【聖祭】聖夜に贈る想い

炙りとろ左門

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シナリオID:2703

オープニング

「せーのでだすぞ、いいな?」
 少年が革袋を手に確認する。少年とともに冒険者の前に現れた子供達は、同様に革袋を手に頷いた。
「せーのっ、」
 ばらばら。ちゃりん。どざっ。
 机の上にささやかな金銀貨幣、その他、がらくたの数々がぶちまけられる。冒険者たちは困惑しつつ、子供達の二の句を待った。
 子供達は床を転がる革袋の中身を集め終えるとそれを机の上に置き、身を乗り出す。
「これで、おかいものにつきあってください!」

● 神官長の悩み
 リーンエス王国、王都グランスパーダ。その東に、女神アルメリアナを祀る神殿がある。
 アルメリアナは医神としてはマイナーだ。正確なところ医神というよりは、癒しを司る神というのもあるかもしれない。はじめて聞いた、という声も少なくない神だ。
 ゆえに、神殿といえど仕える神官の数も少ない。オリアスは「神官長」と呼ばれているが、この神殿には他に3人しか神官がいない。その中で最も年嵩がある――といっても、オリアスでさえ今年42歳だ――彼が、渉外や取りまとめのためにそう呼ばれているに過ぎない。
 そして、そんな人手不足の神殿では現在、11人の子供達が養育されている。皆、原因も治療法も不明の難病を抱えた子供達だ。医者や治癒師から匙を投げられ、親戚中をたらい回しにされ、ある者は神殿前に置き去りにされて――11人の子供達は、ここに流れ着いた。
 神殿の神官たちは全員治癒師(ヒーラー)であり、その技能を活かして働きに出ることで子供達の養育をなんとか捻出している。しかし先日の王都近辺の騒乱に関連して駆り出され、神官たちは昼夜を問わず働いており、限界が近かった。
 オリアスもまた最近はよく眠れていない。そんな中迎える聖霊節だが、どうしても子供達のために、ささやかでもいい、パーティーを開きたかった。病気と不安を抱える毎日の中、こうした催しは子供達に必要なことだ。
「ぅむ……」
 オリアスは寝ぼけ眼を擦った。帳簿をつけていたのだが、書いていた文字が霞んでよく見えない。歳か疲れか、あるいはその両方か。オリアスは一旦ペンを置いて、息を吐いた。
「とにかく、人手が足りないな……」
 先日駆り出されたぶんの褒賞のおかげで、春まで子供達に寒い思いをさせずにすみそうだが、神官たちの体はそれぞれひとつだ。ここで倒れては元も子もない。
 となると、外部に助力を求めるしかないだろう。オリアスは荒れた指で算盤をはじいた。

解説

【1】と【2】のどちらかに参加し、プレイングを提出してください。 【1】お買い物のお手伝い アルメリアナ神殿の子供達は、冒険者にお願い事があるようです。 それは、聖霊節のお祭りで買い物に同行すること。 同神殿の神官たちへ贈るプレゼントを選ぶこの買い物は「ぜったいひみつ」であり、神官たちに知られてはなりません。彼らに子供達の外出がバレないよう、素早く買い物を手伝ってあげましょう。 アルメリアナ神殿が養育している11人の子供達のうち、比較的元気な子供4人が今回の依頼人であり、冒険者に同行します。 男の子「やっぱ【うまいもん】だよな! しんかんさま、くいもんはぜんぶ、おれたちにくれるから」 女の子「それならよけい、たべものじゃなくて…たとえば【にちよーひん】がいいんじゃないかしら?」 双子の兄「しんかんさまたち、『まき』はびょうしつにまわしちゃうから、さむそう」 双子の妹「【てぶくろ】とか【マフラー】とか、おくりたいな!」 【!】 ただ買い物を代行するだけではいけません。子供達は「じぶんたちでおかいものをしたい」のです。 計算がもたつく子や、商品の受け取りがおぼつかない子もいるかもしれません。子供達を守りながら、おかいものをアシストしてあげるのがポイントです。 【2】パーティーの準備 アルメリアナ神殿の神官長オリアスは、冒険者に頼み事があるようです。 神殿で養育している子供達のため、ささやかなパーティーを開きたいとのこと。 とはいえ神官長は祝宴というものにあまり縁がなく、知恵を貸してほしいそうです。子供達が喜びそうなパーティーの提案、そしてその準備を手伝ってあげてください。 神官長「プレゼントはすでに用意しているのですが…。子供たちが喜ぶ一夜にしたいのです」 若い神官「小さくてもいいので、ケーキを用意できないかな、と」 女神官「甘い飲み物も。スープでもいいのですが」 男神官「あたたかいお風呂にも入れてあげたいです。そのために浴室を綺麗にしないと……」 ● アルメリアナ神殿 王都グランスパーダにある神殿で、様々な難病を抱える子どもたちを養育しています。 入院中の子供達は現在11人。ヒューマンの男性神官長、オリアスが彼らの面倒を見ています。 ● 特記 マスターページは参照しなくても問題ありませんが、描写やマスタリングに関する項目があります。

マスターより

お馴染みの方はこんにちは、はじめましての方ははじめまして、炙りとろ左門です。 デートや休暇シナリオは多分他にいっぱい出るだろう! ということで、私からはこのようなシナリオをご用意いたしました。楽しい聖霊節にしてあげてください。 それでは皆さんのご参加とプレイング、お待ちしています!

リプレイ

● お買い物大作戦!
 比較的温暖な王国といえど、雪が降る日もある。ちらつく雪は積もりこそしない量だが、すれ違う子供たちは目を輝かせてはしゃぎまわる。
(マフラーと、手袋……)
 ゲルダ・クラインはあらかじめ、神殿の子供達から買いたい物を確認して来た。それはこの後の買い物に必要なことだ。ゲルダは服飾店に向かい、店主にかいつまんで事情を説明する。
「……ということなんです。マフラーと手袋を4セット、子供達の目につくような場所に置いておいていただけないでしょうか」
「それは構いませんが……」
 店主は他に心配事があるようだ。言いにくそうにしつつも、代金について尋ねてくる。
「不足分は今お支払いします」
「そういうことでしたら!」
「……そうだ。包む時は、贈り物としてお願いします」
「おまかせください」
 いや、すみません、こちらも商売ですし、かといって子供達の夢は壊したくありませんし――そう語る店主に、ゲルダは必要な経費を払った。

 一方その頃――。
「どうだ? ミゼねーちゃん」
「……だいじょうぶ。ゆだんしています」
 冒険者たちが慰問という体で子供達の相手をしたり、神官たちの仕事を肩代わりしている。そのおかげか、気の緩んだ神官のひとりが椅子に座った状態で船を漕いでいた。ミゼリア・L(レーテラ)・ステュクスはそれを確認すると、子供達にGOサインを出す。
「よし、いまだいくぞ!」
 ミゼリアの合図を受けた男の子が他の子供達に声をかけ、すばやく祭壇脇を駆け抜ける。ミゼリアもそれについていき、神殿を出たところでゲルダと出会(でくわ)した。
「ミゼリア様。うまく抜け出せたみたいですね」
「……はい。そちらは?」
「ええ、きちんと用事は済ませてきました」
 事前に場を整えておいたことは、子供達には内緒だ。それと悟られぬよう言い回しに気をつけつつ、準備が終わったことを伝える。
「さあみなさん、出発ですよ」
「うん! ミゼリアおねえちゃん、まいごになっちゃだめだよ」
「んん……?」
 ゲルダを先頭に子供達は歩き出す。双子がミゼリアの手をそれぞれ取っていかにも引率者という顔をしているので、ゲルダは小さく笑った。
 この子たちの純粋な願いを叶えてあげなければ――その気持ちは、ゲルダもミゼリアも一緒だ。
 ただ、ゲルダは小柄なハーフリングであり。ミゼリアも、心とは裏腹に体は成熟しているせいか。
「君たち、ちょっといいかな?」
 悪漢――ではなく。聖夜の祭りを警邏していた、これまた純粋に子供たちを心配した兵に呼び止められてしまうのだった。

● 暖かな聖夜にするために
「癒しを司るアルメリアナさまの神殿の浴室となりゃ……こりゃぁ気合入れて掃除しねぇとな!」
 腕まくりをするギャメルの隣で、掃除用の服に着替えたスィーリーンも頷く。
「ええ。子供達に楽しい聖霊節を過ごしていただくためにも、きれいにしましょう」
「道具借りてきたぞー」
 そこへ、掃除用具を抱えたルイドが到着した。しかし担当の神官の姿が見えず、スィーリーンとギャメルは小首をかしげる。
「ああ、ちょっと調達して欲しいものがあって頼んだんだ。柚子をな」
「柚子……ですか? もしかして……」
 はっと脳裏に浮かぶものがあったスィーリーンの二の句を、ルイドが引き継ぐ。
「ああ、シャルガネの柚子湯を再現できねえかと思ってな。俺もいくつか持ち寄ったんだが……まあなければ蜜柑(似たようなもの)で、とは」
 それを見本に、息抜きがてら買い物を頼んだ――スィーリーンとギャメルはなるほどと得心した。
「素敵な案だと思います」
「風呂ってのは、生活の中の癒しの場だもんな」
 そうと決まれば、と3人は浴室を見回し、それぞれ作業に取り掛かった。
 ギャメルは使い慣れた家事用品を持ち込んで、家庭神マウマの教えに基づく暮らしの知恵を存分に活用した。滑りや皮脂汚れは重曹という結晶粉を使って落とす。しかしこれは結晶であるので、強く擦ると対象を研磨してしまう。ゆえに擦らず、汚れの上に撒いた状態で、上からレモン汁をかけると……しゅわしゅわと泡が発生する。しばらく待ってから水で流せば、不思議と汚れが落ちているのだ。
「よし、ピカピカだな……そうそう、換気もしねぇと」
 発生した独特の香りを外に逃がそうと、ギャメルは脚立に登って窓を開けるが――。
「さっむ!」
 この時期の換気は、かなり寒い。
「当然ですが、浴室が暖かくないと、湯を張ってもすぐ冷めてしまいますね……」
 必要なこととはいえ、子供達が湯に入るころには浴室も温めておく必要があるだろう。スィーリーンの言に、ギャメルは脚立から降りる。
「じゃ、薪を調達してくる。【マジカルポケット】で運搬は楽にできるしな」
「お願いします。お掃除はこちらで引き継ぎますね。この白い粉と……レモン汁を……」
 スィーリーンはギャメルからやり方を教わり、効率的に汚れを落としていく。
「これはすごいです。神官さんにもお教えすれば、お風呂掃除にかかる時間も体力も削減できますね」
 子供でも簡単にできるのであれば、お手伝いとして子供達も貢献できるだろう。
 とはいえ今日はお祝いの日。それは然るべき日に伝えるとして――。
「ルイドさん、大丈夫ですか?」
 これは床には使えるが、壁には難しい。ということで、ルイドが積極的に担当していた。スィーリーンが気遣わしげに声をかけるも、ルイドは手を止めない。
「体力いる仕事は俺がやるさ。やりがいもあるしな」
「疲れたら仰ってくださいね。交代しましょう」
「ん」
 もくもくと掃除を続けること、小一時間。見違えるように綺麗になった浴室に、ギャメルと神官がそれぞれ薪と蜜柑を抱えて帰ってきた。
「帰ったぜ! 薪はとりあえず、これだけあればいいか?」
「ユズは見つからなかったのですが、ミカンはありましたよ……って、わぁ! ぴかぴかですね!」
 くすんでいるせいでどこか薄暗くもあった浴室は、すっかり綺麗になっていた。神官はそれを大いに喜び、掃除のコツを冒険者に尋ねる。ギャメルとスィーリーンがそれに答え、ルイドは蜜柑の入った袋を受け取った。
「中身はみんなで食うから、そろそろ調理班の様子も見にいくか」

● パーティーの準備
 エルが淹れた紅茶を一口飲み、オリアスはほっと息をついた。
「ありがとうございます。私たちにまで気を遣っていただいて……」
 祭壇脇で船を漕いでいた神官は、部屋で休ませている。思っていた以上に皆に負担をかけていたと、オリアスは苦笑した。
「さて、木について……でしたね。聖祭の木は用意がありませんが、神殿脇にイトスギならあります。神殿内に持ち込むのであれば、まだ鉢植えに入っているものがありますので、それを使ってください」
「ありがとう、ございます」
 エルは聖霊節のお祝いにと、木を飾りつけることを考えていた。祭りではクッキーや小さなプレゼントを吊るすらしい。
「子供達も一緒に、作ったりとか、飾ったりとか。できたらいいですけど……」
「ええ、子供達も喜ぶでしょう。ただ、安静にしていて欲しい子たちもおりまして」
 エルの提案にオリアスは困ったように答えながらも、愛おしそうに目を細める。
「元気な子は元気なのですが。そうですね、動ける子たちを呼びましょうか」
「あっ」
 立ち上がりかけたオリアスを、エルは慌てて座らせる。その「元気に動ける子供達」は今、ゲルダとミゼリアに引率されてプレゼントを買いに行っているところだ。彼らがいないことに気づかれては大騒ぎになる。
「大丈夫、です。神官長は休んでいて、ください」
「……本当に、ありがたいことです」
 さすがに無理に体を動かすことはできないと悟ったのか、オリアスは素直に椅子に座りなおした。
「調理場も自由に使ってください。わからないことがあれば、おっしゃっていただければ」
「はい。では……」
 エルは軽く礼をすると、談話室を後にする。向かう先はキッチンであり、そして、先客がいた。

(年の瀬に徳を積んで新年を迎えたい――)
 そう考え、神殿の調理場に立つのは海神(うみがみ)江流(える)。この依頼を受けた冒険者の一人だ。
「あ、江流さん……」
 そこへ、エルが顔を出す。江流は前掛けを結びながら小首を傾げた。
「お。もしかして、キッチンを使うのかな?」
「はい。クッキーを作りたい、ので。焼き窯をお借りしたいのですが……使います、か?」
「いや。俺は鍋がひとつふたつあればいいからね。ケーキは余裕があれば焼くつもりだし、どうぞどうぞ」
 調理場はそう広くはないし、設備もやや古い。だがふたりが調理する分には問題なさそうだ。
「では、お借りします、ね――」
「あ、ちょ、ちょっと待って」
 エルがクッキーの材料を入れた紙袋を調理台の上に置いたところで、ヨル・スレイマンが慌ててやってきた。
「いや、待たなくていいんだけど。焼き窯、一緒に使わせて欲しいんだ。生地を焼きたくてね」
 ヨルが作ろうというのは、フルーツタルトだ。説明を受けたふたりはなるほどと頷く。
「確かに、メインに華やかなものがあると嬉しいよな。手伝えることがあれば言ってよ」
 江流がそう申し出ると、ヨルはぱっと顔色を明るくした。
「ありがとう。じゃあ、ちょっとお邪魔させてもらうね」
 集まった冒険者たちは頷き合い、子供達の喜ぶ顔を思い浮かべながら準備を始める。
「さてと。甘いものを食べる機会は少ないだろうし、ここは奮発しましょ」
 そう語る江流が用意するのは、チョコレートファウンテンだ。チョコレートはもともと高価な上に、この時期になると値段が釣り上がることもある。そのため、事前に持ち込んだ宝石を元手に必要なものは買い足しておこう。
「正直手に入れた時は使い所がわからなかったけど、役に立つこともあるもんだ」
 チョコレートを液体状にしたまま流し続ける……機構には詳しくないが、注ぐチョコレートにも一手間加えないと、この寒さでは固まってしまう。まずは湯煎でチョコレートを溶かし、軽く温めた牛乳を加えて混ぜ合わせる。ここで、必要があれば甘く調味をする。
 これに菓子やフルーツをつけて食べるのだが、これをこのままマグに注げばホットチョコレートとしても楽しめる。
「おっと」
 と、江流の頭の上で揺満月がご機嫌そうに跳ねた。どうやら他ふたりの作業に興味があるらしい。
 ヨルが用意するのは、フルーツタルトだ。タルト生地を手早く用意すると、卵と牛乳を使ってフィリングとカスタードクリームを準備する。飾りに使う果物は一口サイズに切って別の器に用意し、その間にエルが窯を温め、先にクッキーを焼いた。
「窯、もう、十分に暖かいので……その分、早く出来上がるかも……しれません」
「助かるよ」
 ヨルは焼き上がったエルのクッキーを取り出し、窯の中の空気が冷めないうちにフィリングを流し込んだタルト生地を入れる。
「あとは窯が調理してくれるから……飲み物だね」
 焼き上がりを待つ間も有効活用、飲み物の用意だ。3人で材料を持ち寄り、チョコレート、ココア、ホットワインが作られる。
(ユールフェス、か)
 子供達の笑顔を思い出し、ヨルは小さく笑う。自分にはすっかり馴染みのない行事だったのに、今や料理でさえも手慣れてしまった、その要因を思って。
「お、作ってるな」
「お邪魔します。こちら、使えないでしょうか……?」
 と、そこにルイドとスィーリーンが顔を出した。それぞれ手に蜜柑と七色チョコレートを持っている。ヨルたちはそれを笑顔で受け入れた。

● メリー・ユールフェス!
「わあ〜っ!」
 テーブルの上に並べられたご馳走の数々に、談話室に集まった子供達は目を輝かせた。
「これ、冒険者さんたちが作ったの?」
「そうだよ。あ、でも、まだ完成じゃないんだ」
 子供達の問いに答えたヨルは、ひとくちサイズに切ったフルーツをつめた器を渡す。
「タルトに、最後の飾り付けをお願いできるかな?」
「うん!」
 あれこれ相談しながら、タルトの上にフルーツを置いていく子供達。それを見守りつつ、ヨルは余った果物を江流に手渡す。
「もしよければ、そちらに追加して欲しいな」
「お、ありがと」
 チョコレートがなかなか高価で、具材となるフルーツの量が少々心許なかったのだ。江流はそれをチョコレートファウンテンの横に置く。それには、双子が釘付けになっていた。
「これ、どういう仕組みなのかな」
「さあ……でもすごいね!」
「♪ ♪ ♪」
 揺満月も流れるチョコレートに興味津々のようだ。ころころと鳴きながら周りをうろつくのを、江流は掬い上げる。

「エルおねえちゃん、これ、食べられるの!?」
 ソファに身を預けていた子供達は、イトスギに吊り下げられたクッキーを指さして興奮気味に尋ねた。
「色がちょっとちがうよ!」
「どれもおいしそうな匂いだけど、ちがうものもあるみたい……?」
 首を傾げる子供達に、エルはひとつひとつ指差して教える。
「こっちはバニラ味……こっちは、紅茶味」
「た、たべても……いや……もうちょっとがまんする!」
 子供達が我慢をするというのには、理由がある。そう、神官たちへの贈り物イベントがあるからだ。

「いろいろあった、けど……おかいもの、できました、ね」
 そう語るミゼリアの表情は相変わらず「無」だったが、声音は心なしか弾んでいる。ゲルダもそれに同意したが、こちらは満面の笑みだ。というのも、買い物に出た子供達はそれぞれに贈り物の袋を隠し持っているのだが……服の下や背中に押し込んでいるため、バレバレなのである。
 とはいえ神官たちも「子供達が何か持っている」とは気づいていても中身までは想像できないのだろう、不思議そうにしているのを見て、ゲルダはどこか悪戯をしかける童のような気持ちになっていた。
「きっと皆さん、喜んでくださいますよ」
「うん……!」
 子供達はゲルダに笑顔でそう答え、他の子供達とタイミングを合わせに行った。
 そして全ての準備が済んだところで、神官長オリアスが聖霊節の挨拶と冒険者たちへの感謝を述べる。そして子供達に向き直り、楽しんでくださいねと言ったところで、子供達の代表となった双子が立ち上がった。
「ぼくたちからも、おくりものがあります!」
 せーの、という掛け声と共に、神官たちに差し出された包み。神官たちは丁寧にラッピングされたものの正体に思い至ると、目頭を抑えた。
「お買い物には、私たちが同行しました。子供達を無断で連れ出してしまったこと、申し訳ありません」
「いえ……」
 ゲルダが頭を下げると、オリアスは目尻に浮かんだ涙を拭い、柔和な笑みを浮かべる。
「子供達が無理を言ったのでしょう。ありがとうございます。……あなたたちも、ありがとう」
「はやく、はやくあけて!」
 子供達は神官たちを急かす。包みから出てきたマフラーと手袋に、神官たちは再び、涙を流したのだった。

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「おっと、まだだぞ」
 蜜柑風呂にゆっくり浸かって体を温めた子供達は、ルイドの膝の上で髪を乾かされていた。
「きゃー」
 頭をわしゃわしゃとやや乱雑にされるのが楽しいらしく、「次はぼく!」と順番を待つ子供もいるくらいだ。
「ちゃんと乾かさないと、風邪をひきますからね」
 スィーリーンもその横で、子供達の髪を梳(くしけず)る。スィーリーンが持ち込んだスライム石鹸は子供達に大人気で、長湯してのぼせないようにするのがまた大変だった。
「じゃ、俺は寝室を温めてくるか」
 暖炉の前で眠りに落ちてしまった子供達にブランケットをかけて、ギャメルが顔を上げた。
「もちろん、今夜は神官さんたちの部屋も暖かくするからな!」
「本当に……このたびは本当に、ありがとうございました」
 オリアスは冒険者に深く頭を下げる。まさか自分たちにも贈り物があると思わなかった神官たちもまた、幸せそうな表情をしていた。
「今宵のことを、私どもも子供たちも、忘れないでしょう。皆さんにアルメリアナの祝福がありますように」
 冒険者たちも顔を見合わせ、依頼が大成功に終わったことを喜んだ。
 苦難多き子供達も、今宵ばかりは心安らかな眠りへと誘われることだろう――。

マスターコメント

お疲れ様でした! 冒険者さんたちのおかげで、依頼は大成功です。お届けが年明けになってしまいましたが……! MVPは依頼内容から一歩踏み込んだ方々へ! それではまた、お会いしましょう〜。
イベントシナリオ

イベントシナリオ普通 報酬:標準8 / 4〜25人

2023年01月14日 10時40分43秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. ギャメル

    ギャメルだぜ! よろしくなー! オレは【2】で風呂掃除がしたいぜ。 キレイな風呂でさっぱりっつーのは良いもんだよな。

  2. ミゼリア・L・ステュクス

    ……ミゼリア、です。よろしく、おねがいします……ね。 ……わたしは、【1】で、おかいものの、おてつだいを……しようかと。 あまり……よく、わからないので……おやくにたてる、じしんは……ないのですが……。

  3. ゲルダ・クライン

    遅れての参加で失礼します。 ゲルダです。よろしくお願いしますね。 【1】でお買い物のお手伝いが出来ればな、と思います。 お店に先行しまして、店主の方に事情をお話して子どもたちの希望の品を分かりやすい場所に並べていただけるようお願いしておこうかな、と思います。 支払いの方法も分かりやすく説明していただけるようにお願いする予定ですが、例えばお金を出すときに一緒に数えながら教えてあげるのもいいかなと思いました。

  4. ヨル・スレイマン

    ヨル・スレイマン。宜しくね。 そうしたら【2】で料理を手伝おうかな。ケーキと甘い飲み物だね。 他にやる人もいるかもしれないけど、こういうのはいくらあってもいいだろうし。 タルトにしようかな。子供も作業に手を入れられるものだと、多少質素でも楽しくできるかも。

  5. エル

    エル、です。どうぞ、よろしく。 ええと、【2】、で。 パーティー会場、に、置けるくらいの、モミの木を用意、して。 飾りつけ、とか。 …飾り、クッキーで作る、とかもいいかも、です。

  6. スィーリーン

    ご挨拶がぎりぎりとなってしまいましたが、 スィーリーンと申します。よろしくお願いします。 私は【2】に回りますね。

  7. 海神 江流

    駆け込み参加で失礼。海神江流だよ。 【2】の方に食べ物系で回ろうかと思います。 よろしくね。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0