夏の漣
崎田航輝
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シナリオID:1244
オープニング
雲ひとつない晴れの下では、海は水面がきらきらと宝石のように輝いて……遥かな水平線まで眩さが続いているようだった。
「今年も夏がやってきた」
そんな声も聞こえてくるそこは、都市同盟は海辺の街、サンドラ。その東端に位置する、白く美しい砂浜だ。
例年、海での憩いを求めて観光客が訪れるそこは今年も盛況の様相で。
「賑やかになると良いですな」
「ええ」
と、浜を訪れて賑わいを眺める町長や町の重役達も楽しげであった。
サンドラは都市同盟の東側、その中央に近い海辺に位置している。
夏にも酷暑とはならず、比較的過ごしやすい気候となる事で――海風に当たりながら散歩をするだけでも快い。
浜は広く、多くの観光客が来ても混雑せずに過ごせるし……幾つもの店が立ち並んで美味も味わえるようになっていた。
海は泳げるだけでなく、魚を釣る事も出来る。美味な魚種も多く、それも人気の種となっていた。
だけでなく、時にはイベントも行われるし、夜には蓄光性のある貝殻が浜に輝いて明媚な景色が楽しめるという、自然の恵みもある。
浜にはスタッフが常駐していて海の安全も保たれており、至れり尽くせりとも言えた。
それもこれも、サンドラが海辺の観光によって街を盛り上げようとしているからで……観光客の多さはその成功を表しているのだった。
けれど、町長達にも現状に安心している訳ではない。
というのも――サンドラは決して遠方とは言えない位置に、かの有名なリブラネスタがあるという立地だった。
リブラネスタと言えば“最優”とも言われる都市。
それに比べれば、サンドラはつい最近観光で賑わい始めた新興の小都市に過ぎない。リブラネスタの陰に隠れて、いつだって閑古鳥が鳴く不安がある訳だった。
だからリブラネスタを超える……と言うと夢を見すぎだけれど、そういう有名都市と比べても立派に賑わってる、と言える程度には街を盛り立てたい思いがある。
「せめてもっと、名が知れてほしいですな」
「ここの海は魅力的なんですから。評判さえ広まれば、きっと人も増えてくれるんじゃないでしょうか」
「評判か――」
重役達は話し合って、一つの案に行き着く。世界を巡る冒険者達に、この海の魅力を知って楽しんでもらおう、と。
そうして眩い陽射しの差す海に、冒険者達は招かれた。
白い砂浜と輝く海、快い風。
どこをとっても美しく心地良い景色の中、冒険者達がそれぞれに歩み出す先は――
解説
マスターより
リプレイ
その下で岩に座り、ヨル・スレイマンは釣り糸を垂らす。
「ここは何が釣れるかなー」
旅人故に釣りに慣れてはいる――休暇でまでやるとも思わなかったけれど。
ただ、澄んだ水面を見ると色彩豊かな魚が見えて。
(綺麗なものだ)
こんな場所でのんびり過ごすのも悪くない。
この穏やかな変化を歓迎していいのかと、未だ迷う気持ちはあれど――
「おっ」
糸を引く感覚に、竿を上げると美しい魚が釣り上がる。
「お、ヨルじゃねーか」
ぶらぶら歩きつつ、遠くに目を留めたのはナハシュ。そこに丁度釣り終わりのヨルを見つけて、歩み寄った。
「何してんだ?」
「おや、君か。ちょっと海釣りをね」
「へー、これ全部か?」
桶の中で跳ねる魚に、ナハシュは感心の声音だ。
「泳ぎはへっぽこなくせに釣りは上手ぇな!」
「一言余計だよ。まあいいけど――沢山釣れたし料理しようか。食べるだろ?」
「勿論だ!」
というわけで早速準備。
ヨルが網や鍋を借りてくると、ナハシュは流木で焚き火。ヨルはそこで白身魚の塩焼きと、ついでに煮魚とマリネも用意する。
「ま、凝ったものは作れないけどね」
「これだけありゃ十分だろ」
ぱちぱちと響く音と昇る香りにナハシュは楽しげだ。
早速塩焼きにかぶりつくと……皮はぱりっとほどけ、身はふわりと柔らかく。
「うめぇ!!」
煮魚もはふはふ、マリネもぺろりと平らげるから。
「釣った甲斐があったな」
それを見るとヨルも嬉しくて、迷いも一旦、奥に引っ込む心持ちだった。
夜になると海は静寂だ。
ナハシュはそこを一人遊泳していた。
ぱしゃりと静かな水音が鳴って、ひんやりした温度が肌を撫ぜる。そのまま程よい距離で仰向けに浮かんだ。
海と空と自分しかいない空間を味わうように。
「――」
夜空は好きだ。
子供の頃生まれて初めて見た空だからかもしれない。
「最近は1人こうして過ごすことも減ったからなー」
やっぱ空は夜がいい、と。
実感と共に月に瞳を細める。
ぷかぷかと浮遊する感覚が、快くて。ナハシュは暫し夜に揺蕩っていた。
「わぁ、海……!」
陽色の瞳に青い水面を映し、コルネリウス・アーラは声音もどこか綺羅びやか。新調した水着で来られた事も嬉しくて――イズレンディル・パラリムの手をぐいぐいと引いていた。
「イズさん、競争をしましょう!」
「はい、負けませんよ!」
応えるイズレンディルも、湖でなく海で遊べる事が珍しくて。ワクワクとした心と共に、腰巻パレオを靡かせながら海へ入ってゆく。
ひんやりした心地を楽しみながら、コルネリウスへ目をやった。
「泳ぎは得意なんですか?」
「ええ! 子供の頃は川遊びをしていたので!」
少々誇らしげに言いながら、コルネリウスは合図と共に出発。綺麗とも言えるフォームでぱしゃりと泳ぎ始める。
けれど……水は跳ねれど一切進まない。
否、進んではいるけれど余りにスローなのだった。
イズレンディルも泳ぎ始めていたが、程なく距離が開いている事に気づき停止。慌ててコルネリウスの元へ戻ってゆく。
ゆっくり足をついて立ったコルネリウスは、恥ずかしそうに笑いかけた。
「えっと……上手な泳ぎ方、教えて頂いても……良いでしょうか」
「では、一緒に練習しましょうか」
イズレンディルは、ふふ、と楽しそうに笑ってから。コルネリウスの手を取って、ばた足から教え始める。
「コルネさんならすぐ上達しますよ」
「頑張りますね……!」
コルネリウスは言いつつ余計な力を抜いていく。と、すぐに水を掴まえる感覚を得る。
「とても上達されてますよ!」
「自分でも、判る気がします……!」
それから一人でも上手く進めるようになると――
「リベンジさせてください! 今度はきっと上手に泳げる気がしますので!」
「では再戦といきましょう。ふふ、次も負けませんよ?」
微笑んだイズレンディルと、再度競争開始。
イズレンディルは手は抜かず、けれど楽しみながら。コルネリウスは今度はそこに置いていかれぬようついていって。
「――楽しかったですね」
「はい! イズさんのお蔭で、上達しました!」
気持ち良い疲れの中、沢山遊んだ二人は――暫し波間で笑みを交わしていた。
「穏やかで美しい海だね」
涼風に髪をそよがせながら、セヴラン・クアルトは浜を歩んできていた。
燦めく水面が美しく――ふと隣にも目をやって。
「クレアさんもアンネさんもとても魅惑的で綺麗だよ」
海の青さに良く映えるね、と。
言葉をかけるアンネエルカとクレア・エクレールは、それぞれに水着姿。ふんわりとした印象のかわいい水着を着たアンネエルカは楽しげに。
「ありがとう! クレアも――ドキドキするくらい大人っぽいものを着ちゃってもう!」
「ふふーん、捨てたもんじゃないでしょ?」
そう言うクレアは綺麗で優美なタイプ。
アーシェル・G・クラインは笑顔で頷きを返す。
「大人っぽくて正直驚いた。それに、アンネは水着姿も可憐で可愛いな。二人共、良く似合ってる」
目の保養をありがとな、と。
言いながら、アーシェル自身もまた筋肉美を惜しみなく披露して。
「それじゃ、始めるか!」
「おお!」
頷くアルフィー・リッパーが釣り竿を手にしてアーシェルと共に走ってゆく。
クレアはそんな様子に微笑みつつ。
「男性陣も皆、様になってるねー。ボク達もいこっか!」
「ええ!」
答えたアンネエルカも水辺へ。
普段槍を握っているからついつい銛に惹かれてしまったけれど……今日はまったり過ごすつもりだから始めての釣り竿で、針を海へ垂らす。
近くにセヴランも座って、ゆるりと釣りを始める……と。向こうではアーシェルとアルフィーが並んで釣り竿を握り。
「アル、どっちが多く釣れるか勝負だ!」
「負けられないな」
勝負となればアルフィーは真剣。意気込みと共に、尻尾をぴーんと上げながら糸を海に揺蕩わせ始めた。
するとすぐに糸を引く感覚があって――
「来た!」
「こっちもだ」
アーシェルも竿を引いて、一気に持ち上げる。
と、二人同時にばしゃりと釣り上げたのは、針が引っかかっただけの空き瓶で。
「ははっ、仲良く同じミスだな」
「やっぱり、アーシェルさんとアルフィーさんは仲良しね!」
アンネエルカも微笑ましげに言うと、アルフィーは「仲良しじゃねー!」とふしゃー! となりつつも……すぐに再び針を海へ。
アーシェルもまた再チャレンジ。アンネエルカは自分は数匹、綺麗な魚がとれたので……後はそんな二人を眺め続けた。
セヴランもまた釣りはそこそこに……土産物店で買った小さな弦楽器を爪弾き始める。
ぽろろん、とご機嫌な軽めの音色がお気に入りで。釣りをする二人を応援するように、のんびりと波のリズムに乗せてメロディーを紡ぐ。
『波の行先 海の底 空の果て 揺蕩う夢は何処に着く……♪』
「素敵ね!」
声を華やがすアンネエルカに、クレアも頷いてリラックス。
「青い空に青い海、セヴランさんの奏でる音と波の音……全部が重なっていー感じ――」
それでもクレアは、じっと待っている性分ではなく。
そうだ、と持ってきていた銛を手にとって。
「これで直接とろっかな?」
「まぁ、楽しそう――!」
アンネエルカが言って見守る中、クレアは軽やかに海へ飛び込んで。素潜りで魚を探し始めた。
「どう?」
アンネエルカが見下ろすのに、クレアは水面に顔を出して笑みを返して。
「結構いるよ! これならとれそう」
再び潜って澄んだ青の世界を泳ぎ――獲物を次々突いていった。
一方、アルフィーもセヴランの音楽に尻尾を左右に揺らし、リズムを取りながら……大きな引きに当たる。
「今度こそ本物だ」
「こっちもらしい」
アーシェルも音楽に微睡みかけていた所に当たり。強い引きに負けず――大きな魚を釣り上げていた。
「とっても綺麗……こっちはユニークね!」
アンネエルカが駆け寄ると、アルフィーのものは美しい銀色で、アーシェルのものは異様な見た目の大物だ。
「どっちも凄いね、これなら引き分けかな?」
と、海から上がってきたのはクレア。クレアもまたタコやエビを獲ってきていて……結果、皆で大漁。
セヴランも自身が釣った魚をそこに加えて。
「さて、あとは美味しく頂こう」
涼風に水面が青く輝く。
そんな景色を望む岩礁へアルバス・ロウルは登ってきていた。
「足元に気を付けるんだぞ」
「はーい!」
と、横に並ぶルルト・アーキスは元気に応え――丁度いい岩場へ。アルバスがそこへ釣具を置いて……流れや道具を説明し始めた。
「あとは釣り針を軽く振って海に垂らして待つだけだ」
アルバスが自身の釣り竿でやってみせると、一生懸命聞いていたルルトは頷いて。
「やってみるね!」
一度竿を後ろに倒し……それからひゅん、と大きく前へ振りかぶる。
と、何か違和感。
「……あれ?」
引いてみると……自分の帽子に針が引っかかって持ち上がっていた。
「失敗しちゃった……」
しゅーんとするルルト。
だがアルバスは穏やかな笑いを見せる。
「初心者だとあちこちに針を引っ掛けて危ないというのは、よくある。俺はそれで尻に針を引っ掛けたものだ」
「……アルバスも?」
そんな失敗談に、ルルトはくすり。
気を取り直し、「焦りは禁物」の言葉に従ってアルバスの隣に座り――じっと海と糸を見つめ、魚がかかるのを静かに待った。
すると――
「……沈んだっ!」
「かかったか!?」
確かな手応えに頷き、ルルトは竿を握り寄せる。
「ふぬぬ、おーもーいー……っ!」
引きは強く、一瞬持っていかれそうになるが――アルバスも一緒に支えた。
「これはでかいぞ!」
直後、ばしゃっと上がったのは、身の丈に迫るほどに大きい銀の魚。
「うわぁ……おっきい――わ、わ、どうすればいいっ!?」
「大丈夫だ」
飛び跳ねる魚を前に大はしゃぎのルルトに、アルバスは言いながら網でしっかり捕獲。にっと笑ってルルトに見せる。
「大物を釣ったな!」
「うん!」
ルルトは瞳を輝かせる。
それを見て、アルバスもまた嬉しい気持ちだった。
「海。砂浜!」
快い日差しと潮騒。
ハルハン・ツァガーンナルはその中を笑顔で駆けてきていた。
「ここは、暑くなりすぎなくてとてもいいですね。過ごしやすいです」
「そうだね! それに色んな魚もいそうだし」
と、銛を手にしているのはライオネル・ギシュム。皆とのバーベキューを豪華にする為にと、準備運動をして。
「よーし、いくぞー!」
そのまま海に飛び込んでゆく。
そんな様子を見つつ、ハルハンも海に入ってまずはぷかぷか。
「心地良いですね――」
暫しゆったりした後は、周囲を泳いで一周。岩場からの飛び込みも体験して目一杯に遊んでゆく。
一方、ライオネルは海中にて聴覚を研ぎ澄ませ、サーマルアイも駆使。
近くに魚群を捉えると、景色と同化して潜み――
(今だ!)
魚群が接近した好機に流体弾を放って弱らせ、一突きにした。
そのまま暫し魚を獲ると――海から上がってバーベキューの準備中のところへ。
「見て見て! すっごい大物獲れた!」
「わぁ! すごいです!」
と、笑顔で迎えるのはエヴァン・ピオネロ。網に台にと、道具を揃えており……早速炭を熱し始める。
「ぼくも朝に、蛤と栄螺を獲ってきたんですよ。一緒に焼きましょう」
「それじゃあ、ボクも出しておくねー」
言って隣で荷物を開くのはアルマ・ヴァレンタイン。
取り出したのはアルマとっておきの謎肉こと迷宮産お肉セットだ。
「じゃんじゃん焼いていこー」
「ん、お肉もいいけどネ、ワタシは野菜が大好きなのヨ」
という事で、人参にナス、かぼちゃを並べていくのは梅・雨陽。まな板でさくさく切り分けると、早速それを網に乗せて。
「モリモリ焼くヨ」
「あ、ボクも貝をとってきたので、焼きますね!」
そういうハルハンもまた、ゲットしてきたものをぽんぽんと乗せてゆく。
「魚は、串焼きも良さそうですね――」
「せっかくだから、色々と作ってみましょうか」
そう調味料を取り出すのは、リサ・ベイカーだ。
生食出来る魚をまな板にのせると――包丁で綺麗におろし始める。
ライオネルはわぁ、と感心の面持ち。
「リサさん、上手だなー」
「やってみますか?」
リサが言うとライオネルも頷き見様見真似でさばいてみた。
「滑って難しい……!」
それでも何とか白身を薄く切って……刺身の完成。更に肉を焼くのも手伝って。
「中まで火を通すようにねー。でも焦げないように」
「うん!」
と、アルマにも教わって調理。じゅうじゅうと焼けてくると、魚介を焼いているエヴァンも楽しげに。
「良い匂いです……!」
焼けてきたらタレや醤油をかけて仕上げ。皆へと取り分けていく。
「そろそろ食べましょう!」
「いただきます!」
ライオネルは早速、焼き魚を一口。ぱりっとした皮と柔らかな身の脂、その美味を塩が何倍にも引き立てていて。
「美味しい!」
「これは、やめられないですね――!」
ハルハンも串焼きの魚に舌鼓。焼き立てをはふはふしながら食べるのが、他にはない醍醐味で……食が良く進む。
「お肉もよく焼けてるよ」
と、アルマも肉を齧りながらご満悦。溢れる肉汁が、炭火焼き特有の香りとよく合って、濃いめのタレも抜群だ。
エヴァンも肉を口に運び、「アツッ」と少々驚くけれど……成長期の胃袋は止められない。ほふほふと食べて、満足の笑みだった。
雨陽はそこに焼いた野菜も盛っていく。
「いっぱい食べるのヨ」
「ありがとうございます……!」
ナスはジューシーに、根菜や葉物も香ばしく。
エヴァンが野菜ももりもり食べると、アルマや皆も頂いて――バーベキューが賑やかに盛り上がり始めた。
その近くへ歩んでくるのがスヴァン=ウォルフ=ユーウェンだ。
「……ここは海が売りなのか」
遥かな水平線を望みつつ、しかし海には入らない。というのも、スヴァンはふぁさりと揺れる自慢の尻尾――その毛繕いに一時間以上は掛けている為。
濡れればその苦労が文字通り水の泡、という事で……海へは向かわず料理に賑わう一角へ。
日陰につくと、調達してきた魚を焼き始め――小麦粉の生地を使ってお菓子もまた作り始めた。
すると香りが潮風に乗って……近くを歩いていたジョン・ベアーが足を止める。
「むぅ、何か、美味そうな匂いがするのう。特に甘い匂いが……」
「これの事か」
と、スヴァンが丁度焼き上げるそれはチョコをふんだんに練り込んだケーキ生地。追いチョコをかけて艶めかせ、ガトーショコラの完成だ。
「見ろ、太陽にも負けないくらい眩い輝きを放つこの黒い宝石を」
「おぉ――」
「夏といえばアイスだな」
言いつつ、スヴァンは氷や紋具もフル活用し、チョコ布教の為にと磨いてきた腕を披露。冷たいチョコジェラートも用意した。
「食べてみろ」
「ええのか?」
スヴァンが頷くと、ジョンはジェラートをはむり。快いひんやり感と、上品な甘さに瞳を見開いていた。
「こいつは美味いのぅ!」
更に魚も頂いていると……そこにアルマ達も歩んでくる。
「お肉も焼いてるよー。一緒に食べない?」
「うむ、邪魔したいところじゃのう……む?」
と、ジョンが見ると海辺の方から更に歩んでくる面々がいた。
「お、やってるな」
「いっぱい釣れたよー!」
と、釣果を示すアルバスとルルト。更に、大福も丁度そこへ通りかかる。
「こんにちはなのだ! とっても賑やかなのだ!」
「わぁ、大福さん!」
エヴァンが駆け寄ると、暫し談笑。そこへアンネエルカ達の一行もやってきて、皆で改めてバーベキューの続きをする事に。
「大物ですねー!」
「こういうのが、美味かったりするんだ」
エヴァンに応えつつ、アーシェルが焼くのは異様な見目の大魚。ぱちぱちと焼けてくると、セヴランも成程と頷く。
「個性的な子こそ、一皮剥いたら別の一面を見せてくれるのかも知れないね」
「こっちも焼けたぞ」
と、アルフィーも自分の釣果をしっかり塩焼きに。
「食べごろだから食べろ」
「美味しそう! 頂くねっ!」
クレアが早速受け取って、はふりと食べると……身がほろりと柔らかく、味は濃く。
「ん~! 美味しい!」
「ええ、本当ね!」
アンネエルカもはむ、はむ、と小さく齧っては熱々の美味を楽しんで頷く。
そこでアーシェルも大魚を焼き上げ……一口食べて笑顔。
「ほら、見た目で判断しねぇで食ってみろよ」
「……」
勧められたアルフィーは一瞬変な顔をしつつもあむりと食べて……目を見開いていた。
「見た目に反してうまい……」
「アーシェルさん、アルフィーさん、こちらもどうぞ!」
と、そこにリサが煮魚も運んでくる。それは脂と醤油の旨味が何とも相性抜群で……皆は感心の面持ちで味わっていた。
ルルトも幸せそうに焼魚を頬張って、笑顔。
「ふふふー、美味しい♪」
「うむ、美味だな!」
アルバスは皆の料理を頂きつつ、自分も魚を焼いて振る舞って。
「獲れたてだ! 旨いぞ! 焼きそばに、スイカもあるからな!」
「あら嬉しいワ。それじゃお返しに野菜ヨ」
雨陽も丁度いい焼き加減の野菜をたっぷり盛ってあげる。
いい感じの肉や魚も、二人だけでなく、勿論皆に。
「夏バテ対策にも皆もりもり食べるのヨ~!」
「全く、どれも美味いのう!」
ジョンは肉に魚に、もりもり食事。沢山ある上にどれもが美味なのだから、上機嫌だ。焼きそばも興味深げに実食。
「むぅ、この濃い味と、水分が適度に持って行かれる感覚……美味い!」
「あっ、ぼく、スイカ切りますね」
と、エヴァンが切り分けてゆくと、ジョンはそれにも興味津々。
「すいかとやらは不思議な模様しとるのう。……何、種は食べてはいけんのか?」
言いつつも、受け取ると時折ぼりぼり言わせつつ、豪快に食べてゆく。
アルマも肉を中心に、各種楽しみつつ。
「あとはこれも持ってきたし……あっ、な、何でもないよ?」
と、見られそうになるとそのエール的な何かをさっと隠したりして。
わいわいと賑やかな中、ハルハンもかぷりと魚を齧って満足の心持ちだった。
高原生まれの身としては、海の魚を食べるのは新鮮な気持ち。こうして砂浜で食べるのも初めだし、何より――
「皆さんと食べると、もっと楽しいですね!」
「うん!」
それにライオネルや皆も頷いて、暫し宴は続くのだった。
大福は皆と楽しんだ後、海へ。
「ついにこれを使う時がきたのだ!」
と、大きな浮袋を取り出して――キャスターらしき人を探して力を借り、膨らませた。
そしてそれに掴まって……ざっぷん!
「粽! 競争なのだ~!」
高らかに鳴いた粽と共に海を進み始める。
海水は冷たく、心地良く。それを暫し楽しみつつ……波の穏やかな場所で停止。浮袋に上がって、ぷかぷか浮かんだまま休憩した。
「粽……今、おっ母達はご飯中かな、なのだ……。町長さんや農園のおばちゃんは……」
粽が小さく鳴いて返すと――大福は思い立ったように浜へ。
木箱に砂と蓄光性貝殻、ヒトデ、海藻を浜の眺めに似せて配置して――海水も流し込んで小さな景色を作り上げた。
だけでなくイベントや紋具、種々のお土産もその瞳と記憶に焼き付けて。
「これで、倭桜ノ街の皆にも海を楽しんでもらえるのだ……!」
皆の笑顔を思えば――偶には観光する側になるのもいい。
そんな思いと共に、大福は歩み出した。
エヴァン達もまた、バーベキューの熱を冷ますように海へ。
「えいっ!」
ザブン、と水面へ飛び込むと、その快い温度に……ぷかっと浮かんだエヴァンは瞳を細めている。
「ふぅぅ気持ち……良いです」
「こういうの、夏らしくていいですね――!」
同じく海に入っていたハルハンも、水中から顔を出して楽しげ。
頷くアルマも、水の透明さに感心しつつ……潜ると海底へ足を着いて散歩。蒼に輝く世界と、燦めく魚群を楽しんだ。
「ぷはっ。ここの海、綺麗ー」
「ぼくも見たい!」
と、エヴァンも水中を巧みに泳いで暫し美観を楽しむ。
水辺でパチャパチャと冷たさを感じていた雨陽も……少々濡れてしまうと開き直って海へダイブ。大きく泳ぎ始めていた。
「とっても涼しいネ!」
「うん……!」
ライオネルもゆらゆら海に漂いつつ……こんな和やかな時間が楽しい。
(いいなぁこういうの)
どこの生まれとか、種族とか関係なく楽しめる――そんな場所がある事に、心が温かくなって。
(こんな場所が増えて、皆が生きやすい世界になったらいいな――)
実感していると、ハルハンが水辺に上がってゆく。
「貝も取りましょうか。その後は……またバーベキューです!」
まだまだ楽しい時間は終われない、と。
雨陽も頷いた。
「いいわネ。まだ野菜残ってるヨ!」
「それじゃあ、行こう!」
皆が浜へ泳ぐと、ライオネルもまた同じ気持ちで――夏の時間を堪能しに向かうのだった。
「ここ、ですか……」
リディリディ・トゥラ・イェレミースは海の家へやってきていた。
向こうのバーベキューには正直心惹かれたけれど――フィルエスでは海なんて見た事がなかったから、そういう場に寄ってみたい。
という訳で早速店に立ち入ると――
「……良い匂いがしますね」
甘い香りに芳しい香り。
それに惹かれるように、席についてメニューを広げて。
「とりあえず、この端から端までを……」
と、焼きそば風パスタから揚げたポテト、カリカリに焼いたソーセージと次々に実食。山のように盛られた品々をもりもりと食べ始めた。
「美味しい、ですね……」
他に無い味付けだが、その濃さが一層食を進めさせる。
水着は着てきているリディリディだが、もはや泳ぐ気などさらさらなくて、ひたすら食べる事だけに集中していた。
「あと、お酒も……」
と、グラスで頼んだエールも景気よく空にして、またもぐもぐ。本人はひっそり食事しているつもりだけれど、その豪快さが衆目を引く、そんな眺めが暫し続くのだった。
「これが海……湖とは全然違うわね!」
眩く燦めく水面を見つめ――海辺にやってきたロゼットは感嘆を表していた。
底の見えない青を覗きつつ、少し触れてみて。
「深くて広くて、あとしょっぱいわ!」
その味に笑みを零す。共に歩んできたエルナ・クルプファルツも、美しい景色に瞳を輝かせつつそちらへ向く。
「海は初めてですか?」
「ええ」
ロゼットは水源も貴重だった火山育ち。水遊びの経験も少ないから、心が浮き立っていた。
「それじゃあ、思いっきり遊びましょう!」
と、シャツを脱いだエルナは水着姿。気分は人魚姫とばかり――ぱしゃりと海へ入って悠々と泳ぎ始めていた。
ロゼットも素潜り。
すると水が澄んでいて、青みがかった自然が美しく。
(……見た感じ、あまり魚は見えないけど)
それでも横のエルナが指先に淡い光を灯していた。
エーテルの力による撒き餌の能力だ。
ロゼットも同じく輝きを生み出すと……期待通り、彼方から鮮やかな色の群れ。橙が青に映える、美しい魚達がやってきた。
(わぁ、可愛いです!)
エルナが泳ぎながら指先を踊らす。するとそれに応じて魚達も曲線を描くように見事な泳ぎを披露してくれて。
この辺りでは有名な、銀色が艷やかな小魚の群もやってきて――エルナの交感能力で仲良くなって、ロゼットも共に泳ぎ遊んだ。
「沢山来てくれたわね」
「そうですね! とっても楽しいです!」
一度上がって笑み合った二人は、更に深くへ。
魚群を連れながら、大きなエイとも友達になって――大きな岩の洞窟をくぐり、スポットライトのように光が注ぐ美観を見つけた。
(すごいです!)
エルナがドルフィンキックしてそこへ入ると――ロゼットも後に続いて感心。
珊瑚や浅瀬では見ない魚がいる、秘境のような場所で……海面からの光が青いその世界を照らしていて。
(綺麗ね)
純粋にそう感じた。
魚の遊び場のように、色々な種類の生物が行き交うから――エルナもまた楽しげに。二人は暫しそこでゆるりと揺蕩っていた。
夜が訪れると、幾つもの煌めきが瞬く。
「なんて幻想的なんでしょう」
海には星空の光が映り、浜辺には貝殻が淡く輝く。その薄っすらとした眩さを辿るよう、スィーリーンは散歩を始めていた。
海風も心地良く、こんな静けさの中を歩める事が嬉しくて。
「素敵なひとときですね――」
実感と共に、足元の貝殻を見つめる。
すると優しい碧色に、穏やかな蒼。深い赤色が目を惹いた。
「どれも、綺麗……」
或いは星のように、或いは宝石のように。魔法にかけられたように光を抱くその一つ一つが魅力的で――幾つかを拾い上げる。
勿論記念にもなるけれど、美しいアクセサリーになると思った。
「どんなアクセサリーにしましょうか――」
ネックレスにすれば可憐になるだろう。髪飾りにすれば、その淡い煌めきが魅力を飾り立ててくれる。
指輪やブローチにしてもいい。
「きっと、他にないものが出来ますね」
そんな期待と共に、スィーリーンは無垢な煌めきを手にして……また景色を楽しみながら歩んでゆく。
夜の海は昏くも眩くて。
「綺麗だね」
「うん」
笑いかけるテス・クラルスに、ロイ・アウレアも頷いて水辺にやってきていた。
波音も快く――テスは「少し泳がないかい?」と走って水面へ身を躍らせ、真っ直ぐに泳いでゆく。
それから手を振って。
「ロイ、気持ちいよ!」
「今いくよ、待ってて」
応えるロイもすぐに海に入り、追いついてくる。そのまま二人は暫し速さを競い、追いついては離れて。
終えると海の只中で、テスが手を伸ばすから――ロイはその誘いも笑みも、全てを受け入れるように手を取って抱き寄せた。
そして戯れるように指を絡め合い、口付けを。
「ふふ」
照れたように、幸せそうに。テスは今一度近くでロイを眺める。水も月も、昼の太陽も、全部似合ってしまうなんてずるい――そんなふうに思いながら。
ロイもまたテスを見つめた。
出会った頃、見上げて話していた人。そんなテスが今はこちらに顔を上げ、信頼と甘えを含めた目線を向けて話してくれる。
愛しい、肩を並べられるだけの強さが欲しい、と。願い費やした日々は、守れる強さを与えてくれた。
それでも。
(この華奢な身に、今も守られてるのだろう)
だからロイは自らに課そうと誓う。その顔を曇らせず甘え微笑み続けて貰う為に、信頼に足る者であり続ける事を。
「歩こうか」
言って波打ち際を並んで歩み……ロイが水中にまで手を引いてゆく。そこで二人で貝を探し――ロイは自らを示すような、仄かな輝きを持った貝を見つけて拾った。
テスも美しい貝を拾うと、共に浜へ。
水がかからないようにしながら、テスが撥水能力を発揮すると……飛沫が宝石のように弾けて散ってゆく。
「こういうのも楽しいね」
「そうだね」
ロイは笑み返す。
当たり前の事を誰より幸せにしてくれる、そんなテスの瞳を見て。
「愛してる」
「私も――」
言ってまた、テスはその手を握る。
「昼間も皆と一緒で楽しくていいけれど、君と二人きりの夜の海はとても幸せだよ」
そして彼にだけ見せる微笑みを浮かべて。
星と月の光の中、再び二人は歩み出す。
「うーみー!」
セパレートタイプの可愛らしい水着姿で、アリエッタが海辺へ駆けてゆく。
続いてララベル・サン・ディーベル達も砂の上を歩んできていた。
「海って何度来てもいいものだよねー♪」
んー、とヒロ・テスタロッサは伸びをして上機嫌。地元は砂漠と荒地ばかり故に、潮風の匂い嗅ぐだけでテンションが上がる心持ちだ。
ララベルも頷きつつ、頬を染める。
「うん。それに……皆、水着凄く似合ってる」
「あら、ありがとう」
応えたテュリン・ヴィングは、スリングタイプの目を引く水着。
隣のアルラ・ニグラスは、薄手のパーカー姿の時点で胸元が強調されていて。パーカーを脱ぐと半分隠せているかどうかというトップスに、際どいローレグというビキニ姿だ。
「私も似合ってるかしら?」
「う、うん、勿論……!」
「ベルはいつもどおりだねー」
照れながらも見入るララベルを、横目にして呟くのはルーシカ。
こちらは白ビキニの上からエプロンをつけていて、バーベキューの器具を運んできた所。今回は料理担当で、食材も用意していた。
「こっちは始めておくから」
「ありがとう!」
応えたララベルは、セーラー風の爽やかな水着姿で――浜へ走り出す。
と、その途中にある日陰にゆるゆると歩んでくるのは……アーテミシアだ。
「あちい……ああ、だりいな、クソ」
シンプルな赤ビキニで、見目は涼しげ。
だが日光に当たるのがどうにも気が進まず――
「ここらで酒でもかっくらってたほうがマシだな、きしょうめ」
呟くと一角にごろりと寝転んでいた。
そこに丁度ララベルがやってくるけれど……「あー、こっちは適当にやっとくから」と手をひらひらさせるのだった。
ララベルは頷いて歩み出す、と。
「ねーねーベルくーん」
呼び止めたのがヒロ。近くの日陰にシートを敷いて、ララベルへ瓶を手渡した。
「これは?」
「海草の成分とか、特別な泥とかオイルを混ぜたものだって。向こうで売ってたんだけど、日焼けを防げるらしいんだ」
だから背中に塗ってー♪ と、ヒロは寝そべる。
「……せ、背中に?」
「うん♪」
「……」
ララベルは迷いつつも、了承。ぺたぺた塗り始める。それから「きゃっ♪」「ごっ、ごめん!」と、慌てたりする声が響くのだった。
「何をやってるんだか……」
言いつつルーシカは鉄板を熱し始めている。野菜を切り、肉にも下味をつけて、着々と用意を進めていた。
それから海を見つめて。
「向こうは涼しそうね――」
「ベル、入らないのー?」
と、海から声をかけているのはテュリン。
ララベルも「今いくね!」と海へ走り……ぱしゃん。
「冷たくて気持ちいい……!」
「ふふ、やっと来たわね」
そこへアルラと、さらにアリエッタも泳いできて――水をかける。
「えいっ!」
「わっ! やったな?」
ララベルも暫し、皆へ水をぱしゃぱしゃした。
すると何かが手に引っかかり――
「あれっ? この布は……」
「あら、それを取られたら困っちゃうわ」
と、アルラが胸元を押さえていて……ララベルがはっとして真っ赤になる。
「ごっ、ごめん……!」
「海の中でもこうなるのねぇ」
そんな慣れた一幕に、テュリンは呆れた調子なのだった。
「――あっ、あそこから飛び込み出来るみたい」
と、アリエッタが指すのは岩場だ。丁度良い高さで、皆もそこへ。アリエッタが率先して岩の天辺からジャンプする。
「きゃふうっ!」
風を切る感覚と、大きな水音。快い温度。
全てを一度に味わえるのが楽しくて、皆も続いてジャンプ。それから競争したり潜ったり、たっぷりと遊んだ。
「水は悪くねえな――」
と、少し離れた水面にはアーテミシアもぷかぷか。浮かびながら、皆の様子を眺めていた。
その後、海から出たララベルはスイカ割りの準備。
「割った人には何でも一つお願い事を聞くよ。でも……僕が割った時は、一人ずつお願い聞いてね」
「望むところよ」
「手を抜けないわね~」
テュリンとアルラが気合を入れると、皆も頷いて。まずは当のララベルに目隠しした。
ぐるぐる回ったララベルは、早速棒を手に進むけれど――
「け、結構判らないんだね……」
「その為に誘導するんだよ♪ ほら、右右!」
と、指示を出すのはヒロ。
明らかに右にはスイカは無いのだが……ララベルが判る筈もなく、そのまま突進。
「わぷっ! ……アレ? なんか柔らか……」
「うん……まぁ、予想はしていたわ。こんな事が起こるんじゃないかって」
と、声を零すのはテュリン。ララベルに抱きつかれる形になっていた。
「そっ、その声はテュリン姉!? ご、ごめんっ!」
「スイカはこっちじゃないわよ」
一応人目もあるからと、テュリンは引き離す。その後再開したララベルだが、冷静さを欠いて……失敗するのだった。
次はアルラの番。
そこでもヒロが少々悪い顔で「左左ー♪」とスイカの無い方へ誘導するが……アルラは察しつつも敢えて従って――眼前にいたララベルと接触。
驚いたララベルが首をすぼめ、丁度唇同士が触れ合う形となる。
「まぁ、ベル、これは予想外よ」
「ご、ごめん……!」
「全く。一応食事の用意はしているんだから、一人で満腹になるなよー?」
ルーシカがからかい混じりに言うと、ララベルは赤くなったまま縮こまるのだった。
その後、アルラは棒でしっかりをスイカを割って。
二個目のスイカに挑戦するアリエッタも「よーし、がんばるー」と感覚を鋭敏に。ある程度当たりを付け、後は運に任せてえいやっと振り下ろし――
「手応えあったかもー」
と、目隠しを外すとスイカが割れているのだった。
最後はヒロが出陣。
「さて、あたしはラキスケなんて華麗に回避しちゃうよ☆」
自信満々に踏み出すけれど――「うわっ!?」と足元を引っかけて転倒。面前のララベルを胸で押し潰すのだった。
「全くよくやるぜ……」
と、適当に誘導していたアーテミシアは、眩い日光を見上げて息をついて。
「……ぶっ飛ばす相手がいないンじゃ気力も湧かねえってもンだ」
スイカ割りが終わると、日陰に戻ってまたごろりと転がるのだった。
その後は、皆も日陰で食事。
「丁度焼き上がるよー!」
と、ルーシカが取り分けた肉や野菜、魚を皆で頂く。ソースで焼いた麺も美味で……皆は幸せそうに舌鼓を打っていた。
割ったスイカもしゃくっと食べて……ヒロは「ん~!」とご満悦。
「甘くて最高!」
「海で食べると何倍も美味しい気がするわ」
テュリンもはぐはぐと齧って瑞々しさに瞳を細めている。
日陰での食事はアーテミシアも歓迎。スイカや飲み物を口に運び、「ふいー……」と涼を得ているのだった。
アルラも野菜の香ばしさを楽しみつつ。
「スイカ割りはベル以外全員の勝ちだから、何か考えておかなくちゃね?」
「お願いかぁ」
考えてなかったアリエッタは、うーんと思考を巡らせる。
(……ほっぺにちゅーとか?)
ふと思って、顔を真っ赤にして。
「あわあ!?」
「アリエッタ、どうしたの?」
「な、なんでもない! かんがえとくよー! 保留で、保留!」
暫しわたわたするアリエッタに、ララベルは首を傾げつつ……自分もまた肉を食べて、夏の時間を堪能するのだった。
「んーっ、ヴィントの海とは違って潮風が爽やかだねー!」
陽光の眩しい浜辺で、伸びをするのはサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブ。
その装いは黒のホルターネックの水着にブレスレット、頭にサングラス。活発且つ魅力的な見目に――ハヤト=ガラン=ヴォルファングは心の中で「うひょ~♪」と鼻の下を伸ばしていた。
「今日は一段とせくすぃ~だな♪」
「ありがと! それじゃ、早速遊ぼ!」
と、サフィラは駆け出して、波打ち際からハヤトへ水をぱしゃり。
「えいっ!」
「うおっ! やったな?」
今度はハヤトが返すと、サフィラは冷たさにはしゃぎ声を上げて。暫し掛け合いをした後は、海に飛び込んで沖まで泳ぎ、目一杯に楽しんだ。
「――はー、遊んだらお腹空いてきちゃった……およ?」
と、浜に上がったサフィラは海の家を発見。
「ねぇねぇハヤト! お昼あそこで食べよーよ!」
「いいぜ!」
という事で二人でそこへ。
サフィラはシャルガネ焼きそば風パスタを注文して、はふはふと味わって。
「おいしー! ハヤトは何頼んだのっ?」
「同じもんと、かき氷だ!」
応えるハヤトがかき氷をシェアしてあげると、その冷たさに二人は涼を得た。
「くぅ~♪ やっぱ夏はこれだよな!」
「うんっ!」
そうして食事を楽しみ、夜が訪れると――二人は海辺の散歩へ。
「わぁ……星が綺麗……」
輝く貝殻にも惹かれ、サフィラは感嘆の吐息を零す。
「まるで夜空に浮かんでるみたいだねっ……」
「ほら、これ」
と、ハヤトは星の形の貝殻を見つけてプレゼントした。
「髪飾りとかにしても似合いそうだな♪」
「きれい――ありがとっ!」
受け取ったサフィラは、そっとハヤトへ寄り添う。こんなにロマンチックな場所に、共に来れた事が幸せだったから。
「ねぇ……ハヤト……手を繋いでも……いい?」
「――ああ」
ハヤトは頷いて、そっと手を取る。
サフィラへ聞いてみたい事はあった。例えば、過去に好きになった人の事。
そんな事もゆっくり聞いていこう、と。静かな中をハヤトは、サフィラと共に歩み出す。
涼し気な私服に、新作の水着。
人々が夏の装いを披露していくコンテストは、大盛りあがりで――イーヤ・レプリスも出番を待ちながら楽しげだ。
「皆、素敵ね」
そういうイーヤ自身は、生地の薄い水着姿。色っぽいデザインでもある為、既に他の参加者からも視線を集めている。
そんな中、出番がくると早速ランウェイへ歩み出した。
折角夏が来たのだから、と。
「思いっきり魅せていかないと、ね」
姿を見せたイーヤに、暫し人々は釘付け。水着ばかりでなくその肢体と生来の色気、そしてそのもふもふっぷりにも魅了されたのだ。
すぐに大きな歓声が響くから、イーヤは少々サービスにと飛んだり跳ねたり。
「あら」
と、少々ぽろりと零れて、歓声が熱狂になるけれど……イーヤにとってはそれもご愛嬌。
結果、最も盛り上げた者として賞と粗品を貰うと――その足で浜へ。
「こんな海だし、いい男でもいたら誘っちゃおうかしら?」
開放的な気分で歩み出し……夏を満喫してゆく。
夜の帳が下りると、世界が輝き始める。
「――なるほど」
空と海には星が瞬いて。
浜を見れば深い紅に澄んだ蒼、純な白の貝殻が煌めいていて。サマエラ=フォリウムはそんな眺めの中を歩み始めていた。
「目に映る景色の中で、これだけ様々な光が溢れているのも、珍しいな」
それでいて騒々しくない、落ち着いた光。
繰り返す波の音に心を委ねると、どこか遠い世界にでも来たような心地だ。
「……ん」
と、暫し過ごしたサマエラは、浜が暗むのに気づく。
「そうか、蓄えた分を放出していたのだったな……」
貝殻が淡く、翳り始めていた。
その内に訪れるのは、優しい暗さで。
(ああ、良い時間だった)
穏やかさの中に在るのは、好きだ。
この貝殻を記念にしたくなるのも、分かる気がして……サマエラはひとつを拾い上げる。
「髪飾りか……いや、ブローチが良いかな」
その色合いは、どちらにも合うだろう。
景色を思い出せるような装飾になると良い。思いながらサマエラは、そっと帰路へ向かってゆく。
昼の間に街を巡ってきたキーゼとネーヴェ・グラヌローザは――日が暮れた頃に海へと歩んできた。
聴覚を澄ませ、暗視を利かせて安全を確保しながら、キーゼは腕を組んだネーヴェを導くように浜を進む。
人目につかぬほど、暗くなるのを待ったのは――
「これならば見られることも少ない、と?」
「良いんですのよ。見られても、それはそれで。……その、照れてしまうとは、思いますけれど」
答えるネーヴェは目を伏せ、頬を染めていた。
キーゼは穏やかな頷きだけを返し――海辺へ。そこで暗視を切り、ありのままの景色を眺める事にする。
すると――
「なるほど……」
そこは夜天を映して、星が浮かんで見える海が煌めいていて。
「まるで空が吸い込まれたかのようですね」
「ええ――」
声を零すネーヴェも、揺蕩う光の水面に暫し見惚れていた。
「きらきらと瞬いて、とても綺麗……」
「綺麗な海面だからこそ、こうしてみられるもの、ですね」
キーゼの言葉に、ネーヴェはこくりと応えて視線を落とす。
「砂浜から地平線までずっと、星空の上を歩いているような気分になりますね」
確かに足元もまた、優しく光る貝殻で美しく照らされていた。
それを見つめていると、この手で触れたくなって。一旦離れて、それぞれ綺麗な貝殻を探してみる。
(星を拾うって、こういうことでしょうか)
思いながらネーヴェが一つを掲げて見ると、キーゼもまた軽く物色して――ネーヴェの髪の色に近い、状態の良いものを見つけていた。
そしてネーヴェの手を取り、それを置く。
「記念にですが、貴女にこれを」
「まぁ、美しい貝殻……」
「宜しければ、二人で交換しましょうか?」
「ええ、私もそうしたいと思っておりました。では、これを」
笑顔を返したネーヴェも、キーゼの手を取り――そこへ形の整った特に綺麗な一つをのせていた。
「ありがとうございます」
「素敵な思い出に、なりました」
ネーヴェが言うと、キーゼもまた頷いて。二人は再び腕を組んで――星色の中を歩み出す。
「海? ……海……」
コハクは一人、夜の浜で途方に暮れていた。
というのもコハクは重度の水嫌い。ぼーっとギルドを見ていた際、簡単そうな依頼だからと中身を見ず受諾した結果なのだった。
「――あら」
と、偶然そこで立ち止まったのが、ルベア・ベルニだ。
そこに丁度、ミア=リゼルも行き会って……ぺこりと頭を下げた。
「偶然ですね」
「ええ。二人共、散策? よければ一緒に歩かない?」
ルベアが言うと、ミアは穏やかに頷く。コハクもこくこくと応えて――共に浜を歩み出す。
会話を交わしつつ、ミアは景色を見やった。
「夜の海岸もまた風情ある姿ですね。この海岸の貝殻は、淡く光ると聞きましたが……」
「ねぇ、砂浜のあの辺、少し光って見えない?」
ルベアが前方を指し示すと、二人も見合ってそちらへ。
皆で辿りつくと……コハクは仄かに瞳を輝かせた。
「綺麗ー」
あるのは薄紅に深緑、暗い蒼。色彩豊かに輝く貝殻だった。
波音が近くに聞こえるとびっくりするけれど……思わず二人の手を握ると、ミアは優しく握り返す。
「大丈夫ですよ」
「前も温泉入らなかったのはそういう事だったのね……」
ルベアも驚きつつ、しっかり手を取って……貝殻を一つ一つ見始める。
ミアはいそいそと見回す。
「レモンっぽい貝殻はないでしょうか…」
「レモンっぽい?」
不思議なことを言う子だと、ルベアはミアを見つめる。
ただ、一生懸命探してる姿は可愛らしくて。自分に似合わぬ単語も似合う人だと、ミアが少し羨ましくもなったけれど。
ミアはその視線に少々不思議がりつつも、楽しげだ。
「ひとつひとつ形が違って……ふふ、どれも綺麗です。いつかせんせいに出会えたら、プレゼントしましょう」
「せんせい?」
「私の探している人です。おふたりには、せんせいはいますか?」
「……少し違う気がするけど、また会いたい人って言ったら、父さんかしら」
「そうですか」
ルベアの言葉に、ミアは微笑んで「会えたら、良いですね」と返した。
自分は“せんせい”の事しか覚えていない。それも朧気だから……自分もいつか会えるようにと願いつつ。
「でも、こうしてまた思い出ができました」
その声音は嬉しそうでもあった。
コハクは貝殻をきょろきょろ眺めつつ、楽しんではいたが――ふと視界にレモン色の輝きを見つけると、はっとして。
「見つけた」
夢中で走りつつ、真横が水辺と気づかずに……足を引っ掛けて転倒。
「……!」
ばしゃりと水浸しになって……眦を下げて泣き始めてしまうのだった。
ルベアは駆け寄って水を拭い、「よしよし」と宥めてあげる。
「大丈夫?」
「ふぇ……」
「私も見つけましたから。とても綺麗ですし、あげますね。ルベアさんにも」
と、ミアも歩み寄ると、レモンのような貝殻をルベアと、そっと手を握るコハクにも渡してあげた。
コハクはまだ瞳を潤ませつつも、受け取って頷く。それから自分が見つけた貝殻を拾って……ミアへあげたのだった。
ミアはそっと微笑む。
「ありがとうございます」
「それにしても、本当にレモンに似てる貝殻があるなんて」
ルベアは苦笑いしつつも……その色味と形が作る美しさを、暫し見つめていた。
「海だー! ……っと、そっか」
早く泳ぎたくてうずうずしていたパルドは、走り出そうとして急停止。
「まずは準備運動からだね」
隣に並ぶウォーゼルが言うと、パルドも頷きを返してまずはしっかりと屈伸。腕も伸ばして体を慣らし……その後で海に飛び込んだ。
「ぷはっ! うん、気持ちいいな♪」
「ははは、やっぱ暑い日は水遊びだよね♪」
顔を出した二人は水を掛け合い、快い冷たさに笑みを交わす。
それからパルドが魚影を見つけると、ウォーゼルも一緒に潜って――魚を岩場に追い込むように泳ぎながら、暫し青の世界を楽しんだのだった。
目一杯に海を堪能した二人は、スイカ割りの準備。
飛び入り歓迎で呼びかけると……そこにエルシー・サリバンとハル・チフがやってきた。
二人は参加しても良いと聞くと――
「ワーイッ! ありがとうヨロシクね!」
「よろしくです!」
と、笑顔でスイカの近くへ。
まずはエルシーが目隠しをつけ、受け取った木の棒でくるくると回り始めた。そうして歩み出すとふらりと進路がそれるけれど……ハルがつぶさに声をかける。
「もっと左!」
「そうそう、そのまま真っ直ぐ!」
パルドも一生懸命に誘導すると、エルシーもそれを頼りに軌道修正。
「エル! 半歩右、向き15度左に修正! そこだー!」
そのハルの声が聞こえた所で、思い切り棒を振り上げて一撃。
「えいっ!」
ぼすっと何かを打った。
けれど……目隠しを外すとそれがスイカの傍の地面と判明。
「えーー!? 惜しかった!」
エルシーはびっくりしつつ、自然と笑い出す。失敗したのに、楽しくて仕方なかった。
「次は僕の番ですね」
と、キリッと目隠しをつけるのは、ハル。
(初めてですが、なかなかどうして……白熱するです!)
エルに良い所を見せたいと気合を入れつつも、フェアが大事と探知系の能力は使わず、己の身体だけで踏み出す。
するとウォーゼルが声をかける。
「あー行き過ぎ! 少し戻って !そこっ!」
「ハルー、もう少し、左左!」
エルシーの声も届いてくるから、『エルの応援可愛いなぁ……』と思って笑みを零しつつ。ハルは傍にスイカらしき存在を感じた。
「ここだー!」
ばすっ、と。地面を打つ音が響く。
「外した? あれ~? スイカは?」
と、目隠しを取ると――丁度真後ろにあるのだった。
「難しいのですね?」
「面白くなってきたな!」
言って出るパルドも「こんなの楽勝! ……むっ、失敗か!」とスイカを掠めるに留めて。
「これは確かに……全然、向きが分かんない」
と、次のウォーゼルも苦戦。振り下ろした棒は皮だけを切り裂くのだった。
ただ、勘を掴んだハルとエルシーが次に挑戦し――
「えいっ!」
「やあっ! ……やった!」
二人で丁度スイカを割りきったのだった。
皆で喜び合うと、その後はスイカの実食。
「美味しい!」
「甘いなっ!」
パルドとウォーゼルがひんやりとした美味を堪能すると、エルシーと共にハルもしゃくっと一口。
「とっても美味しいです! テグもお食べ」
と、カカポに差し出してつつかせてあげる。
穏やかな時間に……ハルはエルシーを見た。
「またエルと一緒に来たいです」
「うん、また来ようね」
応えるエルシーも、そっとハルに身を寄せて――笑顔で約束をした。
「光る貝殻があるんだって!」
「へえ、珍しいね――」
夜、パルドとウォーゼルは二人で浜の散歩に出た。
暗い中で光を探すのは宝探しのようで楽しくて――パルドはあっと駆け寄る。
「あった!」
そうして拾い上げた貝殻は、仄かな紫の煌めきを帯びていて。嬉しさいっぱいの笑顔でウォーゼルに見せる。
「ほら! 綺麗だな♪」
「ほんとだ。綺麗だね♪」
ウォーゼルもその美しさに、暫し見惚れる。
何より、パルドの笑顔を見てると自分も嬉しくなるから。
「俺も探すよ……あっ、見つけた!」
と、拾い上げたのは淡い金色に輝いていて。
「おぉ、それもいいな!」
「貝殻だし、色々使えそうだよね」
ウォーゼルは二つを見比べつつ、思いつく。
「これで何か作ってもいいかもしれないね」
「じゃあ、もっと集めないとだな!」
こっちこっち、と。パルドは光る場所を見つけて走り出す。ウォーゼルもまた、微笑んで――楽しい時間は続いてゆく。
「……これが、海!」
そのあまりの広さに呆然と、セオ・ウルジオは燦めく青色を見つめていた。
本の外の世界って眩しい。そう実感するように。
「とても、綺麗ですね!」
「ああ。見るだけじゃなく、何でも経験してみると良いぞ」
共に岩場へ歩んできたカルフ・オルヴォは、セオへ銛を渡す。
本の知識より一度の実践。連れ出す時にも伝えたその言葉を体現させる為、銛漁を行うのだ。
「気を抜くとやられるぞ、落ち着いて行け」
カルフは言うと海に潜り、海底に足を着く。
セオも後に続いた。そこは海面から光が揺らぐ、濁りのない景色。
『きれいな海だ。苦しくなったら早めに浮いて呼吸をしとけ』
『はいっ!』
テレパスを交わしたセオは、魚影を求め視線を巡らす。すると深い青の向こうに銀色の煌めきを捉えた。
『居たぞ! 回り込めっ』
『行きますっ!』
追跡するカルフに、セオも別方向から攻めようとする。が、そこで息が切れる。
セオは上がって呼吸を繰り返した。
「はぁ、はぁ……」
「焦らなくて良い、呼吸を整えろ」
「はい、次は上手くやります」
カルフの言葉に頷き、セオは心新たに再挑戦。
今度は即座に魚を見つけ、自身を背景に同化させて回り込み――眼前で姿を現し驚かせた。
魚が惑った瞬間、エーテルで形成した水弾をぶつけて。
『上手い』
魚が逃げ場の少ない場所へ追い込まれたところで、カルフも接近。流体弾で改めて魚をセオの面前へ飛ばした。
『任せたっ』
『これで――最後です!』
セオはそこへ祭刀で一閃。
叩きつけるように魚の意識を奪い――銛でその身を突いた。
「やった! カフさん! やりました!」
海から上がったセオはそれを手に、満面の笑顔。
カルフはわしわしと撫でてあげた。
「やったな、上手いもんだ」
「えへへ」
誇らしくて、何よりカルフに褒めて貰えるのが嬉しくて。セオは瞳を細めていた。
それから少し休んで、帰り道。
「またどこかに行こう」
自分で歩く世界は広さが違うから、と。カルフの言葉にセオは頷いた。
「是非!」
カルフの見せてくれる世界は眩しい。だから隣に立って歩ける様になりたい――そう心に思いながら。
白いシャツに、紺色のショートカーゴ。髪をまとめた涼しげな装いで、エル=バ=ノイアンは浜を歩みゆく。
「夜は一層、過ごしやすいな」
「そうだね。それに――」
と、並ぶシルヴィア・A・カペルは、白のワンピースを海風に揺らしながら――空の星と地上の貝を見つめていた。
「きらきらしていて、とても綺麗だ」
故郷は内陸部だから、海の景色も匂いも新鮮で、心が弾む。
そっと頷くノイアンもまた、依頼を除けば海は珍しかった。だから確かめるように歩み――
「シルヴィア、裸足はだめだ」
もっと海に近づこうと、靴に手をかけていたシルヴィアを止めた。
「貝殻は意外と鋭利だからな。傷つく」
「そうか。確かに散歩で怪我はしたくないね――」
シルヴィアが諦めようとすると、ノイアンは表情は変えぬままに申し出る。
「俺が、連れて行こう」
意図を理解して、シルヴィアは少し驚いたけれど……このまま海に入ればワンピースも濡れてしまうから。
「ありがとう。じゃあ、お願いしても良いかな?」
「ああ」
言うとノイアンは、シルヴィアを横抱きに抱えた。
そうして浅瀬へと立ち入る。その間もノイアンは少しだけその軽さを意識した。
(やはり華奢だ)
それから空を仰ぐと月があって。シルヴィアの髪だなと思うと、どこか不思議な気持ちだった。
初めて海に立ち入ったシルヴィアは、そんなノイアンの横顔を月と共に見つめている。
思った事は、海は美しいのだという事と――
「やっぱり、君の瞳は海の色をしている」
「……」
ノイアンはふとどきりして、見下ろした。一瞬、思考が読まれたのではないかと思ったから。
目が合ったシルヴィアは、その動揺までは気づかない。ただ、何があっても彼なら自分を絶対落とさないだろうという信頼だけがずっと、あった。
優しい夜の海のような。
(そこにいるだけで安心する、不思議な人だ)
けれどその安心と裏腹に――何故か心臓が煩くて。シルヴィアはそれがノイアンへ知られていなければいいと、理由も判らぬままに思っていた。
マスターコメント
イベントシナリオ(50人)易しい 報酬:標準50 / 4〜50人
2021年08月17日 16時28分18秒 公開
参加者
ヨル・スレイマン
コルネリウス・アーラ
アンネエルカ
エルナ・クルプファルツ
ナハシュ
スィーリーン
リサ・ベイカー
テス・アウレア
ジョン・ベアー
ルルト・アーキス
アーテミシア
- イェレミース トゥラ リディリディ
イズレンディル・パラリム
サフィラ・アズラク・ヴォルファング
ロイ・アウレア
セヴラン・クアルト
イーヤ・レプリス
ヒロ・テスタロッサ
ハヤト=ガラン=ヴォルファング
アルマ・ヴァレンタイン
アルラ・ニグラス
ララベル・サン・ディーベル
ルーシカ
サマエラ=フォリウム
テュリン・ヴィング
ロゼット
- キーゼ
クレア・エクレール
梅・雨陽
コハク
アーシェル・G・クライン
アリエッタ
エルシー・サリバン
ハル・チフ
エヴァン・ピオネロ
ネーヴェ・グラヌローザ
ハルハン・ツァガーンナル
カルフ・オルヴォ
大福
- スヴァン=ウォルフ=ユーウェン
エル=バ=ノイアン
ルベア・ベルニ
シルヴィア・A・カペル
アルフィー・リッパー
アルバス・ロウル
ライオネル・ギシュム
セオ・ウルジオ
パルド
ウォーゼル
ミア=リゼル
相談掲示板
ロイ・アウレアです。 テスと夜、波打ち際でデートをしようと思う。 蓄光性の貝を拾う為には日没後すぐが良いのか…真っ暗や朝方の海も良いだろうし悩むなぁ。 何はともあれ、皆様よろしくお願いします。
ハルハン・ツァガーンナルです。 ボクはまだ、特に予定が決まっていないので。料理か、海の家へいこうか考えてます まだ予定が決まっていない人が居たら、一緒に遊びませんか?
エヴァン・ピオネロです。ヨロシクですー。 お友達の、アルマさん、雨陽さんと《3.料理》に来ました。 下のタグの予定で、参加フリーです(内容は多少、変えるかもしれないです) 【焼】 材料持込みOK、皆でワイワイBBQ 暑く成ったら海にドブン!体冷やしてまた食べますよ ハルハンさん、もし良かったらご一緒しませんか? 他の方と海の家も楽しいと思いますから、ご都合に合わせて気楽にどうぞです。 他のフリーの方も歓迎しますのでアドリブで混ざりに来てくださいねー。
スィーリーンと申します。 よろしくお願いします。 私は夜の散歩に行くつもりです。
ロゼットよ。よろしくね。 「1.海で遊ぶ」で素潜りしてこようと思うわ。 せっかくだから、追加された「撒き餌」のスキルで、 海の魚を呼び寄せられるか、試しも兼ねようかなって。 上手くいけば、ちょっと楽しいダイビングになるかも? 水着とスキルあわせても、最低600Gで実行できるから、 海に行く人で行動予定が空いてる人いたら、どうかしら。
水着で気分は人魚姫!なエルナです!皆様宜しくお願いしますね! >ロゼットさん 海でお魚さんと戯れる!いいですね! もし宜しければ一緒に参加してもよろしいでしょうか! 水中散歩を楽しみつつ、動物交感での触れ合いを試してみようかなと!
>エヴァン お誘いありがとうございます! 【焼】のタグ。よければ一緒に参加したいです! バーベキュー。楽しみですね
ネーヴェ・グラヌローザと申します。どうぞ宜しくお願い致します。 今回は7. 夜の散歩へ行くつもりです。 皆様どうぞ楽しいひと時を過ごされますよう。
シルヴィアだ。今回はよろしくね。 夜の散歩に行くつもりだ。皆、素敵な一日を過ごせますように。
ハルハンさん、どうぞですよー! プレでは特に名の指定をせず「皆でこういう事をしましたー」としますね。 美味しく楽しい1日にしましょう! (プレを合せたい場合はお見せしますので、お知らください)
ジョン・ベアーじゃ。よろしゅう頼む! 釣りに行きゃあ(誰かが釣った)魚が食え……料理しとる所にいきゃあ(誰かが作った)飯が食え……海の家にいっても飯が食え……スイカ割りにいきゃあスイカが食える! 成程、楽園のような所じゃ……がっはっは! まぁどこかでふらふらと飯を食うとるよ!
ノイアンだ。シルヴィアと一緒に夜の散歩に出かける予定だ。 皆が楽しい1日を過ごせるように。
コルネリウスです、宜しくお願いします。 海で遊ぶ予定です! みなさんも良い1日を過ごせますように。
スヴァンだ、よろしく頼む。 観光とのことだが、俺は海辺で料理をする予定だ。 充実した一日になると良いな。
>エルナ もちろん喜んで。動物交感は楽しそうね。 「撒き餌」スキルはセットしていくから、有無はお任せするわ。 「1.海で遊ぶ」でスキル「撒き餌」の試しに、魚を呼び寄せて 素潜りで遊んでみようと思ってるわ。興味わく人がいたらどうぞ。 経費は水着とスキルで500Gだったわ。
ルルト・アーキスだよ、よろしくね! ボクはともだちと釣りをする予定だよ♪ みんなにとって楽しい1日になりますように。 >エヴァン みんなでバーベキュー楽しそうだね♪ ボク達も【焼】に参加させてもらえたら嬉しいなっ! 釣ったお魚を持っていければと思うんだよ(釣れれば)
アルバス・ロウルだ。よろしく! 釣果を持ってエヴァン達の【焼】に参加させてもらう予定だ。楽しみにしているよ。 皆も良き一日を!
>エヴァン はい! よろしくおねがいします! 楽しい一日にしましょう! ボクも、名前は特に書かない感じで、書いてみますね。 その方が、多分、人が増えたときにも一緒に遊びやすそうですから
ウォーゼルです、よろしくお願いしますね。 俺はパルドと一緒に遊ぶ予定で、スイカ割りもしてみようかなと。 こういうのって人数多い方が楽しいと思うので、プレでは「スイカ割り、誰でも歓迎」としておくつもりです。 スイカ割りしたいけど人が足りないとか、一緒に遊んでもいいよって人がいたら気軽に参加どうぞです。
ライオネルだよ。よろしくね! 皆で海楽しもうー! 俺も【焼】に参加したいな。 BBQいいよね! 海だ!夏だ!って感じするー!
パルドだ。よろしくな。 ウォーゼルと一緒に泳いだりして遊ぶ予定だ。 すでに言ってくれてるとおりスイカ割りも参加歓迎だから、気楽によろしくな。
>ロゼットさん わあ!ありがとうございます! 撒き餌!私も準備してみました! どんなお魚さんが来るでしょうか!楽しみです!
ルルトさん、アルバスさん、ライ君、【焼】でお待ちしてます! 大きいのが獲れると良いですね! 海辺はどこも楽しそうで既に気持ちが夏の海に浸りきってます…! たっぷり楽しみますからねー。
アーシェルだ。 楽しい一日になりそうだな。 よろしく頼む。 俺は友人達と釣りを楽しむ予定だ。 たくさん連れたら【焼】に持っていくから、良かったら食ってくれ。
No.26
リディリディです。 私は・・・、バーベキューと迷いましたが、せっかくなので海の家に行ってみたいと思います。
>たくさん連れたら【焼】に 嬉しいですー!アルバスさん達のもあるので 調理スキルを積んで下ごしらえできる様にしようと思います。 宜しかったら(字数に無理が無ければ)食べて行って下さいね。
【焼】に参加オッケーありがとー! 参加者が増えてきて賑やかになりそうだね。すごく楽しみ! 俺も銛があるので大物を捕まえて、BBQを豪華にするぞー!
色々迷ったのですけど、わたしも【焼】に参加させて頂きますね。 主に、調理で参加させて下さい。 お魚沢山なら、何かBBQ以外にも作ってみますね。
こんにちは、セオ・ウルジオです。よろしくね。 僕はカフさん(カルフ)と漁の練習をしてみたいなって思ってるよ。 海楽しみだなぁ。
遅くなりました! 僕はエルシーと一緒にスイカ割りしたいと思うのです! ウォーゼルさん、パルドさん、参加させて頂きたいです、どうぞよろしくなのですよ!
レモンに似た貝殻を探しに…同行者さんと夜の海岸を歩く予定です。よろしくお願いしますね。
リサさん、ようこそですー! >何かBBQ以外にも作ってみますね。 嬉しいですー、何を食べれるか楽しみにします!
>エヴァン ありがとな。 5人で【焼】の皆の所に魚を持ち込んで食わせてもらおうと思ってる。 >リサ リサの作る飯はどれも美味いからな。 当日も楽しみにしてるぜ。
>ハルさん スイカ割りこちらこそよろしくお願いします! 賑やかになって嬉しいです。 現地でお会いするの楽しみにしてますね。