グランスパーダ・商工会ギルドVS学園生コンテスト!
おおくまねこ
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シナリオID:3331
オープニング
●
「エフレム、君の愛は歪んでいる。レイウェストの花婿にふさわしいのは第二王子であるこの僕だ!」
ウィリアム・リーンエスは端正な眉を歪め、神出鬼没のレイウェストのストーカー、エフレムに剣を向けた。すると、白いリザードマンは我慢できないという風に腹を抱えて笑い始めた。
「はっはっは。笑わせないで下さい、ウィリアム殿。貴方は先日、第二王子をクビになったと聞きましたが? それに、拙の殿下への想いは歪んでなどおりませぬ。拙はただ、国が滅んだり、父が国辱レベルの痴態を晒したり、母が全ての黒幕だったり、最大の忠臣だと思っていた近衛騎士が離反したり、多分に政治的な事情で婚約者が決まったと思ったら、今度は兄者の息子であったことが判明したり……と、過酷な運命に苦悩する殿下を遠くからそっと見守りたいだけなのです。『愛するが故に、見守る愛もある』というやつです」
語らずの智者はうっとりとした表情を浮かべ、珍しく饒舌にレイウェストへの想いを語った。
「いや、歪みまくってるじゃないか! こんな変態が護衛騎士だったとは! やはりレイウェストは高身長・高レベル・高貴の三光が揃った僕の花嫁になってもらうしかないようだね。妹やわざわざたくさん集めた婚約者達には悪いが、僕はレイウェストを連れ出して、しばらく身を隠させてもらう!」
ウィリアムはキラリと歯を光らせ、とても身勝手なことを宣言した。
「爽やかな笑顔でゲスいことを申されるな。ええい、やはり貴方とは相容れぬものを感じます。ここで排除するしかないようですな!」
「それはこちらの台詞だ。勝った方がレイウェストを手に入れる。それでいいね?」
「構いませぬ。勝つのは拙ですから」
こうして、世界の命運はそっちのけで、ついでにレイウェストの意向はガン無視で、亡国の皇子に異常な愛情を注ぐ獣たちの死闘が始まった!
●グランスパーダ・催し物コンテストのお知らせ
「どうよ? 久々の力作ドゥジンよ! 戦闘シーンもあるし、今度の劇の台本の原作にもぴったりよ!」
発禁確実の危険なドゥジンシを仕上げたドゥジン作家、レヴェリアはドヤ顔で胸を張った。
「却下よ。これを王都の広場で公演しろと? そのまま広場で公開処刑になるわよ」
第三演劇部の部長、ラティオはドゥジン作家のレヴェリアが持ってきた台本『ストーカーVSストーカー~運命に翻弄される美少年皇子レイレイ』を勢いよく地面に叩きつけた。
「これは王女……じゃなかった、メイさんの目に触れる前に燃やしておきますね」
マリリンはニッコリと笑い、床に落ちた台本を回収した。
「ああっ! 酷い! せっかく書いたのに!」
「あんたが逮捕されずにこの学年まで進級できたのが不思議で仕方ないわ……」
ラティオは深いため息を吐いた。
「うーん、それにしても王都の広場での公演ですか。久々に大口の話が来ましたわね……」
会計のマリリンは学園から配布された資料に目を落としながら言った。
「そうね。でもこれは第三演劇部始まって以来の晴れ舞台。卒業までにこんなチャンスは何度もないかも。なんとか学園の期待に応えましょう」
「ええ。去年と比べると、今年は私達第三演劇部はけっこう地味でしたからね」
ラティオとマリリンは拳を握り締めた。
『昨今、暗い雰囲気の王都の住民たちを慰撫するべく、何か、出し物をしてほしい』
それが、とある法衣貴族からパンクリアース学園の各クラブ向けに出された要請であった。とはいえ、クラブにも色々あるので、イベント参加は強制ではなく、応募制である。一応、イベントを盛り上げるため、「学園の各クラブVS王都の商工会ギルド」という対立構図にしたようだ。とりあえず参加すれば法衣貴族から感謝状(部室に飾れる)がもらえるし、第日ごろ磨いた劇の実力を学園外の人々にも見てもらえるまたとないチャンスなので、第三演劇部員たちはぜひ参加したいと考えていた。
「ちなみに第二演劇部は?」
「参加は見送るようですわ。あちらの得意分野は伝統的な演目ですから、舞台装置のない広場での公演には不向きでしょうし。パーシアが出場すると、どうしても出来レース感が出射ちゃいますし」
「なるほどね。じゃあ、張り合う必要もないか」
「ええ、パーシアは最近人が変わったように穏やかですし、ちょっかいをかけてくることもないでしょう」
「まあ、憧れのウィリアム王子と婚約したんだものね……今更平民の私達にジェラシーで噛みついても来ないか」
一年前と比べると、パーシアはずいぶんと穏やかになった。それは生徒会長としての仕事や、ウィリアム黄金像の建造の過程で冒険者を初めとした色々な人と関わることになったせいだろう。それまでのパーシアは箱入りの貴族令嬢(実家が賭博を生業としているせいか、普通の貴族よりガラは悪かったが)であり、自分の率いる派閥の舎弟以外とはあまり関わることもなかったのだから。
「まあ、冒険者の方々にもかなり甘やかされてましたけどね、パーシア」
「それ、アンタが言う? マリリン。誘拐された時は二回とも大騒ぎになってたじゃないの。それに、洋服泥棒やメガネ皇帝の時だって……」
「それは不可抗力ですー! パーシアと違って、私はいつも被害者ですっ!」
ラティオが、マリリンが個人的に冒険者と関わった事件を列挙すると、マリリンはむくれた。
「それで、さっきのレヴェリアの脚本は却下するとして……劇、どうします?」
「そうねえ……やっぱり今が旬の題材なら、中庭でのウィリアム王子とグリゼルダの決闘じゃない? 目撃者どころか当事者もたくさんいるし。冒険者の人に声をかけて、その時の話を聞いてみましょう!」
さっそくインタビューの準備を始める第三演劇部員たち。この日、パンクリアース学園の廊下の掲示板には、「グランスパーダ・商工会ギルドVS学園・催しものコンテスト『レイナード杯』参加者募集」のチラシが掲示されたのだった。
●数日後
「さて、学園生の皆さんはしっかりやってるッスかね? ここは、職員としてしっかり監督しなければ! 非番の日も仕事熱心なアッシ、偉いッスね!」
パンクリアース学園の事務職員、ウィーズルは活気づいている王都の街をぶらぶらしていた。今日は非番だが、せっかくのお祭りなので、幼い容姿を生かして学園生にたかる……じゃなかった、飲食物の試食をさせてもらおうかと企んでいたのであった。
「お、あそこで劇の準備をしているのは第三演劇部の皆さん。あそこはドゥジン過激派が多いので要注意ッス。さりげなく見張って……おや?」
その時、ウィーズルは見覚えのある男が前の方から歩いてくることに気付いた。武装はしておらず、単に祭りを楽しんでいるような雰囲気だ。
「あれは、確か王国騎士のハスラム・レイノーラさんッス。帝国遠征前の最後の休暇ってとこッスかね?」
直接面識があるわけではないが、元ウィリアムの密偵であるウィーズルは王国騎士の顔は全員覚えている。そして、世界最強の授恵者集団であるリーンエス王国騎士達も帝都奪還戦に参戦するため、近いうちに王都を離れるということも知っていた。
「ふむ、けっこう盛り上がってるじゃねえか。……あそこでやってるのは、噂の劇か? 俺も出てるって話だが……ちょっと覗いていくか」
豪放な王国騎士でも自分が劇の登場人物となればさすがに気になるのか、ハスラムは第三演劇部の劇の近くで足を止めた。
「エフレム、君の愛は歪んでいる。レイウェストの花婿にふさわしいのは第二王子であるこの僕だ!」
ウィリアム・リーンエスは端正な眉を歪め、神出鬼没のレイウェストのストーカー、エフレムに剣を向けた。すると、白いリザードマンは我慢できないという風に腹を抱えて笑い始めた。
「はっはっは。笑わせないで下さい、ウィリアム殿。貴方は先日、第二王子をクビになったと聞きましたが? それに、拙の殿下への想いは歪んでなどおりませぬ。拙はただ、国が滅んだり、父が国辱レベルの痴態を晒したり、母が全ての黒幕だったり、最大の忠臣だと思っていた近衛騎士が離反したり、多分に政治的な事情で婚約者が決まったと思ったら、今度は兄者の息子であったことが判明したり……と、過酷な運命に苦悩する殿下を遠くからそっと見守りたいだけなのです。『愛するが故に、見守る愛もある』というやつです」
語らずの智者はうっとりとした表情を浮かべ、珍しく饒舌にレイウェストへの想いを語った。
「いや、歪みまくってるじゃないか! こんな変態が護衛騎士だったとは! やはりレイウェストは高身長・高レベル・高貴の三光が揃った僕の花嫁になってもらうしかないようだね。妹やわざわざたくさん集めた婚約者達には悪いが、僕はレイウェストを連れ出して、しばらく身を隠させてもらう!」
ウィリアムはキラリと歯を光らせ、とても身勝手なことを宣言した。
「爽やかな笑顔でゲスいことを申されるな。ええい、やはり貴方とは相容れぬものを感じます。ここで排除するしかないようですな!」
「それはこちらの台詞だ。勝った方がレイウェストを手に入れる。それでいいね?」
「構いませぬ。勝つのは拙ですから」
こうして、世界の命運はそっちのけで、ついでにレイウェストの意向はガン無視で、亡国の皇子に異常な愛情を注ぐ獣たちの死闘が始まった!
●グランスパーダ・催し物コンテストのお知らせ
「どうよ? 久々の力作ドゥジンよ! 戦闘シーンもあるし、今度の劇の台本の原作にもぴったりよ!」
発禁確実の危険なドゥジンシを仕上げたドゥジン作家、レヴェリアはドヤ顔で胸を張った。
「却下よ。これを王都の広場で公演しろと? そのまま広場で公開処刑になるわよ」
第三演劇部の部長、ラティオはドゥジン作家のレヴェリアが持ってきた台本『ストーカーVSストーカー~運命に翻弄される美少年皇子レイレイ』を勢いよく地面に叩きつけた。
「これは王女……じゃなかった、メイさんの目に触れる前に燃やしておきますね」
マリリンはニッコリと笑い、床に落ちた台本を回収した。
「ああっ! 酷い! せっかく書いたのに!」
「あんたが逮捕されずにこの学年まで進級できたのが不思議で仕方ないわ……」
ラティオは深いため息を吐いた。
「うーん、それにしても王都の広場での公演ですか。久々に大口の話が来ましたわね……」
会計のマリリンは学園から配布された資料に目を落としながら言った。
「そうね。でもこれは第三演劇部始まって以来の晴れ舞台。卒業までにこんなチャンスは何度もないかも。なんとか学園の期待に応えましょう」
「ええ。去年と比べると、今年は私達第三演劇部はけっこう地味でしたからね」
ラティオとマリリンは拳を握り締めた。
『昨今、暗い雰囲気の王都の住民たちを慰撫するべく、何か、出し物をしてほしい』
それが、とある法衣貴族からパンクリアース学園の各クラブ向けに出された要請であった。とはいえ、クラブにも色々あるので、イベント参加は強制ではなく、応募制である。一応、イベントを盛り上げるため、「学園の各クラブVS王都の商工会ギルド」という対立構図にしたようだ。とりあえず参加すれば法衣貴族から感謝状(部室に飾れる)がもらえるし、第日ごろ磨いた劇の実力を学園外の人々にも見てもらえるまたとないチャンスなので、第三演劇部員たちはぜひ参加したいと考えていた。
「ちなみに第二演劇部は?」
「参加は見送るようですわ。あちらの得意分野は伝統的な演目ですから、舞台装置のない広場での公演には不向きでしょうし。パーシアが出場すると、どうしても出来レース感が出射ちゃいますし」
「なるほどね。じゃあ、張り合う必要もないか」
「ええ、パーシアは最近人が変わったように穏やかですし、ちょっかいをかけてくることもないでしょう」
「まあ、憧れのウィリアム王子と婚約したんだものね……今更平民の私達にジェラシーで噛みついても来ないか」
一年前と比べると、パーシアはずいぶんと穏やかになった。それは生徒会長としての仕事や、ウィリアム黄金像の建造の過程で冒険者を初めとした色々な人と関わることになったせいだろう。それまでのパーシアは箱入りの貴族令嬢(実家が賭博を生業としているせいか、普通の貴族よりガラは悪かったが)であり、自分の率いる派閥の舎弟以外とはあまり関わることもなかったのだから。
「まあ、冒険者の方々にもかなり甘やかされてましたけどね、パーシア」
「それ、アンタが言う? マリリン。誘拐された時は二回とも大騒ぎになってたじゃないの。それに、洋服泥棒やメガネ皇帝の時だって……」
「それは不可抗力ですー! パーシアと違って、私はいつも被害者ですっ!」
ラティオが、マリリンが個人的に冒険者と関わった事件を列挙すると、マリリンはむくれた。
「それで、さっきのレヴェリアの脚本は却下するとして……劇、どうします?」
「そうねえ……やっぱり今が旬の題材なら、中庭でのウィリアム王子とグリゼルダの決闘じゃない? 目撃者どころか当事者もたくさんいるし。冒険者の人に声をかけて、その時の話を聞いてみましょう!」
さっそくインタビューの準備を始める第三演劇部員たち。この日、パンクリアース学園の廊下の掲示板には、「グランスパーダ・商工会ギルドVS学園・催しものコンテスト『レイナード杯』参加者募集」のチラシが掲示されたのだった。
●数日後
「さて、学園生の皆さんはしっかりやってるッスかね? ここは、職員としてしっかり監督しなければ! 非番の日も仕事熱心なアッシ、偉いッスね!」
パンクリアース学園の事務職員、ウィーズルは活気づいている王都の街をぶらぶらしていた。今日は非番だが、せっかくのお祭りなので、幼い容姿を生かして学園生にたかる……じゃなかった、飲食物の試食をさせてもらおうかと企んでいたのであった。
「お、あそこで劇の準備をしているのは第三演劇部の皆さん。あそこはドゥジン過激派が多いので要注意ッス。さりげなく見張って……おや?」
その時、ウィーズルは見覚えのある男が前の方から歩いてくることに気付いた。武装はしておらず、単に祭りを楽しんでいるような雰囲気だ。
「あれは、確か王国騎士のハスラム・レイノーラさんッス。帝国遠征前の最後の休暇ってとこッスかね?」
直接面識があるわけではないが、元ウィリアムの密偵であるウィーズルは王国騎士の顔は全員覚えている。そして、世界最強の授恵者集団であるリーンエス王国騎士達も帝都奪還戦に参戦するため、近いうちに王都を離れるということも知っていた。
「ふむ、けっこう盛り上がってるじゃねえか。……あそこでやってるのは、噂の劇か? 俺も出てるって話だが……ちょっと覗いていくか」
豪放な王国騎士でも自分が劇の登場人物となればさすがに気になるのか、ハスラムは第三演劇部の劇の近くで足を止めた。
解説
目標:王都で行われるイベント「レイナード杯」を盛り上げる。
依頼人:リーンエス王国の法衣貴族レイナード・エンハウンス
舞台:王都グランスパーダ
依頼内容:先日の王都でのメドゥの指先との決戦の影響により、王都の雰囲気はまだ暗い。そこで、学園生や冒険者に「何か楽しい出し物」を出してほしい。演劇、大道芸、露店販売など……公序良俗に反するものでなければジャンルに縛りは無い。王都の市民が喜ぶような出し物を期待する。
プレイングの方向性は大きく分けて二種類。
A:第三演劇部の劇に協力する。
B:自分で出し物をする。学園生の場合、普段のクラブ活動とは関係のない内容でも可。
※イベントは商工会ギルドVS学園生+冒険者という構図なので、学園のクラブ同士で張り合う意味はあまりない。
●登場NPC
ラティオ
第三演劇部の部長。今回は「【呑竜】のパンクリアース学園中庭での戦い」を題材に創作劇をやるつもりで、冒険者から当時の話を聞きたがっている。
冒険者の客演も歓迎。グリゼルダやウィリアム、介添えの王国騎士ハスラムなど、ネームド役も希望可。
マリリン
第三演劇部の会計。眼鏡でアクションするのは難しい(※マリリンは非授恵者)ため、今回はスケジュール調整と、『黄金像』(大道具)の用意を中心とした裏方に回る。
第三演劇部員 いっぱい
冒険者役やキメラゾンビ役、ナレーション、黄金像(大道具)の用意。演出、衣装製作、大道具係、小道具係など仕事は多岐に渡る。
※中庭での戦いの話をする場合、必ずしも事実である必要はないです。誇張した戦闘風景だったり、別の戦場にいたけど友人から聞いた伝聞情報(という名の創作)でも構いません。
ハスラム
本物。非番なので、王都をぶらぶらしている。第三演劇部の劇も見に来る。劇の内容次第では真顔になったり、爆笑したりするかもしれない。
ウィーズル
学園の数少ない異種族の事務職員。ハーフリング。主に第三演劇部の劇以外の学園生や、冒険者の出し物を見に来る。
※その他、生徒会長のパーシアやクラブ顧問、平部員などのおおくまねこが担当する学園所属NPCがプレイング内容に応じて、リプレイに登場する可能性があります。
マスターより
【呑竜】が終わり、学園シナリオが解禁されたので出してみました。一年ぶりぐらいの演劇シナリオです。12月はおそらく最終決戦で忙しいので、本編中に学園を舞台とするシナリオを(リクエストシナリオ以外で)出すのはたぶんこれが最後になるかと思います。一般技能が活躍する予感のシナリオなので、一芸をお持ちの方は奮ってご参加下さいませ。
リプレイ
●
「王都でイベントか……オレはドゥジンシ即売会でも開くか」
レタラ・スマリは王都の露店でドゥジンシを売るべく、準備を始めた。
「王都の広場でエフレム×レイウェスト本はちょっと……エフレムはともかく、レイウェスト皇子はいまや、メアリー王女の婚約者なので……王家(と帝国)への挑戦だと思われてしまいますわ」
すると、ドゥジケット仲間のアルベルティーヌとマリリン(作家ではなくクラブの編集)からNGが出た。ドゥジン作家レタラ21歳。まさかの冬の時代到来である。
「そうか……規制が厳しくなったのか。残念だ。では一般向けとしてメアリー王女のご活躍を描いた絵物語のほうはどうだろうか……」
しょんぼりしたレタラはもう一冊の新刊、「メアリーVS竜喰らい~聖剣に選ばれし者」の方を二人に見せた。
「どうでしょう、行けるかしら?」
「濡れ場とかはないですし、これなら大丈夫なんじゃないでしょうか」
「そうですわね。メドゥの右腕がちょっとセクシー過ぎる気はしますが、まあこのぐらいならきっと許容範囲ですわ」
そちらの方はドゥジン仲間のチェックも通過し、無事にレタラの新作ドゥジンシ(一般向け)は無事に即売会に回されることになった。
「この機会に同好の士が少しでも増えると嬉しいのだが」
レタラのドゥジンシは王都の若者達の間で好評を博し、無事に完売した。
●
「これが例のブツですわ」
校舎裏にて。サングラスで変装したマリリンは包装紙に厳重に包まれた一冊のドゥジンシをレタラに手渡した。
「これがリザ師(レヴェリアのペンネーム)の幻の発禁エフレム×レイウェストの台本か……」
レタラは薄い冊子を手に取り、感慨深げに呟く。
「はい。ドゥジンナマハゲを呼んでしまいそうな危険物でしたので、私がこっそり封印を」
「ありがとう、助かる。これはお礼のラミアスのオフショットスケッチ(※想像で描きました)だ」
「ありがとうございます!」
マリリンはほくほく顔でレタラのスケッチを受け取った。
「この作品が闇に葬られるのは惜しい。今度俺が絵をつけて漫画にしてみるよ」
「ドゥジンナマハゲには気を付けてくださいね!」
(ドゥジンナマハゲとは何だろう?)
●
「ドーモ、エンゲキブ=サン、ドゥジンナマハゲです」
赤い覆面姿で第三演劇部にやってきたドゥジンナマハゲことベルク・オスマットはペコリと第三演劇部の学生たちに挨拶した。ここは由緒正しき学園。きちんと挨拶しないのはスゴイシツレイである。
「ドーモ、ドゥジンナマハゲ=サン、部長のラティオ=アルグレーアです」
第三演劇部の部長は同じようにお辞儀をしてくれた。ラティオは割とノリのいい令嬢であった。
「とりあえず台本検閲させろ。あの戦いを劇にするのは問題はないが、ちょっとゾンビの素性に問題があるんでな」
前置きはそこそこに、ベルクは要件を切り出した。
「あ、はい。いいですけど」
ラティオは正式採用された方の台本をベルクに渡した。
「ふむ……問題はなさそうだな。グリゼルダが連れておったキメラゾンビは実は聖地のケンタウロスの傑物だったのだ。まあないとは思うが、茶化したりすると後々問題となるのでな」
「はあ。そうだったんですか。冒険者の方はケンタウロスの知り合いもいるんですね」
演劇部員たちはベルクの言葉に感心していた。リーンエス王国は聖地とは距離があるため、演劇部員達にとっては「コミュニケーションが取れるケンタウロス」自体が意識の外だったようだ。
「ところでそちらのお嬢さんは今回は悪さはしとらんよな?」
「エエ、モチロン=デス」
ベルクが欠片も笑っていない笑みをレヴェリアに視線を向けると、レヴェリアは目を泳がせ、マリリンは苦笑いしていた。
●
「へー。学園中庭での戦いを劇にするんだ。現場に居合わせた者として、ボクも何か協力したいなあ」
エルゼリオ・レイノーラは第三演劇部の掲示を見て、さっそく話をしにいくことにした。何を隠そう、エルゼリオはパンクリアース学園中庭での戦いの当事者だ。しかも、王国騎士である父と親子で参戦という、話題性の高いエピソードの持ち主である。エルゼリオは第三演劇部長のラティオに当時の事を話す為、部室へと足を運んだ。
「え、『黒騎士』ハスラムの息子さんが?」
「王国騎士の息子が来た」ということで第三演劇部はたちまち大騒ぎになった。
「グリゼルダとゾンビ軍団は本当に怖かったな~。でも、ウィリアム王子と父上は格好良かったよ! もしよければ、父上役でボクもお手伝いがしたいんだけど……」
「ぜひ、お願いします!」
エルゼリオがインタビューのついでに出演交渉した結果、快諾され、エルゼリオはハスラム役として出演することになった。
「ちなみにボクの役の人はいるのかな?」
「あ、僕です」
エルゼリオが尋ねると、十三、四歳ぐらいの男子部員が挙手した。
「よろしくお願いします、パパ」
「ふふ、よろしく。でもそこは父上でお願い」
息子(というか自分)役の学生の言葉に、エルゼリオはクスリと微笑んだ。
●
「……帝都の戦いが終われば、これまでのように学園を訪れる事も難しくなるでしょう。ですから今の内に、少しでも後輩の皆様のお力になりたいのです」
レティシア・レインフィールは語り部として、劇に客演を申し出ていた。
(帝都の戦いが無事に終われば、冒険者ギルドと各国との盟約が終わります。その時は、私の『猶予期間』も同時に終わりを迎えることになるでしょうから)
「第三演劇部の皆様、お久しぶりです。お元気そうで何よりです」
「「名誉大道具係のスィリーンさん!」」
スィーリーンが久々に部室に顔を出すと、第三演劇部員達に大歓迎された。最近は冒険者ギルドには特に依頼は出していなかったが、彼女らは元気に活動を続けていたようだ。平和だったのだろう。
「ふふ、お久しぶりです。先の決戦の際は別の戦場に赴いていましたので、ウィリアム王子の勇姿は見ていないのですけれど、名誉大道具係として、今回も尽力致しましょう!」
幸い、部室にはルアンナ・ミュラーやナハシュやヨル・スレイマン、ザザ=ステルヴィナ、エルゼリオらもいたので、話を聞く相手には事欠かなかった。スィリーンは仲間達の話を元に、ウィリアムの装備や王国騎士ハスラムの鎧など、舞台に映える演劇道具を次々と再現していった。特に、リーンエス王国の国宝であるウィリアムの剣(『名もなき剣士』の剣))のレプリカは、部員たちに大変喜ばれた。
「今まで作った大道具や衣装で使えそうな物があれば手直しして使いましょうか。予算は有限ですものね。無駄遣いはいけません」
「その通りです。ありがとうございます」
会計のマリリンは微笑み、しっかりとスィーリーンと握手した。
●
「当事者として現場に居たから、何か知りたい事があったら遠慮なく聞いてねん? 私が戦ったのはレミーラさんのゾンビだったけれど」
ザザは先日の中庭決戦の様子を王都広場で上演すると小耳に挟み、興味を惹かれて第三演劇部の部室へとやってきていた。
「レミーラさんは強敵でね……空も駆け回るケンタウロスだったの。眼から怪光線も出したし、槍の一撃で花壇が丸ごと消し飛んだわ」
「ああ、中庭が砂漠化してたのはそういうことだったんですね……」
多少盛りつつも、当時の様子をザザが克明に語ると、演劇部員たちにはとても喜ばれた。
「ウィリアム王子はどうだったんですか? なんか、不自然に黄金像だけ無事だったんですけど……最優先防御目標だったとか?」
「彼は勇敢だったわ。黄金像が無事だったのは、みんなが守ったからよ。あの黄金像にはかかわった冒険者も多かったから、みんな心の片隅には置いてたんでしょうね」
ザザはマリリンのツッコミに苦笑しながら答えた。
「私もよければ、バックダンサーとして劇に参加協力したいのだけれど、どうかしら?」
「ありがとうございます! ぜひお願いします!」
「こちらこそありがとう。王都の広場で踊れるなんて、またとない機会よねぇ。目の肥えた王都の住人達を唸らせてみせるわ」
●
「こういう特殊メイク? は得意だぜ! 任せなっ!!」
「リアルすぎないか? いやまあ、パンクリアースならこのくらいはやるべきか……」
ナハシュとヨルは第三演劇部の劇に客演として参加していた。ヨルの方は普通に冒険者役だが、ナハシュの希望の役柄はなんと、キメラゾンビであった。そのため、ナハシュはレミーラのキメラゾンビ役を演じることとなった。ナハシュは記憶を頼りにレミーラのゾンビに変身し、稽古に励んでいた。変身先が生前のレミーラなのは、ゾンビに変身したらリアル過ぎて部員からストップがかかったからである。
「助かります。ゾンビ役は部員の希望者もいなかったんで……」
部長のラティオを初め、部員たちはとても二人に感謝していた。
●
「そこで、私が瞬間移動でシーフと位置を入れ替わり、グリゼルダの前に現れてですね。バーン、と杖で背中にフルスィングを叩きこんだのです!」
ルアンナはグリゼルダの第3の腕を粉微塵にした張本人として、当時の戦闘の様子を事細かに語った。
「ちょっとやってみてもらっていいですか?」
「ええ、もちろん! おりゃー!」
バキャッ! ルアンナはコモンブレイクを実演してみせ、演劇部の椅子を塵にした(会計のマリリンの笑顔は引き攣っていたが、部員達には大うけだった)。
「もちろん自分ひとりの手柄ではなく、仲間達と協力した結果です」
「なるほど……」
部員達は熱心にルアンナの話を聞いていた。
「私もせっかくなので、劇出ていいですか?」
「じゃあぜひグリゼルダ役でお願いします!」
「えっ」
ルアンナの運命やいかに。
●
「私達はファッションショーでも企画しようか。そろそろ衣替えの季節だしね」
「ファッションショーにはターゲットの顧客層を決めておくことが肝要だ。今回はのテーマは『推し』で行こう」
シルヴィア・A・カペルは秋冬コーデをテーマとした、ファッションショーを開催するべく動き始めた。さらに、ヴィナスやルーンス・ラグネルの発案により、学園生や若者向けを意識し、『推しグッズ』も露店で併売するのである。
「寄付目的の売り上げ、上がるといいなグフフ」
ルーンスは当日の盛況を想像し、一人ニヤニヤとしていた。
●
「こないだはありがとう」
シルヴィアに王都ファッションショーの実行員会の会議に呼ばれた海神 江流はまず、ヴィナスに服を見立ててもらった礼をした。
「どういたしまして」
ヴィナスは柔和に微笑む。
「江流の服はこないだ見立てたものをベースにしようか」
「君の推しは、もちろん、『彼女』だね?」
「うん」
ヴィナスの問いに、江流は素直に頷いた。
「できればシャルガネの染物技術を活かして、青から紫が重なるようなグラデーションとも少し違う色の変化が楽しめるようにしたいんだけど」
「分かった。色々組み合わせを試してみよう」
会議の結果、江流は、ヴィナスに仕立ててもらったフロックコートを主体に、手製の彫金仕上げの紫百合をイメージしたラベルピンやカフスを着用することとなった。
(共演者の半分は貴族の家柄。背伸びをする必要はないけれど、見劣りしない程度には見栄を張りたい)
「推しカラーグッズは露骨ではないのが重要だ。特にルーンが身に着けているうちのブレスレットは組み合わせはお客様の自由、想像は無限大……オーダー受けるだけになるけど、日傘やレースの手袋は推しカラー、推しモチーフの組み合わせも可能にしよう」
「今は冬だし、マフラーも用意しようか。カラーバリエーションも表現しやすい。けれどイベントまであまり時間がないから超特急で用意してくれる仕立て屋を探して……」
「ま、それはそうと商会の友人たちは商魂逞しいなあ」
盛んに併売するグッズショップのラインナップについて議論を交わしているヴィナスやローザリカ・L・ディオールたちを見て、江流は茶をすするのであった。
●
「ロゼはこういうのは好きじゃないと思っていた」
「僕だって令嬢だ、これくらい当然だろう」
着飾ったジュスト・ヴェルジーが婚約者に向けてニッコリと微笑むと、ローザリカは気恥ずかしそうに髪を掻き上げた。二人は、ファッションモデル担当だ。ジュストは碧、ローザリカは赤と二人は自身のイメージカラーを基本にしつつも、衣服の細かい部分では、ペアコーデ感を意識した着こなしをしている。例えば、ジュストのコートの釦や手袋にはロゼのモチーフである薔薇の刻印や刺繍入りだ。逆に、コートの釦や手袋にはジュストがモチーフの小鳥の刻印や刺繍が入っている。
二人が着ている服は、ローザリカの肝入りのブランドの既製品にローザリカ自らが刺繍を施したものだ。ジュストが驚いたのは、刺繍の見事さもさることながら、『ローザリカが刺繍をした』という点である。服は事前に見せて貰っていたが、てっきり手芸部か職人に頼んだものかと思っていたのだ。
「あえて販売品に手を加えたのは自分の手で一点物にも出来るというアピール。仮にも王都しかも学生も多く参加するイベント。富裕層ウケもよくする戦略だ」とは、ローザリカの弁であるが……。
(普段は男性のようにふるまっているが、女性らしい趣味が嫌いなわけじゃない。今更と、機会を逃し続けていたものをこれ幸いと実行しただけだ)
「嬉しいよ、本当に」
笑うジュストの顔からは幸せが零れていた。
(初めてロゼに貰った刺繡だから、宝物にしよう)
「…喜んでくれたのなら、嬉しい」
ローザリカは頬を染め、こくりと頷いた。
●
「シルヴィ姉様とファッションショーなんてドキドキしちゃいます! 見劣りしないように気合を入れてオシャレしなくちゃ!」
エフィルミアとシルヴィアはペアのコーディネイトで練習に励んでいた。エフィルミアはシルヴィアが普段身に着けているもの、逆にシルヴィアはエフィルミアが普段身に着けている意匠をファッションに取り入れている。
「せっかくだし冒険してみてもいいよね?」
(シルヴィ姉様の青薔薇モチーフのアクセサリー……せっかく身につけるなら姉様みたくかっこよくなってみたい!)
エフィルミアは普段は妖精のようなふわっとした可愛い服ではなく、白いショートパンツを履き、きっちり結い上げた髪に、青薔薇の髪飾りを付けていた。メイクもいつもより大人っぽく青が基調だ。ピンヒールを履き、ロングコートもなびかせる姿は、まるでシルヴィアの妹のようだった。
●
ヴィナスはファッションショーに併設する露店担当だ。露店では、ファッションショーでモデルが身に着けた小物やアクセサリー、推しカラーグッズを取り扱う。
「モデルの着こなしで自分もと思いたくなるものだし。だが、出店手当と原価以外を差し引いた露店の売上金は寄付する予定だ。この戦いで生活が困窮した層(特に孤児)への生活や医療の支援へ回そう」
「いいの兄様?」
「ああ」
ヴィナスは頷いた。
「治安の低下はそのまま不景気に繋がる。支援することで治安が低下しないならその方がいい」
「さすが兄様」
ルーンスはニッコリと笑った。
(推すことで、誰かを救う手になってほしいな)
●
ルベア・ベルニもモデルとしての参加者だ。学園の廊下を歩いていたら、シルヴィアPに「モデルになってみないかい?」と誘われたのである。
「推しグッズ……だったら私は……眼鏡かな……」
悩んだ末、ルベアは伊達メガネを持参し、着用していた。
「ルベア、その眼鏡は推しグッズかな?」
シルヴィアが問うと、ルベアは「ええ」と頷いた。
(帝国にだけど応援したいっていうか、放っておけない研究者がいるから……知的に見せたい)
●
そしてイベント当日。最初の演者は江流だった。
(戦功を重ねるでは得られない、外見的に見られる事の蓄積もしていかねば。他でもないあの娘のために)
江流は気を引き締める。彼にとっては、このファッションショーもある意味戦いなのだ。だが、敵は共演者たちではなく、己自身である。
スッ……。迷いのない足取りでランウェイを歩き、ゆっくりとポーズを取る江流。日頃鍛えた度胸のおかげもあり、つつがなく江流は自分の番を終えた。
(ふう、緊張したな。でもこういうのも慣れていかないと……)
●
江流の次はシルヴィアとエフィルミアの番だった。
「良く似合っているよ、エフィ」
シルヴィアが微笑むと、エフィルミアははにかんだ。
「ありがとうございます、シルヴィお姉様。お姉様も素敵です♪」
「普段の私とは違う、ふわりとした可愛らしい服装に……ふふ、こういう冒険も楽しいね」
シルヴィアの髪型はハーフアップだ。妹分のイメージモチーフであるマーガレットの髪飾りを着け、温かみのあるピンク系メイク。服装はファーとリボンをあしらった華やかなケープコートに、靴やバッグはシックな色合いにして全体の雰囲気を引き締めている。
「普段と違う私たちを魅せる事で、皆も好きな自分になれる! って伝えられたら嬉しいですね!」
二人は王都を明るく出来るようにと願い、ランウェイから観客に笑顔を振りまいた。
●
ルーンスもモデルの担当だ。出番はあえてのソロである。シルヴィアとエフィルミアの間に挟まったり、ジュストとローザリカと一緒に出たりすると、群衆から石を投げられかねないという配慮だ。
(「カップルや百合の間に挟まるのは死罪」って部下が言ってたけど、言われなくても邪魔しないよ僕)
イベント当日、ルーンスは革製のシックなブレスレットを身に着けていた。琥珀色のコートに黒のニット、緑と黒のチェックズボンを履き、マフラーと鞄をアクセントにしている。
(ここでポーズを……)
ステージでは中央まで歩き、ブレスレットがよく見えるように手首を見せた後一礼すると、拍手喝采が巻き起こった。
●
ところで、ヴィナスとルーンスはもう一人モデル役に声をかけていた。
「秘かな推しコーデ? ずいぶんと細かい指定がしてあるな……」
カイン・ステラは渡された説明書を読みながら、首を捻っていた。カインはヴィナスとルーンスの部下の人が制作した服を着ることになっているのだが……。
藤鼠色のパーカーにオータムリーフカラーのズボン、黒のコート……それらはウィリアム第二王子とパンクリアース学園教務主任のイメージカラーや髪の色を折衷した、ヴィナスとルーンスの秘かな推しコーデだった。
「普段の服に推しカプの色を取り入れ、自分の気持ちを上げていくのがコンセプト。へえ」
カインは隠された意味には全く気付かず、単純に「綺麗で、凝った服だな」としか思っていなかった。
「ファッションは自分の為でもいいってのは確かにあるな。作った人が誰を推してるのかわかんねーけど、コンセプトは悪くねぇ」
カインは納得した。
(誰かにとっていい気分転換になればいいな。ステージは慣れねぇけど)
そして、ゆっくりとランウェイを歩くカイン。
「あのカラーリング! あの方はもしや、衣服の中にウィル×ラミを表現しているのでは?」
「あの剣の模様はウィリアム王子を、鞘の方はラミアス先生に見立てているのですわ!」
「なるほど! その手があったか!」
カインの着こなしを見て、通りすがりの有識者やドゥジン作家は感嘆していた。
(けど、推しカプの色…?)
「何のことだろ、見てる人分かるのか?」
ドゥジン界隈は門外漢なので、しきりに首をひねるカインであった。
●
「……私の番ね」
ルーンス、カインの出番を挟み、6人目はルベアの番だった。ルベアに用意された衣装は、ベージュのランダムティアードニットセーターにハイネックの黒のロングストレートスカートというファッションだった。ワンポイントアイテムの眼鏡は、推しグッズとして販売されており、カラーバリエーションはフレームの色である。
「モデルは2回目だけど……前と違って学園も貴族も関係ないから少しは気を張らずにやれそうかしら」
とはいえ、着飾って衆目の前でゆっくり歩くだなんて、緊張することに変わりはない。
(練習通りに)
ルベアはゆっくりと足を踏み出し、上流階級の令嬢のような足取りでランウェイの端まで歩き、膝折礼をキメた。
●
ファッションショーの最後を飾るのは、ジュストとローザリカのコンビだ。
「お手をどうぞ、お嬢さん」
ジュストは微笑みながら黒い手袋に包まれた手を差し出し、ランウェイへとローザリカをエスコートする。鮮やかに着飾った二人が番の鳥のように息の合った動きを衆目の前で披露すると、拍手喝采が巻き起こった。
●
「盛り上がっているわね。さすがにあの二人は華やかだわ……」
自分の出番が終わったルベアは普段着に着替え、仲間達の晴れ舞台も見届けていた。
「君も素敵だったよ、ルベア。眼鏡も似合ってた」
隣にいたシルヴィアがルベアへと微笑みかけると、ルベアは照れくさそうに顔を横に向けた。
「推しグッズも売れてますね、シルヴィお姉様。あ、私のハンカチ買ってくれてる人がいます!」
エフィルミアは露店を指差し、はしゃいでいた。
「ああ、やってよかったな……」
●
「あ、マリリンだ。おーい」
観客の中に友人がいるのを発見し、ルーンスは手を振った。
「やあ、マリリン。劇は終わったの?」
「はい。今日は午前中の公演でしたので」
「やあ、こんにちは、マリリン」
「こんにちは。ヴィナスさん……ですよね?」
「ああ。覚えてくれていたんだね」
ヴィナスが優雅にマリリンに挨拶すると、マリリンが丁寧にお辞儀をした。マリリンとヴィナスは以前にも会ったことがあるが、その時はヴィナスは女装していたので、マリリンは本人かどうか確信が持てなかったのだ(お化け屋敷の騒ぎの時もニアピンしたが、その時は慌ただしく、二人がじっくり話す時間はなかった)。
「あにさまを推す絶好の機会だから推せって婚約者に言われたんだよね」
「なるほど、そうでしたの。今日はブームを作る計画でしたのね。見事な人選ですわ」
マリリンはくすりと笑った。その後、自分もヴィナスの露店でグッズを物色し、何セットか推しグッズを購入していった。
●
「レイナード杯……要はお祭りでしょうか。楽しいものになればよいですね」
王都でのイベント開催のお知らせをいたヴィルヘルミナは、自分も露店を出すことにした。ドワーフらしく、手先の器用さには少々自信があるのだ。「金物屋」で出店申請を出したところ、許可がもらえたので、ヴィルヘルミナは王都の広場のすみっこにひっそりと店を出した。
「このフライパン下さいな。手に吸い付くみたいで気に入ったわ」
「はい、まいどあり」
主婦はヴィルヘルミナが打ったフライパンをリーズナブルな値段で手に入れ、ホクホク顔で帰っていった。
「ほう、これは……見事な誂えのナイフだ! この紋様はドワーフ王国の意匠ですかな? 実に美しい!」
しばらくすると、身なりのいい紳士がヴィルヘルミナの装飾ナイフを手に取り、感嘆の声を上げた。
「私が練習用に作ったものです。本格的なのが欲しいなら王都のいいお店に行ったほうが良いでしょう。お祭りの記念品程度に思って頂ければ」
「あなたが打ったのですか! いやいや、ご謙遜を! 私の目は誤魔化せませんよ! これほどのナイフは王都でもなかなかお目にかかれない!」
「なんだ、なんだ。すごい刀匠がこっそり店を出してるのか?」
「ドワーフの知られざる名工だってさ」
「すごい! このフォーク、石にサクサク刺さる!」
紳士が騒ぎ出したせいで、ヴィルヘルミナの店にはあっという間に人だかりができてしまった。本人としては言葉通りの「練習台」に過ぎなかったのだが、ヴィルヘルミナの刀工技術は既に神域に達していたのだ。せめてここが田舎だったら客も商品の価値に気付かなかったかもしれないが、ここは王都。客の方にも「分かる人間」が多かった。あしかし、値段設定が普通の「日用雑貨」レベルだったため、ヴィルヘルミナの商品はそれから1時間も経たぬ間に完売した。
「思いのほか、目立ってしまいましたね……」
「王都に店を出しませんか」と誘ってきた身なりのいい人たちの名刺を手で遊びながら、ヴィルヘルミナはぽつりと呟いたのだった。
●
イズル・M・ヴォルゴールは自作の果実を販売することにした。学園の敷地内のイベントなら酒を出すのは難しかっただろうが、今回のイベント会場は王都の広場だ。酒を出すのも問題ないだろう。スペースは未成年には見えにくいよう、少し奥まった場所にしてもらった。
「体を温めるのにどうですか?」
イズルの主力商品は果物とスパイスを入れたホットワインだ。店先で作ったできたてのものを提供するスタイルである。
「おお。これはいい香りだ。一つ、いただけるかな」
老紳士の客はイズルの店で足を止め、ホットワインを煽った。
「ふむ、隠し味のジンジャーが実にいいアクセントになっているね。ところでそちらの酒は?」
老紳士が指差した先には、瓶入りの酒があった。
「これはシャルガネ名産の梅を使った梅酒ってお酒です。蜂蜜と一緒に漬けているので甘くて女性にも飲みやすいですよ」
さりげなく、家族へのお土産にどうですかとアピールするイズル。誰に仕込まれたとは言わないが、なかなかの商魂逞しさであった。
「ほう、シャルガネの……ここらでは珍しいな」
「こっちもシャルガネの金柑って果物を使ったお酒です」
老紳士は感心し、イズルの店をしげしげと物色し始めた。
「なかなかいい品揃えだね。普段はどこに店を構えているのかな?」
「このお酒は自分の趣味(と酒の研究)で作ってて量も少なくて、知り合いのお店に卸す程度なんです」
「ふむ、それは残念だ。お店を出す気になったらぜひ連絡をくれたまえ。君ならいい酒屋になれるだろう」
老紳士はいくつかの酒を購入し、イズルに名刺をくれた。
「ありがとうございます。光栄です」
老紳士は名刺を受け取り、微笑むイズル。どうやら、老紳士は王都に本拠を構えるそこそこ大きな商会の会長だったようだ。
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「露店販売してもよろしと伺いまして飛んで参りました。旅のぬいぐるみ作家、ギュンターです! どぞ、よしなに」
レラ・F・ギュンターはどでかいカゴに詰めてきたぬいぐるみを手に取り、大きな声で呼び込みをかけながら、広場をうろうろしていた。
「とゆ訳でギュンタはお手製の縫いぐるみさんを売り歩くのです。どの子も愛嬌のあるかわいらしい子ばかりですよー。一家におひとついかがですか?」
「ママー! ぬいぐるみやさんがいる!」
「あら、可愛らしい売り子さんね。見せてもらってもいいかしら?」
道行く子連れは足を止め、ギュンタのかごを覗く。しかし、しばらくぬいぐるみを物色した後、足早にその場を去っていく者は多数だった。レラのぬいぐるみのセンスは独特で、ぬるぐるみは微妙にブサ……個性的過ぎたのだ。
「うーん、売れないのです。こんなに可愛いのに」
レラは首を捻る。
「ムッ。あれは行商人ッス!」
すると、レラより頭一つ分ほど小さな少女が近寄ってきた。元行商人の学園職員・ウィーズルである。ライバルだと思われたのだろうか。
「いらっしゃいませなのですー。ギュンタはぬいぐるみ屋さんなのです!」
「フリフリの服にあざとい口調! なかなかやるっスね……」
レラの商才(?)に戦慄し、ゴクリと息を呑むウィーズル。ちなみにレラのババ臭い口調はキャラ作りではない。素である。
「どの子もギュンタの手づくりなのです。みんな可愛いのですよー」
「ほう、どれどれ……」
「お迎えしてくださるんですか? ありがとうございます」
「この子の名前はハトコさんです」
レラはとっておきの鳩のぬいぐるみをカゴから引っ張り出し、ウィーズルに手渡した。妙に目玉が大きい鳩のぬいぐるみだ。
「あ、名前あるんスね」
「ギュンタが作りました際に、ひとりひとりに名前をつけてあげてるのです。勿論他のお名前を改めてつけて下さってもよろしですけど……」
「キモカワイイので気に入ったッス。じゃあ、ハトコさん、貰うッス!」
「ですよね、やっぱりハトコさんがぴったしですよね!」
こうして、パンクリアース学園の職員室の机の上に、妙に目玉の大きなハトのぬいぐるみ「ハトコさん」が飾られることになった。
●
「アルフィーさん、おはようございます」
王都グランスパーダの広場にやってきたネーヴェ・グラヌローザは、露店を開く準備をしていたアルフィー・リッパーへと微笑んだ。
「おっ! ネーヴェ! よく来てくれた! 今日はよろしくな!」
アルフィーもニカッと笑い、ぱたぱたと尻尾を振ってネーヴェに近づいてくる。今日、アルフィーはこの広場でアクセサリーショップの露店を開く。ネーヴェは彼を手伝うために来てくれたのだ。さっそくネーヴェは、アルフィーが黒いワークエプロンを身に着けていることに気が付いた。
「エプロン、使って下さってるんですね」
「気がついたか? ネーヴェがくれたエプロンすごく使いやすいんだ。ありがとな!」
「ふふ、こちらこそありがとうございます。嬉しいです」
●
「世界に一つ、あなただけのアクセサリーをお作り致します。おひとつ如何ですか?」
「あ、綺麗なエルフの店員さんだ! ちょっと見ていこうかな」
ネーヴェが呼び込みをかけていると、王都の年頃の女性がいっぱいやってきた。価格は抑えているので、メインのターゲットは平民層だ。技術力的には、アルフィーは王都に住まう貴族向けのアクセサリーだって作れるのだが。
「来週、彼氏と初デートなんですけど……清楚なイメージでいきたいんですけど」
「まあ、おめでとうございます。それでしたら、お花の形の髪飾りなどがお似合いになるんじゃないでしょうか」
「あ、いいかも! よろしくお願いします!」
「俺は傭兵なんだがよお……敵になめられないように、なんか威圧感が出るイイ感じのアクセサリーはねえか?」
「なるほど、大変ですね。でしたら、こちらのトゲトゲを使ったブレスレットはいかがでしょうか。トゲトゲにはワイルドさをアップする効果がありますの。こちらの髑髏のパーツと合わせれば……」
「おお! そいつはご機嫌だな! 気に入ったぜ!」
ネーヴェは客のニーズに合わせ、的確な助言と共にアクセアリーを選んであげた。ちなみに店主のアルフィーはと言うと、ネーヴェとお客さんの方をじっと見つめ、すみっこで石のように固まっていた。まるで気配隠しのスキルでも使用しているかのようだ。
●
午後のピークタイムを過ぎると、客足は落ち着いてきた。アルフィーとネーヴェは露店の奥で椅子に座り、お茶菓子を頂きながら、一息つく。
「俺は口下手だから上手く話せないんだ。助かった!」
「ふふ、お役に立てたようでよかったです。アルフィーさんのアクセサリー、大人気でしたね」
「そうだ! ネーヴェにもアクセサリー作りたい! どんなのがいい?」
アルフィーがそう問いかけると、ネーヴェはぽかんと口を開けたあと、少し考えた。
「でしたら何か、シンプルなネックレスをお願いできますか? 普段使い出来るものが良いのですけれど……」
「シンプルなネックレスだな! よしきた」
アルフィーはネーヴェをまじまじと見つめ、しばらく考え、こう答えた。
「……紫水晶のネックレスでどうだ? 魔除け効果もあるらしい」
(俺の瞳の色だからつけて欲しい、ってのもあるけど)
「はい、お願いしますね」
ネーヴェは柔和な微笑みを浮かべた。
……。
「できたぞ! ……つけさせてもらっても、いいか?」
一拍置いてからアルフィーが尋ねると、ネーヴェも一拍置いてから返答した。
「あ……ええと、はい、勿論ですわ」
ネックレスを着けて貰う間、胸の高鳴りをアルフィーに悟らせぬよう、ネーヴェは心を空にするように努めた。アルフィーもネーヴェの白い肌をじろじろ見ないように努めながら、ネーヴェの首の後ろに手を回す。
「よし。ネーヴェ。つけ、たぞ」
「ありがとうございます。アルフィーさんのセンスはとても素敵ですね」
●
「王都の広場でイベントがあるみたいですね。せっかくですし、新聞部も何か出してみましょうか」
「さんせーい!」
コルネリウス・アーラが部室でそう提案すると、若い部員達は賛成してくれた。冒険者の部員はコルネリウス以外は出払っていたが、新聞部には一般学園生の部員もいる。今回都合がついたのは、一年生のルサルカとジリアンだ。二人は仲が良くいつもペアで行動している。二人とも社交的だが、記事の誤字が多かったり、毎回締め切りギリッギリ(30分前とか)に原稿を出してくるのが玉に瑕だ。
「新聞部は王都でのイベントの取材をしましょうか。学園生の出し物もいくつかでるようですし」
「やったー! 部費で買い食いしていいってことですか!?」
「うっしゃー! バイキングタイムですね!」
ルサルカとジリアンはガッツポーズをした。
「もちろん、取材費の上限は設定しますよ。新聞部の懐事情はそこまで裕福ではないですし。それと、領収書はちゃんと取っておいて下さいね」
「はい、了解です」
●
「バデーニ領領都で犠牲が出た事を悔い、王国の第二王子としてどんな手を使ってでも討つとお覚悟をし、自ら前線に立たれた殿下の振る舞いは正に王族に相応しいものでした」
レティシアは語り部として、劇に客演していた。
「ウィリアム王子とグリゼルダが出会ったのは、約一年ほど前の冬のことでした。当時、レギンレイヴ侯爵の不正を内偵していたウィリアム王子は、山中でグリゼルダに襲われ……」
レティシアの発案により、グリゼルダのことを聴衆に分かりやすく伝えるため、第三演劇部の演劇にはグリゼルダの説明パートが設けられた。
(グリゼルダ様との因縁は深いものでしたが、民の中にはよくご存じでない方もいらっしゃるでしょうし)
「ストーカーは犯罪です。若い男女は時に暴走しがちですが、一度冷静になってみることも必要かと思います。そして交際を断る際は勇気を出してきっぱりお断りすることも、お互いのためになります」
レティシアが教訓話風に語りを終え、一礼すると、聴衆たちはぱちぱちと拍手を送った。
●
「ウィリアム! ウィリアム! ウィリアム! 愛してるわ!」
ルアンナは黒ウェディングドレスを身に纏い、グリゼルダになりきっていた。別にウィリアムは愛してないが、とりあえず彼の名前を連呼した。
「王子には近づけさせねえよ!」
エルゼリオは父のように勇ましく声を張り上げ、ルアンナをハリボテの剣で思い切り斬りつけた。バチチッとエーテルが弾けた後、ルアンナはエルゼリオを殴り返す。
「ウオオオ……」
「レミーラ。もう眠るんだ」
広場の中央で激しく切り合うナハシュとヨル。二人の演技――特にナハシュのものは迫真の演技だった。ヨルの方はナハシュと比べると演技力は普通だったので、ヨルが頑張ってナハシュの攻撃を避けること(つまり、ヨルは当てるぐらいのつもりで攻撃している。武器は小道具だし、いつもより大振りだが)でカバーした。
「はー、やるな。ナハシュはああいう動きもできるんだな。君は剣闘士になっても人気が出そうだ」
ヨルは感心するように呟く。情熱的な舞いのようなナハシュのダイナミックな動きにヨルは魅了されていた。レミーラのように本当に空を飛んでいたわけではないが、ナハシュはまるで空を飛んでいるかのようだった。
「~♪ ~♪」
ザザはキメラゾンビに扮し、ゾンビのメイクで舞台へとまろび出ると、緊迫感のあるダンスを披露した。広場は丸いので、舞台の近くにいる観客にサービスでギリギリまで近づくと、観客は「うわっ」と裏返った悲鳴を上げた。
(やりすぎちゃったかしらん?)
●
「おう、劇、お疲れさん」
「――あれ? 父上?」
舞台が終わった後、声をかけてきたハスラムの姿に、エルゼリオは目を丸くした。
「今日は非番なの? 帝国遠征の準備で色々と忙しいんじゃ……」
「おう。遠征前の最後の休みってとこだな。そういうわけなんで、ちょっと立ち見させてもらってたわけだ。まさか、お前が俺の役とはなあ……まあ、悪くはなかった。なかなか、迫力のある劇だったしな」
「ああ、あのゾンビはシーフのスキルで再現してるらしいから、幻覚かな? 剣は大道具係のスィーリーンさんが……」
エルゼリオはしばし、父との雑談に興じた。
「あ、そうそう! せっかくだし、この子達と少し話をしていってよ! 第三演劇部の人達だよ!」
「おお。そうだな。俺はハスラム。知ってるかもしれんが、王国騎士で、こいつの父親だ」
「はじめましてー!」
「サイン下さい!」
「しゃーねーな……まあ、並びな。俺は絶世の美男だしな」
本物の王国騎士のハスラムは第三演劇部の部員達から大歓迎され、臨時のサイン会が開催された。
●
「マリリンさん、劇、お疲れ様です」
「あ、コルネリウスさん、こんにちは」
コルネリウスが挨拶すると、マリリンはぺこりとお辞儀をした。
「せっかくなので少し、取材していいですか?」
「はい、もちろんです! 一面記事でお願いしますね!」
「ふふ。分かりました。今回は号外ですしね」
意外とツラの皮が厚かったマリリンに、コルネリウスは苦笑した。なお、取材の際にたまたま近くにハスラムもいたため、壁新聞には王国騎士と第三演劇部部長ラティオの対談も載り、学園生の耳目を集めることとなった。
●
「たまにはああいうごっこも悪くねえな―!」
「そうだね。俺もとても楽しかったよ」
劇が終わった後、ヨルとナハシュは王都の広場の屋台を回っていた。もちろん、ナハシュはキメラゾンビへの変身は解除している。そのまま街に繰り出すと、ハスラムの休日の危機になってしまうからだ。
「劇って、ちょっとダンスに通じるところがあるか? 踊ってるみたいだったぜ、またやろう。あれ町や村でやったら路銀稼げるぞ」
「そうだね。君となら、きっとどこでやっても楽しいよ」
ヨルは屋台で買ったおやつをつつきながら、にっこりと笑った。
こうして、冒険者達は学園生達と共に、王都の楽しいイベントに花を添えたのだった。
「王都でイベントか……オレはドゥジンシ即売会でも開くか」
レタラ・スマリは王都の露店でドゥジンシを売るべく、準備を始めた。
「王都の広場でエフレム×レイウェスト本はちょっと……エフレムはともかく、レイウェスト皇子はいまや、メアリー王女の婚約者なので……王家(と帝国)への挑戦だと思われてしまいますわ」
すると、ドゥジケット仲間のアルベルティーヌとマリリン(作家ではなくクラブの編集)からNGが出た。ドゥジン作家レタラ21歳。まさかの冬の時代到来である。
「そうか……規制が厳しくなったのか。残念だ。では一般向けとしてメアリー王女のご活躍を描いた絵物語のほうはどうだろうか……」
しょんぼりしたレタラはもう一冊の新刊、「メアリーVS竜喰らい~聖剣に選ばれし者」の方を二人に見せた。
「どうでしょう、行けるかしら?」
「濡れ場とかはないですし、これなら大丈夫なんじゃないでしょうか」
「そうですわね。メドゥの右腕がちょっとセクシー過ぎる気はしますが、まあこのぐらいならきっと許容範囲ですわ」
そちらの方はドゥジン仲間のチェックも通過し、無事にレタラの新作ドゥジンシ(一般向け)は無事に即売会に回されることになった。
「この機会に同好の士が少しでも増えると嬉しいのだが」
レタラのドゥジンシは王都の若者達の間で好評を博し、無事に完売した。
●
「これが例のブツですわ」
校舎裏にて。サングラスで変装したマリリンは包装紙に厳重に包まれた一冊のドゥジンシをレタラに手渡した。
「これがリザ師(レヴェリアのペンネーム)の幻の発禁エフレム×レイウェストの台本か……」
レタラは薄い冊子を手に取り、感慨深げに呟く。
「はい。ドゥジンナマハゲを呼んでしまいそうな危険物でしたので、私がこっそり封印を」
「ありがとう、助かる。これはお礼のラミアスのオフショットスケッチ(※想像で描きました)だ」
「ありがとうございます!」
マリリンはほくほく顔でレタラのスケッチを受け取った。
「この作品が闇に葬られるのは惜しい。今度俺が絵をつけて漫画にしてみるよ」
「ドゥジンナマハゲには気を付けてくださいね!」
(ドゥジンナマハゲとは何だろう?)
●
「ドーモ、エンゲキブ=サン、ドゥジンナマハゲです」
赤い覆面姿で第三演劇部にやってきたドゥジンナマハゲことベルク・オスマットはペコリと第三演劇部の学生たちに挨拶した。ここは由緒正しき学園。きちんと挨拶しないのはスゴイシツレイである。
「ドーモ、ドゥジンナマハゲ=サン、部長のラティオ=アルグレーアです」
第三演劇部の部長は同じようにお辞儀をしてくれた。ラティオは割とノリのいい令嬢であった。
「とりあえず台本検閲させろ。あの戦いを劇にするのは問題はないが、ちょっとゾンビの素性に問題があるんでな」
前置きはそこそこに、ベルクは要件を切り出した。
「あ、はい。いいですけど」
ラティオは正式採用された方の台本をベルクに渡した。
「ふむ……問題はなさそうだな。グリゼルダが連れておったキメラゾンビは実は聖地のケンタウロスの傑物だったのだ。まあないとは思うが、茶化したりすると後々問題となるのでな」
「はあ。そうだったんですか。冒険者の方はケンタウロスの知り合いもいるんですね」
演劇部員たちはベルクの言葉に感心していた。リーンエス王国は聖地とは距離があるため、演劇部員達にとっては「コミュニケーションが取れるケンタウロス」自体が意識の外だったようだ。
「ところでそちらのお嬢さんは今回は悪さはしとらんよな?」
「エエ、モチロン=デス」
ベルクが欠片も笑っていない笑みをレヴェリアに視線を向けると、レヴェリアは目を泳がせ、マリリンは苦笑いしていた。
●
「へー。学園中庭での戦いを劇にするんだ。現場に居合わせた者として、ボクも何か協力したいなあ」
エルゼリオ・レイノーラは第三演劇部の掲示を見て、さっそく話をしにいくことにした。何を隠そう、エルゼリオはパンクリアース学園中庭での戦いの当事者だ。しかも、王国騎士である父と親子で参戦という、話題性の高いエピソードの持ち主である。エルゼリオは第三演劇部長のラティオに当時の事を話す為、部室へと足を運んだ。
「え、『黒騎士』ハスラムの息子さんが?」
「王国騎士の息子が来た」ということで第三演劇部はたちまち大騒ぎになった。
「グリゼルダとゾンビ軍団は本当に怖かったな~。でも、ウィリアム王子と父上は格好良かったよ! もしよければ、父上役でボクもお手伝いがしたいんだけど……」
「ぜひ、お願いします!」
エルゼリオがインタビューのついでに出演交渉した結果、快諾され、エルゼリオはハスラム役として出演することになった。
「ちなみにボクの役の人はいるのかな?」
「あ、僕です」
エルゼリオが尋ねると、十三、四歳ぐらいの男子部員が挙手した。
「よろしくお願いします、パパ」
「ふふ、よろしく。でもそこは父上でお願い」
息子(というか自分)役の学生の言葉に、エルゼリオはクスリと微笑んだ。
●
「……帝都の戦いが終われば、これまでのように学園を訪れる事も難しくなるでしょう。ですから今の内に、少しでも後輩の皆様のお力になりたいのです」
レティシア・レインフィールは語り部として、劇に客演を申し出ていた。
(帝都の戦いが無事に終われば、冒険者ギルドと各国との盟約が終わります。その時は、私の『猶予期間』も同時に終わりを迎えることになるでしょうから)
「第三演劇部の皆様、お久しぶりです。お元気そうで何よりです」
「「名誉大道具係のスィリーンさん!」」
スィーリーンが久々に部室に顔を出すと、第三演劇部員達に大歓迎された。最近は冒険者ギルドには特に依頼は出していなかったが、彼女らは元気に活動を続けていたようだ。平和だったのだろう。
「ふふ、お久しぶりです。先の決戦の際は別の戦場に赴いていましたので、ウィリアム王子の勇姿は見ていないのですけれど、名誉大道具係として、今回も尽力致しましょう!」
幸い、部室にはルアンナ・ミュラーやナハシュやヨル・スレイマン、ザザ=ステルヴィナ、エルゼリオらもいたので、話を聞く相手には事欠かなかった。スィリーンは仲間達の話を元に、ウィリアムの装備や王国騎士ハスラムの鎧など、舞台に映える演劇道具を次々と再現していった。特に、リーンエス王国の国宝であるウィリアムの剣(『名もなき剣士』の剣))のレプリカは、部員たちに大変喜ばれた。
「今まで作った大道具や衣装で使えそうな物があれば手直しして使いましょうか。予算は有限ですものね。無駄遣いはいけません」
「その通りです。ありがとうございます」
会計のマリリンは微笑み、しっかりとスィーリーンと握手した。
●
「当事者として現場に居たから、何か知りたい事があったら遠慮なく聞いてねん? 私が戦ったのはレミーラさんのゾンビだったけれど」
ザザは先日の中庭決戦の様子を王都広場で上演すると小耳に挟み、興味を惹かれて第三演劇部の部室へとやってきていた。
「レミーラさんは強敵でね……空も駆け回るケンタウロスだったの。眼から怪光線も出したし、槍の一撃で花壇が丸ごと消し飛んだわ」
「ああ、中庭が砂漠化してたのはそういうことだったんですね……」
多少盛りつつも、当時の様子をザザが克明に語ると、演劇部員たちにはとても喜ばれた。
「ウィリアム王子はどうだったんですか? なんか、不自然に黄金像だけ無事だったんですけど……最優先防御目標だったとか?」
「彼は勇敢だったわ。黄金像が無事だったのは、みんなが守ったからよ。あの黄金像にはかかわった冒険者も多かったから、みんな心の片隅には置いてたんでしょうね」
ザザはマリリンのツッコミに苦笑しながら答えた。
「私もよければ、バックダンサーとして劇に参加協力したいのだけれど、どうかしら?」
「ありがとうございます! ぜひお願いします!」
「こちらこそありがとう。王都の広場で踊れるなんて、またとない機会よねぇ。目の肥えた王都の住人達を唸らせてみせるわ」
●
「こういう特殊メイク? は得意だぜ! 任せなっ!!」
「リアルすぎないか? いやまあ、パンクリアースならこのくらいはやるべきか……」
ナハシュとヨルは第三演劇部の劇に客演として参加していた。ヨルの方は普通に冒険者役だが、ナハシュの希望の役柄はなんと、キメラゾンビであった。そのため、ナハシュはレミーラのキメラゾンビ役を演じることとなった。ナハシュは記憶を頼りにレミーラのゾンビに変身し、稽古に励んでいた。変身先が生前のレミーラなのは、ゾンビに変身したらリアル過ぎて部員からストップがかかったからである。
「助かります。ゾンビ役は部員の希望者もいなかったんで……」
部長のラティオを初め、部員たちはとても二人に感謝していた。
●
「そこで、私が瞬間移動でシーフと位置を入れ替わり、グリゼルダの前に現れてですね。バーン、と杖で背中にフルスィングを叩きこんだのです!」
ルアンナはグリゼルダの第3の腕を粉微塵にした張本人として、当時の戦闘の様子を事細かに語った。
「ちょっとやってみてもらっていいですか?」
「ええ、もちろん! おりゃー!」
バキャッ! ルアンナはコモンブレイクを実演してみせ、演劇部の椅子を塵にした(会計のマリリンの笑顔は引き攣っていたが、部員達には大うけだった)。
「もちろん自分ひとりの手柄ではなく、仲間達と協力した結果です」
「なるほど……」
部員達は熱心にルアンナの話を聞いていた。
「私もせっかくなので、劇出ていいですか?」
「じゃあぜひグリゼルダ役でお願いします!」
「えっ」
ルアンナの運命やいかに。
●
「私達はファッションショーでも企画しようか。そろそろ衣替えの季節だしね」
「ファッションショーにはターゲットの顧客層を決めておくことが肝要だ。今回はのテーマは『推し』で行こう」
シルヴィア・A・カペルは秋冬コーデをテーマとした、ファッションショーを開催するべく動き始めた。さらに、ヴィナスやルーンス・ラグネルの発案により、学園生や若者向けを意識し、『推しグッズ』も露店で併売するのである。
「寄付目的の売り上げ、上がるといいなグフフ」
ルーンスは当日の盛況を想像し、一人ニヤニヤとしていた。
●
「こないだはありがとう」
シルヴィアに王都ファッションショーの実行員会の会議に呼ばれた海神 江流はまず、ヴィナスに服を見立ててもらった礼をした。
「どういたしまして」
ヴィナスは柔和に微笑む。
「江流の服はこないだ見立てたものをベースにしようか」
「君の推しは、もちろん、『彼女』だね?」
「うん」
ヴィナスの問いに、江流は素直に頷いた。
「できればシャルガネの染物技術を活かして、青から紫が重なるようなグラデーションとも少し違う色の変化が楽しめるようにしたいんだけど」
「分かった。色々組み合わせを試してみよう」
会議の結果、江流は、ヴィナスに仕立ててもらったフロックコートを主体に、手製の彫金仕上げの紫百合をイメージしたラベルピンやカフスを着用することとなった。
(共演者の半分は貴族の家柄。背伸びをする必要はないけれど、見劣りしない程度には見栄を張りたい)
「推しカラーグッズは露骨ではないのが重要だ。特にルーンが身に着けているうちのブレスレットは組み合わせはお客様の自由、想像は無限大……オーダー受けるだけになるけど、日傘やレースの手袋は推しカラー、推しモチーフの組み合わせも可能にしよう」
「今は冬だし、マフラーも用意しようか。カラーバリエーションも表現しやすい。けれどイベントまであまり時間がないから超特急で用意してくれる仕立て屋を探して……」
「ま、それはそうと商会の友人たちは商魂逞しいなあ」
盛んに併売するグッズショップのラインナップについて議論を交わしているヴィナスやローザリカ・L・ディオールたちを見て、江流は茶をすするのであった。
●
「ロゼはこういうのは好きじゃないと思っていた」
「僕だって令嬢だ、これくらい当然だろう」
着飾ったジュスト・ヴェルジーが婚約者に向けてニッコリと微笑むと、ローザリカは気恥ずかしそうに髪を掻き上げた。二人は、ファッションモデル担当だ。ジュストは碧、ローザリカは赤と二人は自身のイメージカラーを基本にしつつも、衣服の細かい部分では、ペアコーデ感を意識した着こなしをしている。例えば、ジュストのコートの釦や手袋にはロゼのモチーフである薔薇の刻印や刺繍入りだ。逆に、コートの釦や手袋にはジュストがモチーフの小鳥の刻印や刺繍が入っている。
二人が着ている服は、ローザリカの肝入りのブランドの既製品にローザリカ自らが刺繍を施したものだ。ジュストが驚いたのは、刺繍の見事さもさることながら、『ローザリカが刺繍をした』という点である。服は事前に見せて貰っていたが、てっきり手芸部か職人に頼んだものかと思っていたのだ。
「あえて販売品に手を加えたのは自分の手で一点物にも出来るというアピール。仮にも王都しかも学生も多く参加するイベント。富裕層ウケもよくする戦略だ」とは、ローザリカの弁であるが……。
(普段は男性のようにふるまっているが、女性らしい趣味が嫌いなわけじゃない。今更と、機会を逃し続けていたものをこれ幸いと実行しただけだ)
「嬉しいよ、本当に」
笑うジュストの顔からは幸せが零れていた。
(初めてロゼに貰った刺繡だから、宝物にしよう)
「…喜んでくれたのなら、嬉しい」
ローザリカは頬を染め、こくりと頷いた。
●
「シルヴィ姉様とファッションショーなんてドキドキしちゃいます! 見劣りしないように気合を入れてオシャレしなくちゃ!」
エフィルミアとシルヴィアはペアのコーディネイトで練習に励んでいた。エフィルミアはシルヴィアが普段身に着けているもの、逆にシルヴィアはエフィルミアが普段身に着けている意匠をファッションに取り入れている。
「せっかくだし冒険してみてもいいよね?」
(シルヴィ姉様の青薔薇モチーフのアクセサリー……せっかく身につけるなら姉様みたくかっこよくなってみたい!)
エフィルミアは普段は妖精のようなふわっとした可愛い服ではなく、白いショートパンツを履き、きっちり結い上げた髪に、青薔薇の髪飾りを付けていた。メイクもいつもより大人っぽく青が基調だ。ピンヒールを履き、ロングコートもなびかせる姿は、まるでシルヴィアの妹のようだった。
●
ヴィナスはファッションショーに併設する露店担当だ。露店では、ファッションショーでモデルが身に着けた小物やアクセサリー、推しカラーグッズを取り扱う。
「モデルの着こなしで自分もと思いたくなるものだし。だが、出店手当と原価以外を差し引いた露店の売上金は寄付する予定だ。この戦いで生活が困窮した層(特に孤児)への生活や医療の支援へ回そう」
「いいの兄様?」
「ああ」
ヴィナスは頷いた。
「治安の低下はそのまま不景気に繋がる。支援することで治安が低下しないならその方がいい」
「さすが兄様」
ルーンスはニッコリと笑った。
(推すことで、誰かを救う手になってほしいな)
●
ルベア・ベルニもモデルとしての参加者だ。学園の廊下を歩いていたら、シルヴィアPに「モデルになってみないかい?」と誘われたのである。
「推しグッズ……だったら私は……眼鏡かな……」
悩んだ末、ルベアは伊達メガネを持参し、着用していた。
「ルベア、その眼鏡は推しグッズかな?」
シルヴィアが問うと、ルベアは「ええ」と頷いた。
(帝国にだけど応援したいっていうか、放っておけない研究者がいるから……知的に見せたい)
●
そしてイベント当日。最初の演者は江流だった。
(戦功を重ねるでは得られない、外見的に見られる事の蓄積もしていかねば。他でもないあの娘のために)
江流は気を引き締める。彼にとっては、このファッションショーもある意味戦いなのだ。だが、敵は共演者たちではなく、己自身である。
スッ……。迷いのない足取りでランウェイを歩き、ゆっくりとポーズを取る江流。日頃鍛えた度胸のおかげもあり、つつがなく江流は自分の番を終えた。
(ふう、緊張したな。でもこういうのも慣れていかないと……)
●
江流の次はシルヴィアとエフィルミアの番だった。
「良く似合っているよ、エフィ」
シルヴィアが微笑むと、エフィルミアははにかんだ。
「ありがとうございます、シルヴィお姉様。お姉様も素敵です♪」
「普段の私とは違う、ふわりとした可愛らしい服装に……ふふ、こういう冒険も楽しいね」
シルヴィアの髪型はハーフアップだ。妹分のイメージモチーフであるマーガレットの髪飾りを着け、温かみのあるピンク系メイク。服装はファーとリボンをあしらった華やかなケープコートに、靴やバッグはシックな色合いにして全体の雰囲気を引き締めている。
「普段と違う私たちを魅せる事で、皆も好きな自分になれる! って伝えられたら嬉しいですね!」
二人は王都を明るく出来るようにと願い、ランウェイから観客に笑顔を振りまいた。
●
ルーンスもモデルの担当だ。出番はあえてのソロである。シルヴィアとエフィルミアの間に挟まったり、ジュストとローザリカと一緒に出たりすると、群衆から石を投げられかねないという配慮だ。
(「カップルや百合の間に挟まるのは死罪」って部下が言ってたけど、言われなくても邪魔しないよ僕)
イベント当日、ルーンスは革製のシックなブレスレットを身に着けていた。琥珀色のコートに黒のニット、緑と黒のチェックズボンを履き、マフラーと鞄をアクセントにしている。
(ここでポーズを……)
ステージでは中央まで歩き、ブレスレットがよく見えるように手首を見せた後一礼すると、拍手喝采が巻き起こった。
●
ところで、ヴィナスとルーンスはもう一人モデル役に声をかけていた。
「秘かな推しコーデ? ずいぶんと細かい指定がしてあるな……」
カイン・ステラは渡された説明書を読みながら、首を捻っていた。カインはヴィナスとルーンスの部下の人が制作した服を着ることになっているのだが……。
藤鼠色のパーカーにオータムリーフカラーのズボン、黒のコート……それらはウィリアム第二王子とパンクリアース学園教務主任のイメージカラーや髪の色を折衷した、ヴィナスとルーンスの秘かな推しコーデだった。
「普段の服に推しカプの色を取り入れ、自分の気持ちを上げていくのがコンセプト。へえ」
カインは隠された意味には全く気付かず、単純に「綺麗で、凝った服だな」としか思っていなかった。
「ファッションは自分の為でもいいってのは確かにあるな。作った人が誰を推してるのかわかんねーけど、コンセプトは悪くねぇ」
カインは納得した。
(誰かにとっていい気分転換になればいいな。ステージは慣れねぇけど)
そして、ゆっくりとランウェイを歩くカイン。
「あのカラーリング! あの方はもしや、衣服の中にウィル×ラミを表現しているのでは?」
「あの剣の模様はウィリアム王子を、鞘の方はラミアス先生に見立てているのですわ!」
「なるほど! その手があったか!」
カインの着こなしを見て、通りすがりの有識者やドゥジン作家は感嘆していた。
(けど、推しカプの色…?)
「何のことだろ、見てる人分かるのか?」
ドゥジン界隈は門外漢なので、しきりに首をひねるカインであった。
●
「……私の番ね」
ルーンス、カインの出番を挟み、6人目はルベアの番だった。ルベアに用意された衣装は、ベージュのランダムティアードニットセーターにハイネックの黒のロングストレートスカートというファッションだった。ワンポイントアイテムの眼鏡は、推しグッズとして販売されており、カラーバリエーションはフレームの色である。
「モデルは2回目だけど……前と違って学園も貴族も関係ないから少しは気を張らずにやれそうかしら」
とはいえ、着飾って衆目の前でゆっくり歩くだなんて、緊張することに変わりはない。
(練習通りに)
ルベアはゆっくりと足を踏み出し、上流階級の令嬢のような足取りでランウェイの端まで歩き、膝折礼をキメた。
●
ファッションショーの最後を飾るのは、ジュストとローザリカのコンビだ。
「お手をどうぞ、お嬢さん」
ジュストは微笑みながら黒い手袋に包まれた手を差し出し、ランウェイへとローザリカをエスコートする。鮮やかに着飾った二人が番の鳥のように息の合った動きを衆目の前で披露すると、拍手喝采が巻き起こった。
●
「盛り上がっているわね。さすがにあの二人は華やかだわ……」
自分の出番が終わったルベアは普段着に着替え、仲間達の晴れ舞台も見届けていた。
「君も素敵だったよ、ルベア。眼鏡も似合ってた」
隣にいたシルヴィアがルベアへと微笑みかけると、ルベアは照れくさそうに顔を横に向けた。
「推しグッズも売れてますね、シルヴィお姉様。あ、私のハンカチ買ってくれてる人がいます!」
エフィルミアは露店を指差し、はしゃいでいた。
「ああ、やってよかったな……」
●
「あ、マリリンだ。おーい」
観客の中に友人がいるのを発見し、ルーンスは手を振った。
「やあ、マリリン。劇は終わったの?」
「はい。今日は午前中の公演でしたので」
「やあ、こんにちは、マリリン」
「こんにちは。ヴィナスさん……ですよね?」
「ああ。覚えてくれていたんだね」
ヴィナスが優雅にマリリンに挨拶すると、マリリンが丁寧にお辞儀をした。マリリンとヴィナスは以前にも会ったことがあるが、その時はヴィナスは女装していたので、マリリンは本人かどうか確信が持てなかったのだ(お化け屋敷の騒ぎの時もニアピンしたが、その時は慌ただしく、二人がじっくり話す時間はなかった)。
「あにさまを推す絶好の機会だから推せって婚約者に言われたんだよね」
「なるほど、そうでしたの。今日はブームを作る計画でしたのね。見事な人選ですわ」
マリリンはくすりと笑った。その後、自分もヴィナスの露店でグッズを物色し、何セットか推しグッズを購入していった。
●
「レイナード杯……要はお祭りでしょうか。楽しいものになればよいですね」
王都でのイベント開催のお知らせをいたヴィルヘルミナは、自分も露店を出すことにした。ドワーフらしく、手先の器用さには少々自信があるのだ。「金物屋」で出店申請を出したところ、許可がもらえたので、ヴィルヘルミナは王都の広場のすみっこにひっそりと店を出した。
「このフライパン下さいな。手に吸い付くみたいで気に入ったわ」
「はい、まいどあり」
主婦はヴィルヘルミナが打ったフライパンをリーズナブルな値段で手に入れ、ホクホク顔で帰っていった。
「ほう、これは……見事な誂えのナイフだ! この紋様はドワーフ王国の意匠ですかな? 実に美しい!」
しばらくすると、身なりのいい紳士がヴィルヘルミナの装飾ナイフを手に取り、感嘆の声を上げた。
「私が練習用に作ったものです。本格的なのが欲しいなら王都のいいお店に行ったほうが良いでしょう。お祭りの記念品程度に思って頂ければ」
「あなたが打ったのですか! いやいや、ご謙遜を! 私の目は誤魔化せませんよ! これほどのナイフは王都でもなかなかお目にかかれない!」
「なんだ、なんだ。すごい刀匠がこっそり店を出してるのか?」
「ドワーフの知られざる名工だってさ」
「すごい! このフォーク、石にサクサク刺さる!」
紳士が騒ぎ出したせいで、ヴィルヘルミナの店にはあっという間に人だかりができてしまった。本人としては言葉通りの「練習台」に過ぎなかったのだが、ヴィルヘルミナの刀工技術は既に神域に達していたのだ。せめてここが田舎だったら客も商品の価値に気付かなかったかもしれないが、ここは王都。客の方にも「分かる人間」が多かった。あしかし、値段設定が普通の「日用雑貨」レベルだったため、ヴィルヘルミナの商品はそれから1時間も経たぬ間に完売した。
「思いのほか、目立ってしまいましたね……」
「王都に店を出しませんか」と誘ってきた身なりのいい人たちの名刺を手で遊びながら、ヴィルヘルミナはぽつりと呟いたのだった。
●
イズル・M・ヴォルゴールは自作の果実を販売することにした。学園の敷地内のイベントなら酒を出すのは難しかっただろうが、今回のイベント会場は王都の広場だ。酒を出すのも問題ないだろう。スペースは未成年には見えにくいよう、少し奥まった場所にしてもらった。
「体を温めるのにどうですか?」
イズルの主力商品は果物とスパイスを入れたホットワインだ。店先で作ったできたてのものを提供するスタイルである。
「おお。これはいい香りだ。一つ、いただけるかな」
老紳士の客はイズルの店で足を止め、ホットワインを煽った。
「ふむ、隠し味のジンジャーが実にいいアクセントになっているね。ところでそちらの酒は?」
老紳士が指差した先には、瓶入りの酒があった。
「これはシャルガネ名産の梅を使った梅酒ってお酒です。蜂蜜と一緒に漬けているので甘くて女性にも飲みやすいですよ」
さりげなく、家族へのお土産にどうですかとアピールするイズル。誰に仕込まれたとは言わないが、なかなかの商魂逞しさであった。
「ほう、シャルガネの……ここらでは珍しいな」
「こっちもシャルガネの金柑って果物を使ったお酒です」
老紳士は感心し、イズルの店をしげしげと物色し始めた。
「なかなかいい品揃えだね。普段はどこに店を構えているのかな?」
「このお酒は自分の趣味(と酒の研究)で作ってて量も少なくて、知り合いのお店に卸す程度なんです」
「ふむ、それは残念だ。お店を出す気になったらぜひ連絡をくれたまえ。君ならいい酒屋になれるだろう」
老紳士はいくつかの酒を購入し、イズルに名刺をくれた。
「ありがとうございます。光栄です」
老紳士は名刺を受け取り、微笑むイズル。どうやら、老紳士は王都に本拠を構えるそこそこ大きな商会の会長だったようだ。
●
「露店販売してもよろしと伺いまして飛んで参りました。旅のぬいぐるみ作家、ギュンターです! どぞ、よしなに」
レラ・F・ギュンターはどでかいカゴに詰めてきたぬいぐるみを手に取り、大きな声で呼び込みをかけながら、広場をうろうろしていた。
「とゆ訳でギュンタはお手製の縫いぐるみさんを売り歩くのです。どの子も愛嬌のあるかわいらしい子ばかりですよー。一家におひとついかがですか?」
「ママー! ぬいぐるみやさんがいる!」
「あら、可愛らしい売り子さんね。見せてもらってもいいかしら?」
道行く子連れは足を止め、ギュンタのかごを覗く。しかし、しばらくぬいぐるみを物色した後、足早にその場を去っていく者は多数だった。レラのぬいぐるみのセンスは独特で、ぬるぐるみは微妙にブサ……個性的過ぎたのだ。
「うーん、売れないのです。こんなに可愛いのに」
レラは首を捻る。
「ムッ。あれは行商人ッス!」
すると、レラより頭一つ分ほど小さな少女が近寄ってきた。元行商人の学園職員・ウィーズルである。ライバルだと思われたのだろうか。
「いらっしゃいませなのですー。ギュンタはぬいぐるみ屋さんなのです!」
「フリフリの服にあざとい口調! なかなかやるっスね……」
レラの商才(?)に戦慄し、ゴクリと息を呑むウィーズル。ちなみにレラのババ臭い口調はキャラ作りではない。素である。
「どの子もギュンタの手づくりなのです。みんな可愛いのですよー」
「ほう、どれどれ……」
「お迎えしてくださるんですか? ありがとうございます」
「この子の名前はハトコさんです」
レラはとっておきの鳩のぬいぐるみをカゴから引っ張り出し、ウィーズルに手渡した。妙に目玉が大きい鳩のぬいぐるみだ。
「あ、名前あるんスね」
「ギュンタが作りました際に、ひとりひとりに名前をつけてあげてるのです。勿論他のお名前を改めてつけて下さってもよろしですけど……」
「キモカワイイので気に入ったッス。じゃあ、ハトコさん、貰うッス!」
「ですよね、やっぱりハトコさんがぴったしですよね!」
こうして、パンクリアース学園の職員室の机の上に、妙に目玉の大きなハトのぬいぐるみ「ハトコさん」が飾られることになった。
●
「アルフィーさん、おはようございます」
王都グランスパーダの広場にやってきたネーヴェ・グラヌローザは、露店を開く準備をしていたアルフィー・リッパーへと微笑んだ。
「おっ! ネーヴェ! よく来てくれた! 今日はよろしくな!」
アルフィーもニカッと笑い、ぱたぱたと尻尾を振ってネーヴェに近づいてくる。今日、アルフィーはこの広場でアクセサリーショップの露店を開く。ネーヴェは彼を手伝うために来てくれたのだ。さっそくネーヴェは、アルフィーが黒いワークエプロンを身に着けていることに気が付いた。
「エプロン、使って下さってるんですね」
「気がついたか? ネーヴェがくれたエプロンすごく使いやすいんだ。ありがとな!」
「ふふ、こちらこそありがとうございます。嬉しいです」
●
「世界に一つ、あなただけのアクセサリーをお作り致します。おひとつ如何ですか?」
「あ、綺麗なエルフの店員さんだ! ちょっと見ていこうかな」
ネーヴェが呼び込みをかけていると、王都の年頃の女性がいっぱいやってきた。価格は抑えているので、メインのターゲットは平民層だ。技術力的には、アルフィーは王都に住まう貴族向けのアクセサリーだって作れるのだが。
「来週、彼氏と初デートなんですけど……清楚なイメージでいきたいんですけど」
「まあ、おめでとうございます。それでしたら、お花の形の髪飾りなどがお似合いになるんじゃないでしょうか」
「あ、いいかも! よろしくお願いします!」
「俺は傭兵なんだがよお……敵になめられないように、なんか威圧感が出るイイ感じのアクセサリーはねえか?」
「なるほど、大変ですね。でしたら、こちらのトゲトゲを使ったブレスレットはいかがでしょうか。トゲトゲにはワイルドさをアップする効果がありますの。こちらの髑髏のパーツと合わせれば……」
「おお! そいつはご機嫌だな! 気に入ったぜ!」
ネーヴェは客のニーズに合わせ、的確な助言と共にアクセアリーを選んであげた。ちなみに店主のアルフィーはと言うと、ネーヴェとお客さんの方をじっと見つめ、すみっこで石のように固まっていた。まるで気配隠しのスキルでも使用しているかのようだ。
●
午後のピークタイムを過ぎると、客足は落ち着いてきた。アルフィーとネーヴェは露店の奥で椅子に座り、お茶菓子を頂きながら、一息つく。
「俺は口下手だから上手く話せないんだ。助かった!」
「ふふ、お役に立てたようでよかったです。アルフィーさんのアクセサリー、大人気でしたね」
「そうだ! ネーヴェにもアクセサリー作りたい! どんなのがいい?」
アルフィーがそう問いかけると、ネーヴェはぽかんと口を開けたあと、少し考えた。
「でしたら何か、シンプルなネックレスをお願いできますか? 普段使い出来るものが良いのですけれど……」
「シンプルなネックレスだな! よしきた」
アルフィーはネーヴェをまじまじと見つめ、しばらく考え、こう答えた。
「……紫水晶のネックレスでどうだ? 魔除け効果もあるらしい」
(俺の瞳の色だからつけて欲しい、ってのもあるけど)
「はい、お願いしますね」
ネーヴェは柔和な微笑みを浮かべた。
……。
「できたぞ! ……つけさせてもらっても、いいか?」
一拍置いてからアルフィーが尋ねると、ネーヴェも一拍置いてから返答した。
「あ……ええと、はい、勿論ですわ」
ネックレスを着けて貰う間、胸の高鳴りをアルフィーに悟らせぬよう、ネーヴェは心を空にするように努めた。アルフィーもネーヴェの白い肌をじろじろ見ないように努めながら、ネーヴェの首の後ろに手を回す。
「よし。ネーヴェ。つけ、たぞ」
「ありがとうございます。アルフィーさんのセンスはとても素敵ですね」
●
「王都の広場でイベントがあるみたいですね。せっかくですし、新聞部も何か出してみましょうか」
「さんせーい!」
コルネリウス・アーラが部室でそう提案すると、若い部員達は賛成してくれた。冒険者の部員はコルネリウス以外は出払っていたが、新聞部には一般学園生の部員もいる。今回都合がついたのは、一年生のルサルカとジリアンだ。二人は仲が良くいつもペアで行動している。二人とも社交的だが、記事の誤字が多かったり、毎回締め切りギリッギリ(30分前とか)に原稿を出してくるのが玉に瑕だ。
「新聞部は王都でのイベントの取材をしましょうか。学園生の出し物もいくつかでるようですし」
「やったー! 部費で買い食いしていいってことですか!?」
「うっしゃー! バイキングタイムですね!」
ルサルカとジリアンはガッツポーズをした。
「もちろん、取材費の上限は設定しますよ。新聞部の懐事情はそこまで裕福ではないですし。それと、領収書はちゃんと取っておいて下さいね」
「はい、了解です」
●
「バデーニ領領都で犠牲が出た事を悔い、王国の第二王子としてどんな手を使ってでも討つとお覚悟をし、自ら前線に立たれた殿下の振る舞いは正に王族に相応しいものでした」
レティシアは語り部として、劇に客演していた。
「ウィリアム王子とグリゼルダが出会ったのは、約一年ほど前の冬のことでした。当時、レギンレイヴ侯爵の不正を内偵していたウィリアム王子は、山中でグリゼルダに襲われ……」
レティシアの発案により、グリゼルダのことを聴衆に分かりやすく伝えるため、第三演劇部の演劇にはグリゼルダの説明パートが設けられた。
(グリゼルダ様との因縁は深いものでしたが、民の中にはよくご存じでない方もいらっしゃるでしょうし)
「ストーカーは犯罪です。若い男女は時に暴走しがちですが、一度冷静になってみることも必要かと思います。そして交際を断る際は勇気を出してきっぱりお断りすることも、お互いのためになります」
レティシアが教訓話風に語りを終え、一礼すると、聴衆たちはぱちぱちと拍手を送った。
●
「ウィリアム! ウィリアム! ウィリアム! 愛してるわ!」
ルアンナは黒ウェディングドレスを身に纏い、グリゼルダになりきっていた。別にウィリアムは愛してないが、とりあえず彼の名前を連呼した。
「王子には近づけさせねえよ!」
エルゼリオは父のように勇ましく声を張り上げ、ルアンナをハリボテの剣で思い切り斬りつけた。バチチッとエーテルが弾けた後、ルアンナはエルゼリオを殴り返す。
「ウオオオ……」
「レミーラ。もう眠るんだ」
広場の中央で激しく切り合うナハシュとヨル。二人の演技――特にナハシュのものは迫真の演技だった。ヨルの方はナハシュと比べると演技力は普通だったので、ヨルが頑張ってナハシュの攻撃を避けること(つまり、ヨルは当てるぐらいのつもりで攻撃している。武器は小道具だし、いつもより大振りだが)でカバーした。
「はー、やるな。ナハシュはああいう動きもできるんだな。君は剣闘士になっても人気が出そうだ」
ヨルは感心するように呟く。情熱的な舞いのようなナハシュのダイナミックな動きにヨルは魅了されていた。レミーラのように本当に空を飛んでいたわけではないが、ナハシュはまるで空を飛んでいるかのようだった。
「~♪ ~♪」
ザザはキメラゾンビに扮し、ゾンビのメイクで舞台へとまろび出ると、緊迫感のあるダンスを披露した。広場は丸いので、舞台の近くにいる観客にサービスでギリギリまで近づくと、観客は「うわっ」と裏返った悲鳴を上げた。
(やりすぎちゃったかしらん?)
●
「おう、劇、お疲れさん」
「――あれ? 父上?」
舞台が終わった後、声をかけてきたハスラムの姿に、エルゼリオは目を丸くした。
「今日は非番なの? 帝国遠征の準備で色々と忙しいんじゃ……」
「おう。遠征前の最後の休みってとこだな。そういうわけなんで、ちょっと立ち見させてもらってたわけだ。まさか、お前が俺の役とはなあ……まあ、悪くはなかった。なかなか、迫力のある劇だったしな」
「ああ、あのゾンビはシーフのスキルで再現してるらしいから、幻覚かな? 剣は大道具係のスィーリーンさんが……」
エルゼリオはしばし、父との雑談に興じた。
「あ、そうそう! せっかくだし、この子達と少し話をしていってよ! 第三演劇部の人達だよ!」
「おお。そうだな。俺はハスラム。知ってるかもしれんが、王国騎士で、こいつの父親だ」
「はじめましてー!」
「サイン下さい!」
「しゃーねーな……まあ、並びな。俺は絶世の美男だしな」
本物の王国騎士のハスラムは第三演劇部の部員達から大歓迎され、臨時のサイン会が開催された。
●
「マリリンさん、劇、お疲れ様です」
「あ、コルネリウスさん、こんにちは」
コルネリウスが挨拶すると、マリリンはぺこりとお辞儀をした。
「せっかくなので少し、取材していいですか?」
「はい、もちろんです! 一面記事でお願いしますね!」
「ふふ。分かりました。今回は号外ですしね」
意外とツラの皮が厚かったマリリンに、コルネリウスは苦笑した。なお、取材の際にたまたま近くにハスラムもいたため、壁新聞には王国騎士と第三演劇部部長ラティオの対談も載り、学園生の耳目を集めることとなった。
●
「たまにはああいうごっこも悪くねえな―!」
「そうだね。俺もとても楽しかったよ」
劇が終わった後、ヨルとナハシュは王都の広場の屋台を回っていた。もちろん、ナハシュはキメラゾンビへの変身は解除している。そのまま街に繰り出すと、ハスラムの休日の危機になってしまうからだ。
「劇って、ちょっとダンスに通じるところがあるか? 踊ってるみたいだったぜ、またやろう。あれ町や村でやったら路銀稼げるぞ」
「そうだね。君となら、きっとどこでやっても楽しいよ」
ヨルは屋台で買ったおやつをつつきながら、にっこりと笑った。
こうして、冒険者達は学園生達と共に、王都の楽しいイベントに花を添えたのだった。
マスターコメント
楽しいプレイングが多かったので、賑やかなリプレイとなっておりましたら幸いです。ご参加ありがとうございました。今回はプレイングの優劣はつけ難かったため、今回はMVPは選出しておりません。
イベントシナリオ(50人)普通 報酬:多い24 / 4〜50人
2023年12月01日 22時33分15秒 公開
大成功
参加者
相談掲示板
シルヴィアだ。今回はよろしくね。 >行動予定 友人達とファッションショーを企画している。ショーのモデル達が舞台で秋冬のコーデ&推しグッズの宣伝をした上で、舞台近くの露店でモデルが身に着けたアイテムを販売しようかなと。詳細はまだ考え中だ。
みなさん、よろしくッス! 出発は明日(日曜日)のお昼の12時ッス。忘れ物については注意するッスよ!