【竜盤】竜殺のアイデア(意見募集)

DoLLer

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シナリオID:1368

オープニング

 ドワーフ王国の首都はクリエスター山脈の中にある。とはいえ地下都市では経済や農業においては都合が悪いことも多い。そんな理由から拓けたのが山脈北東部の平野部マミダである。
 帝国、また辺境都市群へとつながる交易地でもあり、ドワーフ愛飲の火酒の醸造地としても知られる都市マミダを中心としたこの地域は、ドワーフ王国の玄関口として知られていた。
 しかし、そこにドワーフ王国の宿敵たる邪竜が襲撃を行った。普段ならある程度奪いつくせば消えていく邪竜だが、邪竜バイアーディスとアイオーンの二体は、彼らを頭とする種族混成軍メルトウォールと共に包囲網を敷き、陥落させた都市を支配下に置くといった行動に出たのだ。
 今までにない攻勢に対して大きな対抗策を持ち合わせていないマミダ各地域の都市群は、それでも命の為に、仲間の為に、家族の為に、明日の為に。
 絶望の中にあっても防衛と抵抗を試みるのであった。

●ドワーフ王国首都
 ドワーフの民が集まる前で、シグルランが拡声紋具を手にした。
 固唾をのんで見守るドワーフ達。その前でシグルランは魂の一言と言わんばかりの大声を上げた。
「みんなー! 邪竜を退治したいかー!」
   「おおおーーーー!」
「マミダを取り戻したいかー!」
     「おおおーーーーー!!」
「おいしい火酒を飲みたいかー!」
       「おおおーーーーーー!!!」
 シグルランの掛け声に声をそろえて返すドワーフ達。
 シグルランは国を治める術など一つも知らない。そんなものを頭に入れるスキマもない。そんなことはドワーフ王国の人々も十分理解している。だって代々そんな感じだったし。
 だからこそドワーフ達は本来ならば王など必要がないくらいに協力し合うことを知っている。
 そんなところにシグルランが民衆を集めたということ。その意義を知っていた。
 一つは、声と力と心を合わせること。
「竜鱗はー?」
  「貫くものーー!」
「竜の牙はー?」
  「へし折るものーー!」
「つまるところ、邪竜といえばー?」
  「倒す相手ーー!」
「そのとーりっ。アタシ達にとってこいつはチャンス。兵士で取り囲んでとか、そういうのはドワーフには向いてない。やることはただ一つ」
 シグルランはそこで息を吸い込んで、魂の咆哮を上げた。
「最高の武器を作ってぶっ潰す!」
  「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
 そう。もう一つの意義は。
 武器づくりのお題目をお披露目することであった。ドワーフ達は武器づくりに関しては人一倍敏感であった。

●冒険者ギルド
 こうなればドワーフ王国の動きは速い。軍がどうこうなどというより国民一丸が勝手に動き出すのである。
「ということで、バイアーディスだかバイコーンか知らんけど、あの巨大な邪竜をぶっ潰す武器を募集します」
 ドワーフ王国の冒険者ギルドにもそんな依頼が何枚も何枚も何枚も何枚も張り出され、王国外の冒険者たちは目を丸くするばかりであった。
「これ全部同じ依頼じゃないの? なんでこんなにたくさん?」
「全部工房が違うんですよ。ドワーフ達は自分の工房で最高の武器を作りたいのですが、魔改造をしていく工房や、使い手を重視する工房は、まずアイデアを募集するところが多いみたいですね」
 案内人がそう言うと、耳ざとい依頼人、つまりは各工房のドワーフ職人達がこぞって詰め寄ってくる。
院家「そうさ、竜を切るといえばやはり剣。ドラゴンキラーの形状や仕組みを、冒険者の知見から組み上げていこうと思うんだ」
「何を言う。竜を殺した武器といえば槍だろう。流星のごとき一撃を見舞う槍を一緒に作ろうぜ」
「そんなもん役に立つか。時代は遠距離攻撃。つまり弓だよ、弓! 竜の弱点に狙いをつけるエーテルの組み込み方のアイデアをくれないか」
「ははは、邪竜二匹もいるんだぜ。そんなちまちましたモンで片づけられんだろう。毒だ。竜に特化した毒を作ろう」
「はぁ? 時代はバリスタよ。巨大兵器のカッコよさを知らないのね?」
 早速始まる喧々囂々に案内人は隠れてため息をついた後、素知らぬ顔であなたたちに向き直った。
「職人さんたちは、特に使い手であるアイデアが欲しいようです。巨大な相手に対抗するための。アイデアをお持ちなら、もしくはあの邪竜を自分の手で倒したいというイメージをお持ちでしたら、ご参加されてみてはいかがでしょうか。突飛なアイデアでもドワーフ職人にかかれば意外と形にしてくれるかもしれません」

解説

邪竜バイアーディスとアイオーンに攻められっぱなしの現状ですが、倒すための武器づくりのアイデア出しをするシナリオです。(どのように土地を取り返すかなどはここでは論じません) 実際にこのシナリオで武器が完成するわけではなく、今回はまずどのような形、ギミックになるかのブレインストーミングです。 ・自分ならどうやって邪竜を倒すか ・どんな武器なら倒しやすいか ・今までの冒険の中で、こんな素材やモンスターなどがいたなどの情報 などを募集します。 その他のプレイングは自由です。 他にも ・試作品を作ってみる、試作品を試してみる。 ・ドワーフ職人に戦い方を見せる。 ・むしろドワーフ職人にどんな武器を作りたいか尋ねる ・みんなと酒を飲んで雑談する などしていただいて構いません。 様々な工房から依頼が出ていますので、リプレイは一つですが、シーンによって場所は違うとします。タグを作っていただくことで、お友達だけで集まることも可能とします。 街中ですので無意味に被害を出したりすることのないよう気をつけながら、皆さんで楽しく理想のドラゴンスレイヤーや大型生物と戦う夢を語ってください。

マスターより

対邪竜武器は複数案を採用する予定です。複数のアイデアが一つにまとまるなどする合作案になる場合もあります。 採用されたアイデアは後日、竜盤担当MSに今回のアイデアを元に実際の製作シナリオを出してもらう予定となっています。 つまりみんなのアイデアが形になるチャンスですし、それがシナリオや連動ストーリー全体に活かされるという大チャンスでもあります! 相談期間がいつもより短めに設定されていますので、プレイングの締切につきましては十分注意していただきますよう、よろしくお願いいたします。

リプレイ

「それではよろしくお願いします」
 意見募集のためドワーフ職人が案内したのは酒場のテーブル。もちろん飲み放題。
「まずは、かんぱーい。依頼で飲めるっ。さいこーだね♪」
 クレア・エクレールはその髪の色にそっくりの飲み物を軽く口にする姿はニコニコご機嫌姿だった。ドワーフ王国だから飲めるものは強烈な酒ばかりかと思っていたが、なかなかどうしてボトルは工芸品のようで綺麗だし、味もなかなか悪くない。
「それだけ忌憚なく意見がほしいということだな」
「ははは、キタンない意見は欲しいだろうが、キタナいものは出さないようにな」
 火酒をラッパ飲みするベルク・オスマットの横には既に空の瓶がいくつか転がっているのを見て、ヨル・スレイマンはからっからと笑うと、ベルクもにやりと笑い返す。
「この程度ではまだ酔わんぞ? それにちゃんと案だって考えてある。」
「ほう、どんな武器だ?」
「戦場のロマン。それは大型兵器! というわけで大型のバリスタと専用の対邪竜用貫通矢の製造を提案する」
「巨大武器いいよね。浪漫だよねぇ、うんうん」
 ヨルが頷く一方で、クレアはうーんと渋い顔をした。
「確かに一撃で大ダメージを与えるのはいいね。でも、できるなら自分の力でやりたいかな」
 飲み物に入っていたサクランボを口に咥えると、その軸を紙に走らせた。
「武器じゃなくて鞘の方に仕掛けを作って、超爆速で抜刀したりとか。あとは武器に竜特攻の毒や属性を……」
 軸から滴った飲み物は桜色のインクとなり、居合抜刀する姿が生み出される。
「おー、洒落てんねぇ。俺はねー。やっぱ鉄より硬いっていう竜鱗が一番キツいと思う。だからクレア君の毒や属性ってのには賛成かな」
 ヨルは自分が飲んでいた酒を、クレアの絵に垂らした。途端に絵はにじみ、紙は水を含んでヨレていく。
「俺はねー、強酸を押す。鱗を溶かしてダメージを入るようにする。『絶対に大丈夫』だと油断していた場所から慣れた武器で致命傷を与える。下手に細工した武器は扱いにくいし、自分にも返ってくる危険性もあるだろう」
 動物の頭蓋骨をかぶり、飄々とした雰囲気のヨルの目が一瞬、命をやり取りする人間の、独特の冷気を伴った眼光をクレアに注いでいた。
「なるほどねー。竜相手だと一人でやりあうものでもないっか」
 クレアは椅子の後ろ足二本でバランスをとりながらつぶやくと、ベルクは静かにそちらに視線をよこしながら、新しい酒瓶をつかんだ。
「クレアの超高速抜刀案はバリスタでこそ輝くだろう。酸といっても、それを鱗にまで届かせる必要がある。クォレルに酸を込めて、着弾と同時に……」
 それと同時に、酒瓶の口を手刀一閃スパンと切り落とした。
「技術はいる。開発の余地はぜひその着眼点も大切にしてもらいたい」
 ずっと聞き入っていたドワーフ職人はベルクの言葉にこくりと頷いた。
「竜を苦しめる酸。よし、これを竜酸と呼びましょう。鱗ならいくつかはがしたものがある。これをいかにボロボロにするか。それを込めるバリスタの仕組み、クォレルの仕組みも考えなければなりませんな。しかしこれができれば、竜も素材の宝庫……!」
「武器を開発して倒した敵からまた新たな武器を作る……業が深いな」
 一同の視線は一人頷くヨルが被る頭蓋骨に集まっていた。

●
「竜退治って夢だよな」
「わかる。英雄物語には外せないよね」
 最高の剣士を目指すナキルと世界中を冒険して回りたいベルことララベル・サン・ディーベルは竜を倒すイメージに花を咲かせていた。。
「やっぱり竜を倒すのは剣かなって思うんだ。僕なら素早さを活かして、炎と爪をかいくぐって、喉元に……ね!」
 ベルは短剣を引き抜いた次の瞬間には、工房の道具を一瞬でかいくぐって最奥にある想定される邪竜を模した丸太までたどり着き、そのまま短剣を掲げる。
「なるほど」
 その動きを鋭い視線で見ていたケン・Z・ブラッドリーは静かにうなずいた。刀匠王と同じ派閥であるドワーフ職人の父の血を引いている彼にとって、邪竜退治の武器作りは一つの目指すべき到達点でもある。
「そこまで潜り込めるなら、あとは……」
「あとは?」
「首を刈る為の武器一択だ」
「刺し抜くとかじゃなくて!?」
「何を言う、首は刈るためにあるんだ」
 母から受け継いだ首刈の精神にベルは言葉を失った。
「首を刈るのは……ちょっと難しいかなぁ。僕の武器じゃ人間の首でも落とすのは難しいよ。それでなくても致命傷は与えられるけど」
「竜鱗の硬度に勝つためには強度が足らず、あの肉を断ち切るには切れ味が足りない。だからこその刀剣――刀と剣の特性を併せ持たせるのだ。玉鋼で硬度を保ちつつも、剣のように肉厚の刃を作り上げれば……!」
「ケン。かなり早口になって何言っているかわかんない」
 ナキルに言われてケンはこほんと咳払いをした後、自分の荷物から一本の『刀剣』を取り出した。
「試作品はここにある」
 新作武器に目を輝かせるナキルが早速それを手にしてみた。
「これ、やっぱベルには重いかもな。分厚い分だけやっぱ重たいし、振り回すとなると体の軸が持っていかれるぜ」
「むむ」
「オレの知ってる武器なんだけどさ。刀身の半ばにも柄をつけた二重柄にしてみればどうだろう」
 そういうとナキルは近くにあった木の槍をケンの作った刀剣に括り付けた。そして改めて槍部分の持ち手を持って構える。
「これなら……」
 ナキルもベルと同じように走りこむとぐるりと回転をつけて、そのまま丸太に切り込む。
「多少食い込んでも断ち切れねぇ……だけど、こっから真骨頂だ!!」
 大剣の柄をがっつり掴んだナキルはそのまま両腕の力を使って、食い込んだ刃をそのまま勢いよく下に切り下した。
「どうよ!」
「ナキルには使えそうだけど、スピードが犠牲になっちゃうから、懐に入り込むのが難しくなるよ。エーテルで補強とかできないかな。もっと薄く透明な……氷の刃みたいなものがあればその長さでも扱えると思う。エーテルで刃を作れば、一瞬だけ刀身を伸ばしたりもできて間合いも詰めやすくなると思う」
「うーん、スピードかぁ」
 確かにナキルとベルの間合いに入り込むスピードは全然違った。相手は生きた相手で、その力も早さも人間とは比べ物にならないという。
 力を優先すれば入り込めないし、素早さを優先すればダメージを与えられなくなる。このバランスのかじ取りの難しさにケンも唸るしかなかった。
 しかしその時だ。
「はっはっは。すべてを一人で背負い込む必要はないぞ。いいか良く聞け。重要なのはバランスだ」
 皆が唸るなか、超然とした笑い声をあげたのはハッタ・ムラムラだ。
「ドラゴンキラーと言えば大概の者は、まず武器を発想するだろうが、それだけでは足りないのだ。知性のある相手をおびき寄せ隙を作る手段だ」
 ハッタはにやりと笑った。
「おれが提案するのは……名付けて『魅惑のパンダメリーゴーラウンド』」
 ハッタはバックパックから取り出したのはGP教謹製の絵馬ならぬ絵パンダ。五角形の頂点についた奉納用に引っ掛ける紐をその肉球ぷにぷにの手でいくつかまとめて持つと彼は勢いよくぐるりと回転させたではないか。
「見よ。この愛らしくも引き込まれるような魔性の動きを。邪竜とてこれには抗えないだろう。なまじ知性があるだけに『なんだあれは』となり、乗りたくなる悪魔の罠!!」
 ゆーらゆーらと回転するパンダメリーゴーラウンドにケン、ナキル、ベルの目線は奪われ、回転に合わせてぐるぐる回る。
 まわーるまわーる。
「これだ。切れ味を最高に足す一撃は」
「うん、これなら薄くて透明な刃が作れそうだよね」
「だよな。これなら神様だって一撃でやっつけられちまうかもだぜ」
「んんん? ちょっと待て。なんか違ってないか!? 武器から一度離れろ。このパンダメリーゴーラウンドの魅惑はそっちじゃない。ホラーはやめるんだ」
 そう、他三人が思いついたのは、パンダメリーゴーラウンドのパンダが細かく何度も切り刻んで竜の首を切り裂いていくイメージだった。この二重柄の刀剣にパンダを取り付ければ……首は落とせるに違いない!

●
「これはわたしが再興している町で作ったんです」
 トーラは焼き立てのソーセージをテーブルに差し出してそう言った。緊張しつつもちょっと自信ありげな顔に「ほほぅ」とラシェルは笑顔を浮かべた。
「町は辺境都市かの」
「いえ、この近くで。もう一年近く前になるんですけどバイアーディスとアイオーンが最初に襲った町――アルミダ、マミダ地域の端っこなんですけど。そこから脱出した人たちで造園都市を作ったんですよ。そこで飼い始めた羊なんです」
「ほう、なんとも不思議な奇縁じゃ。そりゃ食うて応援せねばならぬのぅ。じゃがわしの舌を唸らせるのは大変じゃぞ?」
「ふふふ」
 もったいつけているラシェルが可笑しくてシルヴィア・A・カペルは静かにほほ笑んだ。人生楽しんだもの勝ち、食べるの大好きといつも豪語しているのに。
「私もいただこうかな」
 一緒になって焼き立てジュージューと弾ける音がまだ続く鉄板の上からソーセージをフォークでぱくり。
「んむ。こりゃあ酒が進むのう」
「ふふふ、確かに。エールには枝豆と決めていたけれど、これは美味しい」
 二人してほっぺが落ちそうなくらいにほくほくした顔で食べてくれるものだからトーラもすっかりご機嫌だ。
「その町の人間のためにも、また代表して顔を出したトーラのためにも最高の武器を作らんとのう。こら、職人。そのソーセージを食うのに一生懸命にならんと武器の理想を語らんかい」
 依頼人たる職人も食べる方に忙しくなっていたが、そこではたと手を止める。
「そうさなぁ。俺んところはその人の力を引き出すことを信条にしておる。竜を殺すのは武器じゃない。人の力だからな。武器はその下支えと考えておるのだよ」
「わかります。わたしだとやっぱり短剣ですよね。でも一撃が軽いので邪竜を相手にするには厳しいかな。だからこの一撃を補う力があると嬉しいかなって」
 一緒に逃げ回った記憶。邪竜の咆哮。あれを自分の手で止めるとしたら? トーラは自分の腰に下げた短剣を見て、顔を曇らせた。
「そうだね。私が好きな武器は刀と舞扇。特に扇は仕込み武器で、不意打ちを仕掛けられるのが強みだよ」
 シルヴィアは酒の入ったカップを口にしつつ、もう片手で扇を取り出すと、一閃。閉じていたそれは一瞬で開き、扇の先端に付けられた刃で、ソーセージが3つに分断された。まさに早業である。
「これでまとめて薙ぎ払える力、初手は間違いなく奪えるからその後を有利にさせるような働きがあると嬉しいんだけどね」
「おう、見事なものじゃのう。わしはエーテル伝導性の高い武器が基本じゃな。ここでわしの力もぱーっと派手に花火を……あげたら壁を吹き飛ばしてしまうな。動かん的ならばよいがあの竜とやらには的も絞らせぬ力があるからのぅ。そこもおぎなってほしいものじゃ」
 魔杖をくりくりと回しながら酒を飲んだラシェルはけらけらと笑った。
「要約すると、弱い力でも一撃を決められて、範囲攻撃ができて、魔法の力をより絞り込めるような、か。全然絞り込めねぇな。ソーセージみたいに詰め込みすぎだ」
 ドワーフ職人はげらげら笑いながらソーセージをかじる。
「でもソーセージはそれができてるんだ。いろんな肉をぜーんぶ細かくちぎって塩もあらかじめ混ぜ込んである」
「エッセンスにて決める共通項か……とすると、エーテルじゃな」
「でもエーテルを操作して今のわたし達授恵者なんですよね。この強化というと……経験を積むくらいしか」
 それに魔法はやっぱり使えないということになる。魔法の力で鱗を貫くトーラのイメージは形になりそうになくて、ちょっとだけしょんぼりした。
「エーテルに効果のあるといえば毒や薬もあるね。相手のエーテルを崩したり、もしくはこちらのエーテルを高めることができるなら、疑似的に私たちの発想を叶えられるかもしれない」
「なるほど。そりゃ面白い考えじゃのう。方向性としてはありじゃ」
 興に乗ったラシェルの赤い瞳は火酒よりもきついと言われる最強蒸留酒の透明な液体越しに輝いた。
「普通に考えたら、危ないクスリになっちゃうけど大丈夫?」
「体に入れるだけが全てではあるまい。武器の能力を一時的に高める、または相手を不利にさせるように巻いたり、武器に仕込んだりも十分アリじゃ。おぬしのその鞘も同様じゃろう?」
 ラシェルの一言にシルヴィアは一瞬戸惑いを見せたものの「参ったな」と言い、軍刀を机の上にことりと置いた。
「蒼玉の麗人っていうんだ。エーテルを込めることで効果を発揮するんだ」
「こんなものがあるんだ……!」
 トーラは目をぱちくりとさせてその飾りの美しい鞘を見つめた。そして一緒になってドワーフ職人も目を見張る。
「周辺のエーテルのバランスを変化させる。これは何かできそうな予感……。このように鞘に押し込めるのは大変じゃが、一時的でよければ散布型にして、ふふ、ふふふふふふふ」
「な、なんか危ないことになりそうですけど、期待しています」
 もはや酒のせいなのか、話の熱が上がりすぎたのか、どちらにしろ不安なことに変わりはないが、何かしらの結論が出たことにトーラは笑顔を浮かべた。

●
「シューター、だなんて名前だから分からなくなるけど、アタシらは目と耳、いわゆる『感じ』の良さを大事にしているのさ。これには近距離も遠距離もない」
 一番の大御所工房ではエリザ・A・ミシャールは片手斧にくくりつけられた小盾で仮想敵役として相手をするコハクの冷静無比の攻撃をかわし、踏み込むとボウガンを的に突き当てた。
「欲しいのは、回避と射程を両立したもの。この距離なら弱いところを確実に射抜ける。また中距離なら回避の手助けをしてくれるような、ね」
「また無茶いうな」
 そう言ったのは職人ではなくエリザの夫であるガルレイド・S・グリディッカーだ。
「いいじゃない。まずは思いつくままにアイデアを語る。現実を加味するもんじゃないよ」
 なるほど。不可能だと思えるアイデアだって他のきっかけにはなるかもしれない。そうしてくると茫洋としていたイメージがあふれてくる。
「私も使ってみてもいい?」
 エデル=マグノリアは武器を手に取ると、楽しそうに片手斧と盾と受け取ると楽しそうに振り回してみせる。一振りごとに白木蓮の甘い香りがふわりと漂う。
「いい香りがする」
「体質みたいなの。……ちょっと使いにくいけど、色んなことが両立できるって便利だわ」
 ノックス・マグナが自分の唇に指をあてながらその様子を見つめるにもかかわらず、エデルは楽しそうに斧をバットのように振り回していた。
「私もヒールを使った際に、他の……輝刃とか、能力向上効果も一緒に付与できたりしたら便利だなあって思うわ。これの応用でできないかしら」
「武器とスキルは全く別物ですから、それは難しいかもしれませんね」
 同じようで違う。ノックスは自分のロングボウの弦を軽くなでて呟いた。自分が今はもうない家でつま弾いていた楽器の弦を弾くことと、この弦を引くこととが違うように。そこに違和感をずっと持っていたように。
「竜を倒すことを目的とするなら、まず空に逃げさせないことです」
「バリスタを撃ち込んで傷を与えられるかな。武器とスキルは違うなら、あれに効果的な一撃を与えるのは授恵者のエーテルをまとった渾身の一撃でないと難しいかもしれないよ。そういう意味では必要なのは、やっぱり近づくまでの間『生き残る』ための道具だと思うね」
 対して、シェオルは差し出された酒を一口すすってそう言った。「薬酒のベースにするにはいいかも」と悪い顔をしながらの酒の感想も含めて。
「いや、矢を改良すれば少なくとも翼の皮膜くらいは貫きとおせる。武技としても力を効率よく伝える技術もあるわけで、力を伝えれば必ず砕き穿つ必要もない」
 ガルレイドは拳を握りしめた。修行者として百余年を過ごしたものがその拳にこもっている。
「そっちもなかなか無茶いってる」
 本人から無茶いうなと言われたエリザが苦笑いを浮かべた。
「いえ、ですが正しい知見だと思います。それに竜を倒したいと何よりも願うのは私たちよりも彼らだと思うのです」
 ヴァレリア・ブランシェ・ウィザースプーンはじっと話を聞いていた工房のドワーフ職人たちの姿を見た。彼らは冒険者たちの言葉を一言一句聞き漏らすことがないようにと鬼気迫る顔つきをしていた。
「彼らにも使える、そしてこの国だからこその武器というのもまた必要ではありませんか」
 リーンエス王国貴族ウィザースプーン家としてヴァレリアは思うのだ。真理よりも最善を尽くすものを良しとする意味を。
 そしてヴァレリアは「どうでしょうか」と職人、そして仲間たちの顔を見回した。
「おおよその意見は理解した。今ここには大きくわけて二つの意見がある。つまりそなた達の武器と、我々の武器という考えだ。どちらもあの邪竜を殺すというに至るのであれば……どっちも作るのが正解だ」
「考え方が豪華だね。ドワーフは宵越しの資財は持たないって本当なんだね」
 シェオルが口笛交じりにそういうと、工房長は笑った。
「邪竜には奪われるくらいなら、邪竜を殺す武器や防具に変えて使っちまった方が溜飲は下がるからな!!」
 その言葉にヴァレリアはほほ笑んだ。足止めや時間稼ぎではなく、倒す方向にのみ集約する。資財は使うためにある。豪快すぎるきらいはあるが、好ましい考えだ。
「では私はドワーフの皆さんにも使ってもらえるものを。バリスタ案ですね。どちらかといえばここには岩石がたくさんありますので、これらを砲弾にするカタパルトはとても向いているといえるでしょう。邪竜だけでなくメルトウォールの頭数を減らすこともできるでしょう」
「ならばやはり砲弾の改良は望むべきだ。従来の砲弾ではやはり強大な敵、または戦いの熟練者ならば弾かれる。力を逸らされる。反動しにくいもの、粘土や砂袋のようなものは確実に力を通していく」
 ガルレイドは酒を革袋に入れて、ぱしっと片手に投げて当てる。
「できれば矢に返しをつけるのも効果的ですよ。それから移動できるように運搬できる仕組みも大事です」
「運搬と特殊な砲弾の開発だな……くぅ、ドワーフ職人泣かせの注文じゃねぇか」
 職人たちは早速それぞれの部位はどんな形状が一番かと話し合い始めている。それは一度かまどに灯された炎のようで、熱意はこれから大きくなる予感しかしない。
「良い傾向だ。なんでも話してみるものだな」
「言っただろ?」
 ガルレイドとエリザは互いに視線を交わして、くすりとほほ笑んだ。
「まだまだこれからだぜ。エリザさんも作りたいものはこんなのとは違うだろう」
「もちろん。やっぱり自分で懐に入れるものだからね。エデルのいう二つの力の両立なんていうものは是非形にしてみたいよ」
「そうね。ヒーラーといってもいざとなればエーテルブローで戦うこともあるから。武器で一個だけ固定の効果をつけておくとかでもいいかも」
「そうなるとやはり盾付きの装備というのは、今のところ取りうる形としてはベストかな。回避を助けてくれる副武器としてはエリザ君の発明は良いと思う。しかしシューター用の武器にしてしまうのはもったいないな」
 シェオルは顎に手を当て、しばらく小盾つき片手斧とボウガンセットを眺めていた。
「エデル君は使えると思うか?」
「手が混乱するかも。もう少し収まってくれていた方がいいかな?」
 エデルのアドバイスを元に、小盾ではなく大きなガントレットが用意される。張り出した手甲が二の腕までカバーされる湾曲した形が特徴的だ。今は皮で作った張りぼてだが。
「あ、これだけで盾みたいに扱えるのね。盾みたいに握りこまなくても使えるから便利かも」
 ちょっと面白そうにして、ガントレットをした手に得物である花刀を握りこんでみる。
「ポイントはそこだ。スキルの両立はできないかもしれないが、そのガントレットなら副武器であったりポーションなども握っておける」
「なるほど~。思わず握りしめてしまうかもだけど」
 発明で遊んでいるかのような悪い顔をしているシェオルだが、何とかエデルの意見を生かそうと考えてくれるのが伝わってきて、エデルはくすくすと笑った。
「ポーションでなくてもこの隙間に武器を入れてみるのもいいかもね」
「そこで小型バリスタ」
「零距離射撃も夢じゃない」
 みんなそれぞれ夢を押し込んでくることにエデルは噴き出した。
 この熱意に桔梗のような花が咲き、きっと竜の鱗を貫くのだろう。『よい語らい』と呼ばれるその花言葉のように。

●
「それで、みんなどんな武器作ることになったワケ?」
 シグルランはドワーフ王国の工房街を歩いて、きょろきょろ見回していた。
「まずは鱗を……」
「ブッチしちゃう剣ってことね!?」
「いえ、薬品です」
「はぇ!? なにそれ。ドラゴンスレイヤーっていえば剣じゃん。剣はないの!?」
「ございます。メリーゴーラウンドする大剣ですね」
 シグルランもたいがいぶっ飛んだ性格と言われるが、さすがにその案は予想もつかなかったらしく、あんぐり口を開けたまま固まっていた。
「それからエーテルのバランスを調整する薬」
「最近の冒険者ってばりばりインテリタイプだったりするんかな……」
 刀に魂を込めて今日まで生きてきたシグルランとしてはちょっとショックなのかもしれない。肩が震えてる。
「おっもしろーい。マジヤバじゃん。アタシの鍛えた刀に仕込めば、あの真っ黒い竜の頭スイカ割りみたいにできんじゃね!!?」
 受け入れるスピード早すぎだろ。
 目を輝かせるシグルランに、今度は補佐官の口が閉まらなくなった。
「他は? 他は!?」
「可変式カタパルトと、ガントレットに武器を仕込んだ攻防一体の武器、ということです」
「刀以外にもこんな開発できるとか、ドワーフ王国マジ安泰じゃん。ふふふーん♪ よっし、アタシも武器作りたくなったぞ。窯に火をいれろーい!!」
「ちょっ、シグルラン様。それよりもまず軍議が……!!」
 ドワーフ王国は職人の国。新たな発想とそれを形作る執念で未来を切り開いてきた国。
 邪竜の脅威を前にして、その情熱の炎は火を噴きあげていた。

マスターコメント

たくさん武器のアイデアをありがとうございました。 先にマスターよりで報じました通り、いただきましたアイデアをもちまして竜盤に参画いただくマスター陣によって、形にしていきたいと思いますので、これからも竜盤のシナリオを楽しみにしていただければ幸いです。 オープニングで「あ、これ、私の出した案が採用されているのかも」と楽しんでいただければと思います。 ちなみに僕が考えていたのは竜の鱗や牙を集めて「同じ素材同士なら切れるんだよぉ!! 鍛えた分だけこっちが上だ!!」っていう某狩りゲーみたいなことを考えていましたが、参加者に同意見の方がいらっしゃらなかったので、没案行きです。はい……。 ひっくり返せば、PCの行動によって物語が作り上げられていく。というPBWの醍醐味を作り上げられているのかなと感じております。 あと、酒飲んだり、つまみを食べたりする姿や、キャラクター同士のかけあいを書くのも楽しかったです。武器案一つとってもキャラ設定と重ねるといろんなものを感じることができました。 これからも竜盤をよろしくお願いいたします。 たくさんのご参加ありがとうございました!
イベントシナリオ

イベントシナリオ易しい 報酬:標準17 / 4〜25人

2021年09月08日 09時10分45秒 公開

大成功

相談掲示板

  1. シルヴィア・A・カペル

    シルヴィアだ。今回はよろしくね。 範囲攻撃が出来る武器や、攻撃が命中したらBSを付与できる武器が欲しいなぁ……ドワーフ職人に戦い方を見てもらうのも捨て難い。楽しく考えてみるよ。

  2. No.2

    キャスターのラシェルじゃよ!よろしゅうな! わしはそうじゃのう……ちょいと酒を交えながら武器談義でもするかの。 こういう武器はどうかとか、職人と直に話す機会は少ないからのう。 一緒に話して、使い手と作り手でどう考えが変わるかとか見たいもんじゃ。実にもなるじゃろうしな! もし一緒に武器談義したいーって人がおったら、声かけてくれると嬉しいぞ。職人も多角的な意見が聞けて嬉しいじゃろうし。

  3. シルヴィア・A・カペル

    >武器談義 お酒を飲みながらの武器談義か。楽しそうだね。私は先述した武器の希望を出すつもりだったんだけど、それでも良いなら参加させて欲しいな。 あ、お酒は何でもいけるよ。しいて言うならエールに枝豆派だ←

  4. No.4

    >武器談義 大歓迎じゃ! わしもこういう武器はどうかとかも話すしのう。 タグ、作っとくか。文頭に【武器談義メンバー】としておくのはどうじゃ?

  5. シルヴィア・A・カペル

    >武器談義 ラシェル、快諾ありがとう。喜んで参加させて貰うね。 タグについても了解だ。文頭に【武器談義メンバー】と書いておくよ。 改めてよろしく。

  6. ナキル

    「ナキルだ、よろしくな!! なんか面白そうなコトやってんなー!オレも混ざるぜっ!! 武器の談義…とか、あと戦い方とか、そんなんだよな? 試作とか、実際の使い方とかってのをやってみよーと思うぜ!!」

  7. ヴァレリア・ブランシェ・ウィザースプーン

    キャスターのヴァレリア・ブランシェ・ウィザースプーンと申します。 武器談義と聞いて参じましたが、この場合は兵器運用に関する談義もOKでしょうか? もしそうであれば、ドワーフの技術で投石器やバリスタといった設置型の大型兵器の是非について問いたい次第です。

  8. コハク

    シーフコハク、よろしく頼むわ。 取り敢えず武器談義組、兵器相談組等順調アイディアが出ているから私はドワーフ達に実際仮で出来た武器等を借りて動いてみる試運転係でも務める予定よ。 作った武器を飾っておくだけじゃ意味ないでしょうし。 ……これ、シーフでも作れる大剣や大太刀欲しいと言ったらなんとかなるものかしらね。

  9. No.9

    〉武器談議 わしらのグループは、造り手と使い手(注文側)の両面の意見を出し合うことで、相互理解を促しつつ〜な感じの会のつもりじゃから。大型兵器の話でわしらと一緒してもええかもじゃし。別途で大型兵器に興味ある職人たちと話してもええと思う。 〉シーフ武器 多少の無茶でも、今は邪竜への突破口が欲しいじゃろうし。突飛なんは逆に嬉々として試作しようとするじゃろうし。正直、言うだけ言ってみれば面白いんじゃないかの!

  10. No.10

    っと、話が抜けとった。 運用の話は造り手にも貴重情報じゃしすごく喜ばれると思うぞ。

  11. エデル=マグノリア

    ヒーラーのエデルよ。よろしくね。 私は、ヒーラー武器について試作してほしい&実際に試したいことがあるから。お誘いがない限りは個人で動いてみるわ。

  12. ハッタ・ムラムラ

    ハッタだ。世話になる。

  13. トーラ

    気付いたらもう前日ですね…。 お酒は飲めないですけど、わたしも武器談義のメンバーに参加させて頂けたら。 個人的には、シューターの魔弓みたいなシーフ用の魔法攻撃が出来る短剣が欲しいと思ってます。 邪竜に対して物理攻撃と魔法攻撃どちらが有効か分かりませんけど、硬い邪竜の鱗には魔法攻撃の方が有効なんじゃないかなって。

  14. No.14

    > トーラ殿 かまわんぞー。 良い談義にしたいのぅ。

  15. シルヴィア・A・カペル

    >トーラ 大歓迎だよ。魔法攻撃が出来る短剣……私も欲しいな。当日はよろしくね。

  16. トーラ

    ラシェルさん、シルヴィアさんありがとうございます♪ 良い話し合いが出来ると良いですね!

  17. トーラ

    ぎりぎりですけど、字数が余ったのでおつまみにソーセージを焼いて出す事を書いてみました。 ドワーフの職人さんも参加されるなら喜ばれるかなと。

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0