紅葉と音楽と戦争と

久生夕貴

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シナリオID:1504

オープニング

 リブラネスタのとあるギルド。
 入り口ドアの前で、一人の少女が佇んでいた。
 年は12歳前後だろうか。まだあどけなさの残る淡い紫の瞳が、迷いの色を映している。

 入ろうか……入ってもいいだろうか。

 小さく深呼吸し、思い切って扉を開く。少女の頭部にある獣の耳が、緊張のせいかぴこぴこと動いた。
 中に入ると、まだ朝早いというのにギルド内は多くの人で賑わっていた。それだけ依頼する側と、引き受ける側がいるということなのだろう。

「おお、よく来たのうリラ!」

 こちらに気づいたリゲル・ルースティカが、にこにこと近づいてきた。
「おはよう、ござい、ます」
「おはよう。一人で大丈夫だったか?」
 リラは小さく頷くと、ほんの少し恥ずかしそうに。
「だいぶ、馴れた、から」
 三か月前に幽閉から救われたときは、まともに歩くことさえできなかった。
 それからリハビリを重ね、最近では結構な距離を歩いていけるようになった。まだ成長途中だったこともあり、回復が早かったのだろう。
 あの時助けてくれた冒険者のはからいもあり、今はリゲルが後見人となって生活のサポートをしてくれている。
「今日来てもらったのは、おぬしに参加してもらいたいイベントがあってのう」
 一枚のチラシが、リラに差し出された。まだ文字がうまく読めない彼女のために、リゲルは内容を読み上げる。

「秋祭り、体験、会?」

「うむ。イベント主催者としては、今後開催地の観光に力を入れたいということでのう。冒険者に参加してもらって、反応を見たいそうだ」
 冒険者は世界各地を回っている者が多いため、こういった依頼がときどきあるらしい。要は目の肥えた冒険者が参加し、盛り上げてくれることで、今後の参考にしたいのだそうだ。
「でも、私が行って、いいの?」
 リラの質問にリゲルは大きく頷いてみせる。
「主催者の許可は取っておる。あまりイベントに行ったことがない人の意見も聞いてみたいと、快諾してもらったぞ」
 その言葉に、リラは嬉しくなった。
 リゲルは時々こうやって、彼女を外に連れ出してくれる。
 最近では読み書きを習う一方で、ときどきギルドの仕事を見学することも多くなった。
「すごく、たのしみ、です」
 返事を聞いたリゲルは、さっそく冒険者を集める依頼書をしたためた。

●秋といえば

 秋祭り当日。
 リゲルに連れられて会場を訪れたリラは、呆けたように立ちすくんでいた。

 目を見張るほどに、深く色づいた木々。
 どこからか聞こえてくる、楽しげな音楽。
 あちこちから香ばしい匂いがするのは、何か焼いているのだろうか。
 ゆったりと流れる川には、大小さまざまな船が浮かんでいるのも見える。

「今日は思う存分、楽しむがよいぞ」
 微笑むリゲルの視線先で、淡紫の瞳はきらきらと輝いていく。
 産まれてからほとんど外に出ていなかったせいで、リラにとって見るものすべてが新鮮で仕方なかった。

 どこから、行ってみようか。

 本来持っていた彼女の好奇心は、いまだ残る不安や恐怖を越えて――知りたいという気持ちを後押ししてくれる。
 それに。
 参加してきた冒険者たちの姿を、目で追う。
 あの日以来、リラにとって冒険者は命の恩人であり、ヒーローだ。
 彼らと共に過ごせるというだけで、彼女の胸は高鳴り、幸せな気持ちになる。

 きっと、今日はいい一日になる。

 そんな予感を胸に、リラは足を踏み出した。

解説

【目的】  各イベントに参加し、盛り上げること 【状況】  皆さんはとある豪商が開催したイベントに招待されました。  お好きな会場に参加し、楽しみましょう。 【できること】 ※※注意※※ プレイングの最初に選択肢タグを記載してください。 選べるのは以下から一つのみ。(二つ以上選択された場合、どちらかの描写ができない可能性があります) ●紅葉川下り タグ:【川】  色づいた木々が川辺に立ち並ぶ川を、遊覧船でくだります。  船は屋形船のような大きなものから、カップルなど少人数で乗れるものも。  川の流れは緩やかで、のんびり景色を見たり飲食することもできます。  船着き場付近には土産物屋があり、地元で採れた天然石やガラスで作られた小物やアクセサリーを買うことも可能。  一番自由度の高い選択肢です。 ●音楽ステージ タグ:【音楽】  屋外特設ステージの演者として参加していただきます。  歌または楽器のどちらかで参加し盛り上げてください。  演目の種類や数は参加人数によって適宜MSが調整しますが、やりたいことがあれば記載いただけましたら考慮いたします。(ミュージカルも可)  どのように歌う(演奏)するか、気持ちや意気込みなどを書いていただくとより解像度が増します。 ●パン撒き祭り タグ:【パン】  新築二階建て家屋の屋根から、餅ならぬパンが撒かれます。  シャルガネの一部で伝わる新築の儀式を真似たのだそう。  投げられるパンはハードパンなので、当たると割と痛い。  一番たくさんパンを獲った人が優勝。  ――よろしい、ならば戦争だ。 ※コメディ枠です >ルール  武器の使用はダメ。攻撃スキルもダメ。もちろん殴る蹴るもダメだぞ!  逆を言えば、それ以外は何をしてもOK。(パカ倫には気をつけよう)  罠や策略、道具やスキルを駆使し、授恵者ならではのアルティメットパン獲り競争を披露してください。  新築の家を破壊したら怒られるよ! 【現場にいるNPC】 >リゲル・ルースティカ リラを見守りつつ、適宜会場内を移動している。 >リラ 長年の幽閉から冒険者によって救出された少女。 ライラックのような淡い紫の瞳をしている。 両親はヒューマンだが、先祖返りにより頭に獣の耳がはえている。 こわごわながらも、初めてみるものに興味津々。 各会場を見学している。 【その他】 ・道具等の持ち込みがある場合、一般的に購入できる高価でないものでお願いします。

マスターより

こんにちは、久生です。 秋といえば、紅葉!音楽!スポーツ!……ってことで、すべて詰め込んだ内容にしてみました。 会場ごとの雰囲気差が半端ない感じになりそうで、今からわくわくが止まりませんが、皆さまお好きな場所で楽しんでくださいね。 ※各会場の参加者に偏りがあった場合、NPC(モブ含め)を投入して調整することがあります。 なお、NPCリラに関しましては『【暗都/紅鷹】救いの選択』にて登場しております。 特に参照していただく必要はありませんが、生い立ち等気になる方はご覧ください。

リプレイ


 秋色に彩られた一日。
 エルゼリオ・レイノーラとレティシア・レインフィールは会場内を視察していたリゲル・ルースティカに声をかけた。
「おお、おぬしたちか。この間は世話になったのう!」
「お久しぶりです! リラは元気ですか?」
 その質問を待っていたといわんばかりに、リゲルは後方に視線をやった。
 物陰からおずおずと顔を出した顔を見て、エルゼリオは声をあげる。
「リラ! 久しぶりだね!」
 名を呼んでもらえたことが嬉しかったのだろう。少女の顔がぱっと明るくなった。
「こんにち、は」
「どうしてるか気になってたから、会えて嬉しいよ!」
「すっかりお元気そうで……」
 足取りしっかりしたリラの姿に、レティシアはほっとしたように瞳を細めた。
 己の手が届き、こうして光が紡がれていくことに、彼女の内心は救われる想いで。
「リラ様がこうして陽の下で笑っていらっしゃるお姿、拝見できて本当に嬉しく存じます。
 これもすべて、リゲル様が後見人を引き受けてくださったおかげでございますね」
 それを聞いたリゲルは、何を言うと笑ってみせた。
「わしは何もしておらぬ。おぬしらが紡いだ縁の結果だのう」
「折角だし、みんなであの遊覧船に乗ってみない? ごはん食べながら川くだりとかきっと楽しいよ!」
 エルゼリオの提案に、リラは嬉しそうにうなずいた。その瞳が好奇心で輝くのを見て、安堵する。
(キミが世界を恐れなくてよかった)
 その目が絶望に染まりきる前に、救えてよかったと。

 船着き場へ向かうと、見知った面々がリラを見つけて集まってきた。
「まあ、りらさま。おげんきそうで、よかったですわ」
 マレーネ・シェーンベルグがおっとりと微笑む隣で、クレア・エクレールがリラの頭を優しく撫でた。
「勉強も頑張ってるんだってね。えらいなあ」
 アーシェル・G・クラインは、弟分であるアルフィー・リッパーを見つけ、引っ張ってきていた。
「いや、俺今日は一人旅で……」
「リラ。お前と同じような耳と尻尾だろ? 仲良くしてやってくれ」
 問答無用だった(兄貴分のやさしさ)。
 まごつくアルフィーに注がれる、熱視線。
「はじめまし、て」
 同じハーフビーストなのが嬉しかったのだろう。きらきらした目で見つめられ、黒猫は借りてきた猫になった(想定外の事態に俺のキャパが限界値)。

「うふふ。おふねにのるのは、はじめてですか? でしたら、だいぼうけんの、だいいっぽ……ですわね」
 マレーネが差し出した手を見て、リラは深呼吸ひとつ。
 勇気を出して救いの手を取った日から、人生は大きく変わり、世界はめまぐるしく広がっていった。
 だから今日も少女は冒険者(ヒーロー)の手を取り、踏み出していく。
 その先にある、まだ見ぬ世界を知るために――

 ハルノ・ヒビキとダチュラは秋祭りを楽しみに会場を訪れていた。
「わー色んなイベントがあるね! ……え、パン撒き? そこは餅じゃない? まあ楽しそうだしいっか!」
 浮き浮きとチラシを眺めるヒビキの手を、ダチュラは引き寄せる。
「今日は俺の行きたいとこについてくって話だろ。流石にパンで怪我してほしくねーしこっちな♪」
 紅葉に囲まれた屋形船を指さすと、黒曜石のような瞳が輝いた。
「いいね、船で美味しい物! 食べる―!!」

 キーゼもネーヴェ・グラヌローザを誘い、川下りに参加していた。
 二人用の小舟に揺られ、秋色に彩られた景色を堪能する。
「絶好の紅葉狩り日和ですわね」
 水面に浮かぶ楓を手に取り、ネーヴェは陽にかざしてみせた。
「こういうのんびりとしたひと時もいいですね……この紅葉の中に、貴女はよく映えますよ、ネーヴェ」
 口から出た率直な言葉に、彼女の頬がほんのり赤く染まる。気恥ずかしそうなさまが見たくて――とは言わないけれど。

「わあ……見事な景色ですね!」
 キリアン・フィッツジェラルドが瞳を輝かせる隣では、ぶらり一人旅で訪れたシェオルも船に揺られている。
「んー、秋の色が鮮やか!」
 深く色づいた木々を眺め、季節の移ろいを味わう。日夜薬の研究に明け暮れている彼にとって、こういった時間は貴重だ。
 目前に並んだ料理を見て、シェオルはにたりと嗤った(瞳を輝かせた)。
 さつま芋や里芋、キノコや栗、旬の魚……秋の味覚はどれも美味しそうで、自然と気持ちも浮き立つ。
「いやぁ、これは堪能しないと罰が当たるよねぇ……」
 くくく、とほくそ笑み(ウキウキし)ながら、次々に口に運んでいく。
 やはり旬のものを味わうのは、最高の贅沢だ。

「足元に気をつけてくれ」
 エル=バ=ノイアンが差し出した手を、シルヴィア・A・カペルは微笑みながら取った。
 彼のさりげない優しさに触れるのも、何度目だろうか。いまだ慣れるどころか胸の高鳴りが加速しているのは、きっと相手への想いを自覚したから。
 ノイアンは揺れの少ない中央へシルヴィアを誘導すると、持参してきたランチバスケットを広げた。
 栗のペーストとクリームを挟んだサンドイッチと、アップルパイ。
 デザートには東方菓子である、葡萄とかぼちゃの茶巾を準備してきた。
「素晴らしい。秋の味覚満載だね」
「……すっかり料理が板についてしまって」
 最近は菓子にまで手を伸ばしつつあるのは、彼女(想い人)のために他ならない。
「私にとっては喜ばしい。君の手料理に胃袋を掴まれているからね」
 ローズティーをカップに注ぎながら、シルヴィアは瞳を輝かせている。その笑顔が見たくて、ノイアンの腕前(スイーツ男子力)はどんどん上昇するのである。

 ララベル・サン・ディーベルも恋人たちに手を差し伸べ、エスコートする。
「揺れるかも知れないから気をつけて」
「ありがとベル♪」
 ララベルの手を取るヒロ・テスタロッサは普段の動きやすい服装とは違い、今日はエレガントな装いだ。
(せっかくの風情ある場所なんだし、たまには大人びたあたしを演出するよ♪)
 ルーシカは、緋色に染まる木々をゆっくりと見渡した。
「たまにはこうして、静かに景色を眺めるのも良いものだね」
 いつもは賑やかな店で料理を作っているせいか、緩やかな川の流れが心に染み入る。
 あの賑やかな空間も好きだけれど、たまにはこういう時間を過ごしたくなるだけに、恋人の誘いが嬉しかった。
「ベルならここを選ぶと思ったわ」
 アルラ・ニグラスは微笑みながら、手作りのサンドイッチをテーブルに広げた。旬の野菜や魚を挟んだそれは、ボリュームだけでなく彩りも豊かだ。
「ボクも作ってきたんだ。よかったらデザートに食べてね」
 ルーシカのサンドイッチには、秋らしくカボチャやサツマイモで作ったペーストが挟まれている。
「わあ、美味しそうだねアルラ、ルー!」
「ふふ。お口に合えばいいのだけれど」
 瞳を輝かせる恋人を可愛いと思いつつ。ヒロは皆に取り分けながら、さっそく自分も手を伸ばした。
「んー♪ 外で食べるご飯は美味しいね♪」
 綺麗な景色に旬を詰め込んだ料理。大好きな人と食べる料理は格別で。 
「ほんと、ゆったり飲食しながら色んな景色が楽しめるって、思った以上にイイわね~」
 アルラも秋の味覚を堪能しながら、サンドイッチをララベルの口元へ。
「はい、あーん」
「えっ! ちょっと恥ずかしい……」
 顔を赤くしつつ、ララベルはひと口ぱくり。
「わあ、凄く美味しいね!」
「あ、じゃあボクのも食べてね」
 ルーシカにも差し出されぱくり。優しい甘みが口の中に広がってゆく。

 同じ頃、会場の一角に設置された特設舞台では、セヴラン・クアルトとリディリディ・トゥラ・イェレミースがチューニングを行っていた。
「うん、ばっちりだね。君のチェロの音、とてもいいよ」
「あ、はい……ありがとうございます……」
 互いに持ち込んだ弦楽器で、二人は急遽デュオを組むことになった。
(このようなステージに上がるのは不慣れですし、人目が多いのも気になりますが……)
 楽器を弾くのは好きだし、思い切って参加を決めた。そんなリディリディの緊張を和らげるように、バイオリンを手にしたセヴランが微笑んだ。
「本番までまだ時間があるし、合わせてようか」
 二人の奏でる音色は、ゆっくりと秋空にとけこんでいく。

 一方、パン撒き祭の会場では、殺伐とした空気と共に観客の熱気が渦巻いていた。
「……戦争ですか。いいでしょう、受けて立ちます」
 イヴェール・イリュジオンが静かなまなざしを屋根に向けた。
 あそこから投げられるパンの軌道をあらかじめ予測し、落下地点のあたりをつける。
 開始前から勝負は始まっている(割とだいぶガチ)のだ。
 コルネリウス・アーラは友人のフリューリングスルフト=ティエラと共に会場入りしていた。 
「パン好きとして参加しない訳にいきません……! フリューさん、一緒に沢山集めましょう」
「もちろん! 二人なら優勝間違いなしさぁ!」
 既に作戦は立てている。二人が生み出した勝利の方程式とは――

  \合体!!/

 身軽なフリューをコルネリウスが肩車し、足首をしっかりと握る。
「これがGATTAI……!」
 瞳を輝かせるフリューの下で、コルネリウスは戦術眼を展開させながら微笑んだ。
「完璧ですね……負ける気がしません!(そんな作戦で大丈夫か)」

 そんな冒険者たちに忍び寄る影。
「暴力さえ使わなければ何をしてもいいんですか? 楽しみですね!」
 波乱の予感が渦巻く中、祭り開始の合図が響き渡った――

●
 数隻の屋形船はゆったりとした流れをくだっていた。
 ヨル・スレイマンとナハシュは二人用の小舟で川下りを楽しんでいる。
「これはなかなか絶景だ」
 流れの緩やかな川辺には色づいた木々が並び、赤や黄の落ち葉が水面を彩っている。
「っはー!見事なもんだな!」
 ナハシュは上機嫌で景色を眺めつつ、彼方(マジカルポケット)からシャルガネの酒を取り出した。
「酒が出てきた、ちゃっかりしてるんだよな。俺にも分けてくれるかな?」
「当たり前だろ。酔いつぶれんなよ?」
「流石にここでは酔い潰れないよ。勿体無いだろ」
 ヨルは笑いながら、作ってきた弁当を広げる。栗ご飯のおにぎりにエビフライ。シャルガネ風のオムレツは、もちろん甘くない(お酒に合う)方だ。
「っはーーーー全部うめぇ! 全部酒に合う」
「口にあったなら何より」
「栗と米ってすげえ合うんだな。また食いたい」
 あっという間に平らげたナハシュは、幸せそうに酒杯をあおる。彼の言葉は率直で飾り気が無いからこそ、「また食べたい」が最上級の賛辞だとヨルは知っているだけに。
 喜んでもらえてよかったよ、とは口に出さず美味そうに酒を口にした。

 景色と料理を堪能していたシェオルは、ふと気になる人影を目にした。ライラック色の瞳を持つ少女は、物珍しそうに景色を眺めている。
(あまり外に出たことがない子なのかな……?)
 気になりつつも、自分の雰囲気が邪悪属性(呪いのせいで)なのは分かっているため、声はかけず見守ることにする。
 目が合ったので手を振ってみると、相手は驚いた様子だったが、恥ずかしそうに振り返してきた。
 その目に怯えの色はない(少女にとって冒険者はヒーロー)。
(怖がられなくてよかった)
 今度会ったら声でもかけてみようか。そんなことを考えつつ、デザートの栗饅頭を美味しそうに頬張る。
 優しい甘みと小さな出会いに、心がほんのり温かくなるのだった。

「見てリラ。紅葉がたくさんで、川が赤や黄色に染まってて綺麗だねぇ」
 クレアの視線先で、リラは言葉を失っているようだった。
 初めて見た紅葉の美しさ。
 季節の移ろいも楽しみも知らなかった彼女を想い、真っ赤な紅葉を髪に飾ってやる。
「秋はね、美味しいものや綺麗なものがたくさんあるんだよ」
 夏の青空、白い雲と向日葵。
 冬は雪、ランプや暖炉の灯り。
「春はリラと同じ名前の花が咲くんだ。これからたくさん覚えていってね」
 緋色を映しこんだ瞳が、これからもっと彩られるといい。
 微笑み合う二人はまるで姉妹のようで。
「そういえばアーシェルくん、ボクは林檎の香りがするお茶持ってきたけど、船で食べるもの買ってきてくれた?」
「もちろんだ。ほら」
 ばーんとテーブルに広げられたのは、肉、肉、肉。
「またお肉かい! もー、情緒がないなぁ」
「肉はいいぞ? 腹も膨れるし何より美味い」
「同感だ」
 神妙にうなずくアルフィーの目は爛々と輝いていて、クレアはリラと笑い合う。
「食べ盛りの男子たちに情緒は不要だったね」

「ボクもお弁当買って来たんだ。みんなで食べようよ!」
 エルゼリオが秋の味覚を並べ、アルフィーもこっそり持ってきていた弁当を添える。
「ふふ。でざーとに、いかがですか?」
 マレーネがふわふわした栗のケーキを出せば、レティシアがちょっと上等な葡萄を並べ。
「リラ様は、何を召し上がりますか?」
「……ぜんぶ」
 恥ずかしそうな本音に、みんなで笑い合い。
 楽しい団らんはゆったりと進んでいく。

 一方、川下りを楽しんでいたキーゼの目に、急に黙り込んだ恋人の姿が映っていた。
「どうかしましたか?」
 無言でこちら見上げる瞳に、非難の色が宿っている。はて、どれのことだろうかと考えていると、小さな呟きが漏れ聞こえてきた。
「……夜回りと仰ってましたが。行き先は娼館でしたのね」
 その言葉に一瞬考えこみ、思い当たる節(最近受けた依頼)を思い出す。
「ああ、先日の一件ですか……そうですね。確かに、貴女には言っておけばよかったかもしれません」
 素直に認めるキーゼの冷静さが、ネーヴェの心をじくりと乱した。
 仕事だからと理性では納得している。でも、感情はそんなに簡単じゃない。
「……あなたが、例え一時的でも、他の女性に目を向けるかもしれないのは……いや」
「不安にさせたなら、申し訳ありません。次に行くときは、ちゃんと正直に言ってから向かうことにしますね」
 違う。そういうことじゃない。
 拗ねたように俯き、零れ落ちる本音の欠片。
「我ながら子供染みているのは分かってます。……けれど二人きりの時は我儘を許して頂けますか」
 俯く彼女の体を、大きな腕が抱き寄せた。
「ご安心ください……恋愛という意味で見ているのは、貴女だけですから」
 きっと彼は、本当のことを言っているのだろう。
 でも、言葉だけじゃ足りない。私が欲しいのは――

「……私だけを見て」

 心乱すくらい、私に奪われて。

 肩口に顔を埋め、子供のようにぐりぐりと甘えるネーヴェを、キーゼはほんの少しの感動を持って見つめていた。
 返事の代わりに強く抱きしめると、愛しいを超えた感情が、奥深いところから湧き上がってくる。

 ――言葉にできないとは、きっとこういうことなのだ。

「次に黙って行ったら承知しませんから」
 そう釘をさすネーヴェの顔には、いつもの笑みが戻っていて。
 仲直りのあとは、彼女が作ってきたお弁当を景色を見ながら味わう。
 フィッシュフライを挟んだサンドイッチは、格別に美味しかった。

 ランチでお腹を満たしたノイアンとシルヴィアは、改めて秋色に彩られた風景を楽しんでいた。
「本当に鮮やかだ。季節が変わるだけで、景色がこうも変わるんだな。……気づかなかった」
 その深く青い瞳に映りこむ彩を、シルヴィアはある種の感動をもって見つめていた。
 月虹を見たあの夜、彼に言われたこと。

 ――あんたが、理由になってから。多くのものに気付かされる

 季節の移ろい知り、世界の美しさを彼は受け取れるようになった。
 その変化がどれほど尊いことか。そして自分が”理由”であるならば、どれほど嬉しいことか。
「言っただろう? 私は、君と色々な景色を見たいと思っていると」
 
 君に笑って欲しいんだ。
 君と笑っていたいんだ。

「……これからもあんたと、いろんな景色を……俺も、そう思っている」
 気恥ずかしそうに本音を呟く彼を、たまらなく愛おしいと。
 静かな熱のこもるまなざしに見つめられると、つい想いが溢れそうになる。
「――おや、クリームが」
 シルヴィアはノイアンの頬を拭おうと、そっと手を伸ばす。
 指先が触れたとき、まるで電気が走ったかのように彼の頬が微かに震えた。
「……うぐ」
「だ、大丈夫かい?」
 一瞬見せたノイアンの動揺が、シルヴィアの胸をやわく焦がす。
 その顔は自分にだけ見せてほしい――湧き上がる本音は胸にしまって。

 その頃、パン撒き会場は混沌(カオス)を極めつつあった。
「コルネさん右! 次は左や!」
 フリューの指示を受け、彼女を担いだコルネリウスは縦横無尽に走りまくる。
 可憐な見た目のどこにそんなパワー(ヒント:壁エルフ)が……? と思う間もなく、飛んでくるハードパン。
「これを取っていけば……痛っ!?」
 まっすぐに向かってきたそれが見事命中。なぜかどのパンもことごとくコルネリウスを的にしてくる。
「コルネさん緊急事態さぁ! パンが、パンがうちを避けていく!」
 フリューはやる気をみなぎらせ、持てる力を最大限生かして(捜波+反応強化+反応強化2)この戦いに挑んだ。

 彼女はシーフ(回避型)だった。

「飛んでくるパンに体が反応して避けてしもうた!」
「そんなまさか……! じゃあ私がパンを受け取……れませんね!?」
 両手塞がってたわ。
「ま……まだまだぁ! 集中、集中(回避集中宣言)さぁ!」
「こうなれば殺界で周りの足止めを……むしろ私に当たるだけですね!?」
 
 だめだこいつらはやくなんとかしないと

 一方、唯一まともに戦っていたイヴェールは、順調にパンを集めていた。
 正確に軌道を読み、確実にキャッチ。
「これは楽勝かもしれませんが……油断はできませんね」
 何があるかわからないのが、世の常。彼女の警戒通り、勝利を阻む影が飛び出してくる。
「このパンはもらいましたよ!」
 ばーんと現れた鷹の着ぐるみ(どこにでも現れる聖真教)が、イヴェールの狙っていたパンを横取りした。この鷹、長身の癖にやたら動きが早く、次々に獲得数を積み上げている。
「……やりますね」
 中身は誰だが知らないが、行く手を阻むのであれば仕方がない。

 イヴェールは ほんきを だした!

 パンが投げられる。
 落下地点へ先に鷹がたどり着こうとしている。
 イヴェールは瞬間的に加速すると、勢いあまってついうっかり(わざとじゃないから暴力じゃない)鷹を吹っ飛ばし、パンをキャッチする。
「やりますね!」
 ひっくり返った鷹はやたら嬉しそうに(陽キャのどM)起き上がり、ばっさばっさと羽ばたいた。
 その瞬間、網っぽい何かが展開され、投げられたパンをかっさらおうとする。
「なっ……」
「これで僕の勝ちですね!」
 だがしかし、そこにふらついたトーテムポール(コルネ&フリュー)が勢いよく突っ込んできた。
「しまったあ! パンを避けないよう両手で両目を隠したら、手が塞がって獲れない上に視界も効かないさぁ!」
「代わりに私が獲ろうと手を離したらフリューさん落ちますね!?」
「え、ちょっ……」
 二人はそのまま鷹を巻き込み、彼方へ転がり去っていく。
 ただ一人残ったイヴェールは、ゆっくりと辺りを見渡し。悟りきった表情で呟いた。

「これは優勝せざるを得ませんね」

 勝者:イヴェール

●
 再び、船。
 ヒビキとダチュラは景色を堪能しながら食事を楽しんでいた。
「船の上で食事も風流でいいね。栗やきのこも美味しいし!」
「そうだな♪ あ、せっかくだしヒビキちゃんの膝の上で……」
「えっ膝の上? そ、それはさすがに恥ずかしいかな、食べづらいし!」
 顔を真っ赤にするヒビキに笑いつつ、ダチュラはボトルを取り出した。
「これウォッカっていうお酒なんだけど、ヒビキちゃんも興味ある?」
「お酒? じゃあ少しだけ!」
 グラスに注いだウォッカをオレンジジュースで割る。ひと口飲んだヒビキはほわああと顔をほころばせて。
「このお酒飲みやすいですね!」
 ぐいぐいと飲む彼女を、ダチュラは楽しそうに見守る。

 そして三十分後――

「ふぁー、なんか気持ちよくなってきたー!」
 すっかり酔っぱらいのヒビキが出来上がっていた。
「なんだかふわふわするー」
「船だしな。落ちたら危ないから気をつけてな♪」 
 支えようと伸ばしたダチュラの腕に、彼女が抱きついてくる。
「うぇーいダチュラさぁーん」
 すりすりする彼女はまるで子猫のようで。
 普段恥ずかしがり屋なだけに、そのギャップがなんとも可愛い。
「あ、膝の上どうぞ! もうご飯食べ終わったし!」
「そうか? じゃあお言葉に甘えて……♪」
 膝に座らせてもらうと、背中にぴったりとくっつく気配。
「ねーねー、私のどこが好きなんですかぁー?」
「んー? どこが好きか? 全部だが、ま強いて言うなら……その笑顔だな♪」
「えへへーやったぜぇー、私も大好きですよー」
 にっこりと笑ったヒビキは、しばらくするとうとうとし始めた。
「ダチュラさん、あったかい……」
 眠りに落ちながら、そっと願うこと。
 この幸せな時間を、ちゃんと覚えていますように。

 下船後、ダチュラは眠ったままの彼女を抱っこし、土産物屋を覗きにいく。
 彼女に合いそうなライラックの香水を選び。
 この贈り物の意味に、彼女が気づいてくれるといい――そんなことを願いながら。

 同じ頃、ふしぎ亭のメンバーも四人用の船で川下りを楽しんでいた。
 どれだけ見ても飽きない景色に、ララベルは恋人たちをそっと抱き寄せ。
「凄く綺麗……一緒に見れて良かった。でもね、アルラ、ヒロ、ルー、景色以上に君が綺麗だよ」
 軽く口づけをすると、ルーシカがくすりと微笑む。
「景色よりもボク達を褒めてくれるのは、ベルらしいところかな。
 でもこの時期にしか楽しめないものだからね、景色も堪能して損は無いと思うよ」
 そういって口づけを返すと、幸せな笑みが咲く。
「えへへ……お洒落してきた甲斐があったかも♪」
 上機嫌なヒロが飲み物を取ろうと立ち上がった時だった。
「わっ!?」
 一瞬吹いた風で船が揺れ、バランスを崩した彼女をララベルが慌てて支えにいく。
「大丈夫ヒロ? わわわわ!」
「ベル!」
 アルラとルーシカも助けに入り、四人はもつれるように倒れこんだ。
「あいたた……みんな大丈夫?」
 ララベルは体を起こそうとして、はたとなる。なにやら右手に柔らかい感触が……
「ごごごごめんアルラ!」
 顔を真っ赤にしたララベルは、彼女の豊満な胸元から慌てて手を離す。しかし今度は自分の胸に柔らかい感触(抱きつくように倒れこんだヒロ)があるのに気づき……
「ベル痛くなかった?」
「はわわわ!」
 ますます赤くなるララベルを見て、ルーシカとアルラは笑みを零す。
「相変わらずだね。これもボクたちらしいかな」
「今は他の人の目もないんだし、少しくらいはね?」
 いつまでもこんな時間が続けばいいと願いつつ。

 川下りを終えたあとは、皆で土産物屋へ。
 ララベルは三人の髪や瞳の色に合わせた天然石のアクセサリーを選ぶと、プレゼントする。
「はい、これ今日の記念に!」
 嬉しそうに受け取る彼女たちの笑顔が、なにより綺麗で。
 またひとつ、大切な思い出が重なってゆく秋色の一日。

 下船したヨルとナハシュもほろ酔い気分で土産物屋を訪れていた。
「これいいね。彼女たちに似合いそうだ」
 ヨルは秋色の硝子で作られた耳飾りを、同居人の少女二人にお揃いで買う。
「あ、これナハシュに似合うんじゃない?」
 目に留まったのは、柘榴色があしらわれた耳飾り。深く情熱的な赤が彼の褐色肌と金色の瞳に、よく映えそうだ。
「あーじゃあ、てめえはこれだな」
「え、俺はいいよ」
「なんでだよ、お土産だぞ」
 有無を言わさず渡された耳飾りを、ヨルはまじまじと見つめた。
 瑠璃があしらわれたそれは、こっくりと深い夜の青がどこか宇宙を思わせる。
「……じゃあ、両方買うよ」
「おうよ。あっこの硝子で出来た酒杯もよくねえ?」
「ああ、いいね。これで飲むとより酒が美味くなりそうだ」
「だろ? 宅飲みの楽しみが増えそうだ」
 どんどん増える荷物を抱え、ヨルは苦笑する。
「置き場があると思うとつい買っちゃうね……」
 かつての彼は荷物になるので、旅先での買い物自体控える性質だった。『帰る場所』がある生活にすっかり慣れてしまったのだと、改めて感じ入る。
「……なあ、ナハシュ。旅ってこんなにも楽しいものだったかな」
「はあ? 何言ってんだ。俺はお前との旅はいつも楽しいぜ」
 当たり前のように返す同居人に。ヨルは思わず笑みをこぼすのだった。
「そうだな。君の言う通りだ」

 そんな彼らの頭上で、美しい音色が響き渡る。

 セヴランのバイオリンが優しい旋律を奏で、リディリディのチェロがゆったりとしたリズムを刻む。
 優雅で穏やかな始まりに、周囲の人たちはつい耳を傾け、集まってくる。
 朝の目覚めをイメージした序曲は、音を楽しむ入り口にはぴったりだ。

 一瞬の間。
 セヴランの肩でララ(リス)がくるりとジャンプすると同時、バイオリンが軽快なリズムを刻み始めた。
 くるくると始まった一日は、せわしなくも楽しいご機嫌な日。
 リディリディが弾むように旋律を奏でれば、バトンを渡されたセヴランが速弾きの腕前で観客を魅了する。
 フォークロアを織り交ぜた一節は、緩急のあるテンポと馴染み深い音色が合わさって、ついつい体まで動き出してしまう。
 すっと熱が引くように、再びゆったりとした音。午後のまどろみを想起させる音色には、観客のまぶたも降りそうで――
(さあ、最後の仕上げた)
 セヴランが合図するとララがすべるように走り抜け、リディリディの肩に飛び乗った。
 彼女の弦がゆっくりと引かれ、低く豊かな音色が夜の始まりを告げる。
 その音に重ねるように、バイオリンが高く繊細な一節を奏でた。
 見上げた月、想う誰か。
 切なげで美しい旋律は、目覚めの曲をアレンジしたものなのに、まるで違った印象を与える。
 今宵も穏やかな眠りを。
 なにげない日常の、大切なひととき。
 最後の音を弾き終えたとき、リディリディの耳には割れんばかりの拍手が届いた。
(楽しい……)
 夢中で演奏することは、こんなにも楽しいものだったか。
 セヴランは観客に一礼すると、ゆったりと微笑みかけた。
(楽しんでもらえたようでよかった)
 飛びかうアンコールに、再び弦を取る。
 秋空に響く二人の音色は、どこまでも高く、豊かに広がってゆくのだった。

●
「りらさま、あそこ。ちいさなりすが、いらっしゃいますわ」
 マレーネが指さした先を見て、リラが驚いたように頷いた。
「ほんと、だ。可愛い」
「このなきごえは、せきれい……でしょうか? うふふ、かわいらしいことりですのよ」
 瞳を閉じたマレーネは、たっぷり時間をかけて深呼吸する。
「なにを、している、の?」
「けしきだけでなく、おとや、においでも、あきをかんじられますの」

 水の音や、落ち葉のにおい。
 小鳥のさえずりや、秋花の香り。

 真似をして深呼吸したリラは、瞳をぱちぱちとやった。
 何かを発見したように見開かれた瞳が愛らしくて、マレーネは口元をほころばせる。

 そのとき、美しい歌声が聞こえてきた。
 レティシアが紅葉の美しさを称えた歌を、ゆったりとしたリズムで響かせている。
 優しく澄んだ歌声に皆が聞き入っていると、一曲歌い終えたレティシアがにっこりと微笑む。
「よろしければご一緒にどうですか?」
「まあ、いいですわね」
「じゃあボクも歌おうかな!」
「リラも歌う? 一緒だと楽しいよ!」
 マレーネとクレア、エルゼリオが加わり、4人はリラが歌えるよう簡単な旋律を選び、一緒に歌う。
 その様子を楽しそうに見守りながら、アルフィーはひらりと落ちてきた紅葉を拾った。
「これ、栞になるかな……」
「乾燥で崩れぬよう、台紙に貼るとよい」
 突然声をかけられ、びくりと警戒する黒猫(アルフィー)に白燕(リゲル)はにこにこと告げた。
「今日はリラと時を共にしてくれて礼を言うぞ」
「俺は連れてこられただけだから……」
「ひとの縁に理由は必要ないのう。あの子にとって、おぬしはもう赤の他人ではない」
 アルフィーは紅葉を見つめながら微かにうなずいた。尻尾がぱたぱたと動いているのは、たぶん照れ隠し。
「そういえば、リゲル。急な頼みだったのにリラを引き取ってくれてありがとな」
 アーシェルの視線の先には、友人たちと笑い合う少女の姿。
「リラの事を大切にしてくれてるんだな……あいつの表情を見ればわかる」
「わしだけではない。おぬしらを含め、周囲が心を寄せてこそだ」
 心というものは、誰かが水を与え、光をそそいでやらなければ干からびてしまう。
「それはおぬしらが一番わかっておるであろう?」
 水を向けられた二人は、互いに顔を見合わせながら小さく笑んだ。

 下船後、一行はお土産屋を訪れる。
 アルフィーがこっそり硝子の小物(アーシェルへ)と天然石のアクセサリー(クレアの誕生日プレゼント)を買う隣で、エルゼリオがリラに声をかけた。
「何か欲しいものはある?」
「……みんなと、お揃いのものが、ほしい」
「ふふ。でしたら、おまもりは、いかがでしょう? えらびあうのも、すてきですわ」
 マレーネの提案で、メンバーは天然石のお守りを選びあう。
「リラはどれが似合うかなー……これなんてどう?」
 皆で選んだ石は、淡い紫水晶。
「これからさき、たのしいことにたくさんであえますように」
 そんな願いを、優しく込めて。

 レティシアは同じ石で作られた髪飾りをリラに贈った。
「身に着けるようでしたら、少し髪形も変えてみますか?」
 銀鼠の髪をハーフアップにし、リボン型の飾りを添える。似合うと告げれば、水面に映した顔にはにかむ笑みが咲く。
「そうだリラ。してみたい事はないか? 一緒に叶えようぜ」
 アーシェルの問いに、しばし考え込んでから。
「リラの花が、見たい、です」
「なんだ、ちょうどよかった」
 そう言って差し出したのは、苗木が植わった鉢。リラが来ると聞いて準備してきたものだ。
「春になったらお前の瞳と同じ色をした花が咲く。育ててみるか?」
 ライラックの苗木をリラは大事そうに抱えた。
 一人、一人の顔を改めて、見つめてから。

「今日は、ありがとう、ございました」

 見上げた瞳には急に涙があふれ、ぽろぽろと零れていく。それを見たクレアが何も言わずに抱きしめた。
(言葉なんて、いらないよ)
 キミの想いはちゃんとわかってるから。
 
 傾いてゆく夕陽が、緋色の景色をさらに赤く染めあげる。
 その美しさを、少女の胸に焼き付けて――

 ありがとう、私の大好きな冒険者(ヒーロー)。

マスターコメント

ご参加ありがとうございました! 秋色に染まる一日、皆さま思い思いに過ごされておりました。 会場ごとの雰囲気格差が(予想通り)凄いことになっていますが、それもまた一興。 とっても楽しく書かせていただきました。 称号は内容に合わせて個別、または共通のものを。 時間経過に合わせて全員2~3回登場していますので、登場シーンを見逃さないようお気を付けください。
イベントシナリオ

イベントシナリオ易しい 報酬:少ない25 / 4〜25人

2021年11月04日 17時18分38秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. エルゼリオ・レイノーラ

    エルゼリオ・レイノーラです。今回はヨロシクね! ボクはリラと一緒にイベントを見て周りたいなあ、って考えてるよ~。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0