【帝国】覇道に生きる人馬
おおくまねこ
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シナリオID:3333
オープニング
『見えてきたぞ。同胞たちよ。久方ぶりの故郷だ』
『おお、懐かしい……』
『かろうじて面影がある程度だな……一年そこらでこんなに荒れちまうのか』
その日、長らくケンタウロスの聖地から離れていた部族、ハオウ族が帰還した。ハオウ族はメドゥの左腕の襲撃で聖地が奪われた際、聖地の奪還よりも、新天地への移住を良しとした集団、いわゆる『新生派』に属する集団である。しかし、人類はハオウ族については、よく知らない。なぜなら、ハオウ族はシルトラース帝国がある西ではなく、東に向かって進軍したからである。
『世界の果てには海があるという噂は本当であった。俺はあの美しい光景を生涯忘れまい』
『ああ、海を見たケンタウロスは俺達がきっと初めてだろう。クリーパーや魔獣たちをなぎ倒してひたすら進んだ甲斐もあったと言うものよ』
ハオウ族達が見た『海』の正体は、実は海ではなくローレラウラ湖であった。内陸に住むハオウ族のケンタウロス達は海を知らなかったのだ。彼らは自分達が世界の果てに辿り着いたのだと信じていた。ちなみにケンタウロスの聖地から真東に進んだ場合、海より先にクリエスター山脈にぶち当たるため、道半ばでドワーフか邪竜にぶち殺される可能性が高い。だがハオウ族は両者に遭遇しないまま、湖を見て満足し、聖地へと引き返した。そして、いつの間にか聖地は奪還されていたので故郷に戻ることにした、というわけである。ハオウ族はノリと勢いで生きている部族であった。
『テムジン族長、これからどうする?』
テムジンの正妻であるガリアが尋ねると、テムジンは頷いた。
『そうだな……とりあえず、冬越えの準備だな。本格的に雪が降る前にやっておかないと面倒だ。いざとなれば西に突撃して食料を奪いに行くのもいいが、人間は食えんから効率が悪い』
『だね。じゃあ族長は狩りに出てくれ。バカでかいアンタがいると、掃除のジャマだ』
『よかろう。クマでもワイバーンでも、適当に狩ってくる』
槍を担いで一人ふらりと集落を出たテムジンは、数時間後、痩せたヒグマを一頭担いで帰ってきた。
『お帰り。族長にしては、小粒な獲物だね』
『うむ。襲い掛かってきたが、戦う前からヘロヘロで戦いがいの無い相手だった。他の獣に縄張りを追い出された雑魚だったのかもしれんな。まあ、このサイズでも数日分の食糧にはなるだろう。さっそく切り分けてくれ』
●
それから一週間も経たない間に、ハオウ族の帰還は聖地のケンタウロス達の間で知れ渡ることとなった。そして幽界樹を討つため、知り合いの部族に声をかけて戦力を集めていたランランも、この事実を知ることとなる。ランランはハオウ族をスカウトする準備の為、帝国の兵士駐屯所を訪れていた。
「今、私達ケンタウロスも『ユーカイジュ』を倒すために、戦力を集めています。私達も、貴方達と共に戦いマス。ユーカイジュを放置しておくと、ケンタウロスはキット、冬越えできなくなりマスから」
ランランはケンタウロスもレイウェストと共闘するつもりであることと、幽界樹の影響でケンタウロス達の領域の植物にも悪影響が出てきていることを冒険者達に語った。
「聖地の東の端に、『ハオウ族』という名の部族が住んでいマス。彼らは私の知る限り最強のケンタウロスの部族デス。ぜひ、彼らにも助力を願おうと思っていマス。ただ、とても荒っぽい一族なのデ、私だけデ行くの、ちょっと危ないデス」
ランランの話によると、ハオウ族は暇さえあれば狩りか修行ばかりしている脳筋集団で、悪い連中ではないが、交渉するのは難しい一族であると語った。ちなみにランランの部族のような女性族長を頂点とする集団ではなく、一体の雄ケンタウロスを頂点に頂くハーレム社会らしい。
「ハオウ族に何かを頼むなら、第一に力を示さねばなりません。対等と認めてもらわねば、交渉うまくいかないデス。デスので、冒険者族の強い人、一緒に来て欲しいデス」
●
「あそこがハオウ族の集落デス。ちょっと挨拶しマスね」
冒険者の集団を引き連れて聖地の東の果てまで到達したランランは、旗が立っている岩山を指差し、一人で少し先に進んだ。
『私はウィンドの部族、レミーラの孫、ランランだ! ハオウ族の族長と話がしたい!』
ランランが大声を張り上げると、黒い毛並みを持ついかついケンタウロスがぞろぞろと岩山の上から顔を出した。
『賢者レミーラの孫だと?』
『なぜ、あの娘は人類を連れている? 奴隷にしたのか?』
ケンタウロスはランランの後ろに控えている冒険者達に気付き、警戒を露わにした。しばらくすると、族長の代わりに、正妻のガリアが岩山から顔を出した。
『族長に会わせられるかは要件次第だ。そこで説明しな。それに後ろに連れている人類共のこともね』
『分かった、説明する』
ランランはハオウ族達を見上げながら、事情について説明した。
『帰れ! 人類と共闘なんてできるか! そもそも、言葉さえ通じぬのにどうやって共に戦うのだ!』
ランランの話を聞いたガリアは冷たく言った。
『言葉は、通じる! 私がここに人類を連れてきているのが証拠だ!』
ランランは食い下がった。
『どうした? 何を騒いでいる。なんか、若いメスの声が聞こえるが』
『テムジン族長!』
その時、とてつもなく巨大なケンタウロスがぬっと顔を出した。そのケンタウロスはとにかく巨大だった。黒々とした漆のような光沢を放つ毛並みに包まれた下半身は、馬どころかゾウほども大きさがある。馬の体と繋がった上半身もそれに見合った大きさで、全身の筋肉は極限まで鍛えられており、彫刻のように美しかった。
『レミーラの孫が、人類と共に大きなクリーパーと戦ってくれと騒いでいるのです』
『ん~? 人類と共に? 大きなクリーパーというのは気になるが……さんざん殺し合ってきたサル共と、今更共に戦うのは無理だろうよ』
『そんなことはありません! 私には、人類の友がたくさんいるのです! 花婿候補だって!』
ランランがそう叫ぶと、テムジンは大笑いした。
『ランランと言ったな! 趣味が悪すぎるだろう! 新種の生物でも生むつもりか! だが――』
テムジンは真顔になると、岩山からタン、と飛び降りた。ズシン、という凄まじい地響きと共に、大きな足跡を大地に刻んだテムジンは、ランランの頬に手を当てる。
『よく見ると、お前はなかなか美しい顔をしている。俺の嫁に来い。側室4号として迎えてやる』
すると、ランランはきっとテムジンを睨み付ける。ランランが連れてきた花婿ケンタウロスの三体は、テムジンへと槍を突き付けた。ランランはそれを手で制し、テムジンを見据えて言った。
『私は部族の長だ。婿入りはできない。どうしてもと言うなら、私の連れてきた戦士達を打ち負かしてみなさい。私が勝ったら、こちらの要求を呑んでもらう』
(ユーカイジュに負ければ、どの道ケンタウロスは滅びる。ならば、ここは賭けです)
ランランが迷いのない瞳でそう言うと、テムジンは大きく目を見開いた後、大声で笑った。
『なんと強かな女だ! さすがはレミーラの孫だ! いいぞ! ますます気に入った! お前が連れてきた連中を皆殺しにすれば、お前は俺のモノになるのだな! いいだろう! その勝負、受けよう!!』
かくして、冒険者達はケンタウロスきっての武闘派部族の協力とランランの貞操を巡り、ハオウ族と決闘をすることとなった。
解説
マスターより
リプレイ
「冒険者族だけでハオウ族と戦うのデスか? たしかに、選手は十名までとテムジンは言っていましシタが……」
「ランラン様、下がっていてください。……大丈夫です。わたしたちだって、簡単にはやられません」
ゲルダ・クラインは巨大な槍を示し、にっこりと笑う。冒険者達は自分達だけでハオウ族と戦うべきだと主張した。理由は単純だ。強い順にメンバーを選出した場合、十人全て冒険者で埋まるからである。あとは、ランランは唯一の通訳なので万が一にも失うわけにはいかない、という理由もある。ランランの花婿たちは『自分達も戦う』と主張したが、冒険者達の説得とトーラの目力に屈服し、ランランと共に側で見守ることを了承した。ランラン本人はハオウ族の若者たちと共に、決闘の立会人を務めることとなった。
『さあ、行くぞっ! 全員人間とは舐められたものだが、本当の騎馬突撃というものを貴様らに教えてやる!』
族長の号令と共に、人馬達は突進してきた。その迫力たるや、まるで黒い津波だ。テムジンの宣言に違わず、人馬達の突撃の速度は人類の騎馬突撃の速度を遥かに凌駕していた。だが、弓を持った二体の人馬達は、あえてペースを落としているようだ。その後には、普通の人間の馬と同じ程度の速度の、弓と槍を持った人馬が3体続いていた。
『さあ、アタシの相手はどいつだい!』
冒険者達が散開するよりも早く、真っ先に突っ込んできたのはテムジンの妻ガリアだった。ガリアは前衛の位置にいたハヤト=ガラン=ヴォルファング目掛け、双剣を振り下ろした。
「もう来たのかよ!」
ハヤトはガリアの脚力と剣の鋭さに驚きつつも、難なく一撃を躱した。しかし、ガリアは二撃、三撃、四撃と、さらなる追撃を放ってきた。ハヤトはガリアの四連撃を躱し、そのままテムジンの元へと駆け抜ける。
(悪いが、今日は人妻のおっぱいより男同士の語らいの気分でな!)
『テムジン! そっちに行った!』
ガリアは舌打ちし、テムジンに警告を促す。
「俺がブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ!」
ハヤトは獰猛な笑みを浮かべながら、テムジンへと襲い掛かった。
(足を狙うのは読まれて当然だ。狙うは、上半身から死角になってる、馬の腹!)
ハヤトはテムジンの足の間に滑り込むと、体ごと腕をねじり、容赦なく突きを放った。
(入る!)
ギャリリリリリリッ!
乱回転するハヤトの刃と蹴りが、テムジンへと襲い掛かる。
『臆さず、突っ込んでくるとはな』
テムジンはハヤトの勇気に感心していた。巨漢テムジンの半分どころか3分の1ほどしか上背のない人間(厳密にはハヤトはゴブリンだが)が、恐れずに立ち向かって来るとは。
『だが、パワーはさすがに俺には及ばんか』
テムジンの強靭な筋肉はハヤトの連撃を弾き返した。ハヤトの攻撃は四撃全てまともに命中したにも関わらず、わずかに皮膚が切れただけだったのだ。
『今度はこちらから行くぞ!』
テムジンはニヤリと笑うと、垂直に跳躍し、巨大な薙刀を振り回しながらハヤトに向かって急降下した。隕石のような一撃が炸裂し、直径15メートルほどのクレーターが出来た。しかし、ハヤトは薙刀が振り下ろされるよりも速く、破壊の嵐から逃れていた。
「俺に当ててみろよ」
(なんつー怪力だ。動きも速ぇ……こりゃ、気を抜けば一撃で殺されるな)
ハヤトはテムジンに獰猛に笑いかける。目が合ったテムジンも、ハヤトと同じ顔をしていた。
『うぉおおおお!!』
テムジンの側近の二体の槍兵の人馬は、雄たけびを上げて冒険者達の方へと突っ込んできた。人馬達は走りながら槍を突き出し、衝撃波を放つ。狙われたのはトーラとその後ろにいたロゼット。そして、アーテミシアとバル・ヌール・スケアクロウだった。衝撃波はロゼット、アーテミシア、バルの三人を巻き込んで炸裂した。しかし、トーラだけは回避に成功し、果敢に人馬達に接近戦を挑んだ。
「あなた達の相手はわたしです。まさか、逃げたりしませんよね?」
トーラは言葉を通じないのを承知でそう挑発しながら、全身からプレッシャーを放った。
(なんだ? ハーフリングの癖にでっかく見える……! こいつ、危険だ!)
ハンマーを持っていた人馬はトーラを脅威と感じ、光の柱でトーラを包み込んだ。
「下手に遠慮するより全力で応じた方が良さそうね」
槍兵の衝撃波を軽傷で耐えたロゼットは、槍兵に向かって棍を突き出した。先端からエーテルの弾丸が飛び、槍兵の足に命中する。しかし、槍兵は流血を意に介することなく、そのまま距離を詰めようとしている。
(あの槍兵、かなりの手練れだわ)
「やれやれ、正面からの力比べはあまり得意じゃないんだがね……」
ルチル・プルメリア・グレイハーツはぼやきながら、ハンマーを持った人馬に向かって最強の一撃を放った。放たれた巨大な光の矢はヒーラーの上半身を飲み込み、人馬は顔を大きく歪めた。
(あれはたぶん後方支援役だろう。まずは厄介そうなのから潰そうか)
『ウオオオ!』
冒険者達が一息つく暇もなく、今度は二体の射手人馬が100メートルほどの距離を保ったまま、十字砲火を浴びせてきた。狙われたのは、アーテミシアと、バルとゲルダだ。命中寸前に炸裂した二つの光の矢は、三人に命中したが、ダメージの度合いは三者ではっきりと異なった。アーテミシアはほぼ無傷だが、ゲルダは小さくないダメージを負った。バルはかなりの深手を負わされている。
(力を重視するというのは理解しなくもないですね、力がなければ守りたいものも守れません。それに、人類が嫌いならそれはそれでいいのです、今必要なのは力を示すこと)
グレイブ・ヤードはアーテミシアに再生の魔法をかけた。ガリアの攻撃はアーテミシアにほとんど効いていない。魔法による再生が加われば、彼女は圧倒的強者に見えるだろう。
(「皆殺しに」ですか……まあ、他の皆さんはともかく、私程度を殺すのは造作もないでしょうね。けど 私も死にたくはないし、死ぬにしたってただで殺されるつもりもありません。等価交換。せめて一人くらい道連れに……って、違う。交渉に来てるんでした)
ラティア・ミゼリアはトーラを光の柱で捕らえた人馬を目掛け、巨大な光の矢を放った。すでにルチルの狙撃で負傷していた人馬はラティアの追撃を受け、半死半生の状態となった。まだ戦闘続行できるだけの余力はあるようだが、次の一手はまず間違いなく自分への回復を行うだろう。
(あ? 何だって? 随分とやる気みてえだけど、コイツらドラゴンやら巨人やらより楽しめンのかよ)
「まあいいや。軽く遊ンでやりますかね……」
アーテミシアはガリアに向かって闘気を飛ばした。しかし、ガリアはそれをひらりと回避してしまった。アーテミシアは舌打ちし、もう一度闘気を飛ばす。ガリアはそれもひらりと回避した。
「どうした? 必死に避けて。オレが怖いのかよ?」
(チッ。まともにやっても当たらねーな。こりゃ。乱戦のどさくさを狙うか……)
アーテミシアはガリアに手招きをし、挑発をしかけてみた。
「命を奪い合う目的ではなく、あくまで戦うこと(積み上げた技術の競い合い)なのでしょう? なら戦士として、戦うものとして楽しまない理由はありませんよね?」
バルは薄く笑みを浮かべ、槍兵と距離を詰める。敵は離れたところから衝撃波で攻撃してきたので、バルの剣ではリーチが足りない。だが、バルはエーテルを放出しながら剣を思い切り振り、無理やり槍兵へと刃を届かせた。
ザシュ。
「さあ、尋常に勝負と行きましょう」
青白い刃に切り刻まれた槍兵は前足に深手を負い、赤い血が派手に吹き出した。
「ガリアを抑えないと……」
ゲルダはアーテミシアに加勢すべく、ガリアに向かってエーテルの刃を放った。ゲルダの放った鋭い衝撃はガリアに命中しそうになったが、ガリアは超人的な反応でゲルダの衝撃刃を見切り、ギリギリで回避した。
(今の動き……スキルでしょうか?)
『やってくれるじゃないか。ヒヤっとしたよ』
(ああ、俺もあの黒王みてぇな人馬になれたら、相応しい男になれたかもしれねぇ。にしても、相変わらず血の気の多い奴ばかりだな。ランランの嬢ちゃんの爪の……いや、いい。とりあえず間に合って良かったぜ)
パヴェル・A・サムルガチェフはハヤトと激戦を繰り広げているテムジンを横目で見た。屈強な肉体を持つハオウ族の族長、テムジンは『人類への脅威』としてイメージされる人馬像そのものだろう。しかし、そのしなやかでたくましい姿に、パヴェルは密かな憧憬を覚えていた。
「我が名はパヴェル! ランランの婿となる者也!」
人語で大声で怒鳴りながら、パヴェルはガリアを中心とした位置にアーケインを放つ。荒れ狂う稲妻の奔流はガリアを巻き込んで絡みつき、ガリアは舌打ちした。
(弓を持った連中は近づいて来ねえな。くそ、早く壁を作らねえと……)
弓を持った人馬たちはむやみに近づいて来ず、100メートルぐらいの距離を保っている。このままだと、こちらの前衛は遠距離から一方的に攻撃されてしまうだろう。
●
特異個体たちに遅れて追いついてきた3体の若い人馬は、パヴェルのアーケインに捕まり、動き辛そうにしていた。
『あいつらがヒーラーだな!』
ガリアはアーケインを突き破り、アーテミシアを振り切って、グレイブへと突進した。
「させません!」
しかし、ゲルダはグレイブの前に一瞬で飛び出し、代わりにガリアの4連撃を受け止めた。
『固……!』
ゲルダの盾の硬さに驚くガリア。すさかずゲルダは反撃し、ガリアへと斬りかかる。
『チッ!』
ガリアは慌てて身を躱すが、斬撃を躱し切れず、深手を負った。
『おらぁあああ!!』
ハヤトはテムジンに連撃を叩きこんだ後、前脚を蹴りつけ、距離を取った。
『その速さ、ガリア以上だな。だがこの一撃、躱せるか!』
「なんだぁ!?」
テムジンから威容な熱量を感じたハヤトは咄嗟に真横に飛ぶ。その直後、業火を纏った薙刀を振り回しながらテムジンが通り抜けた。
『いいぞ、よく躱した!』
(野郎、あんな技を……! できるだけ引き離した方がよさそうだな。俺が避けても、コース上にいたら仲間まで巻き込んじまう)
『チッ!』
バルに深手を負わされた槍兵はヒーラー人馬に近づこうとしたが、アーケインが邪魔だったので断念し、バルへと衝撃波を放つ。バルは衝撃波をモロに受け、血に染まるが、一瞬たりとも表情が変化せず、穏やかに微笑んでいた。
(不気味な奴だ……ダメージは小さくないはず。ゾンビか何かか?)
「く、なんとか脱出を……!」
(秘剣、『流水』!)
トーラの手にした二本の剣が流麗な軌道を描く。撃ち降ろし、切り上げ、横薙ぎ、刺突と、一瞬にして四連撃を叩きこまれた結界はヒビだらけになったが、完全に破壊することはできなかった。脱出にはもう少し時間がかかりそうだ。
「トーラが捕まったわ! みんな、気を付けて!」
(あれはケンタウロス式の光縛封? ヒーラーかしら)
ロゼットは敵のヒーラー(?)に注意を払いつつ、癒しのエーテルを放出した。ロゼットのエーテルにより、ゲルダ、バル、アーテミシア、そしてロゼットの傷が塞がっていく。
『うおおおお!!』
その時、ロゼット、目掛けて二体の弓兵人馬が十字砲火を浴びせてきた。
「ぐっ……!」
この攻撃で両足を撃ち抜かれ、ロゼットは戦闘不能となった。
(脳筋部族という話だが、戦い慣れしてるね……手ごわい。狙いはこっちと同じだったか)
ルチルは舌打ちしながら、トーラを捕獲したケンタウロスへと矢を放った。矢は命中し、ついに人馬は倒れた。
「これはまずいですね」
グレイブは急いでロゼットにヒールをかけた。完治とまではいかなかったが、ロゼットの両足の傷は塞がり、ロゼットは戦線復帰した。
「このケンタウロス達、強い……!」
ラティアはアーケインで止まった人馬目掛け、矢を放った。他の人馬よりも弱かったのか、人馬はラティアの矢の一撃で転倒し、そのままダウンした。
(これで、二人目)
「オラァ、テメェの相手はこっちだ!」
アーテミシアは逃げたガリアを追いかけ、再びガリアに殺気を浴びせかけた。ゲルダに気を取られていたガリアは今度は闘気をまともに浴び、正気を失った。
「ヒーラーを狙う作戦みたいですね」
バルは攻撃してきた槍兵の方に踏み込み、剣を思い切り振り回した。剣から放出されたエーテルが槍兵に命中し、今度こそ、槍兵はダウンした。
「ルチル! この壁に隠れろぉ!」
パヴェルはルチルの正面に雷で出来た壁を発生させた。
「ありがたい」
これで銃眼光壁越しに一方的に相手の弓兵に攻撃ができる。ルチルはほくそ笑んだ。
●
決闘は冒険者達が優勢のまま進んでいた。結界のケンタウロスが倒されたのを皮切りに、続いて槍兵のケンタウロスが倒れ、特異個体ではない3体の若いケンタウロス達も瞬く間に倒された。
「フン、半馬がよ。そんなオモチャ振り回して戦おうなんざ甘いンだよ」
『この野郎、鉄でも食ってるのかい、お前は!』
ガリアは果敢にアーテミシアを攻め立てたが、アーテミシアの頑強な肉体はほとんどガリアの攻撃を通さなかった。ちょうど、ハヤトとテムジンの戦いの鏡写しの構図である。
『こいつら、強いぞ! もう半分やられた!』
『族長、姐さん、指示をくれ!』
『駄目だ、族長は一騎討ちに夢中だし、姐さんもあのエルフに夢中で周りが見えてねえ!』
『仕方ない、こうなったら一斉に突撃を――』
指揮官二人を抑えられていたケンタウロス達が独断で勝負に出ようとした時だった。
「ギニャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
戦場に不気味な鳴き声が響いたかと思うと、青白い炎が渦巻き、ガリアを襲った。ガリアはなんとか炎を回避し、炎が飛んできた方向を見た。
『あれは、なんだ!?』
「「!?」」
突然の事態に、冒険者達もケンタウロス達も困惑していた。なんと、猫の頭を持つ巨大な怪物が迷い込んできたのだ。決してかわいらしくはない。猫なのは頭だけで、胴体は馬。四肢や尾は他の動物だ。サイズも猫というよりも虎である。そして、背中には赤々と輝くエーテル石。明らかに尋常の生物でなかった。
「なンだありゃ……オメーラのペットか? シュミ悪いなおい」
アーテミシアはガリアから視線を切らぬように注意したまま、魔獣の方を見た。
――こんな時に、魔獣だと!?
冒険者達は即座にケンタウロスへの攻撃を停止し、戦いを見守っていたランランに声をかけた。
「ランランさん! 決闘は一時中断と伝えて下さい。この魔獣は危険です! あれは恐らく、聖地を襲った魔獣の生き残りです!」
トーラが叫ぶと、グレイブとルチルも続いた。
「ランランさん。ハオウ族に共闘の申し入れを! 彼らも、水を差されて良い気分ではないでしょう」
「血の気の多い連中だ。ランラン、こう付け加えてくれ。『尤も、人類を共闘相手として認めないのであれば戦闘不能者を連れて逃げてもらっても構わない。我々だけでも魔獣を倒せる余力はあるのでな』と」
グレイブとルチルも、ランランに共闘の意志を伝えて欲しいと申し出た。
「決闘なんて言ってる場合じゃねぇ、黒王の旦那ぁ、魔獣を止めねぇと!」
パヴェルはテムジンへと大声で呼び掛けた。人語だったので言葉は伝わっていないだろうが、パヴェルに戦意がないことぐらいは伝わったかもしれない。
「後で続きをやるとしても、この場は仕切り直しはどうでしょうか。三つ巴なんて力を示すにも不適ですし、誤射のような卑劣な真似が起きないとも限りません」
バルは攻撃の手を止め、ため息を吐く。
「あの炎は危険です。ランランさんは皆様と一緒に避難してください」
ゲルダはランランの側に着く。決闘は十名同士だったが、この魔獣には、決闘参加者と他のケンタウロスの区別なんてつかないだろう。ランランと、花婿達そしてハオウ族のケンタウロスたちも今や危険な状態だ。
『ハオウ族よ! 冒険者族達は決闘はいったん中止し、魔獣を先に倒そうと言ってる! だが、人類と共に戦うのが嫌なら、逃げても構わないと!』
『何だと!?』
ランランの言葉に、ハオウ族の間に動揺が走った。ひとまず戦闘は中断状態となったが。
「おい、どうやら決闘してる場合じゃなさそうだぜ」
ハヤトは向き合ったまま、親指でテムジンへと魔獣を示した。
『ぬう……! ランラン! こいつらに了解したと伝えろ! 決闘はいったん中止だ! ハオウ族の戦士達よ、あの魔獣を先に狩るぞ!』
テムジンが号令を発すると、ハオウ族は魔獣を包囲すべく、陣形を整え始めた。
「冒険者族の皆さん、交渉成功デス! あの魔獣を倒すのに専念して下サイ!」
ランランは冒険者達に向かって親指を立てた。
●
かくして、ケンタウロス達との決闘は一時中断し、乱入してきた猫頭の魔獣との戦いが始まった。ゲルダは戦闘区域外まで下がったランランの護衛についており、戦域からは少し離れている。ランランの花婿たちは弓を構え、遠距離から魔獣を攻撃する構えだ。
「共闘成立だな! 行くぜ!」
『足を引っ張るなよ!』
ハヤトとテムジン(言葉は通じていない)は競い合うように魔獣へと突進した。
「勇牙無限撃!」
『覇王爆烈騎!』
ガガガガガガ!
ハヤトとテムジンの攻撃をまともに浴びたキャスパリーグは悲鳴を上げ、10メートルほど後ろに吹き飛んだが、空中でくるりと一回転し、華麗に着地した。ハヤトはすぐに身を引き、魔獣から距離を取った。
「シャーッ!」
魔獣は鋭く唸ると、ハヤトをギロリと睨み付けた。
「いっ!?」
その瞬間、ハヤトの動きがピタリと止まった。
(か、体が動かねえ……!)
「ニャーゴ」
自分の呪いがかかったことを感じたのか、魔獣は嬉し気に喉を鳴らす。しかし、距離の遠いハヤトへの追撃は後回しにしようと思ったのか、魔獣は自身の周囲に炎を放ち、テムジンを攻撃した。
『ぐうっ……!』
サチコの炎もかくやという業火に身を焼かれ、テムジンは苦痛に顔を歪ませた。
「背中、お借りします!」
すでにケンタウロスの結界を破壊して脱出していたトーラは、(勝手に)テムジンの背中に飛び乗り、彼の背を踏み台にして魔獣へと上から飛びかかった。
(この魔獣は既に片目! 左目を潰せば視界を奪えます!)
「たああっ!!」
トーラの両手の剣が煌めき、青い閃光が四度魔獣の体を通過する。しかし、首を捻った魔獣は眼球を刻まれることは避けており、血が噴き出したのは首と胴からだった。
(体が硬い! でも通じます!)
「癒しの神よ彼の者の不調を全快させ給え!」
ロゼットは憤怒の形相で棒立ちしているハヤトに向かって全力疾走すると、肉体の異常を治す魔法を放った。射程ギリギリの距離だったがなんとか魔法はハヤトまで届き、ハヤトは無事再起動した。
「ありがとよ、ロゼット!」
「あの邪視……普通じゃないわ! 目を潰して!」
ロゼットは大声で叫び、仲間達に警告を促す。
「アンタら、まだ戦えるだろ」
ルチルは倒れていたヒーラーのケンタウロスにヒールをかけた。特異個体のケンタウロスは戦力になる。寝かせておくのももったいないと判断したのだ。
「これも貸しだ」
ランランが遠くにいるので意思疎通は難しかったが、ルチルはそう言い残し、魔獣へと攪乱射撃を浴びせた。
「彼の者に、癒しを」
グレイブは一番負傷が酷いケンタウロス(バルにやられた槍兵)にヒールをかけた。足がほとんどちぎれかけているほどの酷い怪我だったが、なんとかくっついた。これでまだ戦えるだろう。
(戦う力を示すのも大事だが、目の前の命を助ける事を私は優先します。命を繋ぐ力もまた、我ら命あるものの有する強さでしょう)
「えっと、共闘、できてるんですよね……?」
ラティアは魔獣からできる限り距離を取りつつ、矢を射かけた。矢は額に命中したが、頭蓋骨が硬いのか、魔獣は元気に動き回っている。まるでヒグマの如き生命力だ。
「半馬どもはとりあえず置いといて、あれを殺ればいいんだな」
(目がやばいらしいな。右側から行くか)
アーテミシアは魔獣の目がない右側から回り込むように、魔獣へと近づいていった。
「人が楽しんでいる時に無粋な水差しは勘弁してほしいですね」
全身血だらけのバルは決闘に水を差された不満をこぼしつつ、魔獣へと駆けていく。双方の増援で人数の均衡も崩れた今、決闘は破綻した。
「ちょっと予定外だが、共闘の前借みてえなもんだなぁ!」
パヴェルはち少しテンションを上げつつ、【輝襲壁】をランランと花婿たちの前に設置した。ランラン達は(ランラン本人は弓を持っていないが)弓の射程ギリギリの位置から魔獣に攻撃を仕掛けるつもりのようだ。銃眼障壁があれば、一方的に射撃で攻撃できるだろう。
『『撃て!』』
ハオウ族の弓使いたちとタイミングを合わせ、ランランの花婿達が一斉に矢を放った。五本の弓による集中砲火を浴びせられたが、魔獣は二発の被弾で凌いでみせた。
●
(あの眼がやばい。なるべくあのにゃんこ馬の視界に入らねーようにしねーと……)
ハヤトはまた動きを止められぬよう、魔獣の右側の死角から回り込むように魔獣へと接近した。途中で同じように右側から接近していたアーテミシアを追い抜いたハヤトは魔獣の顎を狙い、側面から飛び蹴りを放つ。
「ギニャッ」
獣の本能で攻撃を察知した魔獣はハヤトの蹴りを首を捻って躱したが、ハヤトはすぐさま体を一回転させ、双刀で魔獣へと斬りかかる。二つの刃を魔獣の眉間に炸裂させた後、ハヤトは魔獣の額を蹴り、敵の間合いから離脱していった。
『うおおおお!! その男を殺すのは俺だ!』
テムジンは雄たけびを上げながら再び魔獣へと突進した。爆撃のような薙刀の一閃が命中し、魔獣の肩に深々と刃が食い込んだ。
『族長に続け!』
『冒険者族を援護するぞ!』
ハオウ族の戦士たちと、ランランの花婿たちが間髪入れずに魔獣に矢や、エーテルの弾丸を浴びせる。しかし、魔獣はケンタウロス達の集中砲火を、二発の被弾で凌いでみせた。
「あの魔獣、動きが速いわね。それに、何か呪いみたいな力も持ってるみたい」
ロゼットは踵を返すと、今度はケンタウロス達が倒れている場所へと向かっていった。
(さっきまで決闘していた相手だけど、今は共闘が成立しているはず……)
ロゼットは回復の波動を全身から放出した。癒しのエーテルは範囲内にいた者達を種族の分け隔てなく癒した。
「フシャーッ!」
トーラは雄たけびを上げて魔獣を威嚇しつつ、両手に握っていた剣の形状を細く長い刃から幅広の刃へと変形させる。あえて魔獣に正面から突っ込み、トーラは顔面を狙って飛びかかった。
「フギャー!」
魔獣はトーラの『流水』をバックステップで回避しようとしたが、二撃よけ損ね、前脚に十字傷を負った。魔獣はトーラをギロリと睨み付ける。その瞬間、トーラの全身を悪寒が襲ったが、トーラは気合で敵のエーテルを弾き飛ばし、硬直を防いだ。しかし、完全には敵のエーテルを弾き切れなかったのか、トーラの周囲には青いエーテルが渦巻いていた。
「ギッ!」
すかさず魔獣が炎の波を放ち、トーラとテムジンが業火に呑みこまれる。しかし、トーラは炎を剣で切り裂き、やり過ごすことに成功していた。
「奴に睨まれると良くないらしいね」
(トーラが小さくて助かった)
ルチルは炎が収まった瞬間を狙い、魔獣の顔に向かって攪乱射撃を放った。トーラの頭の上の空間を通過した矢は魔獣の顔面に突き刺さり、ルチルのエーテルが魔獣の顔に纏わりついた。その直後、ラティアの矢も魔獣に飛来し、前脚の肉を深く抉った。
(あれ、当たる?)
ラティアはケンタウロスの矢が外れまくっているのに、自分の矢が全く外れないのを不思議に思いつつ、次の矢を準備していた。
「てめえの炎で敵を見失ってるようじゃ、世話ねえな」
密かに魔獣の近くまで接近していたアーテミシアは体ごと回転しながら戦槌をフルスイングし、魔獣の前脚を強打した。隻眼の視界の狭さゆえにアーテミシアが全く見えていなかった魔獣はスネに直撃を受け、一瞬動きが止まった。
「連携はできていますね。まだ油断はできませんが」
グレイブは戦況を確認しつつ、今度は自分にヒールをかけた。
「壁はもう品切れだな。なら、こいつだぁ」
パヴェルは魔獣に少し近づき『魔錆』をかけた。アーテミシアの一撃で痺れていた魔獣は魔錆をまともに喰らい、パヴェルのエーテルが魔獣の体を取り巻き始めた。
「やっと追いつきました。楽しませてくださいよ」
剣の間合いまで踏み込んだバルは、魔獣へと剣を一閃した。しゃん、と軽やかな音と共に青白い刃が魔獣の首を通過し、赤い血が噴き出した。
●
三十人近い数の冒険者と人馬の連合軍に包囲された魔獣はなおも戦意を失わず、奮戦していた。数では圧倒的に冒険者側が有利であったが、魔獣は厄介な特殊能力を持っており、動きを止められたまま、炎の洗礼を受けた人馬や冒険者の負傷者は後を絶たなかった。また、冒険者とケンタウロス達も決闘でエーテルを消耗していたため、万全の態勢ではなかったのだ。ランランの護衛についていたゲルダも人馬の二体が倒れたのを皮切りに、ランランを花婿たちに任せ、参戦していた。
『ぐおおっ……!』
度重なる火傷に、ついにテムジンの膝が折れた。
「フギャー!!」
魔獣は怒りの咆哮を上げると、自身を包囲していた槍兵のケンタウロス達とバル、ゲルダ、アーテミシア、テムジンを炎で焼かんとした。
『危ない! テムジン様!』
ゲルダはテムジンの前に飛び込み、炎の壁を盾で受け止める。さすがにこれは無茶だったのか、ゲルダはそのまま炎に巻かれて意識を失った。
『……ジド・ルウ?』
その瞬間、テムジンの胸に去来した想いは人類に庇われたことに対する屈辱ではなかった。テムジンは小さな体で炎を受け止めたゲルダに、聖地に伝わるハーフリングの英雄の姿を幻視した。
「おい、化け物! こっちだ!」
エーテルで防御と固め、炎に耐えたアーテミシアはゲルダの反対側に回り込み、魔獣を挑発しながら、戦槌で右足を思い切り殴りつけた。
「猫にしては、おイタが過ぎますね!」
トーラはアーテミシアの背後から魔獣に忍び寄ると、頭上の死角から魔獣の眼を刺し貫いた。この一撃で脳を破壊された魔獣は、とうとう絶命し、ぐらりと倒れた。
「どうぞ。背中にくっついてました。元々、あなたたちの物ですよね」
トーラは魔獣から採取したエーテル石をテムジンへと突き出した。
『……』
立ち上がったテムジンは、突き出されたエーテル石を受け取り、複雑そうな表情でトーラを見つめていた。
●
「それで……決闘は、どうなるのでしょう……?」
ヒーラー達による負傷者の救護が終わった後、不気味な怪物の死骸を眺めながら、ラティアは呟いた。
「戦う事に誇りがあるなら決着は公正にするべきです。まあ、延期しかないでしょうね」
グレイブは肩を竦めた。
「幽界樹を放置すれば、狩りの獲物も取れなくなり、ケンタウロスの生活が成り立たなくなることをランランさんに説明してもらいましょう。あと、帝都には世界中から強者が集まることも」
ロゼットは人類側に協力する必要性と利点を率直に伝えるべきだと主張した。
「そうですね。人類と手を組めば、強い武具――神材を用いて鍛えられたものが手に入ります。ハオウ族にとっても、悪いお話ではないかと思います」
「ああ、それはあるかもな。あいつら、身体能力は高いけど、武具はオモチャだったからな……」
ゲルダとアーテミシアも頷く。ハオウ族の武器や鎧は、人類から奪ったものを適当に打ち直したものや、魔獣の骨を削りだしただけの簡素なものばかり。竜骨や神材などでオーダーメイドの武具を与えてやれば、さらなる強化も見込めるだろう。
『――というわけだ。どうだ? テムジン』
ランランがもろもろを説明し、テムジンへと問いかけた。
『決闘は水を差された。貴様ら冒険者族との決着はいずれまた今度だ。幽界樹とやらを倒した後にな』
テムジンは冒険者達に背中を向け、荒野の風を浴びながらそう答えた。
「よっしゃ、決まりだな! あのハーレム王とは気が合うと思ってたぜ! とりあえず、奥さん方ともぜひ肉体言語で親睦を……」
「ハヤト……後が怖いよ」
ルチルはハア、とため息を吐いた。
●
帰り道にて。
「ランランの嬢ちゃん、この戦いが終わったら、正式にお前さんの婿に、してもらえねぇだろうか」
パヴェルは意を決し、ランランに声をかけた。
「エッ」
ランランは一瞬意味が分からず、きょとんとした。
(今すぐって言うと、嬢ちゃんに迷惑がかかるだろうからなぁ)
ランランもランランの部族のケンタウロスもパヴェルや『冒険者族』には好意的だが、部族にパヴェルに迎え入れるとなれば、文化的な障害はやはり小さくないだろう。それに、パヴェルの言葉が分かるケンタウロスはランランと他に数人。人馬の言葉が話せないパヴェルに、族長であるランランが付きっきりで世話をするわけにもいくまい。
「通訳、間違ってたらゴメンナサイね。ソレは、ウチの部族に婿に来るというコト? デショウか」
頬を染めたランランが問うと、パヴェルは頷いた。
「ああ、あんまり覚えてねぇんだが、俺ぁケンタウロスと暮らしたことがあるんだ。おめぇさんたちのしきたりとかには、ちゃんと従うつもりだぁ」
パヴェルの突然のプロポーズを、冒険者達は遠巻きに見守る。ランランはキョロキョロとあちこちに視線を泳がせ……。
「ハイ、喜んで」
ランランは、満面の笑みを浮かべた。思わず、冒険者達は拍手を送る。
「おう、よろしくなぁ」
パヴェルは朗らかに笑ったのだった。
マスターコメント
ロングシナリオ非常に難しい 報酬:多い10 / 6〜10人
2023年11月19日 20時13分21秒 公開
相談掲示板
とりあえず通訳が必要なンだな。亜人語適正のスキルが必要なのか? ちなみにオレは今持ってないぞ…
もしいなければ私が準備しておきましょう。 話せることは大事ですしね
シーフのトーラです。 ハオウ族に認められれば帝都攻略へのケンタウロスからの応援も期待できるでしょうか。 頑張りましょう! ハオウ族については強力な個体が多いので油断は出来ませんし、PL情報ですがキャスパリーグも厄介ですね。 特に邪視の凶運はファンブル値が10上がりますし、行動不能を受ければそもそも身動きが出来なくなるので対策はしておきたいですね。 抵抗する場合、凶運は付与が55、行動不能は付与35になるので、凶運の抵抗は難しそうです。 行動不能なら抵抗が40くらいあれば抵抗もある程度狙えて、自然回復もすぐに出来るでしょうか。
あ。 亜人語適正は持っていけます。 ただ、こちらの言葉は伝えれないのでそちらはランランさんにお願い出来たらと思います。
シューターのラティア・ミゼリアです、よろしくお願いします…… 私のハートスナイパーが射程24なので、開幕にハイパーバスターアローとかすれば、まあ何とか先手を取って一人は倒せないかなと思ってお邪魔させていただきました…… じゃあ誰を狙うかって問題がありますし、テムジンさん、ガリアさんクラスはさすがに無理と思いますし、ついでに私自身も基本へっぽこなので、早々に退場しそうですが…… キャスパリーグに関しては……キャスパリーグ自体も強力そうですし、PL情報ですが、出現条件の関係でどうしてもこちらが消耗した状態になるのも厄介ですよね…… ただ、キャスパリーグの出現条件はこちらではわからないにしても、何にせよできれば数で優位に立ちたいなとは思うので、最初のハイパーバスターアローはともかく、基本的には一般戦士を優先して攻撃して敵を減らす方向で考えています。 ……ところでハオウ族の皆さん、キャスパリーグが出てきたら「よくも決闘に水を差してくれたな!」みたいな感じで協力してくれるんでしょうか……? そのあたりも交渉次第ですかね……?
とりあえず本番は魔獣の方だな。それまでは…オレはガリアの相手でもするか。テムジンの相手でもどっちでも構わねえけど まあガード固めて時間稼ぎだな
あと一人ですね。 わたしは迷い中ですけれど、数を減らす方向で動こうかと思います。 ミゼリアさんがハイパーバスターアローの対象を悩んでいるのであれば、ハオウ族のヒーラーをお願いできないでしょうか? 消耗を抑える為にも回復を止めておきたいので……。 出来れば行動した直後を狙って、自分を回復する暇を与えないようにして貰えたら助かります。
>時間稼ぎ 流石にそれはやる気がないとかとみられませんかね…? 魔獣(キャスパリーグ)が出た時にこちらの仕込みと見做されかねない危険性もある、かと 卑劣、の条件に当てはまりそうな気もします。 >対応 側近や戦士を考えなくもないですが、テムジンが物理に特化しているのであれば光縛封を盾代わりにするなりの手段はとれるかなとちょっとスキルを考え中です。
わかりました……では、ハイパーバスターアローはヒーラー狙いということで……
ヒーラーのロゼットよ。これで依頼は成立かな。 といっても内容を見るに、もう少し参加者が欲しいわね。 >亜人語適正のスキルが必要? これはランランが死亡または戦闘不能(重体)によって 通訳ができない状態になると失敗、という意味だと思うわ。 だから亜人語適正は必ずしも用意しなくて良いと思う。 >時間稼ぎ 他の敵(側近や戦士)を落とすまで、強い相手と防御重視に 戦うという意味なら作戦の1つとして構わないんじゃない? 勝利を掴みにいってる姿勢は大事だけど。 >対応 今のメンバーだと、アーテミシアがガリアを抑えるなら、 パワーのありそうなテムジンは、回避の高いハヤトに お願いした方が良いかしら。私じゃ耐えるのはキツそうね。 仮に、グレイブもテムジン戦に参加するなら。 私、トーラ、ラティアとランラン達で敵の側近と戦士を 倒しにいって、人数の優位を取りにいく…って感じかな。 これから参加者が増えたら、また調整になるけど。 >キャスパリーグ戦はハオウ族と共闘? その時点でランランが健在なら、共闘の交渉はできるでしょう。 そして、その時の戦闘不能者6名の内訳によって、ハオウ族が 私たちの実力を認めるかどうか決まるって感じかな。 >ランラン(おおくまねこマスター宛) >ハオウ族の戦士十名とランラン一派の決闘 もし見ていたら。 テムジン、ガリア、側近6体、戦士3体とハオウ族側が 11体いるように思うのだけど、数え間違えてるかな? たぶんランラン側10名VSハオウ族10体になるような 設定だと思うから、ハオウ族の数がおかしくないかなと。
味方が周りを片付けるまで主力を足止めするのはオレの基本戦術だぞ。 結果として時間稼ぎになったところで、それに文句をつけられる謂れはねえな。 というかオレ1人即倒せないで皆殺しとか笑わせるわ
ランランデス。よろしくお願いしマス。 【敵の人数】 ハオウ族の人数ですが、【側近の人数】がごめんなさい、数え間違いデス。 弓兵が2名、槍兵が2名、ハンマー使いのヒーラーが1名なので、合計は「6」ではなく「5」名デスね。 決闘に出てくるハオウ族は族長と妻でまず2人、側近が5人、戦士が3人で合計10人デス。 (解説の記載ミスなので回答いたします。申し訳ありません)
>時間稼ぎについて あぁ、勘違いしました。申し訳ありません。 (マスターよりの内容とかいろいろ混じりました) >対魔獣の共闘について 呼びかけてもいいのではないか、と思います。 少なくてもこれは水を差された形になりますし
ウォーリアのゲルダです。よろしくお願いします。 魔獣『キャスパリーグ』出現までに可能な限り多くハオウ族側を倒し、キャスパリーグ出現後はランラン様経由でハオウ族側との共闘を打診――という方針ですね。かしこまりましたっ 通訳のためにもランラン様を護る必要がありそうですので、わたしはランラン様の護衛に回りますね。 攻撃は弓を持って遠距離から。ランラン様のお傍をなるべく離れないように対応しようと思います。
>決闘のルール >合計人数は必ず相手と揃えなければならない これがあるから、私たち側の決闘メンバーは ハオウ族と同じ「10人」までにしないといけないわ。 今、冒険者が7名だからランラン達の1名は控えになる。 戦闘に不向きなランランに最初の控えになってもらおうかと 思ったのだけど…ランランは決闘に出てもらった方が良いかしら。 その場合は、ランランの婿さん1人を控えにする形ね。
ラティアさんありがとうございます! 頼りにさせて貰いますね! ランランさんについては参加者が10人揃わない限りは決闘に参加して貰うのが良いかと思います。 その方がハオウ族に認めて貰えそうですし、ゲルダさんに守りに付いて貰えるなら危険もかなり下がるでしょうから。
あ。それと戦場が荒野とのことなので、ケンタウロスの機動力は脅威です。 それによる突破の可能性と弓もありますし、後衛の方もある程度は身を守る手段を用意しておくのが良いと思います。
おーっす! ブレイブファング傭兵団のハヤト=ヴォルファングだ、よろしくな!! ケンタウロスのハオウ族か… なかなか骨がありそうで楽しめそうだな! 個人的にはテムジンってのと気が合いそう←な 気がするが、まずはこっちの力を認めさせねー事には始まらねぇもんな。 ロゼットも言ってくれてるが、序盤のテムジンの抑えは俺が引き受けんぜ! 真っ向勝負の方が相手も乗ってきそうだしな!! 一応皆に被害が出ねぇ様に計算して立ち回るつもりだが、突撃攻撃は俺が避けた後に巻き込まれねー様みんなも注意しといてくれな!
では私で9人目でしょうか? 基本的には側近や戦士の方々を相手にしましょうか?
キャスターのパヴェルだ。よろしくな。 む、テムジンって馬人、強そうでイイガタイしてんじゃねぇか。 羨んじまうぐらいつええってのは、ああいうののことなのかねぇ。 とりあえず俺で10人目なはずだし、ランランの嬢ちゃんは控えにできるってとこかね。
参加者が10名になったわ。 護衛を希望したゲルダには悪いけど、 個人的には冒険者10名で挑みたいかな。 >現在の対応(仮) テムジンにはハヤトが、ガリアにはアーテミシアがあたるとして。 グレイブは考え中だけど、テムジン戦に加勢かな? ロゼット、トーラ、セティア、バルで側近、戦士にあたるとして。 セティアは敵ヒーラーを狙っていて、トーラは人数減らしに。 私はグレイブにもよるけど、側近・兵士と戦いつつ回復かな。 側近で厄介なのが、『疾風足』を使う弓兵ね。 移動6で引き撃ちされると、普通の移動や射程じゃ届かないわ。 >キャスパリーグ戦 参加者が増えて余裕ができそうだから、BS全解除の 真サルベーションオールを入れておきましょうか。 凶運は半々ぐらい、行動不能はほぼ確実に解除できるはずよ。 私がBSを受けたら意味がないけど、優先されるとしたら、 冒険者やハオウ族の、強い人を先に封じてきそうだし。
>側近への対策 【澱嵐】を側近の弓兵に、【銃眼光壁】を後衛側の冒険者側において封じてみるか。 ハヤトの旦那だったら矛先が向かっても、回避するのだけの地力があるだろぉしな。 あと落とせるなら、戦士3体と側近1体を先に鎮めておきえてぇな。
そうですね、側近・戦士にロゼットさんが当たるのであれば、私はテムジン・ガリアサイドの支援にあたりましょう。 純粋な力比べという形でもありますから、私自身も何かしらの攻撃手段も備えておきましょうか。
情報屋のルチルだ。直前の参加になるがよろしく。 レベル差的にも、魔獣乱入後の翻訳係の必要性的にもメンバーは全員冒険者で揃えるのがいいね。フルメンバー揃っているしこれでいいだろう。 とりあえず側近や若い戦士を早めに落として状況を変えてしまうのがいいか。タンクがいるとはいえ流れ弾を食らわずにどこまで保てるかが定かではない。 ハナからこっちの事を舐めてかかっているようだし、人間ごときに配下が半数以上倒されるだけでもまあまあ実力はわかってもらえるだろう。 アタイも側近、戦士の人数減らしに向かおう。武器の都合でラティアより射程がやや低めになるが、ハイパーバスターアローによるヒーラーの狙撃も可能だよ。
そうですね。冒険者フルメンバーで――がよさそうですし、魔獣乱入前まではランラン様の護衛ではなく、火力役として参加しますね。 少しでも力を認めていただきたいので、テムジン様、ガリア様側にまわろうかなと思っています。 魔獣乱入後は、当初の予定通りランラン様の護衛に回ります!
おおよそ配置が決まったかな。異論なければこれで。 テムジン側も、実力さえ示せば評価してくれそうな人物だし、 ランランの交渉と合わせていけば、魔獣共闘は組めるでしょう。 >各自の行動予定 テムジンにはハヤトが、ガリアにはアーテミシアがあたる。 両者の戦闘には支援として、ゲルダとグレイブが入る。 側近(槍兵2、弓兵2、治癒士1)・戦士3名にはロゼット、 トーラ、セティア、バル、パヴェル、ルチルが対応あたる。 ・セティア、ルチルの強射撃で治癒士を狙う ・バルは側近や戦士を相手にする ・トーラは人数減らしに動く ・パヴェルは【澱嵐】を弓兵に、【銃眼光壁】を味方後衛に ・ロゼットは回復しつつ戦闘 キャスパリーグ戦は、ゲルダはランラン護衛につく。
出発まで24時間を切りマシタ。出発は明日の夜7時となりマス。忘れ物には注意して下サイね。
あ、あの……ロゼットさん…… 細かいことというか、仕事に直接関係ない話で申し訳ないんですが…… ラティア、です……
>ラティア ラティア、ゴメンなさい!私の間違いだわ! >各自の行動予定 テムジンにはハヤトが、ガリアにはアーテミシアがあたる。 両者の戦闘には支援として、ゲルダとグレイブが入る。 側近(槍兵2、弓兵2、治癒士1)・戦士3名にはロゼット、 トーラ、ラティア、バル、パヴェル、ルチルが対応あたる。 ・ラティア、ルチルの強射撃で治癒士を狙う ・バルは側近や戦士を相手にする ・トーラは人数減らしに動く ・パヴェルは【澱嵐】を弓兵に、【銃眼光壁】を味方後衛に ・ロゼットは回復しつつ戦闘 キャスパリーグ戦は、ゲルダはランラン護衛につく。
とりあえずガリアはシーザーロアで惹きつけとく。知恵が回るらしいから消極的すぎると意図を読まれそうだしな。 キャスパリーグは…まあ、死角に回り込んで叩くくらいか。
満員ですね。 ランランさんが戦闘に出ないなら、亜人語適性を外して天眼にして傷付いた相手を集中攻撃して行くようにしますね。 接近戦ならフォアクロウズ、離れていれば魔矢で。 明日GをSPに変えることが出来ればヒドゥンチェイサーを3にして抵抗を上げれば、8割で行動阻害には抵抗できる筈です。
もしかしたらバッドステータスまわりの認識が違っているかもでしたので、念のため共有しておきますね。 バッドステータスの付与及び回復判定は、以下の判定を行うとのことです。 50+(抵抗値-付与性能)×5=目標基準値 魔獣の付与値が50、「付与性能の基準」通りでしたら行動不能は-10(※基準なので確実ではないかもしれません)で40 ですので、8割を超えるためには46、確実に抵抗するのであれば50は必要かなと。 (抵抗40で5割、抵抗30で0になります) もし必要でしたら……ですが、パッシブで抵抗9を持っていきますので、模倣していただければと。
対魔獣戦で共闘ができるかいまいち予測ができませんでしたので 魔獣乱入時点でランランさんを通じて「魔獣狩りの勝負」に出来ないか提案することを行動に入れてみます。 「狩り」に関してはハオウ族の皆さんもやっている事でしょうから、そこまで抵抗はないと思いますし。 「人と手を組む」よりはハードルが下がると思うのですよね。 先に仕留めたほうが勝ち、というルールなら。
何度も再投稿スミマセンッ! ショップにアイテムが追加されていたのでヒドゥンチェイサー3を習得できました! ゲルダさん>行動不能の付与性能の基準値は-15ですよー。 なのでキャスパリーグの付与性能50に基準値を適用すると35になるので、抵抗が45あれば行動不能には確実に抵抗できる筈です。
はっ、本当でした……! すみません、ご指摘ありがとうございます……っ
いえいえ。わたしも自信がなくて確認したりもしましたから。 認識違いが訂正出来たのなら何よりです!