政治討論部の新年へ向けて

紀藤トキ

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シナリオID:1810

オープニング

 それなりに広い部室を確保したものの、何か活動内容がある訳ではない部活と言うのは存在する。というか、政治討論部こそがまさにそれだ。

「まあ、放課後に美味しいお茶を頂きつつ勉学に励むのも悪くないですわね」
「嬉しい事を仰って下さいます。お代わり如何ですか?」

 討論を活発にするため部内では身分を気にしないで振舞ってよいのでそれが肌に合わない貴族には居心地は悪かろう。身分派閥を気にせぬ討論の場をという設立経緯からしても、派閥に属する貴族生徒にはやや敬遠されている部活ではある。その点、ドルトン男爵家は数代前からの新興貴族なので、令嬢であるサラはトマスの付き人であるシオンやカナンとも気軽に会話する方だ。他にはタイコモが男爵家の嫡子。顧問のリヴァマス老は廃されたとはいえ元伯爵家、副顧問のテオドールは公爵家の五男坊なので多少は貴族もいる。冒険者達が大体は平民なので、部全体を見通せば平民率はやや高い。現在の学園のパワーバランスの縮図のようなところはあった。

「とすれば、そういう構成を活かして何か討議を進める、お題を考えるべきだろうか」

 トマスは腕組みしつつ考えるも、そもそも討論の為に討論の題目を考えるという行為は不毛な様な気もした。意見を戦わせるなら、何か必要があって行うべきではないだろうか? それとも討論の技量を高めるという目的で、時間と課題を設けて発表でもするべきか。

「何もなければ、何もないを楽しむのが良いよ」
「また頭脳労働は我々に任せる気ですか、カナン」

 メイド服姿でテーブルに身を預けて怠けるカナンに、タイコモが呆れたように言う。しかしまあ、名前通りの活動が何もないでは部として存続が危ぶまれはする。政治についてなにかやるか、討論を行うか、どちらにせよ議題は必要だ。

「……という訳で、部員と、まあ時々遊びに来るのは仮部員という枠でよいか? 彼らに何を行うべきかの意見を募ろうと思うのだが」
「良いと思いますわよ。ただ、どんな事ができるのかは先に考えておく必要はありますわね」

 トマスの言に、サラは紅茶をソーサーへ戻してから考え込んだ。現在の世界情勢はめまぐるしく動いているから、それについての質疑応答なども勉強になってよい、とサラはいう。もっともその場合はトマスかタイコモ辺りが回答者になるだろうから、各国の深い場所まではわかるまい。

「むしろ政治に限らず、何か分からないことがあったら部長に聞いて良い、という話にしたらどうですか? ほら、平民からみたら貴族っぽいアレコレの事は良く分からないでしょう」

 怠けていたカナンの耳を引っ張りつつ、シオンが言う。

「私に分かる事ならば答えるが、分からぬ事は分からんぞ。……まあ、顧問が二人もいるのだからそちらも巻き込むべきだな。逆に、平民のお前たちが答えた方が良い内容もあるだろうが」

 聞いたトマスも質疑については前向きに検討するようだ。そして、もう少し踏み込んだ討論の部分について、話すべき内容の当てはあると副顧問が口を挟む。

「新体制下で生徒会が動き出した。とはいえ何をどう持ち込んだらよいかの事前の打ち合わせができる場所、大勢集まって話せる機会はなかなかない。いっそ、この部活をそういう場所の一つとしても良いのではないかな」
「……テオドール先生、まともな事も仰るんですわね」

 普段は意見を言わないテオドールがまともな事を言い出した。視界にハフビがいなければ顔も頭も良い男ではある。あと金もある。婚活令嬢であるサラは、実家の母親が「侯爵家の縁者の方ですって? 是非お近づきになりなさい!」と鼻息荒くしていたのを思い出しつつ、ハフビを前にした顔も知っているので微妙な顔をしていた。

「失敬な。私は他の連中に比べればまともな教師だろう? ああ、私の専門は雑学、というか世界史概論ゆえに何でも聞いてくれ給えよ」
「吾輩は、ううむ。蛇についてなら、類似魔獣なども含めて講義ができるのだがのう」

 講師二人はそんな事を言っている。もっともテオドールの側は現役貴族の関係者ゆえに立場上、喋れない事も有ろう。学園の中の出来事については、比喩表現ではなく学園内に住み着いて数十年になるリヴァマスが詳しいかもしれない。

「ふむ。では質疑は適宜行う。これは顧問や部員への質問であっても構わず、問われた側は拒否権を持つが、話す場合は真実を。というルールで良いかな」
「良いと思いますよ。部員や仮部員同士で、仲良くなるにも良いでしょうし」

 ひとまずそうまとめたトマスに、タイコモが頷く。今日は書記役も彼が務めているようだった。

「副顧問の提案した生徒会への持ち込みの方は、そうだな。良く遊びにくる中に役員もいるが、彼らが不在であれば私の方から持ち込もう。役員でなくとも発議まではできた筈だ」
「そうですね。役員の方がいる方がやりやすくはあるでしょうが、生徒会にこれを依頼したい、というのは生徒なら誰でもできます」

 持ち込まれた先で役員が受け付けて、可否を判断し、あとは生徒会つきの職員が実際の予算配分などの実務を行う流れだ。大きく違うのは役員が受け付けるという段階を飛ばすことができるかどうかだけで、門戸は学生へ広く開かれてはいる。無論、受け付けられた後に、誰が担当であるかなどで優先順位の問題はあるのかもしれないが……。

「生徒会の体制が変わってすぐです。皆も戸惑っていてまだそこまで仕事も多くないでしょうし、今のうちなら色々ねじ込めるかも知れませんね」
「タイコモ、悪い顔になってる」
「では、相談の際の御茶菓子の用意をいたしましょう。カナン、休憩はおしまいですよ」

 タイコモを揶揄いつつ、部室つきの厨房へシオンに引っ張られていくカナン。トマスは一つ手を叩き、「では、そういう方針で掲示を出そう」と言う事になった。

解説

新年早々の政治討論部の活動ですが、生徒会選挙も終わったので何も討論すべき事がない。 早速の廃部の危機、というわけでもなく別にだらだら喋る放課後紅茶時間でも良いのですけれど。 真面目な学生であるトマスは何か活動をしようと考えたようです。 考えてこれかよ、とかいわない。 下記のタグを1~2位つけて下さると、マスターの執筆時に助かります。 【質問】 何か聞きたい事がある場合。回答者の指名があればその人物が。なければNPCが適当に応対します。 どんな事を聞きたいのかは記載しておいてください。 なお、「今、気になってる人いる?」みたいなガールズトークも質問に含めます。 【回答】 PCから質問されて応じたい場合。質問者のPCから指名が無い場合は、NPCが質問者になる場合もあります。 ですが、誰かが聞いてくれたらこれについて話すんだ! というだけだと寂しくなるかもしれません。 PCの中で質問者を見つけておいて、マッチポンプするのがお勧めです。 【陳情】 生徒会に何か頼む系の発議、議論など。役員がいる場合はその公約関係でも良いでしょう。 なお、メタな話をするとここで話された内容はマスター階層に「こんなシナリオネタが望まれてますぜ」と持ち込む事になります。 誰かの興味を引けば、関連シナリオを出してくれるかもしれませんね。私が出す場合もあるかもしれません。 【討論】 何かテーマを設けて、それについて語り合う場合。同じテーマで語る仲間をPCに探しておくと良いと思います。 誰もいない場合もNPCがお相手しますが、話題にしにくい物はマスタリングでカットされちゃう場合もあります。 【交流】 単に同じテーブルでお茶とお菓子を楽しみ仲を深めたい場合。 このタグで相手を指名していない場合は適当に割り当てますので、知らない人とのご縁ができるかも。 NPCの指定も可です。 【部活】 次回以降の政治討論部の活動について、提案があった場合。 なお、課外活動も可能です。合コンとか、ダンジョンアタックとか提案は自由ですが、採用されるかは未定。 【その他】 上記以外で、何か面白い提案などがあった場合。

マスターより

新しい年になり、一本目はこちらとなります。 他にやらねばならぬ奴、残したネタなどもあるのですが! この部活もちょくちょく出さないと忘れられてしまう。 そんな感じで、いつもながらの投げっぱなしイベシナです。 特に部員ではない人も問題なく参加いただけますので、学園放課後に美味しいお茶でも一杯、いかがですか。 あと、リヴァマス老とトマス君のお話は、NPC同士が過去について話して仲直りとかリプレイの題材にならぬ! と判断したので行間で話しました。 トマス君は過去の言いがかりについては謝罪し、でも濡れ衣だった家族の名誉回復も図らず遊んでいるリヴァマス老を尊敬はできない、とストレートに語ったようで、老人はそれには何も言い返さず、謝罪を受け入れたようです。年末体調崩さなければ、キャラクターノベルで自己納品とかするつもりだったのですがこんな場所でひっそり顛末を開示します。 (またシナリオで2人の仲を扱う際にはそのOPでも再掲示します。ご心配をおかけした方もいるので結果だけ早めにお伝えいたしました) 皆様の楽しいプレイングをお待ちしております。

リプレイ

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 年が改まって最初の政治討論部には、いつもの面々に交じり、新顔も遊びに来ている。

「後ろ盾のない平民学生にとっては敷居が低い場が望ましいという事か? いや、あちらにいるのは貴族子弟だな」

 当初、政治討論部は生徒会選挙と共に役割を終えると思っていたトマスは、不思議な事だと首をかしげた。

「あの、ローザリカ様、私達本当にお茶会を楽しませて頂くだけで良いのですか……?」
「ここは身分を忘れて歓談をする場だと聞いている。まあ大船に乗った気持ちで僕に任せておいてくれ給えよ」

 おどおどと周囲を伺うエリカ・プレトリウスに、自信ありげに言うローザリカ・L・ディオールは生粋の貴族子女だ。エリカは縁あって子爵家に世話になってはいるが当人は平民である。

「立場や身分に囚われずに自由に討論ができる部活なので、ごゆっくり歓談を楽しんでくださいね。もしも入部をしてくださったらとても嬉しいです」

 案内に立ったゲルダ・クラインはぎこちない2人の様子に思う所もあった。平民と貴族の溝はやはり深く、主従関係でもなく連れ立つと学園では目立ってしまう。もっとも、ローザリカの知人からすれば身分以前の問題で目を疑う光景ではあったらしい。

「おや、ロゼが誰かをお茶に誘うなんて珍しい。席ならこっちが空いているよ」

 早いうちに来場していたジュスト・ヴェルジーは、学園ボッチだと思っていた従姉に連れがいる事に驚いていた。が、彼も貴族の育ち故、感情を隠す術は心得ている。

「何故ここに従弟殿がいるのかな。エリカ君、私から離れないでくれ給え」

 ローザリカからすれば、ジュストのような『社交的な』男性にエリカを触れさせたくはない。

(せっかくエリカ君と友達になろうと思ったのに、従弟殿がいては話題を持っていかれてしまうじゃないか……!)

 そんな彼女のささやかな望みを察したわけではないだろうが、奥にいたヴェイグ=ベーリングが2人に声を掛けた。

「そこで立っていても始まるまい。女性は女性同士が落ち着く事もあろう故、お好きな場所に掛けられるが良かろう」
「そうさせて頂くよ。エリカ殿、あっちへ座ろう」
「ローザリカ様、あの、あちらの方は、宜しいのですか……?」

 困惑仕切りのエリカの手を引き、ローザリカはジュストとは別の華やいだテーブルへ。

「はじめまして、ザザ=ステルヴィナよ。よろしくねん」
「ルベア・ベルニよ。編入試験で学園生になったわ」
「編入試験……! 優秀で、いらっしゃるのですね」

 エリカがルベアに向ける目に忌避や物珍しさはない。ハーフビーストであるルベアは試験の合格後は学内で不快な視線を向けられることもあったので、フラットな扱いにホッとした。

「このテーブル……。というか、部屋全体で見てもヒューマン以外の方が多いのは面白いわよね」

 ザザが感心したように周囲を見回す。王国はヒューマンが多数派なのだが、この一室は見事に逆転状態だ。

「噂通りだね。ここならばエリカ君も過ごしやすいだろう?」
「え、はい。はい、あの、お気遣いいただきありがとうございます」

 驚いたように頭を下げるエリカを見て、ローゼリカは心中穏やかならぬ。友達になりたいのに、今のセリフは上から目線で押し付けがましかったのでは? もっとも、エリカ自身は気遣いを感謝している。

(私なんかの為に、心を砕いて頂いて、まるで友人のよう。いえ、ご厚意を勘違いして失礼のないようにしなければ。身分も立場も異なるのだから)

 そんな微妙な2人の距離感を察し、ザザは微笑した。

●
 雑な部活ではあるが、タイムスケジュールはある。開始時刻が来た後は部長のトマスが簡単な挨拶を述べ、質問があれば、と言った所で海神・江流が手を挙げた。

「秋に編入した1年の海神江流です。本日は宜しくお願いします」
「ようこそ、学園へ。それから言葉遣いは楽にしてくれて構わない」

 トマスにそう言われた江流は、遠慮なく口調を戻して言葉を続ける。

「……前からこの部の存在は知ってたんだけど、具体的に学園生が扱う政治討論ってどんな事話してるの?」

 貴族同士が互いの利益の為に互いを牽制するような政治論ならまだ想像はできるが、と言う江流の後に、ヴェイグも疑問点を追加する。

「そも、何故討論等と遠回りな活動を続けておるのだ? 思う所があるならば若者らしく行動を起こせば良かろうに」
「それについては、書記の私からお応えしても……、良いですか?」

 ゲルダが声を上げ、初めて参加する面々にまず部の設立経緯を説明した。学園に冒険者がやってきた事に始まる学園改革の動きと、それへの反対。トマスがそのどちらにも与せず距離を置こうとしたのがこの集まりの原点だ。改革にも反対にも加わらず、聴講生の意見を聞く場を設ける……、という中立維持の為の建前だったのだが。

「種族にも身分にも関わらず話ができる場所は貴重と感じて、私達、幾人かが継続をお願いしたのです」

 当時を思い返しながら、ゲルダは説明を終えた。あの時まであったようなトマスへの苦手意識が今はなくなった。知らない貴族男子という存在から、1人の人間として理解できれば無用な恐れはなくなる。そうして誰かの知らない事が分かるようになる場所として、この場所はこれからも続いて欲しいと願っていた。

「なるほど。物事には必ず目的があると思ったが。目的は既に果たした後であったか」

 ゲルダの話を聞き、納得した様子で笑うヴェイグ。江流への回答はトマスが引き継ぐ。

「そもそも、以前の学生は必ずどこかの家名を背負っていた。自分が誰の派閥にいるのか、自覚していたとも言える」
「つまり、政治に無縁な生徒はいなかった、って事か?」

 分かりの良い江流に、トマスは頷き返した。

「例えば食堂で誰が誰にどのような順番で声を掛けるかすら、貴族子弟の間では政治と無縁ではない。ここはそうではない者に政治を説明し、その上で分かりやすく言葉に出して討議する場として機能すればよいと私は思っている」
「……なるほどな。貴族だと、普段そこにいるってだけでも政治の話になるのか」

 息をするにも箸を置くにも影響があるのだと知れば、随分息苦しく、迂遠にも思える。しかし、彼女の住んでいるのはそういう世界なのだろう。

「まあ、集まってワイワイやってるこの時間は、やっぱり楽しいよね」

 特に知りたい事が無くても、ララベル・サン・ディーベルのように遊びに来る者もいる。そうやって自然体で過ごしつつ、交わされる会話や質疑で理解が深まるのであれば、それは良い場所と時間の使い方ともいえるのだろう。授恵者と言う『個の力』については、いつまでも政治の世界(各国や貴族等の有力者)が放ってはおくまい。トマスは、せめて利用されない程度の知識や付き合い方は身に着けて欲しいと、知り合いの増えた今では考えていた。

●
「改めて、俺の名はヴェイグ=ベーリング。入学したばかりの新参だが、よろしく頼む!」

 にっと笑うドワーフは、128歳の新入学生だ。続く年長者が33歳の江流なので飛びぬけて年上なのだが、若々しい見た目と思考でそれを感じさせない。今は先の編入試験で共に行動したルベア、ナキルと再会を喜んでいた。

「ナキルさんも、ヴェイグさんも。学園生活には慣れた? 私はついていくのに精一杯なんだけど」
「いや、まだ右も左もだな!」
「同じく……」

 その横では貴族子弟が立場の割にフランクな挨拶を交わしている。狭い貴族社会では、まったく知らぬ仲ではない。

「俺はジュスト・ヴェルジー。今日は新年の挨拶も兼ねてお茶を飲みにきたよ。よろしく」
「トマス・ダンテだ。こちらこそ今日はよろしく」

 そんなこんなで挨拶や自己紹介を終えて、ひとまずの話題は学園生活の抱負となったようだ。

「各々方は学園にてなんぞ成したい事などあるのか?」
「んー、皆とまず、仲良くなれるといいですね。皆が楽しい学園生活をおくれる様にしたいので!」

 ヴェイグが水を向けると、エフィルミアは気負い無くそう答えた。生徒会長として障りの無い内容を選んだという訳ではなく、素であろう。

「俺は、色々あるけれど。一つに貴族的な考え方や価値観を知りたいっていうのがあって。それで此処に来たんだ」
「なるほど。それは良いな。俺もずっとシグモルの山で暮らしてきた故、ここでは知らぬ事ばかりよ」

 江流の発言に、自分も知識を得るために入学したのだ、と笑うヴェイグ。

「私も色々あって学園生になった訳だけど、これと絞れる理由は無いわね……」
「理由は後から探すというのも、良いんじゃないかな?」

 考え込むルベアを、シルヴィアが優しく見守っている。副顧問は、前に怒られたので遠慮がちに時折視線を送っていた。今回の参加者にハフビはルベア1人しかおらず、必然的に目が吸い寄せられてしまうらしい。

「この部活のように、何事もないというのは贅沢な時間だが。それゆえ何かを行うための機会になるとも言える」

 サマエラ=フォリウムは、何も無いというルベアにはこれから何かをすると言う余裕があるのだと考える。余裕はあって悪いものではない。今日はサマエラ自身も力を抜いて自然体で過ごす日にしようと思った。

「そうだな。せっかくだから、作ってきた菓子を食べて貰おうか」
「これはケーキですか。ありがとうございます。切り分けてまいりますね」

 というシオンに、それくらいは手伝おうとサマエラ。普段もちょくちょく御茶菓子の準備を手伝ってもらう間柄故に、さほど遠慮もなくお願いする事になった。ザザもいわゆる大学芋やポテトチップといった手作りの芋菓子を提供している。普段食べなれない味はトマスら貴族子弟にも好評だった。

●
 挨拶が終わり歓談が始まってしばし、ザザが切り出した質問に、聞いていた貴族子弟達の表情がこわばった。

「バルヴィック侯爵家とライゼンナクト公爵家について、色々とお聞きしたいわ」
「……一般知識としてなら答えても良いが」

 何を知りたいのか、と問い返したトマスは当たり障りの無い事から答えていく。

「バルヴィックの当主はオーガスタス侯、ライゼンナクト当主はダミアン公で、共に高齢だが矍鑠としているらしい。アルベイルの両親については、父は存命の筈だ。細君は表舞台に長らく姿を見せていないと聞く」

 さすがに、他家の当主を推し量るような発言は礼を失するので評判は言及しない。過去の歴史についても問われ、少し躊躇ってから口を開いた。

「誰もが知っている程度の事として、バルヴィック侯爵家は現在こそ貴族派に属しているが、かつては中立派の家系に連なる家でもあった。過去に醜聞があるそうだが、詳細を記録に残すことなく家を保っている以上は責を問うべきでないと王家が判断したのだろうな」
「随分、危ういところまで答えるな、トマスは」
「少し心配ですね。トマス様なりに考えて線引きはしているのでしょうけれど」

 シルヴィア・A・カペルとレティシア・レインフィールが思わず顔を見合わせた。分かっているからこそ立場的に答えにくい質問だ。しかし、ザザにはそういう貴族的配慮が無い。

「それじゃあ、もう一つ。リーンエス王室で表に出て来るのは第二王子であるウィリアム王子ばかりで、国王陛下と第一王子の影が異様に薄いのには理由があるのかしらん?」
「王国民なら一般常識的に知っている事ではあるし、私が答えようか」

 さすがに学生に任せるのも宜しくないと思ったのか、テオドールが壇上に上がった。

「リーンエスの王族は慣習的に、民の前には滅多に姿を現さない。継承順位が低い王族が目となり耳となり、場合によっては腕ともなって市井に降りるんだ」
「それじゃあ、ご健在ではあるのね」
「もちろん。あと、王を危ぶむような発言は、時と場合によっては不敬罪になるから気を付けて欲しい」

 その後に、手を挙げたのはエルゼリオ・レイノーラだ。「帝国の事も聞いてもいいのかな?」と問われたテオドールは「分かる事ならばね」と安請け合いしてすぐに後悔する事となる。

「レイウェスト殿下の御両親って、実の父娘だと聞くけれど、帝国では近親婚って普通の事なのかな」
「ぶっ……、し、失礼。随分センシティブな所を聞くね……」

 テオドールは遠い目をしつつ、帝国であっても一般的ではないが違法ではないと告げた。正確には、近親婚を制限するような仕組みや法規が存在しない。ならば、他国からはどんな評判だったのかと重ねてエルゼリオが問うと、困った様子で「これは一般論として」と前置きをして回答する。

「まず当時の王国としては、帝国と融和する動きを断ち切られた感があったね。大陸一の美姫と名高い皇女が王国に嫁ぐ事で平和を嘉したいという意見がそれで潰れたから」

 帝国内の有力者に嫁がせるなどであれば口も挟めようが、皇帝が娶るというのは王国が何も言えない唯一のカードではある。素っ気ない対応に、よもや戦争が近いのではないかと噂されたこともあった。

「イダ皇女自体には特に何も無いかな。そもそも『大陸一の美姫』という肩書の割に、彼女は表舞台に出てきたことが無いんだ。思い入れがないせいか、同情も排斥もイダ皇女に向いてはいなかったな」

 あくまで皇帝の暴挙と見做されており、対王国の拒絶の意思表示と見られてもいた。レイウェスト皇子が生まれた事で、形だけの婚姻ではなかったという二度目の衝撃が走ったが、忌避感は最初の際に出尽くしていたようだ。

「つまり、問題がある結婚ではないけど、ドン引きされたって感じかな?」
「まあそうだね。うん。若者の言葉はこういう時は便利だな」

 受けた回答をエルゼリオが総括すると、テオドールはため息一つ残して着座した。軽い議題はないのか、と見回すトマスの視線に、リサ・ベイカーが手を挙げる。

「はい。公約に掲げた料理コンテストについてですが、広く意見募集です。何かありませんかね?」

 自分の掲げた簡単な方の公約について述べると、料理という身近なアイデアだけに皆も思う所があるようだ。

「そうですね、例えば季節ごとにテーマなど決めて定期開催できたら楽しそうですね!」
「でも、頻繁に開催したら料理の種が尽きてしまいませんか……?」

 コルネリウスの言に、配膳の手を止めたシオンが考え込む。トマス一行の料理番である彼女も料理大会に興味があったらしい。

「うちの料理大会では幾つかの部門に分けて、レギュレーションも変えることで幅広い層が参加出来るようにしているね」

 実家で季節ごとの料理大会をしているというジュストが実例を挙げる。材料費や手間を度外視した究極の一品。多くの人に食べて貰いたい大衆向けの一皿。大きな大会であれば全部門を同時開催してもよいだろうが、学園でやるなら今回はこのルール、次回は別のルールというように区切って行うのも良いかもしれない。

「料理コンテストの審査員に有名な方をお招きするのもよろしいかもしれません」

 レティシアが発言すると、呼べる相手に心当たりのある学生が頷いた。リサ自身も実家の伝手を使えば誰かしら呼べるかもしれない。親がそのまま来る可能性もあるだろうか。

「食堂メニューへの追加もあると……面白そうだな。新たな味に出会えるのはとても良い。生きる上での楽しみは、いくらあっても構わないものな」

 サマエラが嬉しそうに言えば、さらに多くの学生が首肯した。ジュストの言うようにルール次第だが、予算や材料がお手頃なコンテストを行う時には、食堂と提携するのも悪くはないだろう。

「文化祭もあったし、料理大会があるなら、次は学園生対抗『大運動会』みたいな行事もやって欲しいかな」
「ふむ。それは今年はどうだったか……。実施される年もあるのだが」

 ララベルがそんな事を言い、トマスが予定を確認する。他の在校生も、そう言えば去年は無かったな、という顔をしていた。

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 きわどい質疑で凍った空気も程なく解け、雑談の話題は年末年始の動向となったようだ。

「俺は領地に戻ったけど、諸々あったにも関わらず皆健やかに冬を迎えられていてホッとしたよ」
「ふむ。私も所領にある孤児院へ出かけた程度か」

 言い出しっぺのジュストは貴族の嫡男としては普通の年末だったらしく、トマスは慰問に回った程度のようだ。聞いていたララベルがにっこり微笑む。

「うん。あれは楽しかったよね。また機会があったら行きたいかも」
「そうだね。もう少しトマス君とも親交を深める機会が欲しかったんだ」
「またそういう機会があれば、協力を依頼する事もあるかもしれない。その節はよろしく頼む」

 気さくに言うララベルとエルゼリオに、トマスが頷き返す。レティシアがふと思いついたように、今後の部活で迷宮へ向かう提案を言及した。

「迷宮へ、か?」
「前と違って最初から一緒に行くの? それも面白そうだね」
「そういえばトマス君とは良く一緒になるのに、肩を並べて戦ったことは無かったかな」

 ララベルの実力は目の当たりにしているが、エルゼリオの戦い方についてはトマスの知る所ではない。幾度か顔を合わせた授恵者の実力を測っておくのも有事の備えにはなるだろう。などと考え込む様子に、レティシアは意外な所も感じていた。

(昨年のカカオ以来、交易面での価値が上がったであろう迷宮の視察、と理由をつけて皆で出かければ、お疲れのトマス様の気晴らしになるかと思ったのですが)

 実のところトマスはお忍びで迷宮に挑んでいたりもする。王国貴族の中では、迷宮の秘める価値や交易の可能性などを良く知る側ではあった。

「最近は如何ですか? お悩みなどありませんか」
「コルネリウス嬢か。大なり小なり悩みがなくなる人生は味気ないと思う」

 つまり悩みは尽きないという事か、と察して陳情を持ち込むつもりだったコルネリウスは申し訳ない気分になった。しかし、彼女のアイデアである「目安箱」を聞いたトマスの感触は芳しくない。

「嫌がらせを受けた生徒が危機を訴えるような場合では投書も有用であろうが……。学園の未来に関わる提言は、己の名と責を負うべきだと私は思う」
「ですが、身分の低い方が嫌がらせを恐れて意見を言いにくい、というような事はありませんか?」
「そこで恐れて口ごもるようであれば、学園運営の一端に関わる発言の責などそもそも担えまい。採用された矢先には、提案者が働く必要もあるだろうに」

 貴族であるトマスには、平民が声を上げる事への恐怖感が分からないのかもしれない。発言には責任が伴い、その責任を負う気が無いのなら声を上げるべきでないと思っているようだ。

「コルネリウス嬢の提案は、私としては反対だが、貴女が提起するのを止めるつもりはない」
「どういう事でしょう?」
「貴女自身で提案を纏めてみたらどうだろうか? 王国文書の書式が分からないのならば手伝うことくらいはしよう」

 トマスはコルネリウスについて、そういう形で後押しをするようだ。役員自ら議題に挙げるならばそれを阻む事はない。その後で学園側が通すか通さないかと言うところは分からないのだが。

「学園も、色々と動いているようだ。案外、早いうちに皆の提案に対する動きは見えるかもしれないな」

 さて、この集会が終わるまでの間に幾つの提案が訴状に上がるのだろう。政治討論部の書記としてやり取りを書き留めているゲルダを労うように会釈し、トマスはそう零した。話題の切れ目に、同じく孤児院訪問の同行者だったナキルがトマスへ礼を言いに現れる。

「あん時は助かったぜ、サンキューな! ミアがこっち見てない間にお礼言っとこうと思ってさ」

 孤児院の屋根の上にいた時と聞いて、思い出したトマスは怪訝そうにする。

「気にするほどのことはない。しかし、何故あのような場所にいた?」
「んん? 屋根の上で夜空を眺めると、なんかイイ感じするだろ?」
「うんうん。寝転がって見上げたりするの、冒険明けの一時って感じでいいかも!」
「そういう物か?」

 ナキルの浪漫はトマスには伝わらなかったが、ララベルとは分かりあえたようだ。そんな話の後で、改めてナキルは頭を下げた。

「それと、学園のコトまだ色々解らねェ事あるからさ、そん時は話聞かせてくれねーか、トマス先輩」
「その程度であれば、先達の務めでもある。この部活も門戸を開いているから、いつでも来ると良い」
「ふふ、私の公約の兄姉制度の、前例になってくれるというなら歓迎するよ」

 シルヴィアが笑いながらそう言った。まあお互い、一対一で面倒を見るという程のつもりでは無いだろう。ナキルが気にしていたエフィルミアはと言えば、最初の年末の話題でもじもじしていた。

「私は……、プレゼントも貰えて、結構楽しく過ごせた、かな」

 胸元の花の飾り(チョーカーネックレス)を弄びつつ、赤面するエフィルミアは、江流が宴会の席で見た際とはまた印象が違う。彼女がチラリと向けた視線の先を追えば、トマスと話し終えたナキルと目が合った。エフィルミアの甘さがすぅっと消えて、目尻がきりりと上がる。

「あー……」

 じろりと睨まれたナキルは、諦めたように肩を落としてエフィルミアの方へ足を向けた。なんとなく眺めていたルベアにも分かる空気感に、なるほど彼女のお相手が彼かと合点がいく。

「ミア、学園の編入試験、合格して来たぜ」
「合格おめでとう、ナキルくん!」

 エフィルミアの目を見上げ、まだ少し眩しく思いながらも、ナキルは祝辞に嬉しそうな笑顔を見せた。

「遅くなったけど、コレでミアとも同級生だからな。何かあったら、オレがお前を助けるぜ」
「どうかな?私が助ける方かもよ?」

 ようやく追いつけたと思ったが、ふふんと笑う相手は少し先輩な上に生徒会長だ。一歩進んで、本当に一歩が縮まったのかも怪しい。とはいえ、追いかけ続けると決めたのだ。固唾を飲んで見守るルベアの目の前で、ぐぐっと何かが盛り上がったような気がした。気がしたのだが。

「……あ! ヴェイグさんも合格おめでとうございます!」
「おお。会長殿直々の、祝辞はありがたい事だ。……が、そちらの話題はもう良かったのか?」

 こんな風に、突然するりと間合いを外されても、泣かない。

「まぁ、そんなトコも好きだからな」

 ぼやきながらも、視線を先に逸らしたのが自分で無かった事に、少しばかり胸を張る。そんな微笑ましいやり取りの反対側では随分ぎこちない交流がはぐくまれているようだ。

「こんにちは、俺は……」
「は、はい。ヴェルジー家のジュスト様、ですね」

 ローザリカのガードをかいくぐり、挨拶に訪れたジュストの名前を、エリカは自己紹介で覚えていた。特に彼に興味があるのではなく、貴族相手に失礼が無いようにと言う意識からなのだが、ローザリカは少しばかり面白くない。

「従弟殿など放っておいて僕と楽しくお話ししよう、僕と!」
「ええと、ローザリカ、様……?」

 ぐいぐいっと割り込むローザリカを無碍にもできず、さりとて伯爵家のジュストを無視もできず。まさか本当に身分を抜きに歓談して良いと思ってはいないエリカが卒倒しそうになっているのを察して、ジュストは苦笑交じりにすっと引いた。

「彼女の相手は大変だろう? 困った時は相談に乗るよ」
「は……? いえ、そんなこと、は」

 掛けられた言葉を否定するころには青年は別卓のトマスらの会話に混ざっている。ローザリカはこの隙に、会話を予定の軌道に戻そうと奮起した。そう、従弟など最初からいなかった。

「エリカ君は、年末はご家族と過ごされたのかな」
「……いえ、未だ不慣れなことばかりで帰っている余裕がなく……今年は手紙だけに」

 寂しげに言う様子からは、彼女の後見についているシュルトハイス子爵とは良い関係性なのが分かる。それならば、とローザリカは言葉を続けた。

「君の御実家には僕も是非一度伺いたいと思っているんだ。……勿論、商談も含めてね」
「本当ですか? 嬉しいです。一面の綿花や紡績と染色の工場も是非一度ご覧頂きたく……!」

 リップサービスで付け足した最後の部分に物凄い食いつきを見せられて、ローザリカは慌てる。もしかして、友情を築くには不要の一言だったのだろうか。一方、エリカの側はエリカの側で、貴族として格が上のローザリカに失礼が無いよう、うっかり勘違いしないように必死だった。そこへ後援の子爵家にとって利益になりそうな話を聞かされて飛びついた次第である。実は相思相愛のエリカとローザリカが、友情を確かめ合うのは中々の難題であるらしい。

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「ふむ、ツチノコは元来『幻の蛇』じゃからな。迷宮ツチノコも然りじゃよ」
「えー! そうなんだ」

 皆で聞くほどの事でもないと、リヴァマスを捕まえて尋ねたエルゼリオは、自分のペットのツチノコの素性が知りたかったらしい。そこへ、シルヴィアを伴ったトマスがやってきた。

「シルヴィア嬢が質問があるそうなのだが、貴殿の方が知っていそうなのでな」
「ふむ? 我輩に答えられる事であれば良いのじゃが」

 不機嫌そうながらもリヴァマスの顔を見て話す様子からすれば、関係は前よりもマシになっているようだ。事情を知る同席者の中で、気に掛けていた面々がチラチラと視線を交わす。

(お2人で、無事にお話ができたのかな……?)

 ゲルダはホッと安堵の息を吐いた。それはさておき、シルヴィアの質問である。

「学園も歴史が長いからね。不思議な現象の噂話や怪談があってもおかしくはないと思ったんだ。学園七不思議、とか無いものかな?」
「ふむ。辺境都市程ではないにせよ、そういった話はぼちぼちあるのう。多分、図書館に卒業生達の研究が有ったりすると思うが」

 妖精かどうかは定かでないが、一昨年の聖祭シーズンにはジド・ルウを名乗る人物が遊びに来たとかいう話も聞く。珍妙な噂のどれが本当でどれが誤りかは定かではない、が。

「なるほど、噂を集めて纏めてみるのも良いな。怪談の正体がクリーパーのような異変だったとしても、危険な場所から学生を遠ざける事もできるしね」
「ふむ。学園はクリーパーは滅多に出ぬ場所じゃと聞くので滅多なことはあるまいがの」

 リヴァマスは、エーテル的に安定した場所なので早々裂け目が生じる事はない、という。ただ、魔獣を持ち込んで逃がしてしまうような研究者がいる可能性は有るとも。

「そういった様々な学生の役に立つ情報を集めて、定期的に学内誌を作るのはどうでしょう?」

 部活動のPRやイベントの告知など、派閥にとらわれぬ情報誌を、と志していたコルネリウス・アーラが提言する。堅めの情報ばかりでなく噂レベルのアレコレも掲載すれば、読み手の幅も増えそうだと、文芸的な視点からシルヴィアも同意した。

「生徒会で出す季節ごとの報告も、必要事項はまとまっているのですけれど……」

 生徒会の事務員の手になる記録なので、あまり面白みもない。いっそ、生徒会と別に発行組織を作って運営しても良いのではとコルネリウスは思っていた。文芸を好む学生も一定数いるので、軌道に乗せられればうまくいくかもしれない。現生徒会の公約などを鑑みるに、発行組織は派閥などの影響を廃する事ができれば良いとも思う。

「公約と言えば、学園開放検討委員会についてなのですけれど……」

 自分の掲げた難しい方の公約については、リサは色々と考えていた。授恵者の受け入れから、将来的には才ある平民へも入学の門戸を開く方針は、学園長も持っているはずだ。入学を希望する平民の学費をどうするのか。学内で身分の差別はともかく区別はどうつけるのか。

「その辺りは学園長を中心に考えていると思うが、それを早めに知りたいと?」
「いえ。そう言う事を、貴族、庶民、先生の代表で集まって意見を出し合い、決める委員会を作りたいんです。難しいですかね?」

 語っている間の周囲の表情や返答するトマスの雰囲気からも、リサは風向きが良くないのを理解した。シルヴィアとレティシアが顔を見合わせ、各々政治的な視点から困難な理由を説明する。

「学園の入学に関する部分は、政治的に言えば権益なんだ。今回は学園長の派閥が勝ったので、平民への解放の為に使うつもりはあると思うよ。ただ、そこに学生を噛ませるとなると、一工夫いるだろうな」
「難しいでしょうね……。意見を聞く迄なら妥協できるかもしれませんが、決定権は譲れないでしょう」
「むしろ、貴族派が入り込める機会をチラつかされれば、一度落ち着いた筈の火種が燃え上がるかもしれないよ」

 案外政治的にも洞察力のあるエルゼリオが負け組の思考をそう予測し、困ったトマスはそういう事に頭が回るタイコモを呼んだ。

「学園側に『意見を聞く場』を提供させ、そこの意見を彼らが利用したという形式を整えれば通る話かもしれません」
「なるほど……、名を捨てて実を取るということですね」

 それがリサの考えと合致するかはともかく、手段としてはそういう物もアリだろう。

「では、先生方や生徒会だけでは目が行き届かない学園内の問題対処に、様々な立場の信頼出来る生徒達にお手伝いして頂くのは如何でしょうか……? 仮ですが風紀委員、というような名前で」

 レティシアの提案は取り締まられる側の身分を無視する事も難しく、ケースバイケースにならざるを得ないのが難点といえようか。現状でも行われているような事件ごとに解決を依頼する形式ならともかく、一定の権限を与えられた委員のような物を作るのは現状の学園では難しそうだ。なにせ、生徒会役員ですら他の学生に対する権限としては、何か強い物がある訳ではない。

「私が生徒会長です! 控えおろう! っていう訳にはいかないですしねー」

 冗談めかしてエフィルミアが笑う。とはいえ、人数も肩書も、何かをしようかと提案する際に表に出せば多少の力にはなる。何がしか意見を取りまとめる場所として役に立ったなら幸いだ、とトマスが最後に述べて、新年最初の部活は御開きとなった。

マスターコメント

初めてさんが大勢いた割に入部希望者はいない今回。 と思ったら「入部希望者はプレイングにそう書いてね!」と書き忘れていたと気づきました。 ……まあ、そう言う事もありますよね。 討論部の今後の提案とか公約関係についてとか陳情とかイイ感じに皆様で出していただいていましたし、交流も楽しく行えていたので大成功としています。と言うか失敗する方が難しい目標ですかね……? 次回の政治討論部は迷宮に行くかもしれませんし、何か学園で動きがあるならそれに便乗するかもしれません。 皆様のご意見ご要望はシナリオのネタになって、いつかポロっと誰かのシナリオで出てくるかもしれません。 あるいは出てこないかもしれません。のんびり気長にお待ちくださいませ。
イベントシナリオ

イベントシナリオ普通 報酬:標準17 / 4〜25人

2022年01月17日 01時25分17秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. トマス・ダンテ

    (今見返して気が付いたのですが、テオドールは侯爵家の五男です。公爵は誤字でした。申し訳ございませんが皆様の心の目で修正しておいてくださいませ……)

  2. ナキル

    「ナキルだ、よろしくな! さて…どうしたもんかな。とりあえず、トマスのやt…先輩にでも挨拶してやろうと思って来たけど。 …(【質問】のガールズトークは一番無いな…) ……まぁ、もうちょっと考えられるか。」

  3. リサ・ベイカー

    リサです。 生徒会庶務です。 何か、ご意見あれば… わたしとしては、公約の一つとしてある、学園開放検討委員会について、軽く考えをお話しさせて頂きつつ、 もう一つの公約、料理コンテストについて何か意見頂ければな、と…

  4. コルネリウス・アーラ

    コルネリウスです。 生徒会書記をしています、よろしくお願いします。 私の公約は、様々な生徒の意見・要望を集めて公平に聞けるように、というものですので補佐的な部分は大きいのですが。 こうしたら要望など出しやすい(例えば目安箱が欲しいですとか)、などのご意見。 あとはイベントの告知や、学園全体の様子を知りやすい生徒会誌の発行など、少し考えていまして。 部活動PRなど、会誌などに載せたい内容もあれば、こちらもご意見伺いたいです。 料理コンテストは、私も個人的にも気になっていまして…。各回や季節ごとにテーマなど決めたコンテストなら、定期的な開催も出来そうで楽しそうですよね。

  5. シルヴィア・A・カペル

    シルヴィアだ。 生徒会副会長をしている。よろしく頼むよ。 何か意見があれば聞かせてもらえると有難い。 今回先生方に尋ねたいことがある。 学園は歴史が長いから、不思議な現象の噂話や怪談があってもおかしくはない。部室に妖精が住んでるとか、異世界に続く階段があるとかね。そういった話があるかどうか質問するつもりだ。学園の七不思議、なんて楽しそうだろう? 噂が集まったら纏めてみるのも良いかもしれない。妖精の祝福を受けたホールで踊るイベント……というのも素敵じゃないか。危険な場所から学生を遠ざけることも出来るしね。料理コンテストや生徒会誌の発行も妙案だと思っている。 皆にとって良い一日でありますように。

  6. ヴェイグ=ベーリング

    先日入学したばかりのヴェイグという、よろしく頼む! 【質問】や【陳情】が出来ると聞いてな、俺のような年寄りだからこそ見えることを一つぶっこんでみようではないか、とあれこれと考えておったのだが……うむ、段々と面倒くさくなってしまってな!やめにした!わはは! 生徒会なるものも活況のようで気になる所ではあるがな。 ここはやはり学生らしくな、学生同士の縁を結びたいと思うている。 【交流】で皆と話しをしてみたいと思うがどうか? 折角の機会故な、トマス殿達も誘っておこうかと思うぞ。 何も決めずともあとらんだむに縁が決まるようではあるがな、それはそれで面白いが。 なんぞ話してみたいと思うたものは声を掛けてくれ!話題も何も決めておらんがな、わはは!

  7. ナキル

    「…あ。(エフィルミアに気付く) (…そう言えばまだ、学園に入学した話してなかったなって顔)……。」

  8. シルヴィア・A・カペル

    >ヴェイグ 久しぶりだね。編入試験合格おめでとう。 私は先述の先生方への【質問】をメインにする予定だけど、プレに【交流】でヴェイグ達の会話に参加すると書かせて貰うね。話題はおまかせも楽しそうだ。 当日はよろしく頼むよ。

  9. エフィルミア

    じゃーん!生徒会長のエフィルミアです! よろしくお願いしますっ。 質問を貰ったら頑張って答えますよー!(ふんすっ) 難しいお話ばかりも大変なので 私も今回は【交流】をメインに行きたいなって思ってます! せっかくの仲良くなる機会ですしねっ。 ヴェイグさんよろしくお願いしますー! ナキルくんも何か私に話してない事があるみたいだし…じっくりお話聞こうか!(じーっ)

  10. ナキル

    【交流】メイン、トマスにも軽く絡もうと思いつつ。 「>ミア …お、おう」

  11. ヴェイグ=ベーリング

    >カペル殿 久しぶりだな、息災にしておったか! カペル殿も学生であったのだな。祝辞感謝だ、俺が学生とは似合わぬが折角の機会故な! 学生同士として交流して話せるのも楽しみだな。共に学ぶ学友としてもよろしく頼む! >エフィルミア殿 生徒会長殿なのだな、よろしく頼む! まだ右も左もわからぬ故、会長殿への質問は特に思いつかなんだがな。 うむ、しかし、折角の縁だ。楽しく会話をしようではないか! >ナキル殿 学生に知り合いがいたようであったが、成程。エフィルミア殿の事であったか! ナキル殿との会話も楽しみにしているのだがな。 それよりも二人の交流を楽しみにしているぞ!わはは!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0