【黄金像】ウィリアム、大地に立つ?
おおくまねこ
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シナリオID:2592
オープニング
●暗躍する第三演劇部員たち
新生徒会長が宿敵である第二演劇部の部長パーシア・アイオーラになったという衝撃の事実に、第三演劇部の部長ラティオと会計のマリリンは大いに嘆いていた。
「暗黒時代の幕開けですわ! パーシア先輩が生徒会長に当選してしまうなんて!」
「まったくね。あの乳牛が当選するなんて……冒険者ってみんな巨乳好きなのかしら?」
「いや、半分は女性ですからさすがにそれは……。パーシア先輩はあの性格なので『貴族の』男性受けは悪いはずですし。保守層が投票したのでしょうね。明らかにやる気がなさそうな公約でしたから。あるいは、ウィリアム王子の人気かも。冒険者ギルドに過激なドゥジン信仰が蔓延しつつあるのかもしれません。私は彼の笑顔はうさんくさいと常々申しておりましたのに……」
溜息をつくラティオとマリリン。もし冒険者が二人の会話を立ち聞きしていたら「ちょっと二人共、校舎裏に来なさい」と言われかねない危険な会話だ。
「で、どうなの、マリリン。本当に学園の予算でウィリアム巨大像が建つの? もしうちの部費にもしわ寄せが来るなら学園長に直談判ものなんだけど」
「他の候補者を破って当選しているわけですから、予算は降りると思います。学園として投票した学園生や王家の顔を立てないわけにもいきませんし……ただ、予算には上限があるでしょう。いくらなんでも巨大像の為に学園の今年度の予算全振りとかいう自体にはならないはずですわ。上限を超えた分の予算は、アイオーラ家が出すことになるでしょうね」
「ふーん……ならまあいいか。学園に冒険者ギルド窓口とかプリンとか、他にも気になる公約あったし。……待てよ。予算に上限があるということは、巨大像の予算がかさめばかさむほど、パーシアにしわ寄せが行くってことよね……」
「ええ、そうですわね」
ラティオの言葉に、眼鏡の奥でマリリンの瞳が光る。
「よし、ウィリアム巨大像の建設計画、私達も手伝ってやろうじゃないの! 知らない仲じゃないんだし! 可能な限り大きいやつを作れるように!」
「ええ、それがいいと思いますわ! パーシア様は我が学園が誇る立派な先輩ですものね! 貴族として、一度口に出したことは守って下さるはず! 応援して差し上げるのが後輩の務めですわ!」
ラティオとマリリンは言ってることと全く印象が異なる邪悪な笑みを浮かべ、固く握手を交わした。
●新生徒会長パーシア
「まさか私が当選してしまうだなんて……さすがウィリアム王子。冒険者達にも大人気とは……そんなにウィリアム王子の巨大像が切望されているとは思いませんでしたわ……」
新生徒会長パーシアは生徒会室の壁にウィリアム王子のポスターをぺたぺたと貼りながら溜息を吐いた。パーシアはてっきり、他のまともな公約を掲げた貴族が生徒会長に当選するとばかり思っていたのだ。
「とはいえ、これはこれで悪くはありません。これでウィリアム王子が私を意識して下さることは確実。それに、これからは巨大像の打ち合わせの名目で王子と面会し放題ですわ! そのうち一緒に夕食を食べたり、いえ、勢い余って一夜を共に過ごすことができるかも……! ぐへへへへ……」
伯爵令嬢にあるまじき表情をしながら、パーシアは妄想に耽る。その姿はまさに変態淑女であった。主君の世間にはお見せできない痴態を前に、秘書のラズリー・クルジュは溜息を吐く。
「パーシア様、パーシア様。妄想たくましい所すみませんが、さっさと仕事して下さい。生徒会長の仕事はけっこう多いんですよ」
「……他の役員に丸投げしちゃダメか?」
「ダメです。他の役員の方はみんな冒険者ですから、学園に不在のことも多いと思いますし」
「なんだよちくしょお……ラズリィ、お前代わりにやってくれよ~。……事務仕事は苦手なんだよォ……」
「嫌です。私はパーシア様に代わって第二演劇部を切り盛りしなきゃいけなくなったんですから。ご自分でやって下さい。分からない所ぐらいは教えてあげますから。アイオーラ家の当主を継いだら、毎日事務仕事ですよ! アイオーラ家の繁栄の為には、当主の日々の努力が……」
「うぇ~……」
くどくどと人の上に立つ者の心構えをラズリィに説かれ、パーシアはげんなりした。パーシアはラズリィの隙を突き、生徒会長の席の後ろの窓から逃亡を図ろうかと考えたがなぜかその窓だけ嵌め殺しになっており、できなかった。
「そういえば、公約の巨大像についての企画書はまとまってますか? 申請を出さないと予算が降りないですよ」
「ん、まだだな。とりあえずサイズは全長50メートル。で、材料は純金製で。ウィリアム王子は黄金のように輝く存在だからな。目はドワーフ王国の至宝、エーテル石だ。ポーズはこう、フルアーマーな軍馬に乗ってて、ダマスカス鋼で出来た大剣を構えて……いや、芸術品だから全裸もアリか……? 王子の裸体ならやはり芸術品なのでは……?」(ゴクリ)
「寝言は消灯時間を過ぎてからお願いします。そんな企画、通るわけないでしょう」
呆れ果てたラズリィはパーシアの頭をノートで小突いた。いくらウィリアムがこの国の王族としては異例のオープンスタイルな人物とはいえ、流石に生まれたままの姿の自身の模造品を一般公開する許可は出さないだろう。第一、通学のたびに全裸男の巨大像を拝まなければいけない学園とか、嫌すぎる。
「じゃあどんなのならいいんだ」
パーシアは唇を尖らせる。
「そうですね……選挙公約ですし、パーシア様の任期中に完成する規模のものの方がいいでしょう。キリのいい時期ですと、来年の入学式までに完成していればよろしいかと」
「となると、工期は半年ぐらいか。粘土なら50メートルでもいけるかもしれねえが、それだと見栄えがな……素材は大理石か、ブロンズか、ダマスカス鋼か。悩ましいな……」
「材質は悩ましいですね。それに、ポーズも決めませんと。施工の業者も選別が必要ですよ。タチの悪い業者を選ぶと予算を中抜きされる恐れもあります」
「うーん、結構大変なんだな……勢いで出した公約だったんだが……」
パーシアは椅子に背中を預け、ダラダラし始めた。
「ご自身で決めかねるのなら、冒険者にアイデアの公募などしてみては? パーシア様は冒険者の強い支持で当選されたのですから、冒険者達はウィリアム像にもきっと強い関心を持っているはずですよ」
「なるほど! それはアリだな! よし、今度公聴会でも開くか! 冒険者ならウィリアム王子に詳しいやつもたくさんいるだろうし!」
冒険者達と推しについて語るいい機会だと考えたパーシアは、さっそく冒険者達にウィリアム像についての意見を募集する座談会を企画したのであった……。
新生徒会長が宿敵である第二演劇部の部長パーシア・アイオーラになったという衝撃の事実に、第三演劇部の部長ラティオと会計のマリリンは大いに嘆いていた。
「暗黒時代の幕開けですわ! パーシア先輩が生徒会長に当選してしまうなんて!」
「まったくね。あの乳牛が当選するなんて……冒険者ってみんな巨乳好きなのかしら?」
「いや、半分は女性ですからさすがにそれは……。パーシア先輩はあの性格なので『貴族の』男性受けは悪いはずですし。保守層が投票したのでしょうね。明らかにやる気がなさそうな公約でしたから。あるいは、ウィリアム王子の人気かも。冒険者ギルドに過激なドゥジン信仰が蔓延しつつあるのかもしれません。私は彼の笑顔はうさんくさいと常々申しておりましたのに……」
溜息をつくラティオとマリリン。もし冒険者が二人の会話を立ち聞きしていたら「ちょっと二人共、校舎裏に来なさい」と言われかねない危険な会話だ。
「で、どうなの、マリリン。本当に学園の予算でウィリアム巨大像が建つの? もしうちの部費にもしわ寄せが来るなら学園長に直談判ものなんだけど」
「他の候補者を破って当選しているわけですから、予算は降りると思います。学園として投票した学園生や王家の顔を立てないわけにもいきませんし……ただ、予算には上限があるでしょう。いくらなんでも巨大像の為に学園の今年度の予算全振りとかいう自体にはならないはずですわ。上限を超えた分の予算は、アイオーラ家が出すことになるでしょうね」
「ふーん……ならまあいいか。学園に冒険者ギルド窓口とかプリンとか、他にも気になる公約あったし。……待てよ。予算に上限があるということは、巨大像の予算がかさめばかさむほど、パーシアにしわ寄せが行くってことよね……」
「ええ、そうですわね」
ラティオの言葉に、眼鏡の奥でマリリンの瞳が光る。
「よし、ウィリアム巨大像の建設計画、私達も手伝ってやろうじゃないの! 知らない仲じゃないんだし! 可能な限り大きいやつを作れるように!」
「ええ、それがいいと思いますわ! パーシア様は我が学園が誇る立派な先輩ですものね! 貴族として、一度口に出したことは守って下さるはず! 応援して差し上げるのが後輩の務めですわ!」
ラティオとマリリンは言ってることと全く印象が異なる邪悪な笑みを浮かべ、固く握手を交わした。
●新生徒会長パーシア
「まさか私が当選してしまうだなんて……さすがウィリアム王子。冒険者達にも大人気とは……そんなにウィリアム王子の巨大像が切望されているとは思いませんでしたわ……」
新生徒会長パーシアは生徒会室の壁にウィリアム王子のポスターをぺたぺたと貼りながら溜息を吐いた。パーシアはてっきり、他のまともな公約を掲げた貴族が生徒会長に当選するとばかり思っていたのだ。
「とはいえ、これはこれで悪くはありません。これでウィリアム王子が私を意識して下さることは確実。それに、これからは巨大像の打ち合わせの名目で王子と面会し放題ですわ! そのうち一緒に夕食を食べたり、いえ、勢い余って一夜を共に過ごすことができるかも……! ぐへへへへ……」
伯爵令嬢にあるまじき表情をしながら、パーシアは妄想に耽る。その姿はまさに変態淑女であった。主君の世間にはお見せできない痴態を前に、秘書のラズリー・クルジュは溜息を吐く。
「パーシア様、パーシア様。妄想たくましい所すみませんが、さっさと仕事して下さい。生徒会長の仕事はけっこう多いんですよ」
「……他の役員に丸投げしちゃダメか?」
「ダメです。他の役員の方はみんな冒険者ですから、学園に不在のことも多いと思いますし」
「なんだよちくしょお……ラズリィ、お前代わりにやってくれよ~。……事務仕事は苦手なんだよォ……」
「嫌です。私はパーシア様に代わって第二演劇部を切り盛りしなきゃいけなくなったんですから。ご自分でやって下さい。分からない所ぐらいは教えてあげますから。アイオーラ家の当主を継いだら、毎日事務仕事ですよ! アイオーラ家の繁栄の為には、当主の日々の努力が……」
「うぇ~……」
くどくどと人の上に立つ者の心構えをラズリィに説かれ、パーシアはげんなりした。パーシアはラズリィの隙を突き、生徒会長の席の後ろの窓から逃亡を図ろうかと考えたがなぜかその窓だけ嵌め殺しになっており、できなかった。
「そういえば、公約の巨大像についての企画書はまとまってますか? 申請を出さないと予算が降りないですよ」
「ん、まだだな。とりあえずサイズは全長50メートル。で、材料は純金製で。ウィリアム王子は黄金のように輝く存在だからな。目はドワーフ王国の至宝、エーテル石だ。ポーズはこう、フルアーマーな軍馬に乗ってて、ダマスカス鋼で出来た大剣を構えて……いや、芸術品だから全裸もアリか……? 王子の裸体ならやはり芸術品なのでは……?」(ゴクリ)
「寝言は消灯時間を過ぎてからお願いします。そんな企画、通るわけないでしょう」
呆れ果てたラズリィはパーシアの頭をノートで小突いた。いくらウィリアムがこの国の王族としては異例のオープンスタイルな人物とはいえ、流石に生まれたままの姿の自身の模造品を一般公開する許可は出さないだろう。第一、通学のたびに全裸男の巨大像を拝まなければいけない学園とか、嫌すぎる。
「じゃあどんなのならいいんだ」
パーシアは唇を尖らせる。
「そうですね……選挙公約ですし、パーシア様の任期中に完成する規模のものの方がいいでしょう。キリのいい時期ですと、来年の入学式までに完成していればよろしいかと」
「となると、工期は半年ぐらいか。粘土なら50メートルでもいけるかもしれねえが、それだと見栄えがな……素材は大理石か、ブロンズか、ダマスカス鋼か。悩ましいな……」
「材質は悩ましいですね。それに、ポーズも決めませんと。施工の業者も選別が必要ですよ。タチの悪い業者を選ぶと予算を中抜きされる恐れもあります」
「うーん、結構大変なんだな……勢いで出した公約だったんだが……」
パーシアは椅子に背中を預け、ダラダラし始めた。
「ご自身で決めかねるのなら、冒険者にアイデアの公募などしてみては? パーシア様は冒険者の強い支持で当選されたのですから、冒険者達はウィリアム像にもきっと強い関心を持っているはずですよ」
「なるほど! それはアリだな! よし、今度公聴会でも開くか! 冒険者ならウィリアム王子に詳しいやつもたくさんいるだろうし!」
冒険者達と推しについて語るいい機会だと考えたパーシアは、さっそく冒険者達にウィリアム像についての意見を募集する座談会を企画したのであった……。
解説
●
目標:ウィリアム巨大像に関するアイデアを出す。
依頼人:新生徒会長パーシア・アイオーラ
舞台:パンクリアース学園の食堂(貸し切り。茶菓子も出る)
状況:新生徒会長パーシアは「当選したら校庭にウィリアム王子の巨大像を建てる」という選挙公約を掲げ、当選を果たした。本シナリオでは、ウィリアム王子の巨大像の材質、大きさ、服装、ポーズなどについて学園生の意見を聞く座談会が行われる。新旧生徒会役員はもちろん、一般学園生や聴講生(全ての冒険者は聴講生の資格を持つ)にも参加資格がある。
※生徒会役員であっても出席の義務はない。
●議題について
議題には大きく分けて以下の三種類がある。ちなみに議事録が残る。
【1】サイズや材質について
【2】ポーズや服装・小道具・台座の有無など
【3】その他
●ウィリアムの像について
巨大像の建設に際しては、以下の制約がある。
1、来年の入学式(4月)までに建設できること。
2、表面のカラーリングは黄金であること。
3、最低でも3メートル以上(台座は除く)のサイズであること。
4、第二王子から怒られないデザインであること(最終的にウィリアム本人の許可が必要)。
●登場NPC
パーシア
新生徒会長。惜敗狙いで立候補したらなぜか当選してしまった。ウィリアム王子の熱狂的ファン。巨大像建設の予算は全額学園からもらえると思い込んでおり、予算についてはあまり気にしない。
なお、アイオーラ家のメンツに関わるので如何なる理由があろうともパーシアには公約を果たす義務がある。
ラズリィ
第二演劇部副部長。4年生。平民。ツッコミ担当。
パーシアの乳母の娘でもあり、パーシアの腹心として信頼されている。余りに非現実的な計画は彼女がストップをかける。
マリリン
先代生徒会会計。パーシアの財布にダメージを与えるべく、とにかく建設コストが高くなるように誘導しようと企んでいる。
ラティオ
第三演劇部の部長。商家出身の3年生。かつてパーシアとクラブを巻き込んで喧嘩をしたことがあり、互いに敵だと思っている。
ラミアス・クルスロード
パンクリアース学園の教務主任。ウィリアムの友人(在学時代の後輩)でもある。冒険者からの質問には答えられる範囲で回答してくれる。ドゥジン界隈ではレイウェストと並び、ウィリアムと激しく互いを求め合う薄い本がたくさん描かれている。
アルベルティーヌ
ドゥジケット準備会部長。隙あれば隣にラミアス像も立てようとか言い出す。
マスターより
こんにちは。おおくまねこです。選挙結果を受けてのパーシア当選ありがとう連作、【黄金像】の一本目でございます。とんでもねえのが当選しちまったな……。
今回はウィリアム巨大像のサイズ感とか材質とかポーズとかを決めます。ただし、来年の春までに工事が完了する必要があるので、あまりに大きすぎると駄目かもしれません。ちなみに像本体10メートルぐらいならお金かけたら大丈夫です。
どうぞ皆様、奮って面白いアイデアを出して下さいませ!
なお、議事録は残る都合上、
「誰だい? この小便小僧ウィリアムバージョンとかいうアイデアを出したのは?」
となる可能性がありますので、エキセントリックなネタはほどほどに。
補足:学園生徒会と予算について
パンクリアース学園では予算執行の権限は学園側にあり、生徒会に可能なのは提案までです。つまり現行の生徒会に求められている「自治」は「学園への提案、提起」であり、最終的な決定権はあくまで学園にあります。よって、ウィリアム巨大像への予算には上限があり、像の建設費用が肥大化した場合、しわ寄せはアイオーラ家に行きます。他の公約や陳情の予算には影響は出ないのでご安心を。
リプレイ
●
公聴会が始まる少し前。早めに集合した冒険者達はしばし歓談を楽しんでいた。
「こうして直接お話するのは初めてに御座いますね。同じ生徒会メンバーとして、これからどうぞ宜しくお願い致します。頼りにしておりますわ、生徒会長」
新庶務のネーヴェ・グラヌローザはパーシアに礼をした。パーシアは微笑み、淑女の礼で返答した。
「ええ、よろしくお願いいたします、グラヌローザさん」
「今日は俺が司会をやろう。副会長だしね。みんな、よろしく」
「俺も最初の仕事になるかな? 議事録は俺が付けるね」
ジュスト・ヴェルジーと海神・江流はそれぞれ司会と書記に立候補した。彼らにとってはこれが役員としての最初の仕事となる。
(パーシア君が個人的に浪費するのはともかく、会計の予算管理がなっていないと思われては困る!)
新会計のローザリカ・L・ディオールは巨大像の建設費が肥大化することを憂慮していた。幸い、質素倹約を是としている前任者も会場に来ている。きっと彼女も自分と同じ気持ちに違いあるまい。ちなみにローザリカの婚約者でもあるジュストの座席はパーシアとローザリカのちょうど間である。新生徒会のメンバーが集まっていると、ガルシアも挨拶に来た。
「こんなところでいうのもあれですが、江流様、生徒会役員の当選おめでとうございます。もし私にも出来る雑務などあればお手伝いさせてください」
「ああ、ありがとうガルシアさん。初めてでまだ慣れてないから助かるよ」
●
「生徒会長お疲れ様な」
ナキルは先代生徒会長エフィルミアを見かけ、ひょいと手を上げた。
「ありがとう、ナキル君!」
「オレは選挙ダメだったな、まぁ……あんだけ大差あっと、な」
コレも経験か、ナキルは頭を掻きながらぼやいた。
「お疲れ様! かっこよかったよ」
(本当は選挙で負けて悔しいくせに!)
エフィルミアは平静を装うナキルの肩をポンと叩いた。よしよしと頭を撫でるのは二人きりの時にしておこう。
「もっと、目指す場所は前にあるんだな。ミアはすげぇからな、負けてられねぇぜ」
(誇れる人が傍に居てくれる。だから頑張れる)
「やあ、みんな集まっているね。」
遅れてやってきたシルヴィア・A・カペルはそんな二人の肩を優しく叩いた。
「副会長としてエフィを支えられたことは私の誇りだ。今後の学園生活もどうか楽しんでね」
「シルヴィ姉様の妹として生徒会長を務められた事は私の誇りです!」
シルヴィアとエフィルミアは互いの体を抱き締めた。
「ナキルも敗れはしたが、頑張ったね」
「いやぁ、オレにはまだあの場所は遠かったなと。けど、別にこれで諦める気はねーし、まだまだ勉強も身に付ける事も多いってコトだな。俄然、燃えて来たってくらいだぜ」
ナキルはシルヴィアを見上げ、ニッと笑った。
「マリリン。君もお疲れ様。共に次世代の生徒会役員を支えていこう」
「はぁい……」
さりげなくシルヴィアに釘を刺され、マリリンは不服そうに返事をした。
「じゃあ私、当選した方々に挨拶してきます! お姉様、一緒に行きましょう!」
「ああ、そうだね。彼らにバトンタッチだ」
エフィルミアとシルヴィアは新生徒会メンバーのいる方へと歩いていった。
●
「パーシア様、生徒会長のご当選おめでとうございます」
レティシア・レインフィールは祝辞を述べた。レティシアが彼女と顔を合わせるのは今回が二度目だ。
「ありがとうございます。レインフィールさんもお変わりないようで何よりです」
パーシアは柔和に微笑んだ。
(殿下に『手を組まないか』と直接お声掛けされている事は絶対に黙っておきましょう)
――レティシア。薔薇の君。君には、選ぶ権利がある筈だよ。
二年前の出来事を思い出したレティシアは心の中で強く誓った。まかり間違ってパーシアに『恋敵』として認識されてしまったりすると、実家まで変な噂が飛び火したり、パーシアの左手の手袋が飛んできたりしかねない。いずれにせよあまりにも無益――どころか災厄だ。
(それに、以前は第三演劇部の方々と揉めていましたが……仲良くなられたようで何よりです)
レティシアは会議室に並んで着席しているラティオとマリリンの姿を認め、頬を緩めた。――すべて勘違いだったのだが。
レティシアが自分の席に移動した後、今度はエフィルミアがパーシアに話しかけていた。
「あえて第二王子のウィリアム王子を選んだのは王国と冒険者の強い繋がりをアピールしたいという事ですよね? 王党派でありながら異種族への歩み寄りもみせる姿勢っ! 凄い!」
パーシアは一瞬の間の後、胸を張った。
「え? ……ええ、もちろんですわ! 学園改革は王家の御意向ですから! 模範を示さなければ!」
「あ、そうだ! 生徒会長の席の後ろの窓は私が何度か逃走したら嵌め殺しにされちゃったんですよ! 逃走時はお気をつけて!」
先代は後継者に謎のアドバイスを送った。彼女は任期中、一体何と戦っていたのだろうか。
「あれ、こいつのせいだったのか……」
パーシアはぼそりと呟いた。
●
「皆様、ようこそお集まりいただきました。また、御投票いただいた方はありがとうございます。わたくしは公約通り、ウィリアム王子の巨大像を建造いたします。今日は皆様のご意見を伺いたく、公聴会を開かせていただきました。しばしお付き合いくださいませ」
新生徒会長パーシアは集まった冒険者に恭しく挨拶した。
「よろしいでしょうか」
最初に挙手したのは、イズル・M・ヴォルゴールだった。
「今期の生徒会長殿は有言実行な事に好感が持てます。(公約の内容はどうあれ)是非成功に向けて意見を述べさせて頂ければ幸いです」
イズルは丁寧な言葉遣いでそう前置きした。
(お坊ちゃん、気取ってんじゃねぇぞ)
すると、隣の席にいたペルゼィックから念話でヤジが飛んだ。
(学園内で口調分けるとか無理。我慢して)
イズルもテレパスで返事し、本題に入る。
「学園からの予算の上限は把握しておりますか? 学園の提示する予算内で納めると、会長の力量や家門の印象は上がると思われます」
「ええ、もちろん把握しておりますわ」
パーシアは自信満々に答えた。だがパーシアの想定していた金額は今年度の『学園の』予算であった。パーシアは学園生徒会の予算申請の仕組みをまだ正確には把握していなかった。パーシアが明確にコストダウンを意識し始めるのは、像の一次企画書が受理された後のことであった。
「とゆか先ず本人の許可取るのだ。話はそこからなのだ」
ストレガ・L・リベルガストラが冷静に告げた。すると、ラミアスが頷いた。
「巨大像の建設自体については王子も前向きでしたよ。王子も冒険者として票を持っていますから……ご自身でパーシアさんに投票された可能性もありますね。像が黄金であることにも特に異論はないかと。『僕は黄金のように光り輝く存在だからね』と迷わず答えるお方ですから」
「そうなのか……」
王族の圧倒的自己肯定感にストレガはちょっと困惑した。
●
「ではまず、像の『素材』の話からみんなの意見を伺おう」
「素材についてはこちらに資料を用意しておきました!」
先代庶務のリサ・ベイカーは一冊のノートを机の上に置いた。リサは巨大像の材料として使用されそうな石材や金属の価格について、事前に素材の単価や安く手に入る地域など調べてメモを作っておいたのだ。
「あら、御親切に……この資料、後でお借りしてもよろしいですか?」
「ええ、もちろん」
「ありがとうございます。ぜひ活用させていただきますわ。ウィリアム像にこれほどの情熱を燃やす同志がいたなんて……嬉しいですわ!」
パーシアはニッコリ笑ったが、リサは困惑した。
(なんか勘違いされちゃった……)
「黄金像ですし、金で!」
ダニエル・ヘリントンが元気よく言うと、続いてルーンス・ラグネルが挙手した。
「うーん……木・粘土・縄で型を作り、銅・錫で鋳造後、仕上げに金箔か金を塗るのがよろしいかと。純金は金属として柔らかく、鋳造・メンテナンスの難易度から作業者の負担が増えますので、やめておいた方が無難です」
「俺もその方針に賛成かな。永く維持していく物なのだからメンテしやすい仕様でまとめるべきかと思うな。維持費が他の予算を圧迫するとよろしくないよね」
江流もその意見に同調した。
「そうか……仕方ないですね」
ダニエルは残念そうだった。
「金箔で固めんなら材質は丈夫なのがいいんじゃねえかな。錆が心配なら石材だな。何かコイツと聖剣狙われてるらしいから、王家の聖剣でも掲げてろよ」
ナハシュがぶっきらぼうに言った。彼は巨大像と言うロマンに惹かれ、この場に馳せ参じたのだ。
「こ い つ?」
パーシアは眉を吊り上げた。
「おっと、王子、王子」
パーシアに睨まれ、ナハシュは慌てて訂正した。せっかくの面白案件だ。議長を怒らせて退場になってしまうのはもったいない。
「材質はやっぱ硬いほうがいいんじゃないかな? それと出来るだけ安いものの方がいいんじゃない?」
フレイヤ・サンライズの頭の中では、巨大ウィリアム像が大型クリーパーにしがみついて王都上空へと上昇し、空中で大爆発する一大スペクタクルシーンが展開されていた。
「却下ですわ。壊れる前提で考えておりませんか? 王子の像は永遠の象徴であるべきです」
パーシアはにこやかにフレイヤの提案を拒否した。そして、参加者達は「永遠……?」と首をかしげた。
●
(パーシアさんは先日ぶりですね。公約の為にも、何かお力になれればと思います)
コルネリウス・アーラはパーシアの特徴的な縦ロールを見つめ、感慨深げだった。コルネリウスはパーシアは一般的な貴族とは異なり、親しみの持てる性格であることを知っていた。
「素材は銅や真鍮などでしょうか? 中を空洞にすれば予算も抑えられるでしょうし。その分を高価な素材に充てることや、サイズを大きくする事も出来るのでは無いでしょうか? メンテナンスや有事に移動させることも大事ですから、その為の重さも軽減できるかと思いますが如何ですか」
コルネリウスは銅か真鍮を候補として挙げた。
「私も真鍮に賛成します。屋外設置だと金メッキは剥げたり傷付いたりします。真鍮製なら黄金色を保ちつつ、十メートルも現実的な予算で実現可能かと」
アウレーリア・フォン・ネーベルベルクも真鍮を推した。すると、ストレガが挙手した。
「青銅に金を塗るのが予算的には無難なのだ。純金や純銅は脆すぎる。あとは軽すぎると盗難の恐れもある。授恵者でも容易に持ち運びはできない方にした方が良いと思うのだ。10メートルなら、中身が空洞でも容易には盗めないと思うが」
「私も青銅に賛成だな。末永く学園の顔となる像、雨風で容易く劣化するような素材は避けたい」
シルヴィアも素材は青銅がいいと考えていることを表明した。
「権威ってのはとりあえず像建てるの、ホント好きだよな」
ペルゼィックはぼそりとつぶやいた後、挙手した。
「エーテル石を目に使うと聞いたんだが……ガキの巣窟に置くのは危険じゃね?」
ペルゼィックが尋ねると、ラミアスが口を挟んだ。
「その点はご安心ください。エーテル石なんて絶対に手に入りませんから。持ち主が譲ってくれるはずがありませんので」
「そうか。じゃあ代用品か?」
そこでパーシアが口を挟んだ。
「ええ、目にはウィリアム王子と同じ蒼い色の宝石を使用するつもりです」
「成る程な。王子様のご意向も伺いたいもんだぜ、贅沢品は好きですかー? って」
ペルゼィックは座り直した。
「それは、どうでしょうね。ウィリアムは王族の中では変わり者ですから」
ラミアスは苦笑した。
その頃、シェルリア・リトヴァールはアルベルティーヌと共に変な方向で盛り上がっていた。言わずと知れたドゥジケット準備会コンビである。
「アルベルティーヌさん、あの二人、ちょっと変じゃありません?」
「どういうことですか、シェルリアさん?」
「ほら、さっきから頻繁にお互いを見つめ合って目でお話してるんですよ! あの二人はきっと心が通じ合っているんです!」
シェルリアの推測はある意味当たっていた。確かに二人は心で通じ合っている。
「なるほど、イズルさんとペルゼィックさん……アリですね! シェルリアさんはどっちが攻めでどっちが受けだと思いますか?」
あらかたの意見が出尽くした後、パーシアは感想を述べた。
「色々なご意見ありがとうございます。メインとなる素材は青銅か、真鍮が良さそうでしょうか。台座もあった方が良さそうですね。盗難対策とメンテナンスのしやすさは一長一短になりそうなので、慎重に検討いたしましょう」
●
「マリリンさんはパーシアさんと色々おありなのでしょうか?」
コルネリウスは休憩中、マリリンにこっそり聞いてみた。会議中のマリリンの言動が以前とまるで異なっていたのが気になったのだ。するとマリリンは頷き、
「はい、予算オーバーした場合はきっとアイオーラ家に負担がいくので、それを狙っているのです。クオリティアップする分にはみんな(パーシア以外)ウィンウィンですわ」
と、正直に答えてくれた。実は獅子身中の虫だったという事実に、コルネリウスは苦笑する。
「そうですね、パーシアさんが納得されて、良い公約実現が出来る事がなによりです。ほどほどにしてあげて下さいね」
「はーい」
マリリンは珍しく生返事をした。
●
休憩時間を挟み、議題はサイズの話へと移った。
「十メートル行くんじゃねぇのか?」
笑いながら言うナキル。納期やら予算やらを考えると、現実的にはそのぐらいが限界だろう。
「せっかく作るなら大きいほうがいいんじゃ無いだろうか。やるからには派手なほうがいい。面白いし」
続いて、ヨル・スレイマンが意見を言った。彼はナハシュの付き添いだ。元々貴族も王族もあまり好きではなかったのだが、最近はウィリアム王子とラミアス教諭の薄い本に共感する部分があり、嫌悪感は薄れつつあるらしい。
「そうですわね……私は全高四十メートルほどで考えています」
パーシアの発言に、一同は唖然とした。いくら何でも大きすぎるだろう。
(やはりか。パーシア君が個人的に浪費するのはともかく、会計の予算管理がなっていないと思われては困る!)
ローザリカは阻止すべく動くことにした。味方だと思っていた前任者は何故か笑顔で拍手しているのだが……。
「パーシア君、あまり大きいと地上からは顔が良く見えないのでは? ほどほどのサイズの方が実在の人物と並び立った時に様々な光景を幻視できるのではないかな」
ローザリカはやんわりとパーシアを牽制した。
「うん、納期についても、そのサイズだと厳しいんじゃないかな」
ジュストはローザリカの意図を察し、援護射撃を送る。
(会長のお財布はともかく、今後、王子と打ち合わせがあったら僕も犠牲になりそうだしな)
学園の予算から足が出た場合、アイオーラ家が出資することになるのだろうが、『募金』の要請が王党派貴族に飛び火する可能性はゼロではない。特に副会長であるジュストはウィリアム王子に、
「新副会長! 君ももちろん僕の巨大像建設に協力してくれるんだろう? ほら、ジャンプしてごらん?」
と打診される可能性はなきしにも非ずだ。
「そうですわ! ここはサイズは抑えて、浮いた予算で隣にラミアス像を建てましょう!」
その時どさくさに紛れ、アルベルティーヌが叫んだ。
「アルベルティーヌ様の構想、とても素晴らしく思います! 熱く……いえ仲睦まじく……じゃなかった仲良さげに見つめ合う感じで。仲良しのお二人の友情を讃える為に! 推し、いえ、お二人の日常のお姿を残せるなんて素敵だと思いませんか? 決してドゥジン的な意味じゃありませんよ!」
シェルリアも拳を握る。その顔には「ドゥジン的な意味です」と書いてあった。
「うむ、良いアイデアだ。ウィリアムとラミアス殿の麗しき友情をアピールするというわけだな」
ベルク・オスマットはここぞとばかりに便乗した。自分から言い出すと不敬だと言われかねないので黙っていたのだ。ラミアスには特に恨みはないので気の毒だが。
「お三方は、ちょっと後で職員室へ。一体何を幻視するつもりなのでしょうか?」
「我もか!?」
教員代表で会議に参加していたラミアスは笑顔で三人に警告した。
「……そうですわね、生徒会室の窓から王子のお顔が見えないのは寂しいですし……もう少しサイズダウンしましょう。十メートルぐらいにしておきましょうか」
●
「素材についてはこんなところかな。では次に、ウィリアム王子像のポーズについての意見を伺おう」
司会のジュストが宣言すると、アウレーリアの瞳がキラリと光った。
(割と圧倒的得票率で当選しましたからね……人が「面白」を求めているのは間違いないかと?あまり真面目過ぎてもコレジャナイ公約違反。公序良俗内で会長の欲望を反映すると良い。つまり――)
「学園は王立、生徒は王族からの寵愛を受ける存在です。つまり愛ですよ愛、投げキッスなど如何です? 美味しくなーれ萌え萌えきゅん・ラブ注入ポーズも捨て難いですね」
「……」
パーシアは無表情になった。
「服装は筋肉造形に拘った半裸、又はポーズに合わせてカチューシャ黒ニーソスカート等でいかがでしょうか」
「素晴らしいアイデアだ!」
ベルクは賛成した。何を隠そうベルクはウィリアム王子への嫌がらせに余念がない。全てはウィリアム王子がヴァルザード紛争の際にレイウェストを花嫁にしてしまったが故である(注:結婚はしてません、念のため)。因果応報。
「そんな変態みたいな像がありますか! 却下です、却下!」
これにはパーシアも怒った。
「ウェディング殿下よりは恥ずかしくないでしょう」
アウレーリアは唇を尖らせた。アウレーリアも例のアレについては思う所があったのだ。さらにベルクも挙手し、腹案を述べた。
「我はビキニパンツ一丁でサイドチェストポーズを決めてにかっと歯を光らせて笑っている。そんな像がいいのではないかと愚考する」
ベルクは真面目な顔で変な事を言い出した。
「いやいやベルちー、そこは褌でしょ、赤褌。」
フレイヤも笑い、さらなる像の変態化を図った。
「俺もいいと思います!」
ダニエルも親指を立てた。
「言うまでもないことですが……皆さん、王家の権威を損ねないデザインでお願いします」
ラミアスはズレた眼鏡をくいっと上げ、冷たく言った。
(短い夢だったな……)
遠い目をするジュスト。「できれば綺麗な議事録にしたいなあ」というジュストの密かな思惑は、この時点で粉々に砕け散ってしまった。
「ええと、ポーズについて匿名希望の冒険者から意見を預かってきてるので、読み上げるね。王家由縁の品掲げる、書物を抱える、自他国や各種族の象徴を繋げた輪を持つ、あるいはパンイチマッスルポーズがいいと思う、だそうだ」
空気の転換を図った江流により、サイラスの意見が読み上げられた。ちなみにパンツ推しなのは下着がウィリアムと被るのが嫌だという個人的なこだわりだそうだ。
「巨大であるなら、胸像ではなく全身像の方が良いだろう。足やマントを台座と接するようにすれば、下半身の安定感も増すのだ」
ストレガは物理学的な観点からそうコメントした。
「剣を携えた姿が良いな。王家は『名もなき剣士』の子孫だから」
シルヴィアも意見を述べた。
「私もよろしいですか?」
続いて挙手したのはガルシアだった。
「剣が武を象徴とするなら、書が文を象徴する物として持たせてどちらも必要だという事の意味にするのはいかがでしょうか?」
(嘗て戦いしか知らなかった自分に、学園に誘ってくれた二人の友人を見ながらふと思ったのです)
「なるほど、『文武両道』ですか。確かに学園にふさわしいデザインですね」
ラミアスは頷いた。
「ポーズは、皆は導く姿はどうでしょう。学ぶ場所に合ったものの方が許可も下り易いかと」
ルーンスは立ち上がると、遠くを指で示すポーズを取った。
「私もルーンス様と近しい意見ですわ。遠くを指差すポーズ、または剣を掲げるポーズならば比較的作り易いですし、動きが付いて勇ましいイメージになるかと」
ルーンスの言葉に頷き、ネーヴェが言った。
「そうですね。先ほどから何名かおっしゃっていましたが、ウィリアムを権威の象徴よりは、『勉学の象徴』としてデザインしていただいた方が、この学園にはふさわしいかと」
ラミアスは微笑んだ。
「なるほど、持ち物に剣や書物、という意見が多いようですわね。参考にいたしますわ。下着姿で王子の肉体美を余すことなく表現すると言うのも捨てがたいのですが……」
パーシアは思案顔だ。彼女の中では何故かパンイチも有力候補らしい。
●
素材、サイズ、ポーズと議題は移り変わり、会議はいよいよ終盤となった。像のオプションなどの、いわゆる「その他」に関する意見を募集するフェーズである。
「ほ、本当にウィリアム様の巨大像が建ってしまうんですね……」
ここにきて、ゲルダ・クラインは動揺していた。会議は着々と進行している。なんだか変な公約を掲げている候補者がいるなあ(それは生徒会長に限ったことではなかったが)とは思っていたが、本気だったとは思わなかったのだ。
「アイオーラさんは後輩の面倒見も良く、貴族にしては好ましい性格なのですがホントに像を建てるつもりなのですね。ヒューマン流のジョークかと思っていました……」
リディリディ・トゥラ・イェレミースも驚いていた。彼女の人となりと選挙公約は知っていたが、まさかあれを実現させるつもりだったとは。
「そう、ですね……。威厳よりも親しみやすさを、――学園にとって、新しいシンボルになるような像がいいなと思いました。付近にベンチを置くと、休憩所にもなっていいと思います」
ゲルダは短くない時間を学生として過ごした学園に対する愛着もあり、真面目に考えて意見を出した。
「なるほど、ベンチはぜひ置きましょう。みんなの憩いの場になりますわね。順番待ちの行列ができないかどうか心配ですが」
パーシアは頷いた。続いてリディリディがおずおずと挙手する。
「ウィリアム王子というのはたしか第二王子でしたよね。王党派の方が第二王子だけ建てるというのは、どうなのでしょう。見ようによっては第二王子を担ぎ上げているようにも見えます。ですので、王太子の像も建てた方が良いのではないでしょうか」
「エドワード王太子の像ですか? うーん、別になくてもよろしいのでは……あってもジャ……げふんげふん。像の唯一性が薄れてしまいますし……」
パーシアは露骨に王太子に関心なさげだった。
「ごほんごほん! ごほんごほん!」
司会者ジュストが激しく咳払いしている。これ以上しゃべらせるとパーシアが不敬罪で投獄されかねないと判断したダニエル(第二演劇部員)は慌てて口を挟んだ。
「部長! 提案があります! 王子像は『歪みねぇ心を持ったガチムチボディでパンツ一丁のウィリアム王子』がヤコブ・ヴィリアンのパンツを脱がし、生尻を激しく叩いて『歪みねぇ心』を注入するポーズでどうでしょう!」
「却下だ、コラァ!」
すかさずパーシアの罵声が飛んだ。
(ダメだったか……とはいえ、これで問題発言はうやむやにできたぞ)
「こほん。気を取り直しまして。パーシア様にどのようなポーズのウィリアム様が格好いいと思いますか?」
ゲルダが尋ねると、パーシアはニッコリと頷き、
「ウィリアム王子ならば、例えエビ反りしていても格好いいと思いますが、それについては別途資料がございますわ!」
用意していた紙袋から、ウィリアム王子のポスターと大量の薄い本を取り出した。
(これはよくない流れですね。このままではウィリアム王子の長編サーガが始まりそうな予感がします)
レティシアは静かに挙手し、パーシアを制した。
「パーシア様、ポーズに関しては殿下をお招きして様々なお姿をスケッチさせて頂き殿下自身にお選び頂くのも手かもしれません」
「確かに、王子ご自身のお気持ちも重要ですわね」
(ふう……なんとかなりました)
「それと、像がもし一定以上の大きさになるのでしたら、有事の際に像か土台の中に避難が出来る形にされるのは如何でしょう? 民を守られるお姿は、正に王族らしいものかと」
「……なるほど、台座に何か仕掛けを作ってみましょうか。学園の科学系クラブや、学術都市あたりに話を伺うのも良いかもしれませんね」
●
「変形だよ、変形。人間が乗り込んで動かしたり変形して乗り物になったり……こう……ドワーフの力を借りてなんとかならないかなあ!」
ヨルは机を叩き、力説した。
「変形……?」
パーシアは怪訝そうな顔をしている。
「なるほど、変形……学園の文化力の高さをアピールするにはアリですね。ドワーフ王国の職人や、学術都市ヴェルクリエの技術者なら実現可能かもしれません」
が、何故かラミアスが喰いついてきた。普段は常識人である彼も、変形は琴線に触れたらしい。
「ウィリアム王子も男だからね、きっと良さをわかってくれるはずだ」
「はあ、そういうものですか」
パーシアは生返事をした。
「あと、俺は『光線』を提唱したい。学園を守る強くて格好良いウィリアム像だよ。ビームが出ると尚いい。ナハシュもそう思うだろ?」
「いいな、光線! 閃光塗料を定期的に塗るかしっかり塗り固めて、夜でも光輝く黄金像にしようぜ!!ゴールデンウィリアムライトアップだ!!! 」
目を輝かせるヨルとナハシュ。テンションが高まっているようだ。この意見についてはパーシアも大いに興味を持った。
「なるほど、月光を浴びて輝くウィリアム王子……実にエレガントですわね! 」
「派手なのは大事だからな。ヒーラーの神もよく言ってる」
フレイヤも光線と変形がツボに入ったのか笑い声を上げ始めた。
「あははははは、面白そうだね☆ 出来上がったら是非とも真昼間に動き出してほしいな♪ それこそ私達の手に負えない魔獣が出てきたのをウィリアム巨大像が対峙して最後にドカーンって、まぁ動かなくてもドッカーンしたいね、てかさせたいから頑張って作らないとね☆」
「なるほど、敵兵と共にウィリアムが木っ端微塵に吹き飛ぶのか。それは興味深い仕掛けであるな」
ベルクは深く頷いた。
「……っは! つまり、サイドチェストポーズしてるウィリアム像が爆発四さ」
フレイヤはポンと手を叩く。盛り上がる二人に、ラミアスが笑顔で告げた。
「この会議の議事録、たぶん王子も見ますよ?」
●
その後、ルーンスの提言で完成の暁には芸術祭を行うことなども決まり、会議は閉会しようとしていた。
「さて、今日のところはこの辺りでお開きかな。学園に永く遺る物になるだろうし、後の世で語られるかも知れない。会長自身が王子の立像にかける想いがあるなら、改めて皆に聞いて貰ってもいいんじゃないかな。敢えて継承権二位の王子を選んだ理由とか、この場で聞ければ議事録=学園の歴史に残るよ?」
江流は皆に聞こえるようにそう言った後、小声でパーシアへと囁く。
「俺個人は、それが大義より個人的な想いだとしてもいいとは思うしね」
すると、パーシアは頬を染め、もじもじしだした。
「まあ、そんな。こんな大勢の前で口にすることははばかられますわ……それは、完成してからで……」
「そうか。じゃあその時にまた聞くことにするよ」
江流は微笑んだ。
●
数日後。
「悩みましたが、これで行きますわ!」
パーシアは出来上がった企画書を生徒会役員たちに見せびらかした。
「会長……本当にこれで出すつもりなのかい?」
ジュストは念押しした。
「ええ、もちろんですわ!」
パーシアは胸を張る。ジュストの隣では企画書を見たローザリカがわなわなと震えていた。ネーヴェはすすっと出口へと移動し、扉の前に立った。この企画書を学園に提出させるわけにはいかない。その想いで新生徒会(会長は除く)たちは結束した。
「もう一度、考え直した方がいいと思う」
江流は溜息をついた。パーシアが自分で書いた企画書では、ポーズはなんと《ビキニパンツでサイドチェスト》》になっていたのである!
(巨大像はパーシアさんだけの公約ですけど、役員全員が公聴会に出席してしまいましたからね……)
これが生徒会の総意だと思われたら困る。その想いはネーヴェも同じであった。ちなみに生徒会役員の企画書提出は一人でも行えるため、全員の総意である必要はない。今期は王党派の色が強い生徒会となったが、異なる派閥が共存・あるいは競争していることもあり得るからだ。
「どうしてもその企画書を出したいというのなら、僕達を倒してからにしてもらおう!」
ローザリカは王党派貴族として譲れぬもののため、扇を構えた。
「ふ、よろしいですわ。以前突き飛ばされたお礼を――」
コンコン。
その時、控えめなノックの音が生徒会室に響いた。ネーヴェが扉を開けると、そこにはこの学園の学園長――フォルトゥナ・アルヴァ・クラティアスが立っていた。
「学園長、ちょうどいい所に! ちょうどウィリアム王子の黄金像の企画書が出来ましたの。この企画書をご覧くださいませ!」
パーシアはサッと学園長に自分で書いた企画書をフォルトゥナに手渡した。学園長はしばらく企画書に目を通した後、厳かに口を開いた。
「パーシア様は冗談がお上手ですね。それで、本当の企画書はどこに?」
学園長の目は全く笑っていなかった。
結局、ウィリアム黄金巨大像はウィリアム王子の希望と学園の意向を汲み、『冒険者ウィル』ベースに、本と剣を持った姿で製作されることになったのだった。
パーシアの野望はまだ、始まったばかりである。
公聴会が始まる少し前。早めに集合した冒険者達はしばし歓談を楽しんでいた。
「こうして直接お話するのは初めてに御座いますね。同じ生徒会メンバーとして、これからどうぞ宜しくお願い致します。頼りにしておりますわ、生徒会長」
新庶務のネーヴェ・グラヌローザはパーシアに礼をした。パーシアは微笑み、淑女の礼で返答した。
「ええ、よろしくお願いいたします、グラヌローザさん」
「今日は俺が司会をやろう。副会長だしね。みんな、よろしく」
「俺も最初の仕事になるかな? 議事録は俺が付けるね」
ジュスト・ヴェルジーと海神・江流はそれぞれ司会と書記に立候補した。彼らにとってはこれが役員としての最初の仕事となる。
(パーシア君が個人的に浪費するのはともかく、会計の予算管理がなっていないと思われては困る!)
新会計のローザリカ・L・ディオールは巨大像の建設費が肥大化することを憂慮していた。幸い、質素倹約を是としている前任者も会場に来ている。きっと彼女も自分と同じ気持ちに違いあるまい。ちなみにローザリカの婚約者でもあるジュストの座席はパーシアとローザリカのちょうど間である。新生徒会のメンバーが集まっていると、ガルシアも挨拶に来た。
「こんなところでいうのもあれですが、江流様、生徒会役員の当選おめでとうございます。もし私にも出来る雑務などあればお手伝いさせてください」
「ああ、ありがとうガルシアさん。初めてでまだ慣れてないから助かるよ」
●
「生徒会長お疲れ様な」
ナキルは先代生徒会長エフィルミアを見かけ、ひょいと手を上げた。
「ありがとう、ナキル君!」
「オレは選挙ダメだったな、まぁ……あんだけ大差あっと、な」
コレも経験か、ナキルは頭を掻きながらぼやいた。
「お疲れ様! かっこよかったよ」
(本当は選挙で負けて悔しいくせに!)
エフィルミアは平静を装うナキルの肩をポンと叩いた。よしよしと頭を撫でるのは二人きりの時にしておこう。
「もっと、目指す場所は前にあるんだな。ミアはすげぇからな、負けてられねぇぜ」
(誇れる人が傍に居てくれる。だから頑張れる)
「やあ、みんな集まっているね。」
遅れてやってきたシルヴィア・A・カペルはそんな二人の肩を優しく叩いた。
「副会長としてエフィを支えられたことは私の誇りだ。今後の学園生活もどうか楽しんでね」
「シルヴィ姉様の妹として生徒会長を務められた事は私の誇りです!」
シルヴィアとエフィルミアは互いの体を抱き締めた。
「ナキルも敗れはしたが、頑張ったね」
「いやぁ、オレにはまだあの場所は遠かったなと。けど、別にこれで諦める気はねーし、まだまだ勉強も身に付ける事も多いってコトだな。俄然、燃えて来たってくらいだぜ」
ナキルはシルヴィアを見上げ、ニッと笑った。
「マリリン。君もお疲れ様。共に次世代の生徒会役員を支えていこう」
「はぁい……」
さりげなくシルヴィアに釘を刺され、マリリンは不服そうに返事をした。
「じゃあ私、当選した方々に挨拶してきます! お姉様、一緒に行きましょう!」
「ああ、そうだね。彼らにバトンタッチだ」
エフィルミアとシルヴィアは新生徒会メンバーのいる方へと歩いていった。
●
「パーシア様、生徒会長のご当選おめでとうございます」
レティシア・レインフィールは祝辞を述べた。レティシアが彼女と顔を合わせるのは今回が二度目だ。
「ありがとうございます。レインフィールさんもお変わりないようで何よりです」
パーシアは柔和に微笑んだ。
(殿下に『手を組まないか』と直接お声掛けされている事は絶対に黙っておきましょう)
――レティシア。薔薇の君。君には、選ぶ権利がある筈だよ。
二年前の出来事を思い出したレティシアは心の中で強く誓った。まかり間違ってパーシアに『恋敵』として認識されてしまったりすると、実家まで変な噂が飛び火したり、パーシアの左手の手袋が飛んできたりしかねない。いずれにせよあまりにも無益――どころか災厄だ。
(それに、以前は第三演劇部の方々と揉めていましたが……仲良くなられたようで何よりです)
レティシアは会議室に並んで着席しているラティオとマリリンの姿を認め、頬を緩めた。――すべて勘違いだったのだが。
レティシアが自分の席に移動した後、今度はエフィルミアがパーシアに話しかけていた。
「あえて第二王子のウィリアム王子を選んだのは王国と冒険者の強い繋がりをアピールしたいという事ですよね? 王党派でありながら異種族への歩み寄りもみせる姿勢っ! 凄い!」
パーシアは一瞬の間の後、胸を張った。
「え? ……ええ、もちろんですわ! 学園改革は王家の御意向ですから! 模範を示さなければ!」
「あ、そうだ! 生徒会長の席の後ろの窓は私が何度か逃走したら嵌め殺しにされちゃったんですよ! 逃走時はお気をつけて!」
先代は後継者に謎のアドバイスを送った。彼女は任期中、一体何と戦っていたのだろうか。
「あれ、こいつのせいだったのか……」
パーシアはぼそりと呟いた。
●
「皆様、ようこそお集まりいただきました。また、御投票いただいた方はありがとうございます。わたくしは公約通り、ウィリアム王子の巨大像を建造いたします。今日は皆様のご意見を伺いたく、公聴会を開かせていただきました。しばしお付き合いくださいませ」
新生徒会長パーシアは集まった冒険者に恭しく挨拶した。
「よろしいでしょうか」
最初に挙手したのは、イズル・M・ヴォルゴールだった。
「今期の生徒会長殿は有言実行な事に好感が持てます。(公約の内容はどうあれ)是非成功に向けて意見を述べさせて頂ければ幸いです」
イズルは丁寧な言葉遣いでそう前置きした。
(お坊ちゃん、気取ってんじゃねぇぞ)
すると、隣の席にいたペルゼィックから念話でヤジが飛んだ。
(学園内で口調分けるとか無理。我慢して)
イズルもテレパスで返事し、本題に入る。
「学園からの予算の上限は把握しておりますか? 学園の提示する予算内で納めると、会長の力量や家門の印象は上がると思われます」
「ええ、もちろん把握しておりますわ」
パーシアは自信満々に答えた。だがパーシアの想定していた金額は今年度の『学園の』予算であった。パーシアは学園生徒会の予算申請の仕組みをまだ正確には把握していなかった。パーシアが明確にコストダウンを意識し始めるのは、像の一次企画書が受理された後のことであった。
「とゆか先ず本人の許可取るのだ。話はそこからなのだ」
ストレガ・L・リベルガストラが冷静に告げた。すると、ラミアスが頷いた。
「巨大像の建設自体については王子も前向きでしたよ。王子も冒険者として票を持っていますから……ご自身でパーシアさんに投票された可能性もありますね。像が黄金であることにも特に異論はないかと。『僕は黄金のように光り輝く存在だからね』と迷わず答えるお方ですから」
「そうなのか……」
王族の圧倒的自己肯定感にストレガはちょっと困惑した。
●
「ではまず、像の『素材』の話からみんなの意見を伺おう」
「素材についてはこちらに資料を用意しておきました!」
先代庶務のリサ・ベイカーは一冊のノートを机の上に置いた。リサは巨大像の材料として使用されそうな石材や金属の価格について、事前に素材の単価や安く手に入る地域など調べてメモを作っておいたのだ。
「あら、御親切に……この資料、後でお借りしてもよろしいですか?」
「ええ、もちろん」
「ありがとうございます。ぜひ活用させていただきますわ。ウィリアム像にこれほどの情熱を燃やす同志がいたなんて……嬉しいですわ!」
パーシアはニッコリ笑ったが、リサは困惑した。
(なんか勘違いされちゃった……)
「黄金像ですし、金で!」
ダニエル・ヘリントンが元気よく言うと、続いてルーンス・ラグネルが挙手した。
「うーん……木・粘土・縄で型を作り、銅・錫で鋳造後、仕上げに金箔か金を塗るのがよろしいかと。純金は金属として柔らかく、鋳造・メンテナンスの難易度から作業者の負担が増えますので、やめておいた方が無難です」
「俺もその方針に賛成かな。永く維持していく物なのだからメンテしやすい仕様でまとめるべきかと思うな。維持費が他の予算を圧迫するとよろしくないよね」
江流もその意見に同調した。
「そうか……仕方ないですね」
ダニエルは残念そうだった。
「金箔で固めんなら材質は丈夫なのがいいんじゃねえかな。錆が心配なら石材だな。何かコイツと聖剣狙われてるらしいから、王家の聖剣でも掲げてろよ」
ナハシュがぶっきらぼうに言った。彼は巨大像と言うロマンに惹かれ、この場に馳せ参じたのだ。
「こ い つ?」
パーシアは眉を吊り上げた。
「おっと、王子、王子」
パーシアに睨まれ、ナハシュは慌てて訂正した。せっかくの面白案件だ。議長を怒らせて退場になってしまうのはもったいない。
「材質はやっぱ硬いほうがいいんじゃないかな? それと出来るだけ安いものの方がいいんじゃない?」
フレイヤ・サンライズの頭の中では、巨大ウィリアム像が大型クリーパーにしがみついて王都上空へと上昇し、空中で大爆発する一大スペクタクルシーンが展開されていた。
「却下ですわ。壊れる前提で考えておりませんか? 王子の像は永遠の象徴であるべきです」
パーシアはにこやかにフレイヤの提案を拒否した。そして、参加者達は「永遠……?」と首をかしげた。
●
(パーシアさんは先日ぶりですね。公約の為にも、何かお力になれればと思います)
コルネリウス・アーラはパーシアの特徴的な縦ロールを見つめ、感慨深げだった。コルネリウスはパーシアは一般的な貴族とは異なり、親しみの持てる性格であることを知っていた。
「素材は銅や真鍮などでしょうか? 中を空洞にすれば予算も抑えられるでしょうし。その分を高価な素材に充てることや、サイズを大きくする事も出来るのでは無いでしょうか? メンテナンスや有事に移動させることも大事ですから、その為の重さも軽減できるかと思いますが如何ですか」
コルネリウスは銅か真鍮を候補として挙げた。
「私も真鍮に賛成します。屋外設置だと金メッキは剥げたり傷付いたりします。真鍮製なら黄金色を保ちつつ、十メートルも現実的な予算で実現可能かと」
アウレーリア・フォン・ネーベルベルクも真鍮を推した。すると、ストレガが挙手した。
「青銅に金を塗るのが予算的には無難なのだ。純金や純銅は脆すぎる。あとは軽すぎると盗難の恐れもある。授恵者でも容易に持ち運びはできない方にした方が良いと思うのだ。10メートルなら、中身が空洞でも容易には盗めないと思うが」
「私も青銅に賛成だな。末永く学園の顔となる像、雨風で容易く劣化するような素材は避けたい」
シルヴィアも素材は青銅がいいと考えていることを表明した。
「権威ってのはとりあえず像建てるの、ホント好きだよな」
ペルゼィックはぼそりとつぶやいた後、挙手した。
「エーテル石を目に使うと聞いたんだが……ガキの巣窟に置くのは危険じゃね?」
ペルゼィックが尋ねると、ラミアスが口を挟んだ。
「その点はご安心ください。エーテル石なんて絶対に手に入りませんから。持ち主が譲ってくれるはずがありませんので」
「そうか。じゃあ代用品か?」
そこでパーシアが口を挟んだ。
「ええ、目にはウィリアム王子と同じ蒼い色の宝石を使用するつもりです」
「成る程な。王子様のご意向も伺いたいもんだぜ、贅沢品は好きですかー? って」
ペルゼィックは座り直した。
「それは、どうでしょうね。ウィリアムは王族の中では変わり者ですから」
ラミアスは苦笑した。
その頃、シェルリア・リトヴァールはアルベルティーヌと共に変な方向で盛り上がっていた。言わずと知れたドゥジケット準備会コンビである。
「アルベルティーヌさん、あの二人、ちょっと変じゃありません?」
「どういうことですか、シェルリアさん?」
「ほら、さっきから頻繁にお互いを見つめ合って目でお話してるんですよ! あの二人はきっと心が通じ合っているんです!」
シェルリアの推測はある意味当たっていた。確かに二人は心で通じ合っている。
「なるほど、イズルさんとペルゼィックさん……アリですね! シェルリアさんはどっちが攻めでどっちが受けだと思いますか?」
あらかたの意見が出尽くした後、パーシアは感想を述べた。
「色々なご意見ありがとうございます。メインとなる素材は青銅か、真鍮が良さそうでしょうか。台座もあった方が良さそうですね。盗難対策とメンテナンスのしやすさは一長一短になりそうなので、慎重に検討いたしましょう」
●
「マリリンさんはパーシアさんと色々おありなのでしょうか?」
コルネリウスは休憩中、マリリンにこっそり聞いてみた。会議中のマリリンの言動が以前とまるで異なっていたのが気になったのだ。するとマリリンは頷き、
「はい、予算オーバーした場合はきっとアイオーラ家に負担がいくので、それを狙っているのです。クオリティアップする分にはみんな(パーシア以外)ウィンウィンですわ」
と、正直に答えてくれた。実は獅子身中の虫だったという事実に、コルネリウスは苦笑する。
「そうですね、パーシアさんが納得されて、良い公約実現が出来る事がなによりです。ほどほどにしてあげて下さいね」
「はーい」
マリリンは珍しく生返事をした。
●
休憩時間を挟み、議題はサイズの話へと移った。
「十メートル行くんじゃねぇのか?」
笑いながら言うナキル。納期やら予算やらを考えると、現実的にはそのぐらいが限界だろう。
「せっかく作るなら大きいほうがいいんじゃ無いだろうか。やるからには派手なほうがいい。面白いし」
続いて、ヨル・スレイマンが意見を言った。彼はナハシュの付き添いだ。元々貴族も王族もあまり好きではなかったのだが、最近はウィリアム王子とラミアス教諭の薄い本に共感する部分があり、嫌悪感は薄れつつあるらしい。
「そうですわね……私は全高四十メートルほどで考えています」
パーシアの発言に、一同は唖然とした。いくら何でも大きすぎるだろう。
(やはりか。パーシア君が個人的に浪費するのはともかく、会計の予算管理がなっていないと思われては困る!)
ローザリカは阻止すべく動くことにした。味方だと思っていた前任者は何故か笑顔で拍手しているのだが……。
「パーシア君、あまり大きいと地上からは顔が良く見えないのでは? ほどほどのサイズの方が実在の人物と並び立った時に様々な光景を幻視できるのではないかな」
ローザリカはやんわりとパーシアを牽制した。
「うん、納期についても、そのサイズだと厳しいんじゃないかな」
ジュストはローザリカの意図を察し、援護射撃を送る。
(会長のお財布はともかく、今後、王子と打ち合わせがあったら僕も犠牲になりそうだしな)
学園の予算から足が出た場合、アイオーラ家が出資することになるのだろうが、『募金』の要請が王党派貴族に飛び火する可能性はゼロではない。特に副会長であるジュストはウィリアム王子に、
「新副会長! 君ももちろん僕の巨大像建設に協力してくれるんだろう? ほら、ジャンプしてごらん?」
と打診される可能性はなきしにも非ずだ。
「そうですわ! ここはサイズは抑えて、浮いた予算で隣にラミアス像を建てましょう!」
その時どさくさに紛れ、アルベルティーヌが叫んだ。
「アルベルティーヌ様の構想、とても素晴らしく思います! 熱く……いえ仲睦まじく……じゃなかった仲良さげに見つめ合う感じで。仲良しのお二人の友情を讃える為に! 推し、いえ、お二人の日常のお姿を残せるなんて素敵だと思いませんか? 決してドゥジン的な意味じゃありませんよ!」
シェルリアも拳を握る。その顔には「ドゥジン的な意味です」と書いてあった。
「うむ、良いアイデアだ。ウィリアムとラミアス殿の麗しき友情をアピールするというわけだな」
ベルク・オスマットはここぞとばかりに便乗した。自分から言い出すと不敬だと言われかねないので黙っていたのだ。ラミアスには特に恨みはないので気の毒だが。
「お三方は、ちょっと後で職員室へ。一体何を幻視するつもりなのでしょうか?」
「我もか!?」
教員代表で会議に参加していたラミアスは笑顔で三人に警告した。
「……そうですわね、生徒会室の窓から王子のお顔が見えないのは寂しいですし……もう少しサイズダウンしましょう。十メートルぐらいにしておきましょうか」
●
「素材についてはこんなところかな。では次に、ウィリアム王子像のポーズについての意見を伺おう」
司会のジュストが宣言すると、アウレーリアの瞳がキラリと光った。
(割と圧倒的得票率で当選しましたからね……人が「面白」を求めているのは間違いないかと?あまり真面目過ぎてもコレジャナイ公約違反。公序良俗内で会長の欲望を反映すると良い。つまり――)
「学園は王立、生徒は王族からの寵愛を受ける存在です。つまり愛ですよ愛、投げキッスなど如何です? 美味しくなーれ萌え萌えきゅん・ラブ注入ポーズも捨て難いですね」
「……」
パーシアは無表情になった。
「服装は筋肉造形に拘った半裸、又はポーズに合わせてカチューシャ黒ニーソスカート等でいかがでしょうか」
「素晴らしいアイデアだ!」
ベルクは賛成した。何を隠そうベルクはウィリアム王子への嫌がらせに余念がない。全てはウィリアム王子がヴァルザード紛争の際にレイウェストを花嫁にしてしまったが故である(注:結婚はしてません、念のため)。因果応報。
「そんな変態みたいな像がありますか! 却下です、却下!」
これにはパーシアも怒った。
「ウェディング殿下よりは恥ずかしくないでしょう」
アウレーリアは唇を尖らせた。アウレーリアも例のアレについては思う所があったのだ。さらにベルクも挙手し、腹案を述べた。
「我はビキニパンツ一丁でサイドチェストポーズを決めてにかっと歯を光らせて笑っている。そんな像がいいのではないかと愚考する」
ベルクは真面目な顔で変な事を言い出した。
「いやいやベルちー、そこは褌でしょ、赤褌。」
フレイヤも笑い、さらなる像の変態化を図った。
「俺もいいと思います!」
ダニエルも親指を立てた。
「言うまでもないことですが……皆さん、王家の権威を損ねないデザインでお願いします」
ラミアスはズレた眼鏡をくいっと上げ、冷たく言った。
(短い夢だったな……)
遠い目をするジュスト。「できれば綺麗な議事録にしたいなあ」というジュストの密かな思惑は、この時点で粉々に砕け散ってしまった。
「ええと、ポーズについて匿名希望の冒険者から意見を預かってきてるので、読み上げるね。王家由縁の品掲げる、書物を抱える、自他国や各種族の象徴を繋げた輪を持つ、あるいはパンイチマッスルポーズがいいと思う、だそうだ」
空気の転換を図った江流により、サイラスの意見が読み上げられた。ちなみにパンツ推しなのは下着がウィリアムと被るのが嫌だという個人的なこだわりだそうだ。
「巨大であるなら、胸像ではなく全身像の方が良いだろう。足やマントを台座と接するようにすれば、下半身の安定感も増すのだ」
ストレガは物理学的な観点からそうコメントした。
「剣を携えた姿が良いな。王家は『名もなき剣士』の子孫だから」
シルヴィアも意見を述べた。
「私もよろしいですか?」
続いて挙手したのはガルシアだった。
「剣が武を象徴とするなら、書が文を象徴する物として持たせてどちらも必要だという事の意味にするのはいかがでしょうか?」
(嘗て戦いしか知らなかった自分に、学園に誘ってくれた二人の友人を見ながらふと思ったのです)
「なるほど、『文武両道』ですか。確かに学園にふさわしいデザインですね」
ラミアスは頷いた。
「ポーズは、皆は導く姿はどうでしょう。学ぶ場所に合ったものの方が許可も下り易いかと」
ルーンスは立ち上がると、遠くを指で示すポーズを取った。
「私もルーンス様と近しい意見ですわ。遠くを指差すポーズ、または剣を掲げるポーズならば比較的作り易いですし、動きが付いて勇ましいイメージになるかと」
ルーンスの言葉に頷き、ネーヴェが言った。
「そうですね。先ほどから何名かおっしゃっていましたが、ウィリアムを権威の象徴よりは、『勉学の象徴』としてデザインしていただいた方が、この学園にはふさわしいかと」
ラミアスは微笑んだ。
「なるほど、持ち物に剣や書物、という意見が多いようですわね。参考にいたしますわ。下着姿で王子の肉体美を余すことなく表現すると言うのも捨てがたいのですが……」
パーシアは思案顔だ。彼女の中では何故かパンイチも有力候補らしい。
●
素材、サイズ、ポーズと議題は移り変わり、会議はいよいよ終盤となった。像のオプションなどの、いわゆる「その他」に関する意見を募集するフェーズである。
「ほ、本当にウィリアム様の巨大像が建ってしまうんですね……」
ここにきて、ゲルダ・クラインは動揺していた。会議は着々と進行している。なんだか変な公約を掲げている候補者がいるなあ(それは生徒会長に限ったことではなかったが)とは思っていたが、本気だったとは思わなかったのだ。
「アイオーラさんは後輩の面倒見も良く、貴族にしては好ましい性格なのですがホントに像を建てるつもりなのですね。ヒューマン流のジョークかと思っていました……」
リディリディ・トゥラ・イェレミースも驚いていた。彼女の人となりと選挙公約は知っていたが、まさかあれを実現させるつもりだったとは。
「そう、ですね……。威厳よりも親しみやすさを、――学園にとって、新しいシンボルになるような像がいいなと思いました。付近にベンチを置くと、休憩所にもなっていいと思います」
ゲルダは短くない時間を学生として過ごした学園に対する愛着もあり、真面目に考えて意見を出した。
「なるほど、ベンチはぜひ置きましょう。みんなの憩いの場になりますわね。順番待ちの行列ができないかどうか心配ですが」
パーシアは頷いた。続いてリディリディがおずおずと挙手する。
「ウィリアム王子というのはたしか第二王子でしたよね。王党派の方が第二王子だけ建てるというのは、どうなのでしょう。見ようによっては第二王子を担ぎ上げているようにも見えます。ですので、王太子の像も建てた方が良いのではないでしょうか」
「エドワード王太子の像ですか? うーん、別になくてもよろしいのでは……あってもジャ……げふんげふん。像の唯一性が薄れてしまいますし……」
パーシアは露骨に王太子に関心なさげだった。
「ごほんごほん! ごほんごほん!」
司会者ジュストが激しく咳払いしている。これ以上しゃべらせるとパーシアが不敬罪で投獄されかねないと判断したダニエル(第二演劇部員)は慌てて口を挟んだ。
「部長! 提案があります! 王子像は『歪みねぇ心を持ったガチムチボディでパンツ一丁のウィリアム王子』がヤコブ・ヴィリアンのパンツを脱がし、生尻を激しく叩いて『歪みねぇ心』を注入するポーズでどうでしょう!」
「却下だ、コラァ!」
すかさずパーシアの罵声が飛んだ。
(ダメだったか……とはいえ、これで問題発言はうやむやにできたぞ)
「こほん。気を取り直しまして。パーシア様にどのようなポーズのウィリアム様が格好いいと思いますか?」
ゲルダが尋ねると、パーシアはニッコリと頷き、
「ウィリアム王子ならば、例えエビ反りしていても格好いいと思いますが、それについては別途資料がございますわ!」
用意していた紙袋から、ウィリアム王子のポスターと大量の薄い本を取り出した。
(これはよくない流れですね。このままではウィリアム王子の長編サーガが始まりそうな予感がします)
レティシアは静かに挙手し、パーシアを制した。
「パーシア様、ポーズに関しては殿下をお招きして様々なお姿をスケッチさせて頂き殿下自身にお選び頂くのも手かもしれません」
「確かに、王子ご自身のお気持ちも重要ですわね」
(ふう……なんとかなりました)
「それと、像がもし一定以上の大きさになるのでしたら、有事の際に像か土台の中に避難が出来る形にされるのは如何でしょう? 民を守られるお姿は、正に王族らしいものかと」
「……なるほど、台座に何か仕掛けを作ってみましょうか。学園の科学系クラブや、学術都市あたりに話を伺うのも良いかもしれませんね」
●
「変形だよ、変形。人間が乗り込んで動かしたり変形して乗り物になったり……こう……ドワーフの力を借りてなんとかならないかなあ!」
ヨルは机を叩き、力説した。
「変形……?」
パーシアは怪訝そうな顔をしている。
「なるほど、変形……学園の文化力の高さをアピールするにはアリですね。ドワーフ王国の職人や、学術都市ヴェルクリエの技術者なら実現可能かもしれません」
が、何故かラミアスが喰いついてきた。普段は常識人である彼も、変形は琴線に触れたらしい。
「ウィリアム王子も男だからね、きっと良さをわかってくれるはずだ」
「はあ、そういうものですか」
パーシアは生返事をした。
「あと、俺は『光線』を提唱したい。学園を守る強くて格好良いウィリアム像だよ。ビームが出ると尚いい。ナハシュもそう思うだろ?」
「いいな、光線! 閃光塗料を定期的に塗るかしっかり塗り固めて、夜でも光輝く黄金像にしようぜ!!ゴールデンウィリアムライトアップだ!!! 」
目を輝かせるヨルとナハシュ。テンションが高まっているようだ。この意見についてはパーシアも大いに興味を持った。
「なるほど、月光を浴びて輝くウィリアム王子……実にエレガントですわね! 」
「派手なのは大事だからな。ヒーラーの神もよく言ってる」
フレイヤも光線と変形がツボに入ったのか笑い声を上げ始めた。
「あははははは、面白そうだね☆ 出来上がったら是非とも真昼間に動き出してほしいな♪ それこそ私達の手に負えない魔獣が出てきたのをウィリアム巨大像が対峙して最後にドカーンって、まぁ動かなくてもドッカーンしたいね、てかさせたいから頑張って作らないとね☆」
「なるほど、敵兵と共にウィリアムが木っ端微塵に吹き飛ぶのか。それは興味深い仕掛けであるな」
ベルクは深く頷いた。
「……っは! つまり、サイドチェストポーズしてるウィリアム像が爆発四さ」
フレイヤはポンと手を叩く。盛り上がる二人に、ラミアスが笑顔で告げた。
「この会議の議事録、たぶん王子も見ますよ?」
●
その後、ルーンスの提言で完成の暁には芸術祭を行うことなども決まり、会議は閉会しようとしていた。
「さて、今日のところはこの辺りでお開きかな。学園に永く遺る物になるだろうし、後の世で語られるかも知れない。会長自身が王子の立像にかける想いがあるなら、改めて皆に聞いて貰ってもいいんじゃないかな。敢えて継承権二位の王子を選んだ理由とか、この場で聞ければ議事録=学園の歴史に残るよ?」
江流は皆に聞こえるようにそう言った後、小声でパーシアへと囁く。
「俺個人は、それが大義より個人的な想いだとしてもいいとは思うしね」
すると、パーシアは頬を染め、もじもじしだした。
「まあ、そんな。こんな大勢の前で口にすることははばかられますわ……それは、完成してからで……」
「そうか。じゃあその時にまた聞くことにするよ」
江流は微笑んだ。
●
数日後。
「悩みましたが、これで行きますわ!」
パーシアは出来上がった企画書を生徒会役員たちに見せびらかした。
「会長……本当にこれで出すつもりなのかい?」
ジュストは念押しした。
「ええ、もちろんですわ!」
パーシアは胸を張る。ジュストの隣では企画書を見たローザリカがわなわなと震えていた。ネーヴェはすすっと出口へと移動し、扉の前に立った。この企画書を学園に提出させるわけにはいかない。その想いで新生徒会(会長は除く)たちは結束した。
「もう一度、考え直した方がいいと思う」
江流は溜息をついた。パーシアが自分で書いた企画書では、ポーズはなんと《ビキニパンツでサイドチェスト》》になっていたのである!
(巨大像はパーシアさんだけの公約ですけど、役員全員が公聴会に出席してしまいましたからね……)
これが生徒会の総意だと思われたら困る。その想いはネーヴェも同じであった。ちなみに生徒会役員の企画書提出は一人でも行えるため、全員の総意である必要はない。今期は王党派の色が強い生徒会となったが、異なる派閥が共存・あるいは競争していることもあり得るからだ。
「どうしてもその企画書を出したいというのなら、僕達を倒してからにしてもらおう!」
ローザリカは王党派貴族として譲れぬもののため、扇を構えた。
「ふ、よろしいですわ。以前突き飛ばされたお礼を――」
コンコン。
その時、控えめなノックの音が生徒会室に響いた。ネーヴェが扉を開けると、そこにはこの学園の学園長――フォルトゥナ・アルヴァ・クラティアスが立っていた。
「学園長、ちょうどいい所に! ちょうどウィリアム王子の黄金像の企画書が出来ましたの。この企画書をご覧くださいませ!」
パーシアはサッと学園長に自分で書いた企画書をフォルトゥナに手渡した。学園長はしばらく企画書に目を通した後、厳かに口を開いた。
「パーシア様は冗談がお上手ですね。それで、本当の企画書はどこに?」
学園長の目は全く笑っていなかった。
結局、ウィリアム黄金巨大像はウィリアム王子の希望と学園の意向を汲み、『冒険者ウィル』ベースに、本と剣を持った姿で製作されることになったのだった。
パーシアの野望はまだ、始まったばかりである。
マスターコメント
お疲れ様です。たくさんの意見が出たので、巨大像建造が一歩現実に近づきました。変形は……さすがに無理じゃないかな……。どっかから神代のゴーレム捕まえてきてウィリアムのガワだけ被せるとかしない限り。
次回は巨大像建造の施工業者選定のイベントシナリオとなる予定です。ただし、【怨都】の決戦の結果次第では中止や延期になる可能性があります。ご了承くださいませ。
イベントシナリオ普通 報酬:無し25 / 4〜25人
2022年11月26日 17時38分30秒 公開
大成功
参加者
相談掲示板
「ナキルだ、よろしくなーっと 今の所予定は未定だけど ここは選挙関係の顔ぶれも多いから、ついでってのも何だけど お疲れ様と、当選おめでとうっと さぁて 10メートルか?(まて)」
ごきげんよう。 イズル・M・ヴォルゴールと申します。 今回は聴講生としてお世話になります。 選択肢全てに話したい項目がございまして、話す内容はまだ定まっておりません。 新旧会計様も揃っており、財源に関してはおまかせした方がよろしいとは思いましたが、私としては今期の生徒会長様には好感を持っておりますので、(公約の内容はどうあれ)是非成功できるよう意見を述べさせてもらえれば幸いです。
出遅れまして申し訳ない。 今月から生徒会書記をやらせて貰ってる海神です。 書記なので議事録作成に回ろうかなと。 立像についての意見出しにも参加させて貰えれば。 当日はよろしくお願いします。
皆様、ごきげんよう。本日のお昼12時が出発となります。プレイングの送り忘れにはご注意下さいませ。