フロウスターサマーリゾート
奇古譚
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シナリオID:2495
オープニング
●
リーンエス王国の南部に、とあるカフェがある。
其のカフェは一見普通のカフェだが、夜はバーとして、大人に酒類を提供する場所となっているのは公然の事実である。飢える者なしと言われるリーンエス王国ではあるが、イコール儲けが十分に得られるかというとそうでもないのだ。
このカフェが、とある目玉メニューを打ち出した。
其れが“流れ星”である。
これは果実飲料、或いは酒類と共に使用する。
見た目は金平糖によく似ているが、単品で食しても大して美味しくはない。少しばかりちりちりするような感覚が舌に広がるばかりのものだ。
この“流れ星”は、飲み物の入ったグラスに入れてこそ価値がある。
“流れ星”を果実飲料、或いは酒類にぽぽい、と投げ込むと――果実やアルコールの成分に反応するのだろうか? 泡をしゅわあ、と吐き出して、まるでグラスの中で流れ星が流れるように沈んでいくのだ。
故に、この食材は“流れ星”と呼ばれるのである。
生まれたのは全くの偶然。シェフは其の時どういうレシピを使用したのかを頭の中で必死に思い返しながら、幾つかの試供品を作り出した。
或いは、流れ星が消えた後に花弁が浮かんでくるものだったり。
或いは、流れ星によって少し甘みが増すものだったり。
或いは、流れ星によってアルコールが飛んでしまうものだったり。
―― 一番最後の流れ星は完全に“余計なお世話”な気がするが、其れは置いておこう。
兎も角、冒険者ギルドに其の店からこんな依頼が持ち込まれた。
「客にこの試供品たちを行き成り出すのは憚られる。故に、冒険者たちにこの“流れ星”を試してみて欲しい」
……との事。
完全に実験台だ、という謗りは敢えて受けようという店主の気概や良し。
注文すれば、無茶な願いでなければ様々な“流れ星”を作ってくれる事だろう。
もうそろそろ夏が終わり、秋が来る。
星空が澄み渡る冬と、天に星が煌めく夏の間。
間隙を縫うように流れる星を楽しむのも、良いだろう。
リーンエス王国の南部に、とあるカフェがある。
其のカフェは一見普通のカフェだが、夜はバーとして、大人に酒類を提供する場所となっているのは公然の事実である。飢える者なしと言われるリーンエス王国ではあるが、イコール儲けが十分に得られるかというとそうでもないのだ。
このカフェが、とある目玉メニューを打ち出した。
其れが“流れ星”である。
これは果実飲料、或いは酒類と共に使用する。
見た目は金平糖によく似ているが、単品で食しても大して美味しくはない。少しばかりちりちりするような感覚が舌に広がるばかりのものだ。
この“流れ星”は、飲み物の入ったグラスに入れてこそ価値がある。
“流れ星”を果実飲料、或いは酒類にぽぽい、と投げ込むと――果実やアルコールの成分に反応するのだろうか? 泡をしゅわあ、と吐き出して、まるでグラスの中で流れ星が流れるように沈んでいくのだ。
故に、この食材は“流れ星”と呼ばれるのである。
生まれたのは全くの偶然。シェフは其の時どういうレシピを使用したのかを頭の中で必死に思い返しながら、幾つかの試供品を作り出した。
或いは、流れ星が消えた後に花弁が浮かんでくるものだったり。
或いは、流れ星によって少し甘みが増すものだったり。
或いは、流れ星によってアルコールが飛んでしまうものだったり。
―― 一番最後の流れ星は完全に“余計なお世話”な気がするが、其れは置いておこう。
兎も角、冒険者ギルドに其の店からこんな依頼が持ち込まれた。
「客にこの試供品たちを行き成り出すのは憚られる。故に、冒険者たちにこの“流れ星”を試してみて欲しい」
……との事。
完全に実験台だ、という謗りは敢えて受けようという店主の気概や良し。
注文すれば、無茶な願いでなければ様々な“流れ星”を作ってくれる事だろう。
もうそろそろ夏が終わり、秋が来る。
星空が澄み渡る冬と、天に星が煌めく夏の間。
間隙を縫うように流れる星を楽しむのも、良いだろう。
解説
●目的
流れ星とドリンクを楽しもう
●立地
リーンエス王国の街角にある小さな店「シューティングスター」です。
昼間はカフェ、夜はバーを営んでいます。
店主は名前にちなんだ何かを作ろうと様々なレシピを考案していたのですが、其の道程で偶然“流れ星”を生成する事に成功しました。
しかし偶然の産物を再現するというのはなかなか難しい事。
きちんと安定して供給できるようになるために、冒険者ギルドに依頼を持ち込みました。
●出来ること
時間帯は「夜のみ」です。
夜でもノンアルコールドリンクは注文可能ですので、問題ありません。
流れ星は様々な効果が付随します。
例えば花弁を中央に埋め込んでおけば、流れ星が流れ切った後に花弁が浮かんできます。
更に砂糖を混ぜ込んでおけば、少し甘くなったドリンクを楽しむ事も出来るでしょう。
例えば花弁を混ぜる際に、花弁を持ち込んで指定する事も可能です。
花言葉を想起させる花を浮かせる訳です。
更には流れ星でアルコールを飛ばしてノンアルコールカクテルに変え、ちょっとオトナな気分も味わえたりします。
想像次第で色々な事が出来ると思います。
出来る限り対応しますので、やってみてください。
●注意事項
迷子・描写漏れ防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは判るように【】で囲んだ合言葉などを添えて下さい。
マスターより
こんにちは、奇古譚です。
“流れ星”という名称ではありませんが、飲料に入れて飲む金平糖のようなお菓子は実在します。
今回は其処からインスピレーションを受けて書きました。
想像次第で何でもできると思います。是非色々考えてみてください。
●
イベントシナリオではアドリブ控えめとなります。
皆さまが気持ちよく過ごせるよう、マナーを守ってイベントを楽しみましょう。
では、いってらっしゃい。
リプレイ
●
しゅわしゅわ。
ぷくぷく。
様々な流れ星が、ドリンクに降り注ぐ。
此処はカフェバー“シューティングスター”。
キラキラの流星群を、貴方に。
●
ながれぼし。ふしぎなのみもの、ですね。
ミゼリア・L・ステュクスはまじまじと、グラスを見詰めていた。
おさとうを入れて、甘くなるのをためしてみたいなぁ。
お酒を入れておいたら、ながれぼしを入れてつよいおさけも作れるのかなぁ。
花弁を入れる事も出来ますよ、と悩んでいる様子のミゼリアにウェイトレスが言った。
おはな。ミゼリアは、この時期に咲く赤い花を思い出す。
「……あの、……じゃあ、ひがんばなが、好きです。花びら……ありますか?」
「ええ!」
ドリンクはとても無難に、そして花弁の赤色が映えるからと勧められて透明な炭酸飲料にした。
じい、とミゼリアは見詰めている。ぷくぷくと泡を立てる炭酸飲料。ふしぎ。
やがて運ばれてきた流れ星は少し大きくて、赤い色をしていた。ひがんばなのいろだ、と嬉しそうにミゼリアは指に摘まんで、――ぽちゃん、とグラスに放り込む。しゅわりしゅわり、音がして。流れ星が曲線描く赤い花びらを吐き出しながらグラスの底へと落ちていく。
「わ、ぁ……」
味は変わるかしら。ある程度泡が落ち着いたところでミゼリアがそっと呑んでみると、炭酸飲料は甘く変わっていた。あまい。おいしい。ミゼリアの瞳が輝く。
こんなじっけんなら、いつだってお役にたちたいな。
ミゼリアは思う。痛いのはいやだけれど、この実験はとてもきれいで、おいしいから。
「グラスの中に、……よぞら」
ちゃんと出来たら、また来たい。其の時にはたくさんお花の事を知って、色んなお花が浮かぶのを見てみたい。ミゼリアは想像して、ほんの少しだけ口端を緩めた。
●
取り敢えず、とサイラスは酒とノンアルコールカクテルを幾つか注文する。星との飲み合わせや、混ぜたらまずいものがあると困るからだ。
試した事のない酒や果物を確認し、流れ星を入れていく。其の様はまるで実験にも似ていた。色が変わって行くもの。色は変わらないが味が変わるもの。酒の筈だったのに、アルコールが飛んでいるもの……それぞれを飲み比べていく。
この場合、飲み比べなければならないので酒は少し控えめに注文しているが……水腹になりそうだ、とサイラスは途中で水を呑んで味覚をリセットしながら悩ましく思った。
――恐らく、というより絶対……複数個の流れ星を入れるというのは誰かがやるだろう。誰だって新商品が開発されたら、新境地を開拓したくなるものだ。
だから、サイラスがこうして実験している時に悪影響のある組み合わせが現れたら、其れは寧ろ僥倖。其の為の冒険者への試飲会だとサイラスは考えている。
リストに味の感想を書き加えていく。気付けば結構な数飲んでいた。……少し休むか、と水を再び喉に流し込み……そういえば、水に流れ星を入れたらどうなるのだろうとサイラスは思考した。……あとで試してみよう。
●
グレイブ・ヤードはまるで手に届く星のようだ、と流れ星を見て思う。
届かぬ星々に手を伸ばすより、余程良い。其れにきっと、美味しい。まずはドリンクをお選びください、とウェイトレスに促されて、そうだな、と少し考えた。
見栄えを重視するのなら、サイダーなどの透明度の高い飲料が良いのだろう。けれども、濃い色の飲料でも、光に照らされて流れ星が輝く様が美しいのではないかとも思う。
悩んだ末、透明度の高いカクテルを頼む事にした。最近は秋めいてきたから、夜は冷える。この肌寒さを解消してくれるものが欲しかった。
お待たせしました、と運ばれてくるカクテルと、幾つかの流れ星。
一つは何も変わらないものですよ、とウェイトレスに言われるままにドリンクに流し込んでみると、しゅわしゅわ泡の軌道を描きながら星が落ちていく。成る程、流れ星みたいだ。――だけれど、少し刹那的すぎるような気もする。海月の傘のようにして、ふわふわ落ちていくようには出来ないだろうか、とグレイブは思案した。泡と同じくらいの落下速度に調整して、ふわふわと底に落ちるような……うん、きっと綺麗だ。
秋の天は高く、星が輝いている。グレイブは地上に落ちた星を、そっとドリンクと共に楽しむ。
人の世はかくも騒がしい。けれども、どうか。楽しく善きものでありますように。
●
ヨル・スレイマンとナハシュ。
お互い作ったものを交換しよう、と持ちかけたのは果たしてどちらだったのか。
ヨルが甘党だと知っているナハシュは、自分用にアルコールを含んだ流れ星で度数を上げるものの他に、交換用に死ぬほど甘くなる砂糖入りの流れ星を注文した。いや、砂糖じゃ足りないだろう。砂糖をさらに甘露アリの蜜に漬け込んだくらいが良いかもしれない。出来る限り甘くしてくれ、に結局落ち着いた。
一方ヨルは、中にハーブエキスを入れて、色が変わるように加工してくれと注文した。これを入れれば、夕暮れが夜に変わるような色合いを楽しめる。
――きっと、彼には夜が似合うから。
見た目も橙に僅かに藍色が見えて、とても綺麗だ。きっと気に入ってくれるだろう、とドリンクを持って待ち合わせの席に急ぐ。
「乾杯」
「おう、乾杯」
そうして乾杯をして、お互いの星を交換する。
ヨルがドリンクに流れ星を入れると、しゅわしゅわと泡の軌跡を描きながらドリンクに星が落ちていく。……見た目は変わらないけれど…何か変わったかな? と口につけてみれば、ヨルにとっては(重要)凄く好みの甘さが口の中に広がった。
一方でナハシュも、しゅわしゅわと泡を吹きながら、橙色から藍色へ染まって行くドリンクを見て声を上げている。
「……君、俺の奴は取り敢えず甘くしておけばいいと思ってない?」
半分照れ隠しに、ヨルがドリンクを口につける合間に呟く。
間違ってないだろ? とナハシュは事も無げに言う。そうしてドリンクを一口。いつの間にか好みまですっかりと知られてしまっていたようだ。一緒に住んでいればきっとそうなるだろうとは思ったが、実際にこういう事をされるととても照れる。
「……これ、悪くねえな。味も良ければなお良しなんだが」
藍色に星が転がるグラスを見下ろしてナハシュが言う。
何か気に入らない味だっただろうか、とヨルが問うと、「ハーブ臭い」と一言返ってきて――思わずヨルは噴き出してしまった。少し、ハーブが濃かったかな。
●
「オレはグラスホッパーで」
「俺は午後の死。あるか?」
前者の注文はギャメル、後者はオゴスである。オゴスの問いにございます、と簡潔に答えたウェイトレスは、流れ星の要望を幾つか聞くとキッチンへ戻って行った。
「なんだお前さん」
「なんだよ」
「“オレは成人ゴブリン男性だ”ってアピールする癖にアルコールを抜く星を頼むのか?」
「あー……ゴブリン基準だと大人だし、酒は飲めるけどな。此処はゴブリンだけのバーじゃないだろ。他種族の前だと色々面倒なんだよ」
「……」
オゴスは顎を撫で、其れもそうか、と頷く。
「知らない相手からは誤解されるだろうな。俺はギャメルが一人前の冒険者だと――思い知らされたが」
「ハッ! 以前のお前とは偉い違いだが、判ってくれて嬉しいぜ」
ドリンクが運ばれてくる。カクテルを置いた後に、四角い皿に幾つか金平糖のようなもの。これが“流れ星”だろう。
「オゴスはどんなのにしたんだっけか」
「見りゃ判る」
オゴスはぽとり、頼んだ藍色の金平糖を翠色のドリンクに落とす。しゅわしゅわと泡が流れて、星が落ちて……きらり。きらり。水面に食用ラメが広がった。
ひゅう、とギャメルが口笛を吹く。が……一緒に漂ってきたアブサン特有の香りに口元をむずむずとさせた。
「ふむ……流れ星の後もこの輝きが残せればいいんだが」
「なあ。これ、長屋の部屋に遊びに行く時よく感じる匂いなんだけど」
「ああ。たまにアブサンを割って飲んでいるからな」
ボスも、この酒が好きだった。オゴスは無意識に、首元に巻いた布に触れながら呟く。
――ゴブリナ草とも、愛用の香水とも異なる匂い。
ふーん、と言いつつも、ギャメルは興味をすっかりと引かれてしまったようで。金平糖を複数使って実験しよう、という建前で、オゴスとおなじものを注文した。
結果――甘くもなく、口には合わなかったがドリンクを一生懸命飲み干すギャメルを見て、何をやっているんだか、とオゴスは肩を竦めた。
●
「これ使うとアルコール飛んじゃうの!? え、飛ばない奴もある!? ほんと!?」
ディレイン・オールドケイジはウェイトレスに縋りつくように言い、大丈夫ですよと宥められていた。
何だか知った声がすると思ったら……と溜息を吐いて、レピド・クロサイトは折角だから相席しようと彼に寄って行く。
「ディレイン」
「あれ、レピド君。君も飲みに来たの? 偶然だねえ」
「ああ。隣、構わないか?」
「全然良いよ! どうぞどうぞ」
そういえば、流れ星は? とディレインが問う。
ああ、とレピドは頷いて、一輪の花を取り出した。いくつか花弁が抜かれた、ペチュニアの花のようだった。
「これを、加工して貰っている」
「へえ……面白そうだな。俺はね、ハーブ酒からアルコールを飛ばせないかなって」
ハーブ酒って色んな効能があるけど、癖があるから苦手な人もいるんだよね。
だけどアルコールをうまく飛ばせれば、お酒飲めない時期の女性でも飲みやすくなったりするんじゃないかなって。
そう言うディレインの横顔は笑みながらも真剣で、成る程、とレピドは頷く。
「其れはきっと、人々の救いになると思う」
「す、救い!? 大袈裟だなあ、レピド君は。あ、ほらほら! ドリンクが来たよ!」
斯くして運ばれてきたカクテル。
レピドの前に置かれたのはブルーレディ。ブルーキュラソーを元にした、飲み口の柔らかいカクテルだ。
ディレインの前にはミントジュレップ。
「知っていますか?」
ふと、ウェイトレスがレピドに話しかける。
其のお花、と彼が持っていたペチュニアを指差して、花言葉があるんです、と笑う。
「へえ、どんなの?」
「“心の安らぎ”というんですよ。……ふふ。店長が流れ星を開発してから、少し詳しくなったんです」
では、と頭を下げて去って行くウェイトレス。
ディレインはレピドに視線を送ると、だって、と言った。
「そうか……」
そうして、レピドはそっと流れ星をカクテルに落とす。
しゅわり、と炭酸の泡がたち、ペチュニアの花弁がふわりと浮き上がる様は確かに美しかった。
「――呑み過ぎないようにね?」
「ああ、判っている」
「ほんとかなあ」
今度は二日酔いで介抱するなんて、おじさん過労になっちゃうよ。
●
ジュスト・ヴェルジーは白ワインを用いたカクテルを。
ローザリカ・L・ディオールもまた白ワインをベースに、其処にカシスを加えたドリンクを注文した。
自身が飲むものではない。流れ星もまた、自身が使うものではない。互いにプレゼントし合おう、という、実に恋人らしい提案だった。はて、どちらからしたのだったか。
やがて届いたドリンク。
ジュストの前に置かれたローザリカ選のドリンクには、白い流れ星が添えられて。
ローザリカの前には流れ星が二つ、置かれた。薄い金色と、白いものだ。
「……これは二つとも?」
「ああ。二つとも入れて大丈夫だよ」
ローザリカは言われるがままに、ぽつり、ぽつりと流れ星を落とす。しゅわり、と音を立ててグラスの底に墜ちていく流れ星。白い流れ星でアルコールを飛ばして、そして其処に浮かぶのは、金木犀の花弁。
ジュストの領では珍しくない花だ。花言葉は「謙遜・気高い・真実」。そして、「初恋・誘惑・陶酔」。
「……初恋だったんだ」
ぽつり、とジュストが小さく呟く。
ロゼの選んでくれたカクテルを揺らし、其処に白い流れ星をそっと落として。
いつから。はっきりと覚えている、初めて会った5歳の時だ。
でもあの時は、貴族に恋愛なんて許されないと思っていたから、そっと想いに蓋をして。そうして今やっと、花に託して言えるようになった。
「ずっと、ずっと好きだった。出会った時から、……そして今も、好きなんだ」
「……ジュスト。そんなの……そんなの、私だってそうだ」
ローザリカの瞳がカクテルへと移る。ジュストが視線を追うと、カシスの赤が濃いカクテルに白薔薇の花弁が浮いていた。其れはまるで、紅い薔薇のようにも見える。
白薔薇は――「私は貴方に相応しい」。
けれど紅い薔薇になれば「貴方を愛している」に変じる。そして、キールのカクテル言葉は「最高のめぐり逢い・陶酔」。
ずっとずっと、通じ合っていたのだ。
初めて目が合った時からずっと。黄金と翠色が交わったあの時からずっとずっと、二人の想いは一緒だった。
「君の所為だ」
ローザリカが甘く責める。
「出会った時からずっと、君に酔わされている」
「ロゼ……」
隣にいてもいいのかと悩む夜があった。
距離を取っていた日々でさえ、夜が来るたびに思い出さずにはいられなかった。
ずっとずっと、酔っていたんだ。
「君が好きだ。私だって、ずっとずっと」
二人の指が絡み合う。其れは運命の糸のように、解けない。もう解けない。
ローザリカの目頭が熱い。恋の所為? それとも、アルコールの香りに酔っているの?
「ああ、――俺に証明させて欲しい」
ずっと好きだと。
君を愛していると、永遠に証明させて欲しい。
ジュストは誓った。潤む琥珀に、たった一人の永遠の初恋に、……誓った。
●
「流れ星でアルコールが飛ぶ、か」
シルヴィア・A・カペルはふむ、と記憶を掘り返す。以前恋人に作って貰ったローズジャムのテ・ロワイヤルみたいだと、其の当人であるエル=バ=ノイアンを見た。
本人は「そんなやり方もあるんだな」と真面目に頷いている。
「あの時はフランベで酒を飛ばしていたよね」
「ああ」
「発泡現象で飛ばしているのかな……それも面白いね」
「そうだな。……酒精のない飲み物なら、俺でも飲める」
様々な酒を嗜むシルヴィア。同席しても同じ感覚を味わえないのを残念に思っていた、と零す愛らしい恋人に、じゃあ今日は大丈夫だね、とシルヴィアは笑った。
二人で揃って頼んだのは、青と白が二層になったカクテル。
流れ星を入れても色に支障はありませんよ、と親切に付け足してくれたウェイトレスに礼を言って、シルヴィアはカクテルを眺める。
いつだったか、二人でマロウのお茶を飲んだ事もあった。あれも確か、条件次第で色が変わるもの。二人で同じものを飲む。其れだけでなんだか、胸が満たされていく気がする。
ノイアンは少し直接的すぎただろうかとカクテルを隠したくなったが、シルヴィアの笑みを見ればそんな恥じらいは消えていく。……アルコールを飛ばす流れ星を入れて、しゅわしゅわ、と泡が立つのを見る。
「俺は」
ノイアンが口を開く
「其のままでも良いとは思うが、変化していくさまを見ていくのも、きっと楽しい」
……其れは、カクテルの事でもなく。マロウティーの事でもなく。
きっと、シルヴィアとの恋、ひいてはシルヴィア自身の事を言っていた。其のままでもきっと美しいのだけれど、変わって行く想いも、きっと二人でなら楽しめるのだろうと。恋が幾ら色を変えようと、本質にある愛は決して変わりはしない。
其れを、少しずつ理解して来たから。
ノイアンがそっと差し出したのは、白い薔薇の小さな花束。
隠しきれてなかったからサプライズにはならないけれど――青にも赤にも染まらぬ其の白薔薇を受け取り、シルヴィアは変わらぬ愛を知る。
――ああ。心が、満たされていく。
「ありがとう。とても嬉しいよ。……どんな花言葉をイメージしてくれたのかな?」
「……」
ノイアンは答えるか迷った。
きっと、シルヴィアは判っている。4本の白薔薇がどんな意味を持つのか、なんて。
しゅわしゅわ。
ぷくぷく。
様々な流れ星が、ドリンクに降り注ぐ。
此処はカフェバー“シューティングスター”。
キラキラの流星群を、貴方に。
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ながれぼし。ふしぎなのみもの、ですね。
ミゼリア・L・ステュクスはまじまじと、グラスを見詰めていた。
おさとうを入れて、甘くなるのをためしてみたいなぁ。
お酒を入れておいたら、ながれぼしを入れてつよいおさけも作れるのかなぁ。
花弁を入れる事も出来ますよ、と悩んでいる様子のミゼリアにウェイトレスが言った。
おはな。ミゼリアは、この時期に咲く赤い花を思い出す。
「……あの、……じゃあ、ひがんばなが、好きです。花びら……ありますか?」
「ええ!」
ドリンクはとても無難に、そして花弁の赤色が映えるからと勧められて透明な炭酸飲料にした。
じい、とミゼリアは見詰めている。ぷくぷくと泡を立てる炭酸飲料。ふしぎ。
やがて運ばれてきた流れ星は少し大きくて、赤い色をしていた。ひがんばなのいろだ、と嬉しそうにミゼリアは指に摘まんで、――ぽちゃん、とグラスに放り込む。しゅわりしゅわり、音がして。流れ星が曲線描く赤い花びらを吐き出しながらグラスの底へと落ちていく。
「わ、ぁ……」
味は変わるかしら。ある程度泡が落ち着いたところでミゼリアがそっと呑んでみると、炭酸飲料は甘く変わっていた。あまい。おいしい。ミゼリアの瞳が輝く。
こんなじっけんなら、いつだってお役にたちたいな。
ミゼリアは思う。痛いのはいやだけれど、この実験はとてもきれいで、おいしいから。
「グラスの中に、……よぞら」
ちゃんと出来たら、また来たい。其の時にはたくさんお花の事を知って、色んなお花が浮かぶのを見てみたい。ミゼリアは想像して、ほんの少しだけ口端を緩めた。
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取り敢えず、とサイラスは酒とノンアルコールカクテルを幾つか注文する。星との飲み合わせや、混ぜたらまずいものがあると困るからだ。
試した事のない酒や果物を確認し、流れ星を入れていく。其の様はまるで実験にも似ていた。色が変わって行くもの。色は変わらないが味が変わるもの。酒の筈だったのに、アルコールが飛んでいるもの……それぞれを飲み比べていく。
この場合、飲み比べなければならないので酒は少し控えめに注文しているが……水腹になりそうだ、とサイラスは途中で水を呑んで味覚をリセットしながら悩ましく思った。
――恐らく、というより絶対……複数個の流れ星を入れるというのは誰かがやるだろう。誰だって新商品が開発されたら、新境地を開拓したくなるものだ。
だから、サイラスがこうして実験している時に悪影響のある組み合わせが現れたら、其れは寧ろ僥倖。其の為の冒険者への試飲会だとサイラスは考えている。
リストに味の感想を書き加えていく。気付けば結構な数飲んでいた。……少し休むか、と水を再び喉に流し込み……そういえば、水に流れ星を入れたらどうなるのだろうとサイラスは思考した。……あとで試してみよう。
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グレイブ・ヤードはまるで手に届く星のようだ、と流れ星を見て思う。
届かぬ星々に手を伸ばすより、余程良い。其れにきっと、美味しい。まずはドリンクをお選びください、とウェイトレスに促されて、そうだな、と少し考えた。
見栄えを重視するのなら、サイダーなどの透明度の高い飲料が良いのだろう。けれども、濃い色の飲料でも、光に照らされて流れ星が輝く様が美しいのではないかとも思う。
悩んだ末、透明度の高いカクテルを頼む事にした。最近は秋めいてきたから、夜は冷える。この肌寒さを解消してくれるものが欲しかった。
お待たせしました、と運ばれてくるカクテルと、幾つかの流れ星。
一つは何も変わらないものですよ、とウェイトレスに言われるままにドリンクに流し込んでみると、しゅわしゅわ泡の軌道を描きながら星が落ちていく。成る程、流れ星みたいだ。――だけれど、少し刹那的すぎるような気もする。海月の傘のようにして、ふわふわ落ちていくようには出来ないだろうか、とグレイブは思案した。泡と同じくらいの落下速度に調整して、ふわふわと底に落ちるような……うん、きっと綺麗だ。
秋の天は高く、星が輝いている。グレイブは地上に落ちた星を、そっとドリンクと共に楽しむ。
人の世はかくも騒がしい。けれども、どうか。楽しく善きものでありますように。
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ヨル・スレイマンとナハシュ。
お互い作ったものを交換しよう、と持ちかけたのは果たしてどちらだったのか。
ヨルが甘党だと知っているナハシュは、自分用にアルコールを含んだ流れ星で度数を上げるものの他に、交換用に死ぬほど甘くなる砂糖入りの流れ星を注文した。いや、砂糖じゃ足りないだろう。砂糖をさらに甘露アリの蜜に漬け込んだくらいが良いかもしれない。出来る限り甘くしてくれ、に結局落ち着いた。
一方ヨルは、中にハーブエキスを入れて、色が変わるように加工してくれと注文した。これを入れれば、夕暮れが夜に変わるような色合いを楽しめる。
――きっと、彼には夜が似合うから。
見た目も橙に僅かに藍色が見えて、とても綺麗だ。きっと気に入ってくれるだろう、とドリンクを持って待ち合わせの席に急ぐ。
「乾杯」
「おう、乾杯」
そうして乾杯をして、お互いの星を交換する。
ヨルがドリンクに流れ星を入れると、しゅわしゅわと泡の軌跡を描きながらドリンクに星が落ちていく。……見た目は変わらないけれど…何か変わったかな? と口につけてみれば、ヨルにとっては(重要)凄く好みの甘さが口の中に広がった。
一方でナハシュも、しゅわしゅわと泡を吹きながら、橙色から藍色へ染まって行くドリンクを見て声を上げている。
「……君、俺の奴は取り敢えず甘くしておけばいいと思ってない?」
半分照れ隠しに、ヨルがドリンクを口につける合間に呟く。
間違ってないだろ? とナハシュは事も無げに言う。そうしてドリンクを一口。いつの間にか好みまですっかりと知られてしまっていたようだ。一緒に住んでいればきっとそうなるだろうとは思ったが、実際にこういう事をされるととても照れる。
「……これ、悪くねえな。味も良ければなお良しなんだが」
藍色に星が転がるグラスを見下ろしてナハシュが言う。
何か気に入らない味だっただろうか、とヨルが問うと、「ハーブ臭い」と一言返ってきて――思わずヨルは噴き出してしまった。少し、ハーブが濃かったかな。
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「オレはグラスホッパーで」
「俺は午後の死。あるか?」
前者の注文はギャメル、後者はオゴスである。オゴスの問いにございます、と簡潔に答えたウェイトレスは、流れ星の要望を幾つか聞くとキッチンへ戻って行った。
「なんだお前さん」
「なんだよ」
「“オレは成人ゴブリン男性だ”ってアピールする癖にアルコールを抜く星を頼むのか?」
「あー……ゴブリン基準だと大人だし、酒は飲めるけどな。此処はゴブリンだけのバーじゃないだろ。他種族の前だと色々面倒なんだよ」
「……」
オゴスは顎を撫で、其れもそうか、と頷く。
「知らない相手からは誤解されるだろうな。俺はギャメルが一人前の冒険者だと――思い知らされたが」
「ハッ! 以前のお前とは偉い違いだが、判ってくれて嬉しいぜ」
ドリンクが運ばれてくる。カクテルを置いた後に、四角い皿に幾つか金平糖のようなもの。これが“流れ星”だろう。
「オゴスはどんなのにしたんだっけか」
「見りゃ判る」
オゴスはぽとり、頼んだ藍色の金平糖を翠色のドリンクに落とす。しゅわしゅわと泡が流れて、星が落ちて……きらり。きらり。水面に食用ラメが広がった。
ひゅう、とギャメルが口笛を吹く。が……一緒に漂ってきたアブサン特有の香りに口元をむずむずとさせた。
「ふむ……流れ星の後もこの輝きが残せればいいんだが」
「なあ。これ、長屋の部屋に遊びに行く時よく感じる匂いなんだけど」
「ああ。たまにアブサンを割って飲んでいるからな」
ボスも、この酒が好きだった。オゴスは無意識に、首元に巻いた布に触れながら呟く。
――ゴブリナ草とも、愛用の香水とも異なる匂い。
ふーん、と言いつつも、ギャメルは興味をすっかりと引かれてしまったようで。金平糖を複数使って実験しよう、という建前で、オゴスとおなじものを注文した。
結果――甘くもなく、口には合わなかったがドリンクを一生懸命飲み干すギャメルを見て、何をやっているんだか、とオゴスは肩を竦めた。
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「これ使うとアルコール飛んじゃうの!? え、飛ばない奴もある!? ほんと!?」
ディレイン・オールドケイジはウェイトレスに縋りつくように言い、大丈夫ですよと宥められていた。
何だか知った声がすると思ったら……と溜息を吐いて、レピド・クロサイトは折角だから相席しようと彼に寄って行く。
「ディレイン」
「あれ、レピド君。君も飲みに来たの? 偶然だねえ」
「ああ。隣、構わないか?」
「全然良いよ! どうぞどうぞ」
そういえば、流れ星は? とディレインが問う。
ああ、とレピドは頷いて、一輪の花を取り出した。いくつか花弁が抜かれた、ペチュニアの花のようだった。
「これを、加工して貰っている」
「へえ……面白そうだな。俺はね、ハーブ酒からアルコールを飛ばせないかなって」
ハーブ酒って色んな効能があるけど、癖があるから苦手な人もいるんだよね。
だけどアルコールをうまく飛ばせれば、お酒飲めない時期の女性でも飲みやすくなったりするんじゃないかなって。
そう言うディレインの横顔は笑みながらも真剣で、成る程、とレピドは頷く。
「其れはきっと、人々の救いになると思う」
「す、救い!? 大袈裟だなあ、レピド君は。あ、ほらほら! ドリンクが来たよ!」
斯くして運ばれてきたカクテル。
レピドの前に置かれたのはブルーレディ。ブルーキュラソーを元にした、飲み口の柔らかいカクテルだ。
ディレインの前にはミントジュレップ。
「知っていますか?」
ふと、ウェイトレスがレピドに話しかける。
其のお花、と彼が持っていたペチュニアを指差して、花言葉があるんです、と笑う。
「へえ、どんなの?」
「“心の安らぎ”というんですよ。……ふふ。店長が流れ星を開発してから、少し詳しくなったんです」
では、と頭を下げて去って行くウェイトレス。
ディレインはレピドに視線を送ると、だって、と言った。
「そうか……」
そうして、レピドはそっと流れ星をカクテルに落とす。
しゅわり、と炭酸の泡がたち、ペチュニアの花弁がふわりと浮き上がる様は確かに美しかった。
「――呑み過ぎないようにね?」
「ああ、判っている」
「ほんとかなあ」
今度は二日酔いで介抱するなんて、おじさん過労になっちゃうよ。
●
ジュスト・ヴェルジーは白ワインを用いたカクテルを。
ローザリカ・L・ディオールもまた白ワインをベースに、其処にカシスを加えたドリンクを注文した。
自身が飲むものではない。流れ星もまた、自身が使うものではない。互いにプレゼントし合おう、という、実に恋人らしい提案だった。はて、どちらからしたのだったか。
やがて届いたドリンク。
ジュストの前に置かれたローザリカ選のドリンクには、白い流れ星が添えられて。
ローザリカの前には流れ星が二つ、置かれた。薄い金色と、白いものだ。
「……これは二つとも?」
「ああ。二つとも入れて大丈夫だよ」
ローザリカは言われるがままに、ぽつり、ぽつりと流れ星を落とす。しゅわり、と音を立ててグラスの底に墜ちていく流れ星。白い流れ星でアルコールを飛ばして、そして其処に浮かぶのは、金木犀の花弁。
ジュストの領では珍しくない花だ。花言葉は「謙遜・気高い・真実」。そして、「初恋・誘惑・陶酔」。
「……初恋だったんだ」
ぽつり、とジュストが小さく呟く。
ロゼの選んでくれたカクテルを揺らし、其処に白い流れ星をそっと落として。
いつから。はっきりと覚えている、初めて会った5歳の時だ。
でもあの時は、貴族に恋愛なんて許されないと思っていたから、そっと想いに蓋をして。そうして今やっと、花に託して言えるようになった。
「ずっと、ずっと好きだった。出会った時から、……そして今も、好きなんだ」
「……ジュスト。そんなの……そんなの、私だってそうだ」
ローザリカの瞳がカクテルへと移る。ジュストが視線を追うと、カシスの赤が濃いカクテルに白薔薇の花弁が浮いていた。其れはまるで、紅い薔薇のようにも見える。
白薔薇は――「私は貴方に相応しい」。
けれど紅い薔薇になれば「貴方を愛している」に変じる。そして、キールのカクテル言葉は「最高のめぐり逢い・陶酔」。
ずっとずっと、通じ合っていたのだ。
初めて目が合った時からずっと。黄金と翠色が交わったあの時からずっとずっと、二人の想いは一緒だった。
「君の所為だ」
ローザリカが甘く責める。
「出会った時からずっと、君に酔わされている」
「ロゼ……」
隣にいてもいいのかと悩む夜があった。
距離を取っていた日々でさえ、夜が来るたびに思い出さずにはいられなかった。
ずっとずっと、酔っていたんだ。
「君が好きだ。私だって、ずっとずっと」
二人の指が絡み合う。其れは運命の糸のように、解けない。もう解けない。
ローザリカの目頭が熱い。恋の所為? それとも、アルコールの香りに酔っているの?
「ああ、――俺に証明させて欲しい」
ずっと好きだと。
君を愛していると、永遠に証明させて欲しい。
ジュストは誓った。潤む琥珀に、たった一人の永遠の初恋に、……誓った。
●
「流れ星でアルコールが飛ぶ、か」
シルヴィア・A・カペルはふむ、と記憶を掘り返す。以前恋人に作って貰ったローズジャムのテ・ロワイヤルみたいだと、其の当人であるエル=バ=ノイアンを見た。
本人は「そんなやり方もあるんだな」と真面目に頷いている。
「あの時はフランベで酒を飛ばしていたよね」
「ああ」
「発泡現象で飛ばしているのかな……それも面白いね」
「そうだな。……酒精のない飲み物なら、俺でも飲める」
様々な酒を嗜むシルヴィア。同席しても同じ感覚を味わえないのを残念に思っていた、と零す愛らしい恋人に、じゃあ今日は大丈夫だね、とシルヴィアは笑った。
二人で揃って頼んだのは、青と白が二層になったカクテル。
流れ星を入れても色に支障はありませんよ、と親切に付け足してくれたウェイトレスに礼を言って、シルヴィアはカクテルを眺める。
いつだったか、二人でマロウのお茶を飲んだ事もあった。あれも確か、条件次第で色が変わるもの。二人で同じものを飲む。其れだけでなんだか、胸が満たされていく気がする。
ノイアンは少し直接的すぎただろうかとカクテルを隠したくなったが、シルヴィアの笑みを見ればそんな恥じらいは消えていく。……アルコールを飛ばす流れ星を入れて、しゅわしゅわ、と泡が立つのを見る。
「俺は」
ノイアンが口を開く
「其のままでも良いとは思うが、変化していくさまを見ていくのも、きっと楽しい」
……其れは、カクテルの事でもなく。マロウティーの事でもなく。
きっと、シルヴィアとの恋、ひいてはシルヴィア自身の事を言っていた。其のままでもきっと美しいのだけれど、変わって行く想いも、きっと二人でなら楽しめるのだろうと。恋が幾ら色を変えようと、本質にある愛は決して変わりはしない。
其れを、少しずつ理解して来たから。
ノイアンがそっと差し出したのは、白い薔薇の小さな花束。
隠しきれてなかったからサプライズにはならないけれど――青にも赤にも染まらぬ其の白薔薇を受け取り、シルヴィアは変わらぬ愛を知る。
――ああ。心が、満たされていく。
「ありがとう。とても嬉しいよ。……どんな花言葉をイメージしてくれたのかな?」
「……」
ノイアンは答えるか迷った。
きっと、シルヴィアは判っている。4本の白薔薇がどんな意味を持つのか、なんて。
マスターコメント
お疲れ様でした。
浮き星、というお菓子があるそうです。
これはアルコールではなくお湯に浮かべるものなのだそうですが……
今回はそこから着想を得て、流れ星というテーマを書かせて頂きました。
とても楽しく書かせて頂きました。いやあ……皆様のプレイングで私のお仕事が捗るゥ!! 楽しい!! 最高!!
ご参加ありがとうございました!
イベントシナリオ易しい 報酬:標準13 / 4〜25人
2022年09月29日 09時36分12秒 公開
大成功
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