【CP】帝国難民キャンプ 6

リュシエンヌ・テタール

なんとか、紛争の拡大を止めることが出来ましたか。これで安心して種まきが出来そうですね。

アルベルト=V=シュタールシュヴェーアト

ああ、エルフ相手の戦いが防げて何よりだ。――待て、あれは何だ?

リュシエンヌ・テタール

……コボルト? 亜人がどうしてここに?

コボルトの集団が、帝国難民キャンプ周辺で活動しているようです――
(2月8日 【CP】関連シナリオリリース開始!)

 コボルトが北を見つめている。
 ドラゴンの巣を伺うように慎重に。
 ドラゴン(帝国軍)の大怪我(壊滅)を半ば確信している目の色で、じっと北を観察している。
 巣穴(帝国領)の中には、1匹の子ドラゴン(ヴァイセントラフ砦)しか残っていない。
 人類の土地を奪う、100年に1度もない好機であった。

●難民キャンプ
「兵士の引き上げを予定している」
 ヴァイセントラフ砦から訪れた士官は、帝国軍人らしく率直に言い切った。
 リオン・レスティは動揺を隠せず、リュシエンヌ・テタールもどれだけ感情を隠せているか自信が無い。
「次の作戦には帝国復興の成否がかかっている。お二人にはこれまで以上の協力をお願いする」
 おそらく最も危険な部署に配属されるだろう士官が、難民キャンプという後方にいる貴族子女2人に要請していた。
 士官が帰路について数分後。
 難民キャンプの実質的首脳陣である2人はため息をついていた。
「来るべきものが来たということでしょう」
「でも、まだ全然足りません」
 住居を建て畑を拓き、次代を担う子供達を育てる準備も始めたが何もかも足りない。
 ロモズ歩兵団は訓練が始まったばかり、スラム出身の武装難民はリーダー不在で頼りにならず深刻な戦力不足だ。
「引き上げが本格的に始まるのはまだ先です」
「戦える人はもう引き上げられてっ……すみません」
「いえ、私も同じ気持ちです」
 泣くことが出来れば気が楽になるのかもしれない。
 だが、帝国貴族として育てられ、どちらも大勢の元帝国人に頼られる2人は立ち止まれない。
「近隣のエルフとの本格的衝突が回避出来そうなのは不幸中の幸いです。また冒険者に助けられましたね」
「はい。境界も最低限は確定出来そうです。……賠償金(食料援助)は大きいですけど」
 紛争の火種に油を投げ込んだというか自分自身が火種になった少年のことを考え、どちらも怖い笑顔を浮かべる。
 冒険者が英雄譚になりそうな活躍をしてもぎりぎりの状態なのだ。
 難民とエルフの間に悪意を以て火種が投げ込まれた痕跡もあり、人手も人材も今の倍は欲しい。
「リットさんにはその分(賠償金の分)頑張って貰いましょう。場所によっては麦の種まきの時期ですし」
「人のやりくりが……」
 領主をするには2人とも非常に若い。
 だが、領主役をこなせる能力を持っているのは、難民キャンプの中にはこの2人しかいないのだ。
 この日も夜遅くまで会議が続いた。

●エルフ集落
「ええい、話にならんわこの馬鹿め!」
「そっちこそ何話してるか分かんねーだよ!!」
 若いエルフとヒューマンの少年が威嚇し合う。
 100年単位の引き篭もり集落と、帝国の中でも下層出身者が大部分の難民キャンプでは価値観が違いすぎた。
「そもそもお前はヒューマンなのか。お前の里のヒューマンはもっとずっと理知的だったぞ! 巨大な戦斧を軽々運んでたが」
「斧のねーちゃんは貴族で俺は平民だっての。……おい」
 馬鹿話をしていた少年が、殺しに慣れた戦士の表情に変わる。
「何だっ」
「声がでけぇ。何かいるぞ。お前等、村の中でも隠密の訓練してンのか?」
 若いエルフがぽかんと口を開ける。
「食料引き渡し前にお前を奪還しに来た、のか」
「ねーよ。冒険者のねーちゃんとにーちゃん達なら俺が気付ける訳がねぇ」
 シーフならスラムの深層に潜んでいた凄腕に匹敵し、ウォーリアなら帝国軍人並み、キャスターなら戦場で敵軍を焼き、シューターなら超絶の技術を駆使し、ヒーラーなら死人寸前の重傷者を全快させるというのがリットの知る冒険者達だ。
 物音と微かな獣臭がするコレは、明らかに別物だった。
「ヤるなら手伝うぜ。剣返せ」
「誰が返すか。お前はここにいろ」
 エルフは鼻息荒く牢屋を出て行く。
 その後、村のエルフが総出で捜索にあたったが、コボルトの斥候は1体も捕まることなく撤退に成功した。


執筆:馬車猪





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アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0