【聖祭】ハッシリ村の札の縁結び2022
椿油
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シナリオID:2652
オープニング
●メリーユールフェス!
今年のハッシリ村も、ひときわ大きなモミの木が飾られた。
「固定よし! 札よし!」
ミルキーは前年は次期村長の扱いであったが、今年の聖霊節ではもう村長。先陣切って動いていくミルキーの姿を見て、何やら妻のソフィネも嬉しそうである。
――ところで、なぜ札の縁結びという行事があるのか? これはハッシリ村に代々伝わる行事で、用意された木の板に願いを書いてモミの木に吊るす。ジド・ルウの加護によりその願いは成就する、と言われているのだ。
●今年の縁結びは余計な縁まで連れて来てくれたようで
ハッシリ村以東、王国方面より。
「あそこがハッシリ村だな……」
怪しい男が5名ほど、村の近くまで近づいてきていた。大柄なリーダー格は槍、他の華奢な二人は弓そして短剣、残りのローブを被った二人は杖を構えていた。
「ボスより、獲れる物は全部獲れとのお達しだ。根こそぎ剥いでやろうぜ」
「おうよ」
華奢な二人が笑い合う。それを、防衛設備の櫓から見ていた村人がいた。
「――大変だ!」
数刻後、所変わって村の中。
「ダオシエ、いるかー?」
ミルキーがゴブリナの少女、ダオシエを呼んだ。ダオシエも村に来てもう一年と少し経つ。
「いるよー!」
ダオシエは元気に手を振った。
「ソフィネと……エメルンもいるな、うん」
ミルキーは妻と少女に加えてリザードマンの男性の名を口に出す。この三人は、村唯一の授恵者だ。
「お呼びでしょうか?」
エメルンはすぐにやってきた。てっきり札の縁結びの手伝いかと思いきや、少し事情が違った。
「……えっとな、バルバロイかメドゥらしき『敵影』を確認したって、櫓で監視してる人達が言ってたんだ。つまり……」
ミルキーは申し訳なさそうに口をすぼめる。
「分かった、ミル君。敵がいたらこの3人で倒してくればいいんだね」
妻のソフィネは事早く察した。
「ダオシエ、頑張って治すよ!」
グッと拳を握るダオシエ。
「初陣ですか……このような聖なる時期に事を成そうとするとは実に不届き者。成敗してさしあげましょう」
エメルンは己の得物のある家をちらりと見やった。
「……すまない! 残りはこっちで準備無事に進めておくからさ! ベジタブルさんが今年もホットココア用意してくれるって、ついでに去年好評だったスパイス入り野菜スープも。あとアイーロニヴさんもアクセサリーショップ出すっていうし」
三人に謝罪をしたのち、祭りの準備の相談で呼ばれたミルキーは去っていく。
「今年を無事に終えましょうね!」
「うん!」
「頑張りましょう」
村を護る権限は与えられた。三人の授恵者は、密かにゲストの授恵者に相談をする事を決めたのだった。
今年のハッシリ村も、ひときわ大きなモミの木が飾られた。
「固定よし! 札よし!」
ミルキーは前年は次期村長の扱いであったが、今年の聖霊節ではもう村長。先陣切って動いていくミルキーの姿を見て、何やら妻のソフィネも嬉しそうである。
――ところで、なぜ札の縁結びという行事があるのか? これはハッシリ村に代々伝わる行事で、用意された木の板に願いを書いてモミの木に吊るす。ジド・ルウの加護によりその願いは成就する、と言われているのだ。
●今年の縁結びは余計な縁まで連れて来てくれたようで
ハッシリ村以東、王国方面より。
「あそこがハッシリ村だな……」
怪しい男が5名ほど、村の近くまで近づいてきていた。大柄なリーダー格は槍、他の華奢な二人は弓そして短剣、残りのローブを被った二人は杖を構えていた。
「ボスより、獲れる物は全部獲れとのお達しだ。根こそぎ剥いでやろうぜ」
「おうよ」
華奢な二人が笑い合う。それを、防衛設備の櫓から見ていた村人がいた。
「――大変だ!」
数刻後、所変わって村の中。
「ダオシエ、いるかー?」
ミルキーがゴブリナの少女、ダオシエを呼んだ。ダオシエも村に来てもう一年と少し経つ。
「いるよー!」
ダオシエは元気に手を振った。
「ソフィネと……エメルンもいるな、うん」
ミルキーは妻と少女に加えてリザードマンの男性の名を口に出す。この三人は、村唯一の授恵者だ。
「お呼びでしょうか?」
エメルンはすぐにやってきた。てっきり札の縁結びの手伝いかと思いきや、少し事情が違った。
「……えっとな、バルバロイかメドゥらしき『敵影』を確認したって、櫓で監視してる人達が言ってたんだ。つまり……」
ミルキーは申し訳なさそうに口をすぼめる。
「分かった、ミル君。敵がいたらこの3人で倒してくればいいんだね」
妻のソフィネは事早く察した。
「ダオシエ、頑張って治すよ!」
グッと拳を握るダオシエ。
「初陣ですか……このような聖なる時期に事を成そうとするとは実に不届き者。成敗してさしあげましょう」
エメルンは己の得物のある家をちらりと見やった。
「……すまない! 残りはこっちで準備無事に進めておくからさ! ベジタブルさんが今年もホットココア用意してくれるって、ついでに去年好評だったスパイス入り野菜スープも。あとアイーロニヴさんもアクセサリーショップ出すっていうし」
三人に謝罪をしたのち、祭りの準備の相談で呼ばれたミルキーは去っていく。
「今年を無事に終えましょうね!」
「うん!」
「頑張りましょう」
村を護る権限は与えられた。三人の授恵者は、密かにゲストの授恵者に相談をする事を決めたのだった。
解説
【目的】
札の縁結びを楽しむ!
そして不届き者(敵)を成敗する手助けをして下さるとありがたいです。
【出来る事】
・モミの木に願いを書いた札をかける
好きな願いを書き、好きな位置にかけて構いません。内容は「友達100人作る」「一生誰々と幸せになる」「世界一に俺はなる」など、何であろうが自由です。願いなら良いのです。
・出し物を楽しむ
去年に引き続き、スパイス入り野菜スープとホットココアが提供されます。鍛冶師のアイーロニヴさんは指輪・ペンダント・ネックレスなどの金属製のアクセサリーショップを開いてくれるそうです。オーダーメイド可(アイテム化は各自オリジナル化申請でお願いします)。
・自由に過ごす
夕方~夜の開催なので、星空を見たり、手を繋いで暖まったり……お好きな方と自由な時間を過ごして下さい。
・そして、敵を倒す――。
「敵」が村正面へと近づいているのは確かです。村には前回のシナリオで防衛設備が出来たので、村の中で迎え撃つ事も可能ですが、祭りが混乱に陥る可能性があるので村境辺りが主な戦域になりそうです。
ですが、村の中から防衛設備の「櫓」や「堀」を使った攻撃も可能です。櫓には弩、掘の周囲には槍が置いてあります。
ソフィネ・ダオシエ・エメルンはエメルンを前衛に出し、正面から迎え撃つつもりのようです。
【NPC】
ミルキー・スカイシップス(ヒューマン/男性)
村長に成り上がったシンデレラボーイ。今年の司会進行です。
ソフィネ・スカイシップス(ヒューマン/女性)
今回は司会進行をミルキーに委ねました。シューターの授恵者です。
ダオシエ(ゴブリナ)
ヒーラーに目覚めた、賊に属していた過去を持つ少女。既に賊達とは決別済みです。
エメルン(リザードマン/男性)
ウォーリアの訓練を受けた村唯一のリザードマン。丁寧な口調で、戦闘時は誇りを持って戦います。
他、農家のベジタブルや鍛冶師のアイーロニヴは必要がなければシナリオには出ません。交流したい方はプレイングにてどうぞ。
マスターより
今年もやって参りました、3年目の札の縁結び! 椿油です。
札の縁結びに関しては1年目と2年目のシナリオと同じ内容ですが、各年の状況に互換性は無いので初見さん大歓迎です。戦闘したい方もどうぞお越し下さい。
皆様のアツいプレイング、お待ちしております!
リプレイ
●いよいよ始まる札の縁結び……の前に襲撃です
「札にかけるのはタダやしね」
今年もサイラスは『竜化』の札をかけていた。密かに同じ願いをしている村唯一のリザードマン、エメルンの札も見つけつつ。今年はまあまあ進展したのではなかろうかと確信していた。
「もう少し進展したいところだなぁ」
ケン・Z・ブラッドリーは恋人のエデル=マグノリアと共に来ていた。ケンは密かにプレゼントのネックレスも持参していて、良い機会に渡そうと思っていたのだ。ケンは『エデルがいつまでも健康でありますように』と札に書き高い所へ吊るし、エデルは『皆が健康に過ごせますように』と書いていた。
「ケン様とのことは、あのね、神頼みより自分で頑張りたくって……!」
そうか、と微笑むケン。
「エデル……じつは……」
エヴァン・ピオネロはアルマ・ヴァレンタインと共に札の縁結びに来ていた。アルマを肩車して。
「安定性がイマイチですね? 筋力は足りてますので来年こそ……!」
エヴァンの願い、185cmになる事は流石にジド・ルウでも難しかったらしい。
「にゅーじょー! っと、敵がきてるー?」
そう、ケンが何か渡そうとした瞬間、祭りに茶々を入れる敵襲があったのだ。
「お祭りを楽しむ前にお邪魔虫はやっつけないとだね……!」
「あそこに登りましょうか」
アルマは肩車から降り、エヴァンと共に櫓へ向かった。
「馬に蹴られて死にたいのはてめぇらか」
ケンが物凄い剣幕で外へと向かっていった。エデルは、敵襲なら仕事だと、不機嫌――というかキレているケンについていく。
「我はな? 祭りに酒を飲みに来たのだ、それを横槍入れて邪魔するとは」
ベルク・オスマットは全く笑っていない目で賊に語り掛ける。
「……アンジェ、にも、できることがあれば……」
アンジェはそっと武器を構える。
サイラス、ナハシュとヨル・スレイマン、ナタリア・フィッツジェラルド、ミゼリア・L・ステュクスも駆けつけ、更に村には祭り目当てではなく偶然来ていただけのユニス・ソロアーヌ・アクエリリーアまで加勢する。
(今の私には、共に過ごしたい人も願い事もないもの)
だが、ユニスの楽しいひと時を守りたいという想いは本物だ。
「村は……わたし達がまもります……」
ミゼリアはそう言うと、《漆黒の処刑剣》と《黒縛の手枷》を構えた。
『お、おい……何か思ってたより多いぞ村人……いやこいつら冒険者じゃねぇか!!』
『1、2、3の……ひぃ!!』
賊の一人がその人数を数えて驚く。9人である。いや、実はエヴァンとアルマが櫓に登っていてサイラスが隠れているので12人。そして、村の授恵者3人で総勢15人のお出迎えであった。
「とりあえず 死 ぬ が よ い」
「よし、行くぜ!」
(多勢に無勢よなー)
ベルクは酒の恨みとばかりに、殲滅に走った。《毒撃3》を勢いよく駆け抜けて槍を持つ敵の隊長に喰らわせ、ナハシュがそれに続いて《陽炎》込みの《真トリプルファング》を弓使いに放っていき、隠れていたサイラスは竜牙の細剣から《鋭撃3》を術師と思わしき賊にぶつけに行く。
『ちょっ、待っ、聞いてなっ!!』
いきなりの手厚いお出迎えに賊は皆慌てつつも、短剣使いが《腱撃2》でベルクを攻撃しようとする。が、練度が足りないのか冒険者が強いのか、躱される。
「これは……一気に攻めてしまってもよいのかな?」
ナタリアの《メテオライト4》が降り注ぐ。
「オラァ!!」
ケンは慈悲など持たずに《チャージング》のち《闘気槌3》を叩きつける。ここで弓使いがやられた。
『お前らなぁぁ!!』
『程度って物があるんですよ程度が!!』
『そうだそうだ!!』
ブーイングを言いながら敵の隊長が《闘気槌3》を叩き入れ、術師二人が《メテオライト2》を降り注がせる。
「それじゃあ、一応かけとくねー」
アルマが《ウェイブ・オブ・インフィニティロア》を前衛達に放ったのを見て、賊達は心の中で要らんと叫んでいた。更に追加で《攪乱射撃4》が櫓の上のアルマから敵の隊長に飛んでくる。
「どんどんかけてしまおうか」
ヨルは《福音共鳴》で更に強化を重ねがけしつつ、《銀貨》を杖を持つ術師に放ち、倒した。
「そういう方針なら……」
《花狂いの詩》を唱えるエデル、バフ三連掛けである。
「村には立ち入らせません!」
エヴァンが賊の動きを注視しながら《アーケインストリーム》を放ち、移動を阻害していく。
「では、わたくしも行かせてもらいます」
村のウォーリア、エメルンは《チャージング》して《闘気槌》を叩きつけた。
「素早く片付けてしまいましょう!」
ソフィネが《強射2》を敵の隊長に撃ち込む。
「迎撃、します」
アンジェは《魔矢》を残りの術師に放つ。
「見えたわ」
ユニスが《ラピッドショット》を術師に向かって撃ち、敵は倒れる。術師が両方ともやられた事になった。
「あなた達には……何もさせません……!」
《アダマントボディ》を付与させつつ《影渡り》で近づいたミゼリアは、漆黒の処刑剣で短剣使いを斬って倒した。
「こうげき、癒すよ!」
ダオシエが《サイドヒール》及び《ヒール》を前衛の負傷している者達に放ち、敵の攻撃のダメージをある程度打ち消した。
『聞いてな……』
敵の隊長はスリップダメージもあってか、倒れたのだった。
●今度こそ札の縁結び
「メドゥの奴らの尖兵か……」
ベルクが《残留思念感応》で仕入れた情報によると、メドゥの指先の手先だったらしい。冬でも活動を忘れないメドゥ、脅威は秋頃から少しずつ村へと近づいてきていたのだ。とりあえず、賊もといメドゥの手先は身包みを剥いでその辺に投げ捨てておいた。野犬辺りが処理してくれる事だろう。
「よし」
処理完了し、スープと酒を飲みに祭りへ戻ったベルクは、ようやく平穏に戻りながら楽しんで飲んでいったのだった。
「はー遊んだ遊んだ!! 遊んだ後の飯が一番ウメエんだ」
「お疲れさま。ん、なかなか美味しい。体も温まるね」
その後、ナハシュはヨルが札を飾るのを眺めている。願いは『来年もまた、共に居られるように』だ。今までこんな願掛けをしてみた事は無かったヨル。
(少し強欲になってしまった気がするな。俺は)
スープを飲んでいるだけのナハシュを見て、ヨルは振り向く。
「……飾らないのか?」
「俺はいい。今楽しいし、スープもうめぇしな!」
願う前に自分で叶えるのが常だ、ヨルもそうだから自分宛てに書いたに違いない。そう思いながらスープを飲み干すナハシュ。
「そしたら、星が綺麗に見えるらしい。行ってみないか?」
「おう!」
夜空を眺めに行った二人であった。
「……願い事のタンザクを飾るのはモミノキじゃなくてササノハじゃなかったか?」
そのツッコミを今までしてきた者が何人も居たであろう。ナタリアは『生きている限り知らない場所へと旅立ち続ける』と札に書き、木に吊るした。
「此処の出し物には、縁起物はないものかな?」
アクセサリーをふと見ると、『幸運の指輪』と書かれた緑色の石がはめ込まれた指輪があった。
「サボテン魔獣のエキスで作った石を嵌めてある。恋愛成就と成功祈願に効く」
出し物担当のアイーロニヴがそう答える。
「さ、サボテン魔獣……」
村の婚礼の儀式で倒すサボテン魔獣から取ったアイデアらしいが、正直サボテン魔獣のエキスはどうなのだろうか。ナタリアは訝しんだ。
「ジド・ルウの加護ですか……せっかく来たのです。記念に書いておきましょう」
リディリディ・トゥラ・イェレミースは平穏になった村の中で、若干眉唾な伝承に想いを乗せてみる事にした。
「……これでよし、と」
書いたのは、『お肉をいっぱい食べられますように』『お肉をたくさん食べられますように』『お肉をふんだんに食べられますように』……眉唾と思いながらも3回も同じ事を書いているのを見て、アステルはつい微笑んでいた。
(いいじゃないですか、お肉がたくさん食べられるって幸せですよ?)
そう思いながら木に吊るすリディリディ。
「札の縁結び、ですか……面白い風習ですわね。願う縁は、何でも構わないのでしょうか。そうですわ、折角ですし、ご一緒に何か願掛けをしてみませんか?」
ネーヴェ・グラヌローザはアルフィー・リッパーと共に祭りに参加していた。
「ああ、面白い風習だし一緒に参加しようぜ。縁なんて恋愛ばかりじゃなくていろんな縁があるだろ。友人との縁を願ったりしてもいいと思うぜ」
「お願い事は、そうですわね……『親しい方々が日々幸いでありますように』に致しましょうか」
「俺と同じだな!」
笑うアルフィーに、ネーヴェが微笑み返す。
「ふふっ、勿論、アルフィーさんもですよ。皆様が笑っていて下さるのなら、私はそれがとても嬉しいです」
「あ、ありがとな」
照れながらもアルフィーが願うのは『大切な人たちがこれからも笑顔でいてくれること』。
「俺は両親も、育てのじーちゃんも、ルーシェも亡くなったから、だから今一緒にいてくれる人には皆笑っていてほしいって思っているんだ。ネーヴェももちろん入ってるぞ」
「アルフィーさんはご家族を……そうだったんですね」
モミの木に吊るした後は、出し物を見て回る二人。
「あら、アクセサリーですって。とても素敵。そういえば、アルフィーさんは作るのがお得意なんですよね」
「アクセサリーか。今つけているブレスレットも俺が作ったのだ。ネーヴェにも今度何か作るか?」
「まぁ、宜しいんですの?では、お言葉に甘えて……お願いしても?」
出し物のアクセサリーを見つめた後、アクセサリーの話で盛り上がる二人であった。
「あー……はぁ……」
ケンはデートが台無しになったので落ち込んでいた。
「今日はもう、休憩ね。……でも、今度また、デートして? 仕切り直し、ね?」
それを聞いて、ケンは嬉しくてエデルの頬にキスをした。
「じゃぁ、24日空いてるかな」
耳元でささやくケン。
「ふふ、やくそく」
手を取って、頬を擦り寄せるエデルであった。
アンジェは退避させていたミニビヒモーの所へ戻る。
「……モミの木に札、かける、って。一緒に、行こう?」
ミニビヒモーと共に、モミの木の所へ向かうアンジェ。
「ええと、願い、は」
ユニスは戦いを終えて、村を振り返りながら呟いた。
「私にも、共に祭りを過ごしたいという人が、また現れるのかしらね」
――死んだあの人を忘れたいってわけじゃないけれど。そう言いながら、夜の村の輝きを少しだけ楽しんだユニスだった。
(わたしの……ねがい)
ミゼリアはモミの木と札置き場の前に立って少し考える。考えたけれど、今は特に思いつかなかった。
(また……機会が、あれば……)
いつかこの催しに参加してみようと思いながら野菜入りスープを飲むのだった。
「……おいしい」
そして、再び肩車状態でミルキー達村長夫婦に挨拶しに行くアルマとエヴァン。
「こんばんはー、お疲れさまソフィネさん!」
「手伝ってくれてありがとな! ――何か一瞬で終わってたけど」
「皆さん強いですよね! 私ずっと村にいるから中々強くなれなくて……」
苦笑いするミルキーと、強さを求めたがっているようにも見えるソフィネ。
「一回、村から出て修業してみましょうか?」
「えっ、ダメダメソフィネが居ない村なんて……!」
慌てて止めるミルキーに、良い夫婦だなと感じたアルマとエヴァン。
「それじゃ、飾り付けに行きましょうか」
前回の願い『形に残る思い出作り』が叶ったアルマは、『エヴァくんのご両親に挨拶にいく!』と書いてエヴァンに見せる。
「ボクはこれにしたよー、エヴァくんはどんなのー?」
「……歓迎してくれますよ!」
頬を緩ませて微笑みながら、エヴァンは『アルマの笑顔を増やせますように』という札を見せる。
「ふふ、それじゃお願いごとも済んだし出し物まわってみよっか!」
スープで体を暖めながら、出し物を見て回る二人。
「あっ、幸運の指輪だってエヴァくん! ……サボテンエキス?」
婚礼の儀式の時に出現したサボテンのエキス。正直サボテンはどうだろう、と思いながらアクセサリーを吟味するのであった。
「札にかけるのはタダやしね」
今年もサイラスは『竜化』の札をかけていた。密かに同じ願いをしている村唯一のリザードマン、エメルンの札も見つけつつ。今年はまあまあ進展したのではなかろうかと確信していた。
「もう少し進展したいところだなぁ」
ケン・Z・ブラッドリーは恋人のエデル=マグノリアと共に来ていた。ケンは密かにプレゼントのネックレスも持参していて、良い機会に渡そうと思っていたのだ。ケンは『エデルがいつまでも健康でありますように』と札に書き高い所へ吊るし、エデルは『皆が健康に過ごせますように』と書いていた。
「ケン様とのことは、あのね、神頼みより自分で頑張りたくって……!」
そうか、と微笑むケン。
「エデル……じつは……」
エヴァン・ピオネロはアルマ・ヴァレンタインと共に札の縁結びに来ていた。アルマを肩車して。
「安定性がイマイチですね? 筋力は足りてますので来年こそ……!」
エヴァンの願い、185cmになる事は流石にジド・ルウでも難しかったらしい。
「にゅーじょー! っと、敵がきてるー?」
そう、ケンが何か渡そうとした瞬間、祭りに茶々を入れる敵襲があったのだ。
「お祭りを楽しむ前にお邪魔虫はやっつけないとだね……!」
「あそこに登りましょうか」
アルマは肩車から降り、エヴァンと共に櫓へ向かった。
「馬に蹴られて死にたいのはてめぇらか」
ケンが物凄い剣幕で外へと向かっていった。エデルは、敵襲なら仕事だと、不機嫌――というかキレているケンについていく。
「我はな? 祭りに酒を飲みに来たのだ、それを横槍入れて邪魔するとは」
ベルク・オスマットは全く笑っていない目で賊に語り掛ける。
「……アンジェ、にも、できることがあれば……」
アンジェはそっと武器を構える。
サイラス、ナハシュとヨル・スレイマン、ナタリア・フィッツジェラルド、ミゼリア・L・ステュクスも駆けつけ、更に村には祭り目当てではなく偶然来ていただけのユニス・ソロアーヌ・アクエリリーアまで加勢する。
(今の私には、共に過ごしたい人も願い事もないもの)
だが、ユニスの楽しいひと時を守りたいという想いは本物だ。
「村は……わたし達がまもります……」
ミゼリアはそう言うと、《漆黒の処刑剣》と《黒縛の手枷》を構えた。
『お、おい……何か思ってたより多いぞ村人……いやこいつら冒険者じゃねぇか!!』
『1、2、3の……ひぃ!!』
賊の一人がその人数を数えて驚く。9人である。いや、実はエヴァンとアルマが櫓に登っていてサイラスが隠れているので12人。そして、村の授恵者3人で総勢15人のお出迎えであった。
「とりあえず 死 ぬ が よ い」
「よし、行くぜ!」
(多勢に無勢よなー)
ベルクは酒の恨みとばかりに、殲滅に走った。《毒撃3》を勢いよく駆け抜けて槍を持つ敵の隊長に喰らわせ、ナハシュがそれに続いて《陽炎》込みの《真トリプルファング》を弓使いに放っていき、隠れていたサイラスは竜牙の細剣から《鋭撃3》を術師と思わしき賊にぶつけに行く。
『ちょっ、待っ、聞いてなっ!!』
いきなりの手厚いお出迎えに賊は皆慌てつつも、短剣使いが《腱撃2》でベルクを攻撃しようとする。が、練度が足りないのか冒険者が強いのか、躱される。
「これは……一気に攻めてしまってもよいのかな?」
ナタリアの《メテオライト4》が降り注ぐ。
「オラァ!!」
ケンは慈悲など持たずに《チャージング》のち《闘気槌3》を叩きつける。ここで弓使いがやられた。
『お前らなぁぁ!!』
『程度って物があるんですよ程度が!!』
『そうだそうだ!!』
ブーイングを言いながら敵の隊長が《闘気槌3》を叩き入れ、術師二人が《メテオライト2》を降り注がせる。
「それじゃあ、一応かけとくねー」
アルマが《ウェイブ・オブ・インフィニティロア》を前衛達に放ったのを見て、賊達は心の中で要らんと叫んでいた。更に追加で《攪乱射撃4》が櫓の上のアルマから敵の隊長に飛んでくる。
「どんどんかけてしまおうか」
ヨルは《福音共鳴》で更に強化を重ねがけしつつ、《銀貨》を杖を持つ術師に放ち、倒した。
「そういう方針なら……」
《花狂いの詩》を唱えるエデル、バフ三連掛けである。
「村には立ち入らせません!」
エヴァンが賊の動きを注視しながら《アーケインストリーム》を放ち、移動を阻害していく。
「では、わたくしも行かせてもらいます」
村のウォーリア、エメルンは《チャージング》して《闘気槌》を叩きつけた。
「素早く片付けてしまいましょう!」
ソフィネが《強射2》を敵の隊長に撃ち込む。
「迎撃、します」
アンジェは《魔矢》を残りの術師に放つ。
「見えたわ」
ユニスが《ラピッドショット》を術師に向かって撃ち、敵は倒れる。術師が両方ともやられた事になった。
「あなた達には……何もさせません……!」
《アダマントボディ》を付与させつつ《影渡り》で近づいたミゼリアは、漆黒の処刑剣で短剣使いを斬って倒した。
「こうげき、癒すよ!」
ダオシエが《サイドヒール》及び《ヒール》を前衛の負傷している者達に放ち、敵の攻撃のダメージをある程度打ち消した。
『聞いてな……』
敵の隊長はスリップダメージもあってか、倒れたのだった。
●今度こそ札の縁結び
「メドゥの奴らの尖兵か……」
ベルクが《残留思念感応》で仕入れた情報によると、メドゥの指先の手先だったらしい。冬でも活動を忘れないメドゥ、脅威は秋頃から少しずつ村へと近づいてきていたのだ。とりあえず、賊もといメドゥの手先は身包みを剥いでその辺に投げ捨てておいた。野犬辺りが処理してくれる事だろう。
「よし」
処理完了し、スープと酒を飲みに祭りへ戻ったベルクは、ようやく平穏に戻りながら楽しんで飲んでいったのだった。
「はー遊んだ遊んだ!! 遊んだ後の飯が一番ウメエんだ」
「お疲れさま。ん、なかなか美味しい。体も温まるね」
その後、ナハシュはヨルが札を飾るのを眺めている。願いは『来年もまた、共に居られるように』だ。今までこんな願掛けをしてみた事は無かったヨル。
(少し強欲になってしまった気がするな。俺は)
スープを飲んでいるだけのナハシュを見て、ヨルは振り向く。
「……飾らないのか?」
「俺はいい。今楽しいし、スープもうめぇしな!」
願う前に自分で叶えるのが常だ、ヨルもそうだから自分宛てに書いたに違いない。そう思いながらスープを飲み干すナハシュ。
「そしたら、星が綺麗に見えるらしい。行ってみないか?」
「おう!」
夜空を眺めに行った二人であった。
「……願い事のタンザクを飾るのはモミノキじゃなくてササノハじゃなかったか?」
そのツッコミを今までしてきた者が何人も居たであろう。ナタリアは『生きている限り知らない場所へと旅立ち続ける』と札に書き、木に吊るした。
「此処の出し物には、縁起物はないものかな?」
アクセサリーをふと見ると、『幸運の指輪』と書かれた緑色の石がはめ込まれた指輪があった。
「サボテン魔獣のエキスで作った石を嵌めてある。恋愛成就と成功祈願に効く」
出し物担当のアイーロニヴがそう答える。
「さ、サボテン魔獣……」
村の婚礼の儀式で倒すサボテン魔獣から取ったアイデアらしいが、正直サボテン魔獣のエキスはどうなのだろうか。ナタリアは訝しんだ。
「ジド・ルウの加護ですか……せっかく来たのです。記念に書いておきましょう」
リディリディ・トゥラ・イェレミースは平穏になった村の中で、若干眉唾な伝承に想いを乗せてみる事にした。
「……これでよし、と」
書いたのは、『お肉をいっぱい食べられますように』『お肉をたくさん食べられますように』『お肉をふんだんに食べられますように』……眉唾と思いながらも3回も同じ事を書いているのを見て、アステルはつい微笑んでいた。
(いいじゃないですか、お肉がたくさん食べられるって幸せですよ?)
そう思いながら木に吊るすリディリディ。
「札の縁結び、ですか……面白い風習ですわね。願う縁は、何でも構わないのでしょうか。そうですわ、折角ですし、ご一緒に何か願掛けをしてみませんか?」
ネーヴェ・グラヌローザはアルフィー・リッパーと共に祭りに参加していた。
「ああ、面白い風習だし一緒に参加しようぜ。縁なんて恋愛ばかりじゃなくていろんな縁があるだろ。友人との縁を願ったりしてもいいと思うぜ」
「お願い事は、そうですわね……『親しい方々が日々幸いでありますように』に致しましょうか」
「俺と同じだな!」
笑うアルフィーに、ネーヴェが微笑み返す。
「ふふっ、勿論、アルフィーさんもですよ。皆様が笑っていて下さるのなら、私はそれがとても嬉しいです」
「あ、ありがとな」
照れながらもアルフィーが願うのは『大切な人たちがこれからも笑顔でいてくれること』。
「俺は両親も、育てのじーちゃんも、ルーシェも亡くなったから、だから今一緒にいてくれる人には皆笑っていてほしいって思っているんだ。ネーヴェももちろん入ってるぞ」
「アルフィーさんはご家族を……そうだったんですね」
モミの木に吊るした後は、出し物を見て回る二人。
「あら、アクセサリーですって。とても素敵。そういえば、アルフィーさんは作るのがお得意なんですよね」
「アクセサリーか。今つけているブレスレットも俺が作ったのだ。ネーヴェにも今度何か作るか?」
「まぁ、宜しいんですの?では、お言葉に甘えて……お願いしても?」
出し物のアクセサリーを見つめた後、アクセサリーの話で盛り上がる二人であった。
「あー……はぁ……」
ケンはデートが台無しになったので落ち込んでいた。
「今日はもう、休憩ね。……でも、今度また、デートして? 仕切り直し、ね?」
それを聞いて、ケンは嬉しくてエデルの頬にキスをした。
「じゃぁ、24日空いてるかな」
耳元でささやくケン。
「ふふ、やくそく」
手を取って、頬を擦り寄せるエデルであった。
アンジェは退避させていたミニビヒモーの所へ戻る。
「……モミの木に札、かける、って。一緒に、行こう?」
ミニビヒモーと共に、モミの木の所へ向かうアンジェ。
「ええと、願い、は」
ユニスは戦いを終えて、村を振り返りながら呟いた。
「私にも、共に祭りを過ごしたいという人が、また現れるのかしらね」
――死んだあの人を忘れたいってわけじゃないけれど。そう言いながら、夜の村の輝きを少しだけ楽しんだユニスだった。
(わたしの……ねがい)
ミゼリアはモミの木と札置き場の前に立って少し考える。考えたけれど、今は特に思いつかなかった。
(また……機会が、あれば……)
いつかこの催しに参加してみようと思いながら野菜入りスープを飲むのだった。
「……おいしい」
そして、再び肩車状態でミルキー達村長夫婦に挨拶しに行くアルマとエヴァン。
「こんばんはー、お疲れさまソフィネさん!」
「手伝ってくれてありがとな! ――何か一瞬で終わってたけど」
「皆さん強いですよね! 私ずっと村にいるから中々強くなれなくて……」
苦笑いするミルキーと、強さを求めたがっているようにも見えるソフィネ。
「一回、村から出て修業してみましょうか?」
「えっ、ダメダメソフィネが居ない村なんて……!」
慌てて止めるミルキーに、良い夫婦だなと感じたアルマとエヴァン。
「それじゃ、飾り付けに行きましょうか」
前回の願い『形に残る思い出作り』が叶ったアルマは、『エヴァくんのご両親に挨拶にいく!』と書いてエヴァンに見せる。
「ボクはこれにしたよー、エヴァくんはどんなのー?」
「……歓迎してくれますよ!」
頬を緩ませて微笑みながら、エヴァンは『アルマの笑顔を増やせますように』という札を見せる。
「ふふ、それじゃお願いごとも済んだし出し物まわってみよっか!」
スープで体を暖めながら、出し物を見て回る二人。
「あっ、幸運の指輪だってエヴァくん! ……サボテンエキス?」
婚礼の儀式の時に出現したサボテンのエキス。正直サボテンはどうだろう、と思いながらアクセサリーを吟味するのであった。
マスターコメント
参加お疲れ様でした。皆さんが強いので賊(メドゥの指先の手先)、一瞬でやられてしまいました!
それとカップルで参加されている方はクリスマスに間に合わなくて申し訳ございませんでした。
もし宜しければ、札の縁結び2023のご参加もお待ちしております!
イベントシナリオ易しい 報酬:多い16 / 4〜25人
2022年12月27日 09時33分00秒 公開
大成功
参加者
相談掲示板
シューターのユニスよ。 よろしく。 私は賊の迎撃に回るわ。 過ごしたい人がいたりする人たちの、楽しい時間を守りたいと思うから。
キャスターのエヴァンです。宜しくお願いします。 ぼくも戦闘のお手伝いをしますね。 お祭りはその後に堪能させて頂きます。