【大変動】押し寄せる白き災厄
明乃そら
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シナリオID:700
オープニング
未だ開拓されない、魔境の森の奥地にて。大いなる災厄の種が蒔かれているのを、この時点では誰も知る由はない。
――今日もまた、刹那の浪漫を求めて樹海に踏み込む旅人達が、後を絶たない。
ゴールディから近い位置にあるサウゼル大樹海の北端部は比較的安全が確保されており、謎と神秘に満ちたこの場所に、興味を抱いて観光に訪れる者も少なくない。
ここはそうした者達の為に建てられた、前線キャンプと呼ばれる大型施設。
中心部は宿泊用の小屋が立ち並び、診療所や食堂、土産物店も備わっていて、獣避け用の木の塀が一帯を囲む。
危険な樹海における安全地帯、前線キャンプは長らくその役割を担っていたが――この日を境に、平穏な日常は呆気なく打ち砕かれてしまう。
――突然、何処からともなく、激しい地鳴りが轟き響く。
と同時に、樹海の奥から大きな白いうねりが、キャンプ施設を目指して洪水の如く押し寄せる。
其れは巨大な白い蛇の群れ。多数のゴブリン達を伴いながら、塀を破壊し、キャンプの敷地に雪崩れ込む。
「て、大変だ兄貴ィッ!! 樹海のゴブリン共が殴り込みに来やがった!!」
「兄貴じゃねぇ! 隊長と呼べっつってるだろーが! で……樹海のヤツらが何でこんなトコまで出てきてるんだ!?」
キャンプ本部に響き渡る怒号。
部下からの伝達を受けて、筋骨隆々とした眼帯姿のゴブリンが声を荒げながら焦りの色を滲ませる。
彼らも樹海のゴブリン達に抵抗するが、施設に常駐しているスタッフ達の力を結集させても勝てる確率はゼロに近い。
それ程、力の差は歴然としていた。特にあの、白い大蛇が脅威の強さを誇っているのだ。
何よりも自分達だけではなく、一般客の命も守って戦う事は、圧倒的に不利なのだから。
――しかしこちらも手を打たないまま、黙ってやられる心算は毛頭無い。
このキャンプの責任者でもある彼は、腹を括って、部下のスタッフ達に指示を出す。
「……お前らは客と一緒にゴールディまで避難しろ。俺はここに残って、あの連中を食い止める!」
そしてこの事を、急いでドンに伝えてくれと……そう告げながら武器を手に取り、男は戦いの場へと向かっていく――。
●蠢く悪意
「コイツぁとんでもない大事件だぜ。何つっても、あのドン・ゴーフルからの依頼だからな」
ゴールディの裏通りにある一画で、情報屋を営むシャルティナ・カッツェ。
冒険者ギルドの仕事も請け負う彼女の下にも、その報せは舞い込んできた。
サウゼル大樹海の北端に置かれた前線キャンプ。そこはBDが主体となって運営し、観光施設としての一面も持つ。
ところが何者かによって襲撃に遭い、命からがら避難してきたスタッフからの話によると――現在は施設を乗っ取られてしまい、中には逃げ遅れた者もいるとの事だ。
「で、施設を襲ったヤツらっつーのが――大樹海から来たゴブリン共と、白い大蛇のバケモンだ」
未開の地である大樹海の奥で生息し、今まで外に出てくる事など無かったモノ達。
彼らが人々の暮らす場所まで入り込み、人類に危険を及ぼすならば、看過できない由々しき事態だ。
現在の状況だけでは判断しづらい部分が多々あるが、最悪の事態を考えるなら……それらが何れ、ゴールディまで侵攻してくる事もあり得なくはない。
だが今は、そこまで気にしているだけの余裕はない。それよりも先に成すべき事は――。
「これからアンタらにはすぐに施設へ向かってもらい、連中を追い払ってほしいっつーワケだ」
ゴブリン達が居座っている施設を解放し、取り残されたスタッフ達を救う事。
手遅れにならない為には、より迅速な対応を必要とする。
……それにしても、ゴブリン達が樹海から出て人を襲うのは、只ならない事態が起こっているに違いない。
原因の調査も出来ればしたいが、まずは巻き込まれたスタッフ達の命が最優先だ。
避難したスタッフからの情報によれば、樹海の古ゴブリンは異なる独特の言語を用いるらしく、ゴールディのゴブリンであっても会話を成立させる事は困難だ。何よりもあのドン・ゴーフルでさえ、今では片言程度しか分からないらしい。
従って、相手と対話するのは現時点ではほぼ不可能な為、戦う以外に手段はない。
更に戦う場合についても、制限がある。それは――相手を絶対に生かしておく事だ。
『白蛇にしろ、かつての兄弟たちにしろ、大樹海の端まで出張ってくるなんざ、何か深けェわけがあるに違いねえ。俺ァ、兄弟たちをゴールディに迎えるつもりだ。だから誰も殺すんじゃねぇぞ』
byドン・ゴーフル
「ま、そーゆー事なんで。今回は連中を撤退させてくれりゃあ、仕事としては十分だ」
ドン・ゴーフルからの達ての希望である以上、ゴブリン達は逃走したらそのまま見逃す方が無難だろう。
敵の強さは未知数だが、樹海で戦闘には慣れているだろうから、流石に手加減できるような相手ではなさそうだ。
「それと白蛇なんだが、妙な力を使ってくるって聞いたんで、コイツは特に要警戒だな」
得体の知れない敵との戦闘と、救助を同時に行う為には、授恵者同士の連携が鍵となる。
一刻を争うこの状況下では、僅かな判断の迷いも許されない。
「ま、アンタらだったら何とかしてくれると思ってるからな。んじゃ、とっとと行こうぜ」
解説
マスターより
リプレイ
――現地で授恵者達が目にした光景。
前線キャンプは樹海から来た襲撃者によって破壊され、瓦礫の山と化していた。
「……これは思った以上に酷い有り様だね」
視界に広がる惨状に、ヨル・スレイマンは唖然としながら、頭に被った頭蓋骨の奥で息を呑む。
「古ゴブリンと白蛇が大樹海から突然押し寄せて来たらしいけど……大事件が発生してる事は確かみたいだね」
本来は外の世界に出る事自体が無かった樹海の住人。
彼の者達がこうした行動を取るのは何故なのか、エルゼリオ・レイノーラはその理由を考える。
例えば何かに脅されていたり、若しくは操られているとか、きっと事情があるに違いない。
若き騎士家の少年は、思考を巡らせながら、正義の心を滾らせる。
「彼らの目的、彼らの願いが分からないのが悩ましいですね」
フードを目深に被った仮面の男性、グレイブ・ヤードもこの襲撃事件に疑問を抱く。
樹海の外へ出てくる事はリスクを伴う、なのに他人を襲う真似までするのは余程の事だ。
だがしかし、それを考えるのは、今ではない。
「果たして何があったのか、とりあえずは目の前の事からですね」
ヴィルヘルミナは冷静に状況を分析しつつ、目的の場所であるキャンプ本部の建物に視線を向ける。
「ええ。何が起きているのかは解りません、けれど……まずは今、出来る事をやりましょう」
自分達が此処に来た理由、成すべき事は、唯一つ。
コルネリウス・アーラは真剣な表情で建物を見つめ、決意を新たに、気を引き締める。
(……誰も死なせません、必ず護ります)
逃げ遅れ、取り残されたままの罪無き人を救う為――。
大地を強く踏み締めながら、授恵者達は揃って建物の傍に近付いていく。
キャンプ本部は外からぐるりと見回せば、壁の一部が崩れていたり亀裂が入っているものの、原型を留めている状態だ。
「此処は樹海の観光施設でもあり、守りたい場所だ。共に“樹海に生きる者”として……」
樹海近くの村で生まれ育ったテテリカにとって、今回の襲撃事件は他人事では済まされない。
変わり果てた姿に変貌してしまったキャンプ地には、何かと思うところがあるだろう。
テテリカは相棒である大鼬のベニテングを放って、二階の調査を試みる。
大鼬が壁を伝って二階に上り、エーテルリンクで五感を共有しつつ、壁の側面に備えつけられた窓から内部を確認。
そこには今まさに、部屋の扉を抉じ開けようとしている古ゴブリン達がいた。
建物の中には、既に古ゴブリンと白い大蛇が入り込んでいる。授恵者達は入り口の前で立ち止まり、慎重に扉を少しずつ開け、中を覗いて様子を窺う。
リコリス・アデュラリアが息を殺して目を凝らし、紫水晶の如く澄んだ彼女の瞳に映ったモノは――蜷局を巻いて鎮座している巨大な白蛇。そして周囲には何かを探しているかのように動く古ゴブリン達の影。
(白い蛇……神話では共生していたと聞きましたが、あれが……?)
ハリス・アル・ターミルは言い伝えに聞く白い大蛇を、このような形で目の当たりにし、複雑な思いを隠せない。
何れにしても、只事ではない事態が樹海の奥で起きている。ハリスは頭の鉢巻を強く締め、内なる闘志を昂らせながら、“その時”を待つ。
幸いにして、連中はこちらの存在に気付いていない。入り口で仲間が見張ってくれている間、コルネリウスとエルゼリオの二人は裏手に回り、後はタイミングを合わせて仕掛けるだけだ。
授恵者達は武器を構え、突入するなら今が好機と――扉を強く蹴破って、一気に建物内へ雪崩れ込む。
突然の奇襲に古ゴブリン達は虚を突かれ、反応がほんの一瞬遅れてしまう。
敵が臨戦態勢に移る間に、授恵者達は素早く布陣を展開。
この地に平和を取り戻す為、斯くして戦いの幕が開かれた――。
●混沌たる乱戦
「最初から全力で行きますよ」
機先を制し、ヴィルヘルミナが誰よりも早く番手を奪う。
不殺を命じられてはいるが、決して手を抜けるような手合いでないと、戦士としての意志は微塵も揺るがず。
狙うは白蛇。疾走しながら接近し、ウーツ鋼製の大太刀に、膂力を載せて斬りつける――が。
剣が蛇の胴体を捉えた瞬間――ガキィン、と金属同士のぶつかる音が、けたたましく響く。
「……成る程、鱗自体が硬い鎧みたいなモノですか。少々骨が折れますね」
蛇の全身を覆う鱗は鋼のように堅牢で、ヴィルヘルミナの刃であっても弾き返されてしまう。
「他にも妙な力を持っている、という話もあります。ですが、思い通りにはさせません」
高い防御を誇る白蛇に、神秘の力も使われてしまえば厄介な事この上ない。
魔術の使い手であるリコリスは、距離を取りつつ後方に位置し、旋律を歌うように呪法を駆使して援護する。
掲げた杖に冷気が集まり、氷の矢となり、白い大蛇を狙って放つ。
「ならばこちらも、護りの力を授けましょう」
グレイブが魔力を込めて祭刀を振るえば、光の紗幕が仲間を包み、加護の力を宿して守りを固める。
それに対して古ゴブリンも、授恵者達を排除するべく反撃開始。
白蛇の力を受けてオーラを纏い、怯む事無く猛然と、剣で斬りつけ、矢を撃ち込む。
「さて……時間を費やす訳にもいかないからね。俺達は上に急ぐとしよう」
まずは取り残された従業員の救助が第一と、ヨルがハリスやテテリカと共に二階へ通じる階段へと向かう。
テテリカが行った事前の偵察段階では、従業員達はまだ無事だ。古ゴブリンが彼らに危害を加えるよりも、早く連中を引き摺り下ろしてこの舞台から退場させる。
「同胞の命が懸かってるからな。ここは任せた」
移動の最中、テテリカがリコリス達に声を掛け、その言葉を聞いた三人は、心得たと言わんばかりに火力を集め、敵の注意を引き付ける。
「突入は上手くいったみたいですね。では私達も参りましょう」
こちらは裏手口から入ったコルネリウスとエルゼリオ。二人が目指すは、土産物屋の奥の地下室だ。
「……複数の足音がこっちの方から聞こえるよ」
烈しい剣戟の音が響く中、エルゼリオが耳を傾け、異なる音を聞き分ける。
白蛇や他の古ゴブリンに気取られないよう、物陰に隠れながら移動して、目的の土産物屋に到着すると、地下への扉を破壊しようとしていた二体の古ゴブリンと遭遇する。
「その扉の先へは行かせません」
コルネリウスが殺意を込めて発した言葉に、古ゴブリンは恐怖を覚えて立ち竦む。
「――要救助者に手出しはさせない! 〝聖なる六紡の星 盟約の言葉により その一切を封印せよ〟」
エルゼリオもすかさず呪文を詠唱し、光り輝く六角形の柱を扉の前に召喚させて扉を塞ぐ。
行く手を阻まれてしまった古ゴブリンは、驚き、慌てふためくが、すぐに矛先を授恵者達に変えて刃を向ける。
「命までは奪いません……が、せめて大人しくしてもらいましょう」
普段の穏やかな笑みはその顔に無く、コルネリウスが眼光鋭く相手を睨み、エーテル光を纏った剣を握り締め、振り抜く刃で古ゴブリンの足を狙う。
相手を殺さず、無力化させる。それには行動の自由を奪えば良いと、エルゼリオも指先から光の魔矢を飛ばして攻撃する。
――階段を駆けて、二階へ上がるハリス達。
通路の左右にそれぞれ複数の部屋があり、古ゴブリンは扉をなかなか壊せず手間取っていた。
従業員の無事は確保されている。通路上に隠れるような場所はなく、不意打ちを食らう心配も無い。
「どうにか間に合ったか。ここからやる事はシンプルだ、さっさと無力化してしまおう」
この状況で敵を制圧するなら、正面からの正攻法が一番と、癒し手のヨルも攻撃を優先する考えだ。
「理由はどうあれ、無力な方々を傷付けるのを許すわけにはいきません」
力を持たない民を守るのが、授恵者である者の使命なのだ、と。
普段は争いを好まぬハリスだが、静かな怒りを武器に込め、豪快に槍を振り回して古ゴブリンを薙ぐ。
「俺達はドンの依頼を受けて来た者だ。すぐ助けるから、もう少しそこに篭っていてくれ」
「おおっ、ソイツはありがてぇ! こっちは動けねぇんで、悪いがよろしく頼んだぜ!!」
部屋の中にいる従業員達に、テテリカが安心させるように話し掛けると、彼らもこちらは無事だと言葉を返す。
その返事を聞いてテテリカは安堵しつつ、精神を研ぎ澄まし、弓を構えて矢を番え、敵の武器を持つ手を狙い撃つ。
「トドメは刺さないようにと頼まれてるからね。大丈夫、治療は後でちゃんとしてあげるよ」
ヨルが不敵な笑みを浮かべて前に立ち、古ゴブリン達と刃を交える。
五人の敵に対して、こちらは三人。数だけならば相手が勝るが、個々の力は授恵者達の方が格上だ。
戦況は授恵者側が主導権を掴み、戦いを優位に進めて古ゴブリン達を攻め立てる。
徐々に力を削られて、古ゴブリンは形成不利と判断するや、くるりと後ろを振り返り、彼らの側にあるもう一方の階段へ一目散に走り出す。
「もしや一階のゴブリン達と合流する心算でしょうか。逃がしません」
いち早く目論見に気付いたハリスは、彼らの後を即座に追い掛け、テテリカとヨルも一緒に下の階へと降りるのだった。
――場面は変わって、再び一階。
中央の食堂にて、一進一退の攻防を繰り広げる両陣営。
白蛇の力で強化を施されたゴブリンに、授恵者達は決め手を欠いて攻めあぐねていた。
「出来れば白蛇に攻撃を集中させたいところですが……一筋縄ではいきませんね」
溜め息交じりに呟くグレイブの表情は、仮面に隠れて見えないものの、その口振りから心中穏やかでないと察しが付く。
「それも覚悟の上ですから。今を耐えれば、必ず勝機は見えてきます」
そう言って気丈に振る舞うヴィルヘルミナだが、強力な白蛇の攻撃を一人で受け続けた彼女の体力は限界近く、辛うじて踏み留まってはいるが、更にダメージを食らえばグレイブの回復だけでは間に合わない。
対する白蛇の傷はまだ浅く、眼前の餌を喰らおうと、不気味に鎌首を擡げて顎門を開く――。
「!? 二階からもゴブリンが……面倒臭い事になってきましたね」
只でさえ苦戦している現状において、更に相手の数が増えるのは好ましくないと、リコリスの表情が険しくなる。
「取り逃がしてしまって悪い。だがその分、俺達も蛇退治に加わらせてもらう」
そこへ後を追って降りてきたテテリカが、二階のゴブリンを無力化出来なかった事を一言詫びる。
とは言え、例え相手の数が増えたところで、手負いの連中ばかりだけなら戦力的には微差でしかない。
そんなゴブリン側とは対照的に、余力十分の二階チームが合流したのは授恵者側にとって心強い。
苦難を耐えて乗り切れば、勝機は必ず見えてくる――戦いの流れが少しずつ、授恵者達に傾き始める。
●解放されし時
ここまで敵に押されて劣勢だった一階チームだが、二階チームが加勢に入った事で戦い方が一変する。
ヴィルヘルミナとハリスの前衛組が二人掛で白蛇に応戦する事で、白蛇の攻撃を分散し、互いの負担を軽減させる。
後衛組は牽制攻撃によってゴブリン達に狙いを絞らせず、そうして時間を稼ぐ間に前衛組で白蛇を倒す算段だ。
各自が成すべき事を分担し、協力し合って戦線を維持する。決して焦らず諦めず、戦局はやがて大きな転換期を迎えようとする――。
「皆さんお待たせしました。ここからは私達も手助けします」
奮闘する授恵者達の下に、新たにやってきたのは、コルネリウスとエルゼリオの二人であった。
彼らは対応していた古ゴブリンを昏倒させ、シャルティナにその場を預けて駆け付けてきた。
「地下室の方は心配ないよ。さあ、これで全員揃ったね。だったら後は――」
エルゼリオの青い双眸が見据える先には、標的たる白い蛇。
授恵者達は一丸となって力を合わせ、白い大蛇に火力を重ね、一気呵成に畳み掛ける。
『キシャアアアアアアッッッ!!』
一人も仕留められないだけでなく、逆に追い詰められる形となった白蛇は、苛立ちながら手当たり次第に喰らいつこうと牙を剥く。
「やらせませんよ」
その瞬間、ハリスが全身全霊を込めて槍を突き刺し、放たれた渾身の一撃は、鎧の如き鱗を貫き、肉を穿つ。
「そろそろ決着を付けるとしましょう」
これまで積み重ねた経験により、磨き上げられてきたヴィルヘルミナの剣技。
速くて剛く、しなやかに――鋭く繰り出す一閃が、鮮やかに決まって白蛇は勢いよく地面に叩き伏せられてしまう。
「もうこれ以上の抵抗は無意味です。命が惜しくば、大人しく樹海に帰りなさい」
コルネリウスがゴブリン達に剣を突き付け、威圧するかのように言い放つ。
古ゴブリンに彼女の言葉の意味は分からない……が、本能的に危険を感じ取ったか、恐れ慄き、狼狽える。
すると地に伏せていた白蛇が、再びムクリと起き上がったが――もはや戦う気力は失せていた。
まるで授恵者達に怯えるように、巨体をうねらせながら建物から急いで逃げ出す白い蛇。
戦意を喪失した古ゴブリン達も白蛇の後に続いて、足早にその場を離れ、撤退していく。
そして連中が全て逃走したのを見届け終えると、一行は残っている従業員達の無事を確かめに中へ戻るのだった。
「いやあー、お蔭で命拾いしたところだぜ。俺だけじゃなく、皆を助けてくれてお礼を言うぜ」
部屋から出てきたのは、立派な体躯の眼帯の男。精悍な肉体には幾つもの傷を負ってはいるが、動けない程ではない。
「貴方が責任者か? 同胞の危機は見過ごせないからな。とにかく無事で一安心だ」
テテリカは漸く肩の荷が下りたと平静を装いながらも、任務を成し遂げた充実感を心の奥で噛み締めていた。
「動けるとは言っても無理しない方がいい。待っていてくれ、すぐに治す」
男の傷の具合を診るなり、ヨルが治療の準備に取り掛かる。
「他にも怪我をしている人はいないかな? ボクも手当てを手伝うよ」
エルゼリオも従業員に呼び掛けながら、手分けして怪我人の治療に当たるのだった。
「よっ、お疲れさんだぜ。古ゴブリンを追い払い、誰も死なせなかったんだから上出来だ」
地下室から戻ったシャルティナが労いながら、捕縛した古ゴブリンへの対処を授恵者達に乞う。
「そうそう。二名ばかりノビてるヤツらがいるんで、後でソッチの方も看てやってくれ」
――戦いは一先ず終わったが、幾つかの謎は残されたままだ。
「あの古ゴブリンと白蛇は、果たして自分の意思でこの施設を襲ったのでしょうか」
グレイブの心に残る一つの疑問。
戦闘中、彼らの視線から感情を読み取ろうとしたのだが、思いを推し量るまでには至らなかった。
――前線キャンプから、少し離れた“とある場所”。
その奥で、古びたフードを被った一体の影が、静かに佇む。
その者は、ブツブツと不機嫌そうに独り言ちながら、毒々しい林檎のようなモノを掌の上で弄ぶのだった――。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:多い8 / 4〜8人
2021年03月31日 02時50分43秒 公開
相談掲示板
ヒーラー、グレイブ・ヤードです 確かに奇妙な話ですので、お手伝いさせていただきます。
ウォーリアのコルネリウスです。宜しくお願いします。 方針について、「殺害してはいけない」ですが重傷までは可のようですので、重傷を負わせ治療と称して為に捕縛するか否か。 地下に降りられないように1階のゴブリンを早急に対処したいですが、1階と2階に向かうメンバーで分かれるかどうかなど決めたいですね。
ウォーリア、ハリスと申します。どうぞ宜しく。 >状況 非常に切迫していますね。非戦闘員の籠る部屋が既に脅かされつつあります。 白蛇への対処も必要ですが、まずはこちらを何とかしなくてはなりません。 民間人に死者が出ては、ゴーフル殿の不殺の指針が疑問視されるのは必定。 冒険者としてのゴブリンの方々の信用にも関わるでしょう。 大まかな作戦案としては 1:白蛇対応に人手を割きつつもスタッフの救出に別働体を派遣 2:白蛇を一階中央部に留め置きつつゴブリンを打倒し安全確保 3:順次合流し白蛇と戦闘、撃退 というような形でしょうか。 白蛇、ゴブリン共に戦力は不明ですが、流石にゴブリンはそう強くはない筈です。 厄介なのは白蛇とゴブリンが合流し防御上昇を得る場合ですね。 それを防ぐ為にも分散している間に各個撃破してしまいたい所です。
俺はテテリカ。シューターだ。よろしく頼む。 >作戦案 俺は救助班に回ろうと思う。逃げ遅れた者の居場所をエーテルリンクの獣と共に探す。ヒールも準備しておこう。 ……一応捜波も用意していくが、古ゴブリンと救助者の反応を識別できるかが不明だ。
ヒーラーのエルゼリオ・レイノーラだよ。 初めての人も、そうじゃない人も宜しくね! >作戦 『一階のゴブリン数体は、奥の扉を破って地下に降りようとしています。』って記載されてるから、 一階地下室>二階スタッフルーム>一階中央部(白蛇)…って優先度になるのかな? >班分け ボクはスタッフ救出、白蛇対応、どちらでも大丈夫だよ! どちらにせよ【光縛封】【ヒーリングオーラ】は持って行く予定。 【光縛封】は古ゴブリンや白蛇の動きを封じるのに使う事を考えてるよ。
キャスターのリコリス・アデュラリアと申します。 ……よろしくお願いします。 >古ゴブリン 重傷までは良いとはいえ、対象識別の無い範囲攻撃に巻き込めば死亡する可能性もありますから 今回に関しては範囲攻撃は対象識別がある物が推奨されるでしょうね。 捕縛については可能であれば行って良いと思いますが 行うのであれば戦闘中ではなく戦闘後が良いかと。 仮にそれで逃亡されても今回は問題が無いわけですし。 >非戦闘員 先ず救出の為、彼らの近くに居る古ゴブリンを撃破するとして。 その後、どうするのか決めておく必要がありますね。 例えば、戦闘に巻き込まれないようこの場から離れて貰うか。 あるいは、下手に動くと危険と見て、その場で待機して貰うか。 安全そうな場所に全員集まって貰うという手もあるでしょう。 状況にもよるでしょうが、ある程度は判断基準を決めておいた方が良いでしょう。 彼らをどうするのかによって、私達の動き方も変わるでしょうし。 >班分け 救出の事も考えると、一階と二階にそれぞれ分かれる必要がありそうですね。 一階は白蛇対処もありますから足止めや持久力に長けた者が 二階は早く一階班と合流出来るよう、機動力や火力に長けた者が それぞれ居ると良いでしょうか。
彼らが無差別で動くのであれば陽動などで「別の場所」に誘導することで救出までの時間を稼ぐとかできそうな気もしますが・・・ 彼らの目的も不明なのですよね? 食料に困っているようではなさそうですし・・・? 白蛇に誘導されてる感じもありますし
ウォーリアのヴィルヘルミナです。今回はよろしくお願いします。 不殺というのが色々と大変ですね。死なない程度には抑えないといけませんから。 逃げ遅れた人達をうまく逃がせれば無理に相手しなくてもいいのでしょうけど。白蛇が逃げたら一緒に逃げるみたいですし。 スタッフは怪我している方もいるみたいですね。足とか怪我して歩けない方がいなければいいのですが。 蛇は主に肉弾戦みたいですが、搦め手も使ってくる感じでしょうか。 ゴブリンが蛇の周りに集まると面倒そうですね。
不殺…威力を求めないのでしたらノービスの武器を用いるのも手かもしれませんね。 万が一の事故も起こりづらくなるでしょうし 現状、私は1階中央の白蛇対応を考えています。 状態異常の解除など含めて
>流れ 白蛇が逃走すればゴブリンも撤退しますので、優先順や戦力バランスなどよく調整しないといけませんね。 一階は白蛇対応ゴブリン対応に分かれ、ゴブリン対応はゴブリンを抑え・対処して地下の救助者を逃がすorゴブリンを死なない程度に昏倒か重傷を負わせて地下に待機しておいてもらうという感じでしょうか。 二階は窓もありますので、そちらも避難経路として使えればと思いますが救助者の負傷度合いにもよりますね。 >スキル 古ゴブリンに対しては特に対象識別スキルは必須になりそうですね。 捕縛についても無理に目的にはせず、戦闘終了時や敵逃走時に可能な場合とした方が良さそうですね。 >班分け 私はタンカーとして動きたいと思っていますので、一階を希望しますね。 その中で白蛇か救助を中心にするかは様子を見て決めたいです。
蛇が動物であれば、という前提ですが 「ゴブリナ草」は蛇除けに用いれませんかね? 何が有効かはわかりませんが、傷つけないという前提なら忌避しそうなもの、あるいは注意を引けそうなものを用いるのも手かなと思いまして。
シーフのシャルティナだ。今回は集まってくれてありがとなー。 アタシも何か手伝えることがあったら引き受けるんで、よろしく頼むぜ。
ヒーラーのヨル。宜しく。 全体の作戦としてはハリス君のいうように、白蛇を押さえつつ救助→順次合流して攻撃に俺も賛成かな。 全部に満足に手を回せるかはわからないものな。古ゴブリンは不殺ということを踏まえると、救助を優先しつつ白蛇を撃破して逃走を促すのが理想という感じはする。 それでも全く攻撃しなくていいわけではないと思うけど……。 >非戦闘員 救助者は建物外に出すのが一番安心な気はするけど、動けなかったり出れなかったりする可能性もなくはないよな。 白蛇やゴブリンをある程度引き付けることができるなら、一箇所くらい安全地帯として集める場所を作っておくのも手かもしれない。シャルティナ君が保護を手伝ってくれるみたいだし、その場合は付いてもらえるとなお安心かも。 >班わけ 向き不向きはあるけれど、俺は人数の足りないところにつくよ。
>捕縛 基本は戦闘後に行うとして、非戦闘員を外に出さない場合 近くに居るのは転がしたままでも問題は無いでしょうか? 戦闘不能にすれば一切の行動は出来ませんから 恐らく非戦闘員が害される事は無いと思いますけど。 >非戦闘員 一箇所に纏めた方が護衛の為の戦力分散もせず 守りやすいという利点はありますね。 あと、非戦闘員だけで外に逃がすと 何かあった際に対応が出来ないという懸念もあります。 勿論戦場内に留めるのも相応のリスクはありますから その辺りのバランスを考えて方針を決定する必要があるでしょう。 >班分け 私は特に拘りは無いので足りない所で問題ありませんが 場合によっては火力的に古ゴブリンを殺しかねないので 白蛇対応に回った方が良いかもしれません。 魔法防御が高まった状態であれば問題ないかもしれませんが…… まあ、それはあまり狙う必要は無いでしょう。 とりあえず攻撃での牽制やヒールでの回復 あとはBS付与での援護も可能です。
私は蛇の方に行きましょうか。得物が広い所の方が振り回しやすいので。 救助者を施設から脱出させるか、事が済むまで留めるか。どちらにも利点欠点がありますのでどちらが良いとは言えませんね。 古ゴブリンも結構強いみたいですし、簡単に制圧はできないでしょうから。分担するならこちらは数の面でも不利ですし。 白蛇と戦うなどして騒ぎを起こせば古ゴブリンたちは救助側から離れて白蛇側に向かう事もありそうなので、救助側を襲うゴブリンの数は減っているかもしれませんけど。
>班分け 私は殺界での行動抑制が可能かつ、低火力故に見誤っての殺害が起こりづらい筈です。 性能だけを見ればゴブリン対応に回る方が活かせそうですね。 亜人語適性も持っておりますので、彼らの会話などから抽出できる情報があればよし。 何か解れば今後の対応につなげられるかもしれません。 >非戦闘員 近場のゴブリンさえ追い散らせるならその場を動かないで貰う方が安全かとは。 負傷の程度にもよりますが、1階中央部に白蛇がいる以上は危険が付きまといます。 逃がすにしても確実な退路確保が必要になるかと。
>班分け それじゃ、ボクは『一階地下室』の方に向かわせて貰うね。 勿論、戦力が偏るようなら移動も可能だよ! 救助優先で古ゴブリンを牽制しつつ、必要なら攻撃して無力化を計る予定。 状況如何によっては【光縛封】で古ゴブリンの封じ込めも試みるつもり。 (敬称略) 一階中央 ・グレイブ ・ヴィルヘルミナ 一階地下室 ・エルゼリオ 二階スタッフルーム
>班分け 俺は部屋が複数ある二階スタッフルームにいこう。 古ゴブリンへの対応としては、命中精度の高い技で腕などを狙って攻撃するつもりだ。 (敬称略) 一階中央 ・グレイブ ・ヴィルヘルミナ 一階地下室 ・エルゼリオ 二階スタッフルーム ・テテリカ
>退路 一階は食堂の裏手にも出入口があるようなので、土産物屋から食堂に行く際に中央を通らなければそちらでいいのかなと。 二階は一階を通さないやり方を考えるとなると……通路の窓から、ロープを使って降りるとかでしょうか? 窓が通れる大きさか分かりませんし、二階にいる救助対象の方々がロープで降りられる余力があるのか分からないので単なる思い付きの域を出ませんが。
>退路 外へ避難させるのであれば食堂の出入り口が良さそうですよね。 怪我人の状況もありますが、二階は窓を使うならロープかなと私も思いましたが、怪我人の状況によりますね。 >班分け 私は一階地下室へ回ろうと思います。 ゴブリンの対応を終えたら白蛇の方へ合流できたらと。 (敬称略) 一階中央 ・グレイブ ・ヴィルヘルミナ 一階地下室 ・エルゼリオ ・コルネリウス 二階スタッフルーム ・テテリカ
思い付きまでですが >2階からの避難 期待しすぎるのは問題ですけど、「梯子」の類はないのですかね・・・? 2階に衣料品他が多くあれば先に外に投げるなりしてクッションにしてしまうのもありかもしれませんが
>外への退避 梯子やロープ等は確かに有用かもしれません。 ただ、現状では外が安全とも言いきれないのが不安要素ではありますね。 現地に行かねば解らないこともあるかと思いますので、その辺りはある程度柔軟に。 >班分け ウォーリア3名は均等に配した方が良さそうですね。 私は2階を希望しておきます。 (敬称略) 一階中央 ・グレイブ ・ヴィルヘルミナ 一階地下室 ・エルゼリオ ・コルネリウス 二階スタッフルーム ・テテリカ ・ハリス
>外への退避 怪我に関してはヒールなどで回復が出来ますが 人数が多い場合は範囲回復のヒーリングオーラの方が効率が良いでしょう。 ただ、他のスキルを用意したい場合は 梯子やロープなどを利用出来ない状態の者も居る事を想定した方が良いですね。 そもそも恐怖で、自力での移動が難しい者も居る可能性がありますし。 仮に外へ退避させる場合もあくまで建物の外に出る程度にし 有事の際は建物内に避難可能かつ私達に声が届くように出来れば良いでしょう。 一先ず私は超聴覚の用意が可能ですから、悲鳴などを聞き逃す事は無いかと。 >班分け それでは、私は白蛇対応としておきましょう。 (敬称略) 一階中央 ・グレイブ ・ヴィルヘルミナ ・リコリス 一階地下室 ・エルゼリオ ・コルネリウス 二階スタッフルーム ・テテリカ ・ハリス
シャルティナさんはいかがしましょうか。 特に何もなければ、スタッフの保護を手伝うとの事なので一階か二階のどちらかに同行する形になると思いますが。
>退避 2階→外への退避がどうしても救助対象の怪我によって可否が決まりそうなら、もういっそ立て篭もったままにして貰いつつ、ゴブリンを無害化するか追い払う方で考えた方がいいかもしれないね。 その場合シャルティナ君は2階についてもらっておくと安心かも。 特に全員が白蛇対応に合流するタイミングで、2階を見張って貰えると心強い。 ヒールで2階救助対象を回復させることもできるなら、救助対象本人に窓から退路をとってもらうこともできるかもだね。 ヒーリングオーラは持っていっておこうか。 >班分け 2階を希望しておく。 (敬称略) 一階中央 ・グレイブ ・ヴィルヘルミナ ・リコリス 一階地下室 ・エルゼリオ ・コルネリウス 二階スタッフルーム ・テテリカ ・ハリス ・ヨル