【豆採】オーク王子とチョコの城
紀藤トキ
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シナリオID:710
オープニング
『ブヒ……』
彼は、縄張りの中の沼地を思い描いた。一面の泥が埋め尽くす広い場所は、守りに適している。そして、最近その泥はより粘っこく、乾かせば固くなるような変容を遂げた。それを利用しよう。これまでになかった思考が湯水のように溢れてくる。全能感を覚えながら、その迷宮オークは一歩を踏み出した。
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探索者支援ギルドは、エドゥノーグを動かす三組織の一つ。迷宮に潜る探索者との接点は一番多いだろう。その日の朝、その長であるエフィミア・リリックは積み上がった書類の整理に追われていた。外見年齢は20歳過ぎなのだが、長命種である彼女はエドゥノーグでも長老格である。見た目も言動もそうは見えないのだが。
「迷宮オークキング? 上層で出たの?」
サインと閲覧を機械のように続けていた彼女は、一通の報告書に目を留めた。オークキングは本来なら中層の奥の方で出てくるオークの変異種だ。上層をうろついている探索者には荷が重い。しかも、配下を組織して軍のようになっているらしい。ベテラン探索者に依頼して処理してもらうのが良いだろうか。
「……あ、でもキングっていうほどでもないみたいね、これ。頭の良さのわりに体格はそこそこか。うーん、だとしたら……」
エフィミアは思案する。昨年秋ごろから急増した新規登録の授恵者達は、現在の所、探索者支援ギルドでは別枠として扱われていた。戦闘能力的な実力は十分でも、迷宮の何たるかを知らない者が多いという意味での呼称だ。彼らへ現在解禁されているのは迷宮の浅層と上層まで。だが、中層へ踏み込める戦力を持っている者もボチボチ出てきているとは聞いていた。
「ふむ。ルーキー君達に依頼してみましょうか。彼らが中層でも通用しそうかどうか、試してみるのも悪くないわ。監督官は私がすれば、何かあっても問題ないし。よし、そうしましょう」
どこかうきうきした風情で、エフィミアは席を立つ。机の上にまだ書類は残っているのだが。探索者上がりの例に漏れず、彼女は現場の方が好きだった。
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「と、いうわけで。集まってくれてありがとうね。今回依頼する敵はオークプリンスよ」
聞き覚えの無い単語に、周囲がざわついた。ちなみに書類上の正式名称はレッサーオークキング。勝手に敵の呼び方を変えたエフィミアはしれっと話を続ける。
「オークの中でちょっと頭と体が強くなった変異種ね。こいつが周りのオークに声をかけて、なんと! 一晩でお城を作ったみたいなのよ。……泥のお城だけどね」
最近すっかりチョコ色に変わった迷宮の一角。かつては沼地だった場所がチョコっぽい何かに埋まっていた。甘ったるい匂いと粘っこさがあるいにせよ、あくまでエーテル変容したチョコっぽい何かである。持ち帰ってみるとただの泥に変わってしまうと報告されており、戦利品としての価値はない。が、資材としてはそこそこ有用だったらしい。
「第一発見者のグループが魔法を打ってみたけど、大した傷もつかなかったそうよ。チョコ固めただけで石みたいになるんだから、困ったものだけど……。よくそんなこと思いついたわよね、このオーク」
そうして作られた一夜城。城と言うには雑な代物だが、四隅には弓櫓のようなものも作られていたらしい。時を置けばどんどん堅固になっていくだろう。
「そのお城にいるのが、プリンス君と配下のオークたちね。弓オークとか剣オーク、魔法使いオークみたいな変異種もいるみたいだから、オークだからって甘く見ちゃ駄目よ」
雑兵オークも併せれば100体ほどはいるだろう。それに加えて、チョコ沼には別の魔物も住んでいる。マッドゴーレムの変異種チョコゴーレムと、どこでも見かける迷宮カエルの変異種チョコカエルだ。こいつらは環境に合わせて変異しただけなので、強さは以前と大差ないらしい。が、派手に城を攻めだせばつられてやってくる可能性はある。
「横から奇襲とかされるとめんどくさいから、気を付けてね。あとは……、何かあったかしら。あ、そうそう。オークを倒すとカカオ豆箱とか落とすけど、それは全部まとめて清算するわよ」
プリンスを倒したグループも、後方で支援しているグループも基本報酬は一律と言う意味だ。探索者は6名程度のグループ単位で動くことが多いので念のためにそう補足したのだが、冒険者ギルドであれば、20人や50人といった規模で発注される仕事もあるので、この場にいる授恵者達にとってはそこまで目新しい条件でもない。
「現地には見届け役として私もついて行くから、よろしくね。あなた達だけでどうしようもなさそうだったり、誰かが危なかったりしたら手を出しちゃうかもしれないけど、そうでも無ければ何もしません」
相手のオークはそこそこ多いので、もしも引き受ける授恵者が足りなければエフィミアが開幕でぶっ放すつもりなのだろう。このエルフ、やる気である。
「ええと、他に注意事項は無いわよね……。うん、無さそうね。それじゃあ、集合はこのあとすぐ。お昼前には出発よ!」
かくして、レッサーオークキング討伐作戦が始まった。
解説
マスターより
リプレイ
「チョコレートの様な泥でお城、ですか……。城と言うよりはまだ砦ですね」
「沼にはやっぱり、何かいるよ」
エーテルで夜目が効き、視力も高めたスィーリーンとニール・ロブラリアは城や周りの様子を確認している。同様にその組み合わせでスキルを用意してきたセロンガード・シュタインドルフは弓櫓を注視していた。
「櫓1つに4体、うち弓持ちは3体。……いえ、すぐに増えますね」
敵からも、冒険者の集団は丸見えだ。見ている間にも櫓の上の敵は増えている。サイズ的に、6体も入ると窮屈になりそうだが。
「少し、すり合わせをしましょう」
今にも飛び出さんばかりの面々に、ミツキ・アインホルンがそう声を掛けた。個々の力を活かした正面からの力押しでも勝てはするだろうが、個を束ねた集団としての戦いこそ彼女の目指す領域だ。
「『攻城戦は3倍の兵力で攻めるのがセオリー』と啓示も告げています。数の不利はカバーしたいですね」
「しかし、時間を掛けるのはこの場合悪手です。スパッと短期決戦で決着をつけましょう」
フリーダ=ブロムヴィストが言えば、同じ点を憂慮していたノックス・マグナが首を振る。籠城する相手へは兵糧攻めが有効とされるが、時を与えれば城を堅牢にするばかり。それに、迷宮のモンスターは食事を必要としないケースすらある。
「迷宮から生まれ組織立った集団を作るオークか。どういったヤツらか興味はあるね」
ルチル・プルメリア・グレイハーツにも、相手を観察したいという欲はあった。が、あまり時間を掛けられない要素は味方にもあると認識している。長引けば、同行しているエフィミアが暴れだすだろう。当人はといえば、今のところはおとなしく様子を見ているようだ。
「お、今回はダブルエフィだね」
エフィミアを見てロイ・アウレアがそんな事を言えば、仲間のエフィルミアが振り返る。目を合わせてから、ぷりぷりと怒り出した。
「ここにロイさんという超イケメンがいるのに、オークがイケメンを名乗るなんて厚かましい!」
「え、オークが名乗ったわけじゃないような……。依頼説明で聞いたのでしょうか」
記憶力を頼りにエヴァン・ピオネロが首を傾げる。が、出所は定かならずとも、オーク王子がイケメンという情報はなぜか周知の物となっていた。
「大事なのは外見ではなく中身だよ!」
「……確かに、雑魚以外にも色々いるね。どいつが一番旨いかな?」
違った含みのあるアルマ・ヴァレンタインの言葉にも、ロイは驚くことなく返事を返している。というか、ぼっちづいていたアルマを「王子を食べるってのはどう?」と誘ったのはロイなのだから当然だった。このエルフ、性格もイケメンのようだ。
「イケメンのオーク……オークにも美醜の概念があるのか……? それに、味……?」
美醜があるとして、その基準はオーク視点なのか、人間視点なのか。食べたら本当にうまいのか。横で聞いていたスヴァン=ウォルフ=ユーウェンは思考の迷宮を彷徨っていた。あちらは城へ攻め込むようで、外回りのつもりのスヴァンとは狙いが違っているから同行はできないが。
「明かりの分担はどうしようか?」
スヴァンと同じく城外担当のニールがそう口にする。城内はある程度明かりがありそうだが、沼は暗がりだ。彼女のようにランタンや暗視を用意してきた者ばかりではない。それでも、気の利く冒険者が幾人かはいたので分担できなくはなさそうだった。
「城門前にはおれが陣取ろう。任せておくと良い」
溢れるカリスマを見せつつ、ハッタ・ムラムラがそう宣言する。狙われる立ち位置ではあるが、盾持ちの彼は今回集まったヒーラーの中では上位の防御力を持っている。適任だろう。
「しかし、思った以上に暗かったようですね」
「おかげで食料が粗末にされているのが目に入らないのは良いのですが……」
悩んでいたのは、頑丈ヒーラーのキーゼと、やはり頑丈路線のウォーリアであるハリス・アル・ターミルの二人だ。戦闘力を高めた仲の良い数名で城内へ攻め入ろうと考えていたのだが、普段は準備に卒の無い二人の手持ちに照明道具は無い。もちろん他のグループに同行しても良いのだが、初手の索敵は手広くした方が良いとも思う。
「どうしたものでしょう……。ん? どうされましたか、コハク氏」
「どやぁ」
声に出して胸を張るコハクに目を向けると、普段は特攻上等で他の事は周囲にお任せな少女が、右手にランタンを掲げていた。左手はといえば別の少女の手を引いている。
「そこでノノアパイセンをひろってきた」
「見知った方がいればご一緒に、と思っていたら拾われましたわ」
今回のコハクは仲間の援護を念頭に動いているらしい。さっそく助かったとキーゼが褒めれば、むふーっと鼻息も荒くなる。
「これで6人。予定通り、短期決戦狙いで大物を狙うよ!」
「序盤は慎重に、敵を見つけたら一気にだよね」
慣れた面々に、エルナ・クルプファルツとユークリア・フィナンシェの口調も気安い。一方、仲間内で明かりの手配がつかなかった者もいる。
「クレア、セヴラン、索敵は目の届く範囲でいいからな?」
「ええ。相手の配置がだいたいわかれば、あとは突っ込んでから考えましょう」
作戦面のリーダーシップを取るアーシェル・G・クラインが斥候役の二人にそう告げ、精神的に引っ張るアンネエルカが後をつづけた。
(うわぁ、凄い前のめりだなぁ……)
リサ・ベイカーは内心驚いているものの、暗くて見えなければ、見える所を攻めればよいという方針には賛成だ。城内隅々まで探さずとも、めぼしい敵は見つかるだろうし。
「まあ、誰かが明かりを持って来てたとしても、ララが持ってく訳にもいかないしね」
「それより、お城につくまでが大変かも」
彼らの作戦では、セヴラン・クアルトのペットの栗鼠を先行させ、ルートを見つける手はずだった。クレア・エクレールが言うように、沼の中に敵が潜んでいる可能性もあるので慎重さは必要だろう。
「大丈夫、何とかなるわ! 狙うはオーク長! わくわく討伐作戦開始よ!」
「んだよ、それ」
アンネエルカの宣言に、あれこれ気を回していたアーシェルが苦笑する。何とかなる、と彼女がいう根拠の幾分かは、リサの治癒に掛かっているのだろう。思えば、バランスの良いパーティだ。他にも、明かり無しでの行動を受け入れた者はいる。
「一番じゃなくても、王子の元へたどり着ければ良し。さあ、テッペン取りますわよ!」
「煩ェ。いちいち騒がずにいられないのかアホ娘」
などと騒々しいのは自称美少女ヒーラーでプリンセスなキャロライン・スノーイーリスと、なぜか組むことになったアウル・アンサラーのコンビだった。キャロラインの側はイケメンで推しのアウルと組めてご機嫌なのだが、アウルの顔には面倒な事になったと書いてある。それでも放っていこうとは思わない程度には、親しいようだった。
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ミツキの提案で相談がなされた結果、だいたい味方がどう動くのか程度の共有ができた。まず、城の外壁や城門、弓櫓といった外から見えている場所を狙う。射程のある飛び道具が降ってこなくなり、かつ突破口が開けてから王子を始めとした指揮官狙いが突っ込む、というのが大まかな手順になりそうだ。
「僕たちはもう少し早く動けそうかな」
「ベルがそう言うなら」
相談の様子を聞いたララベル・サン・ディーベルがそう言うと、言葉少なにイル・シャーリィが応じる。アルラ・ニグラスにも異存はないようだ。彼ら3人はともに身軽なシーフで壁を歩く手段もある。暗視ができるのはララベルだけとはいえ、必要であればイルがエンライトを使う事もできる為、城壁を力づくで突破するよりも一足先に入り込めそうだ。
「よーっし、いっくよー!」
「ヒィィッ!こんなに人がいるなんて聞いていませぇぇん!」
先陣を切ったのは、元気いっぱい走り出したトゥーリと、自身に向いた敵味方の注視に涙目になっているララノアの二人。ともに、弓櫓にいるオークの注意を引くのが目的だった。
「カエル! カエルがいるぅ!」
「わ、もう撃ってきたよ!」
ララノアは迷宮カエルに見つかった。移動力の分差をつけて突っ走るトゥーリへ、多数の矢が飛んでくる。高所から打ち下ろす分、射程が伸びているようだがこの距離では身軽なトゥーリにあたりはしない。埒が明かないと思ったのか、ララノアへ数匹のオークが矢を向けた。
「あ、いたた、ひぃやああ!」
あまり集中されると耐え切れそうにない。まあ、初手の囮としての役目は果たせた筈。自分の周囲を光縛封で囲えば、飛んできた矢は光の壁に遮られた。あぶない、あぶない。
「が、頑張ってくださいねぇ!」
胸をなでおろしつつ、自分たちが狙われている間に城へ近づいた仲間たちへと、エールを送る。だが、ララノアの戦いはこれからだ。
「げこげこ」
「え。げこ……ひゃああ!?」
光縛封の中に一緒に閉じ込めた迷宮カエルとの一騎打ちが始まった。
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邪魔されることもなく城門付近に到達したトゥーリを迎え撃つべく城門が開いた。わらわらと出てくるオークどもに囲まれることが無いように走る向きを変える。応じて向きを変えたオークへとキラキラしたエーテルがまとわりついた。敵を射程に捕らえたミツキがスタティックフィールドを撃ち込んだのだ。ただでさえトゥーリに追いつけなかった敵の脚がさらに落ちる。
「こっちだ、オークども」
フィールドへ突っ込まなかった後方の敵へは、横っ腹からニワニが啖呵を切った。こちらは少数だ。集団に飲み込まれて万が一が起きぬよう、分散させようという目論見である。
「先手必勝、だな」
分断した敵の一方へは、一気に間合いを詰めたスヴァンがダマスカス鋼の斧を振り上げる。
「そらよ! 喰らいやがれぇ!」
足止めされた群れへは同じく突貫したディアンが闘気の槌を叩きつけた。吹き飛ぶ雑兵に混じり、巧みに受け流すオークが2体。片方にニールの矢が刺さる。城門から顔を出した増援へは、スィーリーンが氷嵐を撃ち込んだ。チャージングで移動速度を稼いだ面々に少し遅れて、残る面々も戦場へたどり着く。
「城門前、おれが一番乗りだな」
のっしのっしと走ってきたハッタがエンライトを用いて視界を確保する。城門前に陣取ったのは、ハッタとディアン、その後方でニールとスィーリーン、ミツキが控えている。ディアンの知り合いのナハシュと、この戦場に顔見知りがナハシュくらいしか見当たらなかったパヴェル・A・サムルガチェフも依頼の縁ということでここで戦っていた。
「どうやらあっちは混乱しているようだね」
ルチルが耳をそばだてる。迷宮のオークどもは無駄話はしないようだが、敵の襲来を告げる声や、弓兵への指示などが聞こえてきた。攻め手側に面した弓櫓は2つ。右側にはノックスが薄煙炸弾を撃ち込んだ。オークの騒ぎ声が聞こえる。
「視界が悪くなれば、手前に出てきます。そこを撃ち返しましょう」
煙の中から身を乗り出して、オークがノックスを狙う。狙うという事は、狙われるという事だ。高所と遮蔽の有利を得たオークと真っ向から射撃戦を仕掛けるのは通常なら不利。しかし、ルチルもノックスもオークの弓兵より格段に腕が良い。差し引きすれば互角か。
「少しくらいなら怪我しても癒してやるよ」
支援がある分、2人の方が分が良いだろうか。別に押し切ることができずとも、突入するチームに横やりを入れさせなければ十分ではある。一方、左側の櫓へは冒険者が早々に取りついていた。
「わたしが一番乗りですよ!」
「おっと、レディの進軍の邪魔は、いただけないね」
壁歩きを駆使してトーラが乗り込む。弓持ちではないオークが切りかかってきたが、気配を消して続いたキオルティスが細剣で突き刺した。彼が場を確保した後ろで、トーラがロープを垂らす。
「まだ制圧しきれてないんですけど、上がってきますか?」
「ああ。さっさと櫓を確保したいところだからな。上から撃ちおろされるのは不利だ」
身を隠せる岩なども、目につく範囲には無い。ならばいっそ櫓を抑えてしまおうと、キリクも2人に続いて上がってきた。1人持ちこたえていたキオルティスへ、トーラも援護に入る。距離を詰めて戦えるシューターのキリクも前へ。ぎゃあぎゃあ喚くオークに矢を撃ち込んだ。
●
櫓には弓兵が配置されていたが、城壁の上にいたのは弓兵ではなく普通のオークだった。城門を避けて近づいた冒険者を、オークの投石が襲う。狙いは甘いが当たると痛そうなそれを回避しつつ、エフィルミアとロイはチョコの壁へ視線を向けていた。
「仕掛けはとくにないようです!」
「厚みも思ったよりないな」
それぞれ、看破と透視で城壁の様子を調べていく。沼地からのっそり現れたチョコゴーレムは、カルフ・オルヴォが抑えに入った。
「ありがとうです!」
「ボウズに嬢ちゃん、こっちは任せて良いから、さっさと行け!」
お礼を言ったエヴァン、それにハル・チフとアルマまでまとめてカルフは子ども扱いする。その3人の年齢を合わせて3倍してもなおカルフの歳の方が上とあっては、誰も腹を立てようがない。カルフに後を任せ、投石を掻い潜りつつハルが壁に取りつく。
「これは……。城壁と言う程ではないですね」
壁歩きで駆け上ったハルは拍子抜けの表情になった。一夜で作ったにしては立派だが、所詮は付け焼刃。厚みはロイの言う通り大した事は無い。投石用のチョコ山の脇で、オークが驚きのあまり固まっているのが目に入った。
「とりあえず、邪魔です」
鋼の剣を振り下ろす。他のオークは慌てて武器を手に取り向かってきた。オークが投石から離れれば、守りの弱い魔法使いが壁に近づくことができる。狙い通りだ。本来この階層を狩場にしている発見者の魔法では傷もつかなかったそうだが、ロイやハル達は、この城壁は破壊できるのではないかと踏んで作戦を立てていた。
「違う魔法を同時にぶつけたら、効果もあがるかもしれないよね!」
「色々、試してみましょうか」
アルマとエヴァンがそんな事をいいながら、宿り木の杖と長杖を構える。と、様子を見ていたエリザ・A・ミシャールが声を掛けてきた。
「アンタ達、面白そうなことをしてるじゃないか。アタシも混ぜてもらえないかい?」
と、掲げる手にはまたも宿り木の長杖。こう見えてもシューターなのだが、装備も相まって今日のエリザは魔法使いそのものだ。同じく壁の破壊を狙っていたとあっては、力を合わせるのに否はない。
「行きます。まずは……爆炎から」
「じゃあ、アタシも同じく」
「りょーかい、ボクは他のにしてみるよ!」
巨大な炎弾2つと燃え上がる巨礫が城壁を揺るがした。魔法の炎は見かけだけのものだ。実際に熱している訳ではないので、ガラスの熱割れのような物理現象は起こせない。が、迷宮カエルを狩っているレベルの授恵者に比べれば、3人の魔法攻撃力はそもそも桁違いだった。
「うわ、わ……!」
バランス感覚に優れたハルは何とか踏みとどまったが、向かってきたオークが足を滑らして落ちる。3人の魔法を食らった場所は罅割れ、大きくえぐれていた。
「行けそうですね。では、次は本気で……」
魔導の潮流を掛けて威力を上乗せしてから、エヴァンが再び魔法を叩きつける。阿吽の呼吸で、アルマとエリザも続いた。壁上のオークが大慌てでチョコ石を手に取った所へ、ハルが切りつけロイが矢を放つ。轟音が壁を叩いた。更に、もう一度。4度目の爆発が止めになった。周辺で戦っていた面々から歓声が上がる。
「『ショト=カはタイムアタックの鍵』と啓示にも出ていますので、このまま突っ込みましょう」
「お一人では危険です。ご一緒しますね」
まだ粉塵の収まらぬ中、先陣を切ったフリーダへシャロン・ラ・モリエールが続いた。
「わたくし達もご一緒させて頂きますわね。あ、エヴァン様は壁、ありがとうございました。」
「お? アホ娘が随分上等な猫被ってるじゃねぇか」
ぎゃいぎゃい騒がしくキャロラインとアウルも城内へと向かう。先頭を切ったフリーダがさっそく迎撃のオークと接触したらしく、戦いの音が聞こえてきた。
「よし、私達も! わくわく討伐作戦、本番スタートよ!」
「ララ、よろしく頼むよ」
アンネエルカ達は偵察役のセヴランの栗鼠をまず先行させつつ、隊列を組んで城壁をくぐる。壁前にいた戦力の半ばが先を目指した。大分騒がしくしたせいか、背後の沼からは迷宮カエルやチョコゴーレムが三々五々姿を現している。
「これは……、ここは私に任せて先に行け! というシーンですよね!」
「そうですね。ちょっと色々使い過ぎましたし、王子は他の方にお任せしたいです……」
エフィルミアがそう言えば、エヴァンがこくりと頷く。無理はするなよ、とカルフが声を掛ければ、それにも頷き返した。
「あれれ、王子をやっつけに行くんじゃないの?」
首を傾げるアルマだったが、せっかく誘ってくれた皆を置いて、無理に行くつもりにもならない。オーク王子を食べられなくなるとしたら、少し残念だけれど。
「まあ。倒さなくても味見はできるんじゃないか?」
多分、誰も欲しがらないだろうし、とロイが言えば、それもそうかと納得した。
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城門前で激戦が始まり、弓櫓へトーラたちが乗り込む。それと時を同じくして、城内へひっそりと3人の冒険者が乗り込んでいた。名乗りこそ上げてはいないが、彼らが一番乗りだ。
「正面が派手に戦ってくれてるから、助かったね」
壁の向こうは岩場になっていた。おそらく、沼の中で足場がしっかりした場所を選んで城を築いたのだろう。でこぼこ突き出した岩の間に雑な建造物が挟まるように建ち、さながらスラム街のようだった。住人の殺伐さ加減も大差は無さそうだ。
「ぶっ……急に止まるの止めなさいよ」
「そ、そうは言っても」
「まあまあ、いつものことじゃない」
暗視持ちが一人なので、時々暗がりで接触があるのは不可抗力だ。後に続く2人が揃って豊満なのがよろしくない。とはいえ、ハンドサインを出しても見えないのだからどうしようもないわけで。イルもその内文句を言うのをやめた。
「……右に敵がいる。一体だから倒してもいいわね」
代わりに、曲がり角に出くわすたびに先を捜波で確認していく。この城は雑な作りのわりにそこそこ広い。内側で戦う事も考慮していたのか、障害物もところどころにあった。が、守り手が配置についていないので素通りだ。
「閉じないようにしときましょう。後から来る人の為に」
門のような開閉機構にアルラがこっそり石を噛ませていく。城壁の方で爆発音が連続して聞こえた。ぎゃあぎゃあ叫びながら、オークが動き回っている。出くわしかけたこともあったのだが、3人そろって壁歩きができるのが幸いし、視野の外側に張り付いてやり過ごした。
●
「櫓を制圧しても、すぐに楽にはならないものだね」
城の奥にまだ櫓が2つある。その上から火球が飛んできたのを見て、キオルティスはやれやれと苦笑した。彼とトーラは飛び道具を持っているわけではないので、櫓の上を掃除したらここにはもうする事がない。ならば、次の櫓を落としに行こう、と目を見かわす。
「僕はここから援護だな」
トーラとキオルティスと違い、壁を歩けないキリクはここに腰を据えるようだ。しかし、たった1人で残ってうっかり櫓を奪還されるわけにもいかない。トーラは外にいる冒険者へと声を掛けた。
「弓を持っている人はここを使っていいですよー?」
「セロンガード兄様、ああ言ってくれていますけれどどうするの?」
「僕らじゃ登るのも一苦労だ。甘えようか。……ありがとう、上の人。感謝します!」
身内で簡単に相談してから、セロンガードとセリーヌが上がってくる。城の内外への援護にせよ、別の櫓への攻撃にせよ、高所を取れるのは悪くない。
「矢。足りなくならない?」
後から登ってきたティトがそう尋ねる。何か不安に思うようなことがあったのだろうか。
「敵の数はおそらく、こちらの倍程度だ。撃ち尽くす頃には全滅しているよ」
「……そういうこと。わかった?」
少し考えてからセロンガードが返事をすると、分かっていたのか怪しいセリーヌも分かったような顔でつづけた。もしも敵陣で矢が足りなくなったら、ピンチになっただろうか。そんな事になったら、セリーヌを何とか守らないと。内心でそう思って目を向ければ、エルフの少女はきょとんとしていた。
「早く。下に敵、来てるよ」
夜目の利くティトがそう言えば、セロンガードもはっとして矢をつがえる。セリーヌも、見える位置の敵へと弓を向けた。まだ残っていたトーラとキオルティスも迎撃に加わる。しかし、思ったよりも対応が早い。
●
城門前は、ハッタを中心に押し合いが続いていた。群れれば範囲攻撃で吹き飛ばされると学習したらしいオークの行動が変化している。場所を埋める雑魚の背後、城門に隠れるように魔法使いを配置して庇う布陣だった。
「雑魚ばかりで狩り応えがねぇな!」
「ったく、群がられる相手は選びたいもんだぜ」
周囲を威圧しながらケン・Z・ブラッドリーが吠えるも、オークの隊列は乱れない。アルベルト=V=シュタールシュヴェーアトが愚痴りながら、オークの攻撃を受け流す。タイミングを合わせて石が飛んできた。うっとおしい。王子か隊長かわからないが、指揮官がいるのは間違いなさそうだ。
「申し訳ございません、一度下がらせて頂きます」
ヒットアンドアウェイで削っていたハイド=トリアニスが、魔法の狙撃を受けて後退する。ミツキが反撃しようとするも、すぐに城門の裏に隠れてしまいタイミングが合わせづらい。当初の囮役を終えて櫓攻略組と分かれたララノアがすかさずヒールを飛ばした。
「い、痛いの痛いの、飛んでってくださいぃ!」
「ありがとうございます。……こんな事では、まだ主の護衛としては不足ですね」
この場にいない自らの主へと不甲斐なさを詫びるハイド。ともすれば自己否定の虫がうずいてしまうのだが、ほとんど初陣だというのによく立ち回っている。敵を倒す事よりも、場所を埋めるために守りを重視していたのは正解だった。櫓、城壁と分散攻略の作戦をとった為、城門前で戦っているのは10名程しかいないのだ。
「戻ったか。すまんが、少し任せた。このままじゃ埒があかねぇから……よォッ!」
一時的にとはいえ、前衛が一人減るとその分圧が増える。戻れば、できた余裕で攻勢に転じる事もできる。ハイドに抑えを任せて強引に突破したディアンが、城門を巻き込むように範囲攻撃を撃ち込んだ。軋んで閉まらなくなりでもすれば幸いだったが、そう簡単に壊れはしないようだ。
「クソッ、どういう絡繰りだ!?」
指揮を受けると能力が上がる。つまり頑丈にもなるのか。先ほどと違い雑魚オークが一撃で落とせなかった。下手したら囲まれる、と思ったが、ミツキとスィーリーンの放った光弾が生き残りを撃ち抜いた。
「門の裏は射線が通りません。気を付けて」
城門の影からオークの魔法。剣を持った強めのオークも見えるし、投石も飛んでくる。一方的に敵が有利な場所を避けようとすれば、またハッタの居場所まで戦線を下げざるを得ない。
「チッ、このまま押して押し切れない事は無さそうだが……」
ディアンの感覚では倒せた敵の数に対して、消費するスキルの量が見合っていない。個々の腕前では勝っているのに、数と連携と地形に押される嫌な状況だ。しかし、城門をごり押しで突破して、その先にボスがいたならば。そう思うと無理はしがたい。
(小さい傷が積み重なるのも風情はあるのですけれど。あっちもこっちも一撃でごっそり削り削られる、そんな命のやり取りが見たいですね)
ディアンの怪我を癒しながら、ギーゼラは人知れずそんな嘆きをこぼしていた。強敵と噂の王子や長が前線に出てくれない事には、埒が明かない。
「というか、あっちは何かを待ってるみたいなんだよね」
迷宮のオークはあまり無駄話をしないのか、亜人語適正で聞き取れる会話も『オーク3、前』のような無味乾燥さなのだが。それでもトゥーリが耳をそばだてた感じ、持ちこたえていれば何とかなると思っているような雰囲気を感じる。
「今はこちらが攻めている。という事は敵が攻め返す手段もあるという事だ。それがバランスという物」
動じず戦場の只中に立つハッタの姿は傍目に頼もしいが、さりとて具体性は乏しい。もしも指揮官であれば、頭脳で勝つ将というよりはカリスマ性で勝つ将といえよう。別に指揮はしていないし、ただ図体が目立っているだけなのかもしれないが。
「何か思いつく事は無いのか、ハッタよ」
などと話を振るニワニは、当初は側面から引っ掻き回して敵の戦力を分断する策を実行した。しかし、相手がどっしり構えた現状では正面からの消耗戦に持ち込まれているのが歯がゆい。そんな感じに頭の良さそうな面々が悩んでいる間にも、新手が湧く。
「右側、泥の中に何か、いるよ」
「またカエルでしょうか。それともゴーレムでしょうか?」
「多分、ゴーレムかな」
ニールがそう告げつつ、矢をつがえる。スィーリーンも長杖を向けた。ずるりと立ち上がったゴーレムへ、城門前から下がっていたスヴァンが斧を振るう。城門を一気に落とせないのは、横湧きの敵が絶えない事も理由だった。幸い、暗視持ちの遠距離職が揃っているので奇襲を受ける事はない。
(オークを食べるのか……、チョコゴーレムやカエルしか見ていなかった俺はまだまだだな……)
無心に見えるスヴァンの脳内は食欲で埋まっていたようだ。あっちの世界は奥が深すぎるが、チョコで興味がとどまっている今なら踏みとどまれる。思考は危ない瀬戸際を彷徨っていた。一方、そこからやや下がった、戦場の端で別の動きが生じる。
「なあなあ、まだ行かんでええの?」
「突っ込むなんてリスクとリターンが合わねぇ。最初は様子見だ」
「エイルがそう言うなら、待機やなあ。……ん?」
突撃から一手遅らせたエイル・ビュセファスとフリューリングスルフト=ティエラが最初にそれに気が付いた。エイルが斥候のフリューに偵察を頼むと、チラリと横目で見てくる。
「行くのはええけど、褒めて撫でてくれるんなら、うちめーっちゃ頑張るんやけど、なぁ」
「撫でる? そんなことでいいのかよ。仕事して来れば撫でてやるよ」
そう請け合えば、ぱあっと顔を輝かせてフリューは駆けだした。行く手には、まとまった敵の気配がある。暗くて細かい特徴までは分からないが、捜波でざっと撫でれば20体以上が固まって動いているのが分かった。足取りは鈍いようだ。
「外に出ていた連中、かなぁ」
正確に言えば、オーク集めに外へ出ていた隊長を含む精鋭オークと、集められた雑魚の集団なのだが、そこまではわからない。わからないながらも、これに不意を打たれると厄介なのは理解できる。戻って報告すると、エイルはヒールついでにその情報を城外の仲間たちへ伝えて回った。
「おーおー、頑張ったな」
わしゃわしゃとフリューの頭を撫でつつ、そのまま成り行きで城門組に合流する。おそらく、オークどもが城門を譲らない構えなのは挟撃することを目論んでいたからだろう。城内のオークと合流させる事は避けたい。
「後方から挟撃ですか……」
力をセーブして戦っていたキーゼはその知らせに少しばかり考え込んだ。最悪を想定してはいたのだが、その最悪が現実化しようとしている。この時点で城外に残っている戦力は全て合わせても20名ほどであり、キーゼと行動を共にする6人の動向は大きな影響力があった。もう温存していられる状況ではないだろう。このまま城門へ向かうか、先に後ろを叩いて返す刀で城内へ向かうか。どちらも長短ある。
「なやみはむよう。今日のコハクは援護するひと」
くいくいと袖を引かれて見下ろせば、本日2度目のどやぁ。いつもは突貫する側のコハクだが、今日は友人たちの突貫を支える縁の下の力持ち志望らしい。なるほど、バランスを見るなら隊を分けると言う手もあった。
「さすがに一人で置いていくわけにもいかないわね。私も残りますわ」
「パイセン、たすかる」
ぱたぱたと尻尾を振って歓迎されると、ノノアの耳もピコピコと動き出す。パッと見は可愛らしいハーフビースト少女の2人だが、オーク如きに後れを取るものではない。攪乱でもそのまま殲滅でもお手の物だろう。
「お2人の気持ち、しかと受け取りました。必ず王子にお届けしますわ!」
「ええ。後ろは任せましたハクちゃん」
エルナとユークリアも、2人を残していく事への不安は無いようだ。キーゼもハリスと視線を交わして、頷く。
「では、私達は城門に加勢してそのまま突破してしまいましょう」
●
弓櫓をめぐる戦いは、最初の櫓の奪取から一転、膠着状態になっていた。奥の櫓から飛び道具が飛んでくるのと、城壁伝いに雑魚が乗り込んで来ようとするのが邪魔だ。最初よりも心なしか個体能力もあがっている。
「指揮で部隊戦力が見違える、というのは理解できるのですけれど。こういう事じゃないと思います」
セロンガードがぼやく。人間の軍では指揮官が変わっても部隊員が突然優秀になったりはしない。適材適所で力を引き出す事が肝要なのだ、と語っていた教官の顔が思い出される。
「ティトさん、攻撃を。セリーヌはそのまま。あとは僕が」
思考の合間に、よじ登ってきたオークをティトが一突き、のけぞった手元を刺して落とす。セリーヌの牽制が効いたか、奥の櫓の魔法使いは手出ししてこなかった。
「いや、君達は十分良くやってるとは思うけどね。それより、他の櫓をどうするか……」
キオルティスとトーラはまだ飛び出せていない。いやらしいタイミングでオークが昇ってくるのだ。おそらくは、雑魚を消耗品にして時間を稼いでいる。その合間に魔法使いオークが魔法の矢を撃ちこんでくるのが腹だたしい。せめてもの慰めは、弓櫓同士の戦いになっているために城内突入組が上から狙われる機会がその分だけ減っている事だろうか。
「魔法使いの狙いも、さっきより良い。あっちにも指揮官がいそうだぞ」
さっきから同じ相手と撃ち合っているキリクが言う。連携の良さからするに、下から上がってくるオークどもと、弓櫓にいるオークの指揮官は同じオークかもしれない。されど、上から狙撃される程間抜けではないらしく、見降ろしてもそれらしい姿は無い。手ふさがりな状況が変わったのは、その直後だった。
「あれ? 何か急に弱くなってません? ほら」
トーラがつつくと、あっさりと落ちる雑魚オーク。無駄に頭を出した魔法使いオークをキリクが狙撃する。地表では、櫓で嫌な感じの撃ち合いになっていたノックスとルチルが櫓の敵を圧し始めていた。
「敵の指揮官に何かあったんじゃないか、ってあっちの櫓の連中は言ってるね」
「なるほど、好機ですね」
伝令代わりにあちらの弓櫓に大鼬のリンを差し向けていたルチルがそう言えば、ノックスは頷く。相手の動きが雑になっている今こそ、畳みかけるチャンスだ。
「それじゃあ、アタシもやるかね」
櫓上を巻き込むように炸光矢が破裂し、慌てて遮蔽からはみ出した敵を鋭射で射抜く。1体、2体と脱落すれば、櫓の制圧も難しくはない。できればシーフに登って貰って確保して欲しい、と思ったところで――。
「この櫓も貰いました! 登ってきますか?」
崩れた城壁の上を駆け抜けたトーラがロープを手に声を掛けてきた。
●
少しだけ、時をさかのぼると。
「よそ見してる余裕はあげないわよ!」
アンネエルカのシーザーロアが、オーク隊長の視線を固定する。これが弓櫓の指揮効果が途切れた瞬間だった。
『ぶひぃい!』
怒りの吠え声と共に周囲のオークが強化される。が、最上の戦いの結果は始まる前に決まっているものだ。後衛にいた魔術師オークの喉に、セヴランの放った矢が突き立つ。同時に背後から、迂回して現れたクレアがダマスカス鋼の暗針を深々と突き刺した。
「これでオッケーだね」
「うちの皆は、魔法使いは相手にしたくないからね」
オーク長を見つけても即座に切り込まず、配置を確認した上での強襲だ。初手の有利を存分に活かさなくては嘘になる。
「そら、時間稼ぎなんぞさせるかよ!」
アーシェルが踏み込んで薙ぎ払った。一撃では強化された雑兵は倒れない。殺到してくる敵を流し、受け止め、踏みとどまった。指揮官がまともなら、これまでのようにばらしてぶつけてきたのだろうが今は烏合の衆だ。
「リサ、頼む!」
「はい!」
背後からヒールが飛ぶ。城壁破壊や城門前の確保をしていた面々のおかげで、残すことができたスキルを存分に使っての短期決戦だ。アンネエルカに絡め捕られたオーク長も、指揮らしい指揮を執ることはできないらしい。周囲の味方強化は半ば自動で掛かるもののようだが、それだけだ。
「皆、わくわくしてるー?」
どかん、とアンネエルカが闘気槌を叩きつけると、アーシェルによって手傷を負わされていた雑魚が一気に落ちた。
「ははは、してるしてる」
オークどもとがつんがつんやりあいながら、笑顔でそんな事を言うアンネエルカに、セヴランが矢弦を弾きながら答える。伝令に走ろうとしたのか側面に回ろうとしたのか分からないが、妙な動きを見せた敵は見逃さない。
「いや、だからわくわくってなんだよ」
「わくわくは、わくわくよ!」
答えになっていない。が、笑顔で言葉を交わしつつ自分たちを追い詰める人間に、オーク隊長は恐怖した。背筋に冷たい物が走る。いや、それは気のせいではなく。
「後ろがお留守だよ? もしかして、アンネの魅力に参っちゃったのかな?」
クレアが暗針を刺していた。一刺しでまだ倒れはしないが、気は散る。気が散れば、アーシェルとアンネが斬り込んできた。ヒールに都合の良い範囲から外れないよう、リサも一緒に前へ出る。前衛二人ほどではないが、オークが向かってきた。
「リサ、大丈夫か? 自分の回復も忘れんなよ!」
「はい!」
盾で弾き、スキルも使って防ぐ音が聞こえたのか、アーシェルが背中越しに言う。攻撃もやれと言われると自信がないが、防御に専念していればこれくらい問題は無い。彼女達5人は打撃力よりも持久力に寄った集団で、リサが倒れれば致命傷だ。それだけに、自分を守る事も大事だと理解している。激しい戦いの末、弓櫓が落ちたのと同じころにオーク隊長は膝をついた。
●
ちょうどその時、全体の敵の動きにも変化があった。ぐるりと迂回したララベル達が、小屋の中にいた王子を奇襲したのだ。
「アルラ、イル、頭を取るよ!!」
天井を駆けて、頭上から切りかかったララベルの初太刀に、オーク王子は全く無防備だった。血飛沫が上がり、怒りの声と共に腕が振るわれる。
「わっ……!」
体勢が崩れていたのはお互い様、つまりララベルを捕らえる程度に目が良い敵だ。回避に関してはララベル以上のアルラから見ても、一対一では分が悪い。シーフばかりのララベル達では三対一でも、勝つのは難しそうだ。勝つのは、だが。
「オークの動きが鈍くなったわ。何かあったのかしら」
前線の指揮はオーク長がすぐに引き継いだが、王子と隊長では指揮下のオークへの強化度合いが全然違う。最初に影響に気づいたのは、城門前の攻防を後ろから見ていたミツキだった。戦術眼を持つ彼女は、城門前の敵が僅かに乱れた隙を見逃さない。最前線で切り結んでいたアルベルトは、それに加えて敵それぞれの歯ごたえも変わったのを感じた。
「攻め時だ。行けるか? 皆」
「あははは、待ちくたびれましたよ!」
ギーゼラが戦いの気配を感じて目を輝かせる。アルベルトに続き、ディアンにケン、ナハシュといった場数を踏んだ前衛陣も敵のもろさに気が付いた。目の前の敵を倒してもすぐに後を埋めてきた敵の反応が、ワンテンポ遅い。その分前に進めば、城門からの迎撃も手ぬるく感じる。
「ハッタさん! 分かりますか、敵の動きが変わりました。進みましょう」
「うむ。分からぬが分かった。行こう」
ミツキが顔見知りの僧兵にそう声を掛けた。光源がゆっくり前進を始める。
「理由は分からないけど、好機は好機ですね」
援護の為にミツキが選んだのはストーンブラストだ。味方を飛び越えて城門の奥に着弾するように放てば、裏から悲鳴が聞こえた。魔法の爆裂範囲を見誤って出過ぎたオークがいたらしい。
「私達も皆様が戦いやすいよう、援護いたしましょう」
スィーリーンが敵だけを捉えるメテオライトを撃ち込むと、パヴェルも追撃した。
「よし、突破口が開いたな!」
「明かりはありますから、ついて来て下さい。あ、でも僕は打たれ弱いから守ってくださいね」
土埃ならぬチョコ埃が舞う中で、明かりを手にしたアルベルトが笑う。激戦の期待に頬を緩めながら、ギーゼラがそう告げた。機を伺っていたのは、彼らだけではない。
「それでは、突撃を。今まで温存させていただいた分、お返ししましょうか」
キーゼがかざした杖の先端から、光弾が飛ぶ。残していたチャージングで切り込み、ハリスが城門の向こうを薙ぎ払えば、続いたユークリアが闘気の槌を叩きこんだ。ストーンブラストで削られていた数体に止めを刺すも、それ以外のオークは効果範囲の外にいた。
『ぶもお!』
オーク隊長の声に応じ、残っていた敵が攻勢に転じる。
「あはっ、リスさんで見てた通りだね」
「そう来るのは予想通りです」
最初から初手は敵の注意を引く覚悟だった。引かぬ構えを見て取ったのか、精鋭のオーク剣士も突っかかってくるが、防御の構えを取ったハリスはひたすらに硬い。半歩下がったユークリアも流れ弾程度で倒れる程柔ではない。彼らを橋頭保に、他の冒険者たちも城門を越えて内側へと踏み込んだ。
「ここが決戦の舞台ですね!」
キラキラしている割に濁った目でギーゼラが言う。城門の裏側は少し開けた空間に、自然の岩とチョコ石を固めた雑なバリケードが点在していた。久々のまともな地面を踏みしめて、アルベルトが笑みを浮かべる。
「ようやく第二ラウンドだな。おい、そこの。俺の名は『【オークキラー】アルベルト』だ!」
「おい、てめぇがここの大将……じゃねぇな。大将はどこだ?」
『ぶもふっ!』
アルベルトとケンがオーク隊長へ刀を向ける。会話は成り立っていないが殺意の交換に言葉は不要だった。
●
ララベル達3人がオーク王子と取り巻き相手に立ちまわっていた時間は、長いようで短かった。さすがに3人で勝てる相手ではないが、回避に専念したララベルにヒットアンドアウェイに徹されれば指揮どころではない。アルラとイルも、取り巻き相手に善戦していた。そうして、時間を稼ぐ事しばし。
「ハハッ、こんな楽な探索は珍しいぜ」
「わたくしの日頃の行いですわ!」
駆け込みざまにアウルが矢を放ち、キャロラインが周囲へ守護の力を広げる。シャロンが一番手傷の多いララベルへとヒールを飛ばし、フリーダが闘気の槌を小屋の中の敵へまとめて叩き付けた。
「本当に近道だったのね……」
「啓示によれば、『半開きの扉の向こうは事件の始まり』とありましたから」
アルラが残していった痕跡を辿って大幅にショートカットできたのだ。それなりに近づいてからは、敵の動きをフリーダが戦術眼で見て取り、最後はアウルの耳で戦いの喧騒を突き止めた。ぐるりと回って、この場所は城門を抜けた先だ。門を抜けた仲間たちと、オーク隊長以下の戦う音も聞こえ始めた。
『ぶもおお!』
「少しばかりイケメンでも、やっぱりオークですのね!」
びしっと指さされたのが気に喰わなかったのか、オークは手にした大剣を振り回す。エーテルの渦が辺りを無差別に薙ぎ払い、部下のオークの悲鳴が響いた。
「わ、た! 皆、大丈夫!?」
「……なんとか。でも」
さっき回復されたばかりのララベルはまた手傷を負い、アルラは辛うじて回避。しかし、イルはもろに食らって壁に叩きつけられた。そのまま崩れ落ちる、前にアルラが支えた。
「アルラ、イルを連れて出て。僕は……」
「皆まで言わないでもわかったわよ、ベル」
ララベルには珍しい、本気の怒り顔にアルラは頷き一つを返した。他に巻き込まれた面々は、フリーダは普通に耐え、シャロンは本職並みの身ごなしで避けている。
「振られちまったなあ、プリンセス」
「この扱いは納得いきませんわよ。でもアウル様かっこいいありがとう!」
首根っこを掴まれて引きずり倒されたキャロラインは地面に転がったままアウルへ礼を言っていた。
『ぶもも! ぶもおおお!』
部下まで巻き込んだのに敵は1人しか倒せていない事に憤ったのか、オーク王子が雄たけびをあげる。フレンドリーファイアで大ダメージを受けたにもかかわらず、変わらぬ忠誠で周囲を固める護衛のオーク達。
●
一方、城の外。壁を吹き飛ばした後、その穴から逃げ出すオークが出ないように封鎖していたロイ、ハルたちと、エリザも城門組に合流した。穴にはエヴァンがアイアンウォールを置いてきたので、万が一出ようとしても簡単にはいくまい。
「来たよぉ!」
マークした敵がやってきたのを感知して、フリューが注意を促す。オークどももこちらに気づいているのだろう、臨戦態勢のようだった。ぶもぶもと気合の声をあげて走り出す、その頭上から矢が降ってきた。
「第一射……放ってください!」
暗視ができるセロンガードの合図に合わせて、都合5人の弓手が斉射する。
「櫓と言うのは便利なもんだ。使う側になると頼もしいじゃないか」
ルチルが笑えば、ノックスも頷いて同意した。予期せぬ攻撃に算を乱したところへ、地上の冒険者たちも自ら間合いを詰める。ミツキとスィーリーン、壁破壊組と合わせて魔法攻撃が飛ぶと、雑魚オークはバタバタ倒れていく。残る剣士と隊長へはディアンとスヴァンを軸に近接組が切り込んだ。
「城のお仲間と合流なんざさせるかよ」
「打ち上げ前の、これが最後のひと働きだな」
「そううまくいくか? いや、安く食えるなら歓迎だが」
「労苦の後には喜びがあるのが摂理であろう。運動の後の飯は旨いからな」
どこか余裕を見せつつ打ち合う脇から、気配を消したハイドと機嫌の良さそうなフリューが切り込んでいく。
「先のような失態は繰り返しません。主に相応しき身となる為にも」
「ご褒美追加、何して貰おうかなー」
先手を取って左右の短剣で切りつけ、距離を取るお手本通りのヒットアンドアウェイを見せるハイドとフリュー。気を散じれば、スヴァンの斧とディアンの槌が暴威を振るう。
(やっぱ、斧の方が性に合うんだよな……)
ディアンの方は微妙な顔になりつつも、破壊力は十分。必死に反撃をするオークの攻撃も、ダメージを与える端から癒されていくので意味がない。それでも、城内を援護するのが彼らの使命なのだ。オーク隊長が一か八かの突撃を考えた所で。
「仕事きっちり。いま。ごーごー」
「わかったわ。きっちり、ね」
タイミングを見計らっていたコハクがノノアと共に襲い掛かる。城内に向かった面々に後を託された以上、一匹たりとも通すつもりはない。オークの別動隊はすり潰されるように潰え、城へ辿り着く事は無かった。
●
広場の奥にあった小屋が爆発した。と、思ったら巨大なオークが雄たけびを上げている。目撃した面々は、あれがターゲットだと否応なく理解した。なにせ、今相手しているオーク隊長よりもでかい。
「チッ……前座の癖にしぶといじゃないか」
「あ、ケン様!」
「シャロンか。手を貸して……貰うのは無理そうだな」
オーク隊長と部下たちが城門裏の広場の中央に陣取っており、ケンはこちら、シャロンはあちら。代わりにこちらにはギーゼラがいるので、支援の手は足りている。
「大丈夫、傷ついても傷ついても傷ついても! 僕が癒してあげますよ!」
たぶん愛情も足りている。
「まあいい。まずはこいつの首から刈ってやる」
隊長を倒さずして、王子に切りかかるのは無理だろう。いや、無茶に無茶を重ねれば可能なのだろうが、数瞬とはいえ刃を交えた敵を蔑ろにする事になる。あと、置いていかれると後衛が困りそうだ。
「ああ。こいつは俺達で倒そう」
アルベルトも大太刀を構える。王子の指揮下に戻ったのかちょっと動きが良くなったオーク剣士を、ハリスが竜のごとき一撃で吹き飛ばした。
「射線は開いておきます。私の分も、食物を無駄にした報いを与えてきてください」
「はい。チョコは私達の物って言ってきますね!」
リザードマンの表情は分からないが、おそらく大真面目に言っているハリスに、きりりとした表情でユークリアが答える。と言っても、一撃喰らわせるのは彼女ではない。
「エルナさん、エルナ砲発射準備だよ!」
「わかりました! エルナ砲セットです」
キリリ、と引き絞られた弓の威力を、エーテルの輝きが後押しする。ターゲットロック。
「エルナ砲、発射あ!」
ずどんと刺さった矢は、エーテルでじわりオーク王子を蝕む。戦闘再開だ。
「まずは、取り巻きから引きはがしましょうか!」
フリーダがオーク王子を小屋の残骸へ叩き返す。オーク王子やオーク隊長の指揮強化は専念できている時は視線が通る必要はないが、忙しくさせてしまえば近場にしか届かないようだ。
「野郎、結構当ててくるぞ……って、聞いてねぇか」
「泣いたり笑ったり後悔もできなくさせてやるんだからな!」
アウルが思わず心配する程に怒りのララベルだが、冷静さを欠いていたわけではない。両手の細剣を三閃させ、距離を取りなおした。反撃されれば当たる可能性はあるが半ばは躱せるし、相手にまだ見ぬ大技でも無ければ自分が一撃で沈む事は無いと見ての切込みだ。
「私も、及ばずながら。参ります!」
「しゃーねえ。援護しろよプリンセス」
「任されましたわ!」
ここが使いどころと、シャロンがレゾナンス・オブ・ヴァローを使う。アウルも後を追い、下がった位置でキャロラインが回復支援に回った。ララベルは言うに及ばず、シャロンとアウルも避ける方だ。アウルの攪乱射撃が効果を見せれば、当たる目はなお下がった。忠実な配下を呼び寄せようと、王子が吠えるが。
『ぶももお!』
「せっかく引きはがしたんです。後は追わせません」
背後ではフリーダが闘気槌を叩きつけてオーク剣士をけん制している。護衛の残りは3体、防御よりの彼女が倒すのは難しくとも、通さないだけなら適任だ。背後ではエルナ砲の毒が失せた後で、アウルが心臓を穿つ一矢を再度放っていた。じわじわとダメージを蓄積しているはずだが、見ればじわじわと傷口がふさがってもいる。
「王子、再生するとか、聞いてないんだけど……」
ララベルの怒りは、回復をもらって意識を取り戻したイルとアルラが声援を送っているのを見て三割くらいダウンしていた。巻き込まれると危ないから離れているのは良いのだけれど、笑顔で手を振っているのを見ると、ホッとするやら緊張感が失せるやら。
「もう! 見た目プチイケメンな割にタフガイとか属性迷子ではありませんこと!?」
回避が安定している時にはキャロラインが魔矢まで打ち込んでいるのだが、しぶとい。オーク隊長を退け、フリーダが止めていた戦士を倒したアルベルトとケンが合力してようやく、天秤が冒険者側に傾いた。オーク隊長を速攻で倒すのに紫電一閃を切った為にやはり決定力には欠ける。が、オーク王子が必殺のエーテル竜巻を繰り出しても、すぐに全員が癒されるほどにヒーラーがいた。
「こうなると哀れなものだな。そろそろ楽にしてやるよ……!」
「オーク王子! 御命頂戴!」
それでも、強打や鋭撃で後押しされた戦士たちの攻撃はオークの奮闘をねじ伏せた。既に抵抗しているオークはおらず、最後の一匹である王子が斃れた事で戦いは終わる。傷だらけで倒れ伏すオーク王子は、死してなお戦士の風格を漂わせていた。
●
「よし、食べよう」
アルマが無慈悲に宣告する。果たして、王子の味は違うのか。そもそもオークは美味しいのか。そんな数々の疑問が周囲の脳裏を過った。ちょっと試してみようかな、と思った者もいる。かわいそうだからやめてあげようなどという者はいなかった。
「いっぱい動いて疲れたから、美味しいお肉で打ち上げしましょうか」
「それなら、いいお店知ってますよ」
「あは、打ち上げ楽しみだなー」
と、想いは既に迷宮の外へ向かっている肉食系女子トリオ。
「そりゃいいな。腹いっぱい食おうぜ」
「乾杯はキリッと冷えた発泡酒がいいね」
アーシェルとセヴランも異論は無いようだ。これから始まる惨劇に目をやらずに、歩み去る。
「せっかくの稼ぎだ。一杯行きたくもある」
「じゃあ、ご一緒しましょうか」
ルチルがそう言えば、櫓攻めで一緒だったノックスも酒場へ向かうようだ。もっとも、演奏を披露する目的の方が大きいのかもしれないが。
「宴会? タダご飯ですか!?」
「ツケ無しで食えると聞いて」
人見知り具合を一瞬忘れて食いついたララノアと、財布の中身を念頭に首を突っ込むニワニ。依頼主のエフィミアが苦笑交じりに頷いた。
「まあ、頑張ってくれたし。いいわよ。お姉さん奢っちゃう」
歴戦のギルドマスターをしても、オークを食する冒険者への対応は思いつかなかったようで、そちらには目を向けていない。そんな所へ、とことこと寄ってきたトーラが問う。
「わたしたちはダンジョンの奥に入れるでしょうか?」
その言葉に、一同が耳をそばだてる気配を感じたのか、エフィミアは微笑した。
「ええ、まあ。普通に戦う分には大丈夫じゃないかしら?」
どよどよ、と空気が揺れる。
「でも、迷宮は色々あるから、手札は多い方がいいわね。奥に行くと罠も敵もいやらしくなってくるから」
暗がりへの対処もしかり。頑丈な敵には相手の力を削ぐような手段も有効だ。今回は綿密にチーム分けをする時間の余裕がなかったことは分かっているので、無理はないけれども。指を折りながらそういったコメントを入れ、自然に、自然に出口へ向けて歩き出した。
(……お一つどうぞとか言われたら困るじゃない。現地解散な空気にできて良かったわ……)
そんな心の呟きを聞いた者は誰もいなかった。そして、選ばれし者たちの混沌の宴が始まる。
「チョコ沼、外に出すと駄目らしいですけどここでフォンデュパーティするなら大丈夫かもですよね?」
「ふむ、どれがお勧めなのかな?」
エフィルミアが沼のチョコ泥を運んでくると、ロイがイケメン顔で思案しだした。カエルはまだ良い。オークについてはどうなのか。聞いてるだけで食べないのだろうか。それともやはり食べるのだろうか。
「カエルは普通だと思いますよ。ゴーレムは食べられないかな?」
「……いや。コーティングされている部分は食べられるのでは?」
よりにもよってアルマがダメ出しした食材(?)へスヴァンが手を伸ばす。串刺しにした肉を松明の火であぶり始めると、ちょっぴり良い匂いが漂いだした。
●
なお、チョコの城については後ほどギルドマスターが出直して破壊した。残しておくとまずい物を壊すことまで配慮してくれていれば満点だったわね、などと偉そうに言っていたらしい。出直さずにその場で壊してきてくださいよ、と職員に言われると視線を逸らして口笛を吹きだしたようだが
「あのまま残ってオーク食べる? とか聞かれたらちょっと困るし……」
誰も、お前に食べろとは言っていない。
マスターコメント
イベントシナリオ(50人)難しい 報酬:標準50 / 20〜50人
2021年03月29日 17時18分00秒 公開
参加者
トゥーリ
ニワニ
ハッタ・ムラムラ
エリザ・A・ミシャール
ミツキ・アインホルン
アンネエルカ
ケン・Z・ブラッドリー
エルナ・クルプファルツ
ユークリア・フィナンシェ
ナハシュ
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト
スィーリーン
リサ・ベイカー
フリーダ=ブロムヴィスト
パヴェル・A・サムルガチェフ
ディアン
ハリス・アル・ターミル
ルチル・プルメリア・グレイハーツ
イル・シャーリィ
ノックス・マグナ
エフィルミア
ロイ・アウレア
ノノア
セヴラン・クアルト
ギーゼラ
キリク
シャロン・ラ・モリエール
アルマ・ヴァレンタイン
アルラ・ニグラス
ララベル・サン・ディーベル
フリューリングスルフト=ティエラ
アウル・アンサラー
エイル・ビュセファス
ニール・ロブラリア
- キーゼ
トーラ
キャロライン・スノーイーリス
クレア・エクレール
キオルティス
セロンガード・シュタインドルフ
コハク
アーシェル・G・クライン
ララノア・グラヌローザ
セリーヌ
ハル・チフ
エヴァン・ピオネロ
ティト
カルフ・オルヴォ
- スヴァン=ウォルフ=ユーウェン
ハイド=トリアニス
相談掲示板
シーフのトーラです。 上手く攻略すればダンジョンのさらに奥に行く機会が出来るみたいですし、迷宮オーク退治頑張りましょう! まだどういう事をやるかは決めていませんので、人手が足りないとかでお誘いがあるなら歓迎です!
ウオーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 オーク相手に無双できるって聞いたから参加したぜ! とりあえず、無印相手に無双しつつ、オーク王子やオーク長と一騎打ちをしてみたいぜ!
セロンガードです。 友達とカッコ良く連携して参ります。 矢を切らして逃げ惑ってるかもしれませんがその時はよろしくお願いします。
ウォーリアーのケンだ よろしくな とりあえず・・・・・・これって攻城戦になるのか? その上、敵が全員城にいないのか・・・・・ だったら俺はオーク王子狙いの一点張りで突っ込むかな
ハリスと申します、どうぞ宜しく。 生命力だけはありますので、皆様の盾となれれば幸いです。 >オーク王子 指揮を行っているようですから、倒せば相当の混乱を招くことができるかと。 正面を抑えられるだけの人数がいれば、少数精鋭で強襲をかける手もありそうですね。
ありがとう! 無事依頼は成立したようね。 相手は所詮はオークだけど、甘く見過ぎて油断しちゃ駄目よ。 うっかり足をすくわれないようにくれぐれも気を付けて。 そうそう。人数多いと大変そうだし……。 ダンジョン攻略に相談が必要だったら、コミュニティを作ってみたので良ければ使ってね。 https://alpaca-connect.com/world/world0/community/SQyMT2H7ijcfpQMvnjWe
エフィミアさんはコミュニティの準備ありがとうございます! 必要になったら使わせて貰いますね。 そういえば四角に弓櫓があるそうですけど、そこから弓や魔法を撃たれるのは危なそうですね。 2ヶ所くらいは攻略した方がいいと思うんですけど、誰か一緒にやりませんかー?
キャスターのミツキよ。よろしくね。 範囲攻撃でとりあえず沢山敵を攻撃するわ
ヒーラーのリサです!よろしくお願いしますね!
キャスターのスィーリーンと申します。 よろしくお願いします。 主に範囲魔法攻撃の予定です。
ハッタだ。世話になる。
Σヒィッ!ひ、ヒーラーののの‥ラ、ラノアと!もも申しましてです! よよよろしくお願いいたしmsg〜〜〜〜ッッ(緊張のあまりガツっと舌を噛んで蹲っている)
シューターのキリクだ、よろしく。 >弓櫓攻略 一緒にやっても良いかな? 僕は物陰に隠れながら弓で撃って、サイレントキルする感じになるが。
キリクさんありがとうございます。 もちろん歓迎です! なるべく早く攻略して城へ向かう人の安全を確保しましょう!
…ララノアさん、大丈夫ですか?(驚かせないようそっと近付く)
さて、失礼します 多分、友人回りと共に行動することになるかと まあ、いきなり目の前に人語を話すパンダが現れたら驚きますよね、普通
多くのオークをブチのめしに来た。 ところで、オークの癖にややイケメンってどういう…………(どうでもいい
ロイ・アウレアです。ヨロシク! 友人・知人と組んで無双する事に成りそうだよ。 城壁を崩せるなら崩して侵入経路確保と ボスへ向かう人用の道の確保を目的に入れて動く予定です。
ヒーラーのアルマだよ、どーぞよろしくー。 とくに組むあてもないしお外のチョコゴーレムとチョコカエルさんの味もみておこう、かな
ひ、ゃぃ‥‥はふ‥トトト、トーラ様‥ッ すみませんです、だだだいじょうぶでして、はい‥(口元を抑えながらコクコク) ぃぃぃぃえ!あの、ひ、人が‥いぃいっぱいいる!と思っただけでしてパンダさんは黒い白い大きい的なもふもふで凄いなぁと思いましたッッ!!(恥ずかしさで早口 >行動 ぇぇぇと、ぇぇとー‥なん‥‥Σそうッ!かかか回復と支援させて頂きましッ お、お声かけ頂ければ‥どどどこぞでもついていきます‥ッ とくになければヒ、ヒールして回ります‥そそそ、そんな予定ですッッ(ぺこーーっ
情報屋のルチルだ。よろしく。 打ち上げ……いや、今回は絶対ではないな。 弓櫓を攻めるならアタイも参加しようか? 射程がある方が一方的に打たれる事も避けられそうだろ。
ウォーリアの傭兵、ディアンだ! いいねぇ、こう難しく考えることなく敵陣突っ込んで斬りかかりゃいい依頼ってのはよ! 俺はチャージングでひとっ走りしながら、魔術を使うオーク共を優先して潰していくつもりだ。 戦い方も派手なもんになるだろうから、俺が暴れ回ってる隙に横槍入れたい奴は遠慮なく利用しな!
ルチルさん、加わって貰えるなら助かります! お二人が長い射程ですし、わたしは杖を持って魔法を櫓に撃とうかな? ララノアさん、大丈夫。分かってますよ。 白黒で大きくて初めて見たときはわたしも驚きましたから。←わかってない 雲霞鳥の討伐でご一緒しましたね。良かったら一緒に弓櫓の攻略をやりませんか?
>トーラ様 は、はぇぇ?ぁ、ああぁだだ大丈夫でしょうか‥そ、そうなのでしょうか?(あたふたあたふた >弓櫓攻略 トーラ様、おおおお声かけありがとうござまいて!!!(ぺこーーっ きょ、今回は!!転びません!!!!!(ぐぐぐぐっ ででででは‥そ、そちらの攻略に参加いたします‥ しゃ、射程は長くないので‥支援などを中心に‥‥や、櫓に祈雷‥設置できるでしょうか‥ ●弓櫓攻略(敬称略) トーラ(シーフ)、キリク(シューター)、ルチル(シューター)、ララノア(ヒーラー)
シーフのキオルティスと言うよ。キオでもルティスでもお好きに。 今回は宜しくね。 >トーラさん 俺も一枚噛ませて貰って良いかな? 今の所、此方側も長距離攻撃での攻略になっているみたいだけれど もし良ければ俺はその間に機動力やハイディングなんかを駆使して 直接狙いに行けるけれど。 もしも長距離射程のみで構成を考えているなら、辞退するから 遠慮なく言ってやってくれると嬉しい。どうだろう?
キオルティスさんありがとうございます! キオルティスさんが来てくれるのであれば、2人で櫓に登って制圧しましょうか? 制圧してしまえばシューターのお二人に登ってもらって櫓から矢を撃って貰うことも出来そうですし。 ララノアさんは支援助かります。 祈雷の設置は出来ると思いますけど、召喚中は動けなくなるので危ないかもです。
エフィミアさんが場所を用意して下さってますし、櫓の攻略はこちらで相談しましょうか? https://alpaca-connect.com/world/world0/community/SQyMT2H7ijcfpQMvnjWe
キャスターの…エヴァン・ピオネロです。宜しくお願いします。 ロイさんのところで同行します。 >魔法を打ってみたけど、大した傷もつかなかったそうよ。 効果がないのは残念なので…魔法を組合わせて使ってみようと思ってます。 その際…効果が出せたら…弓櫓の底を狙って射ち抜くつもりです。 櫓の攻略に…関われるかも知れないけど…どうなるか判らないので…こちらで宣言だけ…しますね。
遅れてごめんなさい! シスターのシャロンです。 ん……櫓攻略はいい感じに人数があって相談も進んでるみたいですね? じゃあ私は前線で回復とバフをばらまいて維持する動きをいたします。 よろしくお願いしますね!
遅くなって悪い。 ウォーリアのアーシェルだ。 よろしく頼む。 【綺譚】5人でオーク長を狙いに行く。 目的が同じ奴がいたらよろしくな。
遅くなってすいません!シーフのエフィルミアです。 ロイさんのところで頑張ります!
遅くなってすみません。ヒーラーのギーゼラです。 フフフフフ、僕は奥へ奥へと進みましょう。 そこに僕を求めてくれる怪我人がいるのなら! 皆さん安心して怪我をしてくださいね?ちゃぁんと癒してあげますから!