蒼穹の向こう側
真柄 葉
コメント 27
シナリオID:3479
オープニング
そんな蒼空のキャンバスには、まるで子供がいたずらで描いたような真っ直ぐで真っ白な一本線が走っていた。
あれは……?
折角の綺麗な空が台無しだと、ぼんやり眺めていたら、白線の先に何かが見える。
ともすれば見落としてしまいそうな小さなそれは、白い……いや、銀色の翼をはためかせているように見える――――そう、まるで『鳥』の様に。
あなたは、誰? どこへ、行くの……?
蒼い空に白線を刻み、一直線に進む『鳥』に問いかけてみる。
もちろん返事はない。
あの『鳥』は、一体どこを目指して飛んでいるのだろうか。
そんなことが、なぜか気になった。
その蒼い世界の果てに、何かがあるのだろうか。
……わたしも見てみたい。
なぜそんなことを思ったのか、自分でもわからない。
でも、なぜかあの『鳥』から目が離せなかった。
『鳥』はこちらの事などお構いなしに、蒼穹に白線を引きつつ、空の高みへと登っていく。その旅路はとても高尚で、そして果てしなく長い道のりに思える。
置いていかないで。
わたしを一人にしないで。
蒼い空を渡る『鳥』を見ているだけで、なぜか胸が締め付けられる。
いつのまに零れ落ちたのか、頬を涙が伝っていた。
ついに『鳥』が蒼穹を飛び出す。
同時に空に引かれた一条の白線も空の蒼に溶けて消えた。
そこにはもう何も残っていない。
ただただ、蒼い空だけが広がっていた――――。
●
「……ここは」
瞳を開いて最初に飛び込んできたのは、あの空に引かれた白線のように真っ白な天井だった。
ここはどこだろうと、首を捻ってみるけど、なぜか思うように動かない。
仕方なく視線だけを巡らせてみる。
窓から差し込む日差しを遮るレースカーテンがそよ風に揺れていた。
身体は真っ白でふかふかの布団に包まれている。
少し見ただけでも広いとわかるは部屋はとても清潔で、どこか懐かしさを感じた。
――――ガタッ。
ぼんやりと部屋を眺めていたら、何か物が落ちた音が聞こえた。それに合わせて、言葉を震わす女の人の声が聞こえる。
どうしたのだろうと、視線を向けようとするけど、やっぱりうまく首が回らない。
頑張って首を振ろうとしているわたしを他所に、女の人は震える声で何かを叫んで、部屋を出て行ってしまった――――。
「ようやく気が付いたんだね。まったく、心配をかけて」
しばらくして部屋に入ってきたのは別の女の人。その人は、ドアに体を預け苦笑していた。
「すぐに医者を手配させるよ。というか本当に不思議だね。2か月以上も寝たきりだったのに、随分と顔色がいい。もしかして、あの……いや、何でもない。とにかく、少し待っていてくれるかい」
女性はどこか嬉しそうに微笑むと、ドアから背を話しこちらへ歩いてくる。
「さて、何を話したものか」
ベッドの脇まで来た女性が丸椅子に腰かけると、すっと手を伸ばしてきた。
柔らかく温かい手が、頭を優しく撫でてくれる。
なんだかとても懐かしい。
以前もこうやって頭を撫でてもらった事があったように気がする。
「はは、今日はやけに素直だね、いつもなら鬱陶しそうに跳ねのけるのに。まあ、病み上がりなんだ、そのくらい素直な方がいい。
ああ、そんな事より腹は減っていないかい? なんでも好きなものを用意させるよ」
彼女が優しい笑顔を浮かべてそう問いかけてきた。だから、わたしは彼女にこう聞き返した。
「あなたは誰……?」
解説
マスターより
リプレイ
取っていた少女の手を膝上に戻したフェイサル・セイフが小さく息を吐いた。
ヴィルジニアからの一報を聞きつけ駆けつけた者たちが息をのむ。
フェイサルは部屋に集った者たちへ、現状でわかる限りの症状を伝えた。
「――――以上だ。今の彼女をどう扱うべきか、各々がよく考えるべきだろう」
フェイサルはそう言うと椅子から立ち上がり、各人の反応を待つ。
「予想はしていたけど、やっぱりそうなのかい。はぁ……あの竜は最後の最後まで余計なことを」
衝撃の事実を知らされ戸惑う者たちの心情を代弁するように、ヴィルジニアが嘆息し首を振った。
「あなたたちは、わたしの事を知っているの?」
悲喜交々、形容しがたい複雑な表情を浮かべる来訪者達に、イーラと名乗った少女が問いかける。
「ええ。関係性に浅深はあるにしても、皆あなたの知り合いに間違いありません」
少女の質問にどう応えていいか迷う者も多い中、ヴィルヘルミナが答えた。
「この中で誰か一人でも見覚えのある人はいませんか?」
「……いないわ」
来訪者を見渡した少女が首を振る。
ヴィルヘルミナは一瞬フェイサルに視線を送るが、彼はゆっくりと目を伏せた。
「どうやら”思い出”以外の記憶はあるようですので、もしかしたらご自身でも理解されているかもしれませんが……あなたはあなた自身にまつわる記憶を失っているようです」
「そう……だと思う」
「あなたはこの場にいる誰のことも覚えていない。ですが、我々の中には確かにあなたとの記憶があります。あなたはその記憶に触れたいと思いますか?」
「え……」
少女が驚いたような表情を見せ、目を泳がせる。
彼女が答えに窮し迷っていることは、医家であるフェイサルでなくても一目瞭然だった。
皆がどう声をかけたものか迷う中、大福が少女に近づいていく。
「ヒル――――あ、あんさんは本当に大福たちの事忘れちゃったのだ……?」
声が震えない様に、精一杯の笑顔を浮かべながら大福は少女に問いかけた。
「ごめんなさい。覚えていないの」
「だ、大丈夫なのだ! ヒル――――えっとイーラが忘れてるなら、また覚えればいいのだ! えっと、大福は大福っていうのだ! こっちは相棒の粽! 実はイーラとはとっても仲良しなのだ!」
「そうなの……?」
「そうなのだ! 会ったらいつもぎゅーもふもふしてくれる仲なのだ! でも今日はイーラが元気なさそうだから大福がぎゅーするのだ!」
大福は粽の背を借り寝台に登ると、上半身を起こしていた少女の体に両腕を回す。
「むむむ? イーラちょっと痩せたのだ?」
「え?」
「きっとずっと眠ってたのがいけないのだ! 体力を取り戻す為にも運動しないといけないのだ!」
「え、えっと……」
「イーラは運動神経抜群なのだ! だからどんな運動でもばっちり……そうなのだ! 鬼ごっこ! 鬼ごっこをするのだ!」
「お、鬼ごっこ……?」
「鬼ごっこは覚えているのだ? 一人の鬼が沢山の人を追っかける遊びなのだ! 身体をいっぱい動かして頭もスッキリ一石二鳥なのだ! 大福も粽に乗って頑張るのだ! だからイーラ、一緒に――――」
「大福、粽に乗るのはズルじゃない?」
驚く少女を抱きしめたまま話を進める大福に、ハーヴィが苦笑した。
「鬼ごっこは悪くないと思うけど、まずは彼女が落ち着けるように配慮するのが、友人としての務めじゃないかな?」
「そ、そうなのだ? むむ……大福ちょっと焦っちゃったのだ?」
「ううん、大福は大福なりに励まそうとしたんだよね。それはぜんぜん悪い事じゃないと思うよ」
不安げに項垂れる大福の頭をそっと撫でてやりながら、ハーヴィは少女に向かう。
「こんにちは、イーラさん。僕はハーヴィ。大福と同じで君の友人だよ」
「ハーヴィ……えっと、はじめま……こ、こんにちは」
「……うん、こんにちは」
ぎこちなく挨拶してくる少女に、ハーヴィは精一杯の笑顔を作る。
「ねぇ、イーラさん」
「は、はい?」
「これから皆が君に沢山の話をすると思う。それを聞いて君が何を感じて、どう選択するかはわからないけど、どうか自分を大切にして欲しい」
背後に仲間たちの気配を感じつつ、ハーヴィはまた一歩少女に近づいた。
「きっと頭がパンクするくらい悩むと思う。もしそうなったら聞いたこと思ったことを紙に書くといいよ。そうすれば考えもまとまりやすくなると思う」
そう言ってハーヴィは寝台横の机から紙とペンを取り、彼女に渡す。
「……もし悩むことがあったら、なんでも言って。僕でよければ全部聞くから」
そして、少女と大福だけに聞こえるようにそう言うと、仲間たちの後ろへ下がっていった――――。
●
「単刀直入にお聞きしますが、貴方は記憶を取り戻したいと思っているのでしょうか」
少女への質問が始まった。
最初に声を上げたのはグレイブ・ヤード。その表情は目深にかぶったフードに隠されうかがい知れない。
「と、記憶を失くしている貴方にいきなりこんな質問をしても答えに困りますか。では、別の質問をしましょう」
グレイブは目深にかぶったフードの奥から、試すような視線を少女に向けた。
「ここに赤と青の鳥がいるとしましょう」
そう言って両手を挙げて見せるグレイブ。当然その掌の上には何もない。
「赤い鳥は優しい飼い主によって籠の中で安全に、怪我もなく大切にされて生きていくことを選びました。対して青い鳥は鳥籠を抜け出して、外敵に襲われ風雨に傷つくことを受け入れて自由に空を飛ぶことを選んだ」
両手を交互に上下させていたグレイブは、その手をきょとんとする少女の前に突き出した。
「君はどちらが幸せだと思う?」
「え……」
優しく問いかけられた声に、少女は当然のように迷いを見せた。
「この質問に正解なんてありません。主観で結構ですので、貴方の答えを聞かせてもらえませんか? 私は知りたいのですよ。今、その心の中にいる『あなた』の考えを」
両手を突き出したまま少女の返事を待つグレイブ。
少女はそんなグレイブの手と瞳を交互に見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「わからない……じゃダメ?」
「わからない、ですか。それは質問の意図が分からないのでしょうか。それとも、どちらを選んだらいいのかわからないという意味ですか?」
声色は優しく、しかしその質問に容赦はない。
グレイブのさらなる追求に、少女は何とか口を開くもそこから言葉ができることはなった。
「イーラ。貴方は自分の名をそう言いました。それは、とある地方で『新たな時代』を意味する言葉です。そして別の地方では『憤怒』とされる言葉。まったく異なる意味を持つ名を名乗る貴方は果たして……」
答えに迷う少女の迷う瞳をのぞき込んだグレイブは、ふっと微笑むと瞳を閉じる。
「少し意地悪が過ぎましたか。答えは何時でも結構です。もし選べたのなら教えてください」
少女の迷いなど些事にすぎないとでもいうように、グレイブはあっさりと身を引いた。
「イーラにそのような意味があったとはな」
グレイブが呟いた少女の名の意味に、ナハティガル=ラーが興味を持った。
背を預けていた壁から離れると、少女の元へと歩いていく。
「アンタのイーラという名前、何故それが自分の名だとわかる? 昔からそう呼ばれていたのか?」
ナハティガルは寝台で上半身を起こす少女と視線を合わせるように膝を折るとそう問いかけた。
「……うん。父様と母様につけてもらった名前よ」
「そうか、両親にもらった名なのだな。いい名だ」
少女の答えに迷いはない。そう確認し、ナハティガルは僅かに口元を緩めると話を続けた。
「では、両親のことは覚えているのか? アンタの故郷――――竜の里の事も」
「竜の里……? そこがわたしの故郷なの? それに……父様……母様……?」
不安げに問い返した少女が、両手で頭を押さえる。
記憶が混濁しているのか、両親がいることは知っているのに、それが誰なのか思い出せないでいるようだ。
「……俺は今からアンタにとって厳しい言葉を投げる」
確かに存在する記憶と思い出せない葛藤に苦しむ少女に、ナハティガルはそう断りを入れると……。
「アンタがこれからどう生きたいのかは俺にはわからない。いや、アンタ自身も分かっていないのかもしれない。だが、アンタには確かに生きた『過去』がある。それはけして消えないものだ。そして、それは目を背けることができないものでもある」
その言葉に少女は息をのんだ。
「生きていれば忘れたくなるような思い出は沢山ある。だが、それはあくまで過去を飲み込んで生きていく事の出来る人間の特権だ。全てを忘れ無かったことにした人間に許された事ではない。
逃げ出した先に楽園はないぞ。汚泥に塗れ、足掻いた先にこそ、それは存在する。哀しみから目を背けずに生きろ、ヒルルク。征竜もそれを望んでいる。そう俺は思う」
記憶も存在も曖昧な少女にはあまりに酷な言葉。
それでもナハティガルはあえてそれを突き付けた。彼女の元の名と、心のよりどころであった征竜の名を出して。
「……一旦ここまでにしよう」
彼らの言葉を受け、憔悴の気配が見える少女の様子にフェイサルが声を上げた。
フェイサルは皆にもう一度診察を行うと伝え、部屋から退出するように要請した――――。
●
退室した冒険者たちはヴィルジニアの用意した控室にいた。
「俺は彼女がイーラのままでいてくれる事を望む」
少女の症状を知りどこか重い空気が漂うの中、アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトが声を上げる。
「俺はレイウェスト陛下の剣だ。陛下が志す帝国復興を邪魔する者はすべて斬る覚悟でいる。そして、この世界でその可能性が最も高いのが征竜の信徒達だろう。先の大戦で征竜が滅されたが故に、復讐やその遺志を継ごうとする者が現れる可能性があるからだ」
揺るぎない決意を体現するように直立不動で宣言するアルベルトの言葉に、皆は無言で耳を傾けた。
「そして、その旗手たり得る者が『征竜の巫女』だ。世界に変化をもたらす者への警戒やヒトの間引きを宣言した征竜に盲目的に従う彼の者の事だ、征竜の消滅を知ればその復讐として信徒たちを率い立ち上がる可能性もあるだろう。
今は忘れているとはいえ、彼女は『征竜の巫女』だ。もし記憶を取り戻し、征竜の遺志を継ごうと立ち上がるというのなら、俺はその前に立ち塞がり、この剣をもってその”蛮行”を断ち切らなくてはならない」
アルベルトは背に担いだ巨剣にそっと手を回す。
「俺は彼女を斬りたいわけじゃない。だからこそ彼女の記憶をもとに戻すことには反対する。彼女がこのまま記憶を失くし、穏やかに未来を生きてくれることを望む」
そう締めくくったアルベルトの言葉。その裏には、少女が記憶を取り戻し、彼女に組するのであれば、それがたとえ誰であっても剣を向けるとの強い意志を滲ませて――――。
●
「大勢で押しかけてすまない。君を気にかける者が多くてね」
人気のなくなった室内に、フェイサルの落ち着いた声が響く。
「みんな……本当にわたしの知り合いなのね」
少女はフェイサルの淹れてくれたお茶に映る自分を見つめながら、ぽつりと呟いた。
「君は我々の知る、君自身の事を知りたいと思うか」
「……わからない。わからないわ。わたしはどうすればいいの?」
「それは私にもわからない。ただ、その判断材料となる情報を君へ渡すことはできる。今の君は記憶をなくしてはいるが無知ではない。迷ってはいてもそこにはしっかりとした意思がある。私はそれを軽んじることはしないし、嘘も吐かない。
だから、もう一度問う。君は君自身を知りたいと願うか?」
「……」
そう問いかけたフェイサルに、少女は再び黙ってしまった。
沈黙の流れる部屋に、春先の暖かな風が吹き込む。
――――コンコン。
そんな時、部屋に控えめなノック音が響いた。
フェイサルは「しびれを切らした者がいるようだ」と苦笑いすると、ドアへと向かう。
「こんにちは、イーラ……さん」
ドアの前でフェイサルと二言三言やり取りした後、入れ替わるように部屋に入ってきたのはエルゼリオ・レイノーラだった。
エルゼリオは精一杯の笑顔で名を名乗ると、少女の傍に腰かける。
「大丈夫、疲れてない?」
「うん、もう平気」
「そっか、良かった」
エルゼリオがそう言ったっきり、部屋に沈黙が落ちた。
「えっと……皆、キミに対して色々な思いがあると思うんだけど、ボクはキミに以前の記憶を取り戻してほしいって思ってる」
右手で胸元を握りしめながら、エルゼリオは優しく話しかける。
「……どうして、どうしてそう思うの?」
「そうだね、理由は色々とあるんだけど……しいて言うなら、キミの為、かな」
「わたしの?」
不思議そうに首をかしげる少女が、彼女であって彼女でない少女の面影に重なり、無意識に胸元を掴む右手に力がこもっていた。
「……記憶ってさ、人が今まで生きてきた足跡だと思うんだ。その足跡がないキミは、知らない場所に突然放り出された子猫にも等しい。それってものすごく不安で、心細い事だと思う。
今までの足跡が永遠に失われてしまって戻らなかったら……。
辛いことも、大事なことも、全部忘れたままだったら……。
それはとても哀しくて、恐ろしい事だと思うんだ。だからボクは、キミに記憶を取り戻して欲しい。それが生きるって事だと思うから」
エルゼリオは胸元を掴んでいた手を緩めると、少女の手をそっと取った。
「……でも、どうやって?」
「それはわからない。だけど、方法は必ずあるよ。キミが記憶を取り戻したいと望むのなら、ボクはなんでもする――――」
取った手を引き少女の体を寄せたエルゼリオは、そのまま彼女の背に腕を回す。
「ボクはキミのことが好きなんだ。だからお願い、思い出して。ボクとの想い出を」
どうしていいのかわからず固まる少女の耳元にエルゼリオは囁きかけた。
子供の様に少しだけ高い少女の体温が、薄布越しに伝わってくる。
それがどうしても愛おしくて、少女に回した腕に力がこもる。
「ったく、傭兵団に勧誘しようと思って探してたら、ちゃっかり抜け駆けか? お前も隅に置けねぇなぁ」
このままずっとこうして居られればと、心のどこかで思っていたエルゼリオの願望は打ち砕かれた。
慌てて振り向いてみれば、ドアの前にはハヤト=ガラン=ヴォルファングが苦笑しながら立っている。
音も気配もなくいきなり現れたハヤトに、エルゼリオは慌てて少女から身体を離した。
「ハ、ハヤトさん、いつからそこにっ!?」
「んー? 『大丈夫、疲れてない?』辺りからか?」
「ほとんど最初から!?」
「まー、邪魔しなかっただけマシだろ? んで、話は終わったか」
「え、えっと……まぁ、一応は?」
「そっか。んじゃ、交代だ。後がつかえてるからな」
「え?」
ハヤトに言われ奥のドアに意識を向ければ、何人もの気配を感じる。
「さて、ヒルルク」
もしかして聞かれてた……? とドキドキしているエルゼリオの頭を乱暴に撫でつつ、ハヤトは少女に話しかけた。
「本当に俺達の事を忘れちまったみてえだな」
「……ごめん、なさい」
「別に謝る必要はねぇよ。お前が悪いんじゃないだろうしな。とはいえ、結局どうするかねぇ。記憶を取り戻したいっていうのなら、俺もできる限り手を貸してやりてぇとは思っているが、フェイサルの話じゃ記憶を取り戻す確実な術はないって話だしなぁ」
ハヤトに言われ、少女はどう応えていいのか迷い、そして俯いた。
「まぁ、今は悩むしかねぇな。記憶を取り戻すことがいい事だとは限らねぇし。多少不安だろうが、今のまま穏やかに過ごすのも悪くねぇと俺は思うぞ」
「それでもいいの……?」
「いいんじゃね? そもそも他人に決められるような事じゃねぇだろう?
お、そうだ。それじゃ、こういうのはどうだ?」
「え?」
何か思いついたのか、ハヤトは悪戯に口元を歪ませると、少女の手を取った。
「初めまして、イーラ。俺はハヤト。自前で傭兵団を結成して団長なんてことやってる。大陸中を巡って、困ってるやつの手助けをしてる正義の傭兵団だ。どうだカッコいいだろ?」
「え、ええ」
「そうだろそうだろ。で、どうだイーラ、お前も団員にならないか?」
「……え? ええっ!?」
「はは、いい反応だな。そういうの待ってた。
まぁでも、別に冗談で言ってるわけじゃねぇぞ? 記憶を取り戻す為に頑張るのか、それとも今のままいるのか、俺としてはどちらを選んでも受け入れるつもりだが、今のその状態は随分と中途半端じゃねえか。だから、世界を回ってみねぇか?」
「世界を……?」
「世界は案外広いぞ。とりあえず、記憶じゃなくて生きる目的を見つけるために旅をするんだ。色んな国に行って色んな人と会って交流する。そうしたら、何か”大切なもの”が見つかるんじゃねぇかなと、俺は思うんだ」
「大切なもの……見つかるのかしら」
「それはお前次第だな。まぁ、考えててくれよ。そん時はエルゼリオも一緒だな」
「うん……えっ、ボクも!?」
突然話を振られ驚くエルゼリオに満足したのか、ハヤトは皆を呼んでくるといって少女の元を離れた。
●
「まだ思い出さないんだね。結局、ワタシ達との想い出ってその程度のものだったんだ」
部屋へ戻って来た皆の中で、最初に声を上げたのはトゥーリだった。
トゥーリはその言葉には怒りと哀しみを滲ませながら話し続ける。
「ワタシはヒルルクさんに会いに来たのに……ここにいるのは、イーラって人なんだもん」
「ごめん、なさい……」
「アナタに謝ってもらったって仕方がない。それでヒルルクさんが戻ってくるわけじゃないんでしょ?」
「それは、そうだけど……」
「それじゃダメなんだ。ワタシは彼女との約束が果たせないんだよ」
「約束……。それは、わたしがしたの?」
「違う、アナタじゃない。何度言えばわかるの」
「ご、ごめんなさい……」
遂には目を合わせる事もできなくなった少女に小さくため息をついたトゥーリは、持参した鞄から小さな包みを取り出した。
「……いいよ。覚えていないなら、もう一度やり直す」
そう言いつつ包みを開くと、そこには香ばしく薫る焼き菓子があった。
トゥーリはフェイサルの淹れていたお茶の隣にその焼き菓子を置くと、「ヒルルクさんの好物だよ」と少女の傍で小さく呟く。
「あのね。ワタシとヒルルクさんは約束したんだ。悩んだり困ったことがあったら、お互いに相談しようねって。それぞれが自分の目的に全力で向かっていこうねって。
ワタシはね、自分のやりたいことにちゃんと道筋をつけたよ?
ハリスさんだって、辺境伯騎士団の騎士として叙任を受けたし、土地ももらって結婚もしたんだよ。ワタシは……ちゃんと進んでる。
アナタは……ヒルルクさんはどうなの? 征竜が居なくなって、都合よく記憶を失って……アナタはもう進むことを辞めてしまったの?」
胸の奥から湧き上がってくる想いを必死に抑え込みながら、トゥーリは言葉を綴った。
「準備は終わってるんだよ。新しい世界を創る準備は。だから一緒に進もうよ、ヒルルクさん」
トゥーリは真っ直ぐに少女を見つめ、手を差し出す。『ヒルルク』として帰ってこい。そして、この手を取れと、その瞳に強い意志を滲ませて。
「……ごめんなさい、わたしはヒルルク……さん、が分からない。あなたとの約束も……思い出せない」
トゥーリの真っ直ぐな切望を受けても、少女に変化はなかった。
少女の答えにトゥーリは手をぎゅっと握りこむと、拳を震わせる。
「今は……それでもいい。まだ、”寝起き”だから、許してあげる。でも、ちゃんと”目覚め”たら、許さないから。忘れてたこと全部、絶対に許さないから」
床に視線を落とし、震える声でそう呟いたトゥーリは踵を返し、ハリス・アル・ターミルの背に隠れるように下がっていった。
「トゥーリ、よく頑張りましたね」
背後に感じる最愛のパートナーの気配にそっと話しかけたハリスは、彼女を親友に任せると、少女の元へと歩み出る。
「すでに彼女から名が出ましたので、詳しい自己紹介は省きますが、私はハリスと申すしがない農夫……兼騎士です。いやはや、なかなか慣れませんね」
ハリスはぽかんと見上げる少女を前に、照れくさそうに頭を掻いた。
「まずはイーラ殿、貴殿が生きておられた事を、征竜に感謝いたしましょう。本当に、よくぞ生きていてくださいました」
そう言うとハリスは巨躯を屈め、少女と視線を合わせる。
「もちろんそう思っているのは、私だけではありません。ここに集った皆、そして、この場に来ることができなかった者達、貴殿に関わりある者たちの多くが、その帰還を喜んでいる事でしょう」
ハリスは両腕を広げ、背後の仲間たちに少女の意識を向けさせると、少女は改めてハリス越しに来訪者たちの表情を見た。
「今まで皆の話を聞いてきましたが、実は私は意見を異とします。貴殿には今の貴殿のままでいていただきたい。
先ほどの話とは矛盾する部分もありますが、今の貴殿の表情には不安の中にどこか安堵した気配を感じるのです。もしかすれば、これは征竜のご遺志がなされた業……どこかそう思えてならないのです」
ハリスにそう言われ、少女ははっと視線を彼に戻す。
「あの……その”せいりゅう”、ってどんな人なの?」
口ごもりつつ聞いてきた少女の質問に、ハリスは一瞬驚いた。
しかし、すぐに相好を崩し彼女に話しをする。
「そうですね。全てを話すと長くなるのですが、とても素晴らしいお方ですよ。征竜は、この世界が創世された古に、神より世界の守護者としての役割を与えられた存在だと伝わっています。神により創られたこの世界を、異界の脅威から守り、この世界に芽吹く命を見守られてきました。
しかし、その征竜も先日、我々に世界の今後を託され逝かれました」
「逝かれた……死んでしまったの?」
「それはどうでしょう。征竜の死が我々のそれと同義なのかはわかりません。ですが少なくとも、もうこの世界に干渉できる存在ではなくなったのではないでしょうか」
「……そう、なんだ」
少女は小さく呟くと、右手の甲をそっと触った。
「我々は世界を託されました。次の世界を創る道は再び延び、そして再び交わるでしょう。次こそは共に歩める道を得られることを私は願います」
それだけを言い残すと、ハリスは少女の返事も聞かず最愛の者達の元へと戻っていった。
●
「さて、一通り話は終わったか。彼女も疲れただろう。一旦皆退室して――――」
「待ってください。まだ終わっていません」
少女の体調を鑑み、面会を打ち切ろうとしたフェイサルの言葉を遮り、歩み出たのはトーラだった。
トーラは険しい表情を浮かべたまま、少女の寝台に近づいていく。
「……約束してたのに、本当に覚えていないんですね」
どこか鬼気迫る気配を見て、びくりと身体をすくませる少女に、トーラは深く息を吐いた。
「ヒルルク……一緒に征竜さまの跡を継ぐ気はありませんか?」
「え……?」
突然の申し出に、少女はぽかんと口を開ける。
「征竜さまは、我々に世界の行く末を託されました。
『人間達よ、神が創りし世界を守り、慈しむのだ』。
それが征竜さまが最後に残した言葉です。ですが、この世界に生きる全ての人間がそれを望んでいるわけではありません。征竜さまが残したご遺志ですが、今のままでは叶えられることはないとわたしは思っています」
少女の呆け顔に喝を入れるように、トーラはグッと顔を近づけた。
「わたしを、見て?」
突然迫ってきた顔に身体を引いた少女を追いかけ、トーラはじっと瞳をのぞき込む。
「征竜さまのご遺志を体現する誰かが必要なんです。そして、それは『征竜の巫女』であったあなたが最も相応しい。
今のあなたを否定しているわけではありません。そちらが本来の姿だったのかもしれませんし。ですが、できることなら……あなたの中に、あの子を蘇らせてはもらえませんか?」
それが少女の意志ではどうにもならないことはトーラにでもわかる。
しかし、少女の中に眠る『彼女』に声を届けることができれば、あるいは少女と『彼女』の記憶を持った本当のヒルルクが帰ってくる。そんな奇跡を信じ、トーラは少女と『彼女』に呼びかけ続けた。
「ヒルルク、聞こえていますか。征竜さまが討たれた原因の一端はわたしにあります」
「え……」
「詳しく知りたければ起きてきなさい。真実を知り、あなたは怒り狂うでしょう。だから、全部話してあげます。そして、わたしがあなたを止めてあげます」
「……」
しかし、少女は俯いたまま口をつぐんでしまった。トーラの決意と覚悟を前にしても、少女の中にあるはずの存在はその呼びかけに応えない。
「トーラ、気持ちはわかる。だが、今は無理強いするな」
いつまでも少女を見つめ続けるトーラの肩にフェイサルが手を置いた。
それでも動こうとしないトーラから手を放し、フェイサルは後ろを振り向く。
「ヴィルジニア、そちらは何かあるか?」
フェイサルは部屋の隅で話を聞いていたヴィルジニアに問いかけるが、彼女はゆっくりと首を振った。
「結局、何も変わりませんでしたね」
どこか無力感の漂う室内に、ヴィルヘルミナの声が響く。
「今まで彼女を見ていましたが、元の記憶に固執している気配は感じませんでした。彼女は本当に全てを忘れているのでしょう。それが幸か不幸かは私には判断しかねますが、どちらにせよ、今の彼女を受け入れることが寛容なんじゃないでしょうか」
ヴィルヘルミナはあえて仲間たちを見ることなく淡々と話す。
「記憶がいつ戻るのか。そもそも戻らないのか。
彼女にどんな未来が訪れても、それを受け入れて変わらず手を差し伸べる。それができるのも、彼女を想い集った者にしかできない事なのではないかと、私は思いますよ」
ヴィルヘルミナは最後に「結局は時間が解決していくんでしょうね」と付け加え、話を終えた。
「そうだな、正しさはけして一つじゃない。彼女にどのような未来が訪れても、我々がそれを受け入れてやることが大切だろう」
ヴィルヘルミナの言葉を受け、フェイサルが他の者たちに同意を求めるように見渡した。
「受け入れる、ですか……そうですね、我々は彼女を、そして何より『征竜の民』をどう受け入れるか。それを試されているのかもしれませんね」
予期せぬグレイブの発言に、少女に向いていた皆の気配が一瞬揺れる。
「それも含め、彼女が帝国の……陛下の障害とならないのであれば、俺からなにも言う事はない」
新たに示された問題を断ち切るようにアルベルトは答えると、一人部屋を出ていった。
「わたし……知りたい」
再び静まり返った部屋に、少女の呟きが聞こえる。
「何もわからないのはやっぱり不安」
「イーラはやっぱり記憶を取り戻したいのだ?」
「それはわからない……でも、知らないとみんなの話が本当なのかもわからないし、何をどう判断していいのかも分からないしと思う」
大福に問われ少女は答える。
「んじゃ、旅に出るか? 俺はいつでも歓迎だぜ」
「……うん、行く。傭兵団に入るかはわからないけど、色々なところを回ってみたい」
あっさりと肯定した少女に、ハヤト自身も少し驚いた。
「いい考えだと思うのだ! 旅をするのなら、ぜひ大福の故郷に来るのだ! もうすぐ桜の咲く季節なのだ。街中の桜が一斉に咲いてひらひら舞い散ってとっても綺麗なのだ。いつかヒルルク……イーラにも見せたいと思ってたのだ!」
大福は表情を輝かせ、少女に申し出る。
「うん、行く。見てみたい、桜」
「やったのだ! 行くのだ、今すぐ行くのだ! 桜は待ってくれないのだ!」
「ええっ!?」
「ちょ、ちょっと大福! 落ち着いてっ!?」
「何をするのだはーびー! 離すのだ! ごしょうなのだ!!」
寝台に飛び乗り少女の手を引こうとする大福を、ハーヴィが慌てて止めた。
「はは、んでお前らはどうする?」
と、ハヤトがそんな様子をにこやかに見つめていたエルゼリオと暴れる大福を取り押さえるハーヴィに問いかけた。
「い、いや、ボクはその家のこともあるし……」
「え? なに、どういうこと?」
ハヤトの質問の意味を知るエルゼリオは口ごもり、ハーヴィは首をかしげる。
「いたいけな少女が荒くれどもと行動を共にするんだ。色々と心配だよな?」
「それは、そうなんだけど……」
「ああ、なんだ、そう言う事。確かにそうだね、特に団長が」
立場があると悩むエルゼリオとは対照的に、ようやく理解したハーヴィは苦笑した。
「実は僕も彼女を旅に誘おうと思ってたんだよ。ここにいても彼女の為にはならないと思ってたから。”彼女”のいた世界とは少し変わってしまったけど、新しくなった世界はきっと彼女にとって新たな想い出になるはずなんだ」
「おっと、それは悪かったな。折角の二人旅計画を邪魔して」
「そ、そういうつもりじゃないよっ! 別に二人きりとかそうんじゃ……」
と、ハーヴィはチラリと少女を見るも、彼女は何のことかときょとんとしている。
ハーヴィは自分の言動の不甲斐なさに大きくため息をつき、何でもないと答えた。
「まあなんにせよ、方向性が決まったのは喜ばしい。だが、しばらくは療養だ。異常がないとはいえ、病み上がりなのは事実だからな」
と、フェイサルが盛り上がる一部の知人たちに釘を刺す。
そんな様子に、暗く沈んでいた部屋に小さな笑い声が響いた。
この日、目覚めた少女は世界を旅をしたいと語った。
かつて信じたものが存在しないこの新しい世界は、果たして少女の眼にどう映るのだろう。
それはこれからの世界を託された者たちの手にかかっているのかもしれない――――。
マスターコメント
ロングシナリオ易しい 報酬:標準12 / 6〜12人
2024年03月12日 13時46分34秒 公開
参加者
相談掲示板
ハーヴィだよ、よろしくね。 こんな風になってしまったことに驚いたけれど、……正直なところ、ホッとしてる部分もあるかな。あのままだと征竜様亡き後、後追いしちゃうんじゃないかって、ずっと心配だったし不安でもあったから。 ……もしも決戦のあの場面で頭を打ってなかったら、全力でヒルルクさんのこと、止める気だったよ。 さて、話す内容は各々で良いだろうから一旦置いといて、記憶を戻す必要性についてだけは先にみんなの意見を聞いときたいかなって思ってる。 ちなみに僕は……今は無理に記憶を戻さなくても良いんじゃないかなって思ってる。理由は先述の通り、今すぐは後追いの懸念があるから。 とは言え、他の人達の話を聞いてからアプローチの方法は変えようと思ってるから、良かったらみんなの考えを聞かせてくれると嬉しいな。
トーラです。 よろしくお願いします。 いざと言う時に何をしているのかと思ったら、2か月も寝ていたんですか……。 記憶についてですが、わたしは取り戻すことが出来るなら戻すことを推します。 イーラでなくヒルルクに戻って欲しいのであれば、戻った時に記憶を無くした時間が長い方が苦しむでしょうし。 後追いはしないと思いますし、しようとしても止めるだけです。 それでも早まったことをしようとするなら、怔竜さまの仇として憎まれ役になりましょう。その覚悟は出来ています。
あ。全体が記憶を戻さない方向で行くのであれば無理に戻そうとしたりするつもりはありませんのでー。
ヴィルヘルミナです。今回はよろしくお願いします。 記憶障害ですか。色々ありましたし、仕方のない事かもしれませんね。 記憶を戻すか戻さないか…という話ですが、私はどちらかで言えば戻さない感じでしょうか。 強いて言うなら、記憶を確実に戻す方法でもない限りは成り行き任せですしね。 何が切っ掛けになるかもわかりませんし、物の弾みで戻るという事も十分あり得るので。 しばらくは様子見でいいだろうとは個人的には思います。 ちょっとしたお話くらいはすると思います。 この辺りは個人の自由でしょう。 記憶が戻った所で、竜の里はもう人が住める環境なのかもわかりませんし。
大福と相棒の狼、粽なのだ。よろしくなのだ~。 ヒルルク…怪我が治ったのは安心したけど、大福たちの事忘れちゃったのだ…? (首ぶんぶん)もう一度いっぱい仲良くなればいいのだ! 美味しい物を食べていっぱい遊ぶのだ!鬼ごっことかするのだ! >記憶 本当のヒルルクだったら、たとえ辛くても自分で問題にぶつかって解決したいって言いそうなのだ… でも親友としてはもう悲しんでほしくないし、その分楽しいこといっぱい一緒にしたいって思うのだ うーんうーん…どうすればいいのだぁ(ぐるぐる目 その前に大福、絶対ヒルルクって呼んじゃいそうなのだ~
ヒーラー、グレイブ・ヤードです。 私としてはただの傷病者という程度の対応にする予定です。 私見でいうなれば >記憶に関して 何がきっかけになるかという点だけでいうのであれば、「我々の存在(顔とか)」さえきっかけになりかねないので…もはや運と言うかそれこそ繋がり、絆や奇跡の分類かとは思っています。 ただ、戻したいと思うのであれば「対策」は考えていたほうがいいかなとは思っています。 理由としては先におっしゃってる方もいらっしゃいますのでそこは割愛して。 ただ、「この後に何かのきっかけで戻る可能性」を考えると対処できる人のいる今のうちに対処してしまう、というのも一つの手ではあるのです。
ウォーリアのアルベルト・V・シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 『彼女』の記憶を戻すことについて俺は反対だ。 記憶が戻ったら、レイウェスト陛下に危害を加える可能性が極めて高いからな。 俺が討つのは『「レイウェスト陛下の排除や人類の間引きを宣言していた征竜」に盲目的に従う『ヒルルク』』であって『イーラ』に対しては特に何もする気はない。 『イーラ』のままでいてくれさえすればこれまでの陛下に対する暴言や無礼は全て水に流すさ。 ※誤字があったので発言を削除し、再投稿しました。
ハリスと申します、どうぞ宜しく。 ――皆様とは何度も依頼を共にさせていただいていますが。 >ヒルルク殿について 一先ず、生きていてくれたことが喜ばしい。 決戦を前に歩む道を違えはしましたが、あの時まで我々は確かに友でありました。 そして、記憶を失っておられるのであれば…私個人としては、無理に戻す事もないかと。 彼女はもう十分に努めを果たされた。静かに休むべきだという想いはあります。 我々と袂を分かった後の彼女を支えていたのは、征竜への純粋なる信仰。 その拠所が永久に失われた今、記憶を戻すことは苦痛であっても喜びにはならない。 口惜しいですが、彼女の心を真に動かせたのは、征竜の言葉しか無かったのですから。 ――或いは、今の状況こそ…征竜が最期に見せた、彼女の献身への返礼なのかもしれません。 ただ、我々の意思だけで彼女の進退を決めるのは、それこそ傲慢でありましょう。 最低限、過去について知ろうとする意思があるかは彼女に聞いておくべきかと。 ――大福殿が仰られるように、我々の知るヒルルク殿であれば、それを望みそうですが、ね。 >記憶の戻ったヒルルク殿の行動と「対策」について 既に彼女の力の源であった征竜の加護は、その死によって失われている筈です。 仮に暴れ始めたとして、かつえ敵対した折のような人智を超えた力はありますまい。 確かに油断はできませんが、もはや個人で要人を襲撃するような無理は通せぬかと。 「対策」がどういったものかは、各々の判断に依る処も大きいと思いますが…。 もし、彼女の身を害する意図があるようなものであれば、私は反対させて頂きます。
フェイサル・セイフだ。 すっかり馴染み深い面々ばかりな気もするが、よもやこのような形での再会とはな。 >「彼女」への対応について ひとまず彼女の容体は確認しよう。 以前にも何度か診察はしたが、これは譲りたくない部分ではある。 ……今の彼女が我々リザードマンに抵抗が無ければ良いのだが。 >記憶の扱い 既に何人か挙げているように、実際には方法を問わずそういうアプローチをするか否か、という話だが。 まず大前提として、私としては皆それぞれの思い出させたい・させたくないという気持ちに反対はしない。 その為に個々人で何かするのを止める事はしないし、 結果的に何か酷い事が起きても――収拾するのには協力しよう、約束する。 その上で、私としては…… 今の彼女自身の希望を、まずは聴いてみたいと考えている。 より正確に言えば、今我々の目の前にいる「イーラ」という少女が、 我々の知る「ヒルルク」という少女の事をどこまで知りたいと思っているのかを、だな。 本当に彼女が何も知らないのであれば……今のこの状況、恐らく不安でたまらないだろう。 自分が大事な事を知らない、あるいは知りたくない事を知らされるのではないかという不安だ。 そういう中で、確かに存在しているであろう「今の彼女」の意思を無視するというのは、な。 言うなれば、病状や治療法の説明をせず強引に手術をする悪い医者になるような感覚がある。 ……個人的には以前の彼女に立ち戻って欲しいとは思うがね。 彼女がそれを望まぬのであれば、せめて不安を取り除けるような話をしたい。 恐らく、それは何か起きた時の保険にもなるであろうから。
トゥーリだよ、よろしくね。 ちょっとバタバタしちゃってるので方向性の表明だけ。 何にしてもいったんは記憶は戻させたいかな。 イーラなんて人のことは、ワタシ知らないし。 ずいぶんと前だけど、ワタシが約束したのはヒルルクさんだから。 知らない人とは約束の話はできないよ。
エルゼリオ・レイノーラです、どうぞヨロシクね! >記憶 個人的には記憶を取り戻して欲しいけれど……無理強いはしたくないと思ってる。 まずは『イーラ』さんと対話して、彼女の状態を確認する所から始めたいなと。 ただ――既に言及されてるように記憶喪失が心因性のものなら、突発的に戻る可能性も低くはない筈で。 その事を考慮するなら、対処できる環境下にある内に記憶が戻った方が良いような気はするかな。
遅参申し訳ない。 シーフのナハティガル=ラーだ、今回は宜しく頼む。 >記憶の扱い 突発的に記憶が戻り、大混乱に陥るよりは―― 対応可能な面子が揃っている時に戻った方が色々な面で安全ではあるかと。 ……記憶の戻し方などは全く分からんが。 いずれにせよ無理強いする事は考えてはいない。
おーっす! 遅くなっちまってすまねぇ、ハヤト=ガラン=ヴォルファングだ、よろしくな!! ヒルルクの奴、2ヶ月も寝たきりだったのかよ… 俺的には無理に記憶を呼び起こそうとは思わねぇが、何がきっかけで思い出すのかもわからねぇしな… とにかく無事でいてくれたことが何よりだし本人が『イーラ』として生きていきてぇのか『ヒルルク』に戻りてぇのかってのを聞いてみてから判断すんぜ。 記憶が戻った場合に自暴自棄になっちまわねぇかは一番気にかかるポイントだからな、俺なりの対策も考えとくぜ!
改めて、俺の今回の行動方針を書かせてもらう。 『彼女』の記憶を戻す事には反対。むしろ、このまま記憶が戻らない方法を教えて貰いたいくらいだ。 『イーラ』に対しては特に何もするつもりは無い。 『ヒルルク』については、これまでの言動・行動、そして親しい人達からの説得に耳を貸さないどころか【人類の間引きとレイウェスト陛下の排除を宣言した征竜】への信仰を強めていった実績から「征竜様の遺志を継ぐ」と言い出す可能性が極めて高く、レイウェスト陛下に危害を加える可能性も高い。(実力的に実現不可能であっても実行すると思われる) 俺は、レイウェスト陛下の騎士である以上、陛下に危害を加えようとする輩には相応の対応を取らざるを得ない。 正直、背後的には『彼女』には『イーラ』のままでいてもらって『ヒルルク』は【消息不明】という事で済ませたい。だから、『彼女』の記憶は失われたままにして欲しい。
みんな、色んな意見を聞かせてくれてありがとう。 どの意見も分かるな、とか、なるほどな、って思わせるものばかりで、凄く参考になった。 戻す、戻さない、それぞれの考えがあると思うし、そこは否定しない。それぞれのアプローチ方法があって良いと思う。 その上で、最終的には本人がどうしたいか、ってのが一番大事かなって思うんだけど、同時にそこら辺のサポートが要るかなって個人的に考えてて、今回はそんな感じで動こうかなと思ってるよ。 >アルベルトさん 言ってることは分かるし、なるほどなーって思ったよ。アルベルトさんとしては懸念点だよね。 ただ、実際にヒルルクさんがそういう風に言い出してから、改めてアルベルトさんの立場として取れる対応を取る……ってことは出来ないかな? あの子は征竜様の言葉には盲目的ではあったけど……元来は優しい子だよ。
やはり、意見は割れますね。 その上で落としどころを探るのであれば、フェイサルさんの言う本人の意思を確認した上で決めるのが個人的にはいいと思います。 >アルベルトさん 記憶を取り戻して暴走する可能性は否定できませんが、征竜は最後に『――人間達よ 神が創りし世界を守り 慈しむのだ』と言いました。 それを直接言われたレイウェスト様は、征竜の責務を継いだとも言えるのではないでしょうか? それをヒルルクに伝えれば早まったことはしないでしょうし、それでも癇癪を起こすのであればわたしが止めます。 それに、征竜が居なくなったことで加護が残っていない可能性もありますし、もし残っていても、正面から向かっていくくらいしか出来ないあの子がレイウェストさまに危害を加えることは出来ないでしょう。
そしてこちらも背後的な話なのですが、エピローグ期間という時期にそういった凶行は起きないと思います。 何より、この場に居るのは私を含めてアニエピカの世界でヒルルクさんに縁を持ち、彼女を想って参加した人達です。 シナリオでは恐らくこれが最後の機会となりますし、ここで悔いは残したくありません。 どうか強硬な姿勢は控えて貰えないでしょうか? アルベルトさんにもそういった縁は沢山あるでしょう?
大福、一気にいろいろ違う事言われたらヒルルクがびっくりして寝込んだりしちゃうんじゃないか心配なのだ。 皆で一緒にお話しするのしても、別々にお話しするにしても ハリスやはーびーが言ってるみたいに、とにかく最初にヒルルク…じゃなかったイーラに記憶を思い出したいか皆で聞いてからにしたいのだ もし何かのきっかけで記憶が戻っても大丈夫なように 市長さんとも相談してヒルルクが元気になるまで一緒にいられるようにしたいのだ 皆で日替わりでもいいし、今のヒルルクが安心できる誰かとでもいいし 1人にならないようにしたいのだ もしもの事がおこらないように皆で見守ればアルベルトも安心できるのだ?
さて、医療関係はやるかたがいらっしゃいますのでこちらはやめておくとしまして。 >一気にいろいろと それもそうですね。 ただでさえ精神的に不安定な状態なのでは?とは思いますし、時間を置くか日を改めるかは必要かと思います。 >私が行う予定のこと 私は記憶に関してはどちらでもよく、というのが正直なところです。 聞きたい事が有るくらいですし、それには記憶が関係のないことですから。 あぁ、ですが対応は気を付けないと。 「極北」・・・彼女に限らず征竜の民に対する対応にも、かかってくる話になるのかなとは思っています。
>アルベルト 『イーラ』がエラトゥーン都市同盟の要人である『リブラネスタ市長・ヴィルジニア・テレーザ・セルッティ』の『客人』である点は肝に銘じておくべきかと。 実際に新皇帝へと危害を加えたのならば兎も角、『危害を加える可能性が高い』という曖昧な理由で新皇帝の臣下がイーラを害した場合、 ヴィルジニアは新皇帝に対して相応の対応を取ると思われる。 周辺諸国の復興支援が不可欠といえる現在の帝国情勢下で、ヴィルジニアを敵に回す事を新皇帝が望むとは思えんが……。
>ナハティガル=ラー氏 俺は『イーラ』に対しては【相応の対応】を取るつもりは無いぜ。 それどころか、『彼女』が『イーラ』のままで居続けるなら一切干渉はしないつもりだ。(これは、前にも宣言した内容となるが) 俺が、【相応の対応】を取らざるを得ないと言ったのは「征竜への信仰を捨てず、レイウェスト陛下や人類の間引きという征竜の遺志を継ぐことを宣言した場合の『ヒルルク』」に対してだ。(こちらに関しては、どの状態の『ヒルルク』であるかをはっきりと書いていなかった俺が悪かった。そういうわけで、改めて宣言する) 『ヒルルク』が征竜への信仰を捨てて征竜の遺志を継ぐこともしないというならば、いろいろ言いたいことはあるが今後は彼女には不干渉でいく。ただ、この可能性はぶっちゃけて殆ど無いと俺は思うぜ。何しろ以前にも、『ヒルルク』と親しい人達が『ヒルルク』の事を思って懸命に説得したにも関わらず全く耳を貸さないどころか逆切れする有様だったみたいだからな。今更、説得に耳を貸すとは思えないな。 あと、「実際に新皇帝へと危害を加えたのならば兎も角」と言うが、陛下に「実際に危害を加えられてから」では遅いんだぞ?一国の国家元首に危害が加えられる(又は、国家元首に危害を加える(宣言だけを含めて))ということがどの様な事か分かっているよな?そうでなくとも、帝国はようやく復興への道筋が軌道に乗りかけている。そんな時に、全ての帝国国民の精神的支柱である陛下が危害を加えられてみろ、帝国がまた混乱に陥るぞ。 ※長くなってしまい申し訳ないが、次に続く
※前の書き込みから続く そうなれば、様々な勢力(当然エラトゥーン都市同盟も含まれる)がこれまで帝国復興に向けて投資してきたものが全て無駄になってしまうんだ。 投資が無駄になるだけではない、ようやく混乱が収まってきたというのに、また別の混乱が発生し、新たな犠牲が発生することになるんだ。 そんな、リスクを抱えてまでヴィルジニア・テレーザ・セルッティ氏はテロリストを庇うだろうか? >トーラ氏 征竜の最期の言葉・・・、それを『ヒルルク』が直接聞いていれば良かったのですが、確かその時点で『ヒルルク』は気を失っていたはず・・・。 その言葉を聞かされても間違いなく、『ヒルルク』は癇癪を起すだろうな「征竜様がそんな事をおっしゃるはずが無い」って。 抑えるのはお願いしますね。 >ヒルルクの力について 確かに、征竜の「加護」もあっただろうけど、確か極北の過酷な環境も理由にあった気がするのだか?(俺の記憶違いなら申し訳ありません) >『彼女』の記憶を「戻そう」とする方へ 何のために『彼女』の記憶を「戻そう」と思うのだろうか? このまま、『イーラ』のままでいれば『彼女』は新たな人生を歩むことができるんだ。 征竜の呪縛から解放されて、自らの人生を歩むことができるんだ。 その折角の機会を、何のために奪うのだろうか?
なぁ、アルベルト。 お前がヒルルクの記憶を戻させたくないのは解ったが、これまでヒルルクと付き合いが長い連中はその想い出を忘れられたままになっちまうって思うと悲しいってのも理解して欲しいんだ。 とはいえ、記憶を取り戻して欲しいって思ってる面子も殆どが無理矢理にとは考えてねぇって言ってるし、そこはヒルルク本人の意思に任せるってのがほぼ総意じゃねーか? こればっかは流れ任せになっちまうと思うし、それぞれが ヒルルク本人が記憶を取り戻したいと 望む⇒取り戻す手助けをする 望む⇒取り戻す手助けをしない 望まない⇒記憶が戻ってしまう 望まない⇒記憶が戻らない ってパターンを想定してどうすんのか決めて行動すんのが良いんじゃねーか?
……アルベルトさん。 例えば、セニャさんが君のことを全て忘れてしまったらどう思う? 少しでも自分のことを思い出して貰いたいなって思わない? そういうところまで考えて欲しいな。 それにセニャさんだって一時期王国を追われてた。君はその時のことも知ってる筈だから、今回のヒルルクさん側の立場の人達の気持ちも少しは分かると思うんだけどな……。 ハヤトさんも言う通り、最後はヒルルクさんの意思に任せるって話になってたよね。彼の言う通り、それぞれが想定して行動するのがいいかなって思う。 あとヒルルクさんの力について、補足しとくね。 強いには強かったんだけど既出の通り、それは征竜様の加護に拠るものが大きかったんだ。 ヒルルクさん自身は大雑把な戦闘しか出来ない。能力的にも超越者なんて遠く及ばない。 ここにいる百戦錬磨の人達が立ち塞がれば、まず彼女の力では敵わないよ。
そういえばなのですが、一応迄に 例え「記憶」が戻ったとしても「人格」が戻るとは限りません。 ホムンクルスの例を考えると、ですけどね。 自分を通して誰かを見られる、というのは少しお辛いかなとも思います。 あとは少しばかりドライなことを 一応彼女の記憶が戻れば帝国にとってメリットはあることはあるのですよね 極北の知識や行き方、言ってしまえば「帝国の支配区域の拡大手段」を。 他の国では地政学上出来ないことですし 南側には関係性上これ以上伸ばせないでしょうから。
まあ、各々いろいろな考えがありますよね。 余程の事がない限りはなるようになるとは思いますが。 プレイングの提出は今夜の19:00までなのでお気をつけて。 忘れると色々と空回りになりそうですし。
俺は、誰に何と言われようとレイウェスト陛下をお護りする。 それだけだ。