【学祭】借り物と選挙とサバイバル

桃谷かな

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シナリオID:2500

オープニング

 体育祭。それは昨年まで、パンクリアース学園の全体行事として存在しなかったイベントだ。
 もちろん、学園生の一部が参加できる球技大会やスポーツ競技会は必要に応じて開催されてきたものの、学園祭と時期を合わせての正式な学園行事として『体育祭』が追加されたのは、1222年が初となる。

 御淑やかな貴族令嬢などの中には、「人前で運動着を着て激しく身体を動かすなんて、はしたないですわ……」と観戦に徹する生徒もいるのだが、もとより運動部に所属している生徒やスポーツを愛する生徒にとっては日頃の鍛錬の成果を発表する場にもなる。強制参加ではないにも関わらず、出場者・観客あわせて多くの生徒たちが体育祭の準備に携わり、当日を楽しみにしていた。

●
「何コレ何コレ~~~~! マジ面白そーじゃね? ヤバ!」

 体育祭期間の、とある朝。第一運動場を訪れたドワーフ王シグルランは、目の前に広がる光景に目を輝かせた。
 造花で飾られた入退場門、グラウンドの整地と観客席の椅子並べに勤しむ生徒たち、『本部』と書かれた簡易な日除けテント、設営中の飲食系屋台。初めて見るアレコレに興味津々のシグルランへ、運営係の男子生徒がプログラム表を差し出した。

「体育祭の一環として、本日はこの運動場で2種目と、休憩を兼ねた選挙演説タイムを予定しています」
「えっマジマジ!? アタシ、学生ちゃんの選挙演説ってやつ聞いてみたかったんだよね~。まだ一回も聞けてなくてさ」
「観客としてもたくさんの生徒が来ますから、候補者や立候補を考えている生徒のアピール機会になれば……と思いまして。学内には派閥があるので、野次などが飛ばないよう僕たち運営が走り回ることになりそうですけどね」
「派閥かぁ……若いのに色々あんだね~」
 弱々しく苦笑する運営係の表情を物珍しそうに見上げながら、理解しているのかしていないのか、シグルランはふんふんと小さく頷いてみせる。

 ドワーフ王国の王を決める方法はシンプルだ。最高の鍛冶師であること以外に選出条件はない。王になったら何をするなどと約束することもないし、作品をつくる以外に自己アピールが求められることもない。
 公約を掲げての選挙、というシステム自体が、彼女にとっては馴染みのないものなのだ。

「楽しみにしとこっ! んで、その2種目ってのは何すんの?」
「あ、はい。開催種目は借り物競争、水鉄砲サバイバルといいまして……」
「水鉄砲サバイバル」

 聞き慣れぬ謎の競技名を、反芻するかのように繰り返すシグルラン。
 運営係は、竹製の押し出し式水鉄砲と、大小の丸い木枠に白い布を張ったモノ――彼が『ポイ』と呼ぶ物体を取り出しつつ、嬉々として説明を始めた。

「簡単に言うと、水鉄砲には赤い塗料が入っていまして、身体に括りつけたこのポイを水鉄砲で撃たれたら『死』となり退場です。授恵者と非授恵者混合で2チームに分かれ、全員で撃ち合い、最後まで場に残っていた人のチームが勝ちとなります。授恵者用のポイは大きい方、非授恵者用のポイは小さい方です」

 ちなみに、たぶん塗料だらけで血塗れみたいな感じになります。と爽やかな笑顔で話す運営係。敵の攻撃を防いだり奇襲を仕掛けたりするための遮蔽物もいくつか置かれるらしい。

「へ~楽しそうじゃん? んじゃ、借り物競争ってのはどんなやつ?」
「借り物競争は、授恵者は障害物走、非授恵者は障害物のないコースを走って、このボックスから『お題』の紙を引きます。『お題』には鍋とか羽根ペンとか様々な物品の名前が書いてありますから、指定された物品を観客や教職員から借りて、それを持ってゴールするんです。ちなみに、1位から3位まで表彰台に立てます」
「何それウケる! そっか~……『お題』ねぇ~……」

 説明を続ける運営係の隣で、シグルランの瞳がキラーンと光る。
 パンクリアース学園で初の体育祭ならば、とにかく盛り上げねばなるまい。

 準備があるからとその場を離れていく運営係に片手を振って、シグルランは足元の借り物ボックスに手を伸ばした。

解説

●依頼内容: 学園生・聴講生として、パンクリアース学園体育祭の一日を盛り上げましょう! ●できること: 【1】借り物競争に出場する 選手として借り物競争に出場できます。お題にドキッ……? 【2】水鉄砲サバイバルに出場する 選手として水鉄砲サバイバルに出場できます。生き残れ! 【3】選挙演説・応援演説をする 競技の間の休憩時間に、観客や選手たちに向けて選挙演説や候補者の応援演説ができます。選挙演説は、候補者もしくは立候補を検討している方が公約やご自身の考えをアピールしたい場合に。応援演説は自分以外の候補者の応援をしたい場合に(シナリオ参加者以外の候補者を応援する場合、お相手の名前は伏せられます)。 グラウンドには演台と拡声紋具が用意されています。レッツアピール! 【4】観客として参加する グラウンドの外側に並べられた椅子で観戦できます。おでん、サンドイッチ、ドーナツ、フルーツタルト、ジュース類など屋台で買い食いもできます。! ※プレイングの冒頭に、選択したい行動の番号を【1】【2】のように記載してください。複数選択可能ですが、少ないほうが1シーンあたりの描写は濃くなります。 ●種目 ・借り物競争 授恵者・非授恵者(NPCたち)混合で順位を競います。授恵者である皆さんのコースは、やたら高いハードル、足つぼを刺激しすぎる小石ゾーン、落とし穴ありすぎゾーンを越えた先に『借り物ボックス』があります。 なお、シグルランの悪戯により全てのお題は『好みのタイプ or 好きピ(好きな人)。居なければアツアツのおでん』になっています。おでんはグラウンドの一角の屋台で扱っていますが、借り物用は熱いつゆが器ギリギリまで入っています。 ・水鉄砲サバイバル 授恵者・非授恵者(NPCたち)混合の赤白2チームに分かれ、竹の水鉄砲に入った赤い塗料で敵のポイを撃つ競技です。授恵者は直径30センチのポイを、非授恵者は直径8センチのポイをお腹に括り付け、そこを撃たれたら退場。最後まで残った人のチームが勝ちです。 木製の遮蔽がいくつかあり、グラウンドの真ん中と四隅に置かれたタライから塗料を補充できます。 ※どちらの種目もスキルは使用できません。 ※各種目の非授恵者(NPC)の数は、参加PC数と同数になります。 ※水鉄砲サバイバルのチーム分けは、赤白どちらか選択してください。プレイングに記載がない場合はマスターが振り分けます。人数のバランスが悪い場合、授恵者NPCが投入されます。

マスターより

こんにちは、桃谷です。 今回のシナリオは、体育祭と選挙活動がテーマです。 ちょっと変わった競技しかないですが、楽しんでいただけますと幸いです。 ちなみに、聴講生の参加を募集するために冒険者ギルドにも助っ人募集依頼がでていた……という理由で報酬が出ますが、普通に学園生として参加したとしてもOKです。 シグルランは、持ち込んだ酒を飲みながら最前列でダラダラ観戦しています。

リプレイ

 青い空に打ち上げられた花火紋具が、ポン、ポン、と音を響かせながらピンク色の煙を膨らませた。

 この日グラウンドには、大勢の生徒達が観戦に訪れていた。一見して貴族とわかる者が大半であるものの、明らかに耳の尖った者や尻尾のある者、頭に角を生やした者なども同様に席に着いている。
 そんな中、椅子の足元に動物の頭蓋骨を置いた一見普通のヒューマンの男(ヨル・スレイマン)は、造花たっぷりの入場門をくぐってグラウンドに現れた一人のゴブリン青年を見て頭を抱えていた。
(なんで君はこう、人目を引いちゃうのかなぁ!?)

「出場者が二人? 水鉄砲の方が人気があるのかな」
 風に靡く長い白髪を撫でつけながら、6年生のシルヴィア・A・カペルがグラウンド全体を見渡しやすい席を見つけて着席する。
 甘酸っぱい香りのアップルジュースが入ったコップを傾けつつ眺めた先には、たった二人の出場者しか立っていない。

 そう――第一種目たる借り物競争は、まさかの(シナリオの仕様上)ゴブリン vs 男爵令息の一騎討ちとなったのだ。

●
「折角だから楽しまねえとな!」
 やたらと爽やかな笑顔を浮かべ、いきなり沸き立った観客の声援に応えるナハシュ。一方、ヒューマン貴族のプライドを一身に背負った男爵令息の表情は硬い。
「さっき聞いたけどよ、これスキル使用禁止なんだろ? フェアな真剣勝負といこうぜ」
「……フン」

 スタートの合図とともに、両者が飛び出す。当然、走る速度はナハシュが速い。
 見上げるほどのハードルは、冒険者として数々の難所を攻略してきたナハシュの敵ではなかった。ヒラリと飛び越え、足つぼ小石ゾーンへ。

「痛ってえ!! おい、なんか尖ってねえかこの石!?」

 足つぼを刺激しまくる小石の上を、ぴょんぴょんギャーギャー移動していくナハシュ。その間に男爵令息が駆け抜けていく。


「授恵者でも足つぼは痛いんだな……」
 屋台で買ったサーモン&エッグのサンドイッチとオレンジジュースを両手に持ち、ポツリと呟いたのは観客席のゲルトだ。借り物競争に興味がなかったわけではないが、悲鳴をあげるたびに観客の爆笑をかっさらっているナハシュを見て思うことは唯一つ。
「出なくて良かった……」
 ナハシュは落とし穴に消えたけど、サンドイッチは美味しかった。


「――好きピ? 呪文か??」
 男爵令息に追いつき、お題の紙を引いたナハシュは迷わずおでん屋台を探し始める。だがその時、隣の男爵令息が微動だにしないことに気がついた。
「何やってんだ?」
「あ、いや……その……」
 頬を真っ赤に染めた彼の視線の先には、観客席に座る可憐な貴族少女の姿。
「何だか知らねえけどよ。急がねえと確実に負けるぜ」
「だ、だが……」
 言うだけ言って、授恵者の速度でおでん屋台に走るナハシュ。器を受け取ってゴールへ向かう間にも、表面張力ギリギリのつゆが暴れる度に笑いが起きる。

――勝者、ナハシュ。

 拍手と差別的な視線が半々に向けられる中、ほんのり頬を染めた貴族令嬢が男爵令息にエスコートされてゴールの線を越えた。
「……悔しいが、僕の負けだ」
 借り物競争のお題が発表され、大きな拍手の中で照れた顔をナハシュに向ける男爵令息。背中を押した意識があるのかないのか。ナハシュは相変わらず飄々と笑いながら、彼の肩に軽く手を置いた。
「ま、いい勝負だったんじゃねえか?」


(……なんで男爵令息の動きが止まったのかと思ったら)
 表彰台に上がるナハシュと男爵令息、その後ろでモジモジしている可憐な少女を見ながら、ゲルトはサンドイッチをもう一口パクリ。スモークサーモンの薫りと爽やかなレモンの風味、コクのある玉子の味わいが口の中で見事なハーモニーを奏で始める。
 発表されたお題、それはシグルランによって改変された恐るべき指令。

「あ~、ホントに出なくてよかった」

 結果的に一組のカップルと恋の恩人(キューピッド)が生まれたが、自分があの場に居たら……なんて想像もしたくない。
 安堵したゲルトは、次の選挙演説タイムに備えて追加のジュースを買いに走るのだった。


「副会長、観戦にいらしてたのですね」
 退場していく選手達を微笑ましく見つめていたシルヴィアに声をかけたのは、今日の種目で運営係を務める男子生徒だった。開会の挨拶によれば、それなりに名門といえる伯爵家の令息だ。
「私は今年が最終学年、そろそろ学園生活も終わりが近いからね。学生としては最初で最後の体育祭だ。楽しませてもらっているよ」
 君は? とシルヴィアが尋ねれば、彼もまた6年生だと言う。
「僕も最初で最後です。学園の行事に関われるのも最後でしょうから、思い切って運営係を」
「どちらも面白い競技だね。貴族と平民、異種族……それに授恵者と非授恵者、全て混合で出場できる機会はそう多くない」
 先ほどの借り物競争は個人競技だったが、ゴブリンの生徒と貴族の生徒が並んで走る光景など、このリーンエス王国において中々見られるものではない。
 そして、休憩を挟んで次の競技はチーム戦だ。出場するからには自チーム内での連帯が必要であり、種族や身分を意識すればするほど勝利は遠のく。
「立場が違う人々と、同じ場所で共に学ぶ経験……それは人生の掛け替えのない財産になると思う」
 大貴族――侯爵家の令嬢でありながら、そのように確信を持って言える者はまだ少ない。
 変わりゆくこの学園で学び、育まれた後輩達が、いつか“大人”になるその時に。
 この体育祭が、『各国文化の理解』をテーマに掲げた文化祭が、彼らの心のどこかで輝きを放っていてくれたらと、シルヴィアは思う。

「飲み物でも奢るよ。買いに行く暇もなさそうだからね」
 シルヴィアは柔らかく微笑み、運営係の人数を聞いて席を立った。

●
「あっ、なになに? 次がセンキョエンゼツってやつ~~?」
 少し離れたところから聞こえてきた能天気な声に、ヴィルヘルミナは一瞬、全思考を持っていかれた。
 まさか学園に、と自分の耳を疑う気持ちと、いや前にも学園に来ていたな、という妙に納得できる思考の狭間に揺れながら、彼女は声のした方向へ視線を向ける。
「お う さ ま ?」
 何ゆえシグちゃん(シグルラン)が観客席にいるのか。しかも飲んでいるのは屋台のジュースではない。絶対にだ。
 声を掛けに行こうか迷っていると、桃髪の王の後ろから気づかわしげに駆け寄るレティシア・レインフィールの姿が目に入った。

「シグルラン様、ご機嫌麗しゅう存じます。暫く、ご一緒させていただいても宜しいでしょうか」
「いいよいいよ~。座んなよ~」
 貴族令嬢然とした挨拶を完璧にこなし、レティシアはシグルランが敷いたゴザの上にササッと腰を下ろした。ついでに、さり気なく蒸留酒の瓶を自分の方へ引き寄せる。
 飲んべえのペースで酒を注がせてはならぬ。絶対にだ。
「何かお召し上がりになられますか? 私もあまり馴染みはないのですが、先ほどナハシュ様がお持ちになっていた『おでん』はいかがでしょう」
「あっ、いいね! んじゃ、アタシ買ってくっから――」
「ああっ、私が参りますのでシグルラン様はどうぞお待ちになって……」
 既に出来上がっている飲んべえを、人込みの中でウロつかせてはならぬ。引き留めるレティシア。無駄に威勢よく立ち上がるシグルラン。
「し、シグルラン様。そのように急いでは周りの皆様が……。ああっ、皆様、申し訳ございません……!」
 リーンエス王国における『王』の概念からは想像もつかぬフットワークの軽さで貴族生徒達を掻き分けて進むシグルランと、その後を謝りながらついていく令嬢レティシア。
 救世主ヴィルヘルミナがおでん片手に颯爽と現れるまで、レティシアの眉は下がりっぱなしであった。

●
 本部テントに集合した登壇者を見回し、運営係が選挙演説のトップバッターを募る。一瞬目が合ってしまったリディリディ・トゥラ・イェレミースが、ウッと小さく出かけた呻き声を押し殺しつつ視線をそらした。
(さすがに、一番手は緊張してしまいそうですから……)
 人前で何か話すのは慣れていないのだ。それも、ここは体育祭の会場。選挙演説だけのために用意された場でないならば、それに合わせた演説を考えたほうが受け入れられるかもしれない。
 そう考えたリディリディは、慎重に場の空気を読みながら、好機を待つことにした。

『多文化クラス、異種族の奴はいるか?』

 一番手として登壇したのは、おでんを手にした庶務候補――ナハシュだった。
 隣には、彼を応援すべく一緒に登壇したヨルの姿もある。

『今後、平民や異種族の人数は確実に増える。王党派、貴族派に取り入るにしろ多文化を含めた三政党になるにしろ、選択権は連中ではなく俺達にあるべきだろ? 学園で俺たちの立場を確立させる為の一手として――多文化クラスの奴を生徒会に、お前らの投票で上げるんだ』

『俺以外にいるなら、そいつでいい。俺がなったら、週一で多文化側からの問題直訴くらいはしてやるぜ!』
(週一はアピールすべきところじゃないよね……!)

 おでんの大根をかじるナハシュの隣で、ヨルは内心ムムムと呻いた。
 先ほどは面白競技で会場を沸かせたゴブリン(ナハシュ)だが、今や観客の殆ど(貴族生徒)から白い目を向けられている。貴族を、演説を聞かせる対象にすら入れていないのだから当然だ。

『――彼は。ナハシュは、とても優秀な人間です』

 野次すら飛ばない会場。冷たい視線に混じる、いくつかの熱い視線。
 出馬を知ったその時は、驚きと心配のあまり「なんで君が出ちゃうのかなあ!!」と胸の内で叫んだものだ。

『冷静な客観性と柵の無い自由さ。それを兼ね備えた男です。ナハシュの立場は、新設された多文化クラスの多様性を概ね受け止められます。少数派に属する生徒達の問題を、悩みを――ひいては、生徒達全体の問題を、学園側へと繋ぐ役目を十全に果たせるでしょう』

 ヨルは今、ナハシュと共に戦うために壇上に居る。獣耳の生徒を、角を生やした生徒を……そして、貴族生徒達の目をしっかり見つめながら、ヨルは語調を変えた。

『今一度考えてほしい。君が自由でないならばその理由は何か。君が、君以外の立場の者に感じる壁の正体は何か』

『学園は、俺達に知と自由をくれている。ナハシュはもう、未来を変える為ここに立っている』

 パチ、パチ……と、まばらに聞こえる拍手。
 これから、ナハシュはこんな種族差別の坩堝に晒されていくのだ。共に戦うと決めた今でも、彼を案じる気持ちは消えない。
 が、ナハシュはといえば観客の中に先ほどの男爵令息カップルを見つけ、暢気に手を振っている。

(まったく、君ってやつは本当に……)

 はにかんだ表情で控えめに手を振り返したカップルと、隣の男を見比べて。
 ヨルはゆっくり演台を下りながら、おでんのちくわに手を伸ばすのだった。

 ◇
『私が当選したら、まずは今大会の打ち上げ予算をもぎ取ります』

 ちょうど昼時ということもあり、周囲の屋台から美味しそうな匂いが漂ってくる。これを好機とみて壇上に上がったのは、肉食エルフ――こと会計候補のリディリディだ。
 彼女は種族こそエルフだが、貴族派に属する候補として出馬している。そういった理由もあってか、彼女の主張に興味を示している貴族生徒は多いように見えた。

『そうですね、打ち上げといったらお肉です。ええと……運動をすればお腹が空きますので。よく動き、良く食べる。そうすることで、また動けると思うんです』

 最前列でやたらと首を縦に振っているマッチョは、恐らくどこかの運動部のエースだろう。同意しかなさそうだ。

『せっかく体育祭が学園行事になったわけですから、打ち上げが無いのは寂しいと思います。皆さんでお肉パーティーをしましょう。ですので……、よろしくお願いします』

 ぺこりと一礼して拡声紋具を置いたリディリディに、惜しみない拍手が贈られる。
 勿論、これで本当に票が動いたかどうかはわからない。
 だが、誰を持ち上げるでもなく、誰と戦おうということでもない、平和的に過ぎる彼女の公約と演説は、変わりゆく学園と昨年から続く鬱屈した空気をひと時でも忘れたい層に響いたのだろう。

 ◇
 次の登壇者が姿を現した時、観客席を包んだのは沈黙――次いで、押し殺したような悲鳴だった。

『初めまして。ホムンクルスのセラフィナ・M・ベイリーです』

 たまたま目が合った貴族の少女が、ヒッと息を呑んで友人達の陰に隠れた。

「どうしてホムンクルスが……」
「死体……」
「学園にアンデッドが……?」

 人造授恵者(ホムンクルス)など見た事もない貴族達が、聞きかじりの知識でヒソヒソと囁き合う。
 生存のために飲食と呼吸を必要とし、温かな血が流れるホムンクルスは、一度死んだ人間であったとしてもアンデッドではない。あくまでアンデッドに似た人類種族である――などという知識と認識は、冒険者ギルドにおいては重要視されていても、彼ら王国貴族にとって遠すぎる世界の話だ。

『私、生徒会選挙に立候補しようと思いまして』

 右目に輝く賢者の石も。
 息を吹き返したその瞬間(あのとき)と、さほど変わらぬ青白い肌も。
 上手く動かせない赤黒く変色した両手も。

 一切隠すことなく壇上に立つセラフィナの宣言を、多くの貴族達は恐怖をもって拒絶した。

(王党派にも貴族派にもなりませんから、ご安心を。……あっちも願い下げでしょうし、無派閥で派閥の間に挟まれる中立なんて、面倒なだけ)

 貴族達の反応など。ヒトとして受け入れもしない態度など、最初から予想できていた。
 これは戦いなのだ。
 セラフィナが『ヒト』となるために、戦うべき時は今なのだ。

『私は【学園派】として、また一つ皆さんの価値観を変えてみせましょう』

 能力で見てくれる学園派なら私を拒絶したりしないですよね――そんな、祈りにも似た想いを込めて、セラフィナは拡声紋具を置いた。悲鳴に罵声すら混じり始めた観客席を、運営係が忙しく走り回っているのが見えた。

「お疲れ様でした」
「ありがとうございます……」
 本部テントに戻ったセラフィナを罵声から守るように、書記候補のコルネリウス・アーラが休憩用の椅子へと導いた。
 現役の書記でもあるコルネリウスは、前回の選挙から引き続き無派閥候補として出馬している。だが、だからといって他派閥の候補や支持者と対立しているわけではない。それは掲げた公約でも示している。
「やっぱり、ホムンクルスには貴族の目が厳しいですね。まあ、気にしませんが……」
「今回の登壇者はヨルさんを除いて異種族ばかりですし……なかなか難しいですね」
 セラフィナの隣でグラウンドの様子を伺い、コルネリウスは赤銅色の前髪の下で眉を寄せた。

 残る登壇者は、エルフの自身(コルネリウス)とハーフリングのナキルのみ。
 セラフィナの演説は堂々としたものだったが、ホムンクルス出馬の衝撃はまだ貴族生徒達を動揺させている。

「雰囲気ヤバいな。コルネリウス、オレが先に行くか?」
 同じく観客席に視線を遣っていたナキルが振り返った。彼の快活さが場の空気を変える可能性はあるが、それは賭けだ。場合によっては、彼の主張は何一つ聞いてもらえないかもしれない。
「……いえ、私が先に行きます。これでも一年間、生徒会で活動してきた身ですから。見知った顔が出てくれば、皆さん少しは冷静になってくれるかもしれません」
「わかった。そんじゃ、よろしく頼むぜ。締めはオレがきっちりやるからさ」

 サムズアップで見送るナキルにひとつ頷いて、コルネリウスが戦場(演台)へと一歩を踏み出した。

(アーラさん……頑張ってください)
 リディリディもまた、友人であるコルネリウスの背中を祈るような気持ちで見送る。貴族派からの出馬ゆえに表立っては応援できないが、胸の内で当選を願うことくらいは許されるはずだから。

 ◇
『皆さん、どうか聞いてください』

 凛々しく、柔らかく。拡声紋具を通したコルネリウスの声が、観客席へと浸透していく。
 非ヒューマン種族であり、平民。王国の民ですらない身で、学園史上初めて生徒会役員に選出されたエルフの一人。学園派が多数を占める現生徒会で無派閥として活動する彼女を、知らない者など居ないだろう。

『私は役員として一年を過ごし、学園をずっと創り上げてきた貴族の皆さんが大切にしているものを尊重したい――そして、他種族がそれぞれに大切にしているものも、皆さんに知ってほしいと願っています』

 ここは、貴族のための学園だった。
 創立から500年。この学園を維持し、大陸最高峰の教育機関たらしめたのは誰か。
 その歴史を、重さを。コルネリウスは正しく理解していた。

『――けれど、私達には未だ解らないことが多くあります。この学園を更に良い環境にするためには更なる相互理解が必要であり。その為には、この学園で学ぶ機会を得たすべてのひと(他種族)が、貴族のルールや文化を含め多くを学ぶ姿勢も必須です』

 シン……と耳に響くような静寂が、グラウンドを支配する。
 堰を切ったように入学してきた異質な者達に慣れることを強いられてきた貴族生徒も、突然右も左もわからぬ環境で悩み、迷うことになった非貴族の生徒も。
 彼女の演説には、思うところがあったのだろう。

『互いを知るために、誰もが自分らしく交流し学びを得られる場所にするために、無派閥・中庸という立場だからこそ出来る事があると考えています。公約のみに留まらず、派閥を越えた多くの取り組みを行っていきたいと考えています』

 静かに拡声紋具を置いたコルネリウスを、観客席からの拍手が包む。丁寧なお辞儀で演台を辞した彼女を、ナキルが二回目のサムズアップで迎えてくれた。

 ◇
『オレが最後の登壇者だ。競技の合間に時間をくれてありがとう』

 無派閥の副会長候補――ナキルが演台に上がったのは、休憩時間も終わりに近づいた頃だった。コルネリウスが立て直したグラウンドの空気を壊さぬよう、彼はつとめて明るい表情と声を心がける。

『公約でも言わせてもらってる事だけど、オレは学園で皆と共に学んで、研鑽できれば良いと思う。この大陸で最高の環境と呼べる場所にしたい』

 礼を失しないよう、主張に耳を傾けてもらえるよう。
 ナキルは、持てる限りの知識と技術を駆使して言葉を紡いだ。

『王族も、貴族も誇りを持ってて凄いと思うし。知らなかった頃は、理解出来なかったけど。そういう面を尊敬できるとも思った。そんな凄い人等と、共に学べてこういう競技で競える。それがオレにとっての学園なんだ』

 ふと目が合った貴族生徒が、まんざらでも無さそうに唇の端を緩めた。
 ハーフリングの生徒が、真剣な面持ちで頷くのが見えた。

『こういう機会が増えて、みんなが研鑽を重ねて、大成できる人材が居たら。それを誇るのに生まれも種族も無い。同じ学園の卒業生が偉人と呼ばれるくらい凄くなったら、嬉しくないか?』

 ピンと来ない表情で首を傾げる貴族令嬢がいる。何か考えるような仕草を見せる貴族令息もいる。
 学園はまだ、改革のスタートラインに立ったばかりだ。ナキルの主張を理解できない者も当然、居る。

 だからナキルは思うのだ。

『――いま、その地盤を育てるのは、在校生のオレ達だと思ってる』

 いつか、皆がそう思える未来が来るように。
 今は首を傾げる者がいても、土を耕すことをやめてはいけないと。

●
『皆様、大変お待たせいたしました! 第二種目「水鉄砲サバイバル」選手入場です!』

「ゲルダ様! ヴィルヘルミナ様! 応援しております!」
 花火紋具の音に合わせて入場門をくぐり、グラウンド中央まで行進する選手達。その中にゲルダ・クラインとヴィルヘルミナの姿を見つけたレティシアは、思わずゴザの上で右手を振って激励の言葉を掛けた。
 少し、はしたなかったでしょうか……と我に返ったレティシアへ、二人が水鉄砲を天に掲げて応える。

「ヴィルへルミナ様と同じチームで、とても心強いです。よろしくお願いしますね!」
「はい。せっかくですから勝ちを狙いましょう」
 頷き合うゲルダとヴィルヘルミナは、白チーム。他にシーフの男子生徒が一人と、非授恵者生徒が三人だ。

「よし、偶にゃ全力で遊んでみっかね。こっちはシーフが二人だ。ポイが小さい非授恵者も、上手くやれば最後まで立ってられるかもしれないぜ」
「これは燃えてきましたね! 皆さん、よろしくお願いします!」
「ああ、よろしく」
 一方、赤チームはヴァンゲルス・ロッド、トーラ、ゲルトの三人と、非授恵者生徒三人で組んでいる。

 普段ほとんど非貴族生徒とは接点のない選手も多いのだが、さすがにこの競技にエントリーしただけあって、今は種族や身分について考えないよう努めているようだ。否、考えないタイプの者達だからこそ、手を挙げたのかもしれないが。

 無駄に生々しい色の液体が入った中央のタライを挟んで、両チームが整列する。
 ゲルダとトーラのハーフリングコンビが向かい合い、笑い合った。

「正々堂々、楽しんで勝負しましょうねっ」
「もちろんです! 思い切り行かせて貰いますよ!」

 それぞれタライから一回目の補充をした後、互いに一礼。
 審判が手にした花火紋具にエーテルを通し――頭上に向けて発射した!

「よし、散開だ! 固まらずに連携して死角を補え!」
 遮蔽物の方向へ駆け出しながら、ヴァンゲルスがチームに指示を出す。ゲルトと非授恵者達が大急ぎで場に散らばり、それぞれに遮蔽物を目指していく。
「ポイをガードしてください! 撃つ時は特に注意です」
 同じく非授恵者達を散開させて、ヴィルヘルミナが片手で腹部を隠す真似をした。非授恵者のポイはわずか8センチ。両手で水鉄砲を撃つタイミングでもない限り、片手を広げればガードできるはずだ。
「――っ!」
 囮として動くゲルダを追おうとしたその時、ヴィルヘルミナの目の前に赤色の少女が彗星のように飛び込んできた。トーラだ。
 身長差を利用して下方からポイを狙った彼女の一射はしかし、咄嗟に身を捻ったヴィルヘルミナの肩を真っ赤に染めた。ヴィルヘルミナはそのまま地面を一回転してトーラに背を向け、飛び起きた勢いで一直線にゲルダを追う。
「おっとぉ!」
 自身を狙う白チームの非授恵者生徒を見て、大きく宙に跳ねるトーラ。爪先を掠めた塗料が散って、まるで返り血を浴びたかのように膝まで汚れた。
「逃がしませんよー!」
「ウワーッ!! 来たーー!!!」
 地面を駆けて、もう一度跳躍。逃げる白チーム生徒の頭上を飛び越えつつ一回転したトーラの着地点は――敵の眼前だ。
「くそっ!」
「こちらからは狙い易いですよ!」
 咄嗟に水鉄砲を構えるも、至近距離過ぎて背の高い男子生徒からは狙いづらい。トーラはほとんど鼻先にある小さなポイに武器を向けると、難なくそれを赤で染め上げた。
「まず一人! ゲルトさん、後退します!」
「了解だ。タライまで援護する」
 塗料を撃ち尽くしたトーラが後方のタライを目指す中、遮蔽物に隠れたゲルトの援護射撃が飛ぶ。しかし、そこへ豆鉄砲のように突撃を仕掛けたのはゲルダだ。
 遮蔽を回り込むように走るゲルダに、ゲルトの塗料が撃ち込まれる。しかし、彼女はギリギリのところで地面に伏せて回避した。塗料が命中した金の髪がべったりと赤で濡れ、ゲルダの顔が半分真っ赤に染まる。


「ゲ、ゲルダ様……!」
 血塗れのようなゲルダの姿を見て、レティシアの顔から一気に血の気が引いた。ふらり、と眩暈を起こしかけた彼女を、隣の飲んべえシグルランが慌てて抱き留める。
「ちょっ、ちょっとちょっとレッティ~~!? なになに飲み過ぎ!?」
「い、いえ……! 失礼いたしました……」
 パイナップルジュースを一口飲んで、何とか己を落ち着けるレティシア。
 なお、彼女は酒など一口も飲んでいないので気が遠くなりかけたのは別の理由だ。そこだけは間違えられるわけにいかない。


「今のうちに補充を!」
 ゲルトを狙うゲルダの前に、赤チーム非授恵者がひとり躍り出た。ゲルダのポイに向けられた水鉄砲の射線を遮り、ヴィルヘルミナの背中が全速力で割り込む。ヴィルヘルミナの背中が大量の塗料で染まったのを見届けて、ゲルダは半歩、踏み込んだ。
「……そこっ!」
 真っ直ぐに飛んだ塗料が、囮となった非授恵者生徒のポイを撃ち抜く。遮蔽物の陰から出て補充に走るゲルトを追おうとしたヴィルヘルミナの視界に、弾丸のように駆けてくるトーラの姿が映った。


「ヴァンゲルス、避けろ!」
 ゲルトの声に身体を捻れば、隠れていた遮蔽物の内側に真っ赤な染みが広がった。隠蔽に長けた白チームのシーフが、そろりそろりと忍び寄っていたらしい。
 補充したばかりのゲルトの水鉄砲が赤を噴いて、跳躍して逃げたシーフの足を染める。そのゲルトのポイが、がら空きだ。
「クソッ!」
 ヴァンゲルスが目をつけていた遮蔽物の陰から、白チームの非授恵者が姿を現していた。彼と、ヴァンゲルスが塗料を発射したのは――ほぼ同時。

「はは、やられたな」
 真っ赤になったポイをヒラヒラと掲げて、ゲルトが脱落。同時に『死』を迎えた非授恵者生徒もまた、彼と共に場を退場していく。

(シーフはどこだ……? 補充に行ったとすれば左手、姿が見えないのは遮蔽の後ろか)
 残弾のないヴァンゲルスが、身を隠している遮蔽物の脇から顔半分を覗かせて辺りを窺う。恐らくだが、敵チーム最後の非授恵者はこの辺りにいない。脅威となるのは、先ほどのシーフただ一人だ。
(南東のタライは近いが、敵の射程内だろう。……ゲルトが来た方へ行くか)
 ヴァンゲルスは冷静に分析すると、シーフが隠れているだろう方向を注視しながら、逆方向のタライを目指して駆け出した。


 急襲と撤退を繰り返す暴風のようなトーラを撃退すること何度目か。ヴィルヘルミナの前では、ポイを真っ赤に染めた赤チームの非授恵者が残念そうな表情を浮かべていた。
(一気に撃てば射程が伸びますが……)
 所詮は竹製の押し出し水鉄砲。中に詰めた塗料を小出しに撃てば射程が損なわれ、遠くを狙うには一気に押し出す必要があった。
「ヴィルへルミナ様、早く補充に行きましょう!」
 遮蔽を伝うようにして、ゲルダとヴィルヘルミナがタライを目指す。
 だが――あと少しというところで、赤い髪の少女が姿を現した。
「先に!」
 慌ててタライに水鉄砲の先を沈めたゲルダを守るように、ヴィルヘルミナがトーラへ背中を向ける。そこを――狙っていた者がいた。

 ゲルダの頭より、さらに向こう。
 そこには、水鉄砲を構えた赤チーム最後の非授恵者が居た。腕でガードするも、間に合わない。

「逃げてくださーい!!」
 ポイを赤く染めて脱落したヴィルヘルミナの頭上を飛び越えて、トーラがゲルダの側面に立つ。小柄なハーフリング同士、身長差は殆どない。逃げた赤非授恵者をそのままに、ゲルダは横向きのまま牽制の一射を撃って遮蔽物の陰へと駆け出した。
(それじゃ、こっちから!)
 ゲルダの前から回り込もうと、逆方向から遮蔽の裏側に入るトーラ。しかし、ゲルダと鉢合わせを狙ったその場所で目にしたのは、白チーム最後の非授恵者生徒の水鉄砲だった。
「あわわっ! こんな所に隠れて……!!」
 至近距離からの一射をギリギリでかわし、逆に塗料をお見舞いする。だが次の瞬間――真っ赤に染まった非授恵者生徒の陰に隠れていたゲルダの一射が、トーラのお腹のポイを撃ち抜いた。


「……お前さんは右からだ。俺が左に入る」
 塗料を撃ち尽くしたらしい白シーフが逃げ込んだ遮蔽物。自チーム最後の非授恵者生徒にそう声をかけながら、ヴァンゲルスは慎重に歩を進めていく。
 逆方向に回り込んだ非授恵者と目を合わせ、頷き合った。挟撃だ。
「よし、行くぞ!」
 遮蔽物の裏側へ、同時に飛び込む二人。自分が挟み撃ちにされることを予見していた白シーフは、強行突破を狙って迷わず非授恵者生徒の方へと駆け出した。

 ――だが。

「おっと。お前さん、すっかり騙されたな」

 そこには、水鉄砲を構えたヴァンゲルスが居た。左から突入すると言った者が、実際に左から入ってくるとは限らないのだ。
 ポイを真っ赤に染めて、残念そうに座り込むシーフ。
「なかなか楽しいモンだな。白チームは、あと一人……」

「隙ありっ!」
「うわぁっ!?」

 強敵のシーフを倒して安堵したばかりのヴァンゲルスの前で、赤非授恵者のポイが撃ち抜かれる。慌てて振り返れば、すでに全身真っ赤なゲルダがくるりと踵を返したところだった。

 もはや、ここからは一騎討ち。
 両者別々のタライへと走り、遮蔽を盾に広いグラウンド全てを使って一進一退の攻防を繰り広げる。
 小さな身体を行かして右へ左へ積極的に攻め入るゲルダと、できる限り姿を晒さず敵の動きと進路を分析するヴァンゲルス。


「ふふ、なかなか白熱した戦いだね」
 熱狂する観客達の声を聞きながら、シルヴィアは温かい眼差しで競技の行く末を見守っていた。
 両チームともに、誰が残ってもおかしくない戦いだった。貴族だ平民だと騒いで競技を台無しにすることもなく、見事な協力プレーで観客を魅了した後輩達は純粋に素晴らしいと思う。


「――あっ!」

 観客を沸かせた一騎討ちも、いつかは終わる。
 遮蔽物の間を移動しようとしたゲルダのポイを、ヴァンゲルスの一射がわずかに掠めたのだ。

 じわり、と広がる赤い染み。
 それは、競技の終わりを意味していた。

『勝者、ヴァンゲルス・ロッド! 赤チームの勝利です!』

「えへへ、やられちゃいました」
「いやいや。今のを避けられてたら、もう俺に勝ち目は無かっただろうよ」

 拍手と歓声の中で、互いを讃え合うゲルダとヴァンゲルス。
 場外に出ていた両チームの選手も戻ってきて、笑顔で礼を交わし合った。


 楽しかった一日は終わり、パンクリアース学園の学園祭・体育祭シーズンも間もなく終わる。
 陽が傾き始めた空に、花火紋具が再び桃色の煙を漂わせた。

マスターコメント

皆さま、ご参加いただきありがとうございました! 二種目ともちょっと変わった競技でしたが、楽しんでいただけたでしょうか。 選挙演説タイムにも大勢の方に登壇いただけて、とても嬉しかったです。 それでは、またの機会がございましたら、ロスガリア大陸のどこかでお会いしましょう!
イベントシナリオ

イベントシナリオ普通 報酬:標準13 / 4〜25人

2022年10月11日 00時47分50秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. トーラ

    トーラです。 【2】水鉄砲サバイバルに参加する予定です!

  2. ゲルダ・クライン

    ゲルダです。 わたしも【2】の水鉄砲サバイバルに参加しようかなと。 正々堂々がんばりますので、よろしくお願いしますねっ

  3. ナキル

    ナキルだ、よろしくなーっと へぇ…借り物競争って「土器」を使うのか…… と、今回はそっちじゃねぇんだった。 コルネリウスは手紙サンキューな! っと 面白そうだから参加させて貰おうと思って来たぜ そう言う訳で【3】だな。

  4. ヴィルヘルミナ

    ヴィルヘルミナです。 私は【2】で行こうかなと。ご一緒する方はよろしくお願いします。

  5. コルネリウス・アーラ

    コルネリウスです。 私は【3】で演説をさせて頂こうと思っています。 よろしくおねがいします。

  6. No.6

    リディリディです。 よろしくお願いします。 体育祭ですか。 身体を動かすのはちょっと・・・。 私は【3】の方になると思います。

  7. ゲルト

    ゲルトだ、よろしく。せっかくの祭りだし参加してみた。 水鉄砲のに出てみるつもりだ。

  8. ナハシュ

    ナハシュだ!よろしく。 折角だから【1】の借りものに出つつ、余裕があれば【3】にも行こうかと思うぜ。

  9. シルヴィア・A・カペル

    シルヴィアだ。今回はよろしく。 在学生として最後の体育祭だからね。のんびり楽しませて貰うよ。

  10. ヨル・スレイマン

    何をするか迷っていたらギリギリだ。 ヨル・スレイマンだ。宜しくね。【3】で応援演説と、余裕があればもう一箇所どこかで体育祭を楽しみたいなと思っている。

  11. セラフィナ・M・ベイリー

    セラフィナ・M・ベイリーです。よろしくお願いします。 面白そうなので【3】をやってみたいと思います。 皆がどんな顔で私を見るのか!想像しただけで興奮しちゃいますね!

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0