大ハーレムごろし~コボルトわんさか逆ハーレム編~

眞石ユキヒロ

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シナリオID:2528

オープニング

●ライリーはやっと激怒した
 辺境都市群冒険者ギルドのカウンター内にて、ライリーは激怒した。
 亜人逆ハーレムが発生したのだ。しかも大規模の。
 ライリーは激怒した。
 冒険者たちに心配をかけ、話を聞いてもらい、命を助けられ、彼女の心はほんの少し強くなった。
 人間を苦しめる亜人・魔獣ハーレムは絶対に倒すべきという方向に。
 
●ティボー(誘拐犯)の憂鬱
「で、邪知暴虐の逆ハーレム? を倒してこいって言うんですね」
 斥候を務めたティボーはライリーの次の発言を予測して、半笑いで口にする。ライリーが無表情になるのがまた笑え……ない。
(やっぱりあんな(誘拐)案件は受けるべきじゃなかったですよね……)
 性格の相性自体も悪い気はするが、それ以上にあの一件がずっと尾を引いている。
 目が合えば逸らされ、話しかければ無表情(チベスナ顔)をされ、占えば「静かに見守れ」とアドバイスをされる。
(生きるため、誰かを生かすため、って言っても他の誰かを傷つければその報いは自分に跳ね返ってくる。まぁ、そりゃそうですよね)
 後ろ頭をガシガシとかきながら、ティボーは因果応報を思う。仕事上の人間関係は円滑にしたいがそれすら難しい。
「今回も僕が同行するんで。っていうか上からの命令なんで拒否権はないと言いますか」
 ライリーの目つきが若干、哀れむようなものに変化する。
「そうですか、頑張ってください」
 冒険者たちやツェレン(先輩)への熱い声援とは違い大変に事務的だが、無いよりは遥かにマシな言葉が返ってきた。
 
●ハーレムは倒されるべき!
「始末すべきハー……群れの情報です!」
 食堂に集う冒険者の一人は空きっ腹にシャルガネのご飯(天丼)を詰め込みながら聞き耳を立てていた。
 ライリー(暴走職員)への「今ハーレムって言いかけたな」というツッコミよりもエネルギー補給の方がよっぽど大事だ。
「今回の討伐対象はとにかく数が多く規模が大きいです!」
 バン! と依頼板に文書を叩きつけ、ライリーは声を張り上げる。
 天丼にごちそうさました冒険者の喉から「お前の声も大きい」というツッコミが出かったが引っ込める。そんなことより空のどんぶりの返却だ。
「クリエスター山脈付近にコボルト逆ハー……群れが存在します!」
 ライリーは文書をピンで留めると、集まってきた冒険者に見えるように依頼板の横へ移動した。
「僕が斥候してきたんですけど、とにかく数が多くて最後はチャージング連発で逃げてきました」
「このように亜人逆ハー……の群れはとても危険な存在です! 可及的速やかに駆逐しなくては!」
(なんなんですかね、この人は)
 オークのハーレム(集団)討伐以降のライリーは、人間の味方という一点においてメンタルが非常に安定している。ティボーからすると危険にも思えるくらいに。
「なんにせよ近くを通った荷馬車が襲われたり、近くの村から子供や女性を誘拐されたり、被害が後を絶たないんで倒すしかないんですけど」
 ティボーは口にしてから言葉の不味さに気がつく。恐る恐るライリー(誘拐の被害者)に視線を向けると、右の拳をきつく握りしめているではないか。
 また人間関係が悪くなるのかと眉間に皺を寄せながら、ティボーはライリーの言葉を待った。
「皆さんにもわかりますよね! このハーレム(悪鬼羅刹の集団)は倒されるべき存在だと!!」
 どうも自分からの被害より、亜人・魔獣ハーレムを倒すことの方が圧倒的に優先順位が高いらしい。難は逃れた。
 どこに地雷があるかわからないから、興奮気味に(やかましく)説明するライリーを怒ったりはしない。リーンエス王国に出張中のツェレンが早く帰ってきてくれると楽になるのにとティボーは遠い目をした。
「冒険者の皆様、奴らが泣いても殴るのをやめないでください!! どうぞよろしくお願いします!!!」
 ライリーが深々と頭を下げる。ティボーには亜人の何がそこまで気に食わないのか全くわからないが、ライリーに倣って「よろしくお願いします」の礼をした。
 
●ある男コボルトの述懐
 男コボルトたちの朝は早い。出産を控えた女コボルトへ捧ぐ食料を調達するためだ。
『俺らみたいな弱小集団は女王様(女コボルト)に数を増やしてもらって勝負するしかありませんから』
 頬のこけた男コボルトは草臥れた身体を起こし、顔を両手で覆った。
『俺らはしばらくこれだけで我慢しますが女王様(女コボルト)には沢山栄養を採って、より強い子を産んでもらわないといけないので……』
 寝床に置いた人間の子供の指をしゃぶりながら、男コボルトが溢す。
『それが最終的に未来の俺らの繁栄に繋がりますから……』
 木の棒の先に尖った石を握り、男コボルトは寝床を後にした。

解説

●目標  ・コボルト逆ハーレムを討伐する ●状況  女王への食料を調達するため、コボルトが森や近隣の街に向かっています。  冒険者たちが向かう順は、近隣の街→森→住処となり、住処に近づくほどコボルトの数が増えます。 ●敵情報  ・女コボルト×1   逆ハーレムの女王。特異個体ではない。   物理・魔法防御が高く、INIが低い。     ・男コボルト×?   森、住処にそれぞれ存在する。強くはないがとにかく数が多い。   INIが高く、物理防御がちょっと高い。   複数体で1人を集中狙いする傾向がある。 ●NPC(※プレイングで指定が無ければ基本空気)  ・ティボー   ハフリンのウォーリア。今回は案内役として同行。案内優先なので戦闘参加は基本的に撤退時のみ。   スキルは真ドラチャリ、アイアンヴェール、亜人語適正、超聴覚、薙ぎ払い3、闘気槌3、ヒール×2。   プレイングで指定があれば戦闘参加したり他のスキルを持っていきます。     ・ライリー・ベル   いつものギルド職員。冒険者さんたちに助けていただき無事、大! 復! 活! した。

マスターより

 冒険者の皆様、この依頼をご確認いただきありがとうございます!  眞石ユキヒロです。    久しぶりのハーレムごろしでございます。  おかわりを沢山用意しましたので、好きなだけぶっ飛ばしてあげてください!    質問があれば冒頭に【質問】と書いて相談卓に投稿すれば、ライリーが答えられる範囲で答えます。    ※当依頼は参加時に仮プレイングの提出を推奨しております。   絶対ではありませんがご一考いただけると有難いです。

リプレイ

●
「まぁ内容はわかった」
 ルイドは一つ頷いて、さて今回はどのように戦おうかと思考を切り替えた。
 職員(ライリー・ベル)の言ってること(テンション)はわからないが、為すべき事は掴めたから気にしないでおく。
「腕が鳴るぜ! 何体でも相手をしてやる!」
 アルベルト・V(フォン)・シュタールヴェーアトは意気軒昂、である。
 敵の数が多いなら、自分はその上を行けば良い。たゆまぬ研鑽がその後押しをしてくれる。
「一匹残らず切り伏せてやろう」
 ベルク・オスマットは目を閉じて腕を組む。道案内も探知が得意な者も揃っている。
 だが確実に勝利を掴みたい。故にベルクは思考する。自分はどのように立ち回るべきか。
「コボルトさんたちにも、せいかつがあるのは、わかりますが……」
 ミゼリア・L(レーテラ)・ステュクスはコボルトの命に思いを馳せる。
 しかし人間の生活が脅かされるなら倒さねばならないのだろうと思案し、ミゼリアは一応の納得をする。
「皆さんの援護は僕が担当します。どうかご安心を!」
 ダニエル・ヘリントンは爽やかながらも力強い笑顔を皆に向ける。
 英雄を目指す者がコボルトの大群如きに怯みはしないとばかりに、握りこぶしを作って。
「蓄えている今のうちに叩くという意見には賛成です」
 ティナの頭の中にはコボルトという種への僅かな疑問が湧いているが、それはひとまず置いておく。
 職員(依頼人の代弁者)が言うならコボルトは蟻や蜂のような女王ありきの種、なのだろう。
「啓示によれば「蟻とか蜂とかの巣が近い様な」との事ですが、コボルトの集団を放置する訳にもいきません」
 ティナの疑問をフリーダ=ブロムヴィストが――というか彼女に啓示を与える神が代弁する。
 瞳を丸くして黙ったままフリーダを見つめるティナに、フリーダは僅かに微笑んで「よろしくお願いしますね」と折り目正しい礼をした。
「一気に叩けるように固まって来てくれると助かるよな!」
 なんとはなしの緊張に、ナハシュが軽口を放り投げる。
 軽く言ってはいるが、今の彼はマインドセットにメテオライト2(範囲魔法)を二つ組み込んでいるので割と本気だ。
「私は一匹ずつ確実に仕留めていくつもりなのでよろしく」
 アルシエラ・ライゼルは冷静な口調で親しみやすい言葉をかける。
 外見は儚げだが、実際には天然。そんなギャップはあれど、彼女自身は優秀なシューターである。
 
「こりゃまた親の仇みたいな形相して。美人が台無しだぞ、おねーさん」
 ライリーの頬をぷにっと摘まんで、ハールが笑う。
 彼女をそれとなく気にかけていたハールとしては、元気になってくれてなによりだ。とはいえちょっと元気すぎる気もするが。
「まあお久しぶりですライリーさん、すっかり元気になられたようでなによりです」
 東雲(しののめ)・更紗(さらさ)は柔らかな笑顔でライリーに挨拶をする。
 テンションが高すぎる気もするが、それを尋ねることのできる共通の(頼りになる)友人は不在だ。相棒(ブレイド)がいるとはいえ、気を引き締めて立ち向かわねば。
「久々になるか。色々あったがライリーさんも復調? したようでなによりだ」
 本当に色々あったが、それをさらりと流すブレイドも大した人物である。
 ライリーの扱いにも慣れたもので、声をかけながらもすでに頭の中に更紗を守りながらの(具体的な)立ち回りを描いている。
「依頼とはあまり関係ないが……。ライリー嬢は何故ハーレムをそんなに憎むのだろうか」
 ぽそりと、レタラ・スマリが疑問をこぼす。彼自身もドゥジン信徒であり皇子×侍従を描いたりはするが(個人の嗜好は存在するが)、ハーレムものについては好き嫌い以前に許容している。
 ライリーが「『誕生日なので好きな物持ち寄って騒ぎたい!』をご参照ください(話すと長くなりますが宜しいですか?)」と無表情で口にするので、レタラは深く追求しないでおくことにした。大切なのは目の前の仕事だ。

「ティボーさんも案内よろしく頼む」
 出発を前に、冒険者が揃っているかを確認する案内役(ティボー)に、ブレイドが声をかける。
「状況はあまり変わらずのようだがまあ気長にな」
 変わらず寛容なブレイドに、ティボーは「あざす」と感謝してから視線を外した。何より、ブレイドの優しさを悪くないと思ってしまったことから逃げたかった。
「では抜かりなく退治してまいりましょう」「ちゃちゃっと片付けてきますか」
 更紗とハールが進んで士気を上げる。冒険者一行は駆け足でコボルトの住処に近い街へと向かった。

●
「ひゅー! ワラワラいやがるなっ!」
 人間を退避させ食糧だけを残しておいた街を、コボルトが闊歩している。
 双波も使いつつ辺りを確認しながらテンションを上げるナハシュとは対照的に、ベルクは瞳に影を落とし、クスクスと不気味な笑みを浮かべていた。
「糞な駄犬はぶっ殺せ、糞な群れは皆殺し~♪」
 それからナハシュとほぼ同時に駆け出す。物騒な歌を一フレーズ歌いきる前に一体のコボルトを暗爪刀「狐爪」(短剣)の錆にした。
『人間どもがやってきたぞ! 皆、かかれ~!』
 コボルトが一気に押し寄せ武器を振るったが、ベルクはひらりひらりと容易く回避してみせる。
『な、何だ、コイツは……! って、ぎゃあ~!』
 建物の上へと真・壁歩きした(登った)ナハシュがメテオライト2(光弾)を降らせ、ベルクに群がるコボルトを三体撃破(撃ち抜く)。
「っし! 大漁!」
 討ち漏らした一体をブレイドの竜爪の籠手 (拳)と竜爪の短剣 (短剣)がトリプルファング改(強襲)する。
(この場合、狙われるのは自分とベルクさんの両方になるのだろうか?)
 ベルクの方が少し前に出ており、向かってくるコボルトの殆どの視線はベルクに向かっている。しかしごく一部は体格に勝るブレイドを警戒しているようだ。ギラリと彼を見据えている。
 
 ハールはナハシュが登った建物の壁に隠れ、ベルクたちへと向かうコボルトを背後から確認しつつ捜波を行おうとした。マインドセットにない。
(ま、地道に調べて(やって)くかな……)
 一つ息を吐き出してから、思考を切り替える。
 ルイドはハールと反対側の壁に寄り、コボルトへの奇襲を画策した。
(通りがかったところを狙い撃ちしてやるぜ。……覚悟する間もなくな)
 ジャケットの内側に隠し持つ鞘(明鞘彼誰)を仄かに輝かせ、その瞬間を待つ。
 
「私が盾になります。お任せください」
 フリーダはベルクとブレイドを追い越して、コボルトの注意を引きつける。
「俺もいるぜ! 覚悟しろ、コボルト共!」
 フリーダを追いかけるように、アルベルトがチャージング×2で(鋭く)駆け抜ける。
「わたしも……みなさんをまもりますね……」
 ミゼリアは影渡りで(黒いエーテルを靡かせ)二人を追いかけながら、防御集中し闇纏を発動する(防御を固める)。
 フェロモンを発するミゼリアにコボルトたちが鼻をヒクヒクさせたのち、だらしなく口を開きながら向かってゆく。
 そのうちの一体に、レタラの風読みの矢(風を纏う矢)と、アルシエラのヴェイパーブラスト(超高圧縮された高熱の空気の槍)がほぼ同時に突き刺さり、倒れた。
(注意散漫だな。……しかしアルシエラ嬢の攻撃の威力はすさまじい。オレは別の敵を狙うべきだろうか?)
(スマリはなかなかの実力者だよね~……。強敵相手じゃなければ別方向を見た方が良いかな?)
 声をかけ合うこともなく、狙撃手たちはそれぞれに違う方向を警戒する。
「皆さん! 援護します!」
「私もお手伝いします」
 ダニエルとティナが素速くフリーダたちの後ろに付く。
「私はブレイドさんを援護しますね」
 更紗はブレイドの真後ろへと駆ける。
『敵襲! 敵襲!』
 騒ぎを聞きつけたコボルトたちが、食糧を手にしたまま二軒の民家から飛び出してきた!
(奴らとて生きるためには食事が必要だ。さりとて慈悲や情けは不要だろう?)
 ベルクは所帯じみたコボルトたちを無視し、建物と建物の隙間に潜むコボルトを一瞬で切り伏せた。造作も無い。
 その上空をナハシュは駆け、地を這い回るコボルトたちは勢いよくミゼリアに武器を振るう。一匹目からは逃れられたが、二匹目の攻撃がミゼリアにかする。ペインキルが効いている(痛みはない)。
(これは……フェロモンの効果、ですか……?)
 もう一匹はフリーダに襲いかかるも軌道を読まれ回避されているが、民家から出てきたコボルトたちの視線は殆ど自分に向かっている。
「コボルトさんよ、自分たちを忘れてはいないか?」
 ミゼリアに纏わり付くコボルト二体にブレイドの三連撃が襲いかかった。一体は取り逃してしまったが、察知したハールのダマスカス鋼の短剣(短剣)が抜かりなく命を奪う。
「おーい! 他に誰かいないのかー!?」
 それからハールは、まだ家に潜んでいるかもしれないコボルトをあぶり出すべく大声で叫ぶ。遠くの家からコボルトたちが登場した。
「俺は見える敵からやってくぜ!」
 建物の上を駆けるナハシュは食糧を投げ捨ててミゼリアに駆け寄るコボルト三体を光弾で討ち滅ぼした。それにしても敵が多く、足を止めて双波を(索敵)する余裕もない。
「さて、コボルトたちはこの攻撃には耐えられるでしょうか」
 地上ではフリーダが白金のパラッシュ(剣)に闘気槌4(巨大な光球)を纏わせ、コボルトたちにお見舞いしている。
「……敵が遠いな」
「つべこべ言わずやれ。外したら俺がもう一撃喰らわせてやる」
 ルイドは建物の影から身を出し、レタラの追い風纏う矢を魔弾で追いかけ、コボルトを狙い撃つ。家を出たばかりのコボルトは矢とエーテルに貫かれ、わけもわからないまま命を失う。
(なら私は一人でやってみよう)
 勢いよく射出されたアルシエラの灼熱の槍がその隣の敵の命を穿つ。
「ミゼリアさん、待ってください!」
「なぜ、ですか……?」
 遠くの敵をおびき寄せるべく闇を纏い疾走するミゼリアを、ダニエルが必死に追いかける。
 のこのことやってきた敵二体に更紗が光の雨をプレゼントし、残る敵は一体になる。
(果たしてそやつを今逃がすのは得策じゃろうか?)
 ベルクは思う。的確な道案内をしてもらうには行くべき道を確実に知っているものを使うのが一番だと。
 しかし、まだ家の中に敵が潜んでいる可能性も無きにしも非ず。
「さようなら」
 エーテルブロー2を発動した(光を纏う)ティナの竜石の祭刀(祭刀)が躊躇無くコボルトを切り裂く。
(こんなもの、でしょうか?)
 あまりのあっけなさにティナは拍子抜けし、首をかしげる。実際、目の前のコボルトは死んだのだからこんなものかと納得し、ティナは思考を止める。
 
 その後、全員で手分けして街中を調べたが、隠れているコボルトなどは見当たらなかった。
 「森に行きましょう」と声をかけたティボーに、ダニエルが「待った」をかける。
「その前にミゼリアさんを回復させていただいても良いでしょうか? コボルトからの攻撃を受けていましたよね」
 ダニエルの放つ癒やしのエーテルを受けて、ミゼリアの心の奥がほんのりと温かくなった。
 端的に言うならそれは喜びに近いのだけれど、その感情を上手く表現できるほどミゼリアの情動は発達していなかった。
「その……ありがとう、ございます……」
 返答がこれでいいのか、ミゼリア自身にもわからない。けれどありがとう(それ)は人同士のコミュニケーションの中に常に存在する言葉だから、それを使う。
「どういたしまして! 何かあったら僕に言ってくださいね。そのためのヒーラーですから!」
 爽やかな笑顔を浮かべるダニエルに、ミゼリアは他の人がやるように表情を動かして微笑み返そうと努力した。
 
●
 ナハシュとブレイドが先頭に立ち、双波で探りながら鬱蒼とした森の中を歩む。
 その少し後ろでアルシエラがフェイクウッドを使い(木のふりをしながら)透視を行い、二人をサポートする。
(コイツは!)
(数が多いぞ!)
(コボルトたち、進軍してるよね、これ)
 アルシエラが後ろ手を大きく開いて、後ろに潜む仲間たちに合図をする。レタラがそれを超視覚で確認し、小さな声で全員に共有する。
「敵が近いようだ。数は確実に十体以上」
 ベルクが目を細め、妖艶な笑みを浮かべる。

 コボルトたちが気付いた時には、戦いの火蓋は切って落とされていた。
『ぐあ……!』
 クスクスと笑うベルクにコボルト一体がさっくりと命を奪われる。
『敵襲だ! やるぞ!』『女王様のために!』
 向かってくる攻撃をくぐり抜けるように回避し、ベルクはコボルトたちの気を引き続ける。
 ベルクを追いかけるコボルトの背後からブレイドが拳と爪のコンビネーションで畳み掛ける。
「まとめて蹴散らしてやるよ!」
 真・壁登りで(木を登り)上からの視界を確保したナハシュが竜石の短杖(短杖)を手に目映い光の雨を降らせた。
 すでに十体のコボルトが地に伏している。
「密集しているということはまとめて掃除するチャンスでもありますね」
 フリーダはクスクス笑うベルクに群がってきたコボルトを光球でまとめて叩き潰す。
(こりゃ攻撃し続ける方が有効かもだな)
(分かりやすくて助かるぜ、コボルトよぉ!)
 横を抜けてきたコボルトにハールが斬りかかり、足音でコボルトの位置を把握したルイドが光の雨で討つ。
(先手を取れるうちに少しでも数を減らしておきたいところだが)
(確実に片付けるのを優先しておきたいよね)
 レタラは風纏う矢を、アルシエラは熱を圧縮した槍を同じ敵に撃ち込む。
「行くぜ!」
「わたしも、いきます……」
 アルベルトがチャージングで駆け(前に出て)光球を振るう。ミゼリアは禍々しいエーテルを纏いながらベルクの前に立ち、全ての攻撃を引き受けようとする。
(ヒーラーの僕が下手に前に出るわけにはいかないですよね……)
 ダニエルはミゼリアとベルクの後ろに控え、逸る気持ちを抑えつける。
(ブレイドさん、見ていてくださいね!)
 ブレイドの後ろへと駆け寄った更紗は、メテオライト2(光の粒)でコボルトたちを殴りつけた。
(あと二体ですね。容赦はしません)
 ティナは光を帯びた祭刀でコボルトを叩き切る。
 腰を抜かす最後の一体にベルクは素速く詰め寄り、殺さないように優しく狐爪を喉に当てた。
「やるべき事はわかるだろう?」
 純粋な亜人に人間の言葉は通じない。しかし命の危機という概念はどの種族にも共通して存在する。
 体毛の奥にある鱗に傷をつけてやる。それだけでわかるはずだ。
『クソッ! クソッ!』
 叫びながら森の奥深くへとコボルトが逃げてゆく。
「自分も周囲を確認しながら一緒に行くとしようか」
 両手に石を持って駆け出すベルクをブレイドが追いかけ、その後ろに更紗が続いた。
 もう一人の双波の使い手であるナハシュはというと、母蜘蛛糸のロープを手に唸っている。
「これで木と木の間を飛び移るつもりだったんだけどよ、そんな間も無かったな」
 「まぁいいけどよ」と気持ちを切り替えてナハシュも双波役を引き受ける(先行したメンバーを追いかける)。
 それは楽しそうだと内心ワクワクしているアルシエラ(森のアサシン)に気付かずに。

●
 コボルトの鳴き声と足音を追って辿り着いた先には洞穴と、そこを守るように並ぶコボルトたちがいた。
 「どうする」と目で訴えるレタラに対し、ルイドは懐から閃光塗弾を取り出すことで答えた。
 
「目ぇつぶってな!」
 木の陰からルイドが飛び出し、ピンを引き抜き目をつむったままコボルトたちへと投げつける。
『目が、目がぁ!?』
 大成功だ。ベルクは笑いながら弧を描き走ることで音の情報を攪乱し、端で倒れている一体に深々と狐爪を突き刺した。
 ベルクの攻撃を皮切りに、冒険者たちの攻撃がコボルトたちに雪崩れ込む。
(楽な仕事だ)
(こりゃ楽しいぜ!)
 ブレイドの三連撃は相手の生命力を確実に奪い、壁を足場にしたナハシュが光を降らせれば二体のコボルトが動かなくなる。
(撃破が容易になるのは助かります)
(二体しか巻き込めねぇけど仕方ねぇか)
 フリーダは巨大な光球ごと剣を振るい、ルイドはその反対側で悶えるコボルトにストーンブラスト3(炎を纏う巨岩)を炸裂させた。砂塵が舞う。
(見づらいけどここで叩いておきたいよな。行くぜ!)
(どのような状況下でも当てなくてはな)
 砂煙の中を駆けるハールが三閃を繰り出し、風を纏い突き進むレタラの矢がコボルトの命を削る。
(なら私は別のを片付けとこうか)
 アルシエラの熱の槍がコボルトの命を一瞬で貫く。
(最後の一体を始末します)
 エーテルで輝くティナの祭刀は、コボルトを死へと誘った。
 
「奥へ進みましょう」
「待ってくれ。今すぐに行った場合、コボルトたちが準備万端で待ち受けている可能性が高いのではないだろうか?」
「では、どのように行動すべきでしょうか」
 不思議そうに振り返るティナに、レタラは小型の管楽器を取り出して見せた。
「それは楽器、ですよね」
 一応の知識はある。音を奏でる道具だ。なぜそれが戦いの場で出てくるのだろう。不思議が増えた。
「これを吹いて相手をおびき寄せる。中で臨戦態勢にある大勢を相手するよりは有利に戦えるだろう」
「そうですね」
 ティナは素直に納得する。洞穴の中は暗く、光源はルイドの所持するランタンのみ。陽の光が届き、ある程度地形を把握しているこの場所で敵を迎え撃つ方が合理的だ。全員で森に隠れ、レタラの演奏をBGMに待機することとなった。
(音の流れ。楽器を持ってみるのも悪くないかもね)
 アルシエラは形のない流れに興味を持ちながらも、洞穴の入り口にコボルトが流れ着くことを待つ。

『うるせぇよ、おい!』『女王様は出産間近でイライラしてるんだよ』
 ここのコボルトたちには人間の芸術は理解できなかったようだ。
「五体か。まぁ、良しとしよう」
 苛立ちながら登場したコボルトに、レタラは濃煙炸弾(煙幕)をプレゼントした。音で判断して鋭射(鋭い一射)で追撃も行う。
(出てきた数から察するに、残存兵力は大したものではないのじゃろうか?)
 ベルクは煙幕の中へ踏み込み、矢が刺さっているように見えるコボルトを一閃で始末した。コボルトたちの反撃が殺到するが、舞うように回避する。
「見えてるぜ!」
 ナハシュは双波(捜波)で煙幕内の状況を瞬時に把握し、ベルクを避ける(守る)ように光弾のシャワーを叩きつけた。煙幕の中から抜け出したベルクが一つ息を吐く。
「私はそろそろ踏み込むべきだと考えます。啓示もきっとそう判断すると思います」
 果敢かつ淀みないフリーダの言葉に異論を挟む者はいなかった。
 
●
 フリーダ、アルベルト、ミゼリア、ランタンを持つルイドを先頭に、攻撃の射程が短い者から順に並んで洞穴の中を進んでいく。ネズミ一匹現れない。途中にあった寝室らしき横穴ももぬけのからであった。
 最前に立つルイドと、双波(索敵)を繰り返していたナハシュ、ブレイドがほぼ同時に足を止める。超視覚、超聴覚を使用する(目を凝らし耳を澄ませる)レタラも同様に。
 それだけでこの場にいる全員にこの先に待つものが伝わる。
 
『ここは一歩も通さないぞ! 侵略者共!』
「コボルト共! 貴様等のハーレムも今日限りだ!」
 コボルトの鳴き声に呼応するようにアルベルトが勇ましく叫ぶ。
 冒険者たちの行く手に待ち受けていたのはコボルトによる肉の壁と、その向こうに鎮座する女コボルト(女王様)だった。
 真っ先にベルクが駆け出し、狐爪を大きく振るって命を奪う。群がるコボルトの攻撃を完全回避して(すべていなして)クスリと笑みを浮かべる。
(前に出すぎず一匹ずつ確実に潰していくか!)
 ブレイドはベルクに夢中なコボルトの背に打撃と斬撃を叩き込む。
「こういうのはどうだ!?」
 ゴツゴツした壁を颯爽と駆け、天井近くに陣取ったナハシュがコボルト(肉の壁)へ光の粒を落とす。
「私からはこちらを差し上げます」
 フリーダは無機質な声と共に巨大なエーテル光を振るう。非常に強力な攻撃だったが、運悪く(運良く)一体が回避成功してしまった。
「そう簡単に逃がしはしないぜ」
「捉えたぞ」
 ハールの繰り出す刃と、レタラのエーテルを込めた一射がすぐにその命を絶つ。
「コイツをくれてやる! 有難く思えよ!」
 ルイドは鞘の先から魔弾を射出し、怯えるコボルトに安息を与える。
(これだけ皆が暴れ回ってくれると、開けた場所(こういう所)でも見つからないものだね)
 アルシエラは高熱を圧縮し、悲鳴の如き轟音と共に間抜けなコボルトを亡き者にする。
「だらしねぇ輩(コボルト)に鉄槌を下します!」
 あと一息でこのハーレムは潰える。そう判断したダニエルは力強く祭刀を振り下ろした。
「贅沢な使い方ですが!」
 メテオライト2(大量の光)を降らせ、更紗はハーレムを構成する男コボルト最後の一体に別れを告げた。
 残るは。
『ふざけるな! 私たちが大ハーレム(大家族)になるまでにどれほどの女コボルトが命尽きるまで産み続けた(尽力した)と思っているのだ、お前たちは!』
 女コボルトの周りには腐乱した女コボルトの死体と、人間のものであろう薄汚れた骨が散らばっていた。
『最後の一体になろうとも、私は! 私はぁ!』
 涙を流し雄叫びを上げながら、女コボルトが冒険者たちへと急接近する。
「……みなさんの盾に……なりますね……」
 ミゼリアは仲間を守るため、黒いエーテルで加速する。
「あなたを殺すことが最優先です。細かいことは後で考えます」
 ティナは依頼を果たすため、脚に力を込め大地を蹴る。
「お前に食われた人々の恨み、ここで晴らす!!」
 アルベルトは迎え撃つため、瞬時に加速する。
 アルベルトの千鳥雷切斬(雷すら両断する一撃)と、ティナのディバインストライク(光輝く一閃)が同時に女コボルトの生命を断ち切った。
 
●
「さて、今回は獲れたてコボルトのお肉で何かを調理いたしましょう」
 ぱん、と両手を合わせて、更紗がゲテモノ料理を提案する。クリーパーを食べて命を繋いでいた時代もあるのだから、もしかしたら伝統料理と言えるのかもしれないが。
「そういえば更紗さんよ、天丼の他にオススメの丼モノはあるだろうか?」
 ブレイドが話題を逸らすべく、真っ当な料理の名前を口にする。
「基本的にご飯の上に何かをのせれば丼として成立しますし、ここは是非コボルトのお肉を……!」
「獲れたて犬肉はちょっと……他ので頼む」
 更紗の料理の腕は悪くない(良い方だ)。ただ、材料の選出に節操がないだけで。
「私は食べてみたいかな。案外美味しいかもしれないし」
 固定観念に囚われないアルシエラは、自身が狼のハーフビーストであるにもかかわらず更紗の肩を持つ。儚げな瞳に好奇心を灯して。
「試すくらいなら良いんじゃないか? 前にオークの肉だって食べたし、今更だろう?」
 食うに困った経験のあるハールは選り好みしない。更紗の作ったオークの角煮は美味しかったし、止める必要性も感じない。
「食べるとか食べないとか、そういった議論をする対象なのか。コボルトは?」
 レタラはまずこの話題の必要性から疑う。そもそもコボルトを食欲の対象として見たことがない。
「依頼は終わったんだからんなこと言ってねぇで、さっさと帰りゃいいじゃねぇか」
 ルイドが至極真っ当な意見を述べる。単にこの話題に興味が無いだけとも言う。
「ここまで強行軍だったんだ。ここで休憩や腹ごしらえを挟んでも良いんじゃないか?」
 後々のことを考えてアルベルトが意見を差し挟む。帰りにどんなことが起こるかはわからないのだから。
「我は食べないが、休息は取れる時に取っておくべきだと思うぞ」
 ベルクがその場に座り込み、ふぅっと息を吐く。敵を引きつけ走り続けた彼女に休息が必要なのは誰の目にも明らかだ。
「俺はどっちでもいいけどよ」
 壁から降りてきたナハシュが両手をたたき合わせ、砂埃を払い落とす。彼自身も疲れてはいるが、休むならもう少し居心地の良い場所にしたい。
「疲労はヒールで癒やせませんから、休んでいくべきだと僕は思います」
 ダニエルは迷いなく言い切る。コボルト食べるか問題には一切触れずに。
「多数決をするにも意見が割れていますね。こういう時に啓示があると良いのですが」
 フリーダにはこれといった希望はない。彼女に語りかける神は沈黙している。そりゃそうだ。
「コボルトは食べるものか食べないものか、どちらに分類すれば良いのでしょうか?」
 ティナが純粋に疑問を述べる。全員の意見がバラバラのため、誰の言うことを信じれば良いか判断に困っている。
「……黒狼(シグルド)は……どう思いますか……?」
 ミゼリアの瞳に傷ついたイヌ科のペット(シグルド)が映る。彼女は黒狼(シグルド)に語りかけているだけだが、一歩間違えば完全なブラックジョークだ。
 
 結局意見はまとまらず、各々好きに行動することになった。

マスターコメント

 冒険者の皆様、ご参加いただきありがとうございます!  リプレイの公開が大変遅くなり、申し訳ございませんでした!  大した損害も出さず無事にコボルト逆ハーレムを壊滅させたため、大成功となります!  MVPはスキルを活用し多くの敵を葬った方、上手く敵を引きつけた方に差し上げます。  称号はついに「大ハーレムごろし」を……。普通の「ハーレムごろし」称号すらないというのに……。  ちなみに今回殺したコボルトの数は86体です。いくら多胎とはいえ大家族過ぎるでしょ。  改めて、当依頼にご参加いただきありがとうございました!  眞石ユキヒロでした。
イベントシナリオ

イベントシナリオ普通 報酬:多い13 / 10〜25人

2022年10月31日 15時51分12秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. アルシエラ・ライゼル

    シューターのアルシエラ、よろしく。 フェイクウッドでひっそり陰から鞭を撃つ予定。

  2. ハール

    よっ、久しぶり…ってことで、ハールだ。よろしくな。 受付のお姉さんは元気になったってことでよかったよかった。じゃ、仕事しますか。 とはいえあんまり大した動きはできねーんだが…数が多いみたいだから囲まれない工夫はいるかもな。

  3. レタラ・スマリ

    シューターのレタラ・スマリだ。宜しく。 さて、今回はとかく個体数が多いようだな。 俺自身は範囲攻撃スキルを殆ど持たないもので、となれば何が出来るかを考えたんだが、濃煙を撒くのはどうだろう? 目眩しで撹乱して、その隙に叩くのが良いのではないかと考えたのだが。 後はハールの指摘通り、敵に囲まれない工夫は要るだろうな。 俺自身は距離を保って遠距離から弓で攻撃するつもりでいる。

  4. ミゼリア・L・ステュクス

    ウォーリアの、ミゼリア……です。よろしく、おねがいします……ね。 盾型なので……堅甲2を、じぶんにつかってから……殺界で、敵を足止めしたり、しようかと、思って……ます。 敵が、集中攻撃を、してくるなら……それも、利用して、攻撃を集めれたらと……。

  5. ベルク・オスマット

    シーフのベルクだ、よろしく頼む。 数が多いだけなら囲まれぬように動き回って斬り捨てて回るかね。

  6. ライリー・ベル

    冒険者の皆様、当依頼にお集まりいただきありがとうございます! 当依頼は明日12時の出発となっております。 お手数をおかけしますが今一度、装備・スキル・プレイングのご確認をお願いいたします。 今からの飛び入り参加も大歓迎です! 人間を苦しめる亜人ハーレムは一つ残らず駆逐しましょう! ……いざとなったらティボーさんがあなたの盾になりますからご安心を(ボソッ)

  7. ルイド

    そんじゃ飛び入りで。ウォーリア、ルイド。良しなに。 遠距離範囲攻撃中心で、できるだけ集られる前に減らす感じでいくわ。 それでも集まってきたら閃光塗弾使う予定だが、 味方の目も潰さないようにゃ気を付ける。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0