【聖祭】冬のある日のガラクタ夜祭
桃谷かな
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シナリオID:2707
オープニング
エラトゥーン都市同盟の有力都市リブラネスタ――の近郊に、エトッフという名の小さな町がある。
街道沿いに位置する宿場町のひとつに過ぎず、さして目立った特徴もない平凡な町。街はずれにある青く輝く美しい泉だけが、この町で唯一の観光資源だ。
しかし年に一度だけ、エトッフの町が大勢の人であふれる日がある。
毎年、聖霊節の時期に行われる『ガラクタ市』の日だ。
その日は日暮れ頃から町の中央広場に即席の市が建てられ、一般家庭や個人から集められた中古品、店舗や商会で扱ったものの売れ残った商品など、さまざまな『ガラクタ』が販売される。ガラクタといってもゴミではなく、まだまだ使える古物や新古品が大半だ。地元の質屋や骨董品店もスペースを借りて出店しているほか、リブラネスタなど大きな都市からの出店者も多いため、市の日は掘り出し物との出合いを求める大勢の人々で町が賑わう。
いつから始まった行事かは記録が残っていないのだが、ずいぶん昔の町長の家で大事に使っていた雑巾がついに限界を迎えた日、町長の夢枕に立って御礼を言った――という逸話から、物を大事にする町として年末にガラクタ市を催すようになったと伝えられているらしい。
ともあれ、現代においては『ガラクタ市』の開催にあわせて聖霊節の祭りも催されるようになり、屋台飯や景観が目当ての観光客も増えてきた。
「うわぁ~! どれも美味しそうね、ローズ」
「おいちそう~~~!!」
「どれでも好きなモン食っていいぞ。滅多に来られねぇんだからな」
巨大なモミの木が飾られた屋台街の入口で、ハーフリングの風景画家であるプラムが2歳の娘のローズを振り返った。夫のシスルに肩車されたローズは、テラリウムのランタンが照らす屋台の群れといい匂いに顔をほころばせる。
「ローちゃんね、ちーちたべゆの。むちゃむちゃむちゃ~って」
「ケーキ? どんなケーキがあるかしら。ちょっと回って見ましょうね」
ガラクタ市と併設の屋台街には、大人の顔の大きさほどもある揚げ鶏『エトッフチキン』やローストポークと野菜をたっぷり挟んだ『エトッフサンド』をはじめ、温かなシチュー、焼き菓子、グリューワイン、果実ジュースなど様々な料理が並ぶ。
「いやぁ~、冬のお祭りもいいよねぇ」
ハーフリング一家が楽しげに屋台街へと消えていく一方、温かなグリューワインを片手にガラクタ市の方へと向かう黒髪の男が一人。
黒の襯衣に薄手のコートを羽織っただけの寒々しい格好にもかかわらず、首元だけはやたらとモコモコしたマフラーを巻いている。ワインを飲むときだけ唇の下まで引き下げるが、それ以外は口元をほとんど見せようとしない。
「この町、前いつ来たっけ。百年ぐらい前かなぁ。……ん?」
市の中をブラブラと歩き、少し先の露店の前でちょっと変わった人物を見つける。
男は、商品の中から中古の弓を手に取っていた旅人風の女に駆け寄り、ポンポンとその肩を叩いた。
「ねえ、エルフのお姉さん。ちょっと僕とお話ししない?」
「……。吸血鬼と話すことなんて、ないわ」
パニックの発生を恐れてか。振り返った女は、わずかな沈黙を挟んでから囁くような声で彼を拒絶した。
「あれ、もうバレちゃった? うーん、でも今日は種族的な話がしたいんじゃないんだよね。ちょっとお姉さんが気になっちゃって」
深く被った大き目のキャスケット帽。その襟足から出した茶髪の三つ編みを揺らして、女は素っ気なく踵を返した。
「……私、急いでるの」
「そうなんだ。なんで君からイダ・バルダスの気配がするのか、聞きたかったんだけどなぁ」
腰の短杖に、女の右手が添えられる。ランタンの灯りに照らされて、その顔には大きな古傷がうっすらと浮かび上がっていた。
「……あなた、誰なの」
「いいか、よく聞くんだリーミル」
エトッフの町の宿屋の入口では、たったいま荷物を置いて来たばかりの冒険者ギルド職員アナンディーンが、後輩である受付係のリーミルの首根っこを捕まえている。
「今日は人が多い。まず私から離れないこと。次に、万が一はぐれたら宿に戻ること。間違ってもそのままフラフラ飲みにいくんじゃないぞ」
「も~~~~わかってますよ、アナンディーン先輩! 私だって子どもじゃないんですから」
などと口では言いながら、リーミルの視線は屋台に釘付けだ。
祭りの時期になると休みの度に出かけていくリーミルだが、アナンディーンの経験上、帰宅翌日の彼女の遅刻率は高い。昨日どうやって帰ったか覚えていない、などと話すことすらあり、上司のおじさんとしては心配すぎる。
アナンディーン自身もガラクタ市に興味があったために一泊の予定でついて来たのだが、宿をとったせいで逆に気が大きくなったリーミルが暴飲に走るのではないかと別の心配をする羽目になっていた。
「あ、見てくださいアナンディーン先輩! ガラクタ市もう始まってますよ。珍しい酒とか、あるんでしょうか!? そうだ、青い泉のライトアップも見に行きたいですよね!」
「待て、リーミル。離れるなと今言っただろう……!」
言い聞かせたそばから広場に向かってダッシュし始めるリーミルの背中を追って、アナンディーンは今日も走り出すのだった。
街道沿いに位置する宿場町のひとつに過ぎず、さして目立った特徴もない平凡な町。街はずれにある青く輝く美しい泉だけが、この町で唯一の観光資源だ。
しかし年に一度だけ、エトッフの町が大勢の人であふれる日がある。
毎年、聖霊節の時期に行われる『ガラクタ市』の日だ。
その日は日暮れ頃から町の中央広場に即席の市が建てられ、一般家庭や個人から集められた中古品、店舗や商会で扱ったものの売れ残った商品など、さまざまな『ガラクタ』が販売される。ガラクタといってもゴミではなく、まだまだ使える古物や新古品が大半だ。地元の質屋や骨董品店もスペースを借りて出店しているほか、リブラネスタなど大きな都市からの出店者も多いため、市の日は掘り出し物との出合いを求める大勢の人々で町が賑わう。
いつから始まった行事かは記録が残っていないのだが、ずいぶん昔の町長の家で大事に使っていた雑巾がついに限界を迎えた日、町長の夢枕に立って御礼を言った――という逸話から、物を大事にする町として年末にガラクタ市を催すようになったと伝えられているらしい。
ともあれ、現代においては『ガラクタ市』の開催にあわせて聖霊節の祭りも催されるようになり、屋台飯や景観が目当ての観光客も増えてきた。
「うわぁ~! どれも美味しそうね、ローズ」
「おいちそう~~~!!」
「どれでも好きなモン食っていいぞ。滅多に来られねぇんだからな」
巨大なモミの木が飾られた屋台街の入口で、ハーフリングの風景画家であるプラムが2歳の娘のローズを振り返った。夫のシスルに肩車されたローズは、テラリウムのランタンが照らす屋台の群れといい匂いに顔をほころばせる。
「ローちゃんね、ちーちたべゆの。むちゃむちゃむちゃ~って」
「ケーキ? どんなケーキがあるかしら。ちょっと回って見ましょうね」
ガラクタ市と併設の屋台街には、大人の顔の大きさほどもある揚げ鶏『エトッフチキン』やローストポークと野菜をたっぷり挟んだ『エトッフサンド』をはじめ、温かなシチュー、焼き菓子、グリューワイン、果実ジュースなど様々な料理が並ぶ。
「いやぁ~、冬のお祭りもいいよねぇ」
ハーフリング一家が楽しげに屋台街へと消えていく一方、温かなグリューワインを片手にガラクタ市の方へと向かう黒髪の男が一人。
黒の襯衣に薄手のコートを羽織っただけの寒々しい格好にもかかわらず、首元だけはやたらとモコモコしたマフラーを巻いている。ワインを飲むときだけ唇の下まで引き下げるが、それ以外は口元をほとんど見せようとしない。
「この町、前いつ来たっけ。百年ぐらい前かなぁ。……ん?」
市の中をブラブラと歩き、少し先の露店の前でちょっと変わった人物を見つける。
男は、商品の中から中古の弓を手に取っていた旅人風の女に駆け寄り、ポンポンとその肩を叩いた。
「ねえ、エルフのお姉さん。ちょっと僕とお話ししない?」
「……。吸血鬼と話すことなんて、ないわ」
パニックの発生を恐れてか。振り返った女は、わずかな沈黙を挟んでから囁くような声で彼を拒絶した。
「あれ、もうバレちゃった? うーん、でも今日は種族的な話がしたいんじゃないんだよね。ちょっとお姉さんが気になっちゃって」
深く被った大き目のキャスケット帽。その襟足から出した茶髪の三つ編みを揺らして、女は素っ気なく踵を返した。
「……私、急いでるの」
「そうなんだ。なんで君からイダ・バルダスの気配がするのか、聞きたかったんだけどなぁ」
腰の短杖に、女の右手が添えられる。ランタンの灯りに照らされて、その顔には大きな古傷がうっすらと浮かび上がっていた。
「……あなた、誰なの」
「いいか、よく聞くんだリーミル」
エトッフの町の宿屋の入口では、たったいま荷物を置いて来たばかりの冒険者ギルド職員アナンディーンが、後輩である受付係のリーミルの首根っこを捕まえている。
「今日は人が多い。まず私から離れないこと。次に、万が一はぐれたら宿に戻ること。間違ってもそのままフラフラ飲みにいくんじゃないぞ」
「も~~~~わかってますよ、アナンディーン先輩! 私だって子どもじゃないんですから」
などと口では言いながら、リーミルの視線は屋台に釘付けだ。
祭りの時期になると休みの度に出かけていくリーミルだが、アナンディーンの経験上、帰宅翌日の彼女の遅刻率は高い。昨日どうやって帰ったか覚えていない、などと話すことすらあり、上司のおじさんとしては心配すぎる。
アナンディーン自身もガラクタ市に興味があったために一泊の予定でついて来たのだが、宿をとったせいで逆に気が大きくなったリーミルが暴飲に走るのではないかと別の心配をする羽目になっていた。
「あ、見てくださいアナンディーン先輩! ガラクタ市もう始まってますよ。珍しい酒とか、あるんでしょうか!? そうだ、青い泉のライトアップも見に行きたいですよね!」
「待て、リーミル。離れるなと今言っただろう……!」
言い聞かせたそばから広場に向かってダッシュし始めるリーミルの背中を追って、アナンディーンは今日も走り出すのだった。
解説
●依頼内容:
皆さんはガラクタ市設営手伝いの依頼を受けてエトッフの町にやってきました。
リプレイは市と祭りが始まった日暮れ後から。つまり仕事は終わっています。
せっかくなので、お祭りを楽しんでいってください。
●町のみどころ
時刻は日暮れ直後。ガラクタ市と屋台街のある中央広場を中心にテラリウムのランタンがたくさん設置されています。
・ガラクタ市:
中央広場にたくさん露店が並び、日用品から服、アクセサリー、雑貨など多彩なジャンルの中古品や新古品が売られています。本当にガラクタに等しいものもありますが、まだまだ使えるものがほとんど。掘り出し物に出合えるかもしれません。
・屋台街:
ガラクタ市に隣接する形で、たくさんの飲食屋台が並んでいます。名物は、大人の顔の大きさほどもある揚げ鶏『エトッフチキン』と、ローストポークと野菜をたっぷり挟んだ『エトッフサンド』。その他、シチューや焼き菓子、グリューワイン、果実ジュースなど色々あります。一部にテーブルと椅子が設置されていて、フードコートのような雰囲気。
・巨大なモミの木:
屋台街の入口付近にあります。白い綿やキラキラする飾りがついていて、とてもきれい。
・青い泉:
町はずれにある小さな泉。水質の関係か、水面が澄んだコバルトブルー色に輝いて見えます。テラリウムのランタンでライトアップされていて、とても幻想的。コインを投げ入れて願い事をすると必ず叶うといわれています。
●NPC
町の中にいる以下のNPCとは、プレイングで指定していただければ接触できます。
指定がなければリプレイには登場しません。
・ハーフリング一家:
ローレラウラを拠点に活動する風景画家のプラムと夫のシスル、娘のローズ(2歳8ヶ月)。旅行中か何かのようです。
・メドゥの右腕:
自称「すっっっごく長生き」の吸血鬼であり、メドゥの指先の大幹部の人。遊びに来ているだけなので何もしなければ無害。全然知らない人とでも飲み会できるタイプ。
・シーラ:
大き目のキャスケット帽を被った旅人風のエルフ女性。帽子の襟足部分から茶色の三つ編みが一本出ています。化粧をしているものの、よく見ると顔にうっすら傷痕のようなものがあります。
・アナンディーン&リーミル:
観光にやってきた冒険者ギルド職員。一泊して明日リブラネスタに帰る予定。なお、宿の部屋は別々です。
マスターより
こんにちは、桃谷です!
ガラクタ市で購入したもののアイテム配布はありませんが、「こういうのが見つからないかな……?」といったプレイングは大歓迎です。ぜひ探してみてください!
リプレイ
「わー、露店が沢山だ。――ツッチーは何処に行きたい?」
エルゼリオ・レイノーラと愛ツチノコが広場に戻れば、そこには光と人のあふれる祭りの景色が広がっていた。
「さぁて、仕事も済んだってことで! 祭りを見て回るとするか」
ルイドは雑貨の露店が並ぶガラクタ市へと足を向ける。鼻腔をくすぐる香ばしい香りに一瞬意識を奪われるも、今は“掘り出し物”を探すほうが先だ。
(こんだけ物品で溢れてりゃ、面白いもんのひとつやふたつはあるだろ)
狙うは武器――それも、使い勝手が悪すぎるなどの理由で流れてきた所謂『訳あり品』だ。彼に続いて、サイラスとアステルも市の中へと入っていった。
「ゴールディの闇市に似てるかと思ったが。同盟の祭りは雰囲気が違うな」
一方、露店をやや物珍しげな表情で眺めているのはリューイ=ヴァレンゴルト。青い肌と額の両脇に生えた角がなければ、彼の種族を見誤る者は多いだろう。
(今すれ違った人、何処かで会ったことがあるような……?)
露店の商品に目を遣っていたトーラは、すぐ横を通り過ぎた帽子の女性に一瞬、目を奪われた。
「……どこでしたっけ」
茶色いお下げの女性を記憶の中から見つけ出せず、トーラはしきりに首をひねる。
「その奥の――そう、その辺りのクッションが見たいんだけど、出してもらっていいかな?」
アーダベルト商会の次期会頭として、半ば視察の感覚でガラクタ市を回っていたルーンス・ラグネル。彼が足を止めたのは、周囲に比べて客の少ない露店の前だった。
(物は悪くないのに、夏物を前に出してちゃ売れないよ……!)
展開の仕方が悪い――とは言わず、自然な形で商品位置の入れ替えを促したわけである。
冬だもんねぇ……などと頷いている店主と話しながら、ルーンスは情報収集も怠らない。店主に市の各区画の特色などを聞き、頭のメモに書き留めておく。
「このクッション、猫用?」
ルーンスが手に取ったのは、少しだけ口を開けた二枚貝型の白いクッション。開いた部分から猫が潜り込めるようになっている。
「色違いも欲しいかな」
サクラも兼ねて購入しよう、と。ルーンスは大きな声で店主と話しながら財布を取り出した。
「ゲルダちゃん、気をつけて」
「わ、わっ……」
女性物の雑貨が多く並ぶ一角で、人の波に流されかけたゲルダ・クラインの右手をリサ・ベイカーが掴んで引き戻した。
「わぁ、これ素敵ですよ。ゲルダちゃんにピッタリ」
「わ、リサちゃん、これ可愛い……!」
仲良く手をつないで覗いた露店で、リサが手に取ったのは生成色のショルダーバッグだ。
身長に合うものを探すと子ども用になりがちなゲルダ。しかしそれは、肩紐の長さが丁度よく、装飾も上品で子どもっぽさがない。
「えへへ。じゃあ、わたしもリサちゃんに似合うもの探します!」
バッグを一旦店主に預けて、あれはどうだろう、これも可愛い、と商品を手にとってはリサに合わせてみるゲルダ。
「うん。リサちゃんにはこれが似合うと思います」
長い時間をかけてゲルダが選んだのは、リサのリボンと同じ色のマフラーと手袋のセットだった。
「可愛い……! すみません、このセット買います。あと、さっきのバッグも」
「えっ?」
「わたしからゲルダちゃんに。プレゼントしたいんです」
びっくりした顔のゲルダに、リサは柔らかく微笑んで言う。ゲルダはしばらくパチパチと瞬きしていたが、
「わかりました! わたしがそのマフラーと手袋を買います。わたしも、リサちゃんにプレゼントしたいから……」
と、財布を取り出した。なんだかおかしくなって、笑い合う2人。
「また来年も、こんな風に二人でお出掛けができたら嬉しいです」
今度はお揃いのブレスレットを見ながら、ゲルダが言った。もちろん、嬉しそうに応じるリサ。
「今年も、リサちゃんと一緒でとっても楽しかったです。えへへ、来年もよろしくお願いしますねっ」
「わたしも、ゲルダちゃんと一緒で楽しかったですよ。こちらこそ、よろしくお願いします!」
「全く、ヒマな仕事極まりないぜ。……ま、収穫がないわけでもなさそうだけど」
露店を回り、千切れたネックレスなど“訳あり品”を安く購入しているのはアーテミシアだ。工芸細工を趣味とする彼女にとっては良い仕入れの場だが――
「アーテミシア?」
「ん? あぁ、アンタか」
振り向くと、分厚い古本を抱えたリコリス・アデュラリアが立っていた。同盟の薬草や毒草について纏めたそれが、彼女の戦利品らしい。
「あなたも来ていたのですか。偶然ですね」
「力仕事って聞いて来てみりゃ、ただの設営……あン?」
アーテミシアの嗅覚が何かを捉えた。
●
「へえ、こんなのやってるんだ。何か面白いものはあるかな」
片手にエトッフサンド、片手にグリューワインを持ったヨル・スレイマンが屋台街を出て掘り出し物探しの旅に出る。その後ろを、寝ぐせ頭の娘がボンヤリした様子で歩いていった。
「林檎ジュースだ。ヘレン、後で飲もうか」
「そーだねー……」
クッキーの袋を持ちながら屋台街を見回すイズル・M・ヴォルゴール。ヘレン・ワーグナーの返事は短いが、多分楽しんでいるのだろう。
「危ないよ。手伝おうか?」
大人数向けのピッチャーをいくつも運ぶリーミルを見かねて声をかけたのは、シルヴィア・A・カペルだった。
「……おや、お久しぶりだ。アナンディーン」
「シルヴィア君か。久しぶりだな」
運んだ先で待っていたのがアナンディーン1人だったことに驚いたシルヴィアだが、すぐに柔和な微笑みを浮かべて挨拶を交わす。
「色々買ったのだけど、量が多くてね。私を助けると思ってご一緒してもらえるかな」
「わあ、ぜひ一緒に食べましょう~!」
シルヴィアの買った料理も加わって、テーブルの上はちょっとしたパーティー状態だ。
「私達が安心して依頼を受けられるのも、冒険者ギルドの職員の皆のお陰だ。二人は何か困っていることはない?」
その瞬間、アナンディーンが半眼でリーミルを見るよう示した。
「嘘……!?」
シルヴィアが二度見した先には、既に空になって転がるピッチャーが2つ。
「悩みといったら部下のことだな」
「……今日は引率役か。休日までお疲れ様」
思わず笑みをこぼすシルヴィア。ワインとシチューを味わいながら、ふと、とある依頼のことを思い出した。
「私の初戦闘依頼なのだけど……義足の女性と犬3頭を熊型の魔獣から救出したんだ。その女性を馬車から落とした御者について、二人は何か聞いてないかい?」
「私、新人研修で報告書とか見たと思います!」
「……確か、証拠不十分で処罰はなかったはずだ。だが、噂になって仕事は解雇、妻子とは離縁したらしい」
「社会的な制裁を受けたんだね……」
ホッと胸を撫でおろすシルヴィア。妻子には同情するが、非情な男の元で子が育つよりは……とも思う。
本当に雷を喚べたなんて衝撃的だったよ、などと当時を振り返るシルヴィアの話を聞きながら、リーミルは5つ目のピッチャーを手に取った。
一方、別のテーブルでは、金髪の女性神官ロゼットとハーフリング一家が再会を果たしていた。
「あら……久しぶりね。覚えているかしら」
「もちろんです! ご無沙汰してます、ロゼットさん」
「本当に久しぶりだな。仕事で来たのか?」
設営の依頼で、と返すロゼットを、髪をポニーテールに結った女の子がじっと見上げている。
「こんいちあ!」
「こんにちは。ローズは……さすがに覚えてないかな。お話できるようになったのね。三人とも元気そうで良かったわ」
以前会った時はまだ殆ど喃語で、伝い歩きとハイハイしかできなかったローズ。しゃがんだロゼットの前でニコッと笑うその顔は、もう赤ちゃんではなく幼児のそれに成長していた。
「わぁ! ローズちゃん大きくなったねー?」
そんな4人の姿を見つけて駆けて来たのは、トーラだった。小柄な彼女からすれば背が伸びたローズの姿は衝撃的であり、感慨深くもあった。
「トーラさんもお久しぶりです。会えて嬉しい」
「良かったら二人も一緒にどうだ?」
「ごあんだおー。ちーちたべゆ」
両親が誘うそばから、ロゼットとトーラに屋台を指し示すローズ。せっかくだから、と二人もチキンやドライフルーツ入りのパンケーキを買ってきて、一緒にテーブルを囲むことにした。
「プラム、絵の仕事の調子はどう? 育児との両立も慣れたかしら」
「ええ、お得意様の紹介で依頼も増えてきたし……夫も頑張ってくれるから順調に仕事できてます」
ロゼットの問いに笑顔で答えるプラム。シスルもきちんと家事育児の分担を続けているのだろう。
「ローズちゃん本当に大きくなりましたね。動き回って大変でしょうし、お家のリフォームが必要なら呼んでください」
お庭の手入れも必要でしょうし、と続けるトーラ。すると、夫婦は少し口ごもった。
「……そういえば、シスルは料理に楽しみを感じるって言ってたわね。今も?」
「実は俺……港の仕事やめたんだ。今は新しい仕事の関係でリブラネスタに行く途中でさ」
以前にシスルの悩みを聞いていたロゼットが尋ねると、シスルはポリポリと頭を掻いて答える。かくり、とトーラが首を傾げた。
「料理人を目指すんです?」
「お二人も行ったローレラウラの大きな宿……あそこのオーナーがリブラネスタに新しい宿を開業するんです。そこに飾る絵を私が、料理関係の企画の手伝いを夫がさせてもらえることになったんですよ」
「凄いじゃない、二人とも。上手くいくといいわね!」
じゃあ前祝いをしよう――と。
ハーフリング一家とロゼット、トーラは、朗らかに笑って乾杯した。
●
(――イダ? あのイダか?)
特にあてもなくガラクタ市をぶらついていたシャドウの耳に、気になる名前が飛び込んできた。そちらを振り向けば、妙に薄着の男と大き目のキャスケット帽の女が探り合うような目で見つめ合っている。
「……あなた、誰なの」
声を低くした女の右手が、腰の短杖に触れる。キャスターなのだろうか。
(どれどれ……)
何となく興味が湧いたシャドウは、近くの露店の脇に立ち、人を待っているような振りをして聞き耳を立てることにする。
「あのー……。その人困ってるみたいだし、そのへんにしといてほしいんだけどー……」
すると、小走りに寄ってきた緑髪の娘――ヘレンが見かねたように男に声をかけた。
「やだなぁ。別に何も……」
ヘラヘラと不誠実そうな笑みを浮かべる男。不穏な空気を感じた冒険者がもう一人、近寄ってきた。
「どうした。店主も困ってるだろう」
ゴールディを離れても祭りに揉め事はつきものなのか、と胸の内で嘆息するリューイ。女性2人と男の間に割って入り、穏便に済ませるべく男と話すことにした。
「せっかくのお祭りなんだ。事情はあるかもしれないが、楽しんでいる人たちの迷惑になるようなことは止めないか?」
「だってその人、なんかイダの」
「きゃー、たすけてー、だれかー」
男の言葉を遮って、ヘレンが棒読みの悲鳴をあげる。
立ち止まり、ざわざわと4人を見つめる祭客達。
「どうかしたか?」
「お姉ちゃん! 見つけた!!」
男が頭を搔いていると、群衆をかき分けてイズルとマリイ・パルティスの2人が飛び出して来た。
マリイは女性の右腕をとって自分の腕と組み、チラ、と男のほうに視線を遣る。
「………お姉ちゃんの友達ですか?」
「ナンパですか? やめてくださいよ、俺の友達に」
行こ、とイズルが林檎ジュースを女性に渡して歩き出すと、群衆も興味を失って動き始める。左右に分かれていく人々の向こうにヘレンが目を遣れば、リコリスとアーテミシアの姿が見えた。
「だけど君、たぶん見られてるよ」
男の言葉に、ピタリ、と足を止める女性。
「ちょっとしつこいんじゃないか。飲み過ぎだ」
男の手の中にあるワインのカップを見て、リューイは男に反対方向へ行くよう促した。
「はーい。ごめんね騒がせちゃって」
(……確かに『イダ』と言ったな。あの帽子の女と関係があるのか? 見られてる、っていうのは……)
人込みの中に消えたキャスケット帽のエルフ女性の顔を思い返しながら、シャドウは一連の遣り取りに隠された何かを紐解こうとしていた。
後から来た男女は連れとそうでない者がいたようだが、彼らは何か知っているのだろうか。
――と、そこまで考えたところで、リューイとばっちり目が合った。
「いや、なんでもありませんよ、ハハハ」
「……そうか?」
不審そうに見つめるリューイにパタパタと片手を振って、シャドウはさっさとその場を離れることにした。
ガラクタ市を出た女性と冒険者達。広場の隅のランタンの下で女性が立ち止まれば、顔の傷がうっすらと浮かび上がった。
マリイは彼女の緑の双眸を見て、安堵したように息を吐く。
「……つい声をかけてしまったのですが、さっきの方は?」
妙な事を言っていた、黒髪の男。女性は小さく首を振った。
「……わからないけれど、吸血鬼よ。私からイダの気配がする、とか」
「イダの……それに吸血鬼ですか。ただのナンパ男ではないわけですね」
怜悧な紫の瞳をガラクタ市のほうに向け、そこに先程の男の姿がないか警戒するリコリス。女性へと向き直り、改めて無事を確認した。
「この間ぶりですね。こんな所で会えるとは」
「ええ、凄い偶然ね……」
「何であそこで待ってたってツラしてンな。オレの鼻は誤魔化せねーよ」
また変なヤローに絡まれてンのか? と呆れたような目を向けるアーテミシアを見て、女性はわずかに唇の端を上げてみせる。
「ふふ、相変わらず面白いのね。あなた」
「フン。まあテメーが何しようが依頼にならなきゃ知っちゃこっちゃねえし、どうなってももう知らねえけどな。精々また隠れんぼしないで済むようにするこった」
「それってさー、依頼になれば助けに行くよーってこと……?」
「あ? ンなこと言ってねぇだろうが」
首を傾げるヘレンに対し、アーテミシアは眉間に皺を寄せてそっぽを向いた。あれぇ、とヘレンが不思議そうな声を漏らし、女性の顔へと視線を動かす。
「久しぶり……元気にしてた?」
あの名前は呼ばなかったが、彼女の素性を隠さねばという意識は頭から抜けていた。えへへ、と笑うヘレンに、女性は小さく頷いて見せる。
「ええ。この通り」
「そう、か。……あ、いや……」
ヘレンと反対側で、先程から黙り込んだままだったイズルがようやく口を開いた。振り向いた緑の瞳が不意に自分の方を見て、彼は再び言葉を詰まらせる。
「いや、その……」
「……驚いた?」
帽子が落とす影の下、薄く浮かぶ傷跡。
これまでのこと、これからのこと。聞きたいことは無数にあるのに、どこまで口にすることが許されるだろう。ウンウン唸ってぐるぐる表情を変えるイズルを、女性はキョトンとした顔で見つめていた。
「お……お嬢さん、お名前聞いて良いですか?」
悩んだ末に口から出た質問に、一同は思わず噴き出してしまった。
普段あまり笑わないアーテミシアも肩を震わせているし、無表情のリコリスはポカンとしてイズルを見ている。
これじゃ俺がナンパ男だ……と肩を落とすイズル。
「私はシーラ。……それじゃ、あなた達のお名前は?」
顔を上げたイズルの前で、女性は笑っていた。
「さんせー。自己紹介タイムやろっかー……」
「では、夕食にしましょう。少し気になる依頼を受けましたので、それもお話しできれば」
ヘレンとリコリスが席を取りに行き、マリイが取り分けしやすそうなメニューを探す。
「せっかくだし、エトッフチキンとやらでも食うか。オメーの奢りな」
「あら、貧しい旅人にアレを買わせるの? ……冗談よ」
アーテミシアがからかうように言い、シーラが冗談を返す。
(……良かった)
イズルはその光景を、何も言えないまま見つめていた。
彼女が元気なら、今はそれでいい。
この時間は――一歩間違えば訪れることのなかった未来なのだから。
「良かった。無事だったか」
一行がテーブルへ移動しようとした時、市のほうからリューイが駆け寄ってきた。
「男除けになろうかと思ったが。大丈夫そうか?」
シーラのことが気になって追ってきたのだが、知り合いが多いようだし……と少し離れて様子を見ていたのだ。
「……さっきはありがとう。ええ、お陰で連れに会えたわ」
「そうか。それはよかった」
多分、この女性を取り巻く『連れ』は冒険者だ。彼女達には、何か秘密がある。
顔に大きな傷のあるエルフ。
冒険者ギルドの資料室にでも行けば、何かわかるのだろうか。
●
骨董品店や質屋の出店が多いエリアを、ひときわ目立つ褐色エルフの二人組がずんずん進んでいた。
真冬の寒風に喧嘩を売る彼女らの服装は、ローライズのホットパンツとドレスの残骸。
「がらくたは、ゴミ……とか、やくに立たないもの……ですよね?」
「ふっふっふっ……ここのガラクタ市はたまーーーにお宝が見つかる知る人ぞ知るスポットなのっ!」
首を傾げるミゼリア・L・ステュクスに、サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブは絶版本を探して古本露店を覗きながら答える。
「おたから……?」
宝物とは、例えばエドゥノーグ迷宮のモンスターがドロップする何かだったり、宝箱に詰まったお金だったり、そういうのではないのだろうか。
よくわからないながらも、ミゼリアはサフィラについて骨董品の店を訪れる。
「およ? この紋具は……おっちゃん! これまけて!」
すると、サフィラが何やら球状の紋具を手に取って店主と交渉し始めた。
「まける……負ける……?」
ミゼリアが説明書きを読んでみると、それは暗い所で光らせる紋具のようだ。起動すると壁や天井に美しい冬の星空を投影するらしく、値段も中々のもの。
「お目が高いね。これさえあればムード満点、彼氏との夜も盛り上がろうってもんよ。……これでどうだ?」
「にゃー……もう一声!」
「ひとこえ……もういちど、声……」
「いやこっちも商売だ。一点限りだからね、どうする?」
「にゃー!!!」
その時、
「……ご主人、可愛いお嬢さん達へのご祝儀と思ってもう少しだけ『勉強』してもらえないかな?」
しばらく彼女らを見ていた青髪の青年が、不意に店主へ声をかけた。端整な顔立ちにどことなく気品めいたものを感じさせる彼の手には、戦利品とおぼしき古道具がいくつも抱えられている。
「助けてくれるの? ありがとー!」
「兄さん。この紋具は一点もので……」
「そうかい? 向こうでも同じような物が安く売ってたんだけどね。……でも折角なら良心的な売り手からいいものを買いたいよね、お嬢さん」
こういう時は嘘も方便。目を引くものとの出合いも一期一会、ならば策士とならねばならない。
「無理にとは言わない。ご主人も生活があるからね。これくらいでどうかな」
「むむむ……」
「難しいかな。なら……これでは?」
「うーーーーーーん! わかったわかった。それでいいよ」
「やったー!!!」
嬉々として代金を払うサフィラ。柔らかに笑んで店主に礼を言う青年――クロンダイク。
「どうして……おみせのひとと、おはなしをすると……おねだんが、かわる……んですか……??」
ミゼリアには、わからなかった。
(変に高級志向なところより、こういうところの方が落ち着くわね……)
白い息の向こうに並ぶ、花や星を模したアクセサリーたち。ルベア・ベルニは、髪飾りを置いた一角に顔を近づけた。
「最近、こうやって遠出した時に買うことってあまりなかったし……」
花モチーフが多いけれど、季節感が少し気になる。リボンモチーフは可愛らしすぎるだろうか。
「お姉さん、寒色が似合うんじゃない?」
「……? え、ええ……そうかしら」
知らない黒髪の男がいきなり話しかけてきて、謎の距離感にちょっと引くルベア。やたらと薄着なのが気になった。
「誰。ええと……その格好、寒くないの?」
「寒くないよ。人間じゃないし」
「!」
思わず身構えるルベアだが、男は飄々とした顔で髪飾りをひとつ手に取り、フードの上から彼女の頭に添えてくる。
「うん、似合うよ。はい決まり」
青と透明の石で星を模した、シンプルながら美しい輝きをもつ髪飾り。勝手に決められたけれど、綺麗だった。
「……。せめて、もうちょっと目立たないように厚着とかしなさいよ」
「そうだよねぇ。冬のコートでも探してみるよ」
男は最後までヘラヘラ笑いながら、雑踏の中に消えていった。
「――あッ! ツッチー、勝手に他人様の腕に絡みに行ったら駄目だよ!! ……ゴメンなさい。ウチの子がご迷惑をお掛けしちゃって」」
ド派手なツチノコが宙を舞い、黒髪の男の腕にいきなり絡みついた。エルゼリオが慌てて駆け寄り、何とか引きはがす。
「あーっ!? 泥!!」
「ツチノコ? は地面を這うからね。しょうがないよね」
男のコートの袖には泥がべったり。エルゼリオは青褪めながら頭を下げた。
「すみません! あの、お詫びに新しい上着を買わせていただけませんか?」
「ちょうど新しいの探してたとこだから、大丈夫だよ~」
「いえ、よかったら一緒に選ばせてください!」
半ば押し切られるような形でエルゼリオと並んで歩きだした男。泥がついて何が困るのかよくわからないツッチーは、連れが増えて御機嫌だ。
「これはどうかな。裏地が厚くてあったかそう」
「僕は黒いのが好きかな~」
(……あれ? そういえば、随分と薄着だよね)
エルゼリオはふと、男の服装の不自然さに気が付いた。
試着のために脱いだコートは、まるで春物。その下は黒の襯衣一枚しか着ていない。
(地元の人……かな?)
触れた男の腕は、想像以上に冷たかった。
謎の男の春物コートを不審に思う冒険者がいる一方、不思議な薄着で注目を集める冒険者もいる。
「アクセは服みたいなもんだからな! いくらあっても困らねえ」
「お兄ちゃん風邪ひくよ」
お手頃価格のゴールド系ネックレスを何本かまとめて試着し、シルバーリングのような角飾りを手に取る上半身裸のナハシュ。店主は鏡を差し出しながら、乾いた笑いを漏らしていた。
「これが普段着だから気にすんな。角がなー、丁度こんくらいのサイズなんだよ。ああ俺のじゃねえんだが」
「こっちのはどうだい。シンプルなのが良いんだろう」
指で丸を作って見せるナハシュに、店主は角飾りに丁度良さそうなリングをいくつか差し出す。ナハシュはそれらをじっと見つめ――少し手入れすれば値段以上の価値が出るだろう一つを迷わず手に取った。
「そんじゃ、今試着してんのと一緒に買うぜ。あと、珍しい酒ってどのへんだ?」
サクッと支払いを済ませ、ナハシュは次の獲物を求めてガラクタ市をゆく。
そして、彼とすれ違いでこの区画にやってきたのは、ヨルである。
「ああ、この革ホルダーは良いね。同居人が使ってくれそうだ」
その同居人であるナハシュがさっきまでここに居たなど、誰が想像できようか。
「さっきの兄ちゃんもソレを気にしてたなぁ。買うなら今だぞ」
店主がそう言うので買うことにしたヨルだが、そのさっきの兄ちゃんがナハシュであるなどと誰が――。
別の店で自分用にシャルガネの蒸し物用竹セイロとおろし金を買ったヨル。次は同居する小さな姉妹の服やおもちゃだ。
「……気がついたらだいぶ買い込んでしまったな」
店の女性に相談しながら選んだ服やぬいぐるみは、少しのサイズ違いや綻びもある。
けれど、その修繕もきっと楽しい思い出になるはずだ。
「ん……ほぉ、なるほど。……いいじゃねぇか」
好みの武器を探してガラクタ市を行ったり来たり。ルイドがようやく見つけたそれは、
「お兄ちゃん、それ微妙じゃないかい」
店主ですら、あまりオススメしない逸品であった。
一見すると30センチほどの短剣なのだが、手元のボタンを押すと第二、第三の刃がV字型に開き、刃が3本になるのである。スプリング式のトリプルダガーというらしいが、三連撃ができそうでもなく、通常の戦闘で使いやすいかというと疑問が残る。
そりゃ普通は売れねぇよ、と返しつつも、ルイドはその武器に惹かれるものを感じていた。
「ま、活かせる機会があるかどうかは別の話だが……手の内ってのは色々とあって損はしねぇもんだしな」
安くしとくよ、という店主の言葉には甘えることにして、売買成立である。
(へぇ……あんなのもあるんだな)
通りすがりにルイドのトリプルダガーを眺めつつ、感心したように白い息を吐いたのは海神 江流。エトッフサンドを齧りながら散策中――だったのだが。
「あれ……あんたは……」
前から歩いて来た女性の顔に、江流の目は釘付けになった。
「……いや、失礼。顔見知りに似ていたもんで」
「そう……あなたも私の知り合いに似ているわ」
そう言って僅かに微笑んだ女性の隣では、見知った顔が悪戯っぽく笑っていた。
「私のお姉ちゃんですよ~、海神さん」
マリイだ。
ああ、そうか――と、何となく。江流は察した。
「お姉さんか。俺は海神 江流。……何処かで死んでしまったと聞いていた人と、また会えたような気がしてね、嬉しくてつい」
「シーラよ。何故かしらね、私も嬉しいわ」
「これから何処に?」
事情は、聞かなかった。
「リコリス……妹の友人と相談したのだけど、帝国へ行こうと思うの」
「帝国……例の皇女とゴブリンの異変が気になる、か」
頷いた彼女に、江流もまた、何も言わずに頷き返す。
「……エルフに自然の事で説教するなんてのは間抜けだけれど、冷えるから気をつけて。いい旅路をな」
「あなたも、体に気を付けて」
2人を見送って、江流は少しだけ唇の端を緩めた。
許される事じゃないのかもしれない。でも。
「……少し、救われた気分になれた気がするよ」
「江流さん! いいところで会えた。 あっちに可愛い鳥の巣箱があって――何か良い事あったの?」
「ルーンス君。ああ、ちょっとね」
そんな江流を見つけて駆け寄ってきたのは、猫用クッションを4つも抱えたルーンスだった。江流の表情を見て、不思議そうに首を傾げる。
●
屋台街の入口に聳える巨大なツリー。
その枝の下で、ルベアはひとり、エトッフサンドを齧る。
「お礼だよっ! 遠慮しないで食べてよねっ」
「ねぎり……勉強に、なりました……」
「礼だなんて。君達の目を引いたならそれも縁あるもの、いい買い物ができたのなら良かったよ」
ルベアの視線の先では、サフィラとミゼリアが大量の屋台グルメを並べ、クロンダイクに勧めている。折角だからと料理を楽しみながら、クロンダイクは値切り交渉のコツを少しだけ話し始めた。
「値切りは店じまい間際が一番狙い目なんだけど、良い物が残っているとは限らない。そんな時は――」
「もうガラクタ市は見に行った? シルヴィアが好きそうなブローチがあったよ」
「本当? 食べ終わったら行ってみるよ」
まだ残っているかな、僕が買ってこようか、と朗らかな雰囲気で話すルーンスとシルヴィア。
その後ろでは、通りすがりのゲルダに何故か「ガンバレ!」という感じのポーズをとられたリーミルが、意味がわからない顔でとりあえず同じポーズを返している。少し遅れて、何かを察したリサも同じポーズをとっていた。
「よぉ、二人とも飲んでるかー?」
アナンディーンの左側から、寒そうな格好のナハシュがワインのカップを片手に歩いてくる。
「確か馬車の一件以来だったか? 今回はちゃんと宿とれててよかったな! 酒は奢らねえぞ」
「え~~! 奢ってくれないんですか~? じゃあ飲み比べますか!?」
「程々にしとけ。また吐かれたらたまんねえんだよ」
吐瀉を警戒されたリーミルが頬を膨らませ、アナンディーンが複雑な表情を浮かべた。
目の前を、幸せそうなカップルが横切っていく。
(羨まし――くなんかない)
ルベアは、エトッフサンドの最後の一口をぐいっと口に押し込んだ。
●
観光客の姿もまばらになってきた頃、マリイとシーラは青い泉を訪れていた。
「……一つだけ本当に願いが叶うとしたら、何を願いますか?」
「そうね……」
マリイの問いに、シーラは考え込むように目線を斜め上へ向ける。
「私、過去を想えば沢山あるのに、先の事となると分からなくて……シーラさんは、何か見つけられましたか?」
どこか寂しそうな顔で誤魔化すように微笑うマリイ。シーラは泉を見つめ――コインを一枚、投げ入れた。
「……私もあなた達も無事で、来年もここで会えるといいわね」
「――シーラさん、それ。いいですね」
2人のエルフが立ち去った頃。トーラもまた、泉にやって来た。
「……」
「熱心だね~。何お願いしたの」
「なっ、なんですか。秘密です!」
いきなりニュッと現れた黒髪の男に驚いたトーラが、ピョンと飛びのいて距離を取る。
「えーケチ」
「知らない人に教えないです! それじゃ!」
絶対変質者だ――そう思ったトーラが、授恵者の速度で街のほうへと逃げていった。
取り残された男に声をかけたのは、泉のほとりに腰を下ろしていたレピド・クロサイトだ。
「この泉……本当に凄いな。何故こんな色になるんだ……?」
「水質の関係らしいよ。百年前からこう」
「百……?」
厚手のコートとマフラー。ヒューマンに見えるが、長命種なのだろうか……と、レピドはぼんやり考えながら男を見上げる。
「君、ホムンクルスでしょ。色んなことが珍しい時期だよね」
「凄いな、一目でホムンクルスとバレたのは初めてだ」
賢者の石は隠しているはずなのに、と不思議そうに首をひねるレピド。手の中のコインを持て余すようにいじる男を見て、少し興味がわいた。
「俺は願い事は別の場所でしてきたが……アンタは何か願う事はあるのか?」
コインを投げ入れて、男は何を願うでもなく笑う。
「僕の願いは叶わないから、泉の営業妨害になっちゃうよ」
「……無茶な願いなのか?」
「そうだね……何百年も待ったけど。これから何百年経っても、叶わない」
男は、どこか寂しげな赤い瞳でレピドを見た。
「失礼かもしれないけど、僕はね。君達みたいに、何もかも忘れられたら良かったと思う」
「……アンタは、一体……」
「僕は」
歩き出した男は、すれ違いざまにレピドの耳元に口を近づける。
「メドゥの右腕だよ」
レピドが振り返ると、男の姿は夜の闇に消えていた。
エルゼリオ・レイノーラと愛ツチノコが広場に戻れば、そこには光と人のあふれる祭りの景色が広がっていた。
「さぁて、仕事も済んだってことで! 祭りを見て回るとするか」
ルイドは雑貨の露店が並ぶガラクタ市へと足を向ける。鼻腔をくすぐる香ばしい香りに一瞬意識を奪われるも、今は“掘り出し物”を探すほうが先だ。
(こんだけ物品で溢れてりゃ、面白いもんのひとつやふたつはあるだろ)
狙うは武器――それも、使い勝手が悪すぎるなどの理由で流れてきた所謂『訳あり品』だ。彼に続いて、サイラスとアステルも市の中へと入っていった。
「ゴールディの闇市に似てるかと思ったが。同盟の祭りは雰囲気が違うな」
一方、露店をやや物珍しげな表情で眺めているのはリューイ=ヴァレンゴルト。青い肌と額の両脇に生えた角がなければ、彼の種族を見誤る者は多いだろう。
(今すれ違った人、何処かで会ったことがあるような……?)
露店の商品に目を遣っていたトーラは、すぐ横を通り過ぎた帽子の女性に一瞬、目を奪われた。
「……どこでしたっけ」
茶色いお下げの女性を記憶の中から見つけ出せず、トーラはしきりに首をひねる。
「その奥の――そう、その辺りのクッションが見たいんだけど、出してもらっていいかな?」
アーダベルト商会の次期会頭として、半ば視察の感覚でガラクタ市を回っていたルーンス・ラグネル。彼が足を止めたのは、周囲に比べて客の少ない露店の前だった。
(物は悪くないのに、夏物を前に出してちゃ売れないよ……!)
展開の仕方が悪い――とは言わず、自然な形で商品位置の入れ替えを促したわけである。
冬だもんねぇ……などと頷いている店主と話しながら、ルーンスは情報収集も怠らない。店主に市の各区画の特色などを聞き、頭のメモに書き留めておく。
「このクッション、猫用?」
ルーンスが手に取ったのは、少しだけ口を開けた二枚貝型の白いクッション。開いた部分から猫が潜り込めるようになっている。
「色違いも欲しいかな」
サクラも兼ねて購入しよう、と。ルーンスは大きな声で店主と話しながら財布を取り出した。
「ゲルダちゃん、気をつけて」
「わ、わっ……」
女性物の雑貨が多く並ぶ一角で、人の波に流されかけたゲルダ・クラインの右手をリサ・ベイカーが掴んで引き戻した。
「わぁ、これ素敵ですよ。ゲルダちゃんにピッタリ」
「わ、リサちゃん、これ可愛い……!」
仲良く手をつないで覗いた露店で、リサが手に取ったのは生成色のショルダーバッグだ。
身長に合うものを探すと子ども用になりがちなゲルダ。しかしそれは、肩紐の長さが丁度よく、装飾も上品で子どもっぽさがない。
「えへへ。じゃあ、わたしもリサちゃんに似合うもの探します!」
バッグを一旦店主に預けて、あれはどうだろう、これも可愛い、と商品を手にとってはリサに合わせてみるゲルダ。
「うん。リサちゃんにはこれが似合うと思います」
長い時間をかけてゲルダが選んだのは、リサのリボンと同じ色のマフラーと手袋のセットだった。
「可愛い……! すみません、このセット買います。あと、さっきのバッグも」
「えっ?」
「わたしからゲルダちゃんに。プレゼントしたいんです」
びっくりした顔のゲルダに、リサは柔らかく微笑んで言う。ゲルダはしばらくパチパチと瞬きしていたが、
「わかりました! わたしがそのマフラーと手袋を買います。わたしも、リサちゃんにプレゼントしたいから……」
と、財布を取り出した。なんだかおかしくなって、笑い合う2人。
「また来年も、こんな風に二人でお出掛けができたら嬉しいです」
今度はお揃いのブレスレットを見ながら、ゲルダが言った。もちろん、嬉しそうに応じるリサ。
「今年も、リサちゃんと一緒でとっても楽しかったです。えへへ、来年もよろしくお願いしますねっ」
「わたしも、ゲルダちゃんと一緒で楽しかったですよ。こちらこそ、よろしくお願いします!」
「全く、ヒマな仕事極まりないぜ。……ま、収穫がないわけでもなさそうだけど」
露店を回り、千切れたネックレスなど“訳あり品”を安く購入しているのはアーテミシアだ。工芸細工を趣味とする彼女にとっては良い仕入れの場だが――
「アーテミシア?」
「ん? あぁ、アンタか」
振り向くと、分厚い古本を抱えたリコリス・アデュラリアが立っていた。同盟の薬草や毒草について纏めたそれが、彼女の戦利品らしい。
「あなたも来ていたのですか。偶然ですね」
「力仕事って聞いて来てみりゃ、ただの設営……あン?」
アーテミシアの嗅覚が何かを捉えた。
●
「へえ、こんなのやってるんだ。何か面白いものはあるかな」
片手にエトッフサンド、片手にグリューワインを持ったヨル・スレイマンが屋台街を出て掘り出し物探しの旅に出る。その後ろを、寝ぐせ頭の娘がボンヤリした様子で歩いていった。
「林檎ジュースだ。ヘレン、後で飲もうか」
「そーだねー……」
クッキーの袋を持ちながら屋台街を見回すイズル・M・ヴォルゴール。ヘレン・ワーグナーの返事は短いが、多分楽しんでいるのだろう。
「危ないよ。手伝おうか?」
大人数向けのピッチャーをいくつも運ぶリーミルを見かねて声をかけたのは、シルヴィア・A・カペルだった。
「……おや、お久しぶりだ。アナンディーン」
「シルヴィア君か。久しぶりだな」
運んだ先で待っていたのがアナンディーン1人だったことに驚いたシルヴィアだが、すぐに柔和な微笑みを浮かべて挨拶を交わす。
「色々買ったのだけど、量が多くてね。私を助けると思ってご一緒してもらえるかな」
「わあ、ぜひ一緒に食べましょう~!」
シルヴィアの買った料理も加わって、テーブルの上はちょっとしたパーティー状態だ。
「私達が安心して依頼を受けられるのも、冒険者ギルドの職員の皆のお陰だ。二人は何か困っていることはない?」
その瞬間、アナンディーンが半眼でリーミルを見るよう示した。
「嘘……!?」
シルヴィアが二度見した先には、既に空になって転がるピッチャーが2つ。
「悩みといったら部下のことだな」
「……今日は引率役か。休日までお疲れ様」
思わず笑みをこぼすシルヴィア。ワインとシチューを味わいながら、ふと、とある依頼のことを思い出した。
「私の初戦闘依頼なのだけど……義足の女性と犬3頭を熊型の魔獣から救出したんだ。その女性を馬車から落とした御者について、二人は何か聞いてないかい?」
「私、新人研修で報告書とか見たと思います!」
「……確か、証拠不十分で処罰はなかったはずだ。だが、噂になって仕事は解雇、妻子とは離縁したらしい」
「社会的な制裁を受けたんだね……」
ホッと胸を撫でおろすシルヴィア。妻子には同情するが、非情な男の元で子が育つよりは……とも思う。
本当に雷を喚べたなんて衝撃的だったよ、などと当時を振り返るシルヴィアの話を聞きながら、リーミルは5つ目のピッチャーを手に取った。
一方、別のテーブルでは、金髪の女性神官ロゼットとハーフリング一家が再会を果たしていた。
「あら……久しぶりね。覚えているかしら」
「もちろんです! ご無沙汰してます、ロゼットさん」
「本当に久しぶりだな。仕事で来たのか?」
設営の依頼で、と返すロゼットを、髪をポニーテールに結った女の子がじっと見上げている。
「こんいちあ!」
「こんにちは。ローズは……さすがに覚えてないかな。お話できるようになったのね。三人とも元気そうで良かったわ」
以前会った時はまだ殆ど喃語で、伝い歩きとハイハイしかできなかったローズ。しゃがんだロゼットの前でニコッと笑うその顔は、もう赤ちゃんではなく幼児のそれに成長していた。
「わぁ! ローズちゃん大きくなったねー?」
そんな4人の姿を見つけて駆けて来たのは、トーラだった。小柄な彼女からすれば背が伸びたローズの姿は衝撃的であり、感慨深くもあった。
「トーラさんもお久しぶりです。会えて嬉しい」
「良かったら二人も一緒にどうだ?」
「ごあんだおー。ちーちたべゆ」
両親が誘うそばから、ロゼットとトーラに屋台を指し示すローズ。せっかくだから、と二人もチキンやドライフルーツ入りのパンケーキを買ってきて、一緒にテーブルを囲むことにした。
「プラム、絵の仕事の調子はどう? 育児との両立も慣れたかしら」
「ええ、お得意様の紹介で依頼も増えてきたし……夫も頑張ってくれるから順調に仕事できてます」
ロゼットの問いに笑顔で答えるプラム。シスルもきちんと家事育児の分担を続けているのだろう。
「ローズちゃん本当に大きくなりましたね。動き回って大変でしょうし、お家のリフォームが必要なら呼んでください」
お庭の手入れも必要でしょうし、と続けるトーラ。すると、夫婦は少し口ごもった。
「……そういえば、シスルは料理に楽しみを感じるって言ってたわね。今も?」
「実は俺……港の仕事やめたんだ。今は新しい仕事の関係でリブラネスタに行く途中でさ」
以前にシスルの悩みを聞いていたロゼットが尋ねると、シスルはポリポリと頭を掻いて答える。かくり、とトーラが首を傾げた。
「料理人を目指すんです?」
「お二人も行ったローレラウラの大きな宿……あそこのオーナーがリブラネスタに新しい宿を開業するんです。そこに飾る絵を私が、料理関係の企画の手伝いを夫がさせてもらえることになったんですよ」
「凄いじゃない、二人とも。上手くいくといいわね!」
じゃあ前祝いをしよう――と。
ハーフリング一家とロゼット、トーラは、朗らかに笑って乾杯した。
●
(――イダ? あのイダか?)
特にあてもなくガラクタ市をぶらついていたシャドウの耳に、気になる名前が飛び込んできた。そちらを振り向けば、妙に薄着の男と大き目のキャスケット帽の女が探り合うような目で見つめ合っている。
「……あなた、誰なの」
声を低くした女の右手が、腰の短杖に触れる。キャスターなのだろうか。
(どれどれ……)
何となく興味が湧いたシャドウは、近くの露店の脇に立ち、人を待っているような振りをして聞き耳を立てることにする。
「あのー……。その人困ってるみたいだし、そのへんにしといてほしいんだけどー……」
すると、小走りに寄ってきた緑髪の娘――ヘレンが見かねたように男に声をかけた。
「やだなぁ。別に何も……」
ヘラヘラと不誠実そうな笑みを浮かべる男。不穏な空気を感じた冒険者がもう一人、近寄ってきた。
「どうした。店主も困ってるだろう」
ゴールディを離れても祭りに揉め事はつきものなのか、と胸の内で嘆息するリューイ。女性2人と男の間に割って入り、穏便に済ませるべく男と話すことにした。
「せっかくのお祭りなんだ。事情はあるかもしれないが、楽しんでいる人たちの迷惑になるようなことは止めないか?」
「だってその人、なんかイダの」
「きゃー、たすけてー、だれかー」
男の言葉を遮って、ヘレンが棒読みの悲鳴をあげる。
立ち止まり、ざわざわと4人を見つめる祭客達。
「どうかしたか?」
「お姉ちゃん! 見つけた!!」
男が頭を搔いていると、群衆をかき分けてイズルとマリイ・パルティスの2人が飛び出して来た。
マリイは女性の右腕をとって自分の腕と組み、チラ、と男のほうに視線を遣る。
「………お姉ちゃんの友達ですか?」
「ナンパですか? やめてくださいよ、俺の友達に」
行こ、とイズルが林檎ジュースを女性に渡して歩き出すと、群衆も興味を失って動き始める。左右に分かれていく人々の向こうにヘレンが目を遣れば、リコリスとアーテミシアの姿が見えた。
「だけど君、たぶん見られてるよ」
男の言葉に、ピタリ、と足を止める女性。
「ちょっとしつこいんじゃないか。飲み過ぎだ」
男の手の中にあるワインのカップを見て、リューイは男に反対方向へ行くよう促した。
「はーい。ごめんね騒がせちゃって」
(……確かに『イダ』と言ったな。あの帽子の女と関係があるのか? 見られてる、っていうのは……)
人込みの中に消えたキャスケット帽のエルフ女性の顔を思い返しながら、シャドウは一連の遣り取りに隠された何かを紐解こうとしていた。
後から来た男女は連れとそうでない者がいたようだが、彼らは何か知っているのだろうか。
――と、そこまで考えたところで、リューイとばっちり目が合った。
「いや、なんでもありませんよ、ハハハ」
「……そうか?」
不審そうに見つめるリューイにパタパタと片手を振って、シャドウはさっさとその場を離れることにした。
ガラクタ市を出た女性と冒険者達。広場の隅のランタンの下で女性が立ち止まれば、顔の傷がうっすらと浮かび上がった。
マリイは彼女の緑の双眸を見て、安堵したように息を吐く。
「……つい声をかけてしまったのですが、さっきの方は?」
妙な事を言っていた、黒髪の男。女性は小さく首を振った。
「……わからないけれど、吸血鬼よ。私からイダの気配がする、とか」
「イダの……それに吸血鬼ですか。ただのナンパ男ではないわけですね」
怜悧な紫の瞳をガラクタ市のほうに向け、そこに先程の男の姿がないか警戒するリコリス。女性へと向き直り、改めて無事を確認した。
「この間ぶりですね。こんな所で会えるとは」
「ええ、凄い偶然ね……」
「何であそこで待ってたってツラしてンな。オレの鼻は誤魔化せねーよ」
また変なヤローに絡まれてンのか? と呆れたような目を向けるアーテミシアを見て、女性はわずかに唇の端を上げてみせる。
「ふふ、相変わらず面白いのね。あなた」
「フン。まあテメーが何しようが依頼にならなきゃ知っちゃこっちゃねえし、どうなってももう知らねえけどな。精々また隠れんぼしないで済むようにするこった」
「それってさー、依頼になれば助けに行くよーってこと……?」
「あ? ンなこと言ってねぇだろうが」
首を傾げるヘレンに対し、アーテミシアは眉間に皺を寄せてそっぽを向いた。あれぇ、とヘレンが不思議そうな声を漏らし、女性の顔へと視線を動かす。
「久しぶり……元気にしてた?」
あの名前は呼ばなかったが、彼女の素性を隠さねばという意識は頭から抜けていた。えへへ、と笑うヘレンに、女性は小さく頷いて見せる。
「ええ。この通り」
「そう、か。……あ、いや……」
ヘレンと反対側で、先程から黙り込んだままだったイズルがようやく口を開いた。振り向いた緑の瞳が不意に自分の方を見て、彼は再び言葉を詰まらせる。
「いや、その……」
「……驚いた?」
帽子が落とす影の下、薄く浮かぶ傷跡。
これまでのこと、これからのこと。聞きたいことは無数にあるのに、どこまで口にすることが許されるだろう。ウンウン唸ってぐるぐる表情を変えるイズルを、女性はキョトンとした顔で見つめていた。
「お……お嬢さん、お名前聞いて良いですか?」
悩んだ末に口から出た質問に、一同は思わず噴き出してしまった。
普段あまり笑わないアーテミシアも肩を震わせているし、無表情のリコリスはポカンとしてイズルを見ている。
これじゃ俺がナンパ男だ……と肩を落とすイズル。
「私はシーラ。……それじゃ、あなた達のお名前は?」
顔を上げたイズルの前で、女性は笑っていた。
「さんせー。自己紹介タイムやろっかー……」
「では、夕食にしましょう。少し気になる依頼を受けましたので、それもお話しできれば」
ヘレンとリコリスが席を取りに行き、マリイが取り分けしやすそうなメニューを探す。
「せっかくだし、エトッフチキンとやらでも食うか。オメーの奢りな」
「あら、貧しい旅人にアレを買わせるの? ……冗談よ」
アーテミシアがからかうように言い、シーラが冗談を返す。
(……良かった)
イズルはその光景を、何も言えないまま見つめていた。
彼女が元気なら、今はそれでいい。
この時間は――一歩間違えば訪れることのなかった未来なのだから。
「良かった。無事だったか」
一行がテーブルへ移動しようとした時、市のほうからリューイが駆け寄ってきた。
「男除けになろうかと思ったが。大丈夫そうか?」
シーラのことが気になって追ってきたのだが、知り合いが多いようだし……と少し離れて様子を見ていたのだ。
「……さっきはありがとう。ええ、お陰で連れに会えたわ」
「そうか。それはよかった」
多分、この女性を取り巻く『連れ』は冒険者だ。彼女達には、何か秘密がある。
顔に大きな傷のあるエルフ。
冒険者ギルドの資料室にでも行けば、何かわかるのだろうか。
●
骨董品店や質屋の出店が多いエリアを、ひときわ目立つ褐色エルフの二人組がずんずん進んでいた。
真冬の寒風に喧嘩を売る彼女らの服装は、ローライズのホットパンツとドレスの残骸。
「がらくたは、ゴミ……とか、やくに立たないもの……ですよね?」
「ふっふっふっ……ここのガラクタ市はたまーーーにお宝が見つかる知る人ぞ知るスポットなのっ!」
首を傾げるミゼリア・L・ステュクスに、サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブは絶版本を探して古本露店を覗きながら答える。
「おたから……?」
宝物とは、例えばエドゥノーグ迷宮のモンスターがドロップする何かだったり、宝箱に詰まったお金だったり、そういうのではないのだろうか。
よくわからないながらも、ミゼリアはサフィラについて骨董品の店を訪れる。
「およ? この紋具は……おっちゃん! これまけて!」
すると、サフィラが何やら球状の紋具を手に取って店主と交渉し始めた。
「まける……負ける……?」
ミゼリアが説明書きを読んでみると、それは暗い所で光らせる紋具のようだ。起動すると壁や天井に美しい冬の星空を投影するらしく、値段も中々のもの。
「お目が高いね。これさえあればムード満点、彼氏との夜も盛り上がろうってもんよ。……これでどうだ?」
「にゃー……もう一声!」
「ひとこえ……もういちど、声……」
「いやこっちも商売だ。一点限りだからね、どうする?」
「にゃー!!!」
その時、
「……ご主人、可愛いお嬢さん達へのご祝儀と思ってもう少しだけ『勉強』してもらえないかな?」
しばらく彼女らを見ていた青髪の青年が、不意に店主へ声をかけた。端整な顔立ちにどことなく気品めいたものを感じさせる彼の手には、戦利品とおぼしき古道具がいくつも抱えられている。
「助けてくれるの? ありがとー!」
「兄さん。この紋具は一点もので……」
「そうかい? 向こうでも同じような物が安く売ってたんだけどね。……でも折角なら良心的な売り手からいいものを買いたいよね、お嬢さん」
こういう時は嘘も方便。目を引くものとの出合いも一期一会、ならば策士とならねばならない。
「無理にとは言わない。ご主人も生活があるからね。これくらいでどうかな」
「むむむ……」
「難しいかな。なら……これでは?」
「うーーーーーーん! わかったわかった。それでいいよ」
「やったー!!!」
嬉々として代金を払うサフィラ。柔らかに笑んで店主に礼を言う青年――クロンダイク。
「どうして……おみせのひとと、おはなしをすると……おねだんが、かわる……んですか……??」
ミゼリアには、わからなかった。
(変に高級志向なところより、こういうところの方が落ち着くわね……)
白い息の向こうに並ぶ、花や星を模したアクセサリーたち。ルベア・ベルニは、髪飾りを置いた一角に顔を近づけた。
「最近、こうやって遠出した時に買うことってあまりなかったし……」
花モチーフが多いけれど、季節感が少し気になる。リボンモチーフは可愛らしすぎるだろうか。
「お姉さん、寒色が似合うんじゃない?」
「……? え、ええ……そうかしら」
知らない黒髪の男がいきなり話しかけてきて、謎の距離感にちょっと引くルベア。やたらと薄着なのが気になった。
「誰。ええと……その格好、寒くないの?」
「寒くないよ。人間じゃないし」
「!」
思わず身構えるルベアだが、男は飄々とした顔で髪飾りをひとつ手に取り、フードの上から彼女の頭に添えてくる。
「うん、似合うよ。はい決まり」
青と透明の石で星を模した、シンプルながら美しい輝きをもつ髪飾り。勝手に決められたけれど、綺麗だった。
「……。せめて、もうちょっと目立たないように厚着とかしなさいよ」
「そうだよねぇ。冬のコートでも探してみるよ」
男は最後までヘラヘラ笑いながら、雑踏の中に消えていった。
「――あッ! ツッチー、勝手に他人様の腕に絡みに行ったら駄目だよ!! ……ゴメンなさい。ウチの子がご迷惑をお掛けしちゃって」」
ド派手なツチノコが宙を舞い、黒髪の男の腕にいきなり絡みついた。エルゼリオが慌てて駆け寄り、何とか引きはがす。
「あーっ!? 泥!!」
「ツチノコ? は地面を這うからね。しょうがないよね」
男のコートの袖には泥がべったり。エルゼリオは青褪めながら頭を下げた。
「すみません! あの、お詫びに新しい上着を買わせていただけませんか?」
「ちょうど新しいの探してたとこだから、大丈夫だよ~」
「いえ、よかったら一緒に選ばせてください!」
半ば押し切られるような形でエルゼリオと並んで歩きだした男。泥がついて何が困るのかよくわからないツッチーは、連れが増えて御機嫌だ。
「これはどうかな。裏地が厚くてあったかそう」
「僕は黒いのが好きかな~」
(……あれ? そういえば、随分と薄着だよね)
エルゼリオはふと、男の服装の不自然さに気が付いた。
試着のために脱いだコートは、まるで春物。その下は黒の襯衣一枚しか着ていない。
(地元の人……かな?)
触れた男の腕は、想像以上に冷たかった。
謎の男の春物コートを不審に思う冒険者がいる一方、不思議な薄着で注目を集める冒険者もいる。
「アクセは服みたいなもんだからな! いくらあっても困らねえ」
「お兄ちゃん風邪ひくよ」
お手頃価格のゴールド系ネックレスを何本かまとめて試着し、シルバーリングのような角飾りを手に取る上半身裸のナハシュ。店主は鏡を差し出しながら、乾いた笑いを漏らしていた。
「これが普段着だから気にすんな。角がなー、丁度こんくらいのサイズなんだよ。ああ俺のじゃねえんだが」
「こっちのはどうだい。シンプルなのが良いんだろう」
指で丸を作って見せるナハシュに、店主は角飾りに丁度良さそうなリングをいくつか差し出す。ナハシュはそれらをじっと見つめ――少し手入れすれば値段以上の価値が出るだろう一つを迷わず手に取った。
「そんじゃ、今試着してんのと一緒に買うぜ。あと、珍しい酒ってどのへんだ?」
サクッと支払いを済ませ、ナハシュは次の獲物を求めてガラクタ市をゆく。
そして、彼とすれ違いでこの区画にやってきたのは、ヨルである。
「ああ、この革ホルダーは良いね。同居人が使ってくれそうだ」
その同居人であるナハシュがさっきまでここに居たなど、誰が想像できようか。
「さっきの兄ちゃんもソレを気にしてたなぁ。買うなら今だぞ」
店主がそう言うので買うことにしたヨルだが、そのさっきの兄ちゃんがナハシュであるなどと誰が――。
別の店で自分用にシャルガネの蒸し物用竹セイロとおろし金を買ったヨル。次は同居する小さな姉妹の服やおもちゃだ。
「……気がついたらだいぶ買い込んでしまったな」
店の女性に相談しながら選んだ服やぬいぐるみは、少しのサイズ違いや綻びもある。
けれど、その修繕もきっと楽しい思い出になるはずだ。
「ん……ほぉ、なるほど。……いいじゃねぇか」
好みの武器を探してガラクタ市を行ったり来たり。ルイドがようやく見つけたそれは、
「お兄ちゃん、それ微妙じゃないかい」
店主ですら、あまりオススメしない逸品であった。
一見すると30センチほどの短剣なのだが、手元のボタンを押すと第二、第三の刃がV字型に開き、刃が3本になるのである。スプリング式のトリプルダガーというらしいが、三連撃ができそうでもなく、通常の戦闘で使いやすいかというと疑問が残る。
そりゃ普通は売れねぇよ、と返しつつも、ルイドはその武器に惹かれるものを感じていた。
「ま、活かせる機会があるかどうかは別の話だが……手の内ってのは色々とあって損はしねぇもんだしな」
安くしとくよ、という店主の言葉には甘えることにして、売買成立である。
(へぇ……あんなのもあるんだな)
通りすがりにルイドのトリプルダガーを眺めつつ、感心したように白い息を吐いたのは海神 江流。エトッフサンドを齧りながら散策中――だったのだが。
「あれ……あんたは……」
前から歩いて来た女性の顔に、江流の目は釘付けになった。
「……いや、失礼。顔見知りに似ていたもんで」
「そう……あなたも私の知り合いに似ているわ」
そう言って僅かに微笑んだ女性の隣では、見知った顔が悪戯っぽく笑っていた。
「私のお姉ちゃんですよ~、海神さん」
マリイだ。
ああ、そうか――と、何となく。江流は察した。
「お姉さんか。俺は海神 江流。……何処かで死んでしまったと聞いていた人と、また会えたような気がしてね、嬉しくてつい」
「シーラよ。何故かしらね、私も嬉しいわ」
「これから何処に?」
事情は、聞かなかった。
「リコリス……妹の友人と相談したのだけど、帝国へ行こうと思うの」
「帝国……例の皇女とゴブリンの異変が気になる、か」
頷いた彼女に、江流もまた、何も言わずに頷き返す。
「……エルフに自然の事で説教するなんてのは間抜けだけれど、冷えるから気をつけて。いい旅路をな」
「あなたも、体に気を付けて」
2人を見送って、江流は少しだけ唇の端を緩めた。
許される事じゃないのかもしれない。でも。
「……少し、救われた気分になれた気がするよ」
「江流さん! いいところで会えた。 あっちに可愛い鳥の巣箱があって――何か良い事あったの?」
「ルーンス君。ああ、ちょっとね」
そんな江流を見つけて駆け寄ってきたのは、猫用クッションを4つも抱えたルーンスだった。江流の表情を見て、不思議そうに首を傾げる。
●
屋台街の入口に聳える巨大なツリー。
その枝の下で、ルベアはひとり、エトッフサンドを齧る。
「お礼だよっ! 遠慮しないで食べてよねっ」
「ねぎり……勉強に、なりました……」
「礼だなんて。君達の目を引いたならそれも縁あるもの、いい買い物ができたのなら良かったよ」
ルベアの視線の先では、サフィラとミゼリアが大量の屋台グルメを並べ、クロンダイクに勧めている。折角だからと料理を楽しみながら、クロンダイクは値切り交渉のコツを少しだけ話し始めた。
「値切りは店じまい間際が一番狙い目なんだけど、良い物が残っているとは限らない。そんな時は――」
「もうガラクタ市は見に行った? シルヴィアが好きそうなブローチがあったよ」
「本当? 食べ終わったら行ってみるよ」
まだ残っているかな、僕が買ってこようか、と朗らかな雰囲気で話すルーンスとシルヴィア。
その後ろでは、通りすがりのゲルダに何故か「ガンバレ!」という感じのポーズをとられたリーミルが、意味がわからない顔でとりあえず同じポーズを返している。少し遅れて、何かを察したリサも同じポーズをとっていた。
「よぉ、二人とも飲んでるかー?」
アナンディーンの左側から、寒そうな格好のナハシュがワインのカップを片手に歩いてくる。
「確か馬車の一件以来だったか? 今回はちゃんと宿とれててよかったな! 酒は奢らねえぞ」
「え~~! 奢ってくれないんですか~? じゃあ飲み比べますか!?」
「程々にしとけ。また吐かれたらたまんねえんだよ」
吐瀉を警戒されたリーミルが頬を膨らませ、アナンディーンが複雑な表情を浮かべた。
目の前を、幸せそうなカップルが横切っていく。
(羨まし――くなんかない)
ルベアは、エトッフサンドの最後の一口をぐいっと口に押し込んだ。
●
観光客の姿もまばらになってきた頃、マリイとシーラは青い泉を訪れていた。
「……一つだけ本当に願いが叶うとしたら、何を願いますか?」
「そうね……」
マリイの問いに、シーラは考え込むように目線を斜め上へ向ける。
「私、過去を想えば沢山あるのに、先の事となると分からなくて……シーラさんは、何か見つけられましたか?」
どこか寂しそうな顔で誤魔化すように微笑うマリイ。シーラは泉を見つめ――コインを一枚、投げ入れた。
「……私もあなた達も無事で、来年もここで会えるといいわね」
「――シーラさん、それ。いいですね」
2人のエルフが立ち去った頃。トーラもまた、泉にやって来た。
「……」
「熱心だね~。何お願いしたの」
「なっ、なんですか。秘密です!」
いきなりニュッと現れた黒髪の男に驚いたトーラが、ピョンと飛びのいて距離を取る。
「えーケチ」
「知らない人に教えないです! それじゃ!」
絶対変質者だ――そう思ったトーラが、授恵者の速度で街のほうへと逃げていった。
取り残された男に声をかけたのは、泉のほとりに腰を下ろしていたレピド・クロサイトだ。
「この泉……本当に凄いな。何故こんな色になるんだ……?」
「水質の関係らしいよ。百年前からこう」
「百……?」
厚手のコートとマフラー。ヒューマンに見えるが、長命種なのだろうか……と、レピドはぼんやり考えながら男を見上げる。
「君、ホムンクルスでしょ。色んなことが珍しい時期だよね」
「凄いな、一目でホムンクルスとバレたのは初めてだ」
賢者の石は隠しているはずなのに、と不思議そうに首をひねるレピド。手の中のコインを持て余すようにいじる男を見て、少し興味がわいた。
「俺は願い事は別の場所でしてきたが……アンタは何か願う事はあるのか?」
コインを投げ入れて、男は何を願うでもなく笑う。
「僕の願いは叶わないから、泉の営業妨害になっちゃうよ」
「……無茶な願いなのか?」
「そうだね……何百年も待ったけど。これから何百年経っても、叶わない」
男は、どこか寂しげな赤い瞳でレピドを見た。
「失礼かもしれないけど、僕はね。君達みたいに、何もかも忘れられたら良かったと思う」
「……アンタは、一体……」
「僕は」
歩き出した男は、すれ違いざまにレピドの耳元に口を近づける。
「メドゥの右腕だよ」
レピドが振り返ると、男の姿は夜の闇に消えていた。
マスターコメント
この度はご参加いただき、ありがとうございました!
昨年は大変お世話になりました。本年もよろしくお願いいたします。
イベントシナリオ易しい 報酬:標準25 / 4〜25人
2023年01月19日 23時44分13秒 公開
大成功
参加者
相談掲示板
ゴブリンのリューイだ。 揉め事になりそうな気配を感じて、シーラともう一人の間に入り 「事情はわからないが、せっかくの祭りで揉め事は迷惑になる」 と助言というか、仲裁的に割って入るつもりだ。 よろしく。