【再起】今年の実りを目指して
馬車猪
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シナリオID:2754
オープニング
「あぁ」
捨て石になる覚悟で復興事業の警備に志願した剣士達が、復興中の畑を背にして会話している。
凶悪な賊や魔獣やクリーパーと戦う事も覚悟していたのに、ここに来てから戦ったのは1度だけだ。
その獣は多数の矢傷を負って狂暴化していた。
同時に、血を流しすぎてあらゆる意味で鈍くなっていた。
結局剣士達がしたのは村人を避難させ万が一にも怪我しないよう慎重に止めを刺しただけだ。
「侯爵様の婚約者、今何をいているんだろうな」
「代官といってももとは王国の貴族だろう。後方でぬくぬくしてるんじゃないか?」
元シュタールシュヴェーアト侯爵領に人と物を輸送する際に同門の剣士に大きな被害を出させた代官を、剣士達は全く信用していなかった。
●
少年少女が一生懸命に矢を放つ。
代官に雇われて1月の間必死に訓練をこなしてきたとはいえもとは一般人だ。
授恵者としての身体能力を扱いきれず、8人で射撃しても当たりそうになるのは半分程度でしかない。
(東、3歩)
「私の指差す方向を狙えっ」
指揮官は顔面が引きつりそうになっている。
代官が狙っている方向にいる。
代官のもとでの戦いしか経験していない部下達はそういうものだと納得しているが、指揮官は少しだけ年上なのでとんでもないことをしている自覚がある。
「てぇーっ」
矢が大きな弧を描く。
風に影響されて何本かは明後日の方向に向かい、今回は半数が直撃する進路になった。
落ちていく矢の間を桃色の髪がすりぬける。
矢を見てもいないのに凄まじい回避の冴えであり、指揮官は冷や汗を流し少年少女は常識の一部を歪ませることで戦場の恐怖に耐えることに成功する。
代官は矢が刺さった猪を観察する。
おそらく内蔵まで傷ついているので中身が零れているので食肉にしたくはない。
(攻撃続行。復唱はしないように)
悲鳴や足音でうるさい戦場でもテレパスは明瞭に届く。
(この調子で経験を積ませたいけど……)
テレパスにはのせない独り言である。
元侯爵領とそれ以外の土地まで担当する代官でも授恵者を雇うのは大変だ。
経験なしの冒険者よりずっと劣る8人の新規雇用に成功したのも奇跡に近い。
(雑念は駄目ね)
舌打ちを堪える。
逃げ出した猪を地面から突き出た枝が撫でる。
決して速くはないのに、圧倒的な重さと固さが普通の生き物でしかない魔獣を破裂させ血肉と骨の細切れに変える。
(代官様! それはっ)
(落ち着きなさい)
地面から這い出た岩じみた質感の幹が、根を蠢かせて移動し血に塗れた枝を代官へ伸ばす。
冒険者が操る恐るべき斬撃や一矢や術と比べれば、セニャにとっては止まっているも同然だ。
鼻歌交じりは無理だが余裕をもって敵とその周囲を観察し敵の増援がないことを確認した。
(攻撃続行。目標は幹)
矢は止まらない。
木とも岩ともつかぬのっぺりした表面にぶつかり先端が砕けた矢が地面に落ちる。
冒険者と比べれば弱いが高価な弓を使っているので新人離れした威力だ。
当たり前のように防がれるが着弾時の衝撃は消えずクリーパー生命を削っていく。
(いけそうね)
樹木にも岩にも見えるクリーパー相手に単身前衛をつとめる代官は、今回の勝利をどう利用するか計算中だった。
(あっ)
クリーパーの意識がセニャから離れて部下へ向かう。
いくら攻撃しても滅多に当たらないヒューマンの小娘より、気配は弱くても数は多いものを狙うことにしたようだ。
(撤退。合流は予定通りに)
「攻撃やめっ。矢を捨てて全員回れ右っ。2、1、走れぇっ」
テレパスを受信した指揮官が訓練と同じ大きさの声で命令する。
子供達はクリーパーの脅威を理解しないまま全力で駆ける。
美味しく温かく栄養豊富な食事を3食腹一杯食べ延々走るという訓練を1月続けて来た子供達は、何人か荷物を落とす程度の被害だけで撤退に成功した。
●
「理屈は分かりますが本当にやるとは」
カール・イスターツは連絡を聞いて眉間を揉んだ。
新人授恵者が中型クリーパーに挑むのは自殺同然の行動だ。
1人の高位授恵者がついていても同じこと。
全高5メートルのクリーパーは、多少の工夫も作戦も押し潰してしまえるほど強い。
「子供を無謀な戦いに巻き込むんでいるのを叱るべきなのでしょうが……」
代官は個人の特質で何とかしてしまっているので文句も言いづらい。
なお、この場に本人がいたら「好きで遭遇した訳でもないしきちんと撤退したでしょ」という内容の文句を上品に言ったはずだ。
「己の剣で戦うのがどれほど気楽か」
カールは新たな街から動けない。
代官が動かせる戦力を全て動かしているという理由もあるが、領民にとっての守護者が離れると士気どころか復興計画全体が崩壊しかねないからだ。
危険地帯に無理矢理に人と物を運び込み柵で囲ったのが新たな街だ。
複数の廃村に戻り畑の復旧に頑張る領民にとり、ここが最後の命綱なのだ。
「ゴッチ先生! 一緒に遠征に行きましょう!!」
領主としての教養を持たない弟子達が無邪気に勧めてくる。
守備戦力が足りなければ治安はもちろん外部から物資を運び込むことも難しくなることを理解していない。
ここに居続けるのが民のためと内心で自分自身に言い聞かせながら、ゴッチは攻めではなく守備に専念するよう弟子達に諭すのだった。
●
「帝国復興に関わる依頼です!」
出身が帝国らしい受付嬢が興奮している。
「侯爵領を丸々復興させる! 事業の一部っぽいです!!」
1度に復興できるほど狭くはない。侯爵領なのだ。
「えーとですね、復興に関係するなら何しても依頼成功扱いにはなるんですが」
見事な筆致の依頼書を何度も確認しながら説明を続ける。
「現地にいる普通の人がすっごく多くて、1人1人助けるよりまとめて大勢助けるやり方の方がいいんじゃないかな、って状況らしいです」
物資の量はあっても種類は少ないので、美味しい料理で炊き出しをできたなら非常に喜ばれる。
春に麦を植えるのを目指す野外での復旧作業は過酷で、医者や薬師は何人いても足りない。
歌や踊りや話術で勇気づけたり慰めたりするのも良い影響を与えるだろうし、燃料を有効に使える建物を建てたり鍛冶仕事をしてもいい。
「もちろん戦闘してくれる人も大歓迎みたいです。村や街を襲う魔獣は剣士さん達が撃退してるみたいなんですが、クリーパーも1体発見されたみたいで」
木の形をした岩のような質感のクリーパー。
数は1体のみでも全高5メートル近く中型の中でも最大級。
「幸い復興中の場所から遠いに場所にいます。今回放置しても致命的な展開にはならないとは思うんですけど」
放置すれば復興に悪い影響があるのは確実だ。
「復興のためになるなら何でもできる依頼です。参加を検討してみて下さい!」
受付嬢は、とても熱心に勧めていた。
解説
マスターより
リプレイ
「セニャ。我が領土の復興に全力を尽くしてくれるのは嬉しい。確かに、その為にはかなりの無茶をする必要があることは理解している」
アルベルト・V・シュタールシュヴェーアトは心痛を隠しきれない態度で、己の婚約者に切々と訴えかける。
「けど、下で働く者の気持ちをもう少し汲む必要があると思うんだ。下で働く者があってこそ復興が進むのだから」
体格の良いアルベルトと比べれば小柄で、しかし存在感は同レベルの少女は真正面からアルベルトの目を見返した。
「私は心情より生存を優先するわ」
紫と金の瞳は純粋とはとても言えないが真剣ではある。
「嫌われることで生き延びる数が100増えるならそちらを選ぶ。……実力不足の言い訳と言われても反論できないけどね」
目を伏せる様は悔しげでもあるし儚げでもある。
アルベルトは己の無力も感じ、目の前の少女を抱きしめていた。
「言ってるのは事実と本音だけだがな……」
そっと覗いていたベルク・オスマットが渋い表情になる。
「演技、なんですか?」
同じく覗いていたラティア・ミゼリアがおずおずと言う。
「アルベルト殿を好いてはおるし貞淑でもある。価値観が貴族派の王国貴族だがな」
(苦々しい話だ。同胞のはずのオルセンより、元王国人の代官殿の方が王国との関係が途切れている分信用できるとは)
数多の悲惨と地獄を見てきたベルクが頭を抱えたくなるのが今の帝国の現状だ。
「あの?」
ラティアは魅力的な肢体を精一杯小さくして、ほとんど聞こえない小声を出す。
「すまん、愚痴を言った。お互い依頼の成功を目指そうではないか」
ベルクはラティアの背中に軽く触れて安心するよう伝え、調査用の装備を背負って荒野へ出発した。
●
「一撃で頭部を撃ち抜く技術も大切ですが、まず身に着けて欲しいのは観察、分析、思考です」
ナハト・シュライバーの言葉は抽象的でもあるが実際の行動は徹底して具体的だ。
猪を標的に、接近のための作戦立案や行動、立案に必要なための情報収集まで8人に直接試行錯誤させることで納得させる。
「いいですね。猪は単独で行動するのか、群れで行動するのか、知恵はどの程度働きそうかも考えていますね?」
教えて実際にさせてみて認めて知識と思考を定着させる。
「武器は弓だけではありません。小さな穴、ロープで作った輪……簡単な罠や元からの地形なども利用できますよ。このあたりの思考プロセスは対人や狩猟以外でも活かせます」
少しだけ年上のナハトに、8人は素直に従い訓練に励んでいた。
(羨ましいわねぇ、授恵者を8人もだなんて。うちには全然いないのよ、少し分けて欲しいくらいだわ)
アウレーリア・フォン・ネーベルベルクは嫌み未満の言葉で代官をつつく。
(そう虐めないで頂戴)
(言われても言いたくもなるわよ。……信頼すべきを信頼せず、信用すべからざるを信用し過ぎているというのが妥当な評価と思うわ)
アウレーリアはジャマーを起動する。
それ以外は一切何もしていないのに、ある程度形になっていた猪狩りが破綻し逆に猪に追い回されるようになる。
ナハトは突発的な状況の変化に対する訓練のつもりで見守っている。
「襲撃ではなく訓練よ。私が敵のつもりで行動しなさい」
アウレーリアはわざと1度狙いを外して強力な術を使い、反撃の矢を逆巻くエーテルの風で寄せ付けずに閃光塗弾で視覚的に攻撃する。
授恵者達は、まるで素人のように混乱して逃げだそうとするがうまくいかない。
(酷いものね)
アウレーリアの態度は厳しい。
貴重な人材を無駄にするのは絶対に許せない。
(1月で0から鍛えた割には上出来と評価して欲しいわね)
セニャは悪びれない。
(それはそれとして今回の教育には感謝するわ。人を育てるための人の時間は本当に貴重だから)
彼女は決して善人ではなく、しかし大変な仕事をがんばる社会人ではあった。
「セニャさんは部下の皆さんの練度把握も兼ねて時折でも狩りに同行して『皆の為に狩ってきました』とさせれば心証も良くできるかと」
ナハトが会話に加わる。
8人は疲れ果てた状態で地面に座り込んでいる。
「獲物肉は食事に保存食、毛皮は交易、骨は肥料、臓物はペット達の餌に。無駄なく活用し資金を蓄え、剣士の皆さんの装備も一新しては如何でしょう? 帰ったらハーブ塩を使って皆に振舞う肉料理を作りますね」
ナハトの段取りは的確だ。
「……協力に感謝するわ」
セニャは今日の予定を変更し、部下と共につきあうことにした。
●
別の日。
「立って走りなさい。戦う以前に死ぬつもり?」
アウレーリアは8人より倍は走っているのに活きも乱さない。
(一通り運動してお腹が空いたところで食事会といきたかったのだけど……仕事が多すぎるのよね)
訓練に付き合わされたゴッチの弟子達は、最初に比べれば8人に対し友好的になっている。
「なんだ、あのガキ連中。あンなの前にいたか?」
アーテミシアは護衛してきたゴッチから事情を聞く。
「自前で装備渡して指揮? ……私兵じゃねーか」
周囲からセニャに向けられる視線を正しく推測する。
(あんなの作ったら周りがいい顔しねーだろうが。よっぽど余裕がねーのか)
帝国もセニャもこの土地も余裕がない。
「そっちは終わったな。ンじゃ借りてくぜオッサン」
アーテミシアが大物退治を持ちかけると簡単に人数が集まった。
「……あンたももうちょっと、アタマの回るやつ育てるンだな。普段どういう指導してンだよ」
アーテミシアの不満を口にする。
8人とは別の面で欠点が多い。
「返す言葉もないです」
帝国崩壊後は元侯爵領住民をほぼ単身で守っていたから他のことができなかったとか、帝国崩壊前は剣術と暴力に耽溺しないよう心を鍛えるだけで十分以上だったとか言いたいことはあるが、それを言葉にするにはゴッチの責任感が強すぎた。
●
クリーパーの枝が振るわれる度に、固い地面が溶けかけのバターのように切り裂かれて地面の断面には岩の切り身が見える。
彼等にとっては予想をはるかに上回る強敵に動揺する剣士達。
それを叱咤し落ち着かせるアーテミシアの前で、1対1の攻防が行われている。
枝の形をした巨大打撃武器がミゼリア・L・ステュクスの体を打つ。
骨が本来想定されていない方向へ動き、繋ぎ直された跡から血とエーテルが噴き出し不穏な音が聞こえた。
虚ろな瞳が紅く輝く。
ミゼリアは半壊した体をエーテルで修復しながら敵の動きから思考を読み取る。
(障害物扱いから、敵扱いに)
枝が左右から近づきミゼリアの姿を覆い隠し、足が地面から鋭く突きだしミゼリアを刺し貫く。
大量の血と小さな肉片が飛び散り、少し離れた場所にいる剣士達が息を飲んだ。
(不意を突かれた、けど)
凄まじい頑丈さがあるのでまだ重傷ではないが戦闘不能。
が、破損が酷い箇所を漆黒のエーテルが埋めて五体を万全な状態へ引き戻す。
木に感情はないかもしれないが、予想の遙か外の光景に思考が止まり攻撃が単調になった。
そこに巨剣が突き刺さる。
前のめりでの斬撃は鉄塊の鈍さも持つ剣に壊城槌じみた破壊力を持たせて攻撃直後で隙を晒した根っこを痛めつける。
木の思考が平常に戻ったとき、ミゼリアは闇を渡るような不可解な速さで距離をとっていた。
「ここまで用意されて負けるなら剣なんて捨てろ」
アーテミシアは獰猛に笑って最も危険な引きつけ役を代わる。
「オレがやられる前に倒せよ。怪我人無しで及第点ってトコだ」
アーテミシアに命じられた剣士達が木を半包囲する。
相手が巨大なので特別な技術がなくても移動手段を狙えるが相手の頑丈さをなかなか崩せない。
「バカ正直に殴ってたら日が暮れるぞ。手持ちのスキルで何が出来るのか考えて戦えよ」
ほとんど正解をアーテミシアが言っているのに、技術も判断力も彼女と比べれば不十分な彼等はなかなかうまくいかなかった。
「俺とセニャの邪魔をするな!!」
珍しく私情が出ているアルベルトが鍛えた力を剣術の形でクリーパーに振り下ろす。
通常時は大きすぎると思われることもある両手剣も、大きな木に対しては丁度良いサイズだ。
岩より硬い表面を砕き、魔獣を上回る力を生み出す中身を切り裂いても止まらず枝を壊して幹を抉って地面にぶつかる寸前で止まる。
「敵に当てる、より、味方に当てない、の、だいじ」
エルはエーテルをまとわせた矢を敵味方入り乱れる戦場へ投じて敵にだけ当てている。
疲労したままの8人は、感動はしているがエルの技術は全く理解できていない。
(時間、たりない、かも)
対象の攻撃の精度を下げるエルのスキルは、冒険者と比べれば劣るに対する巨大な支援になった。
だから、時間はかかっても1人も死者も重傷者も出さずに中型クリーパーの討伐に成功したのだった。
●
弦楽器と管楽器と鍵盤楽器の違いも分からない者も、それらが高度な技術を以て奏でられた音を感じることはできる。
大型の楽器達はラティアにとっては適正な大きさで、滅多にない水準の技術で良い音を引き出され新しい街を華やかな音で満たす。
それだけなら美談だけで終わった。
ただ、演奏者が美人であるだけでなく人を惑わす種類の色気を持っているのが素晴らしいと同時に問題点だ。
音の素晴らしさと演奏者に美と華が組み合わさると常人にとっては刺激が強すぎる美となる。
成人男性はもちろん、老若男女幅広い層を惹きつけ一部では仕事が滞り始めすらした。
「え……えへ」
演奏が終わっても静まりかえり、気弱な面が表に出たラティアが愛想笑いで誤魔化そうとした瞬間、拍手と歓声が全てを押し流す。
数分後、帝国軍の詰め所の隅っこで体を小さくしているラティアが見かけられたらしい。
ミゼリアが戦いの気配を消すと、少し人形に似た気配もある儚げな美少女にしか見えなくなる。
「はい。演奏を習いたいと」
興奮冷めやらぬ住民から何度も仲介を頼まれ、音楽ってすごいなという感想を抱いていた。
●
フェイサル・セイフが体得した医術では、薬もスキルも医療を構成する一部でしかない。
「後はしっかり食べてゆっくり休むことだ」
普段以上に態度に気を遣い、頼り甲斐を演出するのも医療の一部。
患者の精神を安心させ、フェイサルの指示に自発的に従うように誘導するための技術だ。
「先生、お疲れ様です」
年齢はフェイサルの倍近くありそうな老医師が喜んで助手を務めている。
「こちらこそ」
フェイサルの対応は丁寧だ。
今回整えた場を維持してもらわないと今回の成果は半減するので教導も並行して行うしかない。患者の治療以上に気を遣う。
「そろそろ食事が届くはずですので先に休憩して下さい。話だけでは面倒に思えるかもしれませんが……そもそも、怪我や病気というのは治すより防ぐ方が良いのです」
素早く片付けをして一緒に表に出る。
「すまない。今日獲った肉は冷やしている途中なのだ」
ストレガ・L・リベルガストラから血の臭いが微かにしかしないのは冷たい水を浴びてでも清潔さを保っているからだ。
フェイサルには活き活きとした猪の内臓を載せた皿を、助手には食べ易い大きさと柔らかさの肉スープの小皿を渡す。
なお、フォルゴーレが牽いてきた荷馬車から、熱々の肉スープが入った大釜が住民により下ろされている最中だ。
「やはり新鮮な食材から摂れる栄養素が不足気味だ。彼らが、そういう部分を進んで補える……美味しい提案、というのは難しいだろうか?」
フェイサルは肉の処理と鮮度の見事さに目を細めながら、食の専門家であるストレガに尋ねる。
「量を確保するのは難しいのだ」
ストレガが首を横に振る。
この寒さで野菜を育てるのは大変であるし、害獣や魔獣を倒して食肉にしても人口が多すぎる。
「食料庫に野菜の酢漬けはあったのだ」
「あれか……」
2人とも味を思い出して遠い目をする。
量はたっぷり、栄養は及第点、味は最大限穏便に表現しても『おいしくない』だ。
「お互い依頼期間を有効に使うのだ」
ストレガは休憩もとらずに仕事に戻る。
「先生!」
クリーパーではなく魔獣と戦い負傷した剣士達が運び込まれる。
手際よく状態を確認したフェイサルは、応急処置の未熟差に気付いて懸念を抱く。
「命の危険はない。後遺症の恐れもな」
だからヒールを使う前に、衣服や包帯等での止血法や添え木を使った骨折時の固定法を実地で覚えさせる。
教導は、とても効率的に行われた。
●
(セニャさん、って、強引、というか、実行力がある、というか……?)
ずらりと並んだテントを眺め、エルは独特の口調で超高速で思考する。
建築や土木に自信はあるが、エル1人が作業してどうにかなる数ではない。
(街のひとたち、大変、だから。何か……。ええと、街、の、都市計画、どう、なってる?)
「これを使うか?」
ベルクが自作の地図を手渡す。
帝国崩壊前からある地図ではなく、地質学を修めたベルクが現地で直接調査した結果だ。
「ん」
「そうか。武運を祈る」
ベルクは、今度は西への調査行に出発した。
「がん、ばろ」
エルの言葉にウィルは心得たとうなずき、周囲の人間を驚かさないよう吠えずに外の見回りへ向かう。
ぐるりと回ればエーテルリンクが途切れてしまうほど街は広大だ。
その後エルが取りかかったのは鍛冶用の小屋とサウナ用の小屋だ。
貴重な燃料を最大限有効に使うため、五月蠅くなるのを覚悟してくっつけて建てる。
「試運転」
「私が?」
エルに勧められたゴッチは謝絶しようとするが住民が許してくれない。
快適だが、少し五月蠅かったそうである。
●
ベルクにとっての調査対象は非常に多い。
「優先順位としては集会場兼避難及び立てこもり用の大型構造物か。地下に貯蔵庫も作れるようなそれなりの規模の土地があればいいが」
最も適していた土地は瓦礫の山か未調査だ。
本来なら膨大な人数と長い時間をかけて行う調査なので、緻密に調査できるとはとてもいえない。
成果がない日は、新しい街へ戻るとき自然と足が重くなる
「将来的に柵を街壁にするしかないかもなしれんな」
危険な方向へある出入り口は閉じさせようと、ベルクは気合いを入れ直す。
ストレガが猟をしている。
飛び抜けて猟が巧い彼女は、狩猟技術だけでなく冒険者としての技も使いこなす。
気付かれても雷蛇大禍で足を止めてしまえば狩るも解体するも自由自在だ。
剣士達や8人へ解体術や急所の把握を教えるための教材にもなる。
「得られた肉と内臓は炊き出しへ供出するのだ。燻製にして備蓄してもよし。……今は足りていてもすぐに足りなくなるのだ」
冒険者は常時ここにいる訳ではない。
「精をつけ、次の仕事に備えていくのだ」
骨は煮込んでスープにし、料理の後は砕いて肥料にする。
食材と料理だけでなく仕事全体で、ストレガは効率よくやっていた。
マスターコメント
ショートシナリオ普通 報酬:標準10 / 4〜10人
2023年01月27日 02時08分31秒 公開
参加者
相談掲示板
シューターのナハトです、よろしくお願い致します。 今のところ、セニャさんの部下の方や剣士さん達の一部で外に出れそうな方がいたら一緒に害獣駆逐兼食糧確保の為に狩りに出ようかと思っています。 料理などされる予定の方がいたら獲物はお渡ししますね。
あ、クリーパーに関しては狩りのついでで索敵ですとか、位置や動き把握などの助力は可能です。 狩りをするのに邪魔なら先に排除の方をお手伝いすることも出来るかと。
ウォーリアのアルベルトだ よろしくな 背後の事情で、時間が取れなくてあまりここにも顔出しできないのでとりあえず提出済の仮プレイングを貼っておくな 意見等があったら遠慮なく言ってくれ ・心境及び目的 新たな街の発展に貢献する。 セニャに、下で働く者の気持ちを汲むことの大切さを説明する ・台詞 「よし、これから害獣駆除の合同訓練を行う」 「良いか、皆が街を護るからこそ廃村の農民が安心して農作業に勤しむことができるんだ。」(剣士に対して) 「セニャ。我が領土の復興に全力を尽くしてくれるのは嬉しい。確かに、その為にはかなりの無茶をする必要があることは理解している。けど、下で働く者の気持ちをもう少し汲む必要があると思うんだ。下で働く者があってこそ復興が進むのだから」 「ゴッチ先生、先生のおかげで住民の士気が保たれています。なんとお礼を申し上げてよいやら、感謝の言葉もありません。」 ・全体的な行動(数字の順に行動する) 1:剣士とセニャの部下による合同訓練(害獣駆除)を行う。セニャの部下の偏り過ぎた教育を少しでも矯正することを試みる。『教導』『戦術眼』を使用 2:樹木風クリーパーの撃破に向かう。向かう途中で、セニャに「部下を思いやることの必要性」を説く(ケンカにならないようにやんわりと) ・戦闘での行動 樹木風クリーパーに対しては最初は『千鳥雷切斬』を使用、その後『鋭撃3』を使用 害獣駆除ではアクションスキルは使用せず『教導』『戦術眼』を使用。 攻撃を受けたら『重点硬化3』を使用 敵に近づくときは『チャージング』を使用 仲間との連携を重視 仲間の攻撃魔法に巻き込まれないように気を付ける
エル、です。…シューター、です。 どうぞ、よろしく。 ええと、復旧作業とか、大変そう、なので。 サウナ、とか、建ててみたら、どう、かな、と…。 あと、食堂(集会所?)、とか…? クリーパー退治、も、手伝えれば…。
フェイサル・セイフだ。ヒーラーとして癒しの術と、剣を少しばかりやる。 今回は宜しくお願いする。 さて、今回はやれる事が多そうだが…… 得意分野を生かすのであれば私は医療や衛生、そういう方面での手助けや環境の改善だろうか。 クリーパーの対応に人手が必要そうなら戦うが、基本的には傷や病との戦いに注力だな。
ウォリアーのアーテミシアだ。 オレはクリーパー退治すっか。あの剣士連中もらうぞ。 弓兵はいらねえ。誤射されちゃ堪ンねえや
シューターのラティア・ミゼリアです、よろしくお願いします…… 新たな街には娯楽がないということなので、無いよりはいいかなと思って、そちらで楽器演奏でもしてこようかなと…… 手が空いたら、平地の害獣駆除のお手伝いもしようかなと思っています。
アーテミシアさんがクリーパー退治に剣士さん達を連れていくのは僕としては問題なく。 クリーパーとの交戦にセニャさんの部下を連れていかないなら、そちらは僕の方で預かりましょうかね。 クリーパーのいるところとは離れた場所で害獣相手に経験を積んで貰おうかと。 少ない資源を有効活用できるように弓の腕や、罠の仕掛け方などは磨いて欲しいですし。
ウォーリアの、ミゼリア……です。よろしく、おねがいします……ね。 とりあえず、クリーパー退治に、さんかよてい……です。 タンクのうごきに、なり……ます。 あとは……おはなししたり、なぐさめたり、するだけでも、効果がある……との、ことでしたので……そういうかんじの、うごきを、しようかな、と……。
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 将来の都市計画に備えて地盤調査や周辺地形調査を行おうかと思う。 手が空いたらクリーパーの駆除に回るかね。
キャスター、アウレーリアです。宜しく。 私もセニャの部下の訓練に回ろうかと思います。 具体的な戦技の部分はナハトにお任せするとして、私は立ち回りとか教育の方かな。 訓練としては有効かも知れないけれど、大分偏っているようですし。 矯正とまでは言いませんが、自覚しての動きと常識知らずのそれでは違いますからね。
ストレガなのだ。宜しくなのだ。 平地で魔獣狩りしてくるのだ。ついでに訓練になればいいのだ。
挨拶が遅くなってごめんなさい シーフで代官のセニャよ。よろしくね
ところであの弓兵連中の装備ってセニャの自腹か? ぶっちゃけあれ私兵だけど、いいのかね。代官が私兵なンか抱えてて
>装備 セニャさんの自腹の筈ですね。とはいえちゃんと監査が入っているわけではないのですが。 ただ、帝国は現在資金も人材も何もかも不足しているので……国の為民の為戦ってくれる人だけでは復興がままなりません。私兵でも復興に協力して治安維持を図ってくれる戦力ならば殿下は黙認して下さるような気がします。 とはいえ、私兵を抱える王国貴族と彼らに統治されている王国民とは帝国民は感覚も違いますし、環境も違うので……私兵の装備だけ充実しているのは色々問題があると思われます。 セニャさんなりの優先順があるかと思いますが、お金の使い方に関しては助言が必要かもしれません。 僕は今回行動に入れられるかはちょっと怪しいのですが、少し触れられたら良いなぁとは思います。
【回答】あの8人についてはノーコメント、ということにさせて。現地(リプレイ)では答えるけど。