【学行】少年と家族はぶつかり合う
白葉うづき
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シナリオID:2821
オープニング
孤児が多く身を寄せている、グナーデ教会。それはとある日の朝食終わりだった。
「もう、ちゃんと片付けをしてから行くのよ。ティトはまた忘れてるじゃない」
食器を片付けていたエルフの少女、フィオが眉を潜めた。お手製の枝に似た木剣を握り、今にも駆けだしそうだったゴブリンの少年、ティトが慌てて剣を置いて戻ってくる。
「ア! ゴメん、すぐヤル!」
「ティトは慌てん坊さんですね」
「ぼくおわった!」
「偉いよ、ありがとうスール」
ヒューマンの少年、ピオが肩を竦め、その傍らでハーフリングの少年、スールがハーフビーストの少年、アルド・シャウアーに頭を撫でられていた。スールは嬉しそうに頭を擦り寄せる。
「いーい、ティト、言ったことはちゃんと守れる方が強くなれるんだから。わたしは破ったことが無いから、ティトより強いの」
リザードマンの少女、ハウラが誇らしげに言う。
「ハウラはとっても強いものね」
「ええ! だからティトの夢もわたしが先に叶えてしまいそう」
「お互い負けないように頑張ろうね、ティト」
いつもの朝の光景、いつものやり取りに、メルチス・アダラードも微笑ましく見守っていた。
「でも、イナくなるんダ」
けれど。
「アルド、イナくなっちゃうンダろ。そんなの、約束ヤブりだ」
ぽつりと零した言葉に、静寂が訪れた。
「昔、アルドはイナくならないッテ約束してくれタ。オレたちをオイていっちゃうンダ。オレがミンナを守るッテ決めたノニ、アルドだけ!」
「ティト、僕は」
「アルドなんて嫌イダ!!!!」
「待って、ティト!」
「ぼくも」
追いかけようとしたアルドを引きとめるよう、スールが裾を引っ張る。
「ぼくも、いやだな。アルドがここからいなくなるの。……もうね。すきなひととあえなくなるの、いや」
「スール! 前にお話したじゃない、アルドはただお勉強しにいくの。会えなくなるわけではないの」
ハウラがそう言ってスールの前に膝を折った。彼の頭を撫でながら、アルドを見上げる。
「わたしは応援しているわ」
「ハウラ……」
嬉しい言葉に表情が緩むが、それもすぐ戸惑いに変わった。
「でも、冒険者になるのは反対。アルドが誰かを傷つけられるなんて思わないわ。わたしを相手にした時だって、手加減しか出来なかったじゃない」
「それは……」
「――皆でお話しましょうか」
静かな言葉が響く。
「今日の夜、もう一度皆で話しましょう。それまでに皆、思うところも、伝えたいことも、全部残さず言いましょう。いいですか、出来るだけ言えない気持ちがないように、ですよ」
そう言って、神父は柔らかく笑った。
●迷う
「大変なことになりましたね、アルド兄」
「うん……いや、僕がいけないんだ。わかるように話を出来ていなかったから」
教会の一室で、今日もアルドは勉強をしていた。冒険者たちが教えてくれたことを元に、勉強も鍛錬も毎日欠かさずに行っている。文学を教えてほしい、とピオに言ったあの熱量のまま今まで続けていることが、どれだけ本気なのか痛いほど伝わってきた。
――だからこそ。
「ごめん、アルド兄。今日は僕の調子が良くないようです」
「そうなんだ……? 大丈夫? 何か持ってこようか、寝ていなくて平気?」
「大丈夫」
ずっと心配そうなアルドを見送り、それがまたちくちく胸をつついた。
「……心配でたまらないのは、こっちの方なんです」
そうして顔を歪めては、いつものように瞳へ涙を溜めた。
「アルド、平気?」
「フィオ。僕よりも三人は」
「神父が慰めているけど、すごく頑な。夜のお話が出来るかも少し不安ね」
「なら、僕が行かないと」
「どう説得するの? 何も考えないまま行ったって、あの子たちの強い想いが変な方向に行っちゃうかもしれない。ずっとすれ違ったままになっちゃうかもしれない。そんなの私が嫌」
「フィオ……」
「だからアルドも考えて。私と、多分ピオは平気。だからあの三人のことを」
「……フィオ、本当に?」
じっと見つめてくるアルドに、フィオは柔らかく笑って見せた。
「本当。……さあ、考えて、アルド」
「……わかった。そうだ、フィオ」
「なあに?」
「僕のノートを知らない? 昨日からどこかに行ってしまっていて」
「さあ……ごめんなさい、力になれなくて」
「わかった、ありがとう」
去っていくアルドを見送り、フィオは部屋に戻る。それから引き出しを開けてぽつりと零した。
「大丈夫じゃない、……なんて言えないよ。私はお姉さんなんだから、応援しなきゃ。……こんなことしても、仕方がないんだから」
応援したい気持ちと、言葉にならない気持ちがない交ぜになっている。溜め息を吐きながら、ノートを手に取った。
「アルドは、自分サエよかったらイイんだ」
ティトは教会の裏手で木剣をぎゅっと握り、
「はなれるの、いやだな」
スールは自室で刺繍した布を悲しそうに見つめて、
「領主様に相談すればよかったの。優しいアルドが戦う必要、ないわ」
ハウラは歯がゆい想いを抱えながら洗濯桶に水を入れた。
「あの子たちに声を掛けてあげてください。何かを一緒にするでも、お話をするでも」
訪れた冒険者たちに、メルチスは伝える。一番上の子が新しい道を進もうと頑張っている。でも子どもたちはそれを受け止めきれないでいる。そうしてメルチスにも、もしかしたら子どもたち自身もわかっていない想いがある。
「本当は私たちだけで解決すべきかもしれません。けれど、家族だからこそ上手くお話が出来ないこともあると思っています。私も引き続き声を掛けます。どうぞ、力を貸してください」
解説
マスターより
リプレイ
「この間はありがとうね」
「げんきになった?」
「うん、この通り」
部屋の中にはテーブルと椅子、その下にカーペット、小さなサイズのベッドが四つ。イズル・M・ヴォルゴールは膝をついて視線を合わせる。
「あの頭ナデナデ、すごく嬉しかった。ありがとう。お返しして良い?」
「いいの?」
そわそわと寄せてくれた頭を幾度も撫でた。自己紹介をして、いつもしていること、好きなことを聞き、少しずつ距離を縮めていく。
「さっき、悲しい顔をしていたけど」
どうしたのと聞くと、また俯いてしまう。まだイズルには話せないのか、それとも自分の中でまとめられていないのかもしれない。ふと、テーブルの上に置いてある布地に目をやった。
「刺繍、綺麗だね」
「みんなのすきないろで、みんなのすきなもの、ぬったんだ」
「凄いね。皆のために作ったの?」
「……ううん」
そこから、ぽつぽつと話してくれる。
「いちばんうえのこが、でてっちゃうんだ。それで、ぼくたちをわすれないようにって」
「贈り物なんだ」
わかっているけど、悲しい気持ちが抑えられない。イズルはそう理解した。
「また会った時に言えばいいって思って言いたいこと言わないと、もう会えない事が多いかも」
「!!!」
「だから、言いたいことがあるなら正直に言おう」
大きな瞳を見開き、泣きそうになるスールを優しく撫でる。
「怒りたい時は怒って、謝る時は謝って、悲しい時は悲しんで、嬉しい時はありがとう。そうしたら、また会えるか分からなかった人に会えた。だから、これからも会える。きっとそうだって信じてる」
君はと聞かれて、スールは頷く。
「ぼくも、がんばらないと。アルド、こまっちゃうね」
彼の心が溶けたかは分からないが、先程よりしっかりした顔に見えた。
「オレのコト放っとけヨ!」
壁の裏から威嚇するティトに、ゲルダ・クラインは少し遠くから話しかける。
「ティト様の夢、お伺いしてもいいですか?」
「ユメ!? ナンデ!」
「知りたいんです、ティト様のこと」
狼狽えたようだが、そう言葉を掛けると口を開いてくれた。
「コノ院のミンナを守るンダ。カナシイ顔もみたくナイから」
「とっても素敵な夢ですね。けれど……例えば、『わたしが皆様をお護りするので強くならなくても大丈夫ですよ』って言われたら、どう思いますか?」
「イヤダ!」
「わかります。それはきっと、アルド様も同じなんです」
ゲルダは言葉を尽くして説明する。彼もきっと、自分が皆を守りたいと願っている。
「同じ夢を持つティト様に、アルド様の夢を応援してほしいと思います」
「ナラ」
顔を上げた少年は、泣いていた。
「ココにいれバいいノニ」
ここに居ては叶わない。そう告げるには彼の顔は悲しすぎたが、ゲルダは向き合う。
「ピオ君だったね」
「はい。貴方はジュスト・ヴェルジーさん、ですよね。学園の副生徒会長さん」
「おや、知られているとは嬉しいな」
探るように見つめる瞳は警戒心からだろう。なるほど、頭がいい。
「ピオ君も彼は心配だろう。例えば――依頼で傷付き傷付けること、学園で憂き目にあうこと」
瞳が揺れる。推測は当たりらしい。
「君が心配している通り、平坦な道ではないだろう。だが一人でもない」
「え……」
「俺が極力サポートするよ。他に仲間も出来るだろうしね」
「……アルド兄は、貴方たちに憧れています。だからどうか、お願いします」
「もちろん」
頷いた後、もうひとつ。
「ピオ君も学園を目指してみるのはどうだろう」
「ボクが? でも、何も特別な力は」
非授恵者の平民入学もできるよう改革が進んでいる。そう告げると、深く考え込んでいた。
「なるほど。ハウラ君は強いね」
「わかりますよ、ハウラさんの言っていること」
ヨル・スレイマンとセラフィナ・M・ベイリーは、洗濯の手伝いをしながらリザードマンの少女と話していた。少女は照れた後に口を尖らせる。
「だから、戦うにしても学園の後でもいいの」
「でも俺は、優しい人ほど戦い方を学んだ方がいいと思うかな」
「私も同じ意見です。優しい人だからこそ、強くなるべきだと」
虚を突かれたようなハウラに、セラフィナは言葉を重ねる。
「優しいだけの人はすぐ死にます。力がなくても大切な人を守ろうとするから」
「! いや!」
「あ……すみません、でもそうなんです。ハウラさんだってそうでしょう?」
力がないばかりに、守ろうとした時命を落としてしまう。そんな世界だ。
「いざという時、自分を守るために、大切な者を守るために強くならなきゃいけないんです」
セラフィナの話すことを怖がりながら、真っ直ぐ見るハウラは、やはり強いとヨルは思う。
「君が皆を守るために強くなるように、人は強いから戦うのではなく、戦う理由があるから強くなる。順番が逆なんだよ。だから、その時に弱いままでいるのが一番怖い」
「それは……」
「先ほど言ったことを、アルドさんに言ってみてもいいと思いますよ。ぶつかり合うのが家族なんでしょう」
「ゆっくりでいい。さあ、干してしまおう」
促すと、彼女は考えながらシャツを絞った。
「離してください!」
ばしばしと叩かれ、カイン・ステラは姫抱きにしていた少女を下ろす。真っ赤な顔で頬を膨らませてしまった。
「もう! 嫌いです!」
――買い物に出ようと誘い、断られた末の強硬手段。御立腹も仕方がない。
「話したいことがあるんだ」
「アルドのことですか」
さすがに鋭い。公園の一画で、フィオが振り返る。
「フィオ、今は神父も頼るいい子をお休みしていいよ」
「別に、いい子でいようとしてません」
「フィオはアルドがヘタレで突っ走りがちな根っこがあっても、学びたい動機がお前達にある為に止められないと知っているな?」
「はい。だから、笑顔で見送るんです」
綺麗に笑う彼女に、カインは眉を潜める。
(心じゃ納得してねえくせに)
「寂しい時に寂しいって言うのは我が侭じゃない。言っていいこと。すぐに置いて行かれるわけでもない」
「!」
ああ、やはり。彼女は理解していた。
「きゃっ」
カインはマントを被せ、そのまま抱きしめた。
「フィオが自分の感情と無理に折り合おうとしたり、伴わなくて自分を責めてたり、泣かないで本音も言わないで頑張ろうとするのは、俺は凄く寂しいよ」
顔を見ないまま優しく、ただ伝わるように告げていく。暴れていたフィオは力を無くし、マントをぎゅっと握った。
「笑顔で見送りたいのに。私も、皆と同じなんです」
「失うのが怖い? そんなの、お前たちは持ってて当たり前だ」
「どうしたらいいのかな、カインさん……」
震える少女を抱きしめながら、しばらくカインは話を重ねた。
●皆と
コルネリウス・アーラは教会内を忙しなく移動していた。冒険者のことを、出来る限り家族としてお話しに。
(大切なひとが、明日には手の届く場所に居ないなんて、怖くて寂しいですよね)
ここはコルネリウスにとってもう一つの家族のいる場所だ。コルネリウスもよく知る怖さを出来る限り減らしたい。
「こんにちは。今日はお二人ですか?」
「コルネリウスダ!」
「お姉様!」
「ふふ、元気そうで何よりです。頑張っていますね」
手合わせをと聞けば、笑顔が返ってきた。
「コルネリウスかっちかちダゾ……」
「どうしたらそんなに強くなれるのかしら!」
「頑張りましたから!」
ティトとハウラからすっかり尊敬の目を向けられたコルネリウスは、ゆっくり話し出した。
「アルドくんとのこと、聞きました。冒険者も戦ったり、誰かを傷付けることもたくさんあります」
表情を変える二人に、でもと続ける。
「『力を持つひとはその力を正しく使わなくてはならない。自分や大切なひと、大切なものを護るため、無暗に誰かを傷つけないために。それは力ある者の責務だ』……これは私のお兄ちゃんの言葉ですが」
「タダシク、カ?」
「無暗に……」
「アルドくんも道を間違えないよう、その方法を学んでいくんですよ」
噛みしめるように呟く二人は、もう平気そうに見えた。次の子へ話に行こうと教会に戻ると、アルドとばったり出会う。
「聞いてました?」
「うん……ありがとう、お姉さん」
二人が気になって様子を見ていたらしい。コルネリウスが自分の言葉を告げると、しっかり頷いた。
「素敵な庭だね。手入れもちゃんとされてる」
「皆でお世話してるんです」
「フィオが一番詳しいし、思い入れがあるんですよ」
教会脇に備えられた花壇はある程度整えられており、ローザリカ・L・ディオールはフィオとピオに微笑む。案内をしてもらいながら、やがて本題を口にした。
「想いを胸の内に秘めたまま、ずっと自分の中に隠して、見ないふりをして……仕舞いこんだ想いや刺さった棘は自分だけを傷付けるんじゃないんだ」
不思議そうなピオに、言葉を続ける。
「――それはね、相手も自分のことを大事に思ってくれているから」
大切に想う人が苦しかったり、それを強がる姿も伝わり、痛みが広がる。相手が自分を想ってくれているからこそ。そこまで話せば、フィオもぎゅっと胸に手を当てる。
「無理に聞きだすこともしないから、本当に大事な言葉は口に出して伝えないといけないんだ。とっても難しいことだけれど」
言いながら看板前に屈み、手を添えた。
「カンパニュラの花言葉のひとつに、『思いを告げる』というのもある」
応援したい、しっかりしないといけない、それでも感じる寂しさ。その大切な気持ちを彼に伝えてほしい。
一歩、ピオが踏み出した。
「貴方の言う通りです。せめてボクらは支えないといけないって、思っていました。でも……さっきジュストさんとも話してわかりました。アルド兄は、僕らだけじゃないんですよね」
「アルドが笑ってここを出て行けるようにしたかったんです。でも、ふふ。……そうですね。こんな単純なこと……アルドも、わかってますよね」
「大丈夫、ここには誰も居ないし、言わないよ」
誰にも見えないよう二人を抱きしめる。静かな嗚咽と、身体の震えが伝わってきた。
「こんにちは、アルドさん。試験勉強の進みは順調ですか?」
「セラフィナお姉さん!」
少年は焦燥しているように見えた。それは勉強のためだけではないだろう。
「大切な家族にも、想いを伝えてみてはどうでしょうか」
「その、ええと……駄目だったみたい」
同じ話をしていたけれど、と考え込むアルドをセラフィナは見つめる。
「家族を思って諦めるなら、それはきっと『家族のせいで』になってしまいますよ」
納得できない困難はやがて苦しみを生み、その責任を誰かに押し付けたくなる。そんな後悔と憎しみにこの子が苛まれるのは、見たくない。
伝えると、少年は思ったよりもしっかり見返してくれた。
「諦めない。それが、皆のためになるって信じてる、から」
「なら、ぶつかりましょう。真っ直ぐ、真剣に。大丈夫、私たち皆ついてます。一人じゃないですよ」
「……えへへ。ありがとう」
少年とセラフィナは、少し話を続ける。
「家族は難しいですね? 私はわかりませんが」
「お姉さんもなの? なら……あの。またお話、したいな」
アルドは何か考えるように、セラフィナを見つめた。
「――さて。こうしていると前の授業を思い出すね」
あの時と同じように、アルドとジュストが向かい合う。ヨルとゲルダも同席していた。
「心の、そして君が皆に何を伝えるか整理をしようか」
改めて入学を目指した切欠を問うてみる。
「もしかして、世界を知り力の使い方を学びたいとする理由は、孤児院の皆も関係あるんじゃないかな」
「! お兄さん、何でもわかるね」
「なら、それをアルド君の言葉で伝えよう」
「難しければ、いくらでも俺たちが話し相手になるからね。皆、心配していたり不安に思っているだけなんだ」
ヨルも単独で子どもたち一人ひとりを回り、冒険者と情報共有をしながら実情を把握していた。すべてはすれ違いを無くしたいという想い。そして子どもたちは皆、アルドを想うからこそ叫び、隠していた。
「きっと、皆の心配や不安は未知からくるものなんだ」
冒険者、学園、この世界。
「そしてアルドくんの成長」
「僕の……?」
「そう。どうして今の君に至ったのか説明すれば、今まで一緒に居たアルド君と今の君が延長線上にあること、巣立っても大丈夫なんだと安心させられるのではないだろうか」
「心地よかったからこそ、変化に戸惑っている。ただそれだけなんだ」
二人の言葉はこの状況を冷静に分析していた。それは少年にも伝わる。
「私もお手伝いをします。アルド様自身理解されているように、冒険者ならば誰かを傷付けることも、自分が躊躇うことで他の誰かが傷付いてしまうこともあります」
少年が誰かを傷付けられないのは、それよりも自分が傷付くことを選んできたのだろう。だから、ゲルダに言えることは、ひとつだけ。
「どうか、目を逸らさないでください」
これから先の選択、そして傷付けなければいけない時のことを、考え続ける。そうして自分で出した答えだからこそ。
「覚悟が持てるのだと思います」
「……そっか。……うん。わかった、気がする」
ゲルダの言葉は、深く少年に伝わったようだ。
●お話しよう
「皆、話す準備は出来たか?」
一人ずつに声を掛け、カインは話し合いの場に送り出す。納得できないなら良い喧嘩を。きっと未経験だ。
「アルド、やれるな? お前の大事なものにお前の夢を認めてもらってこい」
「うん」
「ココにいてモ、できナイんダナ」
「自分を守るためにも、強くなるのね」
ティト、ハウラ。続けてピオも口を開く。
「皆さんが付いているなら、少し安心しました」
少し迷って、フィオがアルドを見つめた。
「アルドも、隠されて、痛かった?」
「……うん。言ってくれると嬉しい。でも、その前に僕から、もう一度伝えるよ」
どうして学園に行こうとしているか、その気持ち。
「僕らみたいな子が、自由に前を向いて進めるようにしたい。冒険者になったら、そんな依頼をたくさん受けたい。受けられるようになりたい。そして、皆の道を切り開く手伝いだって、したい。そのために僕は、色んなことを学びに行くよ」
スールがまた、裾を引っ張った。
「アルド。むこうにいっても、ぼくらをわすれないでくれる?」
「忘れる訳ない。大事な、僕の家族のことだ」
そう言うと、スールは満足そうに笑った。
「形あるものが、皆の繋がりを支えてくれますよ」
神父とコルネリウスはリボンを配る。宝物のお揃いを嬉しそうに受け取り、それぞれ着けた。
「手紙を書いてのやり取りも良いものだよ。それに、君たちもアルド君に会いに行こう」
「その時は手伝うから」
ヨルとイズルが提案すれば、嬉しそうな声が返る。大きな変化を迎えようとしている心地よい空間は、きっと形を変えても温かい場所であり続けようとするだろう。子どもたちはそんな決意に溢れているよう、ゲルダには見えた。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜8人
2023年03月02日 13時05分00秒 公開
相談掲示板
カイン・ステラ、よろしくな。 …(起こるべくして起こったというか) フィオがちょっと心配なんでフィオには確実に声を掛ける。 アルドや他の皆にも声はかけると思うが、一番根が深そうなんで。
コルネリウスです、よろしくお願いします。 皆が素直な気持ちを隠さず伝え合あって、離れていても安心出来るようにしたいですね。 私はティトくんとハウラさんを中心に冒険者についてお話出来たら良いなと思っています。
ジュストだ、今回もよろしく。 年齢やこれまでの境遇を考えるとすんなり受け入れるのは難しい話だけれど……それでも全員後悔やしこりの残らないようにしたいね。 俺はアルド君が皆とお話できるよう心の整理のお手伝いをしようかな。 あとはピオ君も気になるので、可能ならこの二人と話を出来たらと考えているよ。
イズル・M・ヴォルゴールです。よろしく。 スール君への声掛けを考えて参加しました。ほぼ彼と一緒にいると思う。あとは挨拶程度も怪しいかな。 彼の気持ちを汲んであげられたらと思ってます。
ゲルダです。よろしくお願いしますね。 とっても難しい問題だと思いますが、それぞれが良い感じの落としどころを見つけられたらいいな、と思います。 ティト様と、……あとは、アルド様ともお話をできたらな、と思います。
ヨル・スレイマン。宜しくね。 せめて想いを胸の内に留めてしまわないように、話しができるように整えて行けたらいいと思うよ。 せめてすれ違うことがないようにできたらと。 俺はアルド君と、ハウラ君に話を聞けたらと思っている。
ローザリカ、よろしく頼もう。 行動に迷っていたんだが……フィオ君と、できればピオ君もかな。 胸の内に秘めてしまいそうな二人と話が出来たらと思う。 伝えられないまま、というのはきっと辛くなってしまう。
セラフィナです。よろしくお願いします。 私はアルドさんとハウラさんに話をしに行こうと思います。 皆が納得出来る道を探すお手伝いが出来れば嬉しいです。