【魂禍】スケアリー・ハッピー・ショウ
奇古譚
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シナリオID:1868
オープニング
我らがGODはおねんね中!
起こしちゃダメヨ、こういうのはじっくり寝かすのが良いんだから!
で? 今回も冒険者チャンはフラスコをせっせと調査ですかァ~~~?
良いよ良いよ、俺は寛容だからね! 踏み込まれてもニコニコして赦しましょうとも!
おっと、其処のホムちゃん! 隊列が乱れてるぞ、俺はそういうのは赦せねえんだよ。
――バシン!
……アー、何だっけ? そうそう、フラスコね。
別にもう探られても痛い腹じゃないからよォ、もうめちゃくちゃにしてって感じなんだが……それでもなァ~~~。やっぱちょっとは邪魔しとかないとGODに怒られちゃうかなァ~~?
俺って勤勉すぎて涙が出るね! ウウッウッウッ。ほら! お前らも泣いてみろよ!
――バシン!
……アーそうだった。こいつらは《そういうの感じない》んだったワ。
俺の忠実な人形チャン、ごめんねえ~~~?
さあ、仕事の時間だ! キリキリ働いてもらうぜェ~~?
集めるのに苦労した部品、存分に使っていいからよ! ハハ!
●
フラスコ。
其れはアルルカンが――或いは意図的に――残した、ホムンクルスという存在を紐解くための手掛かり。
彼がどれくらいの間ホムンクルスについて研究していたのかは定かではない。けれども、或いは謎解き遊びのようにシグモルの辺獄各地に残された手がかりは、冒険者たちを“ホムンクルスとは何か”という問題の答えへと一歩一歩確実に進めていた。
そんな中、また“フラスコ”への入り口が見付かったという知らせが届く。冒険者ギルドは調査隊をギルド内で編成、護衛隊である君たちに護送を任せ、辺獄へと送り出した。
――勿論、そう簡単に事が成る訳はない。
「ヒャッハッハッハッハ! こーんにちは! 徒党を組んでお散歩かァ!?」
美しい顔が笑っている。道化服を着たエルフの男は、後ろにずらり、と――頭部に大小さまざまな石をはめ込んだ――ホムンクルスたちを連れて、君たちの前に立ちはだかった。
「お散歩先はさしずめお宅訪問ってところかなァ。良いぜ良いぜ、俺は別に構わねェよ! なあ?」
道化服の男――アルルカンは近くにいたホムンクルスの頭を掴むと、何度も上下させた。
「ウン、アルルカン! ゼンゼンモンダイナイヨネ! ……オー良い子良い子。可愛いねェ~~。マーなんつーの? ただ調査させるのもアレだしよォ、俺たちと遊んで欲しいワケよ。お前らも俺を探してるんだろ? こいつらをどうにかしたいだろ? 可哀想だもんなァ~~、怖い思いして死んでさア、そしてこうやって俺に使われちゃうんだもんなア~~!」
そう言って泣き真似をするアルルカン。其の様は完全に冒険者の神経を逆なでしているとしか思えない。
棘のついた鞭を片手に振りながら、アルルカンは後ろへ跳ぶ。
「だからさァ~~~、怖い思いしたカワイソウな子たちとさ、遊んでくれよォ! こいつら、遊ぶって事を知らないまま死んじゃったからァ! アッハッハッハハハ!!」
解説
マスターより
リプレイ
――泣いている。
フロマーシュ・ダイヤドロップには、並ぶホムンクルスたちの表情が歪んでいるように見えた。
複眼が潤んでいるようにも、巨人の腕が震えているようにも見えた。
いつだって世界は弱者を置き去りに回る。そんな不条理がフロマーシュには許せなかった。みんな同じ「命」なのに、どうして其れを弄ぶなんていう真似ができるのだろう。
目の前で巨人の腕を持つホムンクルスに肩車している道化師は、関係ないとばかりに笑うのだ。
「ヒャッハッハッハ! 悔しそうな顔をしているのは一人か? お前ら薄情だなァ~~! 可哀想に、この子たちは希望(ユメ)も見られないのかア~! しくしく、ワタシタチかわいそう!」
「……お前、一体何者なの」
アウレーリア・フォン・ネーベルベルクが問う。其れは心からの侮蔑と、僅かな打算を含んでいる。熱風がふわりと其の刺々しさごとアルルカンに質問を届けて、美しい顔をした道化はにいやりと笑った。其の顔をアウレーリアは思い出そうとするが、宮廷道化師と名乗る彼が政治の表舞台にいたのは見た事がない。“裏方”だったのだろうか。
「俺様ちゃんはアルルカンだよ。其れ以上でも其れ以下でもねえ。忠実なる陛下のしもべにしてみんなを楽しく笑わせる宮廷道化師だよん? 何かおかしいとこある?」
ホムンクルスたちが動き出す。複眼のあるものが周囲を見回し、虫のように啼いた。彼らにはもう、理性がないのかもしれない。
ずるり、と足を引きずるように、ホムンクルスが歩く。其の足は遅々としていた。無理矢理パーツを付け替えられたからだろうか。
「アルルカン……帝国の面汚しが!」
アルベルト=V=シュタールシュヴェーアトが吼える。帝国過激派。其の文字列はアルベルトにとって忌避すべきものだ。排除されるべきもの、唾棄されてしかるべきものだ。
「おーコワイコワイねえ。まったく、俺達に対しての風当りが強いんだからモー。――オラ! 何してんだ、とっとと攻撃しろ!」
ばちぃん。
皮の鞭がホムンクルスの皮膚を殴打する。付けられた棘が皮と肉を削って、がりり、と獣の爪傷のようなひっかき傷を付ける。痛みは感じるのか、ぐらりとホムンクルスが揺らいで、慌てたように冒険者たちへと肉薄してきた。
「ふむ……」
ジュスト・ヴェルジーが其の様を冷静に見ていた。冷徹に、といった方が良いかもしれない。ホムンクルスの《工程》は陰惨だ。其れを知らない訳でもないだろうに。僅かに其の瞳を細めるだけなのだ。
「色々形は弄ってみたけれど、魂の方が追い付いていないという感じかな」
「お! 其処のお兄さんは判ってるねエ! そーなのよ。やっぱり生前にないものをくっ付けるとみんな不慣れっていうか。困るんだよなあそういうの! もっとしっかりはっきりきっぱり働けるように、ならないとッ、こっちがッ、困るんでやがりますよ!」
己の“椅子”にしているホムンクルスを感情まかせにひっぱたくアルルカン。皮が剥げ、肉がむき出しになり、其の肉が抉り取られる。堪らず痛みに吼えるホムンクルスを、暴れるんじゃないと首に足を引っかけ固定する。ぐらぐら、アルルカンの痩躯が揺れた。其れはまるでアルルカンというよりクラウンのようだ。
「人類の盾である事を誇りとする我らと、欲望のままに動く貴様らが同じ帝国の名を冠するか――首刈帝陛下が御覧になられたらさぞお嘆きになられるであろうな!」
ベルク・オスマットが吼える。アルルカンの瞳が、初めて冒険者の一個人を捉えた。――ベルクは悟る。人を見る目ではないと。まるで葦、まるで麦。虫ですらない、植物を見る目だ。
「ヘーえ? お前、《あの》陛下を信奉してんの? マ~~~~真面目サン! でも俺様の信奉する陛下はオネンネ中の陛下一人だから! ていうかそんな事どうでも良いじゃん、俺達と遊んでくれよ」
「こいつらは遊んだことがねえんだったな」
ナハシュが笑う。ゼラルム・エルホワイトは無言で術を編む。撃つならばホムンクルスが散開していない今が一番いい。
ゼラルムが天に伸ばした指。天から光の粒が降る。無数の流星群にも似た其れはホムンクルスたちを巻き込み、彼らの肌と肉に突き刺さる。男女の意味を成さない悲鳴が響き渡り、更にアウレーリアが重力場を形成し、ホムンクルスたちを釘付けにする。立て続けに放った爆炎がホムンクルスたちを焼く。
「咲き誇れ」
エーテルが流れる。ジュストの指先で紅く結実した其れは、ホムンクルスたちの中心へと飛び込んで赤い花を咲かせる。
おおお。――熱い。
あああ。――痛い。
うああ。――助けて。
まるでそう言っているように聞こえて、フロマーシュは耳を塞ぎたかった。
ルチル・プルメリア・グレイハーツが動く。弓を引き、ホムンクルスたちの異形部位を狙って射抜く。巨人の腕に光が突き刺さり、炸裂して肉を裂く。ホムンクルスが吼えるが、其の侵攻はやまない。まるで痛みを感じていないかのように――痛んでも行かなければいけないのだと追われるように彼らは冒険者たちに肉薄する。其の背後、複眼を持ったホムンクルスの目の前に、紅い火球が現れる。まるでさっきの真似をするみたいに、其の火球を冒険者たちへと放った。
「おいおい、仲間を巻き込むのもお構いなしか!」
ナハシュが笑う。火球が弾けて、冒険者たちへと降り注ぐ。其れはホムンクルスに対しても例外ではなかったが、批判する者は誰一人としていない。
素早く大柄なホムンクルスの影に隠れてやりすごす。そうしてナハシュが見上げると、焼かれているにも関わらず感情のない、どろりと濁った眸と目が合った。其の額には埋め込まれた蒼い石。見上げると、ナハシュはまるで買い物中に果物を取るような気軽さで――其の石を掴んだ。
「興味があったんだよ。死体にこいつ入れると動くんだってな?」
ぎり、ぎり、ぎり。みぢ、みぢ、みぢ。
ホムンクルスから宝石を抜き取ろうとするナハシュ。一際大きく吼えたホムンクルスが手を振り払おうと頭を振る。必死の様相で、其の隆々とした腕でナハシュを振り払う。おっと、と其の一撃を受ける前に彼は素早く後ろへ下がった。そう簡単には獲らせてくれないか。という事は、矢張り生命維持にあの石は必要不可欠らしい。
ナハシュは下がった其の足で一足飛びに再びホムンクルスに肉薄する。いち、にい、さん。攻撃を加えて、素早く下がる。捕まえようとしたホムンクルスの腕が空を切り、脚の健を斬られて大男は膝から崩れ落ちる。其の隙をアルベルトは見逃しはしない。風のように膝を突いたホムンクルスに肉薄すると、せめて峰打ちで、と構えた剣で強かに其の首を打った。――しかし、斃れ伏してなお、ホムンクルスは起き上がろうとする。緩やかな動きで、けれど気絶する様子が見えないホムンクルスに、アルベルトは瞑目する。そうして――剣を持ち換えて、刃でホムンクルスの首を断った。
「おー怖いねえ。ホムンクルスちゃんのおタカラを奪おうってか?」
「生憎とお宝には目がなくてよ。貴重なモンなんだろ?」
「まーねー。取って来るの大変なんだぜ? まあ、ホムンクルスってのは製造そのものが大変なんだが」
「……五月蠅い」
ルチルがイライラと呟く。絶え間なく喋り続ける宮廷道化師、其の声が耳障りで仕方なかった。熱風が一堂に吹き付ける。過ごしやすいフラスコとは違って、此処は火山の地下。誰かが滴る汗を腕で拭った。
●
フロマーシュは敵の攻撃を受け止めながら、言葉を探していた。
何といえば良い? 傷付けてごめんなさい? 痛ませてごめんなさい? きっとどれも違う。謝ってはいけないのだ。彼らを救う言葉は持たないから、謝ってはいけない。
「貴方達の――」
フロマーシュへ体当たりを続けるホムンクルスに、ナハシュとアルベルトが斬りかかる。両サイドから斬撃を受けたホムンクルスは、しかしまだ立っていた。
「貴方達の意思は、私達が受け継ぎますから」
ホムンクルスは立っているだけだったが、下半身をナハシュに再度切り刻まれて、とうとう膝を突いた。
其の目に光はない。希望を捧げるには、ホムンクルスたちはアルルカンに“蹂躙されすぎていた”。焼野原に簡単に緑が息吹かないように。希望を以て人を救う事が、こんなに難しいだなんて。
「……せめて、其の魂を救おう。俺達に出来るのは」
そのくらいだ。
アルベルトが首元目掛けて剣を振り下ろす。ごとん、とホムンクルスの頭が落ちて、ころころと転がった。――目で追ったフロマーシュ達を見返す目は、矢張りどす黒く濁ったままだった。
すまない。
ベルクは心の中で詫びながら、中肉中背のホムンクルスと向き合っていた。武器を持たない彼の一撃を交わす。戦いは長引かせるまい。せめてこの一合で終わらせようと賢者の石を繰り抜くような軌道で刀を走らせれば――石がひゅん、と宙を舞って、ごとり、と大柄な身体が大地に倒れ伏す。
おっと、と其れを抜け目なくキャッチしたのはナハシュだった。良い報酬だ、とそっと懐に入れる。
「貴様が言う“陛下”は本物なのか?」
「オイオイ、疑う気か? 陛下は陛下だよ、天にも地にも一人しかいねえ! 俺様に最上の蹂躙を見せてくれるサイコーの陛下さ!」
ベルクの問いに、アルルカンは両腕を広げる。
「蹂躙ってのは最高だぜ? 村々が燃えて、一生懸命建てられた家が崩れていく……人々の命が刈り取られて、さっきまで生きていた人がただのモノになっていく……人々の命を繋いできた井戸に毒が入れられて、水を求める人間たちが哀れにも斃れ重なっていく……俺は最高に興奮するんだよ! なあ! 築き上げてきたものを一瞬で跡形もなく踏みつぶされる、そんな蹂躙を陛下はやってくれるんだよ、最高じゃねえ!? ショウ・ダウンの時にはこの世界まるごとペッチャンコ! あの神サマも逃げやがったガキもお前らも全員ペッチャンコ! アッハッハッハ! 想像しただけでワクワクするよ! なあ!?」
「……狂人の論理だ……! 蹂躙が最高だなどと、そんな事はお前以外の誰も思ってはいない!」
アルベルトの歯軋りするような反論に、アルルカンは首を傾げる。
「そう? 陛下は割と賛同してくれてるけど? 其れにお前らだってそうじゃん」
お前ら。お、ま、え、ら。アルルカンは冒険者たちを順繰りに指差して、なあ? と肩を竦めた。
「お前らだって、俺とこいつらを蹂躙しに来たんだろ?」
「……ッ、違います!」
ホムンクルスの攻撃を引き受けて耐えていたフロマーシュが、こればかりは耐えられないとばかりに叫んだ。
「蹂躙なんかじゃありません! 私達は、こんな形で命を弄ばれる事を許せないだけです!」
「へーえ? じゃあなんでさっき、お前のお仲間は俺の可愛いホムンクルスちゃんから宝石を抜き取ろうとした訳? やってること泥棒じゃ~~~~ん! “弄ばれる命が可哀想ですぅ”なんて理屈は通じねえんだよ!」
「……ッ」
「相手の口車に乗らない方が良い、フロマーシュ君。――まあ、俺は生憎“この子や彼女のように”彼らを壊しても罪悪感は湧かないんだ」
ジュストが言う。彼女? と首を傾げるアルルカン。其の疑問符にジュストは答えない。応えてやる義理はない。
「痛みや疲労で動きが鈍らないなら機能的に動けなくなるように壊すだけだし、俺はこの場で彼らに希望を与える言葉も術もない。だから俺は俺に出来る事をやるんだ。例え其れが非道でもね」
「キャー、ホムンクルスちゃんカワイソ! ここでぶっ壊す宣言きちゃったかー!」
「でも」
「あ?」
「道化師兼興行師兼錬金術師、アルルカン。君にはちょっとお礼をしたいと思ってたんだ」
彼女――従姉の代わりにね。
ジュストの指先が煌めいた。蒼く光るエーテルの波が轟音と共に流れ落ちる。大瀑布が狙うのはアルルカンと彼を守るホムンクルス。
「うおおあああ!?」
「ショーには華やかさも必要だろう。花くらい贈らせてくれ」
「まあ、綺麗な蒼いお花! じゃねえよ! 殺す気か! 死ね!」
お前も行け!
アルルカンは載っていたホムンクルスから飛び降りると、その背中を蹴りつけた。戯れに幾度も殴られて傷だらけになっていたホムンクルスがゆっくりとやって来る。
――矢張り。
ゼラルムは確信を得る。ホムンクルスは使い捨ての戦力としては悪くない。
人工的に授恵者が作れるなら、其れに越したことはない。
しかし――国家で運用するとなると、他から「材料を取ってこなければ」ならない。バレないうちは良いだろう。だがバレてしまったら他国との関係悪化は避けられないだろう。
加えて、あの賢者の石は巨大クリーパーから手に入るもの。入手先を安定させなければ、安定した生産は出来ない。どうせなら失敗作だけじゃなくて、使い終わった個体も死霊術で使えれば良いのだが。
ゼラルムは半分非人道的な事を考えながら、考えがてらに再び術を放つ。複眼を持った、後ろに控えているホムンクルスたちの皮と肉が紅く弾け飛んだ。
アルベルトの一撃が、最後のホムンクルスを斬る。
ひざを折り、ゆっくりと大地に倒れ伏し……ホムンクルスは動かなくなった。
「ア~~~ア!! 全員やられちまったかア。やっぱりちょっと《切り取る》だけじゃ巧くいかないのかね」
アルルカンが困ったように言う。
「まあ良いデータも取れたし? 俺様ちゃんはこれにて一旦退場させて貰いますよっと」
「逃がすか……!」
ベルクが動いた。其の足は天を駆け、アルルカンを獣もかくやの速度で追った。アルルカンが笑っている。
陛下は陛下だ。
そう、宮廷道化師は言った。では行方不明の間どうしていたのか。何を考えているのか。問いたい事は幾らでもあったが、其れよりも――あの笑みが気に食わない!
「澱みの底に沈みて果てろ!」
振り下ろした武器は、しかしアルルカンの肉を薄く裂くに留まった。
アルルカンはあぶねえ! と叫びながら更にバックステップを踏む。
「ハッハッハー! そんな急所狙いますよって予告丸出しの攻撃じゃあ俺には届かねえよ! 次はもっと巧く隠してみせるんだな? 舞踏会の駆け引きみたいになあ?」
アルルカンが飛ぶ。逃走の脚は素早く、待て、と誰かがいう言葉には従わない。熱風吹き荒れる中、アルルカンの姿は僅かに舞う火の粉と熱の合間に消えていった。
遺されたのは数人のホムンクルスたちの遺体と、冒険者だけ。
「……逃がしました、ね」
気が抜けてしまったのか、フロマーシュが其の場に崩れ落ちる。
「大丈夫か!?」
「あ、大丈夫です……少し、緊張が解けたみたいで」
「なら良いが……俺の肩を貸そう。此処は火山の地下だ、脚が火傷するかもしれない」
アルベルトがフロマーシュの否定を聞くより早く、其の細い腕を己の肩に回し、支え立ち上がらせる。
「さて、この死体をどうするかですね」
言いながらもゼラルムは情け容赦なくホムンクルスたちの指を切り取ると束ねて、更に周りの肉ごと賢者の石を切り取ると、袋にまとめてマジカルポケットの中へ。
其れはナハシュも同じ。まるで競うように持っていた短剣で賢者の石を切り取ると――はた、と其の色の変化に気付いた。さっきまでは紅く蒼く輝いていた宝石が、無色透明になっているのだ。
「……なんだこりゃ? 水晶みたいになっちまった」
「そういえばそうですね。まあ、其処も含めて研究材料になりそうですし良いでしょう」
ホムンクルスはぴくりとも動かない。賢者の石を切り取られたものは尚更だ。
「……死して尚、使われるか……」
哀れだ、とルチルは思うに留める。だからといって己の行動を後悔などしないし、どのみち彼らを救う術は持ってきていなかったのだから。
ちちち、と、栗鼠が一匹戻って来る。エーテルを繋いでいた栗鼠だ。戦いが終わって戻ってきた栗鼠を再び解放すると、彼はアルルカンがいたところで止まった。
判っているじゃないか。
ルチルは栗鼠の背をそっと撫でてやると、其処に残った思念を読み取る。
●
ああ、ホムンクルスが蹂躙されている。
可哀想になア。俺に利用されて、拷問されて殺されて、そして最後にはこうして、冒険者たちの手によって哀れに摘み取られるのだ。花よりも簡単に、そして残酷に。
俺はこんな光景を、過去に幾度も見てきた。
例えば俺の故郷だ。むかーしむかし、燃え盛るふるさとを振り返った俺の胸に迫った感動。
人々が築き上げてきた歴史が踏み躙られ、無かった事になる。地上にいる人々は剣で切られ、踏み躙られているのだろう。男は其の命まで。女子供は其の尊厳まで汚辱の果てを受け、最後には命乞い虚しく殺される。
――なんて素晴らしい光景だろう!
こうしてまた、悲劇が生まれる。強き者は恨まれながらも全てをねじ伏せて、君臨するのだ。恐れと怨恨の上に玉座はある! 最高だ! 俺はそれが見たい! 其れこそがショウ・ダウン! 有象無象の命も魂も、あの神サマも構うものか! 俺は、徹底的に蹂躙の限りを尽くす陛下という未来が見たい!
……なあ?
《お前もそう思わないか?》
●
「……今のは?」
ルチルは困惑と寒気を感じて、思わずアルルカンが立っていた場所から手を引いた。今のは――彼の、過去なのだろうか。人間を悲劇の材料、玉座を支える土台としか思っていない、狂人の発想。作ったホムンクルスが殺されていく様を、彼はこんな狂った視点で見ていたというのか。
「何か感じた?」
アウレーリアが問う。ルチルはどう答えるか少し迷った。あの道化師の過去など正直どうでも良かったし、敢えて置いていったのだとしても恐らく嫌がらせ目的だろう。それらを鑑みて、
「……アルルカンは、“過激派の中でも過激だ”」
ルチルは結局、そうとしか言えなかった。
「過激派。過激派か……許せない……!」
ベルクがぐっと拳を握る。許せない、というより絶対殺してやる、という思いに変わりつつあった。ルチルが何を感じたのかは仔細までは判らないが、其の人格のクソッタレさは先程の邂逅で嫌というほど判っていた。陛下とやらがあのアルルカンという人物像を判っていて野放しにしているのなら、最早つき従う意味はない。会ってみなければ実際は判らないが、少なくとも印象としては最悪だ。
「息のあるホムンクルスは……いないか。全く、人形遊びをするならもう少し造形美というものを考えて欲しいね」
ジュストはホムンクルスを確認し、ふう、と息を吐いた。
「其れで、彼らはどうしようか」
「……お墓、作ってあげる?」
「そうですね、……せめて、何処かに埋めて差し上げたいです。こんなところで打ち捨てられたように眠るなんて、」
可哀想。
其の言葉をフロマーシュは呑み込んだ。そんな事を言う資格は自分には無かったからだ。もう大丈夫です、と、アルベルトからそっと離れて二本の脚で立つ。そうしなければ、彼らに合わせる顔がなかった。
「じゃあ埋めに行こうぜ。此処、暑くてたまらねえよ」
ナハシュが腕で顎に伝う汗を拭う。そう、此処はシグモル火山の地下だ。決して人が快適に生きていける状況ではない。
「そうだな、……出来るだけ熱くない場所に、埋めてやろう」
「其れから、調査隊との合流も急ぎましょう。ホムンクルスにばかりかまけて、彼らの護衛をしていた事を忘れていました」
ゼラルムが口元だけで笑う。
皆も其れで護衛隊であった事を思い出したようで、はっとする者が数名いた。
「フラスコ側がどうなっているかは判らないな。彼らを弔ったら迎えに行こう」
ジュストの言葉に皆が頷く。
そうして魂という21グラムを失ったホムンクルスは、辺獄の隅に葬られた。名を書く札もなく、ただそっと土が盛ってあるだけ。
其れでも、名前すら忘れて操られた彼らには過分な弔いであった。
熱風が吹く。何処かでアルルカンが笑っている。
マスターコメント
ミドルシナリオ難しい 報酬:多い8 / 6〜8人
2022年02月05日 09時10分52秒 公開
参加者
相談掲示板
キャスターのジュストだ、よろしく頼むよ。 今回こちらはウォーリア2、シーフ2、シューター1、キャスター3。 敵はスペックや攻撃手段が不明なアルルカン及び改造ホムンクルス10名。 ホムンクルスはアルルカンの命令に沿って動くようだけど、どの程度の連携をとってくるかも解らない。 ただ単純に向こうの方が数が多いし、囲まれたりする前に早めに数は減らしたいね。ヒーラーもいないから、長丁場は避けたいところ。 今回はアルルカンの討伐ではなく撃退が目的だけど、ホムンクルスの数が減るなり、アルルカン自身に一定のダメージや被害を与えるなりして向こうが満足するか興醒めすれば達成することが可能だという認識だよ。 ……ホムンクルスの洗脳はアルルカンが所有する神具を破壊するか、ホムンクルス本人が「希望」を感じる事で解除できるらしいけど。 どちらも今回の戦闘中はかなり難しそうかな。 特に後者は傍にアルルカンがいるわけだし。 現状肉眼で確認できているアルルカンの所有物というか武器らしきものは棘付きの鞭位だけど、神具かどうか解らないし、神具だとしても容易に破壊できるものではない気がするけれど。 一応確認しておきたいんだけど、ホムンクルスは戦闘中に洗脳解除できなくても殺さずに保護したいって考えている人はいるかな?
シーフのベルクだ、よろしく頼む。 とりあえず、失敗するだろうがアルルカンを強襲してみようかと思う。 >ホムンクルスの保護 できるならばしたいというのが本音ではあるが、我らの安全と代償としてまでとは言わぬ。 無理な時は、速やかに魂を縛りから開放してマトリクス界に送ってやるのが我らのせめてもの務めであろうな。(溜息)
シーフのナハシュだ。今回はよろしく。 敵についてや達成条件については、ヴェルジーの言うので同意だな。 アルルカンについては基本後ろにいて出てこねえとなると、探るなら確かにこっちからちょっかいかけて引っ張り出す必要はありそうか。 個人としては現状攻撃手自体は多そうだから、キメラ対応の遊撃とヒールでの回復を兼ねてもいいとは思っている。回復量はまあ御察しだが。 >ホムンクルス ?? 殺せばいいんじゃねえの? と思うが、別に生きたまま保護する方針で行くなら構わねえ。 とはいえ言われてる通り、がっつりアルルカンがいる上で戦闘だからな……出来たとしても戦闘不能にしておいてアルルカンが撤退後回収まで、洗脳についてはシナリオ外に投げるが関の山な気がするがどうだろう。
エルホワイトと申します。クラスはキャスター どうぞよろしくお願いいたしますね 参加者の中にヒーラー不在というのは痛手ではありますが、私を含めキャスターの方が多いとの事ですので面制圧火力には優れましょう 敵の数が多い現状下において好材料になれば良いのですが まずは敵の数を減らすべきという点には同意いたします 何をせずともこちらは数の上において不利。その上で敵は人造授恵者との事ですので光縛封等で分断されては目も当てられません ヒーラー不在で経戦能力にも不安が残る以上、被害を減らす意味でも敵の数を減らさない事には始まらないかと 敵の撤退条件に関しましては・・・・・・そうですね 敵首魁の性格上、リスクリターンで判断するタイプではない様に見えますから、ホムンクルスの損壊度で判断するなら少なく見積もって半数から7割程度。慎重に見るなら全滅が前提条件となり得るかと思われます 無論、先に触れられている通り一通り満足すれば帰っていく可能性もありますが >アルルカン 作戦中の行動にもよりますが、指示を出す程度で攻撃行動をしてこないのであれば監視程度に留めてある程度片付くまでスルーしてしまっても問題はないかと こちらに手を割けば殲滅速度にも差し障りますし、下手に手を出して逆上されては目も当てられませんから >ホムンクルス こちらは特に申し上げるべきこともないかと 情報用に1つ2つ確保して置く事に損はないかと思われますが、そもそもこの状況下で確保するための手を割くリスクとリターンが釣り合わないかと 情報でしたら他からも取れますし、そも一月程度で状況が劇的に変化をするかと問われれば、ですし
キャスター、アウレーリアです。宜しく。 ヒーラー不在の構成についてはやむを得ません。 万が一という事もありますので、各自でなるべくヒールを用意するなど対策に努めましょう。 余分にスキル枠を消費しますから、戦術次第で必携というわけではありませんけれどね。 戦力分析はまだ難しそうね。勿論早急に数を減らすべき、というのには賛同です。 複眼だったり翼があったりと、人の形状を保っていない。相応の追加能力があると見るべきね。 通常のホムンクルスとも違う改造型、戦闘仕様ないしアルルカンの親衛隊的編制かも知れません。 したがって、一般的な授恵者のクラスやスキル構成と同じである保証はないかと。 まだホムンクルスと本格的に交戦した記録は無かったと思いますが、どなたかご存じでしょうか。 今後を考えると、アルルカンも含めた能力を観察しておく必要もある。 継戦能力に不安はありますが、情報を得られるまでは多少粘った方が良いのかも知れません。 ホムンクルスについては、可能ならば保護に努めたいところですけれど。 状況不利の敵地で準備もなく、全員確保できるとは流石に思いません。 無力化を前提として過剰な殺傷は控え、戦闘後に生存していれば救助くらいが妥当でしょう。 ……救助したとて、人間として長期生存可能か不明瞭とはいえ、ですが。
ウォーリアのフロマーシュ・ダイヤドロップと申します。 皆様よろしくお願いいたしますっ! 今回はヒーラーの方がいらっしゃらないのですね… それを補う為にも、皆様の事を全力でお守りいたしますのでっ! もちろんヒールも用意して、そちらでも皆様を助けて参りますっ! 情報分析やホムンクルスの保護については、できそうならしていければ、でしょうか… いずれにせよ、していかれるのでしたらそちらの支援も少しでも行っていきたい所ですっ。
ウォーリアのアルベルト=V=シュタールシュヴェーアトだ。 よろしくな。 俺としては可能な限りホムンクルスは助けてやりたいが・・・無理なようならせめて苦しまないように彼らの「魂を解放」してやろうとも思っているぜ。 それよりも、今回俺はアルルカンとか言う帝国の面汚しの外道を叩っ斬ってやるつもりでいるぜ。 まあ、とりあえず今回はヒーラーがいないから無理はできないがな・・・一応ヒール1を持っていく予定だぜ
情報屋のルチルだ。よろしく。 >ホムンクルス 今回の戦闘はアルルカンへの情報収集も兼ねるだろうし、事実上肉壁となっている以上あまり手心を加える余裕はなさそうだね。 忌避感があるのなら、率先して即死を狙うのは避けるがそこに躊躇いはないつもりだ。 というか、アルルカン的にはそういった葛藤を見るのが目的で嗾けてた節もあるだろうしね。 >戦闘 ヒーラー不在は仕方ない。とは言えそのために勝てないという事もないはずだし、アタイもヒールを持っていくつもりだから足しになればと。 回復量を優先させる必要があるなら魔弓を所持していこう。 攻め方としてはキャスター陣でホムンクルスの数を減らし、なるべく撤退前にアルルカン自身も叩いておくという所か。 こちらは射程があるからアルルカン当人の狙撃も狙えるが、ホムンクルスが間に割って入るならそちらの対処を優先しよう。 翼はあるのに飛べない個体もいるが、足された要素が脅威になり得る可能性もあるしね。
>ホムンクルスの処遇 俺の懸念としてはルチル女史が触れてくれたように、下手に手心を加えたり戦闘中に解除を試みようとするとアルルカンに利用されたり、向こうを楽しませるようなかことになりそうだなって点だったんだよね。 皆の意見を聞くに今回は可能ならば、って人が多いみたいだから全体としては問題なさそうだけど試みる人は気をつけてね。 俺としては加減するつもりはないけど、それなりにタフなら手足から潰していっても良いかなという認識。あとはアルルカン撤退後に息がある者がいれば保護するのは反対しないよ。 >戦闘 俺はまずホムンクルスの数を減らす方向で考えているよ。 ある程度タフなら他のキャスター陣と範囲を重ねて攻撃を集中させるつもりだ。 アルルカンへの攻撃は余力があれば参加したいけど、ホムンクルスの数を減らしてからになるね。 >戦力分析 改造ホムンクルスは器を改造しても改造した魂が適応出来てなくて機能性が伴っていない失敗作なのか、それともまだ調整中の試作なのか、現状ではよくわからないよね。 今まで交戦記録にある個体は特別特殊能力があったりするようなのはいなかった気がするけど。 とりあえず動きを見つつ、現場で分析していくしかなさそうだね。
とりあえず白紙提出にならないように以下の内容で仮プレイングを提出しておいたぜ。意見・ダメ出し等があったら遠慮なく書き込んでくれ。 以下仮プレイング ※アドリブ可 ・心境及び目的 アルルカンめ・・・帝国の面汚しが!貴様は俺が斬る! とは言え、ホムンクルスも無視できないな・・・本音を言えば生きたまま助けてやりたいが、無理な様ならせめて苦しまないように彼らの「魂を解放」してやる必要もあるな。・・・この葛藤もアルルカンは楽しもうって事か、この外道が!! アルルカンを撤退させたらまだ生きているホムンクルスの救助もするか。 ・台詞 「アルルカンめ!貴様達を斬る!!」 「アルルカン!この帝国の面汚しが!貴様は俺が斬る!」 「ホムンクルス・・・せめて魂を解放するぜ」 ・全体的な行動(数字の順に行動する予定) 1:ホムンクルスを全滅させる(峰打ちで生きたまま気絶させる。それが無理なようならせめて苦しまないように「魂を解放」する) 2:アルルカンを倒しに向かう ・戦闘での行動 毎ターン攻撃集中状態で行動する ホムンクルスに対しては『鋭撃2』を使用する アルルカンに対しては最初は『雷神剣』を使用、その次に『鋭撃2』を使用する 敵に近づくときは『チャージング』を使用 HPが半減したら『ヒール』を使用 仲間との連携を重視する 仲間の攻撃魔法に巻き込まれないように注意する ・その他 アルベルトは帝国過激派を『帝国の面汚し』と見なしているので、帝国過激派に対しては嫌悪感及び憎悪をむき出しにします。 アルルカンの非人道的な行為に対しても同様に嫌悪感及び憎悪をむき出しにします。
>戦力分析 >ホムンクルス 過去の依頼で出現した個体はあくまで授恵者の能力の延長程度で、そこまで特殊な能力を持っていた個体はないと記憶しておりますね こちらの個体は光縛封を使用することが出来たようですので、参考までに 【魂禍】フラスコの外の小人(https://alpaca-connect.com/world/world0/scenario/1763) とはいえ、警戒して置くことに損はないかと思われます >回復リソース 私の方でもヒールを活性化させていただいております 展開次第ではありますが、殲滅速度に余裕があるか被害が大きい場合には回復に回らせてだきますね >戦闘 一先ず初手で高速展開を使用して殲滅を優先 もう1つの特性スキルは高速多段もしくは空間爆砕を取得しての高速展開との併用を予定しております アクションスキルは魔弾とメテオライト3にヒールと重点硬化 基本的に火力を重視した構成となっております ご意見がございましたら仰っていただければと
ゼラルム様は交戦があった報告書を見せていただき、ありがとうございます! 今回は敵の数が多いのでより注意していかないといけませんね… 私はシーザーロアとカバリング及び重点硬化を使って、出来る限り皆様、特に後衛の方が 狙われないようにお守りして参りますのでっ。 そちらに加え、ヒールを使って守りと回復を優先していきますが 攻撃に回れるときは衝撃刃で、皆様が狙う相手に集中して攻撃していきますのでっ。 ご指摘したい事がありましたら、遠慮なくお伝えしていただけましたらっ。
>個人 此方はヒールの一枠は確定で、殲滅力を上げるために貫通衝撃射と炸光矢。 回避の高い敵に備え風読みの矢くらいか。 特性は…索敵能力の必要性は薄いし、念の為栗鼠に見張らせておくぐらいにしてアルルカンのデータを取るためにデバフスキルを用意しよう。
>初手奇襲決めようかと思ったがとりあえずホムンクルスを沈黙させるまではホムンクルスを相手にして、終わったら、もしくはアルルカンが逃げようとしたら全力で殺りにかかることにしよう。