【学乱】パンクリアース学園動乱

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 新学園長の宣戦布告の結果、学園は荒れている。
 王党派教師は貴族派による嫌がらせを受け、貴族派教師の一部も反撃を被っている。

 一方生徒はと言えば大半が右往左往するばかり。その傾向は数で劣る王党派に顕著だ。
 貴族派の生徒や共同体はこの期に何とか王党派の力を削ごうとしている様だが……

(――――世情は、少しずつ一つの潮流に纏まろうとしている)

 その風を、感じ取っている人間は思う以上に多いようだ。
 最近、廊下を歩いていると、とみに遠くからひそひそと話し声が聴こえて来る。

 視線を向けると止まる。だからこそ実際は誰が喋っているのかも分からない。

「――――やっぱり――――家格が――――今度の――――生徒会は――――」

 まただ。話している人間の殆どは貴族で、その会話には同じ単語が混じる。
 “生徒会”――――パンクリアース学園では、殆ど形骸化している筈の生徒の代表。

 そんなものがどうして今更になって話題に上がる様になったのか。
 経緯すら分かっていない者の間でも、当たり前に話題に上がる。生徒だけでなく教師すら。

 情報操作などが行われた痕跡はない。であれば、今の。この動乱の学園に属する。自分の立ち位置に惑った生徒達が自然と求めているのだろう。自分達を導く旗印を。

「ジルワード。入るぞ」

 ノックを三度。応答を待たずに中へ踏み込む。
 学園の最高権力者の片割れに、そんな暴挙が成立する人間がどれほど居るだろう。

 そんな内の一人。『黒の後継』アルベイル・ライゼンナクトは躊躇いを知らない。
 この学園内の風向きの変化を、果たして自らの後ろ盾である人間が把握しているのか。

 その確認は、可及的速やかに行わなければならなかった。

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「生徒会総選挙……ですか。厄介なことをしてくれましたな」

 貴族派の生徒達がこの期に及んでそんな物に着目してきた経緯を把握し。
 パンクリアース学園校長、ジルワードは目元を抑えて黙考する。

 現生徒会は傀儡だ。教師に逆らう様な度胸はなく、卒業まで漫然と過ごすだけ。
 だが学園内で今。生徒、教師共に注目が集まりつつあるとなれば、次は出来レースでは済ませられまい。

 幸い、学園関係者の過半は貴族派で占められている。正攻法でも勝利出来得る範疇ではあるが。

「何だ、不服か。勝てば良い。それだけの話だ」

「……であれば、王党派に対しても。今の様な手緩い動きでは不足となりましょう」

 数の上で優位と、絶対の勝利の間には大きな溝がある。
 報告を聞く限り、王党派の色を学園から排除する動きはあまり上手く行っているとは言い難い。

 いや。より正確に言えば失敗続きだ。旧学園長がいよいよ形振り構わなくなる程に。
 聴講生ぼうけんしゃは、ジルワードの想像を遥かに超えて学園秩序の強力な抑止力として働いている。

「セオドア学園長前学園長は大層お怒りです。このまま舵取りを任せれば決定的な所まで行き着くかと」

「失望させるな、愚物の自爆に巻き込まれる趣味はあるまい」

 当然の様に無理を押し付けるアルベイルに。ジルワードが沈黙で返す。

 いや、強ち生徒会に注目が集まることが悪手とも言い難いか。考えようによってはこうも言える。
 
 例え、貴族派の教師陣がどれほど無様を晒そうとも学園生の代表――――生徒会のメンバーが。
 貴族派に大きく偏ればその時点で、新学園長の理想はまともに果たされる事は無くなるのだと。

「感情に任せて手を打つならば囮にするには丁度良い。上手く使え」

 果たして、この少年が何処まで見越してこんな諸刃の剣を抜いたのかは知れずとも。
 此処から打つ手を誤るわけにはいかない。これまでも、男はそうして生きて来たのだ。

「宜しい。この盤面、指しきってみせましょう」

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 ――――他方、パンクリアース学園、学園長室。

「……なるほど、報告は確かに受け取りました」

 其処には王家に忠誠を誓う貴族達。所謂“王党派”に属す教師達が集まっていた。
 提出されたのは彼らの連名による被害届であり、加害者の貴族派教師の何名かには証拠もある。

 減給なり、訓告処分なりは免れないだろうが、これでも尚更迭までは至るまい。

「貴族派は本気です」「本気で王党派の色をこの学園から排するつもりです」

「このままでは少数派である我々は授業すらまままならなくなるのも時間の問題です」

「――――――――お静かに」

 静かな。一喝と呼ぶには余りに静かな一言で場が静まり返った。
 その声は穏やかであろうとも。何処か根底に他者を圧する凄味のような物が感じられる。

「状況は分かりました。早急に手を打たねばなりません。
 ですが、強硬な反発に対して此方も強硬な態度を示せば、彼我の亀裂は深まるばかり」

 それが――――詭弁である事は分かっている。分かっていて強硬することに忸怩たる想いはある。
 彼らが求めているのは今すぐの解決で。学園長としての権限で大鉈を振るう事は、容易い。

 けれど今、結局貴族を裁けるのはより上位の貴族だけだ。という認識を後押しする愚は冒せない。
 
「どうか今は私に任せては頂けませんか」

 そうは言っても。実際に害を被っている側がそんな“綺麗事”で納得出来る筈もない。
 はっきりと不満の色が浮かべつつも声が上がらないのは、まだしも期待の表れと言えるだろう。

 そもそも現状の発端こそが学園長の強引な就任なのである。これ以上彼らが傷付けられれば求心力は地に落ちる。
 例え不祥事が起きなくとも。そうなれば王党派教師陣が空中分解する事は時間の問題であろう。

 けれど、彼女は確信していた。新たな芽吹きはもうすぐ其処まで来ている事を。
 此処で冒険者の。即ち――――“能力在る庶民”の価値を浸透させる好機を逃すわけにはいかない。

 今が堪え時だ。王党派、貴族派それぞれの教師と生徒がその価値と向き合って始めて。
 この学園はようやく次の段階へ踏み出せるのだから。


執筆:弓月蒼

assignmentパンクリアース学園動乱 概要 特設ページ

【学乱】連動とは、リーンエス王国首都『グランスパーダ』内に存在する巨大教育施設『パンクリアース学園』における権力闘争から端を発し、王国内各地で表面化する王党派貴族と貴族派貴族の対立、 及びこれを利用して王家による支配体制を揺るがす『メドゥの指先』による暗躍を含む一連の事件を指す。
学園内の権力闘争と王国各地の騒動、いずれの結果も王国の未来を左右する物となる。

assignmentここまでの流れ

帝国崩壊により、リーンエス王国は「大陸において最も覇権に近い国」となった。
王国第二王子ウィリアム・リーンエスが帝室の遺児レイウェスト・バルダスを保護したことは正に千載一遇の好機であり、これを受けて王家は帝国再興に助力し国家間での絶対優位を確保することを国家の方針として打ち出す。
しかし、王国が抱える内患は根深く、王家と貴族の足並みの揃わなさは如何ともし難く。けれど時は値千金に勝る。
王家は、入学者推薦枠の独占に始まり様々な点で貴族の特権の象徴と言える『パンクリアース学園』に生まれや育ちによらず冒険者を受け入れる、という形でメスを入れ、悪習の切り崩しを測る。
一方貴族達もまた、このような強硬策を打った王家に対し苛烈なまでの反発を示すは必然であると言えた。
王家と貴族。貴族派と王党派。隠され続けた対立は、彼の地を舞台に遂に表面化を余儀なくされる。

person_pin関連NPC

王家から任命を受けたパンクリアース学園の新学園長であり、『白銀』の異名を持つクラティアス侯爵家の実質的最高権力者である女傑。『白銀』は王国王党派貴族の筆頭である『白薔薇』の分家筋に相当し、男性社会である王国貴族社交界において存在感を示す数少ない女性貴族でもある。

《本連動での動き》

学園内における王党派貴族の指導者として、自らの理念である「人は生まれに依って生きるに非ず」を実践するために教師陣を纏め上げ、庶民、貴族を問わず生徒の思想と学問の自由を守ろうと尽力する。学園職員の半数以上は貴族派貴族の息が掛かっており、順調とは言い難い。

かつては王党派に属し、王家から任命を受けたパンクリアース学園の元学園長。学園内での勤務を続ける内に貴族派貴族による懐柔を受けて転向した。という前歴から、王家に切り捨てられた初老の男。学問に深く精通し能力も高いが、過剰な自負と自尊心がそれを毀損して余り有る。敵としても味方としても面倒な人物。

《本連動での動き》

学園内における貴族派貴族の指導者として積極的に行動。学内の平穏を乱す新学園長と、それを庇護する王党派を学園内から一掃し、パンクリアース学園そのものを王都における貴族支配の拠点することを目的に王党派職員の追い出しと王党派子息の封殺に向けて策謀を巡らす。

学園における実務のトップ。教師の旗印に相当する校長職に就いている中年の男。貴族派貴族ではあるものの、どちらかと言えば穏健派で一定の良識を持った合理主義者。政治的嗅覚の鋭い切れ者で、もしも此度の強硬的人事がなければいずれは学園長になっただろうとされる。旧学園長の抑え役兼、貴族派貴族の参謀役。

《本連動での動き》

学園内における旧学園長セオドアの補佐役として比較的穏健派である貴族派貴族を中心に、一定の勢力を保ちながら状況の趨勢を見守っている。派閥としては旧学園長側ではあるが新学園長との交流も断っておらず、その日和見な姿勢を過激な貴族派貴族には揶揄されつつも、動きは消極的である。

アルベイル・ライゼンナクト

貴族派貴族の筆頭『黒鋼竜』ライゼンナクト公爵家の家督継承候補第一位。同家当主である祖父の意向でパンクリアース学園の1年生として入学を果たした。文武ともに優秀で何事も卒なくこなす秀才肌の人間だが、人間嫌いの厭世家。ジルワードを学園内での後見人としており、貴族派貴族の子息から一目置かれている。

《本連動での動き》

家は貴族派貴族の代表格であるものの、学園内派閥に対して不干渉を貫いている。後見人であるジルワードの顔を立てる為に、学園内では貴族派貴族の子息で成る派閥的な物には属しているものの、彼にとって“下々の者”に相当する同年代の貴族派貴族の主張そのものにあまり興味がない。

menu_book関連用語・情報

パンクリアース学園

王国の貴族や騎士の子息子女が主として学ぶ名門校であり、彼らとの縁故を求めて国内外からの入学者も後を絶たない。平民や他国の者が入学するためには卒業生や寄付を行っている貴族・豪商らの「推薦状」を要することからも、選ばれし者のための学園とも呼ばれる。

パンクリアース学園について

パンクリアース学園施設案内

冒険者が学園生になるには?

本連動において、公認設定を得られているPCの場合、冒険者でも学園生、あるいは元学園生として扱われます。
詳しくは「ワールドガイド:リーンエス王国」の「※パンクリアース学園(2020/09/21更新)」をご確認ください。
今回の【学乱】連動の趨勢次第では、貴族やそれに準じる実力者の推薦無しでの入学が可能になる可能性があります。

聴講生

冒険者ギルドに所属する冒険者は、それが認められているものに限り各種授業や催し物などに参加することが可能です。
学園内に立ち入る冒険者の立場はシナリオに応じて「依頼をうけた冒険者」または「聴講生」となるため、その表明は原則不要です。

王党派

『白薔薇』を筆頭に、王国外縁に位置する家を中心とした、王家を支える貴族たち。あくまで王に臣下としての貴族の役割に徹する者達であり、多くは保守主義者。領地が外敵と接する者が多い所為もあり、人同士の争いは禁忌であると考えている。

貴族派

『黒鋼竜』を筆頭に、貴族原理主義的思想に染まった、王権を拒む貴族たち。あくまで王家の臣下を演じつつ、自らの権利を守ろうとする穏健派と、王家を廃しいずれは自らが王権を奪おうと画策する過激派が入り混じっている。

パンクリアース学園長

パンクリアース学園における「対外的な指導者」であり外交の窓口。学園の風潮、主義、思想の象徴であるとも言え、その任命権は王家に在る。ただし対外的指導者と言うことは軽々しく入れ替え出来ないと言う意味でもあり、前学園長セオドアの解任と新学園長フォルトゥナの就任という此度の強硬的人事は過去を遡っても殆ど例のない、極めて異例な物。

パンクリアース学園校長

パンクリアース学園における「実務のトップ」であり総合経営管理職。学園の屋台骨と言い換えることも出来る、内部的な経営指導者。十分な家格を持ち、かつ能力が確かな教員から選抜される「エリート教員の終着点」。 血統だけでなく実力と成果が求められる分、学園人事にも強い影響力を持つ。

パンクリアース学園生徒会

パンクリアース学園における生徒達の象徴として存在する筈の組織。その実情は、家格と成績によって並べられた生徒の中で上位5名が属する、卒業後の特権的立ち位置を保証する特別評価装置。選挙らしき物も表沙汰にならなくなって久しく、当選者は教師陣による談合により決定される為、殆どの在校生にとって無関係なものと化している。
形骸化する以前の残滓として生徒の自主自律を助ける為の権限なども書類上は残されているが、利用されたことは未だかつてない。

『白薔薇』アルヴァローエン公爵家

リーンエス王国における貴族の筆頭格『二大公家』の一角。白き公爵家。始まりの百家は序列第三位。王家、大オアシスの領主に次ぐ家格を持つ王家の親戚。過去幾度も王家からの降嫁が行われている為、もし王家の次代が絶えた場合、次の王は『白薔薇』から選出される。と言う程に王国の中枢に在る名家中の名家。

『白銀』クラティアス侯爵家

アルヴァローエンの血統で主家に最も近い分家。白銀の侯爵家。白薔薇の系譜としては代表的な”強い”貴族であり、王党派内での発言力も相当な物。現当主の実母であるフォルトゥナは、事実上同家の最高権力保有者であると言える。

『黒鋼竜』ライゼンナクト公爵家

リーンエス王国における貴族の筆頭格『二大公家』の一角。黒き公爵家。始まりの百家に含まれない元オアシスの一領主が、商才を駆使して成り上がった物。『白薔薇』の様に古式ゆかしい確かな血統ではないが、情報戦と経済戦に極めて強く、対立する家を不祥事の暴露と多額の貸付金で傘下に治め続ける王国経済界の覇王。

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