王子の離宮のつかいみち
炙りとろ左門
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シナリオID:2405
オープニング
王子ウィリアム・リーンエスが所持する【アズライト離宮】――通称【藍銅宮】について、王族が言及したことから、事ははじまる。
「藍銅宮のことなのですが、遊ばせておくにはもったいないと思いませんこと?」
主であるウィリアム王子がいまいち不在がちなため、下働きたちにより最低限の管理維持がなされているのみ。そして人が住まなくなると、家屋というものは急速に痛み出すものなのである。
「歴史のある建築物ですが、老朽化も著しく、取り壊してはどうか――なんて話も出ておりますのよ?」
もちろん同じくらい、『残してほしい』という声もある。身分問わず、だ。
そしてウィリアムは概ね残す方向で話を進めたいと思っている。取り壊すのにも金はかかるのだ。雇用が生まれるといえば聞こえはいいが、使える予算は限られている。
そして、第二に。現状、ウィリアムが財産を手放すというのも政治的にもあまり好ましくない行動である。
「そうだね……」
ウィリアムは芝居がかった動きで腕を組み、そして片手を頤にあて考え込む。
「では、こうしよう。冒険者たちにこの離宮の改修と活用案を依頼する」
「……」
「僕たちは僕たちで忙しいからね。そうだろう? 妹よ」
「まあ、そうですわね」
メアリーはひとまずはそれでいいかと頷く。それはまた今度、と兄が言い出さないだけマシといえた。
● そういうわけで
「藍銅宮に入れるんですよっ!」
目を輝かせて君たちに力説するのは、冒険者ギルドの新米受付嬢、シュゼットだ。
「ウィリアム王子にあてがわれている離宮……王族のお住まいですよ!? こう、宮廷ラブロマンスに出てくる華やかな場所に違いないです!」
指を胸の前で組んで夢心地。自分だけの王子様とダンスホールで踊ることを想像しているのだろう。
だが、今回の依頼はその小離宮の「お手入れ」である。
「古い建物だって話です。ええっと……内装の見取り図はお出しできないので、現地で従臣の方から説明を受けてほしい、とのこと。殿下は諸事情でご不在のようですが、『帰るのを楽しみにしている』だそうですよ!」
私もついて行きたいです、とシュゼットは残念そうに首を振り。依頼書をもう一枚めくる。
「それから、殿下は藍銅宮の新しい活用法を提案してほしいとも仰っていて。私はですね、藍銅宮でダンスがしてみたい――あ、いやいや、今のは気にしないでください! それでは、よろしくお願いしますね」
解説
マスターより
リプレイ
ウィリアム王子からの無理難題に集まった冒険者たちを前に、受付嬢シュゼットはほっと胸を撫で下ろす。あとは凄腕の匠達がなんとかしてくれる……! 彼女も彼女で問題は冒険者に丸投げ方針なのだった。まあ一般人だからね、仕方ないね。頑張れボウケンシャー。
【藍銅宮】に到着した一行は、前庭を抜けて宮内へと入る。埃っぽくはないが――。
「アンティークだね」
「懐古趣味のお客人にも喜んでいただけそうだ。ね、ロゼ」
「ああ。実際、稀少品として取引されている家具が揃っている。さすがは王子殿下の宮といったところだ」
皆が言葉を探す中、すらりと当たり障りのない感想を述べるのは、シルヴィア・A・カペル、ジュスト・ヴェルジー、ローザリカ・L・ディオール。それにエルゼリオ・レイノーラも加わる。
「ここが殿下の離宮……歴史的な建築物を取り壊しちゃうなんて勿体無いし、なんとか改修して活用しないとね」
エルゼリオが暗に示した通り、手を入れる必要があるのは明らかだ。
「案を出してほしい、とのことでしたね?」
絨毯やソファのキルティングなどを検分していたスィーリーンが顔を上げる。カーテンの傷み具合を確認していたゲルダ・クラインも戻ってきた。
「離宮に夢を見ている方をターゲットにした、高級な宿泊施設として開放するのはどうでしょう?」
「離宮に泊まれるのですかっ!?」
目を輝かせたのはシュゼットだ。それを、「まだあくまで仮案にすぎない」とベルク・オスマットが宥める。
需要はありそうだが、泊まっている間に家具や建具へ細工されたり、目の届かない時間で何かされたりということを考えると、警備運用面でコストがかかりすぎる――具体的な部分を詰めるにつれ、そのような問題に直面してしまった冒険者達は、アプローチを変えてみることにした。
「迎賓館はどうだろうか?」
ジュストがそう切り出し、スー・ルーが小首を傾げた。
「そのナントカ館ってのは、何するとこなんだ?」
「賓客――大事なお客さまをおもてなしする場所だよ。会談、お茶会、舞踏会、演奏会……いろんな用途で使えそうだね」
スールの疑問に、シルヴィアが明快に答える。まあその分、その用途に耐えうるレベルまで手を入れる必要があるが。
「舞踏会!」
シュゼットがふたたびそわそわしはじめた。やはり庶民にとって舞踏会とは憧れの舞台なのだ。
「迎賓館として使いつつ、来客予定がない日は一般開放とするのはいかがでございましょう?」
ハリーヌ・ヨツユビが最初に出た案を取り入れつつ、より良い形を模索する。ジュストは頷き、更に加えた。
「この小離宮にふさわしい規模で――だね。警備コストは抑えるけれど、決して足りぬことがないように。まあ、本当に重鎮の重鎮なんて相手になれば、王宮で遇するだろうから」
そうなれば、あとはそれに向けて手を入れていくだけだ。そこに屋根上や外壁のほころびをチェックしていたギャメルとパヴェル・A・サムルガチェフが合流し、冒険者達はそれぞれ動き出した。
● そうと決まれば
「では、わたしたちで水回りを綺麗にしてしまいましょう」
「任せて!」
排水関係を請け負ったのは、ゲルダとエルゼリオだ。【建築・土木】技術を持つエルゼリオが、ゲルダが事前に調べたという10年前の排水機構のまとめと、自分の知識とを擦り合わせる。
「10年といえど、やっぱり今の排水技術の方が効率がいいな……」
「では、部品交換になるでしょうか? 部分的な交換に収まると良いのですが」
「ちょっと待って、うーんと……これなら……」
エルゼリオは紙と鉛筆で各配管の位置をメモしつつ、部品を取り替えて改装する部分にあたりをつける。それをもとに、ゲルダと一緒に修理が必要な部分をリストアップしていく。
「古い部品が手に入らない場所は作り替えてしまおう。修繕でなんとかなりそうならそれで」
「了解です。……こんなこともあろうかと、水着を用意してきました」
ゲルダは得意げに慎ましやかな胸を張る。汚れてもいい服の下には水着。完璧だ。
「それなら、交換作業はこっちで」
ゲルダとエルゼリオはうまく役割を分担すると、それぞれ作業を開始する。見えている部分に大きな汚れはないが、やはり排水管の汚れが強敵だった。ゴミを取り除き、汚れを落とし、壊れている部分は修繕し、古い機構は新しいものへ。時折汚れの撥ねた体を濯いで綺麗にし、休憩を挟む。日が真上に来る頃には清掃作業も終わっていた。
「綺麗になりましたね。ただ、タイルの剥がれは……」
ゲルダは経年劣化でところどころ剥がれ落ちてしまった浴槽内のタイルを覗き込む。修理箱の中に、さすがに石材はない。
「ここも綺麗にしたいな……せっかく『藍銅』って言うくらいなんだし、藍色を使いたいかも。海底みたいな雰囲気、というか」
ここから先はリフォームの領域だ。王族の所有物としての品位を損なわないようなデザインが必要となってくる。
「一度切り上げて、スィーリーン様たちと合流しましょうか」
おしゃれの達人であるスィーリーンであれば、見合う図案を用意してくれるはずだ。ゲルダの提案にエルゼリオは賛成の意を示した。
「私でお役に立てることならば、なんなりと」
スィーリーンはゲルダとエルゼリオを慎ましい微笑みで迎えると、手入れした客室を振り返った。
「当時の流行をそのまま残して資料として使えるならとも思いますが……現役で運用されるとのことでしたから、今の流行りをできるだけ取り入れました」
傷んでいる箇所の修理はもちろんのこと、すでにあるものを再利用してできるだけ費用を抑えている。しかし清潔感には妥協しない。褪せた生地は入れ替え、繕いが必要なものは裁断して小物を彩る。
「……ふと思ったのですが、王族の離宮にあるものが流行をただ追うものでは、殿下の沽券に関わるのではないでしょうか……?」
そこで、スィーリーンはエルゼリオのアイデアを元に、藍銅宮の名に相応しい内装案を練り上げる。次なる流行をここから作り上げようと言うのだ。
「公を彩る絨毯といえば【赤地に金糸】を織り込むものですが、思い切って【青地に金糸】にしてみましょう。浴室についてですが、浴槽は白のままで、タイルを青や水色、白でまとめて……視認性を確保しつつ、湯に淡い色をつければ、エルゼリオ様の案も低予算で実現できるかと」
調度品については更なる検討が必要そうだ。少なくとも海のものは今日明日では調達できないため、申請書のみを認めることとなった。
ハリーヌはいつにも増して張り切っていた。このあたりで王族とのコネクションが得られれば、ハリーヌの未来は明るい。まさに薔薇色。
「高所も、ゴリラの手を借りれば安心安定でございます!」
梯子は少々足場に不安があるが、ゴリラであれば大丈夫。字面が強い。
人の手が届きにくいところも綺麗に掃除を済ませ、耐久に問題がないかチェックする。懸念が残る箇所は修繕と補強を施し、特に寝台の組み木の傷みには気を遣う。
「寝返りで底が抜けてしまってはびっくりでございますので」
王宮の家財をこちらへ持ってくることはすぐには認可できないということで保留となったが、倉庫にあるものは使って良いということで、ハリーヌは一度倉庫の方は足を向ける。
「おや、ベルク様もこちらに用事が?」
「む? ああ」
と、倉庫には先客がいた。ベルクだ。ベルクは『王国に貢献した功労者』を称えるためのギャラリーを作ろうとしていた。
「肖像画があるといいと思ってな。ハリーヌ殿は何をお探しか?」
「調度品でございますね。客室に配置します」
「調度品なら……大きく動かしにくいものは奥だろうな」
二人(とゴリラ)は埃っぽい倉庫の換気を行いながら、手分けして所蔵物を整理する。
「こちらのチェストはまだ使えそうですね」
ハリーヌはゴリラにチェストを運び出してもらいつつ、はたきで埃を払っていく。
「王族の肖像画は……やはり殿下らが中心か」
倉庫にあるものだ、新しいものが描かれて古くなり、壁から降ろされたものが多い。つまり……。
「……これは、殿下の幼少期の……?」
ベルクは一枚の絵画を見つける。作成年の記録用紙が見当たらなかったため、その見目麗しい子供がウィリアム王子なのかメアリー王女なのか知る術はない。いや宮仕えの者に聞けば良いのだが。
しかしそこでベルクは閃く。
(……はじめこそ王国ドゥジン教徒へのネタ供給点となれば、いやこのような場では難しかろうと諦めていたが……これは案外……イケるのでは……??)
ベルクは「ウィリアム王子×レイウェスト皇子」から王国ドゥジン教徒を引きはがし、ウィリアム王子に新たな相手をあてがうことで新規ジャンルを確立できないかと考えていたのだ。だが、そう、他にも方法はある。ウィリアムが左側でなくなれば我が主の安寧は守られるのでは――!
「ベルク様? ベルク様ー?」
「はっ……!!!!!」
ハリーヌの呼びかけにベルクは我に返り、気を取り直して作業を再開した。
「なるほど、新しい流行の創出か……」
シルヴィアは考え込む。彼女の担当は大広間だ。スィーリーンがまとめた改装案を参考にしつつ、シルヴィアは王国らしさ――伝統や格式というものも大切にしたいと考えていた。
「やはり、いろんな立場のお客様が訪れるからね。失礼のないように、かつ政治色が出過ぎないように。伝統と格式を重んじるが決して古臭くなく、革新的で……そうだね、青地の絨毯はいいかもしれない。金糸も華やかだが、こちらは銀糸を織り込んではどうかな」
舞踏会も催される場所、大広間は煌びやかであるべきだ。しかし、シルヴィアはむしろ静謐や荘厳さを重視した。まずは王国に古くから伝わる伝統的な柄の絨毯を何枚か倉庫から引っ張り出し、洗濯して干している間に大広間の床を隅々まで磨く。それが終わればカーテンの生地を入れ替え、逐次発注をかけておく。
とはいえさすがに一人ではこなせないため、全体の完成図をメイド達に共有し、あとは彼女達がいつものように手入れするだけで済むように最低限の形を整えた。
「さて、あとは喫茶室とクロークルームも用意しないと」
必要な部屋がない、では大変だ。忙しなく動きつつも颯爽とした立ち姿を失わないシルヴィアの後ろ姿を、何人かのメイドが惚れ惚れと見つめていた。
ジュストは呆然と書斎の本棚の前に突っ立っていた。シルヴィアやベルクたちのほうに古い調度品を回す作業から戻ってきたローザリカは、その姿に小首をかしげる。
「どうした?」
「……ない」
「ない? 何が?」
「こんなことは許されない……」
地の底から響くような低い声で唸るジュストに、ローザリカは目を瞬いた。なにやらかなりお怒りだ。
その理由はジュストの手元にあった。整理のために設置されたテーブルの上に、本棚に収められていた書籍が開かれて置かれている。近づけば、古書特有の乾いたインクと埃の匂いがする。
「本は貴重なんだ。国財なんだ。大切にされるべきだと思わないか、ロゼ」
ジュストは虫喰いに遭い、背割れした上製本をローザリカに見せる。
「こんなに無惨な姿に……!!」
がっくりと膝をつきそうな勢いで悲嘆に暮れる従弟の姿に、ローザリカは全てを理解した。
「まったく君というやつは……」
「本というのはこんなぞんざいに扱っていいものでは」
「わかってる、わかってる。僕も手伝おう」
ローザリカも手袋をはめ、傷んだ本を干したり、綴じ直しをしたり、ジュストの作業を手伝う。やがて本の修繕はジュストに任せてローザリカは目録の作成を引き継いだのだが、これはジュストの筆跡が荒ぶっていたからだ。
「……本のことになると、こんなにも感情を露わにして」
ふと芝居がかった声音でつぶやいて見せると、ジュストは顔を上げてきょとんとローザリカの方を見た。それもまた珍しい表情だな、とローザリカは思う。
「何か勘違いしているみたいだけど、ロゼ。誰の前でもこんなふうに取り乱したりはしない。相手は選ぶ」
それはつまり――そういうことだ。
「ンン゛ッ」
込み上げるものを堪えたローザリカの手に力が篭もり、ばきっとペン先が折れる。
「ロゼ、文具も大事にしないと」
「誰のせいだと思っているんだ誰の! 君のそういうところが僕は――」
思わず椅子を蹴って立ち上げり、机にばんと両手をついてジュストに食ってかかるローザリカの顔は赤い。
「……僕は……まあ、その……」
そのまま勢いをつけて吐き出してしまえたらよかった感情を、ローザリカは反射的に引っ込める。貴族として生まれたものの条件反射のようなもので、恥ずかしがっているわけではない。多分。きっと。めいびー。
「て、手が止まっているぞ! 早く終わらせよう」
ローザリカはあたふたと誤魔化す。それをジュストは微笑ましく見守っていた。
一方その頃、スールはローザリカとジュストが干しに出した本を手に取り、目を通していた。もちろん、決してサボりではない。干してある本が不測の事態で汚損したり、紛失したりするようなことがあってはならないからだ。時間が来たらこの大量の書物を室内に運び込む力仕事も頼まれている。
「っと……」
スールはページを爪に引っ掛けないように注意を払う。書物の扱いに慣れているジュスト曰く、漉き紙と羊皮紙では耐久度が異なり、またそれぞれの特性を使い分けて用いるのだそうだ。改竄されてはまずいもの、長く残したいものには羊皮紙を、普段の用紙には漉き紙を――しかし後者は特定方向からの力に弱い。スールはそれらをチェックして、種類ごとにまとめる。
冒険者として活動し始めた頃に比べて、読める字も多くなった。漫然と手にした本の内容は、貴族の礼儀作法や処世術についての教本だ。これで貴族という種への理解が深められるかどうかは分からないが、本に聞いて分からなければ本人たちに聞けばいい。
ふと屋根の上の方から大声が聞こえ、スールは本から顔を上げた。
「わああああ!?」
悲鳴を上げたのはギャメルであり、厨房から繋がる排煙口から落ちそうになったところを、パヴェルに支えられていた。
「パヴェルー? 今のはギャメルか? どうしたー?」
「いや、大丈夫だ。なんとかなったぜー」
庭園からのスールの呼びかけに、パヴェルはギャメルを引き上げながら返した。
「悪い、ちょっと身を乗り出しすぎた……! ありがと!」
「どーも。ま、こういうとこの掃除は怪我が多いらしいからなあ、二人で来て正解だったな」
パヴェルもまた細心の注意を払って排煙口を覗き込む。見える範囲で何かが通洞を塞いでいるということはなさそうだ。ギャメルはそれを聞くと頷く。
「じゃ、ここを綺麗にした後で厨房の掃除だな! 排水周りは確か、エルゼリオたちがやってくれてるから」
ギャメルがロープを取り出し、それをパヴェルが排煙口脇の突起とギャメルの体をしっかり繋ぐ。ギャメルは続けて口と鼻を布で覆ってブラシを持つと、排煙口内の足場の強度を確かめつつ、少しずつ中へと降りて煤を落としていった。
繋がっている厨房にはあらかじめ水桶を用意しておき、ギャメルはつつがなく厨房へと降り立つ。と、そこで作業を引き継いでいた使用人たちがギョッと目を丸くした。
「ま、真っ黒になっておりますよ!」
「あ、まあ、そうだよな」
ギャメルは厨房を煤で汚さないように、手を伸ばして水桶を引き寄せる。煤汚れを落とし、その緑色の肌を取り戻したところで、ロープを片付けてきたパヴェルが厨房へ戻ってきた。
「お、パヴェル! どうだー役に立ったろ、オレ!」
「小柄なおめぇさんだからこそできる仕事だったなあ。じゃ、残りは俺の出番だ。休んでてくれ」
背の高いパヴェルなら、天井付近に付着した汚れも落とせる。こうして、厨房もまた蘇った。
● 大改装完了
冒険者たちの働きにより、藍銅宮は以前より輝きを増したようだ。藍銅宮の名が表すような全体的な雰囲気の変更とともに、特に様変わりしたのが浴室である。また環境の改善においては、浴室だけでなく厨房の排水周りが解決したことで、配管から立ち上っていた気になる臭いが引き、衛生の確保に成功した。
「結構大工事だったね……へとへと」
「お疲れ様でした。これをどうぞ」
座り込むエルゼリオに、ゲルダが汗を拭くための濡れタオルを差し出す。書物の運搬の後はハリーヌ(とゴリラ)の家財運びを手伝っていたスールなども、休憩と言わんばかりに丸椅子に腰掛けていた。
「ベルクが作ったギャラリーは、殿下の成長記録になっていたね。これはこれで貴重な光景かもしれない」
シルヴィアは廊下の壁に飾られた肖像画を順路に従って見渡す。
「あの王子にもこんな幼少期が……いや、まあ、人間当然のことなのだが」
ベルクも感慨深そうに肖像画を眺めた。これでウィリアム王子のおねしょた本が増えてくれると信じて。なお、おね役募集中である。
「スィーリーン嬢の手がけた客室も見事だったよ」
「ああ。刺激的な色が少なく、落ち着いてゆったりと過ごせそうだ」
「ありがとうございます。お役に立てたのなら、嬉しいです」
客室を見て回ってきたジュストとローザリカの賛辞を、スィーリーンははにかみつつ受け取る。
「そういやギャメルとパヴェルの姿が見えねえが」
「おや、本当でございますね……?」
スールとハリーヌはここに足りない面々の姿を探す。すると、厨房の方からいい匂いが漂ってきた。程なくして、ギャメルとパヴェルが厨房の方から皆のいる玄関ホールへと戻ってくる。
「おーい! エルゼリオが手を入れてくれた竈でパイを焼いてみたんだよ、食べないか?」
「りんごのパイだ。嫌いじゃないなら、どうだ?」
ギャメルとパヴェルの報告に、真っ先に反応したのはシュゼットだ。
「はいはいはい! シュゼット、切り分けます! そしてはみ出た切れ端をいただくのですー!」
シュゼットはぴょんぴょんと上機嫌に厨房へ向かう。冒険者たちもまた、自らを労うためにそれに続くのだった。
マスターコメント
イベントシナリオ普通 報酬:標準11 / 4〜25人
2022年08月23日 09時37分54秒 公開
参加者
相談掲示板
ワタクシはハリーヌ。しがないヨツユビハリネズミでございます。 皆様、今回はよろしくお願いするでございますよ! 手入れを担当する場所などはこれから考えるでございます。
ジュストだ、よろしく。 最低限の維持……うん、形が保っていれば維持、なのかな。 まさか本を虫干しも日除けもせずにずっと放置していたとか……あり得るのか……?? 俺は書斎に赴いて収蔵されている本をどうにかしたい。 というか、どうにかする。 あと内容を改めて蔵書リストを作って、今後の活用案によっては蔵書の入れ替えなども検討できれば良いなって。 活用案についてはまだ考え中だけれど。 王族所有の建物だし、なんとなく研修施設とか保養所、療養施設的なものとして開放、運用させてくれたら体裁も良いのではと思った。 あとは他国の方を招いたり、会談や交流する為の迎賓館にする、とか。
シルヴィアだ。今回はよろしく頼むよ。 王家所有の建物に手を加えられるなんて光栄だね。 所有者が所有者だから、誰でも簡単に出入りできる施設・活用法にするのは難しそうかなと思っている。歴史ある建築物との事だから、万が一壊れてしまったら大変だという気持ちもあって。 ジュストの迎賓館にする案はとても良いなと思った。会談、お茶会、舞踏会、演奏会……色々な用途で使えるように整えてみたい。 最低限の管理維持には掃除も入っているだろうし、そこまで汚れては無いだろうと思う。 まずは倉庫へ行って流行に依らず調度品に使えそうなものがないか確認したい。その後大広間の内装を新しいものに変えてみようかなと考えているよ。
ベルクだ、よろしく頼む。 迎賓館!目から鱗だったが素晴らしい案だと思う。 我は今出ている案とは別に王国の功労者の肖像画などを飾るギャラリー的なものを作ることを提案したい。 功績を立てたものが王家の離宮に肖像画を飾ってもらえるとなれば大変名誉なものになるだろう。
(肉体派)キャスター。パヴェルだ。よろしくなぁ。 骨董品についちゃ知識がねぇもんでな。 家具や内装の修繕、荷運びの手伝いをしようと思ってるぜ。
ギャメルだぜ! みんな、よろしくー! 改装案はちょっと思いつかねぇんだけど、掃除メインで参加できたらと思ってさ! 厨房の換気まわりっつーと、煙突掃除とかかな? 一応ロープを目いっぱい用意していくぜ。
スィーリーンと申します。よろしくお願いします。 手細工は得意ですし、内装についても少々知識はありますので(スキル「おしゃれさん」) 客室の手入れを考えています。
No.9
スールだ。 細かい事は苦手、力仕事が得意だな。 あー……だからそうだな、倉庫の掃除とか物を入れたり外に出したりするぜ。 リキューのカツヨーってのはよく分かんねぇけど 本は、自分で書いたようなやつがあるなら持ち主に返すか、 そうじゃねぇなら本を集めてる場所にやったほうが良いんじゃねぇのかなと思うぜ。
ローザリカ、挨拶が遅れたがよろしく頼もう。 行動を迷っていたのだが……商会に携わる者の一人として商業知識を活かし、 調度品を年代や流行の面から仕分けたいと思う。 迎賓館にするのなら目に付く場所にあまり流行遅れのものを置くのはよろしくないし、 反対にギャラリーを作るのなら歴史ある物品は貫禄が出るというものだろう。 そんな考えの下、動こうかと思っているよ。