【境騒】Knight & Joker
弓月 蒼
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シナリオID:670
オープニング
王国北方、クラウゼン男爵領。否――――つい先日まで、そう呼ばれていた場所。
現在は旧クラウゼン男爵領であり。恐らく遠からず、バルヴィック侯爵領に併呑されるだろう。
ことは、同地の領主クラウゼン男爵が自領にメドゥの指先を囲っていた事案に端を発する。
中立派を標榜する男爵は、その実度々王家に牙を剥いた国家反逆組織を擁し、扇動。
北方辺境伯領の執政に対し妨害工作を進め、帝国側のメドゥの工作員と通じて国境を。
引いては王国全土を脅かそうとしたが、これは失敗に次ぐ失敗を重ねる。
北方-王都間の行商路監視を担うバルヴィック侯爵はこの不審な動きに気付くと迅速に動く。
直ちに男爵家とメドゥの指先との交流を示唆する証拠を揃えると電光石火の勢いで王へと陳情。
審議を待たずして自らの手勢を動かしクラウゼン男爵家を包囲。
結果、揃えられた証拠品の確かさにより放置する訳にも行かず、同家に王命が下る。
――――この間、僅かに3日と半日。
「お爺様、お加減は如何?」
甘い声音と共に、執務室に赤い闇が満ちた。
その声に。赤から桃色へ変ずる髪に。白髪の老爺の視線が向く。細く、鋭く、絃を描く様に。
「足りぬ。足りぬなあ。見よ、公主様。この猫の額ほどの土地を。
辺境伯に痛打の一つも加えたならばともかく……男爵の器量相応、下らぬ死に様よ」
「そう言いなさんな主殿。旦那は鈍かったが馬鹿じゃあなかった。エイゼルの坊ちゃんはともかくよ」
嘆息する様に吐き捨てられた言葉を掬い上げたのは、黒装束に赤毛の40程の男だ。
風貌は粗野だが下劣ではなく、何処か育ちの良さを感じさせる。
「ゾル、帰ったらお帰りなさい位言うものですのよ? 不躾、失礼、礼儀知らずですの」
「そりゃ失礼。何せ姫様のお陰で生まれも育ちもド底辺でね。挨拶何て文化忘れちまったぜ」
まったく、と腰に手を当て怒った素振りを見せる黒い盛装の少女も。
それに応じて大仰に肩を竦める黒装束の男も。まるで下手な舞台劇を演じるが如し。
微塵の真意も宿らなければ、誠実さの欠片もない。
「カッカッカ、構わぬ構わぬ、武人は多少無作法で丁度良い。それで我が騎士よ、首尾は」
「委細過不足無く。悪手引いた『万華鏡』には悪いがな。
幾らやり手と言った所で、今更辺境伯にどうこう出来る世情じゃねえ。領民は大層お怒りだ」
「でしょうねえ。隣人が悪名高い『メドゥの指先』の手駒になっていたんですもの。
恐いでしょうねえ、恐ろしいでしょうねえ、誰かの所為にしたくもなりますわあ」
領内で頻発した連続失踪事件の真相。行方不明者がメドゥの指先に薬漬けにされ洗脳された証拠。
王に提出されたそれらは“何処からか”クラウゼン男爵領内に漏れていた。
結果として、或いは反動として。領民達の新たな領主に対する姿勢は概ね好意的だ。
――――勿論。好意的でない意見は静かに、けれど確かに、間引かれてもいる訳だが。
黒い装束と黒い盛装。両名に挟まれた白い老爺は眼下の。
即ち、間もなく己の領地になる景色を見下し、間近に栄える巨大都市へひたりと指先を据える。
「……カカカ、さあて。そろそろ王都に駒でも進めるかのお」
●辺境伯の報恩会
北方辺境伯領――――城塞都市『ノストガルデン』内、執政府前緑地公園。
無数の照明型紋具によって、その景色はあたかも夜闇を裂く様に明々と照らされていた。
「うん。それじゃあ改めて、ってことになっちゃうけど」
「皆さんのお陰で、この街と我々は救われました。その奮戦と尽力に心よりの感謝を」
ザ――――と。剣を構え礼の姿勢を取ったのは『白騎士』『黒騎士』の両名を含む。
北方辺境伯直下、辺境騎士団一同。
「城壁の修復には暫し掛かりましょうが、その間恩人への礼を待たせては貴族の名折れ。
ささやかながら宴の用意しました。今日は無礼講と、どうぞ楽しんで頂きたい」
続く『アーチボルト辺境伯』メルヴィン・トマス・アーチボルトの言に。
緑地公園へ集められた冒険者ギルドのスタッフ達が、銘々に持った酒瓶と一緒に歓声を上げた。
報恩会、と名付けられたこの会は、辺境伯曰く。夜会の真似事――――だ。
多種多様な酒類が並べられ、立食に利用出来る腰程の高さのテーブルに彩取り取りの花が飾られる。
並べられた料理も食器も一級品。会場中央では銀の串に刺された豚が丸ごと炙られている。
茹でた腸詰めや柔らかな燻製肉。新鮮な蒸し野菜からは甘い湯気が上がっている。
これでもかと運び込まれる白パンに出来たばかりのバターと果実の砂糖漬け。
かと思えば、昨今の流行でも取り入れてか噴水の様に吹き上がるのはチョコレートだ。
「それと、此度の一件で特別な戦功を挙げた方には伯より直々にお話が有ります。
まあ、其方につきましてはまた後程となりますが。……おや、伯?」
すっかり説明役になってしまった『黒騎士』ガレス・コーニッシュ。
ようやく傷も癒えた仏頂面の黒いのが、最早あまり誰も聞いていない言葉を続けたものの。
当の伯は、と視線で探せば。どうも愛猫がご飯の時間らしく挨拶後早々に場を辞していたとか。
ともあれ。もうそろそろ冬も終わる。春が来れば、雪解けだ。
それは即ち――――旧帝国の側が大きく動くと言う意味に他ならない。
帝国側の城壁をそのままにしておけない以上、修復作業は急ぎで進める必要があるだろう。
余力がある訳ではない。だからこそ、こうして労いの時を設けなければならない。
騎士にせよ、冒険者にせよ、ただただ戦い続けることなど出来る筈がないのだから。
『ノストガルデン』の夜は賑やかに。まるで明けることなど無いかの様に続いていく。
●深淵の入口
――――一方その頃。
同、城塞都市『ノストガルデン』内。大衆酒場『北の息吹亭』
『ノストガルデン』の表通りでも最も大きい酒場に数えられるその店は、この日休業の筈だった。
主な顧客であり隣接してもいる冒険者ギルドの支部が、辺境伯の報恩会に参加する為だ。
2階まで合わせれば最大50人は優に入るだろう大きな店だけに影響は小さくは無かったが。
しかして『ノストガルデン』は商都である。別段酒場はこの店に限らない。
この街に住む酒飲みであれば行きつけの4、5軒は有るものだ。閉業であれば他へ行く。
今日は朝からグラス磨きに精を上げていた店主もまたやるべきことを終え。
さあ帰路につこうと店の鎧戸を下げた――――その時だ。
「あらあら、良い店ですのねえ。重畳重畳、それでは此処にしますわあ」
赤い、或いは桃色の髪の。不思議な光沢。金と銀の瞳。そして、怖気を奮う程の鬼気。
それは少女だった。酒が飲めるかどうか、ギリギリと言った程度には幼い娘。
けれど、その人物が“見た目相応の人間である”等とは、店主は一瞬たりと思わない。
目利きには自信があった。何人もの客を見て来た成果だ。一見すればある程度素性は読める。
それが分からない。底が見えない。深淵から先は混沌の坩堝。まるで底無しの闇だ。
隣は冒険者ギルドだ。休業でも誰か居るかもしれない。助けを求めれば生き残れる芽は有る。
けれど出来ない。声を上げれば死ぬ。出来ない。出来ない! 嗚呼!! 何も出来ない!!!
これまで、店で起きる酔客のトラブルを拳一本で鎮圧してきた店主は――――
――――46年の人生において初めて。真実の『悪意』を垣間見た。
解説
マスターより
リプレイ
冒険者ギルドが支部総出で参加するだけあり、報恩会は淑やかながら賑やかだった。
方々でグラスを合わせる音が聞こえたかと思えば、吟遊詩人が琴を奏でる。
『ノストガルデン』は城壁の一部を損じたが、日々の暮らしを脅かされる程ではない。
人々が日常を取り戻すのは早かった。国境に籍を置くならば図太くなければ務まらない。
「なんの集まりなのかは、実はよくわかっていませんが……
好きにお肉を食べて良い、と言うことは、ここの貴族さんは善人に違いありません」
そして此処にも。別に国境に籍を置いていないのに躊躇いを知らない冒険者が1人。
柔らかい燻製肉、と聞いて居ても立っても居られなかったリディリディ・トゥラ・イェレミース。
こと――――肉食エルフである。
「おや、こんな辺境都市で同族とは珍しい」
通り掛かったロイ・アウレアはと言えば。王国貴族の夜会とは如何なる物か。
と、見聞を兼ねて参加した物の。慣れぬ人混みに相棒が逃げだし捜索真っ最中。
しかし森で果実を食んで生きる同族が平たく大きな肉に齧り付いている。
と言う稀有な光景を目の当たりにしたなら。思わず声を掛けずにはいられない。
「! ――っ! ど、どうも……!」
一方、人見知り極まるリディリディは冒険者になって暫く経っても改善の兆しなく。
動揺して肉を詰まらせそうになる有様。肉食だがその精神、草食動物が如し。
「あちらに美味しそうな果物と野菜が盛り付けられていましたよ?」
ロイににこやかに微笑み掛けられても、視線が泳ぎに泳ぐ。まさか肉の方が好きとは言い難く。
"あ、はい。ありがごにょにごにょごにょ……"なる声と共にフェードアウト。
まるで影が薄くなったかの様に人混みに紛れていったその姿に、ロイが小さく首を傾げる。
なるほどシーフの人だったか。これは失礼した。等と、意識は再度相棒探しへ戻っていく。
「お互い、生きて還れて何よりです」
『黒騎士』の本日の役割は案内役である。
会場入口での来客応対の際に、イズレンディル・パラリムが声を掛けたのは必然だった。
「そうですね……九死に一生を、などと本当に言う事になるとは」
曖昧に笑って応じるガレスの表情には、けれど憂慮の色が滲む。
それは、人域を超えた魔法使いと言う怪物と対したイズレンディルもまた同じ。
「私達は……弱いですね」
思わず、と毀れた言葉は痛切で。黒い鎧の男もまた、改めて視線を向け直して頷く。
武才を買われ、若手の中では最優の騎士と謳われようと、あの時、何も出来なかった。
立ち位置は異なれ。目的も違えど。その無力感は相違ない。
辺境伯の勧誘は丁重に断ったイズレンディルだが。けれど其処には確かな共感が有り。
「ですが、何時までも弱いままではいられない」
応じには確かな熱。淡く微笑んでイズレンディルも頷きを返す。
強くなろう、互いに。いずれ雪辱を果たそうと。向くべき先はいずれも同じ。
であれば共に戦う事も有るだろうと。両雄はささやかに彼我の拳を打ち合わせる。
「あ! ガレスさん。怪我治ったんだね~。安心したよ」
そんな最中、ガレスへと声掛け様に走り寄ったのはエルゼリオ・レイノーラだ。
手元には腸詰めや柔らかい燻製肉の載った銀皿。
生来の貴族ではあれど冒険者も長い。食べれる時は食べるべしとは重々承知の上の様で。
「公主さんについては、何か分かった?」
「いえ、どうも伯は幾らか事情を知っている様ですが……」
"指"を名乗る人間が"メドゥ"の幹部級であることは事前に知っていたものの。
それ以上は、と黒い騎士は首を横に振る。そっかあ、と首を傾げるも続く様にふと気付き。
「そう言えば『第一位』の人って来ているの?」
兼ねてからずっと気になっていた辺境騎士団『第一位』への問に。
返って来たのは思わず……と言う様に分かり易く視線を逸らしたガレスの微妙な表情で。
「…………師父は、伯が“呼んでも絶対に来ない”だろうと……」
あまり見られない『黒騎士』のバツの悪そうな呟きに、エルゼリオも思わず数度瞬いたとか。
「ま、せっかくの報恩会だしな♪」
「あ、赤いのだ。どうー? 楽しんでるー?」
こんがり焼けた豚の足にハヤト=ガラン=ヴォルファングが齧り付く。
飲み食い自由とは剛毅なもんだと闊歩すれば、視線の先に手を振る『白騎士』。
白い鎧は人混みでも随分目立つ上に、以前何か一服盛られて潰された記憶は案外新しい。
「うぇ、今日は潰すのは勘弁してくれよ……?」
「あはは、しないしない。あれはメルの護衛だったから仕方なくだって!」
ぱたぱたと手を振る仕草には悪気は微塵も感じられず、渡されたグラスを合わせては。
酒を肴と釣られる様に、元傭兵ならではの殺伐トークに華が咲く。
「死ぬほど危ない目に遭ったと聞いたがどうだい? まだ両脚が地面についてるかい?」
ルチル・プルメリア・グレイハーツが声を掛けたその時。
ホストである所のガレスはと言えば、盾持ちのザザに食事マナーを指導している様だった。
こういった場でもなければ使う場所も無いからだろう。ザザの手元は非常に危なっかしい。
「辛うじて。グレイハーツ殿は、見聞を広めに?」
涼やかに見透かすような問は如何にも"らしい"。実直そうに見えたのは最初だけだったねえ。
と、"情報収集"を上手く装飾した言葉に思わず苦笑いを浮かべたか。
「メドゥの指先だね」
「赤の薬指――を名乗る女性でした。お気を付けを」
情報は、安くない。彼からの無償の提供は、ルチルの仕事振りを受けての物だろうが。
脳内にその名を刻むも――――赤。いよいよ以て不吉な響きだ。
それは、必然的に右手の存在をも示唆する物で。
「どうした、恐いのか」
相棒である栗鼠が頭の上へと駆けあがると、夜灯りが瞬く表通りへ視線を向ける。
震える様なその様に、何処となく嫌な物を感じて向き先を合わせる。
死など今更恐れはしないが……この小さな命までは巻き添えにしたくはない。
何故か胸を衝いたそんな感情を置き去りに。夜風に乗って琴の音色は流れていく。
●舞台裏<序>
「それで……これは一体何の真似ですの?」
マリエンが半目で問い掛ける。酒場のカウンターは最早一杯だ。
まるで示し合わせでもしたかのように……いや。逆に、絶対に示し合わせていないように。
カウンターの"内側"では――――5名もの冒険者が調理に勤しんでいた。
「紹介しよう、こちらがメドゥの偉い人、マリエン・D・カーネェジ殿。
この前、僕らを殺しかけていただいた公主殿であらせられる」
「ご紹介に預かりまして。この前殺さないでおいてあげたマリエンですの。
でもそうじゃありませんわあ。私はこの惨状の経緯が知りたいんですのよ?」
レオナルド・ピーフォウルの紹介に、赤い少女が盛装の裾を摘まんで義務的に挨拶するも。
そうではない。と流され気紛れサラダ作りに勤しむコルネリウス・アーラが首を傾げる。
本当は。思う所はある。言いたいこともあった。けれど、我慢して笑顔を取り繕うのは得意だった。
例え、親しい人が殺されかけた相手――――なのだと、しても。
「……おつまみが無いと寂しくありませんか?」
「作る分にはお好きに? でも、私に作らせよう何て仰られるなら。
ええええ、これはもう処刑は免れませんわねえ」
にこやかに応じるマリエンにレオナルドがカウンターの下、指先で×を作った。
これはアレだ。家事は家臣任せが当然の高等貴種だ。強行すれば絶対面倒な事になる。
「……と言うか、それは何だ?」
「え。サラダ、ですけど……」
無駄に手際良く海老と烏賊を阿列布油で炒めていたナハティガル=ラーの問に。
葉物を素手で千切ってはぎゅっぎゅと塩と胡麻と油で和えていたコルネリウスが首を傾げる。
あれがサラダ。粗略的に過ぎはしないだろうか……と内心過ぎるも。
恐らく物珍しさが手伝ってか。首を傾けたままの公主から疑問の声は上がらない。
「とりあえずチーズを揚げてみた」
「燻製肉が有ったから芋と玉葱と合わせて炒めたが」
「誤解だと思いたいのですけれど、もしかして冒険者ってとってもとーっても暇ですの?」
片や冷や汗を素面に覆い隠し、店主を守る為つまみ作製に勤しむバーネット・フォーサイス。
片や勝手に店内の食材を物色して炒め物に投下したケン・Z・ブラッドリーが料理を並べる。
段々増えていくつまみに、傾いたマリエンの眼差しが割とはっきり呆れの色に染まった。
それでもとりあえず一応出された物を眺めては……隣に座っていたトゥーリを向く。
視界に入って総毛立つも、入店しようとしてマリエンと対面し回れ右しようとしたのだ。
追われる鼠も同然の理屈で当然捕まったし、隣席で逃げ場など有る訳もない。
「わ、ワタシもお酒にはおつまみとか! すこしはあった方が消化に良いと思うな……!」
「ではお先にどうぞ? 私こんなに大勢は初めてですの。緊張で食事も喉を通りませんわあ」
チーズの揚げ物も燻製肉の炒め物も大変美味しかった。多分。
けれど、それを眺める眼前の魔人が危険過ぎて味なんか半分も分からない。
「……で、なんでアンタみたいのがこの街に居座ってるんだ?」
「借りていた軍馬を返しに来たついでですの。
まさか盗みを働いたとでも思っていましたの? それは大いなる誤解ですわあ」
カウンター越しに何気ない体で問い掛けたバーネットの問に、公主が応じる
言っていることは至極真っ当に聞こえるが、まさかそれだけと言う事はあるまい。
怪訝の色を浮かべるバーネットを眺め、くすくすと声を潜めて笑う様には。
まるで以前対峙した際の行動こそが間違いだったかの様に見えて来るから恐ろしい。
「そ、そういえば。王子様探しってどんな感じ?」
横合いから不意に毀れたそんな問いは突発的な危機回避同然。否、最早本能だった。
とは言え思いがけない質問ではあったのだろう。ぱちぱち瞬いた赤い娘は考える様に黙り込み。
そうして暫し。いよいよ沈黙に耐え切れなくなったトゥーリが口を開くその直前。
「上手くは行っていませんわね。……を見るに」
息を吐いての独白は、据え付けられた洋灯の火に照らされて揺れ。
緊張のあまり理性が融けそうになっていたトゥーリが――何故か――共感する。
「ワタシも冒険者になってやりたいことあるんだけど! 結構、大変だよね!」
「何で私、冒険者の山羊娘風情に同調されているのかしら……?
不思議、不可解、不明瞭……あら。チーズって揚げても意外と美味しいんですのね」
かくて続く筈だった言葉は、永遠に解れて消え。
そんな針の筵の様なカウンターへ、恐れ知らずの銀髪鬼が手製の一皿を置く。
「アンタが"赤い雷狼"の召喚者だな」
「さあ、私には何のことかさっぱりですわあ」
揚げたチーズをナイフで切り分けて。鈴を転がすように笑う公主には一見他意はない。
けれどその目だ。眼差しは測るように、或いは面白がる様にナハティガルを眺める。
「あの術は何だ。あんな魔法は――――」
「有り得ない? 惜しいですわねえ。貴方にはあと少し資格が足りませんわあ。
もう少し御自分と向き合いなさいな。欠落。渇望。――――貴方の中の奈落と、誠実に」
答えは其処にありますの。と、指さす先は銀の鬼のその胸元。
浮かべた怪訝の色へ興味を失ったように。海老だけ刺しては自分の皿へと運んで行った。
そんな混沌の坩堝と呼べる店の扉を。更に5名もの冒険者が潜って来たのは直後のことである。
●報恩会<破>
「すごい……! 果実の砂糖漬けにチョコレート!
甘いもの、いっぱいある、よ……! コハク! これ、本当にどれでも良い、の……!?」
「そう、良い。ティトが欲しいのを欲しいだけ持って来る。コハクはもう食べてる。もぐ」
旧帝国北方領では、甘いものは貴重を通り越して滅多にお目に掛かれない。
食料豊富な王国ならでは光景と、チョコレートの噴水じみた威容にティトの声が戦慄で震える。
ついて来たコハクは既に豚の丸焼きを齧っていたりするが、緊張のティトはそれどころではない。
「あむ……甘い、すごい……え、あとから、お金とか」
「かからない。食べ放題。つまり食べないと損。コハクはこの辺一帯食べつくすつもり」
きらきらとした眼差しで果物を頬張るティトに、別段何もしていない筈なのに自慢げなコハク。
あーん、とチョコレートを絡め差し出せば間髪入れず食いついたり。その様は実に仲睦まじく。
「どうも、喜んで頂けている様ですね」
遠目に。そんな事を呟いて瞳を細めた会の主催者――――メルヴィンが呟くとようやく。
予期しない申し出に固まっていたレイ=レーベンス=レックフォードの時間が動き出した。
「本気で、俺――……私を、騎士に?」
「ええ。レックフォード卿。卿の功績と戦果を鑑みて。
私はその力をどうか、北方と王国の為に生かして欲しいと望む者です。如何でしょう」
騎士とは主君の剣であり盾。そして臣民の剣であり、盾となる者。
護るべき者無くば騎士足り得ず。主君無くば……やはり騎士足り得ない。だからこその勲だ。
「……光栄の極みです。謹んで、受けさせて頂きたい」
これまで見て来た北方辺境伯領における騎士の精強さ。比例する繁忙さは想像に難くはなく。
けれど青年は其処に価値を見た。応じを告げて膝を折る。
それは仮初で在ろうとも。一人の騎士が、己の描く道へ一歩を踏み入れた証に相違無い。
そして、それは――――もう一人も、また。
「今回は、御招き感謝を」
フードを外し作法に則った礼を返すキーゼに、思わず『白騎士』が噴き出した。
「ふ、ふふふ、くふふふふ……やばい。黒いのの仕草がまとも過ぎて、おなか痛い……!」
「僕は常にまともなつもりですが」
表情こそ変わらずとも、何処となく憮然という雰囲気を漂わせるも。
フードなんか被ってる奴にまともなのなんか居ませーん、と目元を拭う白い女騎士。
けれど彼もまたレイ同様。騎士への誘いを受けた冒険者の一人だ。
となれば或いは――――場合によっては。眼前の女騎士はいずれ同僚となるのやも知れず。
「さて。僕らは美人局に一杯食わされたわけですが……
手際が良すぎる、というのは気付いてくれ、と言っている気がしませんか」
そう言って視線を流したキーゼの言外の含みに。最新の世情を知る者同士が視線を交える。
「そだね。メルはどーか知らないけど……漁夫の利、だっけ? あたしは気に入らないかな。
精々が足止めで人の街壊してくれちゃって。おまけに女でしょ? これは、舐めてるよねえ」
剣呑……と、言う他無い静かな殺気は。表情こそ笑いを描くも威嚇の色が過ぎ。
だからこそ彼とて、自由の身に全く未練が無い訳ではなかったが――――
「ええ。いずれ彼らに城壁のお礼はしないといけませんね」
例え騎士と言う性分ではなくとも。この地で出来る事。すべき事があると。
『黒衣の癒し手』もまた、己の所在を見出だすに至る。
そんな――――一つの岐路が役割を終えた頃。
『黒騎士』はと言えば。主とも同僚とも離れ、料理の追加を頼む為に執政府へ向かっていた。
ある肉食エルフと欠食もふもふ2人組によって一部の皿が空になったからである。
「……ガレス様」
掛かった声に。視線を向ければ佇んでいたのはレティシア・レインフィールだ。
目に見えて固まったガレスの姿に、やはり止めれば良かったと、焦りと焦燥が胸を焦がす。
「レインフィール殿……御無事で何よりです」
続いたのは思い掛けない言葉。無事……と瞬く様に、黒い騎士は真っ直ぐ距離を詰める。
彼女もまた、話したいことがあった。聞きたいことがあった。その筈だった。けれど。
「自覚があるかは存じませんが――――私は死ぬ覚悟でした。
そこを貴女がたに救われた……恩を、返さねばならないとは思っていました」
――――そういうことに、なるのだろうか、と。
考える事が多過ぎて、思ってすらいなかった申し出にレティシアの瞳が揺れる。
いや、けれどそうだ。今はそれより何より、あの時の言葉を。
自身の貴族令嬢に有るまじき振る舞いを忘れて貰わないと。混乱しつつもそう口にして。
「それは出来兼ねますが」
すげなく断られた。まさか断られた時どうすれば良いのか、考えてすらいなかった。
「……心配なさらずとも。
恩人の不利益になる事を好んでするほど、不義理ではありませんよ」
本当は。護って貰った恩を返さなければいけないのは自分の方なのに。
けれどそれ以上何も言い出せず、レティシアは困ったように黙り込む。
この黒い騎士に恐いものは無いのだろうか。そっと見上げれば沈黙すらまるで何処吹く風と。
そんな自分の仕草すら何処かおかしいと気付けば、進むも退くも窮まっていた。
冬の夜は静かに、そんなささやかな葛藤すら呑み込んで流れ往く。
●舞台裏<破>
(やはりチョコレートを求める本能に従うべきった……)
そもそも。酒場の扉を潜ろうとしたのは6人だった。
内ただ1人。スヴァン=ウォルフ=ユーウェンだけが足を止め、断固中に入らなかった。
原因は2つ。勘と、声だ。内部から感じる"特大の嫌な予感"――――それと、少女の声。
その一瞬に脳裏を古く錆び付いた記憶が電撃の様に駆け巡り、黒い雪豹の足を止めさせた。
「――――駄目だな、これは」
窓から息を殺して中を伺うと、黒い盛装の赤い女。
馴染みの酒場であるだけにとても惜しくは在ったが……一歩退き、両手を合わせる。
死臭が濃いとか薄いとかではない。踏みいれば其処は虎穴だ。勘が痛いほど警鐘を鳴らす。
触らぬ神に何とやら。すぐさま酒場から離れると途中、赤いフードを纏った女とすれ違う。
一瞬警告を投げるか逡巡するも……しかし流石に、これ以上あの酒場に突貫は果たすまい。
その想像はある意味正しく――――そして。ある意味大いに間違っていた。
「よーっす、店主いるー?」
クリエーナ・バーリフェルトが扉をばーんっと開けた瞬間。場の空気は完全に凍り付いた。
ただ1人。セロンガード・シュタインドルフだけが不思議そうに、その横をすり抜け席に着く。
空気が読めていないのか、読めていて豪胆なのかはさて置き。その目には怪訝の色。
座っても誰も注文も聞きに来ない。えっ? えっ? 何この空気。店員は……?
勿論店は閉店休業状態。冒険者の面々はカウンター内だ。ウェイターの1人も居る訳も無く。
(うわあ、何だこれ。ヤバそうな美人が何か大勢の料理人を侍らせてるんだが!!)
酒を引っ掴もうにもカウンター内は満員御礼。
ばっちり見られているクリエーナを救ったのは、後ろから跳びだした猫だった。
「いけませんわ、マクラ。そんなお店に入ってはダメですわよ……あ」
それを更に追って店内に入って来たバンビが声を上げると。公主もまた相手が誰かに気付く。
「あらあら。誰かと思えば金色の小鬼様ではありませんの……これも運命かしら」
「あー……御機嫌よう、公主様。閣下、こちらメドゥのお偉い公主様ですわ」
「その紹介の仕方流行ってますの?」
小首を傾げるマリエンに、クリエーナがまるで値踏みするが如くまじまじと見る。
纏う気配は明らかにヤバいけれど、良く良く見れば結構な美少女なのは間違いない。
(――――美人を相手に口説かないのは、むしろすごい失礼なのでは???)
彼女は恐らく、この日酒場に来た人間の中で断トツ危機管理能力が迷子になっていた。
それを悟ってか。影の様に付き従ってきたノックス・マグナが一歩。庇う様に進み出る。
(危険を感じたら、何者にも構わず逃げて下さい)
「よし、分かった。では俺が一日マスターだ!!」
聞いていない。言って止まるクリエーナではないのだった。ノックスが小さく嘆息する。
止む無くワインを注文すると、それを見たセロンガードもなるほど仕方なしと注文へ向かう。
(マスターも留守だし、何かおかしい……けど)
視線はノックスが受け取ったワイン瓶とグラスを追う。とりあえず営業はしているらしい。
何か緊急事態でもあったのか。とはいえ、酒場まで来て飲まずに帰るでは何が何やらだ。
「まあ、いいです。蒸留酒を所望しましょう」
過剰にピリピリしている気がするものの。注文したら一応蒸留酒は出て来た。
その実カウンターの冒険者達は今、突然投下された爆弾にそれどころではないのだが。
「レディ、今宵君と出会えた奇縁に感謝を。美しい髪の様に鮮やかなワイン等どうかな……?」
胡乱気に見つめていた公主が、芝居がかったクリエーナの言にころころと笑う。
すわ好感触か……!と、思ったのも束の間。
「野心は悪く無いのですけど惜しいですわあ。少し熟成が足りませんの。
欠損? 喪失? 後悔? 無力感? ――――貴女はどうなれば本気になれるのかしら」
金銀妖瞳が王を名乗る女を見据え。赤い瞳が公主を名乗る少女へ笑みを描く。
そんな絃が張ったような空気を受けて。バンビが自ら進み出た。
「先日は、素晴らしい物を見せて頂いてありがとうございます」
足元で、なぁーおと鳴く愛猫を抱き上げて。声音には少なからず緊張が滲む。
逆鱗に触れれば他はともかく。愛玩動物が生き残る芽は、まず無い。
「構いませんの。ところで金色の小鬼様? お誘いについては考えて頂けたのかしら」
当然来ると思っていた問に。心の内は決めてある。果たして吉と出るか凶と出るか。
「ノーですわ。今の俺は貴女を師と仰ぐより、対して盗みたいと考えていますの」
「今の?」
ある意味では想定通り。あれだけの魔法の極みに在る人間が、"鈍い"わけも――――無く。
「ええ、現段階では」
臆面も無い応じにクリエーナがにんまりとし。ノックスが無表情のまま視線を逸らす。
主従は似るとでも言うのだろうか。公主もまた、瞳を細め掌を振る。
「ふふ、強欲ですのねえ。まあ良いですわあ。生きてる間に気が変わったら教えなさいな。
私の気が向いたら、引き抜きも考えてあげますの」
如何にも愉しげな声音に、何時暴れ出しても対応出来る様身構えていた四名。
コルネリウス、レオナルド、ケン、バーネットのカウンター組が、綱渡りが如き会話に息を吐く。
そうして。大抵において陥穽と言うのは、そう言った"隙間"に潜むのだ。
店に入って来た5人目。アイリーン=N=フェルクスは状況を見て即身を隠していた。
カウンターには縛られた店主。どう見ても一般人であり巻き込まれただけに見える。
幸い、カウンターにも赤い少女の周りにも、冒険者が詰めている。
であれば人質は救わなければならない。公主と呼ばれる少女は彼女を視認すらしていない。
注意が余所に向いている隙に――――そう。アイリーンはこの時点に於いて。
其処に在る魔法使いがどういった存在か測り損ねていた。
――――彼女以外誰一人として。何故、人質を救おうなどと考えすらしなかったのか。
隠蔽技能に長けた冒険者はともかくも、一般人は余りにお荷物だったのだ。
「とはいえ勿論――――慈悲にも限度は、有りますのよ?」
ノックスが自らの主を庇わんと覆い被さり、ケンがアイリーンと店主を抱えて駆け出す。
ぎょっとして動きが止まったレオナルドを見て、コルネリウスが我が身を盾にと跳び出した。
「……えっ?」
慌ててカウンターに潜り込んだバーネットを見送り、時間から取り残された様なセロンガードの声。
――――それらはほぼ同時だった。即ち、赤い魔人が躊躇無くその掌を天井へと掲げたのは。
●報恩会<急>
「……少し、良いか?」
会場に戻ったガレスが捕まったのは、完全に出来上がったハヤトだった。
怪物級に酒に強い『白騎士』と真っ向張り合って潰れなかったのは大した物だと思うも。
けれど、別に『黒騎士』が酔客の相手に優れる訳ではない。
向けられた怪訝の色に。けれど赤狼の傭兵から漏れたのは、どうも愚痴に近いもの。
「俺のダチにとある白薔薇のご令嬢がいんだけどよ。将来が決められてて自由がねぇっつーか……」
聞くに徹したガレスは時折相槌を打つも応じはなく。熟考するように視線を伏せる。
「何つーか……不憫でよ」
けれど、続く一言に。漸く、その重い口が開く。
「――――『白薔薇』は、王国貴族の最高位です。外様にはどうにもなりません。
ましてや冒険者風情では……例えばそう、聞ければ満足ですか?」
挑発する様なその言に、思わずハヤトの視線が鋭くなるも。
「談判したいなら上を通せ。それがこの国です。
本気でどうにかしたいなら……『白薔薇』の上を通すしかないでしょう」
それだけ告げて。話は終わりだとばかりに、ガレスが静かに踵を返す。
酔っているからだろうか。その背はまるで何かに耐える様に……何処か痛々しく見えて。
――――ところは変わり報恩会も終わり際。場所は北方辺境伯領執政府。
「少し大きくなりましたか。相変わらず美猫ですねー」
にゃーにゃー言いながら灰色の猫と戯れるイヴェール・イリュジオンは、まさにその中に居た。
辺境伯との約束を果たすべくその所在を探し東奔西走。
結果、執政府の片隅で灰色の猫を発見。以後、仔猫を指先で転がし癒されていた訳であるが。
さて、声を掛けるべきか否か悩むのは、餌を持って戻って来た側のメルヴィンである。
「イリュジオン殿……?」
「こっちですよ、おいでおいでー……――――ふぁ!?」
完全に執政府まで来た主旨を忘れていたイヴェール。慌てて居住まいを正すも手遅れだ。
笑いを噛み殺す辺境伯に、"約束を果たしに"との、大切な大義名分を掲げ直す。
「こ、この仔の名前なのですが……空と。
空のように自由奔放であって欲しいという願いから……如何でしょうか?」
「シエル……ええ、良い名前です。確かに受け賜りました」
"これから貴女はシエルを名乗るのですよ"と、語りかけながら餌を与える様は。
これがまさか北の英雄と称される。北方辺境伯その人とは思えない程に穏やかで。
やはり生き物を飼うのは良い事です。と、愛らしい動きに目尻が下がっていたものの。
それも一匹の黒狼が走り込んで来るまで。
「ルプス、どこへ行く?」
慌てた様に駆けて来たのは相棒を探し当てたロイ。
黒狼の方は灰色の猫に興味津々な物の、猫の側は初めて見る巨大生物に警戒の構えだ。
「貴方は……報恩会に来られたお客人でしょうか」
「はい。自分は――――おや」
穏やかな性質なのだろう。一定の間合いから近付くのを止めた黒狼を見て。
灰猫が主人の元へ駆けていく。思わず、とイヴェールが身構えそうになるものの。
「初めまして。お名前をお聞きし宜しいでしょうか?」
そう、柔らかに問うロイに。辺境伯の側が制して告げる。
初名乗りとなるのだろうか。まるで我が子を誇るが如く喜ばしげな色を滲ませて。
「シエルと言います。空の様に自由に。奔放に育ってくれるように、と」
――――本当は、もう少し真剣に訪ねたいことも有ったというのに。
他者から自分の名付けについて語られると言う緊急事態に陥ったイヴェールは。
まさかこの期に及んで王国の醜聞について詳しく突っ込むことも出来ず――――
結局、見事に本来の主題であった、真面目な話の方を聞き損ねたのだった。
●舞台裏<■>
――――報恩会が、ようやく幕引きを告げた頃。
辺境騎士への誘いに断りの手紙を認め、執政府へ届けたアウレーリア・フォン・ネーベルベルク。
旧帝国貴族の少女は、何となしに手持無沙汰を持て余し冒険者ギルドへ向かっていた。
ギルドが閉じているのは承知の上。けれど……虫の知らせだろうか。嫌な予感がしたのだ。
まるで逃げ去る様に去る眼帯をした半獣人とすれ違ったことでその予感は加速する。
そうして、漸く辿り着いたその瞬間――――駆け出して伏せる人影3つ。
直後ギルド隣、酒場一階の窓と言う窓が白い光常に貫かれ、軒並みまとめて爆発した。
「――――――――」
見ている物が正しく認識出来ない。遅れてやって来た。そうして間に合わなかった。
だから、彼女は1人だけで酒場の扉を開いて出て来る赤い少女と対峙する事になった。
見た目の年齢も近しく、いずれも赤を強く印象付ける。
けれど一目で分かった。同じ魔法使いでも――――次元が違う。
漂う百合の香り。かつて対した赤い雷狼と同じ芳香。まさか、と思う一方で半ば以上確信する。
規格外の澱の密度。こんな人間なら、きっと嗤いながら都市一つ燃やしてみせる。
「あらあらあら。今日は幕引きだと思っていたのですけど。お客様の多いこと。
嗚呼――――けれど良く熟してますわねえ。貴女、こちらにいらっしゃる?」
向けられた繊指。その仕草に死が薫る。甘く、深く、引き摺り込む、奈落が見える。
「貴女が、あれをやったの……?」
その交差はささやかで意味など無く。けれど誘う声は、瞳は、風貌は、一度で容易に憶えられる。
今にも崩れそうな酒場から、次々に複数の冒険者が這い出すのが見えた。
「ええ。赤の薬指。『呪殺公主』マリエン・D・カーネェジと申しますわあ。
また愉しい夜にでもお逢いしましょう、可愛らしい赤頭巾様」
ここで道を塞げば終わりだと分かって。2人の少女はすれ違う。
洋々と去り行く魔人を前に身動き一つ取れなかった事実が、アウレーリアが強く拳を握らせる。
"ええ、さようなら公主様。きっとまた逢いましょう"
それは交わせなくとも確かに胸へと刻む灼熱の誓約。
激情の余り制御を外れた魔力の焔が中空を舞い、去り行く赤い魔人を仄朱く照らした。
かくて一つの幕は落ち、けれど次なる幕は遠からず上がるのだろう。
――――――――王国の闇の深淵は未だ、その姿すら見せぬままなのだから。
マスターコメント
イベントシナリオ普通 報酬:多い25 / 10〜25人
2021年03月12日 13時14分41秒 公開
参加者
相談掲示板
報恩会と街の酒場では元より天と地の差がありますが、副次要素によって天国と地獄程の差になっていますね。 報恩会で振る舞われる柔らかな燻製肉には非常に心をくすぐられますが、残念なことに私は地獄に行くことになりそうです。
どこぞの酒場におもしれ―女がいると聞いて。
バーネット・フォーサイスだ。 まぁ、よろしく頼むわ。 俺も今回は地獄行きって所だな。 ……多分、つまみでも作ってると思う。
俺も地獄の方に行くと思う。 つまみにされる (ブルーレット様子見ておくだけ)
一級品の料理とお酒を味わうだけでお金も貰えるあたり、最高の依頼ですね 僕は夜会の真似事にでも参加しますよ あちらは対して興味ないですし
情報屋のルチルだ。 報恩会も気になるが赤いのも気になるな。 報恩会に特段行く理由もないし赤い方に……って気持ちもあるが人がそれなりにいそうだね。 病み上がりの顔でも拝みにいくか。
ふぬ…どうしたもの、か…
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤトだ。 みんなよろしくな!! 赤いお嬢さんも気にはなるが今回は白騎士ちゃんと更に親睦を深めるチャンスだし、黒騎士にもしっかりと名を売り込んどく良い機会だしな。 報恩会とやらで楽しませて貰うとすんぜ♪
アウレーリアよ、宜しく。 貴族の夜会なんて、行かなくて済むならそれに越したことはないわ。 それよりは地獄の悪鬼と戯れる方が……ええ、楽しそうじゃない。 顔を潰さない程度に義理を果たして、酒場に行きましょう。
エルフのイズレンディル・パラリムと申します。 関連の依頼でご一緒させて頂いた皆さんはお疲れ様でした! 私は報恩会に参加させて頂きます。 お誘いを頂いたということでしょうしお断りする理由もありません。 仕事中はあまり会話も出来ませんでしたから、様々お話が出来る良いなと思います。 メルヴィンさんとガレスさんだけでなく、同じく関連依頼に参加された皆さんもですね、良ければ宜しくお願い致します。
シーフコハク、どうぞよろしく。 ティト―、一緒にご飯食べよー
あ、コハクだー ふぬ、たべるたべるー
レティシア・レインフィールと申します。 皆様、よろしくお願い致します。 そして依頼でご一緒させて頂いた皆様、お疲れ様でした。 私は報恩会へ参りますので、その時にお話出来れば嬉しく存じます。 報恩会の間に、一度お集りになるのもよろしいでしょうし。 辺境伯様にも、改めてご挨拶が出来ればよろしいのですけれど。 ……あとはその、ガレス様にも。少し、お時間を頂ければ、と。
レイだ。 報恩会に出席するよ。
わーい、ありがとティト。 街角広場でシナリオ相談スレあるから詳しい事はそっちでねー
ほいさー むかうでござる、よー
コルネリウスです、よろしくお願いします。 色々考え中ではありますが、酒場の方に行くかなと思っています。
本名知られてる辺境伯の前にはちょっと立ちにくいレオナルドです。 地獄で会おうぜ。
イヴェール・イリュジオンです。 どうぞよろしくお願いいたします(ぺこり) 報恩会…楽しむ気分でもないので猫の様子を見に行きたいところですが… 執政府内となると許可がないと入れなさそうですね…
ナハティガル=ラー。 不意討ち暗殺何でもござれのシーフだ。 初見の者も、そうではない者も宜しく頼む。 俺は酒場で静かに呑む予定。
ロイ・アウレアです。 報恩会に参加します。よろしくお願いします。
エルゼリオ・レイノーラだよ。 今回はヨロシク! ボクは報恩会に参加させて貰うね~。
No.23
リディリディです・・・、よ、よろしくお願いします。 報恩会の方へ参加させてもらいます。
シューターセロンガードです。 地獄で会いましょう。