと顔を埋め、小一時間その感触を楽しんだのだった。
盛り上がりに満ちる屋台の道を、オキナ・F・ブラッドリーは見回していた。
「こういう所に出てくるのも、悪くねぇな」
「ええ。ようやく回復してきたのですから。たまには夫婦水入らずでデート、良いでしょう?」
言って微笑むのはトウカ・S・ブラッドリー。元気になってきたオキナとこんな催しに来られる事に、喜びの心持ちだ。
そうだな、と頷くオキナは――ふと店の一つに視線を向ける。
「酒の匂いがするじゃねぇか……」
すると半ば無意識に歩み出していた。
「久しぶりに一杯――」
「だめですよ」
と、待ったをかけるのが賢明なる妻。
「お酒なんてもっての外です」
「何だ、だめなのかよ」
少しいいじゃねぇかよこのケチンボめ……とオキナぶつぶつ呟いていると、トウカはそれでもきっぱり首を振る。
「あなた、まだ病み上がりなんですから――栄養のあるものを食べてください」
「わかったわかった。食えばいいんだろう食えば」
というわけでトウカが選んだ串焼きを頂く事になった。
「まぁ肉やら足りてないのは確かだからいいんだけどよ……」
がぶりと食べると、血肉が体に沁みる。けれど味が濃いから、余計に酒が飲みたくなるのだった。
それでも観念して食べ続けていると、トウカが次々に食べ物を調達してくる。
「これも、後これも――」
「おい……なんかさっきからやけに精のつくものがおおくないか?」
「お酒飲もうとする元気があるのですから……そろそろ大丈夫ですよね……あなた?」
言うとトウカは腕を絡める。
「いやたしかに怪我のせいでご無沙汰だがな……俺病み上がりだか……っておい引っ張るな」
オキナはつんのめりつつも、息をついて。
「わかったわかった朝まで相手してやらぁ! 途中でやめてって言っても聞かねぇからな!」
言うままに真っ直ぐ歩み、去っていった。
道を歩めば、仄かに甘い匂いも香ってくる。
それに誘われるように、ベルク・オスマットは露店の並ぶ一角へやってきていた。
「色々とあるようだな」
祭りだけあって、品は豊富だ。とりあえず、林檎を飴でコーティングしたものが目についたので購入する。
「うむ、美味い」
果汁を含んだ甘味に、食べ進めると果実そのものの甘酸っぱさも加わって美味。さらに葡萄を飴に浸けたものは一つ二つと、止まらなくなるほど。
「ついでだから今世話になってる裏の連中にもお土産にしよう」
こちらは持ち運びも容易なので、苺やオレンジといったバリエーションと共に多めに購入。持ち帰ることにした。
お腹も膨れると、湯気を上げる屋台を見つけて。
「久方ぶりにゆっくり酒でも飲むとしようか」
その席に座って、ひとまず一杯。
「無粋な賊共もこんな陽気な所では暴れんだろうしな――」
戦いの日々を送るからこそ、貴重な休暇。
そのひとときを、ベルクはゆっくりと寛いでいった。
人の行き交う露店通りを、キーゼは歩みゆく。
探すのは酒の肴。早速串揚げの店を見つけると、牛肉の一本を購入し……さっくりとした食感を酒と共に味わう。
「ふむ、これは中々」
隣の店では、パスタをソースで焼いた物を買ってみた。
香ばしさと、濃いめの味付けが何とも癖になる。
「こうして買い食いしながら街を眺めるのもオツなものですよね」
平和な空気の中、露店ならではの少し安っぽい味と出来立て感を楽しむ。それもまた風情を感じた。
揚げ物と、果実の飴もお土産になりそうだったので幾つか追加で購入。羨ましげに見ている現地の子供がいれば――
「どうぞ」
果実の飴を奢ってあげた。
「ありがとう!」
棒付きのそれを美味しそうに食べつつ、子供とその親が礼を言ってくると……いいえと言ってキーゼはまた歩み出して。
「住民も楽しんでこその祭りですしね」
皆で盛り上がれるならばそれが何より、と。
ふらりと店々の間に去っていった。
「最近お祭りばっか行ってるような気もしなくもないような……」
溢れる人波を遠目に、Re:Leeはうーんと顎に指を当てる。
それでも次にはぱっと笑みを浮かべ、隣の腕を引いて。
「けどやっぱりお祭りって楽しいから仕方ないね! というわけでザイン! 今日もいっぱい美味しいもの食べるわよ!」
「ああ。のんびりデートと行こうぜ、リリィちゃん」
応えるザインも声柔らかに、祭りへと歩んだ。
向かう先は露店。
肉の焼けるいい匂いがしてくると……ザインは串焼きを購入。隣に甘い香りがすれば、そちらも買ってみて。
「これはリリィちゃんが好きなんじゃないか?」
「わぁ、本当!」
Re:Leeは瞳を輝かせ、その葡萄飴をあむり。甘さと共に果実の風味もして、ん~と美味しそうに瞳を細めているのだった。
ザインも肉をガブガブと齧り満足げ。
「んー、やっぱ祭りの飯ってのは雰囲気も相まって格別だな!」
「ザイン、こっちも美味しいわよ?」
するとRe:Leeが米菓を差し出す。ザインはあーんして食べ、美味に頷きつつ……自分のものもまた食べさせてあげて。
「付いてるぜ」
「ん、ありがと!」
時折口元を拭ってあげつつ、睦まじく過ごした。
それから演奏会で踊る人々を見つければ――
「お、リリィちゃん、アレやってみようぜ!」
「ええ、とっても楽しそう!」
アップテンポで軽快なメロディに合わせ、二人も参加。
ステップも、回るのも、経験もない為お世辞にも巧みとは言えない。体格差もあって、傍目にはお遊戯会のようにさえ見えてしまうけれど――
「こういうのは楽しんだもん勝ちってもんだな」
「ふふ、そうね」
手を繋ぎ、ターンしながらRe:Leeは微笑む。
――人からどう見られてるとか、そんなのどうでもいいの。
「私達は私達で楽しめていれば……ね♪」
互いを思う心が、慣れぬダンスを幸せな舞踏に変えてゆく。旋律が軽やかにそれを祝福しているようだった。
自然と浮かれてしまう賑やかな空気。
その中を、テス・クラルスは棒付きの苺飴を舐めながら――ロイ・アウレアの手を引いて歩んでいく。
「大きなお祭りだね」
「ああ! それに……肉! 芋!」
頷くロイも串焼きや芋のバターがけを食べてはご満悦。演奏会に行く予定故、腹が膨れないとその元気が出ないだろう、と。
テスもそれに微笑みつつ。
「あの鶏飯、とても香ばしい匂いがする。香草はなんだろうね」
「本当だ、良い匂いだ」
すると鶏飯も良いなと、ロイも共に実食して楽しんだ。
そうしてウキウキと巡りながら……テスは思いついたフレーズを口ずさみ。
「この祭りにはこんなフレーズかな? ロイはどんな音がいい?」
「そうだな――」
食材を炒める音、炭の爆ぜる音、呼び込む声。それを背景に、ロイも続けてメロディを合わせてゆく。
そんなふうに曲の構想が出来れば――演奏会へ。テスはバイオリンを、ロイはアコーディオンを携えて舞台へと上がった。
冒険者の参加に人々は大歓声。
二人は並んで挨拶をすると――まずコミカルなステップ。テスはそのまま手拍子を促すと、割れるような音の波に乗って、くるり。
回って弦をかき鳴らし、曲を始めてゆく。
ロイはそこにアイコンタクトを合わせ、タップを踏んでいた。そうして踊るように周囲を回りながら――タイミングを取って合奏へ。
情熱的なリズムとハーモニー、そしてメロディーで――燃えるような短調を聴かせた。
速いテンポの舞曲に、踊りを添わせるロイ。テスはそこに氷を震わすような美しくも繊細なソロを響かせ――挑戦的にロイへ目配せを。
(次は任せたよ)
それに頷くロイも大胆な転調で引き取って、さらにメロディーを繋げてゆく。そして客にも伝わる表情と動きで、今度はテスへ挑戦。
(これならどうだ!)
(そう来たか! じゃあ次はこれ!)
そうして息を合わせ、演奏速度を上げて最高潮。露店で合わせたフレーズを背中合わせに奏でて――曲を終えた。
観客は熱狂の拍手と喝采を送る。
舞台を下りて少し息が上がったロイへ――テスは寄り添って心からの笑顔と感謝を。
「ロイは最高だよ」
「――それはテスだよ」
笑みで応えたロイは、肩を抱いて。
「さあ、祭の続きへ行こう」
そのまま二人の時間へと、戻ってゆく。
「あら、魅力的な曲ね」
イーヤ・レプリスは、舞台から聞こえる曲に足を止めていた。
そちらに向かうと、演奏者達が立ち代わりに旋律を奏で、歌う。その優美さにイーヤは聴き惚れながら――始まるダンスを見れば、自分もそこへと歩んだ。
「ふふ、聴くだけでもいいけれど、ね」
せっかくなら楽しむのも悪くない、と。
楽しげで、それでいてどこかムードの強いメロディが流れてくれば……それに合わせてステップを踏む。
ばかりでなく、衣装を揺らして色香を漂わせて……その妖艶さで、沢山の視線を集め始めていた。
踊りを誘ってくる男性がいれば、イーヤはそれを受け入れる。リズムを合わせ、時に近づき時に離れ――誘惑するように、甘美な振り付けで魅了してみせた。
彼だけでなく、周りにもその色気を振り撒いてみせるように。暫し踊りの場を己が物にするように、イーヤはダンスを続けていった。
和やかな旋律の次は、愉快なメロディが響く。
キオルティスは舞台で演奏されてゆく曲を聴いていた。
「やっぱり音楽はいいものだね」
始めは静かに楽しく拝聴するばかりだったけれど――そう思うほどに、うずうずと自身の演奏熱が押し寄せる。
吟遊詩人の血がそうさせるのか。
「――飛び入りも可能かい?」
居ても立ってもいられずに……複数の演奏者が曲を奏でる、そこに自分も派手に紛れ込んでみせた。
冒険者の登場に舞台と観客は盛り上がる。
その空気にも合わせるよう、キオルティスは足の鈴でリズムを取り、竪琴でアップテンポの曲を奏で始めた。
『地を駆け 星々を見上げる キミにも見えるだろう?
そう あの星が見える限り キミも僕らも繋がっている』
そして聞かせるのは、透明感と奥行きを感じさせる唄。
『地を駆け 星々を見上げる ピンチの時は駆けつけるさ
そう あの星が見える限り キミと僕らは繋がっている――』
冒険奇譚を紡ぐメロディは美しくも楽しげに。
皆の即興演奏も誘い、会場を一層の熱気で包んでいった。
「わぁ、露店だ!」
トゥーリはわくわくと店々を眺めていた。
左には芳ばしい串焼きの店。右には甘い果物の店。
「アクセサリのお店もあるんだ。にぎやかだね――」
言いつつ歩き出し、芋のバターがけを購入。
さらに焼きトウモロコシも見つけると迷わずに買って……それぞれ両手に持って食べながら歩んでゆく。
はふりと蕩ける美味を堪能し、しゃくっと熱々の甘味も楽しんで。
「こうやってイベントが続いていくと街も活気が出てきてうれしいね!」
人々の笑顔、満ちる活気。
その中をゆるりと散歩するだけでも楽しかった。
と、どこかから音楽が聞こえてくれば――
「あっ、演奏会やってる!」
トゥーリはその観客席へ。
食事と共に音楽を楽しむ人々に交じり……自分も鑑賞していく事にする。
時に軽やかな旋律とダンス。
時に情熱的なメロディと舞踏。
そして美しくも透明感のある演奏と唄――
「みんな、凄いなぁ!」
食べ物も食べると楽しさは倍増。トゥーリは暫しそんな憩いを味わっていった。
人々の期待の視線の中、セヴラン・クアルトは舞台に上がっていた。
舞台衣装はいつもの物で、楽器も相棒であるヴァイオリン。ただ、今日は仲間との参加だから――
「少々、張り切ってもいいかな」
呟き隣を見ると、そこにはアーシェル・G・クライン。冒険者らしさを残しつつも、ほんの少し華やかな衣装を身に纏い……楽器を手にとっている。
「おやアーシェルさんもか」
「ああ」
セヴランに応えてアーシェルが肩に乗せるそれも、同じくヴァイオリンだ。
(こいつを弾くのは久しぶりだな。セヴランの足を引っ張らなきゃいいんだが……)
思いながらも弓をそっと持つ。
セヴランも同じ格好を取った。
「共に心地良いハーモニーを奏でたいね」
言いながら、それでも一番の華は女性陣だから、と。
視線を動かせば、そこにはアンネエルカとクレア・エクレールの姿。
クレアは折角の舞台だとおしゃれをして、普段は着ない、ひらひらとした生地が美しい衣装。
そこにきらりと煌めく装飾を合わせ、目を引く可憐さだ。
「人、沢山いるんだね!」
「ええ――」
と、そっと応えるアンネエルカは初めての機会に緊張。楽器も出来ない身としては、ちょっぴりドキドキとしていた。
けれど。
次の瞬間、旋律が響けば――そんな不安も一瞬で忘れてしまう。
それはセヴランが皆を引っ張るように奏でた音。波に乗せ、曲の世界に連れて行くようなフレーズだった。
そこにアーシェルも音を重ねる。
アーシェルの心には、貴族の嗜みだと稽古に励んだ幼き日々と、亡き兄に褒められた温かな思い出が甦っていた。その音色も――温かく時に力強い。
寄り添って頼もしく導いてくれるアーシェルの音色。
そっと背中を押してくれる風のようなセヴランの音色。
それに心強さを得て、アンネエルカは唄を紡ぐ。
清廉で、澄んだ宝石のような声音。横を見れば、クレアも頷いて声を乗せた。
『――』
明朗でよく通る、快い太陽のような声。
手を取り合うように重なってくれるその唄が、アンネエルカにも嬉しくて。二人でハーモニーを響かせ、互いの魅力を何倍にも増していた。
楽しくって、気持ちがよくって。
(この瞬間が宝物だわ……!)
アンネエルカが実感を抱けば――クレアも人々と共に自分自身も楽しむように。
(すっごく盛り上がってくれてる! よーし、もっと!)
思いと共に更に朗らかな声を聴かせた。
アーシェルとセヴランはそれを支えるように音の背景を作る。
(うちの歌姫達は最高だな、セヴラン!)
(うん!)
セヴランは頷きながら、観客の女性達へウインク。
音楽に耳を傾けてくれる彼女達もまた、花だからと。一人と視線が合えば演奏の合間に指差し、「お嬢さん、ありがとう」と合図を返した。
アーシェルもまた盛り上げる為ならとウインク。黄色い声も聞きながら――最後まで奏できる。
大きな拍手に終われば、セヴランは挨拶と共に軽く投げキッスも。
「ノリと勢いが大事だよアーシェルさん」
「ああ」
内心で照れながら、アーシェルもまた投げキッスして。隣のクレアは、それは恥ずかしいけれど……ウインクくらいはサービスにとぱちり。
アンネエルカは笑顔で手を振って――最後はスカートを持ち上げてお辞儀。歓声に見送られて皆と共に舞台を後にした。
その後は――
「みんなで打ち上げだよ!」
クレアの声に皆も続いて、露店巡りへ。
セヴランは牛串とホットワイン、アーシェルも焼き鳥に串揚げにと肉料理を揃え――アンネエルカも苺飴を買ってゆく。
クレアもまた、串焼きも良いし林檎飴もキレーだし……と色々買って、皆と共に食べ始めた。
「お疲れ様! 最高に素敵だったよ!」
「お疲れ! すげー楽しかったな」
セヴランとアーシェルが言えば、クレアも同じ心で頷いて。肉のジューシーさと、林檎飴の甘味を味わいつつ――
「アーシェルくんのも一口ちょーだい」
「ああ、いいぜ」
アーシェルの焼き鳥を少々頂いて、さらにセヴランのものも一口。お返しに自分のものもシェアしつつ。
「アンネアンネ! これも美味しーよ、食べてみて」
「まあ、ありがとう!」
アンネエルカも明るい笑顔を見せて……皆で寛ぎの時間を過ごしていった。
街を訪れたゴルバルティアは、賑わう景色を見回していた。
「ふぅん……祭りかぁ」
「とっても盛り上がってるね!」
と、わくわくするのは皆を連れてきたララベル・サン・ディーベル。
ランツォールにクウェルツ。自分も関わった街だからこそ感慨があって……皆に楽しんで貰いたかった。
イル・シャーリィも視線を巡らせている。
「私は初めて来る街だけど……そこはベルの案内が楽しみね。この人数、どうエスコートしてくれるのかしら……?」
と、試すように視線を向けてみた――勿論、無理させるつもりなんてないけれど。
それにも、ララベルはぐっと頷いて。
「みんなが楽しめるように頑張るね!」
「ふふっ、お祭りあるところにベルはあり、だものね」
ほわりと微笑むのはアルラ・ニグラスだ。
「付き合わなきゃ損だから。わたしも楽しませてもらうわ」
言うと皆と共に歩み出す。
アーテミシアも続きながら、軽く欠伸。
「やれやれ、たまに戻ってきたと思ったら妙なことに引っ張り出されちまったな――」
それでも騒ぐのが嫌いというわけでもない。
だからしょうがねえなあ、と呟きながら。
「行くかね」
「ああ、たまにはこうしてのんびり過ごすってのもありだよな!」
いっぱい楽しもうぜ、と。ゴルバルティアが言えば――ふしぎ亭の一行はまず屋台へと歩み出す。
「規模の大きなお祭りなのね」
テュリン・ヴィングは眺めつつ感心の声音を零す。
並ぶ屋台は数え切れないほどで、そのどれもから良い香りが漂っていた。
ちょこんと歩み出たルルは、興味の赴くままに視線を右に左に動かす。
「美味しそうなものがいっぱいだなー」
「アリィは、何食べる?」
イルが目を向けると、アリエッタは、んー、と顎に指を当てつつ。
「どれも良さそうだけど、やっぱりここならではのものかなー」
というわけで陸海空の串焼きを購入。牛、魚、鳥の肉を合わせたものでボリュームも抜群だ。
「あむ……ん、おいしー」
「成程、これは」
と、肉にはアーテミシアも興味深げ。
はむりと芳ばしい風味と肉汁を味わい……辛口めな酒も楽しむ。すると食べ歩きも悪くない気がしてくるのだった。
イルもアリエッタと同じものを楽しむと――隣ではゴルバルティアが米菓を発見。
「こりゃ、中々だな」
さくっとした軽い食感と甘味に舌鼓。意外と少食でもあるので、少しずつつまむように果実の飴も食べていった。
ルルもお肉をもぐもぐして満悦。
テュリンもまたお菓子を食べつつ雰囲気を楽しんでいると――人混みが渋滞。それに背を押されたララベルに、店々の隙間に押し倒される形となった。
「きゃっ……」
「も、もがごご――」
テュリンの太腿の間に顔を突っ込むララベルは、すぐに顔を出す。
「ご、ごめん!」
「ええ、まあ……大丈夫よ」
もう慣れてるから、と。テュリンはどこか呆れた声音だった。
その後、ララベルの案内で幻郷の展示場へ。
「……ああ、そういえばあっちで一仕事してたな」
見回しながら、アーテミシアは思い出すような声音。そこは草や花が順に並べられ、美しく飾られた景色だった。
「キッチリカウントしてるとはマメなこって」
「みんな、こっちだよ」
中へ入ってゆくララベルは、丁度ヨーゼフを見つけた。
「こんにちは! 仲間誘って遊びに来たよ」
「これはララベルさん。皆さんもようこそ」
ヨーゼフが応えると、左衛門とベルナールとも行き会って。
「ご無沙汰で御座る!」
「ゆっくりしていって下さい」
ベルナールが言うと、皆も挨拶を返し眺め始める。
アルラは植生に興味を惹かれていた。
「聞きかじり程度だったから、こうして改めて眺めると不思議な感覚ね……」
「あ、向こうは僕が冒険したところだよ」
そんな中、ララベルは色彩樹林の展示に走る。
「ここ、すごかったなぁ。色んな色の気が生えててね――」
「……ふふ」
と、楽しげなララベルと見ていると、アルラはそれだけで自分も楽しくなるようで。
少し離れた所に自由に触れられる植物があったので、それを持ってきてみた。
「ねぇねぇ、コレがどういうものか教えて~」
「あっ、これはね。僕も後で知ったんだけど、良く伸びる蔓で。弾力もあってね……」
ララベルが触れると、言葉通り長大な蔓がびよんと弾けて。びっくりしたアルラともみくちゃになり……いつの間にかアルラの全身が蔓に縛られていた。
「ベル……これが使い方?」
「ちっ、違うよ!?」
ララベルは謝りながら慌てて蔓を解き……発見物の味見に向かう事にする。
手にとったのは食用樹皮だ。
「樹皮ごといけるけど、内側だけ掬って食べると果物みたいなんだよ」
「へぇ、果物……もらっていいか?」
と、興味を示したゴルバルティアが頂いてみる事に。早速口に運ぶと……ぷるりと瑞々しい。
「確かに甘いな!」
「ほんと? あたしも食べたいな」
言って耳をぴこぴこ揺らすアリエッタもまた試食。うんと頷いて。
「ひんやりしていて美味しいね」
「でしょ?」
ララベルは自分でも食べる……と、テュリンは少し苦笑。ほっぺに果肉がくっついているのだった。
「ほら、ベル」
「え? あっ……」
テュリンがとってあげると、ララベルは恥ずかしげ。テュリンがそのままあむりとそれを口に運ぶと……それを見て更に顔を赤らめていた。
気を取り直して向かうのは、動物の飼育場。
「ここも楽しかったな。長閑でね――」
「危険は無かったの?」
耳を傾けていたイルがそっと尋ねると、ララベルは気配はあったけど、と応える。
「仲間の力もあって無事だった。とにかく、動物が可愛かったんだよ」
視線を向けると、そこにはふわふわの鳥と狐がいた。
「はえー珍しい――」
ルルはそれに惹かれて、じっと見つめる。
すると鳥はこちらに興味を抱いた様子でぱたぱたと寄ってきた。
ルルはまたじーっと見つめる。
「まん丸まん丸……かわいいなー」
その顔はひよこのよう。
それでいて、大きな綿毛の塊のような愛らしいシルエットで。
「ふわふわふわふわ、もふもふもふもふ――素敵だー」
更にじーーっと見つめる。
「まん丸欲しい!」
「……流石に持って帰れないからね?」
ララベルはちょっと笑いを零しているのだった。
最後は銘の刻まれた碑へ。ララベルは指差して少しはしゃいだ。
「見て見て、僕とアーシアの名前ものってるよ」
「ああ、そうだな」
アーテミシアは静かに応える。
ララベルはそんな様子にも嬉しげに、にこっと笑んだ。
「いつか皆とも一緒に行きたいな……幻郷、そしてまだ見た事のない冒険の場所に」
展示場から出た後は広場へ。
皆で子供達に稽古をつけてあげる事になると――模造の剣を振ってくる少年達に対し、アルラはひらり、ひらり。
「ふふ、当たらないわよ?」
少々大人気なく回避受けしてみせながら……その後で、予備動作や足元に注意する事など、コツを教えてあげた。
一方、ゴルバルティアは皆の剣撃を受け止めている。
「よし、それでいい。あんまり裏をかこうとしすぎない事も大事だ」
ぱちん、ぱちんと受け流し、防御して……そんなふうに始めは稽古してあげていた、けれど――
「わー、すごーい!」
「何人までぶらさがれるのー?」
「まあ三人くらいなら余裕で……っておいおい」
ゴルバルティアの怪力に子供達は大はしゃぎ。
いつの間にか腕にぶら下がられ、肩車させられて。くるくる回ると子供達は大喜びし、次は自分の番だと列をなす。
結局次々に子供達につき合わされる事となって、へとへとになっていた。
「人気ね」
イルも微笑みつつ、青年に短刀捌きを教えてあげている。と……そこに転んでくるのが、稽古に身を入れすぎたララベル。
どしん、とぶつかって……倒れ込みながらイルの胸に手を当てていた。
「ご、ごめん……」
「ああ、そうね……そうよね、キミのノルマよね、コレ……」
予想していたイルは、少々冷ややかな目になって。
「うん、仕方ないわ。わかってるから」
後はもう、すっと立ち上がり。
「……アリィ、近寄っちゃダメよ」
「はーい」
アリエッタが応えていると、ララベルは恥ずかしげにしゅんとする。アルラがそんなララベルをよしよしとしてあげていると、イルもまた軽く息をついて。
「ま、今度は冒険の方で参加してみたいものね――」
思いを馳せるよう、賑やかな祭りを眺めていた。
マスターコメント
イベントシナリオ(50人)易しい 報酬:多い50 / 4〜50人
2021年02月27日 11時39分58秒 公開
参加者
トゥーリ
ヨル・スレイマン
コルネリウス・アーラ
アンネエルカ
ゼラルム・エルホワイト
サニー・フォン・オルライト
エルゼリオ・レイノーラ
エルナ・クルプファルツ
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト
ドーマ・アザーリ
Svart・Natt
テス・アウレア
フリーダ=ブロムヴィスト
ベルク・オスマット
ジョン・ベアー
- ネモ
- レオネベル
イル・シャーリィ
カメリア・ローレンス
アーテミシア
ギャメル
サフィラ・アズラク・ヴォルファング
ロイ・アウレア
ノノア
セヴラン・クアルト
イーヤ・レプリス
ハヤト=ガラン=ヴォルファング
- ガエサラウリ=モルダナヴァ=オルクレリウス
アルラ・ニグラス
ララベル・サン・ディーベル
ゴルバルティア
アスティン・ヴェルライン
フィーレン・ステオラーズ
アステル
テュリン・ヴィング
- キーゼ
ザイン
- プラシオライト ハオルチア
ルル
クレア・エクレール
キオルティス
コハク
Re:Lee
アーシェル・G・クライン
アリエッタ
オゴス
エミリア・シバ
トウカ・S・ブラッドリー
- オキナ・F・ブラッドリー
- スヴァン=ウォルフ=ユーウェン
相談掲示板
ロイ・アウレアです。ヨロシク。 のんびりとデートに来ました。 露店巡りかダンスも良いな…何にしても楽しく過ごす予定です。 皆様も良い1日をお過ごしください。
ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 俺は、武芸の稽古か組手をやってみたいな・・・
ウォーリアのフリーダです。よろしくお願いします。 何をするかはまだ決めていませんが、 冒険譚の披露や稽古・組み手辺りでと考えています。
テス・クラルスだよ。 ロイとデートを楽しむつもり。 皆が良い祭りを満喫できますように…。 よろしくね。
俺は武芸の稽古をつけることにしよう。
にゃ!シーフのサフィラだよっ! 露店めぐりが幻郷の展示スペースを見学する予定だよっ! いっしょに回ってくれる子もぼしゅーちゅーだよっ!
キーゼと申します。 ひとまず、特にこれと言ってやることもありませんので。 露店巡りでのんびりしていようかな、というぐらいですかね。 人手が欲しい、とかありましたら、ご対応は可能ですよ
スヴァンだ。 ふむ、祭りか……露店巡りでもしようかな。 スイーツ店に興味がある。楽しませてもらうとするか。
俺はアスティン。よろしく。 んー…。特に決まった予定はないけど。 組み手か、幻郷への探索には2度ほど参加してたから、 幻郷のスペースで探索を思い返しつつ、聞かれたら探索中の話をする感じ、かなぁ? 組み手の相手とか幻郷についての話相手とかお誘いがあれば対応するよ。
コルネリウスです。よろしくお願いします。 予定が中々決まらないのですけれど、展示物を見て周ろうかなと思っています。
>コルネ あ!コルネだ!おーい!(手を振り) コルネも展示スペースまわるのっ? せっかくだからいっしょにまわらないっ?(にこー)
>サフィラさん サフィラさん!(手を振り返して) はい、お誘いありがとうございます。 今のところはひとりでしたし、是非ご一緒させてください。