【大遠征】始まりの地へⅡ
おおくまねこ
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シナリオID:3083
オープニング
「よお、爺さん。アンタが『一回前』の引っ越しから生き延びてるっていう、アートさんかい?」
ブラックデスの構成員にして古ゴブリンの世話役の一人、アポロは腰の曲がった老人のゴブリンに声をかけた。ゴブリンの平均寿命は短い。生物としての強度は人間と大差ないが、人類種として最底辺であるゴブリンは総じて長生きできないのだ。つまり、目の前にいる『老ゴブリン』は、並み外れた強運の持ち主であるか、あるいは常人離れした生命力の持ち主であることを示している。
「いかにも」
古ゴブリンとしては流暢な人類語で、老人は頷いた。
「なら、話が早い。俺達ゴールディは今、偉大なるご先祖様たちの住処、いわゆる『始まりの地』を探してる。アンタ達、古ゴブリンの古い家を辿りながらな。最初の遠征は大成功だったが、次はもっと深いとこまで潜ることになる。ぜひ、アンタの『前の家』について知ってることがあるなら教えてもらいてえ」
「よかろう……我々も、あんたがたには感謝している。協力は惜しまない。だが、あそこに近づくことは勧められんよ。あそこには『化け物』がおる」
「ほぉ……その化け物ってのは、どんな奴だ?」
世話役が尋ねると、古ゴブリンは静かに呟いた。
「蛇だ。全てを飲み込む、とてつもなく巨大な蛇のクリーパー……奴を我々は『大喰らい』と呼んでいた。水場には絶対に近づくな。村からほど近い湖には、あの化け物が縄張りにしている」
●
数日後、ゴールディの首都シルバードでは二回目となる、『始まりの地』の捜索を目的とするサウゼル大樹海の調査の依頼が啓示された。『名もなき小鬼』の忘れ形見、サチコは冒険者達を前に、依頼の内容を説明した。
「前回はご協力ありがとうございました。おかげさまで、先月に作ってもらったベースキャンプとゴールディはビッグオウムでの往復が可能となりました。今回はあそこを拠点として、より深い場所まで調査を進めることができます」
サチコは淡々と言った。
「ただ、古ゴブリンの伝承によると、次に拠点を建造する予定地には、大型クリーパーが生息しているそうです。近づかなければ向こうから襲ってくることはないそうですが、調査のジャマなので我々としては排除してほしいです」
サチコはやはり、淡々と言った。
「そういうわけですので……今回は湖に生息する大型クリーパー『大喰らい』との交戦を前提とした依頼となります。倒すことができればリターンは大きいので、報酬はその分弾みます。皆さん、今回もどうぞよろしくお願いします」
解説
マスターより
リプレイ
「なるほど、蛇型の竜か」
「ええ、そのようです」
ストレガ・L・リベルガストラが尋ねると、サチコは頷いた。
「『大脱出』以前は『白蛇』が我が物としていた樹海。今はそのクリーパーが堰の一つとなっているのだろう」
ストレガは先祖が残した記録を思い出し、クリーパーの生態に思いを馳せていた。
「大型クリーパーがいては拠点どころか探索もままなりませんものね。被害が出る前に倒してしまいたいです」
スィーリーンは腕まくりした。大型クリーパーを排除し、古ゴブリンの住居跡を新しい拠点に改造しなければ、この先には進めない。なんとしても『大喰らい』は排除する必要がある。
「よっしゃ! 今回はシンプルに蛇退治か! 腕が鳴るぜ!!」
ハヤト=ガラン=ヴォルファングも張り切っていた。大物を仕留めれば自分や、ひいては傭兵団の名も上がる。強敵との戦いは大歓迎だった。ましてやそれがゴールディの為となれば、もはや断る理由などない。
「暑い樹海での水浴びは気持ちいいが、凶悪なクリーパーの縄張りとなると話は別だ。
これも樹海の案内人の務め。大喰らいを葬ろう」
矢の本数を確かめながら、サウゼル大樹海の案内人を務めるテテリカは言った。樹海に住むテテリカだが、ここはすでに案内人の領域より遥か奥。今回の仕事は彼にとっても命がけの狩りだ。
(サチコの目的、叶えさせてやりたい)
レピド・クロサイトはいつも通りぼうっとしているサチコを見ながら、決意を新たにしていた。
かくして、ゴブリン文明の始まりの地を目指すサウゼル大樹海調査隊の、二度目の大遠征が始まろうとしていた。
●
「大蛇さん退治、頑張りましょう!」
ゲルダ・クラインは剣を天へと突き上げ、仲間達を鼓舞した。冒険者達の考えた作戦は極めてシンプルなものだ。
『囮役のゲルダ、トーラ、ハヤトがワームを水場から誘い出し、陸の上でワームを叩く』である。
「一応水中戦も想定して水着は用意したわ」
「うむ。相手はクリーパー。尋常の生き物ではないからな」
ロゼットとベルク・オスマットは戦闘用の水着装備だった。サチコとのその親衛隊5名も水着を着用し、水中戦になった時の準備をしている。
「素晴らしい心がけですな♪」
スポーティな水着を着たロゼットをガン見し、うんうんと頷くハヤト。均整の取れたプロポーションのロゼットの水着姿は、過酷な樹海環境の数少ない癒し要素であった。
(ハヤト殿、水着のロゼット殿に鼻の下を伸ばす、と……)
ベルクは今回もハヤトの素行(主に女性関係)は厳しくチェックしようと心に誓った。
●
「じゃあ行ってくるぜ」
ハヤトは軽く手を振ると、わざとがっさがっさと音を立て、水場に向かって歩いていく。その後をゲルダとトーラが続く。残りの冒険者達とサチコ軍団は陣形を組み、いつでもワームを迎撃できるように待機していた。樹海をしばらく歩くと、大きな湖が見えた。
「あれが例の湖でしょうか? 綺麗な湖ですね」
トーラが言った。
「さて、大喰らいはどこにいるんだろうな。噂通りの大きさなら、すぐ見つかると思うんだが……」
油断なく湖や、その周辺を見渡す囮役の冒険者達。1分も経たぬ間に、水面が不自然に盛り上がったことに気付いた。三人が湖に目を凝らすと、何か巨大な影が、しゅるしゅると岸に近づいてくる……。
ザパッ!
湖から飛び出してきたのは、アナコンダすら比較にならないほどの巨体を誇る、恐ろしく巨大な蛇だった。
「「「いたー!」」」
キシャアアアアアア!!
雄たけびを上げる緑色の巨大蛇。こいつこそが、古ゴブリン達が恐れた大型クリーパー、『大喰らい』に違いない。
「こいつが『大喰らい』か……! さっさと他の連中のとこに誘導しねえとな!」
アオオオオオオオオン!
ハヤトは狼の鳴き声を真似、ワームを挑発した。このサイズだ。肉食哺乳類なんてネズミみたいなものだろう。
「出ましたね! こっちを見てください!」
ゲルダはさっそく大喰らいに闘気を浴びせた。すると、ワームはギロリとゲルダを睨み付け、チロチロと舌を出す。
(手ごたえありです!)
「この湖はわたしが貰います! あなたの居場所はもうありません!! 今日からここはトーラ湖です!」
トーラは勇ましく宣言し、光の剣からエーテルの矢をワームにおでこに飛ばした。自分は本気だというアピールだ。
ぎゅおおおおおおおおお!
ワームが大きく息を吸い込む。すると、強烈な突風がゲルダを襲った。
「このままでは、吸い込まれます……!」
ゲルダは咄嗟に横っ飛びし、突風の範囲外へと逃れた。着地の瞬間に脚がぐきっと変な音をたてたが、背に腹は代えられない。走るのにも特に支障はなかった。
「こいつ、俺達を食うつもりか! いやまあ、当然なんだが! 喰われる前に急いで戻るぞ!」
囮役の三人は後ろから吸い込み攻撃を連発しながら突進してくるワームの攻撃を必死にかわしながら、仲間達の待機している場所まで走る! ワームは樹海の木々をマッチ棒みたいにへし折りながら、三人を執念深く追ってきた。そして……作戦通り、三人は水場から百メートルほど離れた場所まで『大喰らい』を誘導することに成功した。
●
「でかっ! ようし、それじゃあおじさん頑張っちゃおうかな! 皆ーっふんばれよーっ!」
アラン・スミシーの全身から青白いエーテルの炎が拡散していく。しっかり陣形を整える準備があったため、囮役の三人と、後方で待機していたメンバー以外は全員がアランの青い炎の恩恵に預かることができた。
「なるほど、こいつがそうか! 噂通りの化け物だ!」
ベルクはワームの頭に駆け寄ると、眼球を狙って短剣を突き立てた。黒い刃がベルクの頭より大きい目玉に深々と突き刺さり、ごぽり、と血のような液体がこぼれる。
(硬い! 一撃では破壊できんか!)
「こいつが、大喰らいか……!」
水着姿のナハティガル=ラーは木の上から飛び降り、ワームの頭を狙って短剣を突き立てた。必殺の暗殺剣が炸裂し、ワームは大きく身をよじった。
「なるほど、こいつは大物だ」
(眼球を攻撃されても動きに変化がない。脳や感覚器官は飾りか?)
後方待機していたヨル・スレイマンはワームのダメージを観察しながら、指でコインを弾いた。エーテルを纏ったコインはワームへと飛んでいき、鱗を貫いた。
「でかいな……かば焼きにしたら十年ぐらいは食えそうだ」
ナハシュはワーム目掛けて短弓を発射した。的がデカい分、攻撃は当て放題だ。
「サチコの魔法を頼りにするわ。行くわよ」
「ええ、『消えない炎』ならこのクリーパーにも恐らく有効でしょう」
ロゼットはサチコとその親衛隊たちと共に、ワームの退路――すなわち湖側に陣取った。サチコはワームに『消えない炎』を浴びせる。サチコが生み出した魔法の炎はワームの体で燃え広がり、ワームの体を蝕んでいく。親衛隊たちはワームに銛で集中砲火を浴びせた。
「すごいな……蛇というのはここまで育つのか」
レピドはワームの顔に向かって跳躍すると、三連撃を浴びせた。神材で作られた短刀が三度閃き、ワームの背に血の華が咲いた。
「ここまで大きくなるのに、どれほどの月日を必要としたのでしょうか。申し訳ありませんが、サチコ様の為、排除させていただきます」
レティシア・レインフィールはワームに誓銀の月を向けると、魔弾を放った。エーテルの弾丸はワームの顔に命中し、小さな穴(といっても人間の頭ほどの大きさだが)が空いた。
「まだまだ元気みたいだな……」
ギャメルはワームには近づかず、少し離れた位置でワームの様子を観測することに専念していた。今は陸で戦っているが、このワームは本来は水棲のようだ。追い詰められれば、水場に舞い戻る可能性もある。
「物理と魔法……どちらか効果的か調べてみるか」
テテリカは蛇の体当たりに巻き込まれぬよう距離を保ちながら、矢を放つ。とりあえず物理の矢を当ててみたが、あまりに巨大すぎるのか、大したダメージはなさそうだ。
(ただの熊とかなら一撃で仕留められるはずなんだが)
「見事な巨体なのだ。だが、容赦はできないのだ。『厄災廻呪』」
ストレガの手にした教鞭から不可視の呪詛が迸る。呪いのエーテルはワームの巨体にぴったりとまとわりつき、ワームの纏ったエーテルをかき乱した。
「これを試すのにふさわしい相手です」
ヴィルヘルミナはワームから少し距離を取り、白銀の巨剣を一閃した。巨剣『月喰い』。初めから対人用ではなく人外を斬るために作られた必殺の刃は、エーテルで圧縮された剣圧だけで『大喰らい』の鱗を深々と切り裂いた。
「大物だな! いくぞ!」
リューイ=ヴァレンゴルトは速度を重視した斬撃をワームの胴に打ち込んだ。神材製の剣はワームの分厚い鱗を切り裂き、胴に裂け目を入れた。
「大型クリーパーがいては拠点どころか探索もままなりませんものね。被害が出る前に倒してしまわないと」
スィーリーンは杖から光の鎖を放ち、ワームの胴に巻き付けた。エーテルの鎖に縛られたワームはバタバタともがき、殺気をまき散らしている。
●
キシャアアアアアアア!!
ワームは大きく身をよじり、森の木をなぎ倒しながら暴れた。あまりにも巨大なせいで、ただ動かれるだけで冒険者達は命がけだ。突進に巻き込まれたハヤト、トーラ、ゲルダ、レピド、リューイの内、リューイだけが弾き飛ばされ、木に激突した。木はめきめきと音を立ててへし折れ、後ろへと倒れる。
「大丈夫だ、まだ動ける」
片手を上げて無事を仲間達にアピールするリューイ。直撃を受ける瞬間にエーテルで全身を硬化させていたため、骨は何とか折れていない。しかし、冒険者達が被害状況を確認する暇も与えず、ワームは口を大きく開いた。
「何か技を出すつもりのようです! お気を付けて!」
レティシアが大声で叫んだ。その直後、ワームはゲルダ目掛けて吸い込む突風を放った。
「くっ……!」
竜巻のように直線状に伸びた突風をゲルダは側転で回避した。突風はゲルダの後方まで優に数十メートル以上伸びたが、幸い、ゲルダが突風を警戒して位置取りをしていたため、他の被害も出なかった。
●
「古ゴブリンが引っ越しするわけだ。こんなのが近くにいたんじゃ、おちおち寝られもしねえ。もしかすると、こいつも樹海の奥から来たのかもな……」
特大ワームの暴れっぷりに、ギャメルはため息を吐いた。
「こいつは魔法攻撃に弱いようだ。可能な者は魔法攻撃を仕掛けてくれ!」
テテリカは自分で確かめた敵の弱点の情報を仲間達に知らせた。
キシャアアアアアア!!
大暴れし、サウゼル大樹海調査隊と激闘を繰り広げる『大喰らい』。クリーパーがあまりに巨大過ぎるため、周りにあった木々や石は戦闘の余波でことごとく吹き飛び、あっという間に辺りは更地と化していく。その恐るべき姿はまさに天災だ。
ゴアアアアアア!!
ゲルダのエーテルを弾き飛ばし、執着心を振り切った『大喰らい』は、冒険者達を威嚇するように首をもたげた後、薙ぎ払うようにジグザグに森を這った。この蹂躙走法は多数の冒険者を巻き込み、回避し損ねたヴィルヘルミナとレティシア、リューイが弾き飛ばされた。さらに、大きく息を吸い込んだ大喰らいは、アランとヨルを飲み込んでしまった。
「ヨルとアランが喰われたぞ!? この野郎、吐き出しやがれ!」
「あの姿勢では眼球は攻撃できんな」
ハヤトは独楽のように回転しながらワームに向かってジャンプした。それ違いざまに蹴撃と斬撃を浴びせ、大木のように太い胴に傷を入れる。
「シーザーロアが解かれました! 皆様、注意を!」
ゲルダは位置取りに気を付けつつ、再びワームに闘気を浴びせた。しかし、今度はワームはゲルダのエーテルを弾き飛ばしてしまった。
「もう一度だ!」
ナハティガルは茂みから飛び出すと、ワームの胴に向けて暗殺剣を叩きこんだ。図体でかい分、ワームは周囲への警戒が甘い。この乱戦状態ならば一度身を隠せば、容易に不意打ちが可能だ。
「この野郎! ヨルを返しやがれ!」
ナハシュはヨルがいそうな方向に向け、エーテルを飛ばした。すると、ナハシュの立っていた位置にヨルが出現し、代わりにナハシュが消えた。
「ナハシュ! プリズムシャドウを使ったのか!」
驚いたヨルはすかさず一度銀貨で攻撃した箇所に二度目の銀貨を叩きこんだ。さらに熱源探知でクリーパーを凝視すると、体内に人型の熱源が確認できた。
「吐くんだ。ナハシュは返してもらう」
(こいつの胴に穴を開け、出口を作る!)
「このクリーパーの中はほぼ空洞だ。すぐこいつを倒せば食われた者達も助かる……というか、アランは内側から食い破る準備をしている」
「そうか、ならとりあえず安心だな」
レピドは頷くと、ワームの胴を短刀で薙いだ。
「このお! 吐き出してください!」
トーラは二本の光の剣にエーテルを注ぎ込む。長剣のように伸びた光の剣を交差させて切り刻み、ワームの腹に穴をこじ開けようとした。
「サイドヒールをかけるわ!」
ロゼットはリューイへと回復魔法をかけた。敵はたった一体だが、攻撃範囲は非常に広い。飛び抜けて動きの速いハヤト、トーラ、ナハティガル、ベルク、ゲルダ以外の冒険者は数秒おきに誰かしら吹っ飛ばされている。回復の手を休めるわけには行かない。
「ヨル様とアラン様が……! 決着を急ぐ必要がありますね。どうかご無事で」
レティシアは被害状況を立て直すべくワームに少しだけ近づくと、癒しの波動を広範囲に発散した。
「吐き出しなさい」
サチコは爆炎をワームへと浴びせた。すでに『消えない炎』は使い果たしている。サチコ自身はまだ無傷だが、悠長に戦っている余裕はなさそうだ。サチコの親衛隊はサチコに続き、弓矢の攻撃を浴びせかけた。
「タフだな。この図体ならば当然だが」
(インベイシブアローはまだ温存しておこう)
テテリカは呟き、魔力を籠めた矢をワームにお見舞いした。
「輪切りになるまで切り刻みます」
ヴィルヘルミナは再び神材の塊を振りかぶり、垂直に振り下ろした。エーテルのこもった剣圧はまっすぐに数メートル飛び、ワームの顔面に一際大きな傷を刻んだ。
「よっと」
リューイはワームがなぎ倒した木の残骸を器用に避け、胴に一太刀入れた。
「とんでもない生命力なのだ。なんとかここで倒し切りたい」
ストレガは敵の装甲を脆くするエーテルをワームへと浴びせかける。ヒーラーがフル稼働である以上、長期戦はこちらに不利だ。ここは防御よりも火力を優先させるべきだと判断した。
「今は移動阻害の魔法が効いています。早めに決着をつけましょう」
スィーリーンは巨大な光の波動を放ち、ワームの胴を貫いた。
シャアアアアア!!
ワームはトーラに突進した後、方向転換し、尻尾の回転に巻き込むようにしてヴィルヘルミナを轢いた。トーラはひょいとジャンプし、ワームの突進を飛び越えたので無傷だった。移動を終えて一瞬静止したワームは大きく息を吸い込んだ。また突風が吹き荒れ、冒険者達が引き寄せられる。今度はストレガとヴィルヘルミナが犠牲になった。
●
「!?」
アラン、ストレガ、ヴィルヘルミナ、そしてヨルと入れ替わったナハシュを飲み込んだまま暴れていた大喰らいだったが、一瞬、ぴたりと動きを止めた。
ズバシュッ!!
その直後、エーテルの剣で内側からワームの腹を突き破ったヴィルヘルミナがワームの腹から飛び出してきた。ナハシュ、ストレガ、アランも彼女に引き続き、ワームの腹から転がり出てきた。
「いやあ、クソになるかと思ったぜ! お、ヨルも無事だな! おーい!」
「無事だったか。ある意味水着でよかったね」
クリーパーの血と体液で影法師のようになったナハシュが手を振ると、ヨルは微笑んだ。
「いやあ、なかなかの不思議体験だったよ。長生きはしてみるもんだ」
「スキルが使えないのはなかなか難儀だったのだ」
アランとストレガは仲間達を安心させようと笑顔を向けた。体内に囚われた者達は内側から脱出しようと攻撃を繰り返していたらしい。
「……」
さすがに腹を食い破られたのは堪えたのか、クリーパーは虚空を見つめたままぴくぴくと痙攣している。冒険者達はここぞとばかりに、ワームに集中砲火を浴びせた。
「みんな無事で何より。ここだな!」
リューイは身動きの取れない大喰らいにと飛びかかると、稲妻の如き一撃で額を刺し貫いた。
●
シュロロロロロロロ!!
ほとんど更地となった樹海で冒険者と激闘を続けていた【大喰らい』だったが、突然、くるりと頭の向きを変えた。ベルクに片目を潰された『大喰らい』の視線の先には、最初にいた湖がある……。
「あいつ、湖に逃げる気だ! ここまで来て逃がすかよ!」
ギャメルは天に祈りを捧げ、ワームの逃げ道を塞ぐように雷雲を設置した。
「こんにゃろ、逃がすか!」
ハヤトは逃げるワームの背に飛び乗り、縦回転しながらワームの目玉に斬撃を浴びせた。
「逃がすものか! 我は水着だが、ほとんどの者は陸戦装備だ!」
ベルクもワームの頭によじ登り、残った眼球を黒い刃で刺し貫く。両目を潰されたワームは一際大きな叫び声を上げた。
ワームが退却を始めたことは冒険者達にとっては好機だった。ストレガの『足絡之呪』やスィーリーンのアーケインストリームで動きを鈍ったワームがのろのろと水場に戻ろうとする所を、冒険者達は容赦なく攻撃していく。しかしそれでも、ワームは湖の岸にまで辿り着いた。ワームは冒険者達を振り切り、ぬるりと水中に飛び込んだ。
「まずい、逃げられるぞ! ……ん?」
水中まで追撃しようとしたナハティガル(水着)は瞠目した。
「……」
『大喰らい』は湖にぷかぷかと浮き、活動を停止していた。サチコの『消えない炎』とテテリカの『インベイシブアロー』による蝕みのダメージで、ちょうど限界を迎えたのだ。
「死んでる、みたいだな。たぶん、もう限界だったんだ」
恐る恐るワームの脈(?)を取ったギャメルが言った。
こうして、古ゴブリン達が恐れた大型クリーパー『大喰らい』はサウゼル大樹海調査隊との戦いに敗れ、その長い生涯を終えた。
●
「さ、みんな、まずは怪我を治そうか! おじさん張り切っちゃうぞ!」
「激闘でしたね。怪我のある方は傷を見せてくださいませ」
「いやー! 勝ててよかったな! 何人か食われた時はさすがにヤバイと思ったぜ!」
「本当にね。これはこれで貴重な体験ではあったけど」
「誰か湖から水を汲んできてくれるかしら。傷口を洗い流すのに使いたいの」
ヒーラー達は手分けし、大急ぎで負傷者の手当に努めた。幸い今回はヒーラーの人数も多かったおかげか、重体となる者はいなかった。冒険者達はレピドが持参したロープでワームの死体を引っ張り(かなりの重労働だったことは言うまでもない)、岸まで引き揚げた。
「さて、ここからが大変だぞ。さっさとこいつを解体しないと。何しろこの巨体だ。そのままでは拠点まで運び込むのも難しいだろう」
弓を仕舞い、テテリカが言った。
「うむ。大型クリーパーの遺体など、そうそう手に入るものではない。捨て値で捌いたとしてもかなり高額で売れるだろう。正直、私も少し分けてほしいのだ。特にこいつの内臓、スキルの発動を妨害する仕組みについて解明したい」
ストレガも包丁を取り出し、解体作業に従事する気満々だ。
「強力なクリーパーとなれば良い素材にもなりそうですね。私も気になります」
職人の血が騒ぐのか、スィーリーンもそわそわしていた。とりあえず牙や鱗と皮だけでも、頑丈なバッグやアクセサリーぐらいは作れるだろう。
「せっかく水着で来たんだ。他にも素材にできそうなものがないか湖を見てくる」
「では、私の親衛隊達も同行させましょう。危険な生物はもういないと思いますが、未開地の湖なので」
レピドはサチコの親衛隊達と共に、素材を求めて湖へと飛び込んでいった。
「とりあえず湖で血を洗い流しましょうか。みんな、血と汗でドロドロだし」
ロゼットが微笑むと、皆は頷いた。
こうして、『大喰らい』を仕留めた冒険者達はその死体を素材として持ち帰り、ゴールディの人々やスポンサーたちを沸かせた。湖の近くにあった古ゴブリンの住居跡も新しい拠点と整備すれば、次はさらに奥へと進めるだろう。『始まりの地』を求めるサウゼル大樹海調査隊の冒険は、これからも続いていくのである……。
マスターコメント
イベントシナリオ難しい 報酬:多い17 / 8〜25人
2023年07月17日 19時16分23秒 公開
参加者
相談掲示板
ヒーラーのギャメルだぜ。みんな、よろしくー! 吸い込みが厄介だな。 でも逆に、スキルなしで高火力が出せる人ならピンチをチャンスに変えられるのかも? 特に、敵の逃亡後も自分は移動せずに攻撃を続けられるってのは、勝敗を左右するかもしんない。 とはいえオレは火力もないし、ヒールもできなくなっちまうし、吸い込まれないように気をつけて戦う! メイルシュトロームもイヤなスキルだぜ! 【澱嵐】オブジェクトは相殺できる、みたいなルールがあったんで確認してきた。 この文章だと、同じ名前のスキルじゃねぇと相殺できねぇってことかも? 誰かこの辺りのルールに詳しい人いるかな? 引用 召喚者が敵対している【アーケイン】が重ねて設置された場合、範囲が重なっている空間においては互いに消滅する。 召喚者が敵対している【グラビティ】が重ねて設置された場合、範囲が重なっている空間においては互いに消滅する。
ヴィルヘルミナです。今回はよろしくお願いします。 今回の敵は大型のクリーパーとの事で相応に強敵ですね。 接近戦を挑めば移動の余波でダメージを負う様なので、気にせず挑むか飛び道具を持つかは個々の判断次第ですか。 吸いこみは吸いこまれたまま水中に逃げられると相当困りそうですね。 メイルシュトロームも考えると、吸い込まれたまま逃げられたら力尽きる前に内側から止めを刺すくらいのつもりでいければとは。 【魔法の壁】を遮蔽にした場合、吸い込みは防げるのか一緒に呑まれるのか。 できれば湖に逃げ込まれる前に倒すなり出来れば理想ですが、難しそうです。 体格相応にしぶとそうですし、【吹飛】も相手の重量を考えると無理そうなので。 抵抗について記載がないので移動低下や、【澱嵐】で鈍らせるくらいは出来るかもしれません。 向こうの移動が8と高いので気休め程度になる可能性も否定できませんが。 >オブジェクトの相殺 【澱嵐】として同じ分類でも、【アーケイン】同士や【グラビティ】同士でも重なっている部分しか消せない感じみたいですね。 メイルシュトロームは【アーケイン】とも【グラビティ】ともされていないので、個人的には無理に思えます。
シーフのトーラです。 よろしくお願いします。 大型クリーパー相手なので気を抜かないように頑張りましょう! 巨体による攻撃力や防御力、生命力も驚異ですが、生命力が半減すると湖に逃亡するのが厄介ですね……。 澱嵐等で逃走を防ぐのも限界がありますし、水場に近寄った相手を襲う習性があるなら、シーフが囮になって湖から遠くへ誘い出した上で移動阻害や束縛、澱嵐で移動を制限してその間に攻撃を集中するのはどうでしょうか? その場合、わたしは囮か縛糸刃での束縛が出来ます。
ウォーリアのリューイだ。 俺は向き不向きとして、普通に地上での戦いに集中するつもりだが。 追い詰められて湖に戻られてしまった場合も、対応できる人が何人かはいてくれると安心は出来る。 水中戦の用意をしていた人がほとんどいなくて失敗は避けたい。 戦いに絶対はない、という用心は持っておきたいな。
キャスターのスィーリーンと申します。よろしくお願いします。 湖から誘い出せれば戦いやすそうですけれど、 水辺での戦闘となった時の為にウォーターウォークは用意していきますね。 他、魔法での攻撃と移動阻害や束縛などのBS付与を主に考えております。
ヒーラーのロゼットよ。 陸上で倒せれば理想的ではあるけど、簡単ではなさそう。 それでも陸上で可能な限りダメージを与えておくことは、 例え水中戦になっても大きな意味があると思うわ。 行動はもう少し様子を見るけど、水中戦の準備をしておくわ。 >吸い込み 問題としては呼吸ね。私たちは水中では10ターンを超えると 窒息してしまうから、丸呑みされたまま意識を失うと危険だわ。 >水中戦 湖は水深が最大30メートルとあるから、深度も問題ね 深く潜られると、水上から攻撃するのは射程と目視の点で 難しくなるかもしれないわ。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! ヤバくなると湖に逃げ込む巨大蛇っつーのはまた厄介だな!? とりあえずは陸地で挑発して極力湖から引き離して削れるだけ削るってのが基本方針になりそーか? 誘き寄せが必要なら俺が買って出るぜ! ウォーリアの面子に誘き寄出しポイントで待機して貰ってシーザーロアで釘付けにしつつ湖への退路に移動阻害魔法を仕掛けて時間稼ぎ出来るようにして削れるだけ削るって感じはどーだ?
蛇なのかワーム(長虫)なのかお爺さんの証言と解説にずれがありますけど、そもそもクリーパーなので実際はどちらでもないのでしょうか。 水深20mを越えると通常の武器は使えなくなりますし、射撃武器や魔法の射程も-8されてしまう筈なので、出来るだけ地上で勝負を決めてしまいたいですね。 もちろん水中に逃げた場合の対策もあった方が良いと思います。 スィーリーンさんが束縛を付与するのなら、わたしも囮に回りますね。魔矢で攻撃して挑発しつつ、陸に誘い出しましょう。 シーザーロアを使う場合は、吸い込みへの対策があった方が良いと思います。吸い込まれれば執着も意味が無くなるでしょうし……。 ロゼットさんの言うように窒息の危険もありますけど、呼吸不要で対応できるでしょうか……?
呼吸不要でなく呼吸耐性でした。 解説を読んでみたら激しい行動は出来ないそうなので、戦闘中は難しそうですね…
レピド・クロサイト、シーフだ。よろしく頼む。 弓を持つか、普段通りに近接攻撃するか迷う相手だな…… 少なくとも水中対策にマーキングはしておこうかとは思った。 >呼吸耐性 以前使用したことがあるが、あれは使用後に体が上手く動かなくなる程疲労するんだ。 なので仮に助けを待つ為に使うとしてもあまりお勧めは出来ない、かも。
シーフのナハティガル=ラーだ。――今回も宜しく頼む。 >対『大喰らい』 『体力が半分以下になった場合、逃亡し、湖に逃げ込む。』とあるので、面倒なのは体力が半分以下になってからだな……。 既に言及されているように、シーザーロアが有効ならば『吸い込み』対策をしながら地上に引き付けておくのが手堅そうではあるな。 ただ『吸い込み』対策は、予備動作察知後に『射程最大20ヘクスの直線範囲から退避』する位しか思い付かんが。 念の為、水中戦の準備は各自しておいた方が良さそうだ。
ストレガなのだ。よろしくなのだ。 移動阻害の延長化で水に入られる前に倒せるように呪い付与を狙おうと思うのだ。
特に異論がないようなら、「サチコの親衛隊 5名」には水中戦にもつれ込んだ場合の備えに回ってほしいと指示をしたいんだが。 サチコも水中戦の用意をしているようだし、その方が親衛隊もやりやすいんじゃないかと。
親衛隊の方は水中戦の備えで良いと思います。 他の方に異論がなければリューイさんに指示をお願いできたら。 水中に逃げられた場合の備えは、ウォーターウォークをかけて貰えるのでしたら水上から魔矢を撃つか、深度1までであれば水中へ入っての白兵戦でしょうか。
サチコと親衛隊に水中戦の備えを頼むのは異論ないわ。 私も水中戦に入らせてもらうから、同行させてもらうわね。 ヒーラーは冒険者、親衛隊にもいるから今回は攻撃優先で、 水中に逃げ込まれた時に追撃させてもらうわ。
>【澱嵐】オブジェクト ヴィルヘルミナ、ありがと! 名前が違うし、これは相殺ムリそうだな。 冒険者側のアーケインとかをメイルシュトロームで一気に消されちまうってことがねぇのが救いだな! >湖への逃走 体力が半分以下になると湖に逃げるなら、与えるダメージを上手く調節すりゃ 逃げ出すタイミングをコントロールできそうだな。 普通の戦いだと攻撃強化のスキルは一番最初のラウンドにかけることが多いんだが、 この敵に関しては途中でかけるのも悪くなさそうだな。 逆に、使える回数が少ない高火力スキルを体力半分になる前に使うのは、イマイチかも? 敵の体力を正確に見極めるのって難しそうだけど、だいたいならわかるかな? ちょっと試してみる。
ごきげんよう。 ヒーラーのレティシア・レインフィールと申します。 皆様、よろしくお願い致します。 >湖への逃走 ギャメル様の仰るようにダメージ調整を行い 逃走される前に一気に高火力で攻める事が出来ましたら理想的でございますね。 体力管理として思い付くものですと高レベルの戦術眼持ちの方に敵の様子を観察して頂き 予め共有した合図を送って頂くのは如何でしょうか? 無論、確実性はございませんので戦術眼では対応が出来なかった場合や 合図役が戦闘不能や吸い込まれている場合に備える必要もございますけれど。 >吸い込み 脱出方法について検討していたのですけれど、体を突き破る事で脱出が可能なのでしたら 使用される前に咥内や喉にダメージもとい負傷を与える事による 無効化や軽減は難しいでしょうか……? ただ水中でも問題なく戦闘が可能な事から 普通の生物のように呼吸が不可能な状態にしても効果が無い可能性はございますけれど。
戦術眼の説明は 「戦場において、より有利な策を見出す視点・適性を有している。」 敵の状態を把握するってスキルではないな。
ウォーリアのゲルダです。よろしくお願いしますね。 >方針 体力を調整する方針、ですね! シーザーロアで敵を惹きつける――となると、飲み込み対策のために回避を上げておいた方がよさそうでしょうか。わたしの方で対応可能かと思いますので、やってみますね! >戦術眼 『より有利な策を見出す視点』の中には、引き際や攻めるタイミングを見極める部分も含まれていますし、書いていることよりもかなり柔軟に役に立つスキルですので、敵の生命の確認は戦術眼持ちの方が実施する方針で問題ないと思います。
シーフのナハシュだ。今回はよろしく。 基本方針は今上がってる湖からなるべく引きはなし地上で戦う形で賛成だ。 いざ水中に行かれたとしても対策を立てておくことも異論ねえぜ。 >吸い込みについて 喉や咥内に負傷を与えるのはありかもしれねえと思ったな。吸い込みに支障が出るくらいだからかなりでかい一撃が必要な気もする。 後は突き破れば脱出できるんなら、突き破りやすいヶ所、もしくは外側から吸い込まれた奴らがいる場所が判ればいいんだよな?予め吸い込まれそうな奴、若しくはプリズムシャドウを使える奴にマーキングしておけば、吸い込まれた奴らが敵のどのあたりにいるかがわかるんじゃねえの。 その上で外から内に向かって突き破ることが出来れば、その穴を維持してりゃ以降吸い込まれても脱出しやすくなる気がするがどうだろな。やるならプリズムシャドウを持って行っても良いぜ。
ヒーラーのヨル・スレイマン。宜しくね。 湖からなるべく引き離して戦う方針で了解。ダメージを調整するのもいい案だと思う。 俺もバフ系はインフィニティロアを含めて、敵生命半分時に切るように考えておこうかな。 ダメージ計算は戦術眼を持ってる人がやってくれるなら心強い。俺も役割的には一応見ておこうと思う。 あとはできるだけ移動力を削ぐための招霊呪怨縛あたりを持っていこうかと考えているよ。
>敵の体力観察 オレの場合は、洞察と魔法知識でクリーパーの様子やエーテルの消耗具合を判別するプレイングになってるぜ。 戦術眼は覚えてねぇけど、こういう時にも使えそうなスキルだよな! どの汎用スキルが最適かは未知数だし、複数人で観察した方が良さげかも。 ヨルも見てくれるんなら心強いぜ! >逃走後 敵と湖との最短経路上に祈雷3を設置して嫌がらせの予定! スキルの場所指定は1ヘクスなんだけど、オブジェクト自体のサイズは直径3ヘクスある。 祈雷のダメージ発動にしても、3ヘクスを迂回するにしても、逃げる敵を邪魔できるぜ! ……その間オレは行動できねぇって弱点もあるから、せめて飲み込まれにくい位置で発動しとく。
っと、個人のを書いてなかったな! どのみち体内の奴と入れ替わる為のプリズムシャドウは持って行く予定でいる。 対象は今の所陸上で一番飲み込まれる可能性が高くかつ不味そうなシーザーロア使う奴を最優先に、大丈夫そうなら移動阻害系を使う奴にしておくつもりだ。 後は複体分身で分身に体内の奴と入れ替わる形にして、消えるまでひたすら内側から攻撃するようにするか、リアクションで脱出するようにするかは考え中だな。 どのみち引き寄せポイントで待ち伏せるってんならそっちで待機する形になると思う。
いよいよ明日出発ですね。皆様、よろしくお願いします。
テテリカ。シューター。よろしく頼む。 弓で攻撃に参加する。 敵の体力半分以下でインベイシブアローで【スリップ】の付与を狙う。 水中戦の用意もしてある。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 とりあえず攪乱と攻撃役の支援に動こうと思う。