【CP】帝国難民キャンプ連動

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「なんだと?」
 コボルトの口から怒りの言葉が吐き出される。
 人間の言語を流暢に操るのは特異個体でも不可能なはずだ。
 しかしこの巨体のコボルトは、明らかに理解した上で論理的思考を得て言葉を操っている。
「だぁから、やめろっつってんだよ。冒険者に部族を半壊させられちまったの、もう忘れたのかい?」
 嘲弄するのは白銀虎のハーフビーストだ。
 人類の中ではかなりの長身である彼も、特大のコボルトと比べれば頭2つ分は背が低い。しかし、引き締まった体から噴き出す迫力は見劣りしない。
 彼の名はジルベル。
 メドゥの指先最悪のテロリスト集団の幹部『青の中指』だ。
「貴様」
 ジルベルと相対する、オーガ級の巨体が殺気を放つ。
 護衛である特異個体達は即座に従い人間ジルベルを囲むが、数的には圧倒的に有利であるのに緊張を隠せない。
「獲物の守りが薄くなってから狩る程度のこたぁお前さん等コボルトにも出来んだろぉ?」
 馬鹿ヤコブと人類の主力冒険者と帝国軍の激突を待てと、数日前と比べて数が減った特異個体達を一瞥する。
「シャハ……ザマ様」
 殺す許可をくれと特別に賢いコボルト特異個体が訴える。
 独特のペイントを施された顔面が、憤怒で歪んでいた。
「この地を奪った後の獲物はお前だ」
 シャハロウコボルトの英雄は自制する。
 ジルベルは口元に嘲笑を浮かべたまま冷たく観察する。
(全滅する前にレイウェストを殺す程度のこたぁしてくれよぉ)
 両者の間には、友情など皆無であった。

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「やべぇ疲れがとれねぇ」
 若さと体力くらいしか取り柄のないリット授恵者が疲れ果てている。
 冒険者が叩いても叩いても減らないよう見える、コボルトの特異個体相手に警戒を続けた結果だ。
 ヴァイセントラフ砦に戦える人間を大勢送ったので負担はさらに増えている。
「ねーちゃーん! なんか新しい話とどいてるー?」
 帝国貴族令嬢達難民キャンプ指導層の天幕に外から声をかける。
 相変わらず無礼討ちされても文句を言えない態度だ。
 難民キャンプは彼リットを使い続けるしかないほど人材が足りない。
「リット君、入ってください」
 穏やかなのに迫力のある声が聞こえ、リットの背中がようやく伸びた。
「忙しいなら……」
「どうぞ早く入れ」
 促す声に、リットは借りて来た猫のような態度で天幕に入った。
「先にリット君からの報告をお願いします。警備の状況はどうなっていますか」
 リュシエンヌ・テタールは若さと授恵者の体力では補いきれないほど疲弊している。
 砦への戦力供出とコボルトの再来襲は、難民キャンプ内部のやりくりを破綻寸前に追い込んでいるのだ。
「冒険者のにーちゃんやねーちゃんが来てくれねーとやべぇ」
 今の均衡はコボルト特異個体が積極的に攻めてこないから成立している。
 相手がその気になれば、キャンプで生き残るのは療養中のレイウェスト皇子とその護衛エフレムだけだろう。
 冒険者が特異個体の排除や小砦の奪還を進めていなければ、その2人すら危なかったかもしれない。
「最悪の場合は殿下を砦に……いえ」
 寝不足からくる頭痛がリュシエンヌの思考を乱す。
 青空教室の子どもたちのことが脳裏に浮かび、貴族としての義務と個人としての思いが彼女を苦しめる。
「そういえばにーちゃん、じゃねーや皇子様生きてるの?」
 リットの暴言にリュシエンヌが俯き、砦への報告書を書いていたリオン・レスティが咳払いした。
「冒険者の皆さんのお陰でなんとか」
 皇子はエフレムの治療により、何とかこの世に留まった。皇子の傍を離れられないエフレムに助力したのは冒険者だった。
 皇子暗殺未遂が引き起こした混乱を最小限に抑え込んだのも冒険者の功績だ。
「そっか!」
 リットは単純に喜んでいる背景を全く理解していない。
 帝国貴族令嬢達難民キャンプ指導層は、戦闘開始以前に倒れそうになる重責ストレスに耐える。
「非授恵者の子供と女性は、一旦ヴァイセントラフ砦に避難してもらうことになるかもしれません」
「ねーちゃん達の指示には従うけど、大丈夫なのかよ」
 難民キャンプは広大で、大規模な避難計画が必要な人口密集地から近くのエルフ集落に匿われたらなんとかなりそうな場所まで様々だ。
「すまねぇ今のは忘れてくれ」
 リットは2人指導層の顔色を見て発言を引っ込める。
「俺は防戦の準備進めとく。他に何か出来ることある?」
「キャンプと砦の連絡の維持、出来れば、殿下の命を狙うメドゥの指先の捜索も」
 リットの能力の限界を越えているのは分かっているが命令するしかない。
 特殊個体コボルトの能力は授恵者に匹敵する。
 コボルトたちの総戦力次第では、現存する戦力で冒険者が到着するまでの足止めが可能かどうかすら怪しい。
「分かった」
(早く来てくれよにーちゃんとねーちゃん冒険者達)
 全身から冷や汗を流しながら、リットは天幕から駆け出した。


執筆:馬車猪

assignment帝国難民キャンプ連動 概要 特設ページ

 【CP】連動は帝国から王国まで逃れてきた難民を救うために発令された。生きていくための課題は衣食住の確保から隣人や外敵への対処、果ては同じ人間との政治的争いにまで広がっていく。
 指導者や軍人の多くは逃亡の際に失われ、残された難民はほとんど武力を持たない民である。そのため、冒険者が武力を担当して外敵に対抗するとともに、さまざまな経験を活かして自活を助けている。
 帝国南部都市ヴィントの奪還が成功した結果、難民キャンプから帝国本土への帰還がついに始まった。

assignmentここまでの流れ

 帝国滅亡時に膨大な難民が発生し、クリーパーのはびこる土地から大挙して逃げ出した。
 ヴァイセントラフ砦単独では難民の全てを受け容れることは出来ず、その一部は王国へ流れた。
 その難民が王国に定着することを嫌った王国貴族は、既存村落へ受け入れる代わりに何もない僻地を貸し与えるという形をとる。このままでは冬を越す民はほとんどいないのではないかと危惧された。
帝国亡き世界での王国一人勝ちを阻止したい同盟が帝国難民を生き延びさせ、帝国復活の目を残すため支援を始めたのが、難民キャンプ成立までの経緯である。
 当初は、衣食住の不足や心理的な絶望、指導者の不足などから短期間での崩壊や暴動も予想されていたが、冒険者の活躍のおかげでいずれも解決へ道筋が立ち、現在も存続している。
 ヴィントとその周辺の土地が帝国の手に戻ったことで、ようやく難民キャンプの役割が終わろうとしている。

assignment過去のストーリー

▼過去ストーリーの結果
・開拓編
 最初期の難民キャンプは、寝床はテント、食事は石のように硬いパン、水をくむためには野犬がうろつく小川まで出向くしかないという状況だった。
 冒険者が野犬や害獣を駆除し、人間の気配に気付いて近づいて来たクリーパーを討ち、物資を狙う賊を排除することで、苛酷ではあっても安定した生活が成立するようになった。
 各地に散っていた難民が難民キャンプを目指すようになったのもこの頃である。
・エルフ・コボルト編
 帝国滅亡に気付かない水準の引き篭もりエルフ集落との間に、深刻な境界争いが発生した。
 冒険者がキャンプとエルフ間の衝突回避に奔走しているタイミングで、人類の領土を狙うコボルト部族による侵攻が始まる。
 激戦の末数百のコボルトを冒険者が討ち取ったことでキャンプ周辺の平和が回復した。
・メドゥの指先・コボルト決戦編
 コボルトの特異個体を越えた特異個体、コボルト王シャハロウがメドゥの指先と手を結んだ。
 矛先を向けられた難民キャンプ群は危険な状況に追い込まれた。
 意識を取り戻した直後で命も危なかったレイウェストが自ら囮となることで、冒険者による伏兵と迎撃が成功しシャハロウと暗殺者の群れを討ち取った。

person_pin関連NPC

 亡国となった帝国の皇族唯一の生き残り。皇位継承順位こそ八位と低いが、皇帝とその子女である第三皇女との間に生まれた生粋の皇族。
 彼にとっての難民達は、慈しむべき対象であると同時に、帝国再建のための必須の材料である。

《本連動での動き》

 帝国の柱石であったエフレムの真実が明かされた結果、帝国のおかれた状況が悪化しレイウェストにかかる負担も激増した。今は、帝国南部の復興と難民帰還事業の進展だけが心の慰めである。

 皇太子レイウェストの護衛騎士であり、クリーパーを召喚し支配することを得手とする召喚術の達人。亡国の騎士となっても単身で各国の介入からレイウェストを守る忠義の人物。のはずであった。

《本連動での動き》

 最大戦力にして決戦戦力であるエフレムが消えたため、帝国全体の兵力不足が深刻な状況になった。

 帝国の小都市テタール・ロバンを治めるテタール伯の末娘。家族により帝国から逃がされ、弟や従者とはぐれて身ひとつで難民キャンプに流れ着いた。

《本連動での動き》

 難民キャンプに極少数しかいない貴族であり、指導者の1人として担ぎ上げられた。
 箱入り娘だったが冒険者に心身共に鍛えられ、現在は難民の自立を目指して教育に力を入れている。

 帝国の小領主の娘。領民達と共に帝国を脱出し、難民キャンプに落ち着いたはずだった。

《本連動での動き》

 難民キャンプに極少数しかいない貴族であり、指導者の1人として担ぎ上げられた。
 領民の長との二足のわらじは大変そうだ。

 帝国地方都市のスラムに住んでいた一般人。最初期からの難民キャンプの住人。自分は戦う事しかできないと、難民の仲間を守るために率先して突撃していく。失敗も多いが、まっすぐな心根へは難民仲間からの信頼も厚い。

《本連動での動き》

 冒険者に依頼するまでもない戦闘を担当しているが、時折手に負えない外敵などに遭遇し、冒険者と共に戦う。兄ちゃん姉ちゃんの届かぬ背中へ憧れを抱くようになった。

menu_book関連用語・情報

ロモズ歩兵団

 難民の一部が立ち上げた自衛用戦力。
 決戦で存在感を示し、社会的地位が上がると同時に期待と責任が大きく、重くなった。

メドゥの指先

 難民キャンプに対する攻撃を行った。
 幹部の表だった動きはほとんど見られず、しかし対峙した冒険者達が防御に専念せざるを得ないほどの暗殺者が投入され、殲滅された。

コボルト

 人類の土地を長年狙っていたコボルトの部族。
 クリーパーや害獣が激減した土地を狙って侵攻を開始したが、クリーパーや害獣を激減させた冒険者による猛烈な反撃を受けた。
 精神的支柱であり、知性の支柱でもあった言語能力持ちのコボルト王シャハロウと幹部全てを失い、外征能力を完全に失った。

帝国南部鎮守都市ヴィント

 王国国境にほど近い場所にある帝国の都市。周辺を含まぬ人口三万ほどの南部地域では最大規模の都市のひとつ。仮想敵国である王国に近い場所にあるため、平時から都市人口に匹敵する規模の二個師団二万名の兵力を駐留させていた。また、都市より兵営が広いなどともいわれていた。太守はバルディオン。
 初めて人類が奪還した帝国都市である、今後の帝国開放の起点となると考えられている。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0