【褪野】褪野を渡る夏風に【彩都】
炙りとろ左門
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シナリオID:3041
オープニング
男は、故郷に期待を抱いていなかった。痩せた土地はリーンエス王国内では珍しく、だからこそ、実り豊かな場所に移住すればいいだろうと思っていた。そしてそれを選択しない父や祖母を置いて、都市へと移り住んだ。
どれほど耕しても、時間をかけて面倒を見ても痩せた作物しか収穫できない故郷と違い、都市にはすべてがあり、充足していた。人と人の距離も適切で煩わしさがない。都市の生活は男にとって快適で、手放すことなど考えられなかった。
だがそれも手に職があるうちの話である。男は足を怪我したことで土木作業の職を失い、その後も雇ってくれそうな場所を回ったが、結局、帰郷を選ぶこととなった。
「褪野」――男の故郷はそう呼ばれていた。しかし昨今、それも事情が変わってきたのだという。「彩都」としての呼び名は男の耳にも届いている。若き領主が、領民と冒険者たちとともに開拓に励んだ結果、もはやフェイデンを「褪野」と呼ぶ者は少なくなっていた。
そんな場所に、故郷を捨てた自分がのこのこと戻る。父や祖母にどのように出迎えられるか――男の足取りが重くなるのも必然であろう。
と、街道を歩く男の後ろから、慌ただしい蹄の音が近づいてきた。なんだなんだと男が振り返ったところ、「申し訳ありません、通ります!」という言葉と共に馬が駆け抜けていった。
「うわっ」
男はその勢いにあおられて思わず街道脇にのけぞった。ちらりと見えた腕章を見るに、馬上の人物が中央からの使者であることは予想がついたが、なにやらただならぬ様子である。
「一体なんだっていうんだ……」
悪いことが起きないといいのだが、と男は再び歩き出す。そしてまた、家族にどう挨拶すべきかと考え始めた。
しかし男の家族たちは、フェイデンはそれどころではなかったのである――。
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「うーん……」
生家に戻ったアリステアは悩んでいた。婿入り先のフェイデンでアリステアが進めていた話について、実父であるエディン侯と意見が対立しているのである。
「褪野」と呼ばれていた頃に比べれば、フェイデン子爵領の名声はかなり高まりつつある。それはもちろん、子爵領としての域を出ないものではあるにしろ――そうして目立つようになれば、そこかしこで問題が生じる。
フェイデン領の発展を認めないもの、利益を過剰に分割しようとするもの――それらが悪意のあるものばかりではないのは、政治には均衡が必要であるということを示している。
そして父エディン侯はそれを危惧しているのだ。均衡を取ることが「政治」である以上、民の生活にも多かれ少なかれ影響が出る。それを常に意識せよとの言葉を、アリステアは反芻した。
父エディン侯との意見対立の発端は、アリステアがフェイデンに騎士団を創設する案を出したことにある。
私兵を持つ貴族は少なくない。貴族派であれば尚更だろう。ノーキスはこれまでこそ派閥を意識する余裕もなかったが、今後についてはそれも加味して動かねばならない。
その上でアリステアが騎士団を欲する理由は、魔獣やクリーパー、賊などの脅威から、領民と領主を守るためだ。
「弟よ、お前の方にこそ守りが必要だと私は思うのだが」
応接室にて茶を飲みながらくつろぐ姉の言葉を無視して、アリステアは書類を繰った。その仕草は繊細にして儚げであり、令嬢と見紛うほどである――だが男だ。
「ともかくそういうわけで、姉様に協力して欲しいんです」
「しかしだな、父上のご懸念も理解できようが?」
アリステアの姉アジェルは武人であり、エディン侯に仕える騎士たちを統括する立場にある。ゆえにアジェルに腕ききを見立ててもらいたかったのだが、アジェルは悩ましそうに眉根を寄せ、手甲を鳴らして顎をさすった。
「これまで、フェイデンは大仰な軍隊を持たずにやってきた。それが急に騎士団を擁するなどということになれば、周囲をいたずらに刺激し、いらぬ対立をうむやも知れぬ……父上はそのようにお考えではないのか?」
「規模は最小限で構いません。その上で支度金として扱えば……なんとかなりませんか?」
嫁入り道具ならぬ婿入り道具である。あくまで表向きは形式的なものだ――そして侯爵家がついているということであれば、わざわざ波風を立てようと思う者は少ないだろう。
だがそれに、エディン侯やアジェルは一種の危うさを感じている。
「弟よ、お前の望みを叶えることは吝かでないが……うまくことが進めば良いがな」
アジェルは父に似ず、政治は不得手だ。婚約者のために努力している弟に、姉として的確な助言を与えられるほどでもない。アジェルは一抹の不安を抱えつつも、ぬるくなった茶を飲み干した。
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研究に没頭し数日ぶりに自室を出たヴィラールは、湯浴みの帰りにその慌ただしい声を聞きつけた。領主館の玄関ホールのほうからだと判断したヴィラールはそちらに足を向け、久しぶりに見た顔に目を丸くする。
「レヴィルさ……んん……??」
喜びも束の間、レヴィルと、彼に対応しているノーキスを含む面々の深刻そうな表情に、ヴィラールは声を萎ませる。
「なにかあったんですか?」
レヴィルは「任期満了」ということでノーキスの政務補佐の任を解かれ、春から中央勤めに戻っていたはずだ。レヴィルの苦労を知る者たちにより、送別会はそこそこ盛大なものとなったし、記憶に新しい。
その彼が、馬を限界まで飛ばしてやって来たらしいことを聞き、ヴィラールはなにやらただごとではないと察知した。
「アリステアが、帰路でトラブルに巻き込まれたようですわ」
ノーキスの表情はやや暗い。その報せはおそらく、たった今レヴィルからもたらされたものなのだろう。揺れる視線には動揺が見て取れる。
「エディンの騎士を何人か連れて帰ると言っていたから、大丈夫だと……でも……」
ノーキスは途中で言葉を萎ませる。些事なのであれば、レヴィルがわざわざ飛んで帰ってくる必要などないのだ。
中央への復帰後も褪野周辺の報告を受けていたというレヴィルは、この事態を避けるために動いていたらしいのだが、一足遅かったと唇を噛む。
「アリステア様を亡き者にしようという者たちが、魔獣をけしかけたようです。……空いた席に収まろうという魂胆のようですね」
「た、大変じゃないですか……! すぐに助けに行かないと!」
ヴィラールはノーキスを見た。ノーキスは深呼吸をひとつすると、顔を上げる。
「ああしていればこうしていればと考えている場合ではありませんわね……冒険者に声をかけるわ。馬を用意して!」
解説
マスターより
リプレイ
アジェルは斧槍を魔獣の体に叩きつけて沈黙させた後、珍しくも声を荒げる。整った顔に滴る血を拭いもせず、次なる獲物を見定めた。
街道で魔獣やクリーパーに襲われることなど珍しくもない。だからこそ弟アリステアの帰郷に腕っこきを回したのだ。そこにアジェルが帯同したのはついでだったが、そのまま見送っていたらと思うと背筋が冷える。
魔獣の数は不自然なほど多く、その種類も、このあたりではまずお目にかかれないものが混ざっている。となれば導かれる答えはひとつであり、形勢を覆す活路もまたそこにしかない。
否。向こうからぐんぐんと近づいてくる人影を捉え、アジェルは飛びかかってきた狼魔獣を払いのけた。
「――アリステアさん、助けにきたよ!!」
誰何の前に飛び込んできた声。名前を呼ばれ、横転した馬車の中で縮こまっていたアリステアは顔を上げ、身を起こす。
「エルゼリオ・レイノーラ!」
アリステアの明るい声色に、アジェルは活路が拓かれたことを瞬時に理解した。
予想よりも早い援軍の到着とはいえ、数の有利は保てている――魔獣使いはすぐに冷静さを取り戻したが、魔獣使いが雇った賊はそうではなかった。
「お、おい! あいつが呼んだのか? いつの間に逃げ出したんだ?」
賊が指差す先には妖精姫の姿があった。
今回の依頼の標的であり、魔獣使いの認識では未だ馬車の中にいるはずなのだが、混乱した賊は『密かに馬車を抜け出し援軍を呼んで帰ってきた』と考えたらしい。
少し考えればそんなことは不可能だとわかるのだが、功を焦った賊たちは次々と飛び出していく。魔獣使いはそれを呆れ顔で見遣り、ふたたび戦場に視線を戻した。
● 形勢逆転
「やった! 釣れましたよー! 黒幕でしょうか?」
妖精姫に化けていたのは、エフィルミアだった。自身もまた「妖精のよう」と(誰かさんに)称されるだけあって、まったく違和感がない。ないのだが――。
「ええーいっ!」
その手に握られた槍が、襲いかかる賊を薙ぎ払った。それはもう豪快に。
「……」
続いて襲い掛からんとしていた賊たちは足をとめ、その間には沈黙が流れた。
「……大丈夫かい?」
シルヴィア・A・カペルが遠慮がちに声をかけると、エフィルミアはきゅるんと涙ながらに振り返る。
「ああっ、シルヴィ姉様! 乱暴な人たちが……アリステア怖いっ……!」
怪我を負ったのだと言わんばかりにその場にくずおれるエフィルミア。その周囲には返り討ちにあった賊たちが伸びていた。
「いやそれはお前が――ぶっ!?」
反論しようとした賊が、何かに追突されて地面に転がった。どうやら人――魔獣の攻撃によって吹き飛ばされたミゼリア・L・ステュクスは、無意識にも色香のある所作で起き上がる。
「……?」
「!? ……!?」
困惑しているのは下敷きにされている賊のほうだ。流れるような艶のある黒髪、すべすべ、たゆん――それらを認識した瞬間、賊の意識は途絶えた。空から急降下してきた雷禍鳥がミゼリアを狙って突撃してきた、それに巻き込まれたのだ。
ミゼリアは空中で体勢を立て直し、重さを感じさせない身のこなしで着地する。
「ギィッ!」
雷禍鳥が再び空へと舞い上がろうと翼を広げたその瞬間。
「ギッ、グェギギ!?」
その足元に放たれた矢を起点に、強力な重力場が発生した。雷禍鳥は声にならない声を上げ、地面に縫い付けられる。
その矢を放ったエリカ・プレトリウスは、すぐさま狙いを別の個体へ変えた。
「馬鹿なことを」
小さなつぶやきは冷たく、その視線は虚ろでありながらも標的を決して逃さない。そんなエリカの頭の中では、レヴィルの言葉が思い起こされていた。
アリステアを亡き者とし、空いた席に収まる――この襲撃を企てた者の魂胆はそうであろう、と。
「……馬鹿なことを」
狼の群れに向かって弓を引きながら、エリカは繰り返し嘯く。
誰かになりかわろうと安易に考える者がいる。そう思うたび、エリカの心はどんどん冷えていった。
エルゼリオは横転した馬車の床板を外し、閉じ込められていたアリステアを見つけると手を伸ばした。
「大丈夫?」
「は、はい……! 結構頑丈にできていますから……戦闘が終わるまではここにいた方が安全だと、姉様が」
エルゼリオは馬車の状態を素早く確認した。見立てに間違いはないが、これ以上の攻撃に耐えられるとは思えない。エルゼリオはそれを伝えつつ、アリステアを庇いながら外へ連れ出す。
「ちゃんと守るから、安心して」
少なくとも、エルゼリオのそばに留まっていれば安全だ。アリステアは頷き、戦場を見渡す。
「敵の狙いは、僕……ですよね」
「我々も同じ考えだよ」
シルヴィアはそう言いつつアリステアに駆け寄ると、外套を被せてその姿を隠した。その後ろからはアジェルがついてきている。
「何処かで魔獣使いが指示を出している可能性が高い……と考えます」
シルヴィアはアジェルを振り返りつつ、そう述べた。
「これだけの魔獣に的確に指示が出せるものなのか?」
アジェルは訝しげに戦場を俯瞰した。冒険者たちの加勢によって、魔獣の数は確実に減りつつある。数の利だけで押し切られる心配はしなくてよさそうだが……。
「それについてですが……」
エルゼリオは慎重に魔獣の動きを観察し、ある雷禍鳥と狼を指差した。
「魔獣使いがいるとして。実際に指示を出しているのは、あの二体のみでしょう」
多くの魔獣たちが本能に基づく野生らしい動きをしているのに対し、その二体だけが不自然だとエルゼリオは指摘する。
「つまり『司令塔』か。では、あれらを潰せばいいとして……」
アジェルはちらりと冒険者たちを見遣る。シルヴィアは一歩進み出ると、まだ空を舞う雷禍鳥らを指し示した。
「騎士の皆様に、共に雷禍鳥への攻撃をお願いしたいのです」
「心得た!」
アジェルはすぐさま騎士たちに号令をかける。幸い、5体の雷禍鳥のうち2体はすでにエリカの矢によって地面に縫い付けられている。
「さあ、私とエフィで……、……上手く演じて見せよう。頼んだよ」
「ま……任せて!」
シルヴィアはエルゼリオの返事を聞き届けると、軍刀をすらりと引き抜いた。それを指揮棒のように振るって周囲に支援魔法をかける。
先ほどふたりの歯切れが悪かったのは、アリステアに扮するエフィルミアが賊を全員しばき倒していたからだ。囮とは一体。
「もしかしたら、アリステアさんがとっても強いって噂になるかも……?」
エルゼリオはアジェルの勇猛果敢な戦いぶりを見ながら大真面目に考え込み、アリステアは慌てて首を横に振るのだった。
ローザリカ・L・ディオールは【天眼】や【超視覚】を駆使して戦況を見定めていた。
もちろんその技能は他の冒険者も活用して戦いに挑んでいるが、姿を見せない相手がいる以上、情報の伝達を発声にのみ頼って行うことは望ましくない。
そうして最終的には個々の判断が決め手となる中、ローザリカは観察を終えた。
(司令塔はそれぞれの群れに一体ずつ、雷禍鳥は騎士たちが相手にしてくれている……)
ローザリカはぱちりと扇を閉じる。ミゼリアが敵視を稼いで生まれた時間で、狼魔獣たちの動きは見切ることができたと言っていい。
「右からまとめて抜けてくる!」
ローザリカがそう叫ぶと、前方に陣取っていたミゼリアがいち早く反応した。
「……ここから先は、通しま、せん」
ミゼリアは武器を振りかぶり、地面に突き立てる。突進してきた狼魔獣たちは、ミゼリアの用意した魅縛の領域へと飛び込む形となった。狼魔獣たちは魔香に惹きつけられて動きを止め、数秒後には切り刻まれることとなるだろう。
が。
「上だ、気をつけろ!」
アジェルが叫ぶ。騎士の投擲した槍を避けた雷禍鳥はまっすぐにミゼリアへと向かっていった。
ミゼリアが直前まで敵視を奪っていたからか、あるいは別の理由か――雷禍鳥はミゼリアの華奢な体を掴み上げると、空高く飛び上がった。
「だめ……!」
エリカは反射的に矢をつがえるが、放てばミゼリアを巻き込むだろうと躊躇する。
が、当のミゼリアは慌てることもなくちらりと視線を送った。
「間に合う……かな!?」
その視線の先、短杖を振り上げたのはエルゼリオだった。瞬時に練り上げられたエーテルは流れ星の如くまっすぐに飛び、ミゼリアごと雷禍鳥の体を穿った。
「冒険者さんっ!」
アリステアは慌てるが、エルゼリオはそれを制する。
「大丈夫、魔獣にしか当たっていないから」
エルゼリオの言葉通り、撃ち落とされた雷禍鳥を下にして着地したミゼリアはまるで無傷だった。エルゼリオの放った魔法の精度は高く、ミゼリアもそれを理解していたのだ。
「よかった……」
ほっと胸を撫で下ろしたのはエリカだけではない。ローザリカもまた、この手の魔法は見慣れているとはいえども肝を冷やした。気を取り直し、ローザリカもまた追撃を行うべく扇を持った手を掲げる。
――と。
「なるほど。手練の冒険者が6人ともなれば苦戦もするか」
低い囁きとともに、背後からローザリカの細腕を取った影があった。
「いつの間に……っ」
「そこの女を掴み上げている間に」
ローザリカは唇を噛んで男を睨め上げる。フードを目深に被った男はそのままローザリカを強く引き寄せると、喉元にナイフをあてがった。
「エディン公子アリステアを渡せ」
ローザリカの耳元で囁いた時とは裏腹に、男の声はよく通った。魔獣たちは攻撃を止め、冒険者たちはそれらと対峙しつつも目配せし合う。
「この魔獣たちを操っているのは君か」
「余計な問答をするつもりはない」
シルヴィアが眉根を寄せて問いかけるも、男はそれをすげなく切り捨てた。
「はいっ……アリステア、行きます!」
代わりにエフィルミアが進み出たが、男はそれも一笑に付す。
「ハッ」
「鼻で笑われた!? 私今鼻で笑われましたか!?」
「武器を捨てろ」
男の指示に従い、冒険者や騎士たちが苦々しく武装を解く中、憤慨するエフィルミアの影に隠れ、シルヴィアは後ろ手に武器を引き抜く。この距離ならば射程内である。
「……フン。僕も舐められたものだ」
しかし、人質に取られたローザリカは嫣然と溢す。
「……?」
男はローザリカの態度を不審に思い、その黄金色の瞳を見下ろした。ローザリカは不敵に、しかし淑女然とした微笑みを浮かべて、
「僕をそこらのか弱いお嬢様方と――」
片脚を振り上げ――ようとして少し加減した。
「一緒にしないで、貰いたい!!」
そして抗議の声と共に、ありったけのエーテルと怒りを込めた鋭撃を男の脛に叩き込む。
「~~~~~っっ!?!?!?」
男はあまりの衝撃と痛みに悶絶し、ローザリカから手を離してその場に倒れ込んだ。
知っての通り、こと足技において彼女が加減するのは脚を振り上げる動作だけである。
「逃しません……!」
間髪入れず、エリカの放った矢が男の動きを封じる。それを皮切りに、残る魔獣も冒険者たちによって次々と討ち取られていくのだった。
● その結末にあるもの
シルヴィアは治癒魔法をかけたローザリカの首筋を軽く撫でた。
「痛くないかな?」
「ああ……」
男に抵抗した際、ナイフがローザリカの首筋を掠めたのだ。ことによっては命の危険もあるだけに、シルヴィアはほっと胸を撫で下ろす。
「よかった。傷痕もなく綺麗になっているけれど……肝が冷えたよ」
「君の婚約者に合わせる顔がなくなる」と呟いて、シルヴィアは縄で縛り上げられた賊たちを見下ろした。
「それはそれとして、これは大収穫だね。雇い主を聞き出せる」
「お、お、俺たちは何も知らないっ雇い主はこいつだ」
薄汚れた賊たちは皆一様にそのように訴え、魔獣使いを顎で指し示した。
「と、言っているけれど……アリステアさん、見覚えはある?」
エルゼリオは背後に庇ったアリステアを振り返る。「失礼な輩のご尊顔を見てやりましょう!」とエフィルミアが男のフードを剥いだが、アリステアはその顔に覚えはないと首を振った。
しかし意外にも、魔獣使いの男はすぐに情報を吐いた。
「そいつらは確かに私が雇ったが、私も依頼を引き受けただけだ」
依頼主である貴族、所領、いくらで引き受けたか――あまりにもべらべらと喋るので、シルヴィアは一旦止めさせてアリステアを見た。
「彼の言葉がどこまで本当だと思う?」
「……挙がった貴族や関係者とは、あまり折り合いがよくありません。なので真実だとしても、ことを公にはしにくい、ですね」
アリステアは考え込む。どうにも難しい事情があるようだ。
「ではこの魔獣使いは引き続き……そうだな、我が領でもてなそう」
アジェルは魔獣使いの首根っこを引っ掴むと、馬の荷台に雑に乗せた。そのままアジェルのみでエディン領へ引き返すという。
冒険者は騎士たちと共にアリステアを護衛し、帰路につく。
「あの、皆さん、とってもかっこよかったです!」
その道すがら、アリステアは未だ興奮冷めやらぬといった様子だった。特にエルゼリオの瞬時の判断、ミゼリアの堅牢さに興味があるようだった。
「狙った敵だけ撃つ魔法があるなんて……貴女も、あれだけ怪我を負って平気な顔で……い、痛かったでしょう?」
「……痛くならない、わざがあって」
「そ、そうなんですね。でも、体を大事にして……」
アリステアはミゼリアの体に傷が残っていないか気になる様子でいたが、ふと考え込んだ後、隣を歩くエリカを見上げた。
「僕も、弓を習ったら貴女のように戦えるでしょうか」
「えっ……と」
エリカは慌てた。アリステアは非授恵者だ、同じようにとはいかない。だが冒険者たちの活躍を間近で見たアリステアは、その技をものにしたいと思い始めているようだった。
すべては、大切な人を守るため。
その決意を秘めた横顔を、ローザリカは後方から眺めていた。
力で対応できることも、できないこともある。しかしいずれにせよ、愛する人を誰かに譲ることなど出来はしない――それは、ローザリカにとっても決して他人事ではなかった。
姑息な手段に訴えかけてくる相手を踏み越えてこそと考えれば、今回アリステアを守り切れたことには満足している。
「……だが、これは知られるとまずいな」
と、満足げな微笑みから一転、ローザリカはなんとも言えない表情で首筋を撫でるのだった。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:多い6 / 4〜8人
2023年07月03日 11時42分20秒 公開
相談掲示板
…ウォーリアの、ミゼリア…です。 お仕事に、出かけるのは…ひさしぶり…なのですが、がんばりますので…よろしく、おねがい…します。 とりあえず…敵の攻撃は、物理系な気がするので…物理防御に寄せた感じで、殺界と、殺界をぜんぶ使ったあとは…シーザーロアで、壁役を、させていただけたら…と。 攻撃は、あまり得意ではないので…耐えるだけ…に、なってしまうかも…ですが。 なるべく、お役に立てるように…できることを、がんばります…ね。 何か、こうしたほうが良い…とか、あれば、お申しつけ…ください。
ヒーラーのローザリカ、よろしく頼もう。 救出対象を守りながら、数の多い敵や空から狙ってくる敵を討つ必要がある…… なかなかに厄介な状況ではあるよね。 そんな中でミゼリア君が壁役をしてくれるのはありがたいし心強いよ。 上空から仕掛けてきて攻撃後も移動する雷禍鳥が厄介に思えてならないな。 狙う工夫も必要そうだし、上が開いているから光縛封じゃあ効果的な防御にならない。 どうしたものか…… 自身の行動は決まっていないが、ひとつ試してみたいのは祈雷での攻撃かな。 うまくいけば地上と上空どちらの敵も巻込めるかもしれないと思ってね。 それ以外は皆に合わせて動こう。前に出ても後方支援でもどちらでも構わないから。
ヒーラーのエルゼリオ・レイノーラです、どうぞヨロシクね! >エネミー 空から攻撃を仕掛けてくる上、攻撃後に再移動する雷禍鳥×5が厄介そうだよね。 とりあえず上空攻撃用に魔弾、範囲攻撃用にメテオライトは持って行く予定だよ。 >救出対象 念の為、アリステアさんのダメージを肩代わりできるようにスケープセイントも持って行く事にするね。
シルヴィアだ。今回はよろしくね。 私達が雷禍鳥に掴まれて落下してもそこまで深い傷にはならないだろうけど、非授恵者のアリステアと騎士が掴まれた場合は危ないね……数が多い狼魔獣の相手をしている隙を突いて、となると厄介だ。救出する為に手数を割いて行くうちに次第に状況が悪化する可能性も有る。 ミゼリアの殺界とシーザーロアも、エルゼリオのスケープセイントも有難い。ローザリカの祈雷も上空と地上の敵を一網打尽に出来そうで妙案だと思う。 出来れば殺界の効果中に雷禍鳥の数を減らしたいところ。勿論狼魔獣も範囲攻撃を重ねて早めに数を減らしたいな。 >騎士12人 序盤、弓や射撃攻撃で雷禍鳥の集中砲火に参加して貰いたいなと考えている。特に授恵者の騎士なら抵抗値の関係で鳴き声で怯まない可能性もあるしね。 >個人行動予定 騎士12人を統括するのはアジェルだから、彼女に雷禍鳥の集中砲火を打診したい。敵の数が多いし連携して戦った方が良さそうだ。 戦闘ではまず最初に皆にウェイブ・オブ・インフィニティロアを付与するね。最初は雷禍鳥の数を減らすよう動くよ。 スキルは魔矢とメテオライトと、雷禍鳥の鳴き声はBSかもしれないから解呪を持って行くつもり。もう一つの特性スキルについてはハイパーヒーリングオーラかな。同じヒーラーのローザリカとエルゼリオと分担していけたらと思うし、今後の相談次第で変更する予定だよ。
出発も近い中ですがお邪魔いたします。 シューター、エリカ・プレトリウスです。 対雷禍鳥で炸光矢2を放つことをメインに、狼に対してもあまり固まる様でしたら貫通衝撃射でもお見舞いしようかと。 また、グラヴィティボルトを持ち込みますので狼と雷禍鳥、行動阻害をかけたい方についてご指示頂けましたら従います。 一応天眼は持って参りますが…指揮には向いておりませんのでお役に立てるかどうか。 咄嗟で使える様にラピッドショットとヒールも備えておきます。 あまり防御に自信がないのでミゼリア様にはかなり頼ることになりそうです。申し訳ありませんがよろしくお願い申し上げます。
エリカ君の範囲攻撃と行動阻害もありがたい。 行動阻害については、雷禍鳥へかけて貰うのが助かるように感じたがどうだろう? シルヴィア君が騎士たちに雷禍鳥への集中砲火をおねがいしてくれるみたいだし 行動阻害による回避低下で非授恵者でも攻撃が当てやすくなればより戦いやすそうだ。 今のところ前衛が少なそうに感じるので、僕も前で戦うことにしようかな。 ヒーラー同士でのスキル分担についても勿論だ。 ひと枠は祈雷、もうひとつはサイドヒールにしておこうかな。 あとは近接攻撃手段が主になりそうだ。狼用に範囲攻撃も持つ予定。
シーフのエフィルミアです!よろしくお願いしますっ。 遅れての参加ですが、フェイデンの未来の為にも、ノーキスさんとアリステアさんの為にも頑張ります! アリステアさんを守ってくれるミゼリアさんがいて エルゼリオさん、ローザリカさん、シルヴィアさんと熟練ヒーラーさんが3人もいて 遠距離攻撃が得意なエリカさんもいる!となると 私は守りは任せて、突っ込んじゃって良さそうですねっ。 皆さんが雷禍鳥への攻撃に集中出来る様に、狼に突撃しようと思います! 疾風足で突っ込んで薙ぎ払いと闘気槌でぶっ飛ばしますっ。 あと効果があるかは分からないですけど、フェイクカバーでアリステアさんになっちゃおうかと! 敵が鳥と狼ですし、獣程度の知能しかないなら混乱してくれるかもしれませんしっ。
エリカが天眼を持って行ってくれるなら、私は戦術眼を持って行こう。お互いのスキルで得た情報を共有していけたらと思うよ。 私のもう一つの汎用スキルは交渉かな……OPを見る限りアジェル嬢なら連携を承諾してくれると思うけれど念の為。 行動阻害についてはローザリカと同じ意見だ。雷禍鳥に使って貰えたら助かるよ。騎士団には、BSに罹患した雷禍鳥や、あと少しで撃破出来そうな雷禍鳥から優先的に集中攻撃して貰えるように頼むつもりだ。 ローザリカ、ヒーラーのスキルの分担についてもOKしてくれてありがとう。祈雷もサイドヒールも頼りにしているね。 エフィのフェイクカバーは有効かもしれないね……! 敵の本命はアリステアだ。魔獣が人間を匂いで判別しているなら難しいかもしれないけれど、付近に魔獣使いが隠れていて指示を出しているのであれば混乱すると思う。試してみるのは有りだと思うよ。 (誤字があったから書き直したよ。申し訳ない)
>行動阻害の掛け先 かしこまりました。では雷禍鳥に仕掛けてみましょう。攻撃後も尚移動してくるというお話でしたから、開幕で炸光矢を向けても影響の薄かったものを優先して行動阻害を狙ってみます。 1回きりでなく4回使えるのでシルヴィア様の戦術眼とも合わせて有効に使える様取り組ませて頂きます。 交渉も大変良いかと。出来そうなことをより確実にというのは素晴らしい手だと思います。 エフィルミア様のフェイクカバーも面白そうです。生き物の多くはかなり視覚情報に頼っているものですから。 …明朝出発ですね。満員とはならなさそうですが力の全てを尽くしましょう。アリステア様方も含めて全員無事に帰りましょうね。
前回の発言から間が空いてゴメンね! ヒーラー同士でのスキル分担についても了解。 基本的にはスケープセイントの射程内に陣取って、アリステアさんを護衛する形になるよ。 >スキル 特性:スケープセイント、ハイパーヒーリングオーラ 汎用:天眼、戦術眼 アクション:輝刃4、メテオライト4、エーテルブロー4、魔弾3 こんな感じでセットして行くよ!