【豊穣】豊穣の雫と食事会
岩岡志摩
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シナリオID:2526
オープニング
●豊穣の季節
季節は秋へと移り、今年もロスガリア大陸の各地では収穫祭が開催される。
この時期はなぜか亡者や魔物が活発化する季節でもある。
各地で起こる事件を解決し、収穫祭が無事開催できるようにするため、この時期になると冒険者ギルドには様々な依頼が持ち込まれている。
今回の依頼についても、その一つと言えた。
●依頼内容
今回冒険者ギルド支部に寄せられたその依頼は、ある程度の収穫を確保するため、エーテル浄化者を派遣してほしいというものだった。
エーテル浄化者とは、地脈を流れるエーテルに呼びかけることで、大地のエーテルを活性化できる授恵者のことを指す。
去年はこのエーテル浄化者の力で、凶作を回避することに成功した地域もあった。
しかしエーテルを吸い上げる幽界樹という存在が、改善を妨げる要因になっていた。
元帝国魔導院エスタル支部の研究者ロバート・ドールは、エーテル浄化者の力だけでは不作の改善は難しいと考え、研究の末にあるアイテムを開発する。
それが今回使うことになる豊穣の雫だった。
これは【人馬】事件の際、クーネ・ルウが個人的に手に入れ、その後帝国北部鎮守都市オルセンに保管していたエーテル石を材料として開発されたものにあたる。
その見た目は液体とエーテル石を入れ、術式が記された緑色の小瓶になる。
この小瓶を手にしたエーテル浄化者か、授恵者が4人以上揃った状態から10分以上の時間をかけて儀式を行うと、このアイテムが発動して作物が元気になる効果を発揮する。
儀式自体は豊穣を願いながら祈りを捧げることに集中することで成立し、小鬢より発せられるエーテルが大地や不作となった作物に吸い寄せられるという。
するとその場で作物が元気になり、土地のエーテルがどの程度枯渇しているかにもよるが、概ね1日から数日をかけて、収穫できるほどの実りが得られるようだ。
冒険者ギルド支部は豊穣の雫とエーテル浄化者の手配を進め、同行してくれる冒険者を募集し始める。
やがて冒険者達が依頼の説明を受けるため集まったところで、冒険者ギルド職員アルヒ・ラスカスは今回冒険者達に同行するエーテル浄化者を紹介する。
そのエーテル浄化者だが――。
「改めまして、よろしくお願いします」
ディズル大湿原帯で暮らすターミル族の出身、ディノだった。
●ディノと依頼
もともとターミル族は同じ湿原で暮らすリザードマン達の中でも特に農耕を重視し、浮遊農場の制作や普及に加え、湿地帯での兵站を担う重要な立ち位置にいる。
ディノ自身は鍬を振るい農地と会話をするよりも、剣を握り誰かを守りたいと願う心の持ち主でもあった。
そんな彼がエーテル浄化者、あるいはその資質が認められるようになったのは、いくつかの偶然が重なった結果だという。
【蠱毒】事件以降、ディノは冒険者となりディズル大湿原帯の外へと活動範囲を広げ、各地を渡り歩く生活を送っていた。
ディノは武芸に憧れる一方、農地への感謝を忘れたことはなく、立ち寄った先で農地を見かければ豊穣を願う祈りを捧げることもあった。
その結果、ディノが立ち寄ったとされる幾つかの農地が、不作でなくなったという。
原因がわからず現地の人々は当惑していたが、その後冒険者ギルドの調査により、ディノが祈ったことが要因の一つとして推測された。
そこで冒険者ギルドはディノを密かに呼び寄せ、複数の段階と時間をかけて検証を行い始める。
その結果、能力は低いながらもエーテル浄化者としての資質があるとみなされ、冒険者ギルドはディノをエーテル浄化者の側面もある冒険者として遇し、今に至る。
「依頼内容は、不作となった村での収穫を助けるというものだが――」
アルヒはそこで一度話を切り、ディノに視線を向ける。
ディノが頷いたところで、アルヒは言葉を継ぐ。
「ディノだけでは村が期待するような結果は得るのは難しい。この豊穣の雫を使い、エーテルを畑にもたらしてくれる授恵者が少なくとも4人以上必要だ」
収穫作業は村人が総出で行うが、冒険者達が手を貸すか否かは自由だという。
ディノ自身はもともと農作業に従事していた時期が長いので、収穫を手伝うつもりらしい。
収穫までこぎつけることができれば依頼は完了となり、その後は村で実施される食事会に参加する流れとなる。
「村の豊穣を祝って――という名目だが、実際にはみんなで飲み食いして楽しく過ごそうという話だ」
出される料理はあまり保存がきくようなものではないため、食材を無駄にしたい為にも、常人よりも多くの料理を平らげることのできる冒険者達が参加してくれることを、村は期待しているようだ。
飲み物は主にリンゴやブドウと言った果実を絞ったジュースが主に提供されるが、希望すればワインや少量ながら蒸留酒も飲むことが出来る。
「村で用意される食事だが、持ち帰ることもできるから無理にその場で全て平らげる必要はないぞ」
持ち帰るために必要な容器の類は村で用意してくれるが、あまり日持ちしない料理ばかりなので、早めに完食することをお勧めするとのことだった。
よって今回の依頼で冒険者達に期待されている役割は、以下の2つ。
1つ目は、ディノと共に豊穣の雫を使って依頼主に当たる村の畑にエーテルをもたらし、村の収穫を支援すること。
2つ目は、その後の食事会で、出される料理を可能な限り平らげること。
この2点だ。
「どうかよろしく頼む」
「よろしくお願いします」
そう言ってアルヒとディノは、皆様へと頭を下げた。
季節は秋へと移り、今年もロスガリア大陸の各地では収穫祭が開催される。
この時期はなぜか亡者や魔物が活発化する季節でもある。
各地で起こる事件を解決し、収穫祭が無事開催できるようにするため、この時期になると冒険者ギルドには様々な依頼が持ち込まれている。
今回の依頼についても、その一つと言えた。
●依頼内容
今回冒険者ギルド支部に寄せられたその依頼は、ある程度の収穫を確保するため、エーテル浄化者を派遣してほしいというものだった。
エーテル浄化者とは、地脈を流れるエーテルに呼びかけることで、大地のエーテルを活性化できる授恵者のことを指す。
去年はこのエーテル浄化者の力で、凶作を回避することに成功した地域もあった。
しかしエーテルを吸い上げる幽界樹という存在が、改善を妨げる要因になっていた。
元帝国魔導院エスタル支部の研究者ロバート・ドールは、エーテル浄化者の力だけでは不作の改善は難しいと考え、研究の末にあるアイテムを開発する。
それが今回使うことになる豊穣の雫だった。
これは【人馬】事件の際、クーネ・ルウが個人的に手に入れ、その後帝国北部鎮守都市オルセンに保管していたエーテル石を材料として開発されたものにあたる。
その見た目は液体とエーテル石を入れ、術式が記された緑色の小瓶になる。
この小瓶を手にしたエーテル浄化者か、授恵者が4人以上揃った状態から10分以上の時間をかけて儀式を行うと、このアイテムが発動して作物が元気になる効果を発揮する。
儀式自体は豊穣を願いながら祈りを捧げることに集中することで成立し、小鬢より発せられるエーテルが大地や不作となった作物に吸い寄せられるという。
するとその場で作物が元気になり、土地のエーテルがどの程度枯渇しているかにもよるが、概ね1日から数日をかけて、収穫できるほどの実りが得られるようだ。
冒険者ギルド支部は豊穣の雫とエーテル浄化者の手配を進め、同行してくれる冒険者を募集し始める。
やがて冒険者達が依頼の説明を受けるため集まったところで、冒険者ギルド職員アルヒ・ラスカスは今回冒険者達に同行するエーテル浄化者を紹介する。
そのエーテル浄化者だが――。
「改めまして、よろしくお願いします」
ディズル大湿原帯で暮らすターミル族の出身、ディノだった。
●ディノと依頼
もともとターミル族は同じ湿原で暮らすリザードマン達の中でも特に農耕を重視し、浮遊農場の制作や普及に加え、湿地帯での兵站を担う重要な立ち位置にいる。
ディノ自身は鍬を振るい農地と会話をするよりも、剣を握り誰かを守りたいと願う心の持ち主でもあった。
そんな彼がエーテル浄化者、あるいはその資質が認められるようになったのは、いくつかの偶然が重なった結果だという。
【蠱毒】事件以降、ディノは冒険者となりディズル大湿原帯の外へと活動範囲を広げ、各地を渡り歩く生活を送っていた。
ディノは武芸に憧れる一方、農地への感謝を忘れたことはなく、立ち寄った先で農地を見かければ豊穣を願う祈りを捧げることもあった。
その結果、ディノが立ち寄ったとされる幾つかの農地が、不作でなくなったという。
原因がわからず現地の人々は当惑していたが、その後冒険者ギルドの調査により、ディノが祈ったことが要因の一つとして推測された。
そこで冒険者ギルドはディノを密かに呼び寄せ、複数の段階と時間をかけて検証を行い始める。
その結果、能力は低いながらもエーテル浄化者としての資質があるとみなされ、冒険者ギルドはディノをエーテル浄化者の側面もある冒険者として遇し、今に至る。
「依頼内容は、不作となった村での収穫を助けるというものだが――」
アルヒはそこで一度話を切り、ディノに視線を向ける。
ディノが頷いたところで、アルヒは言葉を継ぐ。
「ディノだけでは村が期待するような結果は得るのは難しい。この豊穣の雫を使い、エーテルを畑にもたらしてくれる授恵者が少なくとも4人以上必要だ」
収穫作業は村人が総出で行うが、冒険者達が手を貸すか否かは自由だという。
ディノ自身はもともと農作業に従事していた時期が長いので、収穫を手伝うつもりらしい。
収穫までこぎつけることができれば依頼は完了となり、その後は村で実施される食事会に参加する流れとなる。
「村の豊穣を祝って――という名目だが、実際にはみんなで飲み食いして楽しく過ごそうという話だ」
出される料理はあまり保存がきくようなものではないため、食材を無駄にしたい為にも、常人よりも多くの料理を平らげることのできる冒険者達が参加してくれることを、村は期待しているようだ。
飲み物は主にリンゴやブドウと言った果実を絞ったジュースが主に提供されるが、希望すればワインや少量ながら蒸留酒も飲むことが出来る。
「村で用意される食事だが、持ち帰ることもできるから無理にその場で全て平らげる必要はないぞ」
持ち帰るために必要な容器の類は村で用意してくれるが、あまり日持ちしない料理ばかりなので、早めに完食することをお勧めするとのことだった。
よって今回の依頼で冒険者達に期待されている役割は、以下の2つ。
1つ目は、ディノと共に豊穣の雫を使って依頼主に当たる村の畑にエーテルをもたらし、村の収穫を支援すること。
2つ目は、その後の食事会で、出される料理を可能な限り平らげること。
この2点だ。
「どうかよろしく頼む」
「よろしくお願いします」
そう言ってアルヒとディノは、皆様へと頭を下げた。
解説
●目標
依頼主である村の畑にエーテルをもたらし収穫を支援する。
副目標:食事会で出された料理を楽しむ。
登場
ディノ
ディズル大湿原帯で暮らすリザードマン達の中でも、農耕が盛んなターミル族出身の授恵者で冒険者。
最近になってエーテル浄化者の素質があると見込まれ、各地で活動している模様。
冒険者達には【蠱毒】事件以降、様々な形で助けられてきたことから、皆様冒険者を尊敬している。
皆様の指示に従う。汎用スキルはテレパス。
アルヒ・ラスカス
今回の増援。皆様の指示に従う。使用スキルはヒール、解呪。汎用スキルはテレパス。
村人達
今回の依頼主。畑の不作に悩まされ冒険者ギルドに救援を求めた。
無事収穫が終われば食事会を開催して皆様冒険者達をもてなす予定。
食材として牛肉、豚肉、鶏肉を取り揃えており、料理は主に牛肉のワイン煮、豚肉の炭火焼き(特性のたれを絡めて焼いたもの)、鶏肉の串焼き(塩味を中心とした焼き鳥のような料理)を提供する予定。
頼めば持ち帰り用の容器も提供してくれる。
状況
とある山あいに存在する農村。畑のエーテルが少ない為か、不作が続いていたため冒険者ギルド支部に相談を持ちかけた結果、今回エーテル浄化者を派遣すると共に、豊穣の雫を使用する依頼に繋がった。
現地時刻は正午で快晴。気温は暑くもなく過ごしやすい。
一日の流れとしては、以下の通り。
1。まず村の南側にある畑でエーテル浄化者と共に皆様が豊穣の雫を使い、儀式を行う(畑に向かい祈ればOK)。
2。収穫作業(手伝うかは任意)
3。村の北側にある広場で、食事会。
肉料理だけでなく、頼めば野菜(ニンジン、ジャガイモが中心)料理も味わうことが出来る。
飲み物も果実水を中心として提供されるが、希望すればワインや少量ながら蒸留酒も味わうことが出来る。
皆様が希望すれば、ペット用の食事(草食動物には干し草や飼料、雑食の動物には動物用に調整した肉料理)も用意してくれる。
マスターより
【豊穣】へようこそ。
畑に豊穣の雫を使ってエーテルをもたらし、食事会に出される料理でお腹を満たすシナリオになります。
豊作にするには、「豊作になりますように」と皆様が祈りを捧げながら豊穣の雫を使えば、問題なく達成できます。
食事会ですが、料理は保存が効かないので皆様の手で食い尽くす(あるいは持ち帰る)ことができれば、村人達も喜びます。
ご不明な点がございましたら、出発36時間前まででしたらアルヒが答えられることは答えます。
以下は村の簡易見取り図となります。皆様はどの位置からでもスタートできます。
↑北
ABCDEFGHI
1畑畑畑 畑畑畑口
2口口
3口 口畑
4 豚 豚
5畑口 鶏 鶏 口畑
6畑口 牛 牛 口畑
7
8畑口口 口畑畑畑
9畑畑 口口畑畑
口:住居
畑:畑。不作だった作物もここにある。
豚:豚の炭火焼きが出てくる場所。
鶏:鶏肉の串焼きが出てくる場所。
牛:牛肉のワイン煮が置かれている場所。
リプレイ
●祈ります
依頼を受けた冒険者達は、続々と村に到着する。
「たまにはペットも連れ出してみます。こういう機会でもないと連れていけないので」
今回ヴィルヘルミナは、ペットの迷宮カカポを同伴してこの村を訪れている。
「肉は食べられないでしょうから、あとで葉物でも少し分けて頂きましょう」
ヴィルヘルミナは豊穣の雫を受け取ると、食事会の時に迷宮カカポが食べられそうなものがあるか、村の人に確認する。
「えっとね、最近落ち込み気味のセロンを連れて、そこまで危なくない依頼で気分転換しようと思って来た、よ」
ティトは同伴するセロンガード・シュタインドルフの様子を伺いながら、今回の依頼を受けた理由を周囲の仲間達に打ち明ける。
(エーテル浄化者はどのあたりで動くのでしょう……)
セロンガードが周囲に視線を巡らせると、ティトはセロンガードが何を探しているのかを察し、周囲の人達から話を聞く。
「エーテル浄化者が向かうのは南側、ね」
一通り話を聞いたティトは、セロンガードにも豊穣の雫を手渡すと、一緒になって南側の畑へ向かう。
「危ない危ない、準備に手間取ってしまいました……!」
ミア=リゼルは慌てた様子で村に到着する。
「ルベアさんもお誘いできたら良かったのですが、色々ありましたから……」
ミアは自身が大切に思う人のことを思い浮かべ、思いを馳せる。
「……また楽しく一緒に過ごせるまでは、私も元気を充電しておかなくちゃ、ですね」
意識を切り替えたミアは、渡された豊穣の雫を手に、畑へ向かう。
「ディノ! 久しいですね!」
ハリス・アル・ターミルは、同じターミル族出身のディノに声をかけ、再会を喜ぶ。
今回ハリスは馬車で道具や調味料等を持ち込む形で、収穫や料理も手伝う心づもりでいる。
「やり過ぎるくらい祈りますとも!」
そしてハリスも農業を愛する者として、豊作を願う気持ちは人並み以上にある。
「立派な面構えになっているじゃないか」
ハリスの近くで様子を伺っていたルチル・プルメリア・グレイハーツは、ディノの表情や雰囲気を確認し、頬を緩める。
過去【蠱毒】事件では辛いことが続き、影のある表情が多かったが、今のディノは生き生きとしているとルチルは思う。
「農耕を重視する部族だからこそ、同郷のエーテル浄化者の存在が我が事のように嬉しいのだろうな」
ルチルはハリスの喜びに理解を示す。
ラスリャマスが湿地帯に残した傷跡を改善しようと動いたルチルとしても、ディノの今は好ましく思える。
「儀式とお祭りですね。ぜひお手伝いさせてください!」
トーラは意気ごみを語ると、園芸スキルや植物共感スキルを駆使して、儀式が特に必要と思われる畑を探していく。
「必要そうな場所で儀式を行うよう提案します」
トーラはその一方で村の人達にいくつか決めてほしいことがある。
「特に酷い場所についてはエーテルを回復させるか、比較的消耗の低い場所を浄化して出来の良い作物を確保するかは、畑の主さんと話をして決めましょう」
その畑それぞれに見合った対処が必要だと、トーラは考えていた。
「これ、が、豊穣の雫」
エルは手の中にある豊穣の雫をしげしげと眺める。
「色々観察、します」
豊穣の雫。
儀式前の作物。
儀式後の畑の様子などを、エルは観察するつもりでいるが、儀式はしっかり行うつもりでいる。
「不作が改善しなかったら、元も子もない、し」
その近くでは、ストレガ・L・リベルガストラは支給された豊穣の雫に関する説明を、改めて聞いている。
「つまりエーテル石が溜め込んだエーテルを溶かして大地に放出するのが、豊穣の雫というわけか」
――興味深いのだ。
ストレガは豊穣の雫を完成させるまでに至った、その着想や技術に興味を覚える。
「エーテル浄化者が稀少な人材である故、代替手段は多くある方がよいのだ」
ストレガもまた、やるべきことはしっかりと行うつもりだ。
「収穫直前の段になっての使用でも、収穫量が確保できるとか凄いね」
海神 江流もまた、豊穣の雫を使っての収穫支援のため、この村を訪れている。
「使用法を誤ったらとんでもない事になりそうだけれど……?」
貴重なものだからと、江流は渡された豊穣の雫への観察を続けている。
江流の言う通り、使用する場所と時期はしっかりと決めたほうがいいだろう。
「これに祈りを込めると豊作になるんだ? 不思議だね……」
ウォーゼルもまた、支給された豊穣の雫を覗き込む。
小瓶の中に込められたエーテル石と術式が、エーテルを作物にもたらし、元気にするということだが……。
「さて、どうなるんだろう?」
ウォーゼルもまた他の冒険者達と一緒になって、豊作の祈りに加わる。
「豊作を! 次の年も、次の次の年も! この地が豊穣に満ちますよう!」
支給された豊穣の雫を握りしめ、ハリスはルチルやディノと一緒に畑と作物へと祈りを捧げている。
「オレは人手の足りてなさそうなとこに向かう」
ギャメルは豊穣の雫を手に、条件に当てはまりそうな畑に向かう。
「豊穣の祈りを捧げるぜ」
そしてギャメルは空いた手に聖印を握ると、作物に向け豊穣を願う祈りを捧げる。
「オレが持っているのはマウマ神の聖印。農業系の神さまじゃねぇけど、豊かな収穫は家庭の食卓にも関係しているしな」
豊穣の雫もそこまで狭量(?)ではないはずだとギャメルは思いながら、祈る。
(この地に恵みがもたらされますように)
ミアもまた祈りを捧げ、次の行動にも目を向ける。
「収穫作業も手が足りていなければお手伝いしましょう」
恐らく人手が多すぎて困るということはないだろう。
エフィルミアも、植物共感スキルを駆使して祈りが必要と思われる作物が多い畑を探していく。
そして1つの畑に向け、エフィルミアはナキルを一緒に豊穣の雫に手を添えて、祈り始める。
(皆がお腹いっぱい食べて幸せな時を過ごせますように)
そんなエフィルミアに合わせて、ナキルも豊穣を祈る。
エフィルミアはナキルと一緒に祈る中、もう一つ願うことがある。
「それと私の祈りが少しでもディノくんの力になれたらいいな」
――君がここに笑顔で居てくれる事が嬉しいから。
エフィルミアもまた、ディノを気にかけている冒険者達の1人だった。
「飯と酒を平らげてね、とか何この依頼、最高じゃない?」
ディレイン・オールドケイジは、はやくもこの後控えている食事会に期待を寄せている。
「あ、もちろん仕事はちゃんとするよ。対価としてね」
ディレインは支給された豊穣の雫を手に、祈り始める。
「一応こんなんでもおじさんもヒーラーだからさあ、祈るくらいはそれなりにできるかもしれないかなーって」
そう言いながらもディレインは豊穣の雫を手に握り、祈る。
――この辺りの人たちが食べるものに困りませんように。
「なんてねー」
口調こそ軽いが、ディレインは真摯に豊穣を祈っていた。
「エーテル浄化者だけに負担を負わせるのは不本意だったから、私たちでも手伝えるようになったのは、喜ばしいわね」
ロゼットは自分達もエーテル浄化者を助ける方法が確立されたことを、心嬉しく思っている。
(……豊穣の神よ。この地に再び、大地の恵みを呼び戻し給え……)
ロゼットも豊穣の雫を手に、仲間やディノ達と一緒に豊穣の祈りを捧げる。
「えーと、まずは儀式だね」
その近くでは、ハーヴィが豊穣の雫を手に持ち、周囲を見渡している。
「祈る……って、神殿で祈るのと同じ感じでいいのかな?」
村人達にも話を聞き、ハーヴィは決められた作法はないと知り、ひとまず安堵する。
「えーと、こんな感じ……?」
周囲で祈りを捧げている様子を伺いながら、ハーヴィも合わせる形で豊穣の雫を握り、祈る。
アンジェもまた、できることをしようとこの村を訪れている1人だ。
「……アンジェ、にも、できることがあれば……」
アンジェは豊穣の雫を借り受けると、周囲にいる冒険者や村人達からやり方を教わる。
「……お祈りすれば、いいんですか?」
一通り教わったアンジェは、豊穣の雫を両手で握ると真面目に祈る。
「困っている村の人達の役に立ちたいと思い、参りました」
ミゼリア・L・ステュクスはルドルフと名付けた黒い狼と共に、村の中を歩いていく。
「……エーテルじょうかやしゅうかくをおてつだいしたいし、じっさいに見てみたいです」
見ること、収穫を手伝うこと以外でも、ミゼリアはやることがある。
「おいしいごはんたくさん食べたいです」
そしてミゼリアがこの依頼を選んだ決め手は――。
「ルドルフにも、おにくりょうり……食べさせてあげたい、です……」
ペット達にも食事が用意されているということだろうか。
ミゼリアは祈るという行為がよく分からなかったが、周囲の冒険者や村人達に尋ねて回り、言われた内容を忠実にこなす形で作物に祈る。
やがてエフィルミアがナキルと共に祈りを終えると、目の前の作物は元気になり、収穫出来る量も増えたように見える。
「よし、一仕事終えたし。あとはゆっくり過ごそうぜ」
ナキルはミアの手を取ろうとしながら、エフィルミアを誘導する。
「うわぁ……すごい」
作物が元気になっていく光景を目の当たりにして、ウォーゼルは思わず感嘆の声を漏らした。
●収穫します
儀式を終えた冒険者達は、村の収穫作業を手伝い始める。
「儀式後の様子、も、見られたので、一石二鳥?」
豊穣の雫が畑や作物にもたらした効果を見たエルは、収穫作業の手伝いに回る。
「畑仕事、は、あまり、やったこと……」
エルは不慣れなためか、やり方を村の人達から教わりながら作業を進める。
「……リル、ほっぺに入れた物、返して」
その一方でエルは、自身が同伴し「リル」と名付けた栗鼠のつまみ食いを阻止する。
「収穫もお手伝いします」
トーラは収穫の手伝いを申し出ると、借りた道具を使い作物を収穫していく。
「収穫した作物はムームーに運ぶのを手伝って貰いましょう!」
「ムー!」
トーラがそう言うと、ムームーと名付けられたミニビヒモーも元気よく応じる。
祈りを終えたアンジェは、続いて収穫作業も手伝い始める。
(こっそり他の人を見て、真似します)
ここでアンジェは、ペットのミニビヒモーにも出来そうなことを頼んでみる。
「誰かが怪我とかしたら、ヒールを、ですね」
怪我への対処も考慮しつつ、アンジェは他の人達の動きを参考にして、ミニビヒモーと一緒に作業をこなす。
(……やり方を聞きながら……がんばる……ですね)
ミゼリアもまた、周囲にいる村の人達にやり方を教わりながら、黙々と作業する。
「傷つけぬよう丁寧に、ですね」
ウォーゼルもまた、村人達より収穫のやり方を1つ1つ教わり、はイモ類の掘り起こしをやっている。
それが終わったところで、ウォーゼルは穂の刈り取りや運び出しにも従事する。
「チョコ、運ぶお手伝いはできますか?」
ウォーゼルは同伴するチョコこと柴犬のような見た目のミニコボに声をかけ、チョコもウォーゼルの後をちょこちょことついていく。
「ターミルの浄化者……それがあの日から悩みながらも強く歩んできた貴方だったことが何よりの喜びです」
――私は心から誇りに思います。
ハリスが収穫作業を行う中、ディノの成長ぶりを誇らしく思うと語る。
その言葉は本心からのものだ。
「負けてはいられません! 浄化者ならずとも豊穣を齎せるようにならねば!」
気合いが入った様子で、ハリスは精力的に収穫作業を進めていく。
「それでも悩みはあるんじゃないか? なければいいが、あるなら教えてくれ」
ハリスやディノ達と連携し、収穫作業を行う中で、ルチルはハリスと共にディノが今抱えている悩みや困ったことを聞き出していく。
近くではミアも頑張って収穫作業を進めている。
「元気のもとは良いことをすること、そして美味しいご飯です!」
この収穫作業も良いことだと、ミアは考える。
似たようなことは、近くにいたストレガも考えていたらしい。
「今回持て成してもらうので、そちらに集中していただくのだ」
ストレガは食事会のことに言及しながらも、収穫を手伝う動きによどみはない。
「え、まあ、収穫は俺も手伝うよ、うん」
ディレインも手伝いに名乗りを上げ、作業のやり方を村の人達から教わる。
(必要なら、輝刃を使ってみてもいいかなあ)
一瞬ディレインはそんな思考をするも、作物を破壊するだけだと思い直し、道具を借りて作業を続ける。
「ケガしたり具合悪かったりしたら診るから言ってね」
ディレインは周囲にいる仲間や村の人達に、医療面でも支援する旨を伝えていく。
「……腰には注意しないとだけどね……」
もちろん自身が作業するとき、なるべく腰を痛めないよう姿勢を工夫することも忘れない。
「後は、適度に忙しく気分を紛らわせて、美味しいものを食べて帰ろうかな、って」
ティトもまた、セロンガードを誘い収穫作業を手伝う。
「……と、言いつつも食べさせて欲しいなー……って」
ティトが収穫作業を行う中、共に作業を行うセロンガードへ視線を向ける。
「善処はします」
セロンガードはそれだけ言うと、収穫物を運んでいく。
「出来る範囲で手伝うね」
ハーヴィは土の中より慎重な手つきで作物を掘り出す。
「実は僕の母親の趣味がガーデニングでね、土いじりは偶に手伝っていたんだ」
そう言いながらも、ハーヴィは器用に作物を一か所に集める。
「授恵者になる前はあんまし身体が丈夫な方じゃなかったから、そんなに本腰入れてはやってないんだけど……だからこそ興味はあるよ」
収穫した作物をマジカルポケットも駆使してハーヴィは運び、作業を支援する。
そしてゲルダ・クラインは村の人達にやり方を教わりながら、収穫作業を手伝う。
「お野菜を傷つけないように、丁寧な収穫を心掛けて……」
ゲルダは収穫した野菜類を、畑の近くへ留め置いた荷馬車に纏めていく。
「では、運んできますね!」
ゲルダは黒汗馬に荷馬車を牽引させ、村人達から指示された場所へと運んでいく。
「収穫作業の手伝い、食事会。どららにも参加するつもりよ」
ロゼットもまた、ゲルダやギャメル達と一緒になって作業を支援する。
「これだけ収穫があがれば、家畜の餌にも十分にまわせそうね」
ロゼットは収穫できた量から、家畜にも食事を回す余裕が出来そうだと分析している。
「たくさん収穫できましたね……!」
ゲルダもまた、豊作を示す作物の多さを前に、喜びの表情を見せた。
●いざ食事会
収穫を終えた冒険者達は、それぞれ身綺麗にするとそれぞれ広場に向かう。
既に広場は冒険者や随伴するペットをもてなすための準備を進めており、続々と料理も出来上がっている。
「……ふぁ、美味しそうな匂い」
ミアはそれぞれの料理が醸し出す匂いを嗅覚で楽しむと、村人達にそれぞれの料理がどのくらい持ちそうか尋ねる。
村人達の話では、どれも早めに食べないと傷んでしまうようだ。
「そう、保存は効かないのですね……。残念ですが、ここでいただきましょう」
ミアは多めに持ち帰ることを諦め、出来る限りこの場で平らげることを決める。
ミアが手に取った鶏肉の串焼きは、弾力をミアの歯に伝えた後、はらりと噛み切れた。
うまみの濃い肉汁が口の中で溢れ、噛むごとに少し塩が濃いと感じた味がちょうどよくまとまってくる。
「料理、みんな、美味しそう」
エルもまた、広場に並べられた様々な料理を皿に取り始める。
「肉料理3種類、もらって、みます」
食べきれない分は、容器をもらって詰め込み、明日のご飯にするつもりでいる。
エルがまず口に運んだのは、豚肉の炭火焼き。
やや焦げ目がついているが、それがタレの効果をよく引き出しており、閉じ込められていた肉汁と旨味が口の中に広がる。
「リル用、には、木の実とか、お願いできれば……」
ある程度料理の味を確かめたところで、エルは村人に対し、リルが食べられそうなものを頼んでいく。
ハリスは村人達と交渉して許可を得た上で調理も行い、自身の料理を提供する。
「収穫の喜びを分かち合いましょう!」
ハリスが作ったのは、味と量を重視した炒めものやシチュー。
丁寧に火を通されたハリスの料理は、出来る限り多くの人達が肉や野菜を効率よく摂取できるよう、整えられている。
「もちろん私も大いに食べますとも!」
ハリスはルチルやディノと共に、自分が作った料理だけでなく、広場に用意されたものも平らげ始める。
「余る方が困るなら材料はいっぱい使っとけ、だな」
ルチルはハリスが作った料理が、用意された食材を無駄なく活用するという面でも有効だと認める。
一通り料理を楽しんだルチルは、持参した赤ワインを口に運ぶ。
用意された酒も飲みやすいが、ルチルが持参した酒は主張が強く、重厚な渋みと香りをルチルに教え、飲み応えのあるものだった。
うわばみスキルがいい仕事をしている。
「アル用の御馳走となりそうなのは、この範囲になりそうか?」
ルチルはペットの狼にも料理を食べさせようと、取り分けを始める。
「食事は満遍なく、保存するに向かない部位の肉や内臓有り難くのだ」
ストレガは用意された料理の中で、保存に適さないものから率先して食べる。
口に運んだ豚肉の炭火焼きは肉本来の味とタレの風味が上手く合わさって、ストレガの舌に旨味を残し、喉を通っていく。
「帰ったら実践してみるのだ」
自身の舌にタレの味を覚えさせていたストレガは、『食は万世共通の幸福なれば』スキルも使い、味付けに使われた調味料を分析していく。
「牛肉にジャガイモがあるなら、肉じゃがとか出来るかな?」
江流は一通り肉料理を堪能すると、村人に肉じゃがを食べたことがあるのか聞いてみる。
食べたことはないとの回答を受け、江流は調理場と調理道具、食材の一部を借りることはできないか交渉を行う。
許可を得た江流は、巴屋の高級醤油と調理スキル、調理道具を駆使して肉じゃがを作成していく。
そして完成した肉じゃがを、江流は村人達や仲間である冒険者に提供した。
「飯と酒のご褒美、最高! 作ってくれた人に感謝!」
近くにいたディレインは、村人やハリス、そして江流達に感謝をしながら、自身が食べる分の料理を皿に載せる。
「また次の収穫が無事に得られることを願って、おいしくいただくよ」
来年の収穫にも祈りを捧げ、ディレインは料理を口に運んでいき、江流の肉じゃがも食す。
ほろりと口に崩れるジャガイモはやわらかで、牛肉も臭みはまったくない。
「はー、うまい!」
醤油との相性がいいせいもあるのだろう。肉の味にくどさはなく、ニンジンやタマネギといった野菜との相性は抜群だった。
村人達もハリスや江流が作った料理を取り分け、おいしそうに食していく。
「牛肉に一番合うソースは醤油だ、なんて話もあるし、シャルガネ文化を広めてみたい」
江流は村人達からの希望があれば、レシピも披露するつもりでいる。
「わーっ、どの料理も美味しそう!」
ハーヴィは種類が増えた料理の数々に目を輝かせ、全ての料理を味わうことにした。
「僕、食べるの大好きなんだ! いっただっきまーす!」
皿に盛られた料理に一礼すると、ハーヴィは料理を味わい始める。
「……んん、美味しい!」
今ハーヴィが食しているのは、ハリスが作ったシチュー。
丁寧に灰汁抜きされたシチューは澄んだ色合いで、肉の味わいと野菜の甘さ、全体を引き締める塩味といった全部が口の中で重なる。
「働いた後のご飯は格別だね♪」
『わふぅ♪』
ウォーゼルはチョコと一緒になって、それぞれの料理を食していく。
一通り味を確かめたウォーゼルは、村人達に容器をもらえるよう話を通す。
「帰ったら皆で食べよう……喜んでくれるかな?」
受け取った容器に料理を詰め、マジカルポケットに収納しながらウォーゼルはチョコと顔を見合わせ、笑いあう。
「鶏、豚、牛、どれも気になりますね……」
トーラは広場に並ぶ料理1つ1つを眺めていく。
「少しずつ貰って色々楽しみましょうか」
少量ずつ全ての種類を味わうことにしたトーラは、自分が食べられる分だけ皿に載せていく。
その一方でトーラは、村人達と話を進め、ムームーが食べるものとして、芋の蔓やトウモロコシの茎など、収穫した作物の中で食べられない部分をもらい受ける。
「お疲れさまでした」
そしてトーラはムームーに食べ物を与え、労ったところで自身も食事を始める。
「……あ、あの、ミニビヒモーさんのご飯、もらえるって聞いたんですけど……」
トーラに続き、アンジェも村の人達へと話しかける。
アンジェより話を聞いた村人達は、ミニビヒモーが食べられそうなものをアンジェに渡していく。
「……自分のは、どれでも……」
何を食べるのかを村人達から聞かれ、アンジェはそう答えると、牛肉料理、豚肉料理、鶏肉料理がそれぞれ試食分だけアンジェ提供される。
その中から気に入ったものを次に食べればいいと村人から教わり、アンジェはミニビヒモーのもとへ戻る。
「……ミニビヒモーさんと、一緒に……いただきます」
そう言うとアンジェは、ミニビヒモーと一緒に料理を味わい始める。
今食べている牛肉のワイン煮は、ゆっくりと噛めば予想以上の軟らかさで、すみずみまで味が染みわたった牛肉は、その美味をアンジェの口内に広げている。
「……たくさんたべることはできませんが……」
ミゼリアはルドルフにも食べられそうなものを取り分けながら、自身が食するものを選んでいく。
ミゼリアとしては、少量ずつ複数の料理を食することができればいいようだ。
「……ルドルフといっしょに、いろいろたべて……たのしみます」
表情のない顔を保ったまま、ミゼリアはルドルフと共に自身のペースで料理を楽しんでいた。
「ゴールディじゃ食事中に楽器を派手に演奏する風習があるけれど」
主に豚肉料理とリンゴのジュースを堪能しながら、ギャメルは自身が知る食事時の風習を、周囲にいる仲間や村人達に語る。
今ギャメルが食している豚肉はクセもない素直な味で、噛むごとに肉の滋味が口内に広がり、飲み込めば喉に温かさを残していく。
「郷に入れば郷に従えってやつだ。この土地の文化に合わせるぜ」
(めっちゃお上品ってわけでもねぇが、貧しい出自のゴブリンにしちゃあ、オレのマナーはしっかりしているぜ)
ギャメルがそんな面持ちでいる横で、ロゼットも食事を楽しんでいる。
「このワイン煮、良く染みて美味しいわ。お肉も柔らかくて」
ロゼットが今食しているのは、牛肉のワイン煮。
柔らかく煮込まれた牛肉は、容易に噛み切れるほどで、スプーンでつついた野菜は抵抗なく裂け、味が染みている。
赤ワインの風味が牛肉や野菜の旨味を引き立て、味の奥深さをロゼットの舌に教えてくる。
「おっ、持ち帰っても良いのか!」
ギャメルは食べきれない分はどうするのか、村人達に尋ねたところ、持ち帰っても大丈夫と聞いて嬉しそうな声を上げる。
「残ってももったいないし、遠慮なくいただくぜ。ありがとな」
――ゴールディにいる弟妹たちにも食べてもらうんだ。
ギャメルがこの場にいない家族のことを考えて、持ち帰る料理を吟味する。
「こうして食べるだけというのもいいですね」
ヴィルヘルミナは村人達から提供された葉物を迷宮カカポに食べさせると、改めて自身の食事へと移る。
「酒はまあ、飲みたければ持参しているものがありますので。肉も色々と種類があるみたいですし、食べ比べも良いでしょう」
ヴィルヘルミナは広場に並んでいる料理を一通り楽しむつもりでいる。
(最近、猪突猛進気味な所をちょくちょく拝見するゲルダさんですが、ここではどんな感じになるのでしょうね)
そんなことを考えながら、ヴィルヘルミナはゲルダがいる方角へと視線を向ける。
――ひたすら食べまくっていたりするのでしょうか。
そのゲルダはというと――。
「えへへ。少しだけお腹がすいちゃいました」
ヴィルヘルミナが想像した通りの健啖ぶりを発揮していた。
「お肉さん大好きなので、豚鳥牛の全部を制覇したい気持ちです」
……心なしかゲルダの周囲には、空になった皿が徐々に積み上げられているような気もする。
他の人達が食べる分や、土産に持ち帰りたい人の分も確認した上で、ゲルダは村人達にあるお願いをする。
「……おかわり、大丈夫でしょうか?」
お願いされた村人達は、ただちに追加の料理を作成し始める。
新たに用意された鶏の串焼きを、ゲルダが口に運ぶと、その柔らかさと甘味に気づく。
肉汁の多さは今までの串焼きと一緒だが、塩加減を調整したのか長く咀嚼して飲み込めば、ふわりと甘く残る味がゲルダの口内に残る。
(ゲルダもギャメルも楽しそうでよかったわ)
そんなゲルダやギャメルの様子を見ながら、ロゼットも食事会での交流を楽しみ始める。
「どれも美味しい」
ティトもセロンガードと共に、思い思いに料理を楽しんでいる。
今ティトが食しているのは、ハリスが作成した野菜炒め。
口の中で噛み切ると、温かさと共に広がるのは素直な肉と野菜の味だ。
調味料も程よく存在を主張し、なかなかよく仕上がっていた。
(こちらの味は……)
セロンガードは一通りの料理を楽しんだのか、今は村より振る舞われたオレンジの果実水で喉を潤している。
口に含んだ果実水は、香りを口内に残し、喉を過ぎると柑橘系らしい爽やかさが強くなる。
口を過ぎる柚子と酒の香り。そして喉を通った後で強くなる、柑橘系らしい
絞りたてだったのか、舌に残った果実水の薄い苦さは、次の一口で薄い甘さへと変化する。
やや離れたところでは、村人達の許可を得て調理場を使うエフィルミアと、やや緊張気味のナキルがいた。
(……いや、ここで薬草に走らないよな?)
そんなナキルの不安をよそに、エフィルミアが調理スキルを駆使して完成させた料理を皿に載せ、やってくる。
「いつもはナキルくんの健康を考えて薬草汁を出すところだけど! 今回はお肉も野菜もあるし、サンドイッチを作ってみたよ」
エフィルミアはそう言って、自分が作った料理をナキルの前に並べる。
パンの色が白い皿に映え、そこから色とりどりの具が覗く。
「あんまり凝った料理は出来ないから簡単なのなんだけど……どうかな?」
いつもと違うエフィルミアのしおらしい様子に、ナキルは少し新鮮な気持ちになる。
「いただきます」
ナキルはエフィルミアと料理に一度頭を下げると、サンドイッチに手を伸ばす。
スライスされた野菜と燻製肉のサンドイッチ。基本中の基本だが、だからこそ味が出る。
バターと燻製肉の相性は当然として、野菜の歯ごたえが素晴らしい。
野菜には丁寧に塩をして水気をとってあるので、噛めばこりこりとしてさっぱりとした後味を残す。
「うん、とっても美味しいぜ、ミア!」
ナキルが嬉しそうな声と共に笑顔を見せる。
そのナキルの顔に、エフィルミアが手を伸ばす。
「もーナキルくん顔にパンくずついているよ。がっつきすぎ!」
エフィルミアは手早くパンくずを取り払い、口調こそ「しょうがないなあ」と言う感じだが、実のところ照れ隠しだった。
(凄く嬉しい! 料理練習してきたかいがあった……!)
内心の嬉しさを誤魔化すように、エフィルミアは提供された白ワインを口に運んでいる。
するりと喉へ通った後、白ワインの味が控えめにエフィルミアの舌へと広がる。
喉に酒精の熱さを感じる頃、ワインに含まれていた香りがエフィルミアの鼻を抜けていく。
飲みやすいのか、エフィルミアは白ワインと赤ワインを交互に飲んでいく。
「程々にな?」
ナキルの忠告を置き去りにして、エフィルミアが酒を飲むペースは早くなり――。
酔いつぶれた。
「相変わらずだよな」
口ぶりこそ呆れを含んでいるものの、ナキルは優しく介抱する。
――満足そうなミアの寝顔を見るのも好きだから。
「ったく、運ぶから捕まってろよなっ」
そう言うとナキルはエフィルミアを背に担ぎ、運んでいく。
――自分より小さなはずなのに。
半分夢見心地でいる中、エフィルミアはナキルの背中を頼もしく感じていた。
●ごちそうさまでした
食事会は無事終了し、冒険者達もそれぞれ帰路につく。
「亜空間内なら、少なくとも帰還して再加熱するまでには傷みの心配がなくなるはずなのだ」
ストレガはもらい受けた容器に持ち帰るため確保した料理を詰め込み、マジカルポケットに収納して帰還する。
「えへへ、少し持ち帰っても良いですか? 師匠にも食べさせたげたくて」
ハーヴィもまた村人達より許可と容器を得た上で、マジカルポケットに料理を収納し帰っていく。
江流は希望する村人達に肉じゃがのレシピを提供すると、御礼代わりに渡された料理を容器に詰め、マジカルポケットに収納する。
「これで明日のおかずは悩まずに済むかな」
江流や残る冒険者達も次々と村を後にする中、トーラは村に祈りを残していく。
「これからも沢山の収穫がありますように!」
皆様、このたびは村に豊穣をもたらして下さりありがとうございます。
そしてお疲れさまでした。
依頼を受けた冒険者達は、続々と村に到着する。
「たまにはペットも連れ出してみます。こういう機会でもないと連れていけないので」
今回ヴィルヘルミナは、ペットの迷宮カカポを同伴してこの村を訪れている。
「肉は食べられないでしょうから、あとで葉物でも少し分けて頂きましょう」
ヴィルヘルミナは豊穣の雫を受け取ると、食事会の時に迷宮カカポが食べられそうなものがあるか、村の人に確認する。
「えっとね、最近落ち込み気味のセロンを連れて、そこまで危なくない依頼で気分転換しようと思って来た、よ」
ティトは同伴するセロンガード・シュタインドルフの様子を伺いながら、今回の依頼を受けた理由を周囲の仲間達に打ち明ける。
(エーテル浄化者はどのあたりで動くのでしょう……)
セロンガードが周囲に視線を巡らせると、ティトはセロンガードが何を探しているのかを察し、周囲の人達から話を聞く。
「エーテル浄化者が向かうのは南側、ね」
一通り話を聞いたティトは、セロンガードにも豊穣の雫を手渡すと、一緒になって南側の畑へ向かう。
「危ない危ない、準備に手間取ってしまいました……!」
ミア=リゼルは慌てた様子で村に到着する。
「ルベアさんもお誘いできたら良かったのですが、色々ありましたから……」
ミアは自身が大切に思う人のことを思い浮かべ、思いを馳せる。
「……また楽しく一緒に過ごせるまでは、私も元気を充電しておかなくちゃ、ですね」
意識を切り替えたミアは、渡された豊穣の雫を手に、畑へ向かう。
「ディノ! 久しいですね!」
ハリス・アル・ターミルは、同じターミル族出身のディノに声をかけ、再会を喜ぶ。
今回ハリスは馬車で道具や調味料等を持ち込む形で、収穫や料理も手伝う心づもりでいる。
「やり過ぎるくらい祈りますとも!」
そしてハリスも農業を愛する者として、豊作を願う気持ちは人並み以上にある。
「立派な面構えになっているじゃないか」
ハリスの近くで様子を伺っていたルチル・プルメリア・グレイハーツは、ディノの表情や雰囲気を確認し、頬を緩める。
過去【蠱毒】事件では辛いことが続き、影のある表情が多かったが、今のディノは生き生きとしているとルチルは思う。
「農耕を重視する部族だからこそ、同郷のエーテル浄化者の存在が我が事のように嬉しいのだろうな」
ルチルはハリスの喜びに理解を示す。
ラスリャマスが湿地帯に残した傷跡を改善しようと動いたルチルとしても、ディノの今は好ましく思える。
「儀式とお祭りですね。ぜひお手伝いさせてください!」
トーラは意気ごみを語ると、園芸スキルや植物共感スキルを駆使して、儀式が特に必要と思われる畑を探していく。
「必要そうな場所で儀式を行うよう提案します」
トーラはその一方で村の人達にいくつか決めてほしいことがある。
「特に酷い場所についてはエーテルを回復させるか、比較的消耗の低い場所を浄化して出来の良い作物を確保するかは、畑の主さんと話をして決めましょう」
その畑それぞれに見合った対処が必要だと、トーラは考えていた。
「これ、が、豊穣の雫」
エルは手の中にある豊穣の雫をしげしげと眺める。
「色々観察、します」
豊穣の雫。
儀式前の作物。
儀式後の畑の様子などを、エルは観察するつもりでいるが、儀式はしっかり行うつもりでいる。
「不作が改善しなかったら、元も子もない、し」
その近くでは、ストレガ・L・リベルガストラは支給された豊穣の雫に関する説明を、改めて聞いている。
「つまりエーテル石が溜め込んだエーテルを溶かして大地に放出するのが、豊穣の雫というわけか」
――興味深いのだ。
ストレガは豊穣の雫を完成させるまでに至った、その着想や技術に興味を覚える。
「エーテル浄化者が稀少な人材である故、代替手段は多くある方がよいのだ」
ストレガもまた、やるべきことはしっかりと行うつもりだ。
「収穫直前の段になっての使用でも、収穫量が確保できるとか凄いね」
海神 江流もまた、豊穣の雫を使っての収穫支援のため、この村を訪れている。
「使用法を誤ったらとんでもない事になりそうだけれど……?」
貴重なものだからと、江流は渡された豊穣の雫への観察を続けている。
江流の言う通り、使用する場所と時期はしっかりと決めたほうがいいだろう。
「これに祈りを込めると豊作になるんだ? 不思議だね……」
ウォーゼルもまた、支給された豊穣の雫を覗き込む。
小瓶の中に込められたエーテル石と術式が、エーテルを作物にもたらし、元気にするということだが……。
「さて、どうなるんだろう?」
ウォーゼルもまた他の冒険者達と一緒になって、豊作の祈りに加わる。
「豊作を! 次の年も、次の次の年も! この地が豊穣に満ちますよう!」
支給された豊穣の雫を握りしめ、ハリスはルチルやディノと一緒に畑と作物へと祈りを捧げている。
「オレは人手の足りてなさそうなとこに向かう」
ギャメルは豊穣の雫を手に、条件に当てはまりそうな畑に向かう。
「豊穣の祈りを捧げるぜ」
そしてギャメルは空いた手に聖印を握ると、作物に向け豊穣を願う祈りを捧げる。
「オレが持っているのはマウマ神の聖印。農業系の神さまじゃねぇけど、豊かな収穫は家庭の食卓にも関係しているしな」
豊穣の雫もそこまで狭量(?)ではないはずだとギャメルは思いながら、祈る。
(この地に恵みがもたらされますように)
ミアもまた祈りを捧げ、次の行動にも目を向ける。
「収穫作業も手が足りていなければお手伝いしましょう」
恐らく人手が多すぎて困るということはないだろう。
エフィルミアも、植物共感スキルを駆使して祈りが必要と思われる作物が多い畑を探していく。
そして1つの畑に向け、エフィルミアはナキルを一緒に豊穣の雫に手を添えて、祈り始める。
(皆がお腹いっぱい食べて幸せな時を過ごせますように)
そんなエフィルミアに合わせて、ナキルも豊穣を祈る。
エフィルミアはナキルと一緒に祈る中、もう一つ願うことがある。
「それと私の祈りが少しでもディノくんの力になれたらいいな」
――君がここに笑顔で居てくれる事が嬉しいから。
エフィルミアもまた、ディノを気にかけている冒険者達の1人だった。
「飯と酒を平らげてね、とか何この依頼、最高じゃない?」
ディレイン・オールドケイジは、はやくもこの後控えている食事会に期待を寄せている。
「あ、もちろん仕事はちゃんとするよ。対価としてね」
ディレインは支給された豊穣の雫を手に、祈り始める。
「一応こんなんでもおじさんもヒーラーだからさあ、祈るくらいはそれなりにできるかもしれないかなーって」
そう言いながらもディレインは豊穣の雫を手に握り、祈る。
――この辺りの人たちが食べるものに困りませんように。
「なんてねー」
口調こそ軽いが、ディレインは真摯に豊穣を祈っていた。
「エーテル浄化者だけに負担を負わせるのは不本意だったから、私たちでも手伝えるようになったのは、喜ばしいわね」
ロゼットは自分達もエーテル浄化者を助ける方法が確立されたことを、心嬉しく思っている。
(……豊穣の神よ。この地に再び、大地の恵みを呼び戻し給え……)
ロゼットも豊穣の雫を手に、仲間やディノ達と一緒に豊穣の祈りを捧げる。
「えーと、まずは儀式だね」
その近くでは、ハーヴィが豊穣の雫を手に持ち、周囲を見渡している。
「祈る……って、神殿で祈るのと同じ感じでいいのかな?」
村人達にも話を聞き、ハーヴィは決められた作法はないと知り、ひとまず安堵する。
「えーと、こんな感じ……?」
周囲で祈りを捧げている様子を伺いながら、ハーヴィも合わせる形で豊穣の雫を握り、祈る。
アンジェもまた、できることをしようとこの村を訪れている1人だ。
「……アンジェ、にも、できることがあれば……」
アンジェは豊穣の雫を借り受けると、周囲にいる冒険者や村人達からやり方を教わる。
「……お祈りすれば、いいんですか?」
一通り教わったアンジェは、豊穣の雫を両手で握ると真面目に祈る。
「困っている村の人達の役に立ちたいと思い、参りました」
ミゼリア・L・ステュクスはルドルフと名付けた黒い狼と共に、村の中を歩いていく。
「……エーテルじょうかやしゅうかくをおてつだいしたいし、じっさいに見てみたいです」
見ること、収穫を手伝うこと以外でも、ミゼリアはやることがある。
「おいしいごはんたくさん食べたいです」
そしてミゼリアがこの依頼を選んだ決め手は――。
「ルドルフにも、おにくりょうり……食べさせてあげたい、です……」
ペット達にも食事が用意されているということだろうか。
ミゼリアは祈るという行為がよく分からなかったが、周囲の冒険者や村人達に尋ねて回り、言われた内容を忠実にこなす形で作物に祈る。
やがてエフィルミアがナキルと共に祈りを終えると、目の前の作物は元気になり、収穫出来る量も増えたように見える。
「よし、一仕事終えたし。あとはゆっくり過ごそうぜ」
ナキルはミアの手を取ろうとしながら、エフィルミアを誘導する。
「うわぁ……すごい」
作物が元気になっていく光景を目の当たりにして、ウォーゼルは思わず感嘆の声を漏らした。
●収穫します
儀式を終えた冒険者達は、村の収穫作業を手伝い始める。
「儀式後の様子、も、見られたので、一石二鳥?」
豊穣の雫が畑や作物にもたらした効果を見たエルは、収穫作業の手伝いに回る。
「畑仕事、は、あまり、やったこと……」
エルは不慣れなためか、やり方を村の人達から教わりながら作業を進める。
「……リル、ほっぺに入れた物、返して」
その一方でエルは、自身が同伴し「リル」と名付けた栗鼠のつまみ食いを阻止する。
「収穫もお手伝いします」
トーラは収穫の手伝いを申し出ると、借りた道具を使い作物を収穫していく。
「収穫した作物はムームーに運ぶのを手伝って貰いましょう!」
「ムー!」
トーラがそう言うと、ムームーと名付けられたミニビヒモーも元気よく応じる。
祈りを終えたアンジェは、続いて収穫作業も手伝い始める。
(こっそり他の人を見て、真似します)
ここでアンジェは、ペットのミニビヒモーにも出来そうなことを頼んでみる。
「誰かが怪我とかしたら、ヒールを、ですね」
怪我への対処も考慮しつつ、アンジェは他の人達の動きを参考にして、ミニビヒモーと一緒に作業をこなす。
(……やり方を聞きながら……がんばる……ですね)
ミゼリアもまた、周囲にいる村の人達にやり方を教わりながら、黙々と作業する。
「傷つけぬよう丁寧に、ですね」
ウォーゼルもまた、村人達より収穫のやり方を1つ1つ教わり、はイモ類の掘り起こしをやっている。
それが終わったところで、ウォーゼルは穂の刈り取りや運び出しにも従事する。
「チョコ、運ぶお手伝いはできますか?」
ウォーゼルは同伴するチョコこと柴犬のような見た目のミニコボに声をかけ、チョコもウォーゼルの後をちょこちょことついていく。
「ターミルの浄化者……それがあの日から悩みながらも強く歩んできた貴方だったことが何よりの喜びです」
――私は心から誇りに思います。
ハリスが収穫作業を行う中、ディノの成長ぶりを誇らしく思うと語る。
その言葉は本心からのものだ。
「負けてはいられません! 浄化者ならずとも豊穣を齎せるようにならねば!」
気合いが入った様子で、ハリスは精力的に収穫作業を進めていく。
「それでも悩みはあるんじゃないか? なければいいが、あるなら教えてくれ」
ハリスやディノ達と連携し、収穫作業を行う中で、ルチルはハリスと共にディノが今抱えている悩みや困ったことを聞き出していく。
近くではミアも頑張って収穫作業を進めている。
「元気のもとは良いことをすること、そして美味しいご飯です!」
この収穫作業も良いことだと、ミアは考える。
似たようなことは、近くにいたストレガも考えていたらしい。
「今回持て成してもらうので、そちらに集中していただくのだ」
ストレガは食事会のことに言及しながらも、収穫を手伝う動きによどみはない。
「え、まあ、収穫は俺も手伝うよ、うん」
ディレインも手伝いに名乗りを上げ、作業のやり方を村の人達から教わる。
(必要なら、輝刃を使ってみてもいいかなあ)
一瞬ディレインはそんな思考をするも、作物を破壊するだけだと思い直し、道具を借りて作業を続ける。
「ケガしたり具合悪かったりしたら診るから言ってね」
ディレインは周囲にいる仲間や村の人達に、医療面でも支援する旨を伝えていく。
「……腰には注意しないとだけどね……」
もちろん自身が作業するとき、なるべく腰を痛めないよう姿勢を工夫することも忘れない。
「後は、適度に忙しく気分を紛らわせて、美味しいものを食べて帰ろうかな、って」
ティトもまた、セロンガードを誘い収穫作業を手伝う。
「……と、言いつつも食べさせて欲しいなー……って」
ティトが収穫作業を行う中、共に作業を行うセロンガードへ視線を向ける。
「善処はします」
セロンガードはそれだけ言うと、収穫物を運んでいく。
「出来る範囲で手伝うね」
ハーヴィは土の中より慎重な手つきで作物を掘り出す。
「実は僕の母親の趣味がガーデニングでね、土いじりは偶に手伝っていたんだ」
そう言いながらも、ハーヴィは器用に作物を一か所に集める。
「授恵者になる前はあんまし身体が丈夫な方じゃなかったから、そんなに本腰入れてはやってないんだけど……だからこそ興味はあるよ」
収穫した作物をマジカルポケットも駆使してハーヴィは運び、作業を支援する。
そしてゲルダ・クラインは村の人達にやり方を教わりながら、収穫作業を手伝う。
「お野菜を傷つけないように、丁寧な収穫を心掛けて……」
ゲルダは収穫した野菜類を、畑の近くへ留め置いた荷馬車に纏めていく。
「では、運んできますね!」
ゲルダは黒汗馬に荷馬車を牽引させ、村人達から指示された場所へと運んでいく。
「収穫作業の手伝い、食事会。どららにも参加するつもりよ」
ロゼットもまた、ゲルダやギャメル達と一緒になって作業を支援する。
「これだけ収穫があがれば、家畜の餌にも十分にまわせそうね」
ロゼットは収穫できた量から、家畜にも食事を回す余裕が出来そうだと分析している。
「たくさん収穫できましたね……!」
ゲルダもまた、豊作を示す作物の多さを前に、喜びの表情を見せた。
●いざ食事会
収穫を終えた冒険者達は、それぞれ身綺麗にするとそれぞれ広場に向かう。
既に広場は冒険者や随伴するペットをもてなすための準備を進めており、続々と料理も出来上がっている。
「……ふぁ、美味しそうな匂い」
ミアはそれぞれの料理が醸し出す匂いを嗅覚で楽しむと、村人達にそれぞれの料理がどのくらい持ちそうか尋ねる。
村人達の話では、どれも早めに食べないと傷んでしまうようだ。
「そう、保存は効かないのですね……。残念ですが、ここでいただきましょう」
ミアは多めに持ち帰ることを諦め、出来る限りこの場で平らげることを決める。
ミアが手に取った鶏肉の串焼きは、弾力をミアの歯に伝えた後、はらりと噛み切れた。
うまみの濃い肉汁が口の中で溢れ、噛むごとに少し塩が濃いと感じた味がちょうどよくまとまってくる。
「料理、みんな、美味しそう」
エルもまた、広場に並べられた様々な料理を皿に取り始める。
「肉料理3種類、もらって、みます」
食べきれない分は、容器をもらって詰め込み、明日のご飯にするつもりでいる。
エルがまず口に運んだのは、豚肉の炭火焼き。
やや焦げ目がついているが、それがタレの効果をよく引き出しており、閉じ込められていた肉汁と旨味が口の中に広がる。
「リル用、には、木の実とか、お願いできれば……」
ある程度料理の味を確かめたところで、エルは村人に対し、リルが食べられそうなものを頼んでいく。
ハリスは村人達と交渉して許可を得た上で調理も行い、自身の料理を提供する。
「収穫の喜びを分かち合いましょう!」
ハリスが作ったのは、味と量を重視した炒めものやシチュー。
丁寧に火を通されたハリスの料理は、出来る限り多くの人達が肉や野菜を効率よく摂取できるよう、整えられている。
「もちろん私も大いに食べますとも!」
ハリスはルチルやディノと共に、自分が作った料理だけでなく、広場に用意されたものも平らげ始める。
「余る方が困るなら材料はいっぱい使っとけ、だな」
ルチルはハリスが作った料理が、用意された食材を無駄なく活用するという面でも有効だと認める。
一通り料理を楽しんだルチルは、持参した赤ワインを口に運ぶ。
用意された酒も飲みやすいが、ルチルが持参した酒は主張が強く、重厚な渋みと香りをルチルに教え、飲み応えのあるものだった。
うわばみスキルがいい仕事をしている。
「アル用の御馳走となりそうなのは、この範囲になりそうか?」
ルチルはペットの狼にも料理を食べさせようと、取り分けを始める。
「食事は満遍なく、保存するに向かない部位の肉や内臓有り難くのだ」
ストレガは用意された料理の中で、保存に適さないものから率先して食べる。
口に運んだ豚肉の炭火焼きは肉本来の味とタレの風味が上手く合わさって、ストレガの舌に旨味を残し、喉を通っていく。
「帰ったら実践してみるのだ」
自身の舌にタレの味を覚えさせていたストレガは、『食は万世共通の幸福なれば』スキルも使い、味付けに使われた調味料を分析していく。
「牛肉にジャガイモがあるなら、肉じゃがとか出来るかな?」
江流は一通り肉料理を堪能すると、村人に肉じゃがを食べたことがあるのか聞いてみる。
食べたことはないとの回答を受け、江流は調理場と調理道具、食材の一部を借りることはできないか交渉を行う。
許可を得た江流は、巴屋の高級醤油と調理スキル、調理道具を駆使して肉じゃがを作成していく。
そして完成した肉じゃがを、江流は村人達や仲間である冒険者に提供した。
「飯と酒のご褒美、最高! 作ってくれた人に感謝!」
近くにいたディレインは、村人やハリス、そして江流達に感謝をしながら、自身が食べる分の料理を皿に載せる。
「また次の収穫が無事に得られることを願って、おいしくいただくよ」
来年の収穫にも祈りを捧げ、ディレインは料理を口に運んでいき、江流の肉じゃがも食す。
ほろりと口に崩れるジャガイモはやわらかで、牛肉も臭みはまったくない。
「はー、うまい!」
醤油との相性がいいせいもあるのだろう。肉の味にくどさはなく、ニンジンやタマネギといった野菜との相性は抜群だった。
村人達もハリスや江流が作った料理を取り分け、おいしそうに食していく。
「牛肉に一番合うソースは醤油だ、なんて話もあるし、シャルガネ文化を広めてみたい」
江流は村人達からの希望があれば、レシピも披露するつもりでいる。
「わーっ、どの料理も美味しそう!」
ハーヴィは種類が増えた料理の数々に目を輝かせ、全ての料理を味わうことにした。
「僕、食べるの大好きなんだ! いっただっきまーす!」
皿に盛られた料理に一礼すると、ハーヴィは料理を味わい始める。
「……んん、美味しい!」
今ハーヴィが食しているのは、ハリスが作ったシチュー。
丁寧に灰汁抜きされたシチューは澄んだ色合いで、肉の味わいと野菜の甘さ、全体を引き締める塩味といった全部が口の中で重なる。
「働いた後のご飯は格別だね♪」
『わふぅ♪』
ウォーゼルはチョコと一緒になって、それぞれの料理を食していく。
一通り味を確かめたウォーゼルは、村人達に容器をもらえるよう話を通す。
「帰ったら皆で食べよう……喜んでくれるかな?」
受け取った容器に料理を詰め、マジカルポケットに収納しながらウォーゼルはチョコと顔を見合わせ、笑いあう。
「鶏、豚、牛、どれも気になりますね……」
トーラは広場に並ぶ料理1つ1つを眺めていく。
「少しずつ貰って色々楽しみましょうか」
少量ずつ全ての種類を味わうことにしたトーラは、自分が食べられる分だけ皿に載せていく。
その一方でトーラは、村人達と話を進め、ムームーが食べるものとして、芋の蔓やトウモロコシの茎など、収穫した作物の中で食べられない部分をもらい受ける。
「お疲れさまでした」
そしてトーラはムームーに食べ物を与え、労ったところで自身も食事を始める。
「……あ、あの、ミニビヒモーさんのご飯、もらえるって聞いたんですけど……」
トーラに続き、アンジェも村の人達へと話しかける。
アンジェより話を聞いた村人達は、ミニビヒモーが食べられそうなものをアンジェに渡していく。
「……自分のは、どれでも……」
何を食べるのかを村人達から聞かれ、アンジェはそう答えると、牛肉料理、豚肉料理、鶏肉料理がそれぞれ試食分だけアンジェ提供される。
その中から気に入ったものを次に食べればいいと村人から教わり、アンジェはミニビヒモーのもとへ戻る。
「……ミニビヒモーさんと、一緒に……いただきます」
そう言うとアンジェは、ミニビヒモーと一緒に料理を味わい始める。
今食べている牛肉のワイン煮は、ゆっくりと噛めば予想以上の軟らかさで、すみずみまで味が染みわたった牛肉は、その美味をアンジェの口内に広げている。
「……たくさんたべることはできませんが……」
ミゼリアはルドルフにも食べられそうなものを取り分けながら、自身が食するものを選んでいく。
ミゼリアとしては、少量ずつ複数の料理を食することができればいいようだ。
「……ルドルフといっしょに、いろいろたべて……たのしみます」
表情のない顔を保ったまま、ミゼリアはルドルフと共に自身のペースで料理を楽しんでいた。
「ゴールディじゃ食事中に楽器を派手に演奏する風習があるけれど」
主に豚肉料理とリンゴのジュースを堪能しながら、ギャメルは自身が知る食事時の風習を、周囲にいる仲間や村人達に語る。
今ギャメルが食している豚肉はクセもない素直な味で、噛むごとに肉の滋味が口内に広がり、飲み込めば喉に温かさを残していく。
「郷に入れば郷に従えってやつだ。この土地の文化に合わせるぜ」
(めっちゃお上品ってわけでもねぇが、貧しい出自のゴブリンにしちゃあ、オレのマナーはしっかりしているぜ)
ギャメルがそんな面持ちでいる横で、ロゼットも食事を楽しんでいる。
「このワイン煮、良く染みて美味しいわ。お肉も柔らかくて」
ロゼットが今食しているのは、牛肉のワイン煮。
柔らかく煮込まれた牛肉は、容易に噛み切れるほどで、スプーンでつついた野菜は抵抗なく裂け、味が染みている。
赤ワインの風味が牛肉や野菜の旨味を引き立て、味の奥深さをロゼットの舌に教えてくる。
「おっ、持ち帰っても良いのか!」
ギャメルは食べきれない分はどうするのか、村人達に尋ねたところ、持ち帰っても大丈夫と聞いて嬉しそうな声を上げる。
「残ってももったいないし、遠慮なくいただくぜ。ありがとな」
――ゴールディにいる弟妹たちにも食べてもらうんだ。
ギャメルがこの場にいない家族のことを考えて、持ち帰る料理を吟味する。
「こうして食べるだけというのもいいですね」
ヴィルヘルミナは村人達から提供された葉物を迷宮カカポに食べさせると、改めて自身の食事へと移る。
「酒はまあ、飲みたければ持参しているものがありますので。肉も色々と種類があるみたいですし、食べ比べも良いでしょう」
ヴィルヘルミナは広場に並んでいる料理を一通り楽しむつもりでいる。
(最近、猪突猛進気味な所をちょくちょく拝見するゲルダさんですが、ここではどんな感じになるのでしょうね)
そんなことを考えながら、ヴィルヘルミナはゲルダがいる方角へと視線を向ける。
――ひたすら食べまくっていたりするのでしょうか。
そのゲルダはというと――。
「えへへ。少しだけお腹がすいちゃいました」
ヴィルヘルミナが想像した通りの健啖ぶりを発揮していた。
「お肉さん大好きなので、豚鳥牛の全部を制覇したい気持ちです」
……心なしかゲルダの周囲には、空になった皿が徐々に積み上げられているような気もする。
他の人達が食べる分や、土産に持ち帰りたい人の分も確認した上で、ゲルダは村人達にあるお願いをする。
「……おかわり、大丈夫でしょうか?」
お願いされた村人達は、ただちに追加の料理を作成し始める。
新たに用意された鶏の串焼きを、ゲルダが口に運ぶと、その柔らかさと甘味に気づく。
肉汁の多さは今までの串焼きと一緒だが、塩加減を調整したのか長く咀嚼して飲み込めば、ふわりと甘く残る味がゲルダの口内に残る。
(ゲルダもギャメルも楽しそうでよかったわ)
そんなゲルダやギャメルの様子を見ながら、ロゼットも食事会での交流を楽しみ始める。
「どれも美味しい」
ティトもセロンガードと共に、思い思いに料理を楽しんでいる。
今ティトが食しているのは、ハリスが作成した野菜炒め。
口の中で噛み切ると、温かさと共に広がるのは素直な肉と野菜の味だ。
調味料も程よく存在を主張し、なかなかよく仕上がっていた。
(こちらの味は……)
セロンガードは一通りの料理を楽しんだのか、今は村より振る舞われたオレンジの果実水で喉を潤している。
口に含んだ果実水は、香りを口内に残し、喉を過ぎると柑橘系らしい爽やかさが強くなる。
口を過ぎる柚子と酒の香り。そして喉を通った後で強くなる、柑橘系らしい
絞りたてだったのか、舌に残った果実水の薄い苦さは、次の一口で薄い甘さへと変化する。
やや離れたところでは、村人達の許可を得て調理場を使うエフィルミアと、やや緊張気味のナキルがいた。
(……いや、ここで薬草に走らないよな?)
そんなナキルの不安をよそに、エフィルミアが調理スキルを駆使して完成させた料理を皿に載せ、やってくる。
「いつもはナキルくんの健康を考えて薬草汁を出すところだけど! 今回はお肉も野菜もあるし、サンドイッチを作ってみたよ」
エフィルミアはそう言って、自分が作った料理をナキルの前に並べる。
パンの色が白い皿に映え、そこから色とりどりの具が覗く。
「あんまり凝った料理は出来ないから簡単なのなんだけど……どうかな?」
いつもと違うエフィルミアのしおらしい様子に、ナキルは少し新鮮な気持ちになる。
「いただきます」
ナキルはエフィルミアと料理に一度頭を下げると、サンドイッチに手を伸ばす。
スライスされた野菜と燻製肉のサンドイッチ。基本中の基本だが、だからこそ味が出る。
バターと燻製肉の相性は当然として、野菜の歯ごたえが素晴らしい。
野菜には丁寧に塩をして水気をとってあるので、噛めばこりこりとしてさっぱりとした後味を残す。
「うん、とっても美味しいぜ、ミア!」
ナキルが嬉しそうな声と共に笑顔を見せる。
そのナキルの顔に、エフィルミアが手を伸ばす。
「もーナキルくん顔にパンくずついているよ。がっつきすぎ!」
エフィルミアは手早くパンくずを取り払い、口調こそ「しょうがないなあ」と言う感じだが、実のところ照れ隠しだった。
(凄く嬉しい! 料理練習してきたかいがあった……!)
内心の嬉しさを誤魔化すように、エフィルミアは提供された白ワインを口に運んでいる。
するりと喉へ通った後、白ワインの味が控えめにエフィルミアの舌へと広がる。
喉に酒精の熱さを感じる頃、ワインに含まれていた香りがエフィルミアの鼻を抜けていく。
飲みやすいのか、エフィルミアは白ワインと赤ワインを交互に飲んでいく。
「程々にな?」
ナキルの忠告を置き去りにして、エフィルミアが酒を飲むペースは早くなり――。
酔いつぶれた。
「相変わらずだよな」
口ぶりこそ呆れを含んでいるものの、ナキルは優しく介抱する。
――満足そうなミアの寝顔を見るのも好きだから。
「ったく、運ぶから捕まってろよなっ」
そう言うとナキルはエフィルミアを背に担ぎ、運んでいく。
――自分より小さなはずなのに。
半分夢見心地でいる中、エフィルミアはナキルの背中を頼もしく感じていた。
●ごちそうさまでした
食事会は無事終了し、冒険者達もそれぞれ帰路につく。
「亜空間内なら、少なくとも帰還して再加熱するまでには傷みの心配がなくなるはずなのだ」
ストレガはもらい受けた容器に持ち帰るため確保した料理を詰め込み、マジカルポケットに収納して帰還する。
「えへへ、少し持ち帰っても良いですか? 師匠にも食べさせたげたくて」
ハーヴィもまた村人達より許可と容器を得た上で、マジカルポケットに料理を収納し帰っていく。
江流は希望する村人達に肉じゃがのレシピを提供すると、御礼代わりに渡された料理を容器に詰め、マジカルポケットに収納する。
「これで明日のおかずは悩まずに済むかな」
江流や残る冒険者達も次々と村を後にする中、トーラは村に祈りを残していく。
「これからも沢山の収穫がありますように!」
皆様、このたびは村に豊穣をもたらして下さりありがとうございます。
そしてお疲れさまでした。
マスターコメント
今回は作物を豊作にするために豊穣の雫を使う作業や収穫作業、そして食事会をお楽しみ下さりありがとうございます。
ご参加下さったPC様がそれぞれの形で村を豊作にして、収穫作業にも手を回して下さったこともあり、村は皆様に大変感謝する結果となりました。
食事会につきましても、料理や交流を楽しまれる方、ご自身が作成された料理を振る舞う方と、様々な形で盛り上げて下さったので、大成功と判定させて頂きました。
このたびはご参加下さりありがとうございました。
また機会がございましたらよろしくお願いいたします。
イベントシナリオ易しい 報酬:少ない20 / 4〜25人
2022年10月19日 22時32分59秒 公開
大成功
参加者
相談掲示板
ナキルだ、よろしくなっと ミアと一緒に過ごす予定だぜ
ディレイン・オールドケイジ、うまい飯と酒をくれると聞いてきたよ。 よろしく。
ロゼットよ。儀式から収穫と、一通り手伝わせてもらうわ。 後の食事会も、ありがたく参加させてもらうわね。
ウォーゼルです、よろしくお願いしますね。 チョコと一緒にお手伝いした後に食事会に参加する予定です。
我らターミルより浄化者が出るとは素晴らしい! 良い収穫に、よい食事になるよう全力を尽くしましょう!