果実の街の苺狩り
崎田航輝
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シナリオID:1926
オープニング
冬が少しずつ終わりを迎え始める頃。
その農園に、瑞々しい翠の葉に映える紅の果実が実を結んでいた。
それは仄かに甘酸っぱい香りを漂わせ、差し込む光に艶めく――苺。
今この街に、苺の季節が訪れようとしていた。
長閑な平野部の街、ユームタルト。
都市同盟の中でも農業に適したそこは、一年を通して様々な果実が育てられている。
訪れるたびに豊かな色彩と美味を味わえる事から、“果実の街”という名でも呼ばれ、近隣ではよく知られていた。
そしてこの季節。
街を歩めば――
「わぁ、すごい!」
子供達がはしゃぐのは、観賞用の苺によるアーチがあるからである。
小さな赤い実が可愛らしいそれは、幾つも連なって……まるで鮮やかな天蓋のように目を楽しませてくれるものだった。
そんな景色を歩んでいけば、広い土地を持つ苺農園に辿り着く。
その場所こそ――今の時期最も人気のスポット。
数え切れぬ程に実った果実を、好きなだけ味わえる苺狩りが催されていて……子供と共に大人達も笑顔で楽しんでいた。
そこでは苺をそのまま味わうだけでなく、近くのログハウスで採ったものを料理も出来る。ジャムにケーキにと、皆が思い思いの手作りをして過ごしていた。
更に……隣にあるカフェでも、採れたてを使ったスイーツが堪能出来る。
果実たっぷりのタルトに、見目も美しいミルクレープ、大盛りのパフェ。飲み物も楽しめて、こちらも人気のメニューには枚挙にいとまがないのだった。
元々観光客を歓迎する街ではあるけれど、苺が主役になる時期には人も多く訪れる。
だから――
「この機にもっと街を、人々に知ってもらいましょう!」
そんな気概を持った街の長が……観光にと、冒険者達を招く事に決めたのだった。
そうして冒険者達は果実の街を訪れた。
爽やかで、微かに甘い香りがそよ風にのっている。
その中で、それぞれに歩み出した冒険者達は――
解説
●概要
都市同盟にある街、ユームタルトへ観光に招かれました。
苺狩りを中心に楽しんでゆく事が出来ます。
●ユームタルトについて
同盟の平野部にある都市です。
農業が盛んで、特に果物類の生産、取引が多く行われています。
今の時期は苺を中心に、晩冬の果物も出回っています。
●行える事
苺狩りを中心に自由に散策出来ます。
以下、立ち寄れる場所やイベントの例を示します。
1.苺狩り
農園内の一角で、苺を自由に採って食べる事が出来ます。
複数の品種があり、熟していて甘いものや、まだ完全に熟しきってはいないもの、大きなものや小粒のものなど様々です。
また、色も濃い紅色のものの他、淡いピンクに白色、黄色のものなどがあり、それぞれ味も違うようです。
2.苺を使った料理
採った苺をログハウスで料理出来ます。
器具や調味料など基本的なものは揃っていますが、持ち込みも可です。
ジャムやケーキなどを作るのが人気なようです。
料理が出来ない方は教えてもらう事も出来ます。
3.カフェ
農園の隣にあるカフェでスイーツを楽しめます。
メニューは苺が材料ならば様々なものがあります。
人気の品として、果実沢山の艶々なタルト、ホイップクリームの美味しいショートケーキ、苺クリームを使ったミルクレープ、サクサクのパイ、山盛りパフェなどがあります。
他にもソルベやムース、マカロン、シャルガネ由来のいちご大福などが揃っています。
飲み物も苺オレにサングリアなど色々と見つかるでしょう。
4.お土産
果実だけでなく、農園製のジャムやリキュール、カフェのメニューのお持ち帰りも出来ます。
また街では苺の形のクッションなど、苺テーマのグッズや日用品も人気です。
5.散策
街が苺で飾られています。
観賞用の苺で出来たアーチの並ぶ道や、家並みにも鉢植えの苺などが並んでいて歩むだけでも楽しめるでしょう。
6.その他
苺以外の晩冬と早春の果物もあります。
キウイや柑橘類、スターフルーツやリンゴなどが、カフェや市場、雑貨店など色々な形で楽しむことが出来るでしょう。
マスターより
同盟の一地区で観光を楽しむシナリオとなります。
苺狩りを中心に街を散策します。
行わなければならない事はないので自由に過ごしてみて下さい。
街には例として示した以外にも、普通の街にありそうな機能を持った施設なら存在します。
適宜過ごしたい場所を訪れてみると良いでしょう。
同行者がいらっしゃる場合は、お名前や共通のグループ名(人数なども併記して下されば確実です)などを記載して頂けると助かります。
皆様のプレイングを、心より楽しみにお待ちしております。
リプレイ
爽やかな香りと、紅の艶めき。
訪れた農園の景色に――アンネエルカは目を輝かせていた。
「まあ、宝石箱みたい!」
「これ全部食べていいのか!? 全部か!?」
と、隣のアルフィー・リッパーも尻尾を全開でパタパタ。期待の表情を隠せない。
そんなアルフィーに、ナハト・シュライバーは一つ息をついて。
「食べるのは自由ですが、節度をもって、ですよ」
「分かってるって!」
言いながら早速、アルフィーは甘そうなひと粒を口へ運ぶ。
すると溢れる果汁が美味で。
「うまい!」
「本当? ……ん、とっても美味しいわ!」
続くアンネエルカも新鮮な甘味に笑みを零す。
その間にもアルフィーは次々と頬張り始めるから――
「こらこら、もう少しよく味わいなさい! あっ、ほら、果汁を垂らして……!」
ナハトはお説教しつつアルフィーの口元を拭ったりして。
仕方無しと引率していく姿に……アーシェル・G・クラインは思わず苦笑を零していた。
「ナハトがこんなに世話焼きだったとはな。なんつーか……母親みたいだ」
「いえいえ、僕はただ当たり前の事を――」
と、ナハトが言うのもつかの間。
アルフィーも「よーし」と頷いて。
「誰が一番デカくて美味そうな苺を見つけられるか競争しようぜ!」
「おお!」
アルフィーは熟してそう色の濃い粒を沢山発見。口いっぱいに頬張って。
「んー! うまい! お前らも早く食べないと無くなるぞ!」
と、言いながらも皆の分はきちんと残してある。
アーシェルはそれを味わいつつ……ピンクに白に黄色と各色で美味しそうなものを見つけていた。
爽やかな甘味のものを特に気に入りつつ……途中から肉が食べたくなってきた事もあり、特に大きな粒は三人へ。
追ってきたナハトはそれを受け取りながら。
「全く……貴方達幾つですか!? 子どもみたいなことしない!」
「あら、素敵なものにはしゃぐのに歳なんて関係ないわ」
アンネエルカは声音に花咲かせ、見つけた苺を一口。ぎゅっと甘さの詰まった小粒なそれがお気に入りだった。
勿論、二人が見つけたものも実食。幸せいっぱいに味わった。
もりもり食べる皆に、ナハトはため息しつつ。
「もー、この後カフェに行くのにそんなに食べて……お腹が痛くなっても知りませんよ?」
「大丈夫だ! 甘いものは別腹だ!」
アルフィーが言って勧めると――ナハトも熟した苺に舌鼓。
「確かに、どれも美味しいですね」
果肉が固めな、酸味と甘みのバランスのよい粒に美味を感じながら……皆と共に甘い時間を楽しんだ。
その後はカフェへ。
「凄いたくさんのスイーツがあるな……!」
アルフィーがメニューに目移りしていると、アーシェルも迷った末に提案。
「皆で全メニュー制覇しようか」
「それなら、私は山盛りパフェを!」
「では僕は苺とカスタードのタルトとマカロン、苺オレで……」
ナハトが注文すると、アーシェルもソルベとサングリアを頼み……アルフィーも気になったものを幾つか頼んだ。
早速品がやってくると――
「アンネのパフェ、豪華だな」
アーシェルがそれを見て感心。苺のアイスに、クリームを練り込んだクッキー、ワッフルに、ピューレのきれいなムースの層もあって。
はむりと食べたアンネエルカは、幸せな表情。
「とっても美味しいわ……!」
「こちらも美味ですね」
と、ナハトが頂くタルトは艶々の苺が美しく……カスタードの甘味と相性抜群。
苺オレもまろやかで、上機嫌で尻尾を揺らして堪能するのだった。
「こういう季節にソルベもいいもんだな」
と、アーシェルは果汁の風味を含んだひんやり感を楽しんでいる。
サングリアは上品な苺の香りが芳醇だ。それを味わうアーシェルを横目にしつつ、アルフィーは大福を手にドヤっと笑顔。
「シャルガネのモチ! これしってるか! 食べるとみょーんって伸びるんだぞ!」
「アルのほっぺたも餅みたいに伸びそうだよな。ちょっと摘ませろよ」
と、アーシェルはアルフィーの頬もみょーんと伸ばしつつ。アルフィーがおすそ分けすると、皆もまたシェアして楽しむのだった。
一頻り味わうと、アーシェルは改めてメニューを見る。
「来られなかった二人に土産を買っていくか」
「いいですね。ただ――」
と、ナハトはぽつりと気持ちを零す。
「これだけの美味ですし、色々と大変なレイウェスト殿下にも食べて頂きたいですね」
「殿下が甘い物好きなら喜んでくれそうだよな。ナハトが作ってやるのはどうだ?」
アーシェルの言葉に、ナハトは料理を見下ろした。
「確かに、再現したいとは思っていました」
「どんなスイーツがあるのか覚えておけば、来れなかった二人にも後で色々作ってやれるんじゃないか?」
アルフィーが言えば、アンネエルカもぽんと手を合わせる。
「そうね! 楽しみは共有出来たら嬉しいし」
苺のお菓子を自分でも作れたら素敵だから、と。
参考に出来るようにと、皆で買えるお土産は買って――ここだけの味はまた来年、と。
「きっと皆でまた遊びに行きましょうね!」
アンネエルカの言葉に三人は頷き……苺が香る風の中を、歩み出す。
小ぶりで鮮やかな紅は甘く、色が薄めなものは酸味があって。
「どれも、美味しいですね!」
エルナ・クルプファルツはそんな美味を楽しんで苺狩り中。
あっと気づく先にはピンクや黄色の苺があって。
「とても可愛らしいです――!」
見目だけでなく、優しい甘味と爽やかな甘酸っぱさも楽しんだ。
そして採取もしてログハウスに向かうと――料理だ。
まずはケーキを作る事に決めると……生地とクリームは甘く仕上げつつ、果実は酸味と風味のよいものを選んで全体での味を調える。
並行して煮るジャムには、甘くて香りのよい苺を使用。砂糖はケーキにたっぷり使った事もあり、こちらは果実の甘味を主役にした。
「最後はこれです!」
と、残った果実を氷と一緒に潰し、シャーベット状のジュースにして完成。
「では頂きます!」
実食すると……ケーキは生地ふんわり、クリームはなめらかで、すっきりした酸味の果実と最高のバランス。
ジャムもバゲットで味見すると――果実感の強い美味。
ジュースも果肉の食感が快く。
「ふふ、至福のひとときです!」
春を待つ風に吹かれ、エルナは幸せな笑みを浮かべていた。
早春の香りに、瑞々しい甘さ。
苺狩りにやってきたベルク・オスマットは、そんな美味を堪能しつつ歩んでいた。
「ふむ」
と、果実の質の良さに、ある思いがもたげてくる。
「ジャムなら日持ちもするしな――」
殿下や将軍たちへの土産にちょうどいいか、と。
今のヴィントでは甘味の類は貴重だろうし……少しでも安らいでもらえるのではないかと、そう思ったのだ。
という訳で早速ベルクは苺を手にログハウスへ。
たっぷりの苺を煮立て、出来たジャムを瓶詰めにした。
「うむ」
それをヴィントへ発送する事にして――後は商店へ。嗜好品の傾向や需要を調べ……帝国復興のための財源に使えないかを精査する。
「成程」
結果、やはり希少価値のあるものは素直に欲されているらしい。
特にユームタルトでは、樹海で発見された食べ物や植物が人気だった。という事で、それらも出来るだけ入手の算段を立てて。
「今は殿下の影響範囲は狭いが、いずれは帝国全土を統べられるのだからな――」
その財源を得る為に、と。
ベルクはそれらもまたヴィントへの運搬を手配するのだった。
「さて、と」
沢山の苺を採ってきたアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトは、ログハウスで料理を始める所。
まずはしっかり泡立てて作った生地を窯で焼いて、スポンジケーキに。
「あとは――」
クリームと共に、カットした苺を花のようにあしらってデコレーションケーキの完成。
「イチゴを使ったスイーツと言えばやっぱりこれだろうな」
その見事さとビッグサイズに、子供達の注目も集まる。
だからアルベルトは皆へと大盤振る舞い。
「さあ遠慮なく食べてくれ!いくらでも作るぜ!」
『わぁ、すごい!』
『美味しい!』
甘々なクリームと苺に子供達は大はしゃぎ。好きなだけケーキを食べられる……そんな天国に皆が笑顔であった。
「作り方を知りたいのか? なら――」
と、興味を持つ子供達には生地作りから教えてあげて。
「そうそう、しっかり泡立ててな」
そこにも皆が集まってくるから、暫し料理教室。
焼き加減や、苺の切り方も見てあげて。
『出来た!』
『きれい!』
出来たケーキを、また皆で実食。
和やかで、賑やかな時間が流れていった。
「色々あるなー」
サイラスはカフェでメニューを選定中。
まずは苺は外せないからと、タルトにケーキ、ムースも頼んで食べると――
「成程」
タルトはしっとり生地と果実が相性抜群。
ケーキはクリームがまろやかで、ムースも優しい舌触りが快い。
更に、苺だけでも舌が判らなくなりそうだからと、注文してあった紅茶も啜って。
「やっぱり甘味と合うな」
香り高さと共に、程よい渋みが口の中をリセットしてくれた。
スターフルーツのケーキも頼むと、こちらは黄金色が眩しく――すっきりした味わいがまた苺と違った魅力で。
「うん」
甘いものは別腹と、次々に胃に収めていった。
後はジャムをお持ち帰りして――
「この辺も良さそうかなー」
ドワーフを始めとする同業達の土産にもと、リキュールも買っていく。
鍛冶屋といっても女性もいるし、甘いもの好きもいる。だから多めに仕入れて――後は自分の為のものもゲットして。
「じゃ、他の店も寄っていくか」
歩けばまたスイーツ店や市場が見えるから……花より団子と、サイラスは街を巡っていった。
「わあぁあ、苺づくしですね……!」
シェルリア・リトヴァールは瞳を煌めかせて苺の街を行く。
仰げば小さな果実が可愛らしい苺のアーチ。
見回せば苺の鉢と飾り物が目について。
「どこ見ても苺です、可愛いー!」
心躍らせながら――勿論味も楽しみたいからとカフェへ。
「メニュー制覇……はちょっと無理ですけど――」
タルトとショートケーキは必須だから注文し、早速実食。
すると艶めくタルトは甘々で果汁が溢れて。ケーキもたっぷりのクリームと果実が得も言われぬ美味だった。
「んー! 美味しいです!」
これだけでも中々の量だけれど――
「パフェも気になりますね……!」
迷った末に注文。アイスやワッフルと多彩な味を楽しんだ。
「ああ、何で私の胃袋はひとつしかないんでしょう!」
お腹いっぱいになってしまうのは嬉しくも悲しいけれど……それでもお土産選びもまた楽しい。
マカロン、ジャムと可愛らしいものを購入すると――
「パイも美味しそうですし、これは……いちごだいふく?」
試食でモチモチさを楽しむと、それも気に入って購入。
「とっても楽しくて美味しかったです!」
来年にもまた期待を込めて……シェルリアは上機嫌な足取りで歩んでいった。
甘い匂いと、楽しげな雰囲気に惹かれ――マリィ・スノードロップは苺色に染まった街を歩んでゆく。
「きれいな街並みですね……」
見惚れながら、まずは農園にて苺狩り。
ジャムを作りたいから、適したものを探す事にした。
「完熟してそうな物の方がいいのかな……?」
と、真っ赤でツヤツヤな粒を見つけて。
「美味しそう……」
もぐ、と食べると、甘い果汁が溢れ出して美味。
それからもぐ、もぐ、と。ジャム用のを決めるまでに結構な数を口に運んでしまったけれど。
「いえっ、旬の苺は生で食べるべきなのです!」
言い聞かせるように、またはぐはぐと頬張ってゆくのだった。
その後、苺を手にログハウスに向かうと――そこへ苺狩りを終えたアステルがやってきた。
マリィの準備を見て、アステルは話しかける。
「何か作るの?」
「ええ、ジャムを……」
「わぁ、美味しそう。私はクッキー!」
言ってアステルは準備しつつ……籠の中、自分の採ってきた沢山の苺に改めて幸せな気分。
「美味しそうだし、形も可愛いし……何より色が良いな♪」
折角だからと素のままで一粒食べると――
「ん~美味しい! やっぱり苺サイコー!!」
爽やかな瑞々しさに笑顔が零れるのだった。
それからアステルは果汁を練り込んで生地作り。
形はシンプルでも良かったけれど、思いついて苺形にして。葉にあたる部分はドライフルーツの粉末を使い、しっかり緑色に。
「楽しいなぁ……」
久しぶりのお菓子作りで、周りの空気も楽しいからか。アステルは呟きつつ、軽やかな手さばきで作業を続けてゆく。
そんな楽しげな様子に――こちらも苺狩り後に歩んできたナキルが気づく。
「ここは……何か作ってるのか?」
「みんな、好きなものを作ってますよ」
わたしはジャムを、と。
答えたマリィは丁度、ヘタを取って潰した苺をお鍋に入れている所。
その苺に対して砂糖を三割の分量で入れて……レモン汁も加えてことことと煮てゆく。
ナキルは興味深げに見ていた。
(苺って、料理するモンなのか)
苺と言えば、採って、食う。
そういうモノだと認識していた身としては、新鮮な眺めだ。
「なるほどな――」
折角だから見聞を広めるのもいい、と。
ナキルは暫し学んでいく事にする。
(アイツも甘いの好きそうだったしな……)
という訳でスタッフに教えて貰いつつ、生地をこねて型に流し、ケーキを作ってみると……そのタイミングでアステルのクッキーが焼き上がった。
アステルはそれを大好きな兄にも持って帰るつもりだから……完成度に満足の笑顔だ。
「うん! 良く出来たかな」
「こっちも良さそうです……!」
マリィもジャムの火を止めると、熱いうちに花の意匠が美しい瓶に詰め替えて。
「きらきらジャムの完成っ……!」
「改めて考えると、ジャムってのも料理なんだな」
学びを得た気持ちで、ナキルもまた自分で作れるように工程をメモしつつ……自身のケーキもまた焼き上げた。
「形にはなったか」
そして味見の段になると……アステルは二人へクッキーを振る舞う。
「良かったら一つどうですか?」
「いいのか? じゃあ、このケーキ食うか?」
「ジャムも少し、どうぞ……!」
という事でそれぞれシェアして実食。
クッキーはかりっとしていて苺が優しく香り……ジャムは甘やかで芳醇。ケーキもしっかりと美味で……皆で甘く美味しい時間を過ごしていった。
「とても良い香りがするね」
歩む先に見える苺と、そこから漂う芳香に……ルーシカは楽しみな気持ちで、言葉と共に笑顔を浮かべていた。
農園にやってきたふしぎ亭一行は、これから苺狩りを始める所。
アルラ・ニグラスも頷いて――垣間見える苺の種類に、ほんわかと笑みを見せる。
「こんだけ色々な苺があるのは新鮮でいいわね~。さ、行きましょ?」
言って歩み入ると……後ろのゴルバルティアはどこか遠慮がち。こういう可愛い系の場所が自身には似合わぬと思っているのだ。
それでも鼻孔を擽る魅力的な香りに、知らず尻尾を振っているから――
「さぁ、皆で選んで、摘んでいこうよ」
ララベル・サン・ディーベルは籠を片手に、そんなゴルバルティアの背を押して。早速中へ入っていった。
テュリンも苺に満ちた眺めを見回す。
朝露に燦めく果実はどれもが美味しそうだけれど。
「でも折角なら、甘いものが良さそうね――」
言ってよく熟れた紅色の粒を選ぶと、優しく採って一口。
「ん……美味しいわ」
じゅぷっと弾ける果汁と、芳醇な甘さを楽しんだ。
「色の濃いものは、甘味も強いみたい。ほら、ベル、あーん」
「あ、あーん」
少し顔を赤らめつつ、ララベルは味見。
「ほんとだ。甘い……!」
思わず顔をほころばせると……別の色も試しにと、濃い黄色をあむり。爽やかな酸味と共に、こちらも強い甘味だった。
「これも美味しいよ。あーん」
と、今度はテュリンに返してあげながら。
「ほら、アリエッタも」
言って差し出すと……隣のアリエッタもあーんと口を開けて受け取る。すると瑞々しい美味に、アリエッタは瞳を細めて。
「美味しー」
上機嫌に自分もまた美味しい粒を探す。
すると鮮やかなピンク色の粒を見つけて。
「わぁ、これキレイ」
「本当ね」
共に見て回っていたイル・シャーリィもその色合いには目を引かれる。見回すと、濁りのない白や、オレンジ色のものもあって。
「この辺りはカラフルね」
「全部味わっちゃおう」
アリエッタは興味深げにピンク色を一口。赤色よりも優しい甘さに舌鼓を打つ。
ルーシカもそこへ歩んできた。
「色によっても味が違うんだね」
と、賞味するのは白色。まるでミルクをかけたようなまろやかな味わいに、感心を浮かべつつ……オレンジ色のトロピカルな風味にも笑顔。
皆がそこで味わうので、ゴルバルティアもついてくるけれど――
「うぅ……」
その辺りは周りよりも更に小さな粒なので、力自慢なゴルバルティアは恐々。触れるのもためらいがちだ。
「苺って簡単に潰れちゃいそうでなんか怖いな……」
「なら、食べさせてあげる」
ほら、と。そこでララベルが苺を差し出してくるから……ゴルバルティアはびっくりしつつも反射的に口で受け取る。
「ん……美味い!」
と、新鮮なジューシーさに、思わず声も零れた。
それから更に、赤だけでなく白や黄色を味わって。
「確かに、どれも味が違うな……!」
「実際、これだけ色んな種類があると面白いわね」
と、テュリンは色や大きさ別にして籠に摘んでいく。
勿論甘いもの中心だけれど――
「甘味が少ないのも、料理次第では活用出来そうかな」
「そうだね。用途に合わせて色々使えそう」
ルーシカも頷きながら、味見しては好みのものを籠に入れていく。
同時に、確認するようにララベルの口元にも差し出して。
「こっちとこっち、どっちが好み?」
「う、うん……甘いほうかな」
照れつつ食べて、ララベルが答えている、と――近くで楽しげに苺を採っていたアルラもまた、ララベルを招いた。
「こっちの苺、とっても綺麗よ」
そこは艶の強い果実が多く、どれも宝石のような美しさだ。
無論味も良く、アルラは味見しつつララベルにも食べさせてあげる。
「はい」
「ありがとう」
と、ララベルは少しはっとする。ヘタが落ちたので、アルラがしゃがむと……その格好故か、スカートの中が見えてしまうのだ。
「? どうかした?」
「う、ううん」
ララベルは赤らみつつ、首をブンブン振ってから後ろを向く。
ただ、再び視線を戻すと……アルラが覗き込んできていて。今度はその大きく開いた胸元が見えてしまうから、ララベルはまたわっと顔を赤くするのだった。
「?」
アルラ自身は苺を食べるのに夢中でもあるので、気づいていない。
なのでララベルも、苺に意識を集中しようとその辺に手を伸ばす。
「つ、摘まなきゃね。苺、苺……」
と、そこでハリのある感触に触れて――
「ベル、それ苺じゃないからっ!」
胸を鷲掴みにされたテュリンが赤面。「ご、ごめんっ!」とララベルが平謝りする、そんな様子を横に――
「苺、美味しー」
アリエッタははむはむと美味を楽しんでいるのだった。
苺を摘んだ後は、皆でログハウスへ。
「さて、タルトでも作ってみようかな」
と、テュリンが早速生地を混ぜ始めると――ルーシカは肉を用意。
「デザートはそっちに任せるね」
言いつつ、こちらはソース作りに苺を使う案を考えていた。
感触が楽しめるように苺を粗めに切った後、果実酢と合わせて……香りに気を使いつつ、ゆっくりと煮詰めていく。
肉は赤身が残るように軽く焼いていくと……その隣でアルラはパンを切り、バターとクリームと共に苺を挟んでフルーツサンドを作っていた。
「ふふ、見た目も良いわね。後はジュースかしら」
「あ、僕やるよ」
言ってララベルはしっかりと分量を量ってから、苺と牛乳をミックス。フレーバーに他のフルーツもちょっと足して、バリエーション豊かな苺ミルクを揃えた。
そんな様子を眺めつつ、ゴルバルティアは卵と砂糖を用意。
「よし……これなら何とか……」
と、携えたレシピはメレンゲケーキのもの。
これなら料理をした事がなくても出来そうだと、チャレンジする事にしたのだ。
という事でひたすら、力の限り卵白とすり潰した苺をかき混ぜて……あとは適当な大きさに絞り出して窯で焼く。
覗き込むと、仄かに焼き目がついて甘い香り。
「とりあえず、良さそうだな……」
「わぁ、いい匂い」
それにはララベルも笑顔だ。
頷くゴルバルティアは、焼けたものに苺をトッピングして。
「ど、どうかな……ベル、多少は食べれるもの、作れるようになったぜ」
「見た目もかわいいし、すごいよ」
ララベルが素直に言うと――その頃にはルーシカも肉を薄くスライスし、出来たソースをかけて料理を完成させていた。
「それじゃ、食べましょ」
「あっ、苺酒もとりあえず作ってみたから。良かったらどうぞ」
と、テュリンはリキュールを使った浸け置く用と、ワインを使ったサングリア風を用意して。酒の飲める面々はそれを頂きつつ……皆で料理を食べ始める。
すると肉は苺ソースが香り高く、肉の旨味を引き上げて――イルは舌鼓。
「美味しいわ」
「こっちもいいね」
と、ルーシカはタルトのさっくりした生地と果実の相性に笑顔を見せる。
「んー美味しい~♪ もう一つ貰お~っと」
アルラも言いつつ肉とタルトを味わって上機嫌。
そのアルラの作ったフルーツサンドも好評で……ゴルバルティアは「美味いな!」と満足の面持ち。
「私のケーキは、どうだ……?」
「すごく美味しいよ」
ララベルは優しい口当たりのメレンゲケーキを堪能して、素直に答える。
アリエッタもそれを頂きつつ……苺ミルクも飲んで笑みを向けた。
「これも美味しいよ。優しい味だね、ララベルらしい」
「ありがとう」
ララベルは、御礼も兼ねてアリエッタと――恋人達皆へキス。
「……甘酸っぱいね」
苺味の口づけに、ララベルは頬も苺色に染めて声を零すのだった。
「サッフィ~、一緒にいちご~かり~ましょぅ~♪」
るんるんと、スキップしながら街にやってきたフリューリングスルフト=ティエラは――そこにサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブを見つけて誘っていた。
にゃ、と目を向けたサフィラは勿論と答えて。
「早速行こっ!」
二人で手を取り合い、踊るような足取りで農園へ。
すると――
「わぁ……! 苺がたくさん生ってるー!」
艶めく果実と甘酸っぱい芳香に、サフィラは瞳をキラキラ。
「今日はおなかいっぱい食べようね!」
「もちろんさぁ!」
フリューも頷いて、二人で苺を吟味し始める。
――と、そこでサフィラがふと気づいた。
「およ? おひとり様はっけーん!」
視線の先にいたのは、リーフェ。
家族でもある狼のヴェルトと共に、丁度苺狩りを始める所だった。
そのタイミングで――サフィラがやってくる。
「ヘイヘイ! そこの君っ! 良かったら一緒に苺狩りしなーい?」
「えっ……!」
古式ゆかしいナンパ的な口調に戸惑い、振り返ると……今度はフリューがすかさずバッと両手を広げ、退路を塞いでいた。
「囲まれてる……!?」
「逃がさないさぁ」
じりじりと近づくフリューとサフィラに、リーフェは観念。折角なので一緒に苺を楽しむ事に決めるのだった。
「あ、えっと……私はリーフェ。こっちはヴェルトだよ」
「うちはフリュー、よろしくさぁリーフェさん♪」
「サフィラだよ、よろしくねっ!」
自己紹介も済ませた所で、まずは近くの苺を皆で賞味。
すると溢れる果汁と、瑞々しい甘さに……三人は瞳を細めて「んー!」と至福の時間。
それからフリューは「そうだ」と思い立って。
「沢山いちご食べたひとが勝ち~! よーい、スタートさぁ♪」
「よーし! 大食いなら負けないよー!!」
サフィラも応じて、身体能力を活かしつつ――ももももっ、と軽やかに舞うように苺を次々頬張ってゆく。
「す、すごい……!」
リーフェは驚きつつも、負けじとヴェルトを向かわせ、サフィラをもふもふの虜にした。
「こっ、これは、もふもふ……」
「今のうちに――!」
リーフェがここぞと食べ進めると……フリューも黙ってはいない。リーフェと、ついでにサフィラの口にも苺をシュートしてリズムを崩しにかかる。
「んむっ!?」
「もらったさぁ!」
この好機に一気に苺をかき込むフリューだが――そこにもヴェルトの魔の手が忍び寄り。
「もふもふっ!? いつの間に……!」
フリューもまたもふもふの魅力に取り込まれて……三人は見事引き分けと相成ったのだった。
お腹いっぱい食べた後は――
「手作りのお土産なんてどうさぁ?」
「いいね、やってみたい」
という事で鍛冶屋で金属素材を購入し、彫金にチャレンジする事に。
「デザインは二人に任せるさぁ」
「んー、どんなデザインにしよう……」
サフィラが少々悩んでいると、リーフェもまた考え込んで。
「私、こういうデザインはあまり得意じゃないんだよなぁ……」
言いつつも、街を眺めて――
「苺っぽいのにしてみたりとか?」
「にゃ! いいね!」
という事でサフィラが、星に苺が絡みつくデザイン画を作ると……フリューが中心となって細工をして。
「出来たさぁ!」
三人お揃いの、可愛らしいチャームが完成した。
「えへへ、今日のお揃いの思い出さぁ♪」
「とってもかわいいねっ!」
サフィラが満足の面持ちを浮かべると……リーフェもまた頷いて。
「お揃いの思い出……後で日記に書いて残しとかないとね」
今日の出会いを、忘れずに記録しておこうと決めるのだった。
フラム・アニムスは苺狩りに勤しんでいる所。
途中、サフィラ達を見つけると……こちらに気づいたサフィラに笑顔で手を振りながら。
「さて、と。折角だし、苺本来の味も味わってほしいからね――」
お持ち帰りも可能という事で、心友と、その保護者の喜ぶ顔を思い浮かべながら……美味しそうな苺を見つけてはせっせと籠に摘む。
そうして全種を揃えると、ログハウスに向かって。
「よっ、と」
沢山採った苺を色別に煮て、三種のジャムを作り始めた。
「ん、煮ても綺麗な色だな……」
ピンクも黄色も、色味が失せず鮮やか。
色を全て混ぜたミックスジャムも作ってみると……瓶の角度で色合いが異なって見える、カラフルでトロピカルな逸品が完成。
「良さそうだ」
ついでにクッキーも焼いて、手製の箱に詰めて。
「……よし、完成!」
しっかりお土産が出来上がると……帰りしなに土産物店にも寄って。
「これかな」
苺の飾り付きのキーホルダーを三つ購入して――そっと先刻の箱に忍ばせて。
「うん」
後は軽やかな足取りで。フラムは街を帰路へと歩んでいった。
「ネム、今日はとってもいい所に行けるよ」
苺色の街へ入りながら――エリカ・プレトリウスはフードの中のリスに声を掛ける。
冒険者になってから負担をかける様になったネムを、労おうという思いだ。
するとネムは興味深げに顔を出すから……エリカは表情を和らげて農園へ向かった。
「あんまり美味しい思いしたら戻れなくなるかな」
それでも大丈夫だろう。
自分達は選り好みしたら生きていけない事をよく知っている。だからその温室に入り……艶めく苺を食べ比べし始めた。
「美味しい、ね」
紅は甘味が強く、白はまろやか、黄色は爽やかで。
マントは濃茶色の物にしてきたから、果汁で汚れる心配もなく。一つ一つの風味をじっくり味わっていく。
「……貴女のお母さんとわたしには木苺が一番のご馳走だったんだけどね」
言いつつ見ると、ネムは次々苺を齧りつつ……やがて貯蔵庫の如くエリカの懐とフードに溜めていく。
増える重みは、こちらの心模様なんてお構いなしで。
でも、いつもその気儘さに救われている。
「ドライ苺、買って帰ろうか」
ネムがチュチュっと鳴くと、エリカは柔く微笑んで。
爽風の中をまた歩み出してゆく。
果実の燦めく農園の一角に、キーゼとネーヴェ・グラヌローザはやってきた。
「私、苺狩りなんて初めてです」
甘い良い匂いが致しますね――と。
漂う甘やかさにネーヴェが穏やかに笑むと……キーゼはおやと目を向ける。
「初めてですか。確かに、どこででも簡単に出来る、というものではありませんからね」
ならば、と並んで歩み出して。
「今日は存分にお楽しみください」
「ええ」
期待の心を抱きながら、ネーヴェは早速苺を眺める。
すると艶めく紅だけでなく、眩い黄色や雪のような白色が目を引いて。早速白の粒を口に運ぶと――
「まぁ、とっても甘い! 真っ白ですし、もっと酸味が強いかと思いましたのに。キーゼさんも食べてみて下さいな」
言って口元へ差し出すと、キーゼはそのまま口に含んで。まろやかながら濃密な甘味を感じて頷いた。
「なるほど、熟していないような見た目ですが、確かに甘いですね……」
それからそっと視線を向けて。
「貴女のその白い指の方が、よほど甘く映りますが」
「……もう、相変わらずですね」
ネーヴェはそう応えながら、頬を仄かに苺色にしていた。
その後二人は摘んだ苺を手にログハウスへ。ネーヴェの教えで苺パウンドケーキと苺チョコを作る事にした。
「大丈夫です、混ぜて焼くだけですから」
言いつつネーヴェはキーゼに綿棒を持たせて。
「これで潰して下さいね」
「どの加減ですかね。すり潰してイチゴの名残を微塵もなくせばいいですか?」
「好みですけど……そうですね、今回は少し果肉感を残しましょうか」
キーゼは頷いて、指示通りに潰しすぎないようにして。生地も作って、混ぜ合わせて型に入れて焼いていく。
その間にチョコを湯煎で溶かして。
「こちらは苺をディップするだけです。ね、簡単でしょう?」
「ええ、確かに」
パウンドケーキが焼けると、二人で早速頂く。
するとパウンドケーキはふわふわで、苺の甘味と香りが乗っていて。チョコは濃厚で芳しい甘さが加わって美味で。
「ふふ、美味しく出来ましたね」
「そうですね。ついてますよ、ネーヴェ」
と、キーゼがネーヴェの頬についたチョコを指で掬って舐めとる。
ネーヴェはそれに少し恥ずかしそうにしながらも――また微笑んで。二人で早春の時間を過ごしていった。
「ユームタルトと言えば、同盟平野部の果物籠じゃないか」
そんな場所に視察に付き合えるなんてね、と。
愉しげに街を見回すのはヴィナス。ルーンス・ラグネルと共に並んで歩み始めていた。
(アレらはこちらに来られないことは確認してるしね――)
と、こんな機会だからルーンスは上機嫌で。
「楽しもう、にいさま!」
「ああ」
という訳で早速苺狩りへ。
まるで宝石のような、色とりどりの果実に二人で微笑みを交わして――ゆっくり進みながら、目についた粒を採ってゆく。
すると白は甘さと酸味のバランスが良くて、ピンクは桃のような香り。赤いものも品種で酸味や食感が少しずつ違って――どれもが美味だからルーンスは笑顔。
「ん、瑞々しいね――」
「ルーン、これ美味しい」
と、ヴィナスも好みの粒を見つける。
香りまで甘くて濃厚なそれは、酸味が好きな人には少しもの足りないかもしれないけれど。
「本当だ。甘くて美味しい」
ルーンスが言うから、ヴィナスはまた笑んで――自分も白やピンクを堪能した。
ヴィナスはこの農園だけでなく、街の各所で多種の苺を目にした事を思い起こす。
「日々品種改良する農家がいて、そういう農家と商会が協力し合ってるんだろうね」
「うん」
こんないい場所で、ヴィナスと思い出を作りつつ視察出来る。
それが最高の極みだと、ルーンスは素直に実感するのだった。
苺狩りの後はお土産探し。
「オカン男子指定の苺を買わないとね――」
ルーンスは呟きつつ、売り場にて苺を吟味。
店の人にも聞いて、美しい白とピンクのものを選んだ。
「これ、良さそうかな」
「こっちも決まったよ」
ヴィナスは艶めく真紅の苺を選んだ所。苺狩りで十二分に美味しさを実感出来たから、間違いないだろう。
二人は購入したそれらを麻袋に纏め、マジカルポケットへ入れる。
「これで大丈夫かな」
ひと仕事終えた気分で、ヴィナスはふぅと息をつく。
これで満足してくれるだろう、と。思い浮かべるとルーンスは何となく口を開く。
「にいさま、僕はアレよりカインに母親を感じてるけど、気のせいかな」
「実際、あの人より確実に母親向きだね。……本人に言ったら怒られるけど」
「うん」
黙ってよう、と。ルーンスも言って、二人で歩み出していくのだった。
その頃カイン・ステラは、カフェでスイーツを頼んでいる所。
程なくテーブルにやってきたのは――
「苺グラタン……苺のみとは贅沢だ」
カスタードを使った甘い香りが魅力的な逸品。
早速頂くと、濃厚な甘味に苺の甘酸っぱさが丁度良くて。
「リンゴではやったことあったけど、苺もいいなこれ――」
しっかりと味を確かめ、堪能してゆく。
「それから……」
他にもパフェにケーキにソルベと注文してあった。
パフェは可愛らしくも豪勢で、見た目も良い。ソルベはさっぱりとした爽やかな風味で、ケーキは王道の美味。
どれも適した品種の苺を使っているようで……カインはメモをとってゆく。
(二人に頼んだ苺で、お礼に作ってもいいな)
思いを馳せつつ、味を事細かに記録して。
マカロンにパイ、大福はテイクアウトして、マジカルポケットへ。
「よし。食べてばかりだと太るしな」
食後には、散策。
彩り豊かな町並みを眺めて楽しみながら……日が落ち始める頃には、ルーンスとヴィナスの姿も見つけて。
二人に軽く手を振り、カインはそちらへ歩んで行った。
「珍しい色のイチゴがいっぱいだねー」
農園の一角にて、アルマ・ヴァレンタインは苺狩りを始めた所。隣に並ぶエヴァン・ピオネロも、色彩と芳香に楽しげに頷いていた。
中でも目を引いたのは、薄紅のような淡い色の苺で。
「この色で……熟してるのですか?」
早速食べると、口一杯に甘酸っぱさが広がって。
「美味しいですよ!」
だからアルマへ嬉しいを一番に報告する。
アルマは「ふふ」と笑んで。
(美味しく食べるエヴァくんも可愛いなー……)
思いつつ、自分もその繊細な甘味を楽しみながら……白にピンクと、珍しい色も味わって。
「あ、これキレイー」
特に注目したのが、白色だけれど仄かに青みがかった粒。上品な酸味と、深い甘味が快く……かぷかぷと食べてはご満悦。
そんな様子に――
(アルマは苺に負けず可愛いです)
エヴァンもまた思ながら。食べては摘んで、手籠は二杯目。黄色や桃色の美しい粒と、味の濃い真紅の苺を沢山採っていた。
勿論、アルマも白青やオレンジなど、インパクトの強い色を中心に籠いっぱいで。
「沢山採れたねー」
「はいっ!」
二人は幸せな重みに微笑み合うのだった。
苺狩りの後は、市場へ。
「目移りしちゃうねー?」
「そうですね……!」
頷くエヴァンは新鮮なリンゴやキウイ、スターフルーツも購入。マジカルポケットへ収納していく。
これだけで食べきれないくらいだけれど……ケーキ店や喫茶店にも惹かれてしまう。
「パフェ、デコケーキ、苺ドリンク……全部美味しそうです」
「本当だねー」
アルマは言いつつも、そうだと提案。
「材料もたくさん買えたし、お家に帰ったら食べたいの作ってあげるよー」
「本当ですか……!」
エヴァンは美味が楽しみなだけでなく、アルマが作ってくれる事が何より、嬉しくて。
「えと……苺プリンもお願いします……。それから裏ごしムースで苺ティラミスも――」
ごにょごにょと言うと、アルマはそれにも笑顔。
「何でも大丈夫だよー。お家でなら時間を置いて寝かせるのとかもバッチリだし、楽しみにしててねー?」
「はい……。ぼくは間違いなく欲張りですね――」
馬で相乗りして帰路へつきつつ……エヴァンはそう笑みを浮かべるのだった。
可愛らしい店内に、甘い香りが漂っている。
「おぉ……!」
苺狩りを楽しんだ後、フロマーシュ・ダイヤドロップと共にカフェに寄ったライナ・フレイヴァルツは――ディスプレイされている商品に瞳をキラキラと輝かせていた。
「マーシュ、凄いぞ苺をふんだんに使ったスイーツが沢山あるぞ!」
「ええ、本当ですね……!」
フロマーシュも応えつつ、声が華やぐ。
既にドキドキとしているけれど、ライナが目移りしている姿にもわくわくして。自分も一緒になって迷ってしまう。
「どれも、美味しそうですね――」
「ああ、どれを食べてみようかな……やはり果実沢山の艶々なタルトか? いやあの美味しそうなショートケーキも捨てがたい……」
ライナは悩みつつも、ボリューム感に惹かれてタルトを注文。紅茶も共に頼み、シェアして一緒に食べる事にした。
早速品がやってくると――
「目の前で見ると一段と良いな」
濃密な深紅と艶めき。
そして芳醇な芳香に、食べる前から魅了されつつ――ライナは一口。
「……ん」
もぐもぐと味わって、ごくん。
口の中に溢れる果汁と、艶の源であるナパージュの甘さ。
そして香ばしくもさっくりとした生地の相性に……ライナはクールさを装いつつも、頬が緩まないではいられない。
フロマーシュもまた甘酸っぱい美味にほわほわとした気分になりつつ……ライナの表情にもまた幸せな気持ち。
一緒に素敵なひとときを過ごしている、そう実感出来るから――笑顔もドキドキもいっぱいで。
「美味しいですっ!」
それから頂く紅茶も、スイーツとバランスが取れるように深みのある芳しさで。
「うん」
ライナも一口啜って、温かさと美味に癒やされる気持ちだった。
「やはり人気なスポットだけあって、提供されている物も至高の逸品だな」
「そうですね……!」
フロマーシュはこんな美味しいものと共に、ライナと時間を送れた事が喜ばしく。
「ここは毎年、美味しい苺が出来るみたいですから……」
「ああ、来年も来れるといいな」
ライナが向けてくれる視線に、フロマーシュは笑顔を咲かせて。
「はいっ、ぜひ!」
今からその時が待ち遠しい。
そんな気持ちで……スイーツのおかわりも考えながら。甘いひと時を暫し、二人で過ごしていった。
苺のアーチを潜って、気分を華やがせて――サシャ・テーリングと梅・雨陽は共に苺狩りへとやってきていた。
「イチゴ、たくさんネ!」
「ええ、いい香り――」
頷きつつ、サシャは早速深紅の苺を一口。
新鮮な甘味を楽しむと……雨陽もまた同じ色の粒を摘んで、舌鼓。お手頃サイズでムグムグ、ムグムグと――次々に食べ進めてしまう。
「ねぇ、あの列の……綺麗で大きそう」
と、サシャは先へ。遠くほど綺麗に見えて……あちらこちらと苺を採っては食べ歩く。
雨陽も並んで進みつつ――美しい粒を見つければ。
「見て見てサっちゃん、このイチゴぴかぴかヨ!」
「本当だ。形良いわね、ザ・苺って感じ……それじゃあうよたん、私のこれは?」
行ってサシャも艶めく粒を見せれば、雨陽も「ワオ」と笑みを作って。互いに味わって、心ゆくまで苺を堪能してゆく。
その後二人はカフェへ。
サシャはお茶で休憩、のはずだったけれど。
「おかしいわ……」
メニューを見る内に別腹開放。スイーツを食べたくなってくる。
「うよたん……シェアしない?」
「確かにシェアすればいっぱい食べれるネ。サッシャん天才~」
雨陽の言葉にサシャはクスクス笑みつつ……カスタードクリームと苺のタルト、苺パイ、苺とチョコのアイスを注文。
品々がやってくると、二人は早速実食。
「苺パイに苺アイス、乗っけちゃおう」
雨陽がサクサクで蕩ける、そんな贅沢なコラボを楽しむと……サシャもタルトの濃厚な甘さを味わって。勿論シェアして互いに楽しむ。
それから雨陽は苺紅茶で芳醇に、サシャは苺ソーダでしゅわしゅわと喉を潤して。
「満腹で幸せね……。最後は乾杯しましょ」
と、サングリアのグラスを合わす。
雨陽はそっと一口飲んで。
「ン~、美味しい」
花束のような香り高さに、程よく含まれた苺の甘味を味わう。
「サっちゃんの髪の色に苺色ってピッタリネ」
「ふふ、ありがとう」
と、先刻の食べっぷりも嘘のように……サシャも穏やかな笑みで、優雅な大人時間を楽しむのだった。
その後は苺大福をお土産にして。
「ねえねえ、アクセサリー見に行こうヨ。ワタシ、サっちゃんにぴったりの選んじゃう!」
「本当? 嬉しいな~」
なら私はうよたんに似合うのを選ぶわね、と。
サシャは応えて、雨陽と仲良く歩き出していった。
「苺狩り、楽しかったですね」
カルフ・オルヴォの隣に並び、セオ・ウルジオは苺色の街を行く。
「あんなに味が違うなんて驚きです」
「そうだな」
頷くカルフも、始めは“もう少し食いでのあるものを”と思っていたけれど……想定外の美味に今は満腹。
飯は少し歩いてから、と景色を眺めて進む。
ユームタルトは細かい所にまで手が入り、町を挙げて苺を推しているのが伝わって……空気が何とも心地良い。
セオもお土産を見つけると色々と目移り。
「苺柄の茶器、素敵ですね。向こうにはアクセサリーも……」
あ、と。その途中で見つけたのは大きな苺のクッション。
(いいなぁ……)
惹かれてついウロウロ、視線を注いでしまう。
「何だ欲しいのか?」
「あ、いえ――」
カルフが言うと、セオは視線を離して。子供っぽいと思われてないかと上目でカルフを窺ってみたりする。
けれどまたちらちらとクッションを見るから、カルフはそんな様子が可愛くて。微笑んで見ていたけれど――
セオはそのうちに持てないからと諦めて。
「先にカフェに行ってますね!」
言って走っていった。
「ん……」
カルフは見送るが……一人になると店員へ声をかける。
「これを持ち運び易い様にして貰えるか?」
セオも道中、別の店で足を止めていた。
「あ、このイヤーカフス……綺麗だな」
黒地に苺の葉模様のそれが、カフさんに似合いそう、と。
思うとすぐに購入。それからカフェへと向かった。
後は席を取り、いつ渡そうかと思案していると――
「土産だ」
声と共に無造作に袋が置かれる。
見るとカルフが居て……袋にはクッション。
「お勧めランチを頼む」
「……わぁ――」
セオは驚きながらも、嬉しさに頬を緩ませた。
「これなら持てます! 大切にします」
それから慌ててカルフに屈んでもらって。
「何だ?」
「僕からも、プレゼントです」
言ってそっとイヤーカフスをつけてあげる。
カルフは、ほぉ、と声を零して髪をかきあげた。
「良い品だな、似合うか?」
「はい、とても」
セオが心から言うと、カルフは礼を述べて――ゆっくりと食事して。
「帰るぞ」
カルフが手を取ると、セオもその手を握り返す。
後は、カルフは何かを求める訳でなく。セオが幸せいっぱいに嬉しそうな顔をしているのを、見ているのがただ楽しくて。
自身も少し表情を和らげながら……二人でゆったりと、甘く香る道を進んでいった。
「シルヴィア、パンを焼いたことはあるか?」
苺ジャムとミルククリームを入れたパンを作ろうと思うんだが、と。
エル=バ=ノイアンはログハウスへ歩みながら、シルヴィア・A・カペルへ尋ねていた。
シルヴィアは緩く首を振りつつも、美味しそうな響きに興味を惹かれるから。
「作るなら手伝おう。私で良ければだが」
「そうか。何、これも材料を混ぜて捏ねて寝かせて、焼くだけだ」
言ったノイアンは早速一角につき、小麦粉等の材料を用意する。
「これに湯を混ぜて……」
それからしっかりと捏ねてゆく。
「中々、力もいる作業だね――」
シルヴィアも教え通りに、叩いては折って、整えて。いい頃合いで、ノイアンが生地を小さく丸くした。
「この生地を休ませる。これで膨らむんだ。面白いだろ?」
「ああ。何とも不思議だ」
それから発酵が進むのを待って――問題ないと見れば、ノイアンは生地を再び取り出して。
「……うさぎの形にしてみるか」
切れ込みを入れて、耳を形作る。
シルヴィアも微笑みつつ手伝った。
「可愛らしいね。後は?」
「表面に卵を塗って、窯だ」
「卵?」
「ああ、艶出しにな」
ノイアンが卵を溶いて刷毛で塗ると、シルヴィアは成程と自分も助力。
「確かにつやつやしているパンの方が美味しそうだ」
それが済むと窯で焼き……焼きたての狐色のパンに、ノイアンは口金を刺していく。
「これでジャムとクリームを入れるんだ」
「この可愛らしいパンに刺すのは、ちょっとかわいそうな気もするけれど……」
必要な事ならとシルヴィアもチャレンジ。
ただ、中々繊細な作業で――
「うまくいかないか? 一緒にやってみよう」
ノイアンが手を添える形で、ようやく成功。
(……共同作業は気にしてないんだろうね。全く、鈍感なんだから)
シルヴィアは間近なノイアンに思いつつ……完成すると満足の心持ち。
ノイアンも出来映えに頷いていた。
「上手にできるようになったら、家族にも振る舞うといい。きっと喜ぶ」
「家族か。私がパンを作ったなんて言ったら皆驚きそうだ」
シルヴィアは笑みを零す。
けれどそれはまた別の話。今、ここに居るのは冒険者のシルヴィアだから。
「……ほら、あーん」
差し出して、ノイアンに食べさせてあげる。
それは甘く、優しい香り。苺色に染まった時間は今、二人だけのものだった。
「苺……いいわよね、苺」
ルベア・ベルニは苺のアーチを見上げながら、街へと歩んできた。
その眺めだけでも楽しめる、けれど。
「ルベアさん! いちご狩りができるんですって、いきましょう!」
ぱたぱたと、そこへやってくるのがミア=リゼル。
「紅色いちご、桃色いちごに白色いちご……それから黄色のいちごもあるそうなんです!」
声音はわくわくと華やいだもので。ルベアも黄色は見た事がないから――
「気になるわね、それじゃ、行きましょ」
「はいっ!」
という訳で農園へ。
そこは色味豊かな苺に満ちていて、ミアは瞳を仄かに煌めかせる。
「綺麗ですね……!」
早速傍のひと粒を摘んで口に運ぶと、瑞々しい甘味に感嘆の声。
「ルベアさん、おいしいですよ――!」
「ええ、本当ね」
ルベアも真紅の苺を食べ、深い甘さに頷いている。
それから他の苺も摘みつつ歩み始めると――
「あっ、黄色の苺、あったわよ」
「わぁ、本当に黄色……!」
それは明るく濁りのない黄色で、爽やかな香り。
一つ味見してみると……バランスの良い甘味と酸味が清涼感を運ぶ。
「おいしいです。レモンも素敵ですが苺も素敵ですね……!」
「同じような色でも品種も違うのね。こっちは甘いわ」
ルベアも頷きつつ、気に入ったのをまた摘んでいた。
「私はどっちかっていうと苺は酸味は抑えめの方が好きだけど、ミアさんはどう?」
「私も酸味は少なめのいちごが好きです」
熟しているのって魅力的ですよね、と。
ミアは色濃いひと粒を見つけて、クリームをつけて。
「はい、あーん」
「ん……」
ルベアが口で受け取ると、ミアは微笑んだ。
「ふふ、おいしいですか?」
「うん、美味しい」
ルベアは応えつつ……一人じゃないから尚更美味しいのかもしれない、と。
実感と共に、自分も採った苺にクリームをつけて。
「お返しよ。あーん」
「ん……おいしいです」
もぐもぐと食べるミアの、そんな幸せそうな顔を見て――
(こっちも幸せな気分になる、なんて言ったらどんな顔するかしらね……)
思いながらも、もう一つ食べさせてあげつつ。
「向こうのも美味しそうよ」
「行きましょう!」
二人でまた新たな苺を求め、歩んでゆく。
ウォーゼルはミニコボのチョコを連れ、パルドは猫のショコラを連れて――二人と二匹、仲良く苺狩りに訪れた所。
「苺っていっても色んな種類があるんだね」
「どれも美味しそうだな――!」
ウォーゼルがわくわくすれば、パルドもショコラと一緒に尻尾をピンと立てて。まずは真っ赤な苺を採って、籠に入れてゆく。
「こっちの色のもいいのか?」
「うん。全部いいみたいだよ」
ウォーゼルは応えつつ、チョコが採りたそうにしているのを見て……苺の茎を支えてあげる。
するとチョコはぷちりと採って、その苺を抱えてご満悦。
「上手に摘めたな」
パルドも微笑んでいる、と。
ふと、ショコラが生っている苺を囓ろうとしているのを見つけた。
「って、待ったショコラ! 採ってやるから」
慌てていると、ウォーゼルが摘んだ苺の一つを掌にのせて。
「はい、どうぞ」
それを見たショコラは……早速その苺を齧り、掌を舐めて満足げなのだった。
一段落すると、ウォーゼルとパルドも苺の味見。真っ赤なものは瑞々しくて、白いものはまろやかで。
「これ、さっきのと比べてすごく甘いっ!」
一層色濃いものを見つけると、ウォーゼルは思わず尻尾も揺れて。嬉し気に一つつまんで差し出した。
「パルドも食べてみなよ。ほら♪」
「ん……本当だ、あまいっ!」
受け取ったパルドも、目を輝かせて……もぐもぐと堪能するのだった。
その後はお土産探し。
苺形のクッションを見つけると、ウォーゼルはそこで足を止めて。
「この辺、どうかな?」
「良さそうだ。大きいのにしよう」
パルドはチョコが寝られる大きさか、体長に合わせてみつつ……良さそうだと思えば早速購入した。
『わんっ♪』
ぽふっ、と。
チョコはパルドの持つそれに抱きついて、嬉しそうにごろん。
一方、足元でもショコラが不思議そうにクッションを突いていて。
「ショコラも乗ってごらんよ」
と、ウォーゼルがそっと抱えてチョコの隣へ乗せてあげると……ショコラは嬉しげに鳴きつつ、チョコと戯れるのだった。
「いつも二人一緒だしね」
いいものが買えた、とウォーゼルは満足。
後はカフェに立ち寄って。
「何にする? オレ苺大福ってやつがいい!」
「俺も苺大福がいいな♪」
二人で笑み合うと、一緒にそれを買って――甘い香りの風に吹かれながら、帰路へと歩み出してゆく。
「わあ……! いちご、いっぱいだ、ね!」
苺色に満ちた農園で、サラは隣のだわへ笑みを向けていた。
だわも頷いて、感心の声。
「これだけの果物が全て食べ頃とは……改めて、農業はすごいな」
「えへへ、たくさんあって、どれから食べようか、悩んじゃう……」
サラが歩み出すと、だわも続いて――早速苺狩り。多様な品種に目移りするサラを見つつ、だわはふと記憶を辿る。
「そういえば、苺は果物じゃなく野菜だと誰かが言っていたか」
「そうなん、だ。ひとつ、賢くなった、の」
「ああ、何が違うかは判らないが……」
呟いていると、サラは真紅の一粒に目を留めて。
「これとか、おいしそう!」
優しく採って口へ運んだ。
「いただき、ます。……んんん、おいしーい!」
「……美味そうに食うよな」
新鮮な甘味に瞳を細めるサラに、だわもどことなく嬉しそうな素振り。
それから自分も淡いピンクの苺を摘んで。
「これとか、小ぶりだが美味いんじゃないか。ほら」
「わ、ありがとう、だわおにいちゃん」
サラは嬉しそうに、それもかぷり。
「……うん、おいしい」
華やかな甘味を楽しんで。自分もお返しにと、白い苺をぷちっと摘んで差し出した。
「……ね、ね、これも、おいしかった、よ」
「ん。そうか。なら――」
と、だわはそれを口に運んで……まろやかな甘さを味わった。
「どう?」
「ああ、美味いな」
「えへへ、そうでしょ?」
言ってサラが表情を和らげるから、だわも頷きを返して歩んでゆく。
「そういえば、お前は苺にミルクを掛ける派なのか? 蜂蜜を加えて煮詰めたやつもあったと思うが――」
「ミルクはねぇ、うーんと……かけても、かけなくても、どっちも美味しい、よ。いちごミルクも、好き」
「そうなのか」
相槌を打ちながら、だわはふと手を伸ばした。風で飛んできたらしい苺の葉がサラの頭に乗っていたのだ。
故に軽く撫でるようにして、それを払うと――
「……ふえっ!? ど、どうしたの?」
「ん? ……何でもない、気にするな」
だわはそれだけ言って歩みを続ける。
「……そ、そうなん、だ……?」
サラはそう返しつつも、自分の頭に手を当てる。
(うう、急に撫でてくる、から……びっくり、しちゃっ、た……)
それから、まだドキドキとした気持ちは残ったまま。慌てるように、だわへとついていくのだった。
訪れた農園の景色に――アンネエルカは目を輝かせていた。
「まあ、宝石箱みたい!」
「これ全部食べていいのか!? 全部か!?」
と、隣のアルフィー・リッパーも尻尾を全開でパタパタ。期待の表情を隠せない。
そんなアルフィーに、ナハト・シュライバーは一つ息をついて。
「食べるのは自由ですが、節度をもって、ですよ」
「分かってるって!」
言いながら早速、アルフィーは甘そうなひと粒を口へ運ぶ。
すると溢れる果汁が美味で。
「うまい!」
「本当? ……ん、とっても美味しいわ!」
続くアンネエルカも新鮮な甘味に笑みを零す。
その間にもアルフィーは次々と頬張り始めるから――
「こらこら、もう少しよく味わいなさい! あっ、ほら、果汁を垂らして……!」
ナハトはお説教しつつアルフィーの口元を拭ったりして。
仕方無しと引率していく姿に……アーシェル・G・クラインは思わず苦笑を零していた。
「ナハトがこんなに世話焼きだったとはな。なんつーか……母親みたいだ」
「いえいえ、僕はただ当たり前の事を――」
と、ナハトが言うのもつかの間。
アルフィーも「よーし」と頷いて。
「誰が一番デカくて美味そうな苺を見つけられるか競争しようぜ!」
「おお!」
アルフィーは熟してそう色の濃い粒を沢山発見。口いっぱいに頬張って。
「んー! うまい! お前らも早く食べないと無くなるぞ!」
と、言いながらも皆の分はきちんと残してある。
アーシェルはそれを味わいつつ……ピンクに白に黄色と各色で美味しそうなものを見つけていた。
爽やかな甘味のものを特に気に入りつつ……途中から肉が食べたくなってきた事もあり、特に大きな粒は三人へ。
追ってきたナハトはそれを受け取りながら。
「全く……貴方達幾つですか!? 子どもみたいなことしない!」
「あら、素敵なものにはしゃぐのに歳なんて関係ないわ」
アンネエルカは声音に花咲かせ、見つけた苺を一口。ぎゅっと甘さの詰まった小粒なそれがお気に入りだった。
勿論、二人が見つけたものも実食。幸せいっぱいに味わった。
もりもり食べる皆に、ナハトはため息しつつ。
「もー、この後カフェに行くのにそんなに食べて……お腹が痛くなっても知りませんよ?」
「大丈夫だ! 甘いものは別腹だ!」
アルフィーが言って勧めると――ナハトも熟した苺に舌鼓。
「確かに、どれも美味しいですね」
果肉が固めな、酸味と甘みのバランスのよい粒に美味を感じながら……皆と共に甘い時間を楽しんだ。
その後はカフェへ。
「凄いたくさんのスイーツがあるな……!」
アルフィーがメニューに目移りしていると、アーシェルも迷った末に提案。
「皆で全メニュー制覇しようか」
「それなら、私は山盛りパフェを!」
「では僕は苺とカスタードのタルトとマカロン、苺オレで……」
ナハトが注文すると、アーシェルもソルベとサングリアを頼み……アルフィーも気になったものを幾つか頼んだ。
早速品がやってくると――
「アンネのパフェ、豪華だな」
アーシェルがそれを見て感心。苺のアイスに、クリームを練り込んだクッキー、ワッフルに、ピューレのきれいなムースの層もあって。
はむりと食べたアンネエルカは、幸せな表情。
「とっても美味しいわ……!」
「こちらも美味ですね」
と、ナハトが頂くタルトは艶々の苺が美しく……カスタードの甘味と相性抜群。
苺オレもまろやかで、上機嫌で尻尾を揺らして堪能するのだった。
「こういう季節にソルベもいいもんだな」
と、アーシェルは果汁の風味を含んだひんやり感を楽しんでいる。
サングリアは上品な苺の香りが芳醇だ。それを味わうアーシェルを横目にしつつ、アルフィーは大福を手にドヤっと笑顔。
「シャルガネのモチ! これしってるか! 食べるとみょーんって伸びるんだぞ!」
「アルのほっぺたも餅みたいに伸びそうだよな。ちょっと摘ませろよ」
と、アーシェルはアルフィーの頬もみょーんと伸ばしつつ。アルフィーがおすそ分けすると、皆もまたシェアして楽しむのだった。
一頻り味わうと、アーシェルは改めてメニューを見る。
「来られなかった二人に土産を買っていくか」
「いいですね。ただ――」
と、ナハトはぽつりと気持ちを零す。
「これだけの美味ですし、色々と大変なレイウェスト殿下にも食べて頂きたいですね」
「殿下が甘い物好きなら喜んでくれそうだよな。ナハトが作ってやるのはどうだ?」
アーシェルの言葉に、ナハトは料理を見下ろした。
「確かに、再現したいとは思っていました」
「どんなスイーツがあるのか覚えておけば、来れなかった二人にも後で色々作ってやれるんじゃないか?」
アルフィーが言えば、アンネエルカもぽんと手を合わせる。
「そうね! 楽しみは共有出来たら嬉しいし」
苺のお菓子を自分でも作れたら素敵だから、と。
参考に出来るようにと、皆で買えるお土産は買って――ここだけの味はまた来年、と。
「きっと皆でまた遊びに行きましょうね!」
アンネエルカの言葉に三人は頷き……苺が香る風の中を、歩み出す。
小ぶりで鮮やかな紅は甘く、色が薄めなものは酸味があって。
「どれも、美味しいですね!」
エルナ・クルプファルツはそんな美味を楽しんで苺狩り中。
あっと気づく先にはピンクや黄色の苺があって。
「とても可愛らしいです――!」
見目だけでなく、優しい甘味と爽やかな甘酸っぱさも楽しんだ。
そして採取もしてログハウスに向かうと――料理だ。
まずはケーキを作る事に決めると……生地とクリームは甘く仕上げつつ、果実は酸味と風味のよいものを選んで全体での味を調える。
並行して煮るジャムには、甘くて香りのよい苺を使用。砂糖はケーキにたっぷり使った事もあり、こちらは果実の甘味を主役にした。
「最後はこれです!」
と、残った果実を氷と一緒に潰し、シャーベット状のジュースにして完成。
「では頂きます!」
実食すると……ケーキは生地ふんわり、クリームはなめらかで、すっきりした酸味の果実と最高のバランス。
ジャムもバゲットで味見すると――果実感の強い美味。
ジュースも果肉の食感が快く。
「ふふ、至福のひとときです!」
春を待つ風に吹かれ、エルナは幸せな笑みを浮かべていた。
早春の香りに、瑞々しい甘さ。
苺狩りにやってきたベルク・オスマットは、そんな美味を堪能しつつ歩んでいた。
「ふむ」
と、果実の質の良さに、ある思いがもたげてくる。
「ジャムなら日持ちもするしな――」
殿下や将軍たちへの土産にちょうどいいか、と。
今のヴィントでは甘味の類は貴重だろうし……少しでも安らいでもらえるのではないかと、そう思ったのだ。
という訳で早速ベルクは苺を手にログハウスへ。
たっぷりの苺を煮立て、出来たジャムを瓶詰めにした。
「うむ」
それをヴィントへ発送する事にして――後は商店へ。嗜好品の傾向や需要を調べ……帝国復興のための財源に使えないかを精査する。
「成程」
結果、やはり希少価値のあるものは素直に欲されているらしい。
特にユームタルトでは、樹海で発見された食べ物や植物が人気だった。という事で、それらも出来るだけ入手の算段を立てて。
「今は殿下の影響範囲は狭いが、いずれは帝国全土を統べられるのだからな――」
その財源を得る為に、と。
ベルクはそれらもまたヴィントへの運搬を手配するのだった。
「さて、と」
沢山の苺を採ってきたアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトは、ログハウスで料理を始める所。
まずはしっかり泡立てて作った生地を窯で焼いて、スポンジケーキに。
「あとは――」
クリームと共に、カットした苺を花のようにあしらってデコレーションケーキの完成。
「イチゴを使ったスイーツと言えばやっぱりこれだろうな」
その見事さとビッグサイズに、子供達の注目も集まる。
だからアルベルトは皆へと大盤振る舞い。
「さあ遠慮なく食べてくれ!いくらでも作るぜ!」
『わぁ、すごい!』
『美味しい!』
甘々なクリームと苺に子供達は大はしゃぎ。好きなだけケーキを食べられる……そんな天国に皆が笑顔であった。
「作り方を知りたいのか? なら――」
と、興味を持つ子供達には生地作りから教えてあげて。
「そうそう、しっかり泡立ててな」
そこにも皆が集まってくるから、暫し料理教室。
焼き加減や、苺の切り方も見てあげて。
『出来た!』
『きれい!』
出来たケーキを、また皆で実食。
和やかで、賑やかな時間が流れていった。
「色々あるなー」
サイラスはカフェでメニューを選定中。
まずは苺は外せないからと、タルトにケーキ、ムースも頼んで食べると――
「成程」
タルトはしっとり生地と果実が相性抜群。
ケーキはクリームがまろやかで、ムースも優しい舌触りが快い。
更に、苺だけでも舌が判らなくなりそうだからと、注文してあった紅茶も啜って。
「やっぱり甘味と合うな」
香り高さと共に、程よい渋みが口の中をリセットしてくれた。
スターフルーツのケーキも頼むと、こちらは黄金色が眩しく――すっきりした味わいがまた苺と違った魅力で。
「うん」
甘いものは別腹と、次々に胃に収めていった。
後はジャムをお持ち帰りして――
「この辺も良さそうかなー」
ドワーフを始めとする同業達の土産にもと、リキュールも買っていく。
鍛冶屋といっても女性もいるし、甘いもの好きもいる。だから多めに仕入れて――後は自分の為のものもゲットして。
「じゃ、他の店も寄っていくか」
歩けばまたスイーツ店や市場が見えるから……花より団子と、サイラスは街を巡っていった。
「わあぁあ、苺づくしですね……!」
シェルリア・リトヴァールは瞳を煌めかせて苺の街を行く。
仰げば小さな果実が可愛らしい苺のアーチ。
見回せば苺の鉢と飾り物が目について。
「どこ見ても苺です、可愛いー!」
心躍らせながら――勿論味も楽しみたいからとカフェへ。
「メニュー制覇……はちょっと無理ですけど――」
タルトとショートケーキは必須だから注文し、早速実食。
すると艶めくタルトは甘々で果汁が溢れて。ケーキもたっぷりのクリームと果実が得も言われぬ美味だった。
「んー! 美味しいです!」
これだけでも中々の量だけれど――
「パフェも気になりますね……!」
迷った末に注文。アイスやワッフルと多彩な味を楽しんだ。
「ああ、何で私の胃袋はひとつしかないんでしょう!」
お腹いっぱいになってしまうのは嬉しくも悲しいけれど……それでもお土産選びもまた楽しい。
マカロン、ジャムと可愛らしいものを購入すると――
「パイも美味しそうですし、これは……いちごだいふく?」
試食でモチモチさを楽しむと、それも気に入って購入。
「とっても楽しくて美味しかったです!」
来年にもまた期待を込めて……シェルリアは上機嫌な足取りで歩んでいった。
甘い匂いと、楽しげな雰囲気に惹かれ――マリィ・スノードロップは苺色に染まった街を歩んでゆく。
「きれいな街並みですね……」
見惚れながら、まずは農園にて苺狩り。
ジャムを作りたいから、適したものを探す事にした。
「完熟してそうな物の方がいいのかな……?」
と、真っ赤でツヤツヤな粒を見つけて。
「美味しそう……」
もぐ、と食べると、甘い果汁が溢れ出して美味。
それからもぐ、もぐ、と。ジャム用のを決めるまでに結構な数を口に運んでしまったけれど。
「いえっ、旬の苺は生で食べるべきなのです!」
言い聞かせるように、またはぐはぐと頬張ってゆくのだった。
その後、苺を手にログハウスに向かうと――そこへ苺狩りを終えたアステルがやってきた。
マリィの準備を見て、アステルは話しかける。
「何か作るの?」
「ええ、ジャムを……」
「わぁ、美味しそう。私はクッキー!」
言ってアステルは準備しつつ……籠の中、自分の採ってきた沢山の苺に改めて幸せな気分。
「美味しそうだし、形も可愛いし……何より色が良いな♪」
折角だからと素のままで一粒食べると――
「ん~美味しい! やっぱり苺サイコー!!」
爽やかな瑞々しさに笑顔が零れるのだった。
それからアステルは果汁を練り込んで生地作り。
形はシンプルでも良かったけれど、思いついて苺形にして。葉にあたる部分はドライフルーツの粉末を使い、しっかり緑色に。
「楽しいなぁ……」
久しぶりのお菓子作りで、周りの空気も楽しいからか。アステルは呟きつつ、軽やかな手さばきで作業を続けてゆく。
そんな楽しげな様子に――こちらも苺狩り後に歩んできたナキルが気づく。
「ここは……何か作ってるのか?」
「みんな、好きなものを作ってますよ」
わたしはジャムを、と。
答えたマリィは丁度、ヘタを取って潰した苺をお鍋に入れている所。
その苺に対して砂糖を三割の分量で入れて……レモン汁も加えてことことと煮てゆく。
ナキルは興味深げに見ていた。
(苺って、料理するモンなのか)
苺と言えば、採って、食う。
そういうモノだと認識していた身としては、新鮮な眺めだ。
「なるほどな――」
折角だから見聞を広めるのもいい、と。
ナキルは暫し学んでいく事にする。
(アイツも甘いの好きそうだったしな……)
という訳でスタッフに教えて貰いつつ、生地をこねて型に流し、ケーキを作ってみると……そのタイミングでアステルのクッキーが焼き上がった。
アステルはそれを大好きな兄にも持って帰るつもりだから……完成度に満足の笑顔だ。
「うん! 良く出来たかな」
「こっちも良さそうです……!」
マリィもジャムの火を止めると、熱いうちに花の意匠が美しい瓶に詰め替えて。
「きらきらジャムの完成っ……!」
「改めて考えると、ジャムってのも料理なんだな」
学びを得た気持ちで、ナキルもまた自分で作れるように工程をメモしつつ……自身のケーキもまた焼き上げた。
「形にはなったか」
そして味見の段になると……アステルは二人へクッキーを振る舞う。
「良かったら一つどうですか?」
「いいのか? じゃあ、このケーキ食うか?」
「ジャムも少し、どうぞ……!」
という事でそれぞれシェアして実食。
クッキーはかりっとしていて苺が優しく香り……ジャムは甘やかで芳醇。ケーキもしっかりと美味で……皆で甘く美味しい時間を過ごしていった。
「とても良い香りがするね」
歩む先に見える苺と、そこから漂う芳香に……ルーシカは楽しみな気持ちで、言葉と共に笑顔を浮かべていた。
農園にやってきたふしぎ亭一行は、これから苺狩りを始める所。
アルラ・ニグラスも頷いて――垣間見える苺の種類に、ほんわかと笑みを見せる。
「こんだけ色々な苺があるのは新鮮でいいわね~。さ、行きましょ?」
言って歩み入ると……後ろのゴルバルティアはどこか遠慮がち。こういう可愛い系の場所が自身には似合わぬと思っているのだ。
それでも鼻孔を擽る魅力的な香りに、知らず尻尾を振っているから――
「さぁ、皆で選んで、摘んでいこうよ」
ララベル・サン・ディーベルは籠を片手に、そんなゴルバルティアの背を押して。早速中へ入っていった。
テュリンも苺に満ちた眺めを見回す。
朝露に燦めく果実はどれもが美味しそうだけれど。
「でも折角なら、甘いものが良さそうね――」
言ってよく熟れた紅色の粒を選ぶと、優しく採って一口。
「ん……美味しいわ」
じゅぷっと弾ける果汁と、芳醇な甘さを楽しんだ。
「色の濃いものは、甘味も強いみたい。ほら、ベル、あーん」
「あ、あーん」
少し顔を赤らめつつ、ララベルは味見。
「ほんとだ。甘い……!」
思わず顔をほころばせると……別の色も試しにと、濃い黄色をあむり。爽やかな酸味と共に、こちらも強い甘味だった。
「これも美味しいよ。あーん」
と、今度はテュリンに返してあげながら。
「ほら、アリエッタも」
言って差し出すと……隣のアリエッタもあーんと口を開けて受け取る。すると瑞々しい美味に、アリエッタは瞳を細めて。
「美味しー」
上機嫌に自分もまた美味しい粒を探す。
すると鮮やかなピンク色の粒を見つけて。
「わぁ、これキレイ」
「本当ね」
共に見て回っていたイル・シャーリィもその色合いには目を引かれる。見回すと、濁りのない白や、オレンジ色のものもあって。
「この辺りはカラフルね」
「全部味わっちゃおう」
アリエッタは興味深げにピンク色を一口。赤色よりも優しい甘さに舌鼓を打つ。
ルーシカもそこへ歩んできた。
「色によっても味が違うんだね」
と、賞味するのは白色。まるでミルクをかけたようなまろやかな味わいに、感心を浮かべつつ……オレンジ色のトロピカルな風味にも笑顔。
皆がそこで味わうので、ゴルバルティアもついてくるけれど――
「うぅ……」
その辺りは周りよりも更に小さな粒なので、力自慢なゴルバルティアは恐々。触れるのもためらいがちだ。
「苺って簡単に潰れちゃいそうでなんか怖いな……」
「なら、食べさせてあげる」
ほら、と。そこでララベルが苺を差し出してくるから……ゴルバルティアはびっくりしつつも反射的に口で受け取る。
「ん……美味い!」
と、新鮮なジューシーさに、思わず声も零れた。
それから更に、赤だけでなく白や黄色を味わって。
「確かに、どれも味が違うな……!」
「実際、これだけ色んな種類があると面白いわね」
と、テュリンは色や大きさ別にして籠に摘んでいく。
勿論甘いもの中心だけれど――
「甘味が少ないのも、料理次第では活用出来そうかな」
「そうだね。用途に合わせて色々使えそう」
ルーシカも頷きながら、味見しては好みのものを籠に入れていく。
同時に、確認するようにララベルの口元にも差し出して。
「こっちとこっち、どっちが好み?」
「う、うん……甘いほうかな」
照れつつ食べて、ララベルが答えている、と――近くで楽しげに苺を採っていたアルラもまた、ララベルを招いた。
「こっちの苺、とっても綺麗よ」
そこは艶の強い果実が多く、どれも宝石のような美しさだ。
無論味も良く、アルラは味見しつつララベルにも食べさせてあげる。
「はい」
「ありがとう」
と、ララベルは少しはっとする。ヘタが落ちたので、アルラがしゃがむと……その格好故か、スカートの中が見えてしまうのだ。
「? どうかした?」
「う、ううん」
ララベルは赤らみつつ、首をブンブン振ってから後ろを向く。
ただ、再び視線を戻すと……アルラが覗き込んできていて。今度はその大きく開いた胸元が見えてしまうから、ララベルはまたわっと顔を赤くするのだった。
「?」
アルラ自身は苺を食べるのに夢中でもあるので、気づいていない。
なのでララベルも、苺に意識を集中しようとその辺に手を伸ばす。
「つ、摘まなきゃね。苺、苺……」
と、そこでハリのある感触に触れて――
「ベル、それ苺じゃないからっ!」
胸を鷲掴みにされたテュリンが赤面。「ご、ごめんっ!」とララベルが平謝りする、そんな様子を横に――
「苺、美味しー」
アリエッタははむはむと美味を楽しんでいるのだった。
苺を摘んだ後は、皆でログハウスへ。
「さて、タルトでも作ってみようかな」
と、テュリンが早速生地を混ぜ始めると――ルーシカは肉を用意。
「デザートはそっちに任せるね」
言いつつ、こちらはソース作りに苺を使う案を考えていた。
感触が楽しめるように苺を粗めに切った後、果実酢と合わせて……香りに気を使いつつ、ゆっくりと煮詰めていく。
肉は赤身が残るように軽く焼いていくと……その隣でアルラはパンを切り、バターとクリームと共に苺を挟んでフルーツサンドを作っていた。
「ふふ、見た目も良いわね。後はジュースかしら」
「あ、僕やるよ」
言ってララベルはしっかりと分量を量ってから、苺と牛乳をミックス。フレーバーに他のフルーツもちょっと足して、バリエーション豊かな苺ミルクを揃えた。
そんな様子を眺めつつ、ゴルバルティアは卵と砂糖を用意。
「よし……これなら何とか……」
と、携えたレシピはメレンゲケーキのもの。
これなら料理をした事がなくても出来そうだと、チャレンジする事にしたのだ。
という事でひたすら、力の限り卵白とすり潰した苺をかき混ぜて……あとは適当な大きさに絞り出して窯で焼く。
覗き込むと、仄かに焼き目がついて甘い香り。
「とりあえず、良さそうだな……」
「わぁ、いい匂い」
それにはララベルも笑顔だ。
頷くゴルバルティアは、焼けたものに苺をトッピングして。
「ど、どうかな……ベル、多少は食べれるもの、作れるようになったぜ」
「見た目もかわいいし、すごいよ」
ララベルが素直に言うと――その頃にはルーシカも肉を薄くスライスし、出来たソースをかけて料理を完成させていた。
「それじゃ、食べましょ」
「あっ、苺酒もとりあえず作ってみたから。良かったらどうぞ」
と、テュリンはリキュールを使った浸け置く用と、ワインを使ったサングリア風を用意して。酒の飲める面々はそれを頂きつつ……皆で料理を食べ始める。
すると肉は苺ソースが香り高く、肉の旨味を引き上げて――イルは舌鼓。
「美味しいわ」
「こっちもいいね」
と、ルーシカはタルトのさっくりした生地と果実の相性に笑顔を見せる。
「んー美味しい~♪ もう一つ貰お~っと」
アルラも言いつつ肉とタルトを味わって上機嫌。
そのアルラの作ったフルーツサンドも好評で……ゴルバルティアは「美味いな!」と満足の面持ち。
「私のケーキは、どうだ……?」
「すごく美味しいよ」
ララベルは優しい口当たりのメレンゲケーキを堪能して、素直に答える。
アリエッタもそれを頂きつつ……苺ミルクも飲んで笑みを向けた。
「これも美味しいよ。優しい味だね、ララベルらしい」
「ありがとう」
ララベルは、御礼も兼ねてアリエッタと――恋人達皆へキス。
「……甘酸っぱいね」
苺味の口づけに、ララベルは頬も苺色に染めて声を零すのだった。
「サッフィ~、一緒にいちご~かり~ましょぅ~♪」
るんるんと、スキップしながら街にやってきたフリューリングスルフト=ティエラは――そこにサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブを見つけて誘っていた。
にゃ、と目を向けたサフィラは勿論と答えて。
「早速行こっ!」
二人で手を取り合い、踊るような足取りで農園へ。
すると――
「わぁ……! 苺がたくさん生ってるー!」
艶めく果実と甘酸っぱい芳香に、サフィラは瞳をキラキラ。
「今日はおなかいっぱい食べようね!」
「もちろんさぁ!」
フリューも頷いて、二人で苺を吟味し始める。
――と、そこでサフィラがふと気づいた。
「およ? おひとり様はっけーん!」
視線の先にいたのは、リーフェ。
家族でもある狼のヴェルトと共に、丁度苺狩りを始める所だった。
そのタイミングで――サフィラがやってくる。
「ヘイヘイ! そこの君っ! 良かったら一緒に苺狩りしなーい?」
「えっ……!」
古式ゆかしいナンパ的な口調に戸惑い、振り返ると……今度はフリューがすかさずバッと両手を広げ、退路を塞いでいた。
「囲まれてる……!?」
「逃がさないさぁ」
じりじりと近づくフリューとサフィラに、リーフェは観念。折角なので一緒に苺を楽しむ事に決めるのだった。
「あ、えっと……私はリーフェ。こっちはヴェルトだよ」
「うちはフリュー、よろしくさぁリーフェさん♪」
「サフィラだよ、よろしくねっ!」
自己紹介も済ませた所で、まずは近くの苺を皆で賞味。
すると溢れる果汁と、瑞々しい甘さに……三人は瞳を細めて「んー!」と至福の時間。
それからフリューは「そうだ」と思い立って。
「沢山いちご食べたひとが勝ち~! よーい、スタートさぁ♪」
「よーし! 大食いなら負けないよー!!」
サフィラも応じて、身体能力を活かしつつ――ももももっ、と軽やかに舞うように苺を次々頬張ってゆく。
「す、すごい……!」
リーフェは驚きつつも、負けじとヴェルトを向かわせ、サフィラをもふもふの虜にした。
「こっ、これは、もふもふ……」
「今のうちに――!」
リーフェがここぞと食べ進めると……フリューも黙ってはいない。リーフェと、ついでにサフィラの口にも苺をシュートしてリズムを崩しにかかる。
「んむっ!?」
「もらったさぁ!」
この好機に一気に苺をかき込むフリューだが――そこにもヴェルトの魔の手が忍び寄り。
「もふもふっ!? いつの間に……!」
フリューもまたもふもふの魅力に取り込まれて……三人は見事引き分けと相成ったのだった。
お腹いっぱい食べた後は――
「手作りのお土産なんてどうさぁ?」
「いいね、やってみたい」
という事で鍛冶屋で金属素材を購入し、彫金にチャレンジする事に。
「デザインは二人に任せるさぁ」
「んー、どんなデザインにしよう……」
サフィラが少々悩んでいると、リーフェもまた考え込んで。
「私、こういうデザインはあまり得意じゃないんだよなぁ……」
言いつつも、街を眺めて――
「苺っぽいのにしてみたりとか?」
「にゃ! いいね!」
という事でサフィラが、星に苺が絡みつくデザイン画を作ると……フリューが中心となって細工をして。
「出来たさぁ!」
三人お揃いの、可愛らしいチャームが完成した。
「えへへ、今日のお揃いの思い出さぁ♪」
「とってもかわいいねっ!」
サフィラが満足の面持ちを浮かべると……リーフェもまた頷いて。
「お揃いの思い出……後で日記に書いて残しとかないとね」
今日の出会いを、忘れずに記録しておこうと決めるのだった。
フラム・アニムスは苺狩りに勤しんでいる所。
途中、サフィラ達を見つけると……こちらに気づいたサフィラに笑顔で手を振りながら。
「さて、と。折角だし、苺本来の味も味わってほしいからね――」
お持ち帰りも可能という事で、心友と、その保護者の喜ぶ顔を思い浮かべながら……美味しそうな苺を見つけてはせっせと籠に摘む。
そうして全種を揃えると、ログハウスに向かって。
「よっ、と」
沢山採った苺を色別に煮て、三種のジャムを作り始めた。
「ん、煮ても綺麗な色だな……」
ピンクも黄色も、色味が失せず鮮やか。
色を全て混ぜたミックスジャムも作ってみると……瓶の角度で色合いが異なって見える、カラフルでトロピカルな逸品が完成。
「良さそうだ」
ついでにクッキーも焼いて、手製の箱に詰めて。
「……よし、完成!」
しっかりお土産が出来上がると……帰りしなに土産物店にも寄って。
「これかな」
苺の飾り付きのキーホルダーを三つ購入して――そっと先刻の箱に忍ばせて。
「うん」
後は軽やかな足取りで。フラムは街を帰路へと歩んでいった。
「ネム、今日はとってもいい所に行けるよ」
苺色の街へ入りながら――エリカ・プレトリウスはフードの中のリスに声を掛ける。
冒険者になってから負担をかける様になったネムを、労おうという思いだ。
するとネムは興味深げに顔を出すから……エリカは表情を和らげて農園へ向かった。
「あんまり美味しい思いしたら戻れなくなるかな」
それでも大丈夫だろう。
自分達は選り好みしたら生きていけない事をよく知っている。だからその温室に入り……艶めく苺を食べ比べし始めた。
「美味しい、ね」
紅は甘味が強く、白はまろやか、黄色は爽やかで。
マントは濃茶色の物にしてきたから、果汁で汚れる心配もなく。一つ一つの風味をじっくり味わっていく。
「……貴女のお母さんとわたしには木苺が一番のご馳走だったんだけどね」
言いつつ見ると、ネムは次々苺を齧りつつ……やがて貯蔵庫の如くエリカの懐とフードに溜めていく。
増える重みは、こちらの心模様なんてお構いなしで。
でも、いつもその気儘さに救われている。
「ドライ苺、買って帰ろうか」
ネムがチュチュっと鳴くと、エリカは柔く微笑んで。
爽風の中をまた歩み出してゆく。
果実の燦めく農園の一角に、キーゼとネーヴェ・グラヌローザはやってきた。
「私、苺狩りなんて初めてです」
甘い良い匂いが致しますね――と。
漂う甘やかさにネーヴェが穏やかに笑むと……キーゼはおやと目を向ける。
「初めてですか。確かに、どこででも簡単に出来る、というものではありませんからね」
ならば、と並んで歩み出して。
「今日は存分にお楽しみください」
「ええ」
期待の心を抱きながら、ネーヴェは早速苺を眺める。
すると艶めく紅だけでなく、眩い黄色や雪のような白色が目を引いて。早速白の粒を口に運ぶと――
「まぁ、とっても甘い! 真っ白ですし、もっと酸味が強いかと思いましたのに。キーゼさんも食べてみて下さいな」
言って口元へ差し出すと、キーゼはそのまま口に含んで。まろやかながら濃密な甘味を感じて頷いた。
「なるほど、熟していないような見た目ですが、確かに甘いですね……」
それからそっと視線を向けて。
「貴女のその白い指の方が、よほど甘く映りますが」
「……もう、相変わらずですね」
ネーヴェはそう応えながら、頬を仄かに苺色にしていた。
その後二人は摘んだ苺を手にログハウスへ。ネーヴェの教えで苺パウンドケーキと苺チョコを作る事にした。
「大丈夫です、混ぜて焼くだけですから」
言いつつネーヴェはキーゼに綿棒を持たせて。
「これで潰して下さいね」
「どの加減ですかね。すり潰してイチゴの名残を微塵もなくせばいいですか?」
「好みですけど……そうですね、今回は少し果肉感を残しましょうか」
キーゼは頷いて、指示通りに潰しすぎないようにして。生地も作って、混ぜ合わせて型に入れて焼いていく。
その間にチョコを湯煎で溶かして。
「こちらは苺をディップするだけです。ね、簡単でしょう?」
「ええ、確かに」
パウンドケーキが焼けると、二人で早速頂く。
するとパウンドケーキはふわふわで、苺の甘味と香りが乗っていて。チョコは濃厚で芳しい甘さが加わって美味で。
「ふふ、美味しく出来ましたね」
「そうですね。ついてますよ、ネーヴェ」
と、キーゼがネーヴェの頬についたチョコを指で掬って舐めとる。
ネーヴェはそれに少し恥ずかしそうにしながらも――また微笑んで。二人で早春の時間を過ごしていった。
「ユームタルトと言えば、同盟平野部の果物籠じゃないか」
そんな場所に視察に付き合えるなんてね、と。
愉しげに街を見回すのはヴィナス。ルーンス・ラグネルと共に並んで歩み始めていた。
(アレらはこちらに来られないことは確認してるしね――)
と、こんな機会だからルーンスは上機嫌で。
「楽しもう、にいさま!」
「ああ」
という訳で早速苺狩りへ。
まるで宝石のような、色とりどりの果実に二人で微笑みを交わして――ゆっくり進みながら、目についた粒を採ってゆく。
すると白は甘さと酸味のバランスが良くて、ピンクは桃のような香り。赤いものも品種で酸味や食感が少しずつ違って――どれもが美味だからルーンスは笑顔。
「ん、瑞々しいね――」
「ルーン、これ美味しい」
と、ヴィナスも好みの粒を見つける。
香りまで甘くて濃厚なそれは、酸味が好きな人には少しもの足りないかもしれないけれど。
「本当だ。甘くて美味しい」
ルーンスが言うから、ヴィナスはまた笑んで――自分も白やピンクを堪能した。
ヴィナスはこの農園だけでなく、街の各所で多種の苺を目にした事を思い起こす。
「日々品種改良する農家がいて、そういう農家と商会が協力し合ってるんだろうね」
「うん」
こんないい場所で、ヴィナスと思い出を作りつつ視察出来る。
それが最高の極みだと、ルーンスは素直に実感するのだった。
苺狩りの後はお土産探し。
「オカン男子指定の苺を買わないとね――」
ルーンスは呟きつつ、売り場にて苺を吟味。
店の人にも聞いて、美しい白とピンクのものを選んだ。
「これ、良さそうかな」
「こっちも決まったよ」
ヴィナスは艶めく真紅の苺を選んだ所。苺狩りで十二分に美味しさを実感出来たから、間違いないだろう。
二人は購入したそれらを麻袋に纏め、マジカルポケットへ入れる。
「これで大丈夫かな」
ひと仕事終えた気分で、ヴィナスはふぅと息をつく。
これで満足してくれるだろう、と。思い浮かべるとルーンスは何となく口を開く。
「にいさま、僕はアレよりカインに母親を感じてるけど、気のせいかな」
「実際、あの人より確実に母親向きだね。……本人に言ったら怒られるけど」
「うん」
黙ってよう、と。ルーンスも言って、二人で歩み出していくのだった。
その頃カイン・ステラは、カフェでスイーツを頼んでいる所。
程なくテーブルにやってきたのは――
「苺グラタン……苺のみとは贅沢だ」
カスタードを使った甘い香りが魅力的な逸品。
早速頂くと、濃厚な甘味に苺の甘酸っぱさが丁度良くて。
「リンゴではやったことあったけど、苺もいいなこれ――」
しっかりと味を確かめ、堪能してゆく。
「それから……」
他にもパフェにケーキにソルベと注文してあった。
パフェは可愛らしくも豪勢で、見た目も良い。ソルベはさっぱりとした爽やかな風味で、ケーキは王道の美味。
どれも適した品種の苺を使っているようで……カインはメモをとってゆく。
(二人に頼んだ苺で、お礼に作ってもいいな)
思いを馳せつつ、味を事細かに記録して。
マカロンにパイ、大福はテイクアウトして、マジカルポケットへ。
「よし。食べてばかりだと太るしな」
食後には、散策。
彩り豊かな町並みを眺めて楽しみながら……日が落ち始める頃には、ルーンスとヴィナスの姿も見つけて。
二人に軽く手を振り、カインはそちらへ歩んで行った。
「珍しい色のイチゴがいっぱいだねー」
農園の一角にて、アルマ・ヴァレンタインは苺狩りを始めた所。隣に並ぶエヴァン・ピオネロも、色彩と芳香に楽しげに頷いていた。
中でも目を引いたのは、薄紅のような淡い色の苺で。
「この色で……熟してるのですか?」
早速食べると、口一杯に甘酸っぱさが広がって。
「美味しいですよ!」
だからアルマへ嬉しいを一番に報告する。
アルマは「ふふ」と笑んで。
(美味しく食べるエヴァくんも可愛いなー……)
思いつつ、自分もその繊細な甘味を楽しみながら……白にピンクと、珍しい色も味わって。
「あ、これキレイー」
特に注目したのが、白色だけれど仄かに青みがかった粒。上品な酸味と、深い甘味が快く……かぷかぷと食べてはご満悦。
そんな様子に――
(アルマは苺に負けず可愛いです)
エヴァンもまた思ながら。食べては摘んで、手籠は二杯目。黄色や桃色の美しい粒と、味の濃い真紅の苺を沢山採っていた。
勿論、アルマも白青やオレンジなど、インパクトの強い色を中心に籠いっぱいで。
「沢山採れたねー」
「はいっ!」
二人は幸せな重みに微笑み合うのだった。
苺狩りの後は、市場へ。
「目移りしちゃうねー?」
「そうですね……!」
頷くエヴァンは新鮮なリンゴやキウイ、スターフルーツも購入。マジカルポケットへ収納していく。
これだけで食べきれないくらいだけれど……ケーキ店や喫茶店にも惹かれてしまう。
「パフェ、デコケーキ、苺ドリンク……全部美味しそうです」
「本当だねー」
アルマは言いつつも、そうだと提案。
「材料もたくさん買えたし、お家に帰ったら食べたいの作ってあげるよー」
「本当ですか……!」
エヴァンは美味が楽しみなだけでなく、アルマが作ってくれる事が何より、嬉しくて。
「えと……苺プリンもお願いします……。それから裏ごしムースで苺ティラミスも――」
ごにょごにょと言うと、アルマはそれにも笑顔。
「何でも大丈夫だよー。お家でなら時間を置いて寝かせるのとかもバッチリだし、楽しみにしててねー?」
「はい……。ぼくは間違いなく欲張りですね――」
馬で相乗りして帰路へつきつつ……エヴァンはそう笑みを浮かべるのだった。
可愛らしい店内に、甘い香りが漂っている。
「おぉ……!」
苺狩りを楽しんだ後、フロマーシュ・ダイヤドロップと共にカフェに寄ったライナ・フレイヴァルツは――ディスプレイされている商品に瞳をキラキラと輝かせていた。
「マーシュ、凄いぞ苺をふんだんに使ったスイーツが沢山あるぞ!」
「ええ、本当ですね……!」
フロマーシュも応えつつ、声が華やぐ。
既にドキドキとしているけれど、ライナが目移りしている姿にもわくわくして。自分も一緒になって迷ってしまう。
「どれも、美味しそうですね――」
「ああ、どれを食べてみようかな……やはり果実沢山の艶々なタルトか? いやあの美味しそうなショートケーキも捨てがたい……」
ライナは悩みつつも、ボリューム感に惹かれてタルトを注文。紅茶も共に頼み、シェアして一緒に食べる事にした。
早速品がやってくると――
「目の前で見ると一段と良いな」
濃密な深紅と艶めき。
そして芳醇な芳香に、食べる前から魅了されつつ――ライナは一口。
「……ん」
もぐもぐと味わって、ごくん。
口の中に溢れる果汁と、艶の源であるナパージュの甘さ。
そして香ばしくもさっくりとした生地の相性に……ライナはクールさを装いつつも、頬が緩まないではいられない。
フロマーシュもまた甘酸っぱい美味にほわほわとした気分になりつつ……ライナの表情にもまた幸せな気持ち。
一緒に素敵なひとときを過ごしている、そう実感出来るから――笑顔もドキドキもいっぱいで。
「美味しいですっ!」
それから頂く紅茶も、スイーツとバランスが取れるように深みのある芳しさで。
「うん」
ライナも一口啜って、温かさと美味に癒やされる気持ちだった。
「やはり人気なスポットだけあって、提供されている物も至高の逸品だな」
「そうですね……!」
フロマーシュはこんな美味しいものと共に、ライナと時間を送れた事が喜ばしく。
「ここは毎年、美味しい苺が出来るみたいですから……」
「ああ、来年も来れるといいな」
ライナが向けてくれる視線に、フロマーシュは笑顔を咲かせて。
「はいっ、ぜひ!」
今からその時が待ち遠しい。
そんな気持ちで……スイーツのおかわりも考えながら。甘いひと時を暫し、二人で過ごしていった。
苺のアーチを潜って、気分を華やがせて――サシャ・テーリングと梅・雨陽は共に苺狩りへとやってきていた。
「イチゴ、たくさんネ!」
「ええ、いい香り――」
頷きつつ、サシャは早速深紅の苺を一口。
新鮮な甘味を楽しむと……雨陽もまた同じ色の粒を摘んで、舌鼓。お手頃サイズでムグムグ、ムグムグと――次々に食べ進めてしまう。
「ねぇ、あの列の……綺麗で大きそう」
と、サシャは先へ。遠くほど綺麗に見えて……あちらこちらと苺を採っては食べ歩く。
雨陽も並んで進みつつ――美しい粒を見つければ。
「見て見てサっちゃん、このイチゴぴかぴかヨ!」
「本当だ。形良いわね、ザ・苺って感じ……それじゃあうよたん、私のこれは?」
行ってサシャも艶めく粒を見せれば、雨陽も「ワオ」と笑みを作って。互いに味わって、心ゆくまで苺を堪能してゆく。
その後二人はカフェへ。
サシャはお茶で休憩、のはずだったけれど。
「おかしいわ……」
メニューを見る内に別腹開放。スイーツを食べたくなってくる。
「うよたん……シェアしない?」
「確かにシェアすればいっぱい食べれるネ。サッシャん天才~」
雨陽の言葉にサシャはクスクス笑みつつ……カスタードクリームと苺のタルト、苺パイ、苺とチョコのアイスを注文。
品々がやってくると、二人は早速実食。
「苺パイに苺アイス、乗っけちゃおう」
雨陽がサクサクで蕩ける、そんな贅沢なコラボを楽しむと……サシャもタルトの濃厚な甘さを味わって。勿論シェアして互いに楽しむ。
それから雨陽は苺紅茶で芳醇に、サシャは苺ソーダでしゅわしゅわと喉を潤して。
「満腹で幸せね……。最後は乾杯しましょ」
と、サングリアのグラスを合わす。
雨陽はそっと一口飲んで。
「ン~、美味しい」
花束のような香り高さに、程よく含まれた苺の甘味を味わう。
「サっちゃんの髪の色に苺色ってピッタリネ」
「ふふ、ありがとう」
と、先刻の食べっぷりも嘘のように……サシャも穏やかな笑みで、優雅な大人時間を楽しむのだった。
その後は苺大福をお土産にして。
「ねえねえ、アクセサリー見に行こうヨ。ワタシ、サっちゃんにぴったりの選んじゃう!」
「本当? 嬉しいな~」
なら私はうよたんに似合うのを選ぶわね、と。
サシャは応えて、雨陽と仲良く歩き出していった。
「苺狩り、楽しかったですね」
カルフ・オルヴォの隣に並び、セオ・ウルジオは苺色の街を行く。
「あんなに味が違うなんて驚きです」
「そうだな」
頷くカルフも、始めは“もう少し食いでのあるものを”と思っていたけれど……想定外の美味に今は満腹。
飯は少し歩いてから、と景色を眺めて進む。
ユームタルトは細かい所にまで手が入り、町を挙げて苺を推しているのが伝わって……空気が何とも心地良い。
セオもお土産を見つけると色々と目移り。
「苺柄の茶器、素敵ですね。向こうにはアクセサリーも……」
あ、と。その途中で見つけたのは大きな苺のクッション。
(いいなぁ……)
惹かれてついウロウロ、視線を注いでしまう。
「何だ欲しいのか?」
「あ、いえ――」
カルフが言うと、セオは視線を離して。子供っぽいと思われてないかと上目でカルフを窺ってみたりする。
けれどまたちらちらとクッションを見るから、カルフはそんな様子が可愛くて。微笑んで見ていたけれど――
セオはそのうちに持てないからと諦めて。
「先にカフェに行ってますね!」
言って走っていった。
「ん……」
カルフは見送るが……一人になると店員へ声をかける。
「これを持ち運び易い様にして貰えるか?」
セオも道中、別の店で足を止めていた。
「あ、このイヤーカフス……綺麗だな」
黒地に苺の葉模様のそれが、カフさんに似合いそう、と。
思うとすぐに購入。それからカフェへと向かった。
後は席を取り、いつ渡そうかと思案していると――
「土産だ」
声と共に無造作に袋が置かれる。
見るとカルフが居て……袋にはクッション。
「お勧めランチを頼む」
「……わぁ――」
セオは驚きながらも、嬉しさに頬を緩ませた。
「これなら持てます! 大切にします」
それから慌ててカルフに屈んでもらって。
「何だ?」
「僕からも、プレゼントです」
言ってそっとイヤーカフスをつけてあげる。
カルフは、ほぉ、と声を零して髪をかきあげた。
「良い品だな、似合うか?」
「はい、とても」
セオが心から言うと、カルフは礼を述べて――ゆっくりと食事して。
「帰るぞ」
カルフが手を取ると、セオもその手を握り返す。
後は、カルフは何かを求める訳でなく。セオが幸せいっぱいに嬉しそうな顔をしているのを、見ているのがただ楽しくて。
自身も少し表情を和らげながら……二人でゆったりと、甘く香る道を進んでいった。
「シルヴィア、パンを焼いたことはあるか?」
苺ジャムとミルククリームを入れたパンを作ろうと思うんだが、と。
エル=バ=ノイアンはログハウスへ歩みながら、シルヴィア・A・カペルへ尋ねていた。
シルヴィアは緩く首を振りつつも、美味しそうな響きに興味を惹かれるから。
「作るなら手伝おう。私で良ければだが」
「そうか。何、これも材料を混ぜて捏ねて寝かせて、焼くだけだ」
言ったノイアンは早速一角につき、小麦粉等の材料を用意する。
「これに湯を混ぜて……」
それからしっかりと捏ねてゆく。
「中々、力もいる作業だね――」
シルヴィアも教え通りに、叩いては折って、整えて。いい頃合いで、ノイアンが生地を小さく丸くした。
「この生地を休ませる。これで膨らむんだ。面白いだろ?」
「ああ。何とも不思議だ」
それから発酵が進むのを待って――問題ないと見れば、ノイアンは生地を再び取り出して。
「……うさぎの形にしてみるか」
切れ込みを入れて、耳を形作る。
シルヴィアも微笑みつつ手伝った。
「可愛らしいね。後は?」
「表面に卵を塗って、窯だ」
「卵?」
「ああ、艶出しにな」
ノイアンが卵を溶いて刷毛で塗ると、シルヴィアは成程と自分も助力。
「確かにつやつやしているパンの方が美味しそうだ」
それが済むと窯で焼き……焼きたての狐色のパンに、ノイアンは口金を刺していく。
「これでジャムとクリームを入れるんだ」
「この可愛らしいパンに刺すのは、ちょっとかわいそうな気もするけれど……」
必要な事ならとシルヴィアもチャレンジ。
ただ、中々繊細な作業で――
「うまくいかないか? 一緒にやってみよう」
ノイアンが手を添える形で、ようやく成功。
(……共同作業は気にしてないんだろうね。全く、鈍感なんだから)
シルヴィアは間近なノイアンに思いつつ……完成すると満足の心持ち。
ノイアンも出来映えに頷いていた。
「上手にできるようになったら、家族にも振る舞うといい。きっと喜ぶ」
「家族か。私がパンを作ったなんて言ったら皆驚きそうだ」
シルヴィアは笑みを零す。
けれどそれはまた別の話。今、ここに居るのは冒険者のシルヴィアだから。
「……ほら、あーん」
差し出して、ノイアンに食べさせてあげる。
それは甘く、優しい香り。苺色に染まった時間は今、二人だけのものだった。
「苺……いいわよね、苺」
ルベア・ベルニは苺のアーチを見上げながら、街へと歩んできた。
その眺めだけでも楽しめる、けれど。
「ルベアさん! いちご狩りができるんですって、いきましょう!」
ぱたぱたと、そこへやってくるのがミア=リゼル。
「紅色いちご、桃色いちごに白色いちご……それから黄色のいちごもあるそうなんです!」
声音はわくわくと華やいだもので。ルベアも黄色は見た事がないから――
「気になるわね、それじゃ、行きましょ」
「はいっ!」
という訳で農園へ。
そこは色味豊かな苺に満ちていて、ミアは瞳を仄かに煌めかせる。
「綺麗ですね……!」
早速傍のひと粒を摘んで口に運ぶと、瑞々しい甘味に感嘆の声。
「ルベアさん、おいしいですよ――!」
「ええ、本当ね」
ルベアも真紅の苺を食べ、深い甘さに頷いている。
それから他の苺も摘みつつ歩み始めると――
「あっ、黄色の苺、あったわよ」
「わぁ、本当に黄色……!」
それは明るく濁りのない黄色で、爽やかな香り。
一つ味見してみると……バランスの良い甘味と酸味が清涼感を運ぶ。
「おいしいです。レモンも素敵ですが苺も素敵ですね……!」
「同じような色でも品種も違うのね。こっちは甘いわ」
ルベアも頷きつつ、気に入ったのをまた摘んでいた。
「私はどっちかっていうと苺は酸味は抑えめの方が好きだけど、ミアさんはどう?」
「私も酸味は少なめのいちごが好きです」
熟しているのって魅力的ですよね、と。
ミアは色濃いひと粒を見つけて、クリームをつけて。
「はい、あーん」
「ん……」
ルベアが口で受け取ると、ミアは微笑んだ。
「ふふ、おいしいですか?」
「うん、美味しい」
ルベアは応えつつ……一人じゃないから尚更美味しいのかもしれない、と。
実感と共に、自分も採った苺にクリームをつけて。
「お返しよ。あーん」
「ん……おいしいです」
もぐもぐと食べるミアの、そんな幸せそうな顔を見て――
(こっちも幸せな気分になる、なんて言ったらどんな顔するかしらね……)
思いながらも、もう一つ食べさせてあげつつ。
「向こうのも美味しそうよ」
「行きましょう!」
二人でまた新たな苺を求め、歩んでゆく。
ウォーゼルはミニコボのチョコを連れ、パルドは猫のショコラを連れて――二人と二匹、仲良く苺狩りに訪れた所。
「苺っていっても色んな種類があるんだね」
「どれも美味しそうだな――!」
ウォーゼルがわくわくすれば、パルドもショコラと一緒に尻尾をピンと立てて。まずは真っ赤な苺を採って、籠に入れてゆく。
「こっちの色のもいいのか?」
「うん。全部いいみたいだよ」
ウォーゼルは応えつつ、チョコが採りたそうにしているのを見て……苺の茎を支えてあげる。
するとチョコはぷちりと採って、その苺を抱えてご満悦。
「上手に摘めたな」
パルドも微笑んでいる、と。
ふと、ショコラが生っている苺を囓ろうとしているのを見つけた。
「って、待ったショコラ! 採ってやるから」
慌てていると、ウォーゼルが摘んだ苺の一つを掌にのせて。
「はい、どうぞ」
それを見たショコラは……早速その苺を齧り、掌を舐めて満足げなのだった。
一段落すると、ウォーゼルとパルドも苺の味見。真っ赤なものは瑞々しくて、白いものはまろやかで。
「これ、さっきのと比べてすごく甘いっ!」
一層色濃いものを見つけると、ウォーゼルは思わず尻尾も揺れて。嬉し気に一つつまんで差し出した。
「パルドも食べてみなよ。ほら♪」
「ん……本当だ、あまいっ!」
受け取ったパルドも、目を輝かせて……もぐもぐと堪能するのだった。
その後はお土産探し。
苺形のクッションを見つけると、ウォーゼルはそこで足を止めて。
「この辺、どうかな?」
「良さそうだ。大きいのにしよう」
パルドはチョコが寝られる大きさか、体長に合わせてみつつ……良さそうだと思えば早速購入した。
『わんっ♪』
ぽふっ、と。
チョコはパルドの持つそれに抱きついて、嬉しそうにごろん。
一方、足元でもショコラが不思議そうにクッションを突いていて。
「ショコラも乗ってごらんよ」
と、ウォーゼルがそっと抱えてチョコの隣へ乗せてあげると……ショコラは嬉しげに鳴きつつ、チョコと戯れるのだった。
「いつも二人一緒だしね」
いいものが買えた、とウォーゼルは満足。
後はカフェに立ち寄って。
「何にする? オレ苺大福ってやつがいい!」
「俺も苺大福がいいな♪」
二人で笑み合うと、一緒にそれを買って――甘い香りの風に吹かれながら、帰路へと歩み出してゆく。
「わあ……! いちご、いっぱいだ、ね!」
苺色に満ちた農園で、サラは隣のだわへ笑みを向けていた。
だわも頷いて、感心の声。
「これだけの果物が全て食べ頃とは……改めて、農業はすごいな」
「えへへ、たくさんあって、どれから食べようか、悩んじゃう……」
サラが歩み出すと、だわも続いて――早速苺狩り。多様な品種に目移りするサラを見つつ、だわはふと記憶を辿る。
「そういえば、苺は果物じゃなく野菜だと誰かが言っていたか」
「そうなん、だ。ひとつ、賢くなった、の」
「ああ、何が違うかは判らないが……」
呟いていると、サラは真紅の一粒に目を留めて。
「これとか、おいしそう!」
優しく採って口へ運んだ。
「いただき、ます。……んんん、おいしーい!」
「……美味そうに食うよな」
新鮮な甘味に瞳を細めるサラに、だわもどことなく嬉しそうな素振り。
それから自分も淡いピンクの苺を摘んで。
「これとか、小ぶりだが美味いんじゃないか。ほら」
「わ、ありがとう、だわおにいちゃん」
サラは嬉しそうに、それもかぷり。
「……うん、おいしい」
華やかな甘味を楽しんで。自分もお返しにと、白い苺をぷちっと摘んで差し出した。
「……ね、ね、これも、おいしかった、よ」
「ん。そうか。なら――」
と、だわはそれを口に運んで……まろやかな甘さを味わった。
「どう?」
「ああ、美味いな」
「えへへ、そうでしょ?」
言ってサラが表情を和らげるから、だわも頷きを返して歩んでゆく。
「そういえば、お前は苺にミルクを掛ける派なのか? 蜂蜜を加えて煮詰めたやつもあったと思うが――」
「ミルクはねぇ、うーんと……かけても、かけなくても、どっちも美味しい、よ。いちごミルクも、好き」
「そうなのか」
相槌を打ちながら、だわはふと手を伸ばした。風で飛んできたらしい苺の葉がサラの頭に乗っていたのだ。
故に軽く撫でるようにして、それを払うと――
「……ふえっ!? ど、どうしたの?」
「ん? ……何でもない、気にするな」
だわはそれだけ言って歩みを続ける。
「……そ、そうなん、だ……?」
サラはそう返しつつも、自分の頭に手を当てる。
(うう、急に撫でてくる、から……びっくり、しちゃっ、た……)
それから、まだドキドキとした気持ちは残ったまま。慌てるように、だわへとついていくのだった。
マスターコメント
お疲れさまでした。
苺狩りを中心に大いに盛り上がりました。
街の魅力もしっかり伝わった事で、街としても喜ばしい状況となりました。これから観光都市としても知られてゆく事になってゆくでしょう。
イベントシナリオ(50人)易しい 報酬:標準45 / 4〜50人
2022年02月26日 20時31分22秒 公開
大成功
参加者
アンネエルカ
- サイラス
エルナ・クルプファルツ
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアト
ベルク・オスマット
イル・シャーリィ
サフィラ・アズラク・ヴォルファング
ヴィナス
アルマ・ヴァレンタイン
アルラ・ニグラス
ララベル・サン・ディーベル
リーフェ
ゴルバルティア
カイン・ステラ
フリューリングスルフト=ティエラ
ルーシカ
テュリン・ヴィング
- キーゼ
ライナ・フレイヴァルツ
- アステル
梅・雨陽
ナキル
アーシェル・G・クライン
アリエッタ
フロマーシュ・ダイヤドロップ
ナハト・シュライバー
エヴァン・ピオネロ
ネーヴェ・グラヌローザ
フラム・アニムス
カルフ・オルヴォ
エル=バ=ノイアン
ルベア・ベルニ
シルヴィア・A・カペル
アルフィー・リッパー
ルーンス・ラグネル
サシャ・テーリング
セオ・ウルジオ
パルド
ウォーゼル
ミア=リゼル
だわ
サラ
エリカ・プレトリウス
シェルリア・リトヴァール
マリィ・スノードロップ
相談掲示板
No.1
サイラスだ、よろしくなー とりあえずカフェか市場に向かうかなと
エヴァン・ピオネロです。ヨロシクですよー。 苺狩りと果物の買い出しに来ました。 美味しいのが沢山食べれると思うと浮かれちゃいますね。
シェルリア・リトヴァールといいます、よろしくお願いします! カフェで苺のスイーツを楽しみます! お土産も買いたいですねー!
エリカ・プレトリウスです。 ペットのネムと一緒に苺狩りに行ってきます。帰りにちょっとだけお買い物出来たらいいなと思っています。
アルマだよ、どーぞよろしくねー 苺狩りとか市場でお買い物をする予定だよ 珍しいイチゴがたくさんみたいだから楽しみー
フリューリングスルフト=ティエラ、長いからフリューって呼んでさぁ♪ 友人と一緒に苺狩りとかいろいろする予定さぁ♪
こんにちはセオ・ウルジオです カルフさんといちご狩りと買い物をする予定です よろしくお願い致しますね
マリィ・スノードロップと申します。 楽しそうな街と、甘い匂いに惹かれました。 苺狩りのあとに、ジャムを作りにいこうかと思います。
アーシェルだ。よろしく頼む。 友人達と苺狩りをしたりカフェに行く予定でいる。 楽しい一日になるといいな。