明日に羽ばたく翼となりて
真柄 葉
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シナリオID:2114
オープニング
今日も冒険者達で賑わうリブラネスタ冒険者ギルド。
様々な依頼が絶えず持ち込まれ、冒険者達が解決に乗り出す。
そんな日常の光景を頼もしげに見つめながら、『依頼者』はギルドの奥へと足を踏み入れる。
「最近よくお越しになりますね?」
「おや、邪魔だったかい」
「いえ、そういう訳ではないのですが」
『依頼者』ヴィルジニア・テレーザ・セルッティを応接室に通したホリー・アッテンボローは、お茶を出しつつ正面へと座った。
ホリーは台帳を手に、ヴィルジニアに来訪の用件を聞く。
「――――冒険者を講師として招きたい、ですか」
「ああ、この子達に色々と教えてもらいたくてね」
そう言うとヴィルジニアは一枚の紙をテーブルに滑らせた。
「これは……名簿ですね。孤児院? なるほど、孤児院の子供達を対象に勉強会を開くので講師として冒険者達を招きたいと、そういう事ですか」
「ああ、そういう事さね。話が早くて助かるよ」
「かしこまりました。それでは『勉強会の講師募集』という事で依頼書の作成に……あぁ、そういえば」
「うん?」
「あ、いえ。数人の冒険者の方から、勉強会を開きたいという要望があったのを思い出しまして」
「へぇ、それは丁度いいね。よかったら紹介してもらえるかい」
「いえ、それが……」
言い淀んだホリーに、ヴィルジニアは首をかしげる。
「ヒルルクさんにこちらの世界の事を知ってもらうために勉強会をしたいとの事なんです。それで、どこかいい場所はないかと相談が来ていたんです」
「征竜の巫女が勉強を……?」
経緯を説明するホリーに、ヴィルジニアは訝しむ。
征竜の巫女が世界情勢を知ろうとしている?
一体何のために……。今までほとんど世界情勢に首を突っ込んでこなかった極北勢が何かアクションを起こすという事かい? いや、それは考えにくい。あれ等は世捨て人だ。今更、こちらの世界に干渉しようなんてことは考えないだろう。
それじゃなぜ……。ただ単に征竜の巫女が勉学に目覚めた? あの信仰の塊がそんな事考えるだろうか…………まさか、征竜本人が出張ってくるっていう話じゃないだろうね。
「……ホリー。征竜の巫女の勉強会、アタシが場所を提供しても構わないかい」
「え?」
突然の申し出に、ホリーは目を瞬かせた。
「子供達に勉強を教えている場所がある。そこを征竜の巫女の勉強会に提供しようと思うが、どうだい」
「……確かに場所を探してはいましたが」
「征竜の巫女も一人で学ぶより、子供達と一緒の方がやる気も出るんじゃないかい。それに子供達の前なら暴れたりしないだろう」
「そうですね。子供達と一緒の方がやる気……暴れる?」
どういう事かと問いかけようとしたホリーに、ヴィルジニアは小さく笑うと話を続ける。
「折角だから学びの機会を得たい冒険者達も招待させてもらおうか。子供達にも冒険者と並んで学ぶ機会を与えてみたいし、征竜の巫女も知り合いが一緒に学ぶとなれば勉強も苦にはならないだろう。
それに、最近ホムンクルスの冒険者登録が増えているそうじゃないか。彼等も学びの機会を得る必要があるんじゃないのかい?」
「それは……確かに冒険者の知識レベルを上げることは我々も望むところですが……何か企んでます?」
「おやおや、心外だねぇ。アタシはただ人材育成をしているだけさね。将来、アタシの元で働いてくれる子供達をね」
「セルッティ商会の為の人材育成ですか……ご存知だとは思いますが、冒険者の個人的勧誘はご法度ですよ?」
「はは、そんなつもりは毛頭ないさね」
薄く微笑んでいるヴィルジニアを、ホリーはしばらく見つめる。
「…………わかりました、信じます。それでは、改めて依頼の手配を進めますね」
「ああ、よろしく頼むよ」
●
岩ばかりの山肌から視線を移せば、眼下にローレラウラ湖が一望できる。
「……やっと決めたの」
そんな湖の絶景が望めるぼろ小屋の前で、旅装を整えたヒルルクにビ=ネクが話しかけた。
「うん、皆と約束したから。確かに勉強はちょっと苦手だけど、色々と知らなきゃなっていうのは感じたし、嘘をつかれないようにするための勉強だって言われたら、やっぱり必要なのかなって思ったから」
「……」
「な、なによ。わたしなにか変なこと言った?」
なぜか驚いたように見つめてくるビ=ネクに、ヒルルクは不安げに問いかける。
「別に」
「あぁ! その眼、わたしなんかに勉強できるはずないと思ってる!?」
「……そんなこと、一言も言って――」
「わたしだってやればできるんだから! 勉強沢山して、将来はロスガリア一の学者さんになってるかもしれないわよ!」
「……そ、がんばってね」
「軽っ! って、信じてないわね。ぬぬ……こうなったら、本気で――」
「はい、これ。眠くなったら噛むと、いいよ。スッキリ目が覚めるから。教えてもらう人に怒られるの、嫌でしょ」
「えっ、いいの? ありがとう! そうなのよ、よくわからないお話聞いてると眠く……って、ちがーう!」
手渡された包みをバチーンと地面に叩きつけた……ら、ビ=ネクの悲しそうな顔が見えたので急いで拾うヒルルク。
「と、とにかく、皆と約束したし、行ってくるわ。立派な学者さんになっても驚かないでよね!」
「……うん、驚かない。興味ないし。それより街の近くまで、送らなくていい?」
「興味ないって、ひどく……え? あ、うん、大丈夫。ありがとうね。それよりも、あの子の事お願い」
ヒルルクはビ=ネクにそう言うと、小屋の向こうに見える小さな泉へ視線を移す。そこにはヒルルクと共にこの場所へやってきたマーメイドの少女が身を隠していた。
「……わかってる。でも、交換条件の約束、忘れないでね」
「ええ、見つかるかはわからないけど、探してみるわ」
マーメイドの少女を見ている代わりに提示した条件を忘れるなと釘を刺すビ=ネクに、ヒルルクはこくりと頷く。
「それじゃ、わたしは行くわね。エイヲも元気でね」
頬を寄せてくる巨大な双頭を最後に撫でてやり、ヒルルクは山を下っていった――――。
様々な依頼が絶えず持ち込まれ、冒険者達が解決に乗り出す。
そんな日常の光景を頼もしげに見つめながら、『依頼者』はギルドの奥へと足を踏み入れる。
「最近よくお越しになりますね?」
「おや、邪魔だったかい」
「いえ、そういう訳ではないのですが」
『依頼者』ヴィルジニア・テレーザ・セルッティを応接室に通したホリー・アッテンボローは、お茶を出しつつ正面へと座った。
ホリーは台帳を手に、ヴィルジニアに来訪の用件を聞く。
「――――冒険者を講師として招きたい、ですか」
「ああ、この子達に色々と教えてもらいたくてね」
そう言うとヴィルジニアは一枚の紙をテーブルに滑らせた。
「これは……名簿ですね。孤児院? なるほど、孤児院の子供達を対象に勉強会を開くので講師として冒険者達を招きたいと、そういう事ですか」
「ああ、そういう事さね。話が早くて助かるよ」
「かしこまりました。それでは『勉強会の講師募集』という事で依頼書の作成に……あぁ、そういえば」
「うん?」
「あ、いえ。数人の冒険者の方から、勉強会を開きたいという要望があったのを思い出しまして」
「へぇ、それは丁度いいね。よかったら紹介してもらえるかい」
「いえ、それが……」
言い淀んだホリーに、ヴィルジニアは首をかしげる。
「ヒルルクさんにこちらの世界の事を知ってもらうために勉強会をしたいとの事なんです。それで、どこかいい場所はないかと相談が来ていたんです」
「征竜の巫女が勉強を……?」
経緯を説明するホリーに、ヴィルジニアは訝しむ。
征竜の巫女が世界情勢を知ろうとしている?
一体何のために……。今までほとんど世界情勢に首を突っ込んでこなかった極北勢が何かアクションを起こすという事かい? いや、それは考えにくい。あれ等は世捨て人だ。今更、こちらの世界に干渉しようなんてことは考えないだろう。
それじゃなぜ……。ただ単に征竜の巫女が勉学に目覚めた? あの信仰の塊がそんな事考えるだろうか…………まさか、征竜本人が出張ってくるっていう話じゃないだろうね。
「……ホリー。征竜の巫女の勉強会、アタシが場所を提供しても構わないかい」
「え?」
突然の申し出に、ホリーは目を瞬かせた。
「子供達に勉強を教えている場所がある。そこを征竜の巫女の勉強会に提供しようと思うが、どうだい」
「……確かに場所を探してはいましたが」
「征竜の巫女も一人で学ぶより、子供達と一緒の方がやる気も出るんじゃないかい。それに子供達の前なら暴れたりしないだろう」
「そうですね。子供達と一緒の方がやる気……暴れる?」
どういう事かと問いかけようとしたホリーに、ヴィルジニアは小さく笑うと話を続ける。
「折角だから学びの機会を得たい冒険者達も招待させてもらおうか。子供達にも冒険者と並んで学ぶ機会を与えてみたいし、征竜の巫女も知り合いが一緒に学ぶとなれば勉強も苦にはならないだろう。
それに、最近ホムンクルスの冒険者登録が増えているそうじゃないか。彼等も学びの機会を得る必要があるんじゃないのかい?」
「それは……確かに冒険者の知識レベルを上げることは我々も望むところですが……何か企んでます?」
「おやおや、心外だねぇ。アタシはただ人材育成をしているだけさね。将来、アタシの元で働いてくれる子供達をね」
「セルッティ商会の為の人材育成ですか……ご存知だとは思いますが、冒険者の個人的勧誘はご法度ですよ?」
「はは、そんなつもりは毛頭ないさね」
薄く微笑んでいるヴィルジニアを、ホリーはしばらく見つめる。
「…………わかりました、信じます。それでは、改めて依頼の手配を進めますね」
「ああ、よろしく頼むよ」
●
岩ばかりの山肌から視線を移せば、眼下にローレラウラ湖が一望できる。
「……やっと決めたの」
そんな湖の絶景が望めるぼろ小屋の前で、旅装を整えたヒルルクにビ=ネクが話しかけた。
「うん、皆と約束したから。確かに勉強はちょっと苦手だけど、色々と知らなきゃなっていうのは感じたし、嘘をつかれないようにするための勉強だって言われたら、やっぱり必要なのかなって思ったから」
「……」
「な、なによ。わたしなにか変なこと言った?」
なぜか驚いたように見つめてくるビ=ネクに、ヒルルクは不安げに問いかける。
「別に」
「あぁ! その眼、わたしなんかに勉強できるはずないと思ってる!?」
「……そんなこと、一言も言って――」
「わたしだってやればできるんだから! 勉強沢山して、将来はロスガリア一の学者さんになってるかもしれないわよ!」
「……そ、がんばってね」
「軽っ! って、信じてないわね。ぬぬ……こうなったら、本気で――」
「はい、これ。眠くなったら噛むと、いいよ。スッキリ目が覚めるから。教えてもらう人に怒られるの、嫌でしょ」
「えっ、いいの? ありがとう! そうなのよ、よくわからないお話聞いてると眠く……って、ちがーう!」
手渡された包みをバチーンと地面に叩きつけた……ら、ビ=ネクの悲しそうな顔が見えたので急いで拾うヒルルク。
「と、とにかく、皆と約束したし、行ってくるわ。立派な学者さんになっても驚かないでよね!」
「……うん、驚かない。興味ないし。それより街の近くまで、送らなくていい?」
「興味ないって、ひどく……え? あ、うん、大丈夫。ありがとうね。それよりも、あの子の事お願い」
ヒルルクはビ=ネクにそう言うと、小屋の向こうに見える小さな泉へ視線を移す。そこにはヒルルクと共にこの場所へやってきたマーメイドの少女が身を隠していた。
「……わかってる。でも、交換条件の約束、忘れないでね」
「ええ、見つかるかはわからないけど、探してみるわ」
マーメイドの少女を見ている代わりに提示した条件を忘れるなと釘を刺すビ=ネクに、ヒルルクはこくりと頷く。
「それじゃ、わたしは行くわね。エイヲも元気でね」
頬を寄せてくる巨大な双頭を最後に撫でてやり、ヒルルクは山を下っていった――――。
解説
●目的
・勉強会の講師をお願いします。
・勉強会に生徒として参加してください。
●場所
リブラネスタ郊外にある、セルッティ商会別館。
別荘として利用されることもある、自然に囲まれた静かな場所です。
・講堂
30名ほどが入れる講堂です。広さを生かした大掛かりな授業が行えます。
・個室
3~5名ほどが入れる小部屋です。
個別で授業をするのに使ってください。
・庭
運動場や訓練場として使えます。地面は芝ではなく土で結構広いです。
・雑木林
別館の裏に広がるちょっとした雑木林です。今の時期は春の山菜とかが採れるかもしれません。
・池
大きくはありませんが綺麗な水を湛えた池です。釣りなんかをするのもいいかもしれませんね。
●人物
・ヒルルク
征竜の巫女。自身の無知を痛感し、勉強会へと参加ました。
お勉強は苦手ですが、頑張って色々知ろうとしています。
・ヴィルジニア・テレーザ・セルッティ
セルッティ商会の現当主。支援する孤児院の子供達を集め、定期的に勉強会を開いています。
当日も顔を出す予定です。
●補足
生徒はヴィルジニアが支援している複数の孤児院から来た子供達総勢60名。
6歳~12歳までの種族様々な少年少女です。
子供の中には何名か授恵者もいます。
今までの勉強会は、子供達へ「字の読み書き」「簡単な算数」を教える程度のものでした。
しかし、今回の講師は冒険者の皆さんです。今まで学ぶ機会のなかったジャンルを勉強できると、子供達も楽しみにしていることでしょう。
教える内容は、字の読み書きや簡単な算数でも結構です(実際これが一番需要があります)し、外に出て体を動かす授業とかも楽しいのではないでしょうか。音楽や絵画など芸術関係の授業も人気かもしれませんね。
冒険者っぽく剣術や魔法の授業はもちろん、「手に一芸」を目指して料理や製作関係の授業なんかも面白いと思います。(あまり無茶な授業内容は、さすがにヴィルジニアが止めます)
また、勉強会には「生徒」として参加していただいても構いません。
子供達に混じって、字を習ったり算術を習ったり、他にも色々な事を教えてくれる「先生」がいますから、ふるってご参加ください。
講師役のPC様の人数にもよりますが、一人当たり3~5名の生徒が付くことになると思います。
マスターより
お世話になっております。真柄 葉と申します。
今回のシナリオはお勉強会!
勉強会に集まった孤児たちに、皆様が講師となり勉強を教えてあげてください。
少年少女とはいえ、上は12歳。色々とわかってきている年です。それぞれ年齢にみあった勉強を教えてもらえると助かります。
また、ヒルルクも生徒として参加していますので、よかったら何か教えてあげてください。色々な知識を身に着けて、世間知らずを克服したいようです。ただ学者さんには多分なれません。
最近冒険者となったホムンクルスの方々も、人間社会の勉強にご参加してみるのはいかがでしょうか。
OP本文中でヴィルジニアが色々と深読みしていますが……。まぁ、ご苦労様ですと言っておきましょう。下手に頭が切れると色々考えて大変ですよね(
もし何か質問があれば相談掲示板へ「Q:」から始まる形でご質問ください。
ヴィルジニアがお答えいたします。
それでは、今回のシナリオもよろしくお願いいたします!
リプレイ
「――これが『飴』って言葉だ。好きだろ『飴』?」
洋館の個室で小さな子供達を相手に教鞭をとるサイラス。
子供達は強面教師の話を真剣に聞いている。
「そこの子、わかるか?」
指名された子供が緊張の面持ちで立ち上がり、恐る恐る指を一本立てた。
「おー、すげーな。よくわかったな。偉いぞー」
そんな子供の緊張をほぐす様に豪快に微笑み、サイラスは褒める。
子供達が友達の成功を褒める傍ら、サイラスに尊敬の視線を送った。
そんな視線を浴びつつ、サイラスは思う。
事、教導の観点でいけば、自分よりもセンセの方がよほどうまい。センセなら年齢の違いや習熟度の差を完璧に理解して、自分が今やっている倍の量は教えることができるだろう。
「とはいえ、今はいないしな。思い出しつつやるか」
サイラスは小さく呟くと再び子供達へ向かう。
幸い人数は多くない。一人一人の個性を見極め、躓きやすいポイントを重点的に教えよう。
この献身的なサイラスの教導にカリスマ性を感じたのか、子供達はより真剣に彼の話に耳を傾けた。
●
「それでは講義はこれくらいで、実践してみましょう!」
子供達へ「ねん挫時の固定法」や「出血の際の止血」「骨折時の応急処置」などを教えていたギーゼラが、突然ナイフを取り出した。
「怪我なんていつするかわかりません。そして、そんな時に都合よくヒーラーがいる事なんて稀です」
ギーゼラは何の躊躇もなく腕に刃を当て――――引いた。
「それでは止血をやってみましょう! 先ほど教えた通り、おちついて傷口を押さえてみてください」
子供達の悲鳴も気にせず、ギーゼラは血濡れのナイフを置き、手前の子に包帯を手渡した。
「フフフ、どうしました。早くしないとどんどん血が流れちゃいますよぉ?」
そう言われ子供は唾を飲み込むと、恐る恐る手当を始める。
「いい圧迫ですよぉ! そのままそのまま!」
ギーゼラは覚えたての止血法を懸命に実践する生徒を満足げに見つめた。
「よくできました! いいタイムでしたよ、これで僕は命が助かりました!」
半泣きになりながらも見事にやりきった子供の頭を撫でてやりながら。
「さぁ、次の子、行ってみましょうか!」
ギーゼラはヒールで傷口を塞ぐと、再びナイフを手に取った。
●
(ヒルルクさんも来ているんですか……)
講堂に入っていく知った顔を見たリディリディ・トゥラ・イェレミースは眉をひそめた。
(一体何が目的で勉強会に……。まさかこんな所に来るなんて思ってもいなかったので、戦闘用の装備はほとんど置いてきてしまいました……失態です)
「どうしたんだ?」
何やら難しい顔をしていたリディリディにシルヴィア・A・カペルが声をかける。
「……いえ、なんでもありません。これだけ冒険者がいるので、きっと大丈夫でしょう……」
「うん?」
「気にしないでください、行きましょう」
不思議そうに見つめるシルヴィアに、リディリディは首を振ると教室へと入った。
中では子供達が期待の眼差しで二人を迎える。
「待たせたね。それでは音楽の授業を始めようか」
シルヴィアがそう告げると子供達から歓声が上がった。
部屋には既に子供達でも簡単に使える打楽器が用意され、二人のリュートとチェロも置かれていた。
二人は自分の楽器を持つと、ポロンと弦を掻き鳴らす。
「今から君達に音楽を教えようと思う。とはいえ、堅苦しい事は何もないから気楽に楽器に触れてくれるといい」
「使い方がわからない人は言ってくださいね」
そう言ったリディリディの元へ、小さな子供が数人駆け寄る。
リディリディが子供達に楽器の使い方を教えている間、シルヴィアはというと――。
「東方には『言霊』というものがある。いやな事があった時、心の拠り所となる歌が口から出れば良い。気持ちが前向きになるから」
音楽は心の癒しだと話す。
「今日は歌を一つ教えよう。春を祝う歌だ」
シルヴィアはそういうとリディリディに目配せする。
そして、二人は同時に弦を掻き鳴らした。
教室にゆるりとした弦の音が流れる。
故郷に春が来た。
雪が解け。
小川に命を満たす。
鳥たちは歌い。羽を広げ踊る。
春は私の心にやってきた。
二人の美しい歌声が教室に響く。
子供達はうっとりとその声を聞いた。
「こんな感じだ。皆も自分の心に春が来たと思って『言葉』にしてもらいたい。皆の春を教えてほしいな」
「……楽器で表現するのもいいですよ。弦楽器がよかったら私のをお貸しします」
歌の興奮冷めやらぬ中、子供達は我先にと楽器を鳴らし詩を紡いだ――。
●
「傾注傾注!」
子供達を前にバンビが教鞭を黒板に叩きつける。
「今日はオレことバンビ先生がハイスピードキャスターについて授業しますわ。――はいそこ。今自分には関係ない授業かぁ……とがっかりしましたわね」
首をかしげる子供達の内心を見抜き、バンビ先生が教鞭を突き出した。
「HSCとは何も冒険者の固有称号なわけではありません。実生活でもものすごく役に立つのですわ」
よくわからないがとにかくすごそうだと、子供達はバンビ先生をじっと見つめる。
「まず一番重要な事。それは――」
「それは?」と復唱する子供達を前に、バンビは机に教鞭を打ち付けた。
「先手を取る事ですわ!」
ふんすと鼻息荒く口にしたバンビに、子供達から「おぉ!」と歓声が巻き起こる。
それに気をよくしたのか、バンビの教鞭は更に速度を増していく。ばしばしばしばし。
戦場を支配しろ。呪文は滑舌をよく、はっきりと! 万物には固定の震動があり――などなど。
ノリにノるバンビのハイスピード授業は、とてつもない早口ながら明快にして単純。何時しか子供達は、独特の世界へ引き込まれていく――。
●
いつ以来だろう、こんな風に……ただ穢れのない命に囲まれて過ごす、というのは。
Alexandra・Hexe・Claudiaは目の前の子供達を見つめながら思う。
ゆっくりと満たされるようで……何かを取りこぼしているようで。
相反する感情が心の中を渦巻く。
長くじっとするのが心配になったのは、民の残る帝国であれよあれよと働き詰めたから?
ふと沸いた疑問に自問する。――――答えは出ない。
「……すみません。授業を続けましょう」
子供達は思い思いの染料を手に、白い布を染め上げていく。
無垢な白は、子供達の心を映しているようにも感じる。
染め液に浸し、次第に色がつく様は、これからの成長を暗示しているのだろうか。それとも――。
「終わった人はしっかり絞ってください。絞り終えたら流水でしっかりと洗います」
わいわいと染物に興じる子供達は、素直に言われた通りの作業をこなす。
「洗い終えたら日陰で干します。出来上がりは後日になりますので楽しみに待っていてください」
事務的に語るAlexandraに、子供達は元気な返事を返した。
そんな子供達を見つめながら、Alexandraは何を思う。それは彼女自身にも知り得ないのかもしれない――。
●
「さぁ、皆摘んでみようか」
湖畔に顔を出す新緑を指さし、ナタリア・フィッツジェラルドが子供達を呼んだ。
子供達は我先にと春の芽生えを積み始める。
そんな子供達の行動を見つめながら、時に手を貸し、時に見守り、ナタリアは一人一人の特性を見極めていく。
「それでは、詰んだ草をもって集まれ。それぞれどのようなものか説明していくぞ」
籠がいっぱいになった事を確認したナタリアは、子供達を集めると黒板に絵を書き、それが何なのかを分かりやすく説明していく。
子供達は新芽と黒板を見比べながら、ナタリアの授業に聞き入る。
そして、そんな子供達に混じって彼女の授業を受ける人物がいた。
「……えっと、あの形の葉っぱは……あ、これか!」
黒板の絵と新芽を比べ、アステルはようやくそれを見つけた。
「え……あれ、葉っぱの数が合わないぞ。え、なんでだ……?」
しかし、手に持つ草と黒板のイラストは葉の枚数が違う。アステルは間違ったのかと、隣の子供に手元をちらりと見た。
その子は「こうだよ」と丁寧に見方を教えてくれる。
「あ、なるほど! 横から数えるのか!」
「そうだ、アステル。よく気付いたな」
「ふ、ふふん。これくらいよゆーだし!」
ナタリアに褒められて調子付いたアステルは、次のイラストに描かれた花を籠の中から探す。
「その花は花弁の枚数に気を付けるんだ」
ナタリアの丁寧な説明を聞きながら、アステルは籠の中にそれを見つけた。
アステルは、見つけられない子供の所へわざわざ駆け寄り、これがそうだよと丁寧に教える。
ナタリアはそんなアステルの学びへの姿勢を感心しながら見つめた。
「ちゃんと数えるんだぞ! 算数が苦手だからって、投げ出しちゃダメなんだぞ! いいか、大人になったら買い物とかしないといけなくなるんだ。そん時計算ができないと、とっても苦労するからな! ちゃんと学ばないとダメだぞ!」
いつの間にやら教える立場に立とうとしているアステル。
「大丈夫! みんなオレより年下だけどしっかりしているから!」
だから自分もしっかりしないとと、胸を張りつつ、アステルは子供達と向き合う――。
●
「少し難しかったか?」
渋い顔を作る子供達を見つめながらヴァンゲルス・ロッドは苦笑した。
彼が教えているのは『世間を上手く渡り歩く交渉術』。まだ社会に出る前の子供達には実感がわかない授業である事は、ヴァンゲルス自身もわかっている。しかし、これから成長するにしたがって必ず必要になる術だ。
「多くの人間が気付いていないだけで、俺達の日常はほぼ交渉で動いていると言っても過言じゃねぇ」
10の内、2でも3でも理解してくれれば必ず役に立つと、ヴァンゲルスは話を続ける。
「例えば小遣いをアップして欲しいとか、誰かをデートに誘いたいなんていうのも交渉だな。どうだ、そんな事を思った事はないか?」
ヴァンゲルスは難しい顔をする子供達にわかりやすい例を提示した。
すると子供達も少し得心がいったのか、表情を変える。
「この世の中の事のほとんどすべてが交渉の連続だ。その術を学ぶことは、選択肢を広げ、周囲にも多くの利益をもたらす。だから、頑張って聞いてくれよ?」
そう言ったヴァンゲルスに、子供達は真剣な顔で頷いた。
●
「よぉし、釣り竿が出来た子から、ルチルさんの所へ行くんだぞ!」
自分だけの釣り竿に目を輝かせる子供達に、ウォーゼルが声をかけた。
森の中に子供達を連れだしたウォーゼルは、一から『釣り』を教える為に、まず釣り竿の作成から始めた。初めてナイフを使う子も多い中、ウォーゼルは子供達の自主性に任せつつも、安全を第一に考え目を配る。
子供達は苦戦しつつも、ウォーゼルのアドバイスもあって釣竿を完成させていった。
「さぁ餌をつけて、湖に垂らすんだよ」
湖では、次々とやってくる子供達をルチル・プルメリア・グレイハーツが待ち受ける。
ルチルは餌付けに悪戦苦闘する子供達を手伝いつつ、釣り場に案内していった。
「釣りは忍耐だ。けして焦らず、水の中にいる魚と対話するんだ」
ルチルが子供達に指導していると、ウォーゼルが合流し釣り糸を湖面に垂らした。
「声はたてないようにね。魚って意外と耳がいいんだよ」
子供達は二人をまねつつ、静かに湖面と向き合う。
程なくして、最初の一匹が揚がった。
「すごい、大物だね!」
魚を釣り上げた子共はウォーゼルの賞賛に照れ臭そうに笑う。
すると、他の子供達にも次々とヒットしだした。
日が傾く頃には、籠に入りきらない程の魚が取れた。
「それじゃ、焼いて食べよう! 獲った命はちゃんといただくんだよ!」
焚火を起こし待っていたウォーゼルは、戦果に湧く子供達と共に、魚を焼き始める――。
●
「相手との距離を考えて! 自分の間合いをしっかりと理解するんだ!」
最年長の少年に木剣を打ち込み、アリオン・リューは声を上げる。
子供達はアリオンに倣う様に、相手に剣を打ち込んでいく。
アリオンは基本的な攻防動作に加え、害意を持った相手への心構え、剣の間合いなど、基本武術に関する事を教えていた。
自分も非授恵者だった過去がある事を語り、授恵者でなくとも自分や身近な人を守る事は必ずあると、剣術だけでなくその心も説く。
「それまで! それじゃ少し休憩しようか」
1時間ほど剣を振り、アリオンは木剣を置いた。
子供達はぺたりとその場に座り込み、荒れた息を整えている。
「どうだった?」
「うーん、痛そう?」
「はは、そういう感想が出るんだね」
アリオンは訓練を見つめていたヒルルクの元へ歩いていく。
「征竜様くらい強ければこんな事しなくて済むし、考えなくても平気なんだろうけど、僕達は弱いからさ。色々と身に着けるのは損じゃないと思うよ」
「うーん……わたしにできるかしら」
「できるさ。僕でもできるんだからさ。一度やってみよう」
そう言って、アリオンはヒルルクに木剣を渡した。
●
「そうか。子供の間でそういう事はしていないんだ」
森の中を先導するイズル・M・ヴォルゴールは、子供達との話に考え込んだ。
定期的に開かれているという勉強会。だが、勉強は毎日の積み重ね。学んだものが共有されていると期待したのだが、そういう事はないらしい。
子供達の話を聞きながらイズルが教育方針を練っていると、目的地に着く。
イズルは子供達を集めると、足元にあった草を引っこ抜く。
「今日集めるのはこの薬草だ。これは火傷によく効くから是非覚えて帰ろう」
そう言ってイズルは地面に薬草の名前を書き記す。
「一緒にやってみようか。ちゃんと書けなくてもいいから、絵を書くみたいに真似っこしてみて」
子供達もイズルに倣い薬草を摘んできては、見よう見まねで字を書いていく。
お世辞にも綺麗とは言えない字。しかし、子供達はとても楽しんでいる。
「次はこの山菜の名前を教えるよー」
子供達の練習を微笑ましく見つめながら、イズルの授業は続く。
「さぁ、今日はこれくらいにして館へ戻ろう。帰ったら字の復習をやるよー」
籠一杯に採った山菜やら薬草を戦利品に、イズルたちは館へと戻っていった。
●
「刃物を怖がると余計に危なくなるのだ。自分の体の一部と思って振るうのだ」
イズル達がとってきた山菜を分けてもらい、ストレガ・L・リベルガストラが授業をスタートさせた。
彼女が教えるのは料理。ストレガがまな板の上で包丁を振るえば、子供達もおっかなびっくり包丁を食材に落とす。切った山菜を小麦粉の衣にくぐらせ、熱した油へダイブさせる。
「油は跳ねるのだ。やけどに注意するのだ」
ストレガの注意に一歩身を引きつつ、子供達は興味津々に彼女の手元を見ていた。
「春の新芽は少し苦いのだ。でもこれを美味しいと感じられるようになると大人と言えるようになるのだ」
揚げたての山菜が皿に盛られていく。
「とはいえ、これだけだと食卓とは言えないのだ。料理とは一品だけに非ず。食卓全体の味を調えてこその料理なのだ」
そう言うとストレガは、用意していた肉料理、卵料理の傍に山菜料理を並べた。
「食事はバランスが大切だという事をしっかりと覚えて帰るのだ。という訳で、用意完了なのだ。さぁ、皆で食べるのだ」
ストレガの許可を得て、子供達は机のご馳走にフォークを伸ばした。
●
「はい、それでは少し休憩しましょうか」
チョークを置きヴィルヘルミナが子供達を見る。彼女は字の読み書きを教えていた。
識字率の低いロスガリアで、字を書けるというだけで職にありつける。
何を目指すにしても字を書けて損はないと、彼女は親身になって読み書きを教えていた。
(本当なら鍛冶を教えたい所ですけど、さすがに小さな子にハンマーを握らせるわけにもいきませんしね)
ヴィルヘルミナがそんな事を思う間にも、子供達は沢山の字を手元の黒板へ書いていく。
「――皆さんよく頑張りましたね。まだまだ教えたいことがあるので、栄養補給と行きましょう」
しばらくしてヴィルヘルミナが休憩を指示すると、机に籠を置いた。
中身は彼女お手製のクッキー。子供達はその匂いに釣られ、わーっと駆け寄ってきた。
「慌てなくても沢山ありますから、仲良く食べてください」
子供達は彼女の話も聞かずに手を伸ばす。
ヴィルヘルミナはそんな光景を微笑ましく見つめながら――。
「……学者さんを目指すって息巻いていた子は、大丈夫でしょうかね」
ヒルルクの事を思う。
●
「用意したモデルを見て彫ってもいいですし、自分の頭の中にあるものを形にしても構いませんから、好きなものを彫ってみましょう。花や木、動物……何でも構いませんよ」
木版を前に頭を捻る子供達を見つめフクシア・S・シュルツが声をかけた。
彼女が教えるのは『彫刻』。小さな時から嗜んでいた芸事を子供達に伝える。
「彫刻刀はよく切れますから十分に注意してくださいね。必ず自分から離れていくように削るんですよ」
フクシアは怪我をさせてはいけないと、子供達の手元を注意深く見つめた。
芸事で身をたてるのは難しいかもしれない。だけど、これが何か手に職をつけるきっかけになればいい。視野を広げる一助になればいい。
フクシアはそう考え、子供達へ彫刻刀を渡した。
子供達は悪戦苦闘しながらも、自分の作りたいモノへ真剣に向き合っている。
「彫り終わったら、色を塗りましょうね。そして紙に移せば木版画の出来上がりです」
向き合う作品に色を乗せる。そうする事でまた世界が広がる。
フクシアはキラキラと眩しいばかりに瞳を輝かせる子供達に微笑みかけた。
●
「そう、交互に出し入れしていくのよ……」
布と糸と針を持ち奮闘する子供達を、シルディスがじっと見つめた。
「折り返しは少し難しいから……ほら、こうやるのよ」
シルディスは手の止まった子供の元へ歩み寄ると、すぐに詰まった所を見つけ、手を取り教える。
「針は小さくても刺さると痛いから気をつけて……」
裁縫は複数の針を使う。そして一本でも無くなればどこに潜んでいるかわからないほど小さい。
シルディスは子供達の間を行き来しながら、針の紛失が無いか目を光らせた。
「縫い上がったら中に綿を詰めましょうね……」
一通り縫い上がり、授業は次の段階へ。
シルディスが教卓に置かれた可愛らしいぬいぐるみを指さす。
それはシルディス自らこの授業のために作ってきたものだった。
子供達はぬいぐるみを見つめながら、自分でも作ると決意を新たに針に向かう。
「焦らなくてもいいわ……ゆっくり作っていきましょう」
そんな子供達を頼もしく見つめながら、シルディスの指導は続く――。
●
「税は基本皆の生活を良くする為に使われる。例えば道を作ったり災害に備える設備を作ったりだね。あと君達が暮らす孤児院の運営にも税が使われたりしている」
講堂で教壇に立つジュスト・ヴェルジーが、ヒルルクと子供達を前に教鞭をとる。
その横ではローザリカ・L・ディオールが、板書で補助を行っていた。
「君達にはまだ難しい話だと思う。でもこれは、人の社会にとってとても大切な事なんだ。子供や妊婦、病人や老人、皆が等しく働けるわけではないだろう? だから、『助け合う』仕組みが必要なんだよ」
ヒルルクを含め難しい顔をする子供達に、ジュストは出来るだけわかりやすくかみ砕いて説明していく。
「税として集めたお金で人の為になる事や土地を治めるのに必要な事を考えたり決めたり整えるのが政治。そして、それに関わるのがお役人さん。同盟では議員さんかな。王国では貴族や文官って人がそれをやっているんだよ」
ジュストはそう説明すると、後ろを振り向いた。
「それじゃ、今度はお金についてもう少し詳しく知ってもらおうか。ローザリカ先生の登場だ。さぁ、拍手」
板書を手伝っていたローザリカが子供達の拍手に振り向くと、ジュストにわざわざハードルを上げるなと一睨みしてから教壇に立つ。
「ご紹介にあずかったローザリカだ。よろしく頼む。僕が教えるのは経済というものだ」
そう言うとローザリカは教壇にいくつかの硬貨を置いた。
「皆も見た事があるだろう。これは『貨幣』と言われるものだ。いわゆるお金だな。そして、これを使って物のやり取りをする事を経済という。
そうだな。例えば……王国は野菜が採れるが魚が少ない。同盟はその反対だとしよう。それらを交換したいと考えるわけだが、どちらも大きさは不揃いだし腐る事もある。物々交換するにも基準がないんだ。だからこれが必要になる」
そう言って、色の違う硬貨を交互に持ち上げた。
「お金という価値の変わらないルールを定めて品物のやり取りするんだ。魚は銅貨3枚。野菜は銅貨2枚とかね」
後ろでは、ジュストは魚や野菜のイラストを黒板に書き、その横にコインのマークを添える。
「そして、お金を上手く使うには計算が必要になってくる。では――」
そう言ってローザリカが教壇の下から取り出したのはパウンドケーキだった。
「このケーキは50Gする。3割引きで売っている店と、10Gを値引きしてくれる店。どちらが得だと思うかな? 正解が出たら皆で食べようじゃないか」
ケーキの登場に色めき立つ子供達に、ローザリカは問いかけた――。
●
休憩時間を挟み、講堂での授業は続く。
「多少の言葉遣いや姿勢が整うだけでも印象ががらりと変わります。礼儀作法を身に着けることは決して損な事ではございません」
教壇に立つレティシア・レインフィール。
「絵本の中のお姫様みたいに振舞ってみたいと思ったことはございませんか?」
そう言ってレティシアは、講義を聞く女の子へ目配せする。
「ですが、もしそのような幸運に遭遇する事があっても、礼儀作法が出来ていなければ台無しでございます」
レティシアは朗らかに微笑むと、一息置いてから本題へと入る。
彼女は特に礼儀と所作を重点的に講じる。自ら実践し、子供達に真似してもらった。
皆が一通りの礼義作法を覚えた所で。
「――では、ベルク先生へ交代いたしますね」
レティシアはベルク・オスマットへ教壇を譲った。
「うむ。皆、初歩の礼節は身についたと思う。ここからは実践じゃ」
そう言うと、ベルクは壁に立てかけてあったモップを手に取る。
「今から皆には『掃除』をしてもらう!」
子供達とヒルルクがベルクの言にぽかんと口を開けていると、彼女は二ッと微笑み。
「礼儀作法の授業だと聞いた? くく……掃除も立派な礼儀作法じゃ。いいか、礼儀作法が貴族だけのものだと思うなよ」
持ったモップでどんと床を叩く。
「よほどのことがない限りどこの商会だろうが組織だろうが入ったばかりの下っ端がやる事は基本力仕事。そう、掃除じゃ! じゃが、これはただの肉体労働に非ず。雇い主は与えられた仕事に対する態度を常に見ておる。ここで礼儀作法に則った所作を行えるかが上の者への好印象へつながる。覚えがよければチャンスも増えるぞ?」
きょとんと見つめる子供達へベルクは続けた。
「何が言いたいのかというと、何事も真面目にやって損はないという事じゃ」
そう言うと「さぁ、始めるぞ!」と、子供達とヒルルクへ掃除道具を配っていった。
●
「どう、ヒルルクさん。ちゃんと理解できてる?」
入れ替わり立ち代わり講師が来ては授業を行ってくれる。
簡単なものもあるが、やはり難しいものが多い。
ハーヴィはヒルルク一人では理解するのが大変だろうと、講師陣の補助をしつつ彼女を気に掛けていた。
「な、なんとなく……でもわからない所も多いかも」
ヒルルクもなんとか笑顔を返すが、いつもの元気はまるで感じられない。
苦手な事を必死に詰め込もうとしている気概は感じるが、基本的な勉強の要領がわかっていないのだろう。
ハーヴィはそんなヒルルクに、授業の内容をわかりやすくかみ砕き、時には一緒に実践して教える。
「子供達も頑張ってる。ヒルルクさんも負けないでっ」
ハーヴィが視線をやると周りの子供達も難しい授業内容に必死でついて行こうと努力していた。
「うん、ありがとう、ハーヴィ。わたし、がんばる! ……で、ここなんだけど」
「ああ、そこはね――」
講師の授業が続く中、ヒルルクはハーヴィの補助を頼り、勉強に励んだ。
●
「お、おわったぁ……」
ぐでーんと机で伸びていたヒルルク。
たくさんの知識を得て、詰め込んだ彼女の頭はもうパンク寸前だった。
「お疲れ様でございます」
そんなヒルルクにレティシアが声をかける。
「先ほどの授業で話した事を纏めた資料になります。お時間ある時にでもご覧くださいね」
退出していく子供達を見送ったレティシアは、ヒルルクに紙の束を差し出した。
「笑顔と知識は淑女にとって剣と盾でございます。ヒルルク様はこういう物はあまり好まれないのは存じていますが、知っているだけでも周囲を守れる事もございますから、無駄にはなりませんよ」
ひくひくと頬を痙攣させるヒルルクに苦笑しながら、「頑張ってくださいまし」と伝え、彼女も退出していった。
「待った、どこ行くんだ?」
「え? 終わったから帰るんだけど……」
「終わったのは子供達の授業だろ?」
レティシアに続き退出しようとしていたヒルルクを引き留めたのは海神・江流だった。
「ここからは、ちょっと大人な授業だ」
嫌そうな顔をしているヒルルクに江流は苦笑する。
「……ヒルルク、身分についてどう考える?」
「え? 何いきなり」
「例えば王国の制度は身分に縛られていて不公平だ。帝国のように実力主義で誰にでも機会がある方が望ましい……なんて意見があったとする」
首をかしげるヒルルクに江流は話を続けた。
「でも、帝国の考えの方が素晴らしい、王国を解体してしまおう……とはならないよな」
「ならないんじゃない?」
「そう、王国というルールの中で努力して地位を得た者や、王国に守られている人にとっては、解体なんて言うのは、自分の首を絞める意見だからだ」
「何が言いたいの?」
「ようは、国も信仰も一つの視野に縛られていると、自分の正義が誰かの平穏を脅かす事もある。不完全だとしてもその中でより良いものを目指そうとするのが人間社会なんだよ」
「……難しいわね。もっと単純に考えればいいのに」
人の社会の仕組みを説いた江流に、ヒルルクは深く考え込んだ。
「そうもいかないのがこっちの世界なんですよ」
と、ヴィルジニアに挨拶を終え講堂へと入ってきたトーラ。
江流との会話を聞いていたのか、ヒルルクの傍まで来ると深くため息をついた。
「ヒルルク、これあげます」
「うん? なにこれ」
「GP教の絵パンダです。江流さんが仰ってましたけど、一つの信仰に縛られていると視野が狭くなってしまいます。こちらの世界を知るうえで、他の神様の教義に触れてみるのもいいと思ったので用意したんですよ」
首をかしげるヒルルクにトーラは話を続ける。
「ちなみにGP教は『人は白と黒が半々の状態こそ理想の精神状態である』と言っています。良い心と悪い心のバランスが大事だという教えですね」
「ふーん、変わってるのね」
「征竜信仰もわたし達から見れば変わってるんですよ?」
「えっ!? なんで!」
本気で驚いているヒルルクに、トーラは苦笑する。
「別にヒルルクにGP教に改宗しろと言ってるわけではなくて、他の信仰も受け入れられるようにしてみたらどうですか? GP教の教えは人の社会の事を的確に表していると思います」
トーラに言われヒルルクは考える。確かに知りたいと思ったのは自分だ。その為に勉強しに来た。知識だけではなく、考え方を学ぶこともまた必要なのだろうと。
「……わかったわ。二人共ありがとう。色々見て聞いてみようと思う」
そう言ったヒルルクに、二人は微笑んだ。
●
「あ、居ました!」
子供達に基本的な読み書き算数を教え終わったルアンナ・ミュラーが廊下でヒルルクの姿を見て駆け寄った。
「ルアンナ? どうしたの」
「いえ、ヒルルクさんのお勉強は順調かなって思って」
「あはは……ガンバッテマス」
ぎこちなく答えたヒルルクに微笑みかけると、ルアンナはご自慢のメロンパンを手渡した。
「私も色々と教えて上げられれば良かったんですけど、私にはこれくらいしかないって気付いて自重しました」
「そうなの? とっても美味しいけど」
「ふふ、ありがとうございます。あ、そういえばローラちゃんはどうしてます? まだあの場所にいるんですか?」
「ええ、ビ=ネクにお願いしてきたわ」
「それはアタイも詳しく聞きたいね」
と、二人の元へルチルがやってきた。
「いいわよ。えっと――」
ヒルルクは二人にあの日以降の話をする。とは言っても、特に変わった事はなく、ビ=ネクの欲しがっているある物を探す代わりにマーメイドを保護してもらう約束をしているという。
「その品っていうのは何なんだい?」
「竜の里に生えてる薬草。こっちで見た事ないんだけどね」
「薬草? ふむ……」
その薬草は里で解熱剤として用いられているものらしい。
ルチルは何故必要としているのか聞くがヒルルクは知らないと首を振る。
「里か……そういえばヒルルク、征竜や里についてもう少し詳しく教えてくれないか」
「征竜さまと里の何を知りたいの? あなたも実際行ったでしょ?」
「ああ、確かに行った。だが、最近視えないものが多くなってね」
首をかしげるヒルルクにルチルは続ける。先日の一件で互いの認識の違いは理解した。
そして、それを埋めたいとルチルは願った。
「ヒルルクが里や征竜の事を教える。アタイ達がこっちの事を教える。お互い得な契約だと思うが、どうだい」
「どうだいと言われても……まぁ、別に隠すような事じゃないから、何か知りたいなら言ってくれれば話すわ」
「そうか。では――」
そう言って差し出されたルチルの右手をヒルルクを取った。
洋館の個室で小さな子供達を相手に教鞭をとるサイラス。
子供達は強面教師の話を真剣に聞いている。
「そこの子、わかるか?」
指名された子供が緊張の面持ちで立ち上がり、恐る恐る指を一本立てた。
「おー、すげーな。よくわかったな。偉いぞー」
そんな子供の緊張をほぐす様に豪快に微笑み、サイラスは褒める。
子供達が友達の成功を褒める傍ら、サイラスに尊敬の視線を送った。
そんな視線を浴びつつ、サイラスは思う。
事、教導の観点でいけば、自分よりもセンセの方がよほどうまい。センセなら年齢の違いや習熟度の差を完璧に理解して、自分が今やっている倍の量は教えることができるだろう。
「とはいえ、今はいないしな。思い出しつつやるか」
サイラスは小さく呟くと再び子供達へ向かう。
幸い人数は多くない。一人一人の個性を見極め、躓きやすいポイントを重点的に教えよう。
この献身的なサイラスの教導にカリスマ性を感じたのか、子供達はより真剣に彼の話に耳を傾けた。
●
「それでは講義はこれくらいで、実践してみましょう!」
子供達へ「ねん挫時の固定法」や「出血の際の止血」「骨折時の応急処置」などを教えていたギーゼラが、突然ナイフを取り出した。
「怪我なんていつするかわかりません。そして、そんな時に都合よくヒーラーがいる事なんて稀です」
ギーゼラは何の躊躇もなく腕に刃を当て――――引いた。
「それでは止血をやってみましょう! 先ほど教えた通り、おちついて傷口を押さえてみてください」
子供達の悲鳴も気にせず、ギーゼラは血濡れのナイフを置き、手前の子に包帯を手渡した。
「フフフ、どうしました。早くしないとどんどん血が流れちゃいますよぉ?」
そう言われ子供は唾を飲み込むと、恐る恐る手当を始める。
「いい圧迫ですよぉ! そのままそのまま!」
ギーゼラは覚えたての止血法を懸命に実践する生徒を満足げに見つめた。
「よくできました! いいタイムでしたよ、これで僕は命が助かりました!」
半泣きになりながらも見事にやりきった子供の頭を撫でてやりながら。
「さぁ、次の子、行ってみましょうか!」
ギーゼラはヒールで傷口を塞ぐと、再びナイフを手に取った。
●
(ヒルルクさんも来ているんですか……)
講堂に入っていく知った顔を見たリディリディ・トゥラ・イェレミースは眉をひそめた。
(一体何が目的で勉強会に……。まさかこんな所に来るなんて思ってもいなかったので、戦闘用の装備はほとんど置いてきてしまいました……失態です)
「どうしたんだ?」
何やら難しい顔をしていたリディリディにシルヴィア・A・カペルが声をかける。
「……いえ、なんでもありません。これだけ冒険者がいるので、きっと大丈夫でしょう……」
「うん?」
「気にしないでください、行きましょう」
不思議そうに見つめるシルヴィアに、リディリディは首を振ると教室へと入った。
中では子供達が期待の眼差しで二人を迎える。
「待たせたね。それでは音楽の授業を始めようか」
シルヴィアがそう告げると子供達から歓声が上がった。
部屋には既に子供達でも簡単に使える打楽器が用意され、二人のリュートとチェロも置かれていた。
二人は自分の楽器を持つと、ポロンと弦を掻き鳴らす。
「今から君達に音楽を教えようと思う。とはいえ、堅苦しい事は何もないから気楽に楽器に触れてくれるといい」
「使い方がわからない人は言ってくださいね」
そう言ったリディリディの元へ、小さな子供が数人駆け寄る。
リディリディが子供達に楽器の使い方を教えている間、シルヴィアはというと――。
「東方には『言霊』というものがある。いやな事があった時、心の拠り所となる歌が口から出れば良い。気持ちが前向きになるから」
音楽は心の癒しだと話す。
「今日は歌を一つ教えよう。春を祝う歌だ」
シルヴィアはそういうとリディリディに目配せする。
そして、二人は同時に弦を掻き鳴らした。
教室にゆるりとした弦の音が流れる。
故郷に春が来た。
雪が解け。
小川に命を満たす。
鳥たちは歌い。羽を広げ踊る。
春は私の心にやってきた。
二人の美しい歌声が教室に響く。
子供達はうっとりとその声を聞いた。
「こんな感じだ。皆も自分の心に春が来たと思って『言葉』にしてもらいたい。皆の春を教えてほしいな」
「……楽器で表現するのもいいですよ。弦楽器がよかったら私のをお貸しします」
歌の興奮冷めやらぬ中、子供達は我先にと楽器を鳴らし詩を紡いだ――。
●
「傾注傾注!」
子供達を前にバンビが教鞭を黒板に叩きつける。
「今日はオレことバンビ先生がハイスピードキャスターについて授業しますわ。――はいそこ。今自分には関係ない授業かぁ……とがっかりしましたわね」
首をかしげる子供達の内心を見抜き、バンビ先生が教鞭を突き出した。
「HSCとは何も冒険者の固有称号なわけではありません。実生活でもものすごく役に立つのですわ」
よくわからないがとにかくすごそうだと、子供達はバンビ先生をじっと見つめる。
「まず一番重要な事。それは――」
「それは?」と復唱する子供達を前に、バンビは机に教鞭を打ち付けた。
「先手を取る事ですわ!」
ふんすと鼻息荒く口にしたバンビに、子供達から「おぉ!」と歓声が巻き起こる。
それに気をよくしたのか、バンビの教鞭は更に速度を増していく。ばしばしばしばし。
戦場を支配しろ。呪文は滑舌をよく、はっきりと! 万物には固定の震動があり――などなど。
ノリにノるバンビのハイスピード授業は、とてつもない早口ながら明快にして単純。何時しか子供達は、独特の世界へ引き込まれていく――。
●
いつ以来だろう、こんな風に……ただ穢れのない命に囲まれて過ごす、というのは。
Alexandra・Hexe・Claudiaは目の前の子供達を見つめながら思う。
ゆっくりと満たされるようで……何かを取りこぼしているようで。
相反する感情が心の中を渦巻く。
長くじっとするのが心配になったのは、民の残る帝国であれよあれよと働き詰めたから?
ふと沸いた疑問に自問する。――――答えは出ない。
「……すみません。授業を続けましょう」
子供達は思い思いの染料を手に、白い布を染め上げていく。
無垢な白は、子供達の心を映しているようにも感じる。
染め液に浸し、次第に色がつく様は、これからの成長を暗示しているのだろうか。それとも――。
「終わった人はしっかり絞ってください。絞り終えたら流水でしっかりと洗います」
わいわいと染物に興じる子供達は、素直に言われた通りの作業をこなす。
「洗い終えたら日陰で干します。出来上がりは後日になりますので楽しみに待っていてください」
事務的に語るAlexandraに、子供達は元気な返事を返した。
そんな子供達を見つめながら、Alexandraは何を思う。それは彼女自身にも知り得ないのかもしれない――。
●
「さぁ、皆摘んでみようか」
湖畔に顔を出す新緑を指さし、ナタリア・フィッツジェラルドが子供達を呼んだ。
子供達は我先にと春の芽生えを積み始める。
そんな子供達の行動を見つめながら、時に手を貸し、時に見守り、ナタリアは一人一人の特性を見極めていく。
「それでは、詰んだ草をもって集まれ。それぞれどのようなものか説明していくぞ」
籠がいっぱいになった事を確認したナタリアは、子供達を集めると黒板に絵を書き、それが何なのかを分かりやすく説明していく。
子供達は新芽と黒板を見比べながら、ナタリアの授業に聞き入る。
そして、そんな子供達に混じって彼女の授業を受ける人物がいた。
「……えっと、あの形の葉っぱは……あ、これか!」
黒板の絵と新芽を比べ、アステルはようやくそれを見つけた。
「え……あれ、葉っぱの数が合わないぞ。え、なんでだ……?」
しかし、手に持つ草と黒板のイラストは葉の枚数が違う。アステルは間違ったのかと、隣の子供に手元をちらりと見た。
その子は「こうだよ」と丁寧に見方を教えてくれる。
「あ、なるほど! 横から数えるのか!」
「そうだ、アステル。よく気付いたな」
「ふ、ふふん。これくらいよゆーだし!」
ナタリアに褒められて調子付いたアステルは、次のイラストに描かれた花を籠の中から探す。
「その花は花弁の枚数に気を付けるんだ」
ナタリアの丁寧な説明を聞きながら、アステルは籠の中にそれを見つけた。
アステルは、見つけられない子供の所へわざわざ駆け寄り、これがそうだよと丁寧に教える。
ナタリアはそんなアステルの学びへの姿勢を感心しながら見つめた。
「ちゃんと数えるんだぞ! 算数が苦手だからって、投げ出しちゃダメなんだぞ! いいか、大人になったら買い物とかしないといけなくなるんだ。そん時計算ができないと、とっても苦労するからな! ちゃんと学ばないとダメだぞ!」
いつの間にやら教える立場に立とうとしているアステル。
「大丈夫! みんなオレより年下だけどしっかりしているから!」
だから自分もしっかりしないとと、胸を張りつつ、アステルは子供達と向き合う――。
●
「少し難しかったか?」
渋い顔を作る子供達を見つめながらヴァンゲルス・ロッドは苦笑した。
彼が教えているのは『世間を上手く渡り歩く交渉術』。まだ社会に出る前の子供達には実感がわかない授業である事は、ヴァンゲルス自身もわかっている。しかし、これから成長するにしたがって必ず必要になる術だ。
「多くの人間が気付いていないだけで、俺達の日常はほぼ交渉で動いていると言っても過言じゃねぇ」
10の内、2でも3でも理解してくれれば必ず役に立つと、ヴァンゲルスは話を続ける。
「例えば小遣いをアップして欲しいとか、誰かをデートに誘いたいなんていうのも交渉だな。どうだ、そんな事を思った事はないか?」
ヴァンゲルスは難しい顔をする子供達にわかりやすい例を提示した。
すると子供達も少し得心がいったのか、表情を変える。
「この世の中の事のほとんどすべてが交渉の連続だ。その術を学ぶことは、選択肢を広げ、周囲にも多くの利益をもたらす。だから、頑張って聞いてくれよ?」
そう言ったヴァンゲルスに、子供達は真剣な顔で頷いた。
●
「よぉし、釣り竿が出来た子から、ルチルさんの所へ行くんだぞ!」
自分だけの釣り竿に目を輝かせる子供達に、ウォーゼルが声をかけた。
森の中に子供達を連れだしたウォーゼルは、一から『釣り』を教える為に、まず釣り竿の作成から始めた。初めてナイフを使う子も多い中、ウォーゼルは子供達の自主性に任せつつも、安全を第一に考え目を配る。
子供達は苦戦しつつも、ウォーゼルのアドバイスもあって釣竿を完成させていった。
「さぁ餌をつけて、湖に垂らすんだよ」
湖では、次々とやってくる子供達をルチル・プルメリア・グレイハーツが待ち受ける。
ルチルは餌付けに悪戦苦闘する子供達を手伝いつつ、釣り場に案内していった。
「釣りは忍耐だ。けして焦らず、水の中にいる魚と対話するんだ」
ルチルが子供達に指導していると、ウォーゼルが合流し釣り糸を湖面に垂らした。
「声はたてないようにね。魚って意外と耳がいいんだよ」
子供達は二人をまねつつ、静かに湖面と向き合う。
程なくして、最初の一匹が揚がった。
「すごい、大物だね!」
魚を釣り上げた子共はウォーゼルの賞賛に照れ臭そうに笑う。
すると、他の子供達にも次々とヒットしだした。
日が傾く頃には、籠に入りきらない程の魚が取れた。
「それじゃ、焼いて食べよう! 獲った命はちゃんといただくんだよ!」
焚火を起こし待っていたウォーゼルは、戦果に湧く子供達と共に、魚を焼き始める――。
●
「相手との距離を考えて! 自分の間合いをしっかりと理解するんだ!」
最年長の少年に木剣を打ち込み、アリオン・リューは声を上げる。
子供達はアリオンに倣う様に、相手に剣を打ち込んでいく。
アリオンは基本的な攻防動作に加え、害意を持った相手への心構え、剣の間合いなど、基本武術に関する事を教えていた。
自分も非授恵者だった過去がある事を語り、授恵者でなくとも自分や身近な人を守る事は必ずあると、剣術だけでなくその心も説く。
「それまで! それじゃ少し休憩しようか」
1時間ほど剣を振り、アリオンは木剣を置いた。
子供達はぺたりとその場に座り込み、荒れた息を整えている。
「どうだった?」
「うーん、痛そう?」
「はは、そういう感想が出るんだね」
アリオンは訓練を見つめていたヒルルクの元へ歩いていく。
「征竜様くらい強ければこんな事しなくて済むし、考えなくても平気なんだろうけど、僕達は弱いからさ。色々と身に着けるのは損じゃないと思うよ」
「うーん……わたしにできるかしら」
「できるさ。僕でもできるんだからさ。一度やってみよう」
そう言って、アリオンはヒルルクに木剣を渡した。
●
「そうか。子供の間でそういう事はしていないんだ」
森の中を先導するイズル・M・ヴォルゴールは、子供達との話に考え込んだ。
定期的に開かれているという勉強会。だが、勉強は毎日の積み重ね。学んだものが共有されていると期待したのだが、そういう事はないらしい。
子供達の話を聞きながらイズルが教育方針を練っていると、目的地に着く。
イズルは子供達を集めると、足元にあった草を引っこ抜く。
「今日集めるのはこの薬草だ。これは火傷によく効くから是非覚えて帰ろう」
そう言ってイズルは地面に薬草の名前を書き記す。
「一緒にやってみようか。ちゃんと書けなくてもいいから、絵を書くみたいに真似っこしてみて」
子供達もイズルに倣い薬草を摘んできては、見よう見まねで字を書いていく。
お世辞にも綺麗とは言えない字。しかし、子供達はとても楽しんでいる。
「次はこの山菜の名前を教えるよー」
子供達の練習を微笑ましく見つめながら、イズルの授業は続く。
「さぁ、今日はこれくらいにして館へ戻ろう。帰ったら字の復習をやるよー」
籠一杯に採った山菜やら薬草を戦利品に、イズルたちは館へと戻っていった。
●
「刃物を怖がると余計に危なくなるのだ。自分の体の一部と思って振るうのだ」
イズル達がとってきた山菜を分けてもらい、ストレガ・L・リベルガストラが授業をスタートさせた。
彼女が教えるのは料理。ストレガがまな板の上で包丁を振るえば、子供達もおっかなびっくり包丁を食材に落とす。切った山菜を小麦粉の衣にくぐらせ、熱した油へダイブさせる。
「油は跳ねるのだ。やけどに注意するのだ」
ストレガの注意に一歩身を引きつつ、子供達は興味津々に彼女の手元を見ていた。
「春の新芽は少し苦いのだ。でもこれを美味しいと感じられるようになると大人と言えるようになるのだ」
揚げたての山菜が皿に盛られていく。
「とはいえ、これだけだと食卓とは言えないのだ。料理とは一品だけに非ず。食卓全体の味を調えてこその料理なのだ」
そう言うとストレガは、用意していた肉料理、卵料理の傍に山菜料理を並べた。
「食事はバランスが大切だという事をしっかりと覚えて帰るのだ。という訳で、用意完了なのだ。さぁ、皆で食べるのだ」
ストレガの許可を得て、子供達は机のご馳走にフォークを伸ばした。
●
「はい、それでは少し休憩しましょうか」
チョークを置きヴィルヘルミナが子供達を見る。彼女は字の読み書きを教えていた。
識字率の低いロスガリアで、字を書けるというだけで職にありつける。
何を目指すにしても字を書けて損はないと、彼女は親身になって読み書きを教えていた。
(本当なら鍛冶を教えたい所ですけど、さすがに小さな子にハンマーを握らせるわけにもいきませんしね)
ヴィルヘルミナがそんな事を思う間にも、子供達は沢山の字を手元の黒板へ書いていく。
「――皆さんよく頑張りましたね。まだまだ教えたいことがあるので、栄養補給と行きましょう」
しばらくしてヴィルヘルミナが休憩を指示すると、机に籠を置いた。
中身は彼女お手製のクッキー。子供達はその匂いに釣られ、わーっと駆け寄ってきた。
「慌てなくても沢山ありますから、仲良く食べてください」
子供達は彼女の話も聞かずに手を伸ばす。
ヴィルヘルミナはそんな光景を微笑ましく見つめながら――。
「……学者さんを目指すって息巻いていた子は、大丈夫でしょうかね」
ヒルルクの事を思う。
●
「用意したモデルを見て彫ってもいいですし、自分の頭の中にあるものを形にしても構いませんから、好きなものを彫ってみましょう。花や木、動物……何でも構いませんよ」
木版を前に頭を捻る子供達を見つめフクシア・S・シュルツが声をかけた。
彼女が教えるのは『彫刻』。小さな時から嗜んでいた芸事を子供達に伝える。
「彫刻刀はよく切れますから十分に注意してくださいね。必ず自分から離れていくように削るんですよ」
フクシアは怪我をさせてはいけないと、子供達の手元を注意深く見つめた。
芸事で身をたてるのは難しいかもしれない。だけど、これが何か手に職をつけるきっかけになればいい。視野を広げる一助になればいい。
フクシアはそう考え、子供達へ彫刻刀を渡した。
子供達は悪戦苦闘しながらも、自分の作りたいモノへ真剣に向き合っている。
「彫り終わったら、色を塗りましょうね。そして紙に移せば木版画の出来上がりです」
向き合う作品に色を乗せる。そうする事でまた世界が広がる。
フクシアはキラキラと眩しいばかりに瞳を輝かせる子供達に微笑みかけた。
●
「そう、交互に出し入れしていくのよ……」
布と糸と針を持ち奮闘する子供達を、シルディスがじっと見つめた。
「折り返しは少し難しいから……ほら、こうやるのよ」
シルディスは手の止まった子供の元へ歩み寄ると、すぐに詰まった所を見つけ、手を取り教える。
「針は小さくても刺さると痛いから気をつけて……」
裁縫は複数の針を使う。そして一本でも無くなればどこに潜んでいるかわからないほど小さい。
シルディスは子供達の間を行き来しながら、針の紛失が無いか目を光らせた。
「縫い上がったら中に綿を詰めましょうね……」
一通り縫い上がり、授業は次の段階へ。
シルディスが教卓に置かれた可愛らしいぬいぐるみを指さす。
それはシルディス自らこの授業のために作ってきたものだった。
子供達はぬいぐるみを見つめながら、自分でも作ると決意を新たに針に向かう。
「焦らなくてもいいわ……ゆっくり作っていきましょう」
そんな子供達を頼もしく見つめながら、シルディスの指導は続く――。
●
「税は基本皆の生活を良くする為に使われる。例えば道を作ったり災害に備える設備を作ったりだね。あと君達が暮らす孤児院の運営にも税が使われたりしている」
講堂で教壇に立つジュスト・ヴェルジーが、ヒルルクと子供達を前に教鞭をとる。
その横ではローザリカ・L・ディオールが、板書で補助を行っていた。
「君達にはまだ難しい話だと思う。でもこれは、人の社会にとってとても大切な事なんだ。子供や妊婦、病人や老人、皆が等しく働けるわけではないだろう? だから、『助け合う』仕組みが必要なんだよ」
ヒルルクを含め難しい顔をする子供達に、ジュストは出来るだけわかりやすくかみ砕いて説明していく。
「税として集めたお金で人の為になる事や土地を治めるのに必要な事を考えたり決めたり整えるのが政治。そして、それに関わるのがお役人さん。同盟では議員さんかな。王国では貴族や文官って人がそれをやっているんだよ」
ジュストはそう説明すると、後ろを振り向いた。
「それじゃ、今度はお金についてもう少し詳しく知ってもらおうか。ローザリカ先生の登場だ。さぁ、拍手」
板書を手伝っていたローザリカが子供達の拍手に振り向くと、ジュストにわざわざハードルを上げるなと一睨みしてから教壇に立つ。
「ご紹介にあずかったローザリカだ。よろしく頼む。僕が教えるのは経済というものだ」
そう言うとローザリカは教壇にいくつかの硬貨を置いた。
「皆も見た事があるだろう。これは『貨幣』と言われるものだ。いわゆるお金だな。そして、これを使って物のやり取りをする事を経済という。
そうだな。例えば……王国は野菜が採れるが魚が少ない。同盟はその反対だとしよう。それらを交換したいと考えるわけだが、どちらも大きさは不揃いだし腐る事もある。物々交換するにも基準がないんだ。だからこれが必要になる」
そう言って、色の違う硬貨を交互に持ち上げた。
「お金という価値の変わらないルールを定めて品物のやり取りするんだ。魚は銅貨3枚。野菜は銅貨2枚とかね」
後ろでは、ジュストは魚や野菜のイラストを黒板に書き、その横にコインのマークを添える。
「そして、お金を上手く使うには計算が必要になってくる。では――」
そう言ってローザリカが教壇の下から取り出したのはパウンドケーキだった。
「このケーキは50Gする。3割引きで売っている店と、10Gを値引きしてくれる店。どちらが得だと思うかな? 正解が出たら皆で食べようじゃないか」
ケーキの登場に色めき立つ子供達に、ローザリカは問いかけた――。
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休憩時間を挟み、講堂での授業は続く。
「多少の言葉遣いや姿勢が整うだけでも印象ががらりと変わります。礼儀作法を身に着けることは決して損な事ではございません」
教壇に立つレティシア・レインフィール。
「絵本の中のお姫様みたいに振舞ってみたいと思ったことはございませんか?」
そう言ってレティシアは、講義を聞く女の子へ目配せする。
「ですが、もしそのような幸運に遭遇する事があっても、礼儀作法が出来ていなければ台無しでございます」
レティシアは朗らかに微笑むと、一息置いてから本題へと入る。
彼女は特に礼儀と所作を重点的に講じる。自ら実践し、子供達に真似してもらった。
皆が一通りの礼義作法を覚えた所で。
「――では、ベルク先生へ交代いたしますね」
レティシアはベルク・オスマットへ教壇を譲った。
「うむ。皆、初歩の礼節は身についたと思う。ここからは実践じゃ」
そう言うと、ベルクは壁に立てかけてあったモップを手に取る。
「今から皆には『掃除』をしてもらう!」
子供達とヒルルクがベルクの言にぽかんと口を開けていると、彼女は二ッと微笑み。
「礼儀作法の授業だと聞いた? くく……掃除も立派な礼儀作法じゃ。いいか、礼儀作法が貴族だけのものだと思うなよ」
持ったモップでどんと床を叩く。
「よほどのことがない限りどこの商会だろうが組織だろうが入ったばかりの下っ端がやる事は基本力仕事。そう、掃除じゃ! じゃが、これはただの肉体労働に非ず。雇い主は与えられた仕事に対する態度を常に見ておる。ここで礼儀作法に則った所作を行えるかが上の者への好印象へつながる。覚えがよければチャンスも増えるぞ?」
きょとんと見つめる子供達へベルクは続けた。
「何が言いたいのかというと、何事も真面目にやって損はないという事じゃ」
そう言うと「さぁ、始めるぞ!」と、子供達とヒルルクへ掃除道具を配っていった。
●
「どう、ヒルルクさん。ちゃんと理解できてる?」
入れ替わり立ち代わり講師が来ては授業を行ってくれる。
簡単なものもあるが、やはり難しいものが多い。
ハーヴィはヒルルク一人では理解するのが大変だろうと、講師陣の補助をしつつ彼女を気に掛けていた。
「な、なんとなく……でもわからない所も多いかも」
ヒルルクもなんとか笑顔を返すが、いつもの元気はまるで感じられない。
苦手な事を必死に詰め込もうとしている気概は感じるが、基本的な勉強の要領がわかっていないのだろう。
ハーヴィはそんなヒルルクに、授業の内容をわかりやすくかみ砕き、時には一緒に実践して教える。
「子供達も頑張ってる。ヒルルクさんも負けないでっ」
ハーヴィが視線をやると周りの子供達も難しい授業内容に必死でついて行こうと努力していた。
「うん、ありがとう、ハーヴィ。わたし、がんばる! ……で、ここなんだけど」
「ああ、そこはね――」
講師の授業が続く中、ヒルルクはハーヴィの補助を頼り、勉強に励んだ。
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「お、おわったぁ……」
ぐでーんと机で伸びていたヒルルク。
たくさんの知識を得て、詰め込んだ彼女の頭はもうパンク寸前だった。
「お疲れ様でございます」
そんなヒルルクにレティシアが声をかける。
「先ほどの授業で話した事を纏めた資料になります。お時間ある時にでもご覧くださいね」
退出していく子供達を見送ったレティシアは、ヒルルクに紙の束を差し出した。
「笑顔と知識は淑女にとって剣と盾でございます。ヒルルク様はこういう物はあまり好まれないのは存じていますが、知っているだけでも周囲を守れる事もございますから、無駄にはなりませんよ」
ひくひくと頬を痙攣させるヒルルクに苦笑しながら、「頑張ってくださいまし」と伝え、彼女も退出していった。
「待った、どこ行くんだ?」
「え? 終わったから帰るんだけど……」
「終わったのは子供達の授業だろ?」
レティシアに続き退出しようとしていたヒルルクを引き留めたのは海神・江流だった。
「ここからは、ちょっと大人な授業だ」
嫌そうな顔をしているヒルルクに江流は苦笑する。
「……ヒルルク、身分についてどう考える?」
「え? 何いきなり」
「例えば王国の制度は身分に縛られていて不公平だ。帝国のように実力主義で誰にでも機会がある方が望ましい……なんて意見があったとする」
首をかしげるヒルルクに江流は話を続けた。
「でも、帝国の考えの方が素晴らしい、王国を解体してしまおう……とはならないよな」
「ならないんじゃない?」
「そう、王国というルールの中で努力して地位を得た者や、王国に守られている人にとっては、解体なんて言うのは、自分の首を絞める意見だからだ」
「何が言いたいの?」
「ようは、国も信仰も一つの視野に縛られていると、自分の正義が誰かの平穏を脅かす事もある。不完全だとしてもその中でより良いものを目指そうとするのが人間社会なんだよ」
「……難しいわね。もっと単純に考えればいいのに」
人の社会の仕組みを説いた江流に、ヒルルクは深く考え込んだ。
「そうもいかないのがこっちの世界なんですよ」
と、ヴィルジニアに挨拶を終え講堂へと入ってきたトーラ。
江流との会話を聞いていたのか、ヒルルクの傍まで来ると深くため息をついた。
「ヒルルク、これあげます」
「うん? なにこれ」
「GP教の絵パンダです。江流さんが仰ってましたけど、一つの信仰に縛られていると視野が狭くなってしまいます。こちらの世界を知るうえで、他の神様の教義に触れてみるのもいいと思ったので用意したんですよ」
首をかしげるヒルルクにトーラは話を続ける。
「ちなみにGP教は『人は白と黒が半々の状態こそ理想の精神状態である』と言っています。良い心と悪い心のバランスが大事だという教えですね」
「ふーん、変わってるのね」
「征竜信仰もわたし達から見れば変わってるんですよ?」
「えっ!? なんで!」
本気で驚いているヒルルクに、トーラは苦笑する。
「別にヒルルクにGP教に改宗しろと言ってるわけではなくて、他の信仰も受け入れられるようにしてみたらどうですか? GP教の教えは人の社会の事を的確に表していると思います」
トーラに言われヒルルクは考える。確かに知りたいと思ったのは自分だ。その為に勉強しに来た。知識だけではなく、考え方を学ぶこともまた必要なのだろうと。
「……わかったわ。二人共ありがとう。色々見て聞いてみようと思う」
そう言ったヒルルクに、二人は微笑んだ。
●
「あ、居ました!」
子供達に基本的な読み書き算数を教え終わったルアンナ・ミュラーが廊下でヒルルクの姿を見て駆け寄った。
「ルアンナ? どうしたの」
「いえ、ヒルルクさんのお勉強は順調かなって思って」
「あはは……ガンバッテマス」
ぎこちなく答えたヒルルクに微笑みかけると、ルアンナはご自慢のメロンパンを手渡した。
「私も色々と教えて上げられれば良かったんですけど、私にはこれくらいしかないって気付いて自重しました」
「そうなの? とっても美味しいけど」
「ふふ、ありがとうございます。あ、そういえばローラちゃんはどうしてます? まだあの場所にいるんですか?」
「ええ、ビ=ネクにお願いしてきたわ」
「それはアタイも詳しく聞きたいね」
と、二人の元へルチルがやってきた。
「いいわよ。えっと――」
ヒルルクは二人にあの日以降の話をする。とは言っても、特に変わった事はなく、ビ=ネクの欲しがっているある物を探す代わりにマーメイドを保護してもらう約束をしているという。
「その品っていうのは何なんだい?」
「竜の里に生えてる薬草。こっちで見た事ないんだけどね」
「薬草? ふむ……」
その薬草は里で解熱剤として用いられているものらしい。
ルチルは何故必要としているのか聞くがヒルルクは知らないと首を振る。
「里か……そういえばヒルルク、征竜や里についてもう少し詳しく教えてくれないか」
「征竜さまと里の何を知りたいの? あなたも実際行ったでしょ?」
「ああ、確かに行った。だが、最近視えないものが多くなってね」
首をかしげるヒルルクにルチルは続ける。先日の一件で互いの認識の違いは理解した。
そして、それを埋めたいとルチルは願った。
「ヒルルクが里や征竜の事を教える。アタイ達がこっちの事を教える。お互い得な契約だと思うが、どうだい」
「どうだいと言われても……まぁ、別に隠すような事じゃないから、何か知りたいなら言ってくれれば話すわ」
「そうか。では――」
そう言って差し出されたルチルの右手をヒルルクを取った。
マスターコメント
おつかれさまでした!
いやー、専門性がすごかった! 選択授業の幅がめっちゃ多かった!
これは子供達にとって唯一無二の勉強会になったのではないでしょうか!
この度はご参加ありがとうございました!
イベントシナリオ普通 報酬:標準25 / 4〜25人
2022年05月02日 09時12分55秒 公開
大成功
参加者
相談掲示板
トーラです。 よろしくお願いします! とりあえず、ヒルルクに勉強を教えようと思います(教材に絵パンダを用意しつつ)
アステルだ、みんなよろしく! オレは算数苦手だから勉強教えてもらう側だなー。 ……が、がんばるぞ!
No.3
リディリディです。 今回はよろしくお願いします。 私は講師役という大袈裟なものではないのですが、個室を借りて音楽などを教えられればと思っています。
ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 教導Lv5に話術Lv3を駆使して勉強会にあたってみよう。
ウォーゼルです、よろしくお願いしますね。 教える側で何かお手伝いできればと思っています。 何をするかはまだ考え中ですが、池で釣った魚で料理を…といった感じにしてみようかな。
イズル・M・ヴォルゴールです。よろしく。 雑木林で山菜や薬草探しながら、簡単な文字を教えようと考えています。
ギーゼラです。よろしくお願いします。 冒険者らしく傷の応急手当法でも教えようかと思います。 フフフフフ、ちょっと僕の腕を切ってみて、止血の実践もしっかり行いますよぉ!! 実践で怖くて出来ませんでした、では話になりませんからねぇ。 小さすぎる子には刺激が強いかもしれませんので、年長者から希望者を募ってみましょう。 特に授恵者の子は将来冒険者を目指すなら、覚えておくべき知識ですし。
僕はウォーリアのアリオン。よろしくね。 素直に剣術とか、身を護る手段について話ができると良いかな。