【北異】Shall We Dance?
弓月 蒼
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シナリオID:1543
オープニング
回復魔法は、凡そあらゆる外傷を癒すと言う意味で医学に勝る。
それが大陸における常識であり、殆どの場合例外はない。
「あ――――――!! 臓腑が煮えくり返るとはこの事ですわあっ!!」
客分として用意させた客室の最高級の寝具に身を沈める。
そんな家具1つで貧民の人生が幾つか買える値段がする訳だが、彼女には些末な話である。
白磁の肌には最早傷一つ無いが、纏うのは普段の黒い盛装ではなく桜色の寝衣だ。
貴重な布で居らせた古典盛装はそうそう代わりが効かない。
寝具の上でじたばたと暴れてみせるも、手加減が要る。神の呪いの煩わしい所だが。
感情を出来る範囲で抑え、それでも毀れた過剰な澱が赤い髪を陽炎の様に揺らした。
敗北だ。流石にそれを認められない程に愚かでも、子供でもない。
殆どの戦いを完封で済ませて来た彼女であれ、二世紀以上も生きれば幾つかは敗けている。
それにしたところで――――あんな。格下と言って良い相手にしてやられたのは。
『呪殺公主』マリエン・D・カーネェジの記憶ではここ百年近く無い出来事だった。
「……とは言え、流石に良い加減邪魔になって来ましたわね」
帝国崩壊よりこちら、突然に増えた授恵者の成長は著しい。
天才である彼女が十年程かけ蓄えた澱の量に、1年少々で至るなど以前なら考えられない。
そしてその事実は――――それだけ世界の軸がぶれているからだと彼女の観測は告げている。
澱は乱を好む。呪刑者は戦いを強いられる。この世界は――――蠱毒の檻だ。
手を打たなければならない。少なくとも。彼らは。彼女らは未だ物心すらつかない幼子だ。
何も知らない。何も知らず今目の前に或る騒乱を、それが正義と信じて片付けている。
自分が盲目であるとすら気付かぬ子供に、神が賽子を振ることをどう理解させれば良い。
さりとてこれだけの好機……あと更に二世紀を数えたところで、訪れるかどうか。
「何も、知らないくせに」
思考停止は愚者の選択だ。次はきっと殺し合いになる。
必勝を。戦力を。――――勝ち筋を、揃えなくてはならない。
●Invitation
王国北端――――北方辺境伯領、城塞都市『ノストガルデン』
「ええ、何ですかこれ聞いてないですよ? 僕だけ仲間外れですか?
うわあ、やだなあ。王国ってすぐそうやって言外に種族格差を分からせにくる……」
「誤解です」
その男が、黒い騎士鎧を纏っていない。
――――いわゆる異常事態である。武装が片手剣であるのも室内である事を考慮してだろう。
黒の正装に着替えた『黒騎士』は見慣れぬ者には違和感しかなく。
対面するのは白の正装に着替えた『アーチボルト辺境伯』メルヴィン共々。
着こなし慣れた風が漂う分、余計に変。と言わざるを得ない奇妙な光景が展開されていた。
と――――そんなことを思っている『白騎士』もまた赤い盛装とか言う。
『黒騎士』が"馬子にも衣装"と断言するだろう思い切った装いであり。
帝国南部解放戦線から戻ったばかりの『隠者』ノイマン・アガスティアだけが孤立していた。
「というか何故戻って来られたので?」「他の騎士が困るだろ、帰れ」
「なんか酷くない? 僕が居なくて我が主もさぞ困っていた事だろうに」
「……いえ、特には」「正直居なくて息がし易かった」
「だからそこの黒白には聞いてないんだけど!」
一通り混乱が落ち着いたところで、一人猫のシエルを抱えていたメルヴィンに。
ノイマンが膝を付いて頭を垂れる。砂色の外套がふわりと揺れた。
「ヴィント近郊の哨戒と帝国軍経由の公開情報、及び復興状況の報告に参りました」
「書類の方は目を通させて貰った。……『幽界樹』か。まだまだ課題は多い様だな」
帝国奪還が未だ果たされない以上、遠からずまた最前線へ戻らなければならない。
メルヴィンが今、北境に居られるのは王国軍の兵達の尽力の賜物であり。
辺境伯領内の至急の問題を片付けたなら、最前線に戻るのが指揮官である彼の役割だ。
それは、決して遠い話ではない。
「ともあれ今後については追って審議する。長旅御苦労、暫し英気を養ってくれ」
「いや、待って待って待って下さい。そこはこの状況の説明でしょう我が主。
僕だけ薄汚れたローブ姿で杖何か持って、浮くとは思いませんか? ねえ?」
「今日は世話になっている冒険者諸兄を招いて"正規の"舞踏会を行う予定だ」
貴族社会における舞踊会は、所謂権謀術数の場だ。冒険者とは如何にも噛み合わない。
何故態々、そんな催しを? と。黒騎士から漏れた問に。ノイマンが首を傾げ応じる。
「なるほど。今後を見越して"失敗しても良い正規の場"を提供しようと言う事ですか。
ああいえそっちよりほら! 僕の服装とか」
「……そうだな。叙勲程度なら誤魔化しが効くが、万が一受爵となればそうもいかない。
昨今の冒険者の成果を見るだに……他人事でいられるかは微妙な線だ。恩もある」
頷くメルヴィンに、なるほど……とガレスが応じる傍ら、騒ぐ灰色ローブ。
帝国南方から早馬を走らせたのだろう。赤い絨毯の上に中原の砂がぽろぽろ落ちる。
「と言うかノイマン。貴公、そもそも踊れないだろう?」
「踊れませんが、何か」
「二百年近くも何して生きてたの?」
「見果てぬ夢を追っていました?」
辺境伯が暫く愛猫を撫でる間にアストリッドが問い掛け、エルフの魔法使いが断言する。
撫でられて眠くなった灰色猫がにぁーと鳴いた。ノイマンは部屋から退室を命じられた。
今日も北方辺境伯領は、辛うじて平和なようだった。
●Introduce
甘い、酒の香りが漂う大部屋。その中央で女が傅く。
眼前には天幕が敷かれ、その先は見通せず。そもそも対面を赦されていない。
けれど、そんな程度で隠しきれない気配が有る。威圧感……否。
"存在感"と呼ぶべきだろう。他の誰とも間違えようがない、重く厚い気配。
例え授恵者であれ。そんな芸当が出来る人物を彼女は他に知らない。
「どうも上手くやられた様です。北方辺境伯は」
応答は無い。けれど地に響く様なくぐもった声が、事が上手く運んだことを告げていた。
珍しい。主がここまで上機嫌なのは果たして拾われて以来――――いつ振りか。
「"冒険者と狸に因縁を結ぶ"と言う御依頼、果たせましたでしょうか」
膝を付いて主の答えを待つ女商人。シズルは、けれどこの上なく理解している。
主にとって、彼女は駒でしかない。いつでも切り捨てられ、破棄出来る程度の。
今の問題は、自分が良い駒か、悪い駒かだ。
「――――問題無い、続けろ」
告げられたのは唯一言。それでも、思わず内心で拳を握る。
今回の一件。この"商談"を取り纏められれば『竜』傘下の商人では一歩抜きん出る。
それは、人脈にせよ商材にせよ借り物である彼女がやっと一目置かれると言う事だ。
孤児が立身出世し栄光を手にするには、必ず越えなければならない一線がある。
「そう言えば、北方辺境伯から招待状を頂いたのですが……これは?」
「……良き様にせよ」
一瞬の間と、呆れたような声音に。してやったりと女商人がにまりと笑う。
心ではなく栄誉と金貨で結ばれた縁。けれどそれが、紛れも無き忠義であることは疑いなく。
忠実な犬を自認する女行商人は、御前を退くと軽快な足音で次の予定を切り詰める。
全てが治まった後の盤面を見越しているのは決して……第二王子だけでは、無い。
解説
マスターより
リプレイ
曰く、森人でありながら肉に全神経を研ぎ澄ませる迅速果断なる捕食者である。
曰く、山人と比較される事を断固嫌悪しながらも、比肩する圧倒的飲酒量を誇る。
曰く、大陸中のあらゆる健啖家が羨む、一切の暴飲暴食を無効化する完全なる体型を持つ。
――――『肉食エルフ』リディリディ・トゥラ・イェレミースと言う。
「これも美味しいですよ! お肉も挟んでありますし、如何ですか?」
「ぁ、……はい」
1階、立食パーティ会場。お皿を持ち寄った『壁エルフのおねえさん』コルネリウス・アーラの声に。
周囲に視線を巡らせたリディリディが蚊の鳴く様な声で、吐息同然返事を返す。所謂、人見知りである。
仕草だけ見れば決して少なくない排他的森人だが、右手、皿の上には山盛りの燻製肉
左手、黒麦酒の大酒杯。説明不要である。山人でももう少し色々食べる。
「……あの、アーラさん……」
「はもも……ん、はい、何でしょう?」
他方、コルネリウスは細かく細かく沢山食べる。
辺境伯領のパンを網羅する勢いで片っ端から皿に載せる様は、一見少食っぽく見えるという部分で卒が無い。
これぞ大家族の中で育まれた処世術。即断即決。待っていては好物は無くなる。
「……それ、1つ……えっと」
「良かったら、コルネって呼んでください。私もリディさんとお呼びしたいので」
こういう時、兄弟の多い壁エルフのおねえさんは意図を察するのも得意である。
年齢はリディリディの方が三倍年上では効かないのだが、対人関係では経験の積み重ねが違う。
肉と野菜が挟まれ香辛料で味付けされた惣菜パンを皿に選り分けられ。
リディリディが言語化未満という声で、コルネの名を呼ぶも周囲の雑踏に掻き消され。
「こうやって、誰かと一緒にご飯を食べるのって楽しいですよね」
「……あ、……はい。……ありが……ます」
俯きがちに、けれど頷いてみせたリディリディの皿の上からは、山盛りだった燻製肉が消失していた。
黒麦酒の大酒杯も空になっていた。これで目立つなという方が無理がある。
「時代は変わった……ぐえ」
同族の偉業に目元に涙を浮かべ呟く『隠者』ノイマン・アガスティア。本日は給仕担当である。
思わず立ち上がって拍手に及びそうになった所で静止を掛けたのは。
これまた何の因果か森人。盛装に身を包んだ『銀嶺の旋律』リコリス・アデュラリアであり。
「止めなさい、可哀想でしょう」
「これは失敬、胸を衝く感動を抑えきれず……あれ、お嬢さん帝国遠征の時にお世話になった方ですね?」
フードを捕えられてじたばたと藻掻くノイマンから、リコリスが呆れた様に手を離す。
選りに選って王国中枢に森人が居ると態々逢いに来て見れば、正に俗物。
これは同族の恥なのでは……と真面目に悩んでいるリコリスに。
けれどフードを深く被り直した『隠者』は、不思議そうに首を傾げる。
「ああ、なるほど。僕が此処に居るのが不思議なんですね。それに何故今戻って来たのかも」
――――その言に、リコリスの動きが止まる。……心を、読まれた?
一瞬そんな笑えない想像が脳裏を過ぎるも。直ぐにそうではないと考え直す。
もし心を読むなんて超常の力を持つなら、断固隠す筈だ。見知らぬ者に晒すには危険過ぎる。
「肩から力が抜けましたね。そう、貴女の推測は正しい。こんなのはただの洞察眼です。
やあ、僕も色々あってですね。少々先代に返しきれない恩があったりなかったり」
柔らかな声と裏腹に。リコリスはただ一言も問いかけてすらいない。
ノイマンは一方的に、彼女の問を挙動から"汲み取り"、"推測して"、"返答している"。
「……何か、目的でもあるのですか」
「目的? ……うーん、強いて言えば好奇心。僕は僕が見たいものを見たい。
それだけです。だから僕は、今の帝国南方戦線を置いて戻って来た」
ぞくりと。冷たいものが背筋を這うのを感じて事更に表情を殺す。
果たして、この相手にその迷彩がどれほど効果が有るのは知れずとも。
「大丈夫。心配せずとも僕は乱を好みません。今の所は、とりあえず――――ああ、料理の追加をしないと」
大仰に一礼を投げて踵を返す古い森人の後ろ姿に。
白銀の森人は漸く緊張していた自分に気付く。自らの指を、痛いほど握りしめる程に。
「……おっと、失礼致しました」
「こ、こちら、こそ……です、わ!」
貴族との付き合い方なんて、もうすっかり忘れていた。
身に染み付くまで教わった訳ではなく、王国境界線は北方のみならず危険が絶えない。
盛装を纏って、正装の男性と間近で接する機会などそう有る訳がなく。
ライラ・サンダーソンが腰に剣を提げた黒い騎士と接触してしまったのもそういった。
場に即した振る舞いの欠如が招いたささやかな事故でしかなかった訳だが。
(……今、皿の端を傾かないように支えながら避けた。凄いな)
だからこそ、ライラはその挙動の正確さに"戦う者"の一面を見て思わず瞬く。
「貴方も、戦う人……なんですか?」
「申し遅れました。此度給仕を預かります、北方辺境騎士。ガレス・コーニッシュと申します。
宜しければお名前を伺っても?」
「ら、ライラ・サンダーソンだ、です。の」
緊張して応じたライラに、黒髪黒眼の騎士が首を傾げる。
こんな事なら武術知識を詰め込んだ分、礼儀作法も学んでおくんだったと思っても時既に遅く。
「サンダーソン……と言うと、東方辺境の?」
「はい! そう! そうです、そのサンダーソン……」
と、応じてみて果たして、"東方の蛮族"呼ばわりされている自家の事情を思い出したか。
やっぱり貴族社会は肌に合わない……と思わず内心やさぐれかけるも。
「であれば、主に代わって感謝を。貴女方が勝利し続けるお陰で、私達も安心して北を護っていられる」
そう言って丁寧に礼を払われれば。混乱しながらも何か返さなければならないと。
そこでやっと、母親が必死に仕込んだ彼女の中の作法とその振る舞いが噛み合った。
「私達は、勝ち戦を義務づけられているのです。ですが私からも、父に代わって感謝を」
その返礼は紛れもなく、きっと貴族の令嬢に相応しいもので。
黒い騎士が確かに頷くのを見てライラはほっとした様に胸を撫で下ろす。
「北方国境を皆様が護って下さるお陰で、私達は前だけを向いて戦へ出向けます」
少しだけ、固まっていた身体から力が抜けた気が、した。
●Step Sequential
一方3階、舞踏会場として開かれた会議室には大勢の貴族が集う。その一角。
「お招き感謝を……こういった場は久しぶりですよ」
『盤象導者』キーゼの一礼に。『アーチボルト辺境伯』メルヴィンが応じて淡く笑う。
仮にも臣下の礼を取った以上義理は果たすという物が彼の考えであり、其処には単純な利害が有るが。
そういった意味では腹芸が不得意なメルヴィンは良くも悪くも"分かり易い"御輿である。
「こちらも大変だったようで……。
ご存じかもしれませんが、学園も中々にきな臭い。中央と、白い"狐"にお気を付けを」
「ああ、学園か。またウィリアムが何かやっているらしいが……」
これ以上厄介な事にならなければ良いが……と眉間を抑えるメルヴィンを他所に。
キーゼはと言えば赤い盛装を翻した『白騎士』に捕まっている。この間一瞬である。
「おおおお、キーゼがまともな格好してる。これ、明日は天変地異ね!」
「おや、どちらの貴族令嬢かと思えばアストリッド氏でしたか。……化けましたねえ」
自信満々に胸を張るアストリッドを眺め、キーゼが素直に称賛を投げる。
「ありがと、褒め言葉と受け取っておくよ?」
「いや驚きました。交易都市で寄った夜のお店にも敵う女性はいない……か……と」
滑らかに動いていたキーゼの舌が止まると、ぱちぱちと瞬いた白騎士が視線を動かす。
背後に佇んでいたのは『新めでぃちゃんデザイン者』ネーヴェ・グラヌローザである。
周囲の振る舞いを学ぶ為、壁の花に徹していた彼女は笑顔だった。笑顔でキーゼの襟を摘んでいた。
纏った薄紫色の盛装が澱を帯びた様に揺らめいて見える。
「アストリッド様はご機嫌麗しゅう。ご歓談中大変申し訳御座いませんが、事は急を要しますの。
さ、キーゼさん、少しあちらでお話致しましょうか。勿論構いませんわよね?」
白い騎士は良い笑顔でさらっと手を振っていた。完全に良い気味だと言外に言っていた。
キーゼは当人の自由意志を問わず、騎士と淑女の言外交渉の結果売られたのである。
「アーチボルト卿、もし宜しければ一曲踊っては頂けませんか?」
「名にし負う『蒼玉の麗人』よりその様に仰られては、恥をかかせる訳には参りません」
『蒼玉の麗人』シルヴィア・A・カペルの手を取ったメルヴィンは慣れた仕草で主導を取る。
対するシルヴィアも一度身体に教え込まれた作法はそうそう忘れる物でもなく。
限りなく完璧に近いステップを踏む様は、思わず会場の貴族達が動きを止め視線を向ける程。
雇われ楽団が一曲奏で終えるまで。紛れもなくその場の主役は若き辺境伯と蒼玉の令嬢であった。
「機会があれば、アーチボルト卿の学生時代についてお聞かせ願えませんか?」
「あまり、楽しい話は出来ないかもしれませんが」
それで良ければ、と溢した辺境伯に。何処と無く愉快な話が聞けそうな気配を感じたか。
踊っていた時は大人びて見えた蒼の侯爵令嬢は、その応答に満足した様に年相応の笑いを浮かべた。
さて、しかし――――だ。
表舞台で華々しく踊る者が居る一方で、舞台袖で踊ることにこそ意義を見い出す者も居る。
「良ければ、一曲踊って頂けるかな」
『月下の友誼』ジュスト・ヴェルジーの申し出に。勝ち気そうな翠の瞳が向けられる。
目を引く茜色の盛装《ドレス》。その割にあまり慣れていないように壁際を彷徨う様に。
社交界に出てすぐの令嬢か何かかと思い声を掛けたジュストから見て、その眼差しは。
直ぐに笑顔で覆われたものの。油断出来ないと思わせるには十分に過ぎた。
「あまり舞踊には慣れていなくて。教えて頂けますか?」
「勿論、喜んで」
『カラス娘のお友達』アウレーリア・フォン・ネーベルベルクの目的はあくまで情報収集だ。
学園における選挙戦。王党派目に見えてその存在感を示す事に失敗したと言える。
"彼ら、彼女ら"がその状況をどう捉えているのか。確認するには絶好の機会と言え。
それは奇しくも――――ジュストの目的とも大凡の部分で合致していた。
"――――それで、君は何を確認しに来たのかな"
"……あら、何のことでしょう"
舞踏会で踊っている。それは周囲に融け込む最も容易な方法の一つである。
そうしている間に辺りの貴族達の声が聞こえてくる。王党派ばかりが集まれば空気感すら読める。
一言で言えば、彼らに危機感はない。それは学園長。即ち『白銀』が"王党派"であるからだ。
学校がどんな色に染まろうと、最高権力者が王命の下にあるならば心配はない。
殆どの貴族がそれを額面通りに信じている様に見える。とは言え――――その一方で。
"君の派閥次第では、王党派について話しても良い"
"……秘密。でも、顔は憶えておきます"
ジュストは自らが踊った相手が"帝国貴族"であり、"貴族派"の令嬢と繋がりを持つ事を知らない。
アウレーリアはその"王党派"の貴族が学園生であり、今まさに動き出そうとしている事を知らない。
思いがけない所で、奇妙な縁が繋がったりするのもまた。舞踏会の醍醐味である。
●Moon Light
屋上は酷く冷え込んでいたが、座っていられない程ではない。
ゼラルム・エルホワイトは、自前で持ち込んだブランケットに陣取った上で呟いた。
「ダルい。何だこれ。この……」
「舞踏会?」
「長寿種族主体ならともかく、殆どが短命種の癖に無駄が多過ぎるんだよこの国」
隣りに座った『真実映す灰簾石』サニー・フォン・オルライト共々に。
両名とも正装こそ着込んでいる物の、どうにも王国特有の"貴族行事"とは相性が悪い。
何せ、ゼラルムは自分をあくまで庶民と分類しているし。
一応貴族のサニーに至っては貴族社会そのものに興味がない。盛装なんて流石にねえ。
「でもゼー君。1階の料理は結構結構だったよ?」
「何してんのかと思えば態々食べに行ってたのか……」
「へへー、まあね」
呆れるようなゼラルムの言に、サニーがしてやったりと笑い返すが。
彼からすれば"貴族が大勢出張ってる様な場所へ良く行く……"以外の何物でもない。
(ま、しかし。二百年。二百年か。確かに、生きている可能性がなくもない)
脳裏に描くのは彼にとって最近の興味の向き先である、とある魔法使いである。
調べた限り、最初に出現したのはこの城塞都市『ノストガルデン』であると聞いた。
で、あれば。何か手掛かりでも有るかと僅かに考えないでも無かったが……
「いや、これ以上は時間の無駄だな。せめて少しでも面白みのある真実が在る事を願うか」
恐らく、本命は"こっち"よりまだ"学園"だ。ある程度の憶測と目処は付いた。
ここで延々だらだらしていても仕方ないかと。隣で座ったままの幼馴染に問いかける。
「1階で何か一品選ぶなら? ぱっと取れてぱっと出られるのが良い」
「えー……甲乙つけがたいけど、腸詰めかな」
――――
冷え切った秋風に煽られ髪を抑えると、柵に寄り掛かる黒い正装の男が見えた。
「……正装も、良くお似合いです」
「これはお恥ずかしい所を。レインフィール殿も、今宵は随分と鮮やかな装いで」
見知った顔に、ほっと息を吐いた『静謐なる仮面』レティシア・レインフィールは。
言葉と裏腹に平然としたガレスの仕草に思わず笑いを零す。
継いで何気なく語ったことは他愛もなく。最近は学園の方で忙しくて、等と四方山話。
黒い騎士は随分と聞き上手で。これは白い騎士とのやりとりで育まれた物でしょうかと。
そんな事を考えながら、話はとある子爵家の一件へと巡り――――
相手の沈黙と、瞬きで気がついた。頬に触れると指先が濡れる。頭が真っ白になった。
「……以前、湖畔では聞けませんでしたが」
狼狽と羞恥は遅れてやって来た。混乱が思考を満たす。涙で濡れた頬を抑え慌てて俯く。
「何があったかお聞かせ頂けますか」
なんで。―――なんで。―――――なんで、いまさら。
――――恐怖すら憶え髪の合間から見遣ると、漆黒の瞳と鉢合わせた。
膝をついた騎士の袖を震える指が摘まむと。自嘲と自己嫌悪なら幾らでも汲み上げられた。
"私はあまりにも愚かで、無力でした"
"其処に居たのに、何も出来ませんでした"
"傷を癒せても……誰も、護れませんでした"
これでもう、この騎士が自分を慮る事は無い。皮肉な安堵が腑に落ちる。
貴族令嬢として有るべからざる醜態。青き血の恥。家の恥。可笑しさすら込み上げる。
「それでも、貴女は自分を救ったではないですか」
――――だから最初は、何を言われたか分からなくて。
頭を振る。無数の否定が脳裏を過ぎる。けれど声にならなかった。
騎士が困ったように笑うのが見えた。それは違うと否定。否定、しないといけないのに。
「貴女の否定を、自分は否定しましょう。此処に証人が、証拠を携えて居るからです」
口が戦慄くも声が出ない。差し出された手布は表情を隠すのに好都合で。
悔しさ混じりに片手で受け取り、熱を憶えた顔を覆う。
恐れていた静寂は。思うよりも。決して――――冷たいものではなくて。
「……ずるいです、そんなの」
袖に添えた指先が、離せない。
――――
「なーに黄昏れているんですか、リサ様?」
「へ、ぇ、あ。ええ!?」
呆、と屋上の片隅で夜空を見上げていた『導くカノープス』リサ・ベイカーが。
恐らく1階から勝手に持ち出してきたのだろう酒杯を押し付けられ悲鳴を上げた。
視線を向ければ其処には黒髪に褐色肌。シャルガネ風の盛装に身を包んだ女性。
『黒鋼龍』が御用商人――――名を、シズルと言う。
「え、何で……シズルさんが」
「あは、辺境伯様が事件解決の立役者の一人として気遣い下さいまして。
リサ様こそ、どうもその御様子だと、未だ未だ取り立てには早そうですね……?」
瞳が弧を描くも、絶対に相手の表情の観察を怠らない。この人はこういう人だったと。
取り繕っても仕方ない。受け取った酒杯を傾けると甘い葡萄の芳香が口内を満たす。
「お酒じゃないんですね」
「次があればご馳走しますよ。なるべく盛大に」
素性は愚か、歳まで把握されている。こういう人ならきっと。何でも上手くやるのだろう。
まず10歳も違わないだろうに。……遠い。とても、とても。
「沢山の宿題、ありがとうございます。その……今は、まだ何も支払えませんが」
「いいえ。私だって暇じゃありません。投資先は選びますよ」
じっと見詰められ、遠目には黒く見えた瞳に青が混ざっている事に気付く。
王国ではまず見ない虹彩に、はたと見合うような形になっていたことに気付いけば。
「それなら……出来れば今後とも。良いお付き合いが出来たらな、と」
「ではお友達から始めましょう。勿論、商談であれば手加減抜きということで」
くすくすと。からかうような声音で笑う年上の女商人は。どんな時でも軽やかで。
それは同盟の商人の誰とも違う。何処までも自分に正直な姿に見える。
思えば、それは羨望であり。或いは、憧憬なのかもしれない。
だからこそ。いつか追いつきたい。負けたままではいたくないと思うのだろう。
高い音を立て、2つの酒杯が星空の下で鳴った。
●Red and Black
「女性にああいう褒め言葉はどうかと思います。……壁際の私には見向きもして下さいませんし」
「仕事で行っただけ――――いえ、それは語弊があります。認識は、していました」
「尚更、悪く有りませんか!」
3階から屋上へ続く踊り場。壁際でキーゼがお説教を受けている。
寄り添うネーヴェの声は控えめな物の、捕まっているキーゼに届かない訳もあるまい。
傍から見れば恋人同士の甘い逢瀬にしか見えない為、辛うじてキーゼの名誉は守られているが。
屋上へ向かう人間から見れば丸見えである為、ネーヴェにしても中々に強引な策だと言える。
そんな、踊り場の直下。
「……さて、それで私に何用でしたでしょうか」
声だけが響く。屋上から1階へと向かおうとしていた黒い騎士の問に応えは無い。
……けれど、振り返った先が確かに自分を見ていると分かれば誤魔化しも効かず。
「コーニッシュ卿。貴方は貴族派……コーニッシュ伯爵家の縁者で、間違いありませんか」
声を上げた『誓約の剣』Alexandra・Hexe・Claudiaに、ガレスが怪訝の色を浮かべる。
その容貌は……彼女の剣の主と似ていると言われればまあ、似ていると言えなくもないが。
「……義父……いや、義弟の関係者、ですか。何です今更」
その眼差しは冷え切っている。家名に思う所はない、否。関心が無い、と言うべきだろうか。
瞳の奥に常に熱を感じる彼女の担い手とは対極だ。まるで、死人か何かのよう。
「貴方から、貴族の在り方が学べるかと思ったのですが」
「貴族……ですか。であれば私に教えられることは何も有りませんね」
期待外れだ。あらゆる意味で、この人は誰かの上に立つ様な人間ではない。
どちらかと言えば自分達に近い。ただ為政者に使われる、戦う為の道具。
「その様ですね。失礼致します」
背を向ける理由なら十分に過ぎた。Alexandraは一礼をすると踵を返す。
こんな人間なら、主に命じられれば誰であろうと無感情に斬って捨てるだろう。
例えば――――彼女自身もまた。主に命じられたならばそうするように。
――――
3階、舞踏会場。
一曲済んでひらひら手を振った『透徹の蒼眸』エルゼリオ・レイノーラはと言えば。
事前に踊っていた貴族令嬢の家名を覚えるだけで精一杯だった。
と言うのも。恐らくは未婚、妙齢、高位貴族と言う辺境伯の立場を見込んでだろう。
舞踏会にやって来た王党派貴族にはとかく令嬢が多かった。
しかし辺境伯が踊れるのは1曲1名。多くて2名だ。必然的にあぶれる令嬢が出てくる。
となれば、自称"衣装に着られている"エルゼリオとて。声が掛からない訳も無く。
「正装は鎧、言葉は刃。舞踏会は戦場だって父上達が言ってたなぁ~……」
あと1人位……! と一念発起して対した令嬢は。これまでの誰より地味な真っ白な盛装。
けれど、そこに刻まれた刺繍は。小さな。けれど確かな白薔薇が描かれた筆の紋。
「――――! その、良ければ……踊って頂けますか」
「ふぁ、はい!? わ、私で良ければ、喜んで」
クローディアというその少女が、白薔薇の末端『白筆』の令嬢であり。
彼が知己を得た『学園派』に属す学園生であるとエルゼリオが知るのは、もう少し後の話である。
――――一方で、会場入口付近ではまた異なるトラブルが発生していた。
「かぁ~、こーいう格好は窮屈でしょーがねぇな……お! 何か凄い格好してんな」
「あれ、赤いのじゃん。あ、そういやさっきメルを手酷く振ってたでしょ。聞いたよー?」
「俺は何者にも縛られねぇからよ。悪ぃな!」
歯を剥いてあっさりと笑ってみせる『邪竜殺し』ハヤト=ガラン=ヴォルファングを。
呆れて見ていた『白騎士』アストリッドがまるで何か思いついた様に、にんまりと笑む。
「だったら、あたしがちょっとだけ偉い偉いって褒めてあげよっかな?」
「お、おおお!? いや、そりゃむしろ喜んで受けて立つけどよ。え、酔ってないよな?
ちょお、そんなひらひらした服だと色々当たって――――」
それを。
――栗鼠のラトは舞踏会場の硝子窓から垣間見ており。
――――更にその状況を、屋上の『諜影操羽』ルチル・プルメリア・グレイハーツが実況し。
――――――更にはその実況を、『音無』サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブが聞いていた。
「えええっ!? そんな距離近いの!? ちょ、何それなんかむかつく――――!!」
「白騎士殿の事なら二人が付き合う前から声をかけていたからねぇ……」
「そういう問題じゃないんだよっ! ……今どんな感じ?」
「……浮気性は治りづらいし、延々と拗らせるより割り切った方がいいんじゃないか」
「今、どんな感じ!!」
「はいはい、えーっと……あ」
「あ!? あ、何!!!???」
浮気者のハヤトがまたナンパするのではないかと泣きついてきたサフィラの面倒を見るルチル。
そのルチルに派遣された特派員ラトによって、色々当たっているハヤトの罪状は明らかである。
この場合、恐らくハヤトは積極的に悪ではないが。恋人権限により情状酌量の余地は無い。
「もー! 我慢の限っ界っ! ちょっと乗り込んでくる!!」
盛装に早着替えして駆け出すサフィラを他所に。
屋上のルチルは呆れたようにその後輩へ手を振った。勿論ラトは速やかに回収済である。
情報には代価が必要と。サフィラから代価として受け取った毛皮を羽織りながら。
さて、これからどうしたものかと1階の立食パーティ会場から掠め取った酒を傾ける。
『あ! 初めまして! ハヤトの"彼女"のサフィラでーす!』
"サフィラ!? いや、ちょ、これは……違っ!?"
『あれ? ハヤト何してるのっ? あたし? あたしは会場警備のお仕事だよっ!
勿論ハヤトも手伝ってくれるよね! ね!?』
"あ、そうなんだ? じゃあ仕方ないなあ。警備頑張ってねー、ハ・ヤ・ト"
『あああ、何これ見よがしにくっついてるのゆっるさーんっ!!』
3階からハヤトの悲鳴が聞こえるも。例え情報屋にでも知るべきでないことはある。
惚れた腫れたは犬も食わない。冒険者同士のいざこざであれば尚更だ。
毛皮は案外温かかった。
●Shooting Star
「王国人でも無く、唯人ですらない。亜人を囲い込むなど、正気か?」
「両親は権力闘争で敗死した商人。おまけに先祖には半獣人を排出した。
私はですね、いわゆる唯人の出来損ないです。負った借金は金貨15万枚」
人気が捌けた屋上の。その更に陰。『至金の竜眼』ナハティガル=ラーが対するは。
竜の商人、シズルである。シャルガネの印象が強い黒髪であるが。言われてみれば。
その褐色の肌は王国東西の境界。"砂漠の民"と呼ばれる人種の特徴でもあったか。
彼女が真っ向から叩きつけて来た告白に、ナハティガルが思わず瞠目する。
「驚かせられたなら話した甲斐が有りました。良いですか、『銀髪鬼』様。
そんな私が、今こうして此処に居る。真っ当でしょうか。普通でしょうか。いいえ、違います」
爛々と輝くその眼差しは、彼が知る、とある学園生が時折見せる物と近しい。
自らに依る力だけで、世界を切り拓くのだという自負。それが、恐らく彼らの強みだ。
「普通でないことをするには力が必要です。周囲を黙らせる力。それは数であり言葉であり知性。
『竜』は貴方にその価値を見た。私風に言えば――――つまり金貨15万枚の価値をです」
その言に。力も無い、手繰れば折れる女の身で。ナハティガルに真っ向対する様に。
笑いが漏れる。――――澱が集えばこういう奇形が生じるか。世界の闇は此処まで深いか。
「俺が興味があるのは、竜の仔が創るという未来とやらだけだ。王国に忠誠を誓う気はない。
――――それでも良ければ、手駒となろう。上手く使え」
「きっと、そう言って下さると思っていました」
それは商談だ。刃と言う力と、金貨と言う力が結びつけば世界は変わる。
理想とは。革新とは。"誰も文句が言えなくなってから"始まる。これは、その一端でしかない。
――――
同盟出身である自分が、こんな『王国』の辺境で誰かに頭を垂れると言うこと。
そんな未来が想定出来ていた訳ではない。少なくとも、冒険者と身を立てると決めた時には。
けれど『交渉巧者』ザザ=ステルヴィナは。
――――今、確かに自らの意思で。北方の英雄からの騎士叙勲の申し出を受け止めていた。
「私は王国人ではなく。忠誠は王国になく。あくまで、貴方に。それで構わないなら」
「構いません。貴方の功績と成果を評し、貴方の血と心の自由を認めましょう」
「……謹んで、お受け致しますわ」
幸いにも――――北方辺境騎士団には既に森人の騎士の前例が有る。
ザザにとって王国で最も大きな障害である種族格差。その垣根が、この騎士団では酷く低い。
「あらら、辺境伯様の騎士叙勲の申し出受けられたんですね?」
「シズルさんもこんばんは。私が騎士になるのはそんなに意外だったかしら?」
「ええ、それはもう。貴方はお独りなのが好きなのだとばかり」
階段で出くわした『竜』の商人から掛けられた言葉は、思えばそれほど外れてはいなかった。
力さえあれば一人は気楽だ。差別されない。忌避されない。虐げられない。
既に家族は棄てたと思っていた。故郷にも、もう帰る事はないと思っていた。
そんな自分が、護るべき物を得たということは、果たしてどんな運命の皮肉だろう。
「そうね。けれどきっと、独りでいたかった訳じゃなかったんでしょうね」
――――それを、自ら選べたという事実は思っていたより誇らしく。
そう呟いたザザの横顔を見て。シズルは大仰に肩を竦めたのだった。
――――
舞踏会は夜通し続く。夜空は真っ暗で、その向こうには何も見えない。
殆どの来客が帰り支度を始めた頃。『裁きの女神』イヴェール・イリュジオンは屋上に居た。
(……来るべきじゃなかった)
没落貴族で元百家。貴族派に潰された庶民の子。自分で思うよりそこそこ知られている様で。
嫌悪感を感じる眼差しも幾つか。剣を抜かない為には自制心を総動員する必要があった。
「あ」
疲れ切って座り込んだ屋上の縁に。灰色の猫が座り、後ろ足で顔を洗っていた。
シエルと言う。彼女が名付けた灰色の仔猫は少し見ない間にまた成長していた。
思わず手を伸ばし、おいで。と口にしてみて。自分が弱っている事にやっと気付いた。
掌に触れた手触りはさらさらとして。確かに感じる体温に泣きそうな気持ちになる。
「……少し、辛い」
夢が遠い。理想が遠い。誰も彼も好き勝手を押し付けて。何も知らない癖に。分かったような事を。
責任が、義務になってしまっている事に。イヴェールは自分で気付けない。
「イリュジオン殿、どうされたのですか」
屋上への扉にメルヴィンが立っていた。愛猫を捜しに来たのだろう。
彼が舞踏会の案内役であったことは知っている。沢山の令嬢に囲まれていた事も。
そう言えば、恩を返してくれる何て言ってくれたこともあったかと、こんな時に思い出した。
「……我儘を、聞いて貰えますか」
日々の執務で疲れている貴人に猫を贈った。名付けを預けられ沢山悩んで。
遠征軍で困っていると聞いて助けに行って。それなのに薄情にも勝手に帰ってしまって。
……猫が結んだ縁。それだけ。ただそれだけ。だから。
「何でしょう」
もう、自分に確信が持てないだなんて。きっと、言われても困る。
もし、自分が道を誤ったら――――終わりにして欲しいだなんて――――言えない。
「……恩返し、して下さい」
だから、冗談めいたその言葉が。ちっとも冗談に聞こえなかったとしても。
「では。貴女が本心から助けを求める時。
私はあらゆる手段で貴女を助ける。という物では如何でしょう」
――――耳に届いたそんな言葉が。ちっとも冗談に聞こえなかったとしても。
「……何も、知らない癖に」
「ええ。何も聞いていませんから」
それは秋の終わりのこと。とある貴族の舞踏会のこと。灰色の猫は静かに顔を洗っていた。
長い長い夜は、けれど必ず終わる。
――――それはまだ。北方辺境伯領が、静かな夜を迎えられた頃のこと。
マスターコメント
イベントシナリオ普通 報酬:標準21 / 15〜25人
2021年11月05日 22時57分36秒 公開
参加者
相談掲示板
キャスターのザザ=ステルヴィナよ。今回は宜しくね。 私は【1】に参加させて頂く予定よん。
サンダーソン家のライラだ。 あたしは【1】の立食パーティに参加するつもりだ。 …食い気を優先したわけじゃねえぞ。 慣れないダンスなんてやったら相手の足を踏み潰すからな。 ちゃんとしたドレスを着て、貴族の子女らしく振舞う練習をしようと思ってさ。 ………貴族の子女って、どんな会話したらいいんだ?
ごきげんよう。 レティシア・レインフィールと申します。 皆様、よろしくお願い致します。 私は辺境伯様への返答後、屋上へ参りますので【3】になります。 ……そこで可能であれば、ガレス様と少々お話が出来れば、と。 >ライラ様 貴族子女らしい会話となりますと、いざご説明させて頂こうとすると難しいのですけれど お互いに気遣い、楽しもうというお気持ちがあればよろしいのではないかと存じます。 今回は残念ながら私は現地でお教えさせて頂く事は出来ないのですけれど もしまた機会がございましたら、その時は微力ながらお手伝いをさせて頂きますね。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、みんなよろしくな!! 俺はたらふく飯食ったら早々に屋上でのんびりさせて貰おうと思ってから【3】だな♪ それにしても屋上で休憩(意味深)…←×
クラウディアです。 ―着飾っての夜会、か。何時ぶり…いや、そんなものはなかった。 こちらも選択肢は【3】となりましょうか。 特にこれというものを話すわけではありませんが…コーニッシュ卿を直に見る機会とはなりましょうか。
>レティシア様 あー、うー……(すぐに丁寧な言葉が出てこない) お、お心遣い感謝します。楽しもうという気持ちはともかく、相手をよく知らぬままの気遣いは礼を失することにもなりかねません。恥ずかしながら理解できるのは血なまぐさい話ばかり。話題としては不適当でしょう。 ですので今回は聞き手に徹しようと考えています。 (舌がもつれそう
シルヴィアだ。今回はよろしくね。 【2】の舞踊会に参加する予定。失礼の無いように気を付けつつ、楽しんでくるよ。
リサ・ベイカーです。 今のところ、【3】予定です。 あちこちにご挨拶したあと、休憩ですかね。シズルさんに会えるかな?と思いつつ、会いたいような会うのが怖いような…
>ハヤト ジ-ッ(#・ω・) あ!サフィラだよっ! まだ何するか決めてないけど舞踏会楽しむねっ!
エルゼリオ・レイノーラです。今回はヨロシクね! ボクは【2】の舞踊会に参加する予定だよ~。