【学転】政治討論部と恋愛のススメ
紀藤トキ
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シナリオID:1965
オープニング
●
政治討論部の副顧問にして、知る人ぞ知るハフビスキー教師であるテオドール・ディンドルフは、根は真面目な人間である。自分の趣向が貴族生まれとしては異端であり、かつ本妻が貴族令嬢なのに妾に複数のハフビを囲って波乱を産まない父親ほどの甲斐性はない事を自覚していたので、婚姻とは縁がない物と考えていた。
「サラ嬢との婚約がそのまま行けばドルトン男爵家の入り婿となるんじゃろう? それはまあ、身を慎む必要はあろうなあ」
相談された相手は、魔術師の塔に引きこもって数十年。わざわざ指摘するのも野暮だが女性との出会いなど無かったであろうリヴァマス老人であった。どうしてその相手を選んだし、と言いたくもなる。身近で、政治的にめんどくさい関係性が無いオトナで、暇そうな人が他にいなかったにしても。
「まあ、私の趣向は父とは違うのかもしれない、と最近思い出したのですけれどね」
「ほう?」
とある女子生徒に、触れるなら相手の了解を得る事と言われてそうしていた結果。どうやら、眺めているだけでも満足な自分に気が付いた。もふもふした毛皮やつるりとした角など、人にない部位に触れると嬉しいのだが、それは性的な対象としてではないようで、父親とはそこが根本的に違うらしい。
「それを我輩に話してどうしようというのか。まあ、サラ嬢に話せば良いのではないか? 浮気をする事はない、という意志表示にはなろう」
「いや、さすがに10歳は下の子供に話す内容では……」
50歳上の老人に話しても仕方がない事ではある。が、そもそも貴族の子弟に愛だの恋だのという物は縁遠いのではないか。物語の中では、あるいは『○○侯爵の所の先代のお嬢さんが』みたいな結構遠い伝聞では聞くことはあれど、自分に置き換えて考えるのはなかなか難しい。テオドールにしろ、状況に流されてサラと婚約する事になった手前、相手が嫌な思いをせぬように配慮しようと考えているだけだ。恋愛というより保護者感情の方が強そうではある。
「じゃがのう。貴族の結婚など、始まる前に盛り上がっている方が少ないのではないか? 国王陛下は毎回大恋愛だったようじゃがな」
「御老の話を聞いていると、国のトップなのに、案外自由人に聞こえますね……」
「義務は弁えつつも自由でありたくはあったのであろうなあ。まあ、殿下達を見ていると、そういう血筋なのじゃろうて」
国を継がねばならぬ王太子はともかく、第二王子も王女も奔放に人生を楽しんでいる風情はある。全ての貴族子弟がそうあれるかといえば難しかろうが、そういう方向を望む貴族子弟がいても問題は無いのだろう、と老人は言った。
「まして、お主は五男で一度は家も出ておろう? 貴族子弟というより、市井の者のようなもんじゃろうが」
「いや、そうでもないですがね。平民は召使など雇わない方が多いでしょうし……」
「平民にもいろいろ居るのじゃぞ。そうじゃな、学生として来ておる冒険者を見れば良く分かろうて」
貴族とも取引のある商会や、代々続く名家の出の子女もいる。かと思えば、滅んだ村の唯一の生き残りや、流浪の民の生まれ、孤児であったり帝国からの難民といった寄る辺の無い者もいる。王国では少数派になる異種族や、身分ある王国外の者達もそれぞれ様々な文化や背景を持って暮らしているだろう。生まれも受けた教育も異なる様々な階層を含むのが『平民』であり、『貴族以外全て』といえばその幅の広さも分かろうものだ。
「そうじゃなあ。いっそ、彼らに聞いてみれば良いのではないかのう。それぞれの思う所というものを」
若い者達の中にはまだ芽吹かぬ思いも、花開いた気持ちもあるだろう。人生経験を経た冒険者は、酸いも甘いも味わってきたのかもしれない。様々な人生を生きて来た彼らがいま、恋や愛をどう考えて、どのような未来を望むのか。それを言葉にするというのは教育的にも良い事ではないか、と老人は思う。貴族と平民がたまには学業や政治の事だけでなく、身近な話題でお互いの差と共通点を考えるのも、また良いことであろう。
●
「恋愛観について……? 討論の議題として?」
正副顧問が連名で出してきた議題を見て、トマスはとても不思議そうな顔をした。が、理由を聞けばなるほどと納得はする。
「部活にかこつけて、副顧問がハーフビーストの良さを語って皆に引かれる会になってはどうかと思いましたが、それなら良いんじゃないですか」
「ハーフビーストの良さ、私は興味がある」
タイコモが当たらずとも遠からぬ危惧を述べると、だらだらしていたカナンがそう応じた。彼女とシオンは戦闘と生活を支える傍仕えである筈なのだが、カナンはサボれるときはサボる猫気質で、真面目なシオンとはすみ分けているらしい。当人たちが納得しているならそれでいいのだが、とトマスは思いつつも議題について考える。
「……少なくとも貴族の恋愛というのは物語の中のものだと思っていたのだが。自分の人生を共に歩む婚姻相手が決まる前に生じるものは、いかに言葉を飾ろうとただの劣情ではないだろうか」
「トマス様の恋愛観はちょっとおかしい。そもそも恋は落ちるものだと聞いた」
「結婚してから愛情が生まれることだってあるんじゃないですか? そういうのだって恋愛ですよね?」
女性陣から駄目出しを受け、隣のタイコモへ目を向けると、彼はすました顔で言う。
「すみません。私は婚約者がいるので、婚約者がいない前提のトマス様の心情は分からないですね」
「そういえばそうだったな……」
タイコモは領内の有力な平民の娘とお互いが物心つく前から婚約しているらしい。たびたび顔も合わせているし、文のやり取りも欠かしていないのだとか。
「彼女との事を話せと言われれば、お話はしますが」
「……胸やけしそうなので止めておこう」
珍しくうきうきした様子のタイコモに嫌な予感を覚えて、トマスは首を振った。
政治討論部の副顧問にして、知る人ぞ知るハフビスキー教師であるテオドール・ディンドルフは、根は真面目な人間である。自分の趣向が貴族生まれとしては異端であり、かつ本妻が貴族令嬢なのに妾に複数のハフビを囲って波乱を産まない父親ほどの甲斐性はない事を自覚していたので、婚姻とは縁がない物と考えていた。
「サラ嬢との婚約がそのまま行けばドルトン男爵家の入り婿となるんじゃろう? それはまあ、身を慎む必要はあろうなあ」
相談された相手は、魔術師の塔に引きこもって数十年。わざわざ指摘するのも野暮だが女性との出会いなど無かったであろうリヴァマス老人であった。どうしてその相手を選んだし、と言いたくもなる。身近で、政治的にめんどくさい関係性が無いオトナで、暇そうな人が他にいなかったにしても。
「まあ、私の趣向は父とは違うのかもしれない、と最近思い出したのですけれどね」
「ほう?」
とある女子生徒に、触れるなら相手の了解を得る事と言われてそうしていた結果。どうやら、眺めているだけでも満足な自分に気が付いた。もふもふした毛皮やつるりとした角など、人にない部位に触れると嬉しいのだが、それは性的な対象としてではないようで、父親とはそこが根本的に違うらしい。
「それを我輩に話してどうしようというのか。まあ、サラ嬢に話せば良いのではないか? 浮気をする事はない、という意志表示にはなろう」
「いや、さすがに10歳は下の子供に話す内容では……」
50歳上の老人に話しても仕方がない事ではある。が、そもそも貴族の子弟に愛だの恋だのという物は縁遠いのではないか。物語の中では、あるいは『○○侯爵の所の先代のお嬢さんが』みたいな結構遠い伝聞では聞くことはあれど、自分に置き換えて考えるのはなかなか難しい。テオドールにしろ、状況に流されてサラと婚約する事になった手前、相手が嫌な思いをせぬように配慮しようと考えているだけだ。恋愛というより保護者感情の方が強そうではある。
「じゃがのう。貴族の結婚など、始まる前に盛り上がっている方が少ないのではないか? 国王陛下は毎回大恋愛だったようじゃがな」
「御老の話を聞いていると、国のトップなのに、案外自由人に聞こえますね……」
「義務は弁えつつも自由でありたくはあったのであろうなあ。まあ、殿下達を見ていると、そういう血筋なのじゃろうて」
国を継がねばならぬ王太子はともかく、第二王子も王女も奔放に人生を楽しんでいる風情はある。全ての貴族子弟がそうあれるかといえば難しかろうが、そういう方向を望む貴族子弟がいても問題は無いのだろう、と老人は言った。
「まして、お主は五男で一度は家も出ておろう? 貴族子弟というより、市井の者のようなもんじゃろうが」
「いや、そうでもないですがね。平民は召使など雇わない方が多いでしょうし……」
「平民にもいろいろ居るのじゃぞ。そうじゃな、学生として来ておる冒険者を見れば良く分かろうて」
貴族とも取引のある商会や、代々続く名家の出の子女もいる。かと思えば、滅んだ村の唯一の生き残りや、流浪の民の生まれ、孤児であったり帝国からの難民といった寄る辺の無い者もいる。王国では少数派になる異種族や、身分ある王国外の者達もそれぞれ様々な文化や背景を持って暮らしているだろう。生まれも受けた教育も異なる様々な階層を含むのが『平民』であり、『貴族以外全て』といえばその幅の広さも分かろうものだ。
「そうじゃなあ。いっそ、彼らに聞いてみれば良いのではないかのう。それぞれの思う所というものを」
若い者達の中にはまだ芽吹かぬ思いも、花開いた気持ちもあるだろう。人生経験を経た冒険者は、酸いも甘いも味わってきたのかもしれない。様々な人生を生きて来た彼らがいま、恋や愛をどう考えて、どのような未来を望むのか。それを言葉にするというのは教育的にも良い事ではないか、と老人は思う。貴族と平民がたまには学業や政治の事だけでなく、身近な話題でお互いの差と共通点を考えるのも、また良いことであろう。
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「恋愛観について……? 討論の議題として?」
正副顧問が連名で出してきた議題を見て、トマスはとても不思議そうな顔をした。が、理由を聞けばなるほどと納得はする。
「部活にかこつけて、副顧問がハーフビーストの良さを語って皆に引かれる会になってはどうかと思いましたが、それなら良いんじゃないですか」
「ハーフビーストの良さ、私は興味がある」
タイコモが当たらずとも遠からぬ危惧を述べると、だらだらしていたカナンがそう応じた。彼女とシオンは戦闘と生活を支える傍仕えである筈なのだが、カナンはサボれるときはサボる猫気質で、真面目なシオンとはすみ分けているらしい。当人たちが納得しているならそれでいいのだが、とトマスは思いつつも議題について考える。
「……少なくとも貴族の恋愛というのは物語の中のものだと思っていたのだが。自分の人生を共に歩む婚姻相手が決まる前に生じるものは、いかに言葉を飾ろうとただの劣情ではないだろうか」
「トマス様の恋愛観はちょっとおかしい。そもそも恋は落ちるものだと聞いた」
「結婚してから愛情が生まれることだってあるんじゃないですか? そういうのだって恋愛ですよね?」
女性陣から駄目出しを受け、隣のタイコモへ目を向けると、彼はすました顔で言う。
「すみません。私は婚約者がいるので、婚約者がいない前提のトマス様の心情は分からないですね」
「そういえばそうだったな……」
タイコモは領内の有力な平民の娘とお互いが物心つく前から婚約しているらしい。たびたび顔も合わせているし、文のやり取りも欠かしていないのだとか。
「彼女との事を話せと言われれば、お話はしますが」
「……胸やけしそうなので止めておこう」
珍しくうきうきした様子のタイコモに嫌な予感を覚えて、トマスは首を振った。
解説
春なので浮ついた空気がアニエピカに流れていると聞いて。
いちゃいちゃが板についた方々、生まれたばかりのほやほやさん、カップル未満やまだ夢を抱いているだけの人、ハーレム王、あるいは手痛い失敗や甘い回想がある方など。
恋愛については様々な立場の方々がいそうなので、この機会に思いの丈を吐き出す機会を用意して見ました。
なお、プレイングで下記の記号を使って下さると、整理しやすくなりマスターが助かります。
選択は複数可です。
【1】:体験を語る
実際の恋愛について(あるいはそう言う体で)体験談を語るのはこちら。
ただしお相手がPCの場合は、そちらの方もシナリオに入っていないと名前を出せません。ご了承ください。
【2】:夢を語る
恋愛についてや将来についての夢を語るのはこちら。
お相手についての注記は【1】と同様です。
【3】:聞き手に回る
聞きながらも、色々感想を述べたり自分なりの恋愛観や決意を固めたりするのはこちら。
ただ聞いてニマニマしたり、ヤジを飛ばすのも構いません。
言われた方が不快になりそうな場合は丸くします。
【4】:NPCを弄る
字数配分計算上、分けておくと私が楽なので分けました。
同行しているNPCに質問したり、からかったりするのはこちらです。頭の固い貴族男子NPCどもに甘い蜂蜜を喰らわせたり、苦い薬草を食わせても良いと思います。
多分女子の方は現実的です。
※注意書き
政治討論部の入部希望者はプレイングでその旨をお書き下されば、称号を付与いたします。
入部は聴講生でも、初参加の方でも大丈夫です。
●政治討論部って何するとこ?
名前は政治討論ですが政治に限らず、いろいろ質問したり回答したり意見を募ったりできるような場所です。
今回もそんな感じですが、基本的に部室で喋ってるだけみたいなシナリオが多いです。
関連NPCにトマス(部長)やリヴァマス(顧問)が良くついてきます。
もっと詳しくという方は少し前のシナリオ「政治討論部の新年へ向けて」に質疑がありますので宜しければご確認くださいませ。
マスターより
紀藤です。お世話になっております。
学園で難しい事を議論すると貴族様が偉そうに喋る事が多いですが、この議題なら平民が貴族を攻めても不思議はない!(と思う)
政治討論部の中の話は基本的に身分や立場を問わない場所という建前なので、色々話してくださると良いですよ!
いつものNPC一覧を下の方にペッと張りました。
●NPC
ヘルベルト・リヴァマス
討論部正顧問。お爺ちゃん講師。だいぶ前に政治的理由で魔術師の塔に追放されたが今は結構自由人。
トマス・ダンテ
ダンテ伯爵子息の4回生。キャスター。学業実技とも良い。討論部部長。
タイコモ・チー
酷い名前だがトマスの懐刀で同学年同い年。子爵子息。ヒーラー。学業実技とも良い。
シオン、カナン
トマスの子飼いで同学年同い年。孤児院出。ウォーリア、シーフ。実技優秀。シオンは討論部副部長。
サラ・ドルトン(15)
男爵令嬢。己を磨く系意識高め女子。ヒーラー。テオドールと婚約中。
テオドール・ディンドルフ(テオ)(28)
討論部副顧問。筋金入りのハフビ大好きなくせに貴族の子。五男。学園派にも公平に当たる。サラと婚約中。
リプレイ
シルヴィア・A・カペルは学園の後輩として、トマスの真摯な所を評価していた。答える必要が無い、あるいは答えれば自分にとって不利になりうる内容であっても、質疑に真摯に応じている姿をそう評したのかもしれない。しかし、物事には限度という物があると、彼女でも思うことはある。
「僕は男でありながら男性に恋することになりました! ですが皆さん、なぜか付いてるってだけでお断りしてきます」
「ふむ、そ、そうなのか……」
カミンル・マオの熱い語りに、トマスは相槌を打つことしかできない。通常の恋愛感情すら良く分からんという彼に、♂×♂は上級者モードすぎる。
「なるほど。断られた経験があるんだな。ちなみに何回くらいだ?」
「フラれた数は30回を突破! なぜ! 殿方は! 付いてるってだけで! お断りするのでしょうか!」
メモ帳片手に問うレタラ・スマリへ、カミンルはコブシの籠ったシャウトを放つ。ちなみにレタラは人の恋バナを聞きに来た口だが、その目的はドゥジンシの種である。無論、本人に迷惑の掛からぬよう換骨奪胎するのは当然のたしなみだが。初っぱなからかなりエッジのきいた恋バナを聞けたレタラはクールな顔の下で大喜びである。
「貴族は、子を為さねばならない。例え、容姿や性格が女性のようではあっても前提として難しいと……」
「『女の子と勘違いする位可愛いとは思うけど』って何の慰めにもなってねえ!!」
「いや、そこまでは言っていない」
真顔で首を振るトマスと、興奮のあまり顔に血の上ったカミンルの顔をチラチラ見つつ、レタラはクールな表情のままペンをせわしなく走らせていた。
「……こほん。私としては、トマスの好みのタイプも聞いてみたいな」
「あ。ああ、シルヴィア嬢か。……好み、だと」
年齢の割には落ち着いて振舞っているトマスがシルヴィアの助け舟へ明らかに安堵の表情を浮かべ、思考を立て直すまでに数秒。今度は難しい顔で考え込む。
「『私が誤った時に正してくれる者』かな。だがそれだと男性でも構わない訳で、女性に限るとなるとわからないな」
「……誤った時に正してくれる者、か」
「ふふ、否応なく惚れてしまう人が現れるかもしれないよ? 恋とは落ちるものだから」
何やら思う様子で副顧問が顔をしかめ、まだピンと来ていない様子のトマスに、シルヴィアは年上の女性らしい含んだ笑みを見せた。そんな会話の隙間にカミンルが首を突っ込む。
「今、男性でも構わないって」
今、何でもするって言いましたよね、と言わんばかりに狩人の目に変わるカミンルに、理由は分からずとも身の危険を感じて後退するトマス。メモ帳の次のページをめくりつつ熱い視線を送るレタラ。この男、同性同士にも理解があるタイプのドゥジン教徒である。
「……トマスさん、よく見ればイケメンですよね」
「いや、私は少なくとも男性に恋情を抱く事は無……っ、待ちたまえ。落ち着くんだ」
「返答が迂闊だよ、トマス。……まあ、貴族は伴侶を自ら選べる事は、基本的には無い。想いが通じても障害は大きいだろうがね」
苦笑しつつも、身分違いの恋人を諦めきれずに手立てを尽くしている最中のシルヴィアからすると、障害がある恋路は他人事とばかり思えなくはある。歴史を辿れば時々前例がある身分違いの恋は、同性同士の婚姻に比べればまだ障害は少ない筈だ。そう思って眺めればいっそ勇気づけられ……る事は特になかったが。
(彼を諦めたくはない。いや、諦めることなどできない。だから、彼のルーツを辿った。貴族としての責務も捨てず、恋人の手も取る為に出来る限りの事はしようと思う)
人事を尽くして、もしも敗れた時の事までは考えてはいないけれども。身分を捨てたなら、今の様な対等な形でトマスと語る事もなくなるのだろうか。恋を捨てたなら、今のように笑えることが無くなるのは間違いないのだろう。
●
「恋愛について語れる程の経験なんて積んでないけど……」
などと憂いを込めた容貌でエルゼリオ・レイノーラが口を開く。彼もカミンルのように女性と見まごうような容姿をしていたが、ここ数年で少し男らしくなったのではないかと自分では思っていた。その、男性らしくなっていく最中に一人の少女に出会った。
「冒険者として仕事してて、ボクにも一応気になる女の子はできたんだ。――って言うか、文字通り『できただけ』って言うか……」
「どういう意味だ?」
何とか進行役に戻ってきたトマスが問うと、エルゼリオは困ったように笑う。
「依頼で顔を合わせる事が殆ど無くなって、消息も不明になっちゃったんだよね。何か事情があるんだろうけど。……元気にしててくれたら良いなぁ」
「そうなのか……。冒険者であれば、伝手を追うのも難しかろうな」
良くも悪くも逃げ道のない貴族とは違い、冒険者はその身一つの根無し草も多い。係累もなければ消息を辿るのは困難だろうと、トマスにも理解はできた。しかし彼に分かるのはそこまでで、会いたくて会えない切なさなどは想像の端にも上っていないのだが。
「ボクも切り替えて行かないと! ――なーんて思うものの、そう簡単には行かないモンだよねぇ……」
威勢が良かったのは前半だけで、エルゼリオはべしゃりと机に突っ伏した。そのままじとーっと上目遣いでトマスの方を見る。
「……そうだ。トマス君には気になる娘とか居ないの?」
「討論部の活動で知り合った女性達は、皆それぞれ魅力的だと思う」
「え、本当に?」
「ああ。芯の強さも、能力も敬意に値する。私に無い視点を持っている事も……」
「そういうのじゃなくって。冒険者の女の子にワイルドな魅力を感じたりとかしない?」
「ワイルド……野性的という事か? 幾人か思い当たる顔もあるし、頼もしいと感じる事はある。確かに魅力的な要素ではあるな」
最後に『配下に迎えるには』と付きそうなセリフを聞いて、これは本格的に駄目なのでは、とエルゼリオは途方に暮れた。このトマスと言う男、理性先行で育ち過ぎて情緒は10歳前後なのではないか。近くにシオンとカナンと言う女性がずっといてこれでは……、と思った所でララベル・サン・ディーベルと目が合った。
「あ、ララベル君なら何か、トマス君の参考になる事があるんじゃないかな?」
「え。僕? なんだか少し恥ずかしいけど、それで誰かの役に立つなら……」
ララベルが複数の女性と良い仲である事を当事者たちは特に隠していない。依頼でちょくちょく一緒になる者ならば何となく察しているかもしれないし、決戦などでまとまって行動する際の様子からも分かる人には分かるものだ。しかし、どういう切っ掛けでそうなったのかとか、どういう努力で関係を保っているのか、などは知られていなかった。
「……僕の場合、家が宿屋だから、泊まってくれる子達と自然に仲良くなっていって、冒険者として一緒に冒険に行ったり、一緒に暮らしているうちにお互いに、ね」
『自然に仲良くなって』とか『一緒に暮らしているうちに』などという、モテる者の当たり前感あふれるコメントに嫉妬の涙を流すような男性はこの場にはいない。むしろ、ジュスト・ヴェルジー辺りは実感の籠った顔で頷いていた。
(まあ、俺の場合、本当に欲しいものはそうは行かなかったけれど)
特に欲しくも無い相手の心は簡単に落ちてくるのに、肝心な相手とは上手くいかない。――そう、貴族にとって婚姻と恋愛は別物。別物だから不要と捨ててしまったトマスとは違い、ジュストは恋も愛もほどほどに楽しむことを覚えた。力も甲斐性もない自分には、特別に想う相手もそんな風にほどほどにしか愛する事が許されないかもしれない。それが耐えきれなくて、それ以上を望んでしまうその想いへ手を伸ばすことをせず、余所の華で自分を慰めた。
「自然に、か。確かに恋とは落ちるものと聞いた。つまり特に何もする必要は無いという事なのか?」
「トマス様、その。もう少し言葉を選ばれますように……。女性の夢を壊すような発言は控えた方が宜しいかと思います」
「ええと、何もしないとかそう言う訳じゃないよ。誤解させちゃったならごめんね」
あまりにもあまりなトマスの感想を見かねたレティシア・レインフィールが口を挟み、ララベルも首を振る。
「幼馴染みで近すぎて、ずっと気づけなかった気持ちがあったり、逆に出会った瞬間に感じたドキドキもあって、皆違う恋だけど。僕だけがそう思ってるのか、恋人さん達もそうなのか。お互いに確かめて、お話して、それで良し、ってなるには。……やっぱりどこかで勇気を出して動かないと駄目なんだ」
自然に気持ちが高まって、それでも一歩を踏み出さないままに別れてしまう恋も世の中にはたくさんあるのだろう。多くの人は一つの縁を繋ぐのに精一杯で、ララベルは少しばかり余人より繋げた縁が多かった。それを全て手繰り寄せて成就させるのは、並ではない魅力と努力があったのかもしれない。
「今も側に居ると幸せだし心がドキドキする……。だから僕、僕を想ってくれる恋人さん達の事、一生かけて絶対幸せにするんだ」
「その気持ちは俺にも理解できるかな。自分で幸せにする、と決断する事がどれだけ重要なことか」
ララベルのように多くの相手に想われていても、ジュストが欲しいのは1人だけだ。人数の部分は異なっているにしても、覚悟の必要性についてはララベルに同意できた。
「ふむ。そういうものなのか?」
「そういうものだよ。俺も、偉そうに言う程わかっちゃいなかったがね」
分かっていない様子のトマスを、あまり笑えたものでもないとジュストは思う。特別な想いは大事に抱えたまま芽吹く事も無いほどに深く埋め、時間を掛けて腐っていくのが正しいと、最近までは考えていた。覚悟を決めたのは、ごく最近だ。
「いや。特別な人を幸せに出来るだけ強くなれば良いって開き直ったんだよ。最近。言う程簡単なことではないけれど……家の事情と、お互いの年齢的にそろそろ話を進めないと、と思っている所」
「そうか。それは……、おめでとうで良いのかな」
「気が早いけれど、ありがとう」
自分の事はさておき、他人の関係性にはそこそこ感度の高いトマスに礼を言う間も、ジュストは想い人へ目を向けはしなかった。まさかバレていないと思っている訳でもなく、これは彼女に向けた言葉ではない、という意志表示なのだろう。ジュストから自分達の関係を許さない世界への宣戦布告は、自分の実家でも相手の家でもなくまず友人達へ知らしめられた。
「シオンとカナンとは、そう言うの無いの? あと、タイコモもずっと皆で一緒でしょ? タイコモの惚気話も、ボク聞いてみたいな」
良かった良かったという顔をしているトマスの迂闊な足元を、ララベルが掘り返す。
「恋愛感情は無いですね。ただ、お子が生まれない場合には求められる事はあると思って仕えていますが」
「ララベルが言うドキドキはない。でも大事な家族」
「まだお前たちはそんな事を言っているのか。良い相手が居れば、契約に拘るなと言っているのだが」
「良い相手はいないから現状維持で問題ない」
困り顔のトマスだが、シオンとカナンは意に介していない。とはいえ、恋愛感情があるというよりは、確かに家族の親愛に近いように見えた。そしてタイコモはと言えば。
「彼女と初めて会ったのは、私が4歳で彼女が生まれてすぐですね。妹ではない、と言われてその時は良く分からなかったのですが。小さくて愛らしい姿になぜか胸が痛み、守らなければと強く思ったのは覚えています」
「俺も、出会った時の事は忘れられない。世に人の数だけ恋愛の形はあるだろうが、俺や君にとってはそういう形なのだろうね」
男としてのタイプは全然違うジュストが、「わかる」みたいな顔で何度も頷いている。本当に長そうな話だった。ララベルが興味深そうに聞いているところから、聞き飽きているトマスとシオン、カナンがそっと立ち去っていく。
●
「言っておきますが、僕の体験は半端じゃないですよ。まず初恋! 僕が虐められている時に救ってくれた男の子!」
(……頼りになる人、ってことかしら)
カミンルの恋愛遍歴を聞くともなく聞きながら、ルベア・ベルニは自分に置き換えて考えていた。人見知りだった彼女にも、この一年程で随分知人が増えた。ルベアから見て魅力的な人も多く、周囲で恋愛の話を聞くことも多い。楽しそうな顔を見れば羨ましいとは思うのだが、自分がと思えばなかなかイメージが合わなかった。
(危ない時に助けてくれる、だけじゃなくて。普段から甘えられる人が、良いのかもしれないわね)
暖かく心安らぐ関係を、ルベアは望んでいるのだろう。普通の友人よりも甘えられる相手は、同性ならばすでに一人。自分の中では友人の枠を超えた親友だと思っている。彼女が異性であったなら、恋に落ちていたのだろうか。イメージすれば、おそらく、多分、もしかして? ルベアが思考に耽溺していた間に、語り手のカミンルに聴衆から小さな手が挙がった。
「それからどうなったのでございますか?」
「そこのキミ、良い質問ですね! 別の街に引っ越してしまい会えなくなり撃沈!」
ふんふんと鼻を動かしつつハリーヌ・ヨツユビが問うと、もう大分吹っ切れているのかカミンルはノリ良く返答する。
「想いを打ち明けなかったのでございましょうか?」
「そんな暇も無かった! これが記念すべき失恋1回目です! いや記念にしちゃだめですが!」
「いえ、恋愛や結婚は人生のイベント、結果に関わらず大事な記念であるべき事かとワタクシは思うのでございますよ」
と、小柄で見た目ハリネズミのハリーヌに言われると、「そうかなあ?」などとカミンルも素直に考え込んだ。さっきまで「『付いているのはいけないことか?』 次回の議題はこれにしましょう!」などと興奮した様子でトマスに詰め寄っていたのだが、ハフビ癒し効果は馬鹿にできない。副顧問辺りはそう考えているだろう。
「興味本位なんだが、そういうアンタはどうなんだ? 恋とか愛とか結婚だとかに、思う所が何かあるからここに来たんだろう?」
取材中のレタラが水を向けると、ハリーヌは「そうでございますねえ……」などと受けつつ頭を回転させた。恋や愛が分かっている訳ではない。ただ、恋愛にこれだけ熱を入れる人たちを見ると、きっとそこで動くお金も大きいし一儲けできそうだと思ったのだ。
(これだけ大勢の方がお悩みなのですから、恋愛相談ビジネスなどウケそうでございますね)
等と考えているのだが、道に悩める探索者が迷宮りーなに話しかけるがごとく、道に迷った若者が性別不詳のハリネズミに正解を求める事もあるかもしれない。
「あまり語りたくない事だったろうか。だとしたら悪かった」
しばらく黙っていたハリーヌに、いつもの如くテンションが上がって調子に乗り過ぎたかと反省の色を浮かべるレタラだが、そう言う訳では無かった。
「ああ、ワタクシの様な者の結婚でございましたね。ええ、故郷の村では、だいたいご近所同士の歳の近い者がいつの間にか結婚しているような感じでございましたねぇ。ワタクシはこのようなナリでございますし、まだよくわからないのでございますが……」
はたして自分にそういう話があるのだろうかと不思議そうに言うハリーヌへ、返す言葉が無い周囲のヒトたち。少なくとも彼らは姿かたちの近しい者がこれだけ身近にいるだけ、ハリーヌより恵まれている。しかし、恋とはきっとそういうものではないのだと、ゲルダはゆっくり首を振った。
「身分だったり、種族だったり、――お互いを隔てる壁があっても捨てられないものが、『恋』なのかなと」
「そうね。そう言う出会いが、一生に一度でもあったら良いけれど。高望みのし過ぎは良くないわよね……」
何物も意に介さず、甘えられる相手ができたならばと思ったルベアは深々とため息を吐く。そんな所に、副顧問がふらっと寄ってきた。
「ルベア君。少し良いだろうか?」
「……駄目」
「いや、触らせて欲しいという意味ではなく。少し時間を貰えるだろうか」
いつになく真面目な顔のテオドールに怪訝な目を向けると、彼は改まって以前にルベアが窘めた事の礼を述べてきた。腐っても侯爵家のテオドールに面と向かって不快感を指摘する者はそうはいない。思えば、幼い頃より接するハフビは父の妾ばかりで甘やかされていたのもあるだろう。あのままでいれば、いつか取り返しのつかない事もあったかもしれないとまで言われれば、そうかもしれないとも思った。
「何か学園で困ったことがあれば出来る限りの力になると、伝えておこうと思ってな。……ルベア君にはそれだけの借りがある」
「そういうつもりじゃなかった、けど」
ルベアにしてみれば余りに目に余ったから指摘しただけの事なのだ。しかし、テオドールは重ねて礼を述べて去っていった。確かに甘えられる相手がいれば、と思いはしたが相手は選びたいと思うルベアである。副顧問には婚約者がいるのだから、そういうつもりではないと思うのだけれど。
●
先刻のジュストの宣言を、ローザリカ・L・ディオールは背中で聞いていた。きっと、彼は自分を見ていないし、自分も彼を見て話さないのだから、お相子という物だ。
(まったく、君はまだ一人だけで強くなろうとしているんだな。懲りない男だよ)
ジュストが意を決したのは何も彼の独りよがりではなく、ララベルが言うように勇気を出して動いた結果だ。ローザリカとジュストの、こじれ切った長い長いすれ違いは一度で解決はしないのかもしれないけれど、一番大事な想いが繋がっていれば。例え見知った世界を敵に回しても恐れる事は無いと思える。
「お時間が許す限り、お話をどんどん聞いてみたいのでございますが」
掛けられたハリーヌの声に、ローザリカは頷いて見せた。
「そうだな。僕の話はそれほど面白みのない話だよ。……大切なものが、できてしまってね」
「大切なもの」
見るからに貴族令嬢といったローザリカの口からでた艶めいた言葉を、ルベアは我が身に照らすように繰り返してみた。自分にもいつか、と想像してみてもあまりイメージがわかない。どこか遠く、おそらくは過去へと目を向けながら、ローザリカは手にしたカップを意味ありげにかざす。
「けれども扱い方が悪くて傷つけてしまったんだ。思ったより熱くて、驚いたのかもしれない。大事に元の場所に戻せばそれで良かったのに、慌てて手を放して……」
「……落として割ってしまったのでございますか?」
「そうなっていてもおかしくなかったな。けれど見た目の割にしぶとくてね。ひびこそ入ったけれども、割れはしなかったよ」
お高そうなカップを見つめながら恐る恐る尋ねるハリーヌに、ローザリカは微笑を返した。
「それで、どうなったんでございましょう?」
「ふふ、それはもちろんとても困ったさ。そうだ、困った時の解決策を一つ、実体験から語らせてもらおうかな」
おお、と前のめりに身を乗り出す女子達に、ローザリカは「それほど難しい事じゃないさ」等と言う。それほど難しい事じゃないなら十年以上掛からないと突っ込む人は特にいなかった。
「腹を割って話す、結局はこれだった」
「話す、だけで良いの?」
「ああ。思い合っているからこそすれ違うというのもよく聞く話だろう?」
聞き専だったルベアが思わず質問する。相手がハフビであっても特段構えた様子もなく、ローザリカは頷いた。話すことが大事なのは何も恋愛に限らず、人と人とのつながりがこの世にある限り。真面目な顔で聞いている聴衆へ、少々芝居がかった様子でローザリカは言葉を続けた。
「つまり、『一人で』抱え込むのはきっと間違いで、僕はずっと間違っていたっていう話だよ。まあ、ちょっと迷っても、最後はハッピーエンドだともう決まっているんだがね」
別のテーブルでこちらを見ていない筈のジュストに聞こえる様に、ローザリカも己が決意を述べる。
(君だけに格好つけさせてやるものか)
という心中の声は、届いただろうか。
●
(あれでなんで付き合って無いんだろ?)
聞こえてくるジュストとローザリカの話に、ナキルは首を傾げている。とはいえ、最近ようやく付き合い始めた彼とエフィルミアの2人も他人をやきもきさせたのは同罪かもしれない。
「えーと、馴れ初め? って何を話せばいいんだ? ぶっちゃけ最初の印象は『コイツヤベェ』だったんだけど」
「コイツヤベェって何!? もー!」
別卓にいるレティシア的な評価基準で言えば、トマス以上に女性の夢を壊しかねぬ発言だが、エフィルミアはぷんすかしつつも傷ついた様子はない。どちらも貴族社会とは違った意味での強メンタルであり、だからうまくいっているのかも知れなかった。
「ナキルくんとは、最初から仲良しってわけじゃなかったんだよね」
「ああ、苦手な事と得意な事が凸凹だったり。言い合いとかも一杯したし……」
ナキルは思いつく事を思いつくままに話し、エフィルミアは聴衆を意識して会話を回しているようだ。ナキルも言うように、凸と凹で補い合っている感じだった。
「そんな2人が、どうして恋仲になったのでございますか? 切っ掛けなどあったのでございましょうか」
興味あります! とばかりにふんふん鼻を動かすハリーヌに、ナキルとエフィルミアは顔を見合わせる。ヴァレリア・ブランシェ・ウィザースプーンも静かに耳を傾けていた。依頼でしばしば行動を共にし、学園の門をくぐるのも一緒だったナキルの、自分がまったく知らない顔は興味深い。
「切っ掛けは何時か分からないけど。いつの間にかミアの姿を探すようになってた。同じ髪の色とか、そんな事で」
「私は依頼で一緒になって、助け合ってるうちに惹かれていった感じかな?」
「……星を二人で見たりもしたな」
照れくさそうに語るナキルに対し、最初の頃は気にも留めていなかったらしいエフィルミア。どうやら意識したのはナキルの方が先であるらしい。
「好きって言われた時はビックリして。『私の理想は私より背が高くて、世界一かっこいい人だからね!』なんて意地張ったりもしたよね」
「う……言われた、な」
「もう! 今はそんなこと思ってないからね。だってそんな事言ったのに、私を追いかけて来てくれて、守ろうとしてくれて!」
思い出して凹むナキルに、エフィルミアがかつての言葉を否定で上書きする。
(守ろうとして……ね。そういうのは、羨ましいかな)
聞いていたルベアも乙女として憧れるシチュエーションだ。他にも、うんうんと頷く者は女子に多い。
「私を想って一生懸命になってくれるナキルくんが世界一かっこよくて、大好きなんだよ」
(ははあ、なるほど……。これは勝てませんね。いえ、別に何かで勝負を挑むつもりもないのですが)
駆け引きも無くまっすぐなエフィルミアの言葉に、聞いていたヴァレリアが苦笑を浮かべた。何やら真っ赤になったナキルが「オレの方がミアを好きになったのは早いし」などと張り合っているが、御馳走さまと言う奴である。
「好きになったのはナキルくんからかもしれないけど、今は私の方がいっぱい好きだもん!」
「ぐ、オ、オレだってその。ミアの事が……好、好きだぜ?」
「お互い素直になれたようで何よりだ。ナキル、私の可愛い妹をよろしくね」
良く分からぬ理由で張り合い始めた2人に、シルヴィアが声を掛けた。
「ありがとうございます! シルヴィ姉様達みたいな素敵なカップルになりますよ!」
「先生たち、みたいにか……?」
頭の中に、2人で並ぶ図を描くとどうにも自分の身長が気になる男の子。ぐぬぬ、と唸る背中へエフィルミアがバシンと気合を入れる。
「何よ! 自信ないの?」
「そんな事ねーよ!」
(放っておいても良いかとも思いましたが。これは少しはお世話しても良いかもしれませんね……)
ぎゃいぎゃい騒ぐ学友を、ヴァレリアは面白そうに眺めていた。
●
「聞いていましたでしょう? 恋愛とは端的に、傍に居るだけで幸せになれる感情なのです!」
思いに耽る皆々と違うテンションで、マリィ・スノードロップが高らかに歌い上げた。好きとか嫌いとか最初に言いだしたのが誰かは知らないが、今この瞬間の教室内でもっともテンションが高いのは間違いなく彼女だ。聞くのは十分に聞いた。今は語りたくて仕方がない。そして語るという事は聞き手が必要である。
「はいっ、そこの自分は関係ない的なお顔をしてるだわさん! 宜しいですか?」
相手として指名されたのは、いつも通り表情が薄いだけでなく心なしか存在感の無いだわである。恋愛への知見はトマスといい勝負の彼は、未知なる存在を知る事で処世の手立てとしようとこの場に訪れていた。空気のように聞き役に徹していたはずの自分に、マリィの指先が向いている。右を見て、左を見て、自分か、というように首を傾げると満面の笑顔でマリィが頷いた。
「……お手柔らかに」
ここまで色々な話を聞いて、思う所は無いだろうか。今までの人生で恋や愛を感じた事は? とマリィに問われただわは、持ち前の真面目さで人生を回想する。今日耳にした様々な恋バナと条件が合致するものは、無くも無い。そう、例えば。
「触れていると落ち着く、心から大切にしている、美しさに見惚れたこともある……これも恋か?」
「それは間違いなく恋ですね! 隅に置けません。お相手は誰ですか?」
「剣なんだが」
まさかの無機物! いや、世の中には彫像に恋する話とかもあったようななかったような。マリィは愛の伝道師として生徒の自主性を重んじたい。とりあえず愛の本気度を試そうと質問を一つ。
「剣に口付けをできるなら或いは……」
「ああ、したことはあるな」
「え、したのです……?」
武運長久を祈り、戦場で生死を共にする剣に口を寄せる、といった戦士の習いはマリィの脳裏には浮かばず、思わず真顔で問い返してしまう。それはさすがにマニアックすぎるのではないかともう少し詳しく聞けば、どうやら恋愛とは違うベクトルと分かって思わずホッとした。
「そちらについては、私もあまり造詣が深くなかったので、良かったです。では、ヒト! ヒト相手にそういう気持ちになった事は無いのですか? 一緒にいたいとか、そういう……!」
「他人に……? 剣のような愛着を?」
「剣の事はもういいですから」
再び真顔で突っ込まれ、だわは身の回りの人間の顔を思い浮かべる。顔見知りは最小限にしようと思っても、生きている限り他人との接点はできるもので、例えばこのお節介なハーフビーストもそうだ。他に、と思えば何かと甘えてくる少女の顔も思い浮かんだ。
「……一緒に、と言ったが。共に歩んでも、いつか別れが来るかもしれない。……不安にはならないのか?」
いつかと言ったが、だわにとっては遅いか早いかはともかく確実な未来だった。この身はとうに祖国に捧げている。リーンエス王国は今でこそ大陸一の大国だが、シルトラース帝国の例を見れば永遠の繁栄などあるとは限らない。その時になれば自分は迷わず戦火に身を投じるだろう。そう語れば、マリィの熱はそのままに声のトーンが少しだけ落ちた。
「生きる物すべてに、死だけは平等で。だわさんがそう思うように、国だって滅びてしまう時は不意に訪れます」
マリィの祖国は、まさにそうして滅んだシルトラース帝国で、愛する故郷はもう戻らない。マリィは口にしないが、故郷の人たちも多く失われたのだろう。実感の籠った言葉で、彼女はだわの心に向き合う。
「失くす不安を考えれば胸が張り裂けそうなほど、苦しいはず。でも。愛することを怖がったらきっと何も得られない」
失う前からそれを恐れて手放そうとして、結局はその為の力を求めたと、さっきジュストが語っていた。だわも彼も、力を求める理由は何かを守る事。逃げたくなる怯懦と、その為に力を欲する勇気のどちらを選ぶかの二択と言われれば、成程、恋や愛とは脳筋思考でも意外と分かりやすくも思えてきた。多分錯覚だが。
「……不安だからと遠ざけるのは、戦いが恐ろしいからと剣を捨てるようなものか」
「だから、剣は……! いえ、剣から離れられなくてもいいです、この際。ええ、誰かを思えば剣を取って戦える強さを齎してくれる、それが恋だと、私は思います!」
何かを振り払うように首を振り、マリィは晴れやかな顔で言う。だわも、何か悟りを開いた心持で頷いた。要するに、強くなればいいのだ。と、思ってから心に僅かな迷いが過ぎる。
「……強さは得たい。これは下心か?」
下心というのは恋愛にとって良くない物だ、といつかどこかで聞いたような気がする。そんな胡乱なだわの問いかけに、マリィは親指を立てて返した。
「恋愛に下心はだいじ!」
「そういうものか。なるほどな」
わかったような顔で頷いているだわが、別に何もわかっていない事にマリィが気が付くのは、もう少し後の事になる。
●
朴念仁のトマスとだわ、おこちゃまのナキルや玄人すぎるジュストと、これまでの男子は普通の事例に乏しい。カミンルは言うまでもなくイレギュラー側だ。聴衆から見て等身大な恋バナを語ったのはこれまでエルゼリオ位ではなかろうか。そんな状況で次に語り手となったのは海神・江流である。
「……俺も普通の恋愛話ってわけじゃないんだけど。それに、あまり話すと学園内での風当たりも更に強くなりそうな気がするんだけど。……まぁいいか、部活だもんな」
他の学生達より一回りは年長の彼だが、恋愛に関して上手かと言えばそんな事は無い。身構えるまでもなく不意打ちでやられた側である。一目惚れとは身構えている時には来ない物なのだ。
「恋は落ちるもの……って誰かが言ってたけど。ここは同意。落ちてしまったら理屈じゃないんだよな」
「そういうものなのか」
「そういう物なのです!」
理屈で割り切れない感情に、だわは良い想いを抱けない。のだが、マリィが満面の笑顔で頷く様子からすれば良い物なのかもしれない。少なくとも、理解すべき謎だという思いは深めつつ耳を傾ける。
「理屈じゃないって言うのは、例えば。隣に好みに120%合致した好条件な物件があったとしても、落ちた時点でその人じゃないと駄目になんだよね」
「随分具体的だが、好みの別の女に誘惑される事でもあったのか? そこの所詳しく」
「……ノーコメント」
斜めに食いついてきたレタラを軽くあしらい、部活のお題目を考えれば、悩める若者に参考になりそうな事をと首をひねる。あまり悩んでも仕方がないか、と今の想いを語る事にした。
「そんな相手に自分が相手に何が出来るか。ってのはいつも考えてるかな」
「具体的には、どんなことなのかな?」
横合いから楽しそうに声を掛けてきたシルヴィアに、もとより表情豊かとはいえない江流の顔が虚無を浮かべた。
「シルヴィ、楽しそうだね」
「江流も私の友だが、彼女も私の友だからね。君がどう考えているのか、気に掛ける資格はあるだろう?」
それだけではなく、江流とその想い人の立ち位置は、シルヴィアと想い人の関係とも似ている。普段は怖いものなどないと二本の足で立って見せるシルヴィアなれど、同じ悩みを共有できる友の存在はありがたいのだ。そんな含みも察すれば、仕方がないとため息一つ。
「目にも耳にもなると言った立場もあって今は、冒険者のお仕事の土産話くらいだろうけど……。いずれは、して欲しいことが言わないでも分かるようになれるといいんだけどね」
「話し合う事が大事という者もいれば、言外に意を
察したいという者もいる。戦術は必勝法一つと言う訳にはいかないのか。なかなか難しいものだな、恋愛とは」
そう真顔で腕組みをするだわにはマリィという教師がついているのできっとなんとかなるだろう。着席してからも、江流は誰かが想い人について何か言ってくるのではと身構えていたが、特段動きはないようだ。まあ、部活内の貴族子女はだいたい自分の事で忙しい日ではある。貴族派の末席に最近なったばかりのサラとて、点数稼ぎに情報を漁る程の熱意はないようだった。
●
「わたしも、聞いた話なんですけれど……。とある商家の娘さんの話で」
そう切り出したリサ・ベイカーに、耳聡い女子学生たちはチラチラと目配せをする。コイバナの席で『聞いた話』だの『友達が』だのというのは大体、そういう事だ。しかし、リサの親友を自認するゲルダ・クラインは、己の背筋がひゅんと伸びるのを感じた。
(リサさんの知り合いで、商家の娘って。もしかしてわたし……、でしょうか)
恋や愛など良く分からない。ずっとそう思っていた自分が、なぜ『自分の事かもしれない』と感じたのか。そんな心の動きに困惑しながら、ゲルダはリサの言葉に耳を傾ける。
「出会ったのは、商人同士の会合で。親についてきただけの女の子が15歳、相手の方は3つ年上の時でした」
(15歳……。だったら違いますよね?)
今の自分は16歳で、15歳だとしたら一年前。その頃には何も無かったと胸をなでおろしてから、また自分の感想に首を傾げた。もし16歳と言われたら、どうだというのだろう。ゲルダが戸惑う間にも、リサの話は続いている。
「お互いの家はライバル関係で、うまくいかない事も分かっていて。でも惹かれ合ってこっそり隠れてデートしたり。……それでも、親には分かってしまうんですよね」
家を捨てる訳にはいかない。だから2人とも終わりがいつか来る事も分かっていた。そしてその終わりは特に劇的でもない、ありふれた形でやってきたのだという。
「男性の方に、婚約のお話があったそうです。そちらの商会と関係の深い傘下のお嬢さんでした。女の子が身を引いて、それでこの話はおしまいです」
(なるほど。そういう話でしたか)
ヴァレリアは内心でそう呟いた。有力な商人の話とは言え、エスト・ポーラは遠い。ヴィザースプーン家の情報にも表向き以上の話はなく、ただあちらの大きな商家が数年前にちょっともめたが大したことにはならなかった、という報告書の一行分に過ぎなかった件。ひょんなところで詳しく知れたものだ。
(とはいえ、これは家へ報告する必要はないものですね。別に商売の役に立つものでなし……)
いや、利用しようと思えばどうにでも役に立つのだろうが、ここは同い年の女同士の恋バナとして、胸に収めるのが作法というものだろう。
(平民同士であっても、貴族のようなそういうお話はあるのですね)
口には出さなかったが、レティシアはその少女の結末は仕方がないものと思う。生まれに伴う義務という物はある。その少女が立場を弁えずに心のままに振舞えば、お互いの商会の従業員をはじめ多くの者が迷惑を被ったのだろう。
「……とまあ、良くあるお話ですね。貴族でなくとも、やはり身分やら派閥やらは関わってくるんですよ」
リサが口にした言葉も、レティシアの感想を裏付けた。家の為になる婚姻、為にならない婚姻。立場ある家の娘に選択の余地などは無い。レティシアの知る正義に揺らぎなどない。
(いえ、継嗣を産む義務を果たした上で、問題にならない程度に恋愛を楽しむのも貴族の嗜みという考えもあるそうですが……)
レティシアはどちらかといえばトマス寄りの思考で、配偶者には愛情が無くとも敬意を抱かねばならないとは思っている。もしそんな風に浮気をするにしても、最低限配偶者の同意は必要なのではないか。などとある意味惚けた事を真面目に考えれば、婚約者の顔が脳裏に浮かんだ。
「……貴族の婚姻と恋愛に、繋がりはあるのでしょうか」
相手に愛情があるのかと言われれば、無いのかもしれない。しかし、不幸になって欲しいと積極的に思う訳でもない。相手が望み、家が望んだ関係性にレティシアの同意は必要なかった。だから、レティシアも相手へ必要以上の関心を持てないのかもしれない。彼女の無関心はあの婚約者にとって本意ではない事だろうか。それとも内心では彼も、貴族の婚姻に心は無くとも良いと考えているのだろうか。
「皆様、様々な恋愛の形がおありなのですね。羨ましくもあり、ピンと来ない感じもありまして……」
フクシア・S・シュルツにとっても、聞こえてくる経験談はどこか他人事だった。貴族である身からすれば、婚姻とはすなわち政略結婚。家の為になる相手という視点で見定める際には、お金のやりくりが上手だったり、そもそもそんな苦労が無いような大金持ちは魅力的だとは思う。
「ただ、そうした打算的な政略結婚に『愛』や『恋』といった夢は、ないのでしょうね」
「わたしも『恋人』というものは、よくわかっていなくて。……でも、お互いに想いあって、お互いに尊重して――というのは、とっても素敵だと思います」
フクシアの言葉に応じて、ゲルダも己の想う所を述べる。素敵か素敵でないかの二択なら、それは確かに素敵な物だろう。外に見える雪の様なもので、暖かな部屋の窓から手を伸ばせば掴むこともできずに消えてしまうとしても。フクシアから見れば、それはやはり縁遠く思える。
「私は幼い頃からの婚約者というのもおりませんし、トマス様がおっしゃるように甘い恋というのは本の中の出来事のようなものですわね」
「うむ? 私はそんな事を言っただろうか」
「言った」
「言いましたね」
「仰っていました」
フクシアに言及されて首を傾げたトマスに、シオンとカナンとレティシアが同時に突っ込みを入れる。
「いや、恋愛に対して『甘い』などと私は予断をつけただろうか、と」
細かい。そしてしょうもない。そう言う所が駄目なんじゃないかとレティシアは少しだけ思ったが、顔にも声にも出さない情けがあった。が、そういった差異がある事は、ゲルダが思う恋愛にとっては当たり前の事だ。甘いと思う人もいれば、苦いと思う人も、酢っぱいと思う人だっているかもしれないと想像する。
「"好き"には色々な種類あって。だから、お互いの"好き"が重なることは、きっと奇跡のようなものなので」
訥々と紡がれるゲルダの言葉を耳にして、奇跡という言葉に誰かを思い浮かべ微笑む者がいる。思い合えた時点で既に奇跡なのだと、自分に照らしてそう思えるのは幸せな事なのだろう。
「……皆様のお話を伺っていると、きっと幸せなのだろうな、とは思うのですけれど。やはり私には遠く思えます」
フクシアは今日一日話を聞いて、考えれば考える程、恋愛というものがわからなくなってきた。考えてわかるような物ではないのかもしれないが、得てして頭でっかちな傾向のある若き貴族子女は『恋愛とはいかに?』と悩みを抱いたりするものだ。世に普遍的な恋愛観というものがあるならば、自分はそれと少しズレているだろうかとも彼女は思い、赤スグリの色合いの目を閉じる。
「……いえ。伺った話では不意に襲ってくる事もあるそうですから、人と少々違っていても関係なく訪れるものかもしれません」
「江流の言っていた一目惚れというものだな? そういうものだと噂に聞いたことはあったが、自分だけでなく、身内にも降りかかる事があるとしたら恐ろしい話だ」
トマスが胃を痛めているそれはハニートラップとか呼ばれる類のもので、愛や恋ではない。まあ、その思い違いが問題になりそうであれば、後でタイコモ辺りが教えてくれるだろう。フクシアはといえば、一日同じ話を聞いていたはずなのに、トマスと比べれば随分と前向きに受け止めたようだ。
「今日一日で随分と目を開かされたと思います。これからも色々な話を伺いたいので、私も入部したいのですが」
「なるほど、何事につけ学びは尽きない物だな。……気持ちは分かる。歓迎するよ、フクシア嬢」
未知なるものに助走をつけて殴り掛かられて記憶が混濁しているトマスと一緒にしては失礼というものだ。ともあれ、フクシアが政治討論部に新たに加わったところで、この日の部活は終わりを告げた。レタラのネタ帳はわずか一日で随分分厚くなったという。
「僕は男でありながら男性に恋することになりました! ですが皆さん、なぜか付いてるってだけでお断りしてきます」
「ふむ、そ、そうなのか……」
カミンル・マオの熱い語りに、トマスは相槌を打つことしかできない。通常の恋愛感情すら良く分からんという彼に、♂×♂は上級者モードすぎる。
「なるほど。断られた経験があるんだな。ちなみに何回くらいだ?」
「フラれた数は30回を突破! なぜ! 殿方は! 付いてるってだけで! お断りするのでしょうか!」
メモ帳片手に問うレタラ・スマリへ、カミンルはコブシの籠ったシャウトを放つ。ちなみにレタラは人の恋バナを聞きに来た口だが、その目的はドゥジンシの種である。無論、本人に迷惑の掛からぬよう換骨奪胎するのは当然のたしなみだが。初っぱなからかなりエッジのきいた恋バナを聞けたレタラはクールな顔の下で大喜びである。
「貴族は、子を為さねばならない。例え、容姿や性格が女性のようではあっても前提として難しいと……」
「『女の子と勘違いする位可愛いとは思うけど』って何の慰めにもなってねえ!!」
「いや、そこまでは言っていない」
真顔で首を振るトマスと、興奮のあまり顔に血の上ったカミンルの顔をチラチラ見つつ、レタラはクールな表情のままペンをせわしなく走らせていた。
「……こほん。私としては、トマスの好みのタイプも聞いてみたいな」
「あ。ああ、シルヴィア嬢か。……好み、だと」
年齢の割には落ち着いて振舞っているトマスがシルヴィアの助け舟へ明らかに安堵の表情を浮かべ、思考を立て直すまでに数秒。今度は難しい顔で考え込む。
「『私が誤った時に正してくれる者』かな。だがそれだと男性でも構わない訳で、女性に限るとなるとわからないな」
「……誤った時に正してくれる者、か」
「ふふ、否応なく惚れてしまう人が現れるかもしれないよ? 恋とは落ちるものだから」
何やら思う様子で副顧問が顔をしかめ、まだピンと来ていない様子のトマスに、シルヴィアは年上の女性らしい含んだ笑みを見せた。そんな会話の隙間にカミンルが首を突っ込む。
「今、男性でも構わないって」
今、何でもするって言いましたよね、と言わんばかりに狩人の目に変わるカミンルに、理由は分からずとも身の危険を感じて後退するトマス。メモ帳の次のページをめくりつつ熱い視線を送るレタラ。この男、同性同士にも理解があるタイプのドゥジン教徒である。
「……トマスさん、よく見ればイケメンですよね」
「いや、私は少なくとも男性に恋情を抱く事は無……っ、待ちたまえ。落ち着くんだ」
「返答が迂闊だよ、トマス。……まあ、貴族は伴侶を自ら選べる事は、基本的には無い。想いが通じても障害は大きいだろうがね」
苦笑しつつも、身分違いの恋人を諦めきれずに手立てを尽くしている最中のシルヴィアからすると、障害がある恋路は他人事とばかり思えなくはある。歴史を辿れば時々前例がある身分違いの恋は、同性同士の婚姻に比べればまだ障害は少ない筈だ。そう思って眺めればいっそ勇気づけられ……る事は特になかったが。
(彼を諦めたくはない。いや、諦めることなどできない。だから、彼のルーツを辿った。貴族としての責務も捨てず、恋人の手も取る為に出来る限りの事はしようと思う)
人事を尽くして、もしも敗れた時の事までは考えてはいないけれども。身分を捨てたなら、今の様な対等な形でトマスと語る事もなくなるのだろうか。恋を捨てたなら、今のように笑えることが無くなるのは間違いないのだろう。
●
「恋愛について語れる程の経験なんて積んでないけど……」
などと憂いを込めた容貌でエルゼリオ・レイノーラが口を開く。彼もカミンルのように女性と見まごうような容姿をしていたが、ここ数年で少し男らしくなったのではないかと自分では思っていた。その、男性らしくなっていく最中に一人の少女に出会った。
「冒険者として仕事してて、ボクにも一応気になる女の子はできたんだ。――って言うか、文字通り『できただけ』って言うか……」
「どういう意味だ?」
何とか進行役に戻ってきたトマスが問うと、エルゼリオは困ったように笑う。
「依頼で顔を合わせる事が殆ど無くなって、消息も不明になっちゃったんだよね。何か事情があるんだろうけど。……元気にしててくれたら良いなぁ」
「そうなのか……。冒険者であれば、伝手を追うのも難しかろうな」
良くも悪くも逃げ道のない貴族とは違い、冒険者はその身一つの根無し草も多い。係累もなければ消息を辿るのは困難だろうと、トマスにも理解はできた。しかし彼に分かるのはそこまでで、会いたくて会えない切なさなどは想像の端にも上っていないのだが。
「ボクも切り替えて行かないと! ――なーんて思うものの、そう簡単には行かないモンだよねぇ……」
威勢が良かったのは前半だけで、エルゼリオはべしゃりと机に突っ伏した。そのままじとーっと上目遣いでトマスの方を見る。
「……そうだ。トマス君には気になる娘とか居ないの?」
「討論部の活動で知り合った女性達は、皆それぞれ魅力的だと思う」
「え、本当に?」
「ああ。芯の強さも、能力も敬意に値する。私に無い視点を持っている事も……」
「そういうのじゃなくって。冒険者の女の子にワイルドな魅力を感じたりとかしない?」
「ワイルド……野性的という事か? 幾人か思い当たる顔もあるし、頼もしいと感じる事はある。確かに魅力的な要素ではあるな」
最後に『配下に迎えるには』と付きそうなセリフを聞いて、これは本格的に駄目なのでは、とエルゼリオは途方に暮れた。このトマスと言う男、理性先行で育ち過ぎて情緒は10歳前後なのではないか。近くにシオンとカナンと言う女性がずっといてこれでは……、と思った所でララベル・サン・ディーベルと目が合った。
「あ、ララベル君なら何か、トマス君の参考になる事があるんじゃないかな?」
「え。僕? なんだか少し恥ずかしいけど、それで誰かの役に立つなら……」
ララベルが複数の女性と良い仲である事を当事者たちは特に隠していない。依頼でちょくちょく一緒になる者ならば何となく察しているかもしれないし、決戦などでまとまって行動する際の様子からも分かる人には分かるものだ。しかし、どういう切っ掛けでそうなったのかとか、どういう努力で関係を保っているのか、などは知られていなかった。
「……僕の場合、家が宿屋だから、泊まってくれる子達と自然に仲良くなっていって、冒険者として一緒に冒険に行ったり、一緒に暮らしているうちにお互いに、ね」
『自然に仲良くなって』とか『一緒に暮らしているうちに』などという、モテる者の当たり前感あふれるコメントに嫉妬の涙を流すような男性はこの場にはいない。むしろ、ジュスト・ヴェルジー辺りは実感の籠った顔で頷いていた。
(まあ、俺の場合、本当に欲しいものはそうは行かなかったけれど)
特に欲しくも無い相手の心は簡単に落ちてくるのに、肝心な相手とは上手くいかない。――そう、貴族にとって婚姻と恋愛は別物。別物だから不要と捨ててしまったトマスとは違い、ジュストは恋も愛もほどほどに楽しむことを覚えた。力も甲斐性もない自分には、特別に想う相手もそんな風にほどほどにしか愛する事が許されないかもしれない。それが耐えきれなくて、それ以上を望んでしまうその想いへ手を伸ばすことをせず、余所の華で自分を慰めた。
「自然に、か。確かに恋とは落ちるものと聞いた。つまり特に何もする必要は無いという事なのか?」
「トマス様、その。もう少し言葉を選ばれますように……。女性の夢を壊すような発言は控えた方が宜しいかと思います」
「ええと、何もしないとかそう言う訳じゃないよ。誤解させちゃったならごめんね」
あまりにもあまりなトマスの感想を見かねたレティシア・レインフィールが口を挟み、ララベルも首を振る。
「幼馴染みで近すぎて、ずっと気づけなかった気持ちがあったり、逆に出会った瞬間に感じたドキドキもあって、皆違う恋だけど。僕だけがそう思ってるのか、恋人さん達もそうなのか。お互いに確かめて、お話して、それで良し、ってなるには。……やっぱりどこかで勇気を出して動かないと駄目なんだ」
自然に気持ちが高まって、それでも一歩を踏み出さないままに別れてしまう恋も世の中にはたくさんあるのだろう。多くの人は一つの縁を繋ぐのに精一杯で、ララベルは少しばかり余人より繋げた縁が多かった。それを全て手繰り寄せて成就させるのは、並ではない魅力と努力があったのかもしれない。
「今も側に居ると幸せだし心がドキドキする……。だから僕、僕を想ってくれる恋人さん達の事、一生かけて絶対幸せにするんだ」
「その気持ちは俺にも理解できるかな。自分で幸せにする、と決断する事がどれだけ重要なことか」
ララベルのように多くの相手に想われていても、ジュストが欲しいのは1人だけだ。人数の部分は異なっているにしても、覚悟の必要性についてはララベルに同意できた。
「ふむ。そういうものなのか?」
「そういうものだよ。俺も、偉そうに言う程わかっちゃいなかったがね」
分かっていない様子のトマスを、あまり笑えたものでもないとジュストは思う。特別な想いは大事に抱えたまま芽吹く事も無いほどに深く埋め、時間を掛けて腐っていくのが正しいと、最近までは考えていた。覚悟を決めたのは、ごく最近だ。
「いや。特別な人を幸せに出来るだけ強くなれば良いって開き直ったんだよ。最近。言う程簡単なことではないけれど……家の事情と、お互いの年齢的にそろそろ話を進めないと、と思っている所」
「そうか。それは……、おめでとうで良いのかな」
「気が早いけれど、ありがとう」
自分の事はさておき、他人の関係性にはそこそこ感度の高いトマスに礼を言う間も、ジュストは想い人へ目を向けはしなかった。まさかバレていないと思っている訳でもなく、これは彼女に向けた言葉ではない、という意志表示なのだろう。ジュストから自分達の関係を許さない世界への宣戦布告は、自分の実家でも相手の家でもなくまず友人達へ知らしめられた。
「シオンとカナンとは、そう言うの無いの? あと、タイコモもずっと皆で一緒でしょ? タイコモの惚気話も、ボク聞いてみたいな」
良かった良かったという顔をしているトマスの迂闊な足元を、ララベルが掘り返す。
「恋愛感情は無いですね。ただ、お子が生まれない場合には求められる事はあると思って仕えていますが」
「ララベルが言うドキドキはない。でも大事な家族」
「まだお前たちはそんな事を言っているのか。良い相手が居れば、契約に拘るなと言っているのだが」
「良い相手はいないから現状維持で問題ない」
困り顔のトマスだが、シオンとカナンは意に介していない。とはいえ、恋愛感情があるというよりは、確かに家族の親愛に近いように見えた。そしてタイコモはと言えば。
「彼女と初めて会ったのは、私が4歳で彼女が生まれてすぐですね。妹ではない、と言われてその時は良く分からなかったのですが。小さくて愛らしい姿になぜか胸が痛み、守らなければと強く思ったのは覚えています」
「俺も、出会った時の事は忘れられない。世に人の数だけ恋愛の形はあるだろうが、俺や君にとってはそういう形なのだろうね」
男としてのタイプは全然違うジュストが、「わかる」みたいな顔で何度も頷いている。本当に長そうな話だった。ララベルが興味深そうに聞いているところから、聞き飽きているトマスとシオン、カナンがそっと立ち去っていく。
●
「言っておきますが、僕の体験は半端じゃないですよ。まず初恋! 僕が虐められている時に救ってくれた男の子!」
(……頼りになる人、ってことかしら)
カミンルの恋愛遍歴を聞くともなく聞きながら、ルベア・ベルニは自分に置き換えて考えていた。人見知りだった彼女にも、この一年程で随分知人が増えた。ルベアから見て魅力的な人も多く、周囲で恋愛の話を聞くことも多い。楽しそうな顔を見れば羨ましいとは思うのだが、自分がと思えばなかなかイメージが合わなかった。
(危ない時に助けてくれる、だけじゃなくて。普段から甘えられる人が、良いのかもしれないわね)
暖かく心安らぐ関係を、ルベアは望んでいるのだろう。普通の友人よりも甘えられる相手は、同性ならばすでに一人。自分の中では友人の枠を超えた親友だと思っている。彼女が異性であったなら、恋に落ちていたのだろうか。イメージすれば、おそらく、多分、もしかして? ルベアが思考に耽溺していた間に、語り手のカミンルに聴衆から小さな手が挙がった。
「それからどうなったのでございますか?」
「そこのキミ、良い質問ですね! 別の街に引っ越してしまい会えなくなり撃沈!」
ふんふんと鼻を動かしつつハリーヌ・ヨツユビが問うと、もう大分吹っ切れているのかカミンルはノリ良く返答する。
「想いを打ち明けなかったのでございましょうか?」
「そんな暇も無かった! これが記念すべき失恋1回目です! いや記念にしちゃだめですが!」
「いえ、恋愛や結婚は人生のイベント、結果に関わらず大事な記念であるべき事かとワタクシは思うのでございますよ」
と、小柄で見た目ハリネズミのハリーヌに言われると、「そうかなあ?」などとカミンルも素直に考え込んだ。さっきまで「『付いているのはいけないことか?』 次回の議題はこれにしましょう!」などと興奮した様子でトマスに詰め寄っていたのだが、ハフビ癒し効果は馬鹿にできない。副顧問辺りはそう考えているだろう。
「興味本位なんだが、そういうアンタはどうなんだ? 恋とか愛とか結婚だとかに、思う所が何かあるからここに来たんだろう?」
取材中のレタラが水を向けると、ハリーヌは「そうでございますねえ……」などと受けつつ頭を回転させた。恋や愛が分かっている訳ではない。ただ、恋愛にこれだけ熱を入れる人たちを見ると、きっとそこで動くお金も大きいし一儲けできそうだと思ったのだ。
(これだけ大勢の方がお悩みなのですから、恋愛相談ビジネスなどウケそうでございますね)
等と考えているのだが、道に悩める探索者が迷宮りーなに話しかけるがごとく、道に迷った若者が性別不詳のハリネズミに正解を求める事もあるかもしれない。
「あまり語りたくない事だったろうか。だとしたら悪かった」
しばらく黙っていたハリーヌに、いつもの如くテンションが上がって調子に乗り過ぎたかと反省の色を浮かべるレタラだが、そう言う訳では無かった。
「ああ、ワタクシの様な者の結婚でございましたね。ええ、故郷の村では、だいたいご近所同士の歳の近い者がいつの間にか結婚しているような感じでございましたねぇ。ワタクシはこのようなナリでございますし、まだよくわからないのでございますが……」
はたして自分にそういう話があるのだろうかと不思議そうに言うハリーヌへ、返す言葉が無い周囲のヒトたち。少なくとも彼らは姿かたちの近しい者がこれだけ身近にいるだけ、ハリーヌより恵まれている。しかし、恋とはきっとそういうものではないのだと、ゲルダはゆっくり首を振った。
「身分だったり、種族だったり、――お互いを隔てる壁があっても捨てられないものが、『恋』なのかなと」
「そうね。そう言う出会いが、一生に一度でもあったら良いけれど。高望みのし過ぎは良くないわよね……」
何物も意に介さず、甘えられる相手ができたならばと思ったルベアは深々とため息を吐く。そんな所に、副顧問がふらっと寄ってきた。
「ルベア君。少し良いだろうか?」
「……駄目」
「いや、触らせて欲しいという意味ではなく。少し時間を貰えるだろうか」
いつになく真面目な顔のテオドールに怪訝な目を向けると、彼は改まって以前にルベアが窘めた事の礼を述べてきた。腐っても侯爵家のテオドールに面と向かって不快感を指摘する者はそうはいない。思えば、幼い頃より接するハフビは父の妾ばかりで甘やかされていたのもあるだろう。あのままでいれば、いつか取り返しのつかない事もあったかもしれないとまで言われれば、そうかもしれないとも思った。
「何か学園で困ったことがあれば出来る限りの力になると、伝えておこうと思ってな。……ルベア君にはそれだけの借りがある」
「そういうつもりじゃなかった、けど」
ルベアにしてみれば余りに目に余ったから指摘しただけの事なのだ。しかし、テオドールは重ねて礼を述べて去っていった。確かに甘えられる相手がいれば、と思いはしたが相手は選びたいと思うルベアである。副顧問には婚約者がいるのだから、そういうつもりではないと思うのだけれど。
●
先刻のジュストの宣言を、ローザリカ・L・ディオールは背中で聞いていた。きっと、彼は自分を見ていないし、自分も彼を見て話さないのだから、お相子という物だ。
(まったく、君はまだ一人だけで強くなろうとしているんだな。懲りない男だよ)
ジュストが意を決したのは何も彼の独りよがりではなく、ララベルが言うように勇気を出して動いた結果だ。ローザリカとジュストの、こじれ切った長い長いすれ違いは一度で解決はしないのかもしれないけれど、一番大事な想いが繋がっていれば。例え見知った世界を敵に回しても恐れる事は無いと思える。
「お時間が許す限り、お話をどんどん聞いてみたいのでございますが」
掛けられたハリーヌの声に、ローザリカは頷いて見せた。
「そうだな。僕の話はそれほど面白みのない話だよ。……大切なものが、できてしまってね」
「大切なもの」
見るからに貴族令嬢といったローザリカの口からでた艶めいた言葉を、ルベアは我が身に照らすように繰り返してみた。自分にもいつか、と想像してみてもあまりイメージがわかない。どこか遠く、おそらくは過去へと目を向けながら、ローザリカは手にしたカップを意味ありげにかざす。
「けれども扱い方が悪くて傷つけてしまったんだ。思ったより熱くて、驚いたのかもしれない。大事に元の場所に戻せばそれで良かったのに、慌てて手を放して……」
「……落として割ってしまったのでございますか?」
「そうなっていてもおかしくなかったな。けれど見た目の割にしぶとくてね。ひびこそ入ったけれども、割れはしなかったよ」
お高そうなカップを見つめながら恐る恐る尋ねるハリーヌに、ローザリカは微笑を返した。
「それで、どうなったんでございましょう?」
「ふふ、それはもちろんとても困ったさ。そうだ、困った時の解決策を一つ、実体験から語らせてもらおうかな」
おお、と前のめりに身を乗り出す女子達に、ローザリカは「それほど難しい事じゃないさ」等と言う。それほど難しい事じゃないなら十年以上掛からないと突っ込む人は特にいなかった。
「腹を割って話す、結局はこれだった」
「話す、だけで良いの?」
「ああ。思い合っているからこそすれ違うというのもよく聞く話だろう?」
聞き専だったルベアが思わず質問する。相手がハフビであっても特段構えた様子もなく、ローザリカは頷いた。話すことが大事なのは何も恋愛に限らず、人と人とのつながりがこの世にある限り。真面目な顔で聞いている聴衆へ、少々芝居がかった様子でローザリカは言葉を続けた。
「つまり、『一人で』抱え込むのはきっと間違いで、僕はずっと間違っていたっていう話だよ。まあ、ちょっと迷っても、最後はハッピーエンドだともう決まっているんだがね」
別のテーブルでこちらを見ていない筈のジュストに聞こえる様に、ローザリカも己が決意を述べる。
(君だけに格好つけさせてやるものか)
という心中の声は、届いただろうか。
●
(あれでなんで付き合って無いんだろ?)
聞こえてくるジュストとローザリカの話に、ナキルは首を傾げている。とはいえ、最近ようやく付き合い始めた彼とエフィルミアの2人も他人をやきもきさせたのは同罪かもしれない。
「えーと、馴れ初め? って何を話せばいいんだ? ぶっちゃけ最初の印象は『コイツヤベェ』だったんだけど」
「コイツヤベェって何!? もー!」
別卓にいるレティシア的な評価基準で言えば、トマス以上に女性の夢を壊しかねぬ発言だが、エフィルミアはぷんすかしつつも傷ついた様子はない。どちらも貴族社会とは違った意味での強メンタルであり、だからうまくいっているのかも知れなかった。
「ナキルくんとは、最初から仲良しってわけじゃなかったんだよね」
「ああ、苦手な事と得意な事が凸凹だったり。言い合いとかも一杯したし……」
ナキルは思いつく事を思いつくままに話し、エフィルミアは聴衆を意識して会話を回しているようだ。ナキルも言うように、凸と凹で補い合っている感じだった。
「そんな2人が、どうして恋仲になったのでございますか? 切っ掛けなどあったのでございましょうか」
興味あります! とばかりにふんふん鼻を動かすハリーヌに、ナキルとエフィルミアは顔を見合わせる。ヴァレリア・ブランシェ・ウィザースプーンも静かに耳を傾けていた。依頼でしばしば行動を共にし、学園の門をくぐるのも一緒だったナキルの、自分がまったく知らない顔は興味深い。
「切っ掛けは何時か分からないけど。いつの間にかミアの姿を探すようになってた。同じ髪の色とか、そんな事で」
「私は依頼で一緒になって、助け合ってるうちに惹かれていった感じかな?」
「……星を二人で見たりもしたな」
照れくさそうに語るナキルに対し、最初の頃は気にも留めていなかったらしいエフィルミア。どうやら意識したのはナキルの方が先であるらしい。
「好きって言われた時はビックリして。『私の理想は私より背が高くて、世界一かっこいい人だからね!』なんて意地張ったりもしたよね」
「う……言われた、な」
「もう! 今はそんなこと思ってないからね。だってそんな事言ったのに、私を追いかけて来てくれて、守ろうとしてくれて!」
思い出して凹むナキルに、エフィルミアがかつての言葉を否定で上書きする。
(守ろうとして……ね。そういうのは、羨ましいかな)
聞いていたルベアも乙女として憧れるシチュエーションだ。他にも、うんうんと頷く者は女子に多い。
「私を想って一生懸命になってくれるナキルくんが世界一かっこよくて、大好きなんだよ」
(ははあ、なるほど……。これは勝てませんね。いえ、別に何かで勝負を挑むつもりもないのですが)
駆け引きも無くまっすぐなエフィルミアの言葉に、聞いていたヴァレリアが苦笑を浮かべた。何やら真っ赤になったナキルが「オレの方がミアを好きになったのは早いし」などと張り合っているが、御馳走さまと言う奴である。
「好きになったのはナキルくんからかもしれないけど、今は私の方がいっぱい好きだもん!」
「ぐ、オ、オレだってその。ミアの事が……好、好きだぜ?」
「お互い素直になれたようで何よりだ。ナキル、私の可愛い妹をよろしくね」
良く分からぬ理由で張り合い始めた2人に、シルヴィアが声を掛けた。
「ありがとうございます! シルヴィ姉様達みたいな素敵なカップルになりますよ!」
「先生たち、みたいにか……?」
頭の中に、2人で並ぶ図を描くとどうにも自分の身長が気になる男の子。ぐぬぬ、と唸る背中へエフィルミアがバシンと気合を入れる。
「何よ! 自信ないの?」
「そんな事ねーよ!」
(放っておいても良いかとも思いましたが。これは少しはお世話しても良いかもしれませんね……)
ぎゃいぎゃい騒ぐ学友を、ヴァレリアは面白そうに眺めていた。
●
「聞いていましたでしょう? 恋愛とは端的に、傍に居るだけで幸せになれる感情なのです!」
思いに耽る皆々と違うテンションで、マリィ・スノードロップが高らかに歌い上げた。好きとか嫌いとか最初に言いだしたのが誰かは知らないが、今この瞬間の教室内でもっともテンションが高いのは間違いなく彼女だ。聞くのは十分に聞いた。今は語りたくて仕方がない。そして語るという事は聞き手が必要である。
「はいっ、そこの自分は関係ない的なお顔をしてるだわさん! 宜しいですか?」
相手として指名されたのは、いつも通り表情が薄いだけでなく心なしか存在感の無いだわである。恋愛への知見はトマスといい勝負の彼は、未知なる存在を知る事で処世の手立てとしようとこの場に訪れていた。空気のように聞き役に徹していたはずの自分に、マリィの指先が向いている。右を見て、左を見て、自分か、というように首を傾げると満面の笑顔でマリィが頷いた。
「……お手柔らかに」
ここまで色々な話を聞いて、思う所は無いだろうか。今までの人生で恋や愛を感じた事は? とマリィに問われただわは、持ち前の真面目さで人生を回想する。今日耳にした様々な恋バナと条件が合致するものは、無くも無い。そう、例えば。
「触れていると落ち着く、心から大切にしている、美しさに見惚れたこともある……これも恋か?」
「それは間違いなく恋ですね! 隅に置けません。お相手は誰ですか?」
「剣なんだが」
まさかの無機物! いや、世の中には彫像に恋する話とかもあったようななかったような。マリィは愛の伝道師として生徒の自主性を重んじたい。とりあえず愛の本気度を試そうと質問を一つ。
「剣に口付けをできるなら或いは……」
「ああ、したことはあるな」
「え、したのです……?」
武運長久を祈り、戦場で生死を共にする剣に口を寄せる、といった戦士の習いはマリィの脳裏には浮かばず、思わず真顔で問い返してしまう。それはさすがにマニアックすぎるのではないかともう少し詳しく聞けば、どうやら恋愛とは違うベクトルと分かって思わずホッとした。
「そちらについては、私もあまり造詣が深くなかったので、良かったです。では、ヒト! ヒト相手にそういう気持ちになった事は無いのですか? 一緒にいたいとか、そういう……!」
「他人に……? 剣のような愛着を?」
「剣の事はもういいですから」
再び真顔で突っ込まれ、だわは身の回りの人間の顔を思い浮かべる。顔見知りは最小限にしようと思っても、生きている限り他人との接点はできるもので、例えばこのお節介なハーフビーストもそうだ。他に、と思えば何かと甘えてくる少女の顔も思い浮かんだ。
「……一緒に、と言ったが。共に歩んでも、いつか別れが来るかもしれない。……不安にはならないのか?」
いつかと言ったが、だわにとっては遅いか早いかはともかく確実な未来だった。この身はとうに祖国に捧げている。リーンエス王国は今でこそ大陸一の大国だが、シルトラース帝国の例を見れば永遠の繁栄などあるとは限らない。その時になれば自分は迷わず戦火に身を投じるだろう。そう語れば、マリィの熱はそのままに声のトーンが少しだけ落ちた。
「生きる物すべてに、死だけは平等で。だわさんがそう思うように、国だって滅びてしまう時は不意に訪れます」
マリィの祖国は、まさにそうして滅んだシルトラース帝国で、愛する故郷はもう戻らない。マリィは口にしないが、故郷の人たちも多く失われたのだろう。実感の籠った言葉で、彼女はだわの心に向き合う。
「失くす不安を考えれば胸が張り裂けそうなほど、苦しいはず。でも。愛することを怖がったらきっと何も得られない」
失う前からそれを恐れて手放そうとして、結局はその為の力を求めたと、さっきジュストが語っていた。だわも彼も、力を求める理由は何かを守る事。逃げたくなる怯懦と、その為に力を欲する勇気のどちらを選ぶかの二択と言われれば、成程、恋や愛とは脳筋思考でも意外と分かりやすくも思えてきた。多分錯覚だが。
「……不安だからと遠ざけるのは、戦いが恐ろしいからと剣を捨てるようなものか」
「だから、剣は……! いえ、剣から離れられなくてもいいです、この際。ええ、誰かを思えば剣を取って戦える強さを齎してくれる、それが恋だと、私は思います!」
何かを振り払うように首を振り、マリィは晴れやかな顔で言う。だわも、何か悟りを開いた心持で頷いた。要するに、強くなればいいのだ。と、思ってから心に僅かな迷いが過ぎる。
「……強さは得たい。これは下心か?」
下心というのは恋愛にとって良くない物だ、といつかどこかで聞いたような気がする。そんな胡乱なだわの問いかけに、マリィは親指を立てて返した。
「恋愛に下心はだいじ!」
「そういうものか。なるほどな」
わかったような顔で頷いているだわが、別に何もわかっていない事にマリィが気が付くのは、もう少し後の事になる。
●
朴念仁のトマスとだわ、おこちゃまのナキルや玄人すぎるジュストと、これまでの男子は普通の事例に乏しい。カミンルは言うまでもなくイレギュラー側だ。聴衆から見て等身大な恋バナを語ったのはこれまでエルゼリオ位ではなかろうか。そんな状況で次に語り手となったのは海神・江流である。
「……俺も普通の恋愛話ってわけじゃないんだけど。それに、あまり話すと学園内での風当たりも更に強くなりそうな気がするんだけど。……まぁいいか、部活だもんな」
他の学生達より一回りは年長の彼だが、恋愛に関して上手かと言えばそんな事は無い。身構えるまでもなく不意打ちでやられた側である。一目惚れとは身構えている時には来ない物なのだ。
「恋は落ちるもの……って誰かが言ってたけど。ここは同意。落ちてしまったら理屈じゃないんだよな」
「そういうものなのか」
「そういう物なのです!」
理屈で割り切れない感情に、だわは良い想いを抱けない。のだが、マリィが満面の笑顔で頷く様子からすれば良い物なのかもしれない。少なくとも、理解すべき謎だという思いは深めつつ耳を傾ける。
「理屈じゃないって言うのは、例えば。隣に好みに120%合致した好条件な物件があったとしても、落ちた時点でその人じゃないと駄目になんだよね」
「随分具体的だが、好みの別の女に誘惑される事でもあったのか? そこの所詳しく」
「……ノーコメント」
斜めに食いついてきたレタラを軽くあしらい、部活のお題目を考えれば、悩める若者に参考になりそうな事をと首をひねる。あまり悩んでも仕方がないか、と今の想いを語る事にした。
「そんな相手に自分が相手に何が出来るか。ってのはいつも考えてるかな」
「具体的には、どんなことなのかな?」
横合いから楽しそうに声を掛けてきたシルヴィアに、もとより表情豊かとはいえない江流の顔が虚無を浮かべた。
「シルヴィ、楽しそうだね」
「江流も私の友だが、彼女も私の友だからね。君がどう考えているのか、気に掛ける資格はあるだろう?」
それだけではなく、江流とその想い人の立ち位置は、シルヴィアと想い人の関係とも似ている。普段は怖いものなどないと二本の足で立って見せるシルヴィアなれど、同じ悩みを共有できる友の存在はありがたいのだ。そんな含みも察すれば、仕方がないとため息一つ。
「目にも耳にもなると言った立場もあって今は、冒険者のお仕事の土産話くらいだろうけど……。いずれは、して欲しいことが言わないでも分かるようになれるといいんだけどね」
「話し合う事が大事という者もいれば、言外に意を
察したいという者もいる。戦術は必勝法一つと言う訳にはいかないのか。なかなか難しいものだな、恋愛とは」
そう真顔で腕組みをするだわにはマリィという教師がついているのできっとなんとかなるだろう。着席してからも、江流は誰かが想い人について何か言ってくるのではと身構えていたが、特段動きはないようだ。まあ、部活内の貴族子女はだいたい自分の事で忙しい日ではある。貴族派の末席に最近なったばかりのサラとて、点数稼ぎに情報を漁る程の熱意はないようだった。
●
「わたしも、聞いた話なんですけれど……。とある商家の娘さんの話で」
そう切り出したリサ・ベイカーに、耳聡い女子学生たちはチラチラと目配せをする。コイバナの席で『聞いた話』だの『友達が』だのというのは大体、そういう事だ。しかし、リサの親友を自認するゲルダ・クラインは、己の背筋がひゅんと伸びるのを感じた。
(リサさんの知り合いで、商家の娘って。もしかしてわたし……、でしょうか)
恋や愛など良く分からない。ずっとそう思っていた自分が、なぜ『自分の事かもしれない』と感じたのか。そんな心の動きに困惑しながら、ゲルダはリサの言葉に耳を傾ける。
「出会ったのは、商人同士の会合で。親についてきただけの女の子が15歳、相手の方は3つ年上の時でした」
(15歳……。だったら違いますよね?)
今の自分は16歳で、15歳だとしたら一年前。その頃には何も無かったと胸をなでおろしてから、また自分の感想に首を傾げた。もし16歳と言われたら、どうだというのだろう。ゲルダが戸惑う間にも、リサの話は続いている。
「お互いの家はライバル関係で、うまくいかない事も分かっていて。でも惹かれ合ってこっそり隠れてデートしたり。……それでも、親には分かってしまうんですよね」
家を捨てる訳にはいかない。だから2人とも終わりがいつか来る事も分かっていた。そしてその終わりは特に劇的でもない、ありふれた形でやってきたのだという。
「男性の方に、婚約のお話があったそうです。そちらの商会と関係の深い傘下のお嬢さんでした。女の子が身を引いて、それでこの話はおしまいです」
(なるほど。そういう話でしたか)
ヴァレリアは内心でそう呟いた。有力な商人の話とは言え、エスト・ポーラは遠い。ヴィザースプーン家の情報にも表向き以上の話はなく、ただあちらの大きな商家が数年前にちょっともめたが大したことにはならなかった、という報告書の一行分に過ぎなかった件。ひょんなところで詳しく知れたものだ。
(とはいえ、これは家へ報告する必要はないものですね。別に商売の役に立つものでなし……)
いや、利用しようと思えばどうにでも役に立つのだろうが、ここは同い年の女同士の恋バナとして、胸に収めるのが作法というものだろう。
(平民同士であっても、貴族のようなそういうお話はあるのですね)
口には出さなかったが、レティシアはその少女の結末は仕方がないものと思う。生まれに伴う義務という物はある。その少女が立場を弁えずに心のままに振舞えば、お互いの商会の従業員をはじめ多くの者が迷惑を被ったのだろう。
「……とまあ、良くあるお話ですね。貴族でなくとも、やはり身分やら派閥やらは関わってくるんですよ」
リサが口にした言葉も、レティシアの感想を裏付けた。家の為になる婚姻、為にならない婚姻。立場ある家の娘に選択の余地などは無い。レティシアの知る正義に揺らぎなどない。
(いえ、継嗣を産む義務を果たした上で、問題にならない程度に恋愛を楽しむのも貴族の嗜みという考えもあるそうですが……)
レティシアはどちらかといえばトマス寄りの思考で、配偶者には愛情が無くとも敬意を抱かねばならないとは思っている。もしそんな風に浮気をするにしても、最低限配偶者の同意は必要なのではないか。などとある意味惚けた事を真面目に考えれば、婚約者の顔が脳裏に浮かんだ。
「……貴族の婚姻と恋愛に、繋がりはあるのでしょうか」
相手に愛情があるのかと言われれば、無いのかもしれない。しかし、不幸になって欲しいと積極的に思う訳でもない。相手が望み、家が望んだ関係性にレティシアの同意は必要なかった。だから、レティシアも相手へ必要以上の関心を持てないのかもしれない。彼女の無関心はあの婚約者にとって本意ではない事だろうか。それとも内心では彼も、貴族の婚姻に心は無くとも良いと考えているのだろうか。
「皆様、様々な恋愛の形がおありなのですね。羨ましくもあり、ピンと来ない感じもありまして……」
フクシア・S・シュルツにとっても、聞こえてくる経験談はどこか他人事だった。貴族である身からすれば、婚姻とはすなわち政略結婚。家の為になる相手という視点で見定める際には、お金のやりくりが上手だったり、そもそもそんな苦労が無いような大金持ちは魅力的だとは思う。
「ただ、そうした打算的な政略結婚に『愛』や『恋』といった夢は、ないのでしょうね」
「わたしも『恋人』というものは、よくわかっていなくて。……でも、お互いに想いあって、お互いに尊重して――というのは、とっても素敵だと思います」
フクシアの言葉に応じて、ゲルダも己の想う所を述べる。素敵か素敵でないかの二択なら、それは確かに素敵な物だろう。外に見える雪の様なもので、暖かな部屋の窓から手を伸ばせば掴むこともできずに消えてしまうとしても。フクシアから見れば、それはやはり縁遠く思える。
「私は幼い頃からの婚約者というのもおりませんし、トマス様がおっしゃるように甘い恋というのは本の中の出来事のようなものですわね」
「うむ? 私はそんな事を言っただろうか」
「言った」
「言いましたね」
「仰っていました」
フクシアに言及されて首を傾げたトマスに、シオンとカナンとレティシアが同時に突っ込みを入れる。
「いや、恋愛に対して『甘い』などと私は予断をつけただろうか、と」
細かい。そしてしょうもない。そう言う所が駄目なんじゃないかとレティシアは少しだけ思ったが、顔にも声にも出さない情けがあった。が、そういった差異がある事は、ゲルダが思う恋愛にとっては当たり前の事だ。甘いと思う人もいれば、苦いと思う人も、酢っぱいと思う人だっているかもしれないと想像する。
「"好き"には色々な種類あって。だから、お互いの"好き"が重なることは、きっと奇跡のようなものなので」
訥々と紡がれるゲルダの言葉を耳にして、奇跡という言葉に誰かを思い浮かべ微笑む者がいる。思い合えた時点で既に奇跡なのだと、自分に照らしてそう思えるのは幸せな事なのだろう。
「……皆様のお話を伺っていると、きっと幸せなのだろうな、とは思うのですけれど。やはり私には遠く思えます」
フクシアは今日一日話を聞いて、考えれば考える程、恋愛というものがわからなくなってきた。考えてわかるような物ではないのかもしれないが、得てして頭でっかちな傾向のある若き貴族子女は『恋愛とはいかに?』と悩みを抱いたりするものだ。世に普遍的な恋愛観というものがあるならば、自分はそれと少しズレているだろうかとも彼女は思い、赤スグリの色合いの目を閉じる。
「……いえ。伺った話では不意に襲ってくる事もあるそうですから、人と少々違っていても関係なく訪れるものかもしれません」
「江流の言っていた一目惚れというものだな? そういうものだと噂に聞いたことはあったが、自分だけでなく、身内にも降りかかる事があるとしたら恐ろしい話だ」
トマスが胃を痛めているそれはハニートラップとか呼ばれる類のもので、愛や恋ではない。まあ、その思い違いが問題になりそうであれば、後でタイコモ辺りが教えてくれるだろう。フクシアはといえば、一日同じ話を聞いていたはずなのに、トマスと比べれば随分と前向きに受け止めたようだ。
「今日一日で随分と目を開かされたと思います。これからも色々な話を伺いたいので、私も入部したいのですが」
「なるほど、何事につけ学びは尽きない物だな。……気持ちは分かる。歓迎するよ、フクシア嬢」
未知なるものに助走をつけて殴り掛かられて記憶が混濁しているトマスと一緒にしては失礼というものだ。ともあれ、フクシアが政治討論部に新たに加わったところで、この日の部活は終わりを告げた。レタラのネタ帳はわずか一日で随分分厚くなったという。
マスターコメント
色々あってしんどい日々でしたが、書いてて楽しいイベシナでした。ありがとうございます。
人様の恋バナからしか得られない栄養があるのでね……。
とはいえ、50人イベシナでも参加者19名ですから。
贅沢に目いっぱい字数を使うと色々と後で困る(具体的には字数の勘が鈍る)気がしたのでほどほどにセーブしております。
作中でNPCが借りがあるとか言っておりますが、当初の予定では学乱シナリオで死んでる予定でした。
「あのセクハラ教師が死んでいる! 犯人は恨みを募らせたハフビに違いない! やはり異種族は追い出せ!」
っていう系統の話に繋ぐつもりで出したのが、なんだかただの面白い人になったので生き延びました。
NPCって思ったより死なないものですね。これからもハートフル学園物語になるよう頑張ります。
MVPは選定するようなシナリオでもないと思うので無し。大成功を皆様へお送りします。
また、いつものように入部希望者の方には称号を付与しております。
ご参加ありがとうございました!
イベントシナリオ(50人)普通 報酬:標準19 / 10〜50人
2022年03月06日 05時21分36秒 公開
大成功
参加者
相談掲示板
「ナキルだ!よろしくな…っと… 政治討論部って色々やってるんだな……政治って何だっけ……。 さて… 【3】…かな。」
カミンル・マオと申します! マオでもカミンルでも、かみるんでも、どうぞ気軽に呼んでくださいね! イケメン募集中です。気軽にお声がけください。 今なら僕が後ろからついてきます。 参加は【1】です。 議題:「ついていることはいけない事か」として 過去の僕の恋愛事情を話しつつ、討論らしい議題を提案したいと思います! 愛とはすなわち相手を理解すること!愛=理解!完璧だぁ……。
レタラだ。宜しく頼む。 【3】で聞き役に回るつもりだ。
海神江流だよ。今回は宜しくね。 貴族の結婚っつーと政治だわな。この部らしいかなとは思う。 今の所実績がないので【2】になるのかな…
マリィ・スノードロップです。 いろんな方から興味深いお話を聞けるとの事で楽しみにしていますが… ぜひぜひ【2】で参加させていただきたいのです。 恋愛に対する夢といいますか、たくさん喋らさせていただきますので、どうぞよろしくお願いします…!
エフィルミアです!よろしくお願いしますっ。 ここは…えっと、【1】かな…(照れ照れ) た、たいした事は喋れないと思うのですけど! どうして恋に落ちたのかとか、どういうところが好きかとか ちょこっとお話出来たらいいなぁと思いますっ。
「……あー…じゃ、オレも【1】、か…… …いや、あえて聞きに徹する…?……いや、別に照れてねーし。」