【初夢】ドリームダイブせよ!
大和気 いぐる
コメント 4
シナリオID:408
オープニング
ロスガリア大陸は未曾有の危機に陥っていた。
前代未聞のクリーパーの大発生である。
地からは茄子のような見た目のクリーパーが生え出でる。
空からは鷹のような見た目のクリーパーが襲いくる。
海の向こうには、山のごときクリーパーがそびえていた。
もちろん、冒険者ギルドが総力で討伐にあたった。
しかし、敵の勢いは、まったく衰える気配がない。
倒しても倒しても、同じようなクリーパーが次々湧いて出る。
世界の境界は、すでに破られたのか、と思われるほどの勢いだった。
どこの冒険者ギルド支部も、緊迫した雰囲気が漂う。
しかし、今日、ここに現れた男は、少々趣が違った。
「失礼致します。東京都侵蝕対策室のはす……ミスターHです。
お集まりいただき、誠にありがとうございます。」
落ち着き払った、眼鏡の男。
スッとした背筋に、どこか異国的なスーツ。
余裕の笑みは、いかにも仕事が出来そう、といった風情だ。
東京? 聞きなれない地名だ。東方のどこかなのだろうか。
「そのように考えていただいても構いません。
ところで、現在のロスガリア大陸の状況。
皆様は、どのように考えていらっしゃいますか?」
クリーパーの大発生で、どこもかしこも大変だ。
そんなことは、わかりきっているだろう?
そう返すと男は、きらり、眼鏡を光らせた。
「そのクリーパーの大発生、原因がわかっていると申し上げたら?」
なんだって?
冒険者ギルドは騒然となった。
「侵蝕対策室では、今回のこの騒動を、大規模侵蝕事件と位置づけました。
原因はほぼ、ゴーントによるものとみて間違いありません」
侵蝕事件? ゴーント?
「ゴーントとは、異界からの侵略者。
……ある意味、特殊なクリーパーと言ってもいいでしょうね。
ただ、ゴーントは、ただ暴れまわるだけの手段はとりません。
人の夢に取り付き、眷属を増やし、夢を介して現実を歪めます。
こうして歪んだ事象を、我々は侵蝕と呼んでいます。
ここまで大規模な侵蝕は、ゴーントの関与の可能性が極めて高い」
ゴーントとやらは、誰の夢に潜んでいるか分かっているのか?
「もちろん、調べはついております。
十中八九、この方でしょうね」
ミスターHはそう言って、カーテンを引いた。
天蓋つきのベッドで、うなされているのは、見事な黒髪の少年だ。
「ご存じの方も多いのではないでしょうか。
レイウェスト・バルダス殿下です」
大陸中から注目を集める重要人物の登場に、再び場は騒然となった。
容体は? 目覚めないのか? このままで大丈夫なのか?
「まだお若く、体力もおありですから、少々の猶予はございます。
ただ、夢を蝕まれた者の予後は不良です。
このままでは目覚めぬまま、衰弱死を迎える可能性が高いかと」
どうすれば、そのゴーントを倒せるのか?
「ドリームダイブ、すなわち他者の夢へと入り込む能力。
ユメオチ……いえ、授恵者の皆様には、その力があります。
殿下の夢へと潜り、ゴーントを直接叩くのです」
他人の夢に入り込むなど、経験はない。
だが、できるというのなら、できるのだろう。
我も我もと、手を挙げる冒険者たちが出た。
「冒険者の皆様の奮起に期待しておりますよ」
ミスターHは失敗など微塵も疑わぬ声色で、そう言った。
※このシナリオは「夢オチシナリオ」です。
シナリオ内容は架空のものであり、アニエピカの世界観に一切影響を与えません。
報酬は冒険者ギルドからのお年玉です。
前代未聞のクリーパーの大発生である。
地からは茄子のような見た目のクリーパーが生え出でる。
空からは鷹のような見た目のクリーパーが襲いくる。
海の向こうには、山のごときクリーパーがそびえていた。
もちろん、冒険者ギルドが総力で討伐にあたった。
しかし、敵の勢いは、まったく衰える気配がない。
倒しても倒しても、同じようなクリーパーが次々湧いて出る。
世界の境界は、すでに破られたのか、と思われるほどの勢いだった。
どこの冒険者ギルド支部も、緊迫した雰囲気が漂う。
しかし、今日、ここに現れた男は、少々趣が違った。
「失礼致します。東京都侵蝕対策室のはす……ミスターHです。
お集まりいただき、誠にありがとうございます。」
落ち着き払った、眼鏡の男。
スッとした背筋に、どこか異国的なスーツ。
余裕の笑みは、いかにも仕事が出来そう、といった風情だ。
東京? 聞きなれない地名だ。東方のどこかなのだろうか。
「そのように考えていただいても構いません。
ところで、現在のロスガリア大陸の状況。
皆様は、どのように考えていらっしゃいますか?」
クリーパーの大発生で、どこもかしこも大変だ。
そんなことは、わかりきっているだろう?
そう返すと男は、きらり、眼鏡を光らせた。
「そのクリーパーの大発生、原因がわかっていると申し上げたら?」
なんだって?
冒険者ギルドは騒然となった。
「侵蝕対策室では、今回のこの騒動を、大規模侵蝕事件と位置づけました。
原因はほぼ、ゴーントによるものとみて間違いありません」
侵蝕事件? ゴーント?
「ゴーントとは、異界からの侵略者。
……ある意味、特殊なクリーパーと言ってもいいでしょうね。
ただ、ゴーントは、ただ暴れまわるだけの手段はとりません。
人の夢に取り付き、眷属を増やし、夢を介して現実を歪めます。
こうして歪んだ事象を、我々は侵蝕と呼んでいます。
ここまで大規模な侵蝕は、ゴーントの関与の可能性が極めて高い」
ゴーントとやらは、誰の夢に潜んでいるか分かっているのか?
「もちろん、調べはついております。
十中八九、この方でしょうね」
ミスターHはそう言って、カーテンを引いた。
天蓋つきのベッドで、うなされているのは、見事な黒髪の少年だ。
「ご存じの方も多いのではないでしょうか。
レイウェスト・バルダス殿下です」
大陸中から注目を集める重要人物の登場に、再び場は騒然となった。
容体は? 目覚めないのか? このままで大丈夫なのか?
「まだお若く、体力もおありですから、少々の猶予はございます。
ただ、夢を蝕まれた者の予後は不良です。
このままでは目覚めぬまま、衰弱死を迎える可能性が高いかと」
どうすれば、そのゴーントを倒せるのか?
「ドリームダイブ、すなわち他者の夢へと入り込む能力。
ユメオチ……いえ、授恵者の皆様には、その力があります。
殿下の夢へと潜り、ゴーントを直接叩くのです」
他人の夢に入り込むなど、経験はない。
だが、できるというのなら、できるのだろう。
我も我もと、手を挙げる冒険者たちが出た。
「冒険者の皆様の奮起に期待しておりますよ」
ミスターHは失敗など微塵も疑わぬ声色で、そう言った。
※このシナリオは「夢オチシナリオ」です。
シナリオ内容は架空のものであり、アニエピカの世界観に一切影響を与えません。
報酬は冒険者ギルドからのお年玉です。
解説
夢に潜り、異界からの侵蝕者、ゴーントを打ち破ってください。
というわけで、夢つながりで、非公式・東京インソムニアコラボです!
(アニエピカ・インソムニア両運営に、この依頼を出すことの許可はもらっています。ご安心を)
なお、今シナリオでは、【夜の姿】を持つことができます。
これは通常の設定と全く異なる、夢の中だけでの外見です。
世界観に合わない姿でもご自由にどうぞ。
ただし、トラブルを避けるため、たとえ両ワールドで遊んでいても、東京インソムニアPCの【夜の姿】の流用はしないでください。
特に記載がない場合は、通常の姿と変わらないものとして描写します。
夢オチなので、ほぼルールのことは考えなくても平気です。
装備しているスキルに関わらず、お好きな攻撃をキメちゃってください。
東京インソムニアのスキルを使って雰囲気を出す、などもアリです。
本来ドリームダイブには条件がいくつかありますが、今シナリオでは気にしなくて構わないです。
仲介になれそうな授恵者がいたか、夢オチだから、ということで。
OPで、大まかな世界観は説明しています。
が、もっと詳しいワールドガイドが公式にあります。
チェックしておくと、より楽しめるでしょう。
結構メタネタの入ったリプレイになると思います。
ご了承くださいませ。
▼レイウェストの悪夢の模様
なぜか、見たこともない建造物が立ち並ぶ異世界です。
ぶっちゃけると新宿の都庁周辺の風景です。
ゴーントを倒せば、自動的に悪夢は解消され、クリーパー大発生もおさまります。
また、レイウェストも目を覚まします。夢ですけど。
▼NPC
・ミスターH
東京都侵蝕対策室の人。
決して、東京インソムニアのメガネイケメンとは関係はない。いいね?
わざわざ東京からロスガリア大陸までやって来たらしい。
公務員って、大変だね!
▼敵情報
・初夢魔
後述のゴーントの配下。
OPに登場したクリーパーと同じ外見のものが大半。
中にはPLの発想を活かした特異な外見のものもいるかもしれません。
字数が許せば。
・初夢ゴーント
富士山・鷹・なすびが絡み合った、冒涜的かつ巨大なゴーント。
さすがに富士山サイズではなく、都庁と同じくらいのサイズ。
夢の中の新宿、都庁わきに陣取っています。
夢オチ企画に乗じ、ロスガリア大陸にまで手を伸ばしてきた。
だが、全てが夢オチで終わることを忘れていたウッカリさん。
マスターより
はじめましての方が多いかと思います。
大和気 いぐる です。
今回は、非公式コラボかつ、ドデカイ敵とわーわーやるイベントシナリオです。
もし未体験なら、これを機に東京インソムニアでも遊んでみてください。
大和気はライターもやってます。(隙あらば宣伝)
リプレイ
クリーパーの大発生。
そして、その原因が潜むのは帝国皇子の見る夢の中。
そんな状況にアーシェル・G・クラインは黙っていられなかった。
「わけのわかんねぇゴーントなんぞに、殿下を殺されてたまるかよ」
レイウェストに仕え、帝国を守るのは彼と彼の兄が抱いた夢だったのだ。
スィーリーンも、気を揉んだ一人だ。
「殿下……なんてお労しい。
エフレム様もさぞ心配されている事でしょう。
ええ、そうに違いありません。
エフレム様の為にも、見事殿下を救い出してみせましょう!」
若干、というかかなり、他の方向を向いている気もしないでもない。
だが、レイウェストのことを気にかけているのは嘘ではない。
ギャメルは、そこまで悲壮ではないが、それでも心配そうだ。
クリーパーとさして変わらぬ化け物に、悪夢を見させられるなんて。
(大変そうだな……)
「ドリームダイブ? 上等だ。どうやったらできる?」
アーシェルが躊躇もせずに、ミスターHに詰め寄った。
「殿下の事を思いながら、眠りにつけばよろしいのですよ。
焦りは禁物です。リラックスしなければ、眠れませんからね。
ギルドに頼んで、ハーブティなど用意させておりますよ。
それでも間に合わないようであれば、眠り薬なども、ね」
そつのない男である。
●夢の中の街
夢の中というのは、想像もしないことが起きるものだ。
だが、このような光景を予想できた冒険者がいただろうか。
巨大な石の柱が立ち並ぶ。
いや、窓らしきものがある。あれらは建物なのか?
ならば、ここは街なのだろうか。
ミスターHがこの場にいれば、その街の名を教えてくれただろう。
新宿。
「何なんだこれは! どうすればいいんだ?!」
レヴァーレ・クアルムは、叫んだ。
どうあがいても、しょせん夢オチコメディイベシナよ。
突然、鬼畜難易度の音ゲーが始まったりはしない。
マルチバッドエンドでもないし、東京タワーに竜は刺さらない。
たぶん。
「ここが夢の世界! 凄い!」
エルナ・クルプファルツは肯定的な感想を抱いたようだ。
「……不思議な建物が沢山ありますね」
スィーリーンもレイウェストの夢だからか、そう悪い印象はないらしい。
「変わった街だよね。おっと、これは食べ物かな……」
ヨル・スレイマンは店先の食品サンプルに興味深々だ。
●見慣れぬ姿
夢の中の風景よりも、自身に起きた異変に驚愕する者もいた。
アルフレッド・ラ・ギが、その筆頭だ。
彼は、決して自分の容姿を鼻にかけているわけではない。
が、結構気に入ってはいた。それなのに。
「な、なんだこれは……!?」
幼女だった。
くり返すが、幼女だった。
しかもフリル満載のスタイルである。
ミスターHなら「それはサブカルの魔法少女ですね」と言っただろう。
それも、どういうわけか、妙ちきりんな鋸を持っている。
「な、なぜこんな……私が見世物のような姿で……!」
なぜもなにも、全ては中の人のせいである。
だが、アルフレッドがそんな事を知るよしもない。
「こっ、これがゴーントのすることか! おのれゴーント!」
とんだ、とばっちりである。
怒りに燃えるアルフレッドは、ゴーントを探すため、走り去っていった。
とても綺麗な衣装だから、そんなに怒らなくてもいいのに。
と、スィーリーンは後ろ姿のチュールリボンを見送りながら思った。
よく見れば、彼女の衣装も、びっくりするくらい綺麗だ。
見たこともないフワフワした素材で、キラキラと輝くドレス。
手にした杖も、宝石がふんだんにあしらわれている。
もし現実の店先で見かけたら、所持金に構わず買ってしまいそう。
殿下のことがなかったら、きっと、もっと楽しめたのに。
負けず劣らず、フワフワ、キラキラな衣装の者が、さらに二人いた。
エルナとユークリア・フィナンシェである。
エルナはセイレーンを模した純白の衣装。
いつかの鎮魂祭で着た覚えがある服だが、翼は本物だ。夢だからね。
ユークリアは、それとは対照的な黒と青を基調とした衣装だ。
エルナと二人で並び立つと、実に絵になる。
彼女らの横に物々しい武装で立つのはコハクだ。
佩いた大太刀は東方風というより、むしろ未来的。
どこか機械的な大仕掛けを感じさせるものだった。
ふかした煙草と黒い服、赤いマフラーに嫌味なく似合う。
身長はぐっと高くなり、白髪赤眼になっていた。
「やれやれ、悪夢を見るのは現実だけで結構なんですが……。
皆さま、無理のないように」
神父のような外見のキーゼがエルナ、ユークリア、コハクに声をかけた。
容貌がかわっても、知り合いにはコハクだと認識できる。
それが不思議といえば不思議だった。
ミツキ・アインホルンは戸惑っていた。
奇妙な恰好というわけではないのだが、普段の自分とは真逆なのだ。
騎士のような重厚な鎧と大剣。
後光のようなものが奇妙といえばそうか。
そういえばミスターHが言っていた。
夢の中では姿が変わることがあると。
そして、それは自分の願望を反映することが多いとも。
(心のどこかで前衛になりたかったのかしらね)
でも、あんまりそれを真に受けると、アルフレッドが気の毒だぞ。
アーシェルの姿は、この世界でいう警察官のものだった。
だが、彼の知識にそれはない。
頭の中もレイウェストとクリーパーの事でいっぱいだった。
ただ、帝国軍の支給服にも似ていて、わりあい動きやすいのは有難い。
元凶を探しに駆け回るにも、都合がいいだろう。
彼はいち早く、見慣れぬ街へ飛び出していった。
どこか不気味な姿に変貌したものもいた。
サマエラ=フォリウムである。
闇のように暗いローブで全身を覆い、顔も窺えない。
(これは……この姿は……私は……)
ぼんやりと、力なく引き摺る剣は赤黒く。固まった血のようだ。
彼女は何かに導かれるように、裏路地へと消えていった。
レヴァーレは、街の異様さだけでなく、さらに自分の姿にも驚愕した。
顔まで覆う全身甲冑のような姿。
その黒い表面は影や炎の様に揺らめいて見える。
ながめていれば、不思議とみなぎる力を感じた。
驚きはしたが、何とかやれるような気がした。
シャルガネを思わせる装いの者も多い。まあ、正月のイベントだしね。
ニール・ロブラリアはビルの屋上に立っていた。
強風にあおられ、長い陣羽織がなびく。
手には黒炎と蒼炎の絡む半透明の弓。
「……ちゅうに」
別に小声にならなくてもいいのだ。
地の文をやってる人は、たいてい心にソイツを飼っている。
中の人にも、そういう人は沢山いる。(※個人差があります)
PBWっていうのは、そういう遊びだ。(※個人の感想です)
ヨルは被った頭蓋骨はそのままに、黒地に金柄の袴姿だった。
なぜか武器は釘バット。
「なんだこの格好? まあ、華があるのは悪くないか」
なかなか様になっている。
「私はレイ=レーベンス=レックフォード。よろしく頼む」
黒い和服に長刀を構えたレイは、同じような和装の冒険者に声をかけた。
着慣れぬ恰好に戸惑いがないとは言わない。
だが、やるべきことは、いつもと変わらないはずだ。
「ええ。よろしく。私はイネス・エレディアよ」
巫女服に身を包んだイネスが応じた。
「よろしくな!」
ギャメルが宙に浮きながら言った。
彼は天狗のような衣装になっている。
背中には小さな黒い翼が生えていた。
「もー、これでどう戦えっていうんすか!」
カルミーは鮮やかな黄と赤の振り袖姿だ。
厚底草履のうえに、武装もなぜか羽子板と羽根だけ。
「だいじょぶ! 夢の中なら気持ちの持ちようさぁ!」
フリューリングスルフト=ティエラが陽気に言った。
おかめの面を斜めに頭に被り、手には神楽鈴と金色の扇。
千早を纏い、膝上丈の緑の袴を履き、白い足はわざと魅せ。
羽飾り付きの草履は動くたびに、しゃんしゃん鳴った。
なかなか歌舞いた格好である。
「夢の中で悪さしよるのは誰さぁ?」
歌うように言って、フリューが扇を天高くかざした。
●初夢魔たち
別にフリューの口上に誘われたのではなく、たまたまなのだろう。
ふと、街角から、茄子が顔を出した。
いや、顔はないのだが。
ロスガリア大陸に溢れかえった茄子型クリーパーとそっくりだった。
「出たな!」
ヨルが釘バットで茄子をホームランよろしく吹っ飛ばした。
「ほいさ!」
カルミーが、それを羽子板で打ち返す。
なるほど、夢だと思えばなんとかなるものだ。
それを最初に、どこから湧いたか、街角には次々夢魔があふれた。
大陸にもいた茄子と鷹。
歩く鳥居。カエルの楽隊。うごめく粗大ゴミ。
おめでたいものから、別にそうでもないものまで。
パレードのごとく、交差点へと殺到する。
さあ戦闘だ!
エルナの武器は声と歌だ。
ドーン! と言えば敵は爆発!
スパッ! そう言えば敵は真っ二つだ!
「……聞いてください、シューティングスター!!」
歌えば、星が落ちてきた。
あと、なんか名状しがたきピンクの悪魔まで湧いてきた。
具体的に描写するのは、やめておこう。
つるつるした巨大なものが、何かを吸い込んでいるかのような音。
このくらいの描写ならば、地の文に文句をつけられはしない。
いや、そんな! 最強の法務部が! 窓に! 窓に!
なお、減った正気度を回復させるには、ファンレターが有効です。
リャマポイントも貰えるよ。
ユークリアも負けじと、ミニガンを召還して構えた。
ミニガンってなんだ。でもユークリアにはそれが理解できた。
「いきます!」
轟音とともに銃弾がバラまかれ、初夢魔は蜂の巣になった。
「祈りを送ります!」
キーゼが十字架をかかげ、祈りをささげる(フリをする)。
ユークリアは勇気凛々。
「ヒャッハァァ! これが私のドリームパワーです――!!」
ドリームパワーってなんだろう。
銃身で吹っ飛ばされた初夢魔はビルの壁面にたたきつけられた。
その夢魔は、地面に墜ちる前に、コハクの大太刀に切り捨てられた。
「私は空の敵を掃討するから、地上は任せるわ」
イネスが、正月飾りのついた破魔矢を次々鷹夢魔に打ち込んでいく。
「オレも、加勢するぜ!」
せっかく飛べるのだ。
ギャメルは空中から羽扇を振るい、応戦した。
カルミーも羽根を羽子板で打ち、鷹夢魔を撃墜した。
ノックス・マグナも地上から次々弓をひいた。
「鷹狩りと洒落込もう」
ビルの屋上からニールも鷹夢魔を狙う。
矢をつがえる動作も見えぬほどの速射。
逃げようとする者を一匹たりと逃さぬ眼。
「――特別サービス」
ひときわ大きな鷹夢魔に二本の矢が突き立った。
空からの攻撃が減れば、だいぶん地上での戦いは運びやすくなった。
「倒すべきを、倒す――いくぞ!!」
レイがバチバチと雷光を纏わせた刃で敵を薙ぎ払い、前に進む。
「この姿じゃ魔法は使えないみたいだけど……」
レヴァーレは戸惑いながらも、拳を手近な夢魔に叩き込んでみた。
拳は唸りをあげて光り輝き、夢魔は吹っ飛んでいった。
いけそうだ。
「肉弾戦ができるのか。ならまあ、ここでのやり方で臨むだけだな!」
レヴァーレの様子を見て、接近戦に慣れぬミツキも勇気づけられた。
「えいっ!!」
思い切って斬りつければ、茄子夢魔はあっさりと真っ二つになった。
その様は、本物の茄子そっくりで、なんだか勿体ない気もする。
「この茄子、そのままスープに入れようかしら」
中の人の陰謀によって幼女と化したアルフレッドは荒れ狂っていた。
「チェーンソーパンチ! チェーンソーキック!
チェーンソー頭突き! チェーンソーおのれおのれ!」
チェーンソーがゲシュタルト崩壊を起こしそうな勢いである。
まったく訳がわからないうちに、初夢魔は次々打ち倒されていった。
サマエラは、夢魔の群れも気にならぬ様子で、徘徊していた。
敵と接触するや否や、すり抜けるようにいつの間にか斬り捨てる。
その様は、敵と戦うというより、邪魔なものを退かしている。
そんな風情だった。
(なんだ? ずいぶんフラフラしてるな?)
そのわりには敵におくれをとる様子はない。
そんな奇妙なサマエラの姿をみとめて、アーシェルはフォローに入った。
庇ってやる必要があるかは不明だが、死角の敵を霊撃で撃退する。
「おい! しっかりしろ。とりあえず、あんまり離れるな!」
聞いてか、聞かずか、サマエラはぼんやりと、うなずいた。
●初夢ゴーント
冒険者たちの勢いは、すさまじいものだった。
ロスガリア大陸でクリーパー対策をしていた時よりも、激しい。
ただ、初夢魔もおなじくらい凄まじい勢いで湧いて出る。
「キリがないな。こういう時は親玉を殴るべきか?」
夢魔の体液で、すでに釘バットは物凄い色に染まっている。
ヨルはため息をつきながら、あたりを見回した。
だが、その親玉が見つからない。
その時である。
ずもももも……。
いまいち緊張感のない重低音がそこら中に響き渡った。
何事かと、音のする方を見やれば。
そこらで一番高い塔のすぐわきに。
同じぐらいの高さにそびえる山があった。
ロスガリア大陸の海の向こうに見えていたクリーパーによく似ている。
だが、さすがにそこまで大きくはない。
そのかわり茄子やら鷹やらが絡み合った、酷く冒涜的な姿をしている。
そいつは、別にいきなり現れたわけではない。
なぜだか、冒険者たちには、それがわかった。
見えなかっただけで、そいつはずっとそこに、鎮座ましましていたのだ。
どうみたって、こいつがミスターHのいうゴーントに決まっている。
イネスは戦慄した。
「これがクリーパー大量発生の原因……。
ハイアルヴが私をこの地に遣わしたのは、これを討つためだったのね」
たぶん、違います。
「デカイな!?」
初夢ゴーントを見上げ、ギャメルはあんぐりと口をあけた。
「はー、でかい! 殴れるかな」
ヨルも驚きながら言った。
あの図体では釘バットだけで何とかなるとは思えない。
周囲で戦う冒険者に、回復やサポートをしたほうが良さそうだ。
コハクは、都庁の屋上にいた。
エルナ、ユークリア、キーゼも一緒だ。
眼下には初夢ゴーント。
「なんといいますか……こう全部詰め合わせれば縁起MAXみたいな。
発想がヤバいですねこれ。まさに悪夢」
キーゼが畏怖と呆れを同時に吐露した。
コハクは、煙草を咥えたまま不敵に笑う。
「有象無象の雑魚さ」
なんでもないように呟いて、そのまま煙草を握りつぶす。
赤い瞳を不気味な程に輝かせて。
「そんじゃいくぞ、お前ら!!」
コハクは一気に飛び降り、ゴーントへ攻撃を開始した。
エルナとユークリアも、それに続いた。
●危機
冒険者たちは、勇ましく各々初夢ゴーントに突撃していった。
だが、あまりに相手は強大だった。
おまけに初夢魔たちも群がってきて、邪魔をする。
劣勢だといわざるを得ない戦況だった。
だからといって退却はできない。
放置すれば、レイウェストだけでなく大勢の牙なき人々が犠牲となる。
それを見過ごせるのか?
「断じて、否!」
レイは力強く、鼓舞するように声を張り上げた。
私は、いや、俺達は負けない。
「いくぞ!!」
雷光をの刃をふるい、邪魔になる初夢魔を薙ぎ払う。
レイの勇ましさは買っている。
だが、レヴァーレには状況の悪さが、わかっていた。
戦ううちに、自分がどのような能力を得たのかも、わかっていた。
(ここが、命の使いどころか……?)
内心、悲壮な覚悟を決める。
「どうしたっすか?」
「どうした、レヴァーレ」
カルミーとギャメルが、異様な雰囲気を感じ取り声をかけた。
「あとは、たのむ……!」
止める間もなく、レヴァーレは最前線へと躍り出た。
その後ろ姿を見て、冒険者たちはすべてを悟った。
生命力の炎が燃える音がする。
レヴァーレはすべての力を両手に収束させた。
「や、やめろー! こういうのは効かないって相場が決まってるんだ!」
誰かの声がする。
だが、やらなければならないんだ。
命と引き換えの極太ビームが、なんか、出た。
結論から言うと、渾身の一撃は届かなかった。
ただ、大半の初夢魔を屠り、ゴーントへの道筋を遺したのだった。
●総攻撃
涙を振り払い、フリューは歌い、踊った。
レヴァーレの犠牲は無駄にはできない。
だが、今の自分に、直接敵を葬る攻撃力はない。
せめて、心の底から湧き上がる、歌と踊りを。
「さぁ踊れや踊れ。歌えや歌え。我が鈴の音は宴の始まり。
我が歌は祝福の奏でなり!」
どこからともなく、鈴の音が流れて来る。
おめでたいお囃子の音がそれに加わった。
心浮きたつような楽しさが、オーラとなって広がる。
それは仲間に伝播して、力を増し、傷を癒した。
倒れたはずのレヴァーレが、立ち上がった。
「ああ……そうだ! まだまだやれる!」
再び両手に炎がともる。復活早いね、君。
レイの腕に強く力がこもった。空気が変わったのを感じる。
「守るべき人々のために!!」
一際まばゆい雷光が長刀に宿る。
振るえば、それは大きく伸びて、初夢ゴーントに届いた。
「こいつを食らえ!」
ギャメルは羽扇を振るった。
黒いオーラをまとった羽矢が飛び出し、ゴーントに刺さった。
『ユメオチトカ……キイテナイ……ワタシハイッタイ……』
初夢ゴーントは、なんだか落ち込んでいるようだった。
攻撃の手も、少しは緩まりそうだった。
ミツキはその力を余すところなく受け取った。
言葉が胸の奥からせり上がるのを感じる。
「六道天上護法・金毘羅童子!!」
意味合いはまったく自分でもわからなかった。
が、背中の円光は一際強く輝きを放ち、初夢ゴーントをうがった。
カルミーは漲る力を感じた。
「なんとかなるはずっす、あたしを信じるっすあたし!」
信じる力は、羽根と羽子板を巨大化させた。
「やーっ!!」
渾身のスマッシュが、決まった。
同時になぜか墨で×印が、ゴーントの顔面にくっついた。
今が勝機だ。
スィーリーンは奥の手を出すことにした。
「聖なる光よ、悪夢紡ぐ敵を射貫きなさい!」
杖の宝石が輝き、弓へと変形する。
魔法の力が収束し、巨大な光の矢と化してゴーントへと突き立った。
イネスも、一番豪華な破魔矢をつがえた。
あなたを倒して、私は森に帰る……!(※帰れません)
迫真のお正月パワーを纏った、必殺の一撃。
初夢ゴーントは大きくうめきをあげた。
ニールの弓が、一段と強く、黒く青く、焔をあげる。
となりには狼のウォクス。大鼬のフォニと栗鼠のレストもいる。
いこう。
そう、語りかけられているのが、わかった。
「そうだね、行こう」
こんな風に三匹と戦ったことなどなかった。
だが、今だけは、それが出来そうな気がする。
三匹は光を発し、ニールの矢とともにゴーントに突撃した。
闇と血の気配に沈むサマエラにも、陽の気は届いていた。
とてつもなく、何かに祝福されている気がする。
亡くなった母がいた。見たこともないはずの父がいた。
旅の途中で出会った人々がいた。
おめでとう。おめでとう。遅くなりましたけど、お誕生日おめでとう。
わけのわからぬ肯定感が己を満たす。
サマエラは歓喜の涙とともに、ゴーントへ斬撃を放った。
呪わしい外見の刃から放たれるそれは、なぜか輝かしかった。
アーシェルの耳にも、お囃子が届く。
敵を屠る時とは違う、何かが、飢えを満たす気がした。
遠い昔に失った家族が、笑って祝う気配がする。
夢幻の類とわかっていたが、どういうわけか、不快ではなかった。
おめでとう。おめでとう。少し早いですが、お誕生日おめでとう。
アーシェルは不敵に笑い、渾身の一撃をゴーントにくらわせた。
「燃やし尽くしてやるよ、跡形も無くなぁ!」
刀身を包んだ焔は、どこか暖かかった。
ヨルは、困っていた。
結構善戦していると思うのだが、手が足りない。
よく知る仲間がこの場にいれば。
(いや、なんかソレ、できそうな気もするな)
お囃子を聞くうち、なんとなくそんな気になった。
『今、あなたの心に話しかけています――』
ヨルが呼びかけると、思惑どおりにイマジナリ仲間が召喚された。
どういうわけか、どいつもこいつも頭蓋骨を被っている。
そんなに、自分は頭蓋骨を仲間に被せたかったのか。
ヨルはあまり深く考えないことにした。
「今です!!」
キーゼが祈り(らしきもの)を送った。
目にもとまらぬ超高速抜刀術。
パワーアップしたコハクの放った斬撃だ。
群がる初夢魔ごとゴーントは痛打を浴びせられ、うめいた。
あたりの空気はプラズマ化し、彼女の瞳のように輝く。
なお、あんまり科学的に正しくはない。
あれだ、すべてプラズマで解説できる的なニュアンスだと思ってほしい。
キーゼの祈りを受けて、ユークリアは二段階目の変身をとげた。
なぜか、エルナも一緒に。
運営さんに怒られない程度のお色気バンクシーンが流れる。
もちろん二人そろってのキメポーズも忘れない。
「援護射撃は任せて下さい!」
ユークリアが叫ぶ。
大量にステルス機が召喚され、次々ゴーントに突っ込んでいった。
対空ミサイルも大量召喚だ。
「ポチっとな☆」
トシがばれるぅ。
まあ、このツッコミする地の文のトシもばれるんですが。
だいばくはつ。援護射撃とはいったい。
「もう一曲いきます!」
エルナが歌った。
背中の翼は二段階変身によって六枚に増えている。
たのむ、もうこれ以上ヤバいものは召喚しないでくれ。
よって詳しい描写は避ける。なんかすごい鼠とか出てきたらしいよ。
キーゼの祈りは、なぜかアルフレッドも巻き込んでいた。
ほんのりえっちなバンクシーンがきっちり流れる。
幼女は少女になり、チェーンソーは二つになっていた。
ついでに、恥も外聞もなくなっていた。
「私をこのような姿にした悪の首領は打ちのめさなければならぬ!
今、必殺の! エターナルドリームダブルチェーンソードリル!!」
ドリルなのかチェーンソーなのか不明な技が、ゴーントをえぐった。
フリューが叫んだ。
「四方に輝け今朝の空――ふりゅーちゃんびーむ!!」
アンタ、攻撃力なかったのと違うのかい。
●悪夢の崩壊
誰の攻撃がとどめになったのか、もはやわからない。
あるいは皆の攻撃が相乗効果を生んだのやも知れなかった。
びしり。
そんな音がして、初夢ゴーントの身体に大きく亀裂が入った。
『ア、ア、ア――!!』
それは、断末魔の叫びだったのだろうか。
『アケマシテオメデトウゴザイマス、オソクナッテスミマセン……』
どこか切なげな音を残し、初夢ゴーントは砕けていった。
別にその破片が東京を壊滅させたりはしないので、安心してほしい。
ここに異界からの侵蝕は潰え、悪夢は完全に取り除かれた。
●目覚めた皇子
夢からもどれば、ミスターHが出迎えた。
「皆様、首尾よくいったようですね。お疲れ様でした」
きらり、眼鏡が光った。
そして、レイウェストが目を覚ましていた。
顔色はまだ戻っていないが、少し笑顔も見える。
「事情はミスターHから聞いた。世話をかけたな」
しっかと見つめられながら声をかけられ、アーシェルはじんときた。
報われた。
少ない言葉だけで、そう思わせてくれる、このカリスマ。
やはり、帝国を継ぐのは、この方しかいない。
「スィーリーン殿。この度の貴方のご尽力、忘れませぬ」
この場にいなかったはずのエフレムがスィーリーンへ言った。
(なななな、なぜ、エフレム様がここに!?
ああ、こんな寝起きの姿なのに! ああ、でも、でも……!!)
スィーリーンは天にも昇る気持ちだった。
表に出れば、クリーパーどもは跡形もなく消えていた。
「あんたたちのおかげだよ!」
「助かった! 一時は世界の終わりかと思ったよ……!」
「お前さんたちは、大陸を救った勇者だ!!」
ギルドには沢山の人々がつめかけ、冒険者たちを褒めたたえていた。
本当に、本当にありがとうございました。
●新年の朝
…………。
なんだか変な夢をみた。
なんだっけ。クリーパーと戦って。
夢の中なのに、さらに夢の中に潜ったような。
見知った顔がいたような気もするし、見知らぬ者だらけだった気も。
嫌な夢だった気もするし、楽しかった気もする。
そうだ、この変な夢のことを、知り合いに話してみようか。
もしかして、同じような夢を見ていたりして――?
枕元には、昨晩受け取った、ギルドからの小遣いが入った袋があった。
そして、その原因が潜むのは帝国皇子の見る夢の中。
そんな状況にアーシェル・G・クラインは黙っていられなかった。
「わけのわかんねぇゴーントなんぞに、殿下を殺されてたまるかよ」
レイウェストに仕え、帝国を守るのは彼と彼の兄が抱いた夢だったのだ。
スィーリーンも、気を揉んだ一人だ。
「殿下……なんてお労しい。
エフレム様もさぞ心配されている事でしょう。
ええ、そうに違いありません。
エフレム様の為にも、見事殿下を救い出してみせましょう!」
若干、というかかなり、他の方向を向いている気もしないでもない。
だが、レイウェストのことを気にかけているのは嘘ではない。
ギャメルは、そこまで悲壮ではないが、それでも心配そうだ。
クリーパーとさして変わらぬ化け物に、悪夢を見させられるなんて。
(大変そうだな……)
「ドリームダイブ? 上等だ。どうやったらできる?」
アーシェルが躊躇もせずに、ミスターHに詰め寄った。
「殿下の事を思いながら、眠りにつけばよろしいのですよ。
焦りは禁物です。リラックスしなければ、眠れませんからね。
ギルドに頼んで、ハーブティなど用意させておりますよ。
それでも間に合わないようであれば、眠り薬なども、ね」
そつのない男である。
●夢の中の街
夢の中というのは、想像もしないことが起きるものだ。
だが、このような光景を予想できた冒険者がいただろうか。
巨大な石の柱が立ち並ぶ。
いや、窓らしきものがある。あれらは建物なのか?
ならば、ここは街なのだろうか。
ミスターHがこの場にいれば、その街の名を教えてくれただろう。
新宿。
「何なんだこれは! どうすればいいんだ?!」
レヴァーレ・クアルムは、叫んだ。
どうあがいても、しょせん夢オチコメディイベシナよ。
突然、鬼畜難易度の音ゲーが始まったりはしない。
マルチバッドエンドでもないし、東京タワーに竜は刺さらない。
たぶん。
「ここが夢の世界! 凄い!」
エルナ・クルプファルツは肯定的な感想を抱いたようだ。
「……不思議な建物が沢山ありますね」
スィーリーンもレイウェストの夢だからか、そう悪い印象はないらしい。
「変わった街だよね。おっと、これは食べ物かな……」
ヨル・スレイマンは店先の食品サンプルに興味深々だ。
●見慣れぬ姿
夢の中の風景よりも、自身に起きた異変に驚愕する者もいた。
アルフレッド・ラ・ギが、その筆頭だ。
彼は、決して自分の容姿を鼻にかけているわけではない。
が、結構気に入ってはいた。それなのに。
「な、なんだこれは……!?」
幼女だった。
くり返すが、幼女だった。
しかもフリル満載のスタイルである。
ミスターHなら「それはサブカルの魔法少女ですね」と言っただろう。
それも、どういうわけか、妙ちきりんな鋸を持っている。
「な、なぜこんな……私が見世物のような姿で……!」
なぜもなにも、全ては中の人のせいである。
だが、アルフレッドがそんな事を知るよしもない。
「こっ、これがゴーントのすることか! おのれゴーント!」
とんだ、とばっちりである。
怒りに燃えるアルフレッドは、ゴーントを探すため、走り去っていった。
とても綺麗な衣装だから、そんなに怒らなくてもいいのに。
と、スィーリーンは後ろ姿のチュールリボンを見送りながら思った。
よく見れば、彼女の衣装も、びっくりするくらい綺麗だ。
見たこともないフワフワした素材で、キラキラと輝くドレス。
手にした杖も、宝石がふんだんにあしらわれている。
もし現実の店先で見かけたら、所持金に構わず買ってしまいそう。
殿下のことがなかったら、きっと、もっと楽しめたのに。
負けず劣らず、フワフワ、キラキラな衣装の者が、さらに二人いた。
エルナとユークリア・フィナンシェである。
エルナはセイレーンを模した純白の衣装。
いつかの鎮魂祭で着た覚えがある服だが、翼は本物だ。夢だからね。
ユークリアは、それとは対照的な黒と青を基調とした衣装だ。
エルナと二人で並び立つと、実に絵になる。
彼女らの横に物々しい武装で立つのはコハクだ。
佩いた大太刀は東方風というより、むしろ未来的。
どこか機械的な大仕掛けを感じさせるものだった。
ふかした煙草と黒い服、赤いマフラーに嫌味なく似合う。
身長はぐっと高くなり、白髪赤眼になっていた。
「やれやれ、悪夢を見るのは現実だけで結構なんですが……。
皆さま、無理のないように」
神父のような外見のキーゼがエルナ、ユークリア、コハクに声をかけた。
容貌がかわっても、知り合いにはコハクだと認識できる。
それが不思議といえば不思議だった。
ミツキ・アインホルンは戸惑っていた。
奇妙な恰好というわけではないのだが、普段の自分とは真逆なのだ。
騎士のような重厚な鎧と大剣。
後光のようなものが奇妙といえばそうか。
そういえばミスターHが言っていた。
夢の中では姿が変わることがあると。
そして、それは自分の願望を反映することが多いとも。
(心のどこかで前衛になりたかったのかしらね)
でも、あんまりそれを真に受けると、アルフレッドが気の毒だぞ。
アーシェルの姿は、この世界でいう警察官のものだった。
だが、彼の知識にそれはない。
頭の中もレイウェストとクリーパーの事でいっぱいだった。
ただ、帝国軍の支給服にも似ていて、わりあい動きやすいのは有難い。
元凶を探しに駆け回るにも、都合がいいだろう。
彼はいち早く、見慣れぬ街へ飛び出していった。
どこか不気味な姿に変貌したものもいた。
サマエラ=フォリウムである。
闇のように暗いローブで全身を覆い、顔も窺えない。
(これは……この姿は……私は……)
ぼんやりと、力なく引き摺る剣は赤黒く。固まった血のようだ。
彼女は何かに導かれるように、裏路地へと消えていった。
レヴァーレは、街の異様さだけでなく、さらに自分の姿にも驚愕した。
顔まで覆う全身甲冑のような姿。
その黒い表面は影や炎の様に揺らめいて見える。
ながめていれば、不思議とみなぎる力を感じた。
驚きはしたが、何とかやれるような気がした。
シャルガネを思わせる装いの者も多い。まあ、正月のイベントだしね。
ニール・ロブラリアはビルの屋上に立っていた。
強風にあおられ、長い陣羽織がなびく。
手には黒炎と蒼炎の絡む半透明の弓。
「……ちゅうに」
別に小声にならなくてもいいのだ。
地の文をやってる人は、たいてい心にソイツを飼っている。
中の人にも、そういう人は沢山いる。(※個人差があります)
PBWっていうのは、そういう遊びだ。(※個人の感想です)
ヨルは被った頭蓋骨はそのままに、黒地に金柄の袴姿だった。
なぜか武器は釘バット。
「なんだこの格好? まあ、華があるのは悪くないか」
なかなか様になっている。
「私はレイ=レーベンス=レックフォード。よろしく頼む」
黒い和服に長刀を構えたレイは、同じような和装の冒険者に声をかけた。
着慣れぬ恰好に戸惑いがないとは言わない。
だが、やるべきことは、いつもと変わらないはずだ。
「ええ。よろしく。私はイネス・エレディアよ」
巫女服に身を包んだイネスが応じた。
「よろしくな!」
ギャメルが宙に浮きながら言った。
彼は天狗のような衣装になっている。
背中には小さな黒い翼が生えていた。
「もー、これでどう戦えっていうんすか!」
カルミーは鮮やかな黄と赤の振り袖姿だ。
厚底草履のうえに、武装もなぜか羽子板と羽根だけ。
「だいじょぶ! 夢の中なら気持ちの持ちようさぁ!」
フリューリングスルフト=ティエラが陽気に言った。
おかめの面を斜めに頭に被り、手には神楽鈴と金色の扇。
千早を纏い、膝上丈の緑の袴を履き、白い足はわざと魅せ。
羽飾り付きの草履は動くたびに、しゃんしゃん鳴った。
なかなか歌舞いた格好である。
「夢の中で悪さしよるのは誰さぁ?」
歌うように言って、フリューが扇を天高くかざした。
●初夢魔たち
別にフリューの口上に誘われたのではなく、たまたまなのだろう。
ふと、街角から、茄子が顔を出した。
いや、顔はないのだが。
ロスガリア大陸に溢れかえった茄子型クリーパーとそっくりだった。
「出たな!」
ヨルが釘バットで茄子をホームランよろしく吹っ飛ばした。
「ほいさ!」
カルミーが、それを羽子板で打ち返す。
なるほど、夢だと思えばなんとかなるものだ。
それを最初に、どこから湧いたか、街角には次々夢魔があふれた。
大陸にもいた茄子と鷹。
歩く鳥居。カエルの楽隊。うごめく粗大ゴミ。
おめでたいものから、別にそうでもないものまで。
パレードのごとく、交差点へと殺到する。
さあ戦闘だ!
エルナの武器は声と歌だ。
ドーン! と言えば敵は爆発!
スパッ! そう言えば敵は真っ二つだ!
「……聞いてください、シューティングスター!!」
歌えば、星が落ちてきた。
あと、なんか名状しがたきピンクの悪魔まで湧いてきた。
具体的に描写するのは、やめておこう。
つるつるした巨大なものが、何かを吸い込んでいるかのような音。
このくらいの描写ならば、地の文に文句をつけられはしない。
いや、そんな! 最強の法務部が! 窓に! 窓に!
なお、減った正気度を回復させるには、ファンレターが有効です。
リャマポイントも貰えるよ。
ユークリアも負けじと、ミニガンを召還して構えた。
ミニガンってなんだ。でもユークリアにはそれが理解できた。
「いきます!」
轟音とともに銃弾がバラまかれ、初夢魔は蜂の巣になった。
「祈りを送ります!」
キーゼが十字架をかかげ、祈りをささげる(フリをする)。
ユークリアは勇気凛々。
「ヒャッハァァ! これが私のドリームパワーです――!!」
ドリームパワーってなんだろう。
銃身で吹っ飛ばされた初夢魔はビルの壁面にたたきつけられた。
その夢魔は、地面に墜ちる前に、コハクの大太刀に切り捨てられた。
「私は空の敵を掃討するから、地上は任せるわ」
イネスが、正月飾りのついた破魔矢を次々鷹夢魔に打ち込んでいく。
「オレも、加勢するぜ!」
せっかく飛べるのだ。
ギャメルは空中から羽扇を振るい、応戦した。
カルミーも羽根を羽子板で打ち、鷹夢魔を撃墜した。
ノックス・マグナも地上から次々弓をひいた。
「鷹狩りと洒落込もう」
ビルの屋上からニールも鷹夢魔を狙う。
矢をつがえる動作も見えぬほどの速射。
逃げようとする者を一匹たりと逃さぬ眼。
「――特別サービス」
ひときわ大きな鷹夢魔に二本の矢が突き立った。
空からの攻撃が減れば、だいぶん地上での戦いは運びやすくなった。
「倒すべきを、倒す――いくぞ!!」
レイがバチバチと雷光を纏わせた刃で敵を薙ぎ払い、前に進む。
「この姿じゃ魔法は使えないみたいだけど……」
レヴァーレは戸惑いながらも、拳を手近な夢魔に叩き込んでみた。
拳は唸りをあげて光り輝き、夢魔は吹っ飛んでいった。
いけそうだ。
「肉弾戦ができるのか。ならまあ、ここでのやり方で臨むだけだな!」
レヴァーレの様子を見て、接近戦に慣れぬミツキも勇気づけられた。
「えいっ!!」
思い切って斬りつければ、茄子夢魔はあっさりと真っ二つになった。
その様は、本物の茄子そっくりで、なんだか勿体ない気もする。
「この茄子、そのままスープに入れようかしら」
中の人の陰謀によって幼女と化したアルフレッドは荒れ狂っていた。
「チェーンソーパンチ! チェーンソーキック!
チェーンソー頭突き! チェーンソーおのれおのれ!」
チェーンソーがゲシュタルト崩壊を起こしそうな勢いである。
まったく訳がわからないうちに、初夢魔は次々打ち倒されていった。
サマエラは、夢魔の群れも気にならぬ様子で、徘徊していた。
敵と接触するや否や、すり抜けるようにいつの間にか斬り捨てる。
その様は、敵と戦うというより、邪魔なものを退かしている。
そんな風情だった。
(なんだ? ずいぶんフラフラしてるな?)
そのわりには敵におくれをとる様子はない。
そんな奇妙なサマエラの姿をみとめて、アーシェルはフォローに入った。
庇ってやる必要があるかは不明だが、死角の敵を霊撃で撃退する。
「おい! しっかりしろ。とりあえず、あんまり離れるな!」
聞いてか、聞かずか、サマエラはぼんやりと、うなずいた。
●初夢ゴーント
冒険者たちの勢いは、すさまじいものだった。
ロスガリア大陸でクリーパー対策をしていた時よりも、激しい。
ただ、初夢魔もおなじくらい凄まじい勢いで湧いて出る。
「キリがないな。こういう時は親玉を殴るべきか?」
夢魔の体液で、すでに釘バットは物凄い色に染まっている。
ヨルはため息をつきながら、あたりを見回した。
だが、その親玉が見つからない。
その時である。
ずもももも……。
いまいち緊張感のない重低音がそこら中に響き渡った。
何事かと、音のする方を見やれば。
そこらで一番高い塔のすぐわきに。
同じぐらいの高さにそびえる山があった。
ロスガリア大陸の海の向こうに見えていたクリーパーによく似ている。
だが、さすがにそこまで大きくはない。
そのかわり茄子やら鷹やらが絡み合った、酷く冒涜的な姿をしている。
そいつは、別にいきなり現れたわけではない。
なぜだか、冒険者たちには、それがわかった。
見えなかっただけで、そいつはずっとそこに、鎮座ましましていたのだ。
どうみたって、こいつがミスターHのいうゴーントに決まっている。
イネスは戦慄した。
「これがクリーパー大量発生の原因……。
ハイアルヴが私をこの地に遣わしたのは、これを討つためだったのね」
たぶん、違います。
「デカイな!?」
初夢ゴーントを見上げ、ギャメルはあんぐりと口をあけた。
「はー、でかい! 殴れるかな」
ヨルも驚きながら言った。
あの図体では釘バットだけで何とかなるとは思えない。
周囲で戦う冒険者に、回復やサポートをしたほうが良さそうだ。
コハクは、都庁の屋上にいた。
エルナ、ユークリア、キーゼも一緒だ。
眼下には初夢ゴーント。
「なんといいますか……こう全部詰め合わせれば縁起MAXみたいな。
発想がヤバいですねこれ。まさに悪夢」
キーゼが畏怖と呆れを同時に吐露した。
コハクは、煙草を咥えたまま不敵に笑う。
「有象無象の雑魚さ」
なんでもないように呟いて、そのまま煙草を握りつぶす。
赤い瞳を不気味な程に輝かせて。
「そんじゃいくぞ、お前ら!!」
コハクは一気に飛び降り、ゴーントへ攻撃を開始した。
エルナとユークリアも、それに続いた。
●危機
冒険者たちは、勇ましく各々初夢ゴーントに突撃していった。
だが、あまりに相手は強大だった。
おまけに初夢魔たちも群がってきて、邪魔をする。
劣勢だといわざるを得ない戦況だった。
だからといって退却はできない。
放置すれば、レイウェストだけでなく大勢の牙なき人々が犠牲となる。
それを見過ごせるのか?
「断じて、否!」
レイは力強く、鼓舞するように声を張り上げた。
私は、いや、俺達は負けない。
「いくぞ!!」
雷光をの刃をふるい、邪魔になる初夢魔を薙ぎ払う。
レイの勇ましさは買っている。
だが、レヴァーレには状況の悪さが、わかっていた。
戦ううちに、自分がどのような能力を得たのかも、わかっていた。
(ここが、命の使いどころか……?)
内心、悲壮な覚悟を決める。
「どうしたっすか?」
「どうした、レヴァーレ」
カルミーとギャメルが、異様な雰囲気を感じ取り声をかけた。
「あとは、たのむ……!」
止める間もなく、レヴァーレは最前線へと躍り出た。
その後ろ姿を見て、冒険者たちはすべてを悟った。
生命力の炎が燃える音がする。
レヴァーレはすべての力を両手に収束させた。
「や、やめろー! こういうのは効かないって相場が決まってるんだ!」
誰かの声がする。
だが、やらなければならないんだ。
命と引き換えの極太ビームが、なんか、出た。
結論から言うと、渾身の一撃は届かなかった。
ただ、大半の初夢魔を屠り、ゴーントへの道筋を遺したのだった。
●総攻撃
涙を振り払い、フリューは歌い、踊った。
レヴァーレの犠牲は無駄にはできない。
だが、今の自分に、直接敵を葬る攻撃力はない。
せめて、心の底から湧き上がる、歌と踊りを。
「さぁ踊れや踊れ。歌えや歌え。我が鈴の音は宴の始まり。
我が歌は祝福の奏でなり!」
どこからともなく、鈴の音が流れて来る。
おめでたいお囃子の音がそれに加わった。
心浮きたつような楽しさが、オーラとなって広がる。
それは仲間に伝播して、力を増し、傷を癒した。
倒れたはずのレヴァーレが、立ち上がった。
「ああ……そうだ! まだまだやれる!」
再び両手に炎がともる。復活早いね、君。
レイの腕に強く力がこもった。空気が変わったのを感じる。
「守るべき人々のために!!」
一際まばゆい雷光が長刀に宿る。
振るえば、それは大きく伸びて、初夢ゴーントに届いた。
「こいつを食らえ!」
ギャメルは羽扇を振るった。
黒いオーラをまとった羽矢が飛び出し、ゴーントに刺さった。
『ユメオチトカ……キイテナイ……ワタシハイッタイ……』
初夢ゴーントは、なんだか落ち込んでいるようだった。
攻撃の手も、少しは緩まりそうだった。
ミツキはその力を余すところなく受け取った。
言葉が胸の奥からせり上がるのを感じる。
「六道天上護法・金毘羅童子!!」
意味合いはまったく自分でもわからなかった。
が、背中の円光は一際強く輝きを放ち、初夢ゴーントをうがった。
カルミーは漲る力を感じた。
「なんとかなるはずっす、あたしを信じるっすあたし!」
信じる力は、羽根と羽子板を巨大化させた。
「やーっ!!」
渾身のスマッシュが、決まった。
同時になぜか墨で×印が、ゴーントの顔面にくっついた。
今が勝機だ。
スィーリーンは奥の手を出すことにした。
「聖なる光よ、悪夢紡ぐ敵を射貫きなさい!」
杖の宝石が輝き、弓へと変形する。
魔法の力が収束し、巨大な光の矢と化してゴーントへと突き立った。
イネスも、一番豪華な破魔矢をつがえた。
あなたを倒して、私は森に帰る……!(※帰れません)
迫真のお正月パワーを纏った、必殺の一撃。
初夢ゴーントは大きくうめきをあげた。
ニールの弓が、一段と強く、黒く青く、焔をあげる。
となりには狼のウォクス。大鼬のフォニと栗鼠のレストもいる。
いこう。
そう、語りかけられているのが、わかった。
「そうだね、行こう」
こんな風に三匹と戦ったことなどなかった。
だが、今だけは、それが出来そうな気がする。
三匹は光を発し、ニールの矢とともにゴーントに突撃した。
闇と血の気配に沈むサマエラにも、陽の気は届いていた。
とてつもなく、何かに祝福されている気がする。
亡くなった母がいた。見たこともないはずの父がいた。
旅の途中で出会った人々がいた。
おめでとう。おめでとう。遅くなりましたけど、お誕生日おめでとう。
わけのわからぬ肯定感が己を満たす。
サマエラは歓喜の涙とともに、ゴーントへ斬撃を放った。
呪わしい外見の刃から放たれるそれは、なぜか輝かしかった。
アーシェルの耳にも、お囃子が届く。
敵を屠る時とは違う、何かが、飢えを満たす気がした。
遠い昔に失った家族が、笑って祝う気配がする。
夢幻の類とわかっていたが、どういうわけか、不快ではなかった。
おめでとう。おめでとう。少し早いですが、お誕生日おめでとう。
アーシェルは不敵に笑い、渾身の一撃をゴーントにくらわせた。
「燃やし尽くしてやるよ、跡形も無くなぁ!」
刀身を包んだ焔は、どこか暖かかった。
ヨルは、困っていた。
結構善戦していると思うのだが、手が足りない。
よく知る仲間がこの場にいれば。
(いや、なんかソレ、できそうな気もするな)
お囃子を聞くうち、なんとなくそんな気になった。
『今、あなたの心に話しかけています――』
ヨルが呼びかけると、思惑どおりにイマジナリ仲間が召喚された。
どういうわけか、どいつもこいつも頭蓋骨を被っている。
そんなに、自分は頭蓋骨を仲間に被せたかったのか。
ヨルはあまり深く考えないことにした。
「今です!!」
キーゼが祈り(らしきもの)を送った。
目にもとまらぬ超高速抜刀術。
パワーアップしたコハクの放った斬撃だ。
群がる初夢魔ごとゴーントは痛打を浴びせられ、うめいた。
あたりの空気はプラズマ化し、彼女の瞳のように輝く。
なお、あんまり科学的に正しくはない。
あれだ、すべてプラズマで解説できる的なニュアンスだと思ってほしい。
キーゼの祈りを受けて、ユークリアは二段階目の変身をとげた。
なぜか、エルナも一緒に。
運営さんに怒られない程度のお色気バンクシーンが流れる。
もちろん二人そろってのキメポーズも忘れない。
「援護射撃は任せて下さい!」
ユークリアが叫ぶ。
大量にステルス機が召喚され、次々ゴーントに突っ込んでいった。
対空ミサイルも大量召喚だ。
「ポチっとな☆」
トシがばれるぅ。
まあ、このツッコミする地の文のトシもばれるんですが。
だいばくはつ。援護射撃とはいったい。
「もう一曲いきます!」
エルナが歌った。
背中の翼は二段階変身によって六枚に増えている。
たのむ、もうこれ以上ヤバいものは召喚しないでくれ。
よって詳しい描写は避ける。なんかすごい鼠とか出てきたらしいよ。
キーゼの祈りは、なぜかアルフレッドも巻き込んでいた。
ほんのりえっちなバンクシーンがきっちり流れる。
幼女は少女になり、チェーンソーは二つになっていた。
ついでに、恥も外聞もなくなっていた。
「私をこのような姿にした悪の首領は打ちのめさなければならぬ!
今、必殺の! エターナルドリームダブルチェーンソードリル!!」
ドリルなのかチェーンソーなのか不明な技が、ゴーントをえぐった。
フリューが叫んだ。
「四方に輝け今朝の空――ふりゅーちゃんびーむ!!」
アンタ、攻撃力なかったのと違うのかい。
●悪夢の崩壊
誰の攻撃がとどめになったのか、もはやわからない。
あるいは皆の攻撃が相乗効果を生んだのやも知れなかった。
びしり。
そんな音がして、初夢ゴーントの身体に大きく亀裂が入った。
『ア、ア、ア――!!』
それは、断末魔の叫びだったのだろうか。
『アケマシテオメデトウゴザイマス、オソクナッテスミマセン……』
どこか切なげな音を残し、初夢ゴーントは砕けていった。
別にその破片が東京を壊滅させたりはしないので、安心してほしい。
ここに異界からの侵蝕は潰え、悪夢は完全に取り除かれた。
●目覚めた皇子
夢からもどれば、ミスターHが出迎えた。
「皆様、首尾よくいったようですね。お疲れ様でした」
きらり、眼鏡が光った。
そして、レイウェストが目を覚ましていた。
顔色はまだ戻っていないが、少し笑顔も見える。
「事情はミスターHから聞いた。世話をかけたな」
しっかと見つめられながら声をかけられ、アーシェルはじんときた。
報われた。
少ない言葉だけで、そう思わせてくれる、このカリスマ。
やはり、帝国を継ぐのは、この方しかいない。
「スィーリーン殿。この度の貴方のご尽力、忘れませぬ」
この場にいなかったはずのエフレムがスィーリーンへ言った。
(なななな、なぜ、エフレム様がここに!?
ああ、こんな寝起きの姿なのに! ああ、でも、でも……!!)
スィーリーンは天にも昇る気持ちだった。
表に出れば、クリーパーどもは跡形もなく消えていた。
「あんたたちのおかげだよ!」
「助かった! 一時は世界の終わりかと思ったよ……!」
「お前さんたちは、大陸を救った勇者だ!!」
ギルドには沢山の人々がつめかけ、冒険者たちを褒めたたえていた。
本当に、本当にありがとうございました。
●新年の朝
…………。
なんだか変な夢をみた。
なんだっけ。クリーパーと戦って。
夢の中なのに、さらに夢の中に潜ったような。
見知った顔がいたような気もするし、見知らぬ者だらけだった気も。
嫌な夢だった気もするし、楽しかった気もする。
そうだ、この変な夢のことを、知り合いに話してみようか。
もしかして、同じような夢を見ていたりして――?
枕元には、昨晩受け取った、ギルドからの小遣いが入った袋があった。
マスターコメント
かなりカオスな初夢になってしまったかと思います。
はじめてのドリームダイブ(夢オチ)いかがでしたでしょうか?
はじめてのイベントシナリオで、かなりどきどきしています。
初笑いとはいかないでしょうが、ちょっとクスッとしてもらえたら望外の喜びです。
野暮なお話を一応しておくと。
今回は夢オチなので、予告どおりルールはユルユル運用です。
他のシナリオでは厳正に精査されるはずなので、ご承知おきください。
イベントシナリオ普通 報酬:標準18 / 4〜25人
2021年01月13日 10時20分28秒 公開
大成功
参加者
相談掲示板
ギャメルだ。みんな、よろしくなー! 夢の中の姿はわりと自由なのか。 夢の姿の雰囲気を誰かと合わせて、共闘とかしてみてぇな。 和風の縁起物か妖怪あたりで考えてるぜ。
フリューって言うんさぁ、よろしくね! んー、共闘ができるんか分からんけど、うちは和風っぽい格好で普段してない支援系でいくつもりさぁ。 絡み歓迎ってしとこうと思うよ!
フリュー、ありがとな! そうだな。オレもざっくりと「絡み歓迎!」みたいなことを書いておくか。
どういたしまして?さぁ♪ 出発まであと少し。 夢ん中では皆よろしくさぁ!