【帝国】その一歩をあなたと共に【呪拓】
狐野径
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シナリオID:3337
オープニング
フィルエス大森林の南東部にある里モルアモ。
巫女であるファシオはハイアルヴがどうなったか知り、驚愕する。
(わしはフェンヌ・ダーニの件があって、受け入れることは柔軟になってはおると自覚はしておったが、またこれは別じゃな)
世界樹が「これからは小さき者の時代」と告げ、託した思いは理解できても、存在が消えたことはピンと来ていない。
世界樹があって当たり前、とはいえ、四六時中見ていたわけでもない。お告げということで相談に乗ってもらってはいたため、今後、これまでとの違いは感じるかもしれない。
「本当にいらっしゃらないのですかって聞いてみて、声があったら怖いのう。いや、イダなんたらっていう例があるからなぁ……やっぱり怖いのう」
世界樹がハイアルヴで、イダ・バルダスが成り代わったことがあるため、同じことが起こらないという否定ができない。
「怖いことは考えるのをやめよう。そうじゃ、ベル・リエルは困るだろうのう」
ベルは世界樹を中心に大森林でエルフは暮らす方が幸せであると説いていた。
調査していた冒険者の話によると、それなりに賛同者もいるらしいという。
その集団に調査が入ったきっかけは、外は危険だと知らせるために、偽りをもって実力行使をした人がいたからだ。冒険者のおかげで最小限の被害で防がれたが、集団に対して印象がいいものではない。
ただ、森の外が恐ろしいと感じる土壌があったのは間違いない。
「あやつの里には大切にしていた木があったという噂があるのに、見当たらなかったというなぁ。細かい点を知るには本人に聞かんとわからんが……実は、すごく小さな木だったとか?」
里の木というのは身近な支えだっただろうとは推測できた。
モルアモの里自体は、世界樹がなくなったことで驚いたり、帝都奪還の助けに送る食料等の準備で忙しい。
にぎやかな中、一人ぽつんといるファシオ。
考える時間だけはたくさんある。
「幽界樹の話を聞くだけで危険だし、里でできることするのはいいことだし……ん? できることをする? ……わしはいらんてことではないかっ!」
思わず、叫んだ。
「しまった、何か特技があるとか、ないから……わし、ごくつぶしになる……」
叫び声に驚いて部屋を覗いた族長の足下に、うめいてうずくまるファシオがいた。
「うん、まぁ、元気って言うことはいいところだよ」
「それだけ!」
族長は目を逸らしたが、口元は笑っていた。
ファシオは長や里の人とくだらないやり取りをしているうちに「どうにかなる」と感じた。
気になるのはやはりベルのことだった。
覡だったらしいベルに対して、巫女という立場からファシオは考えざるを得ない。
「そうか! わしはここに張り付いていなくてもいいんじゃ! 行ってくる」
長が驚き「どこに!?」と問う。
「グレイオンスの所でウル・ヘルバ借りて、冒険者ギルドに行って、ベルのいる里に」
綿密な行動計画に長は「気を付けて行っておいで」と言い、「きちんと名前を呼びなさい」と注意するのだった。
●動揺と事態
ベルは世界樹が消えたと聞き、驚愕した。
大森林のエルフは世界樹とともに、閉じこもって生活する方がいいと考えていたから、なおさらだ。
行動への支えが消えたことは恐ろしいことだし、全く想像しない事態だった。
世界樹は存在して当たり前、昔からいるのだから、未来永劫いるだろう、と。
彼の考えに賛同し、里に集まった人たちが声をかけてくるがベルの中で言葉は消える。
(何のために、あのようなことをしたのか)
大森林の外は怖いということを説いた。
実力行使に近いこともしている。
それを行ったうちの一人、老エルフが戻ってきていない。その理由は見えない。
(ここが嫌になったのならばそれでいいが。しかし、世界樹はなんでいなくなったんだ……どうして? 我々は何に耳を傾け、どう生きればいい?)
ベルがハイアルヴを信じるには外の人間を排除した方がいいと考え出したのは、事件があったからだ。
里の近辺に魔物や魔獣が見受けられた。そのため、薄いながらもつながりがあった近隣の里と、情報共有して討伐することも視野に入っていた。
やり取りはしつつ魔物の討伐が行われた時、
「里のシンボルツリーが原因ではないか」
と言い出す人が里にいた。理由はわからないが、そういうこともあるのか、というふうになっていった。
その木はここに住んだ先祖が、もともといた地から持ってきて植えたものだ。
里の中心として、心のよりどころの一つとして大切にしていた。
心のよりどころを失うのは辛いため、まず、ハイアルヴに問うた。その返答は「関係ない」だった。
言い出した人も「それならよかった」と勝手な想像をわびた。
地道に魔物や魔獣対応に当たった。
順調に里を守っているころ、ベルと数人は近隣の里に向かった。そこでは情報交換し、互いに有意義な時間を過ごした。
そこから帰ったとき、里には誰もいなくなっていた。
何かがあったらしい痕跡はあるが、死体等は見つからなかった。
だから、ハイアルヴに問うたところ、木の影響と答えた。
心のよりどころだった木を倒した。
手遅れだとしても、ベルと行動していた人たちもいるし、ひょっとしたら逃げていて助かっている人たちもいるかもしれないから。
安全の確保はして待つが、誰も戻ってこなかったし、難を逃れた人も立ち去った。
後に、ハイアルヴは世界樹であったこと、一時期イダに乗っ取られていたことを知る。
世界樹が力を取り戻すためにエーテルをエルフから奪っていたことも。
里の状況を考えると魔物でなく世界樹の影響かもしれない。
世界樹は恨まず、外の人間がいなければいいと考えた。
外の人間がかかわらなければ、世界樹を、ハイアルヴを信じ、穏やかに生きていける、と。
魔獣のヤギが威嚇する声が響き、ベルの思考は現実に引き戻される。
魔獣たちは里に走ってくる。小さいものだけでなく、大きいものも混じっていた。
住民たちが悲鳴を上げ屋内に逃げる。踏みつぶされる危険性が高い。
ベルは魔獣たちが来た方を見る。
黒い泥のようなものが這っていた。それは草木を飲み込み、向かってくる魔獣を取り込む。
ねっとりと這いずり、里に入ってくる。
「魔物……」
ベルは避難するように指示しつつ、自身は魔法で攻撃を試みる。
しかし、ダメージを与えられたような気がしなかった。
ベルは無力さを痛感し、どうしていいかわからなかった。
●向かう冒険者
ファシオの依頼に付き合う冒険者やウルは、彼女の世界樹がいなくなったことに対するあれやこれや気持ちを聞くことになる。
ベルがいる里の手前の里に到着すると「あっちに行くのはちょっと待った方がいい」と止められた。
先ほどから魔獣の様子がおかしいし、騒がしいというのだ。
「調査を出したから、戻ってきてからでも……」
ファシオは冒険者を見た。
「待ってたら手遅れになるかもしれぬ。行こう」
「お前も行くのかよ」
「わしの用で来ておるし、危険があれば全力で逃げる! そのくらい、うぬらがするだろう?」
言っていることは筋が通っているが、どう行動するかとウルは冒険者を見た。
解説
マスターより
リプレイ
トーラは里人の不安やファシオの覚悟に応じる。
「分かりました。里へ向かいましょう!」
フィルエス大森林の外の世界を拒絶する人たちが集まっているとはいえ、危険が迫っているのを放置していいということにはならない。聖鳥の氏族などは実際ひどい目に合っているし、心のよりどころが欲しかったというのもあるだろう。
トーラは「私が先行します」と告げる。
ライナ・フレイヴァルツとフロマーシュ・ダイヤドロップもその里は行っているため、道中は問題ない。
「すぐに追いつこう」
「何もなければいいですが」
ライナとフロマーシュの言葉を聞き、トーラは走り出した。
ルチル・プルメリア・グレイハーツが「アタイたちも急ごう」と促す。
ラティア・ミゼリアはここに来るまでファシオが言っていたことから、ふと思う。
(世界樹が消えた……おばあちゃんもエルフだし、やっぱり困ってたりするのかな……そもそもまだ知らないかな……? 今度、会いに行ってみようか……このお仕事を終わらせてから)
今向かっている里の人たちは、世界樹とあることを願っていたため、より一層不安だろう。
ラティアは考えを止め、現場に向かうことに集中する。
ヴィルヘルミナは耳を澄ませる。
身軽な恰好だが武装はしているエルフ数人が来ることに気付いた。
「先ほどの里の人たちが言っていた偵察隊ですかね」
一行とは手短に情報を交換して別れた。
里が近づく中、ウル・ヘルバはファシオのそばにいる。里の状況は彼女らに任す方が安心であるからこそ、ファシオの暴走を止めるのが役割だと考えるのだった。
●魔物と魔獣と
トーラは目的地に向かう中、警戒はしていた魔獣ヤギの気配はなかった。
魔獣ヤギが里の方に向かった痕跡がある上、何かが這いずって移動した跡もある。
何がいるのかわからない。
宗波で探りつつ、里につく。
黒いスライム状の存在が地面を這い、家にまとわりつく。
魔獣は魔物と戦っていたり、逃げまどっている。
住民は逃げようとはしているようだが、混乱している。
トーラはすぐにでも救援に入りたいが、混乱に拍車をかける危険を考えた。
そのため、近くには来ているだろう仲間と合流する。
案の定、一行とトーラはすぐに合流できた。
途中状況を話しつつ、到着する。散開し、救援や魔物討伐に動き出した。
ライナは状況を捉えるために天眼を用いる。
魔物は周囲を溶かして移動しているようだ。また、魔獣は魔物に強い怒りをもって攻撃している。
一方で、住民は逃げている者、怯えて行動が取れない者がいる。
「世界樹をなくし、さらにこの森を溶かそうと……」
魔物が現れた理由はわからないが、破壊よりも溶かし無に帰す状況は重い。
「マーシュ、里の人々に避難するように連絡を!」
フロマーシュは「はい!」と、ひらめく白衣の盾を構える。ライナの「私は、こいつらが進まないように足止めしておく!」という言葉を聞き、人々の方に向かった。
(世界樹が消えて不安だったはずです。そこに魔物が襲ってくるなんて……支えを失った不安の中での追い打ち……守っていかないと)
フロマーシュは強く思い、声を張る。
「皆さん、私たちが応対します!」
フロマーシュは戦術眼をもって風景を捉えた。
「里の端の方、木のある方に動いてください」
魔獣が里を突っ切っているためか、魔物もそのルートを選んでいる節があるためだった。
なお、ライナは魔物と魔獣、特に魔物を止めるべく【虚栄の監獄】を放ち、足止めを試みる。魔物の反応はよく分からないが、魔獣たちは慌てる。
トーラは家に魔物が張り付いているのを見つけ、宗波の捜波をもって反応を見た。
中に人がいるが、扉から逃げることができないのだ。魔物の一部がそこにかかっているから。
「魔物をどうにかしないと!」
攻撃するには簡単に届かない位置であるため、【魔矢】を放つ。建物から引き離し、対峙する方法を模索した。
ルチルは栗鼠のラトに「住民を探すよ」と告げる。
「魔獣と魔物の位置には気を付ける」
注意事項を聞くと、ラトはコクッとうなずき、木から建物へ移動したり動き回る。
トーラが小屋を探っているのがわかり、ルチルはそこの魔物に矢を射かける。
魔物は小屋の外にいる獲物に気付いたかのように、動きを変えた。
ヴィルヘルミナは里の中央に向かっていく。
敵がどこにいて、逃げ遅れている人たちがどこにいるかわからないから、進むことが必要だ。
「魔獣が魔物と戦っているように見えます。逃げているなら特に狙いませんが、あの大きさは人が当たるとケガする、ですまないですね」
人の声が聞こえたため、そちらに向かう。怯える人の前に魔物がいた。
エーテルブレードで月虹の刀身を伸長し、魔物に攻撃を仕掛ける。
柔らかいものに刃を当てた感触だが、攻撃は効いている感覚はあった。
「逃げてください。通りから離れた森側に」
かばった人はうなずくが、動きは鈍かった。
戦えそうな人は見受けられるが、すでに手がいっぱいそうだ。
「魔獣と魔物に驚いている感じもしますね」
混乱をおさえるために、巫女がいれば対応を任せられる。そうなると、リーダーであるベル・リエルが適任だろう。
「見つかるといいんですが」
まずは、目の前の魔物と対峙する。
ラティアは【孤高者の宗波】で捜波を走らせ、救助者または魔物の位置を捜索する。
また、天眼やホークアイでも状況把握に努める。
魔物を倒したいけれども、自分自身の腕前を考えると、避難誘導にまずは徹することにした。
「足止めがいるなら、戦いますけど」
魔獣が魔物と戦っている。避難誘導に影響ない限り手を出さないで進む。
座り込んでいる人に「大丈夫ですか? 怪我はありませんか?」と声をかける。
相手はラティアがどういう人かという点に気付かないまま、呆然と話す。
「あ、え、はい……なんで、こんなことが」
「とにかく、逃げましょう。魔獣がここ通ってますし、端っこの方へ」
「はい……」
その人はゆっくりとであるが動き出した。
ファシオが動くのを引き留め、ウルは里の入り口を守る。
どうあるとよいか、これまで学んできたことを生かして。
ライナは魔物と魔獣の足止めを維持する。
フロマーシュは避難を呼びかける。
「皆様落ち着いて、こちらに来てください! 無事避難できるようにお守りいたしますのでっ!」
魔物は住民や冒険者に目を向けているように感じられる。
(目はわからないんですが、こちらに気付いているようですね)
いつでもスキルを使いかばえるように意識した。
トーラとルチルは家に張り付いている魔物を討伐すべく対応する。
「家が溶けてますね」
「しかし、避難させるより、そのまま倒した方がいいな」
「魔物をどうにかします。逃げる準備をして、少し隠れててください!」
トーラは家の中の人に向かい、大きな声で呼びかけた。
そして、トーラは魔矢で、ルチルは鋭射で、魔物を攻撃した。
ヴィルヘルミナは鋭撃で攻撃を仕掛ける。
魔物から体液のようなものが飛び散り、草がジュという音を立てた。
「なるべく当たらない方がいいみたいです」
ラティアはかばっていた人が離れてくれたので、
「こちらからも行きます!」
と、その魔物に矢を射かける。
ヴィルヘルミナは「助かります」といい、次の攻撃を定める。
少しでも早く確実に倒していくため。
ライナは目の前の魔物を足止めしているのも難しくなってきたと感じた。スキルの回数もあるが、魔法の範囲から外れていた魔獣は、ライナを意識していた。
この状況で魔獣を穏やかにさせるのは難しいため、まとめて討伐する方に舵を切る。
仲間や避難が進む住民を巻き込むこともないため【黒雷】を放った。
これにより魔獣はライナも新たな敵とみなしたようだった。魔物は、目の前の魔獣を包み込もうとしていた。ライナが再度魔法を放った時には、ここはほぼ決着がつく。もともと魔獣と魔物で戦っていたこともあっただろう。
助けられた人たちは困惑する。
「あなたたちがなんで……」
「そんなことを言っている場合ではない。このおかれている状況こそが現実だ。受け入れて、生かされた命を考えてくれ」
諭した。この里の人たちを非難するつもりはないのだから。
ライナは手が必要なところに向かった。
フロマーシュは魔獣は魔物に立ち向かっているか、逃げていると理解した。逃げている魔獣はパニックになっているようでもある。魔物さえいなくなれば落ち着くかもしれない。しかし、逃げ惑う魔獣が住民を踏みつぶそうとしていた。
チャージングで魔獣と人との間に割って入る。全力献身で受けた。
盾に強い衝撃が走る。
「大丈夫ですか! 森に沿って進んで入り口の方に逃げてください」
助けられた人たちは「なんで……君たちが」と驚く。
「皆さまの気持ちは否定いたしません。……無関係であっても、犠牲になってほしくはない、一人でも多くの人たちを助けたいと思う人がいる、ということは知っていただきたいですから……」
フロマーシュは伝えた直後、向かってくる魔獣に対して【闘気槌】で攻撃した。
人々が移動してくれたため、安堵した。
トーラとルチルは小屋についていた魔物を倒した。
扉をたたき、トーラが「魔物は倒せました。怪我はありませんか?」と問う。
ルチルは天眼やラトからとらえた情報から、どこに逃げてもらうか考える。家が安全かは全くわからない。魔物がどれだけいるかわからないから。
そんな中、住民は扉を開けたがすぐに閉めようとした。
ルチルは素早く扉をおさえ「ここにいるより、外の方がいい」と伝え、説得する。
「魔物もだが、魔獣も力が強いみたいだ。ここにいると、いつ家ごと倒されるかわからない」
トーラが「エルフ以外だからといっている場合ではないでしょう」と訴えた。
「わたしたちは世界樹からこの世界のことを託されました。その判断をした世界樹を信じてもらえませんか?」
世界樹の名が出ると、さすがに里の人たちは響く物があるようだ。
納得できないことがあるとしても。
トーラは先日のこともあるため、あえていう。
「入り口付近に、ファシオさんがいます。彼女も心配してこちらに来ているんです」
住民たちは驚きつつも、場を離れる決意はした。
ヴィルヘルミナは魔獣の状況を注意深く見る。混乱しているか、魔物に立ち向かう意思がない限り、里から離れていっているようだった。
それは無視し、住民たちの対応にあたる。
「魔獣と魔物が対峙しているうちです、こちらから逃げてください」
エルフではないということで躊躇されているが、カリスマを持つためか、住民たちはのろのろ動き、告げる。
「ベルさんがいないんだ」
「どうしたら……」
「私たちが探し、安全を確保するから、皆が命を守ることが大切ですよ」
ヴィルヘルミナは諭した。
ラティアは里の奥の付近まで来る。
魔物と対峙している男を発見したが、呆然としているだけに見えた。
このままだと、危険だと、ラティアは矢をつがえ、攻撃に集中し、エーテルを込め魔物に放つ。
「逃げるか戦うかどっちかしないとだめですよ!」
声をかけ、また、矢をつがえる。
「排除できればいいですけど!」
せめて、足止めはしたかった。
冒険者たちは魔物を倒していく。
魔獣は興奮状態のまま冒険者に向かってくることもあった。魔獣は危険なものだけ対応し、進んだ。
ラティアが対峙する魔物に攻撃が集中する。
見える範囲での最後の魔物だったから。
●あなたも一つの生命である
「大丈夫ですか?」
ラティアがすぐに声をかける。
返答はなく、ベルは「なぜ?」とライナやフロマーシュを見て言う。
「ファシオさんが貴方を気にして、ここに来たいと言ったんだ」
「安全が確保されるまで入り口にいますが」
ライナとフロマーシュは応じた。
ルチルはラトを引き戻したところで、言う。
「魔物の発生源は調べたい。もし自然発生したものでなければ対策を取る必要がある」
トーラも「先ほどの魔物はどこから来たんですか?」と問う。
「前回は確認できなかった『特別な木』と関係があるのではないのですか……あ」
トーラはその時いなかったはずなので、慌ててライナとフロマーシュを見た。
ベルは「まさか! あの木は」と目を向ける。違和感に気付かず、驚いたように切株を見た。草が生え、埋没しかかっている。
トーラが残る伝承や状況の推測を口にした。
「『混沌の残滓たる大腐樹』の影響にある木を植えていたとか?」
「そんなことはない。大体……普通の木だったし、そんなものだったらもっと前から影響はあっただろうし」
ルチルは「確かに、ここ数年どころか前から何かあったかもしれないな」と言う。
魔物の来た方向は、ベル自身あまりわかっていない。
ヴェルヘルミナは「そうなると里の人に聞いたほうがいいですね」と確認した。
ルチルはうなだれるベルに対して「今回は運がよく助かった」と指摘した。
「世界はこれからも変わり続ける。当たり前と信じていた常識が塗りかわったとき、それを受け入れて生きていられるか、飲み込めず滅びるか。どちらになるかは選択を与えられた当人次第だろう。それも生きてこそだ。命あってのものだねともいうしねぇ」
ルチルはベルの様子を見て嘆息する。
トーラは切株を観察する。すっかり乾燥しているため、種類等がかろうじてわかる程度だ。見たことある種類と似ている。
「あの……これに何があったんですか?」
「シンボルの木を切り倒すなら、よほどの決断だろう?」
トーラとライナに言われ、ベルは過去にあったことを話した。
ハイアルヴのお告げのこと、魔物が現れたこと、木を疑ったこと。
ライナは自分の過去も考える。
「何が正しくて間違いなんかなんて誰にも分らない。それでも進み続けるしかないんだ」
個々のエルフの行動に限らず、世界樹が取った行動であっても、もっと大きな存在であっても。
トーラは「これからどうするんですか?」とベルに問う。
「今すぐ決めなくても構いません。もっと世界に目を向けて、手を取り合うことはできないでしょうか?」
ベルの目に映るのは彼を信じて里に来た人々の顔。
そこには不安だけでなく、無事だったことへの喜びもあった。
ファシオが「わしはいつまで放置じゃ?」とやってくる。
「解決したようだし、周りの里の輩にも伝えてやらねばな」
ファシオはベルにたきつけるように言う。
「あの時の、妙な自信はどこいった? 里を建て直せばよかろう」
即刻帰りそうなファシオを留め、冒険者は魔物の発生状況の調査や、住民の様子を確認するのだった。
里の人々は怪我で済んだとはいえ、思考が追い付かない。
助けてくれたのは外の人や近くの里の人たち。
心の傷はいずれ閉じるだろう――時間はかかったとしても世界が続けば。
マスターコメント
ショートシナリオ難しい 報酬:標準6 / 4〜6人
2023年11月30日 11時11分16秒 公開
相談掲示板
シーフのトーラです。 世界樹が消えてしまったのでは里の方も戸惑いますよね……。 力を託された者として、せめてこの状況は何とかしましょう! とりあえずスライム状の魔物の足止めと、里の人の避難を手分けしてやるのがよいでしょうか?
キャスター、ライナ・フレイヴァルツだ。 行動の支えや共に在るべきものが突然無くなった時。 計り知れない不安感が襲っているはずだ。 そこに、魔物がいるとなれば猶更な。 このスライムはどうやら生物そのものに反応し、エーテルを取り込もうとしている感じか? 基本はヤギを襲っているようだが…。 分散して避難させるとかえって危険かもしれないから、 避難させるなら一か所に集めたほうが良さそうか? サウンドボマーで知らせれば里全体には響きそうではあるが、今まさに襲われそうになっている人々は動けないだろうからそこは救助する必要があるな。 移動速度は遅いみたいだから、グラビティやアーケインで移動を封じられそうだ。 スライムの体液自体も危険があるから、できれば遠距離攻撃でまとめて倒したい所。
ウォーリアのフロマーシュ・ダイヤドロップと申しますっ。皆様よろしくお願いいたしますっ! いままで頼りにしていたものがなくなってしまうのは、確かに不安を抱いてしまいますよね… ともあれ、危機から里の方々をお守りしないと! 避難か魔物の足止め、どちらを優先するかは悩ましいところですが… 襲われそうな方がいましたら、チャージングで駆けつけ、殺界で魔物を近づけさせないようにしながら救助、避難させていく事はできそうですっ。 あと、サウンドボマーは用意できますのでっ! 魔物は飲み込んで来るため、触れる事が危険なようですし、庇ったり引き付けていくよりは、足止めに徹しつつ、 遠距離、もしくは範囲攻撃で倒していく方が良さそうです…
シューターのラティア・ミゼリアです、よろしくお願いします…… 大変なことになってますけど、頑張ります…… 私はガチガチの遠距離なので、魔物の足止めをメインに動こうと思ってます。
ヴィルヘルミナです。今回はよろしくお願いします。 世界樹は跡形もなく消えたみたいですからね。流石に驚くと思います。 やる事が多岐に渡っているので、どこから手を付けるかですね。魔物への対応は急務でしょうが。 私は魔物の対応に回ろうと思います。あまり近づくのはよろしくない様なので、エーテルブレードで距離を取って対処できるようにしておきます。 魔獣と戦っている個体もいるようなので、上手く立ち回りたいものですが。
定員ですね。あらためてよろしくお願いします! シーフはわたし一人ですし、捜波で取り残された人がいないか探しながら魔物の足止めをしようと思います。 それと、ウルさんは液体に対処する方法があるか分かりませんし、里の方の避難をお願いしてはどうでしょうか?
情報屋のルチルだ。よろしく。 世界樹が消えて不安な所に魔物の襲撃か…。外の者への不信感もあるようだし、ただ魔物を狩ればいいだけの話じゃなさそうなのが厄介だね。 とりあえず遠距離から攻めるのが得策と言われてるんで、アタイも逃げ遅れた者を探しつつ弓で魔物の進行を食い止めよう。 遠距離攻撃が専門じゃなくとも避難誘導とかは戦闘の片手間で行うのも限界があるし、サウンドボマーの使用中は確か戦闘行動が取れなくなるはずだから、その辺り分担していく感じでいいと思うよ。