【CP】帝国難民キャンプ連動

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「ばいばーい!」
「またねー!」
 子供達が元気に手を振っている。
 まだ脅威の残る帝国南部に戻るのだ。
 これが永遠の別れになってもおかしくなく、けれど顔には未来への希望が、目には強い意思が宿っている。
「おねえちゃーんっ!」
「ありがとーっ!!」
 出発を見守っていたリュシエンヌ・テタールは、視界が急に滲んだことに気付く。
 頬を流れるのは熱い涙だ。
 難民キャンプの舵取りという重責を担ってきた貴族令嬢は、かつては餓えていた子供達を笑顔で送り出せたことに大きな誇りを感じていた。
「このような有様で申し訳ありません」
 リュシエンヌは清潔なハンカチで涙を拭いて、皇子に対する礼をとる。
「いや」
 レイウェスト・バルダスの表情は優しい。
「嬉しいのは私も同じだ。よくやってくれた」
 レイウェスト・バルダスは自分自身が泣くことを許せない。
 多くの帝国人を助けるため必要だったとはいえ、ヴァイセントラフ砦以外の難民を半ば放置していたのは事実だからだ。
「冒険者の皆さんが助けてくれましたから。おかげで物資を守ることも物資で畑を作ることもできました」
 レイウェストが必死に交渉して物資を調達したことを知るリュシエンヌは、冒険者への感謝を述べることで間接的に彼の功績も称えた。
 黒髪の美少年は微かに口を開き、結局何も言えずに口を閉じる。
 様々な事件がありすぎた。
 過酷な交渉、度重なる襲撃、ヴィント奪還の準備と実行、そしてエフレムのこともだ。
「そうだな。彼等には改めて感謝を。本来なら最低でも勲章を渡さねばならないが」
 少し考え、苦笑する。
「冒険者はそちらの方が喜ぶかもしれないな」
 レイウェストがリュシエンヌの胸元を見る。
 リュシエンヌの美貌を引き立たせる衣装とは不釣り合いな、素人の手による木製の勲章。
 しかしそれは、リュシエンヌにとってもレイウェストにとっても尊い存在だ。
「えぇ。これは試作品ですが、きっと」
 国が保証する名誉などなく、年金もついている訳がない。
 ただ、難民だった子供達が作ってくれただけの勲章だ。
(私には受け取る資格はないが……)
 いつまでも見ていたい気持ちを振り切り北を見る。
 帝都奪還は遠く、北部はどうなっているのかすら分からない。
 それでも、レイウェストは進み続けるしかない。
「後少しの間でいい。この地をよろしく頼む」
 リュシエンヌは静かに、頭を下げていた。

●
 小さな刃が木を削る。
 じれったくなるほど慎重に、感謝の心を込めて冒険者お兄さんやお姉さんの名を刻み込む。
「うまいもんだな」
 難民キャンプ最初期からの住民であり、今ではどこにでも出稼ぎに行く授恵者であるリットがひょいと覗き込んだ。
「あぶないよっ」
「めっ」
 子供達は怒っている。
 せっかくせんせいおねえちゃんが用意をしてくれたのにこの馬鹿はじゃまするのだ!
 とっても危ないことまでしてる! ぼくわたし達より大人なのに!!
「お、おぅ」
 リットはリュシエンヌに叱られた気がしてびくりとする。
 リュシエンヌは、帝国難民キャンプの指導者という過酷な割に利益などほとんどない立場を引き受けてきた才媛だ。
 彼女が用意した場で学んできた子供達に、彼女を尊敬はしているが全然学んでいないリットが圧倒されていた。
「邪魔して悪かったよ」
 軽く頭を下げて去ろうとして、ふと気付く。
(字ってこんなに綺麗なのかっ)
 慌てて今日の仕事に戻る。
 のんびり草を食んでいたビヒモーに睨まれながら、既に出身地に戻った子供達から受け取り運んで来た勲章を慎重に取り出し名前の部分を確認する。
「読めねぇ」
 正確には下手すぎる。
「にーちゃん! これつづりが違うよ!」
 リットを慰めようとついてきた子供が指摘する。
「そうなの?」
「そうだよ!」
 あくまで真剣な子供に、リットはありがとよと言いながら内心焦る。
(こっそり修正するか? それとももう一度運んで修正してもらう? いやどんだけ手間かかるんだよ! こんなときに冒険者ねーちゃんやにーちゃんがいれば相談できるのに……)
 冒険者に数え切れないほど助けられたリットは、しっかりした子供達とは逆に冒険者に頼る癖ができてしまっていた。


執筆:馬車猪


assignment帝国難民キャンプ連動 概要 特設ページ

 【CP】連動は帝国から王国まで逃れてきた難民を救うために発令された。生きていくための課題は衣食住の確保から隣人や外敵への対処、果ては同じ人間との政治的争いにまで広がっていく。
 指導者や軍人の多くは逃亡の際に失われ、残された難民はほとんど武力を持たない民である。そのため、冒険者が武力を担当して外敵に対抗するとともに、さまざまな経験を活かして自活を助けている。
 帝国南部都市ヴィントの奪還が成功した結果、難民キャンプから帝国本土への帰還がついに始まった。

assignmentここまでの流れ

 帝国滅亡時に膨大な難民が発生し、クリーパーのはびこる土地から大挙して逃げ出した。
 ヴァイセントラフ砦単独では難民の全てを受け容れることは出来ず、その一部は王国へ流れた。
 その難民が王国に定着することを嫌った王国貴族は、既存村落へ受け入れる代わりに何もない僻地を貸し与えるという形をとる。このままでは冬を越す民はほとんどいないのではないかと危惧された。
帝国亡き世界での王国一人勝ちを阻止したい同盟が帝国難民を生き延びさせ、帝国復活の目を残すため支援を始めたのが、難民キャンプ成立までの経緯である。
 当初は、衣食住の不足や心理的な絶望、指導者の不足などから短期間での崩壊や暴動も予想されていたが、冒険者の活躍のおかげでいずれも解決へ道筋が立ち、現在も存続している。
 ヴィントとその周辺の土地が帝国の手に戻ったことで、ようやく難民キャンプの役割が終わろうとしている。

assignment過去のストーリー

▼過去ストーリーの結果
・開拓編
 最初期の難民キャンプは、寝床はテント、食事は石のように硬いパン、水をくむためには野犬がうろつく小川まで出向くしかないという状況だった。
 冒険者が野犬や害獣を駆除し、人間の気配に気付いて近づいて来たクリーパーを討ち、物資を狙う賊を排除することで、苛酷ではあっても安定した生活が成立するようになった。
 各地に散っていた難民が難民キャンプを目指すようになったのもこの頃である。
・エルフ・コボルト編
 帝国滅亡に気付かない水準の引き篭もりエルフ集落との間に、深刻な境界争いが発生した。
 冒険者がキャンプとエルフ間の衝突回避に奔走しているタイミングで、人類の領土を狙うコボルト部族による侵攻が始まる。
 激戦の末数百のコボルトを冒険者が討ち取ったことでキャンプ周辺の平和が回復した。
・メドゥの指先・コボルト決戦編
 コボルトの特異個体を越えた特異個体、コボルト王シャハロウがメドゥの指先と手を結んだ。
 矛先を向けられた難民キャンプ群は危険な状況に追い込まれた。
 意識を取り戻した直後で命も危なかったレイウェストが自ら囮となることで、冒険者による伏兵と迎撃が成功しシャハロウと暗殺者の群れを討ち取った。

person_pin関連NPC

 亡国となった帝国の皇族唯一の生き残り。皇位継承順位こそ八位と低いが、皇帝とその子女である第三皇女との間に生まれた生粋の皇族。
 彼にとっての難民達は、慈しむべき対象であると同時に、帝国再建のための必須の材料である。

《本連動での動き》

 帝国の柱石であったエフレムの真実が明かされた結果、帝国のおかれた状況が悪化しレイウェストにかかる負担も激増した。今は、帝国南部の復興と難民帰還事業の進展だけが心の慰めである。

 皇太子レイウェストの護衛騎士であり、クリーパーを召喚し支配することを得手とする召喚術の達人。亡国の騎士となっても単身で各国の介入からレイウェストを守る忠義の人物。のはずであった。

《本連動での動き》

 最大戦力にして決戦戦力であるエフレムが消えたため、帝国全体の兵力不足が深刻な状況になった。

 帝国の小都市テタール・ロバンを治めるテタール伯の末娘。家族により帝国から逃がされ、弟や従者とはぐれて身ひとつで難民キャンプに流れ着いた。

《本連動での動き》

 難民キャンプに極少数しかいない貴族であり、指導者の1人として担ぎ上げられた。
 箱入り娘だったが冒険者に心身共に鍛えられ、現在は難民の自立を目指して教育に力を入れている。

 帝国の小領主の娘。領民達と共に帝国を脱出し、難民キャンプに落ち着いたはずだった。

《本連動での動き》

 難民キャンプに極少数しかいない貴族であり、指導者の1人として担ぎ上げられた。
 領民の長との二足のわらじは大変そうだ。

 帝国地方都市のスラムに住んでいた一般人。最初期からの難民キャンプの住人。自分は戦う事しかできないと、難民の仲間を守るために率先して突撃していく。失敗も多いが、まっすぐな心根へは難民仲間からの信頼も厚い。

《本連動での動き》

 冒険者に依頼するまでもない戦闘を担当しているが、時折手に負えない外敵などに遭遇し、冒険者と共に戦う。兄ちゃん姉ちゃんの届かぬ背中へ憧れを抱くようになった。

menu_book関連用語・情報

ロモズ歩兵団

 難民の一部が立ち上げた自衛用戦力。
 決戦で存在感を示し、社会的地位が上がると同時に期待と責任が大きく、重くなった。

メドゥの指先

 難民キャンプに対する攻撃を行った。
 幹部の表だった動きはほとんど見られず、しかし対峙した冒険者達が防御に専念せざるを得ないほどの暗殺者が投入され、殲滅された。

コボルト

 人類の土地を長年狙っていたコボルトの部族。
 クリーパーや害獣が激減した土地を狙って侵攻を開始したが、クリーパーや害獣を激減させた冒険者による猛烈な反撃を受けた。
 精神的支柱であり、知性の支柱でもあった言語能力持ちのコボルト王シャハロウと幹部全てを失い、外征能力を完全に失った。

帝国南部鎮守都市ヴィント

 王国国境にほど近い場所にある帝国の都市。周辺を含まぬ人口三万ほどの南部地域では最大規模の都市のひとつ。仮想敵国である王国に近い場所にあるため、平時から都市人口に匹敵する規模の二個師団二万名の兵力を駐留させていた。また、都市より兵営が広いなどともいわれていた。太守はバルディオン。
 初めて人類が奪還した帝国都市である、今後の帝国開放の起点となると考えられている。

【CP】帝国難民キャンプ1/2/3/4/5/6/7/8/9/10/11
連動シナリオへの参加は冒険者ギルドから!
アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0