【樹謂】暗夜に謳え

ムジカ・トラス

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シナリオID:2409

オープニング


●
 冒険者を伴っての道中を、月明かりが照らしている。平原を撫でる風がレイウェスト・バルダスの黒髪を撫でた。どこか生ぬるく、襟足に絡みついた不快さにレイウェストは深く息を吐く。首筋に張り付く髪を束ねあげ、ゆるく括った。
 ――母譲りの黒い髪。
 目の色は違うけれども、顔立ちがよく似ていたこともあって、母のように髪を伸ばすことを幾人からも勧められた。父もその一人だった。武才がないと分かって以来、勉学と外交の邪魔にはならないこともありとくに抵抗もなくなった。皇族の一員として、帝国のためにできることを考えたとき、そうすることに否やもなかった。
 母は、どうだっただろうか。彼女はレイウェストの髪を整えながら、レイウェストの境遇や日々についての歓談に興じていた。後宮から出ることを禁じられていた母は、そのひと時を安らかに過ごしていたように思う。外交的平和のための努力も、嬉しそうに聞き、時には道を示してくれたりもした。

 その、母が。
 イダ・バルダスが。

「……神に、成ろうとしている」

 かつて在り、眠りに落ちた火生みの神ボルガニスクが語った『神に成る』ということ。
 人が、神になる。それがこれまでの事件に影を落としていたことを――フィルエスに在る世界樹が語ったという。

 かつて、エフレムが帝都に幽界樹を呼んだ。それにより、帝国は滅びを迎えた。
 エフレムは、どこかで精神に欠落を孕んでしまっていた。それは、『願われば応えてしまう』という破綻だった。本来秘するべき彼の関与を、他ならぬレイウェストの頼みだけで詳らかに開陳してしまう程度には、エフレムの精神は破綻していた。
 その彼が語ったところによると、『幽界樹』の召喚は、他ならぬイダの願いだったという。
 それは、単にエフレムの欠落に起因してのことだと思っていた。しかし、事態はさらに複雑だったとみえる。

『――だが、かの幽界樹を滅さぬ限り、いずれ滅びの時は来よう。かのイダ・バルダスは神々をも喰らい、神の領域に足を踏み入れんとしている。彼奴らが宿す力だけならば、既に小さき神々をも凌ぐとも言えよう』

 世界樹はこう語ったという。
 レイウェストの記憶の中の母と、その恐ろしい所業がどうしても結びつかない。事実だとするならば、帝都にいるイダは、一貫してエーテルを収奪しているように見えるが……。

「……どうして、こうなったのだろうか」
 優しい母だったと思う。確かにこの事態を引き起こしたのはエフレムだ。しかし、その背後に母の存在があり、それが一時の情念や何らかの突発的な事態ではなく――ひいては、母自身が何らかの目的の元それに取り組んでいるのだとしたら。母の思考は、目的は、どこにあるのか。

 ――帝国の負債たるや、だな。
 理解できないことばかりだが、事態は最悪を深めていく。レイウェストは皇族として、帝国の残し胤として、臣民に尽くしてきた。一方で、事件の真相はその軌跡に影を落とすばかりだ。
 幽世樹の顕現による帝国の崩壊と、それに対するエフレムの関与。
 皇帝である父の神への反逆と、臣民への冷徹な態度。
 イダ・バルダスによる神喰いと、世界樹への侵食。
 苦笑が落ちた。三度も続けば、それが超常なる事態であっても慣れてくるらしい。あるいは、曲がりなりにも日々為政者として勘定を見つめ、負債を目の当たりにし続けていることも影響しているかもしれない。

 帝国は、皇族は、破綻しきっている。

 レイウェストにとっての前提は、もはや揺るがない。臣民を束ねたところでかつての栄華は遠く、レイウェスト自身の身体と血を以て贖いとしながら、他国の思惑に乗る形で帝国の風土と文化を残すほかない。
 ひょっとすれば、事態が上手く転がる可能性は無いことはない。しかし、レイウェストの政治家としての思考はそれに縋ることを良しとしなかった。少しでも臣民の人生と文化が上向くことを、皇族の責務としているためだ。加えて、皇族の咎がフィルエスのエルフたちや、シグモルの民、王国にまで延びているとするならば、より望みは薄いものとなる。
 皇帝やイダがいなければ、彼らは未だ生を謳歌することが出来たのかもしれない。流れた血や失われた命の存在が、レイウェストの不退転の意思を固めていた。

 だから。

「私は、皇帝を討つよ」

 レイウェストはぽつりと呟いた。静かだが、透き通った声で。
 決意は、ある。退くことなど選べようもないという、後ろ向きなものだけれども。

 暗い夜を往く。この日、レイウェスト・バルダスは、皇帝であり、父であるヨゼフ・バルダスと対峙する。

解説

●目的  ・レイウェスト・バルダスと問答する  ・ヨゼフ・バルダスと問答する ●解説  決戦シナリオの結果により、レイウェスト・バルダスとヨゼフ・バルダスの会談機会が設けられました。  リプレイは、「レイウェストが会談に臨む前」、「会談中」、「会談後」などのタイミングが描写されます。  一部はエピローグノベルとして別掲される可能性もあります。  PBWのシナリオらしく、ここが、ひとつの分水嶺です。  レイウェストは皇帝に対する弑逆の意思を固めているものの、彼を取り巻くいくつかの問題については未だ無明のなかにあります。  皇帝の思惑や、その姿勢なども未だ明らかにはなっていません。  冒険者の言葉を受け、レイウェストの考えが変わるかもしれないですし、以後の皇帝の動静に変化が生じるかもしれません。    思うところを為していただければと思います。 ●登場人物 レイウェスト・バルダス 黒髪赤眼の皇族。帝都に顕現した幽界樹による帝国崩壊以降、帝国の臣民を束ね帝国奪還を主導してきた。授恵者ではあるが武力は平凡ではあるが、理解力と内政・外交的な知性は皇族としても優秀の域。自己犠牲的なきらいはあるが、責任感だけは尋常ではない。モノ・カネを直視し続けた結果、価値判断はそちらに寄りがちなものの、借金塗れになった現状故に、逆に負債が増えることについての怯懦がないなど、ある意味で無敵だが、盲目的なのは欠点。その最たるが王国から姫を娶ることになるだろうな――という暗黙の共通理解。 ほか、皇族に継承される征竜の遺骨を用いて作られた剣を有しているほか、現存する「征竜」とまみえた際、その耳目となる契約を交わされている。 ヨゼフ・バルダス 黒髪青眼の皇帝。帝国崩壊後、「朕こそが帝国である」として、自身が神の如き力を得ることでリーンエス王国の打倒、ひいては帝国の再興を狙うと公言している。征竜の遺骨――特に頭骨――を用いて作られた鎧は神性を払う能力を有しており、これを以て火生みの神からその力を収奪した。徹底した合理的思考の持ち主で、前述の姿勢も「通常の手段では現状の帝国ではかつての栄華を取り戻すことは出来ない」という前提の元。彼なりの皇帝としての意思はあるようだ。 会談という理解はあり、この場で進んで武威を振るうつもりはない。

マスターより

お世話になっております。ムジカ・トラスです。 決戦シナリオの結果を受けて、皇帝との邂逅機会を設けることができました! 皇帝とレイウェストの関係性だけでなく、それ以外についても問題は堆積……というよりは、滞積しています。 現在レイウェストが取り組むべき問題が残された帝国として皇帝と対峙することだけではないこと、皇族として、フィルエスに住まうエルフたちやシグモルの民を含め、彼らとどう折り合いをつけていくのか。 そも、すべてを成し遂げたとして、負債が積み上がった帝国の道行は、決して明るくはありません。それこそ、ヨゼフ・バルダスがこのような行いに出た背景には、レイウェストの道が帝国の未来に対して自縄自縛的な姿勢にほかならないという事実もあります。 そのために、この帝国崩壊にどのような道筋を描くのか。 解説にも記載したとおり、ここが分水嶺です。 何を考え、何を知り、何を意識して、何を目指すか――すべては皆さんのプレイング次第です。 お楽しみいただければ幸いです。

リプレイ

●
 仄かに落ちる月明かりは冒険者たちにとっては夜道を往くに十分な導であった。問題らしい問題もなく、歩みは進む。尤も、一同の空気は重々しくはあった。彼らの中心であるレイウェストの表情は明々白々たる翳りが在った。ナタリア・フィッツジェラルドは小さく嘆息を零す。無理もなかろうと帝国の臣民としては慮るばかり。アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトを見やれば、油断なく周囲を見やる姿に曇りはないようで、薄く吐息を零してしまう。
 ――戦場でもなく、公の場で。双方の意思をぶつけ合うとなれば、心労いかほどのものだろう。
 これを政治と見るならば、皇族同士の骨肉の争いとなろう。レイウェストは、年の頃や立場に比して理性的で、政治的な視野も広いことはナタリアとて識っていた。しかし、この状況だ。このまま先走らせるわけにもゆかぬだろうと、意思を固める。
 他方。ナタリアとは違う意味でレイウェストを想うものも居る。ハーフリングのトーラは、レイウェストの背を追いながら、彼が背負う状況に思いを馳せる。
(どうしてレイウェストさまにばかりこんな重責が……)
 次から次へと、レイウェストの足場は崩れるばかりだ。大陸全土に及ぶ被害は、シルトラース帝国の関与が一部の独断専行的であるとはいえ、これほどまでに極大化すれば看過できるものでもない。
 ――レイウェストさまも、何らかの責を問われるでしょう。連座となるか、何らかの条件を突きつけられるか……。
 これ以上の底があるとも思えず、レイウェストが取れうる責任はもはや天井に達しているようにも見える意味でも、現状よりも悪化する可能性は低そうだと、思ってはいるけれど。踏みとどまり続ける想い人を支えることは、やめたくなかった。

●
 ――ここが、世界の分水嶺か。
 ナハティガル=ラーは胸中で呟いた。帝国についたゴールディ――ゴブリンたちの命運をも大きく左右するであろう場であると。一同の多くがレイウェストをそれとなく意識するなか、ナハティガルの思考はヨゼフ・バルダスに向いていた。事件の端緒はイダ・バルダスとヨゼフのもとで起こっている。ナハティガルが――ゴブリンたちが運命を掴むとするならば、その鍵はきっと、ヨゼフのもとにあると、思考を深めていた。

 そんな折。ついとヴィルヘルミナが口を開いた。
「皇子と顔を合わせるのはエドゥノーグ以来ですね。あの頃とは随分と状況が変わりましたが……」
「ああ」
 虚を突かれた様子のレイウェストは、思い返しては微かに頬を緩めた。
「懐かしいな。私は慣れぬ酒に酔いつぶれ、エフレムに叱られたのだった。その節はその、そなたに……」
「ええ、膝枕しましたね」
 幾分かの申し訳なさを含んだレイウェストの声に、ヴィルヘルミナは特段物怖じするでもなく、首肯した。後方から届いたやたら低い「は?」という声も気に留めず、女は「随分と昔のように感じますね」とだけ言うに留めた。
「……そうだな」
 暫し、レイウェストの沈思が落ちる。長い轍のなかに、そんな一幕があったことを、たしかに懐かしく思っていた。

「そういえば、殿下はどうして髪を伸ばしているのですか?」
 ともあれ、気安い空気になったことを踏まえて、ルアンナ・ミュラーが口元に手を当てて問う。
「勧められたんだ。母上と……父上も、だな。母上は私の髪質から、父上は外交上の益を見てのことだったが」
 ははん、と頷く。たしかに、好きものには受けそうだ。というか、実際ウケているのではと、見るものを見てきたルアンナは訝しんだ。
「では、その髪をバッサリ切っちゃえば、現皇族との決別のアピールになるのではないですか?」
「ん?」
 しばし思案するレイウェストだったが、意味を測りかねたのだろう。
「たかが髪だぞ?」
「されど髪です。綺麗ですし、そこに皇族の意図があったのならば意味はきっとありますよ。それに……」
 悪戯な猫のような表情になったルアンナは、
「ウィリアム王子からの、いつかの花嫁役のような無茶ぶりに巻き込まれる事も少なくなるのでは?」
「…………いや、減らない、気が、する」
「……」
 ルアンナが少し思案しつつ夜空を見上げると、月夜に浮かんだウィリアムがニコニコと手を振っている様を幻視した。
「確かにそうですね」
「うちの人たちがごめんなさい……」
 少し離れていた所を歩いていたエルゼリオ・レイノーラは苦笑と共に謝罪した。今回の会談を正しく公的な会談と捉えた彼は礼服姿で参加している。横紙破り的な王族のあれやこれ、序に貴族たちの晒したあれやこれの至らなさもきっちりと認識していたのだった。

●
 ――数奇な運命があったもんだねぇ。
 皇族二人の立ち居振る舞いは、ルチル・グレイハーツをしても測り難い。強いて言えば、イダのほうがなお性質(たち)が悪そうなのは確かだが、情報が欠けている。中心がイダとヨゼフにあるのは濃厚。レイウェストにはどれほどの因果が絡んでいたのだろうとも思う。悪縁もまた縁、他生もまた遠因かもしれないが。
 ――このまま白黒がついてしまうのも蜥蜴人(アタイ)らにとっちゃぁ、うまくない。
 王国が漁夫の利的にアガリを迎えることは――面白くないという個人的な心情は抜きにして――湿地帯(故郷)の立ち位置上、避けたいところでもあった。
 ともあれ、ヴィルヘルミナの一言で少しばかり場が和んだことを受け、ルチルはわずかに口元を吊り上げる。
「漸く笑ったねぇ。あんまり深刻な顔ばかりするものだから、まさか本気で会談の席で暗殺を謀ろうとでもと思っていたくらいさ」
「それが叶うなら、私は構わないがな」
 難しいだろうなあ、とぼやくように言うレイウェストは、彼なりの冗句のつもりなのだろう。
「アタイからすれば、そも子に負債を押し付けて好き勝手する親がクソくらえさ」
「ふふ、相手は皇族だぞ?」
「股から出てきたのには変わりないだろう? もうちょっと開き直ってもいいよ。アタイは見てきたんだ。生き残りの帝国民の奮闘を。彼らは強い」
 あえて庶民じみた言い方で笑い飛ばしながら、ルチルはひたとレイウェストを見つめる。
「見届けると言った。その前に勝手に倒れられては困るのさ」
「……そうだな。私には、幕を引く責もある」
 皇帝を討つと言ったレイウェストに、トーラは堪らず声をかけた。
「それは、代わりに皇帝の行いを清算するという事でしょうか?」
「そうだな。正直なところ、父上が何をしでかしたかには依るけれども。贖いをせねば、帝国は立ち行かないだろう」
 どれだけ掛かるかなと添えるレイウェストに、しかしトーラは真摯に頷いて見せた。
「……では、その気持ちがある限り、全力でお手伝いさせて頂きます」
 だから。と添えて。 
「もし、心が挫けたときは言って下さい。わたしが誰もレイウェストさまを知らない所へお連れしましゅ「ましゅ?」――ますから!」
 渾身の想いを噛んでしまったからか、薄笑いのルチルに揶揄されたからか、赤面したトーラはうううと唸る。
 気持ちは嬉しいが、さりとて逃げることを受け容れるのも体面がよくない。ただ、その直向きな気持ちは有り難く、レイウェストは微笑みと共に礼をした。
 そこに。
「殿下は……仮に皇帝を討ったとして、その先に何を見ているのですか?」
 セロンガード・シュタインドルフの、表情を動かすことのないよう自制してのひとこと。堪えきれずに溢れたようなそれにレイウェストは首肯した。
「民の安寧と、帝国の贖罪だ」
「然し、それは、強き帝国、大陸の覇権を遠ざけるばかりではありませんか?」
「その通りだ、セロンガード」
 月夜を見上げる。紅色の瞳に差した月光を、セロンガードは射抜くように見つめる。

「栄華練達を極めた帝国を識っているからこそ……私はそれを幻想だと思うことにしたよ」
「……」
「何度も考えた。世界の趨勢はとうの昔に決まっている。これを覆すには大陸全土に災禍を齎すほかないと」
 険呑な言葉だった。一同の中に、緊張を孕むほどには。
「父上の考えは、帝国の勝ち筋で最も可能性が高いものだろうとも思う。で、あるならば、私は母上と父上を捨て置き、民の安全だけを確保することで――大陸が傷つき果てるのを待つことが最善なのだろう。そうすれば、帝国と他国の条件は並ぶ」
 考えたとも、と繰り返す。
「世界樹は綻び、シグモルで火生みの神は眠りについた。王国にも――おそらくは災いは齎されているのだろう。以て、断言してもいい。父上は、必ず母上の暴挙を大陸の限界まで許容すると」
「……」
 セロンガードの裡の合理性が、それを容易く肯定していた。確かにその通りだろうと。
「私は選べなかったんだ。かつて救われ、今もなおそなたらの助けを得てばかりの私には」
「――それ、は」
 喝破するものではなかった。ただ、セロンガードと同じものを見た上で、諦めることを選んだ自責が透けて見え、言葉を失う。
「……協調の道は、難しいでしょうか」
「どうだろうな」
 かろうじて絞り出した問いを受け止め、皇子はどこを見るでもなく空を仰ぐ。
「――いや。落とし所を見つけるのは、私の役目だな。セロンガード、私も考えて見るよ」

 そんなやり取りのなか、キーゼは軽く視線を巡らせている。護衛の任に手を抜くつもりはない――という建前だ。本分は聞き耳にある。ここからしばらく、夫々の思惑が行き交うことだろう。レイウェスト自身の反応も合わせ、価値がある情報となる。
 ――さて、どうなりますかね。
 真面目腐った顔つきは崩すことなく、キーゼは聞き漏らすことのないよう意識を研ぎ澄ます。警戒仕事の序(ついで)に聞こえただけのことだ。遠慮する必要もないと、盗み聞きに余念がなかった。
 そんな獅子身中の虫――というには表現も完全には相応しくないはないが――には気づくこと無く、セロンガードは重く吐息を零した。
 レイウェストの真意を知るにつけ、思うところは行き場を失っていく。この会談事態が、帝国にとって善哉と言い難いと感じていた。このタイミングで、レイウェストとヨゼフが邂逅すること、ひいては何かが決定づけられることに、言い知れぬ忌避感がある。
 ――畢竟、争って欲しくは……ないのだろうな……。
 帝国の臣民であるセロンガードにとって、皇帝と皇子の間で決定的な決裂が引き起こることは可能な限り避けたかった。流されるままに、易い結果に至ることがないように――彼は祈ることも出来ず、苦く凝る胸中を引き摺るしかなかった。

 次いで、アリオン・リューがレイウェストに言葉を投げかける。
「殿下は憶えておいででは無いと思いますが、僕もあの時竜の里にいました。帝国の前身――シル・ウァキアの滅亡に征竜が関わっていたことも、征竜の武具の話も……」
 しかし、柔らかな表情とは裏腹に、アリオンの声色は苦い。征竜信徒であるがゆえに、征竜の行いをどう受け止めるべきか、その答えは未だ彼の中にはないのだ。征竜への信心と畏れが、征竜の御心に適うよう求めていた。しかしそれは、無明の中にある。
 けれど、一つだけ指標があった。
「征竜様の直接的な介入は叶わないかもしれませんが、何らかの足がかりを得ることはできるかもしれません」
 レイウェストの片手に刻まれた征竜の紋章。きっと彼を通して、征竜は事態を見届けている。
「きっと、征竜様も御覧のことでしょう。お一人で背負われませんよう」
「確かに。征竜に再び問うことは良いかもしれないな……」
 ふと、レイウェストは微かに目を見開いた。

 あの時、征竜はドン・ゴーフルに崩堕の兆しあり、と告げていた。
 しかし、征竜から告げられた言葉と、世界樹から告げられた言葉には確かな食い違いがある。

「征竜は母上を認識できていなかった……?」
 告げられた言葉にアリオンの表情が陰る。征竜の不完全性。事態の根幹が征竜の認識外にあったことに、かつて討ち倒されたという歴史の尤度が高まったように思えて。皇子と世界樹を通じて事態を認識したであろう征竜は、今、何を思うのだろうか。物思いに沈みかけていたアリオンに対して、レイウェストは感謝を示すように柔らかく微笑んでいた。
「有難う、アリオン。そなたのおかげで、彼の竜と語るべきを得た」
「いえ……それで殿下と征竜が協調できるのであれば、否やはありません。僕は、征竜様が“正義の竜”だっていうヒルルクの言葉を信じていますから」

●
 ――少しは、気が晴れたようにお見受けするが。
 ナタリアはレイウェストへと向き直る。
「失礼いたします。殿下、お加減はいかがですか?」
 レイウェストの額に浮いた汗と髪を整えるようにして、微かにエンパシーを通した。手応えとして返ってくるのは、目まぐるしく移り変わり、綯い交ぜとなった感情の色。それはそのまま、眼前の皇族が体裁を完璧に取り繕うことを意味している。為政者の孤独を掬い上げる決め手は、練達を深めてきたナタリアをしても見当たらない。
「……僭越ながら、苦境の中であろうとも生き足掻き、道を示してくださった殿下には感謝の言葉もありません」
 それは違う、と言いたげなレイウェストの言葉を遮るようにして、続けた。
「しかして殿下の光の中には、幾何かの闇がありますね」
「……そうかもしれないな」
 返った苦笑に、ナタリアは微笑を浮かべた。
「陛下を討つというのは尤もですが……陛下の真意が未だ分からぬ以上、それは早計に過ぎます。イダ妃が野心の為に幽界樹召喚を引き起こしたにせよ、彼女はおろかエフレム卿の真意を測る事も、恥ずかしながら遅々として進まぬ状況です。今は、鼎の軽重を問う事の出来る好機でしょう」
「母上と敵対している父上を討つことの是非、か」
「……ええ。イダ妃を止め得る可能性がある者は、陛下しか居ないということもあり得ます」
「征竜の鎧だな」
 征竜の頭骨を用いて製作された装具。神の力に抗う一助となり、火生の神すら退けた。レイウェストが有する征竜の剣と比したとき、有効と思われる手札が何れかについては、彼も考慮したことはある。
 そこに、ベルク・オスマットが一礼と共に口を開く。
「殿下であれば問題ないとは信じておりますが、会談の結果がどうであれ、冷静にあられ軽挙は慎まれますようお願い申し上げます、今の帝国臣民の生活を保持している主は間違いなく殿下であられるのです」
 冗句に含まれていた底意が皇子の裡では選択肢として残されているのだろうと見ての言。
「多くは私ではなく、そなたら臣下や冒険者たちの力があってこそだ。その点で言えば、父上は――否、私もまた、帝国にとっては負債には違いないよ」
 苦笑交じりの応答に、ベルクは頭を振った。追従を求めているわけでもないことは為人からわかる。レイウェストは本気でそう思い、彼なりの政治理性のもとでそう判断しているのだ。
「……いえ。ナタリアが言う通りです。殿下が道を示した功は計り知れませぬ」
 ベルクはそうして、しかし、と逆説で繋ぐ。
「今日までの戦いの中で殿下の元に齎された情報の多くはあくまで個々の戦場での目的であり、ヨゼフの最終目標が何なのかは一度として彼の者の口からは発言されておりませぬ。この機に、何を目的として動いているのかを今一度聞いてみてはいかがでございましょうか?」
「直裁に、か……また愚鈍と言われてしまうかもしれないがなぁ」
 レイウェストが触れたのは、火山でのヨゼフとの遭遇時、レイウェストに扮した冒険者に対して掛けた言葉だった。

 ――相変わらず何をやっても愚鈍だな。

 それがヨゼフからの評価であると。ベルクは慈しむような言葉を発していたことを伝えるのを飲み込んだ。傍らのナタリアも額に手を当てている。親子の情など望むべくもない冷血ぶりだった。
「……先だって申し上げましたが、このベルク。殿下がいかなる道をお選びになられようとも従者として付き従う所存。無論、それがこの帝国を幾多の勢力に割りえる選択であってもでございます」
 仮に決別することになろうとも、従者として在ろうと告げた彼女は深く礼をし、最後にこう結んだのだった。

 対話の姿勢だけは、軽挙だけはなさらぬよう、と。

●
 ――難しいな。
 話の動静を見極めながら、エルゼリオはひとり呟いた。
 帝国としての幕を意識している皇子の胸中を思う。その負債と未来、一人で背負うには余りに重い。
 ――ボクがもし殿下の立場だったら、果たして戦い続ける事ができるのだろうか…?
 自らの身の上に置き換えてみる。

 ――父上、兄上、姉上を全て敵に回して、祖国と世界の為に身命を捧げる事ができるのだろうか?

 事態の重さよりも、見える未来の冥さに目眩がした。剥落していく絆と、将来生贄に成るために歩を進める道程は、想像だけで心が軋む。
 けれど。
 ――貴方は、それを選んだんだね。
 だから、告げる。
「どんなに辛くても、苦しくても、哀しくても。耐えて下さい。……そして皇帝と皇妃を討ち、新たな皇帝となって下さい」
 帝国を背負い、正しい帝国として在らねばならない。そうでなければ、国家間での信頼は毀損されたままだ。
「――それができなければ、帝国は『世界の敵』となってしまいます。人の世の理を維持したまま、帝国と世界が共に生き残る道はそれしか……ありません」
「……」
「ボクは帝国民でも殿下の臣下でもないけれど。だからこそ、一人の人間として――友として、流れる血を少しでも減らす為、貴方と一緒に戦いたい」
「友、か」
 果たして、レイウェストは同じ未来を見たものか。破顔した彼は手を差し出す。
「私は、自ら膝を折ることは決してしないよ。だから、至らぬ私をその武勇で支えてくれ、友よ」
「ええ……!」

 二人の様子を眺めて、ヴィルヘルミナは程よく緊張が解れたようだと判断できた。
「この分であれば、帝国の先行きはわかりませんね」
 絶望だけではない。希望の種は、確かにあるのだろう。
「先ほどの殿下のお話ですと、他国がさらに荒れる可能性も十分ありますし、貸しを作る機会もありそうですね」
「借金の返済に充てられるだろうけどね」
「その時は甘い顔を見せないようにしてくださいね? 政は腹黒だらけですよ?」
 打ち付けられた特大の釘に呻き声が上がった。目線は広いが、決断するにあたりレイウェストの政治指向は善意に寄りすぎているので、誰もフォローはいれない。なんなら、「皇帝は大変だなぁ」とからからとエルゼリオは笑うほどである。
「そういえば、いまの帝国には文官はいるのですか?」
「死者が多かったために少ないが、今も難民たちから少しずつ増えてはいるよ。先日のヴィントでの冒険者の指導の成果だが……些か、勘定仕事向きばかりなのは否めないな」
 淀みない応答とその内容に、ヴィルヘルミナは一応、納得することができた。
 一人で解決できることなど、知れている。そうでなければ、この世界はもっと平らかなものであっただろう。
「まあ、まだ若いですし生き急ぐのもどうかとは」
「そればかりはそうもいかないな……」
 ム、と眉を顰めたヴィルヘルミナに、レイウェストは意趣返しができたためか、声を上げて笑っていた。

 そんな笑い声を曳いて現れた一同を、ヨゼフ・バルダスはびくともせずに迎え入れた。
 月夜の森林。その開けた空間で、皇族たちは言葉を交わす。

●
 多くの冒険者を引き連れたレイウェストに対して、現皇帝ヨゼフ・バルダスはただ一人。両陣営の会談については、また別の機会に触れるものとして――皇帝との会談は、静かに始まった。
 そうして、一つの区切りを得ると、レイウェストが冒険者たちに発言を促した。ベルクとトーラはレイウェストの傍らに在り、かたや傅くように。かたや、ひたむきな目でヨゼフの動向を見張り、有事に備えるように立つ。
 皇帝は一瞥をくれただけであったが、視線が絡んだことから、トーラが端緒を切る。
「なぜ、帝都に戻らないんですか? エフレムさんが居れば、世界樹を手に入れる事も出来たでしょうし」
「不快だな。彼奴らとは決別している。近衛も然りよ」
 ちろりと燻る嚇怒の色と言葉の通りなら、イダとヨゼフは協力関係にはないと取れる。ついで目を向けられたアリオンが、口を開いた。
「私は――征竜を信仰しております。陛下が大陸を統一したとしても、かつてのシル・ウァキアと同じ道を辿るのではと危惧しています。それに対しての備えは――」
「ハ」
 そこで初めて、ヨゼフは愉快げに頬を歪めた。
「抑圧者を求めるか。人類に蓋をする、忌まわしきあの竜を」
 そうして、レイウェストを見やる。否。レイウェストを通じてこの場を見ているであろう征竜に対して。
「ああ、辿るだろうとも。だが、征竜の焔は帝国には留まらぬぞ。彼奴は理を乱す者の敵対者であるが故に、斯様な時代に斯様な事態となれば、この大地を舐め尽くすかもしれん」
 その言葉は、楔だった。
「よく聞け。あの蜥蜴は世界の守護者を気取るが、ヒトの守護者ではない。故に朕は、帝国は、あれを超えねばならぬ。勿論、何かの折にあの蜥蜴が果てるのならば、それで良い」

 ここまで聞いて、キーゼは概ね絵図が見えてきた。
 ヨゼフには二つの軸がある。ヒトの軸。平たく言えば、王国と帝国の政、
 もう一つは、超越者の軸だ。征竜と超常なるヒトたるイダとエフレム――そして恐らくはドン・ゴーフルも含まれ得るか。
 ――結局のところ、何を見ているかですね。
 会談の動向を見つめながら、キーゼは薄く冷笑した。レイウェストに後者の軸はなく、残る軸も平行線だ。
 レイウェストが見ているのは民だ。彼の手元に残されたものを思えば、必然だったとも言える。結果として、王国に傅かねばならないことも必然。絡め手をレイウェストは自覚した上で民のためにと飲み込み、未来を担保にした。そうでなければ難民たちは安寧を掴むことはできなかったし、今の帝国領土の版図は大きく塗り替えられていただろう。
 ――殿下を復国の英雄と見るか、稀代の売国奴と見るかの違いとも言えますが……。
 帝国の先を見据えるのであれば、帝国は強くあらねばならない。そうでなければ、王国の属国となるだけ。そういう意味でレイウェストの指針は若干外連味が薄く――ああ、物足りない。
「この間僕らが潰した炭鉱街でも……」
 故に、埋毒を吐き零す。
「帝国の脅威に備えてちょっとした”実験”があったようですしねぇ」
 帝国がかつてそうであったように、王国にも備えはあったし、当然のように残っている。自縄自縛のお国柄が好く働いているとはいえ、本来帝国が取るべき策を国家理性に則って見るならば、ヨゼフにこそ理がある。
 レイウェストも解っているのだろう。だからこそ、レイウェストはヨゼフの道理を否定していない。
「既に帝国外も巻き込んだ代理戦争です。それは、疑いようもない事実のはずでは?」
「……キーゼ」
 線引きを超えているというレイウェストの警句を、男は笑みと共に受け容れる。
「現に、帝国に与する組織や国家は十分に多いでしょう。功利を以て彼らは王国と潜在的に敵対する道を選んでいる。王国でも、王家の思惑は少し異なるようですが、それも首輪あってのものとなれば――」
 さて。首輪を掛けるべき首が失せたとしたら、帝国の行く末や、如何。
 個人的には望む筋書きではあるが、さて。
 ――惜しむらくは、それは皇帝の利益にもならないという点ですか。
 皇帝は間違いなく、レイウェストの推測通りに事態の泥沼化を期待している。であるならば、レイウェストの首は利が勝つか。
「であるならば、皇帝陛下の姿勢が誤りとは言えないのでは?」
「朕を量るか」
 キーゼの凶笑混じりの言葉を、ヨゼフは表情を動かすこともなく、しかしそれ以上断じるでもなく。
「此処まで囀られれば、其れが朕を縛る理でもあることは――貴様にもわかるだろう、レイウェスト」
「ええ」
 キーゼの言が呼び水となって、引き出されるように二人の政が交差する。
「幾重もの思惑に絡め取られた私は、同時に王国への楔でもある。だから父上は、今此処で私を殺すこともしない。冒険者たち(彼ら)も同様に」
「であるならば、その首の使い道は解っているな?」
 突然の暴言に、これには冒険者たちが色めき立つ。
「過激派との接触、ホムンクルスの流布、火山神の力の簒奪……国も大地も治める者の責務を逸脱しきっている陛下が――それを、仰るというのか?」
 決然とした眼差しで告げるナタリアに、ヨゼフは小さく首を傾げた。
「其奴には柵(しがらみ)が多すぎる。正しき政など出来はすまいよ」
「それは、陛下が……!」
「ナタリア、良い」
 レイウェストの制止に言葉を呑むナタリア。動向を見守っていたルチルはクソ親が――と内心で吐き捨てながらも、仕切り直しとばかりに礼をする。崩壊しかけている場の空気を、緩める意味でも。
「ならば――それまでの間。イダ妃が帝国を滅ぼした首謀者として、それぞれ征竜の武具を持つ親子が共同し剣を持つ皇子が矛を担うことは出来る。以て、帝国の威厳を大いに知らしめる布石となるのでは?」
「理も、利もなければな」
 これを以てルチルは理解した。レイウェストたちの動静を見定めている。征竜とイダたちの均衡を崩す呼び水となるか、何もせずに静観することで大陸を害するか。いずれの場合でも、ヨゼフに損はない。
 ――本当にクサれ親父だねぇ、コイツは……。

 ――合理。合理だな。
 ナハティガルは瞑目した。キーゼはレイウェストへの謀を首輪と例えたが、それらをも洞察した上で、ヨゼフは選択を重ねている。象徴としてのレイウェストと先行きを認めた上で、これを崩さないこともまた合理と知れる。
 毛先ほども情を混じえぬ性質は、ナハティガルにとって推察しやすい材料でもあった。
 レイウェストの動向を識った時期がいつかはさておき、ヨゼフは合理を以て征竜や王国への備えとして神を侵し、暗闘していた。しかし、一つだけ解らないことがある。

 なぜ、ヨゼフはイダを娶った?

 帝国の冬よりも凍えたこの男が、色に狂うとも思えない。如何にイダが大陸一の美姫と言われようとも、それだけは。

「三つ、問わせていただきたい」
 以て、彼は口を開く。
「ヨゼフ帝にとって、国とは、民とは何かを」
「国家とは理(ことわり)よ。理は以て土となり、民はその下草となる」
 ヨゼフはこれに応じた。
「この大陸には、澱みも停滞も不要よ。愚かしい無能も、賢しき蜥蜴も、ヒトの栄達の重しに他ならぬ」
 ヨゼフの言に、ルチルとアリオンの気配に険が混じる。征竜への侮蔑を隠しもしない言動に、反感が立った。しかし、それを口にしないだけの分別はある。微かな緊迫を孕むなかで、ナハティガルは続けて問う。
「……で、あるならば。なぜ、イダ妃と決裂することになった?」
 神々を喰らうほどに成ったイダ・バルダス。その変節に、ヨゼフが関わっていないはずがない。
「何が、彼女にそれを齎したんだ」
「……」
 先ほどとは打って変わるように、沈黙が横たわる。何の感情も浮かばない皇帝の顔をその場にいる誰しもが見つめていた。昏い瞳に虚ろを宿したまま、皇帝の視線がレイウェストへと転じる。
「彼奴は、貴様にとってどういう女だった」
「――よき母でした」
 レイウェストの言葉を反芻するようなひと時の後、ヨゼフは断じた。
「蜥蜴が抑圧者ならば、彼奴は理を侵す獣だ。個人の情で帝国を破壊せしめ、大陸を呑み込もうとする災禍よ」
 そうして、冒険者たちを見回した後、レイウェストを見据える。
「殺せ」

 そうして、ヨゼフ・バルダスは踵を返した。


●
 その背を見送ったレイウェストの吐息が落ちるまで、沈黙が落ちていた。
「……終わったな」
 帝国の未来であれば渡り合えるつもりでいたレイウェストにとっては、苦さの残る結果だった。
 しかし。
「みなのおかげで、意義のあるものとなったよ。多くを識ることが出来ただけでも――」
「殿下」
 それまで周囲を警戒し続けていたアルベルトが、膝をついて頭を垂れた。
「自分は『黒曜の剣』、殿下の騎士であります。殿下の目指すものを実現させるために俺は何でもします! 殿下はご自身が正しいと信じる道をお進みください!」
 征竜と超越者たちの思惑は、レイウェストたちの立ち位置と次元が異なるもの。だからこそ、その足元をこそ見つめるアルベルトの言葉には熱があった。
「俺は、帝国国民を無視し民を苦しめる皇帝・皇妃両陛下より、帝国国民の事を想い身を粉にして働く殿下についてまいります!例え、それがいつか皇帝を討つ事になろうともです。陛下の道は、帝国国民を苦しめ、傷つけるもの。その先に帝国の栄華が在ろうとも、本末転倒でしょう。だから――」
「アルベルト」
 言い募ろうとするアルベルトを留めたレイウェストは陰のない笑みを臣下へと落とす。
「……そなたの心は嬉しいとも。私はこれまで通り、私たちの道を往こう」
 どのみち、進むべきは決まっているのだ。
「私たちが進めば父上はきっと横槍をいれてくると確信できた。それを以て、勝算を見出そう」

●
「先程の皇帝の態度、少し気になるんです」
 帰りの道中。ルアンナはぽつりと呟いた。
「レイウェスト殿下の出生に執着しているようでした。ひょっとして、殿下の生まれにはなにか計画があって、そのために殿下が必要だったのでは?」
「……私が?」
「けれど、そうすると状況が合わないので……皇帝と皇妃の反目の原因が、殿下にあるのではと。殿下を守るために、イダさんは帝国ごとヨゼフを――」
「いや……どう、だろうな。帝国崩壊の折は、私自身死にかけていた。彼処に母上の関与が在ったとは思い難い」
 だが。
「……生まれ、か……」
 沈思すれども答えは出なかったが、血赤(パイロープ)の瞳には、昏い影はなく。
 暗夜に差した光明を見出したかのように、煌々たる意思の光を宿していた。

マスターコメント

ご参加いただきありがとうございました!! 皇帝の口から語られた新しい情報は、その合理性故に意図して伝えたものかもしれません。 それでも、レイウェストたちが知るよしもなかったものを得て、暗夜には確かな導が差しました。 レイウェストとヨゼフの会談については、またの機会に執筆できればと考えています。 ――それでは。
ロングシナリオ

ロングシナリオ普通 報酬:多い12 / 6〜12人

2022年09月06日 21時50分45秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト

    ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 今回はとにかく、自分の考え・想いを殿下に伝えようと思う。 直球勝負で行くつもりだ。

  2. トーラ

    トーラです。 ええと……、レイウェスト様にはもう少しご自身の事を大事にしていただければと思ってそう伝えるつもりです。

  3. アリオン・リュー

    僕はウォーリアのアリオン。よろしくね。 皆で相談して何か一つに決めるよりは、思い思いに、って感じになるのかな。 僕は征竜様についてのお話とかを聞けたらって思うよ。

  4. ヴィルヘルミナ

    ヴィルヘルミナです。今回はよろしくお願いします。 各々、思う所があると思いますし、言いたい事を言えばいいかなと。 気になるのは、このまま皇子を放っておくと刃を相手に向けそうな点ですか。

  5. ベルク・オスマット

    とりあえず殿下のお覚悟は臣として嬉しく思うが、うん。今回は止めないといかんな。 さすがに【ドン・ゴーフル】の仲介した場で刀傷沙汰など起こしたら、ゴールディとの関係に溝どころが地割れが生じかねん。 それだけは避けないとまずい。 対立するにしてもこの場は宣言するにとどめておくべきだろう。

  6. ルチル・プルメリア・グレイハーツ

    情報屋のルチルだ。よろしく。 まああの思い詰めた様子……相手が懐に入れてくれたこの好機に討ち取る気じゃないかと思ったね。 上手くいったとしてもその後いい結果になる気がしない。 実際の思惑はどうであれ、会談前に釘を刺しておくのが妥当と思うよ。

  7. ナタリア・フィッツジェラルド

    遅れて済まない。ヒーラーのナタリア・フィッツジェラルドだ。宜しく。 方針がようやく固まったことだから参じた。 陛下が会談に応じてくれた事だから言いたい事もあるだろうが、心情的には殿下を諫める事を優先するつもりだ。 イダ妃に関する情報がまだまだ不足しており、真相究明には時間が必要となる以上、殿下がこの場で陛下を討とうというのは得策であるとは言い難い。 過去の決戦で我々の力が全く通用しなかった陛下相手だ。最悪そのまま返り討ちに遭うのがオチだろう。

  8. ルアンナ・ミュラー

    キャスターのルアンナです、レイウェスト殿下と主に話したいと思ってます。 皆さんも言ってますがこの場で物理的戦闘が始まると非常に不味い事態になっちゃいますので、絶対に避けないとですね。

  9. アリオン・リュー

    あ、殿下、この場で仕掛けるつもりっぽい…? 一応お互いに戦闘にならないようにはしたいね。 あとは、僕たち以外にもこっそり潜んでる人とかいるかもだし、気をつけるよ。 逆に、何か仕掛けたいって人がいたら邪魔したらよくないし、事前に教えておいて貰えると助かるかも。

  10. ヴィルヘルミナ

    流石にここで仕掛けるとは思いたくないですね。ただを決意を固めただけかもしれませんし。 「討つよ」とは呟きましたが、今すぐとも言ってませんからね。まあ…万が一という事もありますけど。 精神的に危うい感はあるので、気を付けた方がいいかなとは思いますが。 別の問題が出る可能性も否定できませんし。 特別な事が無ければ、平行線で解決せずに終わりそうではあります。

  11. ナハティガル=ラー

    シーフのナハティガル=ラーだ。宜しく頼む。 個人的には皇子の『討つ』という言葉は、飽くまで自身に対しての決意表明であると受け取った。 ――仮に。会談の場で刃傷沙汰でも発生しようものなら、会談をお膳立てしたドン・ゴーフルの面目は丸潰れとなる上、 勝ち目もなく皇帝に挑んだ所で返り討ちに合うのが関の山かと。 それが分からぬ皇子とは思えんが……。

  12. トーラ

    そうですね。 残される臣民の事を考えず勝ち目の無い行動をする方ではないと思います。 ただ、会談の結果によっては皇帝の怒りを買う可能性がありますし、安全の為にプリズムシャドウを持っていきましょうか?

  13. エルゼリオ・レイノーラ

    ヒーラーのエルゼリオ・レイノーラです。どうぞヨロシクね! まだ行動は考え中だけれど、レイウェスト殿下とお話するつもりでいるよ。 皇帝陛下ともお話してみたいけれど……ちょっと怖いかも(汗) >討つ レイウェスト殿下は、会談の場で皇帝陛下に刃を向けたりはしないんじゃないかな? 討伐の意思を表明する事にはなると思うけど。

  14. ベルク・オスマット

    >レイウェスト殿下 懸念しすぎだとは思ってはいるが。 殿下は偶に突拍子もないことを為されることがあるのでな。(この間の人質志願等) 万が一を考えると懸念しないわけにもいかんのでな。。。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0