『天秤の抱擁』にて真贋試しを盛り上げよう
岩岡志摩
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シナリオID:3442
オープニング
●天秤の抱擁
ディオール伯爵家の領地はリーンエス王国東方に存在する。
ディオール伯爵領は産出物には乏しいものの、その領都『グラン・ディオ』はエラトゥーン都市同盟との交通の要衝でもあることを活かし、商業の街として栄えている。
その『グラン・ディオ』では夏の部、冬の部と2度にわたり商大祭『天秤の抱擁(マルシェ・ドゥ・エキリブル)』が開催され、街の名物となっている。
そして冬の部を開催するにあたり、催し物の1つとして今回あるイベントも行われることになった。
イベントを企画した人物の名はヴィルジール・L・ディオール。
ディオール伯爵家の長男。次期当主にしてディオール家が直轄運営する『リベラ商会』を仕切る若旦那でもある。
――その笑顔の裏で、冷徹さを隠している。
――人の感情を理解できないわけではないが、秤に賭けたうえで利こそを優先する。
そのような話も囁かれるヴィルジールが今回用意したイベントの名は、『真贋試し(エッセイ・デ・ヌテシォン)』。
簡単に言うと同じような品を2つ用意し、どちらが優れたものかを見極めるイベントになる。
例えば似たような料理の食べ比べや、同じように見えるワインの飲み比べ。
同じ楽器を使っているように見える演奏の聞き分け。
そして見た目が同じのように見える絵画の見分けなど。
――商業に携わる人間にとって、最も必要なものは真贋を見極めることのできる才能です。
――商人は新しいもの、未知なるものに触れる機会が多く、その価値を正しく見極めるためには本物と偽物に触れる機会があってもいいのではないでしょうか?
ヴィルジールは真贋試しの意義をそのように強調する。
「人の持つ才。築き上げた信。費やされる時。ありとあらゆる価値が財であり秤にかけるに相応しいのです」
その後ヴィルジールやリベラ商会によって根回しや必要な手続きが行われ、真贋試しは冬の部における催し物の1つとなった。
最初が肝心だと考えたヴィルジールは、冒険者ギルド支部に使者を派遣してある依頼を出す。
「今回催されるイベントを盛り上げるため、冒険者達を派遣してほしいのです」
使者を介してヴィルジールが冒険者達に求めた役割は、イベントに参戦する人や司会進行、各品の提供役など幅広いものだった。
――様々な出自やスキルを持つ冒険者達なら、今回催される真贋試しをそれぞれのやり方で盛り上げてくれるはず。
応対した冒険者ギルド支部職員アルヒ・ラスカスに対し、使者はそのような期待を口にする。
そうした事情から、今回使者は相場よりも多めの報酬を提示していた。
「できる範囲で構いません。足りない人員はリベラ商会のほうで補います」
また冒険者達から見極めの品を変えたいと希望があれば、全てではないがある程度変更することもできると使者は語る。
例えば今回の場合、見極めに使用される飲み物はいずれもワインだが、これを茶など別の飲み物に変更して見極めを行うこともできるようだ。
それ以外にも冒険者達から意見があれば、イベントを盛り上げるために必要なものと判断できるものなら応じる用意があると使者は請け負った。
その後も使者とアルヒはやり取りを重ね、アルヒは商大祭『天秤の抱擁(マルシェ・ドゥ・エキリブル)』のイベントに協力する依頼を冒険者達に斡旋していく。
●やること
今回皆様は、リーンエス王国ディオール伯爵領の領都『グラン・ディオ』で開催される商大祭『天秤の抱擁(マルシェ・ドゥ・エキリブル)』への協力要請に応じ、現地に向かいました。
依頼人にあたるディオール伯爵家次期当主ヴィルジール・L・ディオールは、自身が用意したイベント『真贋試し(エッセイ・デ・ヌテシォン)』への参戦者、司会進行や提供役など様々な役割を冒険者に期待しています。
皆様はその中から自身の役割を選び、真贋試しというイベントを盛り上げて下さるようお願いいたします。
真贋試しの内容ですが、広場に設けられた舞台の上で用意された品2つの内、どちらが優れているのかを見極めるというものです。
見極める対象として牛肉のステーキやワイン(赤と白)、同じような見た目の楽器や絵画など5種類が用意されています。
用意されるものはそれぞれAとBという仮称がつけられ、参戦する皆様にはAとBを示す札が渡されているので、正解だと思う札を掲げる形で自身の答えを示すことができます。
提供役の方は、楽器を聞き比べる際に演奏手として演奏スキルで様々な音色を響かせることで、場を盛り上げることもできます。
また提供役として、それぞれの牛肉を用いて作成した手料理を見極めの品として提供することもできます。
同様に提供役として故郷や実家領地の名産品を見極めの品として提供したいという場合も、既に用意された5種類の品すべてを変更することはできませんが、その方が盛り上がると思われる品につきましてはリブラ商会も差し替えを検討します。
このイベントでは優れたものを見極めることができなかった人、不正解だった人は様々な形で待遇が変化します。
例えば舞台上で皆様が座る椅子ですが、不正解だった人の椅子は不正解を重ねるに従いだんだん貧相になっていきます。
そして参戦者の外見も、不正解の数に応じて様々なものが加えられていきます。
参戦者様に相応の才能があれば全問正解も可能ですが、不正解であっても段々と待遇が悪くなる様子を見せることで、周囲にいる観客を沸かせるという盛り上げ方もできます。
司会進行役の人は、全体の流れを把握しながら話術や演説などのスキルを駆使して、真贋試しを盛り上げることが求められます。
真贋試し自体はリブラ商会が進行を担いますが、役割に拘らず人手が足りないところがあれば助けに行くなど、様々なやり方で盛り上げることができます。
皆様のできる形で『天秤の抱擁(マルシェ・ドゥ・エキリブル)』の新イベントを盛り上げて下さるようお願いいたします。
●真贋試しで用意されるもの
1:赤ワイン2本。
Aは深みのある色合い。口当たりがよく酸味も感じられる。
Bはワインレッドでやや透明の色。味は力強く濃いが雑味もある。
2:白ワイン2本。
Aは薄いレモンのような色みがかった透明の色。果実の味がストレートに伝わってくる。
Bは黄金色をしている。複雑な味ながらとても滑らかな口当たり。
3:牛肉のステーキ2皿分(料理内容は変更可能)。
Aはゆっくり噛めば柔らかい。口の中でほどける脂はくどさが感じられる。
Bは口に入れた瞬間、ほろほろと溶ける。クセも脂っぽさもない素直な味。
4:弦楽器2つ。領都『グラン・ディオ』の技術者集団が同じ材料をもとに製作した。
Aは演奏すると、低音が豊かに出て遠くまでよく響く。
Bは演奏すると、萎えたような柔らかい音色が響く。近くで聞くと耳障りは良い。
5:油絵の絵画2点。同じ絵だが優れた方はかなり前に描かれたもので、もう片方は贋作。
Aは年季が入った色合い。シートの裏は油分が滲んでいる。
Bは色鮮やかで塗られた絵の具は生き生きとしている。シートの裏面はきれい。
見極めに使えそうなスキルとしては看破、洞察、調理、演奏、絵画、超嗅覚、超聴覚、超味覚など様々だが、他のスキルも使い方次第で威力を発揮するかもしれない。
ディオール伯爵家の領地はリーンエス王国東方に存在する。
ディオール伯爵領は産出物には乏しいものの、その領都『グラン・ディオ』はエラトゥーン都市同盟との交通の要衝でもあることを活かし、商業の街として栄えている。
その『グラン・ディオ』では夏の部、冬の部と2度にわたり商大祭『天秤の抱擁(マルシェ・ドゥ・エキリブル)』が開催され、街の名物となっている。
そして冬の部を開催するにあたり、催し物の1つとして今回あるイベントも行われることになった。
イベントを企画した人物の名はヴィルジール・L・ディオール。
ディオール伯爵家の長男。次期当主にしてディオール家が直轄運営する『リベラ商会』を仕切る若旦那でもある。
――その笑顔の裏で、冷徹さを隠している。
――人の感情を理解できないわけではないが、秤に賭けたうえで利こそを優先する。
そのような話も囁かれるヴィルジールが今回用意したイベントの名は、『真贋試し(エッセイ・デ・ヌテシォン)』。
簡単に言うと同じような品を2つ用意し、どちらが優れたものかを見極めるイベントになる。
例えば似たような料理の食べ比べや、同じように見えるワインの飲み比べ。
同じ楽器を使っているように見える演奏の聞き分け。
そして見た目が同じのように見える絵画の見分けなど。
――商業に携わる人間にとって、最も必要なものは真贋を見極めることのできる才能です。
――商人は新しいもの、未知なるものに触れる機会が多く、その価値を正しく見極めるためには本物と偽物に触れる機会があってもいいのではないでしょうか?
ヴィルジールは真贋試しの意義をそのように強調する。
「人の持つ才。築き上げた信。費やされる時。ありとあらゆる価値が財であり秤にかけるに相応しいのです」
その後ヴィルジールやリベラ商会によって根回しや必要な手続きが行われ、真贋試しは冬の部における催し物の1つとなった。
最初が肝心だと考えたヴィルジールは、冒険者ギルド支部に使者を派遣してある依頼を出す。
「今回催されるイベントを盛り上げるため、冒険者達を派遣してほしいのです」
使者を介してヴィルジールが冒険者達に求めた役割は、イベントに参戦する人や司会進行、各品の提供役など幅広いものだった。
――様々な出自やスキルを持つ冒険者達なら、今回催される真贋試しをそれぞれのやり方で盛り上げてくれるはず。
応対した冒険者ギルド支部職員アルヒ・ラスカスに対し、使者はそのような期待を口にする。
そうした事情から、今回使者は相場よりも多めの報酬を提示していた。
「できる範囲で構いません。足りない人員はリベラ商会のほうで補います」
また冒険者達から見極めの品を変えたいと希望があれば、全てではないがある程度変更することもできると使者は語る。
例えば今回の場合、見極めに使用される飲み物はいずれもワインだが、これを茶など別の飲み物に変更して見極めを行うこともできるようだ。
それ以外にも冒険者達から意見があれば、イベントを盛り上げるために必要なものと判断できるものなら応じる用意があると使者は請け負った。
その後も使者とアルヒはやり取りを重ね、アルヒは商大祭『天秤の抱擁(マルシェ・ドゥ・エキリブル)』のイベントに協力する依頼を冒険者達に斡旋していく。
●やること
今回皆様は、リーンエス王国ディオール伯爵領の領都『グラン・ディオ』で開催される商大祭『天秤の抱擁(マルシェ・ドゥ・エキリブル)』への協力要請に応じ、現地に向かいました。
依頼人にあたるディオール伯爵家次期当主ヴィルジール・L・ディオールは、自身が用意したイベント『真贋試し(エッセイ・デ・ヌテシォン)』への参戦者、司会進行や提供役など様々な役割を冒険者に期待しています。
皆様はその中から自身の役割を選び、真贋試しというイベントを盛り上げて下さるようお願いいたします。
真贋試しの内容ですが、広場に設けられた舞台の上で用意された品2つの内、どちらが優れているのかを見極めるというものです。
見極める対象として牛肉のステーキやワイン(赤と白)、同じような見た目の楽器や絵画など5種類が用意されています。
用意されるものはそれぞれAとBという仮称がつけられ、参戦する皆様にはAとBを示す札が渡されているので、正解だと思う札を掲げる形で自身の答えを示すことができます。
提供役の方は、楽器を聞き比べる際に演奏手として演奏スキルで様々な音色を響かせることで、場を盛り上げることもできます。
また提供役として、それぞれの牛肉を用いて作成した手料理を見極めの品として提供することもできます。
同様に提供役として故郷や実家領地の名産品を見極めの品として提供したいという場合も、既に用意された5種類の品すべてを変更することはできませんが、その方が盛り上がると思われる品につきましてはリブラ商会も差し替えを検討します。
このイベントでは優れたものを見極めることができなかった人、不正解だった人は様々な形で待遇が変化します。
例えば舞台上で皆様が座る椅子ですが、不正解だった人の椅子は不正解を重ねるに従いだんだん貧相になっていきます。
そして参戦者の外見も、不正解の数に応じて様々なものが加えられていきます。
参戦者様に相応の才能があれば全問正解も可能ですが、不正解であっても段々と待遇が悪くなる様子を見せることで、周囲にいる観客を沸かせるという盛り上げ方もできます。
司会進行役の人は、全体の流れを把握しながら話術や演説などのスキルを駆使して、真贋試しを盛り上げることが求められます。
真贋試し自体はリブラ商会が進行を担いますが、役割に拘らず人手が足りないところがあれば助けに行くなど、様々なやり方で盛り上げることができます。
皆様のできる形で『天秤の抱擁(マルシェ・ドゥ・エキリブル)』の新イベントを盛り上げて下さるようお願いいたします。
●真贋試しで用意されるもの
1:赤ワイン2本。
Aは深みのある色合い。口当たりがよく酸味も感じられる。
Bはワインレッドでやや透明の色。味は力強く濃いが雑味もある。
2:白ワイン2本。
Aは薄いレモンのような色みがかった透明の色。果実の味がストレートに伝わってくる。
Bは黄金色をしている。複雑な味ながらとても滑らかな口当たり。
3:牛肉のステーキ2皿分(料理内容は変更可能)。
Aはゆっくり噛めば柔らかい。口の中でほどける脂はくどさが感じられる。
Bは口に入れた瞬間、ほろほろと溶ける。クセも脂っぽさもない素直な味。
4:弦楽器2つ。領都『グラン・ディオ』の技術者集団が同じ材料をもとに製作した。
Aは演奏すると、低音が豊かに出て遠くまでよく響く。
Bは演奏すると、萎えたような柔らかい音色が響く。近くで聞くと耳障りは良い。
5:油絵の絵画2点。同じ絵だが優れた方はかなり前に描かれたもので、もう片方は贋作。
Aは年季が入った色合い。シートの裏は油分が滲んでいる。
Bは色鮮やかで塗られた絵の具は生き生きとしている。シートの裏面はきれい。
見極めに使えそうなスキルとしては看破、洞察、調理、演奏、絵画、超嗅覚、超聴覚、超味覚など様々だが、他のスキルも使い方次第で威力を発揮するかもしれない。
解説
●目標
商大祭『天秤の抱擁(マルシェ・ドゥ・エキリブル)』のイベント(真贋試し)を盛り上げる
登場
ヴィルジール・L・ディオール
今回の依頼人で真贋試しを企画した。リベラ商会の代表という顔もある。
リベラ商家の人々
真贋試しの運営と進行を担う人達。真贋試しに用いられる品は商会側が用意する。
必要なものがあれば、貴重な品でない限りは用意してくれる。
アルヒ・ラスカス
今回の増援。皆様の指示に従う。汎用スキルはテレパス。
状況
ディオール伯爵領の領都『グラン・ディオ』内の一画。現地時刻は正午で快晴。
現在は商大祭『天秤の抱擁(マルシェ・ドゥ・エキリブル)』冬の部が開催されている。
今回のイベント(真贋試し)は下記広場に用意された仮設舞台の上で行われる。
既に皆様全員に防寒具一式が貸与済み。
全問正解者にはリベラ商会より優れた才能の持ち主であることを認める書状が贈られる予定。
冒険者の皆様には役割に関わらず真贋試しで使われた品のうち、優れた方のワインや肉が土産として提供される。
なお参戦者は不正解の場合、間違えた数によって以下のように待遇が変化する。
座る椅子は不正解の数に応じ、高級椅子→安っぽい椅子→木箱→岩→敷物→なしと変化する。
参戦者の外見も以下のように変化する。
1問不正解→履物にアザラシを模したスリッパが追加される。
2問不正解→頭に馬の頭を模した被り物を装着させられる。
3問不正解→魔獣の毛皮っぽい腹巻を着せられる。
4問不正解→「大安売り」と書かれた旗が背後に立つ。
5問不正解→「不合格」と書かれた赤いマントを着せられる。
なお皆様が不正解の数によって変化する待遇を別のものに差し替えたい場合は、リベラ商会に相談すれば内容次第で応じてくれる。
以下は現場となる広場周囲の簡易見取り図。皆様は下記の範囲内なら好きな場所からスタートできる。
↑北
ABCDEFGH
1口口口口口口口~
2口 口~
3口 舞 台 口~
4口 口~
5間間間 間間間~
6間あ扉 扉う間~
7間間間 間間間~
8間い扉 扉~
9間間間間間間間~
口:通り
間:間仕切り。撤去可能
扉:間仕切りの扉
あ:倉庫。真贋試しの品も含め必要な用具はここにある。
い:仮設厨房。用意される料理はここで作る。
う:控室。基本的にはリブラ商会の人達もここにいる。
~:省略された空間
マスターより
こちらはリクエストされたシナリオになります。
商大祭『天秤の抱擁(マルシェ・ドゥ・エキリブル)』冬の部で行われるイベントの1つ、『真贋試し(エッセイ・デ・ヌテシォン)』の盛り上げをお願いします。
イベントへの参戦者役の他、司会進行役になって場を盛り上げることや、提供役として舞台上での楽器演奏、自身の手料理を見極めの品として提供するなど、やり方は様々です。
各役割に回る人が少ない場合は、リブラ商会より人員を出します。
なお見極めに使う品や不正解になった人が身に付けるものを別のものに変えたい場合は、リブラ商会の人達にどのように変えたいのか要望を出せば、内容次第では変更することもできます。
(見極めの品としてご自身の地元や実家領地の名産品を提供したい場合は、スキルを使えば優れたものとそうでないものがわかる品をお願いします)
見極めに使う各品のうちワインや肉についてですが、皆様の出自によってはなじみのある味の品は安いほうだから、なじみのない味のほうが優れたもの(高級品)、という識別方法もできるかもしれません。
ご不明な点があれば、出発36時間前までならアルヒが答えられる範囲のことは答えます。
リプレイ
●始
この日、ディオール伯爵領都『グラン・ディオ』で開催中の商大祭『天秤の抱擁(マルシェ・ドゥ・エキリブル)』冬の部において、新たなイベントが始まった。
「これより真贋試しを開催する」
舞台上では司会進行役のルチル・プルメリア・グレイハーツが演説スキルを駆使し、観客に向けてイベントの説明を始める。
ルチルの傍には栗鼠のラトもいて、その存在が観客に好印象を与えていた。
(生憎と俺はまだワインが飲める年齢ではないので、司会進行と演奏の手伝いに回ろう)
ジュスト・ヴェルジーもルチルと同じ司会進行役を担う。
(俺は提供品についての紹介や解説をしていこうか)
ジュストは演説スキルを駆使して丁寧な説明を心掛ける。
(ロゼと一緒に参加して競っても良かったんだけれど)
ジュストは参戦者の中にいる、ローザリカ・L・ディオールへと視線を向ける。
(自領だし、うちの商会が用立てたもので真贋を見抜けないのはかなり不味い)
そのローザリカはジュストをひと睨みすると、用意された席に腰を下ろす。
(涼しい顔で余裕を打ち出すのが貴族の矜持だろう。優雅に、見抜けて当然だという顔で席に着こう)
プレッシャーはあるものの、ローザリカは表情に出さない。
「どんな問題が出題されるんでしょうか……!?」
参戦者のゲルダ・クラインは、何が出されるのか気になるようだ。
「真贋試しか……フッ、面白い。暗黒街で磨いた俺の審美眼を誤魔化す事など不可能だ」
ゲルダとペアを組むナハティガル=ラーも、黒のスーツ姿に身を固めて舞台に登り、自身がクールで余裕のある人物に見えるよう務めていた。
「正解できるようにがんばりますっ」
ゲルダはそう意気込む一方、自身は酒を飲めないのでルチルや『リベラ商会』と交渉し、酒に関わる問題の回答はナハティガルに一任していた。
「未成年には飲酒をさせない」
ルチルはゲルダに対し、そう確約していた。
「お〜! なんだか高そうな椅子とかカーペット……!」
参戦者として舞台に登ったサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブは、用意された椅子や敷物を見て感嘆の声を上げ、そわそわしていた。
「ふっふっふっ……! シーフたるものお宝の真贋を見極められないと一流とはいえないからねっ!」
サフィラは『リベラ商会』より借用したドレスに身を包み、ドヤ顔で真贋試しに臨む。
「面白そうだ。あとお肉が食べられると聞いて」
続いてレピド・クロサイトが、顔以外の全身を覆うキジトラ模様の猫の着ぐるみ姿で参戦する。
「考えた結果こうなった」
レピドは真贋試しを盛り上げるためにと考えた結果、この姿に決めたらしい。
既に舞台裏の厨房では、提供役となったルアンナ・ミュラーがお題として出す料理を作成している。
(焼き加減や味付けが均等になるように、気を配って仕上げます)
ルアンナが調理しているのは牛肉のステーキで、参戦者全員に提供する料理が全て同じ状態になるよう調理スキルをフル活用している。
「このステーキ問題の正解者に、オマケで特製メロンパンを振舞いたいです♪」
なおルアンナは持参したミュラースのメロンパンを『リベラ商会』の人たちに見せながらそのような要望を出し、そちらも後で提供されることになった。
●吟味
まずは同じように見えるワインが用意され、ジュストは両方ともウェルジー伯爵領で作られたものだと観客に説明する。
ジュストが『リベラ商会』に対し、ヴェルジー領の特産品で真贋試しをするよう要望を出し、商会も認めたことで実現した。
ジュストはそれぞれのワインについて説明を行う。
「生産者にも誇りや自信を持って欲しいからね」
ヴェルジー領の特産品でもあることから、ジュストは使われる葡萄、ワインの香りや色、味わいの特徴、そして醸造所といった知識を一通り持っているため、説明に支障はない。
(高級品じゃない方も高級品と判断に悩むレベルの美味しさや良さがあるなら、観衆の大半を構成する平民達が購入したいだろうし)
ジュストとしては、今回の真贋試しによって観客がヴェルジー領の特産品を購入してくれることを願っていた。
「こういうのって香りとか色とかでもみるんだよねっ」
サフィラは自身の洞察スキルや看破スキルも使い、まず赤ワインの味を確かめる。
(なんかめっちゃ飲みやすい! これ好きかも!)
Aに好感触を覚えたサフィラは、続いてBの味も調べる。
(うわっ! 味濃いっ! ちょっと飲みにくいけどお肉に合いそうっ!)
「うーん……個人的にはAが好みだけどあえてのB!」
サフィラがBと答えると、近くにいたナハティガルも同じくBの札を挙げる。
「Bだな。濃厚で複雑な……インスピレーションの湧く味わいだ」
一方レピドは悩んでいた。
(困った、どっちもおいしい)
レピドの価値観は美味しいか否かとシンプルなもの。
悩んだ末にレピドは口当たりの良かったAの札を挙げる。
続けて2本の白ワインが運ばれてきた。
レピドは両方を順に口へと運び、ゆっくりと味わってから再び悩む。
(困った、これもどっちもおいしい)
その近くでは、ナハティガルが優雅な動作で白ワインを口に含み、竜眼スキルや洞察スキルも駆使してそれぞれの特徴を比較し――。
「そしてこちらはA。透明で澄んだ色合いが美しく、鮮烈な果実の香りが爽やかで非常に飲み易い」
ナハティガルもAの札を挙げた。
「そうなんですね……!」
ゲルダは素直にナハティガルを称賛する。
「わぁ! どっちも綺麗な色〜! 香りもいい感じ♪」
サフィラも白ワインを褒めると、それぞれの匂いを確かめてから口に含む。
(あ〜……すっごい葡萄の香りする……おいしー……)
Aを味わったサフィラはBの方も味わう。
(こっちも美味しい……するする入ってく……)
ヴェルジー領の特産品ということもあり、サフィラとしては両方とも美味しい。
「むむ、どっちも良いけどA!」
サフィラはAの札を挙げた。
(そういえばワインは葡萄だよな。……なら、葡萄の味をより感じられる方が高い、のか?)
レピドもよく考えた末にAと答えた。
「ヴェルジー領の特産品でもあるしね。元々仕入先としての付き合いも長いんだ」
ローザリカは自身の超味覚スキルを駆使し、その舌でワインを見定める。
(ワインであれば食事で提供されることも多いし、商品としても欠かせないからまだ馴染がある)
ローザリカは自身の商業知識スキルも動員し、商品という観点でもワインを確かめ、自身の回答を示す。
そしてルチルは正解を告げた。
「赤ワインの正解はA。白ワインの正解はBだ」
ルチルの洞察スキルは常人を超える域に到達しているためか、味を確かめるまでもなく正解を見抜いているようだ。
その間にもジュストの手で不正解の数に応じた模様替えが行われ、ルアンナが次のお題となる料理を舞台上に運ぶ。
「お待たせしました! ステーキが焼き上がりましたよー♪」
ルアンナは参戦者の前に2種類のステーキと食器を並べていく。
(ハズレを選ぶ度にどんどん動物っぽい物が追加されていきますね……)
配膳を終えたルアンナは不正解となった仲間たちを見渡す。
(でもアザラシスリッパは可愛いと思います♪)
ルアンナは内心そのような呟きを漏らしていた。
「すっごいいい匂い……お腹空いてきちゃった……」
サフィラは2つ並んだステーキを頂くことにした。
まずはAのほうを。
(噛みごたえが凄いねっ、ちょっと脂がしつこいかも?)
歯ごたえと口の中に広がる脂を覚えたサフィラは、次にBのステーキも食す。
「めっちゃ柔らかーい! 脂もいい感じに乗ってていいね! これは断然B!」
その柔らかさを絶賛し、サフィラは迷わずBの札を挙げた。
(困……らないな。どっちも凄くおいしい)
レピドは表情には出さないものの、好物の肉を食すことができたのか内心機嫌が良い。
(こちらの方が肉を食べている実感が味わえる気がする)
そう考えてレピドはAの札を挙げた。
ここでナハティガルとペアを組むゲルダも、ステーキの食べ比べに加わる。
(高級肉も食べ慣れていますので、一口食べてみれば判別がつくかなと)
ゲルダは2つのステーキをそれぞれゆっくりと味わっていた。
どちらもルアンナの調理によって美味に仕上がっている。
「ええと……お肉の柔らかさや香りはお料理の方法次第で工夫できるんですが、この味はお肉そのものがとても良いものじゃないと出せないかな、と」
そしてゲルダは自身の商業知識スキルも駆使して答えを口にする。
「Bのお肉です」
一方ナハティガルは口内で肉を転がし、ゆっくりと咀嚼して肉の味を確かめてから飲み込む。
その動きはどこか色気も感じさせるほど優雅だった。
「Aの肉だな。噛み応えがあり、脂の濃厚な味が口腔内に拡がって少量でも満足感が得られる」
ナハティガルは自身の所感と共にAの札を挙げる。
(調理人がいいから短所は可能な限り消されているはず)
そしてローザリカは内心ルアンナの調理技術を褒めながら、超味覚スキルも駆使して肉を食べ比べる。
(肉を柔らかくしつつ香り高くするフルーツソースなどは使われてはいないだろうか?)
そう考えたローザリカが答えとなる札を挙げ、ルチルは正解を告げる。
「正解はB」
●答え
3問目が終わり、ルチルは2つの弦楽器を用意させた。
「製作者は同じ。素材も同じ。違うのは作られてからの年数だ」
その違いが片方を高級品に押し上げ、もう片方をそうでないものにしたとルチルは説明する。
「参戦者のさらなる健闘を期待する」
ルチルの言動は、聞く人によっては不正解を出した参戦者に対し容赦がないようにも受けとれるが、これはルチル自身がイベントの趣旨を理解してそのように振る舞っているだけで他意はない。
「むむ……耳は自信あるけど楽器かぁ〜」
サフィラが少し悩む中、ローザリカがルチルに質問する。
「ところで、演奏は誰が?」
ローザリカの疑問はジュストが楽器を手に取ったことで解消された。
(……だろうね。彼についてのことで僕が聞き違うわけがない)
ローザリカが見守る中、ジュストは演奏スキルを駆使して各楽器の演奏を始める。
(酷い格好をしたロゼを見るのは忍びないんだが、不正は出来ないし)
ジュストはなるべく今のローザリカを見ないようにしながら、2つの楽器から同じ旋律を奏でてみせた。
(心の中で応援しておこう)
ジュストは密かにローザリカを応援する。
「あ〜……低音が心地いいかも。こっちは高音が柔らかくて好きかもっ」
サフィラは洞察スキルや看破スキルなども併用し、音の違いを感じ取ったようだ。
ジュストは長所を活かして短所をカバーする様な演奏を心掛け、その技量を感じ取った観客より拍手が沸き起こる。
(全てがいいのではなく、なだらかにされた短所と耳障りよく届く長所とで山があるのが不正解の方では?)
ローザリカはジュストの工夫に気づき、商業知識スキルをもとに今しがた聞いた音を吟味する。
なおゲルダは自身が手に取って演奏し、その感触や音を確認するつもりでいたが、『リベラ商会』の人たちから「それはできない」と却下されたため、先程ジュストが演奏した音をもとに商業知識スキルも駆使して見定めにかかる。
(楽団として活動した事もある手前、ここだけは外したくない)
レピドも自分の手で演奏しようと考えていたができないと知ると、ジュストの奏でた音から見極めを行い、片方の札を挙げる。
なおレピドが得意とする楽器は横笛になる。
「Aでしょうか。Bのほうは、低い音や高い音を出したときに少し雑音が混じる感じがしました」
ゲルダがAの札を挙げると、ナハティガルは静かに頷く仕草を見せながらBの札を挙げた。
「Bの弦楽器の方が音域に幅があるように聞こえた。萎えたような不安定さと柔らかさ、聞く位置によって変化する音色には深みがある」
「うにゃ〜! 難しいけど……B!」
サフィラも悩んだ末にナハティガルと同じBの札を挙げ、ローザリカも商業知識スキルとジュストの演奏スキルなど様々な要素を考慮し、片方の札を挙げた。
「正解はA」
ルチルはAが正解だと告げ、ジュストは笑顔で不正解だった参戦者への模様替えを進める。
「次、がんばりましょうね!」
正解者に拍手を送ったゲルダが不正解だった人たちを励ます中、最後のお題――絵画が用意される。
同じ絵画に見えるが、ルチルとジュストは片方が本物でもう一方は贋作だと語る。
「あっ! これは得意だよっ!」
絵の近くまで寄ったサフィラはそう言うとAの絵から観察を始める。
「すごく古そう……シートに滲んだ油も年季入ってる感じがするねっ」
続いてサフィラはBの絵をじっくりと眺める。
「こっちは色鮮やかで綺麗だねっ! ただ、描かれた年代より新しい感じがする?」
Bに引っかかるものを覚えたサフィラは――。
「これはAかなっ!」
Aの札を挙げた。
「Bの絵画が本物だろう。生々しい程に鮮やかな色彩からは魂が宿っているかのような迫力を感じる」
ナハティガルは商業デビューを果たした画家の顔で、Bが正解だと力説する。
(楽しむことが第一なので、勝ち負けにはこだわっていません)
ゲルダは内心そのように呟き、ナハティガルと同じBの札を挙げた。
「贋作、という事は本物より後の時代に描かれているということだよな?」
レピドは作成したと思われる時期から正解を導き出そうと試みる。
(となると、より年季が入っていそうなAが正解に思えるが……引っ掛けの可能性も捨てがたいんだよな)
「……ここはあえてBを選んでみるか」
そう考えたレピドはBの札を挙げた。
(これについては貴族としての教養と商業知識、すなわち仕入れで鍛えた目利きで挑むつもりだ)
ローザリカは自身の知識やスキルをフル活用して2つの絵を見比べる。
(時が経ってから値が付くものもあるし、捨てられずに長期間重宝された証だろう)
そのように判断したローザリカは自身が正解と考えた札を挙げ、ルチルが正解を告げた。
「正解はA」
(僕が悔しがる姿を期待したんだろうが……そんなものをお出しする気はさらさら無くてね)
ローザリカは泰然とした態度を貫く中、ルチルは最も正解した者たちを表彰した。
●終
「ふぁ〜、なんか思ったより難しかったかもっ。AもBも違ったよさがあるから迷うよ〜っ」
緊張から解放され、サフィラはそのような叫びをあげた。
(私も真贋が分かるか少し試してみましたが……)
ルアンナは自身の手がけた料理を配るとき、密かに自身も真贋試しを行っていたようだ。
なおルチルは司会進行や提供役など裏方に徹した人たちにも真贋試しを用意していた。
「審美眼を試されるのは参戦者だけと思ったか!」
ルチルの宣言と共に抜き打ちの真贋試しが裏で実行されたようだが、結果についてはこの場での記述を差し控えさせていただく。
この日、ディオール伯爵領都『グラン・ディオ』で開催中の商大祭『天秤の抱擁(マルシェ・ドゥ・エキリブル)』冬の部において、新たなイベントが始まった。
「これより真贋試しを開催する」
舞台上では司会進行役のルチル・プルメリア・グレイハーツが演説スキルを駆使し、観客に向けてイベントの説明を始める。
ルチルの傍には栗鼠のラトもいて、その存在が観客に好印象を与えていた。
(生憎と俺はまだワインが飲める年齢ではないので、司会進行と演奏の手伝いに回ろう)
ジュスト・ヴェルジーもルチルと同じ司会進行役を担う。
(俺は提供品についての紹介や解説をしていこうか)
ジュストは演説スキルを駆使して丁寧な説明を心掛ける。
(ロゼと一緒に参加して競っても良かったんだけれど)
ジュストは参戦者の中にいる、ローザリカ・L・ディオールへと視線を向ける。
(自領だし、うちの商会が用立てたもので真贋を見抜けないのはかなり不味い)
そのローザリカはジュストをひと睨みすると、用意された席に腰を下ろす。
(涼しい顔で余裕を打ち出すのが貴族の矜持だろう。優雅に、見抜けて当然だという顔で席に着こう)
プレッシャーはあるものの、ローザリカは表情に出さない。
「どんな問題が出題されるんでしょうか……!?」
参戦者のゲルダ・クラインは、何が出されるのか気になるようだ。
「真贋試しか……フッ、面白い。暗黒街で磨いた俺の審美眼を誤魔化す事など不可能だ」
ゲルダとペアを組むナハティガル=ラーも、黒のスーツ姿に身を固めて舞台に登り、自身がクールで余裕のある人物に見えるよう務めていた。
「正解できるようにがんばりますっ」
ゲルダはそう意気込む一方、自身は酒を飲めないのでルチルや『リベラ商会』と交渉し、酒に関わる問題の回答はナハティガルに一任していた。
「未成年には飲酒をさせない」
ルチルはゲルダに対し、そう確約していた。
「お〜! なんだか高そうな椅子とかカーペット……!」
参戦者として舞台に登ったサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブは、用意された椅子や敷物を見て感嘆の声を上げ、そわそわしていた。
「ふっふっふっ……! シーフたるものお宝の真贋を見極められないと一流とはいえないからねっ!」
サフィラは『リベラ商会』より借用したドレスに身を包み、ドヤ顔で真贋試しに臨む。
「面白そうだ。あとお肉が食べられると聞いて」
続いてレピド・クロサイトが、顔以外の全身を覆うキジトラ模様の猫の着ぐるみ姿で参戦する。
「考えた結果こうなった」
レピドは真贋試しを盛り上げるためにと考えた結果、この姿に決めたらしい。
既に舞台裏の厨房では、提供役となったルアンナ・ミュラーがお題として出す料理を作成している。
(焼き加減や味付けが均等になるように、気を配って仕上げます)
ルアンナが調理しているのは牛肉のステーキで、参戦者全員に提供する料理が全て同じ状態になるよう調理スキルをフル活用している。
「このステーキ問題の正解者に、オマケで特製メロンパンを振舞いたいです♪」
なおルアンナは持参したミュラースのメロンパンを『リベラ商会』の人たちに見せながらそのような要望を出し、そちらも後で提供されることになった。
●吟味
まずは同じように見えるワインが用意され、ジュストは両方ともウェルジー伯爵領で作られたものだと観客に説明する。
ジュストが『リベラ商会』に対し、ヴェルジー領の特産品で真贋試しをするよう要望を出し、商会も認めたことで実現した。
ジュストはそれぞれのワインについて説明を行う。
「生産者にも誇りや自信を持って欲しいからね」
ヴェルジー領の特産品でもあることから、ジュストは使われる葡萄、ワインの香りや色、味わいの特徴、そして醸造所といった知識を一通り持っているため、説明に支障はない。
(高級品じゃない方も高級品と判断に悩むレベルの美味しさや良さがあるなら、観衆の大半を構成する平民達が購入したいだろうし)
ジュストとしては、今回の真贋試しによって観客がヴェルジー領の特産品を購入してくれることを願っていた。
「こういうのって香りとか色とかでもみるんだよねっ」
サフィラは自身の洞察スキルや看破スキルも使い、まず赤ワインの味を確かめる。
(なんかめっちゃ飲みやすい! これ好きかも!)
Aに好感触を覚えたサフィラは、続いてBの味も調べる。
(うわっ! 味濃いっ! ちょっと飲みにくいけどお肉に合いそうっ!)
「うーん……個人的にはAが好みだけどあえてのB!」
サフィラがBと答えると、近くにいたナハティガルも同じくBの札を挙げる。
「Bだな。濃厚で複雑な……インスピレーションの湧く味わいだ」
一方レピドは悩んでいた。
(困った、どっちもおいしい)
レピドの価値観は美味しいか否かとシンプルなもの。
悩んだ末にレピドは口当たりの良かったAの札を挙げる。
続けて2本の白ワインが運ばれてきた。
レピドは両方を順に口へと運び、ゆっくりと味わってから再び悩む。
(困った、これもどっちもおいしい)
その近くでは、ナハティガルが優雅な動作で白ワインを口に含み、竜眼スキルや洞察スキルも駆使してそれぞれの特徴を比較し――。
「そしてこちらはA。透明で澄んだ色合いが美しく、鮮烈な果実の香りが爽やかで非常に飲み易い」
ナハティガルもAの札を挙げた。
「そうなんですね……!」
ゲルダは素直にナハティガルを称賛する。
「わぁ! どっちも綺麗な色〜! 香りもいい感じ♪」
サフィラも白ワインを褒めると、それぞれの匂いを確かめてから口に含む。
(あ〜……すっごい葡萄の香りする……おいしー……)
Aを味わったサフィラはBの方も味わう。
(こっちも美味しい……するする入ってく……)
ヴェルジー領の特産品ということもあり、サフィラとしては両方とも美味しい。
「むむ、どっちも良いけどA!」
サフィラはAの札を挙げた。
(そういえばワインは葡萄だよな。……なら、葡萄の味をより感じられる方が高い、のか?)
レピドもよく考えた末にAと答えた。
「ヴェルジー領の特産品でもあるしね。元々仕入先としての付き合いも長いんだ」
ローザリカは自身の超味覚スキルを駆使し、その舌でワインを見定める。
(ワインであれば食事で提供されることも多いし、商品としても欠かせないからまだ馴染がある)
ローザリカは自身の商業知識スキルも動員し、商品という観点でもワインを確かめ、自身の回答を示す。
そしてルチルは正解を告げた。
「赤ワインの正解はA。白ワインの正解はBだ」
ルチルの洞察スキルは常人を超える域に到達しているためか、味を確かめるまでもなく正解を見抜いているようだ。
その間にもジュストの手で不正解の数に応じた模様替えが行われ、ルアンナが次のお題となる料理を舞台上に運ぶ。
「お待たせしました! ステーキが焼き上がりましたよー♪」
ルアンナは参戦者の前に2種類のステーキと食器を並べていく。
(ハズレを選ぶ度にどんどん動物っぽい物が追加されていきますね……)
配膳を終えたルアンナは不正解となった仲間たちを見渡す。
(でもアザラシスリッパは可愛いと思います♪)
ルアンナは内心そのような呟きを漏らしていた。
「すっごいいい匂い……お腹空いてきちゃった……」
サフィラは2つ並んだステーキを頂くことにした。
まずはAのほうを。
(噛みごたえが凄いねっ、ちょっと脂がしつこいかも?)
歯ごたえと口の中に広がる脂を覚えたサフィラは、次にBのステーキも食す。
「めっちゃ柔らかーい! 脂もいい感じに乗ってていいね! これは断然B!」
その柔らかさを絶賛し、サフィラは迷わずBの札を挙げた。
(困……らないな。どっちも凄くおいしい)
レピドは表情には出さないものの、好物の肉を食すことができたのか内心機嫌が良い。
(こちらの方が肉を食べている実感が味わえる気がする)
そう考えてレピドはAの札を挙げた。
ここでナハティガルとペアを組むゲルダも、ステーキの食べ比べに加わる。
(高級肉も食べ慣れていますので、一口食べてみれば判別がつくかなと)
ゲルダは2つのステーキをそれぞれゆっくりと味わっていた。
どちらもルアンナの調理によって美味に仕上がっている。
「ええと……お肉の柔らかさや香りはお料理の方法次第で工夫できるんですが、この味はお肉そのものがとても良いものじゃないと出せないかな、と」
そしてゲルダは自身の商業知識スキルも駆使して答えを口にする。
「Bのお肉です」
一方ナハティガルは口内で肉を転がし、ゆっくりと咀嚼して肉の味を確かめてから飲み込む。
その動きはどこか色気も感じさせるほど優雅だった。
「Aの肉だな。噛み応えがあり、脂の濃厚な味が口腔内に拡がって少量でも満足感が得られる」
ナハティガルは自身の所感と共にAの札を挙げる。
(調理人がいいから短所は可能な限り消されているはず)
そしてローザリカは内心ルアンナの調理技術を褒めながら、超味覚スキルも駆使して肉を食べ比べる。
(肉を柔らかくしつつ香り高くするフルーツソースなどは使われてはいないだろうか?)
そう考えたローザリカが答えとなる札を挙げ、ルチルは正解を告げる。
「正解はB」
●答え
3問目が終わり、ルチルは2つの弦楽器を用意させた。
「製作者は同じ。素材も同じ。違うのは作られてからの年数だ」
その違いが片方を高級品に押し上げ、もう片方をそうでないものにしたとルチルは説明する。
「参戦者のさらなる健闘を期待する」
ルチルの言動は、聞く人によっては不正解を出した参戦者に対し容赦がないようにも受けとれるが、これはルチル自身がイベントの趣旨を理解してそのように振る舞っているだけで他意はない。
「むむ……耳は自信あるけど楽器かぁ〜」
サフィラが少し悩む中、ローザリカがルチルに質問する。
「ところで、演奏は誰が?」
ローザリカの疑問はジュストが楽器を手に取ったことで解消された。
(……だろうね。彼についてのことで僕が聞き違うわけがない)
ローザリカが見守る中、ジュストは演奏スキルを駆使して各楽器の演奏を始める。
(酷い格好をしたロゼを見るのは忍びないんだが、不正は出来ないし)
ジュストはなるべく今のローザリカを見ないようにしながら、2つの楽器から同じ旋律を奏でてみせた。
(心の中で応援しておこう)
ジュストは密かにローザリカを応援する。
「あ〜……低音が心地いいかも。こっちは高音が柔らかくて好きかもっ」
サフィラは洞察スキルや看破スキルなども併用し、音の違いを感じ取ったようだ。
ジュストは長所を活かして短所をカバーする様な演奏を心掛け、その技量を感じ取った観客より拍手が沸き起こる。
(全てがいいのではなく、なだらかにされた短所と耳障りよく届く長所とで山があるのが不正解の方では?)
ローザリカはジュストの工夫に気づき、商業知識スキルをもとに今しがた聞いた音を吟味する。
なおゲルダは自身が手に取って演奏し、その感触や音を確認するつもりでいたが、『リベラ商会』の人たちから「それはできない」と却下されたため、先程ジュストが演奏した音をもとに商業知識スキルも駆使して見定めにかかる。
(楽団として活動した事もある手前、ここだけは外したくない)
レピドも自分の手で演奏しようと考えていたができないと知ると、ジュストの奏でた音から見極めを行い、片方の札を挙げる。
なおレピドが得意とする楽器は横笛になる。
「Aでしょうか。Bのほうは、低い音や高い音を出したときに少し雑音が混じる感じがしました」
ゲルダがAの札を挙げると、ナハティガルは静かに頷く仕草を見せながらBの札を挙げた。
「Bの弦楽器の方が音域に幅があるように聞こえた。萎えたような不安定さと柔らかさ、聞く位置によって変化する音色には深みがある」
「うにゃ〜! 難しいけど……B!」
サフィラも悩んだ末にナハティガルと同じBの札を挙げ、ローザリカも商業知識スキルとジュストの演奏スキルなど様々な要素を考慮し、片方の札を挙げた。
「正解はA」
ルチルはAが正解だと告げ、ジュストは笑顔で不正解だった参戦者への模様替えを進める。
「次、がんばりましょうね!」
正解者に拍手を送ったゲルダが不正解だった人たちを励ます中、最後のお題――絵画が用意される。
同じ絵画に見えるが、ルチルとジュストは片方が本物でもう一方は贋作だと語る。
「あっ! これは得意だよっ!」
絵の近くまで寄ったサフィラはそう言うとAの絵から観察を始める。
「すごく古そう……シートに滲んだ油も年季入ってる感じがするねっ」
続いてサフィラはBの絵をじっくりと眺める。
「こっちは色鮮やかで綺麗だねっ! ただ、描かれた年代より新しい感じがする?」
Bに引っかかるものを覚えたサフィラは――。
「これはAかなっ!」
Aの札を挙げた。
「Bの絵画が本物だろう。生々しい程に鮮やかな色彩からは魂が宿っているかのような迫力を感じる」
ナハティガルは商業デビューを果たした画家の顔で、Bが正解だと力説する。
(楽しむことが第一なので、勝ち負けにはこだわっていません)
ゲルダは内心そのように呟き、ナハティガルと同じBの札を挙げた。
「贋作、という事は本物より後の時代に描かれているということだよな?」
レピドは作成したと思われる時期から正解を導き出そうと試みる。
(となると、より年季が入っていそうなAが正解に思えるが……引っ掛けの可能性も捨てがたいんだよな)
「……ここはあえてBを選んでみるか」
そう考えたレピドはBの札を挙げた。
(これについては貴族としての教養と商業知識、すなわち仕入れで鍛えた目利きで挑むつもりだ)
ローザリカは自身の知識やスキルをフル活用して2つの絵を見比べる。
(時が経ってから値が付くものもあるし、捨てられずに長期間重宝された証だろう)
そのように判断したローザリカは自身が正解と考えた札を挙げ、ルチルが正解を告げた。
「正解はA」
(僕が悔しがる姿を期待したんだろうが……そんなものをお出しする気はさらさら無くてね)
ローザリカは泰然とした態度を貫く中、ルチルは最も正解した者たちを表彰した。
●終
「ふぁ〜、なんか思ったより難しかったかもっ。AもBも違ったよさがあるから迷うよ〜っ」
緊張から解放され、サフィラはそのような叫びをあげた。
(私も真贋が分かるか少し試してみましたが……)
ルアンナは自身の手がけた料理を配るとき、密かに自身も真贋試しを行っていたようだ。
なおルチルは司会進行や提供役など裏方に徹した人たちにも真贋試しを用意していた。
「審美眼を試されるのは参戦者だけと思ったか!」
ルチルの宣言と共に抜き打ちの真贋試しが裏で実行されたようだが、結果についてはこの場での記述を差し控えさせていただく。
マスターコメント
お疲れ様でした。
皆様がそれぞれの役割を果たしたことで、真贋試しは盛況のうちに幕を閉じることができました。
1問目と2問目で出されたワインは、素材は同じでしたが熟成期間の長さによって味や見た目が変わっていました。
他の問題につきましては、皆様が推察された通りになります。
改めましてこの度はご参加下さりありがとうございました。
ショートシナリオR易しい 報酬:標準8 / 4〜8人
2024年02月17日 20時16分17秒 公開
大成功
相談掲示板
グラン・ディオへようこそ! そして天秤の抱擁への協力、兄に代わり感謝しよう! 真贋試しは初めての試みだし、皆のアイディアをもって完成されることと思う。 それぞれ己の力を存分に振るって貰えれば幸いだ。 ちなみに僕は参戦者として挑む予定だ。 ……領都で滅多なことはできないし正解できるよう気合を入れなければならないな。
ルアンナです、よろしくお願いします♪ 今回は提供役で参加します。美味しくステーキ焼きますよ~♪
レピド・クロサイト、庶民だ。よろしく頼む。 面白そうなので参戦者として参加したく思う。 本番のステーキとお土産の肉……楽しみだ(そわそわ)
情報屋のルチルだ。 今回は司会進行役で出させてもらう。……こういう催しだから、何か悪そうな事でも言った方がいいのかね?(
ジュストだ。 今回は演奏と司会進行の補助が出来たらと考えているよ。 よろしくね。
にゃ!サフィラだよっ! 今回は参戦者で挑戦するよっ! なんだか面白そうなイベントだけど馬の被り物に大安売り…罰ゲームが色んな意味で怖いねっ(ふるえ) みんなよろしくーっ!