【蠱毒】『征竜の巫女』と『黒曜子』
真柄 葉
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シナリオID:693
オープニング
簡素な建物やテントが立ち並ぶ光景を眺め、ヒルルクが呟いた。
「これでも随分ましになったんですよ」
馬車に乗せてきてくれた行商人が荷下ろしをしながら答える。
「それで巫女様はこれからどうするんですか? 帝国に行くなら馬ですが……厩へ案内しましょうか?」
「うーん、わたし馬乗れないのよね。だから、歩いていくわ」
「歩いてですか。それだと随分かかりますね」
「大丈夫よ! 歩くのには慣れてるもの」
心配する行商人に、ヒルルクはふふんと胸を張る。
「そういえば、あなたはまたローレラウラに帰るの?」
と、ヒルルクは何気なく行商人に問いかけた。
「いえ、これからディズル大湿地帯へ向かいます」
「ディズル?」
聴き慣れない言葉に、ヒルルクは首をかしげる。
「はい、王国の西にあるリザードマン達の住まう地ですよ」
「へぇ、そんな場所もあるのね」
行商人の話に、ヒルルクは単純に興味を惹かれた。
「ええ、彼等は農耕の民ですから、作物を仕入れに――ああ、そういえば。今、かの地にはレイウェスト様がいらしてるとか」
「レイウェスト?」
これまた聞き慣れない言葉に、ヒルルクは反対方向へ首を傾げた。
「はい、帝国の亡命皇子です。皇族で唯一の生き残りですよ」
「へぇ、そんな人がいるんだ。……うん、帝国?」
行商人の話を思い返し、ヒルルクは思わず聞き返す。
「ねぇ、その人って帝国に詳しいの?」
「え、ええ、それはまぁ皇族ですし、詳しいんじゃないですか?」
「なるほど……よしっ、決めたわ!」
そう言ってグッと拳を握ったヒルルクは、行商人に顔を寄せた。
「わたしも乗せて行って!」
こうしてヒルルクは再び馬車に揺られ、一路ディズル大湿地帯を目指すことになった。
●
巨大な湿地が広がるディズル。リザードマン達の故郷にして大陸の一大農耕地である。
湿地帯にはリザードマンの集落が数多存在し、ここギシュム族の集落もその一つであった。
「またまたありがとう! 助かったわ!」
そう言って行商人に別れを告げたヒルルクは、ギシュムの集落を見渡す。
「さて、誰か知ってそうな人は――」
手のひらで傘を作り住民を探すと――。
「あ、あの人知ってるかしら」
一人の白いリザードマンを発見した。
「こんにちは! おじさん、ちょっとお話を聞きたいんだけどいいかしら?」
「……」
ヒルルクはリザードマンに声をかけるも一瞥されただけで反応がない。
しかし、ヒルルクは臆することなく問いかけた。
「あのね、レイウェストって人知ってるかしら?」
「……何故、拙に訊く」
「なぜって……なんか偉そうだったから?」
ようやく口を開いたリザードマンに、ヒルルクはかくりと首を傾げた。
(……この娘)
ヒルルクに何かを感じたのか、白いリザードマンは更に口を開く。
「……ふむ。主、名は」
「え、わたし? わたしの名前はヒルルクよ!」
「…………ヒルルク」
じっと見つめてくるリザードマンにヒルルクは首を傾げ問いかける。
「わたしの顔に何かついてる?」
「……いや。殿下に何用だ」
「え? えっと、話せば長くなるんだけど――」
と、そう前置きしてヒルルクがこの地を訪れたあらましを話し始めた。
「……ふむ」
ヒルルクの話を聞き終わり、白いリザードマンは再び黙考する。
(……その言、真か虚か。だが、この気配は確かに……)
「うん? 何か言った?」
「……いや。殿下との面会ならば、取りつごう」
「えっ、ほんとに!?」
「……こちらだ」
そう言うなり白いリザードマンは、すたすたと歩いて行ってしまう。
「そうだ、あなたお名前は?」
「拙の名は、エフレムという」
「エフレムね! よろしく!」
意外と足の速いエフレムに置いて行かれまいと、早足で追いかけるヒルルクは改めて挨拶した。
●
集落でも一際大きな建物へと入って行くエフレムに続き、ヒルルクも中へと入った。
「……ここで」
エフレムにそう言われ建物のエントランスで待機するヒルルク。
壁に掛けられた見たこともない独特の装飾を眺めていると――。
「入れ」
エフレムが呼んだ。ヒルルクは声に従い入室すると、そこに一人の少年とも少女ともつかない人物が座っていた。
「ようこそ、『征竜の巫女』ヒルルク」
その人物が対面の席を勧める。
「うん、こんにちは。あなたがレイウェスト?」
言われるままに席に着いたヒルルクは、改めて目の前の人物に問いかけた。
「ああ、私がレイウェスト・バルダスだ」
「ふーん。ちなみに男の子? 女の子?」
と、不躾に聞くヒルルクに、レイウェストの背後に控えるエフレムの頬がピクリと揺れる。
「男子だが……それが、何か?」
「へぇ、綺麗だから女の子かと思ったわ」
苦笑いを浮かべるレイウェストを、ヒルルクは珍しそうに見つめた。
「母親似でな……よく間違えられるよ。ところで、私の何か用があるのと聞いたのだが?」
「あ、そうそう。えっとね――」
と、ヒルルクはエフレムにもした説明を改めてレイウェストに聞かせた。
「――なるほど。帝国の情報を提供する事に問題はない」
「ほんと! 助かるわ! これでいろんな所に行かなくて済むわ!」
レイウェストの色よい返事に、ヒルルクは安堵する。
「征竜殿は、意外と人使いが荒いようだ」
そんなヒルルクを見て、レイウェストは口元を押さえ上品に笑う。
「そうなのよ。征竜様ったら自分から動かないで、全部わたしに言ってくるのよ!」
と、返すヒルルクはぷんぷんと頬を膨らせた。
「なるほど。しかし、ヒルルク殿の話しぶりによると、そなたは征竜の声が聞けるということか」
「ええ、聞こえるわよ。それに、征竜さまはわたしを通して、大陸の動向をみていらっしゃるわ」
「ふむ……」
そう言うと、レイウェストはしばらく考え込んだ。そして、口を開くと――。
「どうだろう。帝国の情報を提供する代わりといっては何だが、一つ協力してはくれないか」
ぐっと前のめりになりヒルルクに提案する。
「協力? なにするの? あ、腕っぷしにはちょっと自信があるのよ!」
「はは、力仕事ではない。そなたには『演説』をやってもらいたい」
「へ? 演説? なにそれ……」
「演説とは、大衆を前に自分の意見や主張を述べる行為だ」
「そ、それくらい知ってるわよ! そうじゃなくて、何の演説をしろっていうの?」
真面目に答えたレイウェストに憤慨しつつもヒルルクは問いかけた。
「実はこの地でもうすぐ大きな戦がある。その為に沢山の兵士が出陣することになるだろう」
表情をいっそ真面目なものに変え、レイウェストは語り始める。
「リザードマンの戦士の中には始祖たる征竜を信奉している者も多い。そなたが征竜の声を聞き、その耳目となっているのならば、それだけでも喜ぶ者もきっと多くいるはずだ。どうだろう、君から征竜がこの戦場を見ていることを伝えてはもらえないだろうか」
じっと瞳を見つめ、上に立つ者特有のオーラを纏いレイウェストは語りかけた。
「……エフレム。どうだろうか」
と、レイウェストはヒルルクの返事を待たず、背後に控えるエフレムに視線を移す。
エフレムは小さく頷き同意を示した。
「うーん、まぁそれで教えてもらえるならいいけど……何話せばいいかわからないわよ?」
「それは心配しないでいい。こちらで台本を用意させてもらうよ」
複雑な表情を浮かべるヒルルクに、レイウェストはニコリと微笑んだのだった。
解説
マスターより
リプレイ
「そう言われても……これきっついんだけど」
「仕方ありませんわ。ご立派なものをお持ちなのですから」
演説の為の衣装をヒルルクに着せるレティシア・レインフィールは、ぎゅっとコルセットを締め上げる。
「ぐぇっ!」
「淑女がそのような声を上げてはなりません」
はしたない悲鳴を上げるヒルルクに注意しつつ、レティシアは羽衣を手に取った。
「……なんだ、牛蛙を戦槌で潰したような声が聞こえたが」
そんな悲鳴を聞きつけ、スヴァン=ウォルフ=ユーウェンが部屋を覗き込む。
「すみません、ヒルルク様はあまりこのような衣装を着慣れていないようですので」
「……ああ、ヒルルクの悲鳴だったのか」
「もう少しで終わりますので、もう少々お待ちください」
「わかった、待たせてもらおう」
「待たせてもらおう。じゃないでしょ! でてけぇぇーー!」
しれっと着席しようとしたスヴァンに手近にあった櫛を投げつけるヒルルク。
「……ふっ、当たるものか」
「こ・い・つ……!」
「はいはい、淑女がそのような言葉遣いをしてはいけません。そして、まだ終わってないので動かないでください」
「レティシア!? 男が見てるんだけど!」
「淑女たるもの見られてこそ美しく輝くものです」
「レティシアさん!?」
「なにか騒がしいですね。大丈夫ですか?」
と、続けて入ってきたのはアクティオンだった。
「おっと、これは失礼しました」
アクティオンはヒルルクが着替え中だと気づき、そそくさと退室しようとする。
「ほら! あれが普通の反応!」
そんなアクティオンを見てヒルルクが猛然と抗議した。
「……まぁ、座れ。お前も用があるのだろう。もうすぐ支度は終わるらしい」
「ふむ……それでしたら」
一旦は退室しようとしたアクティオンだが、スヴァンに勧められ同じく席に着く。
「それでしたら、じゃないでしょ!?」
「はいはい。終わりましたわ」
若干涙目で抗議するヒルルクの背を、レティシアがポンと叩いた。
「いかがです? 殿方から、そしてリザードマンから見て、巫女として如何様に見えますでしょうか」
ぽかんと口を開けるヒルルクが纏うのは、帝国式のドレスをアレンジし、リザードマン達の装飾も取り入れた実に見事の巫女装束。
「とても素晴らしいと思います。ディズルの……これはギシュム族の装飾品ですね。これでしたら、神秘性と親和性の両方を見せつける事が出来るかと」
アクティオンは素直に感心し、ヒルルクを褒めたたえる。
「そ、そう? ふふーん、まぁ、そうよね! なんて言ったって、わたしは征竜の巫女なんだもの!」
「……馬子にも衣装だな」
「スヴァン!!」
「はいはい、激しく動いてはいけません。着崩れてしまうと、色々ポロリしてしまいますよ?」
「っ!」
ヒルルクの振り上げた拳をレティシアが優しく下ろすと。
「それでは参りましょう。トーラ様達が待っているはずです」
ヒルルクの手を引き控室を出た。
●
リザードマン謹製のパン釜を前に、ルアンナ・ミュラーは額に浮かべる。
釜から吐き出される熱気の奥には、きつね色に焼けたパン。
「――よしっ! 色よし、薫りよし――んー、味よし!」
最高の焼き加減を見計らって取り出したロールパンを一口放り込み、ルアンナはゆっくりかみしめ味を確かめる。
「とてもいい香りがしますね」
香ばしい匂いにつられ、給仕を買って出てくれていたセツリがやって来た。
「あ、セツリさん。よかったらお一ついかがですか?」
「よろしいのですか?」
「もちろんですよ! 味見お願いします!」
「そ、それでは……」
ゴクリと喉を鳴らし、セツリはパンを一切れ口に放り込んだ。
「……これは、とても美味しいです。外はサクっ、中はほっこりふわふわで噛めば小麦の甘みがじんわりと溢れてきます」
「ふふ、自慢の一品ですっ」
口の中に広がる幸福をかみしめるセツリ。そんな彼女を眺めながら、ルアンナは少し照れたように微笑んだ。
「それじゃ、配っていきましょう! お腹をすかせたリザードマンの方々に熱々をお届けしなきゃです!」
「はいっ」
グッと拳を握るルアンナにセツリは頷くと、大皿に山盛りのパンを乗せ会場へと運んでいった。
●
「戦争か……」
戦前の宴に盛り上がるリザードマン達の間を歩きながら、ヨル・スレイマンが呟いた。
「解放感と緊張感の同居か。同じ戦いでも、個の戦いとは随分違うね」
自らが経験してきた戦いと、ここに居る戦士たちが赴く戦いでは、同じ戦いでも質がまるで異なる。ヨルは楽し気に声を上げる戦士たちの心の内を確かめるために、あえて輪に入った。
「酒は命の水。一杯入れさせてもらってもいいかい?」
仲間内で酌を勧めるリザードマン達に向け、酒瓶を傾けるヨル。
戦士達も最初は訝しんだが、その立ち居振る舞いから冒険者と悟ると、自ら盃を差し出していく。
「素晴らしき戦士達に。そして、戦後再びこの地で相まみえる為に――乾杯」
ヨルが音頭を取り、盃を掲げる。戦士達も倣う様に掲げ、盃を打ち鳴らした。
「うん? ヨル先生じゃねぇか」
「おや、店長。珍しい所であったね」
戦士達と談笑するヨルを見つけ、ナハシュが声をかけた。
「よかったら一緒にどうだい?」
「お、いいね。邪魔するぜ」
ヨルの誘いに、ナハシュも戦士たちの輪に加わる。
「それにしても、ここはいいな。酒もうまいが、何より飯がうまい!」
バクバクと出された料理を胃に放り込むナハシュ。
「ディズルは大耕作地でもあるからね。食には並々ならぬこだわりがあるのさ」
そんな姿にヨルは苦笑しつつ説明してやる。その説明に周りの戦士達もうんうんと自慢げに頷いていた。
「そんな事より、ナハシュ君。ここに居るという事は、君も戦場に?」
「――ん? まぁ、そんなとこだ」
ヨルの問いにナハシュは手を止め頷く。
「そうか、君も出るなら実に心強いね」
「勝手に期待すんな。主役はそこのリザードマン達だろ」
「それはもちろんそうだとも。だけど、背中を任せられる戦友は一人でも多い方がいい」
「けっ……自分の背中は自分で守ってろ」
言って、ナハシュは酒を瓶ごと煽る。
「相変わらずつれないな、店長」
友人のこの態度の裏にある真意を、ヨルはよく知っている。だから、ナハシュに向け苦笑すると。
「男の酌で悪いね」
酒瓶を飲み干し、おかわりを探していたナハシュに、ヨルは酒瓶を差し出した。
●
「トーラさん、おまたせし……どうかされましたか?」
別の控室で待っていたトーラの姿、アクティオンは思わず問いかけた。
「あ、いえ……ちょっと落ち込んでただけなので、気にしないでください」
答えたトーラの声にはいつもの元気がない。
「そうですか……? それでは巫女様の準備に取り掛かりましょう」
そんなトーラの言動を不思議に思いつつも、アクティオンはヒルルクを招き入れた。
「おぉー。馬子にもいしょ――」
「トーラまで!?」
「はは、冗談ですよ。とても似合ってます!」
ジト目を向けてくるヒルルクににんまりと笑ったトーラはいつものトーラだった。
「それじゃ、リハーサルしましょうか」
言ってトーラはヒルルクの手を取ると、演説台に見立てたステージに立たせあれやこれやと指示していく。同じく、レティシアやアクティオンもそれぞれの視点でヒルルクの立ち居振る舞いや礼儀作法を叩きこんでいく。
最初はぎこちなかったヒルルクも、三人の鬼教官にビシバシとしごかれ、たどたどしいながらも徐々にコツを掴んでいった。
そんな猛特訓を部屋の隅で眺める人影が二つ。
「ふーん、征竜の巫女っていう位だからもっと近寄りがたいかと思ってたけど、気さくというかなんと言うか……普通の女の子だね」
「……普通か。ふむ」
猛特訓にひぃひぃ言ってるヒルルクを眺め、シルヴィア・A・カペルの評に、スヴァンは大きく首をかしげた。
「お堅い巫女様には興味はなかったんだけど……あの子は面白そうだ」
「面白いのは認めよう」
「普通って方は認めないんだね」
スヴァンの物言いに苦笑しつつ、シルヴィアは再びヒルルクを見る。
「立ち居振る舞いは貴族の彼女がいるし、わたしは何でサポートしようかな」
「……本番でボロが出ないように」
「ふむふむ。なるほどね、それじゃセリフ周りだね」
「奥で二人が考えているはずだ。行くといい」
と、スヴァンはまた別の部屋を指さした。
●
陽も西の空に落ち、焚かれた篝火が宴を楽しむ戦士達を照らし出していた。
静かにも賑やかにもなる宴の場に、しっとりとした弦楽器の音楽が流れる。
チェロを奏でるノックス・マグナ。合わせるのはサイラスの竪琴。
勇敢な戦士達に、郷愁の音を届ける。戦場へ向かう戦士達に届ける音色にしては、あまりにも物悲しい落ち着いた音色。しかし、それも考えがあってのこと。ここが君達の故郷なのだと。帰る場所はここにあるのだと、メロディに乗せて戦士たちの耳へ、心へと届けていく。
「崩壊してしまった帝国と同じ道を歩まないよう――」
ノックスは故郷である帝国に想いを馳せ、目の前の戦士達に境遇を重ね、静かに弦を弾く。
そして、別の場所では二つのヴァイオリンの音が重なっていた。
ノックス達と同じように、心静かに耳にすっと入ってくるような、穏やかなメロディーが辺りに流れる。奏者はセヴラン・クアルト、アーシェル・G・クラインの両名。心を重ね、士気を上げる戦士達へ、戦に向けた決意を再認識させる。これは湿地を巡る生存を賭けた戦い。次代へと命を繋げる為に、今一度心に刻め、不退転の決意を、と――。
●
「はい、料理貰ってきたよ」
「おっ、ありがと」
サニー・フォン・オルライトが料理山盛りの皿を、幼馴染のゼラルム・エルホワイトに手渡す。
遠くに戦士達と冒険者達の談笑の声を聞きつつ、二人は席についた。
「なんか、もうすぐ『征竜の巫女』って人の演説があるみたい」
「征竜の巫女? ああ、噂の」
「あれ、知ってるの?」
そう言いつつ、サニーはゼラルムを覗き込んだ。
「噂だけな。極北から出て来たってあれだろ?」
「極北? あそこって人が住んでたんだ」
「ま、嘘かもしれないけどな。誰も真実はわからないし」
「ふーん、興味あるの?」
幼馴染の機微を感じ取り、サニーがグッと顔を寄せる。
「まぁ、少しはな」
「……なら、折角だし声でもかけて見れば?」
「なんか怒ってないか?」
「なんで怒るの?」
「……いや、いい。めんどいし」
「ふーん、めんどいの」
ふっと空気を柔らかくし、姿勢を戻したサニー。
「それじゃ、いっただきまーす」
「……なんだよ、変な奴」
そうして、二人はディズル名産の食材がふんだんに使われた料理に舌鼓を打った。
●
「そうそう、立ち居振る舞いは自然体でいいんだ。でも心は違う。『征竜様は貴方達と共にある』って言葉ではっきりと伝えないと、戦士達には響かないと思うよ」
演説台本と睨めっこするヒルルクに、シルヴィアが声をかける。
「どんな言葉でも、心と思いを込めないとね」
「そういうものかしら……」
「初めてで緊張してるのはわかるけど、士気を上げるっていうのは思った以上に効果が絶大だからしっかりね!」
「う゛っ……緊張してくる」
「終わったら何かご馳走するから、頑張って!」
そう言うと、シルヴィアは舞台設営を手伝う為に部屋を離れた。
「虚像の巫女としての貴女と、個人としての貴女。演説だけなら前者のみでいいんでしょうが、それだとやはり心には響かないかもしれません」
じっと見上げてくるヒルルクに、アクティオンは指を立て心得を説く。
「征竜様が貴女を巫女に選んだ理由が必ずあるはずです。ならば、貴女の言葉を征竜様は支持するはずです。自然体……とまではいきませんが、らしさを出すのは悪くないと思いますよ……と、何か同じような事を言っていますね」
自嘲気味にそう言ったアクティオンも、シルヴィアを追い退出していった。
「さて、大詰めですね」
二人が設営準備に出たのを確認し、ヒルルクの正面に座るユークリア・フィナンシェが表情を引き締める。
「もう一度読み合わせしておきましょう」
言うとユークリアはヒルルクの持つ台本と同じものを手に、声を上げた。
「永きに渡り続いた――」
朗々と紡がれるユークリアの声。瞳を閉じ、心を籠め静かに、でも力強く。
「――至らんことを」
そして、結ばれた言葉に、ヒルルクは思わず拍手していた。
「もうさ、ユークリアが言えばいいんじゃない?」
「もぅ、そういう訳にはいかないでしょ」
そんなヒルルクの物言いに、ユークリアは苦笑する。
「そうだぞ。ユークリアの声は確かに人を惹きつけるが演説向きじゃない。その点、ヒルルク、あんたの声はよく通るしでかい。そして、声に力がある。まさに演説向きの声だ」
そう声をかけるのは、ユークリアの横に座るルチル・プルメリア・グレイハーツだった。
「そ、そうかな。えへへ……」
普段あまり褒められ慣れていないヒルルクは、ルチルの言葉に照れ笑う。
「だが、礼節がなってない。演説とは言葉だけの物じゃないんだ」
「うぐっ……いきなり厳しっ」
「注目が自分に集まると自覚し、立ち振る舞い、視線、タイミング、リズム。色々な要素を組み合わせて『演説』は成り立つ」
「その辺りも含めて、しっかり練習していきましょ! まだ時間もあるみたいですし」
ルチルの厳しい言葉に頷きつつ、ユークリアは窓から外を覗いた。
辺りはすっかり暗くなり、外から賑やかな声が聞こえる。
「演説は宴の終盤だ。頼むよ、ヒルルク」
「う、うん。頑張る」
仮面の下のルチルの表情が緩むのを感じ、ヒルルクはこくんと頷いた。
●
「おや、そちらにいつのはネーヴェ氏では?」
戦士達に混じり食事を摘まんでいたネーヴェ・グラヌローザを見つけ、キーゼが声をかけた。
「まぁキーゼさんじゃないですか」
「ふむ……歓談中でしたか?」
「いえ、そろそろお暇しようかと思ってたところです」
そう言うとネーヴェは戦士達の輪の中から立ち上がり、キーゼの元へ。
「ふふ、この様な所でお会いするとは思いませんでした」
にこりと柔和な笑みを浮かべるネーヴェに、キーゼは普段は見せる事のないふわりとした笑みを返した。
「……あれ、お酒の匂い。キーゼさん、少し酔ってらっしゃいます?」
それが意外だったのか、ネーヴェはスンスンと鼻を鳴らす。
「……すみません、臭いますか?」
「いえ、楽しいお酒の匂いがします」
ネーヴェはそう言うとキーゼから距離を取った。
「……ネーヴェ氏、この後のご予定は?」
「え? そうですね、特には考えていませんでしたが……」
「ふむ……でしたら、ご一緒にいかがですか?」
と、キーゼは空になったジョッキを掲げ、ネーヴェを誘う。
「まぁ、殿方からのお誘いですか」
「お嫌でしたか?」
「いえ、喜んで」
キーゼの誘いに、満面の笑みを浮かべるネーヴェ。
「ありがとうございます。……そうですね、少し外れの方へ行きませんか? もう少しで演説も始まるみたいですし、あまり人混みは好きではないので」
「はい。演説が始まるとこの辺りも混み合いますものね」
二人は宴の中心を外れ、一軒の家屋の階段へと腰かけた。
「……中心を外れると、意外と冷えますね。そうだ、これを……」
「え……?」
ふわりと体を包む温もりにネーヴェは驚く。
「体を冷やしては後の戦いにも障ります」
「ありがとうございます。お借りしますね」
キーゼの差し出したブランケットを羽織り、ネーヴェは頭を下げる。
「……そう言えば、風の噂で聞きましたが、ネーヴェ氏は『踊り』に才があるとか」
「まぁ、何処でそれを?」
「……長く生きていると、色々と話の伝手があるのですよ。どうでしょう、もしよろしければ、一曲披露しますので、合わせていただけませんか?」
「ふふ、私でよければ喜んで」
キーゼの取り出した縦笛を見やりながら、ネーヴェは嬉しそうに立ち上がる。
まるで宮廷音楽のような優雅な笛の音色を聞きながら、ネーヴェは瞳を閉じる。あとは、体が覚えていた。まるで長年ペアを組んでいたかのような二人の公演に、いつしか戦士達も集まり、静かに酔いしれた。
●
「これより、巫女による征竜の神託が下される!」
集落一大きな建物をステージに、ルチルが会場を見渡した。
「注目せよ、戦士達! 征竜の巫女である!!」
聴衆の注目が集まった事を確認し、ルチルが場所を譲る。代わりに建物の中から現れたヒルルクに聴衆達の視線が一気に注がれた。
「私が征竜の巫女ヒルルク。征竜様の目となり耳となる者」
聴衆の声が鎮まるのを待って、ヒルルクの口が開かれる。
「私の言葉は全て、征竜様の御言葉と思いなさい」
神秘性と威厳。その両方を体現させるヒルルクの立ち振る舞いは、まさに神代の竜から遣わされた巫女そのものだった。
「永きに渡り続いた種の望み。
竜になることを願った蜥蜴達が高みへと至らんが為に戦い、倒れ、そして進化してきた歴史。
永遠と紡がれてきた命の輪廻の元、リザードマンを作りたもうた征竜様は、今その心と体の中に確かな竜の息吹を感じておられます。
竜へと至る道が辛く険しくとも、あなた達リザードマンが、確実にその道を歩み進化している事を、征竜様は見ておいでです」
朗々と読み上げたヒルルクは口を閉ざすと戦士達を見渡した。そして、再び口を開く――。
「しかし、進化は挑み戦う者にしか訪れません。そして、まさに目の前にあるのがその、挑み戦うべき戦場です。
幸いにして数奇なる運命の元に邂逅した、種と種の『縁(えにし)』の元、幾度となく跳ね返された強敵の壁を打ち破る時が来たのです。
新たな交わりにより生み出された『縁(えにし)』をもってすれば、永きに渡り得られなかった勝利も、必ずやその手につかめる事でしょう」
「もしも、この戦いで生が尽きたとしても、征竜様は全てを知っておいでです。
あなた達の雄姿を、活躍を、最後を。そして、必ずや次の生が報われるという事を」
「しかし! 征竜様は無為の死をお望みではない! 命を燃やし、生を輝かせ、魂を磨き続ける者のこそを望んでおられます!
この場に集い、戦地へ赴く戦士達よ。鋤を剣に! 鍬を槍に! そして、勝利をその手に!」
「永きに渡る宿敵を打ち滅ぼし、皆が竜への道へ至らんことを――」
全てを言い終え、長く息を吐いたヒルルクは静かに瞳を閉じた。
●
ヒルルクががんばって演説をしている中――。
「ふむふむ(もきゅもきゅ)」
「なるほど(もちもち)」
「へぇ(んぐんぐ)」
肉を喰らい、噛みしめ、酒で流し込む。
このローテーションをかれこれ10回以上も続けるリディリディ・トゥラ・イェレミース。
演説の言葉を右から左に聞き流し、演説に気を取られるリザードマンの分まで拝借しつつ、自らの渇きを満たしていく。
「パンいかがですか~。焼きたてですよ~」
そんな時、演説は右から左なリディリディの耳がピクリと動いた。
「ロールパンに~、チーズパン~。おすすめのメロンパンもありますよ~」
ぴくぴくと垂れた耳が上下に動く。
「ちょっと……あの……そこのヒューマンの人」
首から下げた木箱にパンを満載したルアンナを見つけ、リディリディは恐る恐る声をかけた。
「あ……えっと、一つ……ください」
「はいっ。いろいろご用意してますよ!」
「えっと……一つ、ください」
「はい、どれにしましょう?」
「そ、その……ひと、箱……ください」
「……へ?」
もじもじとこちらを伺うリディリディの視線は先ほどから木箱に注がれている。
「あ、皆さんに配ってくれるんですね」
と、ルアンナはリディリディの周りにいるリザードマンを見た。
「あの……そ、そういう訳じゃ……なくて……私が、いただき……ます」
恥ずかしながらも勇気を出して言い切ったリディリディは、顔を真っ赤に俯く。
「あ、ありがとうございます! うれしいです、沢山召し上がってくださいねっ!」
そんなリディリディに驚きながらも、ルアンナは嬉しそうに木箱を差し出した。
●
演説が終わり、盛り上がりは最高潮。戦士達は再び酒と食事、そして会話に花を咲かせる。
そんな中、演説前まで演奏を披露していた二人は、静かに酒を酌み交わしていた。
「征竜の巫女か。いい目をしてるな」
「気になるのかい?」
「ん、ちょっとな」
「はは、あまり移り気だとあの二人が悲しむよ?」
「あ、あの二人は関係ないだろ!」
ふんっと目を背けたアーシェルが、徐に立ち上がった。
「おや、どこへ?」
「せめて挨拶ぐらいはしとかねぇとな」
と、アーシェルは更に肉を盛りすたすたと歩いて行ってしまう。
「おやおや、これは本当にあの二人に報告が必要かな?」
そう言いつつ、セヴランはアーシェルの後を追うように立ち上がった。
●
「あ、居た居た!」
控室へ下がったヒルルクを見つけ、ララベル・サン・ディーベルが駆け寄った。
「お疲れ様! すごい演説だったね……僕、ちょっぴりウルッときたよ」
「ほんとっ! よかったぁ……反応はすごかったけど、心に響いたかなってちょっと心配だっのよね」
「きっと届いてるよっ! あんなに大声援が巻き起こってたじゃないかっ」
「そ、そうかな?」
「うん! あ、そうだ、喉乾いてない? ジュース持ってきたんだけど」
と、ララベルはヒルルクに持参した飲み物を差し出した。
「ありがと! この後も、宴の方へ顔出すから助かっちゃった」
「そうなんだ。まだ巫女のお仕事は終わってないんだね」
「そうなのよぉ、待っている人がいるからって事らしいわ。ちょっと休憩したいんだけど――」
そんな事を言うヒルルクを、ララベルが見つめていると――。
「……どうしたの?」
「え……? あ、いや、何でもないんだっ!」
顔を真っ赤に目を逸らすララベルに、ヒルルクは首を傾げた。
「そう、なんか顔が真っ赤よ? 熱でもでたんじゃない?」
「ち、違うんだ。その……この間の事を思い出しちゃって」
「この間?」
「あ、あの時はごめん!!」
「えっ!? どうしたのいきなり」
「その……お風呂の……ごにょごにょ」
「ああ、あの時のことね……。まぁ、事故だったんだし、仕方ないわよ。気にしないで!」
と、もじもじと背を丸めるララベルに、ヒルルクはニコリと微笑んだ。
●
「ヒルルク、こっちだ」
「はーい」
ルチルとシルヴィアに連れられたヒルルクは宴の席を回っていた。
「演説が終わった後もこの調子じゃ、いつまでも気が休まらないね」
戦士達に声をかけられる度に、愛想を振りまくヒルルクを見て、シルヴィアが苦笑する。
「一周するまでの辛抱だ。終わればゆっくり労ってやろう」
「そうだね。それがいい。話したいことも沢山あるし」
「奇遇だね、アタイもだよ」
そう言うと二人は顔を見合わせ笑い合うと、後ろに続くヒルルクに顔を向ける。
「ヒルルク、あと少しだ。頑張ってくれ」
「後で沢山美味しいものを食べよう。話もいっぱい聞かせてくれると嬉しいな」
「大丈夫、まだまだ全然平気よ! 気にしてくれてありがとうね!」
自身を気にかけ労う二人に、ヒルルクはグッと拳を握り笑顔で答えた。
●
「どうぞ、召し上がってください」
ルアンナの作ったパンを配り歩くセツリは、宴の一角に戦士達が人だかりを見つける。
「……これは占いですか?」
セツリが戦士達の隙間から中を覗くと、ハーヴィが地面にカードを広げているのが見えた。
「――うん? これは」
と、ハーヴィは突然顔を上げると、戦士達の中に誰かを探し始める。
「あ、君君。――そう、そこの銀髪の君だよ」
そして、見つけたのがセツリだった。
「ごめん、ちょっといいかな」
セツリはハーヴィに言われるままに、戦士達の輪の中へ。
「……うん、やっぱり。占いに出てきたのは君か」
「はい?」
首をかしげるセツリに対し、ハーヴィはうんうんと頷く。
「皆、聞いてくれ。彼女が僕の占いに出てきた『勝利の女神』だ」
と、ハーヴィは突然立ち上がったかと思うと、セツリの両肩に手を置き戦士達に紹介した。
「えっと……状況がよく飲み込めないのですが」
「ごめん。ちょっと協力してもらってもいいかな」
「協力ですか……一体何を?」
訝しむセツリを他所に、ハーヴィは戦士達を前に声を上げる。
「勝利を信じ、彼女に触れてくれ。それは生への約束。信じる心を持つ者に征竜は微笑むだろう!」
「よければその見事な毛並みの尻尾を、戦士達に触らせてもらえないだろうか」
「尻尾ですか……?」
更に訝しみ問いかけるセツリ。
「占いに出たんだ。銀髪の女神が戦士達を勝利に導くだろうって」
ハーヴィはそう言うと、笑顔でウィンク。
「まぁ、触るくらいでしたらかまいませんが……私は女神ではありませんよ?」
そう言いつつも、セツリは戦士達の前にモフモフの尻尾を差し出してやる。
戦士達はその魅力的な尻尾を恭しく触れていった。
●
「いやぁ、歴戦のギシュム戦士と宴を囲めるとは嬉しい限りだねぇ!」
戦士達に囲まれ上機嫌のハヤト=ガラン=ヴォルファング。戦士達も新進気鋭の傭兵団の隊長と同卓とあって、嬉しそうに飲み食いしている。
「はは、ハヤトさんはこんな所でも抜かりがないですね」
「傭兵団を大きくしたいという野望こそが、彼の原動力ですから」
そんな様子を見つめるのは、コルネリウス・アーラ、イズレンディル・パラリム。ハヤトの友人である二人は、したたかに傭兵団の売り込みを行うハヤトと同じ席を囲み料理に舌鼓を打っていた。
「それにしてもギシュムのお料理美味しいですね。独特というか見た目が少し変わっているので心配してたんですが」
「流石、大耕作地と言ったところでしょうか。素材がいいので料理もおいしいですね」
「はい、このパンも不思議な形ですけどとても美味しいですよ」
「ふむ、では一つ」
コルネリウスが差し出した平たいパンを受け取ったイズレンディルは、一かけら口に含むとその味に驚く。
「これは……今まで食べたどのパンとも違う感じですね」
「不思議な感じですよね。香ばしくて美味しいのは確かなんですけど」
「ええ。それにこのサラダにとても合います。コルネさんもどうですか?」
「そうなんですか? ぜひいただきたいです!」
その後も二人は互いに気になった料理をシェアしあい、宴の料理を大いに楽しんだ。
「おっ! そこ行くのは今日の主役さんじゃねぇか。 おーい!」
と、戦士達と武勇伝を語っていたハヤトが、宴を巡回するヒルルクを見つけた。
声をかけられたヒルルクは、ハヤト達の元へとやってくる。
「すげぇいい演説だったぜ! 俺はハヤト、ブレイブファング傭兵団ってとこの団長をやらせてもらってる!」
「ハヤトね。よろしく! 演説聞いてくれてありがとうね!」
「本当に素晴らしい演説でしたよ。私はコルネリウスと申します。以後お見知りおきを」
「同じくイズレンディルです。征竜の巫女にお会いできて光栄です」
ハヤトに続き、二人もヒルルクに話しかけた。
「聞けば極北からいらしたとか。随分と遠い地から……大変な道のりだったでしょう」
「そうね。確かに大変だったかも。征竜様が乗せてくれれば早かったのにね」
労をねぎらうコルネリウスにヒルルクは明るく答える。
「やはり征竜殿の命で世界を回っておられるのですか?」
「ええ、そうよ! 演説でも言ったけど、わたしを通して征竜様が、あなたも見ているわ」
イズレンディルの問いかけに、ヒルルクはなぜか自慢げに胸を反らした。
「私も『森の目』の役割を持った身。その労の数分の一くらいは理解できるつもりです」
「へぇ、あなたも」
似たような役目を持つイズレンディルに、ヒルルクも興味を示す。
「極北からこの湿地まで、殆ど大陸横断だもんな。そりゃ、大変な冒険をしてきたんだろ?」
と、そんなヒルルクにハヤトが声をかけた。
「うん? まぁ、それなりにはね」
「おおっ、興味あるな。是非聞かせてくれよ!」
「私にも是非! 特に極北の話なんか聞かせてもらえるとうれしいです。極北って――」
ヒルルクはしばらく足を止め、三人との話に花を咲かせたのだった。
●
「確かこの辺りだったはずだけど」
演奏を終えたサイラスは人気のない集落の奥を歩いていた。
「ああ、あったあった。おれの記憶も捨てたもんじゃないな」
遠い記憶を頼りに目指したのは、墓所。ギシュムの戦士達が眠る場所だった。
「部族を抜けたおれが今更って気もしないでもないけど――」
サイラスは首にかけてあった自作の首飾りを外すと、墓標へとかける。
「先人への墓参り。これで義理の一つは果たせたかな」
そう言うとサイラスは、しばらくの間、墓標に向かって黙とうした。
●
「エフレムさん!」
「……拙に何か?」
宴の席を遠巻きに眺めていたエフレムの元に、トーラが駆けてきた。
「え、えっと! こここ、これを!」
と、トーラは駆けてきた勢いのまま小包を差し出す。
「……拙に?」
「あっ! ち、違います! えっと、皇子様に……」
「ふむ……」
緊張しているのかプルプルと震える小包を見下ろしエフレムがしばし考える。
「……よろしい。渡しておこう」
「あ、ありがとうございます! えっと、中にカードも入ってるので、よ、読んでもらえるとうれしいです!」
「……確かに承った」
「よ、よろしくお願いします!」
それだけを言い残し、トーラは駆けてきた時以上のスピードで人混みの中に消えた。
「あれ、先ほどのトーラさんが見えたような……」
そんな、トーラと入れ違いにやって来たのはユークリアだった。
「あ、そんな事より――エフレムさん!」
「……拙に何か」
「はい、最近の帝国の事情について、少しお話が」
「……ふむ、拙にわかる事であれば」
その後二人は、帝国の情勢について熱い議論(ユークリア9割)を交わしたのだった。
こうして大戦を前にした戦意高揚の宴は、冒険者達の力もあり大成功を収めたのだった――。
マスターコメント
イベントシナリオ普通 報酬:標準25 / 4〜25人
2021年03月21日 21時42分23秒 公開
参加者
相談掲示板
ちょっと自分のやってしまったことに戦いてるトーラです。 よ、よろしくお願いします。
ヒーラーのユークリアと申します! よろしくお願いしますね…! なんとなくヒルルクさんとは合いそうな気がします。 汝、左の頬叩かれたら右ストレートとか演説でどうでしょう。
No.3
サイラスだ、よろしくなー 主催側参加しようかなと 弦楽器で演奏するか、料理作るか考え中だ。まあ曲だと他の人の演奏時邪魔なるかなーとは考えてるけど
シューターのアクティオンです、よろしく。 さて、巫女殿のサポートに入るか、素直に宴に参加するか……
赤眼の山猫団のノックスです。 私も主催者側で参加予定です。 私も弦楽器での演奏を考えています。 踊りたいという人がいれば踊りやすい曲を演奏するというふわっとしたプレイングにするつもりです。 サイラスさんも弦楽器での演奏を考えているようですが、宜しければ一緒に演奏するというのはどうでしょうか。 サイラスさんに限らず、他にも一緒に演奏したいという方がいれば一緒に演奏しましょう。
ヒルルクよ、みんなよろしくね! 宴会楽しみね! どんな料理が出てくるか楽しみだわ! あ、もちろん演説も頑張るわよ。お手伝いしてくれる人はよろしくね!
スヴァンだ。よろしく頼む。 参加者側という気分ではないがしかし、主催者側というわけでもない。 後は演説のサポートと……鼓舞か……ふむ…ふむ…… (悩)
ルアンナです、よろしくお願いします♪ 私はお料理を作る側に回りますね。 メロンパン作りますよー♪
No.9
一緒に演奏するのは問題ないよー。そういう方に行動書いとく。
ヒーラーのセツリと言います。よろしくお願いします。 主催者側に回らせていただこうかなと……なぜかどこかから「料理はやめておけ」的な天啓がきている気がするので、どうしたものか。 給仕的なことをしているかもしれません。
シューターのセヴラン・クアルトだよ よろしくね。 演奏系は喜んで乗るよ。僕もふわっと合わせる感じで書くね。
情報屋のルチルだ。よろしく。 ……ヒルルクのサポートにでも行くか。
アーシェルだ。よろしく頼む。 俺も演奏に参加させてくれ。 剣舞も鼓舞になりそうならやってみるぜ。
シルヴィアだ。よろしく頼むよ。 私は授恵者になったばかりだし、気楽に宴を楽しもうと思ってるよ。ヒルルクとも話してみたいな。演説のサポートをするか、演説後に話しかけてみるかは考え中。
No.15
えっと、その・・・、リディリディといいます。 よろしくお願いします・・・。 私はあの・・・、宴会の方に参加させてもらおうかなと。
ショック受けてばかりもいられませんし、私も演説のお手伝いをしようと思います。 演説の内容ですけれど、どういう方向でいきましょう? 盛りすぎると巫女さまのボロ…じゃなくって場にそぐわない所が出そうですし、征竜さまが見ていることと、巫女さまに月吸蟲の討伐を応援してもらうようにしたらと思うんですがどうでしょうか?
迷ったけど私も演説のサポートをしようかな。 演説の内容についてはトーラと同じ方向で考えてたよ。征竜がヒルルクを通して皆を見守っていることを伝えて、「貴方達と共にある」とリザードマン達を応援して貰おうと思ってる。言葉はきっとシンプルな方が良いよね。
私は演説サポート係に。 ひたすら真面目な内容を書きました。 他のサポート係さんと内容を精査した上でまとめた内容という事にしてあります。