【CP】帝国難民キャンプ連動

リット
終わっちまったな。
リュシエンヌ・テタール
ええ、無事に終わることができました。
リット
最初はなーんもなかったのになぁ。1年生き延びれるなんて、あの頃は正直思ってなかったぜ。
リュシエンヌ・テタール
王国から土地を貸していただいて、同盟からは物資の支援を受けて、帝国からも少し兵士を派遣してもらって……。もちろん、冒険者の皆さんがいなければ去年のうちに悲しい形で終わっていたでしょうね。
リット
そんなに助けてもらえてたの? 俺、冒険者のにーちゃんやねーちゃんのおかげ10割とばっかり……。まあ、ねーちゃんやにーちゃんへの礼はまた今度言うよ。俺は王国の役人に引き継ぎ書類渡してくる! またなねーちゃん!
リーンエス王国北部の帝国難民キャンプが、無事にその役目を終えました!
【CP】連動シナリオに参加した全ての冒険者に「冒険者さんありがとう勲章」が授与されました!
冒険者の名前と、感謝の言葉だけが刻まれた木のメダル。
これが、帝国難民キャンプの子供達が作った冒険者さんありがとう勲章だ。
補修跡が目立つ服を着た子供が、緊張し切った顔でメダルを運んで来る。
「あっ……ありがとうございました!」
勢いよく頭を下げて、小さな両手でメダルを支えて差し出してくれた。
●
「はいこれ」
王国の役人が手渡されたのは、何度も再利用されて薄くなった羊皮紙だ。
1枚目には大量の人名。
2枚目以降は下手くそな地図で、しかし書き込まれた数字と人名は非常に具体的だ。
「それじゃ俺はこれで」
おつかれー、と軽い態度で去ろうとする元難民を、役人が慌てて引き留めた。
「なんだよ。俺はねーちゃん、じゃなくて貴族のねーちゃんみたいな仕事できるわけねーじゃん!」
元スラム住民、現在は出稼ぎ授恵者であるリットは書類仕事が苦手だ。
これだって1週間近く休業してようやく作った名簿と地図なのだ。
「え、これでいいの?」
安堵するのは王国役人も同じだ。
冒険者と一緒に亜人やクリーパーと戦ったと聞いてどんな荒くれ者かと心配していたが、実際に会ってみると小柄で素直な子供だ。
これなら情報を引き出すことも騙して労役を課すのも簡単と思ってしまった。
「ヤベー忘れてた」
リットは渡した地図のうち数枚を指差す。
「その辺に行くと時々森から矢が飛んでくるから気を付けてくれよな!」
役人は理解できたがしたくなかった。
「最初っから境界で揉めてる場所でよー。例のコボルトをぶっ殺すまでって約束で棚上げしてたんだけど」
どうにかなったから紛争が再開したということか聞いてないぞ!? と役人は悲鳴をあげそうになった。
「リットお前ぇっ!」
村というには幅が広すぎ、街というには幅が足りない砂利道を壮年のエルフが駆けてくる。
「森に近付くなら予め連絡を入れろと何度も言ったよな私はっ!」
「仕方がねーだろ合図が面倒くさすぎんだよっ」
つかみ合いの喧嘩が始まる。
スラム育ちの発育不良とエルフらしい細身の喧嘩なのに、腕は風を切って動いて足は1歩踏み込むだけで地面に靴の形が刻まれる凄まじさだ。
つまり巻き込まれたら死ぬ。
弱者から開拓された土地と人手を巻き上げる気でここまで来た役人は、実はとんでもない貧乏くじを引かされたのではないかとようやく気付いた。
「相変わらずっ……力だけはっ……その10分の1でも頭を鍛えろっ!」
「おっさん授恵者じゃねーのにどこでこんな技をってあぶねぇっ!?」
今の所殺し合いではないので、長い寿命で膨大な知識を積み重ねリットの癖を知り尽くしたエルフがやや有利であった。
「失礼した。私は」
必死に息を整え、何事もなかったかのようにエルフが地図の隅を指し示す。
「ここから北にある森を治めるエルフの長だ」
「引き継ぎ終わったの?」
「しばらく黙ってろ」
土産の蜂の巣をリットの口にねじ込み黙らせる。
「ヒューマン以外の村長など認めたくないという顔だな? いまさら誤魔化さなくても構わんよ」
エルフらしい整った容貌に、高い知性と豊富な経験とねじ曲がった性格が浮かぶ。
「同じ人類同士、仲良くしたいものだね?」
「このおっさんの集落、これでもかなり友好的だから敵に回すと他の集落巻き込んでヤベーし気を付けてくれよ。俺達はほとんど北に戻るから……」
大森林製の服をさりげなく見せつけてくる壮年エルフと、本心から役人と王国を気遣う元難民を見て、役人は胃に激しい痛みを感じるのだった。
●
「すっげーなー」
年初には草しか生えていなかった畑に、しっかり穂が育った麦が揺れている。
最も多かった時期の帝国難民を支えるには足らず、しかしこの地に残る決断をした元帝国人現王国人を養うには十分な実りだ。王国北部には不作の兆しが見えつつあるというが、それでも帝国出身の元難民たちにとっては普通作に見える。
「冒険者のみなさんと、あんたのおかげですよ」
元は帝国で農業をしていて、妻子の安全を考えこの地に残ることにした農家が深く頭を下げた。
「よせやい。冒険者に比べたら全然なにもできてねーよ」
帝都崩壊から急速に壊れていった帝国。
そこから王国まで逃げ込めたのは己と仲間の力と幸運のおかげだ。
しかし、王国に足を踏み入れ、冒険者にここまで案内されてからはずっと世話になり続けている。
「最初はほんっとーに何も無かったんだぜ。冒険者にテントの立て方から柵の作り方まで習って、剣の振り方も教わって」
1年も過ぎていないのに、とても長い時間が過ぎた気がする。
まだ15歳で、帝国から逃げ出す前はスラムで生きるか死ぬかの生活をしていたリットには、ここでの日々は過酷でも暖かさと光に満ちていた。
「ところで残ったテントはどうする? あんたにとっては今さらあっても困るだろ。いや俺も困るんだけどな」
最初期の物資支援であり、過酷な冬を越え激しい戦闘に巻き込まれもしたテントは補修しているのに廃品同然の見た目だ。
リットは何かを言いかける。
結局言葉にならず、剣だこが目立つようになった手のひらを見た。
「リット?」
「あー、いや、なんでもねーよ」
意図して陽気な表情をつくる。
ねーちゃん達と比べれば使いっ走り同然とはいえ難民キャンプの顔の1人だったのだ。
良いか悪いかは分からないが周囲への影響力も得たし、責任感も育った。
「貧乏そうなガキがいたら渡してやってくれ。寒いのはキツイからよ」
「そう……だな」
農家も難民キャンプにたどり着く前は、テントすらない寒さの過酷さを嫌というほど味わった。
最近建てたばかりの家の倉庫に運んでおこうと決意する。
「じゃあなおっちゃん!」
「おう、元気でな!」
リットは振り返らずに北へ向かう。
クリーパーと魔獣が多数存在し、辛うじて取り戻した南の土地も復興途中の危険地帯であるのに、リットも同じように北へ向かう人々も足取りが軽い。
リット達はもう、難民ではないのだ。
●
「にーちゃーんっ」
「わすれものー!」
そんな覚悟が籠もった足取りを、子供らしい子供の声が邪魔をする。
リットが面倒臭そうに振り返ると、元難民キャンプに残る子供達が全身を使って抗議していた。
「にーちゃんのも作ったんだっ」
「冒険者さんのと同じなんだよ」
差し出されたのは、リットと読めないこともない字が刻まれたメダルだ。
2人がかりでメダルを差し出す手には、慣れない彫刻作業でついた傷がある。
「ありがとよ」
大事そうに受け取り、布にくるんで荷物の奥へ厳重にしまう。
そして、十分に手加減をしてげんこつを1発ずつ落とした。
「危ねー真似すんなよ。指切り落としたら大変だろうが」
涙目な子供達は、何故か傷が消えていることに気付く。
慌てて見上げると、ヒールの余波を漂わせるリットがにやりと笑った。
「じゃあなガキども!」
守られる側から守る側へ。
リットは冒険者の背中を追いかけ、北へ向かって走り出した。
執筆:馬車猪
assignment帝国難民キャンプ連動 概要 特設ページ
【CP】連動は帝国から王国まで逃れてきた難民を救うために発令された。生きていくための課題は衣食住の確保から隣人や外敵への対処、果ては同じ人間との政治的争いにまで広がっていく。
指導者や軍人の多くは逃亡の際に失われ、残された難民はほとんど武力を持たない民である。そのため、冒険者が武力を担当して外敵に対抗するとともに、さまざまな経験を活かして自活を助けている。
帝国南部都市ヴィントの奪還が成功した結果、難民キャンプから帝国本土への帰還がついに始まった。
assignmentここまでの流れ
帝国滅亡時に膨大な難民が発生し、クリーパーのはびこる土地から大挙して逃げ出した。
ヴァイセントラフ砦単独では難民の全てを受け容れることは出来ず、その一部は王国へ流れた。
その難民が王国に定着することを嫌った王国貴族は、既存村落へ受け入れる代わりに何もない僻地を貸し与えるという形をとる。このままでは冬を越す民はほとんどいないのではないかと危惧された。
帝国亡き世界での王国一人勝ちを阻止したい同盟が帝国難民を生き延びさせ、帝国復活の目を残すため支援を始めたのが、難民キャンプ成立までの経緯である。
当初は、衣食住の不足や心理的な絶望、指導者の不足などから短期間での崩壊や暴動も予想されていたが、冒険者の活躍のおかげでいずれも解決へ道筋が立ち、現在も存続している。
ヴィントとその周辺の土地が帝国の手に戻ったことで、ようやく難民キャンプの役割が終わろうとしている。
assignment過去のストーリー
▼過去ストーリーの結果・開拓編
最初期の難民キャンプは、寝床はテント、食事は石のように硬いパン、水をくむためには野犬がうろつく小川まで出向くしかないという状況だった。
冒険者が野犬や害獣を駆除し、人間の気配に気付いて近づいて来たクリーパーを討ち、物資を狙う賊を排除することで、苛酷ではあっても安定した生活が成立するようになった。
各地に散っていた難民が難民キャンプを目指すようになったのもこの頃である。
・エルフ・コボルト編
帝国滅亡に気付かない水準の引き篭もりエルフ集落との間に、深刻な境界争いが発生した。
冒険者がキャンプとエルフ間の衝突回避に奔走しているタイミングで、人類の領土を狙うコボルト部族による侵攻が始まる。
激戦の末数百のコボルトを冒険者が討ち取ったことでキャンプ周辺の平和が回復した。
・メドゥの指先・コボルト決戦編
コボルトの特異個体を越えた特異個体、コボルト王シャハロウがメドゥの指先と手を結んだ。
矛先を向けられた難民キャンプ群は危険な状況に追い込まれた。
意識を取り戻した直後で命も危なかったレイウェストが自ら囮となることで、冒険者による伏兵と迎撃が成功しシャハロウと暗殺者の群れを討ち取った。
person_pin関連NPC
亡国となった帝国の皇族唯一の生き残り。皇位継承順位こそ八位と低いが、皇帝とその子女である第三皇女との間に生まれた生粋の皇族。
彼にとっての難民達は、慈しむべき対象であると同時に、帝国再建のための必須の材料である。
《本連動での動き》
帝国の柱石であったエフレムの真実が明かされた結果、帝国のおかれた状況が悪化しレイウェストにかかる負担も激増した。今は、帝国南部の復興と難民帰還事業の進展だけが心の慰めである。
皇太子レイウェストの護衛騎士であり、クリーパーを召喚し支配することを得手とする召喚術の達人。亡国の騎士となっても単身で各国の介入からレイウェストを守る忠義の人物。のはずであった。
《本連動での動き》
最大戦力にして決戦戦力であるエフレムが消えたため、帝国全体の兵力不足が深刻な状況になった。
帝国の小都市テタール・ロバンを治めるテタール伯の末娘。家族により帝国から逃がされ、弟や従者とはぐれて身ひとつで難民キャンプに流れ着いた。
《本連動での動き》
難民キャンプに極少数しかいない貴族であり、指導者の1人として担ぎ上げられた。
箱入り娘だったが冒険者に心身共に鍛えられ、現在は難民の自立を目指して教育に力を入れている。
帝国の小領主の娘。領民達と共に帝国を脱出し、難民キャンプに落ち着いたはずだった。
《本連動での動き》
難民キャンプに極少数しかいない貴族であり、指導者の1人として担ぎ上げられた。
領民の長との二足のわらじは大変そうだ。
帝国地方都市のスラムに住んでいた一般人。最初期からの難民キャンプの住人。自分は戦う事しかできないと、難民の仲間を守るために率先して突撃していく。失敗も多いが、まっすぐな心根へは難民仲間からの信頼も厚い。
《本連動での動き》
冒険者に依頼するまでもない戦闘を担当しているが、時折手に負えない外敵などに遭遇し、冒険者と共に戦う。兄ちゃん姉ちゃんの届かぬ背中へ憧れを抱くようになった。
menu_book関連用語・情報
ロモズ歩兵団
難民の一部が立ち上げた自衛用戦力。
決戦で存在感を示し、社会的地位が上がると同時に期待と責任が大きく、重くなった。
メドゥの指先
難民キャンプに対する攻撃を行った。
幹部の表だった動きはほとんど見られず、しかし対峙した冒険者達が防御に専念せざるを得ないほどの暗殺者が投入され、殲滅された。
コボルト
人類の土地を長年狙っていたコボルトの部族。
クリーパーや害獣が激減した土地を狙って侵攻を開始したが、クリーパーや害獣を激減させた冒険者による猛烈な反撃を受けた。
精神的支柱であり、知性の支柱でもあった言語能力持ちのコボルト王シャハロウと幹部全てを失い、外征能力を完全に失った。
帝国南部鎮守都市ヴィント
王国国境にほど近い場所にある帝国の都市。周辺を含まぬ人口三万ほどの南部地域では最大規模の都市のひとつ。仮想敵国である王国に近い場所にあるため、平時から都市人口に匹敵する規模の二個師団二万名の兵力を駐留させていた。また、都市より兵営が広いなどともいわれていた。太守はバルディオン。
初めて人類が奪還した帝国都市である、今後の帝国開放の起点となると考えられている。