【褪野】ウッディ・ラムラム!【彩都】

炙りとろ左門

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シナリオID:2757

オープニング

● ふたごひつじは彩都の希望となるか
 毎年、冬を無事に越せるかどうかを心配していた――フェイデン子爵ノーキスは領地の視察を終え、執務室に向かう途中、廊下の窓から金木犀の森を眺める。
 金木犀はすでにその花を落としたが、薪や森の恵みを確保するために人の出入りは続いている。だが、領民の顔に例年ほどの緊張はない。冒険者たちの力を借りての【褪野開拓】のおかげで、冬の間のひもじさを心配しなくてよくなったからだ。
 薪も森の恵みも、必要なものを他領から輸入する財も決して無限ではないが、もう子供達が凍えることも、腹をすかせて泣くこともないのだ。
「輸出も、この調子で伸ばしていかなくちゃ」
 これについても、ブランド酒を用意できた。それ以前より準備してきた陶器やガラス製品などの工芸品とともに、売り上げは徐々に伸びてきている。【褪野(フェイデン)】は【彩都】に生まれ変わった――その噂を聞いて、春先の観光先として挙がる機会もあると聞いた。
 一番影響が大きかったのは、去年の夏に開かれた【瑠璃浜(ラズライト・ビーチ)】のお披露目だ。好評が国内貴族の耳に入ったことで、外交面も整備していく必要が出てきた。
「カードは多いことに越したことはないし……」
 宝石酒については、領内の土壌改善と果樹栽培が軌道に乗るまではエディン領からの果物の融通に頼ることになる。自領のみで作れるのは、陶器やガラス製品の工芸品だけ。
「もうひとつ、ふたつ……」
 ノーキスはぶつぶつと呟きながら、執務室に入った。
「あれ、ノーキス?」
「あら?」
 と、思ったのだが。考え事をしていたため、間違えて隣の談話室に入ってしまったらしい。そこにはノーキスの婚約者、アリステアと補佐官のレヴィルが暖炉前のソファに腰掛けており――。
「それは?」
 サイドテーブルの上に、木材やのみやら小さなハンマー、ナイフなどが並べられていた。
「あっ、こ、これね。レヴィルから木彫りについて教わっていたんだ」
「木彫り……?」
 ノーキスはレヴィルを見た。彼との付き合いも半年後には2年となるが、そんな趣味があるとは知らなかった。驚きを隠さずにいると、レヴィルはわずかに視線を逸らす。
「レヴィルはすごいんだ、手先も器用だし……見て!」
「あっ」
 興奮気味のアリステアが、机の上に見本として置いていた木彫り人形を手にノーキスへ駆け寄る。レヴィルは思わず顔を上げたが、それはすでにノーキスの手に渡っていた。
「まあ……! とてもかわいらしい」
 手のひら大のデフォルメされたうさぎの木彫り人形に、ノーキスは頬を緩める。
「まさかレヴィルにこんな感性があるなんて……」
「枕元にいっぱい並べたいよね!」
 好みが合うのだろう。盛り上がるふたりを見て、しかしレヴィルは複雑な表情のままだ。
「いえ……お褒めに預かり、光栄です」
「あまり嬉しそうに見えないけれど……?」
「多くの場合、彫刻に求められるものは、緻密さや精巧さですから」
 そうかしら、とノーキスは人形を光にかざすようにする。確かに掘り込みによる陰影は少ないし、レヴィルが言ったような、一般的に彫刻に求められるような芸術性はないかもしれない。
「でも、これは流行るわ。いいえ、流行らせるのよ」
 ノーキスはこれを使わない手はないと思った。このかわいさは、女性や子供にウケる。そして――。
「『小さくて可愛い木彫りの人形』なら、領内の森林資源をさほど消費しなくてもいいし。職人たちに木工技術も身につけてもらいましょう!」
 もちろん、デフォルメデザインにも技術が必要だ。だがそれはレヴィルが手本となる品を作れば、形が単純な分、領民たちも家内で作れるかもしれない。アリステアもふむと頷いた。
「技術訓練を兼ねるんだね。いいと思う。できれば難しくない形が良いよね、彩都のシンボルにしてもいいかも……そうだ! 去年生まれたふたごひつじの人形を作ろうよ」
 雌のひつじのほうは、冒険者によって【タンジー】と名付けられた。2頭ともに揃いのベルをつけて、今もすくすくと成長している。
「ではレヴィル、デザインをお願い。作ったものは近隣領に流して、彩都を宣伝してもらって……人手がいりますわね」
 となれば、やはり頼るべきは冒険者だ。レヴィルは席を立ち、「承知しました」と短く答えるのだった。

解説

【!】フェイデン子爵は、冒険者に木彫り人形の作成と売出しを頼みたいようです。 ● できること 【1】ふたごひつじの木彫り人形を作る  見本品をもとに、ふたごひつじの木彫り人形「ウッディ・ラムラム」を作っていただきます。上手に作ることができるかどうかは、プレイングや各種スキルによって判定されます。自分用に作って持ち帰ることも可能です。  経験がなくとも、NPCレヴィルが指導につきます(特に会話や交流などの希望がなければ、NPCは名前のみリプレイに記載されます)。 【2】出来上がったふたごひつじの木彫り人形を売る  冒険者たちが作成した木彫り人形を、近隣都市で売り出します。いかに「彩都のマスコットである」「価値があるものである」として売り出せるかがポイントです。成否はプレイングや各種スキルによって判定されます。 【3】自由行動  その他、フェイデン領内で自由に行動が可能です。 ● 復興ポイントについて 本シナリオの結果に応じて、「産業」および「外交」の【復興ポイント】が増減します。 【復興ポイント】はシナリオの成否段階に応じて貯まるポイントで、フェイデン子爵領の復興・発展を数値化したものです。 現在、以下のような状態になっています。 内政:4pt/外交:2pt/財政:3pt/産業:9pt/魅力:8pt ● 彩都開拓団について フェイデン子爵領の再興と発展のため、冒険者を中心として構成された組織です。 開拓団にはそれぞれ、【農業】【採掘】【漁業】【工芸】【畜産】【土木】の小部門が用意されています。 これらには子爵領の職人たちが親方として配属されており、技術指導を行います。 今回より開拓団に参加を希望されるPCは、プレイング冒頭に「【開拓団参加希望:◯◯】」(◯◯は小部門名)とご記入ください。 ※開拓団所属者の判定が有利になったり、未所属者の判定が不利になったりする、などということはありません。あくまで開拓依頼をより楽しむためのフレーバー要素です。 ● NPC ノーキス=フェイデン  :フェイデン子爵です。 レヴィル=ストゥルルソン:フェイデン子爵領を担当する王国査察官です。 アリステア=エディン  :エディン侯爵令息。「妖精姫」の異名を持つノーキスの婚約者であり、入婿です。 ヴィラール=サージェス :事故死した双子の兄を演じる男装女子。正体については秘匿情報です。

マスターより

初めましての方は初めまして。こんにちは、炙りとろ左門です。 本シナリオは領地を少しずつ開拓していく「【褪野】」シリーズのシナリオです。これまでの経緯を知らなくても問題ありませんが、流れを追いたい方は【褪野】および【彩都】のリプレイをご参照ください。 とはいえかなり回数を重ねているシリーズでもありますので、近々ノート機能に「これまでのあらすじ」をまとめる予定です。 マスターページは参照しなくても問題ありませんが、描写やマスタリングに関する項目があります。 また、NPCは基本的にプレイングに記載がなければ同行描写はされません。同行指定し交流をはかることも可能ですが、描写字数の関係で省略される場合もございます。ご了承ください。 本シナリオにはOPにも登場したNPC「ノーキス=フェイデン」および「レヴィル=ストゥルルソン」が関連づけられており、挨拶をしたり、必要に応じて応答します。質問の際はコメント冒頭に【Q】をつけてください。 それでは皆様のご参加&プレイング、お待ちしております!

リプレイ

● 木彫り体験
 シャドウは苦戦していた。彩都開拓団の漁業部門へ所属しての初仕事が、まさか木彫りとは思わなかった。そしてシャドウは生来、不器用なのである。
「力に頼った削り方では、お怪我をなさいます」
 レヴィルはシャドウの手元を見、慌てて道具の持ち方を変えさせる。
「木の材質にも左右されますが、木目に逆らわず、撫でるように……」
「は、はい」
 シャドウは今にも泣き出しそうな雰囲気を醸し出しつつ、小さく「すみません……」と絞り出すのが精一杯だった。未だ削り方の基礎から進めていないのである。
 出来上がったひつじの木彫り人形は――。
「……握ることで手のひらをマッサージしてくれそうな……」
「自分、不器用ですから……!!」
 レヴィルのコメントに、シャドウはひつじっぽく見えなくもないそれを握り込んだ。もこもこの羊毛を表現したつもりの凹凸が、手のひらに与える刺激がなんとも言えない心地よさであった。


 見本をつぶさに観察し、おおまかな形を取ってから丁寧に整えていく。
 木の温もりが感じられるように、ひつじたちの愛らしさが表現できるように。表面はできるだけ滑らかになるように仕上げていく――スィーリーンは作業に没頭していた。時の流れは忘れ去られ、周囲の音も遠くなるほどに。
「……ふぅ」
 だが、休憩は大事だ。体力の消耗は作業効率を低下させ、近視的な作業は完成度に影響を及ぼす。スィーリーンは手のひらの中のひつじを机の上に置いて、気づかぬうちに丸まっていた背筋を伸ばした。
「なるほど。ひとつ作るだけでも、かなりの労力です」
 だからこそ冒険者にも声がかかったのだろう。スィーリーンはこういった作業にも慣れているが、手のひら大のものとなるとやはり技術が求められる。
「さて……貴方は連れ帰りましょう」
 スィーリーンは出来上がったひつじ人形の鼻先を軽くつついた。まずは練習用にと作ったものだが、落としてしまった際に耳の先が少し欠けてしまったのだ。
 だがそれすらも可愛らしいと思えるほど。やはりものづくりは良いものだと、スィーリーンは目を細めるのであった。


 ひつじのタンジーが甘えるように「めぇ」と鳴く。それを、ライオネル・ギシュムはじっと見つめていた。
「タンジーはのんびり屋さんなんだね!」
 ふたごひつじの片割れは好奇心旺盛な上にやんちゃっ子らしく、牧羊場内をあちこち駆け回っている。
「君たちの人形を作るなら、君たちの様子が伝わるものにしたいなと思って」
 ライオネルの語りかけが通じているかはともかくとして、タンジーはふたたび「めぇ」と鳴いた。今度は少し眠そうだ。
「そしたら、眠っているひつじと、遊んでいるひつじを作ろうかな」
 よし、とライオネルは立ち上がった。手先の器用さには自信があるし、努力すれば売り物にはなるだろうと信じて。大切なのは愛らしさが伝わるかということなのだ。
 そしてこのひつじたちが、褪野と呼ばれたフェイデン領にとって希望の象徴となるように。
 運は良かったかもしれないが、決して偶然では片付けられない出会いの数々の上に、今のフェイデンがあり、この子達がいる。それが伝わるように――。


「よし、こんなもんか。……マリカの嬢ちゃんが喜ぶかはさておき、だ」
 ヴァンゲルス・ロッドは出来上がったひつじ人形の出来栄えを見たあと、刷毛で細かいごみを払っていく。
「そこそこ上出来じゃねえか? かわいい……かどうかは、俺にはちと分かんねえが。嬢ちゃん、どうだ?」
 ヴァンゲルスは向かいの椅子に座って作業をしているルベア・ベルニに声をかけた。ルベアは作業の手を止めて顔をあげ、ヴァンゲルス作のひつじを見た。
「ええ、この足の短さとか、見本とはまた違ったかわいらしさが――」
 と、ルベアは固まり、途中で言葉を切った。ヴァンゲルスはまずいところでもあったかと小首を傾げる。ルベアが慌てて彫っていたものを隠したので、ヴァンゲルスはますます不思議に思った。
「別に嬢ちゃんの作ったものを笑いやしねえよ」
「ち、違うのよ……同じものを作って笑われるならそっちのほうがよかったわ」
「んん? どういうことだ?」
 ルベアはちらりとヴァンゲルスを見遣る。
「笑わない?」
「笑わない」
 ヴァンゲルスが真顔で頷くので、ルベアは意を決して両手で隠したものを差し出した。
 それは、かわいらしいうさぎの人形だった。
「……こりゃ……うさぎだな」
「そうなのよ……アリステアさんがレヴィルさんの作ったうさぎを皆に見せてまわっていたでしょ? だからてっきり……」
 なるほど、とヴァンゲルスは顎をさすった。
「でもま、いいんじゃねえか? 『かわいい』し……涙も引っ込んだみてえだしな」
「なっ! 泣いてなんて」
 ルベアは慌てて目元を擦る。
 彫っている間、冒険者になる以前のことを思い出していたのだ。
 貧しかったが故、必要なものは手作りした。それでも父に教わりながら物を作る時間は好きだった。そんな日々は、だが、もう二度と戻らないことに思い至ってしまって――。
「俺もうさぎを彫ってみようかね。ほら、ひとりぼっちは寂しいだろ?」
「……そうね。ありがと」
 また寂しさに胸を締め付けられそうになったルベアだったが、ヴァンゲルスの言葉がそれを和らげる。ルベアは手の中のうさぎをもう一度見つめ、そっと胸元に引き寄せた。

● ふたごひつじが育むもの
 人が信仰するのは、「神像」ではなく「それに付随する物語」だ――というのは、グレイブ・ヤードの持論である。数多の宗教、様々な教義においても、「わかりやすい物語」というものが大なり小なり求められるもの。グレイブは今回の件にもそれがあてはまると考えていた。
「ふたごひつじのことかい? ああ、僕はあの子たちが生まれる時、小屋の扉を守ってたんだけど……」
 グレイブにそう語るのは、牧羊地を管理していた青年だ。
「冒険者さんたちが魔獣をばっさばっさと薙ぎ倒すのを見てたんだ。怖かったけど、とても勇気づけられてね」
 なるほど、とグレイブは頷く。
 グレイブは「ふたごひつじ」を物語として広めようと、こうして関係者に話を聞いていた。まとめたものは、工作室にでもそっと置いておくつもりだ。できるだけ多くの職種がふたごひつじに関わることができるようになれば、領民たちの関心もより一層深まるだろう。
 周囲との関わりの中で、命は育まれる。それは人も動物も、同じことなのだから。


「……というものを見つけたんだけど」
 エミリア・シバは工作室に残されたメモを手に、ノーキスのもとを訪れていた。
「なるほど、これはおもしれーですわね……紙を扱う職人にも仕事を投げられそうですわ!」
「そうね。みんなももっと、ふたごひつじちゃんたちのことを身近に感じてくれると思うわ。その上でなんだけど……木彫り教室を開くのはどうかしら」
「それは、技術養成とはまた別の機会として、ですの?」
 ノーキスの疑問に、エミリアは頷く。
「領民と観光客向けに、ね。技術を身につけるきっかけ、他者との交流の場にするのはどうか、って。お土産に木彫りセットなんかも、良いかもしれないわね」
 展示会なども開くことができれば、もしかしたら彫刻家の誘致につながるかもしれない。エミリアの提案を書き留めながら、ノーキスの瞳は輝いていた。
「なるほど……ぜひ参考にさせてくださいな! もちろん領民の話も聞きつつになりますけれど」
 あまり心配はいらないかもしれませんわね、とノーキスは続ける。今回の依頼に参加する冒険者たちを労う領民たちとの間でも、多くの意見が交わされているようだ。それだけ皆も積極的ということなのだろう――。


 ローザリカ・L(リベラ)・ディオールは、陽の暖かさを吸収した藁の上で眠るタンジーを、飽きもせずに眺めていた。
「大きくなるのが早いな」
 産まれたての、華奢で小さく、あまりも頼りなかった頃の姿を思い出す。今やふわふわのもこもこだ。タンジーは綺麗好きらしく、世話人がしょっちゅう風呂に入れてやっていることもあってかなり毛艶がいい。普通、生きている羊の毛というものは油っぽいものなのだということも、世話人が話していた。
「彼からは教えてもらうことばかりだ。僕にはまだ、学ぶべきことがたくさんあるんだな……」
「……」
「?」
 それまでローザリカの言葉に相槌を打っていたジュスト・ヴェルジーが、ふと黙り込んだ。ローザリカはそれに気づいて、タンジーから視線を外して振り返る。と、ジュストは大判のストールを広げ、そのまま後ろからローザリカを抱きしめた。
「ああ、確かにふわふわだ」
「ぼっ、僕のどこにふわふわ要素が!?」
「髪とか……色々だけど。この子(タンジー)に夢中なロゼの方が、俺は可愛いと思う」
 ジュストがうなじのあたりに顔を埋めると、ローザリカは頬を赤らめた。
「それより、」
 ジュストはそのまま、ローザリカの耳元で低く囁いた。
「俺といるのに、他の男の話?」
「〜〜〜〜ばかっ!」
 ローザリカは扇を閉じると、腰に回されたジュストの腕を軽く叩く。
「どうして君は、もう、教育に悪いことばかり! この子に聞こえたらどうするん――」
 その時、草を踏む音がした。まさか誰かに見られていたかとローザリカは勢いよくそちらの方を振り返る。
「めぇ? めぇ……」
 そこにいたのは、ふたごひつじの片割れだった。遊びから帰ってきたのだろう、だが『お邪魔しました』と言わんばかりに踵を返す。
「ああそうだ、木彫りの羊も買っていこう。いくら可愛いと言っても枕元に並べすぎない程度にしておくれよ」
 ジュストはそんなことも気にせず、ローザリカの髪を梳く。わなわなと震えるローザリカの混乱した頭は、
「……枕元は、先約がいるから机に飾る」
 そう、絞り出すので精一杯だった。

● ふたごひつじの物語とともに
「ってわけで、いろいろ作ってみた」
 ナハシュはそう言って、試作品の数々を机の上に並べ終えた。ヨル・スレイマンはその数の多さに目を丸くする。
「相変わらず、君の発想は自由だね」
 いいと思う、と頷きつつ、ヨルはナハシュの作品をひとつひとつ手に取る。
「これ、ポーズも持っているものも違うけど」
「これは誕生月ラムラムだな!」
 それぞれの季節に咲く花や著名なモチーフを取り入れたひつじたちは、試作ということもあり数体のみだが、確かにこれは売れそうだ。
「これは?」
「招きラムラム」
 次にヨルが触れたのは、宝箱台座の上から手招きするふたごひつじだった。短い足が揺れる様はとても愛らしい。
「んで、こっちはラムラムボックス。それからこっちは台座ラムラムだ」
 ラムラムボックスは、ふたごひつじを模った人形の中が空洞になっており、小物入れとなっているものだ。台座ラムラムは、ふたごひつじが左右から支えるような形の台座になっており、宝石や小物を嵌めて飾れるようになっている。
「どれが売れそうだ?」
「そうだね……」
 ヨルはじっくりと考え込んだあと、誕生月ラムラムとボックスラムラム、そして台座ラムラムを選んだ。贈答用としても販路が開けそうだと思ったのだ。そして人の手に渡ることで宣伝効果も高まるだろう。
「じゃ、これを持っていくよ。ナハシュは報告を頼む」
「おう、任せとけ!」
 どんなものを作って、どのように売るのか。今後のためにも、ノーキスへの報告はあった方がいい。ヨルはそれをメモに残すとナハシュに渡した。


 同様に、リサ・ベイカーらも宣伝と販売について知恵を出し合っていた。
「売るには、付加価値をつけることが重要です」
 リサは大前提をまず確認する。それは商売の基本だ。その場に同席するノーキスや、エルゼリオ・レイノーラも頷く。
「商売に関しては門外漢だし、意見をもらいたいんだけど……ふたごひつじにまず興味持ってもらうこと、だよね」
 それについては、何者か(グレイブ)が残したメモもある。サマエラ=フォリウムはそれを読みつつ、ふむと考え込んだ。
「産まれた時の話、それから今も可愛がられているということ……。難産に加え、魔獣の襲撃も払い除けたとなれば、安産祈願や厄除けのお守りとして広められるかもしれないな」
 サマエラは愛らしくも小首を傾げるひつじの人形を手に取り、表情を緩める。
「子を産む前の母は、不安になると聞く。この人形があることでそれを少しでも払拭できるのなら……と思う」
「良きにございますね!」
 ハリーヌ・ヨツユビもぽんと小さな手を叩いた。
「幸福を呼ぶ、幸運をもたらす木彫りのふたごひつじ(ウッディ・ラムラム)! 群れで暮らすひつじは家庭円満、穏やかな日々と平和の象徴、などとも言えそうでございますね」
「そうですね。導入としては良いと思います」
 リサはそれぞれの案をまとめていく。
「あとは、ふたごひつじの存在が広まったその後……皆さんがフェイデンを訪れてくれるかどうか、その導線が必要かと思います。例えば、観光などで来訪時に持って来てくれれば飲食店での割引があるとか、何か一品サービス……特典をつけるとか」
 これについては、模倣品が出回らないような工夫が必要だろう。本物だと判別可能な印が付けられれば、付加価値を高めるという目的も達成できる。
「デメリットとしては……特典の内容によっては、総合的に見て損失となる場面があるかもしれないこと、ですね」
 リサがペンを走らせる手を止める。一同もあれやこれやと考えるものの、ブランドという価値は一朝一夕では育たないことが壁だった。
「……それなら、模倣品が出回ったとしても損失が少なくなるように考えるのはどうかな?」
 ふと、エルゼリオが顔を上げてそう言った。
「『あのふたごひつじに会える!』っていう触れ込みで、ふれあい広場……餌やりとかお世話体験とかのイベントを開いたりして。そこに購入済みの人形を持っていくと、餌代や、お世話体験の入場料が安くなったりするとか。あるいは売るときに『イベント優先参加チケット』をランダムで封入、とか」
「そうすると、ほぼイベント開催の費用と人件費のみ工面できればいいですね。……いかがでしょう?」
 リサはノーキスの方を振り返った。それにノーキスが頷いたことで、方針が固まる。
「あ、話がまとまった頃かな?」
 と、そこへ商売支度を整えたヨルが通りかかった。ヨルは売りに行くものを見せようと立ち寄ったのだが、そのうちのひとつ、ボックスラムラムに視線が集まる。
「「「これだ!!」」」

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「それで、この子達を置かせてもらいたいんです」
 リサは複数の近隣都市の雑貨屋に出向き、販路確保の交渉に出向いていた。ラムラムボックスの封印(シール)をにはベルをあしらい、中には『ふたごひつじの物語』という折本が入っており、さらにランダムで『ラムラムふれあいひろば 入場無料券』がはさまっている。
 ラムラムボックスの他には、冒険者たちが手がけた木彫りのふたごひつじ(ウッディ・ラムラム)たち。ひとつひとつ表情が違うことや、一点ものであること。またそれとは別にデザインバリエーションを持たせたコレクション要素があることが売り上げにつながると語る。販路契約はなかなか骨の折れる仕事だったが、冒険者たちが実際に先行販売として売りに出た噂が広まるころには、ひとつ、ふたつと契約が取れるようになっていった。


「この子だ、と思ったら、その子がきっと運命だと思うよ」
 ヨルは台座ラムラムをそう言いながら売り出していた。
「ずっと共にありたい人への贈り物にも、ぜひ」
 ふたごひつじはきょうだいだが、確かに言われてみると夫婦ひつじのように見えなくもない。いずれにせよ、購入者が「縁起がいい」と思ってくれれば儲けものだ。更にヨルは、手作りゆえに同じものはふたつとない一点ものであることを強調する。
「もし興味があったら、ふたごひつじの様子も見にきてね」
 ヨルは折本『ふたごひつじの物語』を台座ラムラムと一緒に紙袋に入れ、貨幣と引き換えにそれを手渡した。


「さあいらっしゃい、いらっしゃい! コチラはフェイデンの新商品、幸運の木彫りのふたごひつじ(ウッディ・ラムラム)でございます!」
 街の大通りに露店を構え、そう声を張るハリーヌ。太鼓を叩くゴリラの姿もあり、かなり注目を集めていた。
「……安産祈願、家内安全、厄除けのお守りとして。彼らの物語を知りたければ、こちらを」
 その横で、サマエラはやや緊張気味に――紙芝居の用意をしていた。紙芝居はエルゼリオの案で、皆で手描きしたものである。サマエラの周りにはすでに子供たちが集まっており、サマエラはきらきらとした期待に満ちた視線を受け止め、こほんと咳払いをした。
「フェイデンという場所では、ひつじたちがたくさん暮らしています。決して豊かな土地ではありませんが、人々は皆ひつじを大切にしており、ひつじたちは平和に暮らしていました。そんなある日……」
 ふたごを授かった母羊と、襲いくる魔獣、力を合わせてそれを撃退する冒険者と領民たち。ふたごひつじは多くの人々に守られ、祝福されて産まれてきた。
 その後この物語は時を経て、フェイデンに伝わる民話のひとつとして語られるようになる――。

マスターコメント

お疲れ様でした! 文句なしの大成功です。 「産業」「外交」にそれぞれポイントが入りまして……今回は売出しはまずまずになるかな~と思っていたのですが、参加者の皆様がかなり工夫してくださったこと、それぞれの動きがぴったり噛み合ったこともあり、「財政」にもポイントをボーナスすることになりました! わーい! 内政:4pt 外交:2pt→4pt 財政:3pt→5pt 産業:9pt→10pt 魅力:8pt 現在、このような感じです。内政や外交に注力する余裕が出てきたといった感じでしょうか。 次回は領地特徴の獲得も含め、そのあたりのお話にするつもりです~ それではまた、お会いしましょう!
イベントシナリオ

イベントシナリオ普通 報酬:標準15 / 6〜25人

2023年02月01日 13時14分36秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ノーキス=フェイデン

    アイサツが遅れましたわねッ!フェイデン子爵ノーキスですわ! …こほん。お集まりいただきありがとうございます。 何か不明な点があれば【Q】をつけてお尋ねくださいまし。

  2. リサ・ベイカー

    ベイカー商会のリサ・ベイカーです。 よろしくお願いしますね。 わたしは、【2】で考えています。 ただ売るだけじゃなかなか難しいかな?と思っています。 何らかの付加価値をつけたいなと… 何かしら御利益があるとするか… その人形をもって来訪してくれたら、なにがしかの特典があるとか… フェイデンの発展のシンボルとすれば、商売繁盛とか暮し向きが良くなるとかの縁起物、は行けるかな?とか思っていますね。 あとは、ターゲットをどこに置くか。 貴族なのか、商人なのか、平民なのか…いくつか考えて見ますね

  3. ライオネル・ギシュム

    開拓団のライオネルだよ。よろしくねー! 俺は【1】で人形作りを頑張るつもり。 手先は人並み(手細工LV1)だけど、不器用ではないから何とか売り物に出来そうな物は作れるはず…! 一つ一つ違う形になっちゃうのも手作りの良さだから!きっと! リサさんのフェイデン発展のシンボルとする案凄くいいと思う! 縁起物はやっぱり欲しくなっちゃうよねー!持ってるだけでいい事ありそうな気がするし!

  4. グレイブ・ヤード

    グレイブ・ヤードです。 通りすがり的に思いつき >付加価値 元が今生きているものですから、「お話」を付けるのはどうでしょうね。 恐らくこれからいろいろな構図(並んで歩いている、柵を飛び越える、いたずらをする等)のものができると思いますから 認知されやすくなるかなとも思いますし。 何なら双子羊のいる場所の案内図(ミニ)みたいなのもありだと思います あ、私自身は【3】で散策する予定です。

  5. スィーリーン

    スィーリーンと申します。よろしくお願いします。 私は【1】で人形作りをいたしますね。 木工もそこそこ出来ますし、手細工は得意ですから。

  6. エミリア・シバ

    エミリアよ、よろしくね。 私はうーん【1】をしようかと思ったのだけれど、ふと木彫りを売るだけじゃなくて、観光の一つとして木彫りを体験できる教室のようなものとかを定期開催とかしてみるのはどうかしらねぇ?と思ったので、その辺とほかに思い付いた利用方法とかをちょっとまとめてみて【3】の自由行動でノーキスちゃんに提案してみようかしら、と。

  7. ナハシュ

    ナハシュだ。よろしく。 【1】で制作の方に行こうと思うぜ。ラムラムを題材になんか面白そうなのやシリーズもの、試作になりそうなのをちまちま作ってる予定だ。

  8. ハリーヌ・ヨツユビ

    ワタクシはハリーヌ。しがないヨツユビハリネズミでございます。 皆様、今回はよろしくお願いするでございますよ! ワタクシは【2】を考えているでございます。 付加価値でございますか… ワタクシも何か案を出してみるでございますよ。

  9. シャドウ

    ムッシュ・ム・・・

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0